説明

カテーテル

【課題】挿入時に操作しやすく、患者への苦痛を和らげることができるようにしたカテーテルを提供する。
【解決手段】臓器に係合するための膨張部30を有するカテーテル10において、膨張部30は収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臓器に係合するための膨張部を有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に示すようなものがある。
すなわち、同文献には、主管の先端に気管支を閉塞するための膨張部としてカフを有し、収縮させて挿入させた後に該カフを膨張させて気管支を閉塞するようにした技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特表2002−505925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術では、収縮時のカフの形状が定まらず、挿入時に操作しにくかったり患者に苦痛を与えたりするおそれがあるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、挿入時に操作しやすく、患者への苦痛を和らげることができるようにしたカテーテルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1] 臓器に係合するための膨張部(30)を有するカテーテル(10)において、
前記膨張部(30)は収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成したことを特徴とするカテーテル(10)。
【0007】
[2] 先端部に膨張部(30)として膨張時に気管または気管支を閉塞するカフ(30)を有するカテーテル(10)において、
前記カフ(30)は、収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成され、膨張時には気管または気管支内で膨張して気管または気管支を閉塞することを特徴とするカテーテル(10)。
【0008】
[3] 気管支を選択的に閉塞するよう先端部に膨張時に気管支を閉塞する膨張部(30)としてカフを有するカテーテル(10)において、
主管(20)の先端部に前方カフ(30)を設け、該前方カフ(30)より基端部寄りに後方カフ(40)を設けて成り、
前記主管(20)は、第1の空気路(21)と、第2の空気路(25)と、前記前方カフ(30)に空気を導通する先空気導通路(27)と、前記後方カフ(40)に空気を導通する後空気導通路(28)とを備えて成り、
前記第1の空気路(21)は、先端側で前記前方カフ(30)と後方カフ(40)との間に開口し、前記第2の空気路(25)は前記前方カフ(30)より先に開口し、
前記後方カフ(40)は、膨張したとき気管を閉塞するものであり、
前記前方カフ(30)は、収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成され、膨張時には気管支内で膨張して気管支を閉塞することを特徴とするカテーテル(10)。
【0009】
[4] 前記膨張部(30)は、熱可塑性樹脂による風船状であって、収縮時にくさび形になるよう外力を加えながら加熱することにより、膨張時には風船状になり、収縮時にはくさび形になるようにしたことを特徴とする[1]、[2]または[3]に記載のカテーテル(10)。
【0010】
[5] 前記膨張部(30)は瘻孔からの抜け止めをするカフであることを特徴とする[1]に記載のカテーテル(10)。
【0011】
前記本発明は次のように作用する。
カテーテル(10)は、係合するための膨張部(30)を収縮させた状態で臓器に挿入する。膨張部(30)は収縮時に先側が小径のくさび形になっているので挿入時に細い方から挿入箇所にいれられるので必要な位置に円滑に挿入することができる。
【0012】
挿入してから膨張部(30)に空気を導入して所定の大きさに膨らませれば要所に容易に係合させることができる。
【0013】
カテーテル(10)は例えば気管支を閉塞するものであり、当該用途のカテーテル(10)では、先端部に膨張部(30)として設けられたカフ(30)を、収縮時に先側が小径のくさび形に形成し、気管から気管支に挿入する。
【0014】
挿入時の際、カフ(30)を細い方から挿入箇所である気管から気管支にいれられるので必要な位置に円滑に挿入することができる。位置を定めてからカフ(30)に空気を導入すれば気管支内で膨張して気管支が閉塞される。
【0015】
カテーテル(10)は、カフ(30)により気管支を選択的に閉塞する。カテーテル(10)の先端部の前方カフ(30)が膨張時に気管支を閉塞する。気管および気管支への挿入時には、主管(20)の先端部の前方カフ(30)を先側が小径のくさび形に形成し、前方カフ(30)より基端部寄りの後方カフ(40)は収縮させて先端側から気管に挿入する。
【0016】
前方カフ(30)がくさび形をしているので、カテーテル(10)の先端側は気管を経て二又の気管支の目的とする一方の気管支に容易に挿入することができる。挿入して位置を決めた後に後方カフ(40)に空気を導入すると気管が閉塞され、前方カフ(30)に空気を導入すると当該箇所の一方の気管支が閉塞される。
【0017】
