説明

カテーテル

【課題】生体組織の運動による変化を吸収するとともに生体組織に対する貫通穴の位置決めを確実に行うことができるカテーテルを提供すること。
【解決手段】内部に第1のルーメン10と第2のルーメン10とを有する細長い躯体をしており、基端側に第1のルーメン10に流体を取り入れる第1の開口7と第2のルーメン11に流体を取り入れる第2の開口8とを有し、第1のルーメン10と連通する少なくとも1つの第1の貫通穴5と第2のルーメン11と連通する第2の貫通穴9とを有するカテーテル本体2と、第2のルーメン11と連通し、膨張時に第1の貫通穴5を覆わずにカテーテル本体2に固定されており、膨張時に生体組織12の外部から生体組織12に対するカテーテル本体2の位置を規定するように構成された、少なくとも1つのバルーン3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体内に挿入されて用いられるカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間や人間以外の哺乳動物等に挿入されるカテーテルは、内部にチャネルを有する細長い管状をしている。この管状の躯体のうち体内に挿入される部分には、薬剤の吐出等を目的として内部チャネルと外部を連通する貫通穴が設けられている。
【0003】
なお、特許文献1には、カテーテルの先端開口を塞ぐためにバルーンを設けたものが記載されている。
【0004】
また、非特許文献1には、尿道または膀胱内に留置を行い、排尿、薬液の注入および排出、止血等に用いるカテーテルが記載され、このカテーテルの先端にバルーンを設けるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−119597号公報
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人 医薬品医療機器総合機構、医療用医薬品の添付文書情報、“JMS(登録商標)フォーリーカテーテル”、医療機器承認番号16300BZY00666000、2006年1月19日改訂(第3版)、インターネット<URL:1243576599625_0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したカテーテルを臓器等の生体組織に穿刺して、生体組織中の腫瘍等の投薬目標に薬剤等を投与する場合、貫通穴が投薬目標中に位置して動かないように、生体組織に対してカテーテルを位置規制する必要がある。
【0008】
しかしながら、生体は呼吸や運動などに従って、その形や姿勢を変化させており、これに合わせて生体組織の形状・位置も一定でなく常に変化する。このため、この生体組織の運動による変化を吸収してカテーテルの生体組織に対する貫通穴の位置決めを確実に行うことが要望されている。
【0009】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体組織の運動による変化を吸収するとともに生体組織に対する貫通穴の位置決めを確実に行うことができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、内部に第1のルーメンと第2のルーメンとを有する細長い躯体をしており、基端側に前記第1のルーメンに流体を取り入れる第1の開口と前記第2のルーメンに流体を取り入れる第2の開口とを有し、前記第1のルーメンと連通する少なくとも1つの第1の貫通穴と前記第2のルーメンと連通する第2の貫通穴とを有するカテーテル本体と、前記第2の貫通穴を経由して前記第2のルーメンと連通し、膨張時に前記第1の貫通穴を覆わない態様で前記カテーテル本体に固定されており、膨張時に生体組織の外部から前記生体組織に対する前記カテーテル本体の位置を規定するように構成された、少なくとも1つのバルーンと、を有することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンの膨張時の形状は、前記カテーテル本体の軸方向の最大長より、軸に直交する方向の最大長の方が、長いものであることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンの膨張時の形状は、略球体であることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンの膨張時の形状は、略円環体であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンは、各々が独立している複数のサブバルーンにより構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーン本体の先端は、尖った穿刺部であることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンは、膨張時に前記バルーン本体の先端を覆うものであることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記カテーテル本体の先端は、開口部であることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンは、膨張時に前記カテーテル本体の先端を覆い、前記開口を塞ぐものであることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記貫通穴は、前記カテーテル本体の側面に位置しており、前記バルーンは、前記貫通穴よりも前記カテーテル本体の先端側に位置していることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記カテーテル本体の前記貫通穴より基端側の側面に係留部が配設されていることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記貫通穴は、前記カテーテル本体の側面に位置しており、前記バルーンは、前記貫通穴よりも前記カテーテル本体の基端側に位置していることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記カテーテル本体の前記貫通穴より先端側の側面に係留部が配設されていることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記貫通穴は、前記カテーテル本体の側面に位置しており、前記少なくとも1つのバルーンは、前記貫通穴よりも前記カテーテル本体の先端側に位置している第1のバルーンと、基端側に位置している第2のバルーンとを含むことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記カテーテル先端に取り付け可能な別のバルーンをさらに有することを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記カテーテル本体に対してスライド可能な部材であり、内部に第3のルーメンと前記カテーテル本体が挿通する両端が開いた第4のルーメンとを有する細長い躯体をしており、基端側に前記第3のルーメンに流体を取り入れる第3の開口を有するスライド部材本体と、前記第3のルーメンと連通し、前記スライド部材本体に固定され、膨張時に生体組織の外部から前記生体組織に対する前記スライド部材本体の位置を規定するように構成された少なくとも1つの第2のバルーンと、を有するスライド部材をさらに有することを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンは、前記第1の貫通穴の先端側から基端側に渡って位置しており、前記第1の貫通穴と前記バルーン外部との空間を連通させる連通路が前記バルーンに設けられていることを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記連通路は、スリットであることを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記第1の貫通穴は、前記生体組織に覆われない前記連通路に対応する位置に設けられることを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンは、前記生体組織に覆われない部分に対応する部分の厚さが前記生体組織に覆われる部分に対応する部分の厚さに比して薄いことを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記第1の貫通穴は、前記生体組織に覆われる部分に設けられることを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記バルーンは、前記生体組織に覆われない部分の少なくとも一端に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、内部に第1のルーメンと第2のルーメンとを有する細長い躯体をしており、基端側に前記第1のルーメンに流体を取り入れる第1の開口と前記第2のルーメンに流体を取り入れる第2の開口とを有し、前記第1のルーメンと連通する少なくとも1つの第1の貫通穴と前記第2のルーメンと連通する第2の貫通穴とを有するカテーテル本体と、前記第2の貫通穴を経由して前記第2のルーメンと連通し、膨張時に前記第1の貫通穴を覆わない態様で前記カテーテル本体に固定されており、膨張時に生体組織の外部から前記生体組織に対する前記カテーテル本体の位置を規定するように構成された、少なくとも1つのバルーンと、を有するカテーテルが提供される。このバルーンの弾性と復元性によって、生体組織の運動による変化を吸収するとともに生体組織に対する貫通穴の位置決めを確実に行うことができる。また、カテーテルの生体組織からの抜出も、バルーンから流体を抜いてバルーンを縮めることにより、容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルの構成を示す断面模式図である。
【図2】図2は、図1に示したカテーテルの構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルのバルーン形状を変えた構成を示す断面模式図である。
【図4】図4は、図3に示したカテーテルの構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルのバルーンを分割したバルーン形状を変えた構成を示す断面模式図である。
【図6】図6は、図1のカテーテルの先端が開口している構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、図1のカテーテルの先端を塞ぐバルーンの構成を示す斜視図である。
