説明

カテーテル

【課題】造影の視認性が低下するといった不都合を抑制できるカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル10は、カテーテル本体11と、ハブ12とを備える。カテーテル本体11は、チューブ本体15と、チューブ本体15に埋設された造影コイル16とを備える。造影コイル16は、1本の線材27をチューブ本体15の軸線方向に螺旋状に巻回させることにより形成されている。造影コイル16は、造影マーカとして機能する密巻き部21と、該密巻き部21に連続して設けられるとともに密巻き部21よりも線材27の巻回ピッチが大きい粗巻き部22とを備える。粗巻き部22において密巻き部21から連続する所定範囲には、当該密巻き部21から離れるにつれて線材27の巻回ピッチが密巻き部21の巻回ピッチから徐々に大きくされたピッチ変化領域26が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは体内の腔、管、血管等に挿入する中空状の医療器具であり、例えば血栓の吸引、閉塞状態又は狭窄状態にある血管の通路確保、血管造影剤の注入などに際して用いられる。このようなカテーテルには、その先端部などに造影標識が設けられており、この造影標識により体内に挿入されたカテーテルの位置を体外から把握することが可能となっている。
【0003】
この種の造影標識として例えば特許文献1には、合成樹脂よりなるカテーテルチューブの内層及び外層の間に、X線不透過性を有する1本の線材を螺旋状に巻回させてなる造影コイルが開示されている。かかる造影コイルは、造影マーカとして機能する密巻き部と、螺旋のピッチが密巻き部よりも大きい疎巻き部とを備え、これら密巻き部と疎巻き部とが軸線方向に交互に並べられることにより構成されている。かかる造影コイルを有するカテーテルチューブを製造するに際しては、まず内層を構成する内側チューブの外周側に線材を巻回することにより造影コイルを形成し、その後造影コイルを覆うようにして内側チューブの外周側に外層を形成することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−236472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の造影コイルでは、密巻き部と疎巻き部との境界部において線材の巻回ピッチが大きく変化しているため、当該境界部において応力集中が発生し易くなっている。そのため、例えばカテーテルチューブの製造時において、造影コイルを内側チューブの外周側に形成してから該造影コイルを外層によって覆うまでの間、すなわち造影コイルが露出している間に、内側チューブの取り扱いに際して同チューブが曲げられたりすると、造影コイルの上記境界部に応力集中が発生し同境界部にて線材のほつれが生じるおそれがある。その場合、密巻き部の長さ(軸線方向の長さ)が短くなって造影の視認性の低下を招くことが懸念される。また、線材のほつれにより造影コイルの巻き径が大きくなることも考えられ、その場合巻き径が大きくなった部分では外層が薄くなったり又は線材が外層から露出したりするおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、造影コイルを備える構成において、造影の視認性が低下するといった不都合を抑制できるカテーテルを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明のカテーテルは、樹脂チューブと、該樹脂チューブに設けられ、1本の線材を前記樹脂チューブの軸線方向に螺旋状に巻回させることにより形成された造影コイルと、を備え、前記造影コイルは、造影マーカとして機能する密巻き部と、該密巻き部に連続して設けられ前記密巻き部よりも前記線材の巻回ピッチが大きい粗巻き部とを備え、前記造影コイルには、前記密巻き部と前記粗巻き部との境界部における前記線材のほつれを抑制するほつれ抑制部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、造影コイルにおいて密巻き部と粗巻き部との境界部における線材のほつれを抑制することにより、造影マーカとして機能する密巻き部の長さが短くなるのを抑制できる。これにより、造影の視認性の低下を抑制できる。また、線材のほつれを抑制することによりそのほつれた部分において造影コイルの巻き径が大きくなってしまうことを抑制できる。そのため、造影コイルを樹脂チューブに埋設させる構成にあっては、ほつれた線材の外側の樹脂層が薄くなったり、ほつれた線材が樹脂層から露出してしまったりする不都合を抑制できる。
【0009】
