説明

カップ状容器

【課題】 蓋体の開封時に、ヨーグルト等の半流動性食品の噴出または飛散を確実に防止しうるカップ状容器を創出することを課題とする。
【解決手段】 周壁(3)の上端にフランジ部(4)が一体に形成された有底円筒状の容器本体(2)と、摘み部を有すると共にフランジ部(4)に貼着されて容器本体(2)を密閉する蓋体とを備えたカップ状容器において、フランジ部(4)には、径方向の外側に設けられて蓋体が貼着される上段領域(4A)と、周壁(3)と上段領域(4A)との間に段差を有して周状に形成された下段領域(4B)と、下段領域(4B)に形成されて蓋体が貼着される複数の仕切壁(6)と、が設けられ、複数の仕切壁(6)は、隙間(8)を介して同心円状に多重に周設されると共に複数の欠損部(7)を有して形成されており、径方向に隣接する外側の仕切壁(6)に設けられる欠損部(7)と内側の仕切壁(6)に設けられる欠損部(7)とが、互いに周方向に位置ずれして形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーグルト等の半流動性食品(内容物)の販売の際に使用されるカップ状容器に係わり、特に本体容器をアルミ箔等の蓋体で密閉するタイプのカップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着性のある半流動性食品の販売の際に使用されるカップ状容器には紙又は合成樹脂製の容器本体が使用され、アルミ箔等を利用した蓋体が容器本体の上端に設けられたフランジ部に貼着されることにより密閉されている。
【0003】
しかし、この種のカップ状容器においては、容器本体のフランジ部を密閉する蓋体を剥離して開封する際に、ヨーグルト等の半流動性食品が剥離した部分から外部へ勢いよく飛散して飲食者の手や衣服等を汚すことがあるという問題があった。
【0004】
蓋体を剥離した際に半流動性食品が飛散する理由としては様々な説があるが、第1の説は容器内に高温状態で充填された半流動性食品が冷却されることによる体積変化により容器内部が負圧化していることがあり、この状態から急に蓋体を剥離すると、外部の空気が容器内部に急速に流れ込み、その際の反動で半流動性食品が飛散するというものである。
【0005】
また第2の説は、半流動性食品の発酵により容器の内部が高圧化していることがあり、蓋体の剥離を開始したとき、容器本体内に充満していた発酵ガスが噴出し、この際に半流動性食品が一緒に容器の外部に噴出されるというものである。
【0006】
いずれの説においても、半流動性食品が噴出又は飛散する理由は、蓋体を剥離した際に容器内外の圧力差が短時間に解消されることによるものと考えられている。
【0007】
このような容器開封時の半流動性食品の噴出を防止する発明に関する先行技術としては、例えば以下の特許文献1などが存在している。特許文献1に記載の発明は、容器の上端を閉塞する第1の蓋に穴を形成すると共に、第1の蓋上にその穴を覆う第2の蓋を取り付けておき、最初に第2の蓋を開封して容器の内圧を外気圧に等しくし、その後に蓋本体である第1の蓋を開封することにより、内容物の飛散を防止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−112506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載に発明では、以下に示すような問題がある。
第1に、容器の上端を密閉する本来の蓋体(第1の蓋)を外す前に、先に第2の蓋体を開封する必要があるため、飲食するに際して飲食者に煩雑な作業を強いる結果となる。
【0010】
第2に、第2の蓋体の存在に気付かなかった場合など、先に第1の蓋体を開封してしまうと半流動性食品の飛散を防止するが不可能となる。
【0011】
第3に、本来の第1の蓋体以外に、穴を塞ぐための専用の蓋体(第2の蓋体)が必要となるため、部品点数が増大し製造コストを低廉する上での支障となる。
【0012】
第4に、運搬中に第2の蓋体が外れてしまう虞があり、穴を通しての容器内への異物の進入や鮮度の低下など食品衛生上の問題がある。
