説明

カテキン含有飲料の製造方法

【課題】非重合体カテキン類を高濃度に含有したとしても、長期保存時においておりや沈殿を生成し難いカテキン含有飲料を提供すること。
【解決手段】(A)カテキン製剤及び(B)環状デキストリンを含有する水溶液を精密濾過する、カテキン含有飲料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテキン含有飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の嗜好の多様化や健康志向の高揚により、カテキン含有飲料の需要が増大している。カテキン含有飲料は、例えば、緑茶抽出物等のカテキン製剤を配合して製造することができる。しかしながら、カテキン含有飲料は、長期保存時においておりや沈殿が発生しやすく、また夾雑物等を除去してカテキン製剤のカテキン純度を高めたとしても、おりや沈殿の生成抑制が必ずしも十分ではなかった。
【0003】
おりや沈殿の生成メカニズムは複雑であり、これまでに様々な検討がなされてきた。例えば、緑茶中の高分子成分に着目して、酵素処理によって高分子複合体を形成する成分を分解・低分子化し、おりの発生を抑制する方法(特許文献1及び2)や、緑茶成分を限外濾過膜によって分画し分子量1万以上の高分子成分をほぼ除去して、おりの発生を抑制する方法(特許文献3)が報告されている。一方、金属イオンに着目した方法として、陽イオン交換樹脂処理とそれに続く微小濾過によって水色と濁りを抑制する方法(特許文献4)が報告されている。
【0004】
一方、カテキン含有飲料はカテキン類由来の苦味を有するため、カテキン類を摂取する上で障害となっている。このような不快な苦味を抑制する方法として、例えば、β−環状デキストリンとγ−環状デキストリンを一定量含有せしめる方法(特許文献5)や、香料、果汁等の天然又は合成の風味剤を配合したカテキン含有飲料が提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−328901号公報
【特許文献2】特開平11−308965号公報
【特許文献3】特開平4−45744号公報
【特許文献4】特許第3174065号明細書
【特許文献5】特開2007−319075号公報
【特許文献6】特開2009−5685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来のおりや沈殿を抑制する方法においては、非重合体カテキン類を高濃度に含有する飲料に対しては必ずしも効果が十分でなく、また香料又は果汁等の風味剤を配合すると、おりや沈殿の問題が顕在化しやすいことが判明した。
したがって、本発明の課題は、非重合体カテキン類を高濃度に含有したとしても、長期保存時においておりや沈殿を生成し難いカテキン含有飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
カテキン含有飲料におけるおりや沈殿の原因は、多糖類、タンパク質、ポリフェノール類、金属イオン等の成分が複合体を形成することにあると考えられている。本発明者らは、長期保存時においておりや沈殿が発生する原因を究明すべく鋭意検討した結果、意外にも、カテキン類と、従来苦味抑制剤として知られる環状デキストリンとを含有する水溶液を特定の濾過膜に通過させることで、おりや沈殿の原因物質が有効に除去され、その結果長期保存しても安定で、しかも風味の良好なカテキン含有飲料が得られることを新たに見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)カテキン製剤及び(B)環状デキストリンを含有する水溶液を精密濾過する、カテキン含有飲料の製造方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非重合体カテキン類を高濃度に含有するにも拘わらず、長期保存時においておりや沈殿を生成し難い安定性に優れるカテキン含有飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のカテキン含有飲料の製造方法について説明する。
本発明のカテキン含有飲料の製造方法は、(A)カテキン製剤及び(B)環状デキストリンを含有する水溶液を精密濾過するものである。
【0011】
(A)カテキン製剤としては、例えば、茶抽出液、その濃縮物又はそれらの精製物が例示され、これらのうちの少なくとも1種を選択して使用することができる。(A)カテキン製剤の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等の種々のものがある。
ここで、茶抽出液とは、茶樹から熱水又は水溶性有機溶媒を用いてニーダー抽出やカラム抽出等により抽出したものであって、濃縮や精製操作が行われていないものをいう。抽出に使用する茶樹としては、例えば、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica、それらの雑種が例示される。茶の種類は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。不発酵茶としては、例えば、煎茶、番茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が例示される。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が例示される。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
