説明

カバサイト含有モレキュラーシーブ、その合成及びオイシジェネートからオレフィンへの変換におけるその使用

フレームワークのリンを実質的まず、積層欠陥を有するCHAフレームワークタイプのモレキュラーシーブ又は少なくとも1のHCAフレームワークタイプモレキュラーシーブ及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの連晶相を含む結晶物質であって、前記物質は、か焼された、無水形態において、以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは0乃至0.5である。)
を含む組成を有する、結晶物質を開示する。
この物質はメタノールを低オレフィン、特に、エチレン及びプロピレンへの変換において、活性及び選択性を示す。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、新規な、カバサイト含有モレキュラーシーブ、その合成及びオレフィン、特にエチレン及びプロピレンへオキシジェネート特にメタノールの変換におけるその使用に関係する。
【背景技術】
【0002】
オキシジェネートをオレフィンへ変換(OTO)することは、近年注目されている研究課題である。なぜならば、この課題はエチレン及びプロピレンを世界的なスケールで生産するための今日の工業標準であり長年用いられているスチームクラッキング技術の代替技術となる可能性を有するものだからである。非常に大きな体積を含む原材料を費用効率の高い方法で軽質オレフィンの高い処理能力を提供することができる代替技術に対する大きな経済的誘因が存在している。スチームクラッキングはとても高い温度におけるナフサ類の炭化水素の非選択的な熱反応に依存しているのに対して、OTOは、メタノールから、エタノール及びプロピレンへの高い生産性のために、穏やかな温度条件下で、触媒及び酸モレキュラーシーブを利用する。
【0003】
OTO反応は、(1)活性炭素プール(アルキル−芳香族)の形成を誘導する誘導期間(2)生成物を誘導するための活性中間体のアルキレーション−脱アルキレーション反応、及び、(3)濃縮環状芳香族物質の緩やかな構築の、確立された3の主要な工程を含む複合連続工程であると近年理解されている。それゆえ、OTOは、触媒が変化し続ける中にある、一時的な化学変換である。長期に渡り高いオレフィン生産性を維持する触媒の能力は、上記プロセスの相対比率における微妙なバランスに依存している。コーク様分子が蓄積すると、多くの方法で所望の反応を阻害することから、コーク様分子の形成は一の重要な要素である。特に、コークは、炭素プールを不活性にし、反応物及び生産物の拡散速度を低め、望まれない第二反応に対する可能性を高め、触媒の寿命を短くする。
【0004】
過去20年の間に渡り、OTO反応の実行に有用な多くの触媒物質が確立されてきた。結晶性細孔質物質は、反応の酸度及び形態的必要性を同時に解決することから、今日において好ましい触媒である。特に好ましい物質は、カバサイト及びAEIフレームワークタイプを有する八員環アルミノシリケート及びSAPO−34及びSAPO−18等のそれらのケイ素アルミノリン酸化合物である。これらのモレキュラーシーブは、規則正しく相互接続した窓の隙間を通じて出入りする反応物及び生産物を拡散輸送させる間に、芳香族中間体を収容するのに十分大きな格子を有している。酸強度及び酸密度の適切なレベルを維持しつつ、そのような形態的特長を補うことにより機能的な触媒が生産される。この分野の更なる研究は、シリカアルミノリン酸が、アルミノケイ酸塩よりもOTO触媒により有効であることを示した。特に、OTO反応において、アルミノケイ酸塩を使用するためには、シリカ対アルミノ比の制御が重要な重要である。それでもなお、アルミノケイ酸塩ゼオライトは、OTOの使用のために探索され続け、いまだ、未発見の性質を有することが明らかである。
【0005】
カバサイトは、おおよそ、CaAl12Si2427の式で表される天然のゼオライトである。これらのカバサイトの合成形態は、参照により本明細書に援用する、John Wiley & Sons社より1997年に出版されたD.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」に記載されている。Breckにより報告された3の合成形態は、J.Chem.Soc.,p.2822(1961)に記載されている「ゼオライトK−G」、Buritish Patent No. 898,846(1961)に記載されている「ゼオライトD」及びU.S.Patent No.3,030,181(1962)に記載の「ゼオライトR」である。K−Gゼオライトは、2.3対1乃至4.15:1のシリカ対アルミナ比を有する一方で、ゼオライトD及びRは、それぞれ、4.5:1乃至4.9:1及び3.45:1乃至3.65:1のシリカ対アルミナ比を有する。
【0006】
参照により本明細書に援用されるU.S.Patent No.4,544,538は、N−アルキル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリ−アルキル−1−アダマンチルアンモニウムカチオン及び/又は、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナンを従来のOH媒体中の誘導試薬として用いたカバサイトの他の合成形態である、SSZ−13、の合成を開示する。この「538特許」によると、SSZ−13は、通常、8乃至50のシリカ対アルミナ比を有するが、合成混合物中の反応物の相対比を変化させることにより、及び/又は、ゼオライト格子からアルミニウムを除去するために、キレート剤又は酸を用いてゼオライトを処理することにより、より高いモル比を得ることができることが記載されている。しかしながら、100を超えるシリカ対アルミナ比で、OH媒体中でSSZ−13を合成する試みは不成功に終わっており、アルキル金属カチオンの存在に依存して、ITQ−1又はSSZ−23が生成する。さらに、脱アルミ化によりSSZ−13のシリカ対アルミナのモル比を増加させることは、わずか、あるいは、ほとんど成功していない。
【0007】
SSZ−13をMTO反応に対する触媒として用いた有意義な研究が行われている。しかしながら、近年の研究は、SSZ−13の性能がケイ素アルミノリン酸アナログであるASPO−34よりも劣っていることを示している。例えば、Yuen,L.−T.、Zones, S.I.、Harris,T.V.、Gallegos,E.J.及びAuroux,A.らによる「Product Selectivity in Methanol to Hydrocarbon Conversion for Isostructural Compositions of AFI and CHA Moleculer Seive」、Microporous Materials 2,105−117(1994)及びDahl,I.M.、Mostad,H.、Akporiaye,D.及びWendelbo,R.らによる「Structural and Chemical Influences on the MTO Reaction:A Comparision of Chabazite and SAPO−34 as MTO Catalyst」Micropororus and Mesoporou Materials 29,185−190(1999)参照のこと。
【0008】
フッ化物の存在下で、中性に近いpHにおいて、N,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウムを水酸化物の形態で、構造誘導試薬として用いて水熱的にCHAフレームワークタイプを有するシリカ結晶モレキュラーシーブが合成される。Daiz−Cabanas,M−J、Barrett,P.A.及びCamblor, M.A.らによる「Synthesis and Structure of Pure SiO Chabazite: the SiO Polymorph with the Lowest Framework Density」,Chem.Commun.1881(1998)参照のこと。
【0009】
より近年において、CHAフレームワークタイプ及び150乃至2000のような100を超えるようなシリカ対アルミナ比を有するアルミノシリケートがフッ化物の存在下において再び合成された。2003年9月18日に刊行され、参照により本明細書に援用するU.S.Patent Application Publication No.2003/0176751参照のこと。
【0010】