【0013】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、飲食者に煩雑な作業を強いることなく、少ない部品点数で且つ一度の作業で容器内外の圧力差を解消することができると共に、この際のヨーグルト等の半流動性食品の噴出または飛散を確実に防止できるカップ状容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、周壁の上端にフランジ部が一体に形成された有底円筒状の容器本体と、摘み部を有すると共にフランジ部に貼着されて容器本体を密閉する蓋体とを備えたカップ状容器において、
フランジ部には、径方向の外側に設けられて上面に蓋体が貼着される上段領域と、周壁と上段領域との間に段差を有して周状に形成された下段領域と、下段領域に形成されて上面に蓋体が貼着される複数の仕切壁と、が設けられ、
複数の仕切壁は、隙間を介して多重に周設されると共に複数の欠損部を有して形成されており、径方向に隣接する外側の仕切壁に設けられる欠損部と内側の仕切壁に設けられる欠損部とが周方向にずらして形成したことを特徴とする、と云うものである。
【0015】
上記構成のカップ状容器では、フランジ部の下段領域に、欠損部を備えた仕切壁を同心円状に多重に配置することにより、フランジ部の上段領域に、隣接する仕切壁間の隙間によって形成される空気通路を所謂迷路状にしてその通路長を延長することにより、蓋体を剥離したときに、容器内外の圧力差の解消に要する時間、即ち内部の発酵ガス又は外部の空気がこの空気通路内を通過するのに要する時間を遅延させて半流動性食品が噴出する際の勢いを弱化させる。つまり、半流動性食品が容器本体の外部に噴出するには、必ず空気通路を通過しなければならないところ、空気通路は迷路状に形成されているため、その勢いを弱化させて噴出又は飛散を確実に防止する。
【0016】
本発明の他の構成は、フランジ部が平面多角形状で形成され、このフランジ部の上段領域に、径方向に延びて下段領域に連通する通気溝が形成されている、と云うものである。
【0017】
この構成では、元々の空気通路に通気溝を加えた長さ寸法の全体が、延長後の空気通路の通路長となるため、更に容器内外の圧力差の解消に要する時間を遅延させ、半流動性食品の噴出時の勢いの更なる弱化を図ることができる。
【0018】
また本発明の他の構成は、摘み部が、最も外側に設けられた仕切壁に形成された欠損部と対向しない位置に形成されている、と云うものである。
【0019】
上記構成では、摘み部を摘んで持ち上げたときに、蓋体がフランジ部から剥離する際の最初の剥離位置が、欠損部以外の仕切壁に対向することとなり、空気通路の通路長が最短の通路長(フランジ部を径方向に突き抜けるときの通路長)となることを回避し、容器内外の圧力差の解消に要する時間の遅延を実現する。
【0020】
さらに本発明の他の構成は、上記請求項2又は3記載のカップ状容器において、通気溝がフランジ部の角部に形成されている、と云うものである。
【0021】
上記構成では、通気溝の長さ寸法を、円形のフランジ部に比較して長めに設定することができるため、空気通路に通気溝を加えた全体の通路長を確実に延長させる。
【0022】
また本発明の他の構成は、上記請求項1記載のカップ状容器において、フランジ部の平面形状を円形に形成し、摘み部を蓋体の全周に亘って形成した、と云うものである。
【0023】
上記構成では、任意の位置から摘み部を持ち上げて蓋体を剥離させることができるが、どの位置で持ち上げてもフランジ部に設けられている空気通路を介して容器内外の気圧差の解消が図られるため、この気圧差の解消に要する時間を遅延させることができる。
【0024】
さらに本発明の他の構成は、上記いずれかの請求項において、周方向にて隣接する2つの欠損部間の円弧の長さ寸法を一つの仕切壁の全長と規定したときに、外側と内側の仕切壁の間で、一方の仕切壁に形成される欠損部を、他方の仕切壁の全長の1/2の長さ寸法の位置と対向する位置に形成した、と云うものである。
【0025】
上記構成では、一つの欠損部から見て周方向の右回り方向及び左回り方向に分かれて形成される2つの空気通路の各通路長を、最長の状態で均等に割り振ることができる。
【0026】
また本発明の他の構成は、上記請求項6において、摘み部が、最も外側に設けられた仕切壁の全長の1/2の長さ寸法の位置と対向する位置の少なくとも一つに形成されている、と云うものである。