また、茶抽出液の濃縮物とは、茶樹から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出した抽出液から溶媒を一部除去して非重合体カテキン類濃度を高めたものをいい、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。茶抽出液の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等の緑茶抽出液の濃縮物が例示される。
【0013】
茶抽出液の精製物は、例えば、下記(i)〜(iv)のいずれかの方法、あるいは2以上の組み合わせにより得ることができる。
(i)茶抽出液又はその濃縮物(以下、「茶抽出液等」という)を水、水溶性有機溶媒(例えば、エタノール)、又は水と水溶性有機溶媒との混合物(以下、「有機溶媒水溶液」という)に懸濁して生じた沈殿を除去した後、溶媒を留去する方法(例えば、特開2004−147508号公報、特開2004−149416号公報)。
(ii)茶抽出液等を、活性炭、酸性白土及び活性白土から選択される少なくとも1種の吸着剤と接触させる方法(例えば、特開2007−282568号公報)。
(iii)茶抽出液等を合成吸着剤に吸着させた後、該合成吸着剤に有機溶媒水溶液を接触させて非重合体カテキン類を脱離させる方法(例えば、特開2006−160656号公報)。
(iv)茶抽出液等を合成吸着剤に吸着させた後、該合成吸着剤に有機溶媒水溶液又は塩基性水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を接触させて非重合体カテキン類を脱離させ、次いで得られた脱離液を活性炭と接触させる方法(例えば、特開2008−079609号公報)。
【0014】
上記(i)〜(iv)の方法においては、茶抽出液等としてタンナーゼ処理したものを使用してもよい。ここで、「タンナーゼ処理」とは、茶抽出液又はその濃縮物を、タンナーゼ活性を有する酵素と接触させることをいう。これにより、非重合体カテキン類中のガレート体率を調整することができる。なお、タンナーゼ処理における具体的な操作方法は公知の方法を採用することが可能であり、例えば、特開2004−321105号公報に記載の方法が例示される。
【0015】
ここで、本明細書において「非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は上記8種の合計量に基づいて定義される。また、「非重合体カテキン類のガレート体」とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートを併せての総称であり、「非重合体カテキン類中のガレート体率」とは上記4種の非重合体カテキン類のガレート体の総和質量を、非重合体カテキン類8種の総和質量に対する百分率で表した値である。
【0016】
なお、カテキン製剤水溶液中の非重合体カテキン類濃度は、好ましくは0.8〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%であり、このような濃度に調整するために、(A)カテキン製剤を必要により濃縮又は水希釈してもよい。
【0017】
また、本発明で使用する(B)環状デキストリンとは、澱粉類に酵素(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ)を作用させて得られるものであり、例えば、α−環状デキストリン、β−環状デキストリン、γ−環状デキストリン、クラスターデキストリンが例示される。(B)環状デキストリンは、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
(B)環状デキストリンは市販品を使用してもよい。例えば、β−環状デキストリンとしては、セルデックスB−100(日本食品化工社製)、デキシパールβ−100(塩水港精糖社製)等が例示され、γ−環状デキストリンとしては、CAVAMAX W8 Food(株式会社シクロケム:WACKER社製)等が例示される。また、環状デキストリンの混合製剤としては、例えば、セルデックスTB−50、セルデックスSL−20DP(日本食品化工社製)等が例示される。
(B)環状デキストリンとしては、γ−環状デキストリンを含有することが好ましく、γ−環状デキストリンと、β−環状デキストリンと、α−環状デキストリンとの混合物が更に好ましい。γ−環状デキストリンと、β−環状デキストリンと、α−環状デキストリンとの合計質量に占めるγ−環状デキストリンの割合は、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜95質量%、更に好ましくは60〜90質量%であり、またβ−環状デキストリンの割合は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは2〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%であり、残部はα−環状デキストリンである。
