説明

カッター装置

【課題】ベアラ部を用いてアンビルロールをカッターロールに追従させて回転する際に、その追従性を高める。
【解決手段】搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置である。ワークを切るカッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、カッターロールの外周面に対向して配された外周面によってカッター刃を受けるアンビルロールと、カッターロール及びアンビルロールのうちの一方のロールの外周面に設けられ、他方のロールに当接する環状凸部と、カッターロールを駆動する第1モータと、アンビルロールを駆動する第2モータと、第1モータを位置制御又は速度制御によって制御する第1モータ制御部と、第2モータを制御する第2モータ制御部と、を備える。アンビルロールは、前記環状凸部を介してカッターロールからトルクが伝達されて前記カッターロールに追従して回転し、第2モータ制御部の制御に基づいて、前記カッターロールに追従した回転を補助するように、第2モータからアンビルロールへと補助トルクが付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品のワークを切るカッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造ラインでは、図1の斜視図に示すように、不織布等のワーク1を搬送方向に搬送中に、当該ワーク1に対して打ち抜きをしたり、切り込みを入れたり、製品単位に分断すること等が行われる。つまり、ワーク1を切ることが行われる。そして、これは、カッター装置121によってなされる。
【0003】
カッター装置121は、外周面131aからカッター刃132が突出したカッターロール131と、カッター刃132を受ける平滑なアンビルロール141と、を有している。そして、カッターロール131はモータ131Mによって駆動回転し、また、アンビルロール141は、ベアラ部133,133を介してカッターロール131から回転トルクが付与されてカッターロール131に追従して従動回転する。詳しくは、カッターロール131の外周面131aには、ベアラ部と呼ばれる一対の凸部133,133が周方向に沿って全周に亘り環状に設けられている。そして、これら環状凸部133,133がアンビルロール141の外周面141aに圧接され、この圧接による摩擦力を介して、回転トルクがカッターロール131からアンビルロール141へと伝達されてアンビルロール131が連れ回りするようになっている。
【0004】
ここで、アンビルロール131の慣性モーメントが大きい場合には、加減速時にベアラ部133の静止摩擦力不足に起因して、カッターロール131の回転にアンビルロール141が追従できず、つまり、ベアラ部133やカッター刃132に対してアンビルロール141の外周面141aが相対滑りをしてしまい、これにより、ベアラ部133やカッター刃132、並びにこれらと当接するアンビルロール141の外周面141aの部分の摩耗を促進してしまう。
【0005】
そこで、図1に示すように、ベアラ部133に加えて、更に、カッターロール131の軸端部とアンビルロール141の軸端部とにそれぞれギア139,149を設けて互いに噛み合わせ、これにより、カッターロール131からアンビルロール141へと回転トルクを伝達することも行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−188700号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、後者の場合にあっても、ギア139,149同士の間のバックラッシに起因して、カッターロール131とアンビルロール141とが相対すべりをする虞がある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、ベアラ部を用いてアンビルロールをカッターロールに追従させて回転する際に、高い追従性を奏することが可能なカッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
前記ワークを切るカッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、
前記カッターロール及び前記アンビルロールのうちの一方のロールの外周面に設けられ、他方のロールに当接する環状凸部と、
前記カッターロールを駆動する第1モータと、
前記アンビルロールを駆動する第2モータと、
前記第1モータを位置制御又は速度制御によって制御する第1モータ制御部と、
前記第2モータを制御する第2モータ制御部と、を備え、
前記アンビルロールは、前記環状凸部を介して前記カッターロールからトルクが伝達されて前記カッターロールに追従して回転し、
