説明

カテーテルバルーンをコーティングするための組成物の使用およびコーティングされたカテーテルバルーン

本発明は、生体と短時間接触する拡張可能な医療製品、例えば少なくとも1つの抗増殖剤、免疫抑制剤、抗血管新生剤、抗炎症剤、殺真菌剤および/または抗血栓薬ならびに輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物を含む少なくとも1つの層でコーティングされたバルーンカテーテル、これらのコーティングされた医療製品のコーティング方法およびこのコーティングのための組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔説明〕
本発明は、生体と短時間接触する拡張可能な医療製品、例えば少なくとも1つの抗増殖剤、免疫抑制剤、抗血管新生剤、抗炎症剤、殺真菌剤および/または抗血栓剤ならびに輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物でコーティングされたバルーンカテーテル、これらのコーティングされた医療製品のコーティング方法およびこのコーティングのための組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前世紀の80年代末以降、移植された場合に内側から血管壁を押圧する、身体管腔に適応された金属管状ステント移植片が、再狭窄の防止すなわち血管の再閉塞の防止のために、かつてないほどに確立されてきている。未コーティングのステントと比べて再狭窄率の最少化にプラスの結果が得られることから、ステントとして公知のこれらのインプラントを薬剤がコーティングされた「薬剤溶出型ステント」へとさらに発展させることが、現在集中的に追求されている。
【0003】
60年代以降に実施されていたPCTA(経皮経管冠動脈形成拡張術)は、これらの長期インプラントにより急速に置換されてきており、未コーティングステントの再閉塞率がいくつかの症例においてPCTAの実施後に再発する閉塞よりも低いことから、今日では実施される治療の大部分を占めている。
【0004】
薬剤溶出型ステントの形で実現されるような機械的予防法と化学的予防法の組合せという優れた着想は、冠状動脈の再狭窄を予防するためのバルーンカテーテルにおけるステントの極めて初期のころからすでに調査され、臨床研究において様々な種類が使用されてきた。
【0005】
しかしながら、薬剤搭載バルーンカテーテルは、ステント以上には普及することができなかった。その理由は明白である。
PCTAでは、閉塞した部分は、カテーテル先端部にある膨張式バルーンを用いて1〜3分の短時間拡張させられ、必要であれば3回以上反復される。こうして、血管は、閉塞が除去されるように過剰に伸長させられなくてはならない。この手順の結果、血管壁内に微細病変がひき起こされ、外膜まで到達する。カテーテルを除去した後、病変を受けた血管は放置され、そのため過剰伸長の持続時間、反復回数および程度の結果としてもたらされる病変の程度に応じて、治癒プロセスのために著しく高い性能が求められることになる。これは、PCTA後の再閉塞率の高さに反映されている。
【0006】
ステント移植においては、バルーンカテーテルは、輸送および移植補助として使用され、そのため血管壁の過剰伸長はここでも発生するものの、この場合過剰伸長は、ステント拡張の時間中しか必要とされない。ステントがひとたび正しい位置に不動の状態で設置されたならば、バルーンは再び収縮され除去される。こうして、過剰伸長の持続時間は短縮され、一回しか行われない。再狭窄率の減少は、この過剰伸長時間の短縮と同様にステント内での過剰伸長度の低減がすでに、体内への外因性物質の導入にもかかわらず治療後処置率の低下を結果としてもたらすことを示している。
【0007】
永久インプラントとしてのステントは、好ましくは再狭窄から解放された新しい時代を運んでくれる希望の星であるという確信が存在し、今日に至るまでのその優先的な使用を導いたこの有望な進歩は、PCTAをさらに最適化する余地を与なかった。PCTAは、重症度の低い症例においてのみ実施され、特に重症の症例では、治療すべき血管部分の予備拡張のためにステントの移植前に行われる。
【0008】
ステントの歴史における次なる目標は、再狭窄の100%の予防である。したがって、理想的な薬剤と理想的な好ましくは生分解性のステントの組合せの探求が着手された。最初の数日および数週間の細胞反応の抑制は、主として、好ましくは、抗増殖剤、免疫抑制剤および/または消炎剤および同等の活性を有するそれらの誘導体/類似体および代謝産物を用いて達成される。活性作用物質および/または活性作用物質の組合せは、本明細書において、創傷治癒のために、または創傷治癒の進捗を支援するために賢明な形で用いられている。
【0009】
近年バルーンカテーテルに見られた改善は、これまでのところ主として、ステントを精確かつ安全に設置するそれらの能力に関連するものであったし、現在もそうである。独立した方法としてのPCTAは、とりわけ冠状動脈の分野において、ステント移植によって広く代替されてきた。
【0010】
しかし、PCTAが使用される場合、治療を実施した後にストレス因子または再狭窄のような続発症の開始因子として外因性物体が生体内に存在することはないということを特にその理由として、ステントに比べた利点が存在する。したがって、80年代後半に実施された薬剤放出バルーンカテーテルに関する研究が今なお続行されている。
【0011】
したがって、例えば、環境と直接接触しているシースがオリフィスを有し、そのオリフィスを通って、拡張中血管壁に対して圧力下で液体または溶解した活性作用物質を押圧するバルーンカテーテルのさまざまな実施形態が記述されている(例えばUS5,087,244、US4,994,033、US4,186,745)。
【0012】
ここで、一方では、通常は3〜5分である数分間の短い拡張時間中に血管壁に対し充分な活性作用物質を放出し、他方ではカテーテルの挿入中この活性作用物質に対して充分な粘着性を示し、活性作用物質が尚早に洗出または除去されるのを防ぐコーティングを提供するという大きな課題が残っている。
【0013】
例えば、EP0383429Aは、拡張中にそれを通って血管壁までヘパリン溶液が放出される小さなオリフィスを伴うバルーンカテーテルを開示している。
血管壁内への活性作用物質の取込みが比較的低いこと、投薬量の制御が欠如していること、バルーンの材料に関する問題などの複数の欠点によって、外因性物体の無いこの狭窄治療は実験段階にとどめられた。ポリマーマトリックスを伴うまたは伴わない活性作用物質をステントに類似したバルーンにコーティングすることもまた、一方では短い接触時間ひいてはカテーテルからその環境への物質放出の低下に由来し、かつ他方では拡張前および拡張中にバルーン上のコーティングを無傷の状態でその目的地まで持っていくのが著しく困難であることに由来する問題をひき起こした。
【0014】
最近になって初めて、物質放出バルーンカテーテルがステントの代替案となった(CardioNews Letter,04−21−2006)。これには、パクリタキセルおよび放射線造影剤の溶液中に浸漬させたバルーンカテーテルが関与しており、1年間の臨床研究の結果によると、これによって、未コーティングのバルーンカテーテルに比べて40%から9%への再狭窄率の低下が導かれた。例えば、このようなバルーンカテーテルは、WO2004028582A1において開示されている。
【0015】
これらの最初の結果でさえ有望であるように思われるものの、このような治療に関する典型的な問題は克服されてはいない。
あらゆる場合において、造影剤のコーティングによって達成される最適な光トレーサビリティーは、有利であるが、PTCAの実施後に作用部位で有効に放出され取込まれる活性作用物質の量は、鼠径部から出発して心臓までの血流にバルーンカテーテルを導入する間に、コーティングの数量化不可能な部分がすでに放出されてしまうために、個別的かつ無制御なものにとどまり続けている。さらに、バルーン拡張中にコーティングのさらなる部分が粉々に崩れ血流により表面から運び去られる。その結果、バルーンカテーテルに適用された活性作用物質の濃度の一部分は、罹患部位に到達せず、単に無効な静脈内投与としてみなされる可能性がある。失なわれる部分の量を制御することはできず、したがって制御可能な用量で罹患部位での最適な治療のために利用することはできない。したがって、バルーンカテーテル上に残留する部分は、見込みのある療法を達成するのに充分なものでなくてはならないが、同時に、活性作用物質のうちのどれ程の量がその標的に実際到達し実際に血管壁によって吸収されるのか、そしてこの量は所望の成功を収めるのに充分であるか否かという疑問が残る。
【0016】
こうして、このバルーンカテーテルが示したステント無しの再狭窄治療の可能性は、新しく効果的で制御可能な方向へと導かれるべきである。
さらに、カテーテルバルーンのための浸漬ならびに噴霧コーティングの従来の方法は、実際にどれほどの物質がバルーンの表面に塗布されたかを正確に判定することが決してできず、このことによって、基本的に有意な過剰用量が発生するという状況が導かれるという、大きな欠点を有している。その上、規制上および販売承認の取得のためには、物質の量が正確に決定された明確に定義されたバルーンコーティングを提供することが、特に重要になっている。コーティング溶液内に数回カテーテルバルーンを浸漬させるかまたはコーティング溶液の噴霧流またはミストにバルーンを曝露する従来の方法は、再現性ある結果を生み出さず、そのため、規定の物質量の適用は不可能であった。したがって、浸漬法は、カテーテルバルーンをコーティングするためには最悪の代替案である。

本発明の目的は、カテーテルバルーンの導入中にバルーンの表面に活性作用物質が充分に接着することそして他方では拡張中に血管壁に対し活性作用物質が最適な形で移送されることを保証するカテーテルバルーンのコーティング用の組成物を提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の目的は、カテーテルバルーンのコーティングのためのコーティング方法において、適用されたコーティングの量ひいては適用された活性作用物質の量が正確に推定される方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、治癒プロセスが積極的に進行するように短時間の曝露中でさえ血管壁へのそして血管壁内への制御された最適な作用物質移送を保証する、体内での短期使用向けの作用物質放出バルーンカテーテルおよび類似の医療製品を提供することにある。
【0019】
この目的で、一方では、活性作用物質が標的部位へ行く途中で体液により医療品から洗い流されるかあるいはたとえ遅くても拡張時に粉々に崩壊し、それぞれに不充分な未規定量の活性作用物質しか標的に到達しないということがないようにしなければならない。他方では、非常に制限された曝露時間で、活性作用物質を規定の投薬量でバルーンカテーテルからそれぞれ血管壁上および血管壁内に充分に移送させなくてはならない。

この目的は、本発明の独立クレームの教示により解決される。さらに本発明の有利な実施形態は、従属クレーム、明細書および実施例から結果としてもたらされる。
【0020】
本発明によると、1つの目的は、規定量の薬理学的作用物質をカテーテルバルーンにコーティングするカテーテルバルーン用の特殊なコーティング方法において、カテーテルバルーンの表面上に特定的に放出装置を用いて測定可能量のコーティング溶液を放出するための体積測定機器を伴うコーティング装置を使用する方法によって解決される。
【0021】
体積測定機器としては、測定された量のコーティング溶液を供給するかまたは放出されたコーティング溶液の量を測定または表示することのできるあらゆる装置を使用することが可能である。体積測定機器は、最も単純な場合において、定規、目盛付きピペット、目盛付きビュレット、目盛付きコンテナ、目盛付き空洞共振器(Kavitaten)ならびにポンプ、バルブ、シリンジ、または測定された量のコーティング溶液を提供、輸送または放出することのできる他のピストン状のコンテナである。したがって、体積測定機器は、単に、一定量のコーティング溶液を提供または放出するか、または放出されたコーティング溶液の量を測定および/または表示することのいずれかにのみ役立つ。こうして、体積測定機器は、放出装置からカテーテルバルーンの表面に移送されるコーティング溶液の量ひいては作用物質の量を決定またはむしろ測定するために役立つ。
【0022】
拡張時点での活性作用物質の充分な接着および放出に関する目的は、好ましい輸送メディエータまたは好ましい輸送メディエータ混合物を含む特定のコーティング溶液により解決される。輸送メディエータは、以下の別個の段落において、より詳細に言及されている。「輸送メディエータ」という用語の使用は以下では、単一の輸送メディエータならびに輸送メディエータの混合物を表わす。
【0023】
しかしながらコーティング装置の主要な構成要素は、1本のノズル、複数のノズル、糸、糸のメッシュ、布地片、革片、スポンジ、ボール、シリンジ、針、カニューレ、または毛管として実施され得る放出装置である。放出装置の実施形態に応じて、カテーテルバルーンの表面上に測定可能なまたは既定のただし公知の量の活性作用物質を移送して、規定の活性作用物質濃度または量のコーティングを生み出し、かつ互いにわずかしか偏向しない再現可能な複数のコーティングを提供するという、従来の浸漬または噴霧方法では果たすことのできない原理に全てが基づいているわずかに修正されたコーティング方法が結果としてもたらされる。方法を差別化するために、本明細書中では、本発明の好ましい実施形態である噴出法、ピペット法、毛管法、折畳みスプレー法、ドラグ法、糸ドラグ法またはロール法などの異なる用語が用いられている。
【0024】
特定の方法のみならず特定の装置が、放出装置としてボールを使用することで結果としてもたらされる。対応する方法は、本明細書においてロール法として記述され、対応する装置は、ボールヘッドへのコーティング溶液の供給装置を伴うボールヘッドを有する。制御機構、好ましくは光制御機構を用いて、ボールヘッドはカテーテルバルーンの表面上に置かれる。バルブを通して、またはボールヘッド上のバルーン表面の圧力に起因して、コーティング溶液は空洞共振器または体積測定機器からボールヘッド上に流出する。ボールヘッドはカテーテルバルーンの表面上を転動し、こうしてカテーテルバルーンの表面から逸れ、ここで、ボールヘッドに添加されたコーティング溶液はボールヘッドからカテーテルバルーンの表面へと移送される。
【0025】
このような装置を用い、このロール法では、収縮した状態または膨張した状態で部分的にのみ、または完全に、カテーテルバルーンをコーティングすることができる。例えば、拡幅した襞の領域内で膨張した状態または部分的に膨張した状態で、カテーテルバルーンを特定的に逸らせてコーティングすることができ、ここで収縮(すなわち折畳み)の後コーティングは襞の正しい位置にとどまり、こうして、襞の特異的コーティングがこの要領で達成可能となる。ボールがバルーンまたはむしろバルーンの材料に対し損傷を与えるのを回避するため、この材料は好ましくは、ゴム様材料、例えば天然ゴムかまたはこの目的に適した少なくとも1つの他のポリマーで作られている。
【0026】
単一の好ましいコーティング方法を、以下でさらに詳述する。
本発明は、特に、作用物質放出コーティングを伴うコーティングされたカテーテルバルーンに関する。
【0027】
カテーテルバルーンとしては、従来のカテーテルバルーン、分岐バルーンならびに折畳みバルーンまたは特殊バルーンを使用することができる。
「カテーテルバルーン」または「従来のカテーテルバルーン」という用語は、通常拡張によりステントを設置するのに用いられるような拡張性カテーテルバルーンを意味する。さらに、それは、自己展開式ステントに適し、尚早なステントの展開を回避するためにステント上に取外し可能なシースを担持するステント設置用の非拡張性カテーテルバルーンをも意味している。
【0028】
しかしながら、自己展開式ステント用の非拡張性カテーテルバルーンの場合のようなシースを伴う拡張性でかつ再圧縮性のカテーテルバルーンは、通常、カテーテルバルーン上のコーティングを尚早な除去から保護するためにステント無しで使用される。
【0029】
分岐バルーンは、脈管、具体的には血管の分岐を治療するためのカテーテルバルーンを意味する。このようなバルーンは、2本のアームを有するか、または血管分岐の治療またはむしろ血管分岐内または血管分岐の直近における1つまたは2つのステントの設置のために同時にまたは逐次的に使用されている、2つの組合わされたまたは2つの別個のバルーンで構成されている。
【0030】
「折畳みバルーン」とは、バルーンを展開した場合に少なくとも部分的に開放する「襞」をバルーンの圧縮状態で有する、例えばEP1189553B1、EP0519063B1、WO03/059430A1、およびWO94/23787A1に記載されているようなバルーンを意味する。通常は、血管形成術のために使用される全てのバルーンは、収縮された状態で襞を有することから、全て折畳みバルーンと呼ぶことができる。
【0031】
特殊なバルーンとは、展開中または圧力付加時点で液体および溶液が通過できるようにする細孔、具体的には微小孔を伴うバルーンを意味する。このような微小孔付きバルーンは、EP0383429A中に開示されている。さらに、「特殊バルーン」という用語は、例えばWO02/043796Aに記載されているマイクロニードルを有する1つのカテーテルバルーン、または、WO03/026718A1に開示されている担体物質を伴うまたは伴わない活性作用物質を包埋するためのマイクロ未加工またはナノ未加工表面を有する1つのカテーテルバルーンなどの特定的に設計された表面を伴うバルーンを意味する。
【0032】
「バルーン」または「カテーテルバルーン」という用語は基本的に、展開式かつ再圧縮式の、ならびに一時的に移植可能な、通常カテーテルと共に用いられる全ての医療装置を意味する。
【0033】
本発明のコーティングされたバルーンは、ステント無しでまたは圧着型ステントと共に使用可能である。それらの使用は、狭窄血管の初期治療のみに限定されず、発症する再狭窄(例えばステント内再狭窄)にうまく対処し再発性再閉塞を防止するためにも特に適している。
【0034】
カテーテルバルーンは、一般的材料、具体的には以下でさらに記述する通りのポリマー、そして、より具体的には、例えばPA12、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエーテルなどのポリアミドで構成され得る。
【0035】
ステントは同様に、例えば医療用ステンレス鋼、チタン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、金、鉄、ニチノール、マグネシウム、鉄、上述の金属の合金ならびにポリマー材料、および、好ましくは吸収性ポリマー材料、例えばキトサンおよびその誘導体、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリグリセロール、ポリラクチドおよび前述の材料のブロック(Block−)およびコポリマーなどの一般的材料で構成されていてよい。
【0036】
本発明のコーティングされたカテーテルバルーンは、好ましくは、ステントを取付けることなく使用されるが、圧着型ステントを伴った使用も同様に可能である。コーティングされたバルーンの他に上に圧着型ステントを使用する場合には、ステントはコーティングされていない(裸ステント)かまたは同様にコーティングされていてよく、ここでステントは、カテーテルバルーンのコーティングとは異なるコーティング、および、それと同様に異なる活性作用物質を有していてもよい。
【0037】
「コーティング」という用語は、カテーテルバルーンの表面のコーティングのみならず、バルーン材料の上または間または中の襞、空洞、細孔、マイクロニードルまたは他の充填可能な空間の充填物またはコーティングをも含むものとする。
【0038】
コーティングは1つまたは複数のステップで適用されてよく、1つ以上の層を有していてよく、ここでコーティング溶液は適切な1つの溶媒または溶媒混合物、1つまたは同様に複数の薬理学的作用物質そして輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物を含む。さらなる構成要素が、コーティング溶液内に含まれる可能性があり、その場合コーティング溶液は通常好ましくは単に、上述の3つの構成要素で構成されている。適切な活性作用物質または活性作用物質の組合せは、抗炎症性、細胞増殖抑制性、細胞毒性、抗増殖性、抗微小管、抗血管新生性、抗再狭窄性(抗再狭窄)、抗真菌性、抗腫瘍性、抗遊走性、非血栓形成性および抗血栓形成性物質である。
【0039】
抗炎症性、細胞増殖抑制性、細胞毒性、抗増殖性、抗微小管、抗血管新生性、抗再狭窄性、抗真菌性、抗腫瘍性、抗遊走性、非血栓形成性および抗血栓形成性物質としては、好ましくは以下のものを使用することができる:血管拡張剤、シロリムス(ラパマイシン)、ソマトスタチン、タクロリムス、ロキシスロマイシン、ドゥナイマイシン(Dunaimycin)、アスコマイシン、バフィロマイシン、エリスロマイシン、ミデカマイシン、ジョサマイシン、コンカナマイシン、クラリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フォリマイシン、セリバスタチン、シムバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、ニムスチン、カルムスチン、ロモスチン、シクロホスファミド、4−ヒドロキシシクロホスファミド、エストラムスチン、メルファラン、イソファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、ベンダムスチン、ダカルバジン、ブスルファン、プロカルバジン、トレオスルファン、テモゾロミド、チオテパ、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ミトキサトロン、イダルビシン、ブレオマイシン、ミトマイシン、ダクチノマイシン、メトトレキセート、フルダラビン、フルダラビン−5’−ジヒドロゲンホスフェート、クラドリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、フルオロウラシル、ジェムシタビン、カペシタビン、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オクサリプラチン、アムサクリン、イリノテカン、トポテカン、ヒドロキシカルバミド、ミテルホシン、ペントスタチン、アルデスロイキン、トレチノイン、アスパラギナーゼ、ペガスパルガーゼ、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ホルメスタン、アミノグルテチミド、アドリアマイシン、アジトロマイシン、スピラマイシン、セファランチン、8−α−エルゴリン、ジメチルエルゴリン、アグロクラビン、1−アリルリスリド(1-Allylisurid)、1−アリルテルグリド、ブロメルグリド、ブロモクリプチン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、2−ブロモ−12’−ヒドロキシ−2’−(1−メチルエチル)−5’−(2−メチルプロピル)−、(5’アルファ)−)、エリモクラビン、エルゴクリスチン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−(1−メチルエチル)−5’−(フェニルメチル)−、(5’−アルファ)−)、エルゴクリスチニン、エルゴコルニン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’,5’−ビス(1−メチルエチル)−、(5’−アルファ)−)、エルゴコルニニン、エルゴクリプチン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−(1−メチルエチル)−5’−(2−メチルプロピル)−、(5’アルファ)−(9CI))、エルゴクリプチニン、エルゴメトリン、エルゴノビン(エルゴバシン、INN:エルゴメトリン、(8ベータ(S))−9,10−ジデヒドロ−N−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−6−メチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、エルゴシン、エルゴシニン、エルゴトメトリニン、エルゴタミン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−メチル−5’−(フェニルメチル)−、(5’−アルファ)−(9CI))、エルゴタミニン、エルゴバリン(エルゴタマン−3’,6’,18−トリオン、12’−ヒドロキシ−2’−メチル−5’−(1−メチルエチル)−、(5’アルファ)−)、レルゴトリル、リスリド(CAS−No.:18016−80−3、3−(9,10−ジデヒドロ−6−メチルエルゴリン−8アルファ−イル)−1,1−ジエチルカルバミド)、リセルゴール、リセルグ酸(D−リセルグ酸)、リセルグ酸アミド(LSA、D−リセルグ酸アミド)、リセルグ酸ジエチルアミド(LSD、D−リセルグ酸ジエチルアミド、INN:リセルグアミド、(8β)−9,10−ジデヒドロ−N,N−ジエチル−6−メチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、イソリセルグ酸(D−イソリセルグ酸)、イソリセルグ酸アミド(D−イソリセルグ酸アミド)、イソリセルグ酸ジエチルアミド(D−イソリセルグ酸ジエチルアミド)、メスレルギン、メテルゴリン、メテルギン(INN:メチルエルゴメトリン、(8ベータ(S))−9,10−ジデヒドロ−N−(1−(ヒドロキシメチル)プロピル)−6−メチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、メチルエルゴメトリン、メチセルジド(INN:メチセルジド、(8ベータ)−9,10−ジデヒドロ−N−(1−(ヒドロキシメチル)プロピル