カドミウム含有ナノ結晶を形成する方法
本発明は、組成CdA(AはSまたはSe)のナノ結晶を形成する方法に関する。方法は、適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成することを含む。溶媒はエーテルおよびアミンから選択された化合物を含む。方法はさらに、溶液を約20℃から約200℃までの範囲から選択された温度にすることを含む。方法はさらに、該約20℃から約200℃までの範囲から選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加することを含む。それにより、組成CdAのナノ結晶が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカドミウム含有ナノ結晶を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ナノ粒子は、例えば着色剤として例えば、ステンドグラス窓の、触媒、磁気薬物送達、低体温癌治療、磁気共鳴影像法の造影剤、生物学における磁気および蛍光タグ、太陽光電池、ナノバーコード、またはディーゼル車の排ガス規制に広範な用途が見出されている。
【0003】
半導体ナノ粒子、通常、伝導帯電子、価電子帯正孔、または、励起子の3つすべての空間的方向における) の動きを閉じ込めているナノ結晶は、電荷の「滴(droplet)」とし
て機能し、量子ドットと称される。量子ドットは2〜10ナノメートルと小さく、自己集合量子ドットのサイズは通常10〜50ナノメートルである。
【0004】
量子ドットは、エレクトロニクス、蛍光映像法、および光学的符号化を含む種々の用途に対して関心を集めている。量子ドットはその量子収量が理論的に高いため、光学的用途に関して特に重要である。電子応用では、量子ドットは単一電子トランジスタのように作用し、クーロンブロッケード効果を示すことが証明されている。
【0005】
発光ダイオードLEDs等の固体の照明装置に量子ドットが応用されるようになっている。LEDsの効率は、その発光層の質にまさしく依存しているが、発光層は従来物理的蒸着法または分子ビームエピタキシ法により製造された無機層であった。このようなLEDsの長所は、光安定性と、装置に長い寿命を与えることであるが、短所は、施設が高くつき、製作条件が厳しく、効率が低いことであった。発光層として有機のポリマーの染料を使用することで、効率が増大し、製作が容易となっているが、これらの染料は高温では安定性が低いか、光の存在で装置の寿命が劇的に短くなっていた。高い量子収率と製作容易性を有するコロイド性の量子ドットが、これまでに製造された、すなわち発光層として量子ドットが埋めこまれたポリマーマトリクスポリマー/量子ドットナノコンポジット、ポリマー/量子ドットハイブリッド材料等とも称されるを用いて製造された無機および有機LEDsの療法の両方を備えたLEDsの製造の可能性を与えた非特許文献1。
【0006】
高品質な半導体量子ドットの製造の最も成功している経路の1つは、負イオン源(例えばTOP/Se、TOP/S等)が場合によって存在する配位性溶媒中における高温での前駆体分子の分解である (以前の技術の概要については、例えば非特許文献2参照。このプロセスは、Murrayらにより1993年に開発された (非特許文献3、CdEの量子ドットを生産している (E=Se,SおよびTe。 Murrayらの文献はジメチルカドミウムの
トリ−n−オクチルホスフィン(TOP)溶液の形成と、対応するカルコゲン化物のTOP溶液の形成とに関する。かかる溶液が混合され、高温(約200℃〜300℃)で迅速にトリ−n−オクチルスルフィンオキシド (TOPOに注入される。その結果、TOP/TOPOでキャップされたナノ結晶が得られる。キャップ剤は、有機溶媒での粒子の溶解を許容し、粒子集合の防止と半導体表面の電子不動態化に極めて重要な役割を果たす。また、同様のアプローチが、コア/シェルナノ構造を有するZnSとZnSeのナノ粒子、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、およびCdSe/ZnSeの調製に使用されている。CdSeナノ結晶は、その調製が容易であると共に可視スペクトルでのフォトルミネセンスの大きさが調整可能であるため、最も広く研究されている量子ドットとなっている。
【0007】
このいわゆるTOPO法によって、1回の実験で数百ミリグラムの量の高度に単分散したナノ粒子の生産が可能となっている。しかしながら、高温の使用や出発材料の毒性のため、大規模での開発には大きな障害が示されている。
【0008】
日常生活に使わされている照明の大部分は、日光すなわち白色発光に似ている。これは白色発光材料の開発に需要があることの理由となっている。白色発光ポリマー/量子ドットハイブリッド材料も実証されている。最も広く応用されている戦略は、RGBの原則(すなわち赤、緑、青色の光を混ぜると白色光になる)に従い、様々なサイズの量子ドットを混ぜてポリマーマトリクスに様々な色の発光を与え、全体としては白色発光を達成するというものである。しかしながら、そのような戦略はいくつかの潜在的な問題のために制約があり得る:1)マトリクス中に種々の色の量子ドットが不均一に分布する可能性、これにより特定の部分では単一色が優勢だったりまたは欠如したりし得る、2)粒子間距離を制御することの困難さ、短波長で放出された光がより大きなサイズの粒子によって吸収される蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が起こる。短波長の発光がないと、白色光の形成が失敗となる。ポリマーマトリクス中の量子ドットの濃度を低減させると、FRETの可能性は低下し得るが、これが必ずしも白色光の放出を促すとは限らない、3)3つのタイプの量子ドットが異なる光または熱安定性を示す場合に装置の性能が低下する。これらすべてが大規模への量子ドットの応用の制約となっている。
【0009】
上記の問題に対する解決策が2005年に現れた(非特許文献4)。この研究記事では、「マジックサイズ」の量子ドットがTOPO法を改変して調製された。酸化カドミウムおよびドデシルリン酸の、TOPOとヘキサデシルアミンの混合物溶液へ、セレンのTOPおよびオクタデセン溶液を高温(330℃)で注入した。表面状態が豊富であるため、これらの量子ドットは、青色光領域の自身の本質的な放出に加えて、長波長の光を放出した。放出された光の全体は純白色光であった。このアプローチに従えば白色光を発光する量子ドットを調製することができるが、必要な重要な反応条件と操作により、規模拡大すなわちスケールアップが不可能となっている。穏和な条件で簡単な操作にて同様な量子ドットを生産するための新しいアプローチが必要である。
【0010】
量子ドット(有色のものですら)が広く使用されるのを妨げている別の問題は、コストの高さである。コストが高くなるのは、調製(高温、厳しい処理等)、精製(溶媒と大量に消費し、労力を多大に使った徹底的な洗浄)、およびスケールアップ問題の点で困難さがある結果である。したがって、量子ドットの製造コストの低下に有用な新しいアプローチが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Achermann, M., et al., Nature [2004] 429, 642-646
【非特許文献2】Reed, M.A., Scientific American (1993), January, 118-123
【非特許文献3】placeCityMurray et al. J. Am. Chem. Soc(1993), 115, 8706-8715
【非特許文献4】Bowers, MJ., J. Am. Chem. Soc. [2005] 127, 15378-15379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、上記に説明した困難さのうちの少なくともいくつかを克服する、カドミウムカルコゲニドの少なくとも本質的に単分散のナノ粒子を提供する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1態様では、本発明は、AがSまたはSeである組成CdAのナノ粒子を形成する方法を提供する。方法は、適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程を含む。溶媒はエーテルおよびアミンから選択された化合物を含む。いくつかの実施形態では、溶媒はアルケンを含む。さらに、溶媒は、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドを少なくとも本質的に含まない。方法は、前記溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程を含む。方法はさらに、該約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加する工程を含む。それにより前記組成CdAnoナノ結晶が形成される。
【0014】
いくつかの特定の実施形態によれば、前記カドミウム化合物の溶液を形成する工程が、カドミウム有機塩の酸化物(オキシド)または無機塩を長鎖有機酸と反応させることにより、カドミウム有機塩を形成することにより行われる。
【0015】
関連する態様では、本発明は、AがSまたはSeである組成CdAのナノ結晶を形成する方法を提供する。方法は、適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウム有機塩の溶液を形成する工程を含み、例えばそれは、カドミウム有機塩の酸化物(オキシド)または無機塩を、長鎖有機酸またはその化合物と反応させることによる。溶媒は、ジオクチルエーテル、1−オクタデセン、オレイルアミンおよびそれらの任意の組み合わせから選択される。方法はさらに、溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程を含む。方法はさらに、該約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加する工程を含む。それにより前記組成CdAのナノ結晶が形成される。
【0016】
上記発明の方法により得られた名の結晶は通常均質である。
さらなる態様では、本発明は、発光体の製造における、上記方法のいずれか1つによって得られたナノ結晶の使用方法に関する。
【0017】
本発明は、添付図面と共に発明の詳細な説明を参照すれば一層よく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1Aはn−ヘキサン溶液で本発明の方法により調製された白色量子ドットの溶液を示す写真。図1Bは、暗闇で励起UVランプを照らした時の図1に示された溶液の写真。図1Cは、図1および図1Bの写真で示された溶液のフォトルミネセンススペクトル。
【図2】120℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを成長させ、示した複数の期間後にアリコートを得、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図3A】80℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを10〜60分間(示した数字は時間の点(分)を示す)成長させ、アリコートを得て、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図3B】80℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを60分〜18時間(示した数字は時間の点(分)を示す)成長させ、アリコートを得て、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図4】160℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを成長させ、示した複数の期間後にアリコートを得、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図5】160℃で反応(x軸)の異なる段階で得られたアリコートについて記録したCdSe量子ドットのフォトルミネセンス波長(左側のy軸)および半値全幅(右側のy軸)。
【図6】120℃で反応(x軸)の異なる段階で得られたアリコートについて記録したCdSe量子ドットのフォトルミネセンス波長(左側のy軸)および半値全幅(右側のy軸)。
【図7A】得られたアリコートから記録した、120℃でトリ−n−オクチルホスフィン(TOP)において調製したCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図7B】得られたアリコートから記録した、120℃でトリ−n−オクチルホスフィン(TOP)において調製したCdSe量子ドットの吸着スペクトル。
【図8A】120℃でトリ−n−オクチルホスフィン(TOP)/オレイルアミン(v/v、1:1)において調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図8B】120℃でジオクチルエーテル(ODE)において調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図8C】120℃でODE/オレイルアミン(v/v、1:1)において調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図8D】120℃でオレイルアミンにおいて調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの添付された図から理解されるとおり、高品質のナノ結晶が、穏和な反応条件で本発明の方法を用いて形成可能である。完全にパラメータを制御することで、得られる名の結晶の所望の特性を細かく調節される。例として、本発明の方法により得られたナノ結晶は、発光体、増幅体、生物学的センサ内で、または計算法に用いてもよい。発光体、即ち発光装置、例えばランプ、発光ダイオード、レーザダイオード、フルオロフォア(例えば腫瘍の検出)、TV画面またはコンピュータモニタに用いられる場合、本発明の方法で工程パラメータの値を選択することにより、発光のピークを含む波長を調整することができる。本発明のそのような一実施形態は、白色光を発光するナノ結晶である。したがって本発明は、本発明の方法により得ることができる、または得られたナノ結晶の使用にも関する。例示的な図から理解されるとおり、発光ピークを含む各波長範囲は、元素Aが添加される温度、反応時間、用いられる溶媒、用いられる界面活性剤、および添加される界面活性剤の量などの因子により制御することができる。
【0020】
本発明の方法では、溶媒の主成分がトリ−n−オクチルホスフィンオキシドでない限り、いかなる適切な溶媒を使用してもよい(以下も参照のこと)。通常、溶媒は配位溶媒であるか、または配位溶媒を含む。溶媒は、エーテルや、アルキルアミンまたはジアルキルアミン等のアミンを含んでいる。典型的な実施形態では、溶媒は弱配位性溶媒である。溶媒は、アルカンまたはアルケン等の非配位性成分(以下を参照)またはトリ−n−オクチルホスフィン等の強い配位成分を含んでもよい。
【0021】
本発明の方法で用いられる溶媒は、代表的には、例えば約120℃、150℃、180℃、または約220℃を超える有する高沸点溶媒である。幾つかの実施形態において、本発明の方法の際に最高の選択温度を超える沸点を有する溶媒成分の組合せが、選択される(例えばカドミウムまたはカドミウム化合物を溶解するため)。エーテルまたはアミンそのものが、高沸点溶媒であってもよい。適当なエーテルの例としては、非限定的に、ジオクチルエーテル(CAS−No.629−82−3)、ジデシルエーテル(CAS−No.2456−28−2)、ジウンデシルエーテル(CAS−No.43146−97−0)、ジドデシルエーテル(CAS−No.4542−57−8)、1−ブトキシドデカン(CAS−No.7289−38−5)、ヘプチルオクチルエーテル(CAS−No.32357−84−9)、オクチルドデシルエーテル(CAS−No.36339−51−2)、および1−プロポキシヘプタデカン(CAS−No.281211−90−3)が挙げられる。適当なアミンの例としては、非限定的に、1−アミノ−9−オクタデセン(
オレイルアミン)(CAS−No.112−90−3)、1−アミノ−4−ノナデセン(CAS−No.25728−99−8)、1−アミノ−7−ヘキサデセン(CAS−No.225943−46−4)、1−アミノ−8−ヘプタデセン(CAS−No.712258−69−0、純粋なZ−異性体のCAS−No.:141903−93−7)、1−アミノ−9−ヘプタデセン(CAS−No.159278−11−2、Z−異性体のCAS−No.:906450−90−6)、1−アミノ−9−ヘキサデセン(CAS−No.40853−88−1)、1−アミノ−9−エイコセン(CAS−No.133805−08−0)、1−アミノ−9,12−オクタデカジエン(CAS−No.13330−00−2)、1−アミノ−8,11−ヘプタデカジエン(CAS−No.141903−90−4)、1−アミノ−13−ドコセン(CAS−No.26398−95−8)、N−9−オクタデセニルプロパンジアミン(CAS−No.29533−51−5)、N−オクチル−2,7−オクタジエニルアミン(CAS−No.67363−03−5)、N−9−オクタデセン−1−イル−9−オクタデセン−1−アミン(ジオレイルアミン)(CAS−No.40165−68−2)、ビス(2,7−オクタジエニル)アミン(CAS−No.31334−50−6)、およびN,N−ジブチル−2,7−オクタジエニルアミン(CAS−No.63407−62−5)が挙げられる。
【0022】
溶媒に含まれ得る他の化合物としては、非限定的に、アルキル−またはアリールホスフィン、ホスフィンオキシド、アルカン、またはアルケンが挙げられる。各化合物は、長鎖アルキルまたはアリール基、例えばドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどを含んでいてもよい。しかし、そのような長鎖部分を含む化合物が本発明の方法に必要ではないことに、留意されたい。アルケンの例としては、非限定的に、1−ドデセン(CAS−No.112−41−4)、1−テトラデセン(CAS−No.1120−36−1)、1−ヘキサデセン(CAS−No.629−73−2)、1−ヘプタデセン(CAS−No.6765−39−5)、1−オクタデセン(CAS−No.112−88−9)、1−エイコセン(CAS−No.3452−07−1)、7−テトラデセン(CAS−No.10374−74−0)、9−ヘキサコセン(CAS−No.71502−22−2)、1,13−テトラデカジエン(CAS−No.21964−49−8)、または1,17−オクタデカジエン(CAS−No.13560−93−5)が挙げられる。アルカンの例は、デカン(CAS−No.124−18−5)、ウンデカン(CAS−No.1120−21−4)、トリデカン(CAS−No.629−50−5)、ヘキサデカン(CAS−No.544−76−3)、オクタデカン(CAS−No.593−45−3)、ドデカン(CAS−No.112−40−3)およびテトラデカン(CAS−No.629−59−4である。ホスフィンの例は、トリオクチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(ドデシル)ホスフィンである。ホスフィンオキシドの例は、トリオクチルホスフィンオキシド、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィンオキシド、およびフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。