【図8】図8は、バルーンに加えて係留部を設けた一例を示す図である。
【図9】図9は、バルーンに加えて係留部を設け他の例を示す図である。
【図10−1】図10−1は、バルーンを貫通穴よりカテーテル本体の先端側に配置し、係留部を貫通穴よりカテーテル本体の基端側に配置した一例を示す模式図である。
【図10−2】図10−2は、バルーンを貫通穴よりカテーテル本体の基端側に配置し、係留部を貫通穴よりカテーテル本体の先端側に配置した一例を示す模式図である。
【図10−3】図10−3は、2つのバルーンを配置した一例を示す図である。
【図11】図11は、2つのバルーンのうち1つのバルーンを分離可能にした構成を示す図である。
【図12】図12は、2つのバルーンのうち1つのバルーンを分離可能にし、この1つのバルーンをスライド可能に装着できる構成を示す図である。
【図13】図13は、図12に示したスライド部材の断面構成を示す図である。
【図14】図14は、図12に示したカテーテル本体の断面構成を示す図である。
【図15】図15は、この発明の実施の形態2にかかるカテーテルの構成を示す斜視図である。
【図16】図16は、図15に示したカテーテルの貫通穴近傍の構成を示す断面図である。
【図17】図17は、この発明の実施の形態2にかかるカテーテルの変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態であるカテーテルについて説明する。
【0035】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかるカテーテルの構成を示す断面模式図である。また、図2は、図1に示したカテーテルの構成を示す斜視図である。図1および図2において、このカテーテル1は、カテーテル本体2とバルーン3とを有する。なお、図1(a)および図2は、バルーン3が膨張した状態を示し、図1(b)は、バルーン3が萎んだ状態を示している。
【0036】
カテーテル本体2は、内部に第1のルーメン10と第2のルーメン11とを有する細長い躯体をしており、基端側に第1のルーメン10に薬剤等の流体を取り入れる第1の開口7と第2のルーメン11に空気や水等の流体を取り入れる第2の開口8とを有する。また、カテーテル本体2の側面には、第1のルーメン10と連通する少なくとも1つの第1の貫通穴5と第2のルーメン11と連通する第2の貫通穴9とが形成される。カテーテル本体2の基端部には分岐部6が設けられ、第1の開口7は分岐部6の基端に設けられている。また、カテーテル本体2の先端は、尖った穿刺部4となっている。カテーテル本体2は、例えば、シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニール、ポリエチレンなどの材質で形成することができる。
【0037】
ここで、第1の開口7から入った流体は、第1のルーメン10を通って第1の貫通穴5から、カテーテル1外部に吐出される。また、第2の開口8から入った流体は、第2のルーメン11を通って第2の貫通穴9に到り、バルーン3に流入してバルーン3を膨張させる。
【0038】
バルーン3は、第2の貫通穴9を経由して第2のルーメン11と連通し、膨張時に第1の貫通穴5を覆わない態様でカテーテル本体2に固定されている。このバルーン3は、膨張時に生体組織12の外部から生体組織12に対するカテーテル本体2の位置を規定するものである。バルーン3は、膨張時に生体組織12に接することが好ましい。また、バルーン3は、例えばシリコンゴムやラテックスで形成することができる。なお、バルーン3は、膨張時に第1の貫通穴5を覆わない態様であればよく、第1の貫通穴5側に傾いていてもよいし、非膨張時あるいは膨張過程で第1の貫通穴5を覆っていてもよい。要は、バルーン3の膨張時に第1の貫通穴が塞がっていなければよい。
【0039】
バルーン3は、図1および図2に示すように、略球形であり、カテーテル本体2の先端側と後端側とが各々開口となっており、この開口を結ぶ通路にカテーテル本体2が挿通され、固定されている。この開口の関係で、バルーン2の膨張時の形状は、カテーテル本体2の軸方向の最大長L1より、軸に直交する方向の最大長L2の方が、長いものである。この形状的特徴により、生体組織12とバルーン3がと広い面積で接するようになっている。なお、バルーン3は、カテーテル1が生体組織12に穿刺された時点では萎んでいるが、穿刺後に第2の開口8から流入してきた流体によって膨張する。
【0040】
なお、バルーン3の形状は、略球形に限定されない。たとえば、図3および図4に示したカテーテル1aのように、略球形のバルーン3に替えて略円環形(ドーナッツ型)のバルーン15としてもよい。この場合でもバルーン15の膨張時の形状は、カテーテル本体2の軸方向の最大長L1より、軸に直交する方向の最大長L2の方が長くなっている。
【0041】
さらに、図5に示したカテーテル1bのように、各々が独立している複数のサブバルーン16a,16b,16cより構成されているバルーン16としてもよい。このようにバルーン16を複数のサブバルーン16a〜16cに分割することで、バルーン16を膨張させるのに必要な流体の量を少なくすることができる。この場合でもバルーン16の膨張時の形状は、カテーテル本体2の軸方向の最大長L1より、軸に直交する方向の最大長L2の方が長くなっている。
