説明

カテゴリー判定装置

【課題】既に構築された自己組織化特徴マップの変更を伴わず、新たなカテゴリーを追加することが可能なカテゴリー判定装置を提供する。
【解決手段】打音検査装置10は集音マイク21、特徴マップ生成部33、カテゴリ判定部35を主体として構成される。特徴マップ生成部33は入力層とマップ層とからなるとともに、マップ層は第一、第二の二つの層M1、M2からなる。そして、特徴マップ生成部33はティーチングデータを第一のマップ層M1に取り込んで同第一のマップ層M1上に自己組織化特徴マップFが生成するが、一旦、自己組織化特徴マップFが生成された後に新たなカテゴリが追加設定される場合には、新たなカテゴリに基づく情報を第二のマップ層M2に取り込んで、新たなカテゴリを第二のマップ層M2上に組織化する。このような構成であれば、カテゴリの追加に伴って既存の自己組織化特徴マップ、すなわち既存の判断基準が変更されることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化特徴マップを用いたカテゴリー判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、さまざまな分野においてセンシング技術が実用化されている(特許文献1)。
このものは圧力センサを用いてドアの開閉の判定を行うものである。判定装置には学習モードと判定モードが設定されており、学習モードにおいて閉状態における圧力データ(ティーチングデータ)を取得する。そして、ティーチングデータに基づいて自己組織化特徴マップを生成し、生成された自己組織化特徴マップと判定モードにおいて検出された圧力データに基づいてドアが閉じられた状態であるか、或いはドアが開けられた状態にあるのかを判定する。
【特許文献1】特開2000−266570公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のものはドアが閉止された閉状態と、開放された開状態の二つの状態のみを判定しているが、これに対して例えば、判定の対象として半開きの状態という新たなカテゴリーを追加する場合には、自己組織化特徴マップに半開きのティーチングデータを与えて、半開きのデータを組織化してやればよい。しかしながら、こうした新たなカテゴリーの追加を行うと、追加前と追加後とでは、組織化の様子が異なってしまうから、例えば、同じ自己組織化特徴マップを用いて判定を行っていても、追加前と追加後とで異なった判定がなされる場合が生ずる(例えば、追加前に閉状態であると判断されていたものが、追加後にはそれ以外の状態であると判断される等)。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、既に構築された自己組織化特徴マップの変更を伴わず、新たなカテゴリーを追加することが可能なカテゴリー判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、被測定対象物からの情報に基づく信号を出力する測定手段と、基準となる被測定対象物からの情報に基づく前記測定手段からの信号をティーチングデータとして必要数取り込んで前記被測定対象物のカテゴリーを判定するための自己組織化特徴マップを生成する特徴マップ生成手段と、前記被測定対象物からの情報に基づく信号と前記自己組織化特徴マップとに基づいて前記被測定対象物のカテゴリーを判定するカテゴリ判定手段と、を備えたカテゴリー判定装置であって、前記特徴マップ生成手段は、前記自己組織化特徴マップが生成された後に新たなカテゴリーを追加設定する場合には、その新たなカテゴリーを判定するための新たな自己組織化特徴マップを生成するように構成されてなり、前記カテゴリー判定手段は、前記特徴マップ生成手段にて新たな自己組織化特徴マップが生成された場合には、前記特徴マップ生成手段で生成された各自己組織化特徴マップでそれぞれ判定された結果から前記被測定対象物のカテゴリーを判定するよう構成されてなるところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記自己組織化特徴マップがベクトル成分よりなる複数のニューロンからなるものにおいて、前記被測定対象物からの情報に基づく信号をベクトルデータに変換する信号変換手段と、前記信号変換手段によってベクトル化された前記信号と前記各ニューロンとの距離を算出する距離算出手段と、前記距離算出手段によって