AEIフレームワークタイプのモレキュラーシーブは天然には存在しない。しかしながら、SAPO−18、ALPO−18及びRUW−18を含むAEIフレームワークタイプを有するアルミノリン酸塩及びシリカアルミノリン酸塩の類は合成されている。加えて、参照により本明細書に援用するU.S.Patent No.5,958,370には、AEIフレームワークタイプ及び10乃至100のシリカ対アルミナ比を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトが開示されている。シリカ対アルミナ比が100以上で、すべてのシリカ分子がAEIフレームワークタイプを有するアルミノシリケートは、これまでのところ報告されていない。
【0011】
AEI及びCHAフレームワークタイプ等の規則的な結晶モレキュラーシーブは、周期構造単位(Peridic Building Unit)と呼ばれる構造的に不変な構造単位から形成される。しかしながら、三次元未満の周期秩序を示す不規則構造体も知られている。そのような不規則構造体の一つは、たとえば、AEIとCHAのような、1以上のフレームワークタイプからの繰り返し構造単位が存在する、不規則平面連晶(disordered plamar intergrowth)である。加えて、一部のモレキュラーシーブには、一の鏡像形態の構造単位の配列が反対の鏡像形態の構造単位の配列と交差して、積層欠陥となる構造単位が存在する。
【0012】
参照により本明細書に援用するU.S.Patent No.6,334,994は、前記AEI/CHA混合相組成物であると言われるRUW−19と称されるケイ素アルミノリン酸モレキュラーシーブが開示されている。特に、RUW−19は、RUW−19の約16.9(2θ)を中心とするピークの広がり特性がAEI物質における約17.0(2θ)を中心とする反射に置き換わっていること以外は、CHA及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブのピーク特性を有しており、CHA物質に関係する反17.8及び24.8の値の2θを中心とする射を有さないと報告されている。
【0013】
2002年9月7日に刊行され、参照により本明細書に援用するU.S.Patent Application Publication No.2002/0165089は、AEI及びCHAフレームワークタイプを有するモレキュラーシーブの少なくとも1の連晶相を含むケイ素アルミノリン酸モレキュラーシーブを開示する。前記連晶相は、前記ケイ酸アルミノリン酸モレキュラーシーブのか焼サンプルの粉末X回析パターンを用いたDIFHaX解析により決定される約5/95乃至40/60のAEI/CHA比を有する。
【0014】
CHA/AEI連晶を含むアルミノシリケート及びシリカ等のリンフリーモレキュラーシーブは報告されていない。
【発明の開示】
【0015】
概要
一の側面おいて、本発明は、実質的にフレームワークのリンを含まず、積層欠陥又はCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブ及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの少なくとも1の連晶相を有するCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブを含む結晶物質に属する。前記物質はか焼された、無水形態において、以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは、アルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム、及び/又はガリウム等の三価元素であり、Yはケイ素、スズ、チタニウム、及び/又はゲルマニウム等の四価元素であり、nは0乃至0.5、好都合なことには0乃至約0.125、例えば約0.001乃至約0.1、例えば約0.0017乃至約0.02である。)を含む組成物を有する。
【0016】
好都合なことには、前記のか焼された結晶物質は、重量比で約1乃至100ppmの、例えば約5乃至50ppmの、例えば約10乃至20ppm等のハロゲン化物、好ましくは、フッ化物を含む。
【0017】
更なる側面において、本発明は、少なくとも1のCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブを含み、as−合成された形態(as−synthesized form)において、その分子内部構造中に、CHAフレームワークタイプモレキュラーシーブの合成を誘導するための第一誘導試薬及びAEIフレームワークタイプの合成を誘導するための第二誘導試薬を含み、前記第一及び第二誘導試薬が異なる結晶物質に属する。
【0018】
一の態様において、前記各第一及び第二誘導試薬は、環状アミン又はアンモニウム化合物を含む。より具体的には、第一誘導試薬は多環系アミン又はアンモニウム化合物を含み、第二誘導試薬は、単環系アミン又はアンモニウムを含む。好都合なことには、この多環系アミン又はアンモニウム化合物は、少なくとも1のN−アルキル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリルキル−エキソアミノノルボルナン、及び、例えば、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンチルアンモニウム化合物、典型的にはN,N,N−トリメチル−1−アダマンチル化合物等のアダマンチルアミン又はアンモニウム化合物等の三環系又は四環系アミンあるいはアンモニウム化合物を含む。好都合なことには、単環系アミン又はアンモニウム化合物は、例えば、テトラアルキルピペリジニウム化合物、典型的にはN,N−ジエチル−2−6−ジメチルピペリジニウム化合物のような置換ピペリジン又はピペリジニウム化合物を含む。
【0019】
更なる態様において、本発明は、CHAフレームワークタイプモレキュラーシーブを含み、以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは三価元素、Yは四価元素及びnは、0乃至0.5である。)
を含む組成を有する結晶物質を合成する方法に関係する。前記方法は、
(a)水の供給源、四価元素Yの酸化の供給源、及び任意で三価元素Xの酸化物の供給源を含む前記物質を形成する能力のある反応混合物を調製する工程と、
(b)積層欠陥又はCAHフレームワークタイプモレキュラーシーブ及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの少なくとも1の連晶相を含む前記結晶物質の結晶を形成するのに十分な条件下に前記反応混合物を維持する工程と、及び
(c)(b)から前記結晶物質を回収する工程とを含む。
【0020】
好都合なことに、前記反応混合物は、フッ化物又はフッ化物含有化合物等のハロゲン化物及びハロゲン化物含有化合物も含む。
【0021】
好都合なことに、前記反応混合物は、CAHフレームワークタイプモレキュラーシーブの合成を誘導するための、第一誘導試薬及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの合成を誘導するための第二誘導試薬も含む。
【0022】
好都合なことに、前記反応混合物は種結晶も含む。前記種結晶は前記連晶相に対して類似構造又は異種構造であることができる。一の態様において、前記種結晶は、AEI、CHA、OFF又は、LEVフレームワークタイプを有する結晶物質を含む。
【0023】
更なる側面において、本発明は、フレームワークのリンを実質的に含まない細孔性結晶物質を含み、CHAフレームワークタイプ及びAEIフレームワークタイプの少なくとも1の内部連晶相を含む触媒に、オキシジェネート変換条件下で、有機オキシジェネート化合物を接触させる工程を含むオレフィンを製造する方法に属する。
【0024】
本明細書で用いる「か焼された、無水形態」の語は、再水和することなく、400℃より高い温度で、0.1乃至10時間、空気中で加熱した物質を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、新規なフレームワークのリンを実質的まず、及び、積層欠陥又はCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブ及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの少なくとも1の連晶相を有するCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブを含む新規な結晶物質に関係する。本発明は、ハロゲン化物、特にフッ化物の媒体の中における新規な結晶物質の合成、及びオキシジェネート、特にメタノールをオレフィン、特に、エチレン及びプロピレンへ変換する方法における前記物質の使用に関係する。
【0026】