【0023】
しかしながら、注目すべきなのは、本発明の方法は、アルカン、アルケン、ホスフィンまたはホスフィンオキシドが存在しない状態で行なえることである。そのような溶媒は、Bowersらの方法(上記参照、例えばJose, R., et al., Applied Physics Letters [2006] 89, 013115)または日本の特許出願特願第2006−143526号のパフォー
マンスを改善するアプローチで絶えず使用されているが、一般にコストがかかり、スケールアップと経済的生産への障害を与える。
【0024】
本発明の方法の幾つかの実施形態において、溶媒は、アルケンおよびアミンの両方を含む。アルケンおよびアミンは、任意の比で、例えば約100:1(v/v)〜約1:100
(v/v)、10:1(v/v)〜約1:10(v/v)または約5:1(v/v)〜約1:5(v/v
)の範囲内で存在してもよい。幾つかの実施形態において、溶媒は、アルキルホスフィンまたはアリールホスフィンと、アミンとの両方を含む。ホスフィンおよびアミンは、任意
の比で、例えば約100:1(v/v)〜約1:100(v/v)、約10:1(v/v)〜約1
:10(v/v)または約5:1(v/v)〜約1:5(v/v)の範囲内で存在してもよい。
【0025】
溶媒は、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドを少なくとも本質的に含まない。溶媒に関して本明細書で用いられる用語「少なくとも本質的に含まない」とは、全ての液体内容物に重要な影響を及ぼさない溶媒量の使用を指す。この用語は、つまりアミンの完全に含まないこと、および微量の存在、例えば約0.01%、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%または約5%(用いられる溶媒全量に関して)を包含する。したがって本発明の方法における、カドミウムまたはその化合物の溶液を調製する主溶媒(トリ−n−オクチルホスフィンオキシド以外の異なる溶媒の混合物であってもよい)は、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドとは異なる溶媒であるか、またはそれが優占的および支配的である。
【0026】
各溶媒(または複数の溶媒の混合物)において、カドミウム化合物の溶液が形成される。選択された溶媒に溶解可能ないかなるカドミウム化合物を用いてもよい。カドミウム化合物は、カドミウム元素、有機カドミウム塩、または例えば炭酸カドミウムおよび塩化カドミウムなどの無機カドミウム塩であってもよい。カドミウム化合物は、溶解して無機または有機塩などのカドミウム塩に変換され得るカドミウムオキシドであってもよい。カドミウム化合物の溶液の形成は、幾つかの実施形態において、溶媒を高温にすることを含んでいてもよい。カドミウムまたはカドミウム化合物を溶解させた後、溶液の温度を変化させても、例えば選択した温度に低下させてもよい。
【0027】
幾つかの実施形態では、カドミウム有機化合物の溶液が溶媒中で形成される。カドミウム有機化合物は溶媒に通常は直接分散される。カドミウム有機化合物は、可能ならば溶媒の存在下で、無機対応物を長鎖有機酸と反応させることにより得てもよい。無機または有機カドミウム化合物のほとんどが、可溶性有機塩を選択された溶媒中で形成するのに用いてもよい。適当な出発カドミウム化合物の例にが、酸化カドミウム、水酸化カドミウム、炭酸カドミウム(CdCO3)、硝酸カドミウム(Cd(NO3)塩化カドミウム(CdCl2)、ジメチルカドミウム(CdMe2)、酢酸カドミウム(Cd(Ac)2)、オレイ
ン酸カドミウム(Cd(OA)2)およびステアリン酸カドミウムが含まれるが、これら
に限定されるわけではない。
【0028】
本発明の方法は、界面活性剤を添加することを含んでいてもよい。界面活性剤は、カドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する前か、それと同時に溶媒に加えてもよい。各溶媒で形成されたカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液に、界面活性剤を添加してもよい。代表的には硫黄もしくはセレン(以下も参照)、またはそれらの化合物を添加する前に、界面活性剤を添加する。いかなる界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、例えば有機カルボン酸、有機リン酸塩、有機ホスホン酸、有機スルホン酸またはそれらの混合物であってもよい。適当な有機カルボン酸の例としては、非限定的に、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、n−ウンデカン酸、リノレン酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全ての−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リノールエライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)パルミチン酸(ヘキサデカン酸)およびγ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)が挙げられる。他の界面活性剤(例えば、有機ホスホン酸)の例としては、ヘキシルホスホン酸およびテトラデシルホスホン酸が挙げられる。過去にオレイン酸がナノ結晶を安定化し得て、オクタデセンを溶媒として使用し得ることが観察された(Yu, W.W., & Peng, X., Angew. Chem. Int. Ed. (2002) 41, 13, 2368-2371)。他のナノ結晶の合成において、界面活性剤が、形成されたナノ結晶の結晶形
態に影響を及ぼすことが示された(Zhou, G5 et al., Materials Lett. (2005) 59, 2706-2709)。本願の発明者らは、界面活性剤を適切な溶媒と組み合わせて使用することで高温での穏和な反応条件が可能となる(不活性ガス雰囲気がなくても)という驚くべき結果を見出した(以下も参照のこと)。
【0029】
いくつかの実施形態では、無機カドミウム塩の溶液が形成される。通常は長鎖有機炭酸である有機炭酸などの有機酸(例えば上述参照)、無機カドミウム塩(これは上述のように酸化カドミウムの溶解によっても得られる)の溶液に添加すると、有機炭酸のカドミウム塩のような有機カドミウム塩が形成され得る。この点、インジウム化合物の場合には複雑な混合物が形成されることに留意されたい(Lucey, D.W., et al., Chem. Mater. (2005) 17, 3754-3762)。
【0030】
本発明の方法において、カドミウムまたはカドミウム化合物の溶液は、20℃〜200℃、例えば約30℃〜約180℃、約40℃〜約160℃、約70℃〜約160℃の範囲から選択された温度に加熱される。温度は例えば、約60℃、約80℃、約100℃、約120℃、または約160℃であってよい。各温度では、元素A、即ち、硫黄またはセレンが、ナノ結晶の生成に適した形態で添加される。各元素を、任意の適当な溶媒に、例えばホスフィン、例えばトリ−n−オクチルホスフィン(TOP、CAS No.4731−53−7)、トリ−n−ノニルホスフィン(CAS No.17621−06−6)、トリ−n−ヘプチルホスフィン(CAS No.17621−04−4)、トリ−n−ヘキシルホスフィン(CAS No.4168−73−4)、トリ−n−ブチルホスフィン(CAS No.998−40−3)、トリ−p−トリルホスフィン(CAS No.1038−95−5)、トリ−l−ナフチルホスフィン(CAS No.3411−48−1)またはトリフェニルホスフィン(CAS No.603−35−0)に添加してもよい。
【0031】
反応混合物を、数ミリ秒から数時間までの範囲の任意の所望の時間実施してもよい。所望なら反応は、用いられる試薬および溶媒に関して、不活性雰囲気で、即ち反応性のない、または少なくとも検出可能な程度に反応性のない気体の存在下で、実施する。反応性不活性雰囲気の例は、窒素または希ガス、例えばアルゴンもしくはヘリウムである。しかしながら、不活性ガス雰囲気が通常は不必要であることが判明したのは注目すべきことである。
【0032】
本発明の方法は、白色光放出量子ドットを含むナノ結晶を、穏やかな反応条件で好都合に使用することができる。既知の量子ドットの形成方法と比較すると、本発明の方法は高濃度の(有色)量子ドットの調製を可能にする。例えば、Bowersら(2005年、前掲)によって開示された方法と比較すると、本発明の方法では、例えば5〜10倍高い濃度の量子ドットの調製物が形成されることがわかった。
【0033】
本発明の方法はさらに、比較的狭い発光ピーク(fwhmが約23nm)で従来の量子ドットを形成するのにさらに特に適している。穏やかな反応条件下では、細かい増分(インクリメント、Δλ=1nm)に発光ピークの波長を合わせることは簡単である。特定の反応温度と特定の反応時間(例えば図5、図6および図8参照)を選択することで、形成されるナノ結晶の発光波長を所望の通りに調節することができる。さらに、この調製のためには素早い注入は必要でないことが判明し、溶媒の新しい混合物により、5〜10倍高い濃度の量子ドットの生産が可能となったため、精製の労力とコストが低下した。これらはすべて、低コストで量子ドットおよびその派生生成物を大量生産する機会を与える。
【0034】
本発明の方法は、ナノ結晶の後処理を含んでいてもよい。本発明の方法により得られたナノ結晶は一般に、少なくとも本質的に、または少なくともほとんど単分散であるが、所
望なら粒度分布を狭くするステップを(例えば予防措置または安全性基準として)実施してもよい。そのような技術、例えば粒度選択的沈殿は、当業者に周知である。ナノ結晶の表面を変化させてもよく、例えばコーティングしてもよい。
【0035】
幾つかの実施形態において、本発明の方法により形成されたナノ結晶(またはその複数)は、選択された標的分子、例えば微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、ペプチド、オリゴ糖、多糖、無機分子、合成ポリマー、小有機分子または薬物への結合アフィニティーを有する分子に結合される。
【0036】
本明細書で用いられる用語「核酸分子」は、いずれかの可能な形態、例えば一本鎖、二本鎖またはそれらの組合せのいずれかの核酸を指す。核酸としては、例えばDNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、ヌクレオチド類似体を用いてまたは核酸化学を用いて生成させたDNAまたはRNAの類似体、ロックされた核酸分子(LNA)、およびタンパク質核酸分子(PNA)が挙げられる。DNAまたはRNAは、ゲノムまたは合成の起源であってもよく、そして一本鎖または二本鎖であってもよい。本発明のこの方法では、必ずではないが代表的にはRNAまたはDNA分子が用いられる。そのような核酸は、例えばmRNA、cRNA、合成RNA、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、DNAとRNAとのコポリマー、オリゴヌクレオチドなどであってもよい。各核酸は、その上、非天然ヌクレオチド類似体を含んでいてもよく、そして/またはアフィニティータグもしくはラベルに結合していてもよい。幾つかの実施形態において、核酸分子は、単離、濃縮、または精製されてもよい。核酸分子は、例えばcDNAクローニングにより、またはサブトラクティブ・ハイブリダーゼーションにより、天然供給源から単離されてもよい。天然供給源は、ホ乳類、例えばヒト、血液、精液、または組織であってもよい。核酸は、例えばトリエステル法により、または自動DNA合成装置を用いて合成されてもよい。
【0037】
多くのヌクレオチド類似体が公知であり、本発明のナノ結晶複合材料への結合のために用いられる核酸およびヌクレオチド中で用いることができる。ヌクレオチド類似体は、例えば塩基、糖、またはリン酸部分の修飾を含むヌクレオチドである。塩基部分の修飾としては、A、C、G、およびT/U、異なるプリンまたはピリミジン塩基、例えばウラシル−5−イル、ヒポキサンチン−9−イル、および2−アミノアデニン−9−イル、ならびに非プリンまたは非ピリミジンヌクレオチド塩基の天然および合成の修飾が挙げられる。他のヌクレオチド類似体は、ユニバーサルベースとして作用する。ユニバーサルベースとしては、3−ニトロピロールおよび5−ニトロインドールが挙げられる。ユニバーサルベースは、他の塩基と塩基対を形成することができる。塩基の修飾は、多くの場合、例えば二本鎖の安定性向上などの独特の性質を実現するために、例えば糖修飾、例えば2’−O−メトキシエチルを含むことができる。
【0038】
ペプチドは、合成起源であってもよく、または当該技術分野で周知の方法により天然起源から単離されてもよい。天然起源は、ホ乳類、例えばヒト、血液、精液、または組織であってもよい。ポリペプチドなどのペプチドは、例えば自動ポリペプチド合成装置を用いて合成してもよい。ポリペプチドの例は、抗体、そのフラグメントおよび抗体様機能を備えたタンパク質性結合分子である。(組換え)抗体フラグメントの例は、Fabフラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fvフラグメント(scFv)、二重特異性抗体、三重特異性抗体(Iliades, P., et al., FEBS Lett (1997) 409, 437-441)、十重特異性抗体(Stone, E., et al., Journal of Immunological Methods (2007) 318, 88-94)および他
のドメイン抗体(Holt, L. J., et al., Trends Biotechnol. (2003), 21, 11, 484-490
)である。抗体様機能を備えたタンパク質性結合分子の例が、リポカリンファミリーのポリペプチドを基にした突然変異タンパク質である(WO/03029462、Beste et al., Proc. Natl. Acad. Sd. U.S.A. (1999) 96, 1898-1903)。ビリン結合タンパク質、
ヒト好中球ゼラチナーゼ結合リポカリン、ヒトアポリポタンパク質Dまたはグリコデリンなどのリポカリンは、修飾が可能な中性リガンド結合部位を有するため、ハプテンとして知られる選択された小タンパク質領域に結合する。他のタンパク質性結合分子の例は、いわゆるグルボディ(例えば国際特許出願WO96/23879を参照)、アンキリンスカフォールドを基にしたタンパク質(Mosavi, L.K., et al., Protein Science (2004) 13,
6, 1435-1448)または結晶スカフォールド(例えば国際特許出願WO01/04144
)を基にしたタンパク質、Skerra, J. MoI. Recognit. (2000) 13, 167-187に記載されたタンパク質、アドネクチン、テトラネクチンおよびアビマーである。アビマーは、複数の細胞表面受容体中のマルチドメインの列として生じるいわゆるA−ドメインを含む(Silverman, J., et al., Nature Biotechnology (2005) 23, 1556-1561)。ヒトフィブロネクチンのドメインから得られるアドネクチンは、標的への免疫グロブリン様結合のための処理が可能な3つのループを含む(Gill, D.S. & Damle, N.K., Current Opinion in Biotechnology (2006) 17, 653-658)。各ヒトホモトリマー性タンパク質から得られるテトラ
ネクチンも、同様にC型レクチンドメイン中に、所望の結合のための処理が可能なループ領域を含む(同書)。タンパク質リガンドとして作用し得るペプトイドが、側鎖がα炭素原子ではなくアミド窒素に結合したペプチドとは異なるオリゴ(N−アルキル)グリシンである。ペプトイドは、代表的にはプロテアーゼおよび他の修飾酵素への抵抗性があり、ペプチドよりもかなり高い細胞透過性を有し得る(例えばKwon, Y. -U., and Kodadek, T., J. Am. Chem. Soc. (2007) 129, 1508-1509を参照)。
【0039】
更なる例として、アフィニティータグなどの結合部分を用いて、各分子に固定化してもよい。そのような結合部分は、例えば窒素基、リン基、硫黄基、炭素基、ハロゲン基もしくは擬ハロゲン基を含む炭化水素系(高分子を含む)分子などの分子、またはその一部であってもよい。例として、選択された表面は、例えば短い側鎖を有するブラシ状高分子を含んでいてもよく、例えばそれでコーティングされてもよい。固定化表面も、例えばグラフティングにより、ブラシ状構造を含む高分子を含んでいてよい。それは、例えば生体分子、例えばタンパク質、核酸分子、多糖またはそれらの組合せなどの分子を共有結合させる官能基を含んでいてもよい。各官能基の例としては、非限定的に、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、カルボキシル基、エステル、酸無水物、スルホナート、スルホナートエステル、イミドエステル、ハロゲン化シリル、エポキシド、アジリジン、ホスホラミダイトおよびジアゾアルカンが挙げられる。
【0040】
アフィニティータグの例としては、非限定的に、ビオチン、ジニトロフェノールもしくはジゴキシゲニン、オリゴヒスチジン、ポリヒスチジン、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAG’−ペプチド、T7エピトープ(Ala−Ser−Met−Thr−Gly−Gly−Gln−Gln−Met−Gly)、マルトース結合タンパク質(MBP)、単純ヘルペスウイルスグルコタンパク質Dの配列Gln−Pro−Glu−Leu−Ala−Pro−Glu−Asp−Pro−Glu−AspのHSVエピトープ、配列Tyr−Pro−Tyr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Alaのヘマグルチニン(HA)エピトープ、配列Glu−Gln−Lys−Leu−Ile−Ser−Glu−Glu−Asp−Leuの転写因子c−mycのエピトープ、またはオリゴヌクレオチドタグが挙げられる。そのようなオリゴヌクレーチドタグを用いて、例えば相補的配列を備えた固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてもよい。結合部分の更なる例は、抗体、そのフラグメントまたは抗体様機能を備えたタンパク質性結合分子である(同じく上記参照)。