前記第2モータ制御部の制御に基づいて、前記カッターロールに追従した回転を補助するように、前記第2モータから前記アンビルロールへと補助トルクが付与されることを特徴とするカッター装置である。
【0010】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベアラ部を用いてアンビルロールをカッターロールに追従させて回転する際に、高い追従性を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来例のカッター装置121の概略斜視図である。
【図2】本実施形態に係るカッター装置21の概略斜視図である。
【図3】図3Aはカッター装置21の中心縦断面図であり、図3Bは、図3A中のB−B断面図である。
【図4】コントローラ71の概略構成図である。
【図5】第1モータ31Mと第2モータ41Mの駆動電流Iのチャートである。
【図6】カッター装置21の起動時から定常運転時までの制御フロー図である。
【図7】図7Aはカッター装置21の中心縦断面図であり、図7Bは、図7A中のB−B断面図である。
【図8】その他の実施の形態に係るコントローラ71の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
前記ワークを切るカッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、
前記カッターロール及び前記アンビルロールのうちの一方のロールの外周面に設けられ、他方のロールに当接する環状凸部と、
前記カッターロールを駆動する第1モータと、
前記アンビルロールを駆動する第2モータと、
前記第1モータを位置制御又は速度制御によって制御する第1モータ制御部と、
前記第2モータを制御する第2モータ制御部と、を備え、
前記アンビルロールは、前記環状凸部を介して前記カッターロールからトルクが伝達されて前記カッターロールに追従して回転し、
前記第2モータ制御部の制御に基づいて、前記カッターロールに追従した回転を補助するように、前記第2モータから前記アンビルロールへと補助トルクが付与されることを特徴とするカッター装置。
【0015】
このようなカッター装置によれば、第2モータからアンビルロールには補助トルクが付与され、この補助トルクは、カッターロールに追従したアンビルロールの回転を補助するようにアンビルロールに作用する。よって、アンビルロールは高い追従性でもってカッターロールの回転に追従することができる。その結果、カッターロールとアンビルロールとの間の相対滑りを抑制できて、当該相対滑りに起因した摩耗を低減可能となる。
【0016】
かかるカッター装置であって、
前記第2モータ制御部は、前記第1モータの駆動トルクを示す信号に基づいて、前記第2モータを制御するのが望ましい。
このようなカッター装置によれば、第1モータの駆動トルクを示す信号に基づいて第2モータは補助トルクをアンビルロールに出力する。よって、当該補助トルクを、カッターロールの回転に高い追従性でもって追従させて変化させることができる。これにより、カッターロールの回転が加減速を伴うような場合であっても、当該回転にアンビルロールは速やかに追従可能となる。
【0017】
かかるカッター装置であって、
前記第2モータの前記補助トルクは、前記第1モータの前記駆動トルクを示す信号に連動して増減変更されるのが望ましい。
このようなカッター装置によれば、補助トルクは、カッターロールの回転に連動して変化する。よって、かかる補助トルクに基づいて、アンビルロールの回転を、より高い追従性でもってカッターロールの回転に追従させることが可能となる。
【0018】
かかるカッター装置であって、
前記第1モータは、供給される駆動電流の値に応じた値のトルクを前記駆動トルクとして発生し、
前記第2モータは、供給される駆動電流の値に応じた値のトルクを前記補助トルクとして発生し、
前記駆動トルクを示す信号は、前記第1モータの前記駆動電流であり、
前記第2モータに供給される駆動電流は、前記第1モータの前記駆動電流の値に比例して変更されるのが望ましい。
このようなカッター装置によれば、アンビルロールの回転を、より高い追従性でもってカッターロールの回転に追従させることができる。
【0019】
かかるカッター装置であって、
前記第2モータ制御部は、前記第2モータの駆動トルクを、前記第1モータの駆動トルクと連動させて変更するのが望ましい。
このようなカッター装置によれば、アンビルロールの回転を、より高い追従性でもってカッターロールの回転に追従させることができる。
【0020】
かかるカッター装置であって、
前記カッターロール及び前記アンビルロールの回転開始時においては、前記第1モータ制御部及び前記第2モータ制御部は、それぞれ、前記第1モータ及び前記第2モータを、位置制御又は速度制御に基づいて制御することにより、前記カッターロールの周速と前記アンビルロールの周速との偏差が所定範囲に入るように、前記カッターロール及び前記アンビルロールを駆動回転し、