第2の発明のカテーテルは、第1の発明において、前記粗巻き部において前記密巻き部から連続する所定の範囲には、前記ほつれ抑制部として、当該密巻き部から離れるにつれて前記線材の巻回ピッチを前記密巻き部の巻回ピッチから徐々に大きくしたピッチ変化領域が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、粗巻き部における密巻き部から連続する所定範囲(ピッチ変化領域)においては密巻き部から離れるにつれて線材の巻回ピッチが密巻き部の巻回ピッチから徐々に大きくなっているため、密巻き部と粗巻き部との境界部において応力が集中するのを緩和できる。これにより、同境界部での線材のほつれを抑制できる。また、かかるピッチ変化領域が密巻き部と粗巻き部との隣接部分に設けられていることから、密巻き部と粗巻き部との境界部において局所的に剛性が変化するのを抑制できる。そのため、カテーテルの耐キンク性の低下を抑制しながら、上記第1の発明の効果を得ることができる。
【0011】
第3の発明のカテーテルは、第1又は第2の発明において、前記樹脂チューブは、樹脂層として、前記造影コイルの内側に形成されたコイル内側層を有し、前記ほつれ抑制部として、前記造影コイルの前記境界部を前記コイル内側層に対して固着する固着部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、造影コイルにおける密巻き部と粗巻き部との境界部が樹脂チューブの樹脂層のうち造影コイルの内側に配置されたコイル内側層の外周面に固着されているため、当該境界部における線材のほつれを抑制できる。
【0013】
第4の発明のカテーテルは、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記樹脂チューブは、樹脂層として、前記造影コイルの内側に形成されたコイル内側層を有し、前記造影コイルにおける前記境界部には、前記ほつれ抑制部として、前記造影コイルにおける前記境界部以外の部位よりも前記コイル内側層への前記線材の食い込み量が大きくされた食い込み部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、造影コイルの線材が、密巻き部と粗巻き部との境界部では、当該境界部以外の部位よりもコイル内側層の外周面に大きく食い込んでいるため、当該境界部において線材とコイル内側層との固定度を高めることができる。これにより、当該境界部における線材のほつれを抑制できる。
【0015】
第5の発明のカテーテルは、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記造影コイルは、前記樹脂チューブの軸線方向に隔てて配置された複数の前記密巻き部と、それら各密巻き部を連結するように設けられた前記粗巻き部とを備え、前記粗巻き部と前記各密巻き部との境界部ごとにそれぞれ前記ほつれ抑制部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
樹脂チューブにおいて複数の箇所に造影マーカ(密巻き部)を配置する場合、一本の線材を用いて複数の密巻き部を有する造影コイルを形成することが考えられる。その場合、複数の密巻き部の間にはそれら両者を連結すべく粗巻き部が設けられることになり、粗巻き部とその両側の密巻き部との各境界部にてそれぞれ線材のほつれの問題が生じうる。そこで、本発明では、かかる造影コイルの上記各境界部ごとにそれぞれほつれ抑制部を設けることとしている。これにより、各密巻き部についてそれぞれ長さが短くなるのを抑制できるため、かかる造影コイルにおいて視認性の低下を好適に抑制できる。また、各密巻き部の長さが短くなるのを抑制することで、各密巻き部同士の間隔が大きくなることを抑制できるため、各密巻き部の間隔を基準(基準長さ)として体内における病変部の長さ等を測定するにあたって測定精度が低下してしまうのを抑制できる。
【0017】
第6の発明のカテーテルは、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記樹脂チューブの軸線方向における前記造影コイルの両端部のうち少なくともいずれかには前記粗巻き部が配置されていることを特徴とする。
【0018】
ところで、カテーテルにおいて造影コイルが設けられている部位では剛性が高くなっている一方、造影コイルが設けられていない部位では剛性が低くなっていると考えられる。この場合、造影コイルの端部においてカテーテルの剛性が大きく変化することとなり、耐キンク性の点で懸念がある。この点本発明では、造影コイルの端部に粗巻き部を配置しているためカテーテルの剛性の変化を抑制でき、その結果耐キンク性の低下を抑制できる。
【0019】