【0041】
結合部分の更なる例は、ククルビツリル、またはククルビツリルと錯体を形成し得る部分である。ククルビツリルは、代表的にはグリコールウリルとホルムアルデヒドとの酸触媒縮合反応から自己組織化されたグリコールウリル単位を含む大環状化合物である。グリ
コールウリル単位を含むククルビツリル[n](CB[n])は、代表的には極性ウレイドカルボニル基を含むポルタルを2個有する。これらのウレイドカルボニル基を通して、ククルビツリルは、該当するイオンおよび分子に結合することができる。例としてククルビツリル[7](CB[7])は、フェロセンメチルアンモニウムまたはアダマンチルアンモニウムイオンと強固な錯体を形成することができる。ククルビツリル[7]または例えばフェロセンメチルアンモニウムのいずれかを生体分子に結合させてもよく、残りの結合パートナー(例えばそれぞれフェロセンメチルアンモニウムまたはククルビツリル[7])を、選択された表面に結合させることができる。その後、生体分子が表面と接触して、生体分子が固定化される。アルカンチオラートを通して金表面に結合した官能基化CB[7]単位が、例えばフェロセンメチルアンモニウム単位を担うタンパク質を固定化させることが示された(Hwang, L, et al., J. Am. Chem. Soc. (2007) 129, 4170-4171)。
【0042】
結合部位の更なる例としては、非限定的に、オリゴ糖、オリゴペプチド、ビオチン、ジニトロフェノール、ジゴキシゲニンおよび金属キレート剤が挙げられる(以下も参照)。例として、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(ニトリロ三酢酸、NTAとも呼ばれる)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(ジメルカプロール)、ポルフィンまたはヘムなどの各金属キレート剤を、標的分子が金属イオンである場合に用いてもよい。例として、EDTAは、ほとんどの一価、二価、三価および四価金属イオン、例えば銀(Ag+)、カルシウム(Ca2+)、マンガン(Mn2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+)、コバルト(Co3+)およびジルコニウム(Zr4+)と錯体を形成するが、BAPTAは、Ca2+に特異的である。幾つかの実施形態において、各金属イオンとの錯体中の各金属キレート剤が、結合部分を画定する。そのような錯体は、例えば画定された配列のペプチドのための受容体分子であり、タンパク質中に含まれてもよい。例として、当該技術分野で用いられる標準的方法は、キレート剤であるニトリロ三酢酸(NTA)により示されるオリゴヒスチジンタグと銅(Cu2+)、ニッケル(Ni2+)、コバルト(Co2+)、または亜鉛(Zn2+)イオンとの錯体形成である。
【0043】
アビジンまたはストレプトアビジンを用いて、ビオチン化核酸を固定化してもよく、または金のビオチン含有単層を用いてもよい(Shumaker-Parry, J.S., et al., Anal. Chem. (2004) 76, 918)。更に別の例として生体分子を、例えばピロール−オリゴヌクレオチドパターンを通して、例えば走査型電気化学顕微鏡により、局所的に付着させてもよい(例えばFortin, E., et al., Electroanalysis (2005) 17, 495)。詳細には生体分子が核酸である他の実施形態において、生体分子を、例えば光活性化および失活を利用して、固定化単位の表面で直接合成してもよい。例として、選択された表面領域での核酸またはオリゴヌクレオチドの合成(いわゆる「固相」合成)を、電極を利用した電気化学反応を用いて実施してもよい。EgelandおよびSouthern(Nucleic Acids Research
(2005) 33, 14, el25)により記載された電気化学的脱ブロックステップが、例えばこの目的で用いられてもよい。適当な電気化学的合成は、米国特許出願US2006/0275927にも開示されている。幾つかの実施形態において、UV結合または光依存性5’−脱保護など、生体分子、詳細には核酸分子の光指向性合成(light−directed synthesis)が、実施されてもよい。
【0044】
選択された標的分子への結合アフィニティーを有する分子を、いずれかの手段でナノ結晶に固定化してもよい。例として、各部分を含むオリゴ−またはポリペプチドを、例えばω−官能基化チオールを用いて、チオ−エーテル結合を通してナノ結晶の表面に共有結合させてもよい。選択された結合アフィニティーを有する分子に本発明のナノ結晶を結合させ得る適当な分子を用いて、それをナノ結晶に固定化してもよい。例えば(二官能基)結
合剤、例えばエチル−3−ジメチルアミノカルボジイミド、N−(3−アミノプロピル)−3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルマレイミド、または3−(トリメトキシシリル)プロピルヒドラジドを用いてもよい。遊離メルカプト酢酸基を生成させ、その後に結合剤を通して被分析物の結合パートナーと共有結合することができるよう、結合剤との反応の前に、ナノ結晶の表面を、例えば氷メルカプト酢酸で処理することにより、修飾させることができる。
【0045】
本発明の例証的実施形態
本発明の方法、反応物、使用され得るさらなる処理のいくつかの例証的実施形態を添付図面に示す。
【0046】
一般
コロイド状湿式化学アプローチを、以下の実施例に全般的に採用した。ジオクチルエーテル(99%)、トリ−n−オクチルホスフィン(TOP、90%)、1−オクタデセン(ODE、90%)、オレイルアミン(70%)、オレイン酸(90%)、およびセレン(100メッシュ、99.999%)は、全てドイツのSigma−Aldrich Chemie GmbHの製品であり、酸化カドミウム(99.999%)は、米国のStrem Chemicalsの製品である。
【0047】
ほとんどの場合で、狭い発光ピークを有する量子ドットが、高沸点を有する非水溶性溶媒で調製された(TOPO、TOP、ODE、ジオクチルエーテル、オレイルアミン、または2つ以上のこれらの溶媒の混合溶媒)。量子ドットの高エネルギー表面を不動態化するのに用いられるキャッピング剤は、TOPO、オレイン酸等である。製造したままの量子ドットは、例えばヘキサン、クロロホルムおよびトルエンなどの非水溶性溶媒に容易に分散される。水溶性のその対応物は、表面のリガンド交換工程を介して得られるが、その複雑さは量子ドットの安定性に基づく。
【0048】
以下の実施例の方法は、例示として選択された1つの溶媒または複数の溶媒の組み合わせを使用しており、出発物質として長鎖アルキルアミン化合物を必要とせず、低い反応温度で行なわれる。すべてのケースで、粗生成物は、本願以前に達成されたよりも5〜10倍高い濃度であることが分かった。実施例は詳細な比較を含み、それには種々の溶媒における種々の反応濃度での量子ドット調製や、種々の酸化カドミウム対オレイン酸の比を適用した場合の量子ドット調製が含まれる。さらに、これらの量子ドットからのポリマー/定量ドットハイブリッド材料の製作についても提示する。
【0049】
実施例1−120℃での白色光放射CdSe量子ドットの調製
0.128gの酸化カドミウム(CdO、1.0mmol)を、1.28mlのオレイン酸(4.0mmol)および12mLのジオクチルエーテルと共に、温度計センサを装着した50mLの反応フラスコに入れた。脱気後、反応混合物を250℃に加熱した(本明細書の温度の単位はすべて摂氏(℃)とする)。透明で無色の溶液が生成したらすぐに、溶液を120℃に冷却し、TO1.2mlの1M セレン/TOP溶液(50mLのTPに3.95gの100メッシュ セレンを溶解させることにより調製)を反応フラスコに注入した。2分間の反応後、ヒーターを除去し、反応混合物を冷n−ヘキサン中に直ちに注いだ。メタノールを、同量の得られたn−ヘキサン溶液と混合すると、相分離が生じる。下層(n−ヘキサン、メタノール、ジオクチルエーテル、TOP、および未反応の一部のオレイン酸から成る)を捨てる。n−ヘキサン/メタノール混合物(v/v、1:1)で混合物をもう一回洗浄すると、メタノール(n−ヘキサンの量が多い場合、相分離が再び現われる場合があり、上層の量がかなり減るだろう。下層を捨てて、メタノールで沈殿処理を続ける)またはアセトン(アセトンを使用すると、n−ヘキサンとアセトンの混
合物中に量子ドットがかなり溶解するため生成物の一部が失なわれる可能性がある)で白色量子ドットを沈殿させることが可能であり、遠心により生成物を収集する。得られたペレットは、さらなる用途およびキャラクタリゼーションのためにn−ヘキサン、トルエンまたはクロロホルム中に分散してもよい。
【0050】
図1Aは、n−ヘキサン溶液で、本発明の方法により調製された白色量子ドットの溶液を示す写真を示す。部屋の明かりでは、励起光がないため、溶液が黄緑色に見えた。図1Bは、暗闇で励起UVランプを照らした時の図1に示された溶液を示す写真を示す。明るい白色光が放射された。写真の下側の溶液の反射像(バイアルのすぐ下)は、わずかに青い印である。図1Cは、図1および図1Bの写真で示された溶液のフォトルミネセンススペクトルを示す。図1Bの反射で明らかになった青い特徴がこのスペクトルでも現われている。白色量子ドットの濃度を増大させることにより、この青色放射特性はFRET効果により抑制され、より純粋でより明るい白色光を得ることができる。
【0051】
そのような白色光を放射する量子ドットは狭いサイズ分布を有し得るが、いくつかの狭い分散量子ドットが一緒に混合された場合に似て、いくつかのピーク(異なるサイズに対する中心)を備えた分布プロフィールをおそらく有するだろう(一般的理解によれば)。これを試みる方法は、調製された白色量子ドットをさらに120℃で成長させ、異なる反応間隔でアリコートを取り、それらを冷n−ヘキサンで急冷することである。実験を行い、フォトルミネセンススペクトルをアリコートサンプルから記録した。図2では、比較のために一連の複数のスペクトルをまとめた。
【0052】
図2は、120℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンス(PL)スペクトルを示す。見てわかるように、5分目で、より長い波長におけるショルダーピークが消失した。時間が経過するにつれてピークはますます狭くなり、反応の180分後は形状がほとんど変化しないままとなり、発光ピークの位置はより長い波長へとシフトした。120℃の時間での量子ドットのPLスペクトルの移動は、2分目当たりで量子ドットが最も狭いサイズ分布を有している可能性が非常に高いことを示唆している。これらのデータはさらに、特に30分間の反応後には、非常に小さな増分で発光ピークを調整できることを示している。したがって、光の混合物(つまり白色光)を放射していたのは狭いサイズ分布を有する量子ドットであった。理論によって束縛されることは意図しないが、考えられる説明としては、2分目では「マジックのサイズ」(熱力学的に安定した)の量子ドットが形成されたと思われる。しかしながら、これらの量子ドットは、異なる表面状態が共存する比較的不規則な表面を有し、そのため種々の色が放射され、それにより集合的には白色光が放射された可能性もある。熱が連続的に供給されると、これらの量子ドットはその後さらに成長した可能性がある。先の活性表面状態はそれにより不動態化され、上記放射特徴のいくつかを失った可能性がある。
【0053】
実施例2および3:他の温度でのCdSeの調製
異なる温度での上記CdSe量子ドットの調製を示すために、2つのさらなる実施例を挙げる。最初の実施例は80℃での反応の実施であった。すなわち、酸化カドミウム(0.128g、1.0mmol)、オレイン酸(1.28mL、4.0mmol)およびジオクチルエーテル(12mL)の混合物から透明な溶液を形成した後で、反応フラスコに1.2mLのTOP/Se溶液を注入した。反応混合物のアリコートを特定の間隔で取り、冷n−ヘキサンに注いだ。
【0054】
図3は、80℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトルを示す。図3Aに示されたスペクトルは、10〜60分までの反応時間で調製された量子ドットを示す。図3Bに示されたスペクトルは、60分から18時間までの反応時間で調製された量子ドットを示す。
【0055】
図3Aでは、反応の第1の時間の量子ドットのフォトルミネセンススペクトルの変化を示しているが、頂部にプラトー(平坦部)を有する広範な放射が10分で見られる。時間が増大するにつれ、プラトーはより長い波長放射にシフトし、発光ピークの幅は徐々により狭くなった。35分後に、ショルダーピークがより短い波長で現われた。このピークの強度は増大し、カーブ全体がわずかに青色シフト(60分まで)を示した。一見この現象は、より長い波長でのフォトルミネセンス放射が元々より大きな量子ドットサイズによるとすれば、量子ドットが連続的に成長するという仮定と一致しない。考えられる説明は、これらの反応段階では粒子が非常に小さなマジックサイズであったということである(120℃の場合の2分目の先のケースと同じ)。スペクトルに示されているように、それらの本来の放射は約400nmであった。より長い波長での放射は、余分な表面状態と、ひょっとするとゆるく充填された小さな量子ドットに由来する集合体の結果であり得る。55分目までの赤色シフトは、時間の経過に伴って表面状態の数が増大したためかもしれない。35分から開始して、これらの量子ドットのうちの一部は次のより大きなマジックサイズの相当物を形成した可能性があり、よって表面状態の数が徐々に減少した可能性がある(結晶プロセス)。60分目からは、このプロセスがさらに顕著となるだろう(図3B参照)。18時間の反応期間後、λ=538nm(青信号)を中心とする対称な発光ピークが達成された。これは表面状態が少ないアニーリングされた表面を示す。それらの量子ドットは、90分までは、白色光放射に近い赤−緑−青波長をカバーする混合放射を示す。
【0056】
図4は、160℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトルを示す。すべての他のパラメータ(出発物質、化学量論比、前処理等)は図3に示された実施例と同一とした。160℃での反応は顕著に速かった。2分目でさえ、対称的なフォトルミネセンス発光ピークが観察された。時間が経つにつれ、発光ピークは単調に、より長い波長へとシフトした。2分目(それ以前は調べなかった)からのショルダーピークの欠如は、この反応温度では、表面状態が(これはより長い波長側でのショルダーピークの原因と考えられている)120℃および80℃の場合よりもはるかに速く消えるように見えた。120℃と80℃の間の場合を比較した場合にも同じ状況が見られる。反応速度の計算における近似をとる場合(明らか熱吸収または放出がない一次反応の場合、温度が10度増加すると反応速度は2倍になるだろう)、120℃の反応の2分目に対応する反応期間は、80℃での反応の32分目および160℃の反応の約8秒目になるだろう。これらの観察と評価に基づくと、白色量子ドットの調製に有利な注入温度は160未満℃である。しかしながら、狭い発光の単一有色量子ドットが好まれる場合、160℃の注入および反応温度、恐らくそれより大きい温度がより良い選択になるだろう。
【0057】
CdSe量子ドットの成長経路
図5は、160℃の反応の異なる段階で得られたアリコートについて記録した、フォトルミネセンススペクトルの半値全幅(FWHM)に対する波長のプロットを示す。
【0058】
図5から得られるように、フォトルミネセンス波長は523nmから585nmまで(またはより長い反応時間ではさらに長くに、例えば、λ=585nmで240分目では、わずかな傾斜が存在する)調整することができ、この波長は緑色(520−565nm)および黄色(565−590nm)の全スペクトルをほとんどカバーしている。より短いか(例えば青色光)、またははるかに長い(例えば赤色光)波長の光を放射する量子ドットの場合、特定の反応条件での調整は困難になるだろう。
【0059】
さらなる観察は、すべての場合でPLピーク(量子ドットの成長)の赤色シフトが、最初により速く起こり、シフト速度が反応時間の経過と共に徐々に減少するということである。この理由は、時間の経過と共に、量子ドットの成長に使用されるモノマーの濃度が低
下することである。さらに、反応速度が一定でも(つまり、反応物材料の欠乏は無視して一定反応期間に生成物が同じ量ΔVだけ生じる)、粒子が成長すると粒径(ΔD)の上昇率は減少する、粒径)ΔD)の増加速度が減少する。
【0060】
【数1】
直径の増大は発光波長の増加と大まかに相関するため、時間の経過と共に発光波長の上昇速度が小さく変化するのは合理的である。
【0061】
さらに、図5は、30分目にλ=566nmを中心とする最も狭い発光ピーク(FWHM=22nm)が得られたことを示し、これはCdSe量子ドットが単一分散していることを示している。FWHMは、反応の開始時に減少する(FWHM:32nm(2分)→25(5)→23(10)→22(30)。FWHMの後ろの括弧の中の数字は、アリコートが測定のために取られた場合の分を示す。しかしながら、FWHMは、30分の反応後には上昇し始める(FWHM:22nm(30分)→24(60)→26(120)→27(180)→27(240))。これは、この反応温度では量子ドット粒子が最初に「フォーカシング」プロセス(より小さな量子ドットが溶解されてより大きな量子ドットの成長のための材料を提供する)を経験し、引き続きより良好な単分散に至ることを示唆している。すべての量子ドットが非常に類似のサイズ(約30分目)を有する段階に反応が達した後、オストワルド熟成が作用し始めた(核形成→フォーカシング→オストワルド熟成プロセス)。この場合、いくつかの量子ドットのさらなる成長のための材料は、同様のサイズの他の量子ドットの溶解から得られ、競争が強いと材料の供給がむしろ不十分となった。そのように材料の供給が不十分であると、すべての量子ドットが同時に成長することは不可となり、サイズ分布はある程度まで広がる。しかしながら、反応がさらに3.5時間行われ続けても、発光ピークは依然約27fwhmと狭くなり得る。
【0062】
しかしながら、低温での反応の場合、核形成−フォーカシング−オストワルド熟成プロセスはそれほど顕著ではない。その実施例が図6に示されており、図6は120℃での反応の異なる段階で得られたアリコートについて記録した、フォトルミネセンススペクトルのFWHMに対する波長のプロットを示す。
【0063】
