説明

カッタ装置およびプリンタ

【課題】安価なモータを使用して用紙を安定して切断すること。
【解決手段】実施の形態のカッタ装置は、固定刃と、可動刃と、駆動機構と、検知手段と、制御手段と、を備える。可動刃は、移動することにより、前記固定刃との間に用紙を挟み込んで前記用紙を切断する。駆動機構は、前記可動刃に駆動トルクを与えて前記可動刃を移動させる。検知手段は、前記駆動機構による前記可動刃の移動過程において前記用紙の切断の異常を検知する。制御手段は、前記検知手段により用紙の切断の異常が検知された場合には、前記駆動機構が前記可動刃に与える駆動トルクを大きくさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、カッタ装置およびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印字された用紙を横断して配置された固定刃に沿って可動刃を移動させることにより用紙を切断するカッタ装置では、ステッピングモータなどを動力源として用いて可動刃を移動させ、かつ段階的にステッピングモータの回転速度の制御を行なっている(特許文献1参照)。具体的には、カッタ装置は、ステッピングモータが停止している停止状態から所定の回転速度まで加速させる加速領域、所定の回転速度でステッピングモータを回転駆動させる定速領域、および所定の回転速度から停止状態までステッピングモータを減速させる減速領域に分けて、ステッピングモータの回転速度を制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のカッタ装置では、用紙を切断するための負荷がステッピングモータのトルクを上回った場合、ステッピングモータが指示した通りに回らない脱調が発生し、用紙の切断作業を継続することができなくなるため、用紙を切断する際に発生し得る最大の負荷を上回るトルクを有するモータを使用している。
【0004】
しかしながら、用紙を切断する際の負荷は変動が大きいため、トルクが大きいモータを採用したとしても、用紙を切断する際に発生する負荷がモータのトルクを上回ってしまう場合もある。また、通常の用紙の切断作業においては、トルクが大きいモータの性能は必要以上の過剰な性能となり、モータおよび当該モータを駆動する駆動回路のコスト面、および必要な電力の面で無駄が生じる、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施の形態のカッタ装置は、固定刃と、可動刃と、駆動機構と、検知手段と、制御手段と、を備える。可動刃は、移動することにより、前記固定刃との間に用紙を挟み込んで前記用紙を切断する。駆動機構は、前記可動刃に駆動トルクを与えて前記可動刃を移動させる。検知手段は、前記駆動機構による前記可動刃の移動過程において前記用紙の切断の異常を検知する。制御手段は、前記検知手段により用紙の切断の異常が検知された場合には、前記駆動機構が前記可動刃に与える駆動トルクを大きくさせる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本実施の形態にかかるプリンタの構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、カッタ装置の構成を示す正面図である。
【図3】図3は、カッタ装置の構成を示す側面図である。
【図4】図4は、ガイド板を取り付けた状態のカッタ装置の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、キャリッジの構成を示す断面図である。
【図6】図6は、本実施の形態にかかるプリンタが備える各部の電気的接続を示すブロック図である。
【図7】図7は、本実施の形態にかかるプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、ステッピングモータの回転速度と駆動トルクとの関係を示す図である。
【図9】図9は、ステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。
【図10】図10は、レシート用紙の切断の異常が検知される前までのステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。
【図11】図11は、レシート用紙の切断の異常が検知された場合のステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。