第7の発明のカテーテルは、第6の発明において、前記造影コイルにおいて前記軸線方向の端部に配置された前記粗巻き部では、当該粗巻き部に隣接する密巻き部から離れるにしたがって前記線材の巻回ピッチが大きくなっていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、造影コイルの端部におけるカテーテルの剛性の変化をより一層抑制できるため、耐キンク性の低下について更に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】カテーテル本体の先端側を拡大して示す断面図。
【図2】カテーテルの概略構成を示す側面図。
【図3】造影コイルを形成する様子を示す図。
【図4】内管の移動速度の経時変化を示すタイムチャート。
【図5】他の実施形態におけるカテーテル本体の先端側を示す断面図。
【図6】他の実施形態におけるカテーテル本体の先端側を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。先ず図2を参照しながらカテーテル10の概略構成を説明する。図2はカテーテル10の概略構成を示す側面図である。
【0023】
図2に示すように、カテーテル10は、チューブ状をなすカテーテル本体11と、当該カテーテル本体11の基端部に装着されたハブ12とを備えている。
【0024】
カテーテル本体11のルーメン13(図1参照)内には、血管等へカテーテル10を挿入する際にガイドワイヤGが挿通される。また、ルーメン13は、造影剤、薬液、洗浄液等の通路として用いられる。ハブ12は、ルーメン13内へのガイドワイヤGの挿入口、ルーメン13内への造影剤、薬液、洗浄液等の注入口等として機能し、また、カテーテル10を操作する際の把持部としても機能する。なお、カテーテル10の長さ寸法は、1m〜2mとなっている。
【0025】
次に、カテーテル本体11の先端側(遠位端側)の構成について図1に基づいて説明する。図1は、カテーテル本体11の先端側を拡大して示す断面図である。
【0026】
図1に示すように、カテーテル本体11は、合成樹脂により管状に形成されたチューブ本体15と、そのチューブ本体15に埋設された造影コイル16とを備える。チューブ本体15は、複数種類の樹脂が積層されてなる複層構造を有しており、具体的にはチューブ本体15(カテーテル本体11)の内周面を形成する内層17と、チューブ本体15の外周面を形成する外層18とを有している。なおここで、チューブ本体15が樹脂チューブに相当し、内層17がコイル内側層に相当する。
【0027】
内層17は、合成樹脂により形成されており、例えば低摩擦材料としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いて形成されている。これにより、カテーテル本体11のルーメン13内にガイドワイヤや他のカテーテルを挿通させる場合に、その挿通させたガイドワイヤや他のカテーテルとカテーテル本体11の内周面との間に生じる摺動抵抗を低減させることが可能となる。但し、内層17を形成する材料としてPTFE以外の低摩擦材料を用いてもよく、例えばポリフッ化ビニルデンやパーフロロアルコキシ樹脂等他のフッ素系樹脂を用いてもよい。また、フッ素系樹脂以外の材料を用いてもよく、例えばポリアミド、ポリイミド、高密度ポリエチレン等を用いてもよい。
【0028】
外層18は、合成樹脂により形成されており、例えばポリアミド系樹脂により形成されている。但し、外層18を形成する材料は必ずしもポリアミド系樹脂に限ることはなく、例えばポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、シリコンゴム等を用いてもよい。なお、カテーテル本体11(外層18)の外周面に滑りをよくするための親水性コーティング又は疎水性コーティングを施してもよい。
【0029】
造影コイル16は、X線投影下において体外から視認可能に構成されている。造影コイル16は、1本の線材27をチューブ本体15の軸線周りに螺旋状に巻回させることにより形成されている。造影コイル16は、チューブ本体15において先端側(遠位端側)に埋設されており、具体的にはその内周側を内層17の外周面に接触させた状態で外層18に埋設されている。また、造影コイル16は、その巻き(巻回)径が造影コイル16の軸線方向全域において一定とされている。
【0030】
線材27は、X線不透過性を有する金属材料により形成されている。線材27の材料としては、例えば金、銀、白金、イリジウム等を含む金属材料を用いることができる。また、線材27は、その線径が長手方向全域に亘って一定とされており、例えば線径が0.02mm〜0.03mmに設定されている。
【0031】
