説明

カテーテル

【課題】造影性に優れたマーカをカテーテル本来の性能を損なうことなく正確な位置に配置することができるカテーテルを提供すること。
【解決手段】本発明のカテーテル1は、内層3と、該内層3の外周側に形成された外層4と、内層3と外層4との間に設置され、1本の連続した線状体を螺旋状に巻回してなるコイル5とを有するカテーテル本体を有している。コイル5は、螺旋のピッチが小さい密巻き部51と、密巻き部51より螺旋のピッチが大きい疎巻き部52とをそれぞれ複数有し、密巻き部51と疎巻き部52とがカテーテル本体2の長手方向に沿って交互に形成されたものである。コイル5は、ビッカース硬度が300未満であるX線不透過性を有する金属材料で構成されており、X線透視下でカテーテル本体2を血管等に挿入したとき、密巻き部51がX線造影マーカとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のカテーテル、例えば血管などの体腔に挿入して使用されるカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冠状動脈のような血管の狭窄部(病変部)をバルーンにより拡張するPTCA術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)や、ステントを留置して狭窄部を拡張(再開通)する治療には、それに先立ち、狭窄部を予め貫通する貫通用カテーテルが用いられる。また、前記治療には、狭窄が生じている範囲に応じて、最適なバルーン長やステント長を決める必要があるが、そのために、前記貫通用カテーテルなどに対し狭窄部の長さを測定する機能を付与することが望まれている。
【0003】
また、脳動脈瘤の治療に用いるデタッチャブルコイル(例:ボストン:GDC)を病変部に留置する際には、コイルとプッシャー間の離脱部がマイクロカテーテルの先端から露出したことを確認してから離脱操作を行うが、それを確認する手段は、プッシャー上のマーカがマイクロカテーテルの先端部よりも基部側の所定箇所に配置したマーカに接したことを透視確認することにより行われる。
【0004】
このような課題に対応するものとして、カテーテルの長手方向に沿って金属チップで構成されるマーカを一定間隔で配置したカテーテルが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このカテーテルでは、複数の金属チップをカテーテル内に設けるため、製造に手間がかかり、構造が複雑となり、特に、マーカが設置された部分の外形がコブ状にふくらんでしまい、その結果、カテーテルの血管内での通過性が劣る。さらに、カテーテルの金属チップが存在する部分は、存在しない部分に比べて剛性(曲げ剛性、捻り剛性)が極端に増大するため、剛性の低い部分でキンク(折れ曲がり)が生じ易く、剛性の高い部分では十分な曲率が得られず、カテーテルの全長にわたって均一で安定した屈曲性能が得られないという欠点がある。
【0005】
また、特許文献1に記載されたカテーテルのように、高濃度の硫酸バリウムを含有する樹脂をカテーテル外層に一定間隔で配置するには、熱加工の過程で配置間隔が狂うおそれがあり、また、このようなマーカは、金属マーカよりもX線不透過性が劣り、鮮明なX線透視画像が得られないという問題もあった。
【0006】
【特許文献1】実開平5−48953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、造影性(X線不透過性)に優れたマーカをカテーテル本来の性能を損なうことなく正確な位置に配置することができるカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(14)の本発明により達成される。
(1) 内層と該内層の外周側に形成された外層とを有するカテーテル本体を有し、該カテーテル本体の少なくとも先端部において、前記内層と前記外層との間に1本の連続した線状体を螺旋状に巻回してなるコイルを設置したカテーテルであって、
前記コイルは、螺旋のピッチが小さい密巻き部と、該密巻き部より螺旋のピッチが大きい疎巻き部とが前記カテーテル本体の長手方向に沿って交互に形成されたものであり、
かつ、前記コイルは、ビッカース硬度が300未満であるX線不透過性を有する金属材料で構成されており、
X線透視下で前記カテーテル本体を生体内に挿入したとき、前記密巻き部がX線造影マーカとして機能することを特徴とするカテーテル。
【0009】
(2) 前記コイルを構成する線状体の直径は、0.01〜0.15mmである上記(1)に記載のカテーテル。
【0010】
