説明

カテプシン阻害剤としてのフルオロアルキルアミン誘導体

本発明は、カテプシンSの阻害剤である式Iの化合物を提供し、このようなものとしての化合物は、限定されないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および疼痛を含むカテプシンS依存性疾患および状態の予防および治療において有用である。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カテプシンSは、パパインスーパーファミリーに属するシステインプロテアーゼである。カテプシンSは肺において最も高く発現され、リンパ節、脾臓、回腸、脂肪、肝臓、心臓および脳の小グリアが続く。カテプシンSは、制限された細胞型分布を有し;平滑筋細胞および腫瘍細胞だけでなく、B細胞、樹状細胞、マクロファージなどの抗原提示細胞において発現される。カテプシンSは、肺のII型肺胞細胞および常在性マクロファージにおいて見出される。これは、酸性エンドソーム/リソソームにおいて細胞内に存在し、また、細胞外で分泌され、細胞表面またはその近くで機能すると考えられる。これは、lFNγ、LPSおよびTNFαまたはIL−1βなどの炎症促進サイトカインによって制御されることが実証されてきた。神経栄養因子、bFGFおよびNGFは、Cat Sの発現および活性を増加させることが示されている。同様に、インビボにて、IL−13の遺伝子組換えの過剰発現は、Cat Sの発現の増加および気腫性COPD表現型の特徴である肺容量の増加、粘液および炎症をもたらす。カテプシンSは、多様なエンドペプチターゼ活性、ジ−ペプチジル−ペプチターゼ活性およびアミノペプチターゼ活性を有する。カテプシンSは、エラスチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンおよびヘパラン硫酸などの細胞外マトリックスタンパク質に対する活性のみならず、MHCクラスIIインバリアント(Ii)、MBP、SLPI、DPPI、アミロイド前駆体タンパク質、アミロイドベータペプチドおよびインシュリンなどのタンパク質に対して広範な基質活性を有する。シスタチンは、カテプシンSの内因性の堅く結合する阻害剤である。
【0002】
カテプシンS(Cat Sと略される。)は、アルツハイマー病、ダウン症候群、粥状硬化症、慢性閉塞性肺疾患、癌、骨関節炎、ゴーシェ病、ミオクローヌス癲癇(EPMI)およびある種の自己免疫疾患(若年発症糖尿病、多発性硬化症、尋常性天疱瘡、グレーヴス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび橋本甲状腺炎を含むがこれらに限定されない。);喘息を含むがこれに限定されないアレルギー性疾患;ならびに、臓器移植または移植組織片の拒絶を含むがこれらに限定されない異質遺伝子型免疫応答に関与している(C.A Lemere et al.,AmJ.Pathol 146:848−860,1995;J.S Munger et al.,Biochem J 1995 311,299−305;J.Liu et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol 24:1359−1366,2004;G.K.Sukhova et al.,J Clin Invest 2003 111,897−906;T.Flannery et al.,Am J Pathol 163:175−182,2003;P.L.Fernandez et al.,Int J Cancer95:51−55,2001;M.Soderstrom et al.,Matrix Biol 19:717−725,2001;M.T.Moran et al.,Blood 96:1969−1978,2000;R.Rinne et al.,Ann Med 34:380−385,2002;H.Yang et al.,J Immunol 174:1729−1737,2005;N.Cimerman et al.,Pflugers Arch 442:R204−R206,2001;T.Zheng et al.,J Clin Invest 2000 106,1081−93;G.P.Shi et.al.,Circ Res 2003 92,493−500;T.Y.Nakagawa et al.,Immunity 1999 10,207−17を参照されたい。)。
【0003】
Cat S mRNAのレベルは、クロイツフェルトヤコブ病患者の脳において著しく上昇していることが見出された(C.A.Baker et al.,J Virol 76:10905−10913,2002;F.Dandoy−Dron et al.,JBC273:7691−7697,1998)。その高いエラスチン分解活性のために、カテプシンSが、血管形成中の血管マトリックスリモデリングおよび肺における繊毛運動性の促進に関与していることも示唆された。上昇したカテプシンSレベルは、腫瘍浸潤、アテローム発生および筋ジストロフィーなどのさまざまな状態中に細胞外環境において見出された。カテプシンS阻害剤は、アテローム性動脈硬化症およびTh1型炎症などの他の疾患を阻害することが明らかにされた。カテプシンSノックアウトマウスおよび阻害剤の研究は、細胞内カテプシンSがインバリアント(Ii)p10フラグメントを切断し、クラスIIペプチド結合溝におけるペプチド交換を可能にするMHCクラスIIインバリアントプロセシングにおける細胞内Cat Sの明確な役割を示している。したがって、Cat Sは、抗原提示における制限ステップである。Cat Sレベルの完全なノックダウンは、マウスにおける免疫応答が調節される前にCat Sの高度に部分的な阻害が要求されることを示したが、一方Cat Sヘテロ接合体マウスから得られたデータは、Ii分解に全く影響を示さなかった。カテプシンSはまた、抗原プロセシングにおいて役割を果たしている可能性がある。最近になって、カテプシンS mRNAの増加が、慢性疼痛の動物モデルにおいて見出された。小分子阻害剤を用いたCat Sの阻害が、これら動物の機械的痛覚過敏を回復させることが示された(国際特許出願第03/020287号)。
【0004】
阻害剤を有するおよび有さないカテプシンSの結晶構造は解明されている。また、カテプシンSの選択的阻害剤について、例えば、D.J.Gustin et al.,Bioorg&Med Chem Lett,15:1687−1691,2005;R.L.Thurond et al.,J Med Chem,47:4799−4801,2004;V.Leroy and S.Thurairatnam,Expert Opin.Ther.Patents,14:301−311,2004;R.L.Thurmond et al.,J Pharmacol Exp Ther.,308:268−276,2004;N.Katunuma et.al.,Biol Chem,384:883−890,2003;C.L.Cywin et al.,Bioorg Med Chem,11:733−740,2003;N.E.Zhou et al.,Bioorg Med Chem,13:139−141,2003;K.Saegusa et al.,J Clin Invest,110:361−369,2002;Y.D.Ward et al.,J Med Chem.,45:5471−5482,2002;B.Walker et al.,Biochem Biophys Res Commun,275:401−405,2000;N.Katunuma FEBS Lett,458:6−10,1999;D.Bromme et al.,Biol Chem Hoppe Seyler,375:343−347,1994に報告されている。カテプシンS阻害剤は、例えば、国際特許出願第05/028429号に報告されている。カテプシンS阻害剤は、炎症および組織のリモデリングを含む疾患;異質遺伝子型疾患、自己免疫疾患、神経疾患またはアレルギー性疾患;癌;および炎症痛または神経因性疼痛の治療に有用である。
【発明の開示】
【0005】
発明の要旨
本発明は、さまざまなカテプシンS依存性疾患および状態の治療および予防において有用であるカテプシンSの阻害剤に関する。本発明はまた、カテプシンS依存性疾患および状態の予防および治療において該阻害剤を使用する方法、ならびに該阻害剤を含有する医薬組成物に関する。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、式I
【0007】
【化2】

