カテゴリー判定装置
【課題】 現実に測定されたティーチングデータ数が自己組織化特徴マップを生成するのに必要なデータ数に満たない場合であっても、信頼性のある自己組織化特徴マップを生成することが可能なカテゴリー判定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 打音検査装置10は集音マイク21、特徴マップ生成部33、演算部37、良否判定部35、補完データ生成部34を主体として構成される。特徴マップ生成部33においてはティーチングデータに基づいて自己組織化特徴マップFが生成されるが、ティーチングデータが自己組織特徴マップFを生成する必要数に足りていない場合には、補完データ生成部34がティーチングデータに基づいて擬似データを生成し、ティーチングデータの不足分を補うようになっている。従って、現実に測定されたティーチングデータ数が必要数に満たない場合であっても、信頼性のある自己組織化特徴マップFを生成することが出来る。
【解決手段】 打音検査装置10は集音マイク21、特徴マップ生成部33、演算部37、良否判定部35、補完データ生成部34を主体として構成される。特徴マップ生成部33においてはティーチングデータに基づいて自己組織化特徴マップFが生成されるが、ティーチングデータが自己組織特徴マップFを生成する必要数に足りていない場合には、補完データ生成部34がティーチングデータに基づいて擬似データを生成し、ティーチングデータの不足分を補うようになっている。従って、現実に測定されたティーチングデータ数が必要数に満たない場合であっても、信頼性のある自己組織化特徴マップFを生成することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化特徴マップを用いたカテゴリー判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、さまざまな分野においてセンシング技術が実用化されている(特許文献1)。
このものは圧力センサを用いてドアの開閉の判定を行うものである。判定装置には学習モードと判定モードが設定されており、学習モードにおいて閉状態における圧力データ(ティーチングデータ)を取得する。そして、ティーチングデータに基づいて自己組織化特徴マップを生成し、生成された自己組織化特徴マップと判定モードにおいて検出された圧力データに基づいてドアが閉じられた状態であるか、或いはドアが開けられた状態にあるのかを判定する。
【特許文献1】特開2000−266570公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記構成では自己組織化特徴マップを生成するのに相当数のティーチングデータを必要とするため、仮に、ティーチングデータが不足した状況であると、信頼のある自己組織化特徴マップを生成することが出来ない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、現実に測定されたティーチングデータ数が自己組織化特徴マップを生成するのに必要なデータ数に満たない場合であっても、信頼性のある自己組織化特徴マップを生成することが可能なカテゴリー判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、学習モードで既にカテゴリーが知られた基準となる被測定対象物からの情報を取得して自己組織化特徴マップを生成した後に、検査モードで検査対象となる被測定対象物からの情報を取得し、得られた検査対象の情報と前記自己組織化特徴マップとに基づいて検査対象たる被測定対象物のカテゴリーを判定するものであり、前記自己組織化特徴マップの生成に際して前記基準となる被測定対象物からの情報を所定数必要とするカテゴリー判別装置であって、前記被測定対象物からの情報に基づく信号を出力する測定手段と、前記基準となる被測定対象物からの情報に基づく前記測定手段からの信号をティーチングデータとして取り込んで前記自己組織化特徴マップを生成する特徴マップ生成手段と、前記被測定対象物からの情報に基づく信号と前記自己組織化特徴マップとに基づいて前記被測定対象物のカテゴリーを判定するカテゴリ判定部と、前記ティーチングデータが前記自己組織化特徴マップを生成するのに必要なデータ数に満たない場合に前記ティーチングデータに構成値の大きさが似た擬似データを生成する補完データ生成手段とを備えてなるとともに、前記特徴マップ生成手段は前記ティーチングデータの不足分を前記擬似データによって補って前記自己組織化特徴マップを生成するよう構成されているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記補完データ生成手段は前記ティーチングデータの構成値を基準とし、この基準とされた値をティーチングデータの不足量に応じて増減させて擬似データの構成値とするところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ティーチングデータの構成値の分布範囲を算出する分布範囲算出手段を備え、前記補完データ生成手段は前記分布範囲を基に、これを前記ティーチングデータの不足分に応じて拡張させ、その拡張された範囲内において前記擬似データの構成値を決定するところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1に記載のものにおいて、複数のカテゴリーのティーチングデータをそれぞれ取り込んで前記自己組織化特徴マップに複数のカテゴリーを組織化させるものにおいて、各カテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を各カテゴリー毎にそれぞれ算出する分布範囲算出手段を備え、前記補完データ生成手段は補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値を決定するに際し、補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲と他のカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲とに重複した範囲がある場合には、補完すべきカテゴリーのティーチングデータの分布範囲内で擬似データの構成値を決定し、前記分布範囲に重複した範囲がない場合には、前記補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を基準として、これを他のカテゴリーのティーチングデータの構成値に重ならない範囲内で拡張させ、その拡張された範囲内において構成値を決定するところに特徴を有する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4に記載のものにおいて、前記補完データ生成手段は前記補完データを前記ティーチングデータの不足分だけ生成するところに特徴を有する。
【0009】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5に記載のものにおいて、前記検査モードにおいて、
前記特徴マップ生成手段は前記カテゴリ判定部が前記判定に用いた検査対象の情報を前記擬似データに置き換え、置き換えた検査対象の情報に基づいて前記学習モードで生成された自己組織化特徴マップを更新するよう構成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項7の発明は、請求項6に記載のものにおいて、前記特徴マップ生成手段は前記擬似データの置き換えに際して、前記検査対象の情報の構成値に最も構成値が類似する擬似データを置き換えの対象とするところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、ティーチングデータが必要なデータ数に足りていない場合であっても、不足分が擬似データによって補われるから自己組織化特徴マップを生成することが出来る。また、擬似データはティーチングデータを基準として決定されるから、データを無作為に生成する場合に比べて、ティーチングデータに近い擬似データが得られ判定の信頼性も高まる。
【0012】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、擬似データはティーチングデータの構成値を基準とし、これをデータの不足分に応じて増減させて決定されるから、擬似データの構成値の大きさを無作為に決定する場合に比べて、信頼性の高い擬似データが得られる。
【0013】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、補完される擬似データの構成値は、データの不足分に応じた所定の範囲内で決定されるから、擬似データ(構成値の大きさ)を無作為に決定する場合に比べて、信頼性の高い擬似データが得られる。