図6は、120℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンス波長と半値全幅の依存性を示している。160℃℃での反応と比較すると、フォトルミネセンスピークの波長の調整可能な範囲はより大きく(78>62nm)、発光はより短い波長に位置している(479−557nm)。主に、低温だと反応速度が小さいことによる。PLピークに対する半値全幅の結果は、低温ではフォーカシングプロセスだけが存在し、オストワルド熟成現象が存在しないと示唆するように見える。しかしながら、反応温度が10℃増大すると反応速度は倍になると仮定することにより(一次反応の場合の動的モデル)非常に近似した推定値が得られる場合、40℃の違いは高温での反応速度を16倍速くする。この場合、16×30時間(8時間)の反応時間後に、160℃の場合に従って、120℃の反応でオストワルド熟成が現われ得る。このことは同じ条件での別の個別の調製で証明される。
【0064】
種々の溶媒における量子ドットの調製
ジオクチルエーテルの他に、TOP、1−オクタデセン(ODE)、オレイルアミン、
TOP/オレイルアミン、およびODE/オレイルアミンも、CdA量子ドットの調製のための溶媒としてそれぞれ使用した。これらはすべて常温で液体であり、ODEが最も商業上好ましい選択である(100Lで18.56シンガポールドル)。
【0065】
実施例4−溶媒としてTOPを用いた比較
トリ−n−オクチルホスフィン(TOP)を溶媒として用いて、調整に少しの改変を適用した。反応の開始点で溶媒を添加する代わりに、反応溶媒の相加の前に、酸化カドミウムをオレイン酸と単独で反応させることにより、まずオレイン酸カドミウムを調製された。反応のプロトコルは以下の通りである:
0.128gの酸化カドミウム(CdO、1.0mmol)を、温度計センサを装着した50mLの3ツ口反応フラスコ中で1.28mlのオレイン酸(4.0mmol)と混合した。脱気後、暗褐色固体が完全に溶解し薄く着色した透明な溶液が生成するまで、反応混合物を攪拌しながら250℃に加熱した。反応フラスコに12mlのTOPを注入し、温度を120℃に設定した。120℃で、1.2mlの1M TOP/Se溶液を注いだ。その後、反応混合物から異なる反応間隔でアリコートを取り、冷トルエンで急冷した。
【0066】
図7は、得られたアリコートから記録した、120℃でTOPで調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル(図7A)および吸着スペクトル(図7B)を示す。図7Aから得られるように、発光ピークは時間の経過につれて広がっている。これは、白色量子ドットの調製には利点である(つまりRG−B色発光をカバーしている)ように見えるが、この場合、白色放射光は比較的弱かった(量子収量が低かった)。図7Bの吸着スペクトルは、30分の反応期間後に、吸収ピークが徐々に平坦になることを実証している。これは、量子の閉じ込めが徐々に損失することを示唆しており、これは量子収量の減少(より弱い発光として示される)と合致している。よりコストがかかるのにパフォーマンスが低いため、TOPは白色量子ドットの調製に対する良い候補ではない。
【0067】
実施例5−8:溶媒としてのTOP/オレイルアミン(v/v、1:1)、ODE、ODE/オレイルアミン(v/v、1:1)、およびオレイルアミン
図8は、120℃でTOP/オレイルアミン(v/v、1:1)(図8A);ODE(図8B);ODE/オレイルアミン(v/v、1:1)(図8C);およびオレイルアミン(図8D)で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトルを示す。反応媒体(溶媒)としてTOP/オレイルアミンまたはODEを使用し、120℃で反応温度を維持した場合、対称な発光ピークが60秒未満の反応時間後でさえ観察された、白色光を放射するマジックのサイズ量子ドットを得るには、30秒より前に反応を急冷するか(図8bに基づく)、または低温(例えば80〜100℃)で反応を実行することが可能である。しかしながら、上記120℃での2つの反応は、単色の量子ドットの調製に非常に良好である。
【0068】
ODE/オレイルアミンまたはオレイルアミンのみを反応溶媒として使用する場合、開示状態での反応速度ははるかに遅い。反応の2分後でも、生成した量子ドットはまだ360−390nmが中心の幅広い発光ピークを有する。この場合、白色量子ドットは2〜5分間の間に反応混合物を急冷することにより得ることが可能であろう。急冷(クエンチング)の時間に依存して、冷たい白色、白色、または暖かい白色の発行が得られ得る。
【0069】
ODE/オレイルアミン(v/v: 1:1)またはオレイルアミンを溶媒として使用した場合には、生成物がしばらく蓄積した後で相分離が起こることは注目すべきである。量子ドットは下層に止まり、元の濃度よりも濃度が5〜10倍高くなる。これとは対照的に、大部分の溶媒および未反応物質は上層に残った。これは、一方では、生成を非常に簡単にし、他方では、同じ生成物の次のバッチの調製のために上層を使用することが可能と
なる。いずれも製造コストの低下につながるだろう。
【0070】
種々のCd/オレイン酸の比によるCdSe量子ドットの調製
酸化カドミウムとオレイン酸の間の比の変化も、量子ドットのパラメータに影響を及ぼす。CdSe量子ドットの形成のための重要な成分の一つであるオレイン酸カドミウムを調整するための、CdOとオレイン酸の間の化学量論比は1:2である。オレイン酸の純度等級(90%)を考慮すると、この最小比は1:2.3であろう。単分散した量子ドットを得るために、反応の開始時にはいくらかの遊離配位子(この場合はオレイン酸)が存在すべきである。いくつかの試験で示されたのは、反応の開始時にオレイン酸を含むためには、オレイン酸の最小量が酸化カドミウムの最小量の3倍であるべきということである。より高濃度の配位子に相当する、オレイン酸の増加により、同じ反応器官に得られる量子ドットがより小さくなるという結果が生じる。オレイン酸と酸化カドミウムの間の比が7より大きいと、量子収量が劇的に低下する。3〜4の比では、高品質な量子ドットを調製することができる。
【0071】
ポリマー/量子ドットハイブリッドフィルムの調製
調整されたままの(粗い)量子ドットを、当該技術分野で使用される手順の改変である以下のプロトコルに従ってまず洗浄した:
1mlの粗CdSe量子ドットを、15mlの遠心分離チューブ中で4mlのトルエンに分散した。次に8mlのメタノールをチューブに加えた。ボルテックスおよび遠心後、油状の残留物がチューブの底に現われた。この残留物を再び4mlのトルエンに分散させて、別の8mlのメタノールを加えた。さらにボルテックスおよび遠心分離した後で、固体材料が得られた。この固体を所望の濃度の調製ポリマー(従来のポリスチレンまたは光伝導ポリビニルカルバゾール)トルエン溶液に分散させた。得られた溶液をボルテックスし、ポリマー鎖と量子ドットが十分に混合するようにした。その後、薄膜は、種々の用途のために種々の基板(金属コーティングされた光学ガラススライド、融解石英スライド、石英結晶センサ、シリコンウエハ等)上に鋳造またはスピンコーティングにより、溶液から薄層を製作した。
【0072】
本明細書内の過去に刊行された文書の列挙または議論は、その文書が技術水準の一部または共通の一般常識であるとの認識として、必ずしも捉えられるべきではない。個々の文書が特別に、そして個別に援用されるものとして示されていたとしても、列挙された全ての文書が、全ての目的のために全体が本明細書に援用される。
【0073】
本発明を、本明細書内に広範かつ包括的に記載した。その包括的開示に含まれる狭い種(species)およびジェネリックより下位のグループ(subgenerics)の各々も、本発明の一部を形成する。これは、本発明の包括的(generic)な記載を含むが、対象物が属(genus)から除去されることを前提または否定的制約とし、除去された材料が具体的に本明細書に引用されたかどうかにかかわらない。
【0074】
本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素または限定を用いずに適宜実施してもよい。つまり例えば、用語「含む」「包含する」「含有する」などは、広範に、限定なしに読み取られる。加えて、本明細書で用いられる用語および表現は、説明に関して用いられ、限定として用いられるものではなく、図示および説明された特徴またはその一部の均等物を除外するそのような用語および表現の使用を意図するものではなく、請求された本発明の範囲内で様々な改良が可能であることを認識されたい。本発明の更なる目的、利益、および特徴は、前述の実施例の実験および添付の特許請求の範囲から当業者に明白となろう。つまり本発明が、例示的実施形態および任意の特徴により具体的に開示されるが、そこに具体化され本明細書に開示された発明の改良および変更を当業者が頼りにしてよいこと、そしてそのような改良および変更が本明細書の範
囲内とみなされることを理解すべきである。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、それにより本発明がマーカッシュ群の各構成メンバーまたは構成メンバーのサブグループに関しても記載されていることが、当業者には認識されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明はカドミウム含有ナノ結晶を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ナノ粒子は、例えば着色剤として例えば、ステンドグラス窓の、触媒、磁気薬物送達、低体温癌治療、磁気共鳴影像法の造影剤、生物学における磁気および蛍光タグ、太陽光電池、ナノバーコード、またはディーゼル車の排ガス規制に広範な用途が見出されている。
【0003】
半導体ナノ粒子、通常、伝導帯電子、価電子帯正孔、または、励起子の3つすべての空間的方向における) の動きを閉じ込めているナノ結晶は、電荷の「滴(droplet)」とし
て機能し、量子ドットと称される。量子ドットは2〜10ナノメートルと小さく、自己集合量子ドットのサイズは通常10〜50ナノメートルである。
【0004】
量子ドットは、エレクトロニクス、蛍光映像法、および光学的符号化を含む種々の用途に対して関心を集めている。量子ドットはその量子収量が理論的に高いため、光学的用途に関して特に重要である。電子応用では、量子ドットは単一電子トランジスタのように作用し、クーロンブロッケード効果を示すことが証明されている。
【0005】
発光ダイオードLEDs等の固体の照明装置に量子ドットが応用されるようになっている。LEDsの効率は、その発光層の質にまさしく依存しているが、発光層は従来物理的蒸着法または分子ビームエピタキシ法により製造された無機層であった。このようなLEDsの長所は、光安定性と、装置に長い寿命を与えることであるが、短所は、施設が高くつき、製作条件が厳しく、効率が低いことであった。発光層として有機のポリマーの染料を使用することで、効率が増大し、製作が容易となっているが、これらの染料は高温では安定性が低いか、光の存在で装置の寿命が劇的に短くなっていた。高い量子収率と製作容易性を有するコロイド性の量子ドットが、これまでに製造された、すなわち発光層として量子ドットが埋めこまれたポリマーマトリクスポリマー/量子ドットナノコンポジット、ポリマー/量子ドットハイブリッド材料等とも称されるを用いて製造された無機および有機LEDsの療法の両方を備えたLEDsの製造の可能性を与えた非特許文献1。
【0006】
高品質な半導体量子ドットの製造の最も成功している経路の1つは、負イオン源(例えばTOP/Se、TOP/S等)が場合によって存在する配位性溶媒中における高温での前駆体分子の分解である (以前の技術の概要については、例えば非特許文献2参照。このプロセスは、Murrayらにより1993年に開発された (非特許文献3、CdEの量子ドットを生産している (E=Se,SおよびTe。 Murrayらの文献はジメチルカドミウムの
トリ−n−オクチルホスフィン(TOP)溶液の形成と、対応するカルコゲン化物のTOP溶液の形成とに関する。かかる溶液が混合され、高温(約200℃〜300℃)で迅速にトリ−n−オクチルスルフィンオキシド (TOPOに注入される。その結果、TOP/TOPOでキャップされたナノ結晶が得られる。キャップ剤は、有機溶媒での粒子の溶解を許容し、粒子集合の防止と半導体表面の電子不動態化に極めて重要な役割を果たす。また、同様のアプローチが、コア/シェルナノ構造を有するZnSとZnSeのナノ粒子、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、およびCdSe/ZnSeの調製に使用されている。CdSeナノ結晶は、その調製が容易であると共に可視スペクトルでのフォトルミネセンスの大きさが調整可能であるため、最も広く研究されている量子ドットとなっている。
【0007】
このいわゆるTOPO法によって、1回の実験で数百ミリグラムの量の高度に単分散したナノ粒子の生産が可能となっている。しかしながら、高温の使用や出発材料の毒性のため、大規模での開発には大きな障害が示されている。
【0008】
日常生活に使わされている照明の大部分は、日光すなわち白色発光に似ている。これは白色発光材料の開発に需要があることの理由となっている。白色発光ポリマー/量子ドットハイブリッド材料も実証されている。最も広く応用されている戦略は、RGBの原則(すなわち赤、緑、青色の光を混ぜると白色光になる)に従い、様々なサイズの量子ドットを混ぜてポリマーマトリクスに様々な色の発光を与え、全体としては白色発光を達成するというものである。しかしながら、そのような戦略はいくつかの潜在的な問題のために制約があり得る:1)マトリクス中に種々の色の量子ドットが不均一に分布する可能性、これにより特定の部分では単一色が優勢だったりまたは欠如したりし得る、2)粒子間距離を制御することの困難さ、短波長で放出された光がより大きなサイズの粒子によって吸収される蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が起こる。短波長の発光がないと、白色光の形成が失敗となる。ポリマーマトリクス中の量子ドットの濃度を低減させると、FRETの可能性は低下し得るが、これが必ずしも白色光の放出を促すとは限らない、3)3つのタイプの量子ドットが異なる光または熱安定性を示す場合に装置の性能が低下する。これらすべてが大規模への量子ドットの応用の制約となっている。
【0009】
上記の問題に対する解決策が2005年に現れた(非特許文献4)。この研究記事では、「マジックサイズ」の量子ドットがTOPO法を改変して調製された。酸化カドミウムおよびドデシルリン酸の、TOPOとヘキサデシルアミンの混合物溶液へ、セレンのTOPおよびオクタデセン溶液を高温(330℃)で注入した。表面状態が豊富であるため、これらの量子ドットは、青色光領域の自身の本質的な放出に加えて、長波長の光を放出した。放出された光の全体は純白色光であった。このアプローチに従えば白色光を発光する量子ドットを調製することができるが、必要な重要な反応条件と操作により、規模拡大すなわちスケールアップが不可能となっている。穏和な条件で簡単な操作にて同様な量子ドットを生産するための新しいアプローチが必要である。
【0010】
量子ドット(有色のものですら)が広く使用されるのを妨げている別の問題は、コストの高さである。コストが高くなるのは、調製(高温、厳しい処理等)、精製(溶媒と大量に消費し、労力を多大に使った徹底的な洗浄)、およびスケールアップ問題の点で困難さがある結果である。したがって、量子ドットの製造コストの低下に有用な新しいアプローチが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Achermann, M., et al., Nature [2004] 429, 642-646
【非特許文献2】Reed, M.A., Scientific American (1993), January, 118-123
【非特許文献3】placeCityMurray et al. J. Am. Chem. Soc(1993), 115, 8706-8715
【非特許文献4】Bowers, MJ., J. Am. Chem. Soc. [2005] 127, 15378-15379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、上記に説明した困難さのうちの少なくともいくつかを克服する、カドミウムカルコゲニドの少なくとも本質的に単分散のナノ粒子を提供する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1態様では、本発明は、AがSまたはSeである組成CdAのナノ粒子を形成する方法を提供する。方法は、適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程を含む。溶媒はエーテルおよびアミンから選択された化合物を含む。いくつかの実施形態では、溶媒はアルケンを含む。さらに、溶媒は、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドを少なくとも本質的に含まない。方法は、前記溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程を含む。方法はさらに、該約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加する工程を含む。それにより前記組成CdAnoナノ結晶が形成される。
【0014】
いくつかの特定の実施形態によれば、前記カドミウム化合物の溶液を形成する工程が、カドミウム有機塩の酸化物(オキシド)または無機塩を長鎖有機酸と反応させることにより、カドミウム有機塩を形成することにより行われる。
【0015】
関連する態様では、本発明は、AがSまたはSeである組成CdAのナノ結晶を形成する方法を提供する。方法は、適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウム有機塩の溶液を形成する工程を含み、例えばそれは、カドミウム有機塩の酸化物(オキシド)または無機塩を、長鎖有機酸またはその化合物と反応させることによる。溶媒は、ジオクチルエーテル、1−オクタデセン、オレイルアミンおよびそれらの任意の組み合わせから選択される。方法はさらに、溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程を含む。方法はさらに、該約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加する工程を含む。それにより前記組成CdAのナノ結晶が形成される。
【0016】
上記発明の方法により得られた名の結晶は通常均質である。
さらなる態様では、本発明は、発光体の製造における、上記方法のいずれか1つによって得られたナノ結晶の使用方法に関する。
【0017】
本発明は、添付図面と共に発明の詳細な説明を参照すれば一層よく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1Aはn−ヘキサン溶液で本発明の方法により調製された白色量子ドットの溶液を示す写真。図1Bは、暗闇で励起UVランプを照らした時の図1に示された溶液の写真。図1Cは、図1および図1Bの写真で示された溶液のフォトルミネセンススペクトル。