(式中、Xは、−(CHRであり;
Yは、−O−、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、CR−CF−、−CCl−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR−または−NRS(O)−であり;
nは、1から6から選択される整数であり;
は、C1〜6ハロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1〜6アルキル−またはヘテロアリール−C1〜6アルキル−であり、ここで該アルケニルおよびアルキニルは、C3〜6シクロアルキルで場合によって置換されており、該アリールおよびヘテロアリールは、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−SR、−S(O)R、−S(O)、OR、NR、シアノおよびアリールから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されており;
は、水素またはC1〜6ハロアルキルであり;
は、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C3〜6シクロアルキル−C1〜6アルキル−、アリール、アリール−C1〜6アルキル−、ヘテロアリールまたはヘテロアリール−C1〜6アルキル−であり、ここでシクロアルキルは、C1〜3ハロアルキルで場合によって置換されており、アリールおよびヘテロアリールは、C1〜6アルキル、ハロ、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−OR、NR、シアノおよびアリールから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されており;または、
Y−Rは、−S(O)ORもしくは−SONHであり;
は、CHS−、CHS(O)−、CHSO−、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C3〜6シクロアルキル−C1〜6アルキル−、アリールまたはヘテロアリールであり、ここで該アリールおよびヘテロアリールは、C1〜6アルキル、CH(OH)C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、ハロ、C1〜6ハロアルキル、CH(OH)C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NR、−OR、−NR、シアノ、ニトロ、シアノ、ヘテロシクリル、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)NR、−NRCONRS(O)、−OSO、−N(R)C(O)NR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)OR、−N(R)SO、−C(R)(R)NRC(R)(R)、−C(R)(R)C(R)(R)NR、−C(O)C(R)(R)NRおよびC(R)(R)C(O)NRから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されており;
およびRは、水素、C1〜6アルキルおよびC2〜6アルケニルから独立に選択され、ここで該アルキル基およびアルケニル基は、1から6個のハロ、C3〜6シクロアルキル、−SR、S(O)R、S(O)、OR、NRで場合によって置換されており;または、
およびRは、これらが結合している炭素原子と一緒に、C3〜8シクロアルキル環またはヘテロシクリル環を形成し、ここで該環系は、C1〜6アルキルまたはハロで場合によって置換されており;
は、水素、C1〜6アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1〜6アルキルおよびヘテロアリール−C1〜6アルキルであり;
およびRは、独立に、水素またはC1〜6アルキルであり;または
およびRは、窒素原子に結合している場合、O、SおよびN−Rから選択される第2のヘテロ原子を場合によって有する4から6員環を一緒に完成し;
は、水素またはC1〜6アルキルである。)の化合物および薬剤として許容されるこの塩を提供する。
【0008】
1つのサブセットにおいて、Rは、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−OR、NR、シアノおよびアリールから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されているアリールである。1つの実施形態において、Rは、フルオロフェニルである。
【0009】
式(I)の別のサブセットにおいて、RがC1〜6ハロアルキルである化合物である。1つの実施形態において、Rは、トリフルオロメチルである。
【0010】
式(I)の別のサブセットにおいて、RおよびRが、水素およびC1〜6アルキルから独立に選択される化合物である。1つの実施形態において、RおよびRが、それぞれ水素であり;別の実施形態において、RおよびRの1つが、水素であり、他はメチルである。
【0011】
式(I)の別のサブセットにおいて、RおよびRが、これらが結合している炭素原子と一緒にC3〜8シクロアルキル環を形成し、ここで該環は、C1〜6アルキルまたはハロで場合によって置換されている化合物である。この1つの実施形態において、RおよびRが、これらが結合している炭素原子と一緒にシクロプロピル環を形成する。
【0012】
式(I)の別のサブセットにおいて、Xが−(CH−であり、ここでnは1から3の整数である化合物である。これの1つの実施形態において、Xが−CH−であり;この別の実施形態において、Xが−CHCH−である。
【0013】
式(I)の別のサブセットにおいて、Yが、−S−、−SO−、−SO−、−SONR−および−O−から選択される化合物である。1つの実施形態において、Yが−SO−である。別の実施形態において、Yが−SO−である。別の実施形態において、部分−Y−Rが、−SONH−または−SONRを表し、ここでRは、C1〜3ハロアルキルで場合によって置換されるC1〜3アルキルまたはC3〜6シクロアルキルである。
【0014】
式(I)の別のサブセットにおいて、Rが、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、アリールおよびアリール−C1〜6アルキル−から選択され、ここでアリールは、C1〜6アルキル、ハロおよびC1〜6ハロアルキルから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されている化合物である。この1つの実施形態において、Rは、C1〜6アルキル、場合によって置換されているフェニルまたは場合によって置換されているベンジルであり、ここで該置換基は1から3個のハロ原子である。これの別の実施形態において、Rはベンジルである。
【0015】
式(I)の別のサブセットにおいて、Rが、C3〜6シクロアルキルである化合物である。
【0016】
式(I)の別のサブセットにおいて、Rが、C1〜3ハロアルキルであり、Rが、1または2個のハロゲン原子で場合によって置換されているアリールである化合物である。1つの実施形態において、Rが、トリフルオロメチルであり、Rが、フェニルまたは1もしくは2個のハロゲン原子で置換されているフェニルである。
【0017】
特記されない限り、以下の用語は、下記に示された意味を有する:
「アルキル」および例えばアルコキシ、アルカノイルなどの接頭語「alk」を有する他の基は、直鎖もしくは分岐またはこれらの組合せであってもよい炭素鎖を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−およびtert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどがある。
【0018】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖もしくは分岐またはこれらの組合せであってもよい炭素鎖を意味する。アルケニル基の例としては、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニルおよび1−ヘキセニルなどがある。
【0019】
「アリール」は、少なくとも1つの環が芳香族炭素環である、任意の安定した、上限10原子までの単環式炭素環または二環式炭素環を意味する。該アリール置換基が二環式であり、第2の環が非芳香族(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル)である場合、結合は芳香族環を介してなされると理解される。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、メチレンジオキシフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−イル、4−または5−インダニルおよび4−または5−インデニルなどがある。
【0020】
「シクロアルキル」は、ヘテロ原子を含まない炭素環を意味し、単環式および二環式の飽和炭素環を含み、また縮合環系を含む。このような縮合環系は、ベンゾ縮合炭素環などの縮合環系を形成するベンゼン環などの部分的にまたは完全に不飽和の1つの環を含み得る。シクロアルキルは、スピロ縮合環系のような縮合環系を含む。シクロアルキル置換基が二環式であり、第2の環がアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルである場合、結合は、非芳香族炭素環式の環を介してなされると理解される。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、デカヒドロナフタレン、アダマンタン、インダニル、インデニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンなどがある。
【0021】
「ハロアルキル」は、水素原子の少なくとも1つおよび上限全てがハロゲンで置換されている上記に定義されるようなアルキル基を意味する。このようなハロアルキル基の例としては、クロロメチル、1−ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2,−トリフルオロエチルなどがある。
【0022】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。
【0023】
「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの環が芳香族である、安定な、上限10個の原子の単環式環または二環式環を意味し、O、NおよびSからなる群から選択される1から4個のヘテロ原子を含む。この定義の範囲内のヘテロアリール基としては、限定されないが、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、キナゾリニル、キノオキサリニル、インドリニル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、ナフチリジニル、テトラゾロピリジル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒロドベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニルなどがある。該ヘテロアリール置換基が二環式であり、1つの環が非芳香族(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはヘテロシクリル)である場合、結合はヘテロ芳香族環を介してなされ;双方の環が芳香族であり、1つがヘテロ原子を含まない場合、結合はいずれかの環を介してなされることができると理解される。ヘテロアリールが窒素原子を含む場合、対応するこのN−オキシドはまた、この定義に包含されると理解される。
【0024】
「ヘテロシクリル」は、O、NおよびSからなる群から選択される1から4個のヘテロ原子を含む5員から10員の単環または二環式非芳香族環を意味する。該ヘテロシクリル置換基が二環式である場合、第2の環は、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキルまたはシクロアルケニルであり得;このような場合には、結合はヘテロ環式環を介してなされると理解される。「ヘテロシクリル」としては、限定されないが、以下:ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニルなどがある。ヘテロ環が窒素を含む場合には、対応するこのN−オキシドはまた、この定義に包含されると理解される。
【0025】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
本明細書に記載される化合物は、不斉中心を有し、従ってエナンチオマーとして存在し得る。本発明による該化合物が2つ以上の不斉中心を有する場合、これらはさらに、ジアステレオマーとして存在し得る。本発明には、実質的に純粋な分割エナンチオマー、このラセミ体混合物およびジアステレオマーの混合物のような可能な全ての立体異性体が含まれる。上記式Iは、特定の位置での明示的な立体化学を有さずに示されている。本発明には、式Iの全ての立体異性体および薬剤として許容されるこれらの塩が含まれる。エナンチオマーのジアステレオアイソマーの対は、例えば、好適な溶媒から分別再結晶によって分離し得、このように得られるエナンチオマーの対は従来の手段、例えば、分割剤として光学的に活性な酸もしくは塩基の使用によってまたはキラルなHPLCカラム上で個々の立体異性体に分離されうる。さらに、一般式Iの化合物の任意のエナンチオマーもしくはジアステレオマーは、場合によって、光学的に純粋な出発原料または既知の立体配置の試薬を使用する立体特異的合成によって得られ得る。
【0026】
本明細書に記載される化合物の一部は、オレフィン二重結合を含み、他に特記されない限り、EおよびZ双方の幾何異性体を含むことが意味される。
【0027】
本明細書に記載される化合物の一部は、水素の結合の異なる点を有して存在し得、互変異性体と称される。このような例としては、ケトンおよびケト−エノール互変異性体として知られるこのエノール型であってよい。個々の互変異性体およびこれらの混合物は、式Iの化合物に包含される。
【0028】