【0042】
また、図6に示したカテーテル1cのように、カテーテル本体2の先端部が開口17であってもよい。第2の開口8と開口17とを使用してガイドワイヤ18を用いることができる。なお、図6では、バルーン3が萎んでいる状態を示している。この場合、薬剤等の吐出用の経路(第1の開口7、第1のルーメン10、第1の貫通穴5)およびバルーン3を膨張させるための経路(第2の開口8、第2のルーメン11、第2の貫通穴9)に加えて、ガイドワイヤ用の経路(ワイヤ挿入用開口18a、ガイドワイヤ用ルーメン18b、開口17)を備える。
【0043】
さらに、図7に示したカテーテル1dのように、膨張時にカテーテル本体2の先端を覆うように構成したバルーン20としてもよい。この場合、カテーテル本体2の先端が穿刺部4となっている場合は、鋭利な穿刺部4が膨張時のバルーン20によって覆われ、穿刺部4によって生体内部を傷つける恐れがなくなる。また、カテーテル本体2の先端が開口17になっている場合は、膨張時のバルーン20が開口17を塞ぐようになっている。これにより、開口17を介して体液等がカテーテル1d内に侵入するのを防止できる。
【0044】
ところで、上述したカテーテル1,1a〜1dは、流体により膨張するバルーン3,15,16,20により生体組織12に対するカテーテル1,1a〜1dの位置を、生体組織12の外表とバルーン3,15,16,20とが当接することで規定するものである。しかし、これ以外にも、たとえば、図8に示した、フランジ21や、図9に示した、縫合糸が通る穴22aが形成された突起22などの係留部をさらに設けてカテーテル1,1a〜1dを生体組織12に係留するようにしてもよい。なお、フランジ21は、生体組織12に当接させるのみでなく、図8に示すように、縫合糸が通る穴21aを形成して係留することが好ましい。
【0045】
この場合、図10−1に示すように、バルーン3を貫通穴5よりカテーテル本体2の先端側に配置し、フランジ21や突起22などの係留部31を貫通穴5よりカテーテル本体2の基端側に配置してもよいし、図10−2に示すように、バルーン3を貫通穴5よりカテーテル本体2の基端側に配置し、係留部31を貫通穴5よりカテーテル本体2の先端側に配置してもよい。もちろん、図10−3に示すように、バルーン3を貫通穴5よりカテーテル本体2の先端側に配置するとともに、バルーン3に対応するバルーン33を貫通穴5よりカテーテル本体2の基端側に配置してもよい。この場合、生体組織12は、2つのバルーン3,33によって挟まれ、位置決めされることになる。
【0046】
また、2つのバルーンを用いる場合、図11に示すように、2つのバルーン3,35のうち、一方のバルーン3を貫通穴5よりカテーテル本体2の基端側に配置しておき、他方のバルーン35を、カテーテル本体2の先端に取り付け可能としてもよい。このバルーン35は、カテーテル本体2の先端に取り付け可能なパイプ34に、膨張した状態で取り付けられている。そして、このパイプ34をカテーテル本体2の先端に取り付けることによって、バルーン35が生体組織12に当接し、カテーテル本体2を位置決めすることができる。
【0047】
この他方のバルーンは、カテーテル本体2にスライド可能に取り付けられるようにしてもよい。すなわち、図12に示すように、カテーテル本体2に対してスライド可能な部材であるスライド部材40を用いて、スライド部材40に固定されたバルーン41と、カテーテル本体2に固定されたバルーン3とで生体組織12を挟んでカテーテル1の位置を規定するようにしてもよい。
【0048】
スライド部材40は、スライド部材本体42を有し、スライド部材本体42は、図13の断面図に示すように、内部に第3のルーメン50とカテーテル本体2が挿通する両端が開いた第4のルーメン51とを有する細長い躯体をしており、基端側に第3のルーメン50に流体を取り入れる第3の開口44を有した分岐部43を備える。バルーン41は、第3のルーメン50と連通し、スライド部材本体42に固定されている。バルーン41は、バルーン3と同様に、膨張時に生体組織12の外部から生体組織12に対するスライド部材40の位置を規定するものである。これによって、様々なサイズの生体組織12に対応できる。
【0049】
一方、スライド部材40が取り付けられるカテーテル本体2は、図14の断面図に示すように、内部に薬剤等用の第1のルーメン52と、カテーテル本体2の先端側に取り付けられたバルーン3を膨張させるための第2のルーメン53と、ガイドワイヤ送通用のルーメン54とを有する。第1のルーメン52は、カテーテル本体2の基端側に設けられた分岐部46の基端に形成された薬剤用の第1の開口47と貫通穴5とを連通させる。また、第2のルーメン53は、カテーテル本体2の基端側に設けられた分岐部49の基端に形成された、バルーン3の膨張用の第2の開口48と、バルーン3内部とを連通させる。さらに、カテーテル本体2の基端には、ガイドワイヤ用の開口45が形成され、カテーテル本体2の先端と基端とが、図示しないルーメンによって連通し、ガイドワイヤが挿通可能となる。
【0050】