【0027】
上記構成では、最初の剥離位置を、最も外側に設けられた仕切壁の全長の1/2の長さ寸法である中間位置に対向させることにより、空気通路の通路長を最長にして、容器内外の圧力差の解消に要する時間の遅延を実現する。
【0028】
また本発明の他の構成は、上記いずれかの請求項において、仕切壁が、二重に形成されている、と云うものである。
【0029】
上記構成では、蓋体を剥離したときに、容器の外側と内部との間が、径方向に沿う最短距離で連通されてしまうことがなく、必ず二重の仕切壁間に周方向に延びる空気通路を介して連通されるようになり、容器内外の気圧差の解消に要する時間が確実に遅延されることを可能とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、空気通路の通路長を延長して内部の発酵ガス又は外部の空気が通過するのに要する時間を遅延させることにより、半流動性食品の勢いを弱化させて容器の外部に噴出し又は飛散することを防止することができる。半流動性食品は、所謂迷路状の空気通路を通過しなければ容器の外部に噴出できない構成とすることにより、空気通路内を通過する過程において半流動性食品の勢いを弱化させることが可能となり、半流動性食品の噴出又は飛散を抑制して手や衣服への付着を防止することができる。
【0031】
また蓋体を開封する一連の作業の中で、半流動性食品の噴出又は飛散を防止することができるため、従来のように第2の蓋体の存在に気付かずに先に第1の蓋体を開封してしまうと云う飲食者による誤操作の介在する余地がなく、必ず半流動性食品の噴出又は飛散を防止することができる。
【0032】
しかも従来のように専用の別部材(第2の蓋体)を不要とし、蓋体を一方向に引っ張って剥離させるという簡単な作業により、半流動性食品の噴出又は飛散を防止することが可能であり、製造コストの低減及び飲食者への負担を軽減することができる。
【0033】
また、フランジ部が平面多角形状で形成され、このフランジ部の上段領域に、径方向に延びて下段領域に連通する通気溝が形成されている構成のものでは、空気通路に通気溝を加えて全体の通路長を延長して半流動性食品の噴出時の勢いを更に弱化させることにより、容器の外部に半流動性食品が噴出又は飛散することを防止することが可能となる。
【0034】
また摘み部が、最も外側に設けられた仕切壁に形成された欠損部と対向しない位置に形成される構成では、空気通路の通路長が最短に設定されることがなくなり、容器内外の圧力差の解消に要する時間を確実に遅延させることができ、容器の外部に半流動性食品が噴出し又は飛散することを防止することが可能となる。
【0035】
また通気溝がフランジ部の角部に形成されている構成にあっては、それ以外の位置、例えば多角形の各辺に対向する位置に形成する場合に比較して通気溝の長さ寸法としてある程度を確保することができるため、空気通路の通路長を確実に延長し、容器の外部に半流動性食品が噴出し又は飛散することを防止することが可能となる。
【0036】
またフランジ部の平面形状が円形に形成され、摘み部が蓋体の全周に亘って形成されている構成にあっては、蓋体を任意の位置から剥離することが可能となる。しかも任意の位置から摘み部を持ち上げて蓋体を剥離しても、フランジ部に設けられている空気通路を介して容器内外の気圧差の解消が図られるため、この気圧差の解消に要する時間が遅延され、容器の外部に半流動性食品が噴出し又は飛散することを防止することができる。
【0037】
さらに周方向にて隣接する2つの欠損部間の円弧の長さ寸法を一つの仕切壁の全長と規定したときに、外側と内側の仕切壁の間で、一方の仕切壁に形成される欠損部を、他方の仕切壁の全長の1/2の長さ寸法の位置と対向する位置に形成した構成にあっては、フランジ部上に形成される複数の空気通路の通路長をそれぞれ最長に設定することができ、この空気通路を介して容器内外の気圧差の解消を確実に遅延させることが可能となる。
【0038】