【図12】図12は、レシート用紙の切断の異常が検知された場合のステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態にかかるプリンタの構成を示す斜視図である。図2は、カッタ装置の構成を示す正面図である。図3は、カッタ装置の構成を示す側面図である。図4は、ガイド板を取り付けた状態のカッタ装置の構成を示す斜視図である。図5は、キャリッジの構成を示す断面図である。
【0008】
図1に示すように、本実施の形態のプリンタ1は、印字部P、および印字部Pよりもレシート用紙(用紙)Rの搬送方向下流側に配設されたカッタ装置Sを備えている。なお、印字部Pは、用紙Rの搬送方向に対して交差する方向に設けられた軸2に沿って移動するキャリッジ3に軸支されている。
【0009】
カッタ装置Sは、図1〜3に示すように、固定刃11と、レシート用紙Rの搬送方向に対して略直交する方向に移動することにより、固定刃11との間にレシート用紙Rを挟み込んで切断する可動刃12を備えている。
【0010】
ここで、固定刃11は、プリンタ1で使用可能なレシート用紙Rの中で最大の紙幅を有するレシート用紙Rの全幅以上の長さを有する平板状の刃であり、レシート用紙Rを横断して配置されている。本実施の形態では、固定刃11は、図4に示すように、固定刃11に対して平行に配設されたガイド板22,23にねじ止めされて、当該ガイド板22,23と一体化されている。
【0011】
可動刃12は、固定刃11の長手方向に移動するキャリッジ13に対して回転自在に軸支された円盤状の丸刃であり、キャリッジ13の移動により固定刃11の長手方向に移動するとともに、固定刃11上を摩擦摺動して回転することにより、固定刃11との間にレシート用紙Rを挟み込んでレシート用紙Rを切断する。
【0012】
なお、本実施の形態では、固定刃11上を摩擦摺動して回転することにより、固定刃11との間にレシート用紙Rを挟み込んでレシート用紙Rを切断する可動刃12を用いたが、移動することにより、固定刃11と可動刃12との間に用紙を挟み込んで用紙を切断するものであれば、これに限定するものではない。例えば、可動刃12は、丸刃のように回転せず、単に、固定刃11の長手方向に移動して固定刃との間に用紙を挟み込んで用紙を切断するものであっても良い。または、可動刃12は、レシート用紙Rの印字面に対して略垂直方向に移動してレシート用紙Rを挟み込んで切断するものでもあっても良い。
【0013】
キャリッジ13は、可動刃12を搭載し、固定刃11の長手方向に可動刃12を移動させるものであり、図5に示すように、キャリッジフレーム24、軸25、バネ26、回転部材27などを備えている。
【0014】
キャリッジフレーム24は、軸25、バネ26、回転部材27などを収納する。軸25は、キャリッジ13に対して可動刃12を回転自在に軸支する。また、キャリッジフレーム24は、可動刃12によるレシート用紙Rの切断が完了するホームポジションHP(目的位置)までキャリッジ13が移動したか否かを検知するためものであり、キャリッジフレーム24の上面に対して垂直に設けられた板部24aを有している。
【0015】
バネ26は、軸25に軸支された可動刃12をキャリッジフレーム24に対して付勢して、キャリッジフレーム24内における可動刃12の動きを制限する。
【0016】
回転部材27は、可動刃12のガイド板23側の一面とガイド板22との間に配設されてキャリッジフレーム24内における可動刃12の倒れを防止する。また、回転部材27は、キャリッジ13の移動に伴いガイド板23上を摩擦摺動することにより回転して、レシート用紙Rを切断する方向に可動刃12を回転させる。可動刃12を回転させながらレシート用紙Rを切断することにより、可動刃12の外周を平均的に使用することができるので、可動刃12の寿命を延ばすことができる。
【0017】
図1〜3に戻り、キャリッジ13は、プーリ14〜18とモータ歯車19との間に掛け渡されている環状の無端ベルト20に連結されている。無端ベルト20の内周面側には、歯型(図示しない)が全周に渡って形成されている。無端ベルト20の歯型(図示しない)が、ステッピングモータ21からの駆動トルクを受けて回転するモータ歯車19の歯と噛み合って無端ベルト20が回転することにより、プーリ14〜18が従動回転して、無端ベルト20に連結されているキャリッジ13を移動させる。
【0018】
つまり、キャリッジ13、プーリ14〜18、モータ歯車19、無端ベルト20、およびステッピングモータ21は、ステッピングモータ21からの駆動トルクを固定刃11に与えて可動刃12を移動させる駆動機構として機能する。
【0019】