この回転開始時と同時又は相前後して、前記一方のロールの前記環状凸部を前記他方のロールの外周面への圧接した後に、
前記第2モータ制御部は、前記第2モータの制御を前記位置制御からトルク連動制御へと切り替え、
前記トルク連動制御では、前記第2モータ制御部は、前記第1モータの駆動トルクを示す信号に基づいて前記第2モータの駆動トルクを制御するのが望ましい。
このようなカッター装置によれば、カッターロールとアンビルロールとの間の相対滑りを抑制ながらも、円滑に第2モータをトルク連動制御に基づいて動作させることができる。
また、回転開始時には、第1モータ及び第2モータを位置制御又は速度制御によって制御するので、カッターロールの周速とアンビルロールの周速との偏差を速やかに小さくすることができる。
【0021】
===本実施形態===
図2乃至図3Bは、本実施形態に係るカッター装置21の説明図である。図2は、カッター装置21の概略斜視図であり、図3Aはカッター装置21の中心縦断面図であり、図3Bは、図3A中のB−B断面図である。
【0022】
カッター装置21は、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造ラインで使用される。そして、この例では、カッター装置21は、搬送方向に連続搬送される不織布等の連続シート状部材の半製品1(ワークに相当)から、おむつの製品ピッチPでおむつの脚周り開口部1hを打ち抜くようになっている。但し、半製品1は何等連続シート状部材に限るものではなく、つまり、おむつの製品に相当する単位で分かれて個別搬送されるものでも構わない。なお、その場合には、半製品1を搬送する搬送機構としては、搬送ローラー93に代えて、サクションコンベア(載置面に吸着機能を有したベルトコンベア)等が使用される。
【0023】
以下では、かかる半製品1の搬送方向のことを「MD方向」とも言い、更にMD方向と直交する方向のうちで、半製品1の厚み方向ではない方向(半製品1が連続シート状部材の場合には当該シート状部材の幅方向)のことを「CD方向」とも言う。
【0024】
カッター装置21は、CD方向に平行な回転軸周りに回転可能に支持されたカッターロール31と、CD方向に平行な回転軸周りに回転可能に支持されたアンビルロール41と、カッターロール31を駆動回転する第1モータ31Mと、アンビルロール41を駆動回転する第2モータ41Mと、これら第1モータ31M及び第2モータ41Mを制御するコントローラ71(図4を参照)と、を有する。
【0025】
そして、互いに駆動回転するカッターロール31とアンビルロール41との間に、搬送方向たるMD方向に沿って半製品1を通す際に、カッターロール31の外周面31aのカッター刃32とアンビルロール41の外周面41aとで半製品1を挟むことにより、半製品1から脚周り開口部1hを切除する。
【0026】
カッターロール31は、その外周面31aに、カッター刃32とベアラ部33とを有する。カッター刃32は、半製品1を切るべき形状に倣って外周面31aから突出して設けられている。また、カッター刃32の先端の周回半径は、例えば、おむつの製品ピッチPを2π(円周率の2倍の値)で除算した値に概ね等しくなるように設定されており、これにより、カッターロール31が1回転すると、半製品1は、製品1ピースに相当する長さPだけMD方向に送られる。
【0027】
一方、ベアラ部33,33は、カッターロール31のCD方向の両端部にそれぞれ設けられた大径部(環状凸部に相当)である。そして、カッター装置21の定常運転時には、当該ベアラ部33,33がアンビルロール41の外周面41aに圧接されて、この圧接による静止摩擦力を介してアンビルロール41に回転力を付与する。つまり、アンビルロール41は、第2モータ41Mという専用の駆動モータを有してはいるが、この第2モータ41Mは、あくまで、アンビルロール41の回転動作を補助するものであって、基本的には、当該アンビルロール41は、カッターロール31の回転に追従して回転する従動ロールである。更に言えば、カッターロール31とアンビルロール41とは、回転動作に関してマスタースレーブ関係にあると言える。これについては後述する。
【0028】
ベアラ部33の周面(アンビルロール41に圧接される面)の半径は、例えばカッター刃32の先端の周回半径と同値に設定される。但し、カッター刃32の切断性や、ベアラ部33を通じてアンビルロール41に伝達される回転トルクの伝達性を阻害しない範囲であれば、何等同値に限るものではなく、つまり、これら両者のうちのどちらか一方が他方より大きくても良い。
【0029】
アンビルロール41は、例えばその外周面41aがCD方向にフラットな平ロールである。すなわち、この例では、アンビルロール41の半径はCD方向の略全幅に亘り同径となっている。但し、カッター刃32の切断性やベアラ部33からの回転トルクの伝達性を阻害しない範囲であれば、アンビルロール41の外周面41aのロールプロフィール(輪郭形状)をフラットから変更しても良い。