さらに摘み部が、最も外側に設けられた仕切壁の全長の1/2の長さ寸法の位置と対向する位置の少なくとも一つに形成されている構成にあっては、最初の剥離位置を、最も外側に設けられた仕切壁の全長の1/2の長さ寸法である中間位置に対向させることができ、空気通路の通路長が最長に設定されるため、容器内外の圧力差の解消に要する時間を確実に遅延させて、容器の外部に半流動性食品が噴出し又は飛散することを防止することが可能となる。
【0039】
さらに仕切壁が二重に形成されている構成にあっては、必ず二重の仕切壁間に形成される空気通路を介して連通されることで、容器内外の気圧差の解消に要する時間を遅延させることが可能となり、容器の外部に半流動性食品が噴出し又は飛散することを防止することが確実に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明によるカップ状容器の第1実施例を示す斜視図である。
【図2】Aは図1に示すカップ状容器の容器本体の平面図、Bは同じく容器本体の縦方向の断面図であると共に、AのII−II線に相当する断面図ある。
【図3】本発明の主要部として、図2の容器本体のフランジ部の一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図2に示す容器本体のフランジ部を拡大して示す縦方向の断面図であり、Aは図3のA−A線に相当する断面図、Bは図3のB−B線に相当する断面図、Cは図3のC−C線に相当する断面図である。
【図5】本発明の第2実施例としてのカップ状容器の容器本体を示し、Aは容器本体の平面図、BはAのV−V線に相当する容器本体の縦断面図である
【図6】第2実施例としてのカップ状容器の容器本体の縦方向の断面図であり、図5のVI−VI線に相当する縦断面図である。
【図7】第2実施例としてのカップ状容器の容器本体の縦方向の断面図であり、図5のVII−VII線に相当する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明によるカップ状容器の第1実施例を示す斜視図、図2のAは図1に示すカップ状容器の容器本体の平面図、Bは同じく容器本体の縦方向の断面図であると共にAのII−II線に相当する断面図、図3は本発明の主要部として、図2の容器本体のフランジ部を拡大して示す平面図、図4は図2に示す容器本体のフランジ部を拡大して示す縦方向の断面図であり、Aは図3のA−A線に相当する断面図、Bは図3のB−B線に相当する断面図、Cは図3のC−C線に相当する断面図である。なお、図2A及び図3の平面図では、蓋体が貼着される部分をハッチングで示している。
【0042】
図1、図2及び図3に示すように、カップ状容器1はヨーグルト等の半流動性食品(内容物)を充填するための容器であり、周壁3の下端に設けられた底部5及び周壁3の上端に周設されたフランジ部4を有して形成される有底円筒形状の容器本体2と、容器本体2の上端を密閉する蓋体10とから構成されている。
【0043】
容器本体2は、例えば射出成形法などにより、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等の合成成樹脂材料で形成されている。蓋体10は、紙材又はアルミ箔などの材料でシート状に形成され、フランジ部4に剥離可能に貼着されることにより、容器本体2の上端を密閉する。
【0044】
図3及び図4に示すように、フランジ部4の最も外側の位置には、断面コの字状に周設され且つその上面に蓋体10の内面が貼着される上段領域4Aが形成されている。フランジ部4の内側、すなわち上段領域4Aと周壁3との間には上段領域4Aよりも一段低く形成された下段領域4Bが周設されており、上段領域4Aと下段領域4Bとの間に設けられた壁面がフランジ部4の内壁4Cである。
【0045】
下段領域4Bには、隙間8を介して同心円状に多重(第1実施例では二重)に並設された仕切壁6が一体に形成され、これら仕切壁6には複数の欠損部7が形成されている。この仕切壁6の上面は上段領域4Aの上面と同じ平面上に形成されており、蓋体10の内面が貼着される。内側の仕切壁6と外側の仕切壁6の間に設けられる内側の隙間8、外側の仕切壁6と内壁4Cとの間に設けられる外側の隙間8及び欠損部7により迷路状に形成される通路が、容器本体2の内部と外部との間を連通し、容器内外の圧力差を解消する空気通路を形成している。
【0046】