ステッピングモータ21は、制御部60(図6参照)からのパルスの供給を受けて回転駆動して、モータ歯車19に対して駆動トルクを与えるものである。より具体的には、ステッピングモータ21は、回転駆動する回転速度を遅くすることにより大きな駆動トルクが得られるモータである。なお、本実施の形態では、ステッピングモータ21を用いたが、回転駆動する回転速度を遅くすることにより大きな駆動トルクが得られるモータであれば、これに限定するものではない。例えば、電圧を2段階に変更可能で、低い方の電圧を印加して回転速度を遅くすることにより大きな駆動トルクを得られるDCモータを用いることも可能である。
【0020】
キャリッジ13のホームポジションHPには、可動刃12によるレシート用紙Rの切断が完了してホームポジションHPに到達したキャリッジ13の板部24aを検知するためのセンサ29,30が設けられている。
【0021】
センサ29,30は、光を発光する発光素子29a,30aおよび発光素子29a,30aから発光された光を受光する受光素子29b,30bを有する透過型センサである。発光素子29a,30aおよび受光素子29b,30bとは、キャリッジ13が有する板部24aの移動経路を挟んで配置されている。
【0022】
なお、センサ29,30の上部には、爪部29c,30cが設けられている。そして、爪部29c,30cが、プリンタ1の図示しない筐体に設けられた係合孔に挿入されて、当該係合孔の周辺部と係合することにより、センサ29,30がプリンタ1の図示しない筐体に係合される。
【0023】
図6は、本実施の形態にかかるプリンタが備える各部の電気的接続を示すブロック図である。プリンタ1は、制御部60を備えている。制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63、CPU61側に情報を取り込む入力ポートとCPU61側から外部(プリンタ各部)へ情報を送り出す出力ポートとからなるI/Oポート64、及び、上位装置からの印字データ及びカット指示データの受信の他必要なデータのやり取りをするための通信インターフェース65を有し、これらがバスライン68を介して接続されて構成されている。なお、I/Oポート64には、センサ29,30などの各種センサ67が接続されている。
【0024】
ROM62は、各種プログラムや各種データを予め記憶する。RAM63は、CPU101が各種プログラムを実行する際のワークエリア等として機能する。また、RAM63は、バッテリによりバックアップされており、印字バッファとキャラクタジェネレータとを備えている。また、CPU61には、印字部P、カッタ装置S、および各種モータ66(ステッピングモータ21など)を制御するモータコントローラ69等がバスライン68を介して接続されている。これら各部をCPU61はROM62に記憶された各種プログラムを実行することにより制御する。尚、センサ29,30によるキャリッジ13の板部24aの検知結果がCPU61に通知されて、CPU61は以下に説明するカッタ装置Sの制御処理を行う。
【0025】
図7は、本実施の形態にかかるプリンタの機能構成を示すブロック図である。本実施の形態にかかるプリンタ1のCPU61は、ROM62に記憶された各種プログラムを実行することにより、検知部701および速度制御部702を実現する。
【0026】
検知部701は、可動刃12の移動過程においてレシート用紙Rの切断の異常を検知するものである。本実施の形態では、検知部701は、後述する速度制御部702によりホームポジションHPに到達するために必要なパルス数をステッピングモータ21に印加したにも関わらず、センサ29(またはセンサ30)によりキャリッジ13の板部24aが検知されなかった場合に、可動刃12の移動過程においてレシート用紙Rの切断の異常を検知する。
【0027】
速度制御部702は、レシート用紙Rの切断を行う際に、ホームポジションHPに到達するために必要なパルス数をステッピングモータ21に印加して、ステッピングモータ21の回転駆動を制御する。本実施の形態では、速度制御部702は、ステッピングモータ21にパルスを印加する周期を変更することにより、ステッピングモータ21の回転速度を段階的に制御している。
【0028】
ここで、図8を用いて、ステッピングモータ21の回転速度と駆動トルクとの関係について説明する。図8は、ステッピングモータの回転速度と駆動トルクとの関係を示す図である。図8に示すように、ステッピングモータ21は、回転速度が上昇するに従って駆動トルクが減少し、回転速度が減少するに従って駆動トルクが上昇することがわかる。例えば、ステッピングモータ21は、回転速度Vaの際の駆動トルクTaよりも、回転速度Vaよりも遅い回転速度Vbの際の駆動トルクTbの方が大きい。ステッピングモータ21からの駆動トルクを受けて移動する可動刃12にかかる負荷が、ステッピングモータ21の駆動トルクを上回った場合に、ステッピングモータ21が印加されたパルスに同期して回転することができなくなる現象(所謂「脱調」)が発生して、可動刃12が移動する距離が短くなったり、ステッピングモータ21が停止してしまったりする。