連晶モレキュラーシーブ相は、モレキュラーシーブフレームワークの不規則平面連晶(disordered planar intergrowth)である。参考文献は、Structure Commission of the International Zeolite Associationにより出版された「Catalog of Disorderd Zeolite Structures」,2000 Edition、及び連晶モレキュラーシーブ相の詳細についてはthe Structure Commission of the Internatonal Zeolite Associationにより出版された「Collection of Simulated XDR Powder Patterns for Zeolites」, M.M.J.Treacy and J.B. Higgins, 2001 Editionである。
【0027】
規則正しい結晶固体は周期構造単位(Peridoic Building Unit)と言われる不変構造単位から形成されており、周期的に三次元に並んでいる。構造的に不規則な構造は、三次元未満、すなわち、2又は1又は0次元の周期秩序を示す。この現象は、構造的に不規則な周期構造単位(Peridic Building Unit)の積層欠陥と言われている。周期構造単位(Peridoic Building Unit)から構築されている結晶構造は、もし周期整列がすべての3次元において達成されているならエンドメンバー(end−member)構造と言われている。不規則な構造は、周期構造単位(Peridoic Building Unit)の積層配列が統計的積層配列まで周期的整列から逸脱している。
【0028】
規則的なAEI及びCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブの場合、周期構造単位(Peridoic Building Unit)は、二重6員環相である。位相的に「b」が「a」の鏡像である点を除いて同一である(a)及び(b)の2タイプの層がある。同じタイプの相が重なる場合、すなわち、aaaaaaaa又はbbbbbbbbの場合、フレームワークタイプCHAが生成する。「a」及び「b」が交互に重なる場合、すなわち、abababab、フレームワークタイプAEIが生成する。連晶AEI/CHAモレキュラーシーブはCHAフレームワークタイプ配列の領域及びAEIフレームワークタイプの配列の領域を含む。CHAからAEIへのフレームワークタイプ配列の相互変化が積層欠陥になる。加えて、積層欠陥は、例えば、aaaaaabbbbbbのような、一の鏡像層配列が、他の反対の鏡像層配列と交わる場合、純粋なCHA相物質中にも生じる。
【0029】
AEI/CHA連晶のような、連晶モレキュラーシーブの解析は、X線解析により、及び、特に、積層欠陥の影響をシミュレートするためのアルゴリズムを用いて生成された計算されたパターンを観察されたパターンと比較することにより行うことができる。DIFFaXは、平面欠陥(planar faults)を含む結晶からの強度(intensities)を計算するための数学モデルに基づくコンピュータプログラムである(M.M.J. Traceyらによる、Proceeding of the Royal Chemical Society, London A [1991], Vol. 433, pp. 499−520参照のこと)。DIFFaXは、ゼオライトのランダムな連晶相に対するXRD粉末パターンをシミュレートするためプログラムであり、International Zeolite Associationから入手可能である(「Collection of Simulated XRD Power Patterns for Zeolite」by M.M.J.Treacy and J.B.Higgins,2001,Fourth Edition,published on behalf of the Structure Commission of the INTERNATIONAL ZEOLITE Association参照のこと)。これは、K.P.Liberud et al.による、「Studies in Surface and Catalyst」1994,Vol.84,pp.543−550のようなAEI、CHA、及びKFIの連晶相の論理的研究にも用いられている。
【0030】
図1a及び1bは、各種AEI/CAH比を有する単一の連晶ゼオライト相に対するDIFFaXにより計算されたシミュレート回析パターンを示す。これらのパターンは、シミュレートされたパターンのセット全体の中もっとも高いピークを標準とする各パターン、すなわち、0/100のAEI/CHAパターンの2θ約9.6度におけるピークを標準として、以下の表1で示されるインプットファイルを用いて計算された。強度の値の標準化は、比較する別の回析パターンの間の所定の2θの値におけるX線回析ピークの強度を付与する。
【0031】
本発明の結晶物質がCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブ及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの連晶を含む場合、前記物質は、約99:1乃至約1:99、具体的には98:2乃至2:98、例えば95:5乃至5:95のような、大きな幅のAEI/CHA比を有することができる。他の態様において、オレフィンへのオキシジェネートの変換にこの物質を用いる場合、連晶はCHAが豊富であり、AEI/CHA比が5:95乃至30:70であることが好ましい。加えて、いくつかのケースにおいて、本発明の連晶物質は異なるAEI/CHA比を有する複数の連晶相を含む。本発明の連晶中のAEI/CHAフレームワークタイプ物質の相対的な量は、モレキュラーシーブのか焼サンプルの粉末X線回析パターンを用いた透過型電子顕微鏡(TEM)及びDIFFaX回析を含む既知の技術により決定することができる。
【0032】
本発明の結晶物質がCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブを含むが、積層欠陥を有する場合、これらの積層欠陥の存在は、透過型電子顕微鏡により容易に検出することができる。CHA物質のすべての結晶に積層欠陥が存在しないことが好ましいけれども、通常、結晶の少なくとも5%、少なくとも10%未満存在する。
【0033】
本発明の結晶物質は、か焼された無水形態において、
(n)X:YO
のモル関係を含む組成を有する。式中、Xは、アルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム、及び/又はガリウム、のような三価元素であり、通常アルミニウムである。Yは、ケイ素、スズ、チタン、及び/又はガリウム等の四価元素であり、通常ケイ素である。nは0乃至約0.5であり、好都合には0乃至約0.125、例えば、0.001乃至約0.1、具体的には約0.0017乃至約0.02である。ハロゲン含有化合物をこの物質の合成に用いる場合、本発明の物質はか焼形態において、通常、約1乃至約100ppm、例えば、約5乃至約50ppm、例えば約10乃至20ppmの、わずかな量のハロゲン化合物、好ましくはフッ化物を含む。
【0034】
本発明の結晶物質の合成形態(as−synthesized form)において、前記結晶物質は、通常、
(n)X:YO:(m)R:(x)F:zH
の式のモル関係を含む組成を有する。この式において、X、Y及びnは前述の段落で定義され、Rは少なくとも1の有機誘導試薬であり、mは約0.01乃至約2、具体的には約0.1乃至約1の間で変動し、zは約0.5乃至約100、例えば約2乃至20の間で変動し、xは約0乃至約20、例えば約0.01乃至1の間で変動する。結晶化の間に存在することによりこの物質に関係しているR及びF組成物は、少なくとも部分的に、以下で詳細に説明する結晶化後の後処理により除去できる。通常、その合成形態(as−synthesized form)において、本発明の連晶はアルキルメタルの低いレベル、通常、モルベースでXの50%未満の任意のカリウム及びナトリウムを組み合わせた量を含む。この理由から、アルキル金属カチオンを除去するための主要なイオン交換工程を行うことなしに、通常、前記物質は有機誘導試薬(R)を除去した後に触媒活性を示す。
【0035】
