説明

カッター、収納箱及びカートンブランクと、カッター及び収納箱の製造方法

【課題】植物由来樹脂で構成した基材2にシート類7を切断するために歯部5を形成したカッター1について、押し出しラミネートにより、基材2との接着性よくシーラント層4を設けることができるようにする。
【解決手段】基材2の片面にアンカーコート層3を形成し、このアンカーコート層3上にシーラント層4を押し出しラミネートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばラップフィルム、アルミホイル、クッキングシート等のシート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するためのカッター、このカッターを備えた収納箱及びこの収納箱のカートンブランク並びにカッター及び収納箱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートロールを収納する収納箱に取り付けられるカッターの基材を、廃棄時の分別処理を不要にするために、金属ではなく、植物由来樹脂で構成することが知られている(特許文献1の請求項7参照)。また、同様の理由からカッターの基材を紙とした場合に、接着剤による収納箱への取り付けでは、接着剤の塗布工程が必要となることによる収納箱製造工程の煩雑化や、接着剤の隣接機器への付着等の不都合を生じることから、ホットタック性のよい合成樹脂を予めシーラント層としてドライラミネート又は押し出しコーティングした原反シートからカッターを製造し、シーラント層を超音波融着することで収納箱に取り付けることができるようにすることも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2004/011533再公表公報
【特許文献2】特開平8−230889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているような植物由来樹脂のカッターを、特許文献2に記載されているような超音波融着で収納箱に取り付けることも行われている。
【0005】
しかしながら、植物由来樹脂は耐熱性が劣るため、押し出しコーティングでは、植物由来樹脂で構成されたカッターの基材と、シーラント層との間の十分な接着力が得にくい問題がある。このため、植物由来樹脂の基材を用いたカッターの場合、超音波融着で取り付けるためには、通常、ドライラミネートでシーラント層を設けている。しかし、ドライラミネートの場合、植物由来樹脂であるカッターの基材と、シーラント層との間の十分な接着力を得るために、接着剤が限定されてしまうことから、シーラント層として使用できる材質が狭い範囲に限られてしまい、収納箱の材質に合ったシーラント層を選択しにくい問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、植物由来樹脂で構成した基材にシート類を切断するために歯部を形成したカッターについて、押し出しラミネートにより、基材との接着性よくシーラント層を設けることができるようにし、超音波融着によりカッターを収納箱に取り付ける際のシーラント層の選択幅を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、シート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターにおいて、基材の片面に、収納箱に融着するためのシーラント層が、アンカーコート層を介して押し出しラミネートされていることを特徴とするカッターを提供するものである。
【0008】
本発明の第二は、シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターが取り付けられた収納箱において、基材の片面に、シーラント層がアンカーコート層を介して押し出しラミネートされており、シーラント層を超音波融着させることでカッターが取り付けられていることを特徴とする収納箱を提供するものである。
【0009】
本発明の第三は、シート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターの製造方法において、植物由来樹脂の原反シートの片面にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させてアンカーコート層を形成した後、アンカーコート層の表面にシーラント層を押し出しラミネートし、シーラント層を押し出しラミネートした原反シートを帯状にスリットした後、所定の歯部を有する基材の形状に打ち抜き加工することを特徴とするカッターの製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明の第四は、シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターが取り付けられた収納箱の製造方法において、植物由来樹脂の原反シートの片面にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させてアンカーコート層を形成した後、アンカーコート層の表面にシーラント層を押し出しラミネートし、シーラント層を押し出しラミネートした原反シートを帯状にスリットした後、所定の歯部を有する基材の形状に打ち抜き加工することで得たカッターを、シーラント層を超音波融着させることで収納箱に取り付けることを特徴とする収納箱の製造方法を提供するものである。
【0011】
上記本発明の第一から第四は、それぞれ、シーラント層がエチレン−メタクリル酸共重合体で、アンカーコート剤がポリエステル系又はポリエーテル系アンカーコート剤であることを好ましい態様として含むものである。