【0014】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、補完される擬似データの構成値は、他のカテゴリの構成値の分布範囲と重ならない範囲内で決定されるから、これら擬似データ(構成値の大きさ)を無作為に決定する場合に比べて、信頼性の高い擬似データが得られる。
【0015】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によれば、擬似データは学習回数の不足数だけ生成される。このような構成であれば、余分な擬似データが生成されることがなく、処理時間の短縮が図られる。
【0016】
<請求項6の発明>
請求項6の発明によれば、ティーチングデータが不足している場合には被測定対象物からの情報に基づく信号を取り込んで自己組織化特徴マップが更新されてゆくから、更新完了後には現実に測定手段によって測定された信号が必要数、自己組織化特徴マップに取り込まれることとなり、信頼性の高い自己組織化特徴マップが得られる。
【0017】
<請求項7の発明>
請求項7の発明によれば、自己組織化特徴マップの更新は、擬似データに類似する構成値を有する信号に基づいて行われる。このような更新の仕方であれば、既存の組織化の様子が大きく変更されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
本実施形態はカテゴリー判定装置をプラント配管(本発明の被測定対象物に相当する)Tの劣化を検出するための打音検査装置(非破壊検査)に適用したものである(図1参照)。まず、打音検査装置10の測定原理についておおまかに説明すると、劣化のない健全な状態のプラント配管(本発明の基準となる被測定対象物に相当)Ta並び、劣化が進んだ状態のプラント配管(本発明の基準となる被測定対象物に相当)Tbをそれぞれ複数個用意しておく。そして、これらをハンマーで打ち、そのときの打音をそれぞれ集音マイク(本発明の測定手段に相当する)21で測定する。
【0019】
集音マイク21からは打音に応じた電気信号が出力され、これがティーチングデータとしてデータ処理部30内に相当数取り込まれる。データ処理部30内においては取り込まれたティーチングデータに基づいて、類似する特徴を構成値として持つデータ群が良品、劣化品の別に組織化された自己組織特徴化マップFが生成される(図6、学習モード)。
【0020】
そして、自己組織化特徴マップFが生成された後に検査の対象となるプラント配管T(劣化の有無が知れていないもの)の打音を集音マイク21によって測定し、得られた検査対象の電気信号と、自己組織化特徴マップFとによって、検査対象たるプラント配管Tの劣化の有無の判定を行うものである(検査モード)。尚、プラント配管Tから得られる打音が、本発明における被測定対象物からの情報に相当するものである。
【0021】
図2は打音検査装置10の全体構成を示すブロック図であって、前記集音マイク21と、集音マイク21から出力されたアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器23、変換されたディジタル信号が入力されるデータ処理部30を主体として構成される。データ処理部30は入力信号をベクトルデータに変換する信号変換部31、データが記憶されるメモリ32、自己組織化特徴マップFを生成するための特徴マップ生成部(本発明の特徴マップ生成手段に相当する)33、検査対象となるプラント配管Tの劣化の有無の判定を行う良否判定部(本発明のカテゴリ判定手段に相当する)35、補完データ生成部(本発明の補完データ生成手段に相当する)34、演算部37並びにカウンタから構成される。尚、カウンタは良品用のカウンタ39a、劣化品用のカウンタ39bの二つのカウンタから構成されている。また、演算部37が本発明の分布範囲算出手段に相当するものである。
【0022】
次に、データ処理部30内における具体的な処理内容について説明する。
集音マイク21からの電気信号はA/D変換器23によってディジタル化された後に、信号変換部31に入力される。信号変換部31では入力された電気信号の特徴抽出を行う。本実施形態では、特徴として信号の実行値、最大値、最小値、平均等(n個の特徴)を抽出し、これら抽出された各値を構成値とするn次元のベクトルデータ(以下、単に入力ベクトルとする)を生成する。これにより、音声信号はベクトルに変換される。尚、構成値とは入力ベクトルがX=(x1,x2,,xi,,xn)であれば、x1,x2,,xn等である。
【0023】
この入力ベクトルXはメモリ32内に書き込まれる。そして、学習モードにおいては特徴マップ生成部33によって書き込まれた入力ベクトルXの読み出しが行われ、検査モードにおいては良否判定部35によって入力ベクトルXの読み出しが行われる。
【0024】
特徴マップ生成部33は複数のニューロンW(本実施形態ではM個)が割付られたマップ層と、入力ベクトルXがセットされる入力層とから構成される(図3参照)。マップ層の各ニューロンにはそれぞれ入力ベクトルXと同じくn次元の重みベクトルWが付与されており、この値を更新することで自己組織化特徴マップFが形成されるようになっている。
【0025】
図4を参照して、自己組織化特徴マップの生成手順(学習モード)について説明する。ステップ1においては、各ニューロンの重みベクトルWの初期化を行う。具体的には、演算部37において、乱数により重みベクトルWの各構成値を決定する。
【0026】
ステップ3においては、入力層に入力ベクトルX(ここでは、ティーチングデータをベクトル変換したもの)を与える。そして、入力ベクトルXが入力層にセットされると、特徴マップ生成部33に付設されるカウンタのうち対応するカウンタ(良品のティーチングデータであれば良品用のカウンタ39a、劣化品のティーチングデータであれば劣化品用のカウンタ39b)のカウント値が1づつ更新され、これにより、良品の学習回数並びに、劣化品の学習回数がそれぞれカウントされるようになっている。
【0027】
ステップ5においては、演算部37でセットされた入力ベクトルXと各ニューロンWとの距離dを、次の(1)式から(3)式に基づいてそれぞれ算出する。そして、算出された距離dがもっと小さい、すなわち入力ベクトルXと最も類似した重みベクトルWj*を持ったニューロンが勝者ニューロンとして抽出される。
【0028】
X=(x1,x2,x3,,,xi,,,xn)・・・・・・(1)式
Wji=(wj1,wj2,wj3,,wji,,wjn)・(2)式
【数1】
【0029】
尚、上記式はマップ層におけるj番目のニューロンと、入力ベクトルXとの距離を算出したものである。
【0030】
ステップ7においては、勝者ニューロン並びにその近傍のニューロンの重みベクトルが、次の(4)から(6)式によって更新される。また、このときに、入力ベクトルXが劣化のない良品のデータであるときには更新された各ニューロンには良品であるという情報が付与され、入力ベクトルXが劣化品であるときには更新された各ニューロンには良品であるという情報が付与される。
【0031】
W’=Wji+ΔWji・・・・・・・・・・・・・(4)式
ΔWji=ηh(j,j*)(xi−wji)・・・・・・(5)式
尚、ここで、W’は更新後のニューロンの重みベクトル、Wjiは更新前のニューロンの重みベクトルである。また、ηは学習係数であって学習回数が多くなるにつれて小さくなってゆく正の定数である。
【0032】
【数2】
尚、ここで、│j−j*│はj番目のニューロンと勝者ニューロンとの距離(ユークリッド距離)である。
【0033】
そして、ステップ3からステップ7の処理を繰り返し行うことで学習、すなわちマップ層を構成する各ニューロンに良否の情報が付与されるとともに、重みベクトルWの更新が繰り返し行われる。
【0034】
また、近傍関数半径σは学習の進行とともに小さくなるから、図5に示すように学習の初期においては多くのニューロンが勝ちニューロンの近くであるとみさなされて学習の対象(重みベクトルの更新の対象)とされるが、学習の進行とともに勝ちニューロンの近くであるとみされるニューロン数が減少する。このような学習手順を踏むことで、学習の初期には広範囲に亘って大まかな学習を行い、学習が進むにつれて狭い範囲に細かな学習をすることとしている。
【0035】
かくして、マップ層には良品の情報を持ったニューロンのグループ(図6におけるハッチングされていない側)と、劣化品の情報をもったニューロンのグループ(図6におけるハッチングされた側)とに組織化、すなわち自己組織化特徴マップFが生成される。
【0036】
また、自己組織化特徴マップFを構成する各ニューロンWの構成値は、先に述べたように初期状態においては乱数により付与されるから、信頼性の高いマップを形成するには相当数(本実施形態では必要数をZ回としている)の学習を行う必要がある。
【0037】