以下で議論するように、少なくとも1の誘導試薬(R)は少なくとも1のCHAフレームワークタイプ物質の合成を誘導するための第一誘導試薬及び少なくとも1のAEIフレームワークタイプ物質の合成を誘導するための第二誘導試薬を含む。これらの誘導試薬は、典型的にはモレキュラーシーブ製品の内部分子構造内に完全な状態で保持されていることが発見された。誘導試薬の組成に応じて、13C MAS (magic−angle spinning)NMR等の解析技術によりas−合成された(as−synthesized)モレキュラーシーブ中に保持されている異なる誘導試薬の相対的な量を決定することが可能である。従って、好ましい態様において、第一誘導試薬が、N,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物(TMAA)及び第二誘導試薬がN,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム化合物(DEDMP)である場合、DEDMPは13CMAS NMRスペクトルの0乃至20ppmの幅においてCH部分のC原子核に対応するピークを示す。このピークはTMAAの13C MAS NMRスペクトル中には存在しない。13C MAS NMRスペクトルの0乃至20ppmの高さのピークを測定することにより、合成物質中のTMAA及びDEDMPの相対的量を決定することができる。好ましくは、合成された物質中に保持されているAEI及びCHA誘導試薬の総モル量に対する合成された物質中に保持されているAEI誘導試薬のモル量は、0.1乃至0.3の間である。
【0036】
この物質のX/YOモル比に依存する、好ましい範囲で、本発明の技術分野において既知の方法に従って合成された連晶の中の任意のカチオンを少なくとも部分的に、他のカチオンでイオン交換することにより置換することができる。好ましいカチオンの置換は、金属イオン、水素イオン、例えば、アンモニウムイオン等の水素前駆体及びこれらの混合物を含む。特に好ましいカチオンは、特定の炭化水素変換反応のために触媒活性を調製したものである。これらは、水素、希土類金属及び周期表の元素のIIA、IIIA、IVA、VA、IB、IB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、及びVIIIグループの金属を含む。
【0037】
本発明の連晶は、水の供給源、四価元素Yの酸化物の供給源、任意で三価物Xの酸化物の供給源、少なくとも1の以下で説明する誘導試薬I及び、通常、フッ化物又はフッ化物含有元素のような、ハロゲン化物又はハロゲン化物含有元素を含む反応混合物より調製され、前記反応混合物は、以下の表で示す幅の範囲内の酸化物のモル比を含む組成物を有する。
【表1】

四価元素Yがケイ素である場合、ケイ素の適切な供給源は、ケイ酸塩、例えば、テトラアルキルオルトケイ素、エアロシル(Aerosil)等の(デグサ(Degssa)より市販されている)燻蒸シリカ、Ludoxの取引名でE.I. du Pontde Nemoursにより販売されているシリカの水性コロイド懸濁液である。三価元素Xがアルミニウムである場合、アルミニウムの適切な供給源は、ベーマイト及び偽ベーマイトのような水和アルミニウム酸化物のほかに、アルミニウム塩、特に硝酸アルミニウム等の水溶性塩のような、アルミニウム塩を含む。ハロゲン化物がフッ化物である場合、アルキル金属フッ化物及び有機誘導試薬のフッ化物塩等のフッ化物の供給源も好ましいが、フッ化物の適切な供給源は、フッ化水素を含む。
【0038】
本発明の明細書で用いる少なくとも1の誘導試薬Rは、複数の異なる有機誘導試薬の混合物も含む。好ましくは、この混合物はCHAフレームワークタイプ物質の合成を誘導するための少なくとも1の第一誘導試薬及びAEIフレームワークタイプ物質の合成を誘導するための少なくとも1の第二誘導試薬を含む。
【0039】
CHAフレームワークタイプ物質の合成を誘導するための適切な第一有機誘導試薬は、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム化合物、N,N,N−トリメチル−2−アダマンタンアンモニウム化合物、N,N,N−トリメチルシクロヘキシルアンモニウム化合物、N,N−ジメチル−3,3−ジメチルピペリジニウム化合物、N,N−メチルエチル−3,3−ジメチルピペリジニウム化合物、N,N−ジメチル−2−メチルピペリジニウム化合物、1,3,6,6−ペンタメチル−6−アゾニオ(azonio)−ビシクロ(3.2.1)オクタン化合物、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン及び(1)Zeolites and Related Microporous Materials: State of the Art 1994, Studies of Surface Science and Catalysis, Vol. 84, p29−36、 (2)Novel Materials in Hetrogeneous Catalysis (ed. TerryK.Baker&LazyL.Murrell), Chapter2, pl4−24, May 1990、 (3)J.Am.Chem.Soc.,2000,122,p263−273及び(4)U.S.Patent Nos.4,544,538及び6,709,644より引用されるビ−、トリ−シクロ窒素含有有機化合物を含む。適切な化合物は、ハロゲン化物の様な、特に塩化物及びフッ化物のような、水酸化物及び塩を含む。
【0040】
AEIフレームワークタイプ物質の合成を誘導するための適した第二誘導試薬は、N,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム化合物(シス/トランス異性体の混合物又はいずれか)、及びJ.Am.Chem.Soc.,2000,122,p263−273及びU.S.Patent No.5,958,370に引用されている誘導試薬を含む。
【0041】
好都合なことには、反応混合物中の第二誘導試薬に対する第一誘導試薬のモル比は、約0.01乃至約100、具体的には約0.02乃至50、例えば約0.03乃至33、具体的には、0.03乃至約3、例えば約0.05乃至0.3である。
【0042】
一の態様において、この有機誘導試薬は環状アミン又はアンモニウム化合物の混合物を含む。具体的には、一の成分が多環系アミン又はアンモニウム化合物である混合物であり、より具体的には一の成分が多環系アミン又はアンモニウム化合物であり、他の成分が単環系アミン又はアンモニウム化合物である混合物である。好都合なことには、前記単環アミン又はアンモニウム化合物は、例えば、テトラアルキルピペリジニウム化合物、典型的にはN,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム化合物のような置換ピペリジン又はピペリジン化合物を含む。好都合なことには、多環系アミン又はアンモニウム化合物は、例えば、N,N,N−トリアルキル−1−アダマンチルアンモニウム化合物、通常、N,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物のような、アダマンチルアミン又はアンモニウム化合物等の三環アミン又はアンモニウム化合物を含む。従って、多環アミンの語は環の外部にN原子を含む多環系化合物を含む。適切なアンモニウム化合物は、ハロゲン化物、特に塩化物のような水和物及び塩を含む。
【0043】
好都合なことには、前記反応混合物は、約4乃至約14の、具体的には約4乃至10のような、例えば、約6乃至約8のpHを有する。
【0044】
ポリプロピレンジャーあるいはテフロン(登録商標)を裏打ちした又はステンレス製のオートクレーブの中において、約135℃乃至約185℃のような、約50乃至約300℃の温度で、結晶化が十分起こる時間、静置又は撹拌状態で結晶化を行う。結晶生成物の形成は、いかなる場合でも、およそ30分から2週間の間まで、具体的には、約45時間から約240時間の間まで、例えば、約2時間から120時間の間までで起こる。用いる温度に依存して結晶化の時間は変動する。通常高い温度を用いると、水熱処理時間が短くなる。
【0045】
新しい連晶の合成は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも0.1ppm、具体的には少なくとも10ppm、例えば少なくとも100ppm、好都合なことには少なくとも500ppmの種結晶の存在により促進される。前記種結晶は、例えば予め合成された生成物のような本発明の結晶物質を同様の構造を有する結晶物質か、あるいは、AEI、LEV、OFF、CHA又はERIフレームワークタイプモレキュラーシーブのような異なる結晶物質である。好都合なことには、前記種結晶は、AEIタイプモレキュラーシーブである、具体的には、AEIタイプアルミノケイ酸塩である。この種結晶は、例えば水のような液体中のコロイド懸濁液として反応混合物に添加することができる。前記コロイド種結晶の懸濁液の生成及びモレキュラーシーブの合成における前記懸濁液の使用については、参照により本明細書に援用される、2000年2月10日に公開されたWO 00/06493及びWO 00/06494に開示されている。
【0046】
通常、結晶生成物は溶液中で形成され、遠心分離又はろ過のような標準技術を用いて回収される。分離された生成物は、洗浄され、遠心分離又はろ過により回収され乾燥される。
【0047】