造影コイル16は、線材27の巻回ピッチ(詳しくは、線材27の一巻きにつき線材27がチューブ本体15の軸線方向に変位する長さ)が大小異なる密巻き部21及び粗巻き部22を備える。具体的には、造影コイル16は、複数(図2では2つ)の密巻き部21と、該密巻き部21よりも巻回ピッチが大きい複数(図2では3つ)の粗巻き部22とを備え、これら密巻き部21と粗巻き部22とが軸線方向に交互に配置されることにより構成されている。
【0032】
密巻き部21は、造影コイル16において造影マーカとして機能する部分である。すなわち、本造影コイル16は、X線透視下においてこの密巻き部21の位置を確認することによりカテーテル本体11の先端側の位置を把握するものとなっている。密巻き部21では、線材27の巻回ピッチが軸線方向全域において一定とされており、具体的には線材27の巻回ピッチが線材27の線径と同じとされている。この場合、密巻き部21では、軸線方向に隣接する線材27(詳細にはその巻回部分)同士が互いに接触した状態にある。また、各密巻き部21はそれぞれ軸線方向の長さが同じとされている。
【0033】
なお、密巻き部21において軸線方向に隣接する線材27同士を接触させることに代えて所定の微小隙間を隔てて互いに近接させてもよい。例えば、線材27の巻回ピッチを線材27の線径よりも大きくかつ線材27の線径の2倍以下に設定することで、隣接する線材27同士を近接させることができる。
【0034】
粗巻き部22は、造影コイル16において各密巻き部21の間に設けられた中間粗巻き部22aと、造影コイル16において軸線方向の両端部に設けられた2つの端部粗巻き部22bとを備える。中間粗巻き部22aは、軸線方向において中間部に形成されたピッチ一定領域25と、ピッチ一定領域25を挟んで両側に形成された2つのピッチ変化領域26とを備えている。ピッチ一定領域25では、線材27の巻回ピッチが軸線方向全域に亘って一定とされており、その巻回ピッチは密巻き部21における巻回ピッチよりも大きいものとなっている。
【0035】
一方、各ピッチ変化領域26ではそれぞれ線材27の巻回ピッチが軸線方向において変化している。各ピッチ変化領域26では、線材27の巻回ピッチが、密巻き部21における巻回ピッチよりも大きくかつピッチ一定領域25における巻回ピッチよりも小さい範囲で変化している。具体的には、各ピッチ変化領域26ではそれぞれピッチ一定領域25から離れるにしたがって線材27の巻回ピッチが徐々に小さくなっている。換言すると、各ピッチ変化領域26では隣接する密巻き部21から離れるにしたがって線材27の巻回ピッチが当該密巻き部21の巻回ピッチから徐々に大きくなっており、より詳しくは線材27一巻きごとに大きくなっている。なおここで、ピッチ変化領域26がほつれ抑制部に相当する。
【0036】
各端部粗巻き部22bではそれぞれ隣接する密巻き部21から離れるにしたがって線材27の巻回ピッチが大きくなっており、具体的には隣接する密巻き部21から離れるにしたがって徐々に(より詳しくは線材27一巻きごとに)巻回ピッチが大きくなっている。この場合、端部粗巻き部22bの全域が「ピッチ変化領域」に相当する。また、各端部粗巻き部22bにおいて密巻き部21とは反対側の端部は自由端29となっており、この自由端29は造影コイル16の軸線方向の端部に相当する。各端部粗巻き部22bの自由端29、すなわち造影コイル16の両端部(線材27の両端部)はそれぞれチューブ本体15の内層17の外周面に熱溶着により接合されている。これにより、造影コイル16がチューブ本体15に対して位置ずれするのが抑制されている。また、造影コイル16はチューブ本体15に埋設されているため、その点からも造影コイル16の位置ずれが抑制されている。
【0037】
次に、カテーテル本体11の製造手順について図3に基づいて説明する。図3は、造影コイル16を形成する様子を示す図である。
【0038】
まず図3に示すように、内層17を構成する内管35の外周面に線材27を螺旋状に巻回させることにより造影コイル16を形成するコイル形成工程を行う。本工程では、線材27の巻回を、線材供給装置30(詳しくはそのノズル30a)より線材27を繰り出しながら、その繰り出した線材27を、内管35を軸線方向に移動させつつ軸周りに回転させることで内管35に巻き付けることにより行う。この場合、線材27を所定の巻回ピッチで巻回すべく、内管35の移動速度を調整する。内管35の移動及びその速度調整は図示しない専用の移動装置を用いて行う。また、ここでは、内管35を軸線方向において先端側を先頭として移動させることで、線材27を内管35の先端側から基端側に向かって巻き付けていくことを想定している。
【0039】