ここで、少なくともバルーン3が萎んだ状態で、カテーテル1の先端側からスライド部材40がカテーテル本体2に組み合わされる。この結果、図12(b)に示すように、カテーテル本体2の先端に設けられたバルーン3と、軸方向に移動可能なスライド部材40の先端側に設けられたバルーン41とによって、貫通孔5が配置される生体組織12を挟み、カテーテル本体2とスライド部材40とが位置決めされる。この場合、各バルーン3,41は、独立して膨張させることができる。
【0051】
この実施の形態1では、少なくともバルーン3によって生体組織12に対するカテーテル本体2の位置決めを行うことができるとともに、生体組織12および他の生体組織の運動による変化をバルーン3が吸収してカテーテル1の位置決めを確実に行うことができる。
【0052】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、1つのバルーンが生体組織の一端に接してカテーテルを位置決めするようにしていたが、この実施の形態2では、1つのバルーンが生体組織の両端に接してカテーテルを位置決めするようにしている。
【0053】
図15は、この発明の実施の形態2にかかるカテーテルの構成を示す斜視図である。また、図16は、図15に示したカテーテルのバルーンが生体組織に配置された状態を示す断面図である。図15および図16に示すように、カテーテル本体2に設けられるバルーン103は、第1の貫通穴5の先端側から基端側に渡って位置しており、第1の貫通穴5とバルーン103外部との空間を連通させる連通路としてのスリット110が設けられている。すなわち、このスリット110に対応する位置には、バルーン103が介在せず、薬剤等を吐出するルーメンから貫通穴5を介して生体組織12がそのまま接し、あるいは生体組織12との間に空間を形成する。バルーン103の軸方向両端側のカテーテル本体2側面には、貫通穴9が設けられ、バルーン103を膨張させるための流体が流入される。
【0054】
そして、カテーテル本体2を生体組織12に穿刺(貫通)し、貫通孔9を介して流体を流入してバルーン103を膨張させると、図15(b)および図16に示すように、生体組織12外に位置する部分のバルーン103が主として膨張し、生体組織12とバルーン103とが密着する。これによって、生体組織12に対するカテーテル本体2の位置決めが行われるとともに、生体組織12および他の生体組織の運動による変化をバルーン103が吸収してカテーテル101の位置決めを確実に行うことができる。
【0055】
なお、図16に示すように、バルーン103は、バルーン103が生体組織12によって覆われる部分E1に比してバルーン103が生体組織12によって覆われない部分E2の厚さ(バルーンの膜厚)を薄くしておくことが好ましい。これによって、生体組織12によって覆われない部分のバルーン103は、カテーテル本体2の軸方向に垂直な方向に膨張しやすくなり、バルーン103と生体組織12との接触面積を大きくすることができ、カテーテル101の安定した位置決めを行うことができる。
【0056】
また、図17に示すように、スリット110に替えて、貫通穴120としてもよい。この場合、スリット110と同様に、生体組織12と貫通穴5との間に空隙が生成しやすく、薬剤等の吐出を確実に行うことができるとともに、貫通穴5の薬剤等による詰まりの発生を少なくすることができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態では、バルーンの膨張時のみについて説明したが、これらのバルーンは、すべてバルーン内の流体を吸引することによって、収縮が可能であり、容易にカテーテルを体外に引き抜くことができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1a〜1d,101 カテーテル
2 カテーテル本体
3,15,16,20,33,35,41,103 バルーン
4 穿刺部
5,9,120 貫通穴
6,43,46,49 分岐部
7 第1の開口
8 第2の開口
10,52 第1のルーメン
11,53 第2のルーメン
12 生体組織
16a〜16c サブバルーン
17,44,45,47,48 開口
18 ガイドワイヤ
18a ワイヤ挿入用開口
18b ガイドワイヤ用ルーメン
21 フランジ
22 突起
31 係留部
34 パイプ
40 スライド部材
42 スライド部材本体
50 第3のルーメン
51 第4のルーメン
54 ルーメン
110 スリット
L1,L2 最大長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1のルーメンと第2のルーメンとを有する細長い躯体をしており、基端側に前記第1のルーメンに流体を取り入れる第1の開口と前記第2のルーメンに流体を取り入れる第2の開口とを有し、前記第1のルーメンと連通する少なくとも1つの第1の貫通穴と前記第2のルーメンと連通する第2の貫通穴とを有するカテーテル本体と、
前記第2の貫通穴を経由して前記第2のルーメンと連通し、膨張時に前記第1の貫通穴を覆わない態様で前記カテーテル本体に固定されており、膨張時に生体組織の外部から前記生体組織に対する前記カテーテル本体の位置を規定するように構成された、少なくとも1つのバルーンと、