そこで、ステップ9において良品用のカウンタ39aのカウント値、並びに劣化品用のカウンタ39bのカウント値がそれそれZ回に達しているか、否かの判定をそれぞれ行う。その結果、良品・劣化品の双方のカウント値がいずれもZ回に達している場合には学習が十分に行われたとして学習を完了させ、後述する検査モードに移行する。一方、いずれか一方でもカウント値がZ回に達していない場合には、ステップ10へ移行し、補完処理を行う(図7参照)。尚、当然のことではあるが、学習回数の判定はティーチングが繰り返し行われているときにはなされず、全ての入力ベクトルX(ティーチングデータ)の取り込みが完了した後にのみ行われる。
【0038】
ステップ10に移行すると補完データ生成部34において、学習回数の不足分だけ擬似データが生成される。以下、劣化品の学習回数が不足している場合を例にとって、擬似データの生成方法を図8ないし図10を参照して具体的に説明する。擬似データを生成するにあたって、まず、演算部37によって入力ベクトルXの各次元における構成値の平均値並びに偏差を以下の要領で、良品、劣化品についてそれぞれ個別に算出する(図8におけるSTEP10−1)。
【0039】
A1=(a11,a12,a13,,,,a1n)・・・・・(7)式
A2=(a21,a22,a23,,,,a2n)・・・・・(8)式
Ak=(ak1,ak2,ak3,,,,akn)・・・・・(9)式
B1=(b11,b12,b13,,,,b1n)・・・・・(10)式
B2=(b21,b22,b23,,,,b2n)・・・・・(11)式
Bk=(bk1,bk2,bk3,,,,bkn)・・・・・(12)式
尚、A1からAkは良品の入力ベクトルであり、B1からBkは劣化品の入力ベクトルである。
【0040】
<一次元の構成値>
A1av=(a11+a21+・・+ak1)/k・・・・・・・(13)式
B1av=(b11+b21+・・+bk1)/k・・・・・・・(14)式
【数4】
【数5】
【0041】
<二次元の構成値>
A2av=(a12+a22+・・+ak2)/k・・・・・・・(17)
B2av=(b12+b22+・・+bk2)/k・・・・・・・(18)
【数6】
【数7】
【0042】
その後、演算部37で各次元の構成値の正規分布を良品A、劣化品Bごとにそれぞれ算出し(図9参照)、得られた正規分布に重複範囲があるか、否かの判定を行う。正規分布の重複の判断基準は3σを基準としており、それぞれの平均Aav、Bavから3σの範囲に重複領域がなければ、重複なしとする。図9の(A)のような場合であれば「重複」と判定され、図9の(B)に示すような場合であれば「重複なし」と判定される(図8のSTEP10−2、3)。
【0043】
続いて、擬似データ(劣化品の擬似データ)の構成値を各次元ごとにそれぞれ決定する。本実施形態では、構成値は乱数によって決定されるが、乱数の抽出範囲が先に判定した重複の可否によって異なっている。
【0044】
まず、正規分布の範囲が重複していた場合には、その次元における劣化品の正規分布の範囲内、すなわち一次元の構成値であれば、B1av±3σb1を乱数の抽出範囲とし、同範囲内から構成値をランダムに取得する(図8のSTEP10−4)。
【0045】
一方、正規分布の範囲が重複していなかった場合には、その次元における劣化品の正規分布に基づいて、この範囲を良品の正規分布に重ならないように拡張する。すなわち、図10に示す場合(二次元の構成値を例にとって説明する)であれば、乱数抽出範囲はB2av±ωとされ、同範囲内から構成値をランダムに取得する(図8のSTEP10−5、6)。ここで、ω={(A2av+3σa2)+(B2av−3σb2)}/2であり、これをk次元の一般式で表すと次のようになる。
【0046】
ω={(Akav+3σa2)+(Bkav−3σb2)}/2・・・・(21)式
ω={(Bkav+3σb2)+(Akav−3σa2)}/2・・・・(22)式
尚、(21)式はAkavよりBkavの値が大きい場合であり、(22)式はAkavよりB2avの値が小さい場合である。
【0047】
かくして、擬似データの各次元の構成値が決定される。そして、データの不足分だけ擬似データが生成されると、その後、ステップ13に移行する(図7参照)。
【0048】
ステップ13では、ステップ10で生成された擬似データをティーチングデータとして入力層にセットする。そして、ステップ15ではステップ5の処理と同様に勝者ニューロンが決定され、ステップ17ではステップ7と同様に勝者ニューロン並びにその近傍のニューロンに対して、良否情報の付与を行うとともに重みベクトルWの更新が行われる。こうした、擬似データに基づく学習を学習回数の不足分だけ行い、学習が完了する。
【0049】
次に、検査モードにおける処理について、図11を参照して説明する。
ステップ21では、まず良否判定部35によってメモリ32から、検査対象の入力ベクトルXが読み出され、その後、ステップ23へ移行する。
【0050】
ステップ23では、演算部37が検査対象の入力ベクトルXと学習済みの各ニューロンの重みベクトルWとの距離dを先に説明した(1)から(3)式に基づいてそれぞれ算出する。そして、各ニューロンに対する距離dが全て算出されると、ステップ25へ移行する。
【0051】
ステップ25では、良否判定部35によって勝者ニューロンが決定される。具体的には、ステップ23で算出された距離dの大小を比較して距離dが最も小さかった、すなわち検査対象の入力ベクトルXと最も距離dが近い重みベクトルWj*を有するニューロンを勝ちニューロンとする。
ここで、距離dが最小であるということは、検査対象の入力ベクトルXは勝ちニューロンに構成値、すなわち最大値、最小値、平均値等の特徴が似通ったデータであることを意味しており、検査対象の入力ベクトルXの属性(良品、劣化品のいずれに属するか)が抽出された勝ちニューロンの属性と同じと考えることが出来る。
【0052】
ステップ27では、ステップ25で抽出された勝ちニューロンの属性を、検査結果として出力する。すなわち、抽出された勝ちニューロンの属性が良品であれば「検査対象は良品である」とする検査結果を出力し、勝ちニューロンの属性が劣化品であれば「検査対象は劣化品である」とする検査結果を出力する。
【0053】
このように、本実施形態によれば、打音検査装置10には補完データ生成部34が設けられ、そこではティーチングデータを基に擬似データが生成されるようになっている。そのため、ティーチングデータが必要なデータ数に足りていない場合であっても、不足分が擬似データによって補われるからマップ層上のニューロンに対して十分な学習を行うことが出来、これにより、生成される自己組織化特徴マップFは信頼性の高いものとなる。また、擬似データはティーチングデータを基準として決定されるからデータを無作為に生成する場合に比べて、ティーチングデータに近い擬似データが得られ、より信頼性が高まる。
【0054】
加えて、擬似データは学習回数の不足数だけ生成される。このような構成であれば、余分な擬似データが生成されることがなく、処理時間の短縮が図られる。
【0055】
<実施形態2>
実施形態1においては学習、すなわち各ニューロンの重みベクトルWの更新を、学習モード中(補完処理を含む)中にのみ行ったが、本実施形態では擬似データを用いて自己組織化特徴マップFを生成した場合には、検査モード中においても学習を行うこととしている(次に、説明するステップ39の追加)。また、実施形態2のものにおいては、入力層はメモリ機能を備え、学習モード中に入力層に取り込まれたティーチングデータ(擬似データを含む)が記憶されるようになっている。
【0056】
図12は、実施形態2における検査モードの処理手順を示すフローチャート図である。同図に示すように、ステップ31では、実施形態1におけるステップ21と同様に検査対象の入力ベクトルXを読み出す。その後、ステップ33へ移行する。ここでは、ステップ23と同様に各ニューロンの重みベクトルWと検査対象の入力ベクトルXとの距離dが算出され、各ニューロンに対する距離の算出が完了すると、ステップ35へ移行し、そこでステップ25の処理と同様の手順で勝者ニューロンが決定される。
【0057】
その後、ステップ37で、勝者ニューロンのカテゴリーに基づいて検査結果が出力され、ステップ39へ移行する。
【0058】
ステップ39では検査対象の入力ベクトル(検査対象の情報に相当する)Xと擬似データの置き換えを行う。置き換えの対象となる擬似データは、検査対象の入力ベクトルXの構成値に最も似通った構成値を有する擬似データであり、これを抽出するには、検査対象の入力ベクトルXと全擬似データとの距離を算出してやればよい(最小距離の擬似データが置き換えの対象となる)。その後、特徴マップ生成部33は既に自己組織化がされたマップ層上のニューロンの重みベクトルを全て初期化し、更新された置き換え後の入力層のデータに基づいて改めて始めから自己組織化を行う。
【0059】
このように、擬似データを使用して自己組織化特徴マップFが生成されたときには、検査対象の入力ベクトルXを取り込んで自己組織化特徴マップFが更新されてゆくから、更新完了後には現実に集音マイク21によって測定されたデータが必要数、自己組織化特徴マップFに取り込まれることとなり、信頼性の高い自己組織化特徴マップFが得られる。