(3) 前記コイルを構成する線状体は、複数の素線を撚った撚線で構成されている上記(1)または(2)に記載のカテーテル。
【0011】
(4) 前記コイルの構成材料は、タンタル、金、銀、白金、イリジウム、パラジウムのうちの少なくとも一種を含む金属材料で構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のカテーテル。
【0012】
(5) 前記コイルの先端は、前記密巻き部で構成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のカテーテル。
【0013】
(6) 前記コイルは、長手方向に沿って複数の前記密巻き部がほぼ等間隔で間欠的に形成されているものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のカテーテル。
【0014】
(7) 前記コイルの前記密巻き部の曲げ弾性率をA[kgf/cm]、前記疎巻き部の曲げ弾性率をB[kgf/cm]としたとき、B/Aの値が0.3〜3.0である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のカテーテル。
【0015】
(8) 前記内層および/または前記外層は、前記カテーテル本体の長手方向の途中でその剛性が変化している部分を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のカテーテル。
【0016】
(9) 前記コイルの先端側に、管状のX線不透過性チップが設置されている上記(1ないし(8)のいずれかに記載のカテーテル。
【0017】
(10) 前記コイルの基端側に、カテーテル本体の剛性を高める補強部材を有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のカテーテル。
【0018】
(11) 前記補強部材は、前記内層と前記外層との間に設置されたコイル状またはメッシュ状をなすものである上記(10)に記載のカテーテル。
【0019】
(12) 前記補強部材は、ステンレス鋼で構成されている上記(10)または(11)に記載のカテーテル。
【0020】
(13) 前記カテーテル本体は、前記内層の内側にガイドワイヤを挿通し得るルーメンを有する上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のカテーテル。
【0021】
(14) 前記カテーテルは、狭窄部貫通用カテーテルまたはマイクロカテーテルである上記(1)ないし(13)のいずれかに記載のカテーテル。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば硫酸バリウムのような非金属のX線造影材料によるX線造影マーカに比べてX線造影性に優れたマーカを容易に設けることができる。
【0023】
また、1本の連続したコイルの所定部位に密巻き部を設け、これをX線造影マーカとして用いるため、所望の数のマーカを容易かつ正確な位置に設けることができる。
【0024】
また、1本の連続したコイルを用いるため、カテーテル本体の長手方向の剛性(曲げ剛性、捻り剛性)の変化を少なくすることができ、安定したカテーテルの屈曲性能が得られる。
【0025】
また、従来のように、全てのX線造影マーカを金属チップで構成する場合には、マーカ上に被覆される樹脂層がコブ状に突出し、この部分で局所的に外径肥大が生じるが、本発明では、このような不都合が解消され、カテーテル本体の外径の不本意な変化が防止される。そのため、カテーテルの生体管腔への挿入操作をより容易かつ安全に行うことができ、患者の負担も軽減される。
【0026】
また、本発明のカテーテルは、押し込み性、トルク伝達性、耐キンク性等のカテーテルに本来要求される特性を損なうことなく、上述した効果を得ることができる。カテーテルが押し込み性、トルク伝達性等に優れているため、本発明を例えば狭窄部貫通用カテーテルに適用した場合、狭窄部を容易、迅速、確実に貫通させることができる。
【0027】
また、本発明において、コイルの構成材料として、ビッカース硬度が300未満である金属材料を用いたことにより、カテーテル本体を製造する際、密巻き部と疎巻き部との境界部における内層の破損に起因するカテーテル本体の強度低下を防止するとともに、コイルピッチの乱れを防止し、より適正なX線造影性を得ることができ、カテーテル本体の先端部の柔軟性を十分に確保することができる。
【0028】