【0029】
次に、図9を用いて、センサ29が設けられたホームポジションHPからセンサ30が設けられたホームポジションHPまでのステッピングモータ21の回転速度の制御例について説明する。図9は、ステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。速度制御部702は、キャリッジ13がセンサ29からセンサ30まで移動するまで区間を、センサ29が設けられたホームポジションHP(以下、ポイントCとする)からポイントDまでの区間、ポイントDからポイントEまでの区間、およびポイントEからセンサ30が設けられたホームポジションHP(以下、ポイントF)までの区間に分けて、ステッピングモータ21の回転速度を制御する。
【0030】
具体的には、速度制御部702は、ポイントCからポイントDまでの区間を、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数を徐々に短くして、ステッピングモータ21が停止している停止状態から回転速度Vaまで上げる加速領域とする。また、速度制御部702は、ポイントDからポイントEまでの区間を、ステッピングモータ21に等間隔でパルスを印加して、ステッピングモータ21を一定の速度(回転速度Va)で回転駆動させる定速領域とする。また、速度制御部702は、ポイントEからFまでの区間を、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数を徐々に長くして、ステッピングモータ21を回転速度Vaから停止状態にする減速領域とする。
【0031】
定速領域は、ステッピングモータ21が最も高速回転する区間であり、ステッピングモータ21の駆動トルクが低トルク(駆動トルクTa)となる(図8参照)。そのため、可動刃21によりレシート用紙Rを切断する際の負荷が駆動トルクTaを超えた場合に、ステッピングモータ21が脱調して、カッタ装置Sが機能しなくなる。
【0032】
カッタ装置Sは、設計に当って、使用状態における用紙切断の際の負荷を求め、十分にマージンを確保したモータの選定と駆動条件の設定を行うことが定石となっている。また、カッタ装置Sによるレシート用紙Rの切断速度は、プリンタ1における印刷速度に影響を与えるため、プリンタ1の商品価値を高める上で、より高速な切断速度を実現するカッタ装置Sが求められている。そこで、従来のカッタ装置においては、高トルクおよび高切断速度の両立を図るために、高トルクかつ高回転速度のモータを用いていたが、このようなモータは高価であるため、このカッタ装置を搭載したプリンタが高価なものになってしまっていた。
【0033】
ところで、カッタ装置Sがレシート用紙Rの切断の途中で機能しなくなってエラーとなる原因は、用紙のミシン目や繊維のムラなどによる用紙側の切断負荷のピークと、カッタの刃の傷やプーリやギアの偏心などによる駆動系の負荷のピークとが重なった場合が殆どであることがわかっている。すなわち、カッタ装置Sをエラーから復帰させるためには、高トルクが必要であるが、通常の用紙の切断時においては低トルクでも十分である。
【0034】
また、図8に示すように、ステッピングモータ21は、当該ステッピングモータ21の回転速度を制御することにより、低トルク(駆動トルクTa)と高トルク(駆動トルクTb)とを選択的に使用できることが分かる。一般に、ステッピングモータ21の回転速度は、当該ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数により制御できることが知られている。そのため、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数を制御することにより、同じモータにおいて、低トルクと高トルクの特性を選択的に使用できる。なお、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数は、マイクロプロセッサを使ってソフトウェア的または発信回路等を用いてハードウェア的に制御することができる。
【0035】