また、置き換えの対象には検査対象の入力ベクトルと構成値の似た擬似データが抽出されるから、既存の判断基準(マップ上の組織化の様子)が大きく変更されることがない。
【0060】
尚、検査対象の入力ベクトルXが入力される度に自己組織化特徴マップFを更新すると、際限なく自己組織化特徴マップFの更新が行われてしまうが、マップFに対して必要数のデータが取り込まれた後には、ステップ39の処理をスキップするような制御を行えば、それ以上に自己組織化特徴マップFが更新されることを防止できる。その他の構成については実施形態1と同様であるため、重複した説明については割愛するものとする。
【0061】
<実施形態3>
実施形態2においては自己組織化特徴マップFの更新(検査モード中の学習)を、検査対象の入力ベクトルが入力される度に行ったが、実施形態3では一定期間、検査対象の入力データXをメモリ32にストックしておき、ある程度のデータがストックされたところで一括してデータの置き換えを行い、これに基づいて自己組織化特徴マップを更新することとしている。
【0062】
<実施形態4>
実施形態1においては、擬似データを生成するにあたって、まず、ティーチングデータの構成値の正規分布を良品、劣化品ごとにそれぞれ算出し、その後、得られた正規分布同士に重複があるか、否かに基づいて所定の範囲を定め、その範囲内において乱数により構成値(擬似データの構成値)を決定したが、実施形態4では擬似データの構成値を実施形態1と異なる方法で決定している。
実施形態4では、まずティーチングデータの中からランダムにデータを抽出して、その構成値にティーチングデータの不足分に応じた比率を乗じる。具体的には、ティーチングデータが必要数に対して10%不足している場合には、抽出された構成値に対して0.9或いは、1.1を乗ずる。その他の構成については、実施形態1と同様である。
【0063】
<実施形態5>
実施形態1においては擬似データを生成するにあたって、まず、ティーチングデータの構成値の正規分布を良品、劣化品ごとにそれぞれ算出し、その後、得られた正規分布同士に重複があるか、否かに基づいて所定の範囲を定め、その範囲内において乱数により構成値(擬似データの構成値)を決定したが、実施形態5では擬似データの構成値を実施形態1とは異なる方法で決定している。
実施形態5では、実施形態1と同様にティーチングデータの構成値の正規分布を良品、劣化品ごとにそれぞれ算出し、その後、この範囲をティーチングデータの不足分に応じた比率を乗じて拡大させる。例えば、ティーチングデータが必要数に対して20%不足している場合には実施形態1で算出した偏差σb1にたいして1.2倍して範囲をB1av±3.6σb1に拡張し、この拡張された範囲内において乱数によりランダムに数値を取得することで、擬似データの一次元の構成値を決定する。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0065】
(1)本実施形態では、自己組織化特徴マップFに良品のグループと、劣化品のグループの二つのグループを組織化したが、組織化は二つのグループに限らず3つ、あるいはそれ以上であってもよい。
【0066】
(2)本実施形態では、カテゴリー判定装置を打音検査装置に適用したが、用途はこれに限られるものではなく、この他にもモータの振動音から同モータの回転軸の軸ずれを検出する等に使用することも出来る。
【0067】
(3)本実施形態では、自己組織化特徴マップFに良品のグループと、劣化品のグループの二つのグループを組織化したが、組織化は1つのグループであってよく、この場合のカテゴリーの判定は、まず入力ベクトルとマップ層上の各ニューロンの重みベクトルとの距離を算出する。その後に算出された距離の中から最小距離を抽出し、更に、これを所定の閾値と比較する。その結果、最小距離が閾値より小さければ検査対象はマップ層上に組織化されたカテゴリーと同一であると判断でき、最小値が閾値より大きければ、検査対象はマップ層上のカテゴリーとは異なるものであると判定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態1における、検査対象から音声を計測する様子を示す図
【図2】打音検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】自己組織化特徴マップの構造を示す図
【図4】学習モードの処理手順を示すフローチャート図
【図5】学習過程を示す図
【図6】ニューロンが組織化された状態を示す図
【図7】補完データにより学習が行われる場合の処理手順を示すフローチャート図
【図8】擬似データの生成手順を示すフローチャート図
【図9】構成値の正規分布を示す図
【図10】乱数の取り得る範囲を示す図
【図11】検査モードの処理手順を示すフローチャート図
【図12】実施形態2における、検査モードの処理手順を示すフローチャート図
【符号の説明】
【0069】
10…打音検査装置
21…集音マイク
33…特徴マップ生成部
34…補完データ生成部
35…良否判定部
37…演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化特徴マップを用いたカテゴリー判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、さまざまな分野においてセンシング技術が実用化されている(特許文献1)。
このものは圧力センサを用いてドアの開閉の判定を行うものである。判定装置には学習モードと判定モードが設定されており、学習モードにおいて閉状態における圧力データ(ティーチングデータ)を取得する。そして、ティーチングデータに基づいて自己組織化特徴マップを生成し、生成された自己組織化特徴マップと判定モードにおいて検出された圧力データに基づいてドアが閉じられた状態であるか、或いはドアが開けられた状態にあるのかを判定する。
【特許文献1】特開2000−266570公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記構成では自己組織化特徴マップを生成するのに相当数のティーチングデータを必要とするため、仮に、ティーチングデータが不足した状況であると、信頼のある自己組織化特徴マップを生成することが出来ない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、現実に測定されたティーチングデータ数が自己組織化特徴マップを生成するのに必要なデータ数に満たない場合であっても、信頼性のある自己組織化特徴マップを生成することが可能なカテゴリー判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、学習モードで既にカテゴリーが知られた基準となる被測定対象物からの情報を取得して自己組織化特徴マップを生成した後に、検査モードで検査対象となる被測定対象物からの情報を取得し、得られた検査対象の情報と前記自己組織化特徴マップとに基づいて検査対象たる被測定対象物のカテゴリーを判定するものであり、前記自己組織化特徴マップの生成に際して前記基準となる被測定対象物からの情報を所定数必要とするカテゴリー判別装置であって、前記被測定対象物からの情報に基づく信号を出力する測定手段と、前記基準となる被測定対象物からの情報に基づく前記測定手段からの信号をティーチングデータとして取り込んで前記自己組織化特徴マップを生成する特徴マップ生成手段と、前記被測定対象物からの情報に基づく信号と前記自己組織化特徴マップとに基づいて前記被測定対象物のカテゴリーを判定するカテゴリ判定部と、前記ティーチングデータが前記自己組織化特徴マップを生成するのに必要なデータ数に満たない場合に前記ティーチングデータに構成値の大きさが似た擬似データを生成する補完データ生成手段とを備えてなるとともに、前記特徴マップ生成手段は前記ティーチングデータの不足分を前記擬似データによって補って前記自己組織化特徴マップを生成するよう構成されているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記補完データ生成手段は前記ティーチングデータの構成値を基準とし、この基準とされた値をティーチングデータの不足量に応じて増減させて擬似データの構成値とするところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ティーチングデータの構成値の分布範囲を算出する分布範囲算出手段を備え、前記補完データ生成手段は前記分布範囲を基に、これを前記ティーチングデータの不足分に応じて拡張させ、その拡張された範囲内において前記擬似データの構成値を決定するところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1に記載のものにおいて、複数のカテゴリーのティーチングデータをそれぞれ取り