抽出された距離のうち最小距離を抽出し、その最小距離と予め設定された閾値との大小を比較する比較手段と、前記比較手段において抽出された最小距離が前記閾値より大きいときには、最小距離の対象となった信号は新たなカテゴリの信号であると判断して、前記特徴マップ生成手段に、その新たなカテゴリを判定するための新たな自己組織化特徴マップを生成させる制御手段とを設けるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、新たなカテゴリは新たな自己組織化特徴マップに組織化されるから、カテゴリの追加に伴って既存の自己組織化特徴マップ、すなわち既存の判断基準が変更されることがない。
【0007】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、比較手段において抽出された最小距離が閾値より大きいときには、制御手段は最小距離の対象となった信号は新たなカテゴリの信号であると判断して、特徴マップ生成手段に、その新たなカテゴリを判定するための新たな自己組織化特徴マップを生成させる。このような構成であれば、作業者が新しいカテゴリを装置に学習させなくても、組織化を自動的に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図1ないし図9によって説明する。
本実施形態はカテゴリー判定装置をプラント配管(本発明の被測定対象物に相当する)Tの劣化を検出するための打音検査装置(非破壊検査)に適用したものである(図1参照)。まず、打音検査装置10の測定原理についておおまかに説明すると、劣化のない健全な状態のプラント配管(本発明の基準となる被測定対象物に相当)Ta並び、劣化(腐食により部分的に孔の空いたもの)した状態のプラント配管(本発明の基準となる被測定対象物に相当)Tbをそれぞれ複数個用意しておく。そして、これらをハンマーで打ち、そのときの打音をそれぞれ集音マイク(本発明の測定手段に相当する)21で測定する。
【0009】
集音マイク21からは打音に応じた電気信号が出力され、これがティーチングデータとしてデータ処理部30内に相当数取り込まれる。データ処理部30内においては取り込まれたティーチングデータに基づいて、類似する特徴を構成値として持つデータ群が良品、劣化品の別に(カテゴリー別に)組織化された自己組織特徴化マップFが生成される(学習モード)。
【0010】
そして、自己組織化特徴マップFが生成された後に検査の対象となるプラント配管T(劣化の有無が知れていないもの)の打音を集音マイク21によって測定し、得られた検査対象の電気信号と、自己組織化特徴マップFとによって、検査対象たるプラント配管Tの劣化の有無の判定を行うものである(検査モード)。尚、プラント配管Tから得られる打音が、本発明における被測定対象物からの情報に相当するものである。
【0011】
図2は打音検査装置10の全体構成を示すブロック図であって、前記集音マイク21と、集音マイク21から出力されたアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器23、変換されたディジタル信号が入力されるデータ処理部30を主体として構成される。データ処理部30は入力信号をベクトルデータに変換する信号変換部(本発明の信号変換手段に相当する)31、データが記憶されるメモリ32、自己組織化特徴マップFを生成するための特徴マップ生成部(本発明の特徴マップ生成手段に相当する)33、検査対象となるプラント配管Tの劣化の有無の判定を行うカテゴリ判定部(本発明のカテゴリ判定手段に相当する、本発明の比較手段に相当する、本発明の制御手段に相当する)35並びに演算部(本発明の距離算出手段に相当する)37から構成される。
【0012】
次に、データ処理部30内における具体的な処理内容について説明する。
集音マイク21からの電気信号はA/D変換器23によってディジタル化された後に、信号変換部31に入力される。信号変換部31では入力された電気信号の特徴抽出を行う。本実施形態では、特徴として信号の実行値、最大値、最小値、平均等(n個の特徴)を抽出し、これら抽出された各値を構成値とするn次元のベクトルデータ(以下、単に入力ベクトルとする)を生成する。これにより、音声信号はベクトルに変換される。尚、構成値とは入力ベクトルがX=(x1,x2,,xi,,xn)であれば、x1,x2,,xn等である。
【0013】
この入力ベクトルXはメモリ32内に書き込まれる。そして、学習モードにおいては特徴マップ生成部33によって書き込まれた入力ベクトル(より、詳しくはティーチングデータの入力ベクトル)Xの読み出しが行われ、検査モードにおいてはカテゴリ判定部35によって入力ベクトル(より、詳しくは検査対象品の入力ベクトル)Xの読み出しが行われる。
【0014】
特徴マップ生成部33は入力ベクトルXがセットされる入力層と、マップ層とから構成される。図3に示すように、マップ層は第一のマップ層M1、第二のマップ層M2からなる2層構造となっており、各マップ層M1、M2には複数個のニューロンがそれぞれ割付られている。これら各ニューロンにはそれぞれ入力ベクトルXと同じくn次元の重みベクトルWが付与されており、この値を更新することで自己組織化特徴マップFが形成されるようになっている。