【0018】
本発明においては、(A)カテキン製剤及び(B)環状デキストリンを含有する水溶液を精密濾過に供するが、前記水溶液は、(1)カテキン製剤水溶液と環状デキストリンの配合、(2)固体のカテキン製剤と環状デキストリン水溶液の配合、(3)カテキン製剤水溶液と環状デキストリン水溶液の配合、(4)固体のカテキン製剤と環状デキストリンと水との配合等、任意の方法で調製することができる。(A)カテキン製剤と(B)環状デキストリンとを配合することにより、おりや沈澱の生成を促進させることができる。
【0019】
また、十分におりや沈澱を生成させるために、前記水溶液を調製後、その状態で一定時間保持することが好ましい。保持時間は1分〜3時間が好ましく、1分〜60分がより好ましく、1分〜30分が更に好ましい。保持温度は、おりや沈澱の生成促進の観点から、0〜40℃が好ましく、0〜30℃がより好ましく、0〜20℃が更に好ましい。保持の際には穏やかに攪拌を行っても差し支えないが、静置するのが好ましい。
【0020】
前記水溶液中の非重合体カテキン類濃度は、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは0.8〜5質量%である。このような濃度に調整するために、濃縮又は水希釈してもよい。
また、前記水溶液中の(B)環状デキストリンの含有量(有効成分質量)は、おりや沈殿の生成促進の観点から、前記水溶液中の非重合体カテキン類に対して、好ましくは0.1〜10質量倍、より好ましくは0.2〜5質量倍、更に好ましくは0.3〜3質量倍、殊更に好ましくは0.5〜2質量倍である。
【0021】
本発明においては、このようにして調製した前記水溶液を精密濾過する。これにより、おりや沈殿が除去され、カテキン含有飲料の長期安定性が高められる。
精密濾過に使用する膜としては、有機膜や無機膜が挙げられる。有機膜としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の親水性膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスルフォン(PS)等の疎水性膜が挙げられる。無機膜としては、酸化アルミニウム(アルミナ)や酸化ジルコニウム等のセラミック膜が一般的であり、他にはカーボン膜、ガラス製膜等が挙げられる。
膜の孔径は、好ましくは0.05〜0.8μm、より好ましくは0.05〜0.5μm、更に好ましくは0.08〜0.5μmである。また、膜厚としては、好ましくは0.1〜2.5mm、より好ましくは0.3〜2.0mm、更に好ましくは0.3〜1.5mmである。このような範囲内とすることで、おりや沈殿を効率よく除去することができる。
精密濾過膜は、チューブラータイプ、キャピラリータイプ、スパイラルタイプ又はホロファイバータイプに成型されたものを利用することができる。濾過方式は、クロスフロー濾過方式、フィード・ブリード方式(Feed&Breed)方式、直接方式等の任意の方式を採用することができる。操作圧力は0.01〜0.2MPa、処理温度は0〜80℃で行うことができる。
【0022】
また、本発明においては、所望の風味を有するカテキン含有飲料とするために、精密濾過前の前記水溶液、又は精密濾過後の濾液に、(C)香料及び(D)果汁から選択される1以上を配合することができる。
例えば、おりや沈殿の生成を抑制しつつ、より一層風味の良好なカテキン含有飲料とするには、精密濾過後の濾液に(C)香料及び(D)果汁から選択される1以上を配合することが好ましく、(C)香料を配合することが更に好ましい。
一方、所望の風味を付与しつつ、より一層清澄度の高いカテキン含有飲料とするには、精密濾過前の前記水溶液に(C)香料及び(D)果汁から選択される1以上を配合することが好ましく、中でも(C)香料を配合することが長期安定性の観点から好ましい。この場合、精密濾過後の濾液に(C)香料及び(D)果汁から選択される1以上を配合してもよく、中でも(C)香料を配合すると、おりや沈殿の生成を抑制しながら、より一層風味の良好なカテキン含有飲料とすることができる。
【0023】
本発明で使用する(C)香料とは、i)香気成分を含有する動植物の焙煎、酵素処理又は加水分解処理、ii)圧搾、iii)水、有機溶剤、超臨界二酸化炭素流体、亜臨界二酸化炭素流体による抽出、iv)水蒸気蒸留等により得られるものであり、更には化学合成品を調合又は配合したものも含まれる。すなわち、(C)香料として、天然香料、合成香料及びこれらの混合物の何れも用いることができる。
(C)香料として、具体的には、オレンジフラワー、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、マスカット、アセロラ、ウメ等を使用することができる。
香料の配合量は、飲料中に0.0001〜10質量%、更に、0.001〜5質量%となる量が好ましい。なお、香料を複数回配合する場合には、飲料中の香料の合計配合量が上記範囲内となるように適宜配合割合を決定することができる。
【0024】
また、本発明で使用する(D)果汁とは、圧搾や抽出といった手法により果実から得られるものであり、果汁から水分を取り除き1/4〜1/6程度まで濃縮された濃縮果汁も含まれる。なお、必要に応じて糖類や酸味料を添加した後、殺菌処理してもよい。