結晶化工程後に回収される結晶物質は、合成に用いた少なくとも1の有機誘導試薬の一部をその細孔内に含んでいる。好ましい態様において、活性化は有機誘導試薬をモレキュラーシーブから除去し、モレキュラーシーブの細孔チャンネル内の脱離(leaving)触媒部位を供給原料に接触させるために開くことにより行われる。この活性化工程は通常、か焼により行われる、又は酸素含有ガスの存在下で、約200℃乃至約800℃の温度でテンプレートを含むモレキュラーシーブを加熱することにより行われる。幾つかのケースにおいて、低い酸素又は無酸素環境下でモレキュラーシーブを加熱することが好ましい。このような工程は、結晶内部の細孔系から、部分的又は完全に有機誘導試薬を除去するのに有効である。他のケースにおいて、わずかな量の有機誘導試薬をモレキュラーシーブから部分的又は完全に除去するためには、従来の脱離工程により行うことができる。
【0048】
一旦本発明の連晶結晶物質が合成されると、最終的な触媒に硬さ又は触媒活性を提供するバインダー及び/又はマトリックス物質のような他の物質を結合させることにより触媒組成物を形成することができる。
【0049】
本発明の連晶結晶物質とブレンドすることができる物質は、種々の不活性又は触媒的に活性な材料、又は種々の結合剤であることができる。これらの材料には、カオリン及びその他のクレイ、種々の形態の希土類金属、その他の非ゼオライト系触媒成分、ゼオライト系触媒成分、アルミナ又はアルミナゾル、チタニア、ジルコニア、石英、シリカ又はシリカゾル、及びこれらの混合物などの組成物が含まれる。これらの成分は、また、触媒の総コストの削減、再生の間における触媒の遮熱に有用な熱シンクとして作用し、触媒の圧縮(densifying)、及び触媒強度を増加する点において効果がある。反応混合物が前記組成物と混合される場合、最終的な触媒生成物に含まれる連晶結晶物質の量は、触媒全体に対し、10乃至90重量パーセント、好ましくは20乃至80重量パーセントの範囲である。
【0050】
本明細書で述べる連晶結晶物質は、サイズ及び極性に基づく分子の選択的分離のために、イオン交換体として、科学的担体として、ガスクロマトグラフィーにおいて、有機変換反応の触媒として、乾式ガス及び液体に対して用いることができる。連晶結晶物質の使用に適した触媒の例は、(a)通常元素周期表の6、及び8乃至10から選択される水素化成分の存在下における重油残さ原材料、循環ストック及び他の水素分解チャージストックの分解、(b)ラフィネート及び潤滑油ベースストックを含む、通常177℃以上で沸騰する炭化水素原料ストックから選択的に直鎖パラフィンを除去するための、異性化脱ろうを含む脱ろう、(c)通常、ゼオライトYのような大きい細孔を有する分解触媒の存在下におけるナフサ、ガスオイル、及び残さオイル等の炭化水素の触媒分解、(d)ガソリン又はガソリンブレンドストックのような燃料及び化学品に有用な重質オレフィンに対する媒体を生産するための、約2乃至21、好ましくは2乃至5の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖オレフィンのオリゴーマ化、(e)オレフィン、具体的には4乃至6の炭素原子を有するオレフィン、特にノーマルブテンをイソ−オレフィンに変換するための異性化、(f)メタン等の低級アルキルのエチレン及びベンゼン等の高級炭化水素への改質、(g)キシレン等のジアルキル芳香族炭化水素を製造するためのトルエン等のアルキル芳香族炭化水素の不均化、(h)エチルベンゼン及びクメンを生産するための、エチレンのプロピレン等のオレフィンを用いたベンゼン等の芳香族炭化水素のアルキル化、(i)キシレン等のジアルキル芳香族炭化水素の異性化、(j)窒素酸化物の触媒還元及び(k)モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの合成を含む。
【0051】
特に、本明細書で述べる連晶結晶物質は、オキシジェネートを一以上のオレフィン、特にエチレン及びプロピレンへ変換することに有用である。本明細書で述べるように、「オキシジェネート」の語は、脂肪族アルコール、エーテル、カルボニル化合物(アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭酸塩、及び同種のもの)、及びハロゲン化物、メルカプタン、硫化物、アミン等のヘテロ原子含有化合物、及びこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。脂肪族部分は通常1乃至4の炭素原子のような、1乃至10の炭素原子を含む。
【0052】
典型的なオキシジェネートは、低級直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコール、それらの不飽和化合物及びそれらの窒素化物、ハロゲン化物及び硫化物を含む。適したオキシジェネート化合物の例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、C−C10アルコール、メチルエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、メチルメルカプタン、硫化メチル、メチルアミン、エチルメルカプタン、硫化ジ−エチル、ジ−エチルアミン、塩化エチル、ホルムアルデヒド、炭酸ジ−メチル、ジ−メチルケトン、酢酸、n−アルキルアミン、n−アルキルハロゲン化物、約3乃至10の幅の炭素原子を含むn−アルキル基を有するn−アルキル硫化物及びこれらの混合物を含む。好ましくは、適したオキシジェネート化合物は、メタノール、ジメチルエーテル、又はこれらの混合物であり、最も好ましいのはメタノールである。本明細書で用いるように、「オキシジェネート」は原材料として用いられる有機物質のみを意図する。反応ゾーンへ装填する原材料の中には希釈剤のような追加的な化合物も含まれる。
【0053】
本発明のオキシジェネート変換工程において、有機オキシジェネート、任意で1以上の希釈剤を含む供給原材料は、反応ゾーンの中の気体相の中で、所望のオレフィンを生産するのに効果的なプロセス条件で、本発明のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させる。代替的に、前記工程は液体相又は気体/液体相の中で実施することができる。この工程が液体相又は気体/液体相の中で実施される場合には、触媒及び反応条件に依存して供給原材料から生成物への変換率及び選択性が変動する。
【0054】
希釈剤が存在する場合、希釈剤は通常、供給源材料又はモレキュラーシーブに対して非反応性であり、供給源材料の中のオキシジェネートの濃度を低めるために用いられる。適した希釈剤の比限定的な例は、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水、実質的に非反応性パラフィン(特に、メタン、エタン及びプロパン等のアルカン)、実質的に非反応性の芳香族化合物及びそれらの混合物を含む。最も好ましい希釈剤は水及び窒素であり、水が特に好ましい。希釈剤は供給原材料混合物全体に対して約1モル%乃至約99モル%含まれる。
【0055】
オキシジェネート変換工程に用いる温度は約200℃乃至約1000℃、例えば、約250℃乃至約800℃、約250℃乃至750℃を含み、好都合なことには約300℃乃至約650℃、典型的には約350℃ないし600℃及び具体的には400℃及び約600℃の範囲で大きく変動する。
【0056】
適切に定量化する必要はないけれども、自己加圧及び約0.1kPa乃至約10Mpaの圧力を含まれるがこれらに限定されない圧力の広い幅において軽質オレフィン生成物が生成されるであろう。好都合なことには、前記圧力は約50kPa乃至約1MPaのような、約7kPa乃至約5MPaの幅である。前記圧力は希釈剤が存在しない場合の圧力であり、もし希釈剤が存在するならば、オキシジェネート化合物及び/又はそれらの混合物に基づいて供給原材料の部分的な圧力が決定される。この範囲の下端及び上端の圧力は選択性、変換、コーキング率及び/又は反応速度に有利に影響するけれども依然として、エチレン等の軽質オレフィンが形成される。
【0057】
前記方法は、所望のオレフィン生成物を生成するのに十分な時間連続的に行われる。この反応時間は、数秒から数時間の間で変動し得る。この反応時間は、反応温度、圧力、及び選択された触媒、重量空間速度、相(液体又は気体)及び選択された工程の特徴により決定される。
【0058】
本発明の工程において広い幅の供給原材料に対する重量空間速度(WHSV)を用いることができる。WHSVは、モレキュラーシーブ触媒の総反応容量(不活性物質及び/又は充填剤を除く)に対する時間当たりの供給原料の重量(希釈剤を除く)として定義される。WHSVは、通常、約0.01時間−1乃至約500時間−1、具体的には約0.5時間−1乃至約300時間−1のような、例えば約0.1時間−1乃至約200時間−1の幅である。
【0059】
