説明

カップ状容器

【課題】 中間に空気層を形成する必要がなく2重壁構造であっても嵩張らず、且つ容器切出し性がよく、また変化や遊び性等の意外性に富み、しかも食するとき手で把持する部分は断熱性に優れ、他の部分は放熱性に増すカップ状容器を得る。
【解決手段】 容器本体2の胴部壁外周面に嵌合したスリーブ5を有し、該スリーブのほぼ中間部に高さ方向一定範囲の全周にわたって縦方向に複数のスリット7を形成して、胴部壁中間部を複数の短冊片15に分割し、該短冊片に罫線8、9を入れ、且つスリーブの下方を容器本体の胴部壁外周面に接着し、短冊片15を含む上部を容器本体の胴部壁3に沿って下方にスライド可能にしてなり、スリーブ5をスライドさせることにより、短冊片15が罫線から折曲して4重壁又は空気層を有する把持部16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ状容器、より詳しくは加熱して飲食できるインスタント食品等特に、熱湯を注いで又は電子レンジで加熱して飲食できるインスタント食品を包装するカップ状のカップ状容器に好適なカップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、容器内に熱湯を注ぐことにより飲食できるインスタントラーメン、味噌汁、コーヒー、スープ、お茶等の容器、あるいは電子レンジで容器ごと加熱して飲食する調理食品用のカップ状容器として、紙を主材とするカップ状容器(以下、単に紙製カップ状容器という)が多用されてきている。この種容器は、飲食時に内容物の熱から容器を把持する手を保護するために断熱対策を施している。従来知られている断熱対策としては、紙基材の表面に熱可塑性樹脂をラミネート若しくは含浸させて発泡処理したもの、容器本体(内カップ)の胴部外周部にサックを設けて胴部を2重壁構造とし、サックと容器本体との間に空気層を設けたもの(例えば、特許文献1、2、3参照)、あるいは容器外周部に起こすと取っ手となる取っ手片を連結したもの(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【特許文献1】特開平4−201840号公報
【特許文献2】特開2000−281045号公報
【特許文献3】特許第3252478号掲載公報
【特許文献4】実開平3−23011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記断熱対策のうち、胴部壁を発泡処理したものは断熱効果が低く、熱湯を注いだ場合素手で把持すると非常に熱く感じられ、また、2重壁構造にして空気層を設けたものは一般に発泡処理を施したものと比べて断熱効果は高いが、このような断熱処理を施しても容器外面が65℃〜75℃に達し、素手で持つとかなり熱く感じられ、断熱効果は未だ満足するものではない。また、2重壁構造にして内部に空気層を設けるのは、壁厚方向に空間を形成する必要上、内部に波形状の中芯を設けたり、サック自体に複雑な罫線を形成して外部に膨らませた立体形状に成形しているので、製造工程が複雑であると共に、必然的に容器の胴部壁が厚くなり、容積が増大して製品の箱詰め等収納に不利である。さらに、容器への内容物の充填時には、空容器を筒状に重ねた状態で下部より切り出して供給されるが、胴部壁に空気層があると胴部壁が弾力性を増すため、積重ねた状態で上方のコップの自重により、容器同士の嵌合が強くなり、容器切り出し性が悪くなるという欠点もある。また、容器の胴部壁の外周部に取っ手片を設けるのは、その取っ手片が邪魔になり空容器の積重ね性、切出し性を阻害するという欠点がある。
【0004】
さらに、従来のこの種容器は、断熱容器に限らず、胴部壁は所定の形状や状態に固定されており、使用時に外周面の壁構造が変化するなどのことはなく、変化や遊び性に欠けている。また、従来のこの種容器は、断熱性と保温性の向上という観点に基づいて上記のような種々の改良が加えられてきているが、例えば、カップラーメンの場合、熱湯を注いで麺が食できる状態に柔らかくなるまでの所定時間は、加熱効果を高めるために保温性の高い容器が望ましくても、食するときは手で把持する部分に断熱性があれば、容器全体としてはむしろ保温性よりも、食するラーメンが素早く食べ易い温度になるように放熱効果の高いものが望ましい。しかしながら、従来このような考え方に基づく容器はいまだ提供されていない。