次に、線材27を所定の巻回ピッチで巻回すべく、内管35の移動速度を調整する際の調整内容について説明する。以下、かかる内管35の移動速度調整について図4を用いて説明する。図4は内管35の移動速度の経時変化を示すタイムチャートである。なお、この速度調整は、移動装置の有するコントローラによる制御により実現される。また、内管35の回転速度は一定に保たれている。
【0040】
図4に示すように、まず時刻t0において内管35の(軸線方向への)移動及び回転が開始される。これにより、内管35に対する線材27の巻き付けが開始される。また、この際、内管35の移動速度はV1とされる。なお、時刻t0の前に予め線材27を内管35の外周面に接触状態で仮止めしておく。
【0041】
時刻t1からt2にかけて内管35の移動速度をV1からV2(V1>V2)に徐々に減少させる。具体的には、内管35の移動速度を時刻t1からの経過時間に比例して減少させていく。この場合、線材27は、内管35に対して先端側から基端側に向かうにつれて巻回ピッチが小さくなるように巻き付けられる。これにより、造影コイル16における先端側の端部粗巻き部22bが形成される。
【0042】
時刻t2からt3までの間は、内管35の移動速度が一定に、具体的にはV2に保たれる。この場合、線材27は、内管35に対して一定の巻回ピッチで巻き付けられる。これにより、造影コイル16における先端側の密巻き部21が形成される。
【0043】
時刻t3からt4にかけて内管35の移動速度をV2からV1に徐々に上昇させる。具体的には、内管35の移動速度を時刻t3からの経過時間に比例して上昇させていく。この場合、線材27は、内管35に対して先端側から基端側に向かうにつれて巻回ピッチが大きくなるように巻き付けられる。これにより、造影コイル16の中間粗巻き部22aにおける先端側のピッチ変化領域26が形成される。
【0044】
時刻t4からt5までの間は、内管35の移動速度が一定に、具体的にはV1に保たれる。この場合、線材27は、内管35に対して一定の巻回ピッチで巻き付けられる。これにより、中間粗巻き部22aにおけるピッチ一定領域25が形成される。
【0045】
時刻t5からt6にかけて内管35の移動速度をV1からV2に減少させる。具体的には、内管35の移動速度を時刻t5からの経過時間に比例して減少させていく。この場合、線材27は、内管35に対して先端側から基端側に向かうにつれて巻回ピッチが小さくなるように巻き付けられる。これにより、中間粗巻き部22aにおける基端側のピッチ変化領域26が形成される。以上により、中間粗巻き部22aが形成される。
【0046】
時刻t6からt7までの間は、内管35の移動速度が一定(V2)に保たれ、その後時刻t7からt8にかけて内管35の移動速度がV2からV1に上昇する。これにより、造影コイル16における基端側の密巻き部21と、基端側の端部粗巻き部22bとが形成される。その後時刻t9において内管35の移動及び回転が停止する。これにより、内管35に対する線材27の巻き付けが終了する。
【0047】
その後、線材27の巻き付けにおいて時刻t0からt1までの間、及び時刻t8からt9までの間に巻き付けられた線材27の巻き部分、すなわち余剰部分をカットする。これにより、造影コイル16が形成される。その後、造影コイル16の軸線方向の両端部をそれぞれ内管35の外周面に熱溶着することで接合する。これにより、その後の工程(例えば後述する被覆工程など)において、造影コイル16が内管35に対して位置ずれするのを抑制できる。
【0048】
次に、外層18を構成する外管(図示略)により造影コイル16を外周側から被覆する被覆工程を行う。この場合、内管35の外周面と外管の内周面とを熱溶着により接合する。これにより、内層17と外層18とからなるチューブ本体15が形成され、そのチューブ本体15に造影コイル16が埋設される。つまり、カテーテル本体11が形成される。その後、後工程として、カテーテル本体11にハブ12を接続する工程等を行うことで、カテーテル10の製造が完了する。
【0049】
なお、上述の説明では、内管35の回転速度を一定に保ちながら内管35の移動速度を調整することで線材27を所定の巻回ピッチで巻回するようにしたが、これに代えて、内管35の移動速度を一定に保ちながら内管35の回転速度を調整することにより、線材27を所定の巻回ピッチで巻回してもよい。また、内管35の移動速度及び回転速度の双方を調整することにより線材27を所定の巻回ピッチで巻回してもよい。
【0050】
次に、カテーテル10の使用方法について説明する。
【0051】