【0015】
図4を参照して、自己組織化特徴マップFの生成手順(学習モード)について説明する。ステップ1においては、第一のマップ層M1並びに第二のマップ層M2の各ニューロンの重みベクトルWの初期化を行う。具体的には、演算部37において、乱数により重みベクトルWの各構成値を決定する。そして、第一のマップ層M1をアクティブ状態、すなわち情報を取り込むことが出来る状態とし、第二のマップ層M2をウエイト状態、すなわち情報を取り込むことが出来ない状態とする。
【0016】
ステップ3においては、入力層に入力ベクトルX(ここでは、ティーチングデータをベクトル変換したもの)を与え、その後、ステップ5に移行する。
【0017】
ステップ5においては、演算部37でセットされた入力ベクトルXとステップ1でアクティブ状態とされた第一のマップ層M1の各ニューロンWとの距離dを、次の(1)式から(3)式に基づいてそれぞれ算出する。そして、算出された距離dの大小を比較して最小距離を抽出し、最小距離の対象となった重みベクトルWjを持ったニューロンが勝者ニューロンとして抽出される。
【0018】
X=(x1,x2,x3,,,xi,,,xn)・・・・・・(1)式
Wji=(wj1,wj2,wj3,,wji,,wjn)・(2)式
【数1】

尚、上記式は第一のマップ層におけるj番目のニューロンと、入力ベクトルXとの距離を算出したものである。
【0019】
ステップ7においては、勝者ニューロン並びにその近傍のニューロンの重みベクトルが、次の(4)から(6)式によって更新される。また、このときに、入力ベクトルXが劣化のない良品のデータであるときには更新された各ニューロンには良品であるという情報が付与され、入力ベクトルXが劣化品であるときには更新された各ニューロンには良品であるという情報が付与される。なお、このステップ7においても第二のマップ層M2はウエイト状態であり、第一のマップ層M1の重みベクトルWのみが更新の対象となる。
【0020】
W’=Wji+ΔWji・・・・・・・・・・・・・(4)式
ΔWji=ηh(j,j*)(xi−wji)・・・・・・(5)式
尚、ここで、W’は更新後のニューロンの重みベクトル、Wjiは更新前のニューロンの重みベクトルである。また、ηは学習係数であって学習回数が多くなるにつれて小さくなってゆく正の定数である。
【0021】
【数2】

尚、ここで、│j−j*│はj番目のニューロンと勝者ニューロンとの距離(ユークリッド距離)である。
【0022】
そして、ステップ3からステップ7の処理を繰り返し行うことで第一のマップ層M1上においては学習、すなわち各ニューロンに対する良否の情報の付与ならびに、重みベクトルWの更新が繰り返し行われる。
【0023】
また、近傍関数半径σは学習の進行とともに小さくなるから、図5に示すように学習の初期においては多くのニューロンが勝ちニューロンの近くであるとみさなされて学習の対象(重みベクトルの更新の対象)とされるが、学習の進行とともに勝ちニューロンの近くであるとみされるニューロン数が減少する。このような学習手順を踏むことで、学習の初期には広範囲に亘って大まかな学習を行い、学習が進むにつれて狭い範囲に細かな学習をすることとしている。
【0024】
かくして、第一のマップ層M1上のニューロンは良品の情報を持ったニューロンのグループ(図6におけるハッチングされていない側)と、劣化品の情報をもったニューロンのグループ(図6におけるハッチングされた側)とに組織化、すなわち自己組織化特徴マップFが生成される。
【0025】
次に、検査モードにおける処理について、図7を参照して説明する。
ステップ21では、まずカテゴリ判定部35によってメモリ32から、検査対象の入力ベクトルXが読み出され、その後、ステップ23へ移行する。
【0026】
ステップ23では、演算部37が検査対象の入力ベクトルXと学習済みの各ニューロン(第一のマップ層M1上のニューロン)の重みベクトルWとの距離dを先に説明した(1)から(3)式に基づいてそれぞれ算出する。そして、各ニューロンに対する距離dが全て算出されると、ステップ25へ移行する。
【0027】
ステップ25では、算出された距離dの大小をカテゴリ判定部35において比較し最小距離の抽出を行う。そして、抽出の後、ステップ27へ移行する。
【0028】