)−1,6−ジメチル−エルゴリン−8−カルボキサミド)、ペルゴリド((8β)−8−((メチルチオ)メチル)−6−プロピル−エルゴリン)、プロテルグリドおよびテルグリド、セレコキシプ、サリドマイド、ファスジル(登録商標)、シクロスポリン、smc増殖阻害剤−2w、エポチロンAおよびB、ミトキサントロン、アザチオプリン、ミコフェノレール酸モフェチル、c−myc−アンチセンス、b−myc−アンチセンス、ベツリン酸、カンプトテシン、PI−88(硫酸化オリゴ糖)、メラニン細胞刺激ホルモン((−MSH)、活性化タンパク質C、IL1−β−阻害剤、チモシン(−1、フマル酸およびそのエステル、カルシポトリオール、タカルシトール、ラパコール、β−ラパコーン、ポドフィロトキシン、ベツリン、ポドフィリン酸2−エチルヒドラジド、モルグラモスチム(rhuGM−CSF)、ペグインターフェロンα−2b、ラノグラスチム(r−HuG−CSF)、フィルグラスチム、マクロゴール、ダカルバジン、バシリキシマブ、ダクリツマブ、セレクチン(サイトカインアンタゴニスト)、CETP阻害剤、カドヘリン、サイトカイニン阻害剤、COX−2阻害剤、NFkB、アンギオペプチン、シプロフロキサシン、カンプトテシン、フルロブラスチン、筋肉細胞の増殖を阻害するモノクローナル抗体、bFGFアンタゴニスト、プロブコール、プロスタグランジン、1,11−ジメトキシカンチン−6−オン、1−ヒドロキシ−11−メトキシカンチン−6−オン、スコポレクチン、コルチシン、NO供与体、例えばテトラ硝酸ペンタエリスリトールおよびシンドノエイミン、S−ニトロソ誘導体、タモキシフェン、スタウロスポリン、β−エストラジオール、α−エストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、ホスフェストロール、メドロキシプロゲステロン、エストラジオールシピオネート、エストラジオールベンゾエート、トラニラスト、カメバクリンおよび癌の治療に適用される他のテルペノイド、ベラパミル、チロシンキナーゼ阻害剤(チロホスチン(Tyrphostine))、シクロスポリンAおよびB、例えば6−α−ヒドロキシ−パクリタキセル、バッカチン、タキソテール、合成的に生産された亜酸化炭素の大環状オリゴマー(MCS)およびその誘導体ならびに天然原料から得られたものなどのパクリタキセルおよびその誘導体、モフェブタゾン、アセメタシン、ジクロフェナク、ロナゾラク、ダプソン、o−カルバモイルフェノキシ酢酸、リドカイン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、リン酸クロロキン、ペニシラミン、ツムスタチン、アバスチン、D−24851、SC−58125、ヒドロキシクロロキン、オラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム、オキサセプロール、セレコキシブ、β−シトステリン、アデメチオニン、ミルテカイン、ポリドカノール、ノニバミド、レボメントール、ベンゾカイン、アセシン、エリプチシン、D−24851(カルビオケム)、コルセミド、サイトカラシンA−E、インダノシン、ノコダゾール、S100タンパク質、バシトラシン、ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、アゼラスチン、グアニジルシクラーゼ刺激剤、金属プロテイナーゼ−1および−2の組織阻害剤、遊離核酸、ウイルス伝達物質に組み込まれた核酸、DNAおよびRNAフラグメント、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化剤阻害剤−2、アンチセンスオリゴヌクレオチド、VEGF阻害剤、IGF−1、抗生物質群由来の活性作用物質、その例として例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファクロル、セフォチキシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、例えばジクロキサシリン、オキサシリン、スルホンアミド、メトロニダゾールなどのペニシリン類、例えばアグラトロバン、アスピリン、アブシキシマブ、合成抗トロンビン薬、ビバリルジン、クマジン、エノキサパリン、脱スルホン化およびN−再アセチル化へパリンなどの抗血栓剤、組織プラスミノーゲン活性化剤、GpIIb/IIIa血小板細胞膜受容体、第Xa因子阻害剤抗体、インターロイキン阻害剤、ヘパリン、ヒルジン、r−ヒルジン、PPACK、プロタミン、2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸のナトリウム塩、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ワルファリン、ウロキナーゼ、血管拡張剤、その例として例えばジピラミドール、トラッピジル、ニトロプルシド、例えばトリアゾピリミジンおよびセラミンなどのPDGFアンタゴニスト、ACE阻害剤、その例として例えばカプトプリル、シラザプリル、リシノプル、エナラプリル、ロサルタン、チオプロテアーゼ阻害剤、プロスタサイクリン、バピプロスト、インターフェロンα、βおよびγ、ヒスタミンアンタゴニスト、セロトニンブロッカー、アポトーシス阻害剤、アポトーシス調節剤、例えばp65、NF−kBまたはBcl−xLアンチセンスオリゴヌクレオチド、ハロフジノン、ニフェジピン、トコフェロール、ビタミンB1、B2、B6およびB12、葉酸、トラニラスト、モルシドミン、茶ポリフェノール、没食子酸エピカテシン、没食子酸エピガロカテキン、ボスウェリン酸およびそれらの誘導体、レフルノミド、アナキンラ、エタネルセプト、スルファサラジン、エトポシド、ジクロキサシリン、テトラサイクリン、トリアムシノロン、ムタマイシン、プロカインアミド、D24851、SC−58125、レチノイン酸、キニジン、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロール、アミドロン、天然および合成ステロイド、その例として例えばブリオフィリンA、イノトジオール、マキロシドA、ガラキノシド、マンソニン、ストレブロシド、ヒドロコルチゾン、ベータメタゾン、デキサメタゾン、非ステロイド物質(NSAIDS)、その例として例えばフェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、フェニルブタゾン、および、例えばアシクロビル、ガンシクロビルおよびジドブジンなどの他の抗ウイルス剤、抗真菌剤、例えばクロトリマゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン、抗原虫剤、例えばクロロキン、メフロキン、キニーネ、さらなる天然テルペノイド、例えばヒポカエスクリン、バリングトジェノール−C21−アンゲレート、14−デヒドロアグロスチスタチン、アグロスケリン、アグロスチスタチン、17−ヒドロキシアグロスチスタチン、オバトジオリド、4,7−オキシシクロアニソメリン酸、バッカリノイドB1、B2、B3およびB7、ツベイモシド、ブルセアノールA、BおよびC、ブルセアンチノシドC、ヤダンジオシドNおよびP、イソデオキシエレファントピン、トメンファントピンAおよびB、コロナリンA、B、CおよびD、ウルソール酸、ハイプタチン酸A、ゼオリン、イソ−イリドジェルマナール、マイテンフォリオール、エフサンチンA、エクシサニンAおよびB、ロンギカウリンB、スクルポネアチンC、カメバウニン、ロイカメニンAおよびB、13,18−デヒドロ−6−α−セネシオイルオキシチャパリン、タクサマイリンAおよびB、レジェニロール、トリプトリド、さらにシマリン、アポシマリン、アリストロキア酸、アノプテリン、ヒドロキシアノプテリン、アネモニン、プロトアネモニン、ベルベリン、塩化ケリブリン、シクトキシン、シノコクリン、ボンブレスタチンAおよびB、
クドライソフラボンA、クルクミン、ジヒドロニチジン、塩化ニチジン、12−ベータ−ヒドロキシプレグナジエン−3,20−ジオン、ビロボール、ギンコール、ギンコール酸、ヘレナリン、インジシン、インジシン−N−オキシド、ラシオカルピリン、イノトジオール、グリコシド1a、ポドフィロトキシン、ジャスティシジンAおよびB、ラレアチン、マロテリン、マロトクロマノール、イソブチリルマロトクロマノール、マキロシドA、マルカンチンA、マイタンシン、ライコリジシン、マルゲチン、パンクラチスタチン、リリオデニン、オキソウシンサニン、アリストラクタム−AII、ビスパルテノリジン、ペリプロコシドA、ガラキノシド、ウルソール酸、デオキシプソロスペルミン、サイコルビン、リシンA、サンギナリン、マヌー小麦酸、メチルソルビフォリン、スファテリアクロメン、スチゾフィリン、マンソニン、ストレブロシド、アカゲリン、ジヒドロウサムバレンシン、ヒドロキシウサムバリン、ストリクノベンタミン、ストリクノフィリン、ウサムバリン、ウサムバレンシン、ベルベリン、リリオデニン、オキソウシンスニン、ダフノレチン、ラリシレシノール、メトキシラリシレシノール、シンガレシノール、ウンベリフェロン、アフロモソン、アセチルビスミオンB、デスアセチルビスミオンA、ビスミオンAおよびB、および硫黄含有アミノ酸、その例として例えばシステインならびに塩、水和物、溶媒和物、エナンチオマー、ラセミ化合物、エナンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物、代謝産物、プロドラッグおよび前述の活性作用物質の混合物。
【0040】
基本的に、全ての活性作用物質ならびに活性作用物質の組合せを使用することができるが、ただしここではそれでもパクリタキセルおよびパクリタキセル誘導体、タキサン、ドセタキセルならびにラパマイシンおよびラパマイシン誘導体、その例としては、例えばバイオリムスA9、ピメクロリムス、エヴェロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ファスジルおよびエポチロンが好ましく、特に好ましいのはパクリタキセルとラパマイシンである。
【0041】
パクリタキセルは、商標名Taxol(登録商標)および化学名[2aR−[2a,4,4a,6,9(R*,S*),11,12,12a,12b]]−(ベンゾイルアミノ)−ヒドロキシベンゾルプロピオン酸−6,12b−ビス−(アセチルオキシ)−12−(ベンゾイルオキシ)−2a−3、4、4a、5、6、9、10、11、12、12a、12b−ドデカヒドロ−4,11−ジヒドロキシ−4a,8,13,13−テトラメチル−5−オキソ−7,11−メタノ−1H−シクロデカ[3,4]ベンズ[1,2−b]オキセト−9−イルエステルとして公知である。
【0042】
ラパマイシンは、ラパマンとして、または国際非専売名(INN)シロリムスとして、ならびにIUPAC名[3S−[3R*[E(1S*,3S*,4S*)],4S*,5R*,8S*,9E,12R*,14R*,15S*,16R*,18S*,19S*,26aR*]]−5,6,8,11,12,13,14,15,16,17,18,19,24,25,26,26a−ヘキサデカ−ヒドロ−5,19−ジヒドロキシ−3−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルエテニル]−14,16−ジメトキシ−4,10,12,18−テトラメチル−8−(2−プロペニル)−15,19−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]−オキサアザシクロ−トリコセン−1,7,20,21(4H,23H)−テトロン一水和物としても公知である。
【0043】
「プロドラグ」とは、生理学的条件下で活性化合物に転換される薬理学的に活性な化合物の前駆体を意味する。
これらの活性作用物質または活性作用物質の組合せは、好ましくは1つの輸送メディエータを用いて、またはその独自の輸送メディエータとして、短期インプラントの制限された曝露時間中充分な濃度でその標的部位に到達する。
【0044】
すでに言及した通り、技術的現状の実施形態の主要な問題は、長くても1分間の単一の拡張持続時間中そして場合によっては一定の中断の後の数回の反復的拡張中に、そして好ましくは長くても45秒および特に好ましくは長くとも30秒の単一の拡張持続時間中に、狭窄または再狭窄あるいは血栓症の血管区分上に充分な量の活性作用物質を移送し、こうして血管区分の再狭窄または再閉塞がステントの設置されていない拡張においてさえ防止されるようにすることにある。曝露時間すなわち拡張持続時間が長くなると心臓発作のリスクは増大することから、それぞれ血管壁上またはその内部への1つまたは複数の活性作用物質の移送のための時間はほんのわずかしかない。さらに、少なくともわずかな血流を一時的に確保するためのカテーテルバルーンの反復的な展開および再圧縮は同様に、カテーテルバルーンの最初の展開の間に活性作用物質の大部分がすでに放出されておりさらなる拡張が血管壁上の多大な物質移送にそれ以上寄与できないことを理由として、ステントの無いいわゆる「生物学的ステント植込み術」にとっても極めて重要なことである。
【0045】
したがって、比較的短時間で相対的に大量の活性作用物質を制御された形で血管壁上および/または血管壁内に移送する特殊なコーティングが必要とされている。
したがって、バルーン表面上のこれらのコーティングの調製のためには、コーティング後除去可能な適切な溶媒中で少なくとも1つの輸送メディエータと共に活性作用物質を含むコーティング溶液が使用される。
【0046】
輸送メディエータ
活性作用物質の移送を増大させるために、いわゆる輸送メディエータまたは輸送アクセラレータが使用される。
【0047】
これらの物質はさらに、それ自体が活性作用物質特性を有することができ、あるいは活性作用物質のための適切な担体材料として機能してもよい。
特に注目すべきであるのは、血管壁内への活性作用物質の取込みを加速するかまたは容易にする輸送メディエータとしての化合物を含み、こうしてそれぞれに当該活性作用物質または活性作用物質の組合せが制御された形でかつ既定の投薬量で短い曝露の間に細胞膜を通って内部細胞内に輸送され得るようになっている、本発明に関する実施形態である。
【0048】
ここで、本発明の主題は、輸送メディエータの使用ではなく、むしろ、特にカテーテルバルーンおよび短時間の活性作用物質放出時の特別なニーズに関連して、特に充分有効である特に好適な輸送メディエータの選択にある。すなわちこれらの特別なニーズに照らして、これらの輸送メディエータはそれぞれ、血管壁内への活性作用物質の移送ならびに狭窄性組織などの組織内への活性作用物質の取込みを促進するものである。
【0049】
全ての輸送メディエータは、理想的な場合において、活性作用物質の熱力学的条件を変更して濃度勾配が増大し細胞内への拡散が増強されるようにする能力を有する。
したがって、輸送アクセラレータは同様に担体としても機能してよい。ここで複数の選択肢が可能である:すなわち、活性作用物質と担体の間の連結はすでに存在しており、細胞内に入った後に開裂されるか、あるいは、膜通過時に膜の外側で形成され、その後に再び開裂されるか、または担体と活性作用物質が、内部細胞内でも存続するものの活性作用物質の効能にマイナスの影響を及ぼさない一つの単位を形成する。
【0050】
このような特性は、細胞膜の脂質二重層と直接相互作用するか、細胞膜上の受容体と反応し、担体またはチャネルとして作用する膜輸送タンパク質を介して内部細胞内に入り(イオンポンプ)、そこで膜電位ひいては細胞膜の透過性を変化させる物質によって提示される。こうして、細胞内への活性作用物質の取込みは、それぞれ容易になるかまたは加速される。例えばオレイン酸は、脂質二重層の脂質との相互作用に影響を及ぼすことができ、一方D−リモンまたはメントールなどのシクロ−モノテルペンは、脂質二重層の炭化水素と相互作用する。
【0051】
第1に、膜を通して細胞内へと拡散する物質の能力はその物質のサイズに直接対応する。分子が小さければ、大きいものよりも容易に通過する。水素結合が少ない分子もまた、水素結合を形成する傾向のある分子よりも、相応して速く拡散する。
【0052】
脂質二重層の極性頭部基の水和は、尿素またはプロピレングリコールによって改変される。同様に、水素結合の除去は、活性作用物質(例えばジメチルスルフオキシド、ジメチルホルムアミド、またはジメチルアセトアミド)の取込み加速を導く。ピロリドンなどの吸湿性物質による細胞壁内の水分の増加もまた、細胞内への拡散を増大させる。
【0053】
同様に、分子の極性も重要である。極性基および非極性基は、ここでは、膜の一部として全ての細胞中に存在するホスファチジルコリンと類似の形で1つの分子に組合わされる可能性がある。
【0054】
さらなる可能性は、各々1つの特性に寄与し組合せの形で膜を通して移行することのできる混合物として作用する2つの物質の混合である。活性作用物質の極性減少を結果として導くイオン対効果の使用は、輸送改善の更なる可能性を示している。
【0055】
したがって、例えば薬剤の取込みに対するその効果がアニオンからカチオンを超えて(uber kationish)非イオンへと減少する界面活性剤が、重要かつ能力ある輸送メディエータである。
【0056】
これらの事実を考慮に入れて、活性作用物質の進入が最適な形で発生するように細胞膜の透過性を変化させるために、数多くの合成、半合成および未変性物質を使用することができる。
【0057】
このような有用な化合物の中には例えば、ブラジキニンなどのキニン、カリジン、ヒスタミンおよび、L−アルギニンから血管拡張活性NOを放出するシンターゼNOなどの内因性物質を包含する血管拡張剤などが含まれる。ハーブ由来の物質、例えば確認可能な血管拡張性を有する銀杏エキス、DMSO、キサントン、フラボノイド、テルペノイド、ハーブ由来および動物性の着色剤、食用色素、NO供与体、例えば四硝酸ペンタエリスリチル(PETN)、一酸化炭素(CO)、造影剤および造影剤類似体が同様にこのカテゴリーに属する。
【0058】
かくして、1つまたは複数の活性作用物質の細胞内への輸送を支援するために組合せることもできる次の2つの可能性が存在する:
1. 輸送アクセラレータまたは輸送メディエータは、医療装置と共に曝露時間により制限される細胞内部への直接的物質移送をひき起こす。
2. 医療装置を除去した後、輸送アクセラレータまたは輸送メディエータは活性作用物質そして場合によっては接着支持担体(または貯蔵体)と組合せた形で細胞壁に接着する。こうして細胞内への活性作用物質の拡散は、遅延しかつ用量制御された状態で発生し得る。
【0059】
輸送メディエータ、活性作用物質または活性作用物質の組合せならびに考えられるマトリックスはそれぞれ、次のことを部分的にまたは全面的に網羅して、接着および/または共有結合によって医療装置上に適用されてよい:
1. 輸送メディエータおよび活性作用物質は、医療製品上にあるいは、医療製品上に接着によってまたは共有結合によって適用されたマトリックス上に、接着によっておよび/または共有結合によって付着する。
2. 輸送メディエータおよび活性作用物質は、医療製品にあるいは医療製品上に接着によってまたは共有結合によって適用されたマトリックス上に、共有結合により連結され接着により付着する。
3. 輸送メディエータおよび活性作用物質は、医療製品上あるいは医療製品上に接着によってまたは共有結合によって適用されたマトリックス上に、共有結合によって連結され共有結合によって付着する。
【0060】
多くの場合において、上述の物質の効果は、輸送特性に限定されず、むしろこれらの物質は治癒を促進するプラスの効果を提示する。例えば、細胞自体が産生する一酸化窒素は血管拡張性を有するのみならず、抗増殖性をも有する。こうして、全てのNO供与体は、抗増殖性と同時に血管拡張性も示す。
【0061】
他の抗増殖性、細胞毒性および細胞増殖抑制性、抗炎症性と同様抗血栓性を有する物質との組合せが、本明細書において、アジュバントの有効性の増強または補完を目的として使用可能である。
【0062】
ステントを伴うまたは伴わない本発明の医療用バルーンカテーテルは、特にステント内の再狭窄特に再狭窄の予防または削減のために使用される。
仮の短期インプラントは、壁せん断応力の低下または潜在的に同時に起こる白血球の付着と移動の伸長誘発型増大のために発生する血管疾患の治療と予防のために特に適している。このような過程は、多くの場合血管分岐において発生する。本発明に係る血管インプラントは、壁せん断応力の増大、平滑筋細胞(SMC)または血管内皮細胞の強化または活性化をそれぞれひき起こし、こうして血流内に存在する白血球の漏出および血小板接着を生理学的レベルまで削減または低下させることができる。こうして、炎症過程は防止され、例えば慢性炎症性腸疾患例えば最も顕著なものとしてクローン症ならびにアテローム性動脈硬化症、狭窄または再狭窄も回避される。
【0063】
膜貫通輸送メディエータおよび活性作用物質の組合せは、以下の異なる実施形態で実施されてよい:
1. 輸送メディエータと活性作用物質は同一である。
2. 輸送メディエータと活性作用物質は同一でなく、その効果において互いに支援し合っている。
3. 輸送メディエータは、添加された活性作用物質の効果に対して影響を全く及ぼさず、専ら輸送ビヒクルとして役立つ。
【0064】
物質と細胞膜の間の相互作用の上述のさまざまな可能性に基づいて、膜透過性の増加の観点で、細胞内への輸送メディエータとして機能し得る複数の異なる穏やかな物質が存在する。
【0065】
細胞内への進入能力を制御する活性作用物質および輸送メディエータの必要とされる生体適合性および分子サイズ以外にも、物質のさらなる物理的特性が重要性をもつ。したがって、物質は、それが短時間の後にバルーン上にもはや存在しなくなるかまたは削減された形でしか存在しなくなるほどの揮発性を有していてはならない。こうして、輸送メディエータと活性作用物質の比が、もはや定義も制御も不能なものとなるような形で発生して製品の特長が改変されると考えられ、このためかかる医療製品の使用はそれぞれきわめて問題の多いものであるかまたは不可能になる。特に、最低限の有効期間が確実に必要である。このような条件下で、沸点が100℃未満である物質は、安定した定義通りの製品を保証することがもはやできなくなるために、それ以上使用不可能であり得る。したがって、沸点が150℃超でひいては適切な温度安定性を有する適切な物質が、輸送メディエータとして特に好適である。
【0066】
したがって、使用される輸送メディエータの選択は、以下の基本的基準によって導かれる:
1. 生体適合性
2. 沸点>150℃
3. 分子量(輸送メディエータも同様に細胞内に拡散してゆく場合)
4. 貯蔵寿命
添加された活性作用物質に関して以下のようなさらなる基準が同様に考慮されなくてはならず、これらが最適な拡散に関する輸送メディエータの選択を制限する:
1) 接触時間中に細胞に到達するべき標的のための活性作用物質の必要量、
2) 細胞内に輸送されるべき活性作用物質との相互作用の考慮、
3) 製品の安定性
4) 活性作用物質の制御可能で一貫性ある放出の保証。
【0067】
言及した通り、数多くの化合物が、理論的にはそれぞれに輸送助剤または輸送アクセラレータとして使用可能である。膜または活性作用物質とのその相互作用様式に応じて、これらの化合物を、それらの極性、分子サイズ、化学基別に分類することができる。さらに、例えば、有意な拡散増強を得るために極性および非極性エンハンサーを組合せる組合せが可能である。その場合、2つの物質を混合するかまたは1つの分子内で異なる特徴を組合せることによって、組合せを行うことができる。
【0068】
通常、非極性物質が脂質二重層との相互作用を開始する。ここでは、全ての疎水性分子または脂溶性が優勢な分子、例えば親水性頭部および脂肪酸の長い疎水性尾部を有するリン脂質を使用することができる。
【0069】
したがって、リン脂質およびスフィンゴ脂質、セトリミド、およびセチルアルコールは、膜成分に充分適しており、そのため膜形成傾向を有することから、これらの膜成分を天然の浸透エンハンサーとみなすことが可能である。
【0070】
以上の見解は、数多くの部類の物質が理論的に輸送メディエータとして作用できるために、当業者であれば、輸送メディエータとして複数の非常に異なる化合物を選択し使用できること;そして可能な物質がこのように複数あることを理由として、輸送メディエータに対する要求が例えばいずれかの経皮調合物の場合に比べてバルーンカテーテル用として明らかにより特異的であるために、どの物質部類が実際にうまく働きどの物質群が他のものより優れているかを当業者が認識できないこと、を示している。したがって、本発明は、或る種の輸送メディエータの選択に関するものであり、選択発明と呼ぶことができ、新規性および進歩性に関してもこのように査定すべきものである。
【0071】
こうして本発明によると、少なくとも1つの溶媒と、少なくとも1つの薬理学的作用物質と、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物とを含む組成物が、カテーテルバルーンのコーティングのために使用され、ここで輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は少なくとも150℃の沸点を有し、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は20℃で油性または脂肪質のコンシステンシーを有し、免疫反応をひき起こさず、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は血管拡張のためのカテーテルバルーンのコーティング用に使用され、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は造影剤ではない。
【0072】
輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物および薬理学的に活性な作用物質が組成物中に1:100〜10:1、好ましくは1:50〜2:1および、特に好ましくは1:10〜1:1のモル比で含まれており、こうして本発明のバルーンコーティング内で輸送メディエータ対活性作用物質のモル比が、1モル:100モル、好ましくは1モル:50モル〜2モル:1モル、そして特に好ましくは1モル:10モル〜1モル:1モル、であればさらに好ましい。
