説明

カップリング構造及び電動ポンプ

【課題】カップリング本体の高さ位置を一定に保持することにより軸封装置の損傷を抑制したカップリング構造及び電動ポンプを提供する。
【解決手段】電動機10の駆動軸11と回転軸51とを連結するカップリング本体41と、第1支持部材と第2支持部材とからなり、該第1支持部材と該第2支持部材を締結させることによりカップリング本体41の外周に設けられる支持部材42と、を具備し、第1支持部材及び第2支持部材は、軸方向に貫通された貫通部を有するフランジ部44を備え、貫通部には、軸方向に亘りポンプ本体50側に突出し、ポンプ本体50上面と当接する嵌合部材47が嵌合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機と、該原動機により回転駆動する回転軸及び軸封装置を備える被駆動機と、が垂直方向を軸方向として配置される縦型回転機械のカップリング構造、及び電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電動ポンプとしては、電動機と、電動機により回転駆動する回転軸及び軸封装置を備えるポンプ本体と、が垂直方向を軸方向として配置される縦型電動ポンプがある。かかる電動ポンプでは、電動機の駆動軸と、ポンプ本体の回転軸とがカップリングにより連結されており、電動機により回転軸が駆動するようになっている。そして、ポンプ本体の回転軸の外周にはグランドパッキンやメカニカルシール等の軸封装置が設けられており、ポンプ本体から外部へ流体が漏れ出すのが防止されている(特許文献1等参照)。
【0003】
このような電動ポンプでは、電動機を点検する際などに電動機をポンプ本体から切り離す場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−29242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電動機から切り離されたカップリング及び回転軸は、自重によりポンプ本体側へ下がり、回転軸とメカニカルシールとの間、すなわち、シール面に間隙が生じてしまうことがあった。シール面に間隙が生じると、間隙に流体内の異物を噛み込んでしまったり、再び電動機を連結した際にシール面が正常に作用しなくなったりすることがあった。
【0006】
このような問題は、電動ポンプだけではなく、他の原動機と被駆動機とからなる回転機械とを垂直方向に配置した縦型回転機械においても同様に存在する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、カップリング本体の高さ位置を一定に保持して、軸封装置の性能の低下を防止するカップリング構造及び電動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、原動機と、該原動機により回転駆動する回転軸及び軸封装置を備える被駆動機とが垂直方向を軸方向として配置される縦型回転機械のカップリング構造であって、
前記原動機の駆動軸と前記回転軸とを直列に連結するカップリング本体と、
第1支持部材と第2支持部材とからなり、該第1支持部材と該第2支持部材を締結させることにより前記カップリング本体の外周に設けられる支持部材と、を具備し、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、前記軸方向に貫通された貫通部を有するフランジ部を備え、
前記貫通部には、前記軸方向に亘り前記被駆動機側に突出し、該被駆動機上面と当接する嵌合部材が嵌合されていることを特徴とするカップリング構造にある。
【0009】
かかる態様によれば、カップリング本体の高さ位置を一定に保持することができる。これにより、原動機を離脱させた際に軸封装置に間隙が生じるのを抑制し、軸封装置の性能の低下を抑制することができる。また、カップリング本体から支持部材を容易に着脱することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1支持部材及び前記第2支持部材のうち少なくとも一方は、前記フランジ部に切り欠き部を備えることを特徴とする第1の態様に記載のカップリング構造にある。かかる態様によれば、容易に原動機を離脱させることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記嵌合部材がジャッキボルトであることを特徴とする第1又は第2の態様に記載のカップリング構造にある。かかる態様によれば、容易にカップリング本体の高さを調製することができ、確実にカップリング本体の高さ位置を一定に保持することができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、電動機と、該電動機により回転駆動する回転軸及び軸封装置を備えるポンプ本体とが垂直方向を軸方向として配置される電動ポンプであって、