「薬剤として許容される塩」の用語は、薬剤として許容される非毒性の塩基または酸から調製される塩をいう。本発明の化合物が酸性である場合、この対応する塩は、無機塩基および有機塩基を含む薬剤として許容される非毒性塩基から都合よく調製することができる。このような無機塩基由来の塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二および第一)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二および第一)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩がある。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムの塩が好ましい。薬剤として許容される有機非毒性の塩基から調製される塩としては、天然および合成源双方由来の一級、二級および三級アミンの塩などがある。塩を形成することができる薬剤として許容される有機非毒性の塩基としては、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどがある。
【0029】
本発明の該化合物が塩基性である場合、この対応する塩は、薬剤として許容される非毒性の無機および有機の酸から都合よく調製することができる。このような酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンフルスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などがある。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が好ましい。
【0030】
プロドラッグ
本発明には、その範囲に本発明の化合物のプロドラッグが含まれる。一般に、このようなプロドラッグは、必要とされる化合物にインビボで容易に転換し得る本発明の化合物の機能性誘導体である。したがって、本発明の治療の方法において、用語「投与する」は、具体的に開示された化合物による、または具体的に開示されていないが、患者への投与後にインビボで具体的化合物に転換され得る化合物による、記載されたさまざまな状態の治療を包含する。
【0031】
好適なプロドラッグ誘導体の選択および調製の従来の手順は、例えば、”Design of Prodrugs”ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載されている。これら化合物の代謝物としては、本発明の化合物を生物学的環境に導入する際生成される活性種などがある。
【0032】
医薬組成物
本発明の別の態様では、式Iの化合物または薬剤として許容されるこの塩および薬剤として許容される担体を含有する医薬組成物が提供される。医薬組成物における「組成物」の用語は、活性成分および該担体を構成する不活性成分(薬剤として許容される賦形剤)を含む生成物、ならびに該成分の任意の2種以上の組合せ、錯化もしくは凝集または該成分の1種もしくは複数の解離または該成分の1種もしくは複数の反応もしくは相互作用の他の様式から直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図される。したがって、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物、追加的な活性成分および薬剤として許容される賦形剤を混合することによって製造される任意の組成物を包含する。
【0033】
本発明の医薬組成物には、活性成分として式Iにより表される化合物(または薬剤として許容されるこの塩)、薬剤として許容される担体および場合によって、他の治療成分もしくはアジュバントが含まれる。該組成物には、経口投与、直腸投与、局所性投与および非経口(皮下、筋内および静脈内を含む。)投与に好適な組成物が含まれるが、任意の所与の場合における最も好適な経路は、具体的な宿主、ならびに該活性成分が投与される状態の性質および重症度に依存する。該医薬組成物は、単位投薬形態において都合よく提示され、薬学技術分野において周知の任意の方法によって調製され得る。
【0034】
実際面において、本発明の式Iによって表される該化合物または薬剤として許容されるこの塩は、従来の医薬配合技術によって医薬担体との緊密な混合において活性成分として混ぜ合わすことができる。該担体は、投与、例えば、経口または非経口(静脈内を含む。)投与に所望される調製物の形態に依存する広範で、さまざまな形態を取ってもよい。したがって、本発明の医薬組成物は、各々活性成分の所定量を含むカプセル、カシェーまたは錠剤などの経口投与に好適な別個の単位として提示できる。さらに、該組成物は、粉末、顆粒、溶液、水性液体における懸濁液、非水性液体、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして提示できる。上記に詳しく述べられた通常の投薬形態に加えて、式Iによって表される化合物または薬剤として許容されるこの塩はまた、放出制御手段および/または送達装置によって投与し得る。該組成物は、薬学の任意の方法によって調製し得る。一般に、このような方法としては、該活性成分と1種また複数の必須の成分を構成する該担体との結合をもたらすステップが含まれる。一般に、該組成物は、該活性成分と液体担体もしくは細分された固体担体または双方と均一に、緊密に混合することによって調製される。次いで、該生成物は所望の提示物に都合よく成形することができる。
【0035】
したがって、本発明の医薬組成物は、薬剤として許容される担体および式Iの化合物または薬剤として許容される塩を含み得る。式Iの化合物または薬剤として許容されるこの塩はまた、1種または複数の他の治療用活性化合物と組み合わせて、医薬組成物に含まれることができる。
【0036】
使用される該医薬担体は、例えば、固体、液体または気体であることができる。固体担体の例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸などがある。液体担体の例としては、糖シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油および水などがある。気体担体の例としては、二酸化炭素および窒素などがある。
【0037】
経口投薬形態のための該組成物の調製において、任意の都合のよい医薬媒体を使用し得る。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤などを使用して、懸濁液、エルキシル剤および溶液などの経口液体調製物を形成し得、一方、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を使用して、粉末、カプセルおよび錠剤など経口固体調製物を形成し得る。投与の容易さのために、錠剤およびカプセルは好ましい経口投薬単位であり、それにより固体医薬担体が用いられる。場合によって、錠剤は標準の水性または非水性技術によって被覆してもよい。
【0038】
本発明の組成物を含有する錠剤は、1種または複数の補助的な成分またはアジュバントと場合によって一緒に、圧縮または成形によって調製し得る。圧縮錠剤は、好適な機械において、粉末または顆粒などの自由流動形態において、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤または分散剤と場合によって混合して、該活性成分を圧縮することによって調製し得る。成形錠剤は、好適な機械において、不活性液体希釈剤で湿った粉末化合物の混合物を成形することによって製造し得る。各錠剤は、好ましくは約0.1mgから約500mgの該活性成分を含み、各カシェーまたはカプセルは、好ましくは約0.1mgから約500mgの該活性成分を含む。
【0039】
非経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、活性化合物の水溶液または水性懸濁液として調製しうる。好適な界面活性剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどを含むことができる。分散液をまた、油中におけるグリセロール、液体プロピレングリコールおよびこれらの混合物において調製することができる。さらに、防腐剤を微生物の有害な成長を防ぐために含むことができる。
【0040】
注入可能な使用に好適な本発明の医薬組成物としては、無菌の水溶液または水性分散液などがある。さらに、該組成物は、このような無菌の注入可能な溶液または分散液の即時の調製のために無菌の粉末の形態にあることができる。全ての場合において、最終的な注入可能な形態は無菌でなければならず、容易な注射針通過のために事実上流体でなければならない。該医薬組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、したがって、好ましくは、細菌および菌類などの微生物の汚染作用に対して保護されるべきである。該担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、植物油およびこれらの好適な混合物を含有する溶媒媒体または分散液媒体であることができる。
【0041】
本発明の医薬組成物は、例えば、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布剤などの局所使用に好適な形態であることができる。さらに、該組成物は経皮装置における使用に好適な形態であることができる。これらの処方物は、従来の処理方法によって本発明の式Iによって表される化合物または薬剤として許容されるこの塩を用いて調製し得る。例として、クリームまたは軟膏は、親水性物質および水を、約5重量%から約10重量%の該化合物と一緒に混合し、所望の稠度を有するクリームまたは軟膏を生成することによって調製される。
【0042】
本発明の医薬組成物は、該担体が固体である、直腸投与に好適な形態であることできる。該混合物が単位用量坐剤を形成することが好ましい。好適な担体としては、ココアバターおよび当技術分野において通常使用される他の物質などがある。該坐剤は、最初に該組成物を軟化または溶融した担体と混合し、引き続いて冷却し、型で成形することによって都合よく形成され得る。
【0043】
吸入または吹送による投与のための医薬組成物は、加圧包装または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態における送達のために処方し得る。これらはまた、処方され得る粉末として送達され得、該粉末組成物は、吹送粉末吸入装置の補助で吸入し得る。吸入のための好ましい送達系は、フルオロカーボンまたは炭化水素などの好適な推進剤における式Iの化合物の懸濁液または溶液として処方され得る定量吸入(MDI)エアロゾルおよび追加的賦形剤を有するまたは有さない式Iの化合物の乾燥粉末として処方され得る乾燥粉末吸入(DPI)エアロゾルである。乾燥粉末組成物、例えば、活性成分およびラクトースなどの好適な担体の粉末混合物を、粉末を吸入器の補助で投与し得る。例えば、カプセル、カートリッジまたはブリスター包装における単位投薬形態において提示し得る。本組成物を用いた使用に好適であり得る乾燥粉末吸入器の例は、Newman,S.P.,Expert Opin.Biol.Ther.,2004,4(1):23−33において見出され得る。
【0044】
前述の担体成分に加えて、上記医薬処方物は、必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(抗酸化剤を含む。)などの1種または複数の追加的な担体成分を含んでもよい。さらに、他のアジュバントを、該処方物を対象とする受容者の血液と等張にさせるために含むことができる。式Iにより記載される化合物または薬剤として許容されるこの塩を含む組成物はまた、粉末または液体濃縮物形態において調製され得る。
【0045】
以下は、式Iの化合物について代表的医薬投薬形態の例である:
【0046】
【表1】