【0073】
輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも170℃、さらに好ましくは少なくとも190℃、そしてさらに一層好ましくは少なくとも210℃、特に好ましくは少なくとも230℃の沸点を有するべきである。
【0074】
例えば極性または沸点などの、本明細書中で言及されている物理的および化学的データが輸送メディエータの混合物に関係している場合、これはしたがって、混合物自体がこれらの特徴を有するべきであることを意味している。このことは、この混合物の一部を成す全ての単一の輸送メディエータが各々この特徴を有することを意味し得るが、ただし必ずしもこれがあてはまらなくてもよい。
【0075】
一例として、なかでも輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物が中性のpHで反応する場合が好ましいということに言及しておくべきである。この記載は、輸送メディエータの混合物に関しては、混合物自体が中性のpHで反応することを意味している。これは、例えば混合物の全成分、すなわち全ての単一の輸送メディエータ自体のpHが中性である場合または、単一の輸送メディエータのpHの影響が互いに中和するものであり、こうして、混合物の一部分としての単一の輸送メディエータのpHが中性でないもののそれらの混合物全体としてのpHが中性となるようになっている場合に、実現される。
【0076】
さらに、輸送メディエータが1つのポリマーでない場合、輸送メディエータの混合物が輸送メディエータとしてのポリマーを含まないことが好ましい。
さらに好ましいのは、少なくとも6個の炭素原子または少なくとも2個の酸素原子または少なくとも1個の窒素原子を有する輸送メディエータ、ならびにこのような輸送メディエータの混合物である。
【0077】
同様に好ましいのは、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物が、20℃で100パスカル未満、好ましくは65Pa未満、より好ましくは25Pa未満そして特に6パスカル未満の蒸気圧を有する場合である。比較用として、以下にいくつかの蒸気圧を示す:
酢酸エチル 20℃で9700Pa
DMSO 20℃で250Pa
樟脳 20℃で20Pa
エチレングリコール 20℃で5.3Pa
好ましいのは、脂溶性でありかつブタノールと水の間の分配係数が0.5以上(≧0.5)である輸送メディエータである。
【0078】
さらに好ましいのは、少なくとも1つのイオン官能基またはイオン性官能基を有する輸送メディエータである。
好ましいのはさらに、細胞膜を通過できる輸送メディエータである。
【0079】
同様に好ましいのは、100g/mol〜1000g/mol、さらに好ましくは200g/mol〜900g/mol、さらに一層好ましくは300g/mol〜800g/mol、さらに一層好ましくは400g/mol〜700g/mol、そして特に好ましくは500g/mol〜600g/molの分子量を伴う輸送メディエータである。
【0080】
脂溶性であり、輸送メディエータのブタノールと水の間の分配係数が0.5以下(≦0.5)であるように親水性エステル化されている輸送メディエータも、好ましいものとして言及することができる。
【0081】
同様に好ましいのは、水溶液中で5<pH<7のpH値を有する輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物である。
好ましいは同様に、細胞壁の水分を増大させることのできる輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物である。
【0082】
同様に、ミセル特に外部に対して親水性のミセルを形成するような輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は好ましくないということも重要である。
水素結合を形成できる輸送メディエータを、好ましいものとして言及することができる。
【0083】
同じく好ましいのは、脂質二重層の脂質および/または脂質二重層の炭化水素と相互作用できる輸送メディエータおよび輸送メディエータの混合物である。
同様に好ましいのは、親水性でありかつブタノールと水の間の分配係数が0.5以上(≧0.5)であるように疎水性エステル化されている輸送メディエータである。
【0084】
さらに好ましいのは、水溶液中で9>pH>7のpH値を有する輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物である。
同様に好ましいのは、それぞれ細胞の活性作用物質取込みが加速されるかまたは膜電位勾配が細胞内への活性作用物質の加速された取込みを導くような形で膜電位を改変させることのできる輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物である。
【0085】
同様に好ましいのは、それぞれ細胞の活性作用物質取込みまたは細胞内への拡散が加速されるような形で拡散電位を改変させることのできる輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物である。
【0086】
同様に好ましいのは、細胞壁内で水素結合を開裂できる輸送メディエータである。
同様に好ましいのは、25℃で2カ月後に、50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、そして特に15重量%以下の揮発量となる輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物である。
【0087】
同様に好ましいのは、細胞内への拡散が増強されるような形で添加される活性作用物質の熱力学的条件を改変する輸送メディエータである。
特に好ましいのは、考えられる大きな群の輸送メディエータと比べて本発明の使用に特に適しているという点で極立っている輸送メディエータの下位群である。これらは主として、アミド、フェノール、フェノールエステル、フェノールエーテル、芳香族アルコール、芳香族酸、スルホキシド、有機ホウ素化合物、炭素原子2〜6個の多価アルコール、脂肪酸とアルコールのモノグリセリド、脂肪酸エーテル、テルペン系炭化水素、炭素原子が少なくとも8個のアルコール、複素環化合物、アルカロイド、ナノ粒子、酵素および第4アンモニウム塩である。
【0088】
実例として、以下の明示的な代表の名前を以下の輸送メディエータ下位群について挙げることができる:
アミドおよびアミン、例えば尿素、DMF、DMA、シクロホスファミド、アルカノールアミド、その例として例えば1,2,3−プロパントリオールホモポリマー(Z)−9−オクタデセノエート、デシルオキシ−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンおよびオクチルオキシ−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、1,5−ペンタメチレングリコール、アスパルテーム;
フェノール、フェノールエステル、フェノールエーテル、その例として例えばアニソール、t−アネトール、チモール、カルバクロール、クロロクレゾール、オクチルフェノールエトキシレート;具体的にはバニリン、コニフェリルアルコールおよびコニフェリン;
芳香族アルコールおよび芳香族酸、その例として例えばサリチル酸、サリチルアルコール、フェニルエタノール、桂皮アルコール、アドレナリン、ドーパミン、アンフェタミン;特にフェルラ酸、クルクミンおよびコーヒー酸;
スルホキシド、例えば全ての生体適合性スルホキシド、ジエチルスルホキシドおよびアセスルファムK;
有機ホウ素化合物:全ての生体適合性ホウ酸エステル、ホウ酸フェニルおよびメタホウ酸塩;特にフェニルホウ酸;
炭素原子2〜6個の多価アルコール、その例として例えばラクチトール、マンニトール、デュルシトール、イソマルト、スクロース、キシリトール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、具体的にはアリタム、マルチトール;
脂肪酸とアルコールのモノグリセリド、その例として例えばモノオレイン酸グリセリン、モノリノール酸グリセリン、モノラウリン酸グリセリン、マルトール、メグルミン、および一般にアシルグリセリド;
グリコールエーテル、エチレングリコールモノエーテル、エチレングリコールジエーテル、プロピレングリコールモノエーテル、特にプロピレングリコールジエーテル;
少なくとも8個の炭素原子を有する脂肪酸エーテルおよびカルボン酸エーテル、その例として例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルカルボキシメチルエーテル、特にジエチレングリコールラウリルエーテル;
少なくとも8個の炭素原子を有する高沸点炭化水素およびその混合、例えばテルペン系炭化水素:
単環式テルペン:メントール、リモネン、イソプレン、α、βおよびガンマ−テルピネオール、1,8−テルピン、アスカリドール、カルボン、プレゴン、具体的にはチモール、1,8−シネオール;
二環式テルペン(カラン、ピナンおよびボルナン基):α−ピネン、3−カレン、カンフェン、特にボルネオールおよび樟脳;
単環式セスキテルペン:ビサボレンおよびファルネソール;
非環式テルペン:ミルセン、フェランドレンおよびオシメン、リナロール;
三環式セスキテルペン:サンタレン;
トリテルペン(スクアレノイド):スクアレン;四環式トリテルペン酸;
− テトラテルペン:カロチノイド、その例として例えばカロテン、リコピン、ゼアキサンチン、ルテインおよび酸化亜鉛と組み合わせたルテイン、クロセチン、一般にリポクロム;
ポリプレン:雄性および雌性ステロイドホルモン(アンドロゲン、エストロゲン、およびゲスターゲン):テストステロン、アンドロステロン、エストリオール、エストラジオール、エストロン、クロミフェン(INN)、プロルトン(INN:プロゲステロン)、合成エストロゲン、特にホスフェストロールおよびチボロン;
コルチコイド:コルチゾール(INN、コルチゾン)、アルドステロン(INN)、トリアムシノロン(INN);
少なくとも8個の炭素原子を有するアルコール、例えばアルカノール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ステロール、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノエートおよびアルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノールアルカノエート、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,3,4−ブタンテトラオール、グリセロール、グリコール、例えばラノリンなどの羊毛脂アルコール;
複素環化合物、その例として例えばN−メチルピロリドン、ビリルビン、ビオチン、スルファメトキサゾール(INN)、特にアスコルビン酸エーテルおよび疎水性エステル化アスコルビン酸、その例として例えばパルミチン酸アスコルビル;
アルカロイドおよび誘導体、その例として例えば1−置換アザシクロアルカン−2−オン、ラウロカプラム(=1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)および誘導体、シクロデキストリン、アザシクロアルケン、クロルヒドリン;
ナノ粒子、その例として例えばフラーレン系ペプチド;
酵素、その例として例えばヒアルロニダーゼ、ストレプトドルナーゼ、キモトリプシン、ブロメラン、パパイン、デオキシリボヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、セリンプロテアーゼ;
四級アンモニウム塩、その例として例えば2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(QUAB 151)、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(QUAB 181)、ドデシル−、ヘキサデシル−、テトラデシルトリメチルアンモニウムハライド、グリシジルトリメチルアンモニウムハライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハライド、ベンゼトニウムハライド、ここでハライドは:フルオリド、クロリド、ブロミド、イオダイド(Iodid)を意味する;
フマレート、その例として例えばステアリルナトリウムフマレート、フマル酸、フマル酸エーテル;
ホスフェート、その例として例えばアルキル−(ポリオキシエチル)−ホスフェート;
ポリサッカライド、その例として例えばカラギーナン、ソルビトール、ソルビトールエーテルスクロース、疎水性エステル化され各々エーテル化されたキシリトールまたはグルコース、マルチトール、マンニトール、メグルミン。
【0089】
特に好ましいのは、同様に、
【0090】
【化1】

【0091】
という構造式の酒石酸塩ならびに酒石酸エステルであり、式中、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−C(CH33、−C49、−CH2−CH(CH32、−CH(CH3)−C25、−C511、−C613、−C715、−C817、−シクロ−C35、−シクロ−C47、−シクロ−C59、−シクロ−C611または線状または分岐、飽和または不飽和、少なくとも1つの官能基により置換されたまたは未置換であるアルキル、アリールアルキルまたはシクロアルキル残基を表わしている。
【0092】
アルキル、アリールアルキルまたはシクロアルキル残基における置換のための官能基としては、以下の部分が可能である:−H、−OH、−OCH3、−OC25、−OC37、−O−シクロ−C35、−OCH(CH32、−OC(CH33、−OC49、−SH、−SCH3、−SC25、−NO2、−F、−Cl、−Br、−I、−COCH3、−COC25、−COC37、−CO−シクロ−C35、−COCH(CH32、−COOH、−COOCH3、−COOC25、−COOC37、−COO−シクロ−C35、−COOCH(CH32、−OOC−CH3,−OOC−C25、−OOC−C37、−OOC−シクロ−C35、−OOC−CH(CH32、−CONH2,−CONHCH3、−CONHC25、−CONHC37、−CONH−シクロ−C35,−CONH[CH(CH32]、−CON(CH32、−CON(C252、−CON(C372、−CON(シクロ−C352、−CON[CH(CH322、−NHCOCH3、−NHCOC25、−NHCOC37、−NHCO−シクロ−C35、−NHCO−CH(CH32、−NHCO−OCH3、−NHCO−OC25、−NHCO−OC37、−NHCO−O−シクロ−C35、−NHCO−OCH(CH32、−NHCO−OC(CH33、−NH2、−NHCH3、−NHC25、−NHC37、−NH−シクロ−C35、−NHCH(CH32、−NHC(CH33、−N(CH32、−N(C252、−N(C372、−N(シクロ−C352、−N[CH(CH322、−SO2CH3、−SO225、−SO3H、−SO3CH3、−SO325、−OCF3、−OC25、−NH−CO−NH2、−NH−C(=NH)−NH2、−O−CO−NH2、−O−CO−NHCH3、−O−CO−N(CH32、−O−CO−N(C252、−CH2F、−CHF2、−CF3、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2−CH2F、−CH2−CF3、−CH2−CH2Cl、−CH2−CH2Br、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32、−C(CH33、−C49、−CH2−CH(CH32、−CH(CH3)−C25、−C511、−C613、−C715、−C817、−シクロ−C35、−シクロ−C47、−シクロ−C59、−シクロ−C611、−Ph、−CH2(Ph、−CH=CH2、−CH2(CH=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH=CH(CH3、−C24−CH=CH2、−CH=C(CH32、−C≡CH、−C≡C−CH3、−CH2−C≡CH
好ましいのは、上述のアルキル基、置換アルキル基ならびに酒石酸のジエステル、トリエステルそして特にテトラエステルである。好ましい酒石酸塩は、酒石酸テトラメチル、酒石酸テトラエチル、酒石酸テトラプロピル、酒石酸テトラブチルである。
【0093】
同様に好ましいのは、150g/mol〜390g/mol、さらに好ましくは170g/mol〜370g/mol、さらに一層好ましくは190g/mol〜350g/mol、さらに一層好ましくは200g/mol〜330g/mol、そして特に好ましくは230g/mol〜310g/molの分子量を有する輸送メディエータである。
【0094】
ベースコーティング
ポリマーコーティングまたはベースコーティングは、輸送メディエータおよび活性作用物質から作られた本発明のコーティングの下でカテーテルバルーンの上に存在し得る。
【0095】
最低限の要求として、コーティングされていないインプラントに比べてインプラントの特性および使用に対しマイナスの影響を及ぼさない生体適合性ある物質が、ベースコーティングとして使用可能である。
【0096】
カテーテルバルーンのコーティングのためには、好ましくは以下の生体適合性、生分解性のまたは/および生物安定性ポリマーが使用される:
生物学的に安定したまたは緩慢にしか分解しないポリマーの名を挙げることができる:ポリアクリル酸およびポリアクリレート、その例として例えばポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニルハロゲニド、ポリビニリデンハロゲニド、ポリビニルエーテル、ポリビニルアロメート、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDMゴム、フルオロシリコーン、カルボキシメチルキトサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバレレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、セルロースニトレート、セルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースブチレート、セルロースアセテート−ブチレート、エチルビニルアセテートコポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMゴム、シリコンプレポリマー、シリコーン、その例として例えばポリシロキサン、ポリビニルハロゲンおよびコポリマー、セルロースエーテル、セルローストリアセテート、キトサン、キトサン誘導体、重合可能な油、例えばアマニ油およびそれらのコポリマーおよび/または混合物。
【0097】
生物学的に分解性のまたは再吸収性のポリマーとしては、以下のものを使用できる:ポリバレロラクトン、ポリ−(−デカラクトン、ポリアクチド、ポリグリコリド、ポリアクチドとポリグリコリドのコポリマー、ポリ−(−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−バレレート、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、ポリ無水物、例えばポリ無水マレイン酸、ポリヒドロキシメタクリレート、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−β−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチル−アクリレート、例えばオリゴカプロラクトンジオールおよびオリゴジオキサノンジオール由来のマルチブロックポリマー、ポリエーテルエステルマルチブロクポリマー、その例として例えばPEGおよびポリブチレンテレフタレート、ポリピボトラクトン、ポリグリコール酸トリメチル−カーボネート、ポリカプロラクトン−グリコリド、ポリ(g−エチルグルタメート)、ポリ(DTH−イミノカーボネート)、ポリ(DTE−コ−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノール−A−イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチル−カーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ(N−ビニル)−ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、ポリ[p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリ無水物、ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド、ソフトポリウレタン、主鎖中にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエーテルエステル、例えばポリエチレンオキシド、ポリアルケンオキサレート、ポリオルトエステルならびにそのコポリマー、カラギーナン、フィブリノーゲン、デンプン、コラーゲン、タンパク質ベースのポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、改質ゼイン、ポリヒドロキシアルカノエート、ペクチン酸、アクチン酸、改質および非改質フィブリンおよび カゼイン、カルボキシメチル硫酸、アルブミン、さらにヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、β−シクロデキストリン、PEGとポリプロピレングリコールのコポリマー、アラビアゴム、グアー、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシスクシンイミド、前述の物質の改質体およびコポリマーおよび/または混合物。
【0098】
特に好ましいポリマーは次のものである:ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シリコーン、キトサン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリウレタン、ポリアクチド、ポリグリコリド、ポリアクチドとポリグリコリドコポリマー、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−バレレート、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、ポリ無水物、ポリエステル、PEG、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストランおよびβ−シクロデキストリン。
【0099】
圧着型ステントを伴うバルーン
本発明のさらに好ましい実施形態は、圧着型ステントを伴う本発明のカテーテルバルーンを構成する。
【0100】
この実施形態の中には、治療を要する血管狭窄に応じて選択され使用されるべき4つの変形形態が存在する。
変形形態[A]は、非再吸収性でコーティングされていない圧着型ステントを有するカテーテルバルーンを表わす。
【0101】
変形形態[B]においては、非再吸収性ステントには、物質放出用担体系がコーティングされている。
変形形態[C]は、再吸収性未コーティングステントを含み、変形形態[D]は、再吸収性物質放出ステントを有するカテーテルバルーンである。
【0102】
変形形態[A]:
ステント上の物質放出系、一般的には物質放出コーティングはつねに望ましいものではなく、一部の場合には後発性血栓症の問題が発生するかもしれないことから、変形形態[A]は、コーティングの無い永久ステントを伴う胆管、食道、尿路、膵臓、腎尿管、肺管、気管、小腸および大腸そして特に血管などの、著しく狭窄しているものの活性作用物質の適用は禁じられていない体腔を開放状態に保つための理想的系を提供している。
【0103】
変形形態[A]に係るカテーテルバルーンは、活性作用物質または活性作用物質を含む担体の純粋層でコーティングされており、拡張中に一方ではステントが設置され、他方では少なくともステントの長さ全体にわたってそして有利にはそれを超えて活性作用物質が適用され、これにより、制御された取込みが可能となり、かつ主に平滑筋細胞と共にステントが過剰成長することが妨げられる。活性作用物質または活性作用物質の混合物としては、上述の活性作用物質そして特にパクリタキセルおよび/またはラパマイシンを適用することができる。
【0104】
好ましくは、カテーテルバルーンは、バルーンコーティングがステントの端部を超えて好ましくは全ステント長の10〜20%だけステントの両端部を延長させるような形で、担体系を伴うかまたは伴わない活性作用物質でコーティングされる。こうして、活性作用物質は拡張中に、ステントが到達しないステントの両端部にある血管の区分にまで同様に移送され、活性作用物質は、それぞれ展開しているまたは展開されたステント支柱の間にある血管壁全体にわたって移送される。
【0105】
この実施形態には、ステント表面が、それと直接接触している細胞、具体的には平滑筋細胞を阻害するかまたは死滅させる活性作用物質を有していないという利点がある。対照的に、ステント支柱の間に充分な量の活性作用物質が適用されて、結果として、陥凹部から始まりステントの内側へと続き場合によってはステント内再狭窄を導くステントの急速な過剰成長が、それぞれ許容可能な程度まで阻止または削減されることになる。
【0106】
物質がコーティングされたステントは、ステント支柱の陥凹部からまたはステントの端部あるいはそれを延長する部域からではなくその表面のみから活性作用物質を放出し、その上、阻害または死滅させてはならない隣接組織に対してそれを結果として放出する。そのため、変形形態[A]によると、活性作用物質はそれが必要とされている場所に正確に適用され、ほぼ部域全体を被覆する。さらに、血管内に納まっているステントの末端区分にも同様に充分な量の活性作用物質を提供するため活性作用物質での血管壁の被覆が数mmだけステントの端部を延長するような形で、カテーテルバルーンがステントの端部を超えて数mmにわたってその遠位端部および近位端部においてコーティングされることが好ましい。