近年用いられている流動触媒分解装置に似た、連続再生可能な循環流動床反応機は、オキシジェネート変換工程に対する反応システムの実際的な態様である。オキシジェネートからオレフィンへの変換は内部冷却又の冷却装置を伴ういくつかのステージを必要とする高い発熱工程であることから固定床はこの方法には好ましくない。この反応は低圧及び低濃度ガスの生成に依存して大きな圧力低下を生じる。
【0060】
触媒は頻繁に生成されなければならないので、この反応機は触媒の一部分を容易に除去して再生機へ容易に投入できるものでなければならない。触媒の活性を回復させるために、触媒からコークを焼失させることができる、例えば空気のような、酸素含有ガス等の再生媒体に触媒を曝す。反応器内の温度、酸素分圧、及び滞留時間は再生された触媒のコーク含有率が0.5wt%未満になるように選択される。再生された触媒の少なくとも一部が反応機に戻る。
【0061】
一の態様において、連晶モレキュラーシーブのフレームワーク細孔内に取り込まれた炭化水素共触媒を形成するために、ジメチルエーテル、C−Cアルデヒド化合物及び/又はC−Cオレフィン組成物を用いてオレフィンへオキシジェネートを変換する前に、前記触媒を前処理する。好ましくは、前記前処理は、少なくとも10℃、20℃のような、例えば、少なくとも50℃、オキシジェネート反応ゾーンより高い温度で行われ、モレキュラーシーブの総重量に対して少なくとも0.1wt%、少なくとも1wt%のような、例えば少なくとも5wt%の取り込まれた共触媒を生産するために調節される。そのようなモレキュラーシーブの炭素含量を高めるための前処理工程は、「プレプーリング(pre−pooling)」として知られ、詳細は、2003年11月12日に提出され米国特許出願Nos.10/712668、10/712952,及び10/712953に記載されている。これらの文献を参照により本明細書に援用する。
【0062】
本発明は、以下の実施例及び添付の図によりより具体的に説明される。この実施例において、X線回折データは幾つかの装置を用いて収集された。
【0063】
・ 以下において、フィリップス(Philips)XRDは、銅K−アルファ放射線を用いた、グラファイト単色光分光器とシンチレーション検出器を備えた、フィリップス(Philips)粉末X線回折機を意味する。この回折データは、2−シータが0.02度(degree)である段階走査を用いて記録される。シータはブラッグ角であり、カウント時間は各工程につき1秒である。格子面間隔、d‘sはオングストローム単位で計算され、線の相対強度、I/Ioは、Ioが最も強い線であるとして計算され、バックグラウンドは、ピーク強度の積算により決定された。
【0064】
・ シンクロトロン(Synchrotron)XRDは、Debye−Scherreジオメトリー(幾何学)を用いた0.8695Åの単色放射線波長を用いたビーム線X10B上のBrookhaven National Labsにおいて収集された粉末X線回折データを意味する。サンプルはテンプレートを除去するために600℃で3時間か焼した。か焼されたサンプルは、300℃における減圧下(<0.1トール)で気体を除去する間、密閉された2mmの外径の石英キャピラリー内に移された。回折データを2シータが0.01度である段階走査により記録した。シータはブラッグ角である。カウント時間は、各工程において、分離ビームモニター検出器が30,000カウントを記録する測定時間になるように自動的に設定されていた(通常5.2乃至5.4秒)。格子面間隔、d‘sはオングストローム単位で計算され、線の相対強度、I/Ioは、Ioが最も強い線であるとして計算され、バックグラウンドは、ピーク強度の積算により決定された。
【0065】
・ シンタグ(Scintag)XRDは、銅K−アルファ放射線を用いた、Peltier−Cooled固体状態検出器を装備したシンタグ(Schaning)X2 X−線回折計を用いて収集されたX線回折データを意味する。回折データを、2シータが0.02度である段階走査により記録した。シータはブラッグ角であり、各工程のスキャン時間は0.3秒である。格子面間隔、d‘sはオングストローム単位で計算され、線の相対強度、I/Ioは、Ioが最も強い線であるとして計算され、バックグラウンドは、ピーク強度の積算により決定された。
【0066】
か焼サンプルのX線回折データは以下のか焼工程を経た合成生成物(as−synthesized products)から得られた。約2グラムの合成生成物(as−synthesized products)は1分当たり2℃の速度において室温乃至200℃まで、窒素流れの下で加熱された。温度は200℃で30分間保持された。その後、前記サンプルは1分間当たり2℃の速度で、窒素下で、200℃から650℃に加熱した。このサンプルを650℃で5乃至8時間加熱した。その後、窒素を空気に置換し、前記サンプルを3時間650℃に維持した。このサンプルをその後、200℃に冷却し、水を除去するために200℃に維持した。この高温サンプルをXRDサンプルカップ内に移し、水分を防ぐために、マイラー(Mylar)箔で覆った。
【0067】
DIFFaX分析を用いて、モレキュラーシーブのAEI/CHA比を評価した。種々のAEI/CHA比における粉末XRD回折パターンは、the International Zeolite Associationから市販されているDIFFaXプログラムを用いて得た(M.M.J.Tracyら、Proceedings of the Royal Chemical Society、 London、 A、 433巻、499−520頁(1991年)、 “Collection of Similated XRD Powder Patterns for Zeolites”、 M.M.J. Treacy及びJ.B.Higgins、第4版、the Structure Commission of the International Zeolite Associationを代表して出版(2001年)を参照されたい)。XRD回折パターンのシミュレートに用いたDIFFaXインプットファイルを表1に示す。この分析では、層のランダム分布に基づいて計算を行った。この計算は、統計的な目的のためのみに用いられるものであり、前記物質の性質がランダムであることを必ずしも意味ものはない。
【表2】




【0068】
図1a及び図1bは、全体のセットの最も高いピークを標準化した、すなわち、100%CHAケースにおける約9.6 2θにおけるピークを100とした、各種AEI/CHA比率を有する単一連晶ゼオライト相のDIFFaXにより計算されたシミュレート回折パターンを示す。この回折グラムは以下のパラメータセッティングを用いてシミュレートされた;全Si AEI_CHA λ=1.54056、PSEUDO−VOIGT 0.1−0.036;線幅拡大:0.009:0.6 非直線最小二乗法(「DIFFax回折」)は1以上の相及びバックグラウンドの寄与及び実験プロファイルをフィットさせるために必要な2θシフトを精緻化するために用いた。連晶感受領域(例えば、図3参照のこと)は、常に選択性の計算を最大化するために選択される。代替的に、手動のトライアル・アンド・エラーフィットは、寄与している相、バックグラウンドカウント、及び2θフィットのタイプ及び強度の同定のために行うことができる。1以上の連晶相の存在により特徴づけられる物質のために、AEI及びCHAの寄与は、各連晶相のAEI及びCHA寄与を加算する、最小二乗解析法により計算される。シンクロトンXRDsについては、DIFFaxシミュレートパターンとの比較は実験XRDパターンをCuKαI(λ=1.54056)に変換することにより行った。
【0069】
更に、4.7T(199.9MHz1H、50.3 MHz13C)の静磁場で操作するChemagnetics(登録商標)CMXII-200スペクトロメーターを用いて13C MAS(magic−angle spinning)NMRスペクトルを得た。このas−合成された(as−synthesized)サンプルをMAS ZrO NMRローター(5−mm o.d.)に装填し、マジック角で回転させた。13C MAS NMR(又はBloch decay)実験を13Cパルス(90°)を採用する二重回転プローブを用いて行い、その後に13Cデータ補足(acquisition)を行う。13Cデータの補足の間、約62kHzのH−13Cの双極デカップリング磁場を用いた。13C Bloch decayスペクトルは約60秒のパルスの遅れを用いて8kHz MASにおいて得られた。得られた自由誘導減衰を、フーリエ変換した(25Hz 線幅拡大フィルターを用いて)。13Cケミカルシフトは、第二標準としてヘキサメチルベンゼンを用いたテトラメチルシラン(TMS δ=0.0ppm)の外部(付加的)溶液を基準とする。非重複領域の1以上を用いることができ、その相対強度を決定した。これを順々に特定のテンプレートのモル比に変換し、それゆえ、一のテンプレートに対する他の相対的寄与率を計算することができる。全ての固形−静NMR測定は室温で行った。
【0070】