【0012】
本発明の第五は、シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターが取り付けられた収納箱のカートンブランクにおいて、基材の片面に、シーラント層がアンカーコート層を介して押し出しラミネートされており、シーラント層を超音波融着させることでカッターが取り付けられていることを特徴とするカートンブランクを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アンカーコート層を介在させることにより、幅広い種類のシーラント層を、植物由来樹脂の基材に接着性よく押し出しラミネートにより積層接着することができる。従って、シーラント層の選択幅が広く、収納箱の材質に合ったシーラント層を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る収納箱及び本発明に係るカッターの説明図で、(a)は収納箱全体の斜視図、(b)はカッターの一部切欠拡大斜視図である。
【図2】本発明に係る収納箱の第二の例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る収納箱の第三の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1において、1はカッターで、基材2の片面にアンカーコート層3を介してシーラント層4が押し出しラミネートにより積層接着されたものとなっている。
【0017】
カッター1を構成する基材2は、例えばポリ乳酸、ポリサクシネート等の植物由来樹脂で構成されている。基材2は、細長い帯状をなしており、その長辺に沿って鋸歯状の歯部5が形成されている。
【0018】
アンカーコート層3は、アンカーコート剤の溶液を塗布し乾燥することで形成されるもので、アンカーコート層3を構成するアンカーコート剤としては、例えばイミン系、ブチル系、ポリエステル系、ポリエーテル系等のアンカーコート剤を用いることができる。アンカーコート剤の塗布量は、固形分で0.1〜0.2g/m2であることが好ましい。
【0019】
また、シーラント層4としては、例えばエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体等、シーラント材料として一般に使用される合成樹脂を広く用いることができる。シーラント層4の厚さは、超音波融着がしやすい厚さであればよく、通常20〜40μm程度である。前記アンカーコート剤は、このシーラント層4の構成材料に応じて選択されるが、シーラント層4がEMAAの場合、基材2とシーラント層4間の高い接着力が得られることから、アンカーコート剤としてはポリエステル系又はポリエーテル系アンカーコート剤が好ましい。
【0020】
収納箱6は、例えばラップフィルム、アルミホイル、クッキングシート等のシート類7を巻き取ったシートロール8を、このシートロール8からシート類7を引き出し可能に収納するものとなっている。収納箱6は、通常、紙製のカートンブランクを組み立てたもので、上部が開放された平面長方形の箱状の本体9と、蓋片10と、掩蓋片11とを備えている。本体9は、前面板9a、背面板9b、左右の側面板9c及び底面板9dで構成されており、背面板9bの上縁から、本体9上に被さる蓋片10が延出している。また、蓋片10の先端縁から、蓋片10を本体9上に被せた時に、本体9の前面板9aの外面に沿って宛われる掩蓋片11が延出している。
【0021】
本例におけるカッター1は、シートロール8から適宜の長さに引き出したシート類7を切断するための歯部5を、掩蓋片11の先端縁より若干突出させた状態で、掩蓋片11の先端縁内面に沿って取り付けられている。この取り付けは、基材2の片面に設けられたシーラント層4を掩蓋片11の内面側に重ねた状態で、シーラント層4を超音波融着させることで行われている。
【0022】
上記カッター1及びこのカッター1付の収納箱6は、次のようにして製造することができる。
【0023】
まず、植物由来樹脂の原反シートを引出して塗布装置へと搬送し、その片面にアンカーコート剤の溶液を塗布する。原反シートを乾燥装置へと移動させて、塗布されたアンカーコート剤の塗膜から溶媒を除去して乾燥し、原反シートの片面にアンカーコート層3を形成する。このアンカーコート層3を形成した原反シートを更に搬送し、アンカーコート層3の表面にシーラント層4を押し出しラミネートする。シーラント層4を押し出しラミネートにより積層した原反シートを、アンカーコート層3及びシーラント層4と共に、ほぼカッター1の基材2の幅と等しい幅の帯状にスリットした後、鋸歯状の歯部5を有する所定の長さ及び形状の基材2へ打ち抜き加工することでカッター1を製造することができる。また、カッター1付の収納箱6の製造は、収納箱6がカートンブランクの状態でカッター1を所定の位置に取り付けることで行われる。カッター1の取り付けは、シーラント層4を収納箱6の所定の位置に向けて重ね、超音波融着装置の受けアンビルと融着ホーンの間に挟み、融着ホーンを作動させてシーラント層4を溶融させることで行うことができる。図1に示される収納箱の場合、カッター1を掩蓋片11の先端縁内面に沿って重ねて、シーラント層4を溶融させることで行うことができる。
【0024】
上記の例におけるアンカーコート層3及びシーラント層4は、基材2の片面全面に設けられているが、例えば片面の長さ方向にライン状に設けることで、歯部5に対応する箇所には設けないようにし、シーラント層4が歯部5に被さることでの切れ味の低下を防止することもできる。
【0025】