ステップ27では、抽出された最小距離と予め設定された閾値との大小を比較する。ここで、抽出された最小距離と閾値とを比較するのは、入力ベクトルXの属性と、最小距離と認定された重みベクトルを有するニューロンの属性、すなわちカテゴリーが同一であるとみなすことが出来るか否かを判定するためである。閾値は両者が同じ属性を有するとみなすことが出来る境界を決める値であり、具体的にはサンプリングを複数回行うことで得られる経験値である。先にも説明したが、重みベクトルWと入力ベクトルXの構成値は共に、信号の特徴を表わしたものであるから、二つのベクトルの距離が近ければ近いほど、信号の特徴が同じ、すなわち属性が同じと考えることが出来る。尚、このステップ27における処理もカテゴリ判定部35で行われる。
【0029】
そして、抽出された最小距離が閾値より小さい場合には、入力ベクトルXの属性は最小距離と認定された重みベクトルWを有するニューロンの属性と同じとみなすことが出来ると判断されて、ステップ29へ移行する(判定、YES)。
一方、抽出された最小距離が閾値より大きい場合には、入力ベクトルXの属性は最小距離と認定された重みベクトルWを有するニューロンの属性とは異なると判断されて、ステップ51へ移行する(判定、NO)。尚、このようなNO判定がされるのは、検査対象が良品、劣化品の中間の状態、すなわち劣化品と判断するほど劣化は進んでいないが劣化が進み(例えばプラント配管の肉厚が部分的に削げて薄肉化した状態)つつあるときである。
【0030】
ステップ29では、カテゴリ判定部35によって、ステップ25で最小距離と認定された重みベクトルを有するニューロンを勝者ニューロンとして認定とし、その後、ステップ31で、抽出された勝ちニューロンの属性を検査結果として出力する。すなわち、抽出された勝ちニューロンの属性が良品であれば「検査対象は良品である」とする検査結果を出力し、勝ちニューロンの属性が劣化品であれば「検査対象は劣化品である」とする検査結果を出力する。
【0031】
一方、ステップ27でNO判定がなされた場合は、ステップ51に移行する。ここでは、いままでウエイト状態とされて第二のマップ層M2がアクティブ状態とされる。そして、ステップ27で良品、劣化品のいずれにも属さないと判断された入力ベクトルXと第二のマップ層M2上の各ニューロンの重みベクトルWとの距離を算出する。その後、先に説明したステップ5、ステップ7の処理を行う。これにより、第二のマップ層M2には、新たなカテゴリーの情報が取り込まれて次第に新たなカテゴリが組織化されてゆく(図8参照)。
尚、この際に、検査対象の属性に関する情報、すなわち劣化注意品であるという情報は学習の初回に限り、オペレータがデータ処理部30に与えなければならない。また、ステップ51で新たなカテゴリの組織化が行われるためには学習を複数回行う必要があるから、相当のデータが第二のマップ層M2に取り込まれるまでは図7における一連の処理を一定期間繰り返して行う必要がある。
【0032】
次に、新たなカテゴリーが組織化された時点以降の検査モード(以下、追加後検査モード)の処理手順について、図9を参照して説明する。
【0033】
ステップ71では、ステップ21と同様に検査対象の入力ベクトルXが入力層にセットされ、ステップ73へ移行する。
【0034】
ステップ73ではステップ23と同様にセットされた入力ベクトルXと各ニューロンの重みベクトルWとの距離dを算出するが対象となる各ニューロンがステップ23とは異なっており、ステップ73では第一、第二の両マップ層M1、M2上のニューロンが距離算出の対象とされる。
【0035】
ステップ75ではステップ25と同様に、算出された距離dの大小を比較し最小距離の抽出を行う。そして、抽出の後、ステップ77へ移行する。
【0036】
ステップ77ではステップ27と同様に、抽出された最小距離と予め設定された閾値との大小を比較する。最小距離が閾値より小さければ、ステップ79へ移行し、最小距離が閾値より大きければステップ83へ移行する。
【0037】
ステップ79では、ステップ77で最小距離として抽出された重みベクトルを有するニューロンを勝者ニューロンとして認定し、その後、ステップ81で抽出された勝ちニューロンの属性を、検査結果として出力する。すなわち、抽出された勝ちニューロンの属性が良品であれば「検査対象は良品である」とする検査結果を出力し、勝ちニューロンの属性が劣化品であれば「検査対象は劣化品である」とする検査結果を出力し、勝ちニューロンの属性が劣化が進みつつある物であれば「検査対象は劣化注意品である」とする検査結果を出力する。そして、ステップ83に移行した場合には、検査対象はいずれのカテゴリーにも、属さないとしてエラー判定を行う。