また、本発明をマイクロカテーテル等に適用した場合には、優れた末梢到達性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明のカテーテルについて添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、本発明のカテーテルの第1実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の左側を「先端」、右側を「基端」と言う。
【0031】
図1に示すカテーテル1は、例えば血管、胆管等の生体内の管腔(以下、「血管」で代表する)に挿入して使用され、病変により生じた狭窄部もしくは閉塞部(以下、狭窄部および閉塞部を総称して単に「狭窄部」と言う)を貫通させるための狭窄部貫通用カテーテルである。
【0032】
図1に示すように、このカテーテル1は、可撓性を有するカテーテル本体2を有している。カテーテル本体2は、管状をなす長尺の部材であり、その内部には、例えばガイドワイヤ(図示せず)が挿通されるルーメン(内腔)23が形成されている。このルーメン23は、カテーテル本体2の基端から先端まで連続して形成されている。
【0033】
なお、ルーメン23は、ガイドワイヤ挿通用以外の目的、例えば、体液の吸引や薬液の注入等に用いられるものであってもよい。
【0034】
カテーテル本体2は、基端部(図示せず)と、先端部21と、基端部と先端部21との間の中間部22とで構成されている。基端部には、ハブやコネクタ等の部品(図示せず)が接続されている。
【0035】
カテーテル本体2の全長は、特に限定されないが、500〜1900mm程度が好ましく、800〜1600mm程度がより好ましい。
【0036】
また、カテーテル本体2の外径は、特に限定されないが、0.5〜2.0mm程度が好ましく、0.6〜1.2mm程度がより好ましい。なお、カテーテル本体2の外径は、長手方向に沿って変化していてもよく、例えば先端方向に向かって外径が連続的に減少するような部分があってもよい。
【0037】
カテーテル本体2の内径、すなわちルーメン23の直径は、特に限定されないが、0.3〜1.5mm程度が好ましく、0.4〜0.9mm程度がより好ましい。
【0038】
このようなカテーテル本体2は、内周側に位置する内層3と、内層3の外周側に形成された外層4と、内層3と外層4との間に設置(埋設)されたコイル5とを有している。コイル5の先端は、カテーテル本体2の先端付近に位置している。
【0039】
内層3の構成材料は、特に限定されないが、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、ポリエーテルイミド等が挙げられるが、このなかでもフッ素系樹脂のような低摩擦材料が好ましい。これにより、ルーメン23の内面の摩擦係数が小さくなるので、ルーメン23内にガイドワイヤを挿通した際、それらの摩擦抵抗(摺動抵抗)が小さくなり、ガイドワイヤをより円滑に挿通することができる。
【0040】
内層3の厚さは、特に限定されないが、平均の厚さが0.01〜0.20mm程度であるのが好ましく、0.03〜0.06mm程度であるのがより好ましい。
【0041】
外層4の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル等、あるいはこれらの2種以上を混合した混合物が挙げられるが、このなかでも各種熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、シリコーン樹脂等の比較的柔軟性に富む材料が好ましい。これにより、カテーテル本体2を挿入する血管の内面を損傷することがなく、安全性がより向上する。
【0042】
外層4の厚さは、特に限定されないが、平均の厚さが0.02〜0.3mm程度であるのが好ましく、0.05〜0.2mm程度であるのがより好ましい。
【0043】
また、外層4は、剛性(硬度)や外径等の条件が異なる複数のチューブを組み合わせて(接続して)構成してもよい。図示の実施形態では、先端部21と中間部22との境界部41を境にして、外層4の当該境界部41より先端側の部分と基端側の部分とでは、前者の方が後者に比べて剛性(硬度)が小さいものとされている。これにより、カテーテル本体2の中間部22より先端部21の柔軟性を高めることができ、カテーテル1の操作性および安全性がより向上する。
【0044】
なお、このような剛性の変化する部分(剛性が先端方向に向かって減少する部分)は、内層3に対しても同様に適用することができ、内層3と外層4のそれぞれに適用することもできる。
【0045】