【0047】
有用性
本発明の化合物は、カテプシンSの選択的阻害剤であり、このようなものとして哺乳動物、好ましくはヒトにおけるカテプシンS依存性疾患および状態の治療および予防において有用である。したがって、本発明の別の態様では、式(I)の化合物の治療的に有効量を哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物におけるカテプシンS依存性疾患および状態の予防または治療の方法が提供される。この態様にはカテプシンS依存性疾患および状態の治療または予防のための医薬の製造のための式(I)の化合物の使用が包含される。
【0048】
式(I)の化合物が治療または予防において有用であり得るカテプシンS依存性疾患および状態としては、限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群;粥状硬化症および心筋梗塞および発作、慢性閉塞性肺疾患(気腫および慢性気管支炎を含む。)、癌、骨関節炎、ゴーシェ病、ミオクローヌス癲癇およびある種の自己免疫疾患(若年発症糖尿病、多発性硬化症、尋常性天疱瘡、グレーヴス病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチおよび橋本甲状腺炎を含むがこれらに限定されない。);臓器移植または組織移植片の拒絶を含むがこれらに限定されないアレルギー疾患;ならびに、内臓痛(膵炎、間質性膀胱炎、腎疝痛、前立腺痛、慢性骨盤痛など)を含む疼痛、神経因性痛(ヘルペル後神経痛、急性帯状ヘルペス痛、神経損傷、疼痛「dynias」、例えば外陰痛、幻肢痛、神経根引き抜き損傷、神経根障害、疼痛性外傷性単神経障害、疼痛性エントラップメント神経障害、手根管症候群、尺骨神経障害、足根管症候群、疼痛性糖尿病性神経障害、疼痛性多発性神経障害、三叉神経痛など)、中心性疼痛症候群(限定されないが、発作、多発性硬化症、脊髄損傷を含む神経系の実質的に任意のレベルの任意の病変によって潜在的に引き起こされる。)および手術後の痛み症候群(例えば、乳房切除後症候群、開胸術後症候群、断端痛)、骨や関節痛(骨関節炎)、脊椎痛(例えば、急性および慢性腰痛、首痛、脊髄の狭窄)、肩痛、反復運動痛、歯痛、咽頭炎、癌性疼痛、顔面筋疼痛(筋肉損傷、繊維筋痛)、術後疼痛、術中疼痛および早期無痛覚症(限定されないが、一般外科、整形外科および婦人科を含む。)、慢性疼痛、月経困難症(原発性および続発性)などがあり、ならびに狭心症に伴う疼痛、さまざまな起源の炎症性疼痛(例えば、骨関節炎、関節リウマチ、リウマチ性疾患、腱−滑膜炎および痛風、強直性脊椎炎、滑液包炎)などがある。
【0049】
用量範囲
式Iの化合物の予防または治療用量の大きさは、治療される状態の性質および重症度、ならびに使用される式Iの特定の化合物および投与経路とともに変化する。該用量はまた、個々の患者の年齢、体重および反応により変化する。一般に、日用量の範囲は、哺乳動物の体重1kg当たり約0.001mgから約100mg、好ましくは1kg当たり0.01mgから約50mgおよび最も好ましくは1kg当たり0.1から10mgの範囲内にあり、1回または複数回で投与する。一方、一部の場合には、これらの範囲外の用量を使用することが必要なことがあり得る。
【0050】
静脈内投与のための組成物が用いられる場合の使用について、好適な用量範囲は、1日当たり体重1kg当たり式Iの化合物の約0.01mgから約25mg(好ましくは0.1mgから約10mg)である。
【0051】
経口組成物が用いられる場合において、好適な用量範囲は、例えば、1日当たり体重1kg当たり式Iの化合物の約0.01mgから約100mg、好ましくは1kg当たり約0.1mgから約10mgである。
【0052】
舌下投与のための組成物が用いられる場合の使用について、好適な用量範囲は、1日当たり体重1kg当たり式Iの化合物の0.01mgから約25mg(好ましくは、0.1mgから約5mg)である。
【0053】
COPDの治療または予防のために、式Iの化合物は、経口/吸入/舌下/などによって、1日1回、2回、3回など約0.1mg/kgから約100mg/kg、好ましくは約1mg/kgから10mg/kgの用量で使用し得る。該用量は、1日1回の用量または1日2回もしくは3回投与に分けて投与してもよい。
【0054】
疼痛の治療または予防のために、式Iの化合物は、経口/吸入/舌下/などによって、1日1回、2回、3回など約0.1mg/kgから約100mg/kg、好ましくは約1mg/kgから10mg/kgの用量で使用し得る。該用量は、1日1回の用量または1日2回もしくは3回投与に分けて投与してもよい。
【0055】
関節リウマチの治療のために、式Iの化合物は、経口/吸入/舌下/などによって、1日1回、2回、3回など約0.1mg/kgから約100mg/kg、好ましくは約1mg/kgから10mg/kgの用量で使用し得る。該用量は、1日1回の用量または1日2回もしくは3回投与に分けて投与してもよい。
【0056】
併用療法
式Iの化合物は、式Iの化合物が有用である疾患または状態の治療/予防/抑制または改善に使用される他の薬剤と併用して使用してもよい。このような他の薬剤は、これらの薬剤のために通常使用される経路によっておよび量で式Iの化合物と同時または順次に投与され得る。式Iの化合物が1種または複数の他の薬剤と同時に使用される場合、式Iの化合物に加えてこのような他の薬剤を含む医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物としては、式Iの化合物に加えて1種または複数の他の活性成分も含むものなどがある。別々に投与されるまたは同一医薬組成物において投与されるのいずれかで、式Iの化合物と混ぜ合わせ得る他の活性成分の例としては、限定されないが、(1)モルホリンおよびプロポキシフェン(Darvon)およびトラマドールを含む他のアヘン剤受容体アゴニスト;(2)プロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナック、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパック、オキシピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシンおよびゾメピラック)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサル)、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカム)、サリチル酸塩(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)およびピラゾロン(アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)およびコキシブ(セレコキシブ、バレコキシブ、ロフェコキシブおよびエトリコキシブ)などのCOX−2阻害剤を含む非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs);(3)ベータメタゾン、ブデソニデ、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンなどのコルチコステロイド;(4)ブロモフェニラミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミンピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、デスロラタジン、フェキソフェナジンおよびレボセチリジンなどのヒスタミンHI受容体アンタゴニスト;(5)シメチジン、ファモチジンおよびラニチジンなどのヒスタミンH2受容体アンタゴニスト;(6)オメプラゾール、パントプラゾールおよびエソメプラゾールなどのプロトンポンプ阻害剤;(7)ザフィルカスト、モンテルカスト、プランルカストおよびジレウトンなどのロイコトリエンアンタゴニストおよび5−リポキシゲナーゼ阻害剤;(8)ニトログリセリンおよび硝酸イソソルビドなどの硝酸塩、アテノロール、メトプロロール、プロプラノロール、アセブトロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、ラベタロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、ソタロールおよびチモロールなどのベータ遮断薬、ならびにジルチアザム、ベラパミル、ニフェジピン、ベプリジル、フェロジピン、フルナリジン、イスラジピン、ニカルジピンおよびニモジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬を含むアンギナ、心筋虚血用薬剤;(9)抗ムスカリン、例えば、トルテロジンおよびオキシブチニンなどの失禁薬;(10)胃腸鎮痙薬(アトロピン、スコポラミン、ジシクロミン、抗ムスカリンおよびジフェノキシレート);骨格筋弛緩薬(シクロベンザプリン、カリソプロドール、クロルフェネシン、クロルゾキサゾン、メタキサロン、メトカルバモール、バクロフェン、ダントロレン、ジアゼパムまたはオルフェナドリン);(11)アロプリノール、プロベネシドおよびコルヒチンなどの痛風薬;(12)メトトレキサーテ、オーラノフィン、オーロチオグルコースおよび金チオリンゴ酸ナトリウムなどの関節リウマチ用薬剤;(13)アレンドロネートおよびラロキシフェンなどの骨粗鬆症用薬剤;偽エフェドリンおよびフェニルプロパノールアミンなどの充血除去剤;(14)局所麻酔薬;(15)アシクロビル、バラシクロビルおよびファムシクロビルなどの抗ヘルペス薬;(16)オンダンセトロンおよびグラニセトロンなどの制吐薬;(17)トリプタン(例えば、リザトリプタン、スマトリプタン)、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、CGRPアンタゴニスト、抗うつ薬(例えば、三環系抗うつ薬、セロトニン選択性再摂取阻害剤、ベータアドレナリン遮断薬)などの片頭痛薬;(18)VR1アンタゴニスト;(19)抗痙攣薬(例えば、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリジン、トピラメート、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、フェニトイン);(20)グルタミン酸塩アンタゴニスト(ケタミンおよび他のNMDAアンタゴニスト、NR2Bアンタゴニスト);(21)アセタミノフェン;(22)CCR2アンタゴニスト;(23)PDE4アンタゴニスト;(24)チオトロピウムなどのムスカリンM3受容体アンタゴニスト;(25)ロバスタチン、シムバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチンおよびセリバスタチンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤;(26)ブラジキニンB1受容体アンタゴニストなどがある。