【図2】120℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを成長させ、示した複数の期間後にアリコートを得、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図3A】80℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを10〜60分間(示した数字は時間の点(分)を示す)成長させ、アリコートを得て、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図3B】80℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを60分〜18時間(示した数字は時間の点(分)を示す)成長させ、アリコートを得て、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図4】160℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。量子ドットを成長させ、示した複数の期間後にアリコートを得、冷n−ヘキサンで急冷した。
【図5】160℃で反応(x軸)の異なる段階で得られたアリコートについて記録したCdSe量子ドットのフォトルミネセンス波長(左側のy軸)および半値全幅(右側のy軸)。
【図6】120℃で反応(x軸)の異なる段階で得られたアリコートについて記録したCdSe量子ドットのフォトルミネセンス波長(左側のy軸)および半値全幅(右側のy軸)。
【図7A】得られたアリコートから記録した、120℃でトリ−n−オクチルホスフィン(TOP)において調製したCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図7B】得られたアリコートから記録した、120℃でトリ−n−オクチルホスフィン(TOP)において調製したCdSe量子ドットの吸着スペクトル。
【図8A】120℃でトリ−n−オクチルホスフィン(TOP)/オレイルアミン(v/v、1:1)において調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図8B】120℃でジオクチルエーテル(ODE)において調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図8C】120℃でODE/オレイルアミン(v/v、1:1)において調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【図8D】120℃でオレイルアミンにおいて調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これらの添付された図から理解されるとおり、高品質のナノ結晶が、穏和な反応条件で本発明の方法を用いて形成可能である。完全にパラメータを制御することで、得られる名の結晶の所望の特性を細かく調節される。例として、本発明の方法により得られたナノ結晶は、発光体、増幅体、生物学的センサ内で、または計算法に用いてもよい。発光体、即ち発光装置、例えばランプ、発光ダイオード、レーザダイオード、フルオロフォア(例えば腫瘍の検出)、TV画面またはコンピュータモニタに用いられる場合、本発明の方法で工程パラメータの値を選択することにより、発光のピークを含む波長を調整することができる。本発明のそのような一実施形態は、白色光を発光するナノ結晶である。したがって本発明は、本発明の方法により得ることができる、または得られたナノ結晶の使用にも関する。例示的な図から理解されるとおり、発光ピークを含む各波長範囲は、元素Aが添加される温度、反応時間、用いられる溶媒、用いられる界面活性剤、および添加される界面活性剤の量などの因子により制御することができる。
【0020】
本発明の方法では、溶媒の主成分がトリ−n−オクチルホスフィンオキシドでない限り、いかなる適切な溶媒を使用してもよい(以下も参照のこと)。通常、溶媒は配位溶媒であるか、または配位溶媒を含む。溶媒は、エーテルや、アルキルアミンまたはジアルキルアミン等のアミンを含んでいる。典型的な実施形態では、溶媒は弱配位性溶媒である。溶媒は、アルカンまたはアルケン等の非配位性成分(以下を参照)またはトリ−n−オクチルホスフィン等の強い配位成分を含んでもよい。
【0021】
本発明の方法で用いられる溶媒は、代表的には、例えば約120℃、150℃、180℃、または約220℃を超える有する高沸点溶媒である。幾つかの実施形態において、本発明の方法の際に最高の選択温度を超える沸点を有する溶媒成分の組合せが、選択される(例えばカドミウムまたはカドミウム化合物を溶解するため)。エーテルまたはアミンそのものが、高沸点溶媒であってもよい。適当なエーテルの例としては、非限定的に、ジオクチルエーテル(CAS−No.629−82−3)、ジデシルエーテル(CAS−No.2456−28−2)、ジウンデシルエーテル(CAS−No.43146−97−0)、ジドデシルエーテル(CAS−No.4542−57−8)、1−ブトキシドデカン(CAS−No.7289−38−5)、ヘプチルオクチルエーテル(CAS−No.32357−84−9)、オクチルドデシルエーテル(CAS−No.36339−51−2)、および1−プロポキシヘプタデカン(CAS−No.281211−90−3)が挙げられる。適当なアミンの例としては、非限定的に、1−アミノ−9−オクタデセン(
オレイルアミン)(CAS−No.112−90−3)、1−アミノ−4−ノナデセン(CAS−No.25728−99−8)、1−アミノ−7−ヘキサデセン(CAS−No.225943−46−4)、1−アミノ−8−ヘプタデセン(CAS−No.712258−69−0、純粋なZ−異性体のCAS−No.:141903−93−7)、1−アミノ−9−ヘプタデセン(CAS−No.159278−11−2、Z−異性体のCAS−No.:906450−90−6)、1−アミノ−9−ヘキサデセン(CAS−No.40853−88−1)、1−アミノ−9−エイコセン(CAS−No.133805−08−0)、1−アミノ−9,12−オクタデカジエン(CAS−No.13330−00−2)、1−アミノ−8,11−ヘプタデカジエン(CAS−No.141903−90−4)、1−アミノ−13−ドコセン(CAS−No.26398−95−8)、N−9−オクタデセニルプロパンジアミン(CAS−No.29533−51−5)、N−オクチル−2,7−オクタジエニルアミン(CAS−No.67363−03−5)、N−9−オクタデセン−1−イル−9−オクタデセン−1−アミン(ジオレイルアミン)(CAS−No.40165−68−2)、ビス(2,7−オクタジエニル)アミン(CAS−No.31334−50−6)、およびN,N−ジブチル−2,7−オクタジエニルアミン(CAS−No.63407−62−5)が挙げられる。
【0022】
溶媒に含まれ得る他の化合物としては、非限定的に、アルキル−またはアリールホスフィン、ホスフィンオキシド、アルカン、またはアルケンが挙げられる。各化合物は、長鎖アルキルまたはアリール基、例えばドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどを含んでいてもよい。しかし、そのような長鎖部分を含む化合物が本発明の方法に必要ではないことに、留意されたい。アルケンの例としては、非限定的に、1−ドデセン(CAS−No.112−41−4)、1−テトラデセン(CAS−No.1120−36−1)、1−ヘキサデセン(CAS−No.629−73−2)、1−ヘプタデセン(CAS−No.6765−39−5)、1−オクタデセン(CAS−No.112−88−9)、1−エイコセン(CAS−No.3452−07−1)、7−テトラデセン(CAS−No.10374−74−0)、9−ヘキサコセン(CAS−No.71502−22−2)、1,13−テトラデカジエン(CAS−No.21964−49−8)、または1,17−オクタデカジエン(CAS−No.13560−93−5)が挙げられる。アルカンの例は、デカン(CAS−No.124−18−5)、ウンデカン(CAS−No.1120−21−4)、トリデカン(CAS−No.629−50−5)、ヘキサデカン(CAS−No.544−76−3)、オクタデカン(CAS−No.593−45−3)、ドデカン(CAS−No.112−40−3)およびテトラデカン(CAS−No.629−59−4である。ホスフィンの例は、トリオクチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(ドデシル)ホスフィンである。ホスフィンオキシドの例は、トリオクチルホスフィンオキシド、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィンオキシド、およびフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。
【0023】
しかしながら、注目すべきなのは、本発明の方法は、アルカン、アルケン、ホスフィンまたはホスフィンオキシドが存在しない状態で行なえることである。そのような溶媒は、Bowersらの方法(上記参照、例えばJose, R., et al., Applied Physics Letters [2006] 89, 013115)または日本の特許出願特願第2006−143526号のパフォー
マンスを改善するアプローチで絶えず使用されているが、一般にコストがかかり、スケールアップと経済的生産への障害を与える。
【0024】
本発明の方法の幾つかの実施形態において、溶媒は、アルケンおよびアミンの両方を含む。アルケンおよびアミンは、任意の比で、例えば約100:1(v/v)〜約1:100
(v/v)、10:1(v/v)〜約1:10(v/v)または約5:1(v/v)〜約1:5(v/v
)の範囲内で存在してもよい。幾つかの実施形態において、溶媒は、アルキルホスフィンまたはアリールホスフィンと、アミンとの両方を含む。ホスフィンおよびアミンは、任意
の比で、例えば約100:1(v/v)〜約1:100(v/v)、約10:1(v/v)〜約1
:10(v/v)または約5:1(v/v)〜約1:5(v/v)の範囲内で存在してもよい。
【0025】
溶媒は、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドを少なくとも本質的に含まない。溶媒に関して本明細書で用いられる用語「少なくとも本質的に含まない」とは、全ての液体内容物に重要な影響を及ぼさない溶媒量の使用を指す。この用語は、つまりアミンの完全に含まないこと、および微量の存在、例えば約0.01%、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%または約5%(用いられる溶媒全量に関して)を包含する。したがって本発明の方法における、カドミウムまたはその化合物の溶液を調製する主溶媒(トリ−n−オクチルホスフィンオキシド以外の異なる溶媒の混合物であってもよい)は、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドとは異なる溶媒であるか、またはそれが優占的および支配的である。
【0026】
各溶媒(または複数の溶媒の混合物)において、カドミウム化合物の溶液が形成される。選択された溶媒に溶解可能ないかなるカドミウム化合物を用いてもよい。カドミウム化合物は、カドミウム元素、有機カドミウム塩、または例えば炭酸カドミウムおよび塩化カドミウムなどの無機カドミウム塩であってもよい。カドミウム化合物は、溶解して無機または有機塩などのカドミウム塩に変換され得るカドミウムオキシドであってもよい。カドミウム化合物の溶液の形成は、幾つかの実施形態において、溶媒を高温にすることを含んでいてもよい。カドミウムまたはカドミウム化合物を溶解させた後、溶液の温度を変化させても、例えば選択した温度に低下させてもよい。
【0027】
幾つかの実施形態では、カドミウム有機化合物の溶液が溶媒中で形成される。カドミウム有機化合物は溶媒に通常は直接分散される。カドミウム有機化合物は、可能ならば溶媒の存在下で、無機対応物を長鎖有機酸と反応させることにより得てもよい。無機または有機カドミウム化合物のほとんどが、可溶性有機塩を選択された溶媒中で形成するのに用いてもよい。適当な出発カドミウム化合物の例にが、酸化カドミウム、水酸化カドミウム、炭酸カドミウム(CdCO3)、硝酸カドミウム(Cd(NO3)塩化カドミウム(CdCl2)、ジメチルカドミウム(CdMe2)、酢酸カドミウム(Cd(Ac)2)、オレイ
ン酸カドミウム(Cd(OA)2)およびステアリン酸カドミウムが含まれるが、これら
に限定されるわけではない。
【0028】
本発明の方法は、界面活性剤を添加することを含んでいてもよい。界面活性剤は、カドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する前か、それと同時に溶媒に加えてもよい。各溶媒で形成されたカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液に、界面活性剤を添加してもよい。代表的には硫黄もしくはセレン(以下も参照)、またはそれらの化合物を添加する前に、界面活性剤を添加する。いかなる界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、例えば有機カルボン酸、有機リン酸塩、有機ホスホン酸、有機スルホン酸またはそれらの混合物であってもよい。適当な有機カルボン酸の例としては、非限定的に、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸([Z]−オクタデカ−9−エン酸)、n−ウンデカン酸、リノレン酸、((Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全ての−Z)−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、リノールエライジン酸((E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)パルミチン酸(ヘキサデカン酸)およびγ−ホモリノレン酸((Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸)が挙げられる。他の界面活性剤(例えば、有機ホスホン酸)の例としては、ヘキシルホスホン酸およびテトラデシルホスホン酸が挙げられる。過去にオレイン酸がナノ結晶を安定化し得て、オクタデセンを溶媒として使用し得ることが観察された(Yu, W.W., & Peng, X., Angew. Chem. Int. Ed. (2002) 41, 13, 2368-2371)。他のナノ結晶の合成において、界面活性剤が、形成されたナノ結晶の結晶形
態に影響を及ぼすことが示された(Zhou, G5 et al., Materials Lett. (2005) 59, 2706-2709)。本願の発明者らは、界面活性剤を適切な溶媒と組み合わせて使用することで高温での穏和な反応条件が可能となる(不活性ガス雰囲気がなくても)という驚くべき結果を見出した(以下も参照のこと)。
【0029】
いくつかの実施形態では、無機カドミウム塩の溶液が形成される。通常は長鎖有機炭酸である有機炭酸などの有機酸(例えば上述参照)、無機カドミウム塩(これは上述のように酸化カドミウムの溶解によっても得られる)の溶液に添加すると、有機炭酸のカドミウム塩のような有機カドミウム塩が形成され得る。この点、インジウム化合物の場合には複雑な混合物が形成されることに留意されたい(Lucey, D.W., et al., Chem. Mater. (2005) 17, 3754-3762)。
【0030】
本発明の方法において、カドミウムまたはカドミウム化合物の溶液は、20℃〜200℃、例えば約30℃〜約180℃、約40℃〜約160℃、約70℃〜約160℃の範囲から選択された温度に加熱される。温度は例えば、約60℃、約80℃、約100℃、約120℃、または約160℃であってよい。各温度では、元素A、即ち、硫黄またはセレンが、ナノ結晶の生成に適した形態で添加される。各元素を、任意の適当な溶媒に、例えばホスフィン、例えばトリ−n−オクチルホスフィン(TOP、CAS No.4731−53−7)、トリ−n−ノニルホスフィン(CAS No.17621−06−6)、トリ−n−ヘプチルホスフィン(CAS No.17621−04−4)、トリ−n−ヘキシルホスフィン(CAS No.4168−73−4)、トリ−n−ブチルホスフィン(CAS No.998−40−3)、トリ−p−トリルホスフィン(CAS No.1038−95−5)、トリ−l−ナフチルホスフィン(CAS No.3411−48−1)またはトリフェニルホスフィン(CAS No.603−35−0)に添加してもよい。
【0031】
反応混合物を、数ミリ秒から数時間までの範囲の任意の所望の時間実施してもよい。所望なら反応は、用いられる試薬および溶媒に関して、不活性雰囲気で、即ち反応性のない、または少なくとも検出可能な程度に反応性のない気体の存在下で、実施する。反応性不活性雰囲気の例は、窒素または希ガス、例えばアルゴンもしくはヘリウムである。しかしながら、不活性ガス雰囲気が通常は不必要であることが判明したのは注目すべきことである。
【0032】
本発明の方法は、白色光放出量子ドットを含むナノ結晶を、穏やかな反応条件で好都合に使用することができる。既知の量子ドットの形成方法と比較すると、本発明の方法は高濃度の(有色)量子ドットの調製を可能にする。例えば、Bowersら(2005年、前掲)によって開示された方法と比較すると、本発明の方法では、例えば5〜10倍高い濃度の量子ドットの調製物が形成されることがわかった。
【0033】
本発明の方法はさらに、比較的狭い発光ピーク(fwhmが約23nm)で従来の量子ドットを形成するのにさらに特に適している。穏やかな反応条件下では、細かい増分(インクリメント、Δλ=1nm)に発光ピークの波長を合わせることは簡単である。特定の反応温度と特定の反応時間(例えば図5、図6および図8参照)を選択することで、形成されるナノ結晶の発光波長を所望の通りに調節することができる。さらに、この調製のためには素早い注入は必要でないことが判明し、溶媒の新しい混合物により、5〜10倍高い濃度の量子ドットの生産が可能となったため、精製の労力とコストが低下した。これらはすべて、低コストで量子ドットおよびその派生生成物を大量生産する機会を与える。
【0034】
本発明の方法は、ナノ結晶の後処理を含んでいてもよい。本発明の方法により得られたナノ結晶は一般に、少なくとも本質的に、または少なくともほとんど単分散であるが、所
望なら粒度分布を狭くするステップを(例えば予防措置または安全性基準として)実施してもよい。そのような技術、例えば粒度選択的沈殿は、当業者に周知である。ナノ結晶の表面を変化させてもよく、例えばコーティングしてもよい。
【0035】