まず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通する。次いで、ガイドワイヤGをカテーテル10のルーメン13及びガイディングカテーテル内に挿通し、治療対象箇所又は検査対象箇所を越える位置まで挿入する。続いて、ガイドワイヤGに沿ってカテーテル10を、押引又は捻り操作を加えながら治療対象箇所又は検査対象箇所まで挿入する。この際、X線投影下において、造影コイル16の密巻き部21の位置を確認しながら、カテーテル本体11の先端部を治療対象箇所又は検査対象箇所まで導入する。カテーテル本体11の先端部が治療対象箇所又は検査対象箇所に到達したら、薬液や造影剤を注入し治療や検査を行う。
【0052】
ここで上述したように、造影コイル16は、その軸線方向における両端部にそれぞれ粗巻き部22(端部粗巻き部22b)が配置されているため、造影コイル16の両端部においてカテーテル本体11の剛性が極端に変化することが抑制されている。具体的には、各端部粗巻き部22bではそれぞれ線材27の巻回ピッチが密巻き部21から離れるにつれて大きくなっているため、造影コイル16の両端部において剛性の変化が滑らかにされている。また、中間粗巻き部22aには各密巻き部21にそれぞれ隣接する2つのピッチ変化領域26が設けられているため、中間粗巻き部22aと各密巻き部21との境界部においてそれぞれカテーテル本体11の剛性が大きく変化することが抑制されている。これらにより、本カテーテル本体11では、造影コイル16の設置に起因した耐キンク性の低下が抑制されている。したがって、カテーテル本体11を体内に挿入するに際し、カテーテル本体11が造影コイル16の設置部位にて屈曲してしまう等の不都合を抑制できる。
【0053】
なお、カテーテル10は上記のように主として血管内を通されて、当該血管内を治療又は検査するために用いられるが、血管以外の尿管や消化管等の生体内の「管」や、「体腔」にも適用可能である。
【0054】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0055】
粗巻き部22において密巻き部21から連続する所定の範囲(具体的には、中間粗巻き部22aにおいてはピッチ変化領域26、端部粗巻き部22bにおいてはその全域)については、当該密巻き部21から離れるにつれて線材27の巻回ピッチを密巻き部21の巻回ピッチから徐々に大きくした。この場合、密巻き部21と粗巻き部22との境界部に生じる応力集中を緩和できるため、当該境界部における線材27のほつれを抑制できる。これにより、造影マーカとして機能する密巻き部21の長さが短くなるのを抑制でき、造影の視認性の低下を抑制できる。また、線材27のほつれを抑制することで、かかるほつれによって造影コイル16の巻き径が大きくなってしまうのを抑制できる。そのため、線材27がほつれた部分で外層18が薄くなったり、ほつれた線材27が外層18から露出したりする等の不都合を抑制できる。
【0056】
チューブ本体15の軸線方向に隔てて配置された複数の密巻き部21と、それら各密巻き部21同士を連結する粗巻き部22(中間粗巻き部22a)とを有する造影コイル16において、中間粗巻き部22aには各密巻き部21との境界部ごとにそれぞれピッチ変化領域26を設けた。この場合、中間粗巻き部22aと各密巻き部21との境界部にてそれぞれ線材27のほつれを抑制できるため、各密巻き部21の長さが短くなるのを抑制できる。これにより、各密巻き部21同士の間隔が大きくなるのを抑制できるため、密巻き部21同士の間隔を基準(基準長さ)として体内における病変部の長さ等を測定する際に、その測定精度が低下してしまうのを抑制できる。
【0057】
なお、密巻き部21と粗巻き部22との境界部とは、密巻き部21と粗巻き部22とが連続する部分において密巻き部21の粗巻き部22側の端部と粗巻き部22の密巻き部21側の端部とを含むものである。
【0058】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0059】
(1)上記実施形態では、造影コイル16において密巻き部21と粗巻き部22との境界部における線材27のほつれを抑制するほつれ抑制部としてピッチ変化領域を設けたが、ほつれ抑制部の構成は必ずしもこれに限定されない。例えば、造影コイル16における密巻き部21と粗巻き部22との境界部を内層17(コイル内側層に相当)の外周面に熱溶着により固着することで、当該境界部における線材27のほつれを抑制してもよい。この場合、粗巻き部22の全域を一定の巻回ピッチ(等ピッチ)で形成することが可能となる。なお、造影コイル16の上記境界部を内層17に固着する方法としては、熱溶着以外にも接着剤を用いた接着等その他の方法を採用できる。
【0060】