【0057】
生物活性
In Vitro分析
組換えヒトCat Sは、Calbiochem社からであり、組換えヒトCat Lは、R&D Systems社からであった。ヒト肝臓Cat BはSigma社からであった。プレ−プロ−フォルム(Pre−pro−form)ヒト化ウサギカテプシンK(導入されたS163A、Y175DおよびV274L突然変異を有するウサギカテプシンK;開始メチオニンから番号付け)をHek293細胞の媒体部分において発現し、精製し、次いで酸活性化した。全てのプロテアーゼ基質は、Bachem社からであった。
【0058】
酵素活性分析:Cat Sの分析を、50mMのMES(pH6.5)、100mMのNaCl、2.5mMのDTT、2.5mMのEDTA、0.001%w/vBSA、10%DMSOおよび基質として40μMのZ−Val−Val−Arg−AMCにおいて実施した。Cat Bの分析を、50mMのMES(pH6.0)、2.5mMのDTT、2.5mMのEDTA、0.001%Tween−20、10%DMSOおよび基質として83μMのBoc−Leu−Lys−Arg−AMCにおいて実施した。ヒト化ウサギCat KおよびCat Lの分析を50mMのMES(pH5.5)、2.5mMのDTT、2.5mMのEDTA、10%DMSOおよび基質として2μMのZ−Leu−Arg−AMCにおいて実施した。基質の添加前に、阻害剤(10.0μMから0.02nM)を各酵素(0.1〜1nM)と一緒に2分間予備温置し、酵素−阻害剤複合体を形成させた。次いで、基質を添加し、酵素活性を460nm(λex=355nm)での蛍光の増加から測定した。分析を96ウェルプレート様式において行い、該プレートをGemini EM(Molecular Devices社)プレートリーダーを使用して読み取った。用いた基質濃度は、KまたはサブK値を表す。該反応の阻害%を、ビヒクルのみ含有する制御反応から計算した。IC50曲線を、阻害%値が4つのパラメーターロジスティックモデル(SoftmaxPro,Molecular Devices社)に適合させることによって生成した。式(I)の化合物は、一般に約1μM以下のIC50値であり;より典型的には、約50nM以下のIC50値である。本明細書において例示される化合物について、約0.2から約21nMの範囲のIC50を有することを試験した。
【0059】
インビボ神経因性疼痛モデル
(a)マウスモデル
マウス(C5B16、タコニック)を2%ガス状イソフルランで麻酔した。坐骨神経に平行に、寛骨直下に切開した。該神経を露出させ、全ての付着組織を該神経から除去した。該坐骨神経の直径の1/3〜1/2の周りに6−0絹縫合糸で固い結紮を施した。筋肉を縫合糸で閉じ、創傷を創傷クリップで閉じた。機械的刺激に対するマウスの応答を神経損傷前および神経損傷後4日試験した。
【0060】
動物を、金網床を備えたプラスチックケージに入れ、各試験セッション前に15〜45分間順応させた。機械的感度を、アップ−アンド−ダウンパラダイム(up−and−down paradigm)(Chaplan,et al.(1994)J.Neurosci.Methods 53,55−63)を使用する較正されたvon Frey フィラメントを用いて求めた。このvon Frey フィラメントを足裏中央表面に8秒間または禁断応答が生じるまで適用した。正の応答に続けて、徐々に弱くなる刺激を試験した。刺激に応答がない場合、徐々に強くなる刺激を提示した。初期閾値を越えた後、この手順を1試験セッション当たり、1匹動物当たり、4回の刺激提示について繰り返した。次いで、機械的感度を、試験化合物の経口投与後のさまざまな時間(2から24時間)で評価した。異痛症の回復%を、(薬後−術後)/(術前−術後)×100(ここで100%は異痛症の完全回復、すなわち術前値に等しい)のように計算した。
【0061】
(b)ラットモデル
ラット(雄Sprague−Dawley,Charles River,150〜170g)をイソフルランで麻酔し、加熱パッド上に置いた。無菌法を使用して、L5脊髄神経を露出し、結紮し、離した(改良脊髄神経結紮、SNLモデル)。筋肉および皮膚を、それぞれ、4−0ポリジアクソンおよび創傷クリップで閉じた。
【0062】
触覚性異痛症を、神経損傷前および神経損傷後1週間アップ−アンド−ダウンパラダイムを使用して、較正されたvon Frey フィラメント(Stoelting Co.Wood Dale,II)を用いて評価した。動物を、金網床を備えたプラスチックケージに入れ、各試験セッション前に15〜45分間順応させた。50%応答閾値を求めるために、von frey フィラメント(0.4から28.8gの強度の範囲にわたって)を、足裏中央表面に8秒間または禁断応答が生じるまで適用した。正の応答に続けて、徐々に弱くなる刺激を試験した。刺激に応答がない場合、徐々に強くなる刺激を示した。初期閾値を越えた後、この手順を1試験セッション当たり、1匹動物当たり、4回の刺激提示について繰り返した。次いで、機械的感度を、化合物の経口投与後のさまざまな時間(2から24時間)で評価した。回復%を、(薬後−SNL後)/(SNL前−SNL後)×100(ここで100%は異痛症の完全回復、すなわちSNL前値に等しい)のように計算した。
【0063】
方法
以下のスキームおよび説明を、式(I)の化合物およびこのための中間体の調製のためのプロセスを示すために与える。当業者であれば、以下の調製手順の条件およびプロセスの公知の変形を使用することができることを容易に理解する。以下のスキームにおいて、PGはアミン、ヒドロキシおよびカルボキシル基などの反応性官能基の保護基を表し、LGは脱離基を表す。保護基の選択、その導入およびその後の除去は当業者に周知であり、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rdEdition,1999(Wiley Interscience)などの標準教科書に見出すことができる。同様に、置換反応における脱離基の選択および使用は、当業者に周知であり、March,Advanced Organic Chemitry,5thEdition,2001(Wiley Interscience)などの標準有機化学教科書において検討されている。
【0064】
使用略語
以下の略語は、本明細書において特に明記しない限り、示された意味を有する:ACN=アセトニトリル;DIPEA=N,N’−ジイソプロピルエチルアミン;DMF=ジメチルホルムアミド;EDC=N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド;eq.=当量;ES(またはESI)−MS=電子スプレーイオン化−質量分析;Et=エチル;EtOAc=酢酸エチル;HATU=O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;MTBE=メチルt−ブチルエーテル;MeOH=メタノール;MHz=メガヘルツ;NMR=核磁気共鳴;PPTS=p−トルエンスルホン酸ピリジン塩;RT=室温;TEA=トリエチルアミン;THF=テトラヒドロフラン;Ts=トルエンスルホニル。
【0065】
本発明の化合物は、スキーム1に示したように調製し得る。文献において公知な方法により調製し得る好適に置換されているアミノ酸を、水素化アルミニウムリチウムなどの試薬を用いて対応するアミノアルコールに還元することができるか、あるいはアミノエステルを形成し、水素化ホウ素アルカリ金属で還元することによることができる。このアミノアルコールを、PPTSまたはTsOHなどの酸触媒を使用してディーン−スタルク(Dean−Stark)条件下で好適に官能基化されたケトンを用いて縮合することができる。必要に応じて、得られたオキサゾリンを、クロマトグラフィーまたはIshii et al,Tetrahedron Lett.39,1199−1202(1998)に報告されたように分別再結晶によって純ジアステレオマーに分離することができる。このオキサゾリンをリチウムアセチリドで処理し、構造(4)の化合物を生成することができる。アルコール官能性を、HIO/CrOなどの試薬を使用してこのカルボン酸に酸化することができる。あるいは、アルデヒドへスウェルン(Swern)酸化し、次いで酸へのNaClO酸化などの2ステップ酸化手順を使用してもよい。Y=Sである場合、硫黄原子を、オキソン(OXONE)を使用してこの時点でスルホンに酸化してもよい。あるいは、この酸化ステップを、アミド形成ステップ後に実施することもできる。このカルボン酸は、アミン塩基の存在下でHATU、pyBOPまたはEDCなどのペプチドカップリング試薬を使用して適切に置換されているアミノアセトニトリル部分とカップリングされ、本発明の化合物を得る。
【0066】
【化3】