【0030】
なお、上述のベアラ部33,33をアンビルロール41に圧接する圧接力は、例えば油圧シリンダー53等の圧接力付与機構によって付与される。図3A及び図3Bを参照して詳しく説明すると、カッター装置21は、図3Aに示すようにCD方向の両側に、これらカッターロール31及びアンビルロール41を支持するためのハウジング51,51を有している。各ハウジング51は、それぞれ、図3Bに示すように略矩形の枠体51であり、各枠体51の内側には、カッターロール31の端部31e及びアンビルロール41の端部41eが、それぞれ軸受け35,45を介して配置されている。また、アンビルロール41の各端部41e,41eと、対応する各ハウジング51,51との間には、それぞれ油圧シリンダー53,53が介装されており、これら油圧シリンダー53,53の作動によってアンビルロール41は軸受け45,45を介して上下昇降可能に支持されている。よって、当該油圧シリンダー53,53を作動する作動油の油圧値を調整することにより、圧接力を任意に変更可能である。なお、かかる油圧シリンダー53,53は、カッターロール31の各端部31e,31eと、対応する各ハウジング51,51との間に介装しても良い。また、圧接力付与機構として、油圧シリンダー53の代わりに、エアシリンダーや送りねじ機構を用いても良い。
【0031】
第1モータ31Mは、供給される駆動電流I1の値に応じた値のトルクで駆動回転軸31dを回転する直流モータである。そして、図3Aに示すように、この駆動回転軸31dは、自在継ぎ手等の適宜な軸継ぎ手31jを介してカッターロール31の端部31eに連結されている。これにより、カッターロール31に駆動トルクを付与してカッターロール31を回転軸周りに駆動回転する。なお、カッターロール31には、エンコーダ37が設けられており、エンコーダ37は、カッターロール31の回転角度(回転位置)や角速度をリアルタイムで検出する。例えば、カッターロール31が1回転する間に、予め定められた一連の数値(例えば0から8191までの8192個のデジタル値等)を、カッターロール31の回転量に比例して逐次出力する。また、エンコーダは、上記数値の時間微分値も逐次出力する。なお、以下では、上記数値及び時間微分値として、回転角度及び角速度が出力されている前提で説明する。
【0032】
第2モータ41Mも同様の直流モータであり、供給される駆動電流I2の値に応じた値のトルクで駆動回転軸41dを回転する。そして、この駆動回転軸41dも適宜な軸継ぎ手41jを介してアンビルロール41の端部41eに連結されている。これにより、アンビルロール41に駆動トルクを付与してアンビルロール41を回転軸周りに駆動回転する。また、第2モータ41Mに係るアンビルロール41にも、上述の第1モータ31Mに係るカッターロール31と同様にエンコーダ47が設けられている。
【0033】
図4は、コントローラ71の概略構成図である。
コントローラ71は、PLC72と、PLC72から送られる第1制御信号S1に基づいて第1モータ31Mの駆動を制御する第1モータ制御部74と、PLC72から送られる第2制御信号S2に基づいて第2モータ41Mの駆動を制御する第2モータ制御部76と、を有する。
【0034】
PLC72(プログラマブルロジックコントローラ)は、プロセッサを有する。そして、PLC72に予め格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより、第1モータ制御部74及び第2モータ制御部76にそれぞれ上記の各制御信号S1,S2を生成等して出力する。
【0035】
第1モータ制御部74は、いわゆる位置制御によって第1モータ31Mを制御する。すなわち、PLC72から第1モータ制御部74へと、第1制御信号S1として回転角度(回転位置)の指令値θaを示す信号が送信されると、第1モータ制御部74は、この回転角度の指令値θaと、実際の回転角度として上述のエンコーダ37から出力される回転角度の実績値θrとの偏差Δθが小さくなるように、第1モータ31Mに駆動電流I1を出力する。
【0036】
より詳しくは、第1モータ制御部74は、位置比較器81と、速度指令演算器82と、速度比較器83と、駆動電流演算器84と、を有する。位置比較器81では、回転角度の指令値θaと回転角度の実績値θrとが比較され、両者の偏差Δθ(角度偏差Δθ)が算出される。そして、この角度偏差Δθは速度指令演算器82へ入力される。速度指令演算器82では、前記角度偏差Δθに基づいて所定の演算を行って、角速度(回転速度)の指令値ωaを算出し、この指令値ωaを速度比較器83へと送信する。すると、速度比較器83では、この角速度の指令値ωaを、エンコーダ37から送られる角速度の実績値ωrと比較し、両者の偏差Δω(角速度偏差Δω)を算出する。そして、この角速度偏差Δωを駆動電流演算器84へと送信する。駆動電流演算器84では、この角速度偏差Δωに基づいて所定の演算を行い、この角速度偏差Δωが小さくなるような駆動電流I1の値を求める。そして、この求められた駆動電流I1を第1モータ31Mへ供給し、第1モータ31Mを駆動する。