込んで前記自己組織化特徴マップに複数のカテゴリーを組織化させるものにおいて、各カテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を各カテゴリー毎にそれぞれ算出する分布範囲算出手段を備え、前記補完データ生成手段は補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値を決定するに際し、補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲と他のカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲とに重複した範囲がある場合には、補完すべきカテゴリーのティーチングデータの分布範囲内で擬似データの構成値を決定し、前記分布範囲に重複した範囲がない場合には、前記補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を基準として、これを他のカテゴリーのティーチングデータの構成値に重ならない範囲内で拡張させ、その拡張された範囲内において構成値を決定するところに特徴を有する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4に記載のものにおいて、前記補完データ生成手段は前記補完データを前記ティーチングデータの不足分だけ生成するところに特徴を有する。
【0009】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5に記載のものにおいて、前記検査モードにおいて、
前記特徴マップ生成手段は前記カテゴリ判定部が前記判定に用いた検査対象の情報を前記擬似データに置き換え、置き換えた検査対象の情報に基づいて前記学習モードで生成された自己組織化特徴マップを更新するよう構成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項7の発明は、請求項6に記載のものにおいて、前記特徴マップ生成手段は前記擬似データの置き換えに際して、前記検査対象の情報の構成値に最も構成値が類似する擬似データを置き換えの対象とするところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、ティーチングデータが必要なデータ数に足りていない場合であっても、不足分が擬似データによって補われるから自己組織化特徴マップを生成することが出来る。また、擬似データはティーチングデータを基準として決定されるから、データを無作為に生成する場合に比べて、ティーチングデータに近い擬似データが得られ判定の信頼性も高まる。
【0012】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、擬似データはティーチングデータの構成値を基準とし、これをデータの不足分に応じて増減させて決定されるから、擬似データの構成値の大きさを無作為に決定する場合に比べて、信頼性の高い擬似データが得られる。
【0013】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、補完される擬似データの構成値は、データの不足分に応じた所定の範囲内で決定されるから、擬似データ(構成値の大きさ)を無作為に決定する場合に比べて、信頼性の高い擬似データが得られる。
【0014】
<請求項4の発明>
請求項4の発明によれば、補完される擬似データの構成値は、他のカテゴリの構成値の分布範囲と重ならない範囲内で決定されるから、これら擬似データ(構成値の大きさ)を無作為に決定する場合に比べて、信頼性の高い擬似データが得られる。
【0015】
<請求項5の発明>
請求項5の発明によれば、擬似データは学習回数の不足数だけ生成される。このような構成であれば、余分な擬似データが生成されることがなく、処理時間の短縮が図られる。
【0016】
<請求項6の発明>
請求項6の発明によれば、ティーチングデータが不足している場合には被測定対象物からの情報に基づく信号を取り込んで自己組織化特徴マップが更新されてゆくから、更新完了後には現実に測定手段によって測定された信号が必要数、自己組織化特徴マップに取り込まれることとなり、信頼性の高い自己組織化特徴マップが得られる。
【0017】
<請求項7の発明>
請求項7の発明によれば、自己組織化特徴マップの更新は、擬似データに類似する構成値を有する信号に基づいて行われる。このような更新の仕方であれば、既存の組織化の様子が大きく変更されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図11によって説明する。
本実施形態はカテゴリー判定装置をプラント配管(本発明の被測定対象物に相当する)Tの劣化を検出するための打音検査装置(非破壊検査)に適用したものである(図1参照)。まず、打音検査装置10の測定原理についておおまかに説明すると、劣化のない健全な状態のプラント配管(本発明の基準となる被測定対象物に相当)Ta並び、劣化が進んだ状態のプラント配管(本発明の基準となる被測定対象物に相当)Tbをそれぞれ複数個用意しておく。そして、これらをハンマーで打ち、そのときの打音をそれぞれ集音マイク(本発明の測定手段に相当する)21で測定する。
【0019】
集音マイク21からは打音に応じた電気信号が出力され、これがティーチングデータとしてデータ処理部30内に相当数取り込まれる。データ処理部30内においては取り込まれたティーチングデータに基づいて、類似する特徴を構成値として持つデータ群が良品、劣化品の別に組織化された自己組織特徴化マップFが生成される(図6、学習モード)。
【0020】
そして、自己組織化特徴マップFが生成された後に検査の対象となるプラント配管T(劣化の有無が知れていないもの)の打音を集音マイク21によって測定し、得られた検査対象の電気信号と、自己組織化特徴マップFとによって、検査対象たるプラント配管Tの劣化の有無の判定を行うものである(検査モード)。尚、プラント配管Tから得られる打音が、本発明における被測定対象物からの情報に相当するものである。
【0021】
図2は打音検査装置10の全体構成を示すブロック図であって、前記集音マイク21と、集音マイク21から出力されたアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器23、変換されたディジタル信号が入力されるデータ処理部30を主体として構成される。データ処理部30は入力信号をベクトルデータに変換する信号変換部31、データが記憶されるメモリ32、自己組織化特徴マップFを生成するための特徴マップ生成部(本発明の特徴マップ生成手段に相当する)33、検査対象となるプラント配管Tの劣化の有無の判定を行う良否判定部(本発明のカテゴリ判定手段に相当する)35、補完データ生成部(本発明の補完データ生成手段に相当する)34、演算部37並びにカウンタから構成される。尚、カウンタは良品用のカウンタ39a、劣化品用のカウンタ39bの二つのカウンタから構成されている。また、演算部37が本発明の分布範囲算出手段に相当するものである。
【0022】
次に、データ処理部30内における具体的な処理内容について説明する。
集音マイク21からの電気信号はA/D変換器23によってディジタル化された後に、信号変換部31に入力される。信号変換部31では入力された電気信号の特徴抽出を行う。本実施形態では、特徴として信号の実行値、最大値、最小値、平均等(n個の特徴)を抽出し、これら抽出された各値を構成値とするn次元のベクトルデータ(以下、単に入力ベクトルとする)を生成する。これにより、音声信号はベクトルに変換される。尚、構成値とは入力ベクトルがX=(x1,x2,,xi,,xn)であれば、x1,x2,,xn等である。
【0023】
この入力ベクトルXはメモリ32内に書き込まれる。そして、学習モードにおいては特徴マップ生成部33によって書き込まれた入力ベクトルXの読み出しが行われ、検査モードにおいては良否判定部35によって入力ベクトルXの読み出しが行われる。
【0024】
特徴マップ生成部33は複数のニューロンW(本実施形態ではM個)が割付られたマップ層と、入力ベクトルXがセットされる入力層とから構成される(図3参照)。マップ層の各ニューロンにはそれぞれ入力ベクトルXと同じくn次元の重みベクトルWが付与されており、この値を更新することで自己組織化特徴マップFが形成されるようになっている。
【0025】
図4を参照して、自己組織化特徴マップの生成手順(学習モード)について説明する。ステップ1においては、各ニューロンの重みベクトルWの初期化を行う。具体的には、演算部37において、乱数により重みベクトルWの各構成値を決定する。
【0026】