【0107】
さらに、血管内に納まっているステントの末端区分にも同様に充分な量の活性作用物質を供給するために、活性作用物質による血管壁の被覆が数mmだけステントの端部を延長するような形で、カテーテルバルーンがステントの端部を超えて数mmにわたってその遠位端部および近位端部においてコーティングされることが好ましい。
【0108】
したがって好ましくは、カテーテルバルーンは本発明にしたがってコーティングされ、その後コーティングされていないステントがバルーン上に圧着される。
変形形態[B]は、変形形態[A]の場合のように、非再吸収性ステントがバルーン上に圧着され、その後ステントとバルーンに本発明に係る活性作用物質がコーティングされる場合に達成可能である。
【0109】
「非再吸収性」という用語は、ステントが、生理学的条件下で溶解しないかまたは極く緩慢にしか溶解しない永久インプラントであることを意味する。このようなステントは、例えば医療用高品質鋼、チタン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、金、ニチノール、マグネシウム、亜鉛、鉄、前述の金属の合金ならびにセラミックまたは生体安定性ポリマーなどで製造されている。
【0110】
圧着型ステントと同時にカテーテルバルーンをコーティングする場合には、好ましくは、カテーテルバルーンに対する影響が可能なかぎり小さく、それでも好ましくは濡れ性があり、かつ、さらには圧縮された場合に圧着型ステントの支柱の間で流れるのに充分な流動性を有する溶媒中の活性作用物質と少なくとも1つの輸送メディエータの溶液が使用される。
【0111】
この実施形態は、ステント支柱の陥凹部(凹部)およびステントの内部表面とカテーテルバルーンの表面の間の陥凹部が活性作用物質の貯蔵体として機能することから、比較的大量の活性作用物質の自然放出用に適している。
【0112】
上述の方法によるとステントおよびカテーテルバルーン上にさらに著しく大量の活性作用物質または活性作用物質の混合物を適用できることから、変形形態[A]との差異は、主として、適用可能な活性作用物質の量にある。
【0113】
例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、エタノール、アセトン、酢酸メチルおよびヘキサンおよびそれらの混合物からなるパクリタキセル溶液などの疎水性活性作用物質または例えば酢酸エチルエステルからなるラパマイシン溶液のためには、メタノール/エタノール混合物、エタノール/水混合物またはエタノールが、コーティング溶液として適している。当然のことながら、適切な溶媒または溶媒混合物中の他の活性作用物質も使用可能である。
【0114】
活性作用物質と共に溶液に添加剤を加えることも可能であるが、カテーテルバルーンが圧着型ステントと合わせてコーティングされる場合、ポリマー添加剤の使用はむしろ希である。担体系を使用する場合には、例えばアミノ酸、砂糖、ビタミン類、糖類、2−ピロリドン、クエン酸アセチルトリブチルおよびクエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチルおよびクエン酸トリエチル、安息香酸ベンジルエステル、フタル酸トリエチルおよびフタル酸ジメチル、脂肪酸エステル、その例として例えばミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピル、脂肪酸エーテルなどのような、コーティング特性を改善し血管内への活性作用物質の取込みを増強する造影剤または造影剤類似体ならびに生体適合性有機物質などの非ポリマー担体がむしろ適切である。これらの異なる物質の混合物も、充分適したものであることが判明した。したがって、例えば多糖類、カラギーナン、レシチンおよびグリセリンなどの混合物がきわめて適切な担体系であることが判明している。同様に、活性作用物質を包埋するためのマトリックスとして、生理学的に受容可能な塩を使用することができる。
【0115】
同様にこの変形形態において、バルーンは好ましくはステントにより被覆される表面を超えてコーティングされる。ステント端部を超えて延在するバルーンのコーティングされた区分は、好ましくは全ステント長の20%以下、より好ましくは15%以下そして特に好ましくは全ステント長の10%以下である。
【0116】
一般的に、変形形態[A]ならびに変形形態[B]において、全面被覆コーティングが有利である。すなわち、変形形態[A]に係るカテーテルバルーンまたは変形形態[B]に係るステントとカテーテルバルーンには、領域全体を被覆するコーティングが提供される。
【0117】
変形形態[A]および[B]はさらに、活性作用物質でのコーティングが均一にではなく勾配を用いて行われてもよい。すなわち、活性作用物質でのコーティングは、バルーンまたはバルーンとステント表面の上に活性作用物質の濃度勾配が生成されるような形で修正可能である。したがって、例えば、バルーンの中央に、またはカテーテルバルーンの一方または両方の端部に、または中央と一方のまたは両方の端部に、より高濃度の活性作用物質を適用することができる。
【0118】
さらに、カテーテルバルーンの1つの位置または区分においてのみ、表面の残りの部分よりも高い濃度の活性作用物質を適用することができる。したがって、例えばステントの端部は、これらの過渡的区分がより高いリスクを有することから、特に移植後の早い段階で特別に注意する必要がある。ここでは、任意の変形形態が想定可能である。
【0119】
さらに、コーティングステップに先立つステップにおいては、血液適合性層を、医療製品の未コーティング表面に接着によってかまたは好ましくは共有結合によって適用することができ、あるいは例えば医療製品の表面上にグルタルジアルデヒドを用いた架橋により固定化してもよい。このような形で血液凝固を活性化させない層は、それにより医療製品の表面の血液適合性が増強され、血栓症のリスクが削減されることを理由として、道理にかなったものである。このコーティングステップは、とりわけ短期インプラントを部分的にのみコーティングすべき場合に、特に妥当である。こうして活性作用物質でコーティングされていない区分は有利にも、凝固非活性化、非血栓形成性(athrombogene)表面を有し、こうして、医療製品と血液の接触中およびその後の著しく高い安全性を保証する。
【0120】
さらに、血液適合性層を永久ステントとしてのステント上に適用することが好ましい。血液適合性層は、以下の好ましい化合物で調製される。:市販のヘパリンの標準分子量約13kDを最高とする、抗血栓効果の原因である五糖類の分子量範囲内の異なる硫酸化およびアセチル化度を有する、天然由来のならびに位置選択的に産生された誘導体のヘパリン、ヘパリンサルフェートおよびその誘導体、赤血球グリコカリックスのオリゴ糖および多糖類、オリゴ糖、多糖類、完全に脱硫されかつN−再アセチル化されたヘパリン、脱硫されかつN−再アセチル化されたヘパリン、N−カルボキシメチル化されたキトサンおよび/または部分的にN−アセチル化されたキトサン、ポリアクリル酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチレングリコールならびにこれらの物質の混合物。
【0121】
コーティング方法
本発明のさらなる態様は、バルーンカテーテルのコーティング方法において、
a)少なくとも1つの溶媒と、少なくとも1つの薬理学的作用物質と、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物とを含む組成物を供給するステップであって、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの混合物が少なくとも150℃の沸点を有し、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの混合物が20℃で油性または固体のコンシステンシーを有し、免疫反応をひき起こさず、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの混合物が血管拡張のためのカテーテルバルーンのコーティング用に使用され、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの混合物が造影剤ではない、ステップと;
b)カテーテルバルーンを有するバルーンカテーテルを提供するステップと;
c)噴出法、ピペット法、毛管法、折畳み噴霧法、ドラグ法、糸ドラグ法またはローリング法によってカテーテルバルーンをコーティングするステップと;
d)バルーンの表面上のコーティングを乾燥させるか、または溶媒を除去するステップと、
を含む方法に関する。
【0122】
さらに、本発明は、本明細書中に開示されている方法の1つによって得ることのできるバルーンカテーテルに関する。以下で、例えば噴出法、ピペット法、毛管法、折畳み噴霧法、ドラグ法(引張り法)、糸ドラグ法(糸引張り法)またはローリング法などのコーティング方法について詳述する。カテーテルバルーンは、ステントと共にまたはステント無しでコーティング可能である。
【0123】
本発明のバルーンカテーテルとしては、少なくとも1つの薬理学的作用物質と輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物との乾燥した油性または固体のコーティングを伴うカテーテルバルーンを収納するか、有するかまたは含んでおり、ここで輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は少なくとも150℃の沸点を有し、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は20℃で油性または固体のコンシステンシーを有し、免疫反応をひき起こさず、かつ輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は、血管拡張のためのカテーテルバルーンのコーティング用に使用され、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物は造影剤ではない。このようにコーティングされたバルーンカテーテルは、体腔特に血管の拡張および開放そして特に心臓血管の分野において、ひいては狭窄および再狭窄の予防および治療のために極めて適している。
【0124】
輸送メディエータの選択は、本発明の有意な部分であり、本明細書中で記述された目的のために選択的に選ばれる輸送メディエータは、「輸送メディエータ」の章において詳述されている。
【0125】
カテーテルバルーンは、噴霧、浸漬、ブラシがけ、噴出、ドラグ(引張り)、ロール、ピペット法またはエレクトロスピニングにより活性作用物質または活性作用物質の組合せを含む適用すべき物質の溶液で完全にまたは部分的にコーティングされるかまたは、マトリックスで完全にまたは部分的にコーティングされる。
【0126】
溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、ヘパリン、n−ヘキサン、DMF、DMSO、メタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、メチレンクロリド、エーテル、ベンジン、アセトニトリル、酢酸エチルおよびメチルエステル、シクロヘキサンおよび対応するそれらの混合物などの揮発性有機化合物が使用される。コーティング材料(例えばヒドロゲルまたは水溶性活性作用物質)によっては、水の存在が望ましいかもしれない。
【0127】
溶媒を選択する場合、一般に、その溶媒がカテーテルバルーンの材料を溶解させずまたはそれを役にたたない状態にしないこと、またはいかなる損傷も発生させ得ないように、溶媒の曝露は極めて短時間であることがとりわけ重要である。
【0128】
展開状態または折畳み状態のいずれかにあるカテーテルバルーンを、コーティングする、つまり部分的または完全にコーティングするか、襞の下に選択的にコーティングするか、または取付け式(圧着)ステントと合わせてコーティングすることができる。
【0129】
コーティングは、噴霧、浸漬、ブラシがけ、噴出、ドラグ、ロール、および/またはピペット法によって行うことができる。ピペット法、ドラグ法、ロール法または噴出法は、これらの方法を使用すると適用すべき活性作用物質または活性作用物質の組合せを伴う溶液を襞内または襞の下に特定的に適用できることから、折畳まれたカテーテルバルーンまたは折畳みバルーン上での使用に特に適している。したがって、この部分的コーティングでは機能性の障害が全く発生しないことが重要である。したがって、襞は、例えば展開される場合に互いに貼り付かず、ひいては展開を妨げないかもしれない。同様にしてバルーン上の公称圧力は、襞内のコーティングの接着力に対抗できるように強制的に最大値を超えて増大されないほうがよい。不均等な展開も回避されるべきである。コーティングはいかなる場合であれ、バルーンカテーテルの展開特性を損なってはならない。
【0130】
さらに、カテーテルバルーンは圧着型ステントと共にコーティングされることが可能であり、あるいは、コーティング済みカテーテルバルーン上に裸のステントならびにすでにコーティング済みのステントを圧着させて、例えば活性作用物質がカテーテルバルーンから迅速に放出される系および活性作用物質がステントのコーティングから緩慢に放出される系を達成することができる。
【0131】
部品がコーティングされ活性作用物質を放出できるステントと組合せて、治癒過程の早期段階においては、物資放出式バルーンカテーテルが特に有利である。これは唯一この方法によってのみ、治療すべき区分との完全被覆接触が実現でき、活性作用物質は部域全体を通って罹患した血管壁内に進入するからである。好ましくは小さい表面積を有するステントが血管壁の表面の小さい部分のみを被覆する一方で、罹患した区画は、バルーンカテーテルの表面に暴露されている時に全体に活性作用物質の提供を受ける。
【0132】
絶えず問題をひき起こすステントの外側区分についても同じ要領で利点を実現すべきである。外側区分内でも活性作用物質を放出することのできるカテーテルバルーンは、ステントの問題部域内にさえ血管のための最適な供給を送出する。
【0133】
特別に作られた表面を有するカテーテルバルーンは好ましくは、噴霧またはピペット法でコーティングされる。噴霧法では、カテーテルバルーンは回転式に吊るされ、カテーテルバルーンの形状は、軽真空によって安定化される。例えば、これにより回転中に折畳みバルーンの襞が反転または横滑りし、ひいてはコーティングを特定的に局所的に実施できなくなるのを防ぐことができる。
【0134】
このような形で係留されたバルーンは、間欠的に乾燥されている間に、短時間で数回噴霧される。所望される場合には、外側保護層または障壁層(バリア層)も同様に好ましくは噴霧法により適用される。同じく好ましくは噴霧法によって適用される例えばパクリタキセルまたはラパマイシンなどを含む純粋活性作用物質(輸送メディエータ)層についても同じことがあてはまる。
【0135】
ピペット法は、バルーンカテーテルのコーティングに特に適している。本明細書中、回転可能な形で係留されたバルーンカテーテル(ステント有りまたは無し)は、毛管で延長されコーティング溶液がそれを通って長手方向にバルーンカテーテル上へと退出する細いノズルを用いてコーティングされる。
【0136】
噴出法またはピペット法では、折畳みバルーンの襞の好ましい充填のため襞の下を細いノズルまたはカニューレが移動させられ、適用すべき溶液は襞内へ噴出され、ここで好ましくはノズルまたはカニューレを襞に沿って移動させるか、またはノズルまたはカニューレが固定されている場合には、折畳みバルーンを襞に対し長手方向に移動させる。この方法により、単一の各襞またはバルーン全体それぞれの非常に精密かつ正確なコーティングが可能となる。使用された可能性のある溶媒は蒸発するか、真空下で除去される。
【0137】
適用すべき混合物または溶液のコンシステンシーが襞内への流動を可能にするものである場合には、折畳みバルーンは1つの襞を上にして水平に、または好ましくは5〜25度傾斜させて位置づけされ、こうして、シリンジまたはノズルを襞のオリフィスにおいて折畳みバルーンの下端部にセットすることができ、混合物は自然に襞内に流れ込みそれを完全に充填することができる。混合物が、襞から外にそれ以上流出できなくなるコンシステンシーを有することになった時点で直ちに、折畳みバルーンを回転させ、次の襞に充填し、バルーンの全ての襞が全体的に充填されるまで続ける。折畳みバルーンは好ましくは圧縮状態でコーティングされるが、これにより、折畳みバルーンの一部の特殊な実施形態では、展開状態でもコーティングが可能である。
【0138】
このようなコーティング方法には、以下のステップが含まれる:
a) 折畳みバルーンを提供するステップ、
b) バルーンの襞を水平位置または最高25度傾斜した位置に設置するステップ、
c) シリンジのオリフィスを、バルーンの最上部に面する襞のオリフィスにセットするステップ、
d) 襞に対し長手方向にシリンジのオリフィスおよび折畳みバルーンの相対的動作を実施するステップ、
e) 動作中の襞に、適切な溶媒中の輸送メディエータと活性作用物質の混合物を充填するステップ、
f) 必要な場合、襞から外への混合物の漏れを妨げる程度まで、襞の内側の混合物を乾燥させるステップ、
g) 360°を襞の数で除した角度だけバルーンを回転させるステップ、
h) 全ての襞が充填されるまでステップb)〜g)を反復するステップ、
i) 混合物が固まるまで襞の内側の混合物を乾燥させるステップ。
【0139】
より粘度の低い混合物が使用される場合、シリンジのオリフィスは、ステップc)において下端部にセットされ、襞は、主として毛管力のため、ステップd)にしたがった相対的動作無く充填される。
【0140】
本発明はさらに、短期拡張を用いて狭窄した血管腔特に心臓血管腔を開放状態に保つ方法に向けられる。この方法においては、ステント無しのカテーテルバルーンが、長くても50秒、好ましくは長くとも40秒、より好ましくは長くとも30秒そして最も好ましくは長くとも20秒以内で拡張され、その後圧縮状態での初期直径の1.5倍よりも小さい直径まで再圧縮され、ここでこの手順の間血管は非狭窄状態における直径の多くても10%までしか過剰伸長されず、バルーンの表面積1mm2あたり含有される活性作用物質の少なくとも20%が放出され、ほとんどが血管壁上に移送される。
【0141】
本明細書中、活性作用物質の移送は好ましくはその純粋な形態では行われず、少なくとも拡張後1時間は、活性作用物質の貯蔵体として活性でありかつ溶解または分解される前に血管壁に対しさらに活性作用物質を放出する輸送メディエータのマトリックス中で行われる。
【0142】
こうしてこの方法は、好ましくは短時間、狭窄した区分の血管壁上に局所的かつ特定的に好ましくは大量の活性作用物質を移送するステップ、および後続する30〜60分間、最高で3日間まで後に溶解または分解される活性作用物質の局所的貯蔵体を供給するステップを特徴とする。
【0143】
この方法においては、特に抗炎症性および抗増殖性を組合せた活性作用物質が、特に適していることが判明した(p8〜10の活性作用物質のリストを参照のこと)。これらの中には、例えばコルヒチン、アンギオペプチンが含まれるが、とりわけ全てのラパマイシンおよびその誘導体、さらには他の疎水性活性作用物質、特にパクリタキセルおよびパクリタキセル誘導体が非常に適していることが立証されている。
【0144】
本発明に係る折畳みコーティング方法または折畳み充填方法は、毛管法とも呼ばれるピペット法、噴出法そしてカテーテルバルーン全体に対する非選択的な噴霧法との差異を明確にするため折畳み噴霧法とも呼ばれる噴霧法である。
【0145】
したがって、本発明は、以下の要領でカテーテル折畳みバルーンの襞をコーティングまたは充填するための方法に関する:
a) 活性作用物質を含む組成物が、カテーテル折畳みバルーンの襞の遠位または近位端部で放出され、襞は毛管力により充填される;または
b) 活性作用物質を含む組成物の連続流を放出するシリンジを、カテーテル折畳みバルーンとの関係において襞に沿って移動させる;または
c) 折畳みバルーンの襞の下に複数の整列された放出オリフィスを移動させ、活性作用物質を含む組成物を、複数の放出オリフィスから襞内に同時に放出する。
【0146】
このコーティングまたは充填方法を、好ましくはカテーテルバルーンの圧縮されたまたは収縮された状態または多くとも10%膨張した状態で実施できるということは有利なことである。「10%膨張した状態」とは、カテーテルバルーンが拡張中に見込まれる最大展開の10%だけ膨張すなわち展開したことを意味する。拡張中に見込まれる展開を100%とし、収縮状態を0%に設定するならば、10%の膨張は、以下の式から得られる:
(収縮したカテーテルバルーンの直径)+(膨張したカテーテルバルーンの直径−収縮したカテーテルバルーンの直径)/10
さらに、いくつかのまたは全ての襞を本発明の方法にしたがって同時にコーティングまたは充填することができ、コーティングまたは充填を特定的に実施することが可能である。特定的な折畳み充填または折畳みコーティングというのは、襞だけが充填またはコーティングされ、襞の外側のカテーテルバルーンの表面がコーティングされないことを意味している。
【0147】
好ましくは使用される活性作用物質、溶媒および造影剤などのマトリックスの組成物は、ペースト、ジェル、粘性塊、または粘性分散またはエマルジョンまたは強靭なパップのコンシステンシーを有する。
【0148】
この組成物は、コーティング中そのコンシステンシーを維持するという利点を有する。このペーストまたは(非常に)粘度の高い塊または濃厚な懸濁液は、噴出装置、好ましくはノズルを用いて圧力下で襞に適用される。
【0149】
必要な場合、ノズルはバルーンの襞を拡幅し、襞が形成する空洞を特定的に充填することができる。折畳みバルーンは通常、個別に充填される4つ以上の襞を有する。
1つ以上または全ての襞を充填した後、襞のオリフィスの方向に折畳みバルーンを回転させることが特に有利であることが判明した。この回転は、襞内の粘性ペーストの完全かつ均等な分布、および考えられ得るエアロックの放出を導く。折畳みバルーンの回転後、すでに充填されたまたは空の襞のさらなる充填を行うことができる。
【0150】
回転中および/または回転後に、襞内の組成物は、大気圧または減圧下で乾燥する。組成物の乾燥または硬化は、蒸発により少なくとも1つの溶媒を除去することによって起こる。乾燥した組成物は、多孔質のコンシステンシーを有し、拡張中にバルーンの表面から極めて容易に脱離され得る。溶媒は、通常の残留分を除いて除去され、造影剤は活性作用物質のための多孔質マトリックスを形成し、さらに折畳みバルーンを拡張させた後活性作用物質を迅速にかつ高濃度で放出できる。さらに、本発明の方法は、襞だけがコーティングされ、これにより活性作用物質がカテーテルの導入中に失われる可能性のあるバルーンの外側表面上に全く無いため、材料を大幅に節約しながら機能させるという利点を有する。
【0151】
コーティング方法の一般的説明
ピペット法−毛管法
この方法には以下のステップが含まれる:
a) 折畳まれ圧縮されたカテーテルバルーンを提供するステップ、
b) コーティング溶液を点状放出できる出口を伴うコーティング装置を提供するステップ、
c) カテーテルバルーンの襞の近位または遠位端部に、コーティング溶液を点状放出できる出口をセットするステップ、
d) 襞の近位または遠位端部で出口を通して規定量のコーティング溶液を放出するステップ、
および、
e) 毛管作用によってコーティング溶液を襞に充填するステップ。
【0152】
任意には、乾燥のためのステップf)がさらに後続し得る:
f) 襞内のコーティング溶液の乾燥ステップであって、乾燥中カテーテルバルーンがその長手方向軸を中心として、襞のオリフィスの方向に回転させられるステップ。
【0153】
この方法は、襞を特定的にコーティングまたは充填し、5分間の毛管力によってまたは好ましくは2分間付加的に重力を用いることによって、襞の中に引き込まれ襞が多少の差こそあれ完全に充填される程度になおも粘性のあるあらゆるコーティング溶液を用いて実施可能である。
【0154】
本明細書中で使用されるコーティング溶液という用語は、少なくとも1つの溶媒と、少なくとも1つの薬理学的に活性な作用物質と、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物とを含み、好ましくは本明細書中に記述されている輸送メディエータの物質部類を輸送メディエータとして使用することができる、本発明にしたがって使用される組成物を意味する。
【0155】
噴出法またはシリンジ法
この方法は以下のステップを含む:
a) 折畳まれ圧縮されたカテーテルバルーンを提供するステップ、
b) コーティング装置に、少なくとも1つのノズルまたは少なくとも1つのシリンジ状の出口を設けるステップ、
c) カテーテルバルーンの近位端部または遠位端部にノズルまたは出口をセットするステップ、
d) 襞との関係において襞に沿ってノズルまたは出口を移動させるステップ、および
e) 時間あたりおよび被覆される距離あたり規定流量のコーティング溶液を放出するステップ。
【0156】
任意には、乾燥のためのステップf)がさらに後続し得る:
f) 襞内のコーティング溶液を乾燥させるかまたは襞内のコーティングを均等に分布させるステップであって、カテーテルバルーンがその長手方向軸を中心として襞のオリフィスの方向に回転させられるステップ。
【0157】
この方法は、襞を特定的にコーティングまたは充填し、小さなノズルまたは小さな出口オリフィスを用いて襞内に充填される程度になおも粘性のあるあらゆるコーティング溶液を用いて実施可能である。
【0158】
噴霧法または折畳み噴霧法:
この方法は、以下のステップを含む:
a) 折畳まれ圧縮されたカテーテルバルーンを提供するステップ、
b) 複数の整列された放出用オリフィスをコーティング装置に設けるステップ、