そこで、速度制御部702は、検知部701によりレシート用紙Rの切断の異常が検知されない場合には、回転速度Vaでステッピングモータ21を回転駆動させてステッピングモータ21(駆動機構)が可動刃12に与える駆動トルクを小さくし、検知部701によりレシート用紙Rの切断の異常が検知された場合には、回転速度Vbでステッピングモータ21を回転駆動させてステッピングモータ21(駆動機構)が可動刃12に与える駆動トルクを大きくする。これにより、通常のレシート用紙Rの切断動作においては、高速かつ低トルクでステッピングモータ21を駆動させてプリンタ1の印刷速度の高速化を実現し、切断の異常が検知された場合には、高トルクでステッピングモータ21を駆動させることができるので、安価なモータを使用してレシート用紙Rを安定して切断することができる。
【0036】
本実施の形態では、速度制御部702は、検知部701によりレシート用紙Rの切断の異常が検知された場合、所定のパルス数だけステッピングモータ21を回転速度Vbで回転駆動させて、ステッピングモータ21(駆動機構)が可動刃12に与える駆動トルクを所定期間大きくする。そして、速度制御部702は、回転速度Vbでステッピングモータ21を回転駆動させる間に、センサ29,30によりキャリッジ13の板部24aが検知された場合には、その時点でステッピングモータ21へのパルスの印加を停止する。一方、速度制御部702は、所定のパルス数だけステッピングモータ21を回転速度Vbで回転駆動させる間に、センサ29,30によりキャリッジ13の板部24aが検知されなかった場合には、エラーが発生したものとしてレシート用紙Rの切断動作を中止する。これにより、高トルクでステッピングモータ21を回転駆動させても脱調が発生した場合に、直ちにレシート用紙Rの切断動作を中止することができるので、エラーに対して迅速に対応することができ、かつ固定刃11や可動刃12へのダメージを防止することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、レシート用紙Rの切断の異常が検知された場合、ステッピングモータ21が可動刃12に与える駆動トルクを所定期間大きくさせることとしたが、これに限定するものではなく、センサ29,30によりキャリッジ13の板部24aが検知されるまで(つまり、キャリッジ13がホームポジションHPに到達するまで)、ステッピングモータ21が可動刃12に与える駆動トルクを大きくさせても良い。これにより、時間がかかっても、レシート用紙Rの切断を完了することができる。
【0038】
図10および図11を用いて、レシート用紙Rの切断の異常が検知された場合におけるステッピングモータ21の回転速度の制御例について説明する。図10は、レシート用紙の切断の異常が検知される前までのステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。図11は、レシート用紙の切断の異常が検知された場合のステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。
【0039】
レシート用紙Rの切断を行う場合、速度制御部702は、まず、キャリッジ13がポイントCからポイントDまでに移動する区間において、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数を徐々に短くして、ステッピングモータ21の回転速度を回転速度Vaまで上げる。キャリッジ13がポイントDに到達すると、速度制御部702は、キャリッジ13がポイントEに達するまで、ステッピングモータ21に等間隔でパルスを印加して、ステッピングモータ21の回転速度を回転速度Vaに維持する。ここで、検知部701によりレシート用紙Rの切断の異常が検知されたキャリッジ13がポイントDとポイントEとの間のポイントGにおいて停止してしまった場合、速度制御部702は、一旦、ステッピングモータ21へのパルスの印加を停止する(図10参照)。
【0040】
ステッピングモータ21へのパルスの印加が停止すると、速度制御部702は、図11に示すように、まず、ポイントGからポイントHまでの区間において、ステッピングモータ21へのパルスの印加を再開するとともに、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数を徐々に短くして、ステッピングモータ21を停止状態から回転速度Vbまで上げる。そして、キャリッジ13がポイントHに到達すると、速度制御部702は、キャリッジ13がポイントIに到達するまで、ステッピングモータ21に等間隔でパルスを印加して、ステッピングモータ21の回転速度を回転速度Vbに維持する。そして、キャリッジ13がポイントIに到達すると、速度制御部702は、キャリッジ13がポイントFに到達するまでの間、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数を徐々に長くして、ステッピングモータ21の回転速度を回転速度Vbから停止状態にする。