TEM解析は明視野TEM造影(Bright−Field TEM imaging)(BF−TEM)及び高解像度TEM造影(High−Resolution TEM imaging)(BF−TEM)の両方を含む。
【0071】
TEMデータは、めのう乳鉢と乳棒を用いて各か焼サンプルを細かく粉砕することにより得た(<100nm 厚さ)。粉砕物を平床鋳型内に移し、LR white hard grade レジン(Polysciences,Inc.,USA)の標準混合物中に包埋し、周囲条件下に保存した。このレジンブロックを平床鋳型から取り出し、ポリエチレンBEEMカプセルの「エンドオン」内へ置いた。各BEEMカプセルをLR White hard grade 包埋レジンで満たし、周囲条件で保存した。保存されたレジンブロックをBEEMカプセルから除去し、Reichert−Jung Ultracut E microtome内へ設置した。周囲温度において、ダイアモンドナイフを用いて、前記レジンブロックから電子透過切片(〜100nm厚さ)となる超薄切片を作製した。顕微鏡切片作成法はサンプルを多くの小さい切片に切断し、水の上に浮かべたものを採取し、200メッシュの炭素コートTMEグリッドの上に収集する。風乾の後、このグリッドを200kVの加速電圧において、Philips CM200F TEM/STEMの明視野TEMイメージモードにおいて試験する。物質の各少切片は、TEM解析においてカードと称される。欠陥(foulted)結晶の数を定量するために、500カードの各サンプルを低磁場で試験し、目視検査により積層欠陥又は双晶を記録した。欠陥結晶の数は全500カードの中の1以上の積層欠陥又は双晶を示すカードの数として表した。
【0072】
HR−TEMデータは、LR White Hardレジン(The London Resin Co., UK)の中に包埋したか焼サンプルから得られた。その後、硬化促進剤を入れることなしに、前記レジンを窒素雰囲気下で少なくとも3時間の間80℃で熱硬化した。電子透過薄切片は、ダイアモンドナイフを装備したBoeckeler Powertome XL ultra−microtomeを用いて周囲温度において切断した。この薄層切片を、レース炭素TEMグリッドの上に収集した。HR−TEM解析は120kVの加速電圧においてPhilips CM12T transmission electron microscopeにおいて行った。結晶を電子ビームと平行な適した晶帯軸に注意深く配向し、100,000xの通常の倍率において、高回折TEMイメージを感光板の上に記録した。
【実施例1】
【0073】
23.5mg/mlのAl(NO・9HO水溶液の0.286mlをN,N−ジメチル−2,6−ジメチルピペリジニウム水酸化物(DEDMPOH−)(0.6008モル)及び1.000mlのN,N,N−トリ−メチル−1−アダマンチルアンモニウム水酸化物の水溶液(TMAAOH)(0.5379モル)の混合物に添加した。2.400mlのテトラエチルオルトケイ素を前記組成物に添加し、全てのテトラエチルオルトケイ素が完全に加水分解されるまで、得られた混合物を室温で少なくとも2乃至3時間密閉コンテナ内で攪拌した。得られた透明な溶液に48wt%のフッ化水素酸溶液の0.234mlを添加し、直ちにスラリーを生成した。このスラリーを更に攪拌によりホモジナイズし、濃密なスラリーを得るまで、水及びエタノールを除去するエバポレーションのために空気に曝した。更なる水を前記スラリー混合物から静的条件においてエバポレートし、以下のモル組成を有する267gの乾燥固形ゲルを得た。
SiO:0.00083Al:0.45DEDMP:0.05TEAA:0.6F:5.0H
【0074】
前記固形ゲルに8.9のSi/Al原子比率を有し、26.4のSi/Na原子比率を有する種物質であるAEIを10mg(乾燥ゲル固形分に基づき0.37wt%)、機械攪拌を行いながら添加した。得られた固形混合物をテフロン(登録商標)を裏打ちした5mlの圧力反応器に移し、低い回転速度(約60rpm)で105℃において65時間結晶化させた。冷却の後、得られた固形を遠心により回収し、蒸留水で洗浄し、100℃で乾燥して、775mgの白い固形ミクロ結晶固形物(乾燥ゲルの総重量に対して29.0%)が得られた。合成生成物(as−synthesized products)が示すX線回折パターンを表2に示す。か焼生成物のシンタグ(Scintag)X線回折パターンを図2に示す。
【0075】
図2のX線パターンにおいて、DIFFaX解析を行い結果を図3にまとめた。図3は実施例1の生成物に1以上のランダム連晶AEI/CHA相が存在することを示している。最小二乗解析は実施例1の生成物が、15/85のAEI/CHA比を有する約56%の第一連晶AEI/CHA相及び75/25のAEI/CHA比を有する約44%の第二連晶AEI/CHA相から成り、この物質の重量平均AEI/CHA比が約41/59であることを示している。
【0076】
か焼生成物のSEM解析は、厚板形態及び約1乃至2ミクロンのサイズを有する粒子を示した。化学解析はこの生成物のシリカ/アルミナ比が1200になることを示した。
【表3】

【実施例2】
【0077】
実施例1と同様の手順及び実施例1と同じ割合の開始物質を用いて、結晶化温度を135℃乃至175℃とする2の個別の合成を行った。実施例1と同様に、175℃で結晶化したか焼生成物のシンクトロン(Synchrotorn)X線回折パターンを用いてDIFFax解析を行った。2の連晶AEI/CHA相、すなわち、約25/75の重量平均AEI/CHA比を有する、5/95のAEI/CHA比を有する約78%の第一連晶相及び95/5のAEI/CHA比を有する第二連晶相の存在が示された。
【0078】
175℃で合成した生成物の13C MAS NMR解析は、合成生成物(as−synthesized products)中に50/50のモル比で、DEDMP(AEI誘導試薬)及びTMAA(CHA誘導試薬)が存在することを示した。これは、合成混合物中におけるDEDMP:TMAAモル比が90/10であることと対照的であった。
【0079】
175℃で合成した生成物の高解像度透過電子顕微鏡像を図4に示し、欠陥AEI相物質の介在領域(intercalated regions)を有する双晶/欠陥CHA結晶の存在を確認した。
【実施例3】
【0080】
DEDMP/TMAAのモル比が1.0である合成混合物を用いて実施例1と同様に、合成を行った。か焼サンプルのシンクトロン(Synchroton)X線回折パターンのDIFFaX解析は生成物が純粋なCHAであることを示した。加えて、13C MAS NMR解析は合成(as−synthesized products)生成物中にTMAA(CHA誘導試薬)のみの存在を示した。この生成物のHR−TEM透過電子顕微鏡像を図5に示す。HR−TEMイメージの中に欠陥が存在しないことが明らかである。HR−TEMイメージのフーリエ変換はシャープなスポットを示し、縞は存在しなかった。このことは、規則ただし積層が存在し、積層欠陥及び双晶は存在しないことを示している。TEM解析のための500カードの中にも欠陥は見られなかった。
【実施例4】
【0081】
合成混合物中のDEDMP/TMAAのモル比を5.67とし、175℃の結晶化温度を用いて実施例1の合成を繰り返した。か焼生成物のシントロン(Synchrotron)X線回折パターンのDIFFaX解析は、5/95のAEI/CHA比を有する約73.5%の第一連晶相、90/10のAEI/CHA比を有する約5.2%の第二連晶相及び0/100のAEI/CHA比を有する約21.3%の第三の相から成り、約8.5/91.5の重量平均AEI/CHA比に対応する、3相の存在を示した。13C MAS NMR解析は、合成生成物中に23/77のモル比でDEDMP(AEI誘導試薬)の存在及びTMAA(CHA誘導試薬)の存在を示した。
【実施例5】
【0082】
比較例
SSZ−13を製造するために、U.S.Patent No.4,544,538に記載の方法を以下のように行った。2.00gの1N NaOH、2.78gの0.27モルN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物及び3.22gの脱イオン水を連続的に23mlのテフロンを裏打ちしたペア(Parr)オートクレーブに添加した。得られた溶液に、0.05gのアルミニウム水酸化物(Teheis F−200 乾燥ゲル、50%Al)を添加し、透明になるまで溶液を攪拌した。0.60gの燻蒸シリカ(Cab−O−Sil,M5グレード、97% SiO)をオートクレーブにその後添加し、溶液を均一になるまで混合した。
【0083】
オートクレーブを密閉し、攪拌なしに4日間、160℃で加熱した。オートクレーブをその後室温まで冷却し、生成物を脱イオン水で繰り返し洗浄し、50℃の真空オーブン内で乾燥した。
【0084】