【0037】
第2モータ制御部76は、位置制御と、トルク連動制御(第1モータ31Mの駆動トルクに連動して第2モータ41Mの駆動トルクを変更する制御)とを択一的に切り替えて実行可能に構成されている。そして、位置制御はカッター装置21の起動時(つまり回転開始時)に選択され、トルク連動制御はカッター装置21の定常運転時(つまり半製品1の脚周り開口部1hの打ち抜き時)に選択される。
【0038】
位置制御が選択された場合には、PLC72から第2モータ制御部76へと、第2制御信号S2として回転角度(回転位置)の指令値φaを示す信号が送信され、第2モータ制御部76は、この回転角度の指令値φaと、実際の回転角度たる上述のエンコーダ47からの回転角度の実績値φrとの偏差Δφが小さくなるように第2モータ41Mに駆動電流I2を出力する。かかる位置制御は、第2モータ制御部76が具備する位置制御部77によってなされるが、図4に示すように、その基本構成は上述の第1モータ制御部74と概ね同様なので、詳細な説明は省略する。
【0039】
他方、トルク連動制御が選択された場合には、第2モータ制御部76では、上述の位置制御部77に代えてトルク連動制御部78が選択される。すると、トルク連動制御部78には、PLC72から第2制御信号S2として第1モータ31Mの駆動トルクT1を示す信号がリアルタイムで送信される。より具体的には、第1モータ31Mの駆動電流I1の値K1を示す信号がリアルタイムでPLC72から送信される。すると、トルク連動制御部78では、この信号に基づいて、第2モータ41Mへ供給すべき駆動電流I2の値を逐次演算して、同駆動電流I2を第2モータ41Mへ供給して駆動する。
【0040】
ここで、この第2モータ41Mへ供給すべき駆動電流I2の値は、次のようにして算出される。まず、第1モータ31Mの駆動電流I1の値K1を電流センサ79で逐次計測する。そして、計測された駆動電流I1の値K1に定数Aを乗じる。つまり下式1によって求める。
供給すべき駆動電流I2の値=A×K1 …(1)
なお、定数Aは、カッターロール31及びアンビルロール41の慣性モーメントや軸受け35,45の摩擦抵抗、定常運転時に想定される半製品1の搬送速度の加減速パターン、カッターロール31とアンビルロール41との圧接力などの諸条件に応じて決められる固定値である。
【0041】
例えば、カッターロール31及びアンビルロール41との間で、慣性モーメントや軸受け35,45の摩擦抵抗が互いに概ね等しく、モータ31M,41Mが同仕様の場合には、この定数Aは、0よりも大きく1未満の範囲から選択される。より詳しくは、この定数Aは、0よりも大きく0.3未満の値に設定され、又は、場合によっては、0.3以上0.5未満の値に設定され、更に、場合よっては、0.5以上1未満の値に設定される。なお、これら3つの範囲の何れから定数Aの値を選択するかは、加減速パターンや、上記圧接力の大きさに応じて決められる。例えば、加減速パターンが比較的緩やかで、且つ圧接力の調整によってベアラ部33の静止摩擦力を大きく確保できる場合には、一つ目の範囲から選択され、他方、加減速パターンが比較的急激で、且つ圧接力の調整によってベアラ部33の静止摩擦力を大きく確保できない場合には、三つ目の範囲から選択され、これらの中間の条件の場合には、二つ目の範囲から選択される。
【0042】
但し、実験的手法により試行錯誤的に求めても良い。すなわち、定数Aを所定値に設定し、実際の定常運転時の加減速パターンや圧接力でカッター装置21を運転し、当該運転後に、ベアラ部33の表面状態、及びベアラ部33と当接するアンビルロール41の部分の表面状態を見て、これらの間で相対滑りが生じているか否かをチェックする。そして、この作業を、定数Aの値を複数水準で振りながら繰り返し行うことにより、相対滑りが生じない条件、つまりベアラ部33とアンビルロール41との圧接状態が静止摩擦状態を概ね維持するような条件を探し出しても良い。なお、かかる条件が見出し難い場合には、更に圧接力を複数水準で振っても良い。つまり、圧接力を高めれば、ベアラ部33の静止摩擦力は大きくなるので、定常運転時において、ベアラ部33が静止摩擦状態を維持するような条件を見つけ易くなる。
【0043】