【0067】
式(I)のアミノ酸を、スキーム2aおよび2bに示した手順を使用して調製し得る。Y=OまたはSに対して、保護アミノ酸誘導体(6)をDMF中でカリウムなどの塩基および脱離基(R−LG)で置換されている好適なRで処理し、次いで、得られた誘導体を脱保護して(1a)を得る。あるいは、Y=Sに対して、該アミンおよび酸基の脱保護に続けて、酢酸の存在下、塩素でメルカプト誘導体を酸化し、この後のTEAなどのアミンおよび塩基を用いた該塩化スルホニル誘導体の処理により(1b)を生成し、次いでアミンおよび酸基を脱保護する。アミド(1c)を、遊離のカルボン酸が塩化チオニルまたはイソブチルクロロホルメートなどの試薬で活性化された保護アミノ酸誘導体(7)から調製することができ、得られた酸クロリドまたは混合無水物をアミンRNHおよびTEAなどの塩基で処理する。その後のアミンおよびカルボキシレート官能性の脱保護によって化合物1cを得る。
【0068】
【化4】

【0069】
【化5】

【0070】
式(5)の化合物はまた、スキーム3に示したように調製し得る。アミン(8)および活性アルファ−ヒドロキシ酸誘導体(9)または別にアミノ酸エステル(11)および活性アルコール(10)を、適切な温度で数時間DMFなどの溶媒中炭酸カリウムなどの塩基で処理する。トリフルオロメチルスルホネート活性基は、この転換に有用である。次いで、得られる生成物に、水およびTHF中で水素化リチウムなどの塩基で加水分解を施す。
【0071】
【化6】

【0072】
式(5b)の化合物はまた、スキーム4に示したように調製し得る。アミン誘導体(13)およびケトン、ケトンの水和型またはケトン(12)のヘミアセタール型を、生成される水を除去しながら、ベンゼンなどの溶媒中で縮合する。次いで、得られる縮合生成物(14)を、低温でTHFなどの溶媒中アルキニルリチウム誘導体で処理し、付加体(15)を生成する。次いで、この付加体の硫黄原子を、タングステンナトリウムおよびテトラブチルアンモニウム水素硫酸塩などの相転移試薬の存在下で過酸化水素などの酸化剤で酸化することができる。次いで、この生成物を脱保護し、得られるアルコールを、湿ったアセロニトリル中過ヨウ素酸および三酸化クロムなどの酸化剤でカルボン酸誘導体(5b)に酸化することができる。
【0073】
【化7】

【0074】
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられ、決してこの範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0075】
3−(ベンジルスルホニル)−N−(1−シアノシクロプロピル)−N−[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル)−L−アラニンアミド
【0076】
【化8】

【0077】
ステップ1.(2R,4R)−4−[(ベンジルチオ)メチル]−2−(4−フルオロフェニル)−2−(トリフルオロメチル)−1,3−オキサゾリジン
トルエン(150mL)中、2,2,2−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノン(5.1g、26.5mmol)、(2R)−2−アミノ−3−(ベンジルチオ)−プロパン−1−オル(5.2g、26.4mmol)、PPTS(0.69g、2.7mmol)およびトルエンスルホン酸(0.35g、1.8mmol)の混合物を加熱し、連続的に水を除去しながら(Dean−Stark装置)3日間還流した。該混合物を冷却し、セライトを通してろ過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配15%ジクロロメタン/ヘキサンから40%ジクロロメタン/ヘキサン)により精製して、(S,R)異性体2.5g、次いで、表題化合物の(R,R)異性体4.6gを得た。
【0078】
ステップ2.(2R)−3−(ベンジルチオ)−2−{[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]アミノ}プロパン−1−オル
THF(20mL)中シクロプロピルアセチレン(トルエン中70%w/w、1.5mL、12.7mmol)の−78℃溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M、7.8mL、12.5mmol)を加えた。この混合物を15分間攪拌し、0℃に加温し、次いで−78℃の冷浴に戻した。この冷溶液をカニューレを介してTHF(30mL)中ステップ1の化合物(1.12g、3.0mmol)の−78℃溶液に移した。この混合物を−78℃で1時間、次いで−40℃で2時間攪拌し、次いで室温に一夜ゆっくり加温させた。この混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルおよび塩化アンモニウム水溶液に分配した。有機相を食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配20%から60%酢酸エチル/ヘキサン)による精製をして、表題化合物642mgを得た。
【0079】
ステップ3.3−(ベンジルスルホニル)−N−[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−L−アラニン
ジクロロメタン(15mL)中塩化オキサリル(0.25mL、2.9mmol)の−78℃溶液に、DMSO(0.32mL、4.5mmol)を滴下し、気体発生を生じた。ジクロロメタン(4mL)中ステップ2の化合物(630mg、1.44mmol)の溶液を滴下し、引き続きトリエチルアミン(1.0mL、7.2mmol)を加えた。この混合物を20分間攪拌し、0℃に加温させ、pH3.5のリン酸塩緩衝液でクエンチした。この混合物をジクロロメタンで抽出し、抽出物を食塩水で洗浄し、綿を通してろ過し、濃縮した。
【0080】
得られる粗アルデヒドを室温でt−ブタノール(35mL)および2−メチル−2−ブテン(6mL)中に溶解した。水(20mL)中NaClO(2.0g、22mmol)およびNaHPOO(2.4g、18mmol)の溶液を加え、この混合物を4.5時間攪拌した。揮発性物を真空内で除去し、残渣を1NNaOHで塩基性にした。この溶液を3:1ヘキサン/エーテルで洗浄し、有機物を3×1NNaOHで抽出した。混合水層のpHを6NHClで約pH4に調整し、EtOAcで抽出した。有機相を食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濃縮し、硫化物、スルホキシドおよびスルホンの混合物として粗カルボン酸670mgを得た。この物質をアセトン(50mL)に溶解し、15mLの水中オキソン(2.4g、3.9mmol)の溶液で処理した。この2相混合物を45分間激しく攪拌し、濃縮し、次いでEtOAcおよび1MNaHSO間に分配した。有機相を食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、未精製油として表題化合物726mgを得た。
【0081】
ステップ4.3−(ベンジルスルホニル)−N−(1−シアノシクロプロピル)−N−[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−L−アラニンアミド
DMF(10mL)中、ステップ3の未精製化合物(550mg、約1.1mmol)、HATU(533mg、1.4mmol)および1−アミノシクロプロパンカルボニトリル(230mg、2.3mmol)の溶液に、EtN(0.5mL、3.6mmol)を加えた。この混合物を室温で21時間攪拌し、次いで、MTBEおよび水間で分配した。有機相をpH3.5のリン酸塩緩衝液および食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配30%から100%酢酸エチル/ヘキサン)による精製をして対応するスルホキシド、3−(ベンジルスルフィニル)−N−(1−シアノシクロプロピル)−N−[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−L−アラニンアミド29mgと一緒に、表題化合物181mgを得た。
【0082】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ8.55(1H,s)、7.88(2H,m)、7.53(2H,m)、7.45(3H,m)、7.25(2H,m)、4.68(1H,d)、4.56(1H,d)、4.02(1H,m)、3.74(1H,d)、3.62(1H,dd)、3.39(1H,dd)、1.53(1H,m)、1.49(2H,m)、1.28(2H,m)、0.9(4H,m)。MS(+ESI):m/z 548.1(M+1)。
【実施例2】
【0083】
3−(ベンジルフルホニル)−N−(シアノメチル)−N−[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−L−アラニンアミド
【0084】
【化9】

【0085】
DMF(3mL)中、実施例1、ステップ3の未精製化合物(125mg、0.26mmol)、HATU(133mg、0.35mmol)およびアミノアセトニトリル(39mg、0.42mmol)の溶液に、EtN(0.1mL、0.7mmol)を加えた。この混合物を室温で21時間攪拌し、次いでMTBEおよび水間に分配した。有機相をpH3.5のリン酸塩緩衝液および食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配30%から100%酢酸エチル/ヘキサン)による精製をして、対応するスルホキシド、3−(ベンジルスルフィニル)−N−(シアノメチル)−N−[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−L−アラニンアミド11mgと一緒に、表題化合物41mgを得た。
【0086】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ8.52(1H,s)、7.89(2H,m)、7.52(2H,m)、7.44(3H,m)、7.25(2H,m)、4.66(1H,d)、4.54(1H,d)、4.30(2H,m)、4.02(1H,m)、3.86(1H,d)、3.72(1H,dd)、3.49(1H,dd)、1.52(1H,m)、0.9(4H,m)。MS(+ESI):m/z 522.1(M+1)。
【実施例3】
【0087】
−[(1R)−1−(4−ブロモフェニル)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド
【0088】
【化10】