本実施形態では、内層3と外層4とは、コイル5の線状体が存在する部分を除き、密着している。ただし、本発明は、これに限らず、例えば、内層3と外層4との間に中間層を有し、該中間層の内部にコイル5が埋設されているか、中間層と内層3との間、または中間層と外層4との間にコイル5が設置(埋設)されていてもよい。
【0046】
コイル5は、1本の連続した線状体(素線)を螺旋状に巻回してなるものであり、以下に述べるような条件を満足する材料で構成されている。
【0047】
コイル5は、螺旋のピッチが小さい密巻き部51と、密巻き部51より螺旋のピッチが大きい疎巻き部52とを有し、密巻き部51と疎巻き部52とがカテーテル本体2の長手方向に沿って交互に形成されている。特に、コイル5は、長手方向に沿って複数の密巻き部51を有し、これらがほぼ等間隔で間欠的に形成されているのが好ましい(図1参照)。この場合、隣接する密巻き部51同士の間隔は、特に限定されないが、例えば、5〜30mm程度とされる。この間隔は、狭窄部の長さ等を測定する際の1目盛り(目盛りの最小単位)を構成する。
【0048】
ここで、密巻き部51では、隣接する線状体同士が接触するかまたは近接しているような状態であるのが好ましい。また、疎巻き部52では、例えば、螺旋状に巻回された線状体のピッチが、当該線状体の直径の2〜25倍程度とすることができる。
【0049】
また、密巻き部51と疎巻き部52との境界部(移行部)53は、線状体のピッチが段階的に変化しても、連続的に変化してもよい。
【0050】
コイル5の構成材料(線状体の構成材料)は、X線不透過性を有する金属材料である。これにより、X線造影性を発揮することができる。特に、X線透視下でカテーテル本体2を生体内(血管内)に挿入したとき、コイル5の密巻き部51がX線造影マーカとして機能し、その位置を把握することができる。
【0051】
さらに、コイル5の構成材料は、X線不透過性を有する金属材料のうち、ビッカース硬度が300未満、好ましくは250以下、より好ましくは、20〜200の金属材料とされる。
【0052】
このような条件を満足する金属材料として好ましいものは、例えば、タンタル、金、銀、白金、イリジウム、パラジウムのうちの少なくとも一種を含む金属材料(単一の金属または合金)が挙げられる。合金の好ましい例としては、18金、白金−イリジウム合金が挙げられる。
【0053】
ビッカース硬度が300以上である金属材料が本発明から除外される理由は、次の通りである。
【0054】
カテーテル本体2を製造する場合、例えば、内層3にコイル5を巻き付ける際、コイル5を構成する線状体(素線)を吐出するダイス(以下、「へッド」という)に内層3を接触させ、さらに内層3を回転ながら前記ヘッドを内層3の軸方向に移動させることによって内層3にコイル5を巻き付けているが(なお、このとき内層3の回転速度および線状体のダイスからの吐出速度は一定であり、ヘッドの移動速度によりコイルピッチを制御している。)、コイル5を構成する材料として例えばタングステンのようなビッカース硬度が300以上の硬い金属材料を用いた場合、まず第1に、コイルピッチが変化(密巻き部51から疎巻き部52へ変化)する箇所(=境界部53)、すなわちヘッドの速度が急激に変化する箇所で内層3の破損が生じるおそれがあり、これに起因して、カテーテル本体2の強度が低下するおそれがある。第2に、コイル5を構成する線状体によりヘッドが損傷し、これに起因してコイルピッチが乱れ、適正なX線造影性が得られなかったり、また先端部21がしなやかに湾曲することを阻害するおそれがある。また、損傷したヘッドに対する摩擦により、内層3に汚れが付着したり内層3の破損が生じるおそれもある。
【0055】
また、本発明のカテーテルをマイクロカテーテルにて適用した場合、医師等が予め先端部21を所望の形状に形状付け(リシェイプ)する場合があるが、先端部21に内蔵されるコイル5が硬すぎて、前記形状付けが困難となるかまたは目的とする形状になり難いという欠点もある。従って、本発明では、コイル5を構成する金属材料は、前述したようにビッカース硬度が300未満のものとする。
【0056】
コイル5を構成する線状体の直径(平均)は、0.01〜0.15mm程度であるのが好ましく、0.02〜0.10mm程度であるのがより好ましい。線状体の直径が大き過ぎると、カテーテル本体2の先端部21の柔軟性が不十分となるおそれがあり、また、カテーテル本体2の細径化の妨げともなる。また、線状体の直径が小さ過ぎると、素材の特性等の他の条件によっては、密巻き部51におけるX線造影性が低下するおそれがある。
【0057】
なお、線状体の直径は、コイル5の全長に渡って同一でもよいが、異なる箇所があってもよい。例えば、カテーテル本体2の先端付近の外径を細くするため、その部分に相当する線状体の直径を細くしても良い。