そして、以上のようにして定数Aを設定すれば、前述したように、定常運転時のアンビルロール41の回転は、カッターロール31の駆動回転をマスターとするスレーブの地位になる。つまり、基本的には、アンビルロール41は、ベアラ部33を介してカッターロール31から回転トルクが付与されてカッターロール31に追従して回転する従動ロールとなり、よって、あくまで第2モータ41Mは、カッターロール31の回転にアンビルロール41が追従するように補助すべく、補助トルクをアンビルロール41に付与するものとなる。よって、この補助トルクの付与に基づいて、アンビルロール41は高い追従性でもってカッターロール31の回転に追従することができる。その結果、カッターロール31とアンビルロール41とは、ベアラ部33等の互いの当接部位において概ね同速で回転し、これにより、互いの相対滑りを抑制できて、当該相対滑りに起因した摩耗を有効に低減可能となる。
【0044】
また、カッターロール31の回転が加減速を伴うような場合であっても、上式1を見てわかるように、第2モータ41Mの駆動トルクも第1モータ31Mの駆動トルクの増減に連動して増減するので、アンビルロール41は、カッターロール31の回転に速やかに追従可能となる。
【0045】
例えば、図5に、第1モータ31Mと第2モータ41Mの駆動電流Iのチャートを示すが、加速時には第1モータ31Mの駆動電流I1と同様に第2モータ41Mの駆動電流I2も正値となるが、減速時には、第1モータ31Mの駆動電流I1に連動して第2モータ41Mの駆動電流I2も負値となる。よって、アンビルロール41は、定速時だけでなく、加速時や減速時にあっても、カッターロール31の回転に速やかに追従する。
【0046】
図6は、カッター装置21の起動時から定常運転時までの制御フロー図である。
先ず、カッター装置21の起動前には、図7A及び図7Bに示すようにカッターロール31及びアンビルロール41の回転は停止している。また、アンビルロール41は下降限にあり、これにより、アンビルロール41の外周面41aと、カッターロール31のカッター刃32やベアラ部33との間には、間隙Gが形成されている。更には、この間隙Gには、半製品1としての連続シート状部材1がMD方向に沿って通されている。
【0047】
次に、作業者が、製造ラインの操作盤から運転ボタンを押下すると、搬送ローラー93を制御する不図示の本機側コントローラは、搬送ローラー93の作動を開始し、これにより所定の搬送速度で連続シート状部材1は搬送される。また、本機側コントローラからはカッター装置21のPLC72へと運転指令信号が送信される(S10)。すると、これを受信したPLC72は、位置制御によってカッターロール31及びアンビルロール41の駆動回転を開始する(S20)。
【0048】
詳しく説明すると、先ず、PLC72は、搬送ローラー93のエンコーダ(不図示)から同期信号を受信する。この同期信号も、前述のエンコーダ37,47と同様、予め定められた一連の数値(例えば0から8191までの8192個のデジタル値)を有する信号であり、当該同期信号にあっては、半製品1が製品ピッチPだけ搬送される間に、0から8191までのデジタル値が、その搬送量に比例して出力される。
【0049】
次に、PLC72は、受信した同期信号に基づいて、カッターロール31及びアンビルロール41の回転角度の指令値θa,φaの信号を生成し、生成された各信号を、それぞれ、第1モータ制御部74及び第2モータ制御部76に出力する。すると、第1及び第2モータ制御部74,76は、それぞれ、受信した各指令値θa,φaの信号に基づいて、第1モータ31M及び第2モータ41Mを位置制御によって制御し、これにより、カッターロール31及びアンビルロール41はそれぞれ駆動回転する。
【0050】
ここで、各ロール31,41は、それぞれ、同期信号に基づいて生成された回転角度の指令値θa,φaの信号に基づいて位置制御されているので、所定時間の経過後には、これらカッターロール31及びアンビルロール41のどちらも半製品1の搬送速度と略等速になって回転する。すなわち、カッターロール31の周速とアンビルロール41の周速との偏差は、これらロール31,41同士が互いに当接しても問題無い範囲に入っている。
【0051】
よって、PLC72は、これらロール31,41の駆動回転の開始から所定時間の経過後に、これらロール31,41同士を圧接すべく、油圧シリンダー53,53を作動させる(S30,S40)。すなわち、油圧シリンダー53,53の油圧値をゼロから所定レベルまで上げて、図7A及び図7Bの状態から図3A及び図3Bの状態へとアンビルロール41を上昇させる。これにより、アンビルロール41は所定の圧接力でカッターロール31に圧接される。
【0052】