【0089】
ステップ1.(2R,4R)−2−(4−ブロモフェニル)−4−[(メチルチオ)メチル]−2−(トリフルオロメチル)−1,3−オキサゾリジン
10N水酸化ナトリウム(6.98mL)を、(2R)−2−アミノ−3−(メチルチオ)プロパン−1−オル塩酸(11g、69.8mmol)およびトルエン(233mL)の0℃混合物に加え、この混合物を30分間攪拌した。2,2,2−トリフルオロ−1−(4−ブロモフェニル)エタノン(15.9g、62.8mmol)およびPPTS(1.061g、5.5mmol)を加え、この混合物を加熱し、連続的に水を除去しながら(Dean−Stark装置)36時間還流した。この混合物を冷却し、揮散させて乾燥し、シリカゲルクロマトグラフィー(1:10酢酸エチル/ヘキサン)による精製をして、1.5:1混合物として(S,R)および(R,R)異性体18.8gを得た。
【0090】
ステップ2.(2R)−2−{[(1R)−1−(4−ブロモフェニル)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]アミノ}−3−(メチルチオ)プロパン−1−オル
テトラヒドロフラン(350mL)中シクロプロピルアセチレン(211mmol、4.5等量;アルドリッヒ(Aldrich)試薬25mL)の−35℃溶液に、ヘキサン(94mL、180mmol、4等量)中n−ブチルリチウム2Mを加えた。この混合物を−35℃で30分間攪拌し、次いで30分間で−5℃に加温した。これを再び−78℃に冷却し、テトラヒドロフラン(50mL)中ステップ1由来の中間体(16.7g、46.9mmol)を−78℃でゆっくり加えた。この混合物を−78℃で2時間反応させ、次いで、−5℃に加温した。約−5℃で約0.5時間後、この混合物は、茶赤色に変わり、直ちに冷却し、水、氷およびMTBE中へゆっくり注ぎ入れることによってクエンチした。pHを約3に調整し、この混合物を0.5時間攪拌した。これをMTBEで2回抽出した。この混合有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を真空内で除去し、物質18.2gを得た。この物質を1:4酢酸エチルおよびヘキサン(EA:H)を使用してシリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製し、不純生成物(19−Fは異性体の痕跡を示す)4.7gを得、この不純生成物は、次のステップにおいてこのまま使用された。
【0091】
ステップ3.(2R)−2−{[(1R)−1−(4−ブロモフェニル)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]アミノ}−3−(メチルスルホニル)プロパン−1−オル
アセトン(30mL)中ステップ2由来の硫化物(1.4g、3.32mmol)の21℃溶液に、水2mL中オキソンモノ過硫酸(6.12g、9.96mmol、3等量)の溶液を加えた。この2相反応混合物を21℃で2時間攪拌した。アセトンを真空内で除去し、酢酸エチルを残渣に加えた。食塩水と一緒に、Naの氷冷溶液および食塩水で洗浄し、有機層をMgSOで乾燥した。真空下の濃縮により、次のステップでこのまま使用される表題化合物1.5gを得た。
【0092】
ステップ4.N−[(1R)−1−(4−ブロモフェニル)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−(メチルスルホニル)−L−アラニン
0℃で、アセトニトリル(15mL)中ステップ3由来のアルコール(1.4g、3.08mmol、)の溶液に、過ヨウ素酸/CrOの新たに調製した溶液(28mL、12.32mmol、4等量)[Zhao M.et al.Tet.Lett.(1998),39,5323−5326におけるように調製された;過ヨウ素酸5.7gおよびCrO12mgを0.75%V/V水/アセトニトリル57mL中に溶解した。]を滴下した。この反応混合物を0℃で3時間攪拌し、次いで、氷冷NaHPO水溶液中に注ぎ入れた。pHを1NのHClで3に調整し、この混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水および水(1:1)の混合物、引き続きNaHSO水溶液、最後に食塩水で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、真空下で濃縮して、酸1.2gを得、この酸は、次のステップでこのまま使用された。
【0093】
ステップ5 N−[(1R)−1−(4−ブロモフェニル)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド
0℃で、N,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中ステップ4由来の酸(1.2g、2.56mmol)および1−シアノシクロプロパンアミニウムクロリド(364mg、3.07mmol、1.2等量)の溶液に、HATU(1.46g、3.84mmol、1.5等量)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.3mL、13.17mmol、5.14等量)を加えた。この反応混合物を21℃で一夜攪拌し、次いで、氷冷飽和NaHCO溶液中に注ぎ入れた。酢酸エチル(2×50mL)で抽出し、混合有機層を飽和NHCl溶液および食塩水で洗浄した。MgSOで乾燥し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン、15:85から35:65)によって精製し、引き続きMTBE/ヘキサン中で砕いて粉にし、表題の生成物(400mg)を得た。19F−NMRは、1つのジアステレオアイソマーのみを示した。
【0094】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ8.5(1H,bs)、7.75(2H,m)、7.65(2H,m)、3.95〜4.05(1H,m)、3.55〜3.75(2H,m)、3.3〜3.4(1H,m)、3.1(3H,s)、1.4〜1.6(3H,m)、1.2〜1.3(3H,m)、0.8〜1.0(3H,m)。MS(+ESI):m/z 532.0および534.0。
【実施例4】
【0095】
−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−N−(1−シアノシクロプロピル)−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド
【0096】
【化11】

【0097】
表題化合物を、ステップ1の(2R)−2−アミノ−3−(ベンジルチオ)プロパン−1−オルを(2R)−2−アミノ−3−(メチルチオ)プロパン−1−オルで置き換える以外は、実施例1におけるような同じ手順を使用して調製した。
【0098】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ8.5(1H,bs)、7.8〜7.9(2H,m)、7.2〜7.3(2H,m)、3.95〜4.05(1H,m)、3.55〜3.75(2H,m)、3.3〜3.4(1H,m)、3.15(3H,s)、1.4〜1.6(3H,m)、1.2〜1.3(3H,m)、0.8〜1.0(3H,m)。MS(+ESI):m/z 472.1。
【実施例5】
【0099】
N−(1−シアノシクロプロピル)−N−[(1S)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド
【0100】
【化12】