前記電動機の駆動軸と前記回転軸とを連結するカップリング本体と、
第1支持部材と第2支持部材とからなり、該第1支持部材と該第2支持部材を締結させることにより前記カップリング本体の外周に設けられる支持部材と、を具備し、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、前記軸方向に貫通された貫通部を有するフランジ部を備え、
前記貫通部には、前記軸方向に亘り前記ポンプ本体側に突出し、該ポンプ本体上面と当接する嵌合部材が嵌合されていることを特徴とする電動ポンプにある。
【0013】
かかる態様によれば、電動機を離脱させた際に、カップリング本体の高さ位置を一定に保持することができ、軸封装置に間隙が生じるのを抑制し、軸封装置の性能の低下を抑制することができる。これにより、軸封装置の異物の噛み込みを抑制することができ、また、流体が漏れるのを抑制することができる。また、カップリング本体から支持部材を容易に着脱することができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記軸封装置がメカニカルシールであることを特徴とする第4に記載の電動ポンプにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カップリング本体の高さ位置を一定に保持することができるので、原動機を離脱させた際に軸封装置に間隙が生じるのを抑制し、軸封装置の性能の低下を防止することができる。また、支持部材をカップリング本体から容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る電動ポンプの要部断面図である。
【図2】実施形態1に係るカップリング構造の支持部材の斜視図である。
【図3】実施形態1に係るカップリング構造の支持部材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は、実施形態1に係る電動ポンプの要部断面図である。同図に示すように、電動ポンプ100は、電動機10と、ポンプ本体50と、が垂直方向を軸方向として配置される縦型の電動ポンプであり、電動機10の駆動軸11と、ポンプ本体50の回転軸51とが、各種カップリング及び中間軸により直列に連結されている。すなわち、ポンプ本体50の回転軸51と、電動機10の駆動軸11とが、各種カップリング及び中間軸により直列に連結されている。
【0019】
ポンプ本体50は、電動機10により回転駆動する回転軸51を備えている。回転軸51の外周には、図示しないがメカニカルシールが嵌装されており、かかるメカニカルシールにより、ポンプ本体50を貫通する回転軸51から流体が漏れるのを抑制することができるようになっている。本実施形態では、かかるメカニカルシールの上方、すなわち、回転軸51のポンプカップリング40側先端部に、グランドパッキン53を備えており、グランドパッキン53を固定するためにグランド押さえ52が設けられている。
【0020】
また、駆動軸11及び回転軸51は、電動機カップリング20、中間軸30、ポンプカップリング40(本発明のカップリング構造に該当する)を介して、両軸の中心が一致するように連結されている。電動機カップリング20と中間軸30と、中間軸30とポンプカップリング40とは、それぞれボルトにより締結されている。これにより、電動機10の駆動により、駆動軸11、電動機カップリング20、中間軸30、ポンプカップリング40のカップリング本体41、及び回転軸51が回転する。
【0021】
ポンプカップリング40(本発明のカップリング構造に該当)は、駆動軸11と回転軸50とを直列に連結するカップリング本体41と、カップリング本体41の外周に設けられる支持部材42とからなる。
【0022】
ここで、本実施形態に係る支持部材42について、図1及び図2〜図3を用いて詳細を説明する。図2は支持部材の斜視図、図3は支持部材の上面図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、支持部材42は、第1支持部材42A及び第2支持部材42Bからなるものであり、ボルト43により第1支持部材42Aと第2支持部材42Bとを締結させることにより、図1に示すように、カップリング本体41の外周に固定される。
【0024】
支持部材42は、その下端部にフランジ部44を備えており、かかるフランジ部44は、軸方向に貫通された貫通部45を有する。本実施形態では、第1支持部材42A及び第2支持部材42Bのフランジ部44は、それぞれ2つの貫通部45が設けられている。
【0025】