c) カテーテルバルーンの襞の下に複数の整列された放出用オリフィスを挿入するステップ、
d) 放出用オリフィスから襞内に規定の量のコーティング溶液を同時に放出するステップ、
e) 襞内でコーティング溶液を乾燥させるステップ。
【0159】
任意には、乾燥のためのステップf)がさらに後続し得る:
f) 襞内のコーティング溶液を乾燥させるか、または襞内のコーティングを均等に分布させるステップであって、カテーテルバルーンがその長手方向軸を中心として襞のオリフィスの方向に回転させられるステップ。
【0160】
この方法は、襞を特定的にコーティングまたは充填し、小さなノズルまたは小さな出口オリフィスを用いて襞内に充填される程度になおも粘性のあるあらゆるコーティング溶液を用いて実施可能である。
【0161】
ドラグ法または液滴ドラグ法:
この方法は、以下のステップを含む:
a) 折畳まれ部分的に膨張したまたは完全に膨張した状態でカテーテルバルーンを提供するステップ、
b) 放出用装置をコーティング装置に設けるステップ、
c) 放出用装置においてコーティング溶液の液滴を形成するステップ、
d) 放出用装置自体がカテーテルバルーンの表面に接触することなく、コーティングすべきカテーテルバルーンの表面全体にわたり液滴をドラグするステップ、および
e) 液滴が実質的にそのサイズを維持するようにして、コーティング溶液を再投与(再添加)するステップ。
【0162】
この洗練されかつカテーテルバルーンにとって特に入念な方法は、放出用装置がバルーンの表面と接触することなくバルーンの表面全体にわたって移動またはドラグされるコーティング溶液の液滴を使用しており、放出用装置ひいては液滴そしてバルーンの表面が互いに対し相対的に移動している。
【0163】
こうして、コーティング溶液は、液滴が実質的にそのサイズを維持し、放出用装置とバルーン表面との間の連結が維持されるような形で再投与される。体積測定装置を用いて、コーティング溶液の分注量、ひいてはバルーン上の活性作用物質の量を、コーティング後に正確に決定することができる。
【0164】
糸ドラグ法:
この方法は、以下のステップを含む:
a) 折畳まれ、部分的に膨張した状態または完全に膨張した状態でカテーテルバルーンを提供するステップ、
b) 糸、スポンジ、革紐または布片の形をした放出用装置をコーティング装置に設けるステップ、
c) コーティング溶液を供給するステップ、
d) 放出用装置にコーティング溶液を浸すステップ、
e) 放出用装置からコーティングすべきカテーテルバルーンの表面上にコーティング溶液を移送するステップ、および
f) 放出用装置からカテーテルバルーンの表面上へのコーティング溶液の一貫性ある放出が行われるように、コーティング溶液を再投与(再添加)するステップ。
【0165】
同様に非常に洗練されたこの方法は、放出用装置が実際にバルーンの表面と接触するもののバルーンの表面に損傷を与え得ないような形で進行することから、同じくカテーテルバルーンの表面に対して非常に穏やかに作用するものである。放出用装置は、この装置に対するカテーテルバルーンの動作によりバルーンの表面全体にわたり引っ張られるかまたはドラグされ、こうして規定量のコーティング溶液を放出する。体積測定装置を用いて、コーティング後にバルーンの表面上に移送されたコーティング溶液の量を正確に決定することができ、こうしてバルーンの表面上の活性作用物質の正確な量が得られる。
【0166】
ボールペン法またはロール法:
この方法は、以下のステップを含む:
a) コーティングすべきカテーテルバルーンの表面上にコーティング溶液を移送するために、ボールヘッドをコーティング装置に設けるステップ、
b) コーティング溶液にボールヘッドへのアクセス(接近)を提供するステップ、
c) コーティング装置のボールヘッドを、コーティングすべきカテーテルバルーンの表面上にセットするステップ、
d) コーティング溶液の流出を可能にするため、コーティング装置のボールヘッドに圧力を加えるステップ、および
e) コーティングすべきカテーテルバルーンの表面をボールヘッドでなぞり、コーティングすべきカテーテルバルーンの表面上にコーティング溶液を移送するステップ。
【0167】
同様に洗練されたこの方法において、放出用装置は、この装置との関係におけるカテーテルバルーンの動作によってバルーンの表面全体にわたり転動し、こうして、ボールペンを用いて、体積測定装置で決定可能な量のコーティング溶液をバルーンの表面上に放出する。
【0168】
以下では、本発明に係るコーティングおよび充填方法についてさらに詳述する。
ピペット法または毛管法:
この方法では、活性作用物質を含む組成物を点状放出できるピペットまたはシリンジあるいは他のあらゆる装置が使用される。
【0169】
本明細書中で使用する「活性作用物質を含む組成物」または「コーティング溶液」という用語は、活性作用物質と溶媒そして任意には添加剤の混合物、ひいては活性作用物質または活性作用物質の組合せ、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物そして少なくとも1つの溶媒の実溶液、分散、懸濁液またはエマルジョンに関係する。「溶液」という用語はさらに、それが、ジェル様、粘性またはペースト様の(濃厚な粘性のまたは粘度の高い)ものでもあり得る流体混合物であることを明確にするものである。
【0170】
活性作用物質を含む組成物を点状放出できるピペットまたはシリンジまたは出口または他の装置には組成物が充填されており、その出口は好ましくは襞の近位端部または遠位端部にセットされる。出口から退出する組成物は、毛管力により襞内へそして襞に沿って、襞の反対側の端部に到達するまで引き込まれる。
【0171】
カテーテルバルーンは、圧縮された、すなわち収縮した状態にある。通常、襞をわずかに開くためには、カテーテルバルーンの部分的またはほんの少しの膨張さえも必要ではない。それでも、拡張に見込まれている直径の多くても10%までカテーテルバルーンをわずかに膨張させることで、襞の充填を実施することができる。襞をわずかに拡幅するため100kPa(1bar)、好ましくは50kPa(0.5bar)の超過圧力を加えることにより、襞をわずかに拡幅した状態で襞の充填を行うこともできる。
【0172】
この方法では、活性作用物質を含む組成物が、対応する毛管力を発生させるのに充分希薄な流体であることが重要である。
組成物としては、活性作用物質または活性作用物質の組合せおよび輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物のアルコールまたはアルコール混合物中の溶液が特に好適である。
【0173】
毛管力は、10mmの長さの襞が5〜80秒間、好ましくは15〜60秒間、そして特に好ましくは25〜45秒間で完全に充填されるほどの強さのものでなくてはならない。
組成物または溶液がそれぞれ過度の粘性を有する場合、水平位置から多くても45°、好ましくは多くても35°まで、充填すべき襞を上向きにしてカテーテルバルーンを傾斜させ、こうして同様に重力も利用することが有用であり得る。しかしながら一般に、毛管力を用いた襞の充填は、充填すべき襞を上にしてカテーテルバルーンの水平位置で行われる。活性作用物質を含む組成物を点状放出できるピペットまたはシリンジまたは他の装置は、水平平面から測定した場合に襞の軸の方向と鋭角を成して、10°〜65°の角度、好ましくは20°〜55°、より好ましくは27°〜50°の角度、そして特に好ましくは35°〜45°の角度で、好ましくは襞の近位または遠位端部で襞上にセットされる。このとき襞の充填は、コーティング溶液が下り勾配を見出すように襞の上端部から行われ、かつ毛管力に加えて重力も利用される。
【0174】
毛管力に起因して遠位端部と近似端部の方向に同時に襞が充填されるような形で、襞の中央または遠位端部と近位端部の間の他のあらゆる点に、活性作用物質を含む組成物を点状放出できるピペットまたはシリンジまたは他の装置をセットする可能性も原理的には当然存在するが、襞の端部に出発点があることが好ましいことが分かっている。
【0175】
複数の襞または現在の襞を充填するための組成物が反対側の端部に到達したならば、物質の流れは通常自動的に停止し、活性作用物質を含む組成物を点状放出できるシリンジまたはピペットまたは他の装置を除去することができる。
【0176】
活性作用物質を含む組成物のより大きな液滴が、シリンジまたはピペットまたは活性作用物質を含む組成物を点状放出できる他の装置の設定点にとどまるのを防ぐためには、活性作用物質を含む組成物が襞の反対側の端部に完全に到達する前にシリンジまたはピペットまたは他の放出用装置を予め除去することが有利であることが判明した。こうして、シリンジまたはピペットまたは他の放出用装置の設定点になおもとどまっていた活性作用物質を含む組成物の残りは襞の中に引き込まれ、いかなるコーティング組成物、さらには充填用組成物も襞の外側に残留していないことになる。
【0177】
好ましくは、シリンジまたはピペットまたは他の放出用装置は、襞のほぼ90%が活性作用物質を含む組成物で充填された時点で除去される。シリンジまたはピペットまたは他の放出用装置を除去するための最適な瞬間は、数回の実験で正確に決定可能であり、同様に再現可能である。
【0178】
「活性作用物質を含む組成物を点状放出できる他の装置」という用語は、活性作用物質を含む組成物の定常流および連続流を供給できるピペットと類似の装置に関係し、したがってそれは同様に、活性作用物質を含む組成物のこの定常放出および連続放出を保証するポンプ、マイクロポンプまたは別の容器も意味する可能性がある。
【0179】
1つの襞を充填した後、カテーテルバルーンは、充填すべき次の襞が上にあり、好ましくは水平となるように回転される。折畳み充填手順は、ここで反復される。
活性作用物質を含む組成物のコンシステンシーに応じて、次の襞を充填するためにバルーンを回転させる前に先に充填された襞を乾燥させる必要があるかもしれない。乾燥は好ましくは溶媒の蒸発によって実施される。
【0180】
さらに、この方法においては、活性作用物質を含む組成物のコンシステンシーが許容するならば、すなわち、水平に位置づけされていない襞から組成物が漏出するほどにコンシステンシーが低くなく流動しない場合には、カテーテルバルーンの2つ、3つ以上または全ての襞を同時に充填またはコーティングすることも可能である。
【0181】
特に、ピペット方法は、カテーテルバルーンの複数のまたは全ての襞を同時に充填するのに適している。本明細書では、カテーテルバルーンは水平または好ましくは垂直に配置されることができ、放出用装置は上から襞の端部まで、好ましくは10〜70度の角度でセットされ、こうして活性作用物質を含む組成物は襞の中に流入できるようになっている。
【0182】
バルーンの全ての襞が充填された時点で最終的乾燥ステップが実施される。原則として、カテーテルバルーンの全ての襞が充填される必要はないが、拡張の間、好ましくは最大量の活性物質作用が好ましくは短時間で血管壁上に移送されるべきであることから、全ての襞を充填することは一般的かつ好ましい実施形態である。
【0183】
本発明に係る折畳みバルーンにおいて、拡張は好ましくは長くても60秒間、そして特に好ましくは長くても30秒間持続する。
最後の襞に充填した後、この最後の襞すなわち最後の襞の中味は、好ましくは溶媒の蒸発により、真空ではなく標準圧下で乾燥させられる。
【0184】
この予備乾燥ステップには、最終的乾燥ステップが後続する可能性があり、本発明によれば、このステップは回転するカテーテルバルーンで実施される。所要または所望の場合には、さらに回転中に真空を適用することもできる。この特別な乾燥方法について、本発明に係るコーティング方法に従ってさらに詳述する。
【0185】
噴出法またはシリンジ法:
この本発明の方法において、細いシリンジ、シリンジ状オリフィス、シリンジ状出口または針またはノズルが、1つの襞の近位端部または遠位端部にセットされ、このシリンジ、針またはノズルの形をした放出用装置は、襞との関係において襞の長手方向に沿って移動させられ、被覆された区分にしたがって一定量の活性作用物質を含む組成物または規定の流量のコーティング溶液が放出される。
【0186】
本明細書においては、カテーテルバルーンが係留されていて放出用装置が襞に沿って移動させられるか、または放出用装置が固定されていてカテーテルバルーンが相対的に移動させられるか、さらにはカテーテルバルーンおよび放出用装置の両方が互いに向かって移動させられるのかは重要ではない。カテーテルバルーンおよび放出用装置が互いに相対的に移動している場合は、直線上での反対方向に動作することが好ましい。
【0187】
放出用装置、すなわちシリンジ、針またはノズルなどから、活性作用物質を含む好ましくは中乃至は高程度の粘度をもつ組成物が好ましくはペーストまたはジェルまたは油の形で襞の内側へと放出される。好ましい溶液の粘度は、101〜106mPa・s、好ましくは102〜105mPa・s、そして特に好ましくは103〜104mPa・sの範囲内である。
【0188】
こうして、例えば少なくとも8個の炭素原子を伴うポリオール、フェノール、グリセリドまたはアルコールなどの特に以上に列挙した油性輸送メディエータと共に活性作用物質を含むこれらの組成物が適切である。
【0189】
コーティング手順の中で、シリンジ、ノズルまたは針の先端部は、およそ襞の内側の中央まで、ひいては襞のほぼ中央まで達しており、すなわちノズルまたは出口は、襞によって形成された空洞内の比較的中央に位置づけされている。そこでは、放出用装置およびカテーテルバルーンの相対的動作速度との関係における放出の速度および量が、少なくとも50体積パーセント、好ましくは少なくとも70体積パーセントそして特に好ましくは少なくとも85体積パーセントだけ活性作用物質を含む組成物をそれぞれ襞または襞の内側に充填するのに適したものとなるような形で、活性作用物質を含む組成物の連続流が発生する。
【0190】
襞の充填は、10mmの襞長において、約5〜80秒、好ましくは約15〜60秒、そして特に好ましくは約25〜40秒の間継続する。
充填手順の間、カテーテルバルーンは、圧縮された、すなわち収縮した状態にある。一般に、襞をわずかに開くためには、カテーテルバルーンの部分的またはほんの少しの膨張さえも必要とされない。それでも、拡張に見込まれている直径の多くても10%までカテーテルバルーンをわずかに膨張させることで、襞の充填を実施することができる。襞の充填時点で、襞をわずかに拡幅するために、100kPa(1bar)、好ましくは50kPa(0.5bar)の超過圧力を加えることにより、襞のわずかな拡幅も存在し得る。
【0191】
このコーティング方法は当然、活性作用物質を含む流体組成物を用いて実施することもできるが、油性組成物のためそして濃度の高い塩溶液のためにもむしろ好適である。
その上、この方法は、2つ以上の襞そして特に全ての襞を同時にコーティングまたは充填できるという利点を提供する。ここで、1つの襞につき1つの放出用装置が提供されるような形で、襞の数に応じて放出装置の円形アレイが配置される。わずかな回転によって、放出用装置の先端部は襞内に挿入され、襞の内側のほぼ中央に配置される。襞の長手方向軸との関係における放出用装置の相対的なおよび同時の動作によって、全ての襞に、活性作用物質を含む組成物の連続かつ定常流を同時に充填することができる。
【0192】
1つのまたは全ての襞の充填またはコーティングの間、カテーテルバルーンを垂直、水平または斜めに位置づけしてよい。
活性作用物質を含む組成物中に揮発性溶媒が使用されている場合、襞の中味を乾燥させるか、または150℃より低い沸点をもつ揮発性溶媒を除去する必要があるかもしれない。揮発性溶媒について、これは、まず1つ以上の揮発性溶媒の蒸発によって行われる。
【0193】
次に、最終的乾燥を行うことができ、ここで、カテーテルバルーンは襞の内側から見て襞のオリフィスの方向に回転させられる。この方法については、以下でさらに詳述する。存在する可能性のある溶媒を除去した後、油性またはペースト状にとどまるコーティング溶液を使用した場合、回転乾燥は、一方では150℃未満の沸点を有する溶媒の残留物を除去するために、そして他方では油性またはペースト状の層を襞内に均等に分配するために役立ち得る。
【0194】
襞のオリフィスの方向へのカテーテルバルーンの方向転換または回転も同様に、襞内またはそれぞれの襞の内側の襞の下にある組成物を均等に分布させるのに役立つ。
折畳みバルーンのこの回転は、襞の内側と襞の内部表面上にも活性作用物質を含む組成物を均等に分布させるために、活性作用物質を含む油性またはペースト状の組成物を使用する場合に有利である。
【0195】
本明細書中で使用する「コーティング」という用語は、好ましくは、襞の内部表面のコーティングも意味し、ここで一般には、活性作用物質を含む組成物または乾燥後に残った組成物のそれぞれで襞の全内部空間が充填されることはない。
【0196】
対照的に、「充填」という用語はむしろ、活性作用物質を含む組成物での襞の内部空間の完全な充填に関わる。
乾燥によって除去可能な溶媒が使用される場合、一般に充填を得ることはできず、それはむしろ襞の内部表面のコーティングと呼ばれる。
【0197】
しかしながら、例えば油などの高い沸点を有する物質が添加剤として使用される場合、活性作用物質を含む組成物内に大量の揮発性物質が存在しないかぎり、程度の差こそあれ完全な充填が可能である。ただし、添加剤の使用は任意である。
【0198】
この噴出法またはシリンジ法は、従来の浸漬および噴霧法では襞の内側は言うまでもなくカテーテルバルーン上にも適用できない活性作用物質を含む組成物を襞カテーテルバルーンの襞内に適用するのに特に適している。
【0199】
ステント上またはカテーテルバルーン上で従来使用されている固体コーティングとは対照的に、これらの油性およびペースト状のコーティングおよび充填には、これらの活性作用物質を含む組成物が完全に乾燥せず、そのコンシステンシーを大幅に維持するという利点がある。こうして、標準圧で空気中または不活性ガス雰囲気の下で完全に硬化しないコーティング溶液が好ましくは使用される。すなわち、使用された可能性のある溶媒をコーティング溶液から大規模に除去した後、蒸発によるかまたは減圧下での溶媒の除去後のカテーテルバルーンの襞の内側には、油性またはペースト状のコーティングが残る。したがって、任意に使用された溶媒を除去した後20℃未満、好ましくは30℃未満の融点または凝固点を有し、かつさらにコーティングされたカテーテルバルーンを数カ月乃至1年間貯蔵した場合にコーティングが襞から外に染み出さないような高い粘度、油性またはペースト状のコンシステンシーを示すコーティング溶液が好まれる。
【0200】
しかしながら、除去しなければならない溶媒の使用は義務的ではなく、したがって、除去されずコーティング内にとどまり襞内のコーティングをコーティングされた医療製品の保管寿命中油性およびペースト状に保つ、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどの生理学的に許容できる溶媒も使用することができる。
【0201】
このような油性およびペースト状のコーティングが示す莫大な利点は明白である。カテーテルバルーンが狭窄した場所で膨張または拡張される場合、この油性かつペースト状の組成物は少なくとも部分的に、ただし一般的には大規模に、血管壁上に移送され、数時間乃至数日間にわたり隣接組織に活性作用物質を遅延放出するための活性作用物質貯蔵体として役立ち、さらにそれぞれプラークを溶解するかまたはプラークの沈降を妨げるというメリットを有し、後に生理学的に重大な代謝産物を放出することなく生理学的に自己分解する。この系は、一方では、導入された時点で血流によって洗い流されないかまたは血管壁と接触した時点で移送されないような形でカテーテルバルーンに安全にコーティングを適用すること、そして他方では、拡張中に例えば30〜300秒などの比較的短時間で血管壁上に充分な量の活性作用物質が移送されること、すなわち可能なかぎり少ないコーティングしかカテーテルバルーン上に残留せず、可能なかぎり多くのすなわち少なくとも50%のコーティングが血管壁上に移送されて有効に再狭窄を妨げるような形で適用すること、という課題を完全に解決するものである。
【0202】
本発明に係るこのような系は、噴出法のみならず、本明細書で記述されている他のコーティング方法によっても生産可能である。
噴霧法または折畳み噴霧法:
本発明に係る方法においては、複数の整列された放出オリフィスが折畳みバルーンの下に移動またはセットされ、活性作用物質を含む組成物が複数のアパーチャからそれぞれの襞内に同時に放出される。
【0203】
放出装置は好ましくは、襞の長手方向に沿って好ましくは等しい間隔で整列されている2〜10個のノズルまたは放出オリフィスで構成されている。
この放出装置はその後、カテーテルバルーンの襞の下に挿入され、それぞれの襞は、ノズルまたは他の放出オリフィスからの活性作用物質を含む組成物の同時放出によって充填またはコーティングされる。
【0204】
上述の噴出法と同様に、1つの襞の充填は、襞が10mmの長さを有し4個の放出オリフィスを用いる場合、約5〜80秒、好ましくは約15〜60秒、そして特に好ましくは約25〜45秒継続する。放出オリフィスは、好ましくは主として襞の下の空洞の中央に位置設定されている。
【0205】
このコーティングまたは充填の変形形態において、襞の長手方向に対してカテーテルバルーンの襞内で放出装置を移動させる必要はない。一般に、カテーテルバルーンおよび放出装置は、充填またはコーティングの間固定されているが、ここで襞の長手方向に沿った動作は可能である。相対的動作が予定されている場合には、動作のための距離は好ましくは、放出装置の2個のノズルまたは放出オリフィス間の距離以下である。
【0206】
放出装置は、少なくとも2個そして多くても10個の放出オリフィスまたはノズルなど、そして好ましくは3〜6個、特に好ましくは4個または5個の放出オリフィスまたはノズルなどを含むかまたはそれらで構成されている。これらの放出オリフィスまたはノズルなどは、好ましくは10mmの距離にわたり均等に分布している。
【0207】
放出装置は、活性作用物質を含む組成物を均等に放出できるか、または襞内に均等に噴霧できる2〜10個のノズルまたは類似のオリフィスを有する。
この充填またはコーティング方法については、好ましくは、とりわけアルコール溶媒を含む活性作用物質または活性作用物質の組合せの中度の乃至は希薄な粘性組成物または溶液が使用される。さらに、完全に硬化せずジェル様、粘性、油性またはペースト状のコンシステンシーを維持するコーティング溶液が好ましい。ここでもまた、特にコーティング溶液および乾燥に関する噴出方法についての以上の記載があてはまる。
【0208】
この折畳み噴霧法では、カテーテルバルーンは、圧縮された、すなわち収縮した状態にある。通常、襞をわずかに開くためには、カテーテルバルーンの部分的またはほんの少しの膨張さえも必要とされない。それでも、拡張に見込まれている直径の多くても10%までカテーテルバルーンをわずかに膨張させることで、襞の充填を実施することができる。襞をわずかに拡幅するために100kPa(1bar)、好ましくは50kPa(0.5bar)の超過圧力を加えることにより、襞をわずかに拡幅した状態で襞の充填を行うこともできる。
【0209】
襞を充填した後、カテーテルバルーンは、充填すべき次の襞が好ましくは上側そして好ましくは水平方向にくるように、回転させられる。襞充填または襞コーティング手順はここで反復される。
【0210】
活性作用物質を含む組成物のコンシステンシーに応じて、次の襞を充填するためにバルーンを回転させる前に先に充填された襞を乾燥させる必要があるかもしれない。乾燥は好ましくは溶媒の蒸発によって実施される。
【0211】
さらに、この方法においては、活性作用物質を含む組成物のコンシステンシーが許容するならば、すなわち、水平方向に置かれていない襞から組成物が漏出するほどにコンシステンシーが薄い流体ではない場合には、カテーテルバルーンの2つ、3つ以上または全ての襞を同時にコーティングまたは充填することも可能である。複数のまたは全ての襞を充填またはコーティングするためには、襞数にしたがった放出装置の対応する円形配置が提供され、好ましくは垂直に配向されたカテーテルバルーンのまわりに設置され、回転によって放出オリフィスは、活性作用物質を含む組成物の同時放出が行われる襞の下に向けられる。
【0212】
バルーンの全ての襞が充填された時点で最終的乾燥ステップが行われる。基本的に、折り畳まれたカテーテルバルーンの全ての襞を充填する必要は勿論ないが、拡張の間、好ましくは最大量の活性作用物質が最短時間で血管壁上に移送されるべきであることから、全ての襞を充填することは一般的かつ好ましい実施形態である。
【0213】
最後の襞に充填を行った後、この最後の襞すなわち最後の襞の中味の乾燥は、好ましくは溶媒の蒸発により真空ではなく標準圧下で行われる。
この予備乾燥ステップには最終的乾燥ステップが後続する可能性があり、本発明によると、このステップは、回転するカテーテルバルーン上で実施される。所要または所望の場合には、さらに回転中に真空を適用することもできる。この特別な乾燥方法について、本発明に係るコーティング方法の以下の部分においてさらに詳述する。
【0214】
ドラグ法または液滴ドラグ法:
襞の全体的コーティングならびに特定的コーティングまたは充填のための特に好ましい方法は、いわゆるドラグ法または液滴ドラグ法である。
【0215】
この方法は、圧縮状態にあるカテーテルバルーンを、折畳みの内側および外側の部域全体にわたって活性作用物質を含む組成物でコーティングすることを可能にする。
この方法では、シリンジ、針、ピペットまたはノズルの形をした放出用装置が、好ましくは水平に係留された固定したまたは好ましくは回転するバルーンに接近され、次に、放出用装置の先端部で、投与装置ならびにバルーンと接触する液体が形成されるような形で、活性作用物質を含む組成物の体積が計量される。
【0216】
より性能を良くするため、投与装置を好ましくは放出端部において、細いワイヤー、糸または海綿状の補助工具で延長させて、接近時点で投与装置とバルーンとの間にこの補助工具を介して液体接点が確立され維持されるようにすることができる。