閉塞されなかった気管支へは、主管(20)の第1の空気路(21)から空気が流通可能となる。すなわち、先端側で前方カフ(30)と後方カフ(40)との間に開口した第1の空気路(21)から閉塞されなかった気管支に空気が流通可能となる。また、閉塞された気管支にも第2の空気路(25)から空気の流通は可能である。
【0018】
第2の空気路(25)が前方カフ(30)より先に開口して閉塞された気管支に導通しており、第2の空気路(25)を通じて閉塞された肺または気管支を施術したりして加療する。
【0019】
膨張部(30)である前方カフ(30)は、熱可塑性樹脂による風船状に形成されており、収縮時にくさび形になるよう外力を加えて加熱してあるので、膨張時には風船状になり、収縮時にはくさび形になる。
【0020】
膨張部(30)は瘻孔からの抜け止めをするカフにも適用することができ、先側が細くなっているくさび形であることから、挿入しやすく取り扱いが容易であり、加療や施術の円滑さと安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるカテーテルによれば、臓器と係合するカフやバルーン等の膨張部を収縮時にくさび形にして挿入するので、挿入が容易であり、施術や施療を迅速に行うことができる。挿入が容易で患者に負担を掛けることがなく、医療事故の発生の心配もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
図1〜図5は本発明の一実施の形態を示している。
カテーテル10は、臓器に係合するための膨張部として前方カフ30を有しており、膨張部たる前方カフ30は収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成され、膨張時には気管支内で膨張して気管支を閉塞するものである。
【0023】
すなわち、カテーテル10は、主管20の先端部に前方カフ30を設け、前方カフ30より主管20の基端部寄りに後方カフ40を設けてある。
【0024】
膨張部たる前方カフ30は、熱可塑性樹脂による風船状であって、収縮時に先端部31が小径で、基端部32が大径のくさび形になるよう外力を加えながら加熱することにより、膨張時には風船状になり、収縮時にはくさび形になるようになっている。
【0025】
そして、主管20の横断面を示す図5でわかるように、主管20は、その断面に第1の空気路21と、第2の空気路25と、前方カフ30に空気を導通する先空気導通路27と、後方カフ40に空気を導通する後空気導通路28とを備えて成る。
【0026】
第1の空気路21は、主管20の先端側で前方カフ30と後方カフ40との間に後通気口22が開口し、第2の空気路25は前方カフ30より先に先通気口26が開口している。後方カフ40は、膨張したとき気管を閉塞するものであり、前方カフ30は、収縮時に先端部31が小径で基端部32が大径のくさび形になるよう形成され、膨張時には気管支内で膨張して気管支を閉塞するものである。
【0027】
主管20の第1の空気路21の基端側には第1通気口23が接続され、第2の空気路25の基端側には第2通気口24が接続されている。一般的には、第1通気口23は健全な肺である気管支に第1の空気路21の後通気口22から空気を導通させるものであり、第2通気口24は、治療を加えるべき肺または気管支に第2の空気路25の先通気口26から導通するものである。
【0028】
先空気導通路27には、主管20の基端側で先空気チューブ51が接続され、後空気導通路28には後空気チューブ55が接続されており、先空気チューブ51には先中継袋52が接続され、先中継袋52には逆止弁54付きの先空気導入口53が設けられ、後空気チューブ55には後中継袋56が接続され、後中継袋56には逆止弁58付きの後空気導入口57が設けられている。
【0029】
次に作用を説明する。
カテーテル10は、係合するための膨張部である前方カフ30と後方カフ40を収縮させた状態で臓器に挿入する。膨張部たる前方カフ30は収縮時に先端部31が小径で基端部32が大径のくさび形になっているので挿入時に細い方から挿入箇所にいれられるので必要な位置に円滑に挿入することができる。
【0030】
挿入してから膨張部である前方カフ30と後方カフ40に空気を導入して所定の大きさに膨らませれば要所に容易に係合させることができる。
【0031】
カテーテル10は例えば気管支を閉塞するものであり、カテーテル10では、先端部に膨張部として設けられた前方カフ30を、収縮時に先端部31が小径で基端部32が大径のくさび形に形成し、気管から気管支に挿入する。
【0032】
挿入時の際、前方カフ30を細い方から挿入箇所である気管から気管支にいれられるので必要な位置に円滑に挿入することができる。位置を定めてから空気を導入すれば気管支内で膨張して気管支が閉塞される。
【0033】
すなわち、位置が定まってから、先空気導入口53から空気を注入すれば、先中継袋52、先空気チューブ51、先空気導通路27から前方カフ30に空気が入り、前方カフ30が膨張する。空気の注入を止めても逆止弁54が空気の逆流を防止するので後方カフ40は膨張状態を維持する。同様に、後空気導入口57から空気を注入すれば、後中継袋56、後空気チューブ55、後空気導通路28から後方カフ40に空気が入り、後方カフ40が膨張する。空気の注入を止めても逆止弁58が空気の逆流を防止するので後方カフ40は膨張状態を維持する。