【0005】
そこで、本発明は、上記用途に適用されるカップ状容器の技術的課題を一挙に解決しようとするものであり、流通段階では中間に空気層を形成する必要がなく2重壁構造であっても嵩張らず、且つ容器切出し性がよく、また変化や遊び性等の意外性に富み、しかも食するとき手で把持する部分は断熱性に優れ、他の部分は放熱性が増大するようなカップ状容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために種々研究した結果、必ずしも容器を常に断熱構造にする必要はなく、実際に使用(食)する段階で手で保持する部分が集中的に断熱効果が高ければよく、流通段階では胴部壁に特別な断熱効果を持たさなければ、胴部を薄い構造にすることが可能であり、また使用に当って消費者によって胴部の把持部分を断熱構造に変化させることができれば、容器に意外性と変化性を持たせることが可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
即ち、上記課題を解決する本発明のカップ状容器は、胴部壁と底部壁を有する容器本体、該容器本体の胴部壁外周面に嵌合したスリーブを有し、該スリーブのほぼ中間部に高さ方向一定範囲の全周にわたって縦方向に複数のスリットを形成して、胴部壁中間部を複数の短冊片に分割し、該短冊片に罫線を入れ、且つスリーブの下方を容器本体の胴部壁外面に接着し、短冊片を含む上部を容器本体の胴部壁に沿って下方にスライド可能にしてなり、前記スリーブをスライドさせることにより、前記短冊片が前記罫線から折曲して把持部を形成してなるようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
前記把持部は、前記短冊片が屈曲して容器本体の胴部壁を含め4重壁以上の構成とすることによって、胴部を発泡処理又は積極的に空気層を設けなくても把持部の断熱性の高い
容器を得ることができる。1例として、前記短冊片のほぼ中間部に水平な山折り用罫線を形成し、該山折り罫線の下方に所定間隔をおいて平行に形成された谷折り用罫線を形成することによって、前記把持部を、容器本体の胴部壁を含め4重壁に構成することができる。また、前記短冊片の1又は複数個を、中間部に罫線は設けずに取っ手用短冊とすれば、前記スリーブを下方にスライドさせることにより前記取っ手用短冊が外方に湾曲膨出して取っ手を形成することができる。その場合、取っ手のみを把持、あるいは上記と同様に4重壁構造部を把持することもできる容器が得られる。なお、取っ手を形成した場合、使用に際して他の短冊片部は必ずしも4重壁構造とならなくてもよい。
【0009】
また、把持部の断熱性を得る他の構成として、スリーブを下方にスライドさせることによって、短冊片を屈曲させて外方に膨出させ、前記容器本体の胴部壁との間に空気層が形成するような構造にすることができる。その1例として、前記短冊片のほぼ上部近傍に45度傾斜した谷折り用の第1罫線、該第1罫線と平行にその下方に形成された山折り用の第2罫線、さらにその下方に所定間隔をおいて前記第1罫線及び第2罫線と線対称に形成された山折り用の第3罫線と谷折り用の第4罫線からなる罫線を設けることによって、前記把持部には前記容器本体の胴部壁との間にスリーブの円周方向に沿って台形錐台状の空気層を形成させることができる。スリーブを下方にスライドさせて空気層を形成した場合、スリーブがその位置に係止されて空気層が安定して保持するために、前記短冊片のうち一部の短冊片には、上部に前記縦方向スリット間を連接する横方向折曲用罫線を形成し、且つ下方部には前記縦方向スリット間を連接する横方向スリットを形成し、前記横方向折曲用罫線から上方に折り返し可能なストッパー舌片を形成することが望ましい。
【0010】