(2)造影コイル16において密巻き部21と粗巻き部22との境界部に、当該境界部以外の部位よりも線材27の内層17への食い込み量が大きくされた食い込み部を設け、これにより当該境界部における線材27のほつれを抑制してもよい。例えば図5に示す造影コイル33では、線材27の内層17への食い込み量が、密巻き部21における粗巻き部22側の端部において当該端部以外の部位と比べて大きくなっている。すなわち、密巻き部21における当該端部が食い込み部38に相当するものとなっている。この場合、密巻き部21における当該端部では線材27の巻き付け力が当該端部以外の部位よりも大きくなっており、線材27と内管35(内層17)との固定度が高められている。これにより、密巻き部21の当該端部における線材27のほつれが抑制されている。
【0061】
造影コイル16における密巻き部21と粗巻き部22との境界部において、線材27の内管35(内層17)への食い込み量を大きくするための方法としては、例えば線材27を内管35に巻き付けていく際、線材27による密巻き部21(又は粗巻き部22)の巻き付けから粗巻き部22(又は密巻き部21)の巻き付けへと切り替わるタイミング(例えば図4における時刻t2、t3、t6、t7)で、線材供給装置30による線材27の繰り出しを一時的に停止させる又は線材27の繰り出し量を制限することが考えられる。この場合、内管35が回転しているにもかかわらず線材27の繰り出しを一時的に停止又は制限することで、線材27に対して一時的に大きな張力(テンション)を発生させることができ、これにより線材27の巻き付け力を局所的にすなわち造影コイル16の当該境界部にて増大させることができる。そのため、線材27の内層17に対する食い込み量を造影コイル16の当該境界部において該境界部以外の部位よりも大きくすることができる。
【0062】
(3)1本の線材27により形成される造影コイル16において、同造影コイル16における密巻き部21と粗巻き部22との境界部にて、線材27が内外2重に巻き付けられることにより線材27同士が径方向に重なり合う重なり部を設けてもよい。この場合、重なり部では、内側の線材27部分すなわち内層17の外周面に巻き付けられている側の線材27部分にほつれが生じるのをその外側の線材27部分により抑えることができる。よって、造影コイル16の上記境界部における線材27のほつれを抑制できる。
【0063】
(4)上記実施形態のほつれ抑制部(すなわち、ピッチ変化領域)と、上記(1)〜(3)の各ほつれ抑制部との計4種類のほつれ抑制部のうちいずれか複数のほつれ抑制部を組み合わせて用いてもよい。そうすることで、密巻き部21と粗巻き部22との境界部における線材27のほつれをより一層抑制できる。
【0064】
(5)ほつれ抑制部は、必ずしも造影コイル16における密巻き部21と粗巻き部22との各境界部すべてに対応して設ける必要はなく、各境界部のうち一部の境界部に対応して設けてもよい。例えば、上記実施形態の構成において、中間粗巻き部22aの各ピッチ変化領域26のうちいずれか一方をピッチ一定領域とすることが考えられる。
【0065】
(6)例えば中間粗巻き部22aのピッチ変化領域26において、線材27の巻回ピッチを当該変化領域26に隣接する密巻き部21から離れるにつれて線材27二巻きごとに又は三巻きごとに大きくしてもよい。この場合においても、造影コイル16における密巻き部21と中間粗巻き部22aとの境界部に生じる応力集中を緩和できるため、同境界部における線材27のほつれを抑制できる。
【0066】
(7)上記実施形態において、造影コイル16の各端部粗巻き部22bのうち少なくともいずれか一方において線材27の巻回ピッチを一定(すなわち等ピッチ)としてもよい。この場合においても、造影コイル16の端部における剛性の変化を抑制でき、耐キンク性の低下を抑制できる。但し、端部粗巻き部22bと密巻き部21との境界部における線材27のほつれを抑制することを鑑みれば、上記実施形態のように、端部粗巻き部22bにおける線材27の巻回ピッチを密巻き部21から離れるにつれて大きくすることが望ましい。また、造影コイル16において各端部粗巻き部22bのうちいずれか一方又は両方を不具備としてもよい。但し、造影コイル16の端部における耐キンク性の低下を鑑みると、端部粗巻き部22bを設けることが望ましい。
【0067】
(8)上記実施形態では、密巻き部21を2つ(粗巻き部22を3つ)備える造影コイル16に対して本発明を適用したが、図6(a)に示すように密巻き部21を3つ以上備える造影コイル40に対して本発明を適用してもよい。また、図6(b)に示すように、密巻き部21を1つだけ備える造影コイル50に対して本発明を適用してもよい。
【0068】