例えば、図3において、蓋体10が剥離されたときの最初の剥離位置を、内側の仕切壁6に形成される欠損部7aに対向する位置(外側の仕切壁6の1/2の中間位置)Pとした場合、最も通路長の短い4系統の経路として、欠損部7a、欠損部7b及び剥離位置Pを通る上回りの空気通路P1と、欠損部7a、欠損部7c及び剥離位置Pを通る下回りの空気通路P2と、欠損部7d、欠損部7b及び剥離位置Pを通る上回りの空気通路P3と、欠損部7e、欠損部7c及び剥離位置Pを通る上回りの空気通路P4とが考えられる。なお、空気通路P1と空気通路P2とは互いに対称の関係にあり、空気通路P3と空気通路P4とは互いに対称の関係にある。そして、容器内外の圧力差の解消は、主にこれらの4系統の空気通路P1、P2、P3及びP4を介して行われると考えられる。
【0047】
本発明では、外側の仕切壁6に形成された欠損部7と、その内側に形成された欠損部7とが径方向に一列に並ぶことのないように、すなわち径方向において両欠損部7,7同士が互いに対向することのないように周方向に所定の角度ずれ又は位置ずれを生じさせて形成している。
【0048】
このように、外側の仕切壁6の欠損部7と内側の仕切壁6の欠損部7の形成位置を周方向に位置ずれさせることにより、両欠損部7,7同士が径方向に一列に並ぶことによって空気通路の通路長が最短に設定されることがなくなる。よって、容器本体2の内側から外部に向かう発酵ガス、または容器本体2の外側から内部に向かう空気が容器の内部と外部との間を、必ず最短距離よりも長い通路長からなる空気通路を経由して流れるようになるため、発酵ガスの噴出又は空気の流入に要する時間を遅延させることが可能となる。よって、容器内外の圧力差を解消するのに要する時間を遅延させ、半流動性食品の勢いを抑えることにより、蓋体10の開封と同時に半流動性食品が外部に噴出又は飛散することを防止できる。
【0049】
特に第1実施例では、周方向において隣接する一組の欠損部7,7間に位置する円弧状の仕切壁6の周方向の長さ寸法を仕切壁6の全長としたときに、外側の仕切壁6の全長の1/2となる中間位置と内側の仕切壁6の欠損部7とが径方向において対向し、且つ内側の仕切壁6の全長の1/2となる中間位置と外側の仕切壁6の欠損部7とが径方向において対向するように、外側の仕切壁6の欠損部7及び内側の仕切壁6の欠損部7の形成位置を調整している。なお、このような構成を実現するため、第1実施例では外側の仕切壁6と内側の仕切壁6に欠損部7を中心角30°の角度ピッチでそれぞれ形成し、且つ両角度ピッチのずれ角を15°に設定している。
【0050】
このように第1実施例では、一方の仕切壁6の欠損部7を、他方の仕切壁6の全長の1/2に相当する中間位置と対向する位置に形成することにより、空気通路の通路長を最長とすることができ、更に容器内外の圧力差を解消するのに要する時間を遅延させることが可能となるため、より効果的に半流動性食品の外部への噴出又は飛散を防止できる。
【0051】
なお、第1実施例では、図1に蓋体10の一部に、凸状に突出形成された摘み部11を示しているが、蓋体10に形成する摘み部11の形状はこれに限られるものではない。すなわち、第1実施例のカップ状容器1では、上述のように、蓋体10を剥離させたときに最初の剥離位置がどの位置に来ても、空気通路の通路長を最短の距離よりも長く設定することができるため、凸状の摘み部11を任意の位置に設けることが可能である。このため、摘み部11は、蓋体10の全周に亘って径方向の外側に円形に拡張させるような形状であってもよい。
【0052】
ただし、半流動性食品の噴出又は飛散を防止する最大の効果を発揮させるためには、空気通路の通路長を最長にして容器内外の圧力差を解消するのに要する遅延時間が最大となるように設定することが好ましく、そのためには凸状の摘み部11を最も外側の仕切壁6の全長の1/2である中間位置と対向する位置に形成する構成が好ましい。
【0053】
図5は本発明の第2実施例としてのカップ状容器の容器本体を示し、Aは容器本体の平面図、BはAのV−V線に相当する容器本体の縦断面図、図6は第2実施例としてのカップ状容器の容器本体の縦方向の断面図であり、図5のVI−VI線に相当する縦断面図である。また図7は第2実施例としてのカップ状容器の容器本体の縦方向の断面図であり、図5のVII−VII線に相当する縦断面図である。なお、図5の平面図では一部にハッチングを付すことにより、蓋体が貼着される部分を示しているが、ハッチングを省略した他の部分についても同様に蓋体が貼着される。