【0058】
また、コイル5を構成する線状体は、複数の素線を撚った撚線であってもよい。撚線の場合、異なる2種類以上の金属材料を撚ることが可能であるため、それぞれの金属材料の利点(例えば硬度とX線造影性)を組み合わせて引き出すことが可能である。
【0059】
前述したように、コイル5は、密巻き部51と疎巻き部52とを有するが、密巻き部51の曲げ弾性率をA[kgf/cm]、疎巻き部52の曲げ弾性率をB[kgf/cm]としたとき、B/Aの値が0.3〜3.0であるのが好ましく、0.5〜2.0であるのがより好ましい。B/Aの値が上記の範囲を外れると、密巻き部51と疎巻き部52の曲げ剛性の差が大きくなり、カテーテル本体2の境界部53付近においてキンク(折れ曲がり)を生じ易くなるおそれがある。
【0060】
図1に示すように、コイル5の先端は、密巻き部51で構成されており、この密巻き部51は、カテーテル本体2の先端付近に位置している。これにより、コイル5の先端の密巻き部51がX線造影マーカとして機能し、カテーテル本体2の先端の位置を把握することができる。
【0061】
このように、カテーテル本体2の先端付近のX線造影マーカを密巻き部51で構成した場合、後述する第2実施形態(図2)のような別部材によるX線不透過性チップ6を設けた構成に比べ、カテーテル本体2の先端付近をより柔軟性に富んだものとすることができ、また細径化にも寄与する。
【0062】
また、前述したように、X線造影マーカとして機能する複数の密巻き部51がカテーテル本体2の長手方向に沿ってほぼ等間隔で間欠的に形成されている。そして、隣接する密巻き部51同士の間隔(距離)は、既知である。これにより、X線透視下でカテーテル本体2を血管の狭窄部に貫通させたとき、各密巻き部(X線造影マーカ)51が目盛りとして機能し、狭窄部の長さを測定(確認)することができる。そして、測定された狭窄部の長さに基づいて、その後に行われる狭窄部拡張治療において使用されるバルーンやステントの長さを適正なものに決定することができる。
【0063】
なお、図示の実施形態では、コイル5の線状体の断面形状は、円形であるが、これに限らず、例えば、楕円形、矩形(正方形、長方形、台形、ひし形等)等であってもよく、また、平板状をなすものでもよい。
【0064】
本実施形態では、X線造影マーカとして、コイル5の密巻き部51を利用するので、別個の部材(専用のX線造影チップ等)を設置する必要がなく、カテーテル1の製造が容易であるとともに、カテーテル本体2の細径化および外径の均一化に寄与する。
【0065】
特に、図1に示すように、内層3と外層4との間に設置されたコイル5においては、密巻き部51、疎巻き部52共に、隣接する線状体間に内層3および/または外層4の構成材料が入りこむようにして内層3と外層4とが密着しているため、カテーテル本体2の途中の一部分(特に、密巻き部51が存在する部分)において外径が増大するということがなく、カテーテル本体2の外径の均一化が維持される。
【0066】
なお、前述したように、密巻き部51は、X線造影性を有するものであるが、これに限らず、MRI等の他の造影システムにおいても造影性を発揮するものが好ましく、これにより、MRI等の他の造影システムにおいても使用することができる。
カテーテル本体2の中間部22(コイル5の基端側)には、カテーテル本体2の剛性を高める補強部材7が埋設されている。この補強部材7は、コイル5と同様に、内層3と外層4との間に設置(埋設)されている。
【0067】
後述する第2実施形態(図2)のように、コイル5を中間部22にも設置してもよいが、コイル5の構成材料は、比較的弾性、剛性が乏しく、補強効果が十分に得られない場合があるため、本実施形態では、コイル5とは別に補強部材7を設置したものである。これにより、カテーテル本体2に適度な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が得られ、押し込み性およびトルク伝達性等の操作性が向上し、その結果、カテーテル1は、狭窄部をより容易に貫通させることができるものとなる。
【0068】
補強部材7の形態としては、特に限定されないが、図1に示すように、コイル状のものが挙げられる。この場合、コイルの素線は、帯状(断面形状が長方形をなす:ブレード状とも言う)をなすものであるのが好ましい。また、補強部材7の他の好ましい形態としては、メッシュ状のもの(編組体)が挙げられる。
【0069】