【0041】
このように本実施の形態にかかるプリンタ1によれば、検知部701によりレシート用紙Rの切断の異常が検知された場合には、回転速度Vbでステッピングモータ21を回転駆動させてステッピングモータ21が可動刃12に与える駆動トルクを大きくすることにより、通常のレシート用紙Rの切断動作においては、高速かつ低トルクでステッピングモータ21を駆動させてプリンタ1の印刷速度の高速化を実現し、切断の異常が検知された場合には、高トルクでステッピングモータ21を駆動させることができるので、安価なモータを使用してレシート用紙Rを安定して切断することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、レシート用紙Rの切断の異常が検知された場合には、ホームポジションHPとは反対方向に可動刃12を移動させた後、回転速度Vbでステッピングモータ21を回転駆動させてステッピングモータ21が可動刃12に与える駆動トルクを大きくさせかつホームポジションHPの方向に可動刃12を移動させる例である。なお、以下の説明では、第1の実施の形態にかかるプリンタ1と同様の箇所については説明を省略し、第1の実施の形態にかかるプリンタ1と異なる箇所についてのみ説明する。
【0043】
速度制御部702は、検知部701によりレシート用紙Rの切断の異常が検知された場合には、ステッピングモータ21の回転駆動を制御して、ホームポジションHPと反対方向に可動刃12を移動させた後、回転速度Vbでステッピングモータ21を回転駆動させてステッピングモータ21が可動刃12に与える駆動トルクを大きくさせかつホームポジションHPの方向に可動刃12を移動させる。
【0044】
ここで、図12を用いて、レシート用紙Rの切断の異常が検知された場合にステッピングモータ21の回転速度の制御例について説明する。図12は、レシート用紙の切断の異常が検知された場合のステッピングモータの回転速度の制御例を示す図である。なお、レシート用紙Rの切断の異常が検知されるまでのステッピングモータ21の回転速度の制御は、図10に示す制御と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0045】
ステッピングモータ21へのパルスの印加が停止すると、速度制御部702は、まず、ポイントGからポイントJまでの区間において、ステッピングモータ21へ負のパルスを印加するとともに、ステッピングモータ21に印加する負のパルスの周波数を徐々に短くして、ステッピングモータ21を停止状態から所定の回転速度まで上げる。なお、本実施の形態では、可動刃12をホームポジションHPに向けて移動させる場合に速度制御部702からステッピングモータ21に印加するパルスを正のパルスとする。
【0046】
そして、キャリッジ13がポイントJに到達すると、速度制御部702は、キャリッジ13がポイントKに到達するまで、ステッピング21に等間隔で負のパルスを印加して、ステッピングモータ21の回転速度を所定の回転速度に維持する。そして、キャリッジ13がポイントKに到達すると、速度制御部702は、キャリッジ13がポイントLに到達するまでの間、ステッピングモータ21に印加する負のパルスの周波数を徐々に長くして、ステッピングモータ21の回転速度を所定の回転速度から停止状態にする。
【0047】
キャリッジ13がポイントLに到達してステッピングモータ21への負のパルスの印加が停止すると、速度制御部702は、まず、ポイントLからポイントMまでの区間において、ステッピングモータ21への正のパルスの印加を再開するとともに、ステッピングモータ21に印加するパルスの周波数を徐々に短くして、ステッピングモータ21を停止状態から回転速度Vbまで上げる。そして、キャリッジ13がポイントMに到達すると、速度制御部702は、キャリッジ13がポイントIに到達するまで、ステッピングモータ21に等間隔で正のパルスを印加して、ステッピングモータ21の回転速度を回転速度Vbに維持する。そして、キャリッジ13がポイントIに到達すると、速度制御部702は、キャリッジ13がポイントFに到達するまでの間、ステッピングモータ21に印加する正のパルスの周波数を徐々に長くして、ステッピングモータ21の回転速度を回転速度Vbから停止状態にする。
【0048】