【0217】
任意には、側方オリフィスを伴う用量針またはフォーク形延長部分を使用する可能性も存在する。
回転式バルーンとの関係におけるバルーンの長手方向に沿った投与装置の側方動作によって、液体はドラグされ、一定量の活性作用物質を含む組成物が、1つの被覆された区分あたり1つの薄膜としてトレースされた表面上で乾燥する。ここで、液滴サイズは、最終投与量に達するまで活性作用物質を含む組成物を再投与することによって維持される。
【0218】
動作は、全標的表面がコーティングされ、バルーン表面上にいかなる液体ももはや存在しなくなるまで維持される。
バルーン表面と投与装置との間に1つの液滴を構築するのに役立つ初期用量での折畳みの毛管効果を妨げるために、バルーンを予め適切な溶媒で湿らすことができる。この理由は、このとき襞がすでに液体で充填され、毛管効果がそれ以上液滴を吸い上げることはないため、あるいは、バルーンの材料上で充填材料のより良い維持を改善する可能性があるかもしれないためである。
【0219】
放出用装置の先端部は大部分が比較的硬いまたは硬質の材料または拡張中に危険な合併症を導くかもしれないバルーン材料を損傷しうる材料で作られていることから、特に好ましい実施形態は、放出用装置の先端部においてまたは放出用装置または少なくとも放出用装置の末端オリフィスを通して糸またはワイヤーを誘導または係留することにあり、このときこのオリフィスは、放出用装置の先端部がバルーンと接触することなくバルーンの表面と接触するのに役立つ。この糸またはワイヤーは、バルーン材料に損傷を与える可能性のない材料で構成されている。
【0220】
糸またはワイヤーの代りに、スポンジまたは海綿状物質、布片または対応して薄い寸法の革片または毛髪または剛毛の束を使用することができる。しかしながら、これらの工具がカテーテルバルーンに損傷を与えない材料で構成されていること、すなわちこれらがカテーテルバルーンのポリマーを完全にまたは部分的に溶解、分解または硬直させたり、引っかいたり切断したりする可能性のある鋭利なまたは刃様の形状でなく、また腐食性、塩基性、酸性または粘着性の物質または化学物質を放出しないことも求められる。
【0221】
したがって、詳細には、布地、糸、ヤーン、ブラシ用剛毛を製造できるような物質およびポリマーが、これらの工具用の材料として好適である。
本発明によると、こうして、放出用装置の先端部をバルーン表面まで一定の距離のところに保持でき、それでもなお、バルーン表面との関係における液滴の動きを、糸、ワイヤー、スポンジ、革紐、剛毛または布片の形をした接触用装置を介して制御し調節できることになる。
【0222】
基本的に、バルーンが静止している状態で放出用装置を移動させるか、または放出用装置が静止している状態でバルーンを移動させるかは重要ではない。好ましい実施形態は、上から配置されバルーンの長手方向軸に沿って移動する放出用装置と共に水平位置にある回転するバルーンで構成されている。この実施形態においては、カテーテルバルーンの全表面のらせん状コーティングが行われる。
【0223】
別の好ましい実施形態においては、水平位置でのカテーテルバルーンのコーティングが間隔をおいて行われる。バルーンが静止している状態で、放出用装置は、一方の端部から他方の端部へそしてその逆にほぼ直線状にカテーテルバルーンの長手方向に沿って移動し、ここでバルーンは放出用装置がカテーテルバルーンの遠位または近位端部に達した時点で一定角度回転させられる。全バルーン表面の線状コーティングが、この実施形態を通して行われる。
【0224】
しかしながら、放出用装置が1つの襞上にセットされ、その襞に沿って移動させられ、バルーンの回転後に他の襞についてこの手順が反復された場合、特定的に襞が充填されたカテーテルバルーンが結果としてもたらされる。
【0225】
糸ドラグ法:
この方法では、カテーテルバルーンの表面全体にわたり液滴が移動させられることはなく、放出用装置と連結されているかまたは放出用装置として役立っている糸がバルーンの表面上をドラグされるかまたはバルーンの表面上にセットまたは点刻され、不作動状態にあるときも活性作用物質を含む溶液を放出するために役立つことができる。
【0226】
この手順においては、活性作用物質を含む溶液は糸に沿って流れ、ここでは好ましくはいかなる液滴形成も起こらない。糸は永続的に活性作用物質を含む溶液で湿らされ、糸がバルーンの表面と接触した時点で直ちにこの溶液をその表面に放出する。
【0227】
同じくこの方法には、液滴ドラグ法の場合と同様に、大部分が硬質材料で構成されている放出用装置の先端部がバルーンの材料に触れず、こうしてカテーテルバルーンの損傷が発生しないという大きな利点がある。
【0228】
好ましくは、糸は、カテーテルバルーンが回転している間長手方向に沿って水平方向にドラグされ、ここでこの糸は、活性作用物質を含む急速に乾燥する微量の溶液を放出する。
【0229】
しかしながら、この方法は、1本の糸を用いる実施形態に限定されず、バルーンの表面全体に複数の糸を移動させることもでき、ここでこの場合、バルーンは好ましくは垂直方向に位置づけされる。その上、糸を連結させるかまたはメッシュを形成させることも可能である。ここで、糸は、糸またはメッシュに活性作用物質を含む溶液を連続的に供給する少なくとも1つの放出用装置と連結される。
【0230】
したがって、この方法はバルーン表面の完全なまたは部分的なコーティングに適している。そうではなく襞のみに充填またはコーティングを施すべきである場合には、少なくとも部分的に襞内に糸を挿入するか、またはバルーンを折畳むときに襞に糸を設置し、活性作用物質を含む溶液をこの糸を介して襞内に流入させるという選択肢があり、この場合、襞を充填した後、好ましくは糸は除去される。
【0231】
さらに、襞の特定的充填のためには、ピペット法と糸ドラグ法の組合せが特に適しており、この場合、活性作用物質を含む大量の溶液が、糸を用いて近位端部または遠位端部で放出用装置から膨張したカテーテルバルーンの未充填の襞内に放出され、こうして毛管効果が溶液を襞内に吸い込む。
【0232】
液滴ドラグ法ならびに糸ドラグ法は両方共、バルーンの材料を損傷することなく、バルーンの表面に特定的にならびにバルーンの襞に特定的に、規定量の活性作用物質をコーティングまたは充填するという問題を、洗練された形で解決するものである。放出用装置は、活性作用物質を含む溶液の放出量を記録または表示する体積測定装置を有していてよい。
【0233】
さらに、これらの方法は、折畳まれたバルーンの表面が均等に形成されず規則的な形状の物体のための一般的なコーティング方法を適用しても、それには必ず相応する問題が伴うことからきわめて要求の高いものである、収縮(折畳み)状態でのコーティングおよび/または充填のために特に適している。しかしながら、液滴ドラグ法または糸ドラグ法においては、バルーンの表面と放出用装置の間の距離の差は、糸、ワイヤー、スポンジ、革紐、剛毛または布片の形をした接触用装置によって、洗練された形で補償される。
【0234】
ボールペン法またはロール法:
液滴ドラグ法の好ましい一変形形態は、ボール形状のコーティングヘッドを用いることから成る。ボールは、コーティングコンテナの出口オリフィスから脱落し得ない適正な直径を有する。ボールはコンテナを完全に閉鎖し、そのためボールと管壁の間からコーティング溶液は一切退出できない。コーティングすべき物体と接触した時点でこのボールに圧力が加わると、ボールは、可変的に加わる圧力に応じてコンテナ内に移動し、コーティング溶液はボールと溶液コンテナの管壁の間から退出できる。コーティングコンテナかまたはコーティングすべき物体のいずれかの同時動作およびそれらの間の所望の角度によって、ボールは表面上を転動し、表面の特に均等なコーティングを保証する。このようにして、ボールは調整可能な圧力と角度を用いてセンサーのように表面をトレースでき、こうしてコーティングすべき表面と同様コーティングの選択肢に関する特に大きな可変性を提供することから、所与の形状内でさまざまな物体をコーティングすることができる。
【0235】
各々のカテーテルバルーンは異なる表面設計を有し、不均等で、どのバルーン表面も互いに等しくないことから、このコーティング方法はカテーテルバルーンにおいて特に優れて応用可能である。好ましくは光学的に制御されたボールペンコーティング法が、異なり不均等でかつ不等などのような表面でも均等にコーティングする選択肢を提供する。さらにコーティング溶液を移送するためのボールヘッドには、カテーテルバルーンの表面に損傷を与えず、ボールヘッドまたはボールは、それぞれ金属ボールに比べてバルーン表面にさらに一層やさしく類似のコンシステンシーをもつ天然ゴム、シリコンまたはポリマーなどの軟質またはゴム様材料で製造され得るという利点がある。
【0236】
ボールヘッドは非常に正確に設置できることから、コーティングの開始点および終点が制御される。さらに、ボールヘッドを一度たりともオフセットまたはリセットすることなくカテーテルバルーン全体をコーティングできるように3次元動作が可能であるように、コーティング装置を設計することができる。コーティングすべきバルーンの表面を蛇行した形でトラッキングした後、コーティング装置のボールヘッドは出発点に戻り、ここで最初にコーティングされたトラックはその間に乾燥しており、最初のものにさらなるコーティング層を適用することができ、これにより、コーティングプロセス全体を中断することなく、コーティングおよび乾燥プロセスを実施できる。
【0237】
さらに、充分に制御可能で均等なコーティングは、ボールヘッドの転動の結果として得られ、ここで、コーティング層の厚みは、ボールに加えられる圧力および動作速度を介して制御可能である。
【0238】
回転乾燥:
以上で言及した通り、各々の襞をコーティングまたは充填した後、あるいは全ての襞または全ての襞をコーティングまたは充填すべきでない場合にはコーティングまたは充填すべき襞のコーティングまたは充填の後、コーティングまたは充填されたカテーテルバルーンを乾燥させることができる。これは、大部分の場合、本発明に係る方法においてステップf)として記されている。
【0239】
この回転乾燥にはいくつかの利点がある。一方では、活性作用物質を含む組成物は乾燥させられ、さらに襞の内側ならびに襞の内側の表面上に均等に分布させられる。
回転乾燥は、それぞれの襞内の組成物の均等な分布を得る目的で、活性作用物質を含む油性のまたは粘性の組成物のために特に適しており、ここでこれらのコーティングは一般に乾燥状態にならず、同様に所望され特に好まれるその粘性、油性、ジェル様またはペースト状のコンシステンシーを維持する。
【0240】
さらに、活性作用物質を含む組成物の集中的な乾燥を得るために、カテーテルバルーンの回転中に真空を適用することもできる。
特に粘性、高粘性または凝固性溶液中で、真空下での乾燥中に、沸とう遅延が発生する。すなわち、油または固体に包囲された溶媒の残留物が、自然に放出されて、コーティングまたは充填物を引裂または破裂させる。回転と同時に真空下で乾燥させた場合、これらの沸とう遅延は回避され、襞の内部表面に乾燥したかつ/または油性、粘性、ジェル様またはペースト状の均等なコーティングが得られる。
【0241】
その上、回転方向が極めて重要である。回転方向は、襞の内側から見た場合の襞のオリフィスの方向である。こうしてカテーテルバルーンは、回転力を用いて活性作用物質を含む組成物を襞の内側に押し込むためにバケットホイール堀削機のバケットホイールのように回転させられる。
【0242】
好ましくは、折畳みバルーンは毎分50〜500回転、好ましくは150〜300回転の回転速度で回転させられる。
襞内に移入されるべき活性作用物質に応じて、またはカテーテルバルーンの襞の下に移入されるべき活性作用物質を含む組成物のコンシステンシーに応じて、本発明に係る適切なコーティング方法を選択することができる。
【0243】
固体ではなく油性、ジェル様、ペースト状または高粘度の襞のコーティングまたは充填を可能にするためには、任意には回転乾燥方法と共に、襞の特定的コーティングまたは充填を可能にする本発明に係る全てのコーティング方法が適切である。
【0244】
折畳み噴霧法は、好ましくは、希薄乃至は中度の粘度をもつ活性作用物質を含む組成物に適しており、一方、ピペット法は好ましくは軽度、中度のおよびわずかに硬質な粘度を有する組成物に適しており、噴出法は、中粘度、粘性乃至は高粘度の組成物にきわめて適している。
【0245】
粘度という用語は、動的粘度[η]を意味する:
【0246】
【数1】

【0247】
噴出法は、濃厚な粘度の組成物のために好んで使用され得る。好ましいのは、室温で油(オリーブオイル:102mPa・s)、ハチミツ(103mPa・s)、グリセロール(1480mPa・s)またはシロップ(105mPa・s)の範囲内の粘度である。この方法は、当然、η≦102mPa・sの希薄な粘度の溶液でも有効である。
【0248】
ピペット法は、好ましくは中粘度の溶液中で使用可能である。好ましいのは、室温で0.5mPa・s〜5000mPa・sの範囲内、より好ましくは0.7mPa・s〜1000mPa・sの範囲内、さらに一層好ましくは0.9mPa・s〜200mPa・sの範囲内、そして特に好ましいのは1.0mPa・s〜100mPa・sの範囲内の粘度である。この粘度範囲内には、一般的な溶媒特にアルコールで希釈される油、造影剤および/または塩がある。ピペット法は、非常に幅広い粘度範囲を超えて適用可能である。
【0249】
折畳み噴霧法は、好ましくは、希薄な粘度の組成物中で使用される。好ましいのは、室温で0.1mPa・s〜400mPa・sの範囲内、より好ましくは0.2mPa・s〜100mPa・sの範囲内、特に好ましくは0.3mPa・s〜50mPa・sの範囲内の粘度である(水:1.0mPa.s;ケロシン:0.65mPa・s;ペンタン:0.22mPa・s;へキサン:0.32mPa・s;ヘプタン:0.41mPa・s;オクタン:0.54mPa・s;ノナン:0.71mPa・s;クロロホルム:0.56mPa・s;エタノール:1.2mPa・s;プロパノール:2.3mPa・s;イソプロパノール:2.43mPa・s;イソブタノール:3.95mPa・s;イソトリデカノール:42VmPa・s)。
【0250】
コーティングされたカテーテルバルーン
本明細書に開示されている方法によると、ステント無しのカテーテルバルーンそして部分的にはステントを伴うカテーテルバルーンもコーティングすることができ、そのため、本発明は、本明細書中に記載されている方法によって得ることのできるコーティングされたカテーテルバルーンに関するものである。
【0251】
特に好ましい実施形態は、圧着型ステントを伴うカテーテルバルーンを使用する。このステントは、コーティングされていない(裸の)ステントかまたは好ましくは唯一の血液適合層がコーティングされたステントであり得る。血液適合性層として特に好ましいのは、本明細書中に開示されているヘパリンおよびキトサン誘導体そして最初に脱硫酸化され再度アセチル化または再度プロプリオニル化されたヘパリンである。
【0252】
その上、輸送メディエータを含む層の下および/または上に、さらに純粋な活性作用物質またはポリマーまたは活性作用物質を含むポリマーの1つ以上の層を適用するという選択肢もある。
【0253】
圧縮された場合に襞を形成する折畳みバルーンを使用した時は、これらの襞に活性作用物質と輸送メディエータを充填することができる。したがって、特にピペット法が適している。
【0254】
使用された可能性のある溶媒は、減圧下で除去することができ、こうして襞の内側の混合物を乾燥させることができる。一般にステント無しで使用されるバルーンを拡張させた時点で、襞は外側に方向転換するかまたは膨らみ、こうしてその中味を血管壁に放出する。
【0255】
本発明に係る方法は、カテーテルバルーンのコーティングのみならず、ガイドワイヤー、らせん構造物、カテーテル、カニューレ、チューブそして一般に管状のインプラントまたはステントに匹敵する構造的要素がコーティングまたは充填されるべき医療製品内に収納されている場合には前述の医療製品の部品のコーティングにも適している。脈管支持体そして特にステント、例えば冠状動脈、血管、気管、気管支、尿道、食道、胆のう、腎臓、小腸、結腸ステントなどをコーティングすることができる。
【0256】
コーティングされた医療装置は特に、例えば尿管、食道、気管、胆管、腎尿管、および、脳、十二指腸、幽門、小腸および大腸を含めた全身の血管などの全ての管様構造を開放状態に保つためだけでなく、腸や気管に使用されているような人工的出口を開放状態に保つために、使用される。
【0257】
こうして、コーティングされた医療装置は、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症そして他の全ての形態の閉塞した脈管または通路や出口の狭窄の予防、削減または治療に適している。
【0258】
ステント無しの本発明に係るバルーンカテーテルは、特にステント内再狭窄の治療、すなわち好ましくは生体再吸収性でない、すでに移植されたステントの内部の再発性血管狭窄の治療のために適している。このようなステント内再狭窄においては、一般に血管が第2のステントによって不充分な形でしか拡幅され得ないことから、すでに存在するステントの内部に別のステントを設置することは特に問題が多い。本明細書においてバルーンの拡張を用いた活性作用物質の適用は、この治療が必要であれば数回反復できるものであり、治療の観点から見て別のステント移植に比べて同等のまたは著しく優れた結果が得られるかもしれないことから、理想的な治療方法を提供する。
【0259】
その上、圧着型ステント無しの本発明のカテーテルバルーンは、細い脈管、好ましくは細い血管の治療に特に適している。細い脈管とは、2.5mm未満、好ましくは2.2mm未満の脈管直径を有する脈管を意味する。
【0260】
要約すると、以下のことが、選択された添加剤および賦形剤の使用にあてはまる:
上述の添加剤および賦形剤ならびにその混合物および組合せは、好ましくは、1つ以上の活性作用物質の局所的適用を成功させるために以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:
1) 短期インプラントの曝露時間は、細胞内への適切な治療的量の活性作用物質の移送のために充分なものである、
2) 曝露中、所望の治療効果を保証するために充分な量の活性作用物質を含むコーティング材料が血管壁に付着し、そして特に好ましくは、
3) 短期インプラント上に存在している活性作用物質を含むコーティングがインプラントの表面よりも血管壁に対しより高い親和性を有し、そのため標的上への活性作用物質の最適な移送が発生し得る。これは、主としてペースト状、ジェル様または油性のコーティングのためにきわめて有効である。
【0261】
当然のことながら、全ての場合において、コーティングされたまたは未コーティングのステントは、個別の要件に応じて、バルーンカテーテルと一つのシステムを形成することができる。同様にして、必要とされる場合には、造影剤などの他の賦形剤を添加することができる。
【0262】
例えば、噴霧法によりパクリタキセルがコーティングされたバルーンカテーテルの特に好ましい実施形態の曝露時間は、細胞壁上および細胞壁内に噴霧法を用いて無定形に沈降させられている治療的量のパクリタキセルを少なくとも1つの輸送メディエータと共に適用するために、すでに充分なものである。ここで、半合成オリゴ糖で血液適合性にされ、同様にパクリタキセルがコーティングされたステントは、より長い時間帯で計画されたさらなる活性作用物質量の溶出のための貯蔵体として役立つ。
【0263】
特殊な噴霧法から得られたカテーテルバルーンおよびステント上のパクリタキセルの無定形コンシステンシーのため、カテーテルの導入中にパクリタキセルが表面から流出または洗い流されることはなく、こうして所望の量の活性作用物質がその標的部位に到達し、ここで血管壁に対して拡張により放出されることになる。ステントとカテーテルバルーンの同時コーティングのため、脈管はさらに完全に活性作用物質で被覆される。さらに、ステント端部を延長する区分内でもカテーテルバルーンがパクリタキセルでコーティングされ、こうして脈管へのパクリタキセル(またはパクリタキセルに代わる他のあらゆる活性作用物質)の供給が、ステント端部の区分内そして近位および遠位方向に1〜3mm超えたところでも行われるようになっていることが好ましい。同様に、ここでは、パクリタキセルが無定形構造であることは、それによってのみ活性作用物質を伴う層の表面が拡大され、最適な量の活性作用物質が細胞壁に付着し、それぞれ細胞壁または細胞内に進入できることから、きわめて重要である。
【0264】
細胞壁に直接作用する血管拡張剤または膜を容易に透過する担体(例えばDMSO、PETN、レシチン)の添加によって、さらに、好ましくは30〜300秒の累積曝露時間の間の細胞内への取込みを有意に増強させることができる。
【0265】
物質溶出用バルーンカテーテルの別の特に好ましい実施形態においては、疎水性長鎖脂肪酸、例えばグリセロールモノオレエートと共に、適切な溶媒中に活性作用物質を溶解させ、カテーテルバルーンの表面に適用する。コーティングのためには、以下で記述されている全てのコーティング方法が適している。グリセロールエステルの添加により、カテーテルの表面から血管壁上にコーティング材料を移送することが可能となり、ここで移送された物質溶出用マトリックスの量は、充分な濃度で活性作用物質を提供するため、ならびにコーティングが瞬時に血流中に洗い流されるのを防ぐために充分なものである。
【0266】
さらなる特に好ましい実施形態は、多糖類カラギーナン、膜透過性物質としての細胞膜の主要成分の1つであるホスファチジルコリン、および非常に優れた接着特性のため脈管の拡張から最高12時間後の活性作用物質の遅延放出を可能にするグリセロールの、細胞壁に対する高い親和力を有する混合物の使用にある。全てのコーティング方法がこの実施形態に適しており、特に好ましいのは、本明細書中で記述されているピペット法、糸ドラグ法およびボールペン法である。
【図面の簡単な説明】
【0267】
【図1】コーティングすべき表面上に回転ボールを介して放出されるコーティング溶液がコーティング装置の内側に配置されている、ボールペン方法にしたがったコーティング装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0268】
〔実施例1〕
コニフェリルアルコールおよびパクリタキセルの例についての活性作用物質と輸送メディエータの溶液の調製
コンシステンシーに応じて、所望の有効性を得るために、活性作用物質のより高い濃度も必要とされるかまたは所望される。
A. コニフェリルアルコールとパクリタキセル
a) 活性作用物質対輸送メディエータの比:9/1
2mgのコニフェリルアルコールを0.5μlのアセトン中に溶解させる。18mgのパクリタキセルも0.5μlのアセトン中に溶解させる。両方の溶液は互いに混合されて、コーティング溶液として使用できる状態になる。
b) 活性作用物質対輸送メディエータの比:7/3
6mgのコニフェリルアルコールを0.5μlのアセトン中に溶解させる。14mgのパクリタキセルも0.5μlのアセトン中に溶解させる。両方の溶液は互いに混合されてコーティング溶液として使用できる状態になる。
a) 活性作用物質対輸送メディエータの比:5/5
10mgのコニフェリルアルコールを0.5μlのアセトン中に溶解させる。10mgのパクリタキセルも0.5μlのアセトン中に溶解させる。両方の溶液は互いに混合されてコーティング溶液として使用できる状態になる。
B. パルミチン酸アスコルビルとシクロスポリンA
1Aと類似の形で手順を行う。
C. バニリンとラパマイシン
1Aと類似の形で手順を行う。溶媒としてエタノールを使用する。
D. クルクミン(活性作用物質リスト)とパクリタキセル
クルクミンとパクリタキセルをクロロホルム中に溶解させる。手順は、1Aと同様に実施された。
E. ファルネソールとエポチロン
ファルネソールとエポチロンを実施例1Aに記載の通りにエタノール中に溶解させる。
F. フェルラ酸とパクリタキセル
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
G. オクチルフェノールエトキシレートとトラピジル(Trapidil)
1Aの場合と同様に手順を行うが、溶媒としてメタノールを使用する。
H. ボルネオールまたは樟脳とラパマイシン
1Aの場合と同様に手順を行う。溶媒としてクロロホルムを使用する。
I. ビサボレンとパクリタキセル
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
J. オシメン、ミルセンまたはフェランドレン(異性体)とシクロスポリンA
1Aの場合と同様に手順を行う。溶媒としてクロロホルムを使用する。
K. リナロールとエベロリムス
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
L. β−サンタレン(β−Santalen)とカメバカウリン(Kamebakaurin)
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
M. スクアレンとドキセタキセル
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。溶媒としてクロロホルムを使用する。
N. ゼアキサンチンまたは/およびその異性体ルテインとピモクロリムス(Pimecrolimus)
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
O. ホスフェストロール(合成エストロゲン)
ホスフェストロールは、抗腫瘍性の活性作用物質であると同時に輸送メディエータでもある。したがって、ホスフェストロールは、さらなる添加剤なしでも使用可能である。そのため、例えば4%溶液のためには、20mgのホスフェストロールを1mlのエタノール中に溶解させる。
P. ホスフェストロールとラパマイシン
輸送メディエータとしてのホスフェストロールの主要な機能によって、活性作用物質の効果の組合せを得ることができる。実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