前記スリーブが下方にスライドすることにより露出する前記容器本体の胴部壁外周面を表示面として使用することにより、より変化に富んだ面白みのあるカップ状容器を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通常の流通段階では胴部壁を断熱性に形成する必要はないので、2重壁構造であっても中間に空気層を形成する必要がなく嵩張らず、且つ容器外周面が均一面に形成できて容器積重ね性および容器切出し性がよく、また変化や遊び性等の意外性に富み、しかも消費者が使用する際には手で把持する部分は断熱性に優れ、他の部分は放熱性が増すカップ状容器を得ることができる。また、消費者がスリーブを下方に単にスライドさせることによって、スリーブが罫線に沿って変形して把持部が形成されるので、容易に把持部を形成させることができると共に容器外形に立体的な変化が生じて、従来の容器にない変化性と意匠性に富んだ容器を得ることができる。さらに、スリーブをスライドすることによって、露出する容器本体の外周壁面を、請求項7の構成のように表示面として利用して、隠し情報や福引、占い、あるいはキャラクター等を印刷しておくと、消費者が使用時に楽しみな容器が得られる。
【0012】
さらに、請求項2〜3の構成によれば、胴部が2重壁でありながら、使用時には簡単に把持部を4重壁に構成することができ、把持部の断熱性を効果的に確保できる。また、請求項4の構成によれば、使用時にはスリーブを下方にスライドさせるだけで、把持部に簡単に取っ手を形成することができる。請求項5〜7の構成によれば、使用時にはスリーブを下方にスライドさせるだけで、把持部に簡単に空気層を形成することができ、しかも請求項6の構成によれば該空気層が周方向に一様な台形錐台状のものが多数連続して出現する形状となり、確実に空気層が確保できて断熱性に優れていると共に意匠性に優れたカップ状容器が得られる。また、請求項7の構成によれば、スリーブを下方にスライドさせた状態を安定して保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るカップ状容器の実施形態を示し、本実施形態は紙製カップ状容器に適用した場合である。ここで、カップ状容器とは、必ずしも紙材のみで形成されているものに限らず、紙材に合成樹脂フィルムをラミネートしたもの、あるいは紙材に合成樹脂を含浸させたもの、さらには紙材と合成樹脂フィルムや金属箔を積層したものなど、紙を主材とする容器をさす。また、カップ状容器とは、胴部壁と底部壁を有する容器で、その大きさや深さ、胴部形状は特に限定されない。また、以下の実施形態では、紙製カップ状容器の例を示すが、カップ状容器本体は、必ずしもカップ状容器に限らず、合成樹脂製成形容器も適用でき、また外周面を包囲するスリーブも紙製に限らず、合成樹脂フィルム又は複合フィルムで形成することも可能である。
【0014】
本実施形態(第1実施形態)のカップ状のカップ状容器1は、内面が耐水加工された胴部壁3と底部壁4を有するカップ状の容器本体2とスリーブ5とから形成され、胴部壁3の外周部に全体を覆うようにスリーブ5が嵌装されている。スリーブ5は、紙製又は合成樹脂ラミネート紙等の紙を基材とするシート材で、容器本体の胴部壁の外周面沿って筒状に形成されている。なお、該スリーブ5は本実施形態に示すように、その上端が胴部壁の上端部近傍に位置し、下端が胴部壁の足部下端部まで覆うように延びているのが望ましいが、上端部及び下端部は必ずしもその位置に達してなくても良い。
【0015】
スリーブ5の中間部11には、縦方向に所定間隔に同長のスリット7を全周にわたって形成し、スリット間を複数の短冊片15に分割する。そして、図1(a)に破線で示すように、短冊片15の中央部と下端部に周方向全周にわたって罫線8、9を施す。このうち罫線8は山折り用罫線として形成し、罫線9は谷折り用罫線として形成する。このように形成されたスリ−ブ5は、罫線9から下方部10のみを容器本体の胴部壁3に接着し、短冊片15が形成されている中間部11及び上方部12は、容器本体2に対してスライド可能となっている。
【0016】
以上のように形成された容器は、通常は図1に示すように、胴部は容器本体の胴部壁3とスリーブ5の2重壁となっているが、中間部に空気層などの空間部が存在しないので、容器本体の胴部壁とスリーブは直接接触した状態にあり、厚みがあまりなく嵩張らないし、胴部壁同士を嵌合して積重ねた状態では、従来のこの種断熱容器と比べて積重ね性・切出し性が良好である。したがって、内容物を充填し開口部を蓋材でシールした状態では従来の断熱容器と比較して嵩張らず、箱詰め等流通段階における収容性を向上させることができる。この状態から、内容物を食する場合は、内部に熱湯を注ぐ前にスリーブ5の上方部12を軽く把持した状態でスリーブ5を下方に押すと、容器本体に接着されてない中間部11、上方部12が下方に自由にスライドする。