(D)果汁として、具体的には、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、マスカット、アセロラ、レモン、ウメ、ポンカン、イヨカン、カボス、シークワシャー等の果汁を使用することができる。
果汁の配合量は、飲料中に0.001〜20質量%、更に、0.002〜10質量%となる量が好ましい。なお、果汁を複数回配合する場合には、飲料中の果汁の合計配合量が上記範囲内となるように適宜配合割合を決定することができる。
【0025】
更に、本発明のカテキン含有飲料には、(A)カテキン製剤、(B)環状デキストリン、(C)香料及び(D)果汁以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、甘味料、酸味料、無機塩類、酸化防止剤、色素類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、野菜汁、花蜜、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤が例示され、飲料の種類に応じて適宜選択することが可能である。これら添加剤の配合量は、本発明の目的を阻却しない範囲内で適宜設定することができる。なお、これら添加剤は、その種類に応じて精密濾過前の前記水溶液及び精密濾過の濾液のうちの少なくとも一方に配合することが可能である。
【0026】
このようにして、本発明のカテキン含有飲料が得られるが、必要により濃縮又は水希釈してもよい。
カテキン含有飲料中の非重合体カテキン類濃度は、好ましくは0.03〜0.6質量%、より好ましくは0.06〜0.52質量%、更に好ましくは0.1〜0.3質量%である。
【0027】
本発明のカテキン含有飲料は、茶飲料でも、非茶系飲料であってもよい。茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料、麦茶飲料、ブレンド茶飲料が例示される。また、非茶系飲料としては、清涼飲料(例えば、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、炭酸飲料)、コーヒー飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の非アルコール飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等のアルコール飲料が例示される。中でも、非茶系飲料が好ましい。
【0028】
本発明のカテキン含有飲料のpH(20℃)は、風味及び非重合体カテキン類の安定性の観点から、2〜7、更に2.5〜6.5、更に3〜6であることが好ましい。
【0029】
本発明のカテキン含有飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
【0030】
また、本発明のカテキン含有飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【実施例】
【0031】
1)非重合体カテキン類の測定
試料を蒸留水で希釈し、メンブランフィルター(孔径0.8μm)でろ過後、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm、財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃で、A液及びB液を用いたグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0032】
2)環状デキストリンの測定
蒸留水で溶解した試料を、メンブランフィルター(孔径0.8μm)でろ過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、カラム(Shodex Asahipak GS-220 HQ、7.6mmID×300mm、昭和電工製)を2本装着し、カラム温度60℃で測定した。移動相は蒸留水、流速0.6mL/min、試料注入量は10μL、検出器はRIで行った。環状デキストリン含有量は標準品を用いた検量線から算出した。
【0033】
3)保存時のおり・沈殿の評価
各容器詰カテキン含有飲料を25℃にて保存し、6ヶ月後の外観を目視にて下記の基準により評価した。
【0034】
おり・沈殿の評価基準
5 : おり・沈殿が発生せず
4 : 極めて小さなおりが僅かに発生するが容器内の飲料が動くとすぐ消失
3 : 小さなおりが僅かに発生するが容器内の飲料が動くとすぐ消失
2 : 大きなおり・沈殿が少量発生
1 : 大きなおり・沈殿が多量に発生
【0035】
4)風味の評価
各容器詰カテキン含有飲料の風味について、専門パネラー5名が下記の基準により評価し、その後協議により評価値を決定した。
【0036】
風味の評価基準
5 : 風味が良好
4 : 風味がやや良好
3 : どちらでもない
2 : 風味がやや不良
1 : 風味が不良
【0037】
5)総合評価
「保存時のおり・沈殿の評価」及び「風味の評価」の評点の平均値に基づいて、下記の基準により評価した。
【0038】
総合評価の基準
A : 評点の平均値が4点以上
B : 評点の平均値が3.5点
C : 評点の平均値が3点
D : 評点の平均値が2.5点以下
【0039】
製造例1