ステップ3においては、入力層に入力ベクトルX(ここでは、ティーチングデータをベクトル変換したもの)を与える。そして、入力ベクトルXが入力層にセットされると、特徴マップ生成部33に付設されるカウンタのうち対応するカウンタ(良品のティーチングデータであれば良品用のカウンタ39a、劣化品のティーチングデータであれば劣化品用のカウンタ39b)のカウント値が1づつ更新され、これにより、良品の学習回数並びに、劣化品の学習回数がそれぞれカウントされるようになっている。
【0027】
ステップ5においては、演算部37でセットされた入力ベクトルXと各ニューロンWとの距離dを、次の(1)式から(3)式に基づいてそれぞれ算出する。そして、算出された距離dがもっと小さい、すなわち入力ベクトルXと最も類似した重みベクトルWj*を持ったニューロンが勝者ニューロンとして抽出される。
【0028】
X=(x1,x2,x3,,,xi,,,xn)・・・・・・(1)式
Wji=(wj1,wj2,wj3,,wji,,wjn)・(2)式
【数1】
【0029】
尚、上記式はマップ層におけるj番目のニューロンと、入力ベクトルXとの距離を算出したものである。
【0030】
ステップ7においては、勝者ニューロン並びにその近傍のニューロンの重みベクトルが、次の(4)から(6)式によって更新される。また、このときに、入力ベクトルXが劣化のない良品のデータであるときには更新された各ニューロンには良品であるという情報が付与され、入力ベクトルXが劣化品であるときには更新された各ニューロンには良品であるという情報が付与される。
【0031】
W’=Wji+ΔWji・・・・・・・・・・・・・(4)式
ΔWji=ηh(j,j*)(xi−wji)・・・・・・(5)式
尚、ここで、W’は更新後のニューロンの重みベクトル、Wjiは更新前のニューロンの重みベクトルである。また、ηは学習係数であって学習回数が多くなるにつれて小さくなってゆく正の定数である。
【0032】
【数2】
尚、ここで、│j−j*│はj番目のニューロンと勝者ニューロンとの距離(ユークリッド距離)である。
【0033】
そして、ステップ3からステップ7の処理を繰り返し行うことで学習、すなわちマップ層を構成する各ニューロンに良否の情報が付与されるとともに、重みベクトルWの更新が繰り返し行われる。
【0034】
また、近傍関数半径σは学習の進行とともに小さくなるから、図5に示すように学習の初期においては多くのニューロンが勝ちニューロンの近くであるとみさなされて学習の対象(重みベクトルの更新の対象)とされるが、学習の進行とともに勝ちニューロンの近くであるとみされるニューロン数が減少する。このような学習手順を踏むことで、学習の初期には広範囲に亘って大まかな学習を行い、学習が進むにつれて狭い範囲に細かな学習をすることとしている。
【0035】
かくして、マップ層には良品の情報を持ったニューロンのグループ(図6におけるハッチングされていない側)と、劣化品の情報をもったニューロンのグループ(図6におけるハッチングされた側)とに組織化、すなわち自己組織化特徴マップFが生成される。
【0036】
また、自己組織化特徴マップFを構成する各ニューロンWの構成値は、先に述べたように初期状態においては乱数により付与されるから、信頼性の高いマップを形成するには相当数(本実施形態では必要数をZ回としている)の学習を行う必要がある。
【0037】
そこで、ステップ9において良品用のカウンタ39aのカウント値、並びに劣化品用のカウンタ39bのカウント値がそれそれZ回に達しているか、否かの判定をそれぞれ行う。その結果、良品・劣化品の双方のカウント値がいずれもZ回に達している場合には学習が十分に行われたとして学習を完了させ、後述する検査モードに移行する。一方、いずれか一方でもカウント値がZ回に達していない場合には、ステップ10へ移行し、補完処理を行う(図7参照)。尚、当然のことではあるが、学習回数の判定はティーチングが繰り返し行われているときにはなされず、全ての入力ベクトルX(ティーチングデータ)の取り込みが完了した後にのみ行われる。
【0038】
ステップ10に移行すると補完データ生成部34において、学習回数の不足分だけ擬似データが生成される。以下、劣化品の学習回数が不足している場合を例にとって、擬似データの生成方法を図8ないし図10を参照して具体的に説明する。擬似データを生成するにあたって、まず、演算部37によって入力ベクトルXの各次元における構成値の平均値並びに偏差を以下の要領で、良品、劣化品についてそれぞれ個別に算出する(図8におけるSTEP10−1)。
【0039】
A1=(a11,a12,a13,,,,a1n)・・・・・(7)式
A2=(a21,a22,a23,,,,a2n)・・・・・(8)式
Ak=(ak1,ak2,ak3,,,,akn)・・・・・(9)式
B1=(b11,b12,b13,,,,b1n)・・・・・(10)式
B2=(b21,b22,b23,,,,b2n)・・・・・(11)式
Bk=(bk1,bk2,bk3,,,,bkn)・・・・・(12)式
尚、A1からAkは良品の入力ベクトルであり、B1からBkは劣化品の入力ベクトルである。
【0040】
<一次元の構成値>
A1av=(a11+a21+・・+ak1)/k・・・・・・・(13)式
B1av=(b11+b21+・・+bk1)/k・・・・・・・(14)式
【数4】
【数5】
【0041】
<二次元の構成値>
A2av=(a12+a22+・・+ak2)/k・・・・・・・(17)
B2av=(b12+b22+・・+bk2)/k・・・・・・・(18)
【数6】
【数7】
【0042】
その後、演算部37で各次元の構成値の正規分布を良品A、劣化品Bごとにそれぞれ算出し(図9参照)、得られた正規分布に重複範囲があるか、否かの判定を行う。正規分布の重複の判断基準は3σを基準としており、それぞれの平均Aav、Bavから3σの範囲に重複領域がなければ、重複なしとする。図9の(A)のような場合であれば「重複」と判定され、図9の(B)に示すような場合であれば「重複なし」と判定される(図8のSTEP10−2、3)。
【0043】
続いて、擬似データ(劣化品の擬似データ)の構成値を各次元ごとにそれぞれ決定する。本実施形態では、構成値は乱数によって決定されるが、乱数の抽出範囲が先に判定した重複の可否によって異なっている。
【0044】
まず、正規分布の範囲が重複していた場合には、その次元における劣化品の正規分布の範囲内、すなわち一次元の構成値であれば、B1av±3σb1を乱数の抽出範囲とし、同範囲内から構成値をランダムに取得する(図8のSTEP10−4)。
【0045】
一方、正規分布の範囲が重複していなかった場合には、その次元における劣化品の正規分布に基づいて、この範囲を良品の正規分布に重ならないように拡張する。すなわち、図10に示す場合(二次元の構成値を例にとって説明する)であれば、乱数抽出範囲はB2av±ωとされ、同範囲内から構成値をランダムに取得する(図8のSTEP10−5、6)。ここで、ω={(A2av+3σa2)+(B2av−3σb2)}/2であり、これをk次元の一般式で表すと次のようになる。
【0046】
ω={(Akav+3σa2)+(Bkav−3σb2)}/2・・・・(21)式
ω={(Bkav+3σb2)+(Akav−3σa2)}/2・・・・(22)式
尚、(21)式はAkavよりBkavの値が大きい場合であり、(22)式はAkavよりB2avの値が小さい場合である。
【0047】
かくして、擬似データの各次元の構成値が決定される。そして、データの不足分だけ擬似データが生成されると、その後、ステップ13に移行する(図7参照)。
【0048】
ステップ13では、ステップ10で生成された擬似データをティーチングデータとして入力層にセットする。そして、ステップ15ではステップ5の処理と同様に勝者ニューロンが決定され、ステップ17ではステップ7と同様に勝者ニューロン並びにその近傍のニューロンに対して、良否情報の付与を行うとともに重みベクトルWの更新が行われる。こうした、擬似データに基づく学習を学習回数の不足分だけ行い、学習が完了する。
【0049】
次に、検査モードにおける処理について、図11を参照して説明する。
ステップ21では、まず良否判定部35によってメモリ32から、検査対象の入力ベクトルXが読み出され、その後、ステップ23へ移行する。
【0050】
ステップ23では、演算部37が検査対象の入力ベクトルXと学習済みの各ニューロンの重みベクトルWとの距離dを先に説明した(1)から(3)式に基づいてそれぞれ算出する。そして、各ニューロンに対する距離dが全て算出されると、ステップ25へ移行する。
【0051】
ステップ25では、良否判定部35によって勝者ニューロンが決定される。具体的には、ステップ23で算出された距離dの大小を比較して距離dが最も小さかった、すなわち検査対象の入力ベクトルXと最も距離dが近い重みベクトルWj*を有するニューロンを勝ちニューロンとする。
ここで、距離dが最小であるということは、検査対象の入力ベクトルXは勝ちニューロンに構成値、すなわち最大値、最小値、平均値等の特徴が似通ったデータであることを意味しており、検査対象の入力ベクトルXの属性(良品、劣化品のいずれに属するか)が抽出された勝ちニューロンの属性と同じと考えることが出来る。