【0034】
前方カフ30がくさび形をしているので、カテーテル10の先端側は気管を経て二又の気管支の目的とする一方の気管支に容易に挿入することができる。挿入して位置を決めた後に後方カフ40に空気を導入すると気管が閉塞され、前方カフ30に空気を導入すると当該箇所の一方の気管支が閉塞される。
【0035】
すなわち、カテーテル10は、前方カフ30と後方カフ40により気管支を選択的に閉塞する。カテーテル10の先端部の前方カフ30が膨張時に一方の気管支を閉塞する。
【0036】
閉塞されなかった気管支へは、主管20の第1の空気路21から空気が流通可能となる。すなわち、先端側で前方カフ30と後方カフ40との間に開口した第1の空気路21から閉塞されなかった気管支に空気が流通可能となる。また、閉塞された気管支にも第2の空気路25から空気の流通は可能である。
【0037】
第2の空気路25が前方カフ30より先に開口して閉塞された気管支に導通しており、第2の空気路25を通じて閉塞された肺または気管支を施術したりして加療する。
【0038】
膨張部である前方カフ30は、熱可塑性樹脂による風船状に形成されており、収縮時にくさび形になるよう外力を加えて加熱してあるので、膨張時には風船状になり、収縮時にはくさび形になっている。
【0039】
カテーテル10を取り出すときは、逆止弁54を操作して空気を抜けば前方カフ30が収縮し、逆止弁58を操作すれば後方カフ40が収縮する。細身になったカテーテル10は容易に取り出すことが出来る。
【0040】
なお、膨張部は瘻孔からの抜け止めをするカフにも適用することができ、先側が細くなっているくさび形であることから、挿入しやすく取り扱いが容易であり、加療や施術の円滑さと安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカテーテルを、前方カフを収縮させて示した正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るカテーテルを、前方カフを膨張させて示した正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るカテーテルの先端部を、前方カフを収縮させて示した拡大平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るカテーテルの先端部を、前方カフを膨張させて示した拡大平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るカテーテルの主管の拡大横断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10…カテーテル
20…主管
21…第1の空気路
22…後通気口
23…第1通気口
24…第2通気口
25…第2の空気路
26…先通気口
27…先空気導通路
28…後空気導通路
30…前方カフ
31…先端部
32…基端部
40…後方カフ
51…先空気チューブ
52…先中継袋
53…先空気導入口
54…逆止弁
55…後空気チューブ
56…後中継袋
57…後空気導入口
58…逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器に係合するための膨張部を有するカテーテルにおいて、
前記膨張部は収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成したことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
先端部に膨張部として膨張時に気管または気管支を閉塞するカフを有するカテーテルにおいて、
前記カフは、収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成され、膨張時には気管または気管支内で膨張して気管または気管支を閉塞することを特徴とするカテーテル。
【請求項3】
気管支を選択的に閉塞するよう先端部に膨張時に気管支を閉塞する膨張部としてカフを有するカテーテルにおいて、
主管の先端部に前方カフを設け、該前方カフより基端部寄りに後方カフを設けて成り、
前記主管は、第1の空気路と、第2の空気路と、前記前方カフに空気を導通する先空気導通路と、前記後方カフに空気を導通する後空気導通路とを備えて成り、
前記第1の空気路は、先端側で前記前方カフと後方カフとの間に開口し、前記第2の空気路は前記前方カフより先に開口し、
前記後方カフは、膨張したとき気管を閉塞するものであり、
前記前方カフは、収縮時に先側が小径のくさび形になるよう形成され、膨張時には気管支内で膨張して気管支を閉塞することを特徴とするカテーテル。
【請求項4】
前記膨張部は、熱可塑性樹脂による風船状であって、収縮時にくさび形になるよう外力を加えながら加熱することにより、膨張時には風船状になり、収縮時にはくさび形になるようにしたことを特徴とする請求項1、2または3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記膨張部は瘻孔からの抜け止めをするカフであることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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