市販の緑茶抽出物の濃縮物〔ポリフェノンHG、三井農林(株)〕100gを99.5質量%エタノール900gに分散させ、30分熟成し、2号濾紙及び孔径0.2μmの濾紙で濾過した。次いで、濾液に水200mLを加えて減圧濃縮することにより、(A)カテキン製剤の水溶液を得た。(A)カテキン製剤の水溶液中には、非重合体カテキン類が15.2質量%含まれていた。
【0040】
実施例1
製造例1で得られた(A)カテキン製剤の水溶液に、表1に示す各成分を次の順序で配合してカテキン含有飲料を調製した。すなわち、(A)カテキン製剤の水溶液20.0gに、(B)環状デキストリンとしてCAVAMAX W8 FOOD(γ−環状デキストリン含有量98.5質量%、シクロケム社製)2gと、セルデックスSL−20DP(環状デキストリン含有量20質量%、日本食品化工社製)10gを混合し、更に(D)5倍濃縮グレープフルーツ果汁2.5gと、(E)甘味料25gと、(F)酸味料4gと、(G)無機塩類2gと、(H)酸化防止剤1gを添加して混合した後、水を添加して総量を200gとし、得られた水溶液を20℃にて30分間、攪拌を行わずに保持した。
次いで、保持後の水溶液をメンブランフィルター(ライフアシュア、CUNO社製、ナイロン66、孔径0.45μm)で濾過した後、濾液に(C)グレープフルーツ香料(有効成分2質量%)1gを添加し、更に水を添加して全量を2500gに調整しカテキン含有飲料を得た。次いで、カテキン含有飲料をPETボトルに充填し容器詰カテキン含有飲料を得た。得られた容器詰カテキン含有飲料について、「保存時のおり・沈殿の評価」と「風味評価」を行った。その結果を表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例2、4及び比較例1〜3
表1に示す各成分を表2に記載の順序に変更して配合したこと以外は、実施例1と同様の方法により容器詰カテキン含有飲料を製造した。得られた容器詰カテキン含有飲料について、「保存時のおり・沈殿の評価」と「風味評価」を行った。その結果を表2に示す。
【0043】
実施例3
製造例1で得られた(A)カテキン製剤の水溶液20.0gと、(B)環状デキストリン(有効成分質量)3.97gとを含有する水溶液に、(C)グレープフルーツ香料(有効成分2質量%)1gと、(E)甘味料25gと、(F)酸味料4gと、(G)無機塩類2gと、(H)酸化防止剤1gを添加して混合した後、水を添加して総量を200gとし、得られた水溶液を20℃にて30分間、攪拌を行わずに保持した。次いで、保持後の水溶液をメンブランフィルターで濾過し、濾液に(C)グレープフルーツ香料(有効成分2質量%)0.2gと、(D)5倍濃縮グレープフルーツ果汁2.5gを添加した。その後、実施例1と同様の操作により容器詰カテキン含有飲料を得た。得られた容器詰カテキン含有飲料について、「保存時のおり・沈殿の評価」と「風味評価」を行った。その結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例5〜6及び比較例4
表1に示す各成分を表3に記載の順序に変更して配合したこと以外は、実施例1と同様の方法により容器詰カテキン含有飲料を製造した。得られた容器詰カテキン含有飲料について、「保存時のおり・沈殿の評価」と「風味評価」を行った。その結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表2及び3から、(A)カテキン製剤及び(B)環状デキストリンを含有する水溶液を精密濾過することで、長期保存時においておりや沈殿を生成し難いカテキン含有飲料が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カテキン製剤及び(B)環状デキストリンを含有する水溶液を精密濾過する、カテキン含有飲料の製造方法。
【請求項2】
精密濾過後、濾液に(C)香料及び(D)果汁から選択される1以上を配合する、請求項1記載のカテキン含有飲料の製造方法。
【請求項3】
精密濾過後、濾液に(C)香料を配合する、請求項1記載のカテキン含有飲料の製造方法。
【請求項4】
前記水溶液が(C)香料及び(D)果汁から選択される1以上を更に含有する、請求項1記載のカテキン含有飲料の製造方法。
【請求項5】
精密濾過後、濾液に(C)香料を配合する、請求項4記載のカテキン含有飲料の製造方法。
【請求項6】
前記水溶液が(C)香料を更に含有する、請求項1記載のカテキン含有飲料の製造方法。
【請求項7】
精密濾過後、濾液に(C)香料及び(D)果汁から選択される1以上を配合する、請求項6記載のカテキン含有飲料の製造方法。
【請求項8】
前記水溶液中の非重合体カテキン類濃度が0.2〜20質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記精密濾過に使用する膜の孔径が0.05〜0.8μmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−234714(P2011−234714A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86397(P2011−86397)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】