【0052】
ステップ27では、ステップ25で抽出された勝ちニューロンの属性を、検査結果として出力する。すなわち、抽出された勝ちニューロンの属性が良品であれば「検査対象は良品である」とする検査結果を出力し、勝ちニューロンの属性が劣化品であれば「検査対象は劣化品である」とする検査結果を出力する。
【0053】
このように、本実施形態によれば、打音検査装置10には補完データ生成部34が設けられ、そこではティーチングデータを基に擬似データが生成されるようになっている。そのため、ティーチングデータが必要なデータ数に足りていない場合であっても、不足分が擬似データによって補われるからマップ層上のニューロンに対して十分な学習を行うことが出来、これにより、生成される自己組織化特徴マップFは信頼性の高いものとなる。また、擬似データはティーチングデータを基準として決定されるからデータを無作為に生成する場合に比べて、ティーチングデータに近い擬似データが得られ、より信頼性が高まる。
【0054】
加えて、擬似データは学習回数の不足数だけ生成される。このような構成であれば、余分な擬似データが生成されることがなく、処理時間の短縮が図られる。
【0055】
<実施形態2>
実施形態1においては学習、すなわち各ニューロンの重みベクトルWの更新を、学習モード中(補完処理を含む)中にのみ行ったが、本実施形態では擬似データを用いて自己組織化特徴マップFを生成した場合には、検査モード中においても学習を行うこととしている(次に、説明するステップ39の追加)。また、実施形態2のものにおいては、入力層はメモリ機能を備え、学習モード中に入力層に取り込まれたティーチングデータ(擬似データを含む)が記憶されるようになっている。
【0056】
図12は、実施形態2における検査モードの処理手順を示すフローチャート図である。同図に示すように、ステップ31では、実施形態1におけるステップ21と同様に検査対象の入力ベクトルXを読み出す。その後、ステップ33へ移行する。ここでは、ステップ23と同様に各ニューロンの重みベクトルWと検査対象の入力ベクトルXとの距離dが算出され、各ニューロンに対する距離の算出が完了すると、ステップ35へ移行し、そこでステップ25の処理と同様の手順で勝者ニューロンが決定される。
【0057】
その後、ステップ37で、勝者ニューロンのカテゴリーに基づいて検査結果が出力され、ステップ39へ移行する。
【0058】
ステップ39では検査対象の入力ベクトル(検査対象の情報に相当する)Xと擬似データの置き換えを行う。置き換えの対象となる擬似データは、検査対象の入力ベクトルXの構成値に最も似通った構成値を有する擬似データであり、これを抽出するには、検査対象の入力ベクトルXと全擬似データとの距離を算出してやればよい(最小距離の擬似データが置き換えの対象となる)。その後、特徴マップ生成部33は既に自己組織化がされたマップ層上のニューロンの重みベクトルを全て初期化し、更新された置き換え後の入力層のデータに基づいて改めて始めから自己組織化を行う。
【0059】
このように、擬似データを使用して自己組織化特徴マップFが生成されたときには、検査対象の入力ベクトルXを取り込んで自己組織化特徴マップFが更新されてゆくから、更新完了後には現実に集音マイク21によって測定されたデータが必要数、自己組織化特徴マップFに取り込まれることとなり、信頼性の高い自己組織化特徴マップFが得られる。
また、置き換えの対象には検査対象の入力ベクトルと構成値の似た擬似データが抽出されるから、既存の判断基準(マップ上の組織化の様子)が大きく変更されることがない。
【0060】
尚、検査対象の入力ベクトルXが入力される度に自己組織化特徴マップFを更新すると、際限なく自己組織化特徴マップFの更新が行われてしまうが、マップFに対して必要数のデータが取り込まれた後には、ステップ39の処理をスキップするような制御を行えば、それ以上に自己組織化特徴マップFが更新されることを防止できる。その他の構成については実施形態1と同様であるため、重複した説明については割愛するものとする。
【0061】
<実施形態3>
実施形態2においては自己組織化特徴マップFの更新(検査モード中の学習)を、検査対象の入力ベクトルが入力される度に行ったが、実施形態3では一定期間、検査対象の入力データXをメモリ32にストックしておき、ある程度のデータがストックされたところで一括してデータの置き換えを行い、これに基づいて自己組織化特徴マップを更新することとしている。
【0062】
<実施形態4>
実施形態1においては、擬似データを生成するにあたって、まず、ティーチングデータの構成値の正規分布を良品、劣化品ごとにそれぞれ算出し、その後、得られた正規分布同士に重複があるか、否かに基づいて所定の範囲を定め、その範囲内において乱数により構成値(擬似データの構成値)を決定したが、実施形態4では擬似データの構成値を実施形態1と異なる方法で決定している。
実施形態4では、まずティーチングデータの中からランダムにデータを抽出して、その構成値にティーチングデータの不足分に応じた比率を乗じる。具体的には、ティーチングデータが必要数に対して10%不足している場合には、抽出された構成値に対して0.9或いは、1.1を乗ずる。その他の構成については、実施形態1と同様である。
【0063】
<実施形態5>
実施形態1においては擬似データを生成するにあたって、まず、ティーチングデータの構成値の正規分布を良品、劣化品ごとにそれぞれ算出し、その後、得られた正規分布同士に重複があるか、否かに基づいて所定の範囲を定め、その範囲内において乱数により構成値(擬似データの構成値)を決定したが、実施形態5では擬似データの構成値を実施形態1とは異なる方法で決定している。
実施形態5では、実施形態1と同様にティーチングデータの構成値の正規分布を良品、劣化品ごとにそれぞれ算出し、その後、この範囲をティーチングデータの不足分に応じた比率を乗じて拡大させる。例えば、ティーチングデータが必要数に対して20%不足している場合には実施形態1で算出した偏差σb1にたいして1.2倍して範囲をB1av±3.6σb1に拡張し、この拡張された範囲内において乱数によりランダムに数値を取得することで、擬似データの一次元の構成値を決定する。
【0064】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0065】
(1)本実施形態では、自己組織化特徴マップFに良品のグループと、劣化品のグループの二つのグループを組織化したが、組織化は二つのグループに限らず3つ、あるいはそれ以上であってもよい。
【0066】
(2)本実施形態では、カテゴリー判定装置を打音検査装置に適用したが、用途はこれに限られるものではなく、この他にもモータの振動音から同モータの回転軸の軸ずれを検出する等に使用することも出来る。
【0067】
(3)本実施形態では、自己組織化特徴マップFに良品のグループと、劣化品のグループの二つのグループを組織化したが、組織化は1つのグループであってよく、この場合のカテゴリーの判定は、まず入力ベクトルとマップ層上の各ニューロンの重みベクトルとの距離を算出する。その後に算出された距離の中から最小距離を抽出し、更に、これを所定の閾値と比較する。その結果、最小距離が閾値より小さければ検査対象はマップ層上に組織化されたカテゴリーと同一であると判断でき、最小値が閾値より大きければ、検査対象はマップ層上のカテゴリーとは異なるものであると判定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施形態1における、検査対象から音声を計測する様子を示す図
【図2】打音検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】自己組織化特徴マップの構造を示す図
【図4】学習モードの処理手順を示すフローチャート図
【図5】学習過程を示す図
【図6】ニューロンが組織化された状態を示す図
【図7】補完データにより学習が行われる場合の処理手順を示すフローチャート図
【図8】擬似データの生成手順を示すフローチャート図
【図9】構成値の正規分布を示す図
【図10】乱数の取り得る範囲を示す図
【図11】検査モードの処理手順を示すフローチャート図
【図12】実施形態2における、検査モードの処理手順を示すフローチャート図
【符号の説明】
【0069】
10…打音検査装置
21…集音マイク
33…特徴マップ生成部
34…補完データ生成部
35…良否判定部
37…演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習モードで既にカテゴリーが知られた基準となる被測定対象物からの情報を取得して自己組織化特徴マップを生成した後に、検査モードで検査対象となる被測定対象物からの情報を取得し、得られた検査対象の情報と前記自己組織化特徴マップとに基づいて検査対象たる被測定対象物のカテゴリーを判定するものであり、前記自己組織化特徴マップの生成に際して前記基準となる被測定対象物からの情報を所定数必要とするカテゴリー判別装置であって、