そして、この圧接したことを、油圧値の変化や、油圧シリンダー53の作動開始からの経過時間等に基づいてPLC72が検知したら、PLC72は、アンビルロール41の制御を司る第2モータ制御部76を、位置制御からトルク連動制御へと切り替える(S50,S60)。例えば、PLC72は、回転角度の指令値φaの信号に代えて、第1モータ31Mの駆動電流I1の計測値K1の信号を第2モータ制御部76に送信する。これにより、第2モータ制御部76内では、作動すべき制御部が、位置制御部77からトルク連動制御部78へと切り替えられる。そして、以降、アンビルロール41は、トルク連動制御に基づいて第2モータ41Mから補助トルクが付与される。これにより、カッター装置21は定常運転状態となる。つまり、アンビルロール41は、カッターロール31のベアラ部33から静止摩擦力を介して回転トルクを付与されながら、第2モータ41Mからも補助トルクを付与され、これにより、アンビルロール41はカッターロール31に追従して回転する。
【0053】
なお、上述の例では、カッターロール31及びアンビルロール41の回転開始後に、これらロール31,41同士を圧接したが、この順番は逆でも良い。すなわち、カッターロール31及びアンビルロール41の回転が停止した状態で、先ず油圧シリンダー53の作動によりアンビルロール41を上昇させてカッターロール31に圧接し、しかる後に、位置制御によって、カッターロール31及びアンビルロール41の回転を開始しても良い。ちなみに、この回転開始後に、アンビルロール41の方は、位置制御からトルク連動制御へと切り替えられることになる。
【0054】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形が可能である。
【0055】
上述の実施形態では、第1モータ制御部74及び第2モータ制御部76は、位置制御を行っていたが、位置制御に代えて速度制御を行うようにしても良い。すなわち、図8に示すように、PLC72から各制御部74,76へと、各制御信号S1,S2として角速度(回転速度)の指令値ωaの信号が送信され、この角速度の指令値ωaと、実際の角速度として各エンコーダ37,47から出力される角速度の実績値ωrとの偏差Δωが小さくなるように、対応する各モータ31M,41Mに駆動電流I1,I2を出力するようにしても良い。
【0056】
図8を参照して詳しく説明する。先ず、第2モータ制御部76は、位置制御部77の代わりに速度制御部77aを有する。また、第1モータ制御部74及び前記速度制御部77aのどちらも、速度比較器83と、駆動電流演算器84と、を有する。そして、速度比較器83では、この角速度の指令値ωaを、エンコーダ37(47)から送られる角速度の実績値ωrと比較し、両者の偏差Δω(角速度偏差Δω)を算出し、この角速度偏差Δωを駆動電流演算器84へと送信する。すると、駆動電流演算器84では、この角速度偏差Δωに基づいて所定の演算を行い、この角速度偏差Δωが小さくなるような駆動電流I1(I2)の値を求め、この求められた駆動電流I1(I2)を、担当するモータ31M(41M)へ供給して駆動する。
【0057】
前述の実施形態では、ベアラ部33をカッターロール31に一体に設けたが、カッターロール31からアンビルロール41へと回転トルクを伝達できれは何等これに限るものではなく、つまり、ベアラ部33を、アンビルロール41の方に一体に設けても良い。
【0058】
前述の実施形態では、第1及び第2モータ31M,41Mの一例として直流(DC)モータを示したが、電動モータであればその種類は何等これに限るものではなく、交流(AC)モータでも良い。
【0059】
前述の実施形態では、吸収性物品の一例として、着用対象に装着されてその排泄液を吸収する使い捨ておむつを例示したが、尿や経血等の排泄液を吸収するものであれば何等これに限るものではなく、例えば生理用ナプキンやペットの排泄液を吸収するペットシート等でも良い。
【0060】
前述の実施形態では、トルク連動制御として、第1モータ31Mの駆動電流I1の値K1に第2モータ41Mの駆動電流I2の値を比例させて変化していたが、何等これに限るものではない。例えば、駆動電流I2を、駆動電流I1の値K1を変数とする適宜な関数f(K1)で定義し、当該関数f(K1)に基づいて駆動電流I2の値を変化しても良い。
【0061】
前述の実施形態では、カッターロール31の慣性モーメントや軸受けの摩擦抵抗が、アンビルロール41のそれと概ね等しい場合を例示したが、等しく無くても良い。但し、その場合には、カッターロール31の方がアンビルロール41よりも、慣性モーメントや摩擦抵抗が大きい方が、上述の関数f(K1)や定数Aを見出し易くなると考えられる。すなわち、アンビルロール41をカッターロール31に追従させて回転させ易くなると考えられる。
【0062】
前述の実施形態では、第1モータ31Mと第2モータ41Mとの仕様が互いに同じ場合を例に説明したが、何等これに限らず、同仕様でなくても良い。
【0063】
前述の実施形態では、トルク連動制御の一例として、第1モータ41Mの駆動電流I1の値K1に基づいて第2モータ31Mの駆動電流I2を変更することを示したが、何等これに限るものではない。例えば、トルク計によって第1モータ31Mの駆動トルクを計測し、そのトルクT1の計測値Q1に連動させて、第2モータ41Mの駆動トルクT2の値を変更するように第2モータ41Mの駆動電流I2を制御しても良い(例えば下式2を参照)。