(9)ところで、樹脂層からなるチューブ本体15を補強すべく、補強用の線材が編み込まれてなる編組体がチューブ本体15に埋設されることがある。そこで、かかる編組体が埋設されたチューブ本体15に本発明を適用してもよい。例えば、編組体はチューブ本体15において内層17の外周側に設けられ、外層18に埋設された状態で配置される。編組体は、X線透過性を有する材料よりなる線材がメッシュ状に編み込まれることにより形成される。この場合、造影コイル16はX線不透過性を有しているのに対し、編組体はX線不透過性を有していない。編組体の外周側には線材27が巻き付けられることにより造影コイル16が形成される。造影コイル16は外層18に埋設された状態で配置される。このような構成では、カテーテル本体11の周壁部において、内層17、編組体、造影コイル16及び外層18が、径方向(壁厚方向)における内側から外側に向かってこの順序で配置される。かかる構成においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、カテーテル本体11の周壁部において、径方向の内側から外側に向かって内層17、造影コイル16、編組体、外層の順に配置してもよい。
【0069】
(10)カテーテルによっては、造影コイルが樹脂チューブの外周面に露出した状態で巻き付けられているものがある。かかるカテーテルでは血管内に挿入されて使用される際に屈曲血管に追従して曲げられると、造影コイルにおける密巻き部と粗巻き部との境界部に応力集中が生じ同境界部にて線材27のほつれが生じる場合が考えられる。そこで、かかるカテーテルに対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…カテーテル、11…カテーテル本体、15…チューブ本体、16…造影コイル、21…密巻き部、22…粗巻き部、26…ピッチ変化領域、27…線材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂チューブと、
該樹脂チューブに設けられ、1本の線材を前記樹脂チューブの軸線方向に螺旋状に巻回させることにより形成された造影コイルと、
を備え、
前記造影コイルは、造影マーカとして機能する密巻き部と、該密巻き部に連続して設けられ前記密巻き部よりも前記線材の巻回ピッチが大きい粗巻き部とを備え、
前記造影コイルには、前記密巻き部と前記粗巻き部との境界部における前記線材のほつれを抑制するほつれ抑制部が設けられていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記粗巻き部において前記密巻き部から連続する所定の範囲には、前記ほつれ抑制部として、当該密巻き部から離れるにつれて前記線材の巻回ピッチを前記密巻き部の巻回ピッチから徐々に大きくしたピッチ変化領域が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記樹脂チューブは、樹脂層として、前記造影コイルの内側に形成されたコイル内側層を有し、
前記ほつれ抑制部として、前記造影コイルの前記境界部を前記コイル内側層に対して固着する固着部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記樹脂チューブは、樹脂層として、前記造影コイルの内側に形成されたコイル内側層を有し、
前記造影コイルにおける前記境界部には、前記ほつれ抑制部として、前記造影コイルにおける前記境界部以外の部位よりも前記コイル内側層への前記線材の食い込み量が大きくされた食い込み部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記造影コイルは、前記樹脂チューブの軸線方向に隔てて配置された複数の前記密巻き部と、それら各密巻き部を連結するように設けられた前記粗巻き部とを備え、
前記粗巻き部と前記各密巻き部との境界部ごとにそれぞれ前記ほつれ抑制部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記樹脂チューブの軸線方向における前記造影コイルの両端部のうち少なくともいずれかには前記粗巻き部が配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記造影コイルにおいて前記軸線方向の端部に配置された前記粗巻き部では、当該粗巻き部に隣接する密巻き部から離れるにしたがって前記線材の巻回ピッチが大きくなっていることを特徴とする請求項6に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90717(P2013−90717A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233780(P2011−233780)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(503333038)株式会社グッドテック (3)
【Fターム(参考)】