補強部材7の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等SUSの全品種)、ピアノ線、Co−Ni−Cr系合金、Co−Ni−Cr−Mo系合金等のコバルト系合金、Ni−Ti系合金、Ni−Al合金、Cu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)等の擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む)等の各種金属材料が挙げられるが、そのなかでも特に、ステンレス鋼が好ましい。
【0070】
カテーテル本体2の外表面には、親水性材料(親水性ポリマー)で構成された表面層(図示せず)が設けられているのが好ましい。この親水性材料は、湿潤により潤滑性を発現するので、カテーテル本体2を血管内に挿入する際、より円滑かつ容易に挿入することができ、操作性、安全性の向上に寄与し、患者の負担を軽減することができる。
【0071】
前記表面層を構成する親水性材料としては、特に限定されないが、例えば、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体や、ジメチルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0072】
次に、カテーテル1の製造方法の一例について、説明する。
まず、チューブ状に成形された内層3を用意し、内層3の中間部22の外周面に、補強部材7の素線を巻き付けてコイル状の補強部材7を形成するとともに、内層3の先端部21の外周面に、コイル5の素線を巻き付ける。コイル5および補強部材7(以下「コイル5等」と言う)の具体的な巻き付け方法は、前述した通りである。
【0073】
次に、コイル5等の外側に外層4を形成する。具体的には、例えば、コイル5等の外周部に外層4を形成するためのシート材または管状体を被せ、これを加熱して、内層3およびコイル5等に密着させる。
【0074】
なお、外層4の形成は、前記の方法に限らず、例えば、コーティング、ディッピング、あるいはスプレー等による塗布法により行ってもよい。
【0075】
このような製造方法によれば、密巻き部51および疎巻き部52においける隣接線状体間に内層3および/または外層4の構成材料が入りこむようにして内層3と外層4とが密着するため、局所的な(特に、カテーテル本体2の密巻き部51が存在する部分での)外径の増大がなく、カテーテル本体2の外径の均一化が図れる。
【0076】
<第2実施形態>
図2は、本発明のカテーテルの第2実施形態を示す縦断面図である。以下、図2に基づいて、第2実施形態のカテーテルについて説明するが、前述した第1実施形態と同様の事項についてはその説明を省略し、相違する点を中心に説明する。
【0077】
図2に示すように、第2実施形態のカテーテル1は、カテーテル本体2の中間部22および先端部21の双方に、これらをまたぐようにコイル5が設置されている。この場合、中間部22においては、コイル5は、疎巻き部52で構成されている。
【0078】
また、コイル5の先端は、疎巻き部52で構成されており、コイル5の先端より先端側に、管状(リング状)のX線不透過性チップ6が設置されている(内層3と外層4との間に埋設されている)。このX線不透過性チップ6がカテーテル本体2の先端におけるX線造影マーカとして機能する。X線不透過性チップ6の構成材料としては、前述したコイル5の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0079】
コイル5の最も先端側位置する密巻き部51とX線不透過性チップ6との設置間隔は、隣接する密巻き部51同士の設置間隔とほぼ等しく設置されている。これにより、前記第1実施形態と同様に、各密巻き部51とX線不透過性チップ6とが目盛りとして機能し、狭窄部の長さ等を測定することができる。
【0080】
なお、本実施形態のカテーテル1についても、中間部22に前記と同様の補強部材7を設置することができる。また、X線不透過性チップ6は管状に限定されず、例えば、コイル状であっても良い。
【0081】
本発明のカテーテルは、各実施形態で示した狭窄部貫通用カテーテルに限定されず、その他例えば、マイクロカテーテルに適用することができる。ここで、マイクロカテーテルは、例えば、脳内血管等の比較的細い血管に挿入されるものであり、カテーテル本体2の外径は、好ましくは0.6〜1.0mm程度とされる。
【0082】
以上、本発明を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明のカテーテルの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明のカテーテルの第2実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 カテーテル