第2モータ41Mの駆動トルクT2の値=A×Q1 … (2)
なお、この場合には、上記トルクT1の計測値Q1の信号が、第1モータ31Mの駆動トルクを示す信号に相当する。
【符号の説明】
【0064】
1 半製品(ワーク、連続シート状部材)、1h 脚周り開口部、
21 カッター装置、31 カッターロール、31a 外周面、31e 端部、
31M 第1モータ、31d 駆動回転軸、31j 軸継ぎ手、
32 カッター刃、33 ベアラ部(環状凸部、大径部)、
37 エンコーダ、41 アンビルロール、41a 外周面、41e 端部、
41M 第2モータ、41d 駆動回転軸、41j 軸継ぎ手、
47 エンコーダ、51 ハウジング(枠体)、53 油圧シリンダー、
71 コントローラ、74 第1モータ制御部、76 第2モータ制御部、
77 位置制御部、77a 速度制御部、78 トルク連動制御部、
79 電流センサ、81 位置比較器、82 速度指令演算器、
83 速度比較器、84 駆動電流演算器、93 搬送ローラー、
G 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される吸収性物品のワークを切るカッター装置であって、
前記ワークを切るカッター刃が外周面から突出して設けられたカッターロールと、
前記カッターロールの外周面に対向して配された外周面によって前記カッター刃を受けるアンビルロールと、
前記カッターロール及び前記アンビルロールのうちの一方のロールの外周面に設けられ、他方のロールに当接する環状凸部と、
前記カッターロールを駆動する第1モータと、
前記アンビルロールを駆動する第2モータと、
前記第1モータを位置制御又は速度制御によって制御する第1モータ制御部と、
前記第2モータを制御する第2モータ制御部と、を備え、
前記アンビルロールは、前記環状凸部を介して前記カッターロールからトルクが伝達されて前記カッターロールに追従して回転し、
前記第2モータ制御部の制御に基づいて、前記カッターロールに追従した回転を補助するように、前記第2モータから前記アンビルロールへと補助トルクが付与されることを特徴とするカッター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカッター装置であって、
前記第2モータ制御部は、前記第1モータの駆動トルクを示す信号に基づいて、前記第2モータを制御することを特徴とするカッター装置。
【請求項3】
請求項2に記載のカッター装置であって、
前記第2モータの前記補助トルクは、前記第1モータの前記駆動トルクを示す信号に連動して増減変更されることを特徴とするカッター装置。
【請求項4】
請求項3に記載のカッター装置であって、
前記第1モータは、供給される駆動電流の値に応じた値のトルクを前記駆動トルクとして発生し、
前記第2モータは、供給される駆動電流の値に応じた値のトルクを前記補助トルクとして発生し、
前記駆動トルクを示す信号は、前記第1モータの前記駆動電流であり、
前記第2モータに供給される駆動電流は、前記第1モータの前記駆動電流の値に比例して変更されることを特徴とするカッター装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のカッター装置であって、
前記第2モータ制御部は、前記第2モータの駆動トルクを、前記第1モータの駆動トルクと連動させて変更することを特徴とするカッター装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載のカッター装置であって、
前記カッターロール及び前記アンビルロールの回転開始時においては、前記第1モータ制御部及び前記第2モータ制御部は、それぞれ、前記第1モータ及び前記第2モータを、位置制御又は速度制御に基づいて制御することにより、前記カッターロールの周速と前記アンビルロールの周速との偏差が所定範囲に入るように、前記カッターロール及び前記アンビルロールを駆動回転し、
この回転開始時と同時又は相前後して、前記一方のロールの前記環状凸部を前記他方のロールの外周面への圧接した後に、
前記第2モータ制御部は、前記第2モータの制御を前記位置制御からトルク連動制御へと切り替え、
前記トルク連動制御では、前記第2モータ制御部は、前記第1モータの駆動トルクを示す信号に基づいて前記第2モータの駆動トルクを制御することを特徴とするカッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−173192(P2011−173192A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37846(P2010−37846)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】