【0101】
ステップ1.(2R)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−3−(メチルチオ)プロパン−2−アミン
ジクロロメタン(608mL)中(2R)−2−アミノ−3−(メチルチオ)プロパン−1−オル塩酸(48g、304mmol)の−78℃懸濁液に、トリエチルアミン(107mL、760mmol)を加え、この混合物を室温まで加温し、全ての物質が溶解するまで攪拌した。これを再び冷却し、DMAP(3.71g、30.4mmol)を加えた。次いで、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(45.8g、304mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液を滴下し、この混合物を16時間攪拌した。これを10%NHCl水溶液、10%NaHCO水溶液および食塩水で順次洗浄した。この混合物を乾燥し、蒸発させて乾燥した。残渣をエタノールおよびジクロロメタン(1:20)を使用してシリカの短床上でクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物を得た。
【0102】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ3.5〜3.7(2H,m)、2.95〜3.05(1H,m)、2.65〜2.75(1H,m)、2.4〜2.5(1H,m)、2.15(3H,s)、1.65〜1.75(2H,bs)、0.9〜1.0(9H,s)、0.1(6H,s)。
【0103】
ステップ2.(2R)−1−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−3−(メチルチオ)−N−[(1E)−2,2,2−トリフルオロエチリデン]プロパン−2−アミン
ベンゼン(70mL)中ステップ1由来のアミン(5g、21.2mmol)およびトリフルオロアセトアルデヒドメチルアセタール(4.7g、36.1mmol)を加熱し、水を収集するためにDean−Starkを使用して16時間還流した。次いで、この混合物を蒸発させて乾燥し、次のステップでこのまま使用される表題化合物(6.7g)を得た。
【0104】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ7.7(1H,m)、3.8〜3.9(1H,m)、3.6〜3.7(1H,m)、3.5(1H,m)、2.6〜2.8(2H,m)、2.1(3H,s)、0.9(9H,s)、0〜0.1(6H,2S)。
【0105】
ステップ3.(2S)−N−{(1R)−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−1−[(メチルチオ)メチル]エチル}−4−シクロプロピル−1,1,1−トリフルオロブト−3−イン−2−アミン
テトラヒドロフラン(25mL)中、トルエン(1.2mL、10mmol、2等量)中アルドリッヒ70重量%溶液としてシクロプロピルアセチレンを−78℃に冷却し、ヘキサン(4.69mL、7.5mmol、1.5等量)中1.6Mのn−ブチルリチウムを滴下した。この混合物を15分間攪拌し、次いで、30分間で0℃に加温した。これを−78℃に冷却し、THF(5mL)溶液としてステップ2由来のイミン(1.58g、5mmol)を加えた。この混合物を−78℃で1時間反応させ、次いで、0℃に加温した。これをNHCl水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、乾燥した。溶媒の蒸発からの残渣を、1:25酢酸エチルおよびヘキサンで溶離するシリカゲルの短いパッド上に通し、S,S異性体を有する混合物として硫化物付加体(1.2g)を得、次のステップにおいてこのまま使用した。
【0106】
ステップ4.(2S)−N−{(1R)−2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−1−[(メチルスルホニル)メチル]エチル}−4−シクロプロピル−1,1,1−トリフルオロブト−3−イン−2−アミン
酢酸エチル(50mL、0.063M)中、硫化物(1.2g、3.14mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(51.8mg、0.157mmol、0.05等量)、テトラブチルアンモニウム水素スルフェート(53μL、0.157mmol、0.05等量)の−5℃混合物に、過酸化水素30%(802μL、7.85mmol、2.5等量)を加え、この混合物を5℃で16時間攪拌した。この混合物に希NaHSO水溶液および食塩水を加え、これを10分間攪拌した。これを酢酸エチルで2回抽出し、この混合有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸発からの残渣を、酢酸エチルおよびヘキサン(1:3)を使用してシリカ上でクロマトグラフィーによって精製し、次のステップにおいてこのまま使用される異性体の混合物として表題化合物を得た(0.83g)。
【0107】
ステップ5.(2R)−2−{[(1S)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]アミノ}−3−(メチルスルホニル)プロパン−1−オル
テトラヒドロフラン(5mL)中、ステップ4由来のシリルエーテル(830mg、2.01mmol)の−5℃混合物に、1MのTHF溶液としてテトラブチルフッ化アンモニウム(2.21mL、2.21mmol、1等量)を加え、この混合物を5℃で一夜攪拌した。この混合物に希NHCl水溶液を加え、これを酢酸エチルで2回抽出した。この混合有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。残渣を、酢酸エチルおよびヘキサン(1:1引き続き2:1)を使用してシリカ上でクロマトグラフィーによって精製し、次のステップにおいてこのまま使用される異性体の混合物として表題化合物(370mg、収率=62%)を得た。
【0108】
ステップ6.N−[(1S)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−(メチルスルホニル)−L−アラニン
CrO/HIOの溶液を、CrO(12mg)および過ヨウ素酸(5.7g)を水(427μL)を含むアセトニトリル(57mL)中に室温で溶解させることによって調製した。この混合物を5℃で16時間攪拌した。アセトニトリル(10mL)中ステップ4由来のアルコール(370mg、1.24mmol)の0℃溶液に、上記溶液12mLを滴下し、この混合物を0℃で4時間反応させた。これを氷、酢酸エチルおよび1MNaHPO上に注ぎ、pHを1NHClで約5に調整した。この生成物を酢酸エチル中で2回抽出した。有機層を希チオ硫酸ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させて、残渣を得た。これを酢酸エチルおよび酢酸(100:1)を使用してシリカ上でクロマトグラフィーによって精製し、表題化合物(66mg)を得た。
【0109】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ4.3〜4.4(1H,m)、3.95〜4.05(1H,m)、3.35〜3.6(2H,m)、3.1(3H,s)、1.25〜1.4(1H,m)、0.8〜0.9(2H,m)、0.6〜0.7(2H,m)。
【0110】
ステップ7.N−(1−シアノシクロプロピル)−N−[(1S)−3−シクロプロピル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(222μL、1.27mmol、6等量)を、N,N−ジメチルホルムアミド(1.05mL)中、ステップ5由来の酸(66mg、0.211mmol)、HATU(120mg、0.316mmol、1.5等量)および1−アミノ−1−シクロプロパンカルボニトリル−Hcl(37.5mg、0.316mmol、1.5等量)に滴下した。この混合物を0℃で4時間攪拌した。これを氷およびNHCl水溶液上に注ぎ、酢酸エチルで2回抽出した。酢酸エチル層をNHCl水溶液、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸発からの残渣を、酢酸エチルおよびヘキサン(1.5:1)を使用してシリカ上で精製し、ジエチルエーテル中で砕いて粉にされる固体を得、表題化合物(19mg)を得た。
【0111】
表題化合物:1H NMR(d−アセトン,500MHz)δ8.4(1H,bs)、4.2〜4.3(1H,m)、3.85〜3.95(1H,m)、3.45〜3.55(1H,m)、3.25〜3.35(1H,m)、3.1(3H,s)、3.0〜3.1(1H,m)、1.5〜1.6(2H,m)、1.3〜1.45(3H,m)、0.8〜0.9(2H,m)、0.65〜0.75(2H,m)。MS(+ESI):m/z 378.2。
【0112】
前述の実施例において記載された手順に従い、以下の化合物を調製し得る:
N1−(1−シアノシクロプロピル)−N2−[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−[(シクロプロピルメチル)スルホニル]−L−アラニンアミド;
N1−(1−シアノシクロプロピル)−3−[(シクロプロピルメチル)スルホニル]−N2−[(1R)−5,5,5−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)ペント−2−イン−1−イル]−L−アラニンアミド;
N1−(1−シアノシクロプロピル)−N2−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)−3−フェニル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド;
N1−(1−シアノシクロプロピル)−N2−[(1R)−3−シクロプロピル−1−ピリジン−4−イル−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド;
N1−(1−シアノシクロプロピル)−3−[(シクロプロピルメチル)スルホニル]−N2−[(1R)−4,4,4−トリフルオロ−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)ブト−2−イン−1−イル]−L−アラニンアミド
(2S)−N−(1−シアノシクロプロピル)−2−{[(1R)−3−シクロプロピル−1−(4−フルオロフェニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]アミノ}−4,4−ジフルオロ−6−メチルヘプタンアミド;
N1−(1−シアノシクロプロピル)−N2−[(1S)−4,4−ジメチル−1−(トリフルオロメチル)ペント−2−イン−1−イル]−3−(メチルスルホニル)−L−アラニンアミド;
N1−(1−シアノシクロプロピル)−N2−[3−シクロプロピル−1−(シクロプロピルエチニル)−1−(トリフルオロメチル)プロプ−2−イン−1−イル]−3−[(シクロプロピルメチル)スルホニル]−L−アラニンアミド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、Xは、−(CHRであり;
Yは、−O−、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、CR−CF−、−CCl−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR−または−NRS(O)−であり;
nは、1から6から選択される整数であり;
は、C1〜6ハロアルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1〜6アルキル−またはヘテロアリール−C1〜6アルキル−であり、ここで前記アルケニルおよびアルキニルは、C3〜6シクロアルキルで場合によって置換されており、前記アリールおよびヘテロアリールは、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、ハロ、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−SR、−S(O)R、−S(O)、OR、NR、シアノおよびアリールから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されており;
は、水素またはC1〜6ハロアルキルであり;
は、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C3〜6シクロアルキル−C1〜6アルキル−、アリール、アリール−C1〜6アルキル−、ヘテロアリールまたはヘテロアリール−C1〜6アルキルであり、ここでシクロアルキルは、C1〜3ハロアルキルで場合によって置換されており、アリールおよびヘテロアリールは、C1〜6アルキル、ハロ、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−OR、NR、シアノおよびアリールから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されており;または、
Y−Rは、−S(O)ORもしくは−SONHであり;
は、CHS−、CHS(O)−、CHSO−、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C3〜6シクロアルキル−C1〜6アルキル−、アリールまたはヘテロアリールであり、ここで前記アリールおよびヘテロアリールは、C1〜6アルキル、CH(OH)C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、ハロ、C1〜6ハロアルキル、CH(OH)C1〜6ハロアルキル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NR、−OR、NR、シアノ、ニトロ、シアノ、ヘテロシクリル、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)NR、−NRCONRS(O)、−OSO、−N(R)C(O)NR、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)OR、−N(R)SO、−C(R)(R)NRC(R)(R)、−C(R)(R)C(R)(R)NR、−C(O)C(R)(R)NRおよびC(R)(R)C(O)NRから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されており;
およびRは、水素、C1〜6アルキルおよびC2〜6アルケニルから独立に選択され、ここで前記アルキル基およびアルケニル基は、1から6個のハロ、C3〜6シクロアルキル、−SR、S(O)R、S(O)、OR、NRで場合によって置換されており;または、
およびRは、これらが結合している炭素原子と一緒に、C3〜8シクロアルキル環またはヘテロシクリル環を形成し、ここで前記環系は、C1〜6アルキルまたはハロで場合によって置換されており;
は、水素、C1〜6アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1〜6アルキルおよびヘテロアリール−C1〜6アルキルであり;
およびRは、独立に、水素またはC1〜6アルキルであり;または
およびRは、窒素原子に結合している場合、O、SおよびN−Rから選択される第2のヘテロ原子を場合によって有する4から6員環を一緒に完成し;
は、水素もしくはC1〜6アルキルである。)
の化合物および薬剤として許容されるこの塩。
【請求項2】
がC1〜6ハロアルキルであり、Rが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRが、独立に、水素およびC1〜6アルキルから選択されまたはRおよびRが、これらが結合している炭素原子と一緒にC3〜8シクロアルキル環を形成し、ここで前記環は、C1〜6アルキルまたはハロで場合によって置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、−(CH−であり、nが、1から3の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Yが、−S−、−SO−および−SO−から選択される化合物。
【請求項6】
が、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、アリールおよびアリール−C1〜6アルキル−から選択され、ここでアリールは、C1〜6アルキル、ハロおよびC1〜6ハロアルキルから独立に選択される1から3個の置換基で場合によって置換されている、化合物。
【請求項7】
が、C3〜6シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、C1〜3ハロアルキルであり、Rが、1または2個のハロゲン原子で場合によって置換されたアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物または薬剤として許容されるこの塩および薬剤として許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
カテプシンS依存性疾患または状態を予防または治療するための医薬品の製造における請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−545720(P2008−545720A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513879(P2008−513879)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000883
【国際公開番号】WO2006/128287
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】