幾つかの実施形態において、本発明の方法により形成されたナノ結晶(またはその複数)は、選択された標的分子、例えば微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、ペプチド、オリゴ糖、多糖、無機分子、合成ポリマー、小有機分子または薬物への結合アフィニティーを有する分子に結合される。
【0036】
本明細書で用いられる用語「核酸分子」は、いずれかの可能な形態、例えば一本鎖、二本鎖またはそれらの組合せのいずれかの核酸を指す。核酸としては、例えばDNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、ヌクレオチド類似体を用いてまたは核酸化学を用いて生成させたDNAまたはRNAの類似体、ロックされた核酸分子(LNA)、およびタンパク質核酸分子(PNA)が挙げられる。DNAまたはRNAは、ゲノムまたは合成の起源であってもよく、そして一本鎖または二本鎖であってもよい。本発明のこの方法では、必ずではないが代表的にはRNAまたはDNA分子が用いられる。そのような核酸は、例えばmRNA、cRNA、合成RNA、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、DNAとRNAとのコポリマー、オリゴヌクレオチドなどであってもよい。各核酸は、その上、非天然ヌクレオチド類似体を含んでいてもよく、そして/またはアフィニティータグもしくはラベルに結合していてもよい。幾つかの実施形態において、核酸分子は、単離、濃縮、または精製されてもよい。核酸分子は、例えばcDNAクローニングにより、またはサブトラクティブ・ハイブリダーゼーションにより、天然供給源から単離されてもよい。天然供給源は、ホ乳類、例えばヒト、血液、精液、または組織であってもよい。核酸は、例えばトリエステル法により、または自動DNA合成装置を用いて合成されてもよい。
【0037】
多くのヌクレオチド類似体が公知であり、本発明のナノ結晶複合材料への結合のために用いられる核酸およびヌクレオチド中で用いることができる。ヌクレオチド類似体は、例えば塩基、糖、またはリン酸部分の修飾を含むヌクレオチドである。塩基部分の修飾としては、A、C、G、およびT/U、異なるプリンまたはピリミジン塩基、例えばウラシル−5−イル、ヒポキサンチン−9−イル、および2−アミノアデニン−9−イル、ならびに非プリンまたは非ピリミジンヌクレオチド塩基の天然および合成の修飾が挙げられる。他のヌクレオチド類似体は、ユニバーサルベースとして作用する。ユニバーサルベースとしては、3−ニトロピロールおよび5−ニトロインドールが挙げられる。ユニバーサルベースは、他の塩基と塩基対を形成することができる。塩基の修飾は、多くの場合、例えば二本鎖の安定性向上などの独特の性質を実現するために、例えば糖修飾、例えば2’−O−メトキシエチルを含むことができる。
【0038】
ペプチドは、合成起源であってもよく、または当該技術分野で周知の方法により天然起源から単離されてもよい。天然起源は、ホ乳類、例えばヒト、血液、精液、または組織であってもよい。ポリペプチドなどのペプチドは、例えば自動ポリペプチド合成装置を用いて合成してもよい。ポリペプチドの例は、抗体、そのフラグメントおよび抗体様機能を備えたタンパク質性結合分子である。(組換え)抗体フラグメントの例は、Fabフラグメント、Fvフラグメント、単鎖Fvフラグメント(scFv)、二重特異性抗体、三重特異性抗体(Iliades, P., et al., FEBS Lett (1997) 409, 437-441)、十重特異性抗体(Stone, E., et al., Journal of Immunological Methods (2007) 318, 88-94)および他
のドメイン抗体(Holt, L. J., et al., Trends Biotechnol. (2003), 21, 11, 484-490
)である。抗体様機能を備えたタンパク質性結合分子の例が、リポカリンファミリーのポリペプチドを基にした突然変異タンパク質である(WO/03029462、Beste et al., Proc. Natl. Acad. Sd. U.S.A. (1999) 96, 1898-1903)。ビリン結合タンパク質、
ヒト好中球ゼラチナーゼ結合リポカリン、ヒトアポリポタンパク質Dまたはグリコデリンなどのリポカリンは、修飾が可能な中性リガンド結合部位を有するため、ハプテンとして知られる選択された小タンパク質領域に結合する。他のタンパク質性結合分子の例は、いわゆるグルボディ(例えば国際特許出願WO96/23879を参照)、アンキリンスカフォールドを基にしたタンパク質(Mosavi, L.K., et al., Protein Science (2004) 13,
6, 1435-1448)または結晶スカフォールド(例えば国際特許出願WO01/04144
)を基にしたタンパク質、Skerra, J. MoI. Recognit. (2000) 13, 167-187に記載されたタンパク質、アドネクチン、テトラネクチンおよびアビマーである。アビマーは、複数の細胞表面受容体中のマルチドメインの列として生じるいわゆるA−ドメインを含む(Silverman, J., et al., Nature Biotechnology (2005) 23, 1556-1561)。ヒトフィブロネクチンのドメインから得られるアドネクチンは、標的への免疫グロブリン様結合のための処理が可能な3つのループを含む(Gill, D.S. & Damle, N.K., Current Opinion in Biotechnology (2006) 17, 653-658)。各ヒトホモトリマー性タンパク質から得られるテトラ
ネクチンも、同様にC型レクチンドメイン中に、所望の結合のための処理が可能なループ領域を含む(同書)。タンパク質リガンドとして作用し得るペプトイドが、側鎖がα炭素原子ではなくアミド窒素に結合したペプチドとは異なるオリゴ(N−アルキル)グリシンである。ペプトイドは、代表的にはプロテアーゼおよび他の修飾酵素への抵抗性があり、ペプチドよりもかなり高い細胞透過性を有し得る(例えばKwon, Y. -U., and Kodadek, T., J. Am. Chem. Soc. (2007) 129, 1508-1509を参照)。
【0039】
更なる例として、アフィニティータグなどの結合部分を用いて、各分子に固定化してもよい。そのような結合部分は、例えば窒素基、リン基、硫黄基、炭素基、ハロゲン基もしくは擬ハロゲン基を含む炭化水素系(高分子を含む)分子などの分子、またはその一部であってもよい。例として、選択された表面は、例えば短い側鎖を有するブラシ状高分子を含んでいてもよく、例えばそれでコーティングされてもよい。固定化表面も、例えばグラフティングにより、ブラシ状構造を含む高分子を含んでいてよい。それは、例えば生体分子、例えばタンパク質、核酸分子、多糖またはそれらの組合せなどの分子を共有結合させる官能基を含んでいてもよい。各官能基の例としては、非限定的に、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、カルボキシル基、エステル、酸無水物、スルホナート、スルホナートエステル、イミドエステル、ハロゲン化シリル、エポキシド、アジリジン、ホスホラミダイトおよびジアゾアルカンが挙げられる。
【0040】
アフィニティータグの例としては、非限定的に、ビオチン、ジニトロフェノールもしくはジゴキシゲニン、オリゴヒスチジン、ポリヒスチジン、免疫グロブリンドメイン、マルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、FLAG’−ペプチド、T7エピトープ(Ala−Ser−Met−Thr−Gly−Gly−Gln−Gln−Met−Gly)、マルトース結合タンパク質(MBP)、単純ヘルペスウイルスグルコタンパク質Dの配列Gln−Pro−Glu−Leu−Ala−Pro−Glu−Asp−Pro−Glu−AspのHSVエピトープ、配列Tyr−Pro−Tyr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Alaのヘマグルチニン(HA)エピトープ、配列Glu−Gln−Lys−Leu−Ile−Ser−Glu−Glu−Asp−Leuの転写因子c−mycのエピトープ、またはオリゴヌクレオチドタグが挙げられる。そのようなオリゴヌクレーチドタグを用いて、例えば相補的配列を備えた固定化オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてもよい。結合部分の更なる例は、抗体、そのフラグメントまたは抗体様機能を備えたタンパク質性結合分子である(同じく上記参照)。
【0041】
結合部分の更なる例は、ククルビツリル、またはククルビツリルと錯体を形成し得る部分である。ククルビツリルは、代表的にはグリコールウリルとホルムアルデヒドとの酸触媒縮合反応から自己組織化されたグリコールウリル単位を含む大環状化合物である。グリ
コールウリル単位を含むククルビツリル[n](CB[n])は、代表的には極性ウレイドカルボニル基を含むポルタルを2個有する。これらのウレイドカルボニル基を通して、ククルビツリルは、該当するイオンおよび分子に結合することができる。例としてククルビツリル[7](CB[7])は、フェロセンメチルアンモニウムまたはアダマンチルアンモニウムイオンと強固な錯体を形成することができる。ククルビツリル[7]または例えばフェロセンメチルアンモニウムのいずれかを生体分子に結合させてもよく、残りの結合パートナー(例えばそれぞれフェロセンメチルアンモニウムまたはククルビツリル[7])を、選択された表面に結合させることができる。その後、生体分子が表面と接触して、生体分子が固定化される。アルカンチオラートを通して金表面に結合した官能基化CB[7]単位が、例えばフェロセンメチルアンモニウム単位を担うタンパク質を固定化させることが示された(Hwang, L, et al., J. Am. Chem. Soc. (2007) 129, 4170-4171)。
【0042】
結合部位の更なる例としては、非限定的に、オリゴ糖、オリゴペプチド、ビオチン、ジニトロフェノール、ジゴキシゲニンおよび金属キレート剤が挙げられる(以下も参照)。例として、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(ニトリロ三酢酸、NTAとも呼ばれる)、1,2−ビス(o−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(ジメルカプロール)、ポルフィンまたはヘムなどの各金属キレート剤を、標的分子が金属イオンである場合に用いてもよい。例として、EDTAは、ほとんどの一価、二価、三価および四価金属イオン、例えば銀(Ag+)、カルシウム(Ca2+)、マンガン(Mn2+)、銅(Cu2+)、鉄(Fe2+)、コバルト(Co3+)およびジルコニウム(Zr4+)と錯体を形成するが、BAPTAは、Ca2+に特異的である。幾つかの実施形態において、各金属イオンとの錯体中の各金属キレート剤が、結合部分を画定する。そのような錯体は、例えば画定された配列のペプチドのための受容体分子であり、タンパク質中に含まれてもよい。例として、当該技術分野で用いられる標準的方法は、キレート剤であるニトリロ三酢酸(NTA)により示されるオリゴヒスチジンタグと銅(Cu2+)、ニッケル(Ni2+)、コバルト(Co2+)、または亜鉛(Zn2+)イオンとの錯体形成である。
【0043】
アビジンまたはストレプトアビジンを用いて、ビオチン化核酸を固定化してもよく、または金のビオチン含有単層を用いてもよい(Shumaker-Parry, J.S., et al., Anal. Chem. (2004) 76, 918)。更に別の例として生体分子を、例えばピロール−オリゴヌクレオチドパターンを通して、例えば走査型電気化学顕微鏡により、局所的に付着させてもよい(例えばFortin, E., et al., Electroanalysis (2005) 17, 495)。詳細には生体分子が核酸である他の実施形態において、生体分子を、例えば光活性化および失活を利用して、固定化単位の表面で直接合成してもよい。例として、選択された表面領域での核酸またはオリゴヌクレオチドの合成(いわゆる「固相」合成)を、電極を利用した電気化学反応を用いて実施してもよい。EgelandおよびSouthern(Nucleic Acids Research
(2005) 33, 14, el25)により記載された電気化学的脱ブロックステップが、例えばこの目的で用いられてもよい。適当な電気化学的合成は、米国特許出願US2006/0275927にも開示されている。幾つかの実施形態において、UV結合または光依存性5’−脱保護など、生体分子、詳細には核酸分子の光指向性合成(light−directed synthesis)が、実施されてもよい。
【0044】
選択された標的分子への結合アフィニティーを有する分子を、いずれかの手段でナノ結晶に固定化してもよい。例として、各部分を含むオリゴ−またはポリペプチドを、例えばω−官能基化チオールを用いて、チオ−エーテル結合を通してナノ結晶の表面に共有結合させてもよい。選択された結合アフィニティーを有する分子に本発明のナノ結晶を結合させ得る適当な分子を用いて、それをナノ結晶に固定化してもよい。例えば(二官能基)結
合剤、例えばエチル−3−ジメチルアミノカルボジイミド、N−(3−アミノプロピル)−3−メルカプトベンズアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルマレイミド、または3−(トリメトキシシリル)プロピルヒドラジドを用いてもよい。遊離メルカプト酢酸基を生成させ、その後に結合剤を通して被分析物の結合パートナーと共有結合することができるよう、結合剤との反応の前に、ナノ結晶の表面を、例えば氷メルカプト酢酸で処理することにより、修飾させることができる。
【0045】
本発明の例証的実施形態
本発明の方法、反応物、使用され得るさらなる処理のいくつかの例証的実施形態を添付図面に示す。
【0046】
一般
コロイド状湿式化学アプローチを、以下の実施例に全般的に採用した。ジオクチルエーテル(99%)、トリ−n−オクチルホスフィン(TOP、90%)、1−オクタデセン(ODE、90%)、オレイルアミン(70%)、オレイン酸(90%)、およびセレン(100メッシュ、99.999%)は、全てドイツのSigma−Aldrich Chemie GmbHの製品であり、酸化カドミウム(99.999%)は、米国のStrem Chemicalsの製品である。
【0047】
ほとんどの場合で、狭い発光ピークを有する量子ドットが、高沸点を有する非水溶性溶媒で調製された(TOPO、TOP、ODE、ジオクチルエーテル、オレイルアミン、または2つ以上のこれらの溶媒の混合溶媒)。量子ドットの高エネルギー表面を不動態化するのに用いられるキャッピング剤は、TOPO、オレイン酸等である。製造したままの量子ドットは、例えばヘキサン、クロロホルムおよびトルエンなどの非水溶性溶媒に容易に分散される。水溶性のその対応物は、表面のリガンド交換工程を介して得られるが、その複雑さは量子ドットの安定性に基づく。
【0048】
以下の実施例の方法は、例示として選択された1つの溶媒または複数の溶媒の組み合わせを使用しており、出発物質として長鎖アルキルアミン化合物を必要とせず、低い反応温度で行なわれる。すべてのケースで、粗生成物は、本願以前に達成されたよりも5〜10倍高い濃度であることが分かった。実施例は詳細な比較を含み、それには種々の溶媒における種々の反応濃度での量子ドット調製や、種々の酸化カドミウム対オレイン酸の比を適用した場合の量子ドット調製が含まれる。さらに、これらの量子ドットからのポリマー/定量ドットハイブリッド材料の製作についても提示する。
【0049】
実施例1−120℃での白色光放射CdSe量子ドットの調製
0.128gの酸化カドミウム(CdO、1.0mmol)を、1.28mlのオレイン酸(4.0mmol)および12mLのジオクチルエーテルと共に、温度計センサを装着した50mLの反応フラスコに入れた。脱気後、反応混合物を250℃に加熱した(本明細書の温度の単位はすべて摂氏(℃)とする)。透明で無色の溶液が生成したらすぐに、溶液を120℃に冷却し、TO1.2mlの1M セレン/TOP溶液(50mLのTPに3.95gの100メッシュ セレンを溶解させることにより調製)を反応フラスコに注入した。2分間の反応後、ヒーターを除去し、反応混合物を冷n−ヘキサン中に直ちに注いだ。メタノールを、同量の得られたn−ヘキサン溶液と混合すると、相分離が生じる。下層(n−ヘキサン、メタノール、ジオクチルエーテル、TOP、および未反応の一部のオレイン酸から成る)を捨てる。n−ヘキサン/メタノール混合物(v/v、1:1)で混合物をもう一回洗浄すると、メタノール(n−ヘキサンの量が多い場合、相分離が再び現われる場合があり、上層の量がかなり減るだろう。下層を捨てて、メタノールで沈殿処理を続ける)またはアセトン(アセトンを使用すると、n−ヘキサンとアセトンの混
合物中に量子ドットがかなり溶解するため生成物の一部が失なわれる可能性がある)で白色量子ドットを沈殿させることが可能であり、遠心により生成物を収集する。得られたペレットは、さらなる用途およびキャラクタリゼーションのためにn−ヘキサン、トルエンまたはクロロホルム中に分散してもよい。
【0050】
図1Aは、n−ヘキサン溶液で、本発明の方法により調製された白色量子ドットの溶液を示す写真を示す。部屋の明かりでは、励起光がないため、溶液が黄緑色に見えた。図1Bは、暗闇で励起UVランプを照らした時の図1に示された溶液を示す写真を示す。明るい白色光が放射された。写真の下側の溶液の反射像(バイアルのすぐ下)は、わずかに青い印である。図1Cは、図1および図1Bの写真で示された溶液のフォトルミネセンススペクトルを示す。図1Bの反射で明らかになった青い特徴がこのスペクトルでも現われている。白色量子ドットの濃度を増大させることにより、この青色放射特性はFRET効果により抑制され、より純粋でより明るい白色光を得ることができる。
【0051】
そのような白色光を放射する量子ドットは狭いサイズ分布を有し得るが、いくつかの狭い分散量子ドットが一緒に混合された場合に似て、いくつかのピーク(異なるサイズに対する中心)を備えた分布プロフィールをおそらく有するだろう(一般的理解によれば)。これを試みる方法は、調製された白色量子ドットをさらに120℃で成長させ、異なる反応間隔でアリコートを取り、それらを冷n−ヘキサンで急冷することである。実験を行い、フォトルミネセンススペクトルをアリコートサンプルから記録した。図2では、比較のために一連の複数のスペクトルをまとめた。
【0052】