図1に示される収納箱6は、直線状の掩蓋片11の先端縁の内面に沿って直線状のカッター1が取り付けられたものとなっている。しかし、本発明に係る収納箱6は、図2に示されるように、山形に屈曲した掩蓋片11の先端縁の内面に沿って、同様に山形に屈曲したカッター1が取り付けられたものとすることもできる。また、図3に示されるように、前面板9aの上縁内面に沿ってカッター1を取り付けたものとすることもできる。なお、図2及び図3において、図1と同じ符号は同様の構成要素を示す。
【実施例】
【0026】
〔実施例1〜5〕
厚さ約250μmのポリ乳酸の原反シートを連続的に引出しながら、その片面に、表1に示すアンカーコート剤の溶液を、固形分で約0.15g/m2となるように塗布し、乾燥させてアンカーコート層を形成し、このアンカーコート層の表面に、EMAAを温度約310℃、厚さ約35μmで押し出してラミネートした。EMAAの層を十分冷却させた後、試験片を切り出し、JIS Z 0238「ヒートシール軟包装及び半剛性容器の試験方法」に準じて初期ラミネート強度を測定した。結果を表2に示す。なお、表2において、MD方向は原反シートの引出し方向(原反シートの長さ方向)、TD方向はMD方向に対する直角方向(原反シートの幅方向)である。
【0027】
また、実施例1〜5の溶融ラミネート品を紙と超音波融着したところ、いずれも取り付け強度に問題なく融着することができた。
【0028】
【表1】

【0029】
〔比較例1〕
アンカーコート剤を塗布しなかった点を除いて実施例1と同様にEMAAの押し出しラミネートを行い、同様にして初期ラミネート強度を測定した。結果を表2に示す。
【0030】
比較例1の溶融ラミネート品を紙と超音波融着したところ、十分なラミネート強度が得られていないためにラップを切断するには、剥離しやすいものであった。
【0031】
【表2】

【符号の説明】
【0032】
1 カッター
2 基材
3 アンカーコート層
4 シーラント層
5 歯部
6 収納箱
7 シート類
8 シートロール
9 本体
9a 前面板
9b 背面板
9c 側面板
9d 底面板
10 蓋片
11 掩蓋片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターにおいて、基材の片面に、収納箱に融着するためのシーラント層が、アンカーコート層を介して押し出しラミネートされていることを特徴とするカッター。
【請求項2】
シーラント層がエチレン−メタクリル酸共重合体で、アンカーコート剤がポリエステル系又はポリエーテル系アンカーコート剤であることを特徴とする請求項1に記載のカッター。
【請求項3】
シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターが取り付けられた収納箱において、基材の片面に、シーラント層がアンカーコート層を介して押し出しラミネートされており、シーラント層を超音波融着させることでカッターが取り付けられていることを特徴とする収納箱。
【請求項4】
シーラント層がエチレン−メタクリル酸共重合体で、アンカーコート剤がポリエステル系又はポリエーテル系アンカーコート剤であることを特徴とする請求項3に記載の収納箱。
【請求項5】
シート類を巻き取ったシートロールを収納する収納箱に取り付けられ、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターの製造方法において、植物由来樹脂の原反シートの片面にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させてアンカーコート層を形成した後、アンカーコート層の表面にシーラント層を押し出しラミネートし、シーラント層を押し出しラミネートした原反シートを帯状にスリットした後、所定の歯部を有する基材の形状に打ち抜き加工することを特徴とするカッターの製造方法。
【請求項6】
シーラント層がエチレン−メタクリル酸共重合体で、アンカーコート剤がポリエステル系又はポリエーテル系アンカーコート剤であることを特徴とする請求項5に記載のカッターの製造方法。
【請求項7】
シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターが取り付けられた収納箱の製造方法において、植物由来樹脂の原反シートの片面にアンカーコート剤を塗布し、乾燥させてアンカーコート層を形成した後、アンカーコート層の表面にシーラント層を押し出しラミネートし、シーラント層を押し出しラミネートした原反シートを帯状にスリットした後、所定の歯部を有する基材の形状に打ち抜き加工することで得たカッターを、シーラント層を超音波融着させることで収納箱に取り付けることを特徴とする収納箱の製造方法。
【請求項8】
シーラント層がエチレン−メタクリル酸共重合体で、アンカーコート剤がポリエステル系又はポリエーテル系アンカーコート剤であることを特徴とする請求7に記載の収納箱の製造方法。
【請求項9】
シート類を巻き取ったシートロールを収納すると共に、シートロールから引き出したシート類を切断するための歯部を植物由来樹脂の基材に形成したカッターが取り付けられた収納箱のカートンブランクにおいて、基材の片面に、シーラント層がアンカーコート層を介して押し出しラミネートされており、シーラント層を超音波融着させることでカッターが取り付けられていることを特徴とするカートンブランク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−76822(P2012−76822A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226433(P2010−226433)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】