スリーブ5は縦方向にスリット7が形成されているので、下方に押し下げることによって、スリット部からの拡がりが許容されてスリット間に形成される短冊片15が、その中間の罫線8から山折り及び下方の罫線9から谷折り状に次第に折れ曲がり、図2(a)に示すように、胴部壁外周部に多数の短冊片によってあたかもスカートのフレア状の把持部16が形成される。罫線8の部分が罫線9の部分を超えて下方に折り曲がると、その方向に付勢力が働き、手を離しても折り曲がり状態を維持する。この状態では、把持部16は、同図(b)に示すように、容器本体胴部壁3、スリーブの下方部10、短冊片の下方部壁11−1、短冊片の上部壁11−2の4重壁となる。したがって、この部分を指で把持すれば、指への内容物の熱の伝わりが弱く、熱さを感じることなく、快適に把持することができる。
【0017】
そして、スリーブを下げた状態では、図1でスリーブの上方部が位置して見えなかった容器本体の胴部壁3の上部が露出して単壁状態になるので、図1の状態と比べてその部分からの放熱性が増し、内容物の温度降下を早め、より快適に食することができる。また、スリーブ5を下げた状態で露出することになる容器本体の胴部壁に予め、料理レシピ、隠し情報や福引、占い、或は漫画やキャラクター等を印刷しておけば、内容物が加熱される時間消費者にそれを見る楽しみを提供することができ、スリーブ形状の変化の斬新さばかりでなく、遊び性に富んだ容器を提供することができる。なお、スリーブに発泡処理を施すことによってより断熱効果をあげることができる。また、容器本体の保温性が高い方が望ましい場合は、容器本体の胴部壁を同様に発泡処理することによって保温性を上げることができる。
【0018】
図3〜図5は本発明の第2の実施形態に係るカップ状容器を示している。本実施形態のカップ状容器20は、上記第1実施形態のカップ状容器の変形例であり、同様な部分は同一符号を付し、相違点のみについて説明する。本実施形態と第1実施形態との相違点は、スリットにより形成された短冊片15のうち、略90度間隔に位置する短冊片を他の短冊片よりも下方に長くして取っ手用短冊片21とし、該短冊片が取っ手となるように形成した点である。即ち、図3において、略90度間隔に位置する4つの短冊片21を形成する部分の両側のスリット22を下方に延長して形成し、該短冊片の中間部には他の短冊片15に形成されるような罫線は施してなく、スリット22の下端間にのみ罫線23が施されている。なお、罫線23は必ずしも必要でなく、省くことも可能である。この構成において、上記のように取っ手用短冊片21を他の短冊片15よりも長くすることによって、把持し易い取っ手を形成することができるが、必ずしも長く構成しなくて他の短冊片15と同じ長さにしても取っ手の形成は可能である。また、取っ手用短冊片21の数は、4個に限らず、1個、2個でよい。
【0019】
本実施形態のカップ状容器20は、以上のように構成され、使用に際して前記実施形態と同様に、スリーブ5の上方部を軽く指で挟んで押し下げると、図4に示すように、中間に罫線が施されている短冊片15は中間の罫線8から山折り状に折り畳まれるが、中間部に罫線が施されていない取っ手用短冊片21は外方に湾曲し、最大位置まで押し下げると図5に示す状態となり、ちょうど外側に大きく湾曲して取っ手となる。したがって、飲食のとき、この部分に指を挿入するか若しくは指で把持して取っ手として使用するか、あるい前記実施形態と同様に4重壁となっている把持部16を把持して使用することもできる。その他の作用効果は前記実施形態と同様である。
【0020】
図6〜図7は本発明の第3の実施形態に係るカップ状容器を示している。本実施形態の紙製のカップ状容器30は、短冊片の折れ曲がった形態が前記両実施形態と相違し、スリーブを下げることによって容器本体の胴部壁との間に空気層を形成するようになっている。本実施形態では、縦のスリット7をスリーブ31の全周に等間隔で同じ長さで形成するのは、第1実施形態と同様であるが、各短冊片32ごとに4本の罫線が形成され、各罫線はそれぞれ45°づつ傾斜している。第1罫線33は、図においてスリットの頂部から下り傾斜状に45°傾斜して谷折り用に形成され、第2罫線34は第1罫線33と所定間隔離れて平行に山折り用に形成されている。また、第3罫線35は前記スリットの下端から登り傾斜状に45°傾斜して谷折り用に形成され、第4罫線36は、第3罫線35と所定間隔(第1罫線と第2罫線の間隔と同間隔)離れて平行に山折り用に形成されている。即ち、第1罫線、第2罫線と第3罫線、第4罫線は線対称に形成されている。その他の構成は、前記の各実施形態と同様である。