図2は、120℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンス(PL)スペクトルを示す。見てわかるように、5分目で、より長い波長におけるショルダーピークが消失した。時間が経過するにつれてピークはますます狭くなり、反応の180分後は形状がほとんど変化しないままとなり、発光ピークの位置はより長い波長へとシフトした。120℃の時間での量子ドットのPLスペクトルの移動は、2分目当たりで量子ドットが最も狭いサイズ分布を有している可能性が非常に高いことを示唆している。これらのデータはさらに、特に30分間の反応後には、非常に小さな増分で発光ピークを調整できることを示している。したがって、光の混合物(つまり白色光)を放射していたのは狭いサイズ分布を有する量子ドットであった。理論によって束縛されることは意図しないが、考えられる説明としては、2分目では「マジックのサイズ」(熱力学的に安定した)の量子ドットが形成されたと思われる。しかしながら、これらの量子ドットは、異なる表面状態が共存する比較的不規則な表面を有し、そのため種々の色が放射され、それにより集合的には白色光が放射された可能性もある。熱が連続的に供給されると、これらの量子ドットはその後さらに成長した可能性がある。先の活性表面状態はそれにより不動態化され、上記放射特徴のいくつかを失った可能性がある。
【0053】
実施例2および3:他の温度でのCdSeの調製
異なる温度での上記CdSe量子ドットの調製を示すために、2つのさらなる実施例を挙げる。最初の実施例は80℃での反応の実施であった。すなわち、酸化カドミウム(0.128g、1.0mmol)、オレイン酸(1.28mL、4.0mmol)およびジオクチルエーテル(12mL)の混合物から透明な溶液を形成した後で、反応フラスコに1.2mLのTOP/Se溶液を注入した。反応混合物のアリコートを特定の間隔で取り、冷n−ヘキサンに注いだ。
【0054】
図3は、80℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトルを示す。図3Aに示されたスペクトルは、10〜60分までの反応時間で調製された量子ドットを示す。図3Bに示されたスペクトルは、60分から18時間までの反応時間で調製された量子ドットを示す。
【0055】
図3Aでは、反応の第1の時間の量子ドットのフォトルミネセンススペクトルの変化を示しているが、頂部にプラトー(平坦部)を有する広範な放射が10分で見られる。時間が増大するにつれ、プラトーはより長い波長放射にシフトし、発光ピークの幅は徐々により狭くなった。35分後に、ショルダーピークがより短い波長で現われた。このピークの強度は増大し、カーブ全体がわずかに青色シフト(60分まで)を示した。一見この現象は、より長い波長でのフォトルミネセンス放射が元々より大きな量子ドットサイズによるとすれば、量子ドットが連続的に成長するという仮定と一致しない。考えられる説明は、これらの反応段階では粒子が非常に小さなマジックサイズであったということである(120℃の場合の2分目の先のケースと同じ)。スペクトルに示されているように、それらの本来の放射は約400nmであった。より長い波長での放射は、余分な表面状態と、ひょっとするとゆるく充填された小さな量子ドットに由来する集合体の結果であり得る。55分目までの赤色シフトは、時間の経過に伴って表面状態の数が増大したためかもしれない。35分から開始して、これらの量子ドットのうちの一部は次のより大きなマジックサイズの相当物を形成した可能性があり、よって表面状態の数が徐々に減少した可能性がある(結晶プロセス)。60分目からは、このプロセスがさらに顕著となるだろう(図3B参照)。18時間の反応期間後、λ=538nm(青信号)を中心とする対称な発光ピークが達成された。これは表面状態が少ないアニーリングされた表面を示す。それらの量子ドットは、90分までは、白色光放射に近い赤−緑−青波長をカバーする混合放射を示す。
【0056】
図4は、160℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトルを示す。すべての他のパラメータ(出発物質、化学量論比、前処理等)は図3に示された実施例と同一とした。160℃での反応は顕著に速かった。2分目でさえ、対称的なフォトルミネセンス発光ピークが観察された。時間が経つにつれ、発光ピークは単調に、より長い波長へとシフトした。2分目(それ以前は調べなかった)からのショルダーピークの欠如は、この反応温度では、表面状態が(これはより長い波長側でのショルダーピークの原因と考えられている)120℃および80℃の場合よりもはるかに速く消えるように見えた。120℃と80℃の間の場合を比較した場合にも同じ状況が見られる。反応速度の計算における近似をとる場合(明らか熱吸収または放出がない一次反応の場合、温度が10度増加すると反応速度は2倍になるだろう)、120℃の反応の2分目に対応する反応期間は、80℃での反応の32分目および160℃の反応の約8秒目になるだろう。これらの観察と評価に基づくと、白色量子ドットの調製に有利な注入温度は160未満℃である。しかしながら、狭い発光の単一有色量子ドットが好まれる場合、160℃の注入および反応温度、恐らくそれより大きい温度がより良い選択になるだろう。
【0057】
CdSe量子ドットの成長経路
図5は、160℃の反応の異なる段階で得られたアリコートについて記録した、フォトルミネセンススペクトルの半値全幅(FWHM)に対する波長のプロットを示す。
【0058】
図5から得られるように、フォトルミネセンス波長は523nmから585nmまで(またはより長い反応時間ではさらに長くに、例えば、λ=585nmで240分目では、わずかな傾斜が存在する)調整することができ、この波長は緑色(520−565nm)および黄色(565−590nm)の全スペクトルをほとんどカバーしている。より短いか(例えば青色光)、またははるかに長い(例えば赤色光)波長の光を放射する量子ドットの場合、特定の反応条件での調整は困難になるだろう。
【0059】
さらなる観察は、すべての場合でPLピーク(量子ドットの成長)の赤色シフトが、最初により速く起こり、シフト速度が反応時間の経過と共に徐々に減少するということである。この理由は、時間の経過と共に、量子ドットの成長に使用されるモノマーの濃度が低
下することである。さらに、反応速度が一定でも(つまり、反応物材料の欠乏は無視して一定反応期間に生成物が同じ量ΔVだけ生じる)、粒子が成長すると粒径(ΔD)の上昇率は減少する、粒径)ΔD)の増加速度が減少する。
【0060】
【数1】
直径の増大は発光波長の増加と大まかに相関するため、時間の経過と共に発光波長の上昇速度が小さく変化するのは合理的である。
【0061】
さらに、図5は、30分目にλ=566nmを中心とする最も狭い発光ピーク(FWHM=22nm)が得られたことを示し、これはCdSe量子ドットが単一分散していることを示している。FWHMは、反応の開始時に減少する(FWHM:32nm(2分)→25(5)→23(10)→22(30)。FWHMの後ろの括弧の中の数字は、アリコートが測定のために取られた場合の分を示す。しかしながら、FWHMは、30分の反応後には上昇し始める(FWHM:22nm(30分)→24(60)→26(120)→27(180)→27(240))。これは、この反応温度では量子ドット粒子が最初に「フォーカシング」プロセス(より小さな量子ドットが溶解されてより大きな量子ドットの成長のための材料を提供する)を経験し、引き続きより良好な単分散に至ることを示唆している。すべての量子ドットが非常に類似のサイズ(約30分目)を有する段階に反応が達した後、オストワルド熟成が作用し始めた(核形成→フォーカシング→オストワルド熟成プロセス)。この場合、いくつかの量子ドットのさらなる成長のための材料は、同様のサイズの他の量子ドットの溶解から得られ、競争が強いと材料の供給がむしろ不十分となった。そのように材料の供給が不十分であると、すべての量子ドットが同時に成長することは不可となり、サイズ分布はある程度まで広がる。しかしながら、反応がさらに3.5時間行われ続けても、発光ピークは依然約27fwhmと狭くなり得る。
【0062】
しかしながら、低温での反応の場合、核形成−フォーカシング−オストワルド熟成プロセスはそれほど顕著ではない。その実施例が図6に示されており、図6は120℃での反応の異なる段階で得られたアリコートについて記録した、フォトルミネセンススペクトルのFWHMに対する波長のプロットを示す。
【0063】
図6は、120℃で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンス波長と半値全幅の依存性を示している。160℃℃での反応と比較すると、フォトルミネセンスピークの波長の調整可能な範囲はより大きく(78>62nm)、発光はより短い波長に位置している(479−557nm)。主に、低温だと反応速度が小さいことによる。PLピークに対する半値全幅の結果は、低温ではフォーカシングプロセスだけが存在し、オストワルド熟成現象が存在しないと示唆するように見える。しかしながら、反応温度が10℃増大すると反応速度は倍になると仮定することにより(一次反応の場合の動的モデル)非常に近似した推定値が得られる場合、40℃の違いは高温での反応速度を16倍速くする。この場合、16×30時間(8時間)の反応時間後に、160℃の場合に従って、120℃の反応でオストワルド熟成が現われ得る。このことは同じ条件での別の個別の調製で証明される。
【0064】
種々の溶媒における量子ドットの調製
ジオクチルエーテルの他に、TOP、1−オクタデセン(ODE)、オレイルアミン、
TOP/オレイルアミン、およびODE/オレイルアミンも、CdA量子ドットの調製のための溶媒としてそれぞれ使用した。これらはすべて常温で液体であり、ODEが最も商業上好ましい選択である(100Lで18.56シンガポールドル)。
【0065】
実施例4−溶媒としてTOPを用いた比較
トリ−n−オクチルホスフィン(TOP)を溶媒として用いて、調整に少しの改変を適用した。反応の開始点で溶媒を添加する代わりに、反応溶媒の相加の前に、酸化カドミウムをオレイン酸と単独で反応させることにより、まずオレイン酸カドミウムを調製された。反応のプロトコルは以下の通りである:
0.128gの酸化カドミウム(CdO、1.0mmol)を、温度計センサを装着した50mLの3ツ口反応フラスコ中で1.28mlのオレイン酸(4.0mmol)と混合した。脱気後、暗褐色固体が完全に溶解し薄く着色した透明な溶液が生成するまで、反応混合物を攪拌しながら250℃に加熱した。反応フラスコに12mlのTOPを注入し、温度を120℃に設定した。120℃で、1.2mlの1M TOP/Se溶液を注いだ。その後、反応混合物から異なる反応間隔でアリコートを取り、冷トルエンで急冷した。
【0066】
図7は、得られたアリコートから記録した、120℃でTOPで調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトル(図7A)および吸着スペクトル(図7B)を示す。図7Aから得られるように、発光ピークは時間の経過につれて広がっている。これは、白色量子ドットの調製には利点である(つまりRG−B色発光をカバーしている)ように見えるが、この場合、白色放射光は比較的弱かった(量子収量が低かった)。図7Bの吸着スペクトルは、30分の反応期間後に、吸収ピークが徐々に平坦になることを実証している。これは、量子の閉じ込めが徐々に損失することを示唆しており、これは量子収量の減少(より弱い発光として示される)と合致している。よりコストがかかるのにパフォーマンスが低いため、TOPは白色量子ドットの調製に対する良い候補ではない。
【0067】
実施例5−8:溶媒としてのTOP/オレイルアミン(v/v、1:1)、ODE、ODE/オレイルアミン(v/v、1:1)、およびオレイルアミン
図8は、120℃でTOP/オレイルアミン(v/v、1:1)(図8A);ODE(図8B);ODE/オレイルアミン(v/v、1:1)(図8C);およびオレイルアミン(図8D)で調製されたCdSe量子ドットのフォトルミネセンススペクトルを示す。反応媒体(溶媒)としてTOP/オレイルアミンまたはODEを使用し、120℃で反応温度を維持した場合、対称な発光ピークが60秒未満の反応時間後でさえ観察された、白色光を放射するマジックのサイズ量子ドットを得るには、30秒より前に反応を急冷するか(図8bに基づく)、または低温(例えば80〜100℃)で反応を実行することが可能である。しかしながら、上記120℃での2つの反応は、単色の量子ドットの調製に非常に良好である。
【0068】
ODE/オレイルアミンまたはオレイルアミンのみを反応溶媒として使用する場合、開示状態での反応速度ははるかに遅い。反応の2分後でも、生成した量子ドットはまだ360−390nmが中心の幅広い発光ピークを有する。この場合、白色量子ドットは2〜5分間の間に反応混合物を急冷することにより得ることが可能であろう。急冷(クエンチング)の時間に依存して、冷たい白色、白色、または暖かい白色の発行が得られ得る。
【0069】
ODE/オレイルアミン(v/v: 1:1)またはオレイルアミンを溶媒として使用した場合には、生成物がしばらく蓄積した後で相分離が起こることは注目すべきである。量子ドットは下層に止まり、元の濃度よりも濃度が5〜10倍高くなる。これとは対照的に、大部分の溶媒および未反応物質は上層に残った。これは、一方では、生成を非常に簡単にし、他方では、同じ生成物の次のバッチの調製のために上層を使用することが可能と
なる。いずれも製造コストの低下につながるだろう。
【0070】
種々のCd/オレイン酸の比によるCdSe量子ドットの調製
酸化カドミウムとオレイン酸の間の比の変化も、量子ドットのパラメータに影響を及ぼす。CdSe量子ドットの形成のための重要な成分の一つであるオレイン酸カドミウムを調整するための、CdOとオレイン酸の間の化学量論比は1:2である。オレイン酸の純度等級(90%)を考慮すると、この最小比は1:2.3であろう。単分散した量子ドットを得るために、反応の開始時にはいくらかの遊離配位子(この場合はオレイン酸)が存在すべきである。いくつかの試験で示されたのは、反応の開始時にオレイン酸を含むためには、オレイン酸の最小量が酸化カドミウムの最小量の3倍であるべきということである。より高濃度の配位子に相当する、オレイン酸の増加により、同じ反応器官に得られる量子ドットがより小さくなるという結果が生じる。オレイン酸と酸化カドミウムの間の比が7より大きいと、量子収量が劇的に低下する。3〜4の比では、高品質な量子ドットを調製することができる。
【0071】
ポリマー/量子ドットハイブリッドフィルムの調製
調整されたままの(粗い)量子ドットを、当該技術分野で使用される手順の改変である以下のプロトコルに従ってまず洗浄した:
1mlの粗CdSe量子ドットを、15mlの遠心分離チューブ中で4mlのトルエンに分散した。次に8mlのメタノールをチューブに加えた。ボルテックスおよび遠心後、油状の残留物がチューブの底に現われた。この残留物を再び4mlのトルエンに分散させて、別の8mlのメタノールを加えた。さらにボルテックスおよび遠心分離した後で、固体材料が得られた。この固体を所望の濃度の調製ポリマー(従来のポリスチレンまたは光伝導ポリビニルカルバゾール)トルエン溶液に分散させた。得られた溶液をボルテックスし、ポリマー鎖と量子ドットが十分に混合するようにした。その後、薄膜は、種々の用途のために種々の基板(金属コーティングされた光学ガラススライド、融解石英スライド、石英結晶センサ、シリコンウエハ等)上に鋳造またはスピンコーティングにより、溶液から薄層を製作した。
【0072】
本明細書内の過去に刊行された文書の列挙または議論は、その文書が技術水準の一部または共通の一般常識であるとの認識として、必ずしも捉えられるべきではない。個々の文書が特別に、そして個別に援用されるものとして示されていたとしても、列挙された全ての文書が、全ての目的のために全体が本明細書に援用される。
【0073】
本発明を、本明細書内に広範かつ包括的に記載した。その包括的開示に含まれる狭い種(species)およびジェネリックより下位のグループ(subgenerics)の各々も、本発明の一部を形成する。これは、本発明の包括的(generic)な記載を含むが、対象物が属(genus)から除去されることを前提または否定的制約とし、除去された材料が具体的に本明細書に引用されたかどうかにかかわらない。
【0074】
本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素または限定を用いずに適宜実施してもよい。つまり例えば、用語「含む」「包含する」「含有する」などは、広範に、限定なしに読み取られる。加えて、本明細書で用いられる用語および表現は、説明に関して用いられ、限定として用いられるものではなく、図示および説明された特徴またはその一部の均等物を除外するそのような用語および表現の使用を意図するものではなく、請求された本発明の範囲内で様々な改良が可能であることを認識されたい。本発明の更なる目的、利益、および特徴は、前述の実施例の実験および添付の特許請求の範囲から当業者に明白となろう。つまり本発明が、例示的実施形態および任意の特徴により具体的に開示されるが、そこに具体化され本明細書に開示された発明の改良および変更を当業者が頼りにしてよいこと、そしてそのような改良および変更が本明細書の範
囲内とみなされることを理解すべきである。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、それにより本発明がマーカッシュ群の各構成メンバーまたは構成メンバーのサブグループに関しても記載されていることが、当業者には認識されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成CdA(AはSまたはSe)のナノ粒子を形成する方法であって、
(a)エーテルおよびアミンから選択された化合物を含むが、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドを少なくとも本質的に含まない適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程と、
(b)前記溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程と、
(c)前記約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加し、それにより前記組成CdAnoナノ結晶が形成される工程と、
からなる方法。
【請求項2】
前記溶媒が、ジアルキルエーテル、アルキルアミンおよびジアルキルアミンのうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が高沸点溶媒である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、1−ブトキシ−ドデカン、ヘプチルオクチルエーテル、オクチルドデシルエーテル、1−プロポキシ−ヘプタデカン、1−アミノ−9−オクタデセン(オレイルアミン)、1−アミノ−4−ノナデセン、1−アミノ−7−ヘキサデセン、1−アミノ−8−ヘプタデセン、1−アミノ−9−ヘプタデセン、1−アミノ−9−ヘキサデセン、1−アミノ−9−エイコセン、1−アミノ−9,12−オクタデカジエン、1−アミノ−8,11−ヘプタデカジエン、1−アミノ−13−ドコセン、N−9−オクタデセニル−プロパンジアミン、N−オクチル−2,7−オクタジエニル−アミン、N−9−オクタデセン−1−イル−9−オクタデセン−1−アミン(ジオレイルアミン)、ビス(2,7−オクタジエニル)アミン、およびN,N−ジブチル−2,7−オクタジエニルアミンのうちの少なくとも1つを含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記カドミウム化合物が、酸化カドミウム、無機カドミウム塩および有機カドミウム塩から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記有機カドミウム塩が、酢酸カドミウム(Cd(Ac)2)、ステアリン酸カドミウム