【0054】
図5、図6及び図7に示すように、第2実施例もフランジ部4の下段領域4Bに同心円状に形成された仕切壁6と欠損部7との関係は第1実施例と同様であり、以下には主に第1実施例と異なる構成について説明する。
【0055】
第2に実施例に示すカップ状容器の容器本体2が、第1実施例と最も異なる点は、フランジ部4の形状を多角形状(第2実施例では略正方形状)に形成し、個々の角部4aを角取りしてR状に形成すると共に、夫々の角部4aに通気溝9を形成した点にある。
【0056】
図5及び図7に示すように、通気溝9は径方向を長手方向とし、その内側の端部9aがフランジ部4の内壁4Cを介して下段領域4Bに連通され、外側の端部9bが角部4aを構成する上段領域4Aの途中の位置まで延びる長溝で形成されている。
【0057】
なお、通気溝9は、その内側の端部9aが下段領域4Bに設けられた外側の仕切壁6の全長の1/2である中間位置に対向するように形成されている。すなわち、通気溝9の内側の端部9aは、円弧状の仕切壁6の両端の欠損部7,7から見て周方向に等距離の位置に形成されており、空気通路の通路長が最長となるように設定されている。
【0058】
このように第2実施例では、下段領域4Bに迷路状に形成されている元々の空気通路に、角部4aに形成した通気溝9が加わることにより、空気通路全体の通路長を延長することができる。よって、第1実施例に比較して更に容器内外の圧力差を解消するのに要する時間を遅延させることが可能となり、半流動性食品の外部への噴出又は飛散の防止効果をより向上させることが可能である。
【0059】
第2実施例においても、蓋体10はフランジ部4を形成する上段領域4Aの上面及び複数の仕切壁6の上面に貼着されることにより容器本体2が密閉されるが、第2実施例における蓋体10は、複数の角部4aうちの少なくとも一つの角部4aが形成されていれば、蓋体10を容易に剥離させることが可能である。
【0060】
また図7に示すように、蓋体10は、摘み部11の一部を角部4aよりも更に外方向に突出させた構成であってもよいし、角部4aからはみ出さない形状とすると共に剥離しやすいように蓋体10の先端のみを上段領域4Aの上面に貼着せずに浮かせることにより形成される構成であってもよい。いずれにしても、いずれかの角部4aから蓋体10の摘み部11を摘んで引き上げることにより、常に最初の剥離位置を角部4aに設定することができる。すなわち、摘み部11を引き上げて蓋体10を剥離させると、通気溝9の外側の端部9bが最初に露出され、この通気溝9の外側の端部9bが最初の剥離位置となり、この通気溝9を介して空気通路が形成されて、容器内外の圧力差の解消が行われる。
【0061】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0062】
例えば、上記実施例では、図2及び図5に、外側の仕切壁6と内側の仕切壁6とに欠損部7を中心角30°の角度ピッチで形成し、且つ両角度ピッチ間のずれ角を15°に設定した例を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、空気通路の通路長に基づく遅延時間を更に延長する場合には、角度ピッチを例えば中心角45°、60°などとし、互いのずれ角も22.5°、30°などに設定するなど、更に大きな角度で構成して空気通路の通路長を更に延長することによって対応することが可能である。またこれとは逆に遅延時間を短縮する場合には、角度ピッチを小さく形成したり、同じ角度ピッチを維持しつつもずれ角を小さく設定して空気通路の通路長を短縮することにより対応することが可能である。
【0063】
また第2実施例ではフランジ部4の形状を略正方形状を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、略正三角形状、略正五角形状、あるいは略正六角形状などの多角形状であってもよい。
【0064】