このように本実施の形態にかかるプリンタ1によれば、検知部701によりレシート用紙Rの切断の異常が検知された場合には、ステッピングモータ21の回転駆動を制御して、ホームポジションHPと反対方向に可動刃12を移動させた後、回転速度Vbでステッピングモータ21を回転駆動させてステッピングモータ21が可動刃12に与える駆動トルクを大きくさせかつホームポジションHPの方向に可動刃12を移動させることにより、レシート用紙Rの切断の異常が検知された場合に、固定刃11と可動刃12との間におけるレシート用紙Rの挟み込みを一旦解除し、かつレシート用紙Rの切断を再開する際に可動刃12に勢いを付けた状態で、レシート用紙Rの切断を再開することができるので、安価なモータを使用してレシート用紙Rを安定して切断することができる。
【0049】
なお、本実施の形態のプリンタ1で実行されるプログラムは、ROM62に予め組み込まれて提供されるが、これに限定するものではなく、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0050】
さらに、本実施の形態のプリンタ1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態のプリンタ1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0051】
以上に説明したとおり、第1の実施の形態および第2の実施の形態のプリンタ1によれば、安価なモータを使用して用紙を安定して切断することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 プリンタ
11 固定刃
12 可動刃
13 キャリッジ
14〜18 プーリ
19 モータ歯車
20 無端ベルト
21 ステッピングモータ
701 検知部
702 速度制御部
R レシート用紙
S カッタ装置
HP ホームポジション
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開平11−226894号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定刃と、
移動することにより、前記固定刃との間に用紙を挟み込んで前記用紙を切断する可動刃と、
前記可動刃に駆動トルクを与えて前記可動刃を移動させる駆動機構と、
前記駆動機構による前記可動刃の移動過程において前記用紙の切断の異常を検知する検知手段と、
前記検知手段により用紙の切断の異常が検知された場合には、前記駆動機構が前記可動刃に与える駆動トルクを大きくさせる制御手段と、
を備えたことを特徴とするカッタ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知手段により用紙の切断の異常が検知された場合には、前記駆動機構が前記可動刃に与える駆動トルクを所定期間大きくさせることを特徴とする請求項1に記載のカッタ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検知手段により用紙の切断の異常が検知された場合には、前記用紙の切断が完了する目的位置に前記可動刃が達するまで、前記駆動機構が前記可動刃に与える駆動トルクを大きくさせることを特徴とする請求項1に記載のカッタ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、さらに、前記検知手段により用紙の切断の異常が検知された場合には、前記駆動機構を制御して、前記用紙の切断が完了する目的位置と反対方向に前記可動刃を移動させた後、前記駆動機構が前記可動刃に与える駆動トルクを大きくさせかつ前記目的位置の方向に前記可動刃を移動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一に記載のカッタ装置。
【請求項5】
前記可動刃は、前記固定刃上を摩擦摺動して回転する丸刃であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載のカッタ装置。
【請求項6】
固定刃と、
移動することにより、前記固定刃との間に用紙を挟み込んで前記用紙を切断する可動刃と、
前記可動刃に駆動トルクを与えて前記可動刃を移動させる駆動機構と、
前記駆動機構による前記可動刃の移動過程において前記用紙の切断の異常を検知する検知手段と、
前記検知手段により用紙の切断の異常が検知された場合には、前記駆動機構が前記可動刃に与える駆動トルクを大きくさせる制御手段と、
を備えたことを特徴とするプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−235428(P2011−235428A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111351(P2010−111351)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】