Q. リコピンとタクロリムス
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。溶媒としてメタノールを使用する。
R. チボロンとパクリタキセル
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
S. アスコルビン酸エーテルとラパマイシン
0.5mgのアスコルビン酸エーテルを0.5μlのクロロホルム中に溶解させ、次に0.5μlのクロロホルム中の19.5mgのラパマイシンの溶液と組合せる。
T. フマル酸エーテルとゾタロリムス(Zotarolimus)
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
U. 1,8−シオネールとパクリタキセル
実施例1Aの場合と同様に手順を行う。
V. 塩化ベンゼトニウムとファスジル
10mgの塩化ベンゼトニウムを0.5μlのエタノール/水(50/50 v:v)中に溶解させる。20mgのファスジルを0.5μlの二重蒸留水(bidest. Wasser)中で溶解させる。両方の溶液を組合せる。
【0269】
〔実施例2〕
実施例1Aaおよびc)による9:1(重量%)および5:5という比でのコニフェリルアルコールとラパマイシンを用いた2段階のバルーンコーティング
実施例1Acの希薄な粘度の混合物を最初に、浸漬方法を介して圧縮状態でカテーテルバルーンに塗布する。したがって、バルーンを浸漬用溶液内に垂直に浸漬し、再び溶液から垂直にゆっくりと(1mm/s)ひき出して、気泡のない均等な膜がカテーテルの表面上に形成可能となるようにする。
【0270】
長くても30分の短い乾燥時間の後、バルーンカテーテルの完全なコーティングおよび最適な装填を保証するためピペット操作方法により、特定的に実施例1Aaのコーティング溶液を再び襞に充填する。このため、コーティングされたバルーンカテーテルを、バルーンカテーテルが湾曲し得ないような形で25°の傾斜角をもたせて回転モーター上に配置する。襞の上端部から襞内へと導入でき、かつ規定量のコーティング溶液を襞内に提供できるような形で、鈍カニューレで終結する投与用シリンジを位置づけする。
【0271】
襞に充填した後、最高30秒の待機時間の後、バルーンカテーテルをその長手方向軸を中心にして回転させ、次の襞に充填ができるようにする。
傾斜角の助けを借り、毛管作用と重力を用いて、所望の投与量に応じて完全にまたは部分的に襞を充填することができる。
【0272】
〔実施例3a〕
屈曲またはたるみ無く水平に係留されるような形で、バルーンカテーテルを回転モーターに設置することにより、襞の完全かつ均等なコーティングが可能である。コーティングすべき襞は、頂上に存在しており、したがって横向きにスリップし得ない。
【0273】
ここで、コーティングカニューレは、襞の近位端部から遠位端部へとあるいは逆に移動する場合に襞を把持するような形で位置づけされており、そのため、襞に沿ったカニューレの同時移動の時点でコーティング溶液が充填される襞の材料のこの部分のみが上方に移動することになる。
【0274】
こうして、襞の最初から終りまでコーティング溶液の均等な分布が得られる。
カニューレが水平方向に襞に沿って移動する速度および襞内への侵入深度は、充填ステップの後に襞が均等に閉じるようにセットされる。
【0275】
このようにコーティングされているバルーンカテーテルの乾燥は、室温での回転乾燥により実施される。
液滴−ドラグ法により、硝酸セルロースの生体安定性コーティングを用いてカテーテルバルーンをコーティングする。
【0276】
この目的で、カテーテルを、湾曲またはたるみの可能性無く水平位置に係留させるような形で、回転モーターのアダプタ内に固定する。放出用装置はバルーン全体にわたり係留され、こうしてコーティング溶液が退出するときに通過するピペットの距離は、退出する液滴がピペット先端部から離脱せずにバルーンの表面と接触する程度の長さを正確に有することになる。コーティング溶液が退出する速度は、カテーテルバルーンの長手方向動作の間に液滴が離れ得ないような形で調整される。頂上にあるバルーンの表面がこのようにして完全にコーティングされた時点で、バルーンは、隣接する区画が同じ長手方向にコーティングされ得る程度まで回転させられる。この手順は、バルーンカテーテルが1サイクルを完了するまで何度も反復される。
【0277】
〔実施例3b〕
この層の上にさらに、実施例1A−Vに係るコーティング溶液または同様にこのようなコーティング溶液の混合物もバルーン上に塗布することができる。
【0278】
〔実施例3c〕
この層の上に、パクリタキセルからなる活性作用物質の純粋な層を塗布する。
必要な場合には、パクリタキセルからなる活性作用物質の層にポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリオルトエステル、ポリサッカリド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ポリオレフィン、塩化ビニルポリマー、フッ素含有ポリマー、テフロン(登録商標)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリシリコーンならびにコポリマーおよびこれらポリマーの混合物の障壁層をコーティングしてよい。
【0279】
〔実施例4〕
糸ドラグ法を介して、バルーンカテーテルをミリスチルアルコートとパクリタキセル(または別の活性作用物質または活性作用物質の組合せ)のアルコール溶液で完全にコーティングする。
【0280】
したがって、活性作用物質の30%(重量%)溶液が派生するような量でパクリタキセルが溶解させられているミリスチルアルコールの2%溶液を調製する。この溶液でバルーンを完全にコーティングし、次に少なくとも3時間室温で長手方向軸を中心にしてゆっくりと回転させながら、乾燥させる。この手順を少なくとも一回反復する。
【0281】
完全に乾燥した後、この要領で活性作用物質をコーティングしたバルーンカテーテルに、同じ方法でまたはロール法などの別の適切な方法によって、1%のPVA溶液、例えばトップコートでコーティングすることができる。
【0282】
〔実施例5a〕
公称圧力まで展開させられた折畳みバルーンを5〜10秒間、パクリタキセルとクロロホルムの1%の浸漬用溶液中に浸漬させ、その後、クロロホルムの大部分が蒸発してしまう程度まで、長手方向軸を中心として回転させながら乾燥させる。完全に乾燥する前に、バルーンを空気流の中で再び収縮させる。任意には、パクリタキセル溶液に輸送メディエータを添加することができる。
【0283】
〔実施例5b〕
充填すべき襞がつねに上面にあるように、折畳みバルーンを回転可能な軸の上に水平位置で係留する。こうして、ニードルシリンジの延長部分としてのテフロン(登録商標)カニューレを用いて、襞の始めから終りまでハチミツまたはシロップ様の粘度(102〜105mPa・sの粘度)を示す活性作用物質を含む溶液(例えば実施例17由来のもの)を、各襞に着実に充填する。
【0284】
したがって、襞によって形成された空洞の中心までテフロン(登録商標)カニューレを導き、水平方向に係留したカテーテルがその長手方向に移動する間、襞空洞の中に規定量の高粘性溶液を放出させる(噴出法)。充填される材料の量は、充填後に襞がバルーン本体から持ち上がらないような形で制限され、異なるバルーン寸法および製品に応じて変動する。
【0285】
〔実施例5c〕
活性作用物質が装填され実施例5aで再度収縮されたバルーン、例えば活性作用物質が部分的に装填された実施例5b由来の折畳みバルーンに、第2のステップにおいて、噴霧法を通して障壁としてのポリマー外部層をコーティングすることができる。したがって、ポリマー噴霧溶液の濃度は、乾燥後に得られるポリマー層が規則的な折畳み解除を妨げない程度に低く保たれなければならない。例えばここでは、0.5%のPVP溶液がすでに適切である。任意には、22ページにあるリストにしたがった輸送メディエータをポリマー溶液に加える。
【0286】
〔実施例6〕
カテーテルバルーンに、輸送メディエータとパクリタキセルの活性作用物質の層をコーティングする。このときカテーテルバルーンには、自己展開式ニチノールステント内で使用されているように、活性作用物質の尚早な脱離を防ぐための保護カバーを具備する。この保護カバーは、拡張の直前に生体内で除去することができる。
【0287】
〔実施例7a〕
メタノール/エタノール混合物中で脱硫酸化ヘパリンの溶液を調製し、3〜5のpH値が結果としてもたらされるように酢酸で酸性化する。この溶液にパクリタキセルを添加する。この溶液をカテーテルバルーンにコーティングし、その後、グルダルアルデヒドとバルーン上の乾燥済みコーティングのわずかな架橋を実施する。
【0288】
〔実施例7b〕
第2のコーティングステップにおいて、実施例1に係る活性作用物質を伴うまたは伴わない輸送メディエータ溶液を塗布する。
【0289】
〔実施例8〕
約10体積%の水を含むDMSO中にパクリタキセルを溶解させる。この溶液に、シュウ酸カリウム、塩化ナトリウム、グルタミニン酸(Glutaminsaure)およびシュウ酸を添加し、糸ドラグ法を用いてこの溶液を数回カテーテルバルーンにコーティングし、各コーティングシーケンスが終了する毎に乾燥させる。その後、コーティングしたカテーテルバルーンに、ラクタムの生分解性層を設ける。22ページにしたがった輸送メディエータを両方の層内またはいずれか一方の層内に加えることができる。
【0290】
〔実施例9〕
パクリタキセルを硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化リチウムおよび酢酸ナトリウムと混合し、アルコール溶媒を添加することによってペーストになるまで輸送メディエータと混ぜ合わせ、次にこれをシリンジに充填し、折畳みバルーンの襞の下に噴出させる。コーティング中、噴出用ノズルの先端部は襞をたどり、襞の長手方向に沿って襞内にペーストの層を塗布する。
【0291】
〔実施例10〕
溶液が毛管力を通して自動的に襞内にドラグされる程度に希薄な粘度を有するパクリタキセルの低粘度のエタノール溶液を調製する。襞の一方の端部にセットされた毛管を用いて、襞の内部空間が毛管力によって完全に満たされるまで、アルコールパクリタキセル溶液を襞内に流れ込ませる。襞の中味を乾燥させ、バルーンを回転させ、次の襞に充填する。各々の襞に1回だけ充填する。この目的で、エタノール1mlあたり100μgの塩化ベンゼトニウムを輸送メディエータとして使用する。
【0292】
〔実施例11〕
70%の亜麻仁油と30%のオリーブ油の混合物を調製する。この混合物を1:1の比でクロロホルム中に溶解させ、パクリタキセル(25重量%)とオシメン(2体積%)を加えた後、均等に回転するカテーテルバルーン上にロール法を用いて塗布する。穏やかな空気流の中でクロロホルムを蒸発させた後、バルーンカテーテルを70℃で乾燥用クローゼット内に保管し、すでに接着性であるものの柔軟できわめて粘性の高い、ひいてはバルーンの展開を妨げない表面が得られるようにする。
【0293】
〔実施例12〕
コバルト/クロムステントをポリアミドのカテーテルバルーン上に圧着させる。
その後、DMSO中のパクリタキセルと輸送メディエータの溶液をシリンジを用いてステント上に塗布する。溶液はきわめて希薄な粘度を有することから、ステントのぴったりした支柱の間を流れ、バルーンの表面とステントの内部表面との間ならびにステントの単一支柱間のすき間を満たす。溶媒は蒸発し、純粋な活性作用物質はステントの下のカテーテルバルーン上、ステントのすき間内そしてステントおよびバルーン表面上に固体として堆積する。カテーテルバルーンには、ステントの両端部でステント端部を超えて約2〜3mmにわたり活性作用物質がコーティングされる。
【0294】
〔実施例13〕
エタノール中のラパマイシン溶液を調製し、この溶液を、ステント無しのカテーテルバルーン上に数回噴霧し、その間溶媒を蒸発させることでカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0295】
噴霧コーティングを3回反復した後(なおここで、この噴霧コーティングの最後のステップにおいて、コーティング溶液中には輸送メディエータリナロールが存在する)、最終的にカテーテルバルーンを乾燥させ、コーティングされていない金属ステントをバルーン上に圧着させる。
【0296】
〔実施例14〕
バルーン表面1mm2あたり3μgの量のパクリタキセルを、市販のカテーテルバルーンにコーティングする。このコーティングは、アセトン中のパクリタキセルと22ページに従って選択された輸送メディエータの溶液を使用することにより、ピペット法で行う。次に未コーティングのコバルト/クロム金属ステントをコーティングされたカテーテルバルーン上に圧着させる。
【0297】
〔実施例15〕
液滴−ドラグ法を用いてDMSO中のパパインとパクリタキセルの溶液を、圧着させた未コーティングの金属ステントを伴うカテーテルバルーンにコーティングする。バルーン表面とステントの内部表面との間ならびにステントの単一支柱間のすき間が明らかに活性作用物質で充填されるまで、コーティング手順を3〜4回反復する。
【0298】
所望される場合、活性作用物質パクリタキセルを伴う層の上に、例えばポリラクチドなどの保護層を追加で塗布することができる。
〔実施例16〕
市販のカテーテルバルーンに、5体積%の酢酸を伴う酢酸エチル中のマルチトールとパクリタキセルの分散系をコーティングして、バルーン表面1mm2あたり2〜3μgのパクリタキセルと0.1μg〜0.2μgマルチトールという量が結果として得られるようにする。コーティングされたバルーン表面上にポリヒドロキシブチレートの生体再吸収性のステントを圧着させる。
【0299】
〔実施例17〕
襞1mm2につき1〜2μgの量のパクリタキセルを有するパクリタキセルでのコーティングを、毛管法を介してその襞内に施したカテーテルバルーンの上に、好ましくは細胞増殖を抑制する投薬量で活性作用物質パクリタキセルを含むポリエーテルスルホンのポリマー担体系のコーティングを施したチタンステントを圧着させる。このチタンステントには、ピペット法を介して塩化メチレン中のポリエーテルスルホンとパクリタキセルの溶液が予めコーティングされていた。チタンステント上には、ステント表面1mm2あたり約0.5μgのパクリタキセルが存在している。
【0300】
〔実施例18〕
ラパマイシン/輸送メディエータでコーティングされたカテーテルバルーンを提供する。今度は、ステント表面1mm2あたり約1.0μgの量でパクリタキセルを含むポリラクチドのコーティングを用いてコーティングされたポリラクチドの生体再吸収性ステントをこのカテーテルバルーンに圧着させる。
【0301】
〔実施例19〕
拡張していない折畳みバルーンを、記述したピペット法を用いて、担体としての賦形剤と活性作用物質で完全にコーティングする。
【0302】
したがって、4.5mlのアセトン中に150mgのシロリムスを溶解させ、450μlのエタノール中の100μlのミリスチン酸イソプロピルの溶液と混合する。溶液を塗布した後、折畳みバルーンを一晩乾燥させる。
【0303】
〔実施例20〕
実施例19にしたがってコーティングされた折畳みバルーンをPBSが充填されたシリコンチューブ内に導入し、その中で60秒間公称圧まで展開させる。
【0304】
その後、HPLC測定を用いたアセトニトリルでの抽出の後、バルーンカテーテル上に残留するシロリムス含有量、PBS緩衝液中に溶解した分量およびチューブの内部表面に付着している活性作用物質の含有量を決定する。
【0305】
【表1】

【0306】
〔実施例21〕
糸ドラグ法を用いたカテーテルのコーティング
コーティング溶液を調製するために、3.5mlのアセトン中に100mgのシロリムスを溶解させ、500μlのエタノール中の2mgのアセスルファムKの溶液と混合する。
【0307】
カテーテルの回転を開始する場合、わずかな負圧をバルーンに加え、襞がバルーンの回転運動中にバルーンの長手方向軸のまわりで反転しないようにする。その後、湿潤化用溶液でバルーンを予め湿らせる。直後に、コーティング手順を実施する。用量針とその上に溶接されたドラグワイヤーを介して、固体コーティングが形成される程度に溶媒が蒸発するまで、コーティング溶液の液滴をバルーン全体にわたりドラグする。調整されたオーバーコーティングの終了後、カテーテルは数秒間回転し続ける。その後、装置からカテーテルを取外し、室温で乾燥させる。
【0308】
〔実施例22〕
ステントの共有結合型血液適合性コーティング:
エタノール/水の混合物(50/50(v/v))中の3−アミノプロピルトリエトキシシランの2%溶液中に5分間、医療用高品質鋼LVM316の洗浄済み未展開ステントを浸漬し、その後乾燥させる。次にステントを脱塩水で一晩洗浄する。
【0309】
pH4.75の0.1MのMES緩衝液(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)30ml中に3mgの脱硫酸化され再度アセチル化されたヘパリンを溶解させ、次に30mgのN−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド−メチル−p−トルエンスルホネートを添加する。この溶液中において4℃で一晩ステントを撹拌する。その後、水および4MのNaCl溶液を用いて完全に洗い流す。
【0310】
〔実施例23〕
浄化または共有結合コーティングしたステントをバルーンカテーテル上に圧着させ、糸ドラグ法を用いて実施例1A−Vにしたがって活性作用物質を含む噴霧溶液で共にコーティングする。
【0311】
〔実施例24〕
ロール法を用いた、活性作用物質が装填されたマトリックスによる血液適合的装備のステントのコーティング
コーティング溶液:145.2mgのポリラクチドと48.4mgのタキソールのポリラクチドRG5032/タキソール溶液に、クロロホルムを22gまで充填する。
【0312】
〔実施例25〕
ベースコーティングとしての活性作用物質とトップコーティングとしての活性作用物質とが装填されたマトリックスによる、全システムステント+バルーンのコーティング
ベースコーティング:19.8mgの亜麻仁油と6.6mgのタキソールにクロロホルムを3gまで充填する。
【0313】
トップコーティング:8.8mgのタキソールにクロロホルムを2gまで充填する。
上に圧着型ステントを伴うバルーンカテーテルに、液滴−ドラグ法を用いてベースコートをコーティングする。システムの表面上での溶媒の蒸発によりこのベースコートが高粘性膜となった時点で直ちに、純粋な活性作用物質を伴う第2の層を上に噴霧することができる。
【0314】
〔実施例26〕
活性作用物質を含む細胞膜アフィンマトリックスでのバルーンカテーテルのコーティング
アダプタを用いて回転モーターの駆動シャフト上にバルーンカテーテルを取付け、それが屈曲無く水平位置に存在することになるような形で固定する。バルーン上にわずかな負圧を加えた後、設定されたバルーントレーシング回数にしたがって溶液をバルーンにコーティングする。
【0315】
コーティング溶液
輸送メディエータカラギーナン、ホスファチジルコリンおよびグリセロール(1:2:2)をエタノール/水(1:1;v:v)中に溶解させる。この溶液10ml中に、その後200μgのBiolimus A9を溶解させる。
【0316】
糸ドラグ法:
用量針とその上に溶接されたドラグワイヤーを介して、固体コーティングが形成される程度に溶媒が蒸発するまで、コーティング溶液の液滴をバルーン全体にわたりドラグする。その後、装置からカテーテルを取外し、さらに回転した後、室温で一晩乾燥させる。
【0317】
〔実施例27〕
エタノール中のラパマイシン溶液を調製し、この溶液を、ステント無しのカテーテルバルーン上に2回噴霧し、その間に溶媒の蒸発によりカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0318】
噴霧コーティングを2回反復した後、実施例1の溶液Pを第3のステップにおいて、噴霧用溶液としての輸送メディエータホスフェノールと共に使用し、カテーテルバルーンを最後に乾燥させ、金属製の未コーティングステントをバルーン上に圧着させる。噴霧用溶液中、ラパマイシン対ホスフェロールの比は10:1である。
【0319】
〔実施例28〕
溶液が毛管力により折畳みバルーンの襞内にドラグされるような形で希薄な粘度を有するバニリン中のパクリタキセルの希薄な粘度のエタノール溶液を、2:1の比で調製する。襞の一端部にセットされた毛管を使用して、空洞の内部空間が毛管力によって完全に満たされるまで、アルコールパクリタキセル溶液を襞内に流し込む。襞の中味を乾燥させ、バルーンを回転させ、次の襞を充填する。各々の襞は一度だけ充填される。
【0320】
〔実施例29〕
公称圧力まで展開された折畳みバルーンを、5〜10秒間、マルトール(0.5重量%)を伴う1%のパクリタキセル/クロロホルム浸漬用溶液内に浸漬し、次にクロロホルムの大部分が蒸発してしまう程度まで長手方向軸を中心として回転させながら乾燥させる。乾燥が完了する前に、バルーンを再び空気流の中で収縮させる。任意には、パクリタキセル溶液に対し、さらなる輸送メディエータを添加することができる。
【0321】
〔実施例30〕
充填すべき襞がつねに上側に来るように、回転可能な軸上で水平位置に折畳みバルーンを係留する。こうしてニードルシリンジの延長部分として襞の始めから終りまでゆっくりと導かれるテフロン(登録商標)カニューレを用いて、ジエチレングリコールラウリルエーテルを伴うTHF中のラパマイシンのハチミツ様乃至はシロップ様の粘性(102〜105mPa・sの粘度)の溶液を、段階的に各襞に充填する。
【0322】
この目的で、襞によって形成された空洞の中心までテフロン(登録商標)カニューレを導き、水平方向に係留したカテーテルがその長手方向に移動する間、襞空洞の中に規定量の高粘度溶液を放出させる(噴出法)。充填される材料の量は、充填後襞がバルーン本体から持ち上がらないような形で制限され、異なるバルーン寸法および製品に応じて変動する。
【0323】
〔実施例31〕
バルーン表面1mm2あたり3μgの量のパクリタキセルを、市販のカテーテルバルーンにコーティングする。このコーティングは、アセトン中のパクリタキセルとフェルラ酸の溶液(実施例1の溶液F)を使用することにより、ピペット法を介して実施する。次に未コーティングのコバルト/クロム製金属ステントをコーティングされたカテーテルバルーン上に圧着させる。
【0324】
〔実施例32〕
約10体積%の水を含むDMSO中にパクリタキセルを溶解させる。この溶液に、シュウ酸カリウム、塩化ナトリウム、グルタミニン酸(Glutaminsaure)およびシュウ酸そして輸送メディエータオクチルフェノールエトキシレートを添加し、糸ドラグ法を用いてこの溶液を数回カテーテルバルーンにコーティングし、各コーティングシーケンスが終了する毎に乾燥させる。その後、コーティングしたカテーテルバルーンに、ラクタムの生分解性層を設ける。
【0325】
〔実施例33〕
拡張していない折畳みバルーンを、記述したピペット法を用いて、活性作用物質と輸送メディエータで完全にコーティングする。
【0326】
この目的で、5mlのメタノール中に160mgのパクリタキセルを溶解させ、400μlのエタノール中の200μgの1,2,3−ブタントリオールの溶液と混合する。溶液を塗布した後、70℃の乾燥用キャビネット内で折畳みバルーンを一晩乾燥させる。
【0327】
〔実施例34〕
アダプタを用いて回転モーターの駆動シャフト上にバルーンカテーテルを取付け、それが屈曲無く水平位置に存在することになるような形で係留する。バルーン上にわずかな負圧を加えた後、設定された4回のバルーントレーシング回数で溶液をバルーンにコーティングする。用量針と上に溶接されているドラグワイヤーを用いて、固体コーティングが形成される程度に溶媒が蒸発されるまで、回転バルーン全体にわたりコーティング溶液の液滴をドラグする。その後機械からカテーテルを取り外し、室温でさらに回転させながら一晩乾燥させる。
【0328】
使用済みコーティング溶液:
エタノール/水(3:1;v:v)の中に、輸送メディエータステアリルアルコールと1,2,4−ブタントリオール(1:1、w/w)を溶解させる。その後、この溶液10ml中に400μgのパクリタキセルを溶解させる。
【0329】
〔実施例35〕
ポリアミドの展開可能なバルーンを伴う市販のバルーンカテーテルを提供する。
1mlのアセトンあたり50mgのパクリタキセルおよび100μgのフッ化ベンゼトニウムの濃度で、フッ化ベンゼトニウムと共にパクリタキセルをアセトン中に溶解させる。このコーティング溶液を、本発明のボールペン法によってカテーテルバルーン上に塗布する。このようにして形成したコーティングを一晩室温で乾燥させ、酸化エチレンで滅菌する。
【0330】
〔実施例36〕
パクリタキセルを硫酸マグネシウムおよび酢酸ナトリウムと混合し、ペーストにメタノールとラノリンを添加して加工し、次にこれをシリンジに充填し、折畳みバルーンの襞の下に噴出させる。コーティング時に、噴出用ノズルの出口は襞に沿って進行しており、ペースト層を襞の長手方向に沿って襞の中に置く。この結果、バルーン表面1mm2あたり3μgの量のパクリタキセルを伴うコーティングが得られる。
【0331】
〔実施例37〕
市販のバルーンカテーテルに、バルーン表面1mm2あたり2.5μgの量のピクロリムスをコーティングする。このコーティングは、アセトン中のピクロリムスとテトラデシルトリメチルアンモニウムクロリドの溶液を用いて本発明のピペット法により実施する。
【0332】
〔実施例38〕
公称圧力まで展開された折畳みバルーンを、10〜15秒間、ラウロカプラム(0.2%)を伴う2%のパクリタキセル/メタノール浸漬用溶液内に浸漬し、その後メタノールの大部分が蒸発してしまう程度まで長手方向軸を中心として回転させた上で乾燥させる。乾燥が完了する前に、バルーンを再び空気流の中で収縮させる。
【0333】
〔実施例39〕
拡張していない折畳みバルーンを、記述したピペット法を介して、活性作用物質と輸送メディエータで完全にコーティングする。
【0334】