さらに上記各実施例では、フランジ部4の下段領域4B内に仕切壁6を同心円状に二重に形成した例を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、仕切壁6を三重、四重など更に多重の構成とするものであってもよい。この構成では、空気通路の迷路化が進んで通路長を更に延長させることができるため、更に容器内外の圧力差を解消するのに要する時間を遅延させることが可能となり、半流動性食品の外部への噴出又は飛散の防止効果をより向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のカップ状容器は、フランジ部に迷路状の空気通路を形成し、蓋体を開封した際に、容器内外の圧力差を解消するのに要する時間を遅延させるように構成したものであり、ヨーグルト等の半流動性食品が充填されるカップ状容器の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ;カップ状容器
2 ;容器本体
3 ;周壁
4 ;フランジ部
4A ;上段領域
4B ;下段領域
4C ;内壁
4a ;角部
5 ;底部
6 ;仕切壁
7 ;欠損部
8 ;隙間
9 ;通気溝
9a ;通気溝の内側の端部
9b ;通気溝の外側の端部
10 ;蓋体
11 ;摘み部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁(3)の上端にフランジ部(4)が一体に形成された有底円筒状の容器本体(2)と、摘み部(11)を有すると共に前記フランジ部(4)に貼着されて前記容器本体(2)を密閉する蓋体(10)とを備えたカップ状容器において、
前記フランジ部(4)には、径方向の外側に設けられて上面に前記蓋体(10)が貼着される上段領域(4A)と、前記周壁(3)と前記上段領域(4A)との間に段差を有して周状に形成された下段領域(4B)と、該下段領域(4B)に形成されて上面に前記蓋体(10)が貼着される複数の仕切壁(6)と、が設けられ、
前記複数の仕切壁(6)は、隙間(8)を介して多重に周設されると共に複数の欠損部(7)を有して形成されており、隣接する外側の仕切壁(6)に設けられる欠損部(7)と内側の仕切壁(6)に設けられる欠損部(7)とを周方向にずらして形成したことを特徴とするカップ状容器。
【請求項2】
フランジ部(4)が平面多角形状で形成され、このフランジ部(4)の上段領域(4A)に、径方向に延びて下段領域(4B)に連通する通気溝(9)が形成されている請求項1記載のカップ状容器。
【請求項3】
摘み部(11)が、最も外側に設けられた仕切壁(6)に形成された欠損部(7)と対向しない位置に形成されている請求項1又は2記載のカップ状容器。
【請求項4】
通気溝(9)がフランジ部(4)の角部(4a)に形成されている請求項2又は3記載のカップ状容器。
【請求項5】
フランジ部(4)の平面形状が円形に形成され、摘み部(11)が蓋体(10)の全周に亘って形成されている請求項1記載のカップ状容器。
【請求項6】
周方向にて隣接する2つの欠損部(7)間の円弧の長さ寸法を一つの仕切壁(6)の全長と規定したときに、外側と内側の仕切壁(6)の間で、一方の仕切壁(6)に形成される前記欠損部(7)を、他方の仕切壁(6)の全長の1/2の長さ寸法の位置と対向する位置に形成した請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカップ状容器。
【請求項7】
摘み部(11)が、最も外側に設けられた仕切壁(6)の全長の1/2の長さ寸法の位置と対向する位置の少なくとも一つに形成されている請求項6記載のカップ状容器。
【請求項8】
仕切壁(6)が二重に形成されている請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカップ状容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−96801(P2012−96801A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243276(P2010−243276)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】