2 カテーテル本体
21 先端部
22 中間部
23 ルーメン
3 内層
4 外層
41 境界部
5 コイル
51 密巻き部
52 疎巻き部
53 境界部
6 X線不透過性チップ
7 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と該内層の外周側に形成された外層とを有するカテーテル本体を有し、該カテーテル本体の少なくとも先端部において、前記内層と前記外層との間に1本の連続した線状体を螺旋状に巻回してなるコイルを設置したカテーテルであって、
前記コイルは、螺旋のピッチが小さい密巻き部と、該密巻き部より螺旋のピッチが大きい疎巻き部とが前記カテーテル本体の長手方向に沿って交互に形成されたものであり、
かつ、前記コイルは、ビッカース硬度が300未満であるX線不透過性を有する金属材料で構成されており、
X線透視下で前記カテーテル本体を生体内に挿入したとき、前記密巻き部がX線造影マーカとして機能することを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記コイルを構成する線状体の直径は、0.01〜0.15mmである請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記コイルを構成する線状体は、複数の素線を撚った撚線で構成されている請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記コイルの構成材料は、タンタル、金、銀、白金、イリジウム、パラジウムのうちの少なくとも一種を含む金属材料で構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項5】
前記コイルの先端は、前記密巻き部で構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項6】
前記コイルは、長手方向に沿って複数の前記密巻き部がほぼ等間隔で間欠的に形成されているものである請求項1ないし5のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項7】
前記コイルの前記密巻き部の曲げ弾性率をA[kgf/cm]、前記疎巻き部の曲げ弾性率をB[kgf/cm]としたとき、B/Aの値が0.3〜3.0である請求項1ないし6のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項8】
前記内層および/または前記外層は、前記カテーテル本体の長手方向の途中でその剛性が変化している部分を有する請求項1ないし7のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項9】
前記コイルの先端側に、管状のX線不透過性チップが設置されている請求項1ないし8のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項10】
前記コイルの基端側に、カテーテル本体の剛性を高める補強部材を有する請求項1ないし9のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項11】
前記補強部材は、前記内層と前記外層との間に設置されたコイル状またはメッシュ状をなすものである請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記補強部材は、ステンレス鋼で構成されている請求項10または11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記カテーテル本体は、前記内層の内側にガイドワイヤを挿通し得るルーメンを有する請求項1ないし12のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項14】
前記カテーテルは、狭窄部貫通用カテーテルまたはマイクロカテーテルである請求項1ないし13のいずれかに記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−236472(P2007−236472A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59962(P2006−59962)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】