また、図1に示すように、フランジ部44の貫通部45には、ポンプ本体50側に突出し、ポンプ本体50の外壁(ポンプ本体50上面)と当接する嵌合部材47が嵌合されている。これにより、電動機10を離脱させた際に支持部材42の嵌合部材47でカップリング本体41を支持することができ、カップリング本体41の高さ位置を一定に保つことができる。嵌合部材47は、カップリング本体41を支持することができるものであればよく、その構成は特に限定されないが、支持部材42のフランジ部44の下面と、ポンプ本体50の上面との距離に合わせて、貫通部45からの突出高さを調整することができるものが好ましい。本実施形態では、嵌合部材47としてはジャッキボルトを用いた。嵌合部材47としてジャッキボルトを用いることにより、容易に貫通部45からの突出高さを調整することができる。具体的には、貫通部45には雌ネジが形成され、ジャッキボルトの雄ネジがこの雌ネジに螺合されている。ジャッキボルトのナット位置を調整することにより、ジャッキボルトの貫通部45からの突出高さを調整することができるようになっている。
【0026】
また、本実施形態の支持部材42は、第1支持部材42Aのフランジ部44の一部に切り欠き部46を備えている。これにより、ポンプカップリング40から中間軸30を離脱させる際に、切り欠き部46から、中間軸30とポンプカップリング40を締結するボルトを容易に取り外すことができる。具体的には、第1支持部材42A側のボルト31を取り外した後は、カップリング本体41を回転軸51と共に回転させて他のボルト31と切り欠き部46との位置を合わせて、ボルト31を取り外せばよい。
【0027】
電動機10を駆動させる際には、支持部材42は取り外していても、ヘッド本体41に固定していてもよい。支持部材42をヘッド本体41に固定した状態で使用する際には、ジャッキボルト(嵌合部材47)の下面の位置を上げる、すなわち、ジャッキボルトの突出を下げることにより、ポンプ本体51と当接しないようにすればよい。これにより、駆動軸11、電動機カップリング20、中間軸30、支持部材42を具備するポンプカップリング40、及び回転軸51が回転する。
【0028】
そして、電動機10を取り外す際には、嵌合部材47の貫通部45からの突出高さを調整して、嵌合部材47の下面とポンプ本体51の上面とを当接させる。
【0029】
従来の電動ポンプでは、例えば、電動機10の点検や補修をする際に、ポンプカップリング40から電動機10(本実施形態では、電動機10並びに電動機カップリング20及び中間軸30)を離脱させると、ポンプカップリング40が自重によりポンプ50側へ下がり、回転軸51と図示しないメカニカルシールとの間に間隙が生じるという問題があった。ポンプ本体50に重原油等の流体が充填されている場合、重原油の成分が固化したものなどの異物が間隙に噛み込まれてしまい、再び電動機10を連結した際に、異物によりシール面が損傷してしまう虞があった。また、異物を噛み込まない場合であっても、ポンプカップリング40が自重によりポンプ50側へ下がることにより、回転軸51の外周に嵌装されるメカニカルシールが損傷することがあった。この場合も同様に、再び電動機10を連結した際に、軸封部材のシール面が正常に作用しなくなってしまう。
【0030】
これに対し、本実施形態では、電動機10を離脱させた際に、上述した支持部材42によりカップリング本体41を支持することにより、カップリング本体41の高さ位置を一定に保つことができる。これにより、例えば、電動機10の点検や補修をする際に、ポンプカップリング40から電動機10を離脱させても、自重によりポンプ50側へ下がる虞がない。これにより、ポンプカップリング40が回転軸51と共にポンプ50の内部へ落ち込み、回転軸51の外周に設けられるメカニカルシールとの間に間隙が生じて、異物を噛み込む虞がなく、メカニカルシールの不具合が生じる虞がない。また、ポンプカップリング40が自重によりポンプ50側へ下がることによるシール面の損傷を抑制することができる。したがって、シール性能の低下を抑制することができ、流体の漏れを抑制することができる。
【0031】
本実施形態の支持部材42は、支持部材42A及び支持部材42Bとからなることにより、カップリング本体41から容易に着脱可能である。例えば、カップリング本体41の外周に支持部材42を設けた後に駆動軸11及び回転軸51を連結させてもよく、駆動軸11と回転軸51とを連結させた状態のカップリング本体41の外周に設けてもよい。また、支持部材42A及び支持部材42Bはボルト43により締結されていることにより、カップリング本体41から外れる虞がない。
【0032】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態に基づいて詳細に説明したが、勿論、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態1では、ポンプカップリング40の支持部材42のフランジ部44を円形としたが、形状はこれに限定されるものではない。