【0021】
以上のように構成された本実施形態のカップ状のカップ状容器30は、使用するに際して、スリ−ブ31の上部を把持して下方にスライドさせると、各短冊片32が第1罫線33〜第4罫線36に沿って折り曲がって、短冊が台形錐台状に外方に膨出した把持部37を形成する。各短冊とも同一形状に変形するので、図7に示すように、容器胴部に台形錘台状の把持部37が連続して繋がったバンド形状を呈し、立体的な装飾性を高める。そして、該把持部の外周壁38と容器本体の胴部壁3との間(即ち、把持部の内部)には空気層が形成され、しかも該空気層は前記第1罫線と第2罫線との間隔に対応して広く形成できるので、断熱効果が高い。なお、本実施形態では、把持部を円錐台形台状に膨出させて空気層を形成したが、空気層の形成はこの形状に限定されるものでなく、例えば上記第1〜第4の罫線を円周方向に互いに平行に形成すれば、四角柱状の膨出部を形成することができ、罫線の設け方によって種々の形状に膨出した把持部を形成することができる。
【0022】
図8及び図9に示すカップ状容器40は、図6〜図7に示すカップ状容器30の改良であり、同様な構成については同一符号を付し、相違点のみ説明する。本実施形態のカップ状容器40は、スリーブ31を下方にスライドさせて空気層を形成させた場合、手を離してもその状態を容易に維持するように、ストッパー舌片41を設けたことを特徴とする。該ストッパー舌片41は、前記短冊片32のうち一部の短冊片を利用して形成されたものであり、一部の短冊片の上部に前記縦方向スリット7間を連接する横方向折曲用罫線43を形成し、且つ下方部には前記縦方向スリット間を連接する横方向スリット44を形成し、前記横方向折曲用罫線43から上方に折り返し可能にすることによって形成されている。ストッパー舌片41は、スリーブを下方にスライドさせた状態で上方に折り返してその先端部を容器本体のカール部に嵌合し係止させることによって、該ストッパー舌片が支え棒となり、スリーブが上昇するのを阻止するものである。したがって、ストッパー舌片41は、折り曲げたときまっすぐ伸びてその先端がカール部に嵌合する寸法が望ましく、該寸法となるように、前記横方向折曲用罫線43及び横方向スリット44の位置を適宜選択すれば良い。
【0023】
以上のように構成された本実施形態のカップ状容器40は、使用時にはにスリーブ31を押し下げた状態で、図9に示すようストッパー舌片41を折り返して容器本体のカール部6に差し込むことによって、スリーブが基の状態に復帰するのを阻止することができる。したがって、内容物を加熱中スリーブから手を離してもスリーブは図9に示す状態を維持し、加熱後安心して空気層が形成されている把持部を把持することが出来る。また、ストッパー舌片41を折り返すことによって容器本体の胴部壁3が枠状に露出するので、該部に予め福引等の情報を印刷しておくことによって、趣向に富んだ容器を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のカップ状容器は、通常の流通段階では胴部に膨出部等がなく、使用時に膨出部が形成されて断熱性を高めるので、容器内に熱湯を注ぐことにより飲食できるインスタントラーメン、味噌汁、コーヒー、スープ、お茶等の容器、あるいは電子レンジで容器ごと加熱して飲食する調理食品用のカップ状容器に適用できるばかりでなく、熱い飲食物を食する使い捨てカップとしても利用可能性が高い。また、内容物が冷たい飲食物の容器にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカップ状容器を示し、(a)は斜視図、(b)はそのA−A断面拡大図である。
【図2】(a)は図1のカップ状容器の使用時の状態を示す斜視図、(b)はそのB−B断面拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るカップ状容器の斜視図である。