この目的で、1mlのメタノール中に160mgのパクリタキセルと10mgのフェニルボロン酸を溶解させる。溶液を塗布した後、折畳みバルーンを室温で一晩乾燥させる。その後、コーティングされたカテーテルバルーンにラクタムの生分解性層を設ける。
【0335】
〔実施例40〕
充填すべき襞がつねに上側に来るように、回転可能な軸上で水平位置に、3つの襞を有する折畳みバルーンを係留する。こうしてニードルシリンジの延長部分として襞の始めから終りまでゆっくりと導かれるテフロン(登録商標)カニューレを用いて、1体積パーセントのQUAB151を伴うアセトン中の2.5%のエベオリムスのハチミツ様乃至はシロップ様の粘性(102〜105mPa・sの粘度)の溶液を、段階的に各襞に充填する。
【0336】
この目的で、襞によって形成された空洞の中心までテフロン(登録商標)カニューレを導き、水平方向に係留したカテーテルがその長手方向に移動する間、襞空洞の中に規定量の高粘度溶液を放出させる(噴出法)。充填される材料の量は、充填後襞がバルーン本体から持ち上がらないような形で制限され、異なるバルーン寸法および製品に応じて変動する。次に、コバルト−クロムの未コーティング金属ステントを、コーティング済みカテーテルバルーン上に圧着させる。
【0337】
〔実施例41〕
ベースコーティングとしての活性作用物質とトップコーティングとしての活性作用物質とが装填されたマトリックスによる、全システムステント+バルーンのコーティング
ベースコーティング:19.8mgの亜麻仁油、0.3mgのアルキル−(ポリオキシエチル)ホスフェートおよび6.6mgのタキソールは、3gのクロロホルムで充填される。
【0338】
トップコーティング:8.8mgのタキソールおよび0.5mgのアルキル−(ポリオキシエチル)ホスフェートは、2gのクロロホルムで充填される。
圧着型ステントを伴うバルーンカテーテルに、液滴−ドラグ法を介してベースコートをコーティングする。システムの表面上の溶媒の蒸発により、このベースコーティングが高粘度膜となった時点で直ちに、本発明の方法により活性作用物質の第2の層を上に噴霧することができる。
【0339】
〔実施例42〕
バルーン表面1mm2あたり2.5μgの量のパクリタキセルを、市販のバルーンカテーテルにコーティングする。このコーティングは、スクアレン中の0.5mg/mlのパクリタキセルの溶液を使用して、本発明のピペット法により実施する。
【0340】
〔実施例43〕
メタノール中のパクリタキセル溶液を調製し、この溶液を、ステント無しのカテーテルバルーン上に3回噴霧し、その間に溶媒の蒸発によりカテーテルバルーンを乾燥させる。
【0341】
噴霧コーティングを3回反復した後、噴霧用溶液として輸送メディエータジメチルスルホキシドを伴うパクリタキセルの溶液を使用し、カテーテルバルーンを最後に乾燥させ、金属の未コーティングステントをバルーン上に圧着させる。この噴霧用溶液中、パクリタキセルとジエチルスルホキシドの比は1:1である。
【0342】
これまで実施した実験は、選択した輸送メディエータが、すでに公開された物質である尿素やクエン酸エステルなどの使用される活性作用物質に対しても同様に優れた効果を有することを示した。
【0343】
〔実施例44〕
42.7mg(0.05mmol)のパクリタキセルを5mlのクロロホルム中に溶解させ、9.5mg(0.03mmol)の酒石酸テトラプロピルを加える。
【0344】
3mlのコーティング溶液を3ステップでカテーテルバルーン上に噴霧し、各噴霧ステップの後、少なくとも10分間、カテーテルバルーンを空気乾燥させる。
従って、酒石酸テトラプロピスとパクリタキセルのコーティングを施したこのようなカテーテルバルーンが、拡張中に血管の内壁上に可能なかぎり完全にパクリタキセルを移行させるのに充分適したものであり、こうして再狭窄に対する優れた予防法が得られることを示すことができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの溶媒と、少なくとも1つの薬理学的作用物質と、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物とを含む組成物の使用において、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が少なくとも150℃の沸点を有し、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が20℃で油性または固体のコンシステンシーを有し、免疫反応をひき起こさず、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が血管拡張のためのカテーテルバルーンのコーティング用に使用され、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が造影剤ではない、使用。
【請求項2】
前記輸送メディエータがポリマーでなく、前記輸送メディエータの前記混合物がポリマーを含まない、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記輸送メディエータが少なくとも6個の炭素原子または少なくとも2個の酸素原子または少なくとも1個の窒素原子を有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、20℃で25Pa未満の蒸気圧を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記輸送メディエータが脂溶性であり、ブタノールと水との間の分配係数が0.5以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記輸送メディエータが脂溶性であり、前記輸送メディエータは、ブタノールと水との間の分配係数が0.5以下であるように親水性エステル化されている、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記輸送メディエータが親水性であり、前記輸送メディエータは、ブタノールと水との間の分配係数が0.5以上であるように疎水性エステル化されている、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、外部に対して親水性を有するミセルを形成しない、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物のpHが中性である、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、水溶液中で9>pH>7のpH値を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、水溶液中で5<pH<7のpH値を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記輸送メディエータが少なくとも1つのイオン官能基またはイオン性官能基を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記輸送メディエータが水素結合を形成できる、請求項1〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記輸送メディエータが細胞壁の水分を増大させることができる、請求項1〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記輸送メディエータが細胞壁内で水素結合を開裂できる、請求項1〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
前記輸送メディエータが、脂質二重層の脂質および/または脂質二重層の炭化水素と相互作用できる、請求項1〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記輸送メディエータが、150g/mol〜300g/molの分子量を有する、請求項1〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
前記輸送メディエータが細胞膜を通過できる、請求項1〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物の多くとも50重量%が25℃で2カ月後に揮発させられる、請求項1〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記輸送メディエータが、アミド、フェノール、フェノールエステル、フェノールエーテル、芳香族アルコール、芳香族酸、スルホキシド、有機ホウ素化合物、炭素原子2〜6個の多価アルコール、脂肪酸とアルコールのモノグリセリド、脂肪酸エーテル、テルペン系炭化水素、炭素原子が少なくとも8個のアルコール、複素環化合物、アルカロイド、ナノ粒子、酵素および第4アンモニウム塩からなる群から選択される、請求項1〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記のアミド、フェノール、フェノールエステル、フェノールエーテル、芳香族アルコール、芳香族酸、スルホキシド、有機ホウ素化合物、炭素原子2〜6個の多価アルコール、脂肪酸とアルコールのモノグリセリド、脂肪酸エーテル、テルペン系炭化水素、炭素原子が少なくとも8個のアルコール、複素環化合物、アルカロイド、ナノ粒子、酵素および第4アンモニウム塩が、
尿素、DMF、DMA、シクロホスファミド、アルカノールアミド、アニソール、アネトール、バニリン、コニフェリン、チモール、カルバコール、サリチル酸、サリチル酸アルコール、フェニルエタノール、コーヒー酸、フェルラ酸、桂皮アルコール、アドレナリン、ドーパミン、アンフェタミン、ホウ酸エステル、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、プロパントリオール、ラクチトール、マンニトール、ズルシトール、イソマルト(Isomalt)、スクロース、キシリトール、アリターム、マルチトール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、モノオレイン酸グリセリン、モノリノール酸グリセリン、モノラウリン酸グリセリン、マルトール、メグルミン、アシルグリセリド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ジエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルカルボキシメチルエーテル、単環式テルペン、チモール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、ガンマ−テルピネオール、1,8−テルピン、1,8−シネオール、二環式テルペン、カラン、ピナン、ボルナン、α−ピネン、3−カレン、ボルネオール、ショウノウ、単環式セスキテルペン、ビサボレン、ファルネソール、非環式テルペン、ミルセン、オシメン、フェランドレン、リナロール、三環式セスキテルペン、サンタレン、トリテルペン、スクアレノイド、スクアレン、フシデ(Fuside)、四環式トリテルペン酸、ラノステロール、テトラテルペン、カロチノイド、カロテン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、クロセチン、リポクロム、ポリプレン、雄性および雌性ステロイドホルモン、アンドロゲン、エストロゲン、ゲスタゲン、テストステロン、アンドロステロン、エストリオール、エストラジオール、エストロン、フォスフェストロール、チボロン、プロルトン、プロゲステロン、コルチコイド、コルチゾール、コルチゾン、アルドステロン、トリアムシノロン、アルカノール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ステロール、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノエート、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノールアルカノエート、N−メチルピロリドン、ビリルビン、ビオチン、スルファメトキサゾール、1−置換アザシクロアルカン−2−オン、ラウロカプラム、(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)および誘導体、シクロデキストリン、アザシクロアルケン、クロルヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムハロゲニド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハロゲニド、ドデシルトリメチルアンモニウムハロゲニド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハロゲニド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハロゲニド、フマル酸ステアリルナトリウム、フマル酸およびアルキル−(ポリオキシエチル)−ホスフェート、カラギーナンから選択されている、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
バルーンカテーテルのコーティング方法において、
a)少なくとも1つの溶媒と、少なくとも1つの薬理学的作用物質と、輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物と含む組成物を提供するステップであって、
該ステップにおいて、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が少なくとも150℃の沸点を有し、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が20℃で油性または固体のコンシステンシーを有し、免疫反応をひき起こさず、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が血管拡張のためのカテーテルバルーンのコーティング用に使用され、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が造影剤ではない、ステップと;
b)カテーテルバルーンを有するバルーンカテーテルを提供するステップと;
c)噴出法、ピペット法、毛管法、折畳みスプレー法、ドラグ法、糸ドラグ法またはローリング法によってカテーテルバルーンをコーティングするステップと;
d)バルーンの表面上のコーティングを乾燥させるか、または溶媒を除去するステップと、
を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法により得ることのできるバルーンカテーテル。
【請求項24】
少なくとも1つの薬理学的作用物質と輸送メディエータまたは輸送メディエータの混合物との乾燥した油性または固体のコーティングを有するカテーテルバルーンを含むバルーンカテーテルにおいて、血管拡張のためのカテーテルバルーンのコーティングを目的とし、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が少なくとも150℃の沸点を有し、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が20℃で油性または固体のコンシステンシーを有し、免疫反応をひき起こさず、前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が造影剤ではない、バルーンカテーテル。
【請求項25】
前記輸送メディエータがポリマーでなく、前記輸送メディエータの前記混合物がポリマーを含まない、請求項24に記載のバルーンカテーテル。
【請求項26】
前記輸送メディエータが少なくとも6個の炭素原子または少なくとも2個の酸素原子または少なくとも1個の窒素原子を有する、請求項24または25に記載のバルーンカテーテル。
【請求項27】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、20℃で25Pa未満の蒸気圧を有する、請求項24〜26のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項28】
前記輸送メディエータが脂溶性であり、ブタノールと水との間の分配係数が0.5以上である、請求項24〜27のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項29】
前記輸送メディエータが脂溶性であり、前記輸送メディエータは、ブタノールと水との間の分配係数が0.5以下であるように親水性エステル化されている、請求項24〜28のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項30】
前記輸送メディエータが親水性であり、前記輸送メディエータは、ブタノールと水との間の分配係数が0.5以上であるように疎水性エステル化されている、請求項24〜29のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項31】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、外部に対する親水性をもつミセルを形成しない、請求項24〜30のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項32】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物のpHが中性である、請求項24〜31のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項33】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、水溶液中で9>pH>7のpH値を有する、請求項24〜32のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項34】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物が、水溶液中で5<pH<7のpH値を有する、請求項24〜33のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項35】
前記輸送メディエータが少なくとも1つのイオン官能基またはイオン性官能基を有する、請求項24〜34のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項36】
前記輸送メディエータが水素結合を形成できる、請求項24〜35のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項37】
前記輸送メディエータが細胞壁の水分を増大させることができる、請求項24〜36のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項38】
前記輸送メディエータが細胞壁内で水素結合を開裂できる、請求項24〜37のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項39】
前記輸送メディエータが、脂質二重層の脂質および/または脂質二重層の炭化水素と相互作用できる、請求項24〜38のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項40】
前記輸送メディエータが、150g/mol〜300g/molの分子量を有する、請求項24〜39のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項41】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物の多くとも50重量%が2カ月後に25℃で揮発させられる、請求項24〜40のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項42】
前記輸送メディエータが細胞膜を通過できる、請求項24〜41のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項43】
前記輸送メディエータまたは前記輸送メディエータの前記混合物の50重量%以下が2カ月後に25℃(室温)で揮発させられる、請求項24〜42のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項44】
前記輸送メディエータが、アミド、フェノール、フェノールエステル、フェノールエーテル、芳香族アルコール、芳香族酸、スルホキシド、有機ホウ素化合物、炭素原子2〜6個の多価アルコール、脂肪酸とアルコールのモノグリセリド、脂肪酸エーテル、テルペン系炭化水素、炭素原子が少なくとも8個のアルコール、複素環化合物、アルカロイド、ナノ粒子、酵素および第4アンモニウム塩からなる群から選択される、請求項24〜43のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項45】
前記のアミド、フェノール、フェノールエステル、フェノールエーテル、芳香族アルコール、芳香族酸、スルホキシド、有機ホウ素化合物、炭素原子2〜6個の多価アルコール、脂肪酸とアルコールのモノグリセリド、脂肪酸エーテル、テルペン系炭化水素、炭素原子が少なくとも8個のアルコール、複素環化合物、アルカロイド、ナノ粒子、酵素および第4アンモニウム塩が、
尿素、DMF、DMA、シクロホスファミド、アルカノールアミド、アニソール、アネトール、バニリン、コニフェリン、チモール、カルバコール、サリチル酸、サリチル酸アルコール、フェニルエタノール、コーヒー酸、フェルラ酸、桂皮アルコール、アドレナリン、ドーパミン、アンフェタミン、ホウ酸エステル、1,2エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、プロパントリオール、ラクチトール、マンニトール、ズルシトール、イソマルト(Isomalt)、スクロース、キシリトール、アリターム、マルチトール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、モノオレイン酸グリセリン、モノリノール酸グリセリン、モノラウリン酸グリセリン、マルトール、メグルミン、アシルグリセリド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ジエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルカルボキシメチルエーテル、単環式テルペン、チモール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、ガンマ−テルピネオール、1,8−テルピン、1,8−シネオール、二環式テルペン、カラン、ピナン、ボルナン、α−ピネン、3−カレン、カンフェン、ボルネオール、ショウノウ、単環式セスキテルペン、ビサボレン、ファルネソール、非環式テルペン、ミルセン、オシメン、リナロール、三環式セスキテルペン、サンタレン、トリテルペン、スクアレノイド、スクアレン、フシデ(Fuside)、四環式トリテルペン酸、ラノステロール、テトラテルペン、カロチノイド、カロテン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、クロセチン、リポクロム、ポリプレン、雄性および雌性ステロイドホルモン、アンドロゲン、エストロゲン、ゲスタゲン、テストステロン、アンドロステロン、エストリオール、エストラジオール、エストロン、フォスフェストロール、プロルトン、プロゲステロン、コルチコイド、コルチゾール、コルチゾン、アルドステロン、トリアムシノロン、アルカノール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ステロール、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノエート、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノールアルカノエート、N−メチルピロリドン、ビリルビン、ビオチン、スルファメトキサゾール、1−置換アザシクロアルカン−2−オン、ラウロカプラム、(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)および誘導体、シクロデキストリン、アザシクロアルケン、クロルヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムハロゲニド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハロゲニド、ドデシルトリメチルアンモニウムハロゲニド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハロゲニド、テトラデシルトリメチルアンモニウムハロゲニド、フマル酸ステアリルナトリウム、フマル酸およびアルキル−(ポリオキシエチル)−ホスフェート、カラギーナンから選択されている、請求項44に記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【公表番号】特表2013−507204(P2013−507204A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533478(P2012−533478)
【出願日】平成22年10月16日(2010.10.16)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001220
【国際公開番号】WO2011/044889
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(504150209)ヘモテック アーゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】Hemoteq AG
【Fターム(参考)】