【0033】
また、実施形態1では、第1支持部材42A及び第2支持部材42Bのフランジ部44の貫通部45の数は、それぞれ2つずつとなるようにしたが、これに限定されるものではなく、支持部材42全体で3つ以上であればよい。
【0034】
実施形態1では、ポンプカップリング40のポンプ本体50側に支持部材42を設けたが、これに限定されるものではなく、嵌合部材47がポンプ本体50と当接するように支持部材42を設ければよい。
【0035】
また、第1支持部材42Aがフランジ部44に切り欠き部46を備えるものとしたが、第2支持部材42Bも切り欠き部46を備えるものとしてもよく、また、中間軸30とカップリング本体40とを締結するボルトの長さが短い場合は、第1支持部材42A及び第2支持部材42Bのいずれも切り欠き部46を備えていなくてもよい。
【0036】
実施形態1では、電動機カップリング20とポンプカップリング40との間に中間軸30を設けたが、中間軸30を設けずに、電動機カップリング20とポンプカップリング40を直接連結するようにしてもよい。
【0037】
また、実施形態1では、軸封装置としてメカニカルシールを挙げたが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、実施形態1では、電動ポンプ100を挙げて、ポンプカップリング40について説明したが、本発明に係るカップリング構造は、他の回転機械、具体的には、原動機と、原動機により回転駆動する回転軸及び軸封装置を備える被駆動機とが垂直方向に配置される縦型回転機械に適用することができるものである。
【符号の説明】
【0039】
10 電動機
11 駆動軸
20 電動機カップリング
30 中間軸
40 ポンプカップリング
41 カップリング本体
42 支持部材
44 フランジ部
45 貫通部
46 切り欠き部
47 嵌合部材
50 ポンプ本体
51 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、該原動機により回転駆動する回転軸及び軸封装置を備える被駆動機とが垂直方向を軸方向として配置される縦型回転機械のカップリング構造であって、
前記原動機の駆動軸と前記回転軸とを直列に連結するカップリング本体と、
第1支持部材と第2支持部材とからなり、該第1支持部材と該第2支持部材を締結させることにより前記カップリング本体の外周に設けられる支持部材と、を具備し、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、前記軸方向に貫通された貫通部を有するフランジ部を備え、
前記貫通部には、前記軸方向に亘り前記被駆動機側に突出し、該被駆動機上面と当接する嵌合部材が嵌合されていることを特徴とするカップリング構造。
【請求項2】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材のうち少なくとも一方は、前記フランジ部に切り欠き部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカップリング構造。
【請求項3】
前記嵌合部材がジャッキボルトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカップリング構造。
【請求項4】
電動機と、該電動機により回転駆動する回転軸及び軸封装置を備えるポンプ本体とが垂直方向を軸方向として配置される電動ポンプであって、
前記電動機の駆動軸と前記回転軸とを連結するカップリング本体と、
第1支持部材と第2支持部材とからなり、該第1支持部材と該第2支持部材を締結させることにより前記カップリング本体の外周に設けられる支持部材と、を具備し、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、前記軸方向に貫通された貫通部を有するフランジ部を備え、
前記貫通部には、前記軸方向に亘り前記ポンプ本体側に突出し、該ポンプ本体上面と当接する嵌合部材が嵌合されていることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項5】
前記軸封装置がメカニカルシールであることを特徴とする請求項4に記載の電動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−53710(P2013−53710A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193665(P2011−193665)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)
【Fターム(参考)】