前記被測定対象物からの情報に基づく信号を出力する測定手段と、
前記基準となる被測定対象物からの情報に基づく前記測定手段からの信号をティーチングデータとして取り込んで前記自己組織化特徴マップを生成する特徴マップ生成手段と、
前記被測定対象物からの情報に基づく信号と前記自己組織化特徴マップとに基づいて前記被測定対象物のカテゴリーを判定するカテゴリ判定部と、
前記ティーチングデータが前記自己組織化特徴マップを生成するのに必要なデータ数に満たない場合に前記ティーチングデータに構成値の大きさが似た擬似データを生成する補完データ生成手段とを備えてなるとともに、
前記特徴マップ生成手段は前記ティーチングデータの不足分を前記擬似データによって補って前記自己組織化特徴マップを生成するよう構成されていることを特徴とするカテゴリー判定装置。
【請求項2】
前記補完データ生成手段は前記ティーチングデータの構成値を基準とし、この基準とされた値をティーチングデータの不足量に応じて増減させて擬似データの構成値とすることを特徴とする請求項1に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項3】
前記ティーチングデータの構成値の分布範囲を算出する分布範囲算出手段を備え、
前記補完データ生成手段は前記分布範囲を基に、これを前記ティーチングデータの不足分に応じて拡張させ、その拡張された範囲内において前記擬似データの構成値を決定することを特徴とする請求項1に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項4】
複数のカテゴリーのティーチングデータをそれぞれ取り込んで前記自己組織化特徴マップに複数のカテゴリーを組織化させるものにおいて、
各カテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を各カテゴリー毎にそれぞれ算出する分布範囲算出手段を備え、
前記補完データ生成手段は補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値を決定するに際し、
補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲と他のカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲とに重複した範囲がある場合には、補完すべきカテゴリーのティーチングデータの分布範囲内で擬似データの構成値を決定し、
前記分布範囲に重複した範囲がない場合には、前記補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を基準として、これを他のカテゴリーのティーチングデータの構成値に重ならない範囲内で拡張させ、その拡張された範囲内において構成値を決定することを特徴とする請求項1に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項5】
前記補完データ生成手段は前記補完データを前記ティーチングデータの不足分だけ生成することを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項6】
前記検査モードにおいて、
前記特徴マップ生成手段は前記カテゴリ判定部が前記判定に用いた検査対象の情報を前記擬似データに置き換え、置き換えた検査対象の情報に基づいて前記学習モードで生成された自己組織化特徴マップを更新するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項7】
前記特徴マップ生成手段は前記擬似データの置き換えに際して、前記検査対象の情報の構成値に最も構成値が類似する擬似データを置き換えの対象とすることを特徴とする請求項6に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項1】
学習モードで既にカテゴリーが知られた基準となる被測定対象物からの情報を取得して自己組織化特徴マップを生成した後に、検査モードで検査対象となる被測定対象物からの情報を取得し、得られた検査対象の情報と前記自己組織化特徴マップとに基づいて検査対象たる被測定対象物のカテゴリーを判定するものであり、前記自己組織化特徴マップの生成に際して前記基準となる被測定対象物からの情報を所定数必要とするカテゴリー判別装置であって、
前記被測定対象物からの情報に基づく信号を出力する測定手段と、
前記基準となる被測定対象物からの情報に基づく前記測定手段からの信号をティーチングデータとして取り込んで前記自己組織化特徴マップを生成する特徴マップ生成手段と、
前記被測定対象物からの情報に基づく信号と前記自己組織化特徴マップとに基づいて前記被測定対象物のカテゴリーを判定するカテゴリ判定部と、
前記ティーチングデータが前記自己組織化特徴マップを生成するのに必要なデータ数に満たない場合に前記ティーチングデータに構成値の大きさが似た擬似データを生成する補完データ生成手段とを備えてなるとともに、
前記特徴マップ生成手段は前記ティーチングデータの不足分を前記擬似データによって補って前記自己組織化特徴マップを生成するよう構成されていることを特徴とするカテゴリー判定装置。
【請求項2】
前記補完データ生成手段は前記ティーチングデータの構成値を基準とし、この基準とされた値をティーチングデータの不足量に応じて増減させて擬似データの構成値とすることを特徴とする請求項1に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項3】
前記ティーチングデータの構成値の分布範囲を算出する分布範囲算出手段を備え、
前記補完データ生成手段は前記分布範囲を基に、これを前記ティーチングデータの不足分に応じて拡張させ、その拡張された範囲内において前記擬似データの構成値を決定することを特徴とする請求項1に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項4】
複数のカテゴリーのティーチングデータをそれぞれ取り込んで前記自己組織化特徴マップに複数のカテゴリーを組織化させるものにおいて、
各カテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を各カテゴリー毎にそれぞれ算出する分布範囲算出手段を備え、
前記補完データ生成手段は補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値を決定するに際し、
補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲と他のカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲とに重複した範囲がある場合には、補完すべきカテゴリーのティーチングデータの分布範囲内で擬似データの構成値を決定し、
前記分布範囲に重複した範囲がない場合には、前記補完すべきカテゴリーのティーチングデータの構成値の分布範囲を基準として、これを他のカテゴリーのティーチングデータの構成値に重ならない範囲内で拡張させ、その拡張された範囲内において構成値を決定することを特徴とする請求項1に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項5】
前記補完データ生成手段は前記補完データを前記ティーチングデータの不足分だけ生成することを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項6】
前記検査モードにおいて、
前記特徴マップ生成手段は前記カテゴリ判定部が前記判定に用いた検査対象の情報を前記擬似データに置き換え、置き換えた検査対象の情報に基づいて前記学習モードで生成された自己組織化特徴マップを更新するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載のカテゴリー判定装置。
【請求項7】
前記特徴マップ生成手段は前記擬似データの置き換えに際して、前記検査対象の情報の構成値に最も構成値が類似する擬似データを置き換えの対象とすることを特徴とする請求項6に記載のカテゴリー判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−127327(P2006−127327A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317336(P2004−317336)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】
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