およびカドミウムオレイン酸塩から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記無機カドミウム塩が炭酸カドミウム(CdCO3)である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤を添加する工程をさらに含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、有機炭酸、有機リン酸、有機ホスホン酸およびそれらの混合物から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カドミウム化合物の溶液を形成する工程が、界面活性剤を添加する工程をさらに含み、前記界面活性剤が有機炭酸であり、それにより炭酸のカドミウム塩が形成される請求項5または6に記載の方法。
【請求項11】
前記有機炭酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸、n−ウンデカン酸、アラキドン酸([Z]−オクタデセ−9−ン酸)、n−ウンデカン酸、リノール酸、(Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−[Z]−5
,8,11,14−エイコサテトラエン酸、リノエライジン酸(E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデセン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、γ−ホモリノレン酸(Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸、およびそれらの混合物から選択される請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
元素Aが加えられる前に、界面活性剤が加えられる請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、非配位性化合物をさらに含む請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記非配位性化合物がアルケンおよびアルカンのうちの少なくとも一方である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒がアルケンとアミンを含み、アルケン対アミンの比が約1:10から約10:1までである請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記アルケンが、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1,17−オクタデカジエンおよびそれらの混合物から選択される請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒がホスフィンをさらに含む請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ホスフィンはトリ−n−オクチルホスフィンである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒がアミンとホスフィンを含み、アミン対ホスフィンの比が約1:10から約10:1までである請求項1−18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記カドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程は、約100℃から約250℃までの温度まで溶媒を加熱することを含む請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記(b)の工程で、溶媒が約40℃から約160℃までの範囲内で選択された温度にされる請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記温度が約80℃、約100℃、約120℃、または約160℃である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応が不活性雰囲気中で行われる請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
選択された標的分子に対する結合親和性を有する分子にナノ結晶を共有結合させる工程をさらに含む請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記標的分子が微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、ペプチド、オリゴ糖、多糖、無機分子、合成ポリマー、小有機分子および薬剤のうちの1つである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組成CdA(AはSまたはSe)のナノ粒子を形成する方法であって、
(a) ジオクチルエーテル、1−オクタデセン、オレイルアミンおよびそれらの組み合わせから選択された適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程と、
(b)前記溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程と、
(c)前記約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加し、それにより前記組成CdAのナノ結晶が形成される工程と、
からなる方法。
【請求項27】
前記溶媒がホスフィンをさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒がホスフィンをさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記カドミウム化合物が、酸化カドミウム、無機カドミウム塩および有機カドミウム塩から選択される請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記有機カドミウム塩が、酢酸カドミウム(Cd(Ac)2)、ステアリン酸カドミウム
およびカドミウムオレイン酸塩から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記無機カドミウム塩が炭酸カドミウム(CdCO3)である請求項29に記載の方法。
【請求項32】
界面活性剤を添加する工程をさらに含む請求項26〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記界面活性剤が、有機炭酸、有機リン酸、および有機ホスホン酸から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記カドミウム化合物の溶液を形成する工程が、界面活性剤を添加する工程をさらに含み、前記界面活性剤が有機炭酸であり、それにより有機炭酸のカドミウム塩が形成される請求項29または30に記載の方法。
【請求項35】
発光体の製造における、請求項1〜34のいずれかに記載の方法によって得られたナノ結晶の使用方法。
【請求項36】
発光の波長範囲が、
(i)ナノ結晶の形成方法において元素Aが添加される温度、
(ii)反応時間、
(iii)溶媒、および
(iv)添加される界面活性剤の量
のうちの少なくとも一つによって制御される請求項35に記載の使用方法。
【請求項1】
組成CdA(AはSまたはSe)のナノ粒子を形成する方法であって、
(a)エーテルおよびアミンから選択された化合物を含むが、トリ−n−オクチルホスフィンオキシドを少なくとも本質的に含まない適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程と、
(b)前記溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程と、
(c)前記約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加し、それにより前記組成CdAnoナノ結晶が形成される工程と、
からなる方法。
【請求項2】
前記溶媒が、ジアルキルエーテル、アルキルアミンおよびジアルキルアミンのうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が高沸点溶媒である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、ジオクチルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、1−ブトキシ−ドデカン、ヘプチルオクチルエーテル、オクチルドデシルエーテル、1−プロポキシ−ヘプタデカン、1−アミノ−9−オクタデセン(オレイルアミン)、1−アミノ−4−ノナデセン、1−アミノ−7−ヘキサデセン、1−アミノ−8−ヘプタデセン、1−アミノ−9−ヘプタデセン、1−アミノ−9−ヘキサデセン、1−アミノ−9−エイコセン、1−アミノ−9,12−オクタデカジエン、1−アミノ−8,11−ヘプタデカジエン、1−アミノ−13−ドコセン、N−9−オクタデセニル−プロパンジアミン、N−オクチル−2,7−オクタジエニル−アミン、N−9−オクタデセン−1−イル−9−オクタデセン−1−アミン(ジオレイルアミン)、ビス(2,7−オクタジエニル)アミン、およびN,N−ジブチル−2,7−オクタジエニルアミンのうちの少なくとも1つを含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記カドミウム化合物が、酸化カドミウム、無機カドミウム塩および有機カドミウム塩から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記有機カドミウム塩が、酢酸カドミウム(Cd(Ac)2)、ステアリン酸カドミウム
およびカドミウムオレイン酸塩から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記無機カドミウム塩が炭酸カドミウム(CdCO3)である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤を添加する工程をさらに含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、有機炭酸、有機リン酸、有機ホスホン酸およびそれらの混合物から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カドミウム化合物の溶液を形成する工程が、界面活性剤を添加する工程をさらに含み、前記界面活性剤が有機炭酸であり、それにより炭酸のカドミウム塩が形成される請求項5または6に記載の方法。
【請求項11】
前記有機炭酸が、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ラウリン酸、オレイン酸、n−ウンデカン酸、アラキドン酸([Z]−オクタデセ−9−ン酸)、n−ウンデカン酸、リノール酸、(Z,Z)−9,12−オクタデカジエン酸)、アラキドン酸((全−[Z]−5
,8,11,14−エイコサテトラエン酸、リノエライジン酸(E,E)−9,12−オクタデカジエン酸)、ミリストレイン酸(9−テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、ミリスチン酸(テトラデセン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、γ−ホモリノレン酸(Z,Z,Z)−8,11,14−エイコサトリエン酸、およびそれらの混合物から選択される請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
元素Aが加えられる前に、界面活性剤が加えられる請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、非配位性化合物をさらに含む請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記非配位性化合物がアルケンおよびアルカンのうちの少なくとも一方である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒がアルケンとアミンを含み、アルケン対アミンの比が約1:10から約10:1までである請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記アルケンが、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1,17−オクタデカジエンおよびそれらの混合物から選択される請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒がホスフィンをさらに含む請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ホスフィンはトリ−n−オクチルホスフィンである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒がアミンとホスフィンを含み、アミン対ホスフィンの比が約1:10から約10:1までである請求項1−18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記カドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程は、約100℃から約250℃までの温度まで溶媒を加熱することを含む請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記(b)の工程で、溶媒が約40℃から約160℃までの範囲内で選択された温度にされる請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記温度が約80℃、約100℃、約120℃、または約160℃である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応が不活性雰囲気中で行われる請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
選択された標的分子に対する結合親和性を有する分子にナノ結晶を共有結合させる工程をさらに含む請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記標的分子が微生物、ウイルス粒子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、核酸、ペプチド、オリゴ糖、多糖、無機分子、合成ポリマー、小有機分子および薬剤のうちの1つである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組成CdA(AはSまたはSe)のナノ粒子を形成する方法であって、
(a) ジオクチルエーテル、1−オクタデセン、オレイルアミンおよびそれらの組み合わせから選択された適当な溶媒で、ナノ結晶の生成に適した形式のカドミウムまたはカドミウム化合物の溶液を形成する工程と、
(b)前記溶液を約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度にする工程と、
(c)前記約20℃から約200℃までの範囲内で選択された温度で、ナノ結晶の生成に適した形式の元素Aを添加し、それにより前記組成CdAのナノ結晶が形成される工程と、
からなる方法。
【請求項27】
前記溶媒がホスフィンをさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒がホスフィンをさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記カドミウム化合物が、酸化カドミウム、無機カドミウム塩および有機カドミウム塩から選択される請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記有機カドミウム塩が、酢酸カドミウム(Cd(Ac)2)、ステアリン酸カドミウム
およびカドミウムオレイン酸塩から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記無機カドミウム塩が炭酸カドミウム(CdCO3)である請求項29に記載の方法。
【請求項32】
界面活性剤を添加する工程をさらに含む請求項26〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記界面活性剤が、有機炭酸、有機リン酸、および有機ホスホン酸から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記カドミウム化合物の溶液を形成する工程が、界面活性剤を添加する工程をさらに含み、前記界面活性剤が有機炭酸であり、それにより有機炭酸のカドミウム塩が形成される請求項29または30に記載の方法。
【請求項35】
発光体の製造における、請求項1〜34のいずれかに記載の方法によって得られたナノ結晶の使用方法。
【請求項36】
発光の波長範囲が、
(i)ナノ結晶の形成方法において元素Aが添加される温度、
(ii)反応時間、
(iii)溶媒、および
(iv)添加される界面活性剤の量
のうちの少なくとも一つによって制御される請求項35に記載の使用方法。
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図1】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図1】
【公表番号】特表2010−535691(P2010−535691A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519891(P2010−519891)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/SG2007/000235
【国際公開番号】WO2009/020430
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/SG2007/000235
【国際公開番号】WO2009/020430
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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