を有することを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンの膨張時の形状は、前記カテーテル本体の軸方向の最大長より、軸に直交する方向の最大長の方が、長いものであることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記バルーンの膨張時の形状は、略球体であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記バルーンの膨張時の形状は、略円環体であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記バルーンは、各々が独立している複数のサブバルーンにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記バルーン本体の先端は、尖った穿刺部であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記バルーンは、膨張時に前記バルーン本体の先端を覆うものであることを特徴とする請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記カテーテル本体の先端は、開口部であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記バルーンは、膨張時に前記カテーテル本体の先端を覆い、前記開口を塞ぐものであることを特徴とする請求項8に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記貫通穴は、前記カテーテル本体の側面に位置しており、
前記バルーンは、前記貫通穴よりも前記カテーテル本体の先端側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記カテーテル本体の前記貫通穴より基端側の側面に係留部が配設されていることを特徴とする請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記貫通穴は、前記カテーテル本体の側面に位置しており、
前記バルーンは、前記貫通穴よりも前記カテーテル本体の基端側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記カテーテル本体の前記貫通穴より先端側の側面に係留部が配設されていることを特徴とする請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記貫通穴は、前記カテーテル本体の側面に位置しており、
前記少なくとも1つのバルーンは、前記貫通穴よりも前記カテーテル本体の先端側に位置している第1のバルーンと、基端側に位置している第2のバルーンとを含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記カテーテル先端に取り付け可能な別のバルーンをさらに有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記カテーテル本体に対してスライド可能な部材であり、内部に第3のルーメンと前記カテーテル本体が挿通する両端が開いた第4のルーメンとを有する細長い躯体をしており、基端側に前記第3のルーメンに流体を取り入れる第3の開口を有するスライド部材本体と、
前記第3のルーメンと連通し、前記スライド部材本体に固定され、膨張時に生体組織の外部から前記生体組織に対する前記スライド部材本体の位置を規定するように構成された少なくとも1つの第2のバルーンと、
を有するスライド部材をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記バルーンは、前記第1の貫通穴の先端側から基端側に渡って位置しており、前記第1の貫通穴と前記バルーン外部との空間を連通させる連通路が前記バルーンに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記連通路は、スリットであることを特徴とする請求項17に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記第1の貫通穴は、前記生体組織に覆われない前記連通路に対応する位置に設けられることを特徴とする請求項17に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記バルーンは、前記生体組織に覆われない部分に対応する部分の厚さが前記生体組織に覆われる部分に対応する部分の厚さに比して薄いことを特徴とする請求項17に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記第1の貫通穴は、前記生体組織に覆われる部分に設けられることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記バルーンは、前記生体組織に覆われない部分の少なくとも一端に設けられることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−273988(P2010−273988A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131366(P2009−131366)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】