尚、このように追加後検査モードにおいて、第1のマップ層M1上に形成された自己組織化特徴マップ並びに、第2のマップ層M2上に形成された自己組織化特徴マップの両マップを使用して検査対象のカテゴリーを判断することが、本発明の特徴マップ生成手段で生成された各自己組織化特徴マップでそれぞれ判断された結果から被測定対象物のカテゴリーを判定する、に相当する。また、ステップ75、ステップ77、ステップ79、ステップ83の処理はいずれもカテゴリ判定部35で行われる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、特徴マップ生成部33は複数のマップ層M1、M2を備え、一旦、自己組織化特徴マップFの生成が完了した後に新たなカテゴリを追加設定する場合には、既に組織化がさなれたマップ層(第一のマップ層M1)に対して組織化を行わず、組織化がなされていない別のマップ層(第二のマップ層M2)に新たなカテゴリの情報を組織化する。
【0039】
従って、カテゴリの追加に伴って既に組織化が完了したマップ層M1上のニューロンの重みベクトルが更新されることがなく、これにより既存の組織化の様子、すなわち既存の判断基準が変更されず保たれる。
加えて、最小距離と閾値とを比較することで、検査対象が既存のカテゴリに属するか、否かを判定し、新たなカテゴリの信号であると判定すると、これをマップ層に組織化する。このような構成であれば、作業者が新しいカテゴリを装置に学習させなくても、組織化を自動的に行うことが出来る。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0041】
(1)本実施形態では、カテゴリー判定装置を打音検査装置に適用したが、用途はこれに限られるものではなく、この他にもモータの振動音から同モータの回転軸の軸ずれを検出する等に使用することも出来る。
【0042】
(2)本実施形態では、マップ層を第一、第二のマップ層より構成し、カテゴリの追加も1回のみとしたが、マップ層の数を3つあるいは、それ以上としてカテゴリの追加を複数回行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態における、検査対象から音声を計測する様子を示す図
【図2】打音検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】自己組織化特徴マップの構造を示す図
【図4】学習モードの処理手順を示すフローチャート図
【図5】マップ層が組織化されてゆく様子を示す図
【図6】マップ層上のニューロンが組織化された状態を示す図
【図7】検査モードの処理手順を示すフローチャート図
【図8】第二のマップ層に新たなカテゴリが追加された状態を示す図
【図9】追加後の検査モードの処理手順を示すフローチャート図
【符号の説明】
【0044】
10…打音検査装置
21…集音マイク
33…特徴マップ生成部
35…カテゴリ判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象物からの情報に基づく信号を出力する測定手段と、
基準となる被測定対象物からの情報に基づく前記測定手段からの信号をティーチングデータとして必要数取り込んで前記被測定対象物のカテゴリーを判定するための自己組織化特徴マップを生成する特徴マップ生成手段と、
前記被測定対象物からの情報に基づく信号と前記自己組織化特徴マップとに基づいて前記被測定対象物のカテゴリーを判定するカテゴリ判定手段と、を備えたカテゴリー判定装置であって、
前記特徴マップ生成手段は、前記自己組織化特徴マップが生成された後に新たなカテゴリーを追加設定する場合には、その新たなカテゴリーを判定するための新たな自己組織化特徴マップを生成するように構成されてなり、
前記カテゴリー判定手段は、前記特徴マップ生成手段にて新たな自己組織化特徴マップが生成された場合には、前記特徴マップ生成手段で生成された各自己組織化特徴マップでそれぞれ判定された結果から前記被測定対象物のカテゴリーを判定するよう構成されてなることを特徴とするカテゴリー判定装置。
【請求項2】
前記自己組織化特徴マップがベクトル成分よりなる複数のニューロンからなるものにおいて、
前記被測定対象物からの情報に基づく信号をベクトルデータに変換する信号変換手段と、
前記信号変換手段によってベクトル化された前記信号と前記各ニューロンとの距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段によって算出された距離のうち最小距離を抽出し、その最小距離と予め設定された閾値との大小を比較する比較手段と、
前記比較手段において抽出された最小距離が前記閾値より大きいときには、最小距離の対象となった信号は新たなカテゴリの信号であると判断して、前記特徴マップ生成手段に、その新たなカテゴリを判定するための新たな自己組織化特徴マップを生成させる制御手段とを設けることを特徴とする請求項1に記載のカテゴリー判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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