【図4】そのスリーブをスライドさせる中間状態を示す斜視図である。
【図5】そのカップ状容器の使用時の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るカップ状容器の斜視図である。
【図7】そのカップ状容器の使用時の状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るカップ状容器の斜視図である。
【図9】そのカップ状容器の使用時の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1、20、30、40 カップ状容器
2 容器本体 3 胴部壁
4 底部壁 5 スリーブ
7、22 スリット 8、9、23 罫線
10 下方部 11 中間部
12 上方部 15、21、32 短冊片
16、37 把持部 33 第1罫線
34 第2罫線 35 第3罫線
36 第4罫線 41 ストッパー舌片
43 横方向折曲用罫線 44 横方向スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部壁と底部壁を有する容器本体、該容器本体の胴部壁外周面に嵌合したスリーブを有し、該スリーブのほぼ中間部に高さ方向一定範囲の全周にわたって縦方向に複数のスリットを形成して、胴部壁中間部を複数の短冊片に分割し、該短冊片に罫線を入れ、且つスリーブの下方を容器本体の胴部壁外面に接着し、短冊片を含む上部を容器本体の胴部壁に沿って下方にスライド可能にしてなり、前記スリーブをスライドさせることにより、前記短冊片が前記罫線から折曲して把持部を形成してなるようにしたことを特徴とするカップ状容器。
【請求項2】
前記把持部は、前記短冊片が屈曲して容器本体の胴部壁を含め4重壁以上の構成となっている請求項1に記載のカップ状容器。
【請求項3】
前記罫線は、前記短冊片のほぼ中間部に形成された水平な山折り罫線と、該山折り罫線の下方に所定間隔をおいて平行に形成された谷折り罫線からなり、前記把持部が、容器本体の胴部壁を含め4重壁から構成されることを特徴とする請求項2に記載のカップ状容器。
【請求項4】
前記短冊片の1又は複数個には、中間部には罫線は設けずに取っ手用短冊とし、前記スリーブを下方にスライドさせることにより前記取っ手用短冊が外方に湾曲膨出して取っ手を形成することを特徴とする請求項1〜3何れかに記載のカップ状容器。
【請求項5】
前記把持部には、前記短冊片が屈曲して前記容器本体の胴部壁との間に空気層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカップ状容器。
【請求項6】
前記罫線は、前記短冊片のほぼ上部近傍に45度傾斜した谷折り用の第1罫線、該第1罫線と平行にその下方に形成された山折り用の第2罫線、さらにその下方に所定間隔をおいて前記第1罫線及び第2罫線と線対称に形成された山折り用の第3罫線と谷折り用の第4罫線からなり、前記把持部には前記容器本体の胴部壁との間にスリーブの円周方向に沿って台形錐台状の空気層が形成されることを特徴とする請求項5に記載のカップ状容器。
【請求項7】
前記短冊片のうち一部の短冊片には、上部に前記縦方向スリット間を連接する横方向折曲用罫線を形成し、且つ下方部には前記縦方向スリット間を連接する横方向スリットを形成し、前記横方向折曲用罫線から上方に折り返し可能なストッパー舌片を形成したことを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載のカップ状容器。
【請求項8】
前記スリーブが下方にスライドすることにより露出する前記容器本体の胴部壁外周面が表示面となっていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のカップ状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−44723(P2006−44723A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227278(P2004−227278)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】