X線回折解析は、生成物が純粋なCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブであることを示した。この生成物の透過電子顕微鏡像を図6に示す。TEMの中には明らかな欠陥は存在しておらず、TEM解析のために作成された500カードの中に欠陥は観察されなかった。
【実施例6】
【0085】
比較例
薄茶色の天然のカバサイトのサンプルを西アメリカから得た。前記カバサイトは、Si/Al=3.70、0.28wt%のNa、0.33%のK、0.03%のCa、0.28%のMg、及び1.50wt%のFeを有すると解析された。前処理せずにこのサンプルの透過電子顕微鏡像を撮影し、結果を図7に示した。BF−TEMの中にいかなる欠陥も存在しなかった。BF−TEM解析のために作成された500カードの中にも欠陥は観察されなかった。
【実施例7】
【0086】
23.5mg/mlのAl(NO・9HO水溶液の0.239mlを5.597mlのN,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム水酸化物の水溶液(DEDMPOH)(0.6008モル)及び1.959mlのN,N,N−トリ−メチル−1−アダマンチルアンモニウム水酸化物の水溶液(TMAAOH)(0.5721モル)の混合物に添加した。2.000mlのテトラエチルオルトケイ素をこの組成物に添加し、全てのテトラエチルオルトケイ素が完全に加水分解されるまで室温で15時間密閉コンテナ内で得られた混合物を攪拌した。得られた透明な溶液に48wt%のフッ化水素酸溶液の0.195mlを添加し、直ちにスラリーを生成した。このスラリーを更に攪拌によりホモジナイズし、濃密なスラリーが得られるまで、水及びエタノールのエバポレーションのために空気に曝した。この濃密なスラリーに、0.058ml(乾燥ゲルの重量に基づいて0.37wt%)の4478wt.ppmのナトリウム及び18000wt.ppmのカリウムを含むLEVコロイド種(SiO/Al)懸濁スラリー(14.1wt.%)を添加し、更に10分間攪拌を続けた。このスラリー混合物から更なる水を除去し、以下のモル組成を有する2247mgの乾燥固形ゲルが得られた。
SiO :0.00083Al:0.375DEDMP:0.125TEAA:0.6F:5.0H
【0087】
得られた固形の混合物をテフロン(登録商標)を裏打ちした5mlの圧力反応器に移し、低い回転速度(約60rpm)で175℃において65時間結晶化させた。冷却の後、得られた固形を遠心により回収し、蒸留水で洗浄し、100℃で乾燥して634mgの白い固形ミクロ結晶固形物(乾燥ゲルの総重量に対して28.3%)を得た。合成生成物(as−synthesized products)のシンクトロン(Synchroton)X線回折パターンを表3に示す。か焼生成物(as−calcined products)のX線回折パターンを図8に示す。
【0088】
図8のか焼サンプルのシンクトロン(Synchroton)X線回折パターンのDIFFaX解析は実施例7の物質が純粋なCHA相物質であることを示した。しかしながら、13C MAS NMR解析は、合成された生成物中に13/87のモル比でDEDMP(AEI誘導試薬)及びTMAA(CHA誘導試薬)が存在することを示した。この生成物のHR−TEMを図9に示す。この結果はこの結晶が欠陥であることを示している。欠陥の定量のために、500カードをBF−TEMで解析したところ、10%のカードが欠陥を示した。
【0089】
13C MAS NMR解析は合成生成物(as−synthesized products)中のDEDMP(誘導試薬)及びTMAA(CHA誘導試薬)のモル比が13/87であることを示した。このか焼サンプルのSEM解析は、厚板形態を有し、約0.5ミクロンのサイズを有する粒子を示した。化学解析はこの生成物のシリカ/アルミナ比が1200であることを示した。
【表4】

【実施例8】
【0090】
実施例1及び2の合成物質(as−synthesized materials)を、ペレットにするためにそれぞれ3000psig(2.07×10kPa)で圧縮し、砕し、80及び125μmの間の篩にかけた。サイズ調節した2の個々のサンプルを21mg乃至22mgの間で量り取り、90mgの100μmのシリコン炭化物と混合した。石英フリットで底をシールしてある1.9mmの内部直径を有するチューブにこれらの混合物を入れた。25分間、500℃で、約100重量空間速度(WHSV)、及び40psia(276kPa)のメタノール分圧を有するN中に85%のメタノールを有する混合物にか焼結晶を曝した。メタノール反応の間、反応器からの流出物を各時間間隔において収集し、ガスクロマトグラフィーで解析するためにストックした。メタノール反応の後、沈着したコークを焼失させるために約90分間550℃の窒素中50%の酸素を含む気体流にこの触媒を曝した。反応器の流出物はコークの沈殿の量を決定するために一酸化炭素及び二酸化炭素の両方を定量するために赤外分光法で解析した。
【0091】
炭化水素生成物の選択性を計算した。以下に示す値は、全体の反応に対する個々の選択性の平均である。各値は、2回の繰り返しから得られた選択性の平均値を示す。
【表5】

【実施例9】
【0092】
合成混合物中のDEDMP/TMAAのモル比が、0.33乃至19の間で変動するように実施例3の合成を行った。BF−TEM解析により500のカードの中に観察された積層欠陥のパーセンテージだけでなく、合成生成物中のモル比で表すDEDMP(AEI誘導試薬)及びTMAA(CHA誘導試薬)を検出するための13C MAS NMR解析を実施例3からの合成物質に対する結果と共に、以下の表に示す。
【表6】

【0093】
実施例3の合成物質(as−synthesized materials)と共に、実施例9の合成生成物(as−synthesized products)を、30000psig(2.07×10kPa)の圧力でペレットに形成し、粉砕し、80及び125μmの間の篩にかけた。両合成物質のサイズ調節した2の分離サンプルを21mg乃至22mgの間で量りとり、100μmのシリコンカーバイト90mgと混合した。これらの混合物を石英フリットで底が密閉されている内径1.9mmのチューブに充填した。このチューブを加熱された反応ブロックの中に密閉し、有機テンプレートを効果的に除去するために流れている空気下で、2時間、540℃において触媒をか焼した。540℃において、約100の重量空間速度、及び40psia(276kPa)のメタノール分圧でN中に85%のメタノールを含む混合物にか焼された触媒を曝した。メタノールが反応している間、反応器の廃液を収集し、ガスクロマトグラフィーによる解析のために貯蔵した。メタノール反応の後、沈殿したコークを焼失させるために、約90分間、550℃で窒素中に50%の酸素を含む気体流れに触媒を曝した。コークの沈殿の量を決定するために一酸化炭素及び二酸化炭素の両方を定量を伴う赤外分光法により反応器の廃液を解析した。
【0094】
各反応に対する炭化水素生成物に対する選択性を計算した。以下に提供する値は各触媒に対するメタノール反応の開始から30秒後に得た各ポイントの選択性である。これらの値は各触媒に対する最大オレフィン選択性のポイントを示している。各値は2回の繰り返し試験から得られた選択性の平均値である。
【表7】

【実施例10】
【0095】
実施例7の合成生成物を、30000psig(2.07×10kPa)の圧力でペレットにし、粉砕し、80及び125μmの間の篩にかけた。サイズ調節された2の分離サンプルを21mg乃至22mgの間で量りとり、100μmのシリコンカーバイトの90mgと混合した。これらの混合物を石英フリットで底が密閉されている内径1.9mmのチューブに充填した。このチューブを加熱された反応ブロックの中に密閉し、有機テンプレートを効果的に除去するために流れている空気のしたで、2時間540℃において触媒をか焼した。540℃で、約100の重量空間速度、及び40psia(276kPa)のメタノール分圧でN中に85%のメタノールを含む混合物に、25分間、か焼された触媒を曝した。メタノールが反応している間、反応器の廃液が収集され、ガスクロマトグラフィーによる解析のために貯蔵された。メタノール反応の後、触媒は、沈殿したコークを消散させるために、約90分間、550℃で窒素中に50%の酸素を含む気体流れに曝した。コークの沈殿の量を決定するために一酸化炭素及び二酸化炭素の両方の定量のために赤外分光法により反応器の廃液を解析した。
【0096】
炭化水素生成物に対する選択性が計算された。以下に与える値は、反応全体に対する各選択性の平均である。各値は2回の繰り返し試験から得られた選択性の平均値である。
【表8】

【0097】
本発明は特定の態様に対する参照により説明され図示されるけれども、当業者は、本明細書に図示される必要のない変更を本発明に付与することが可能であることを理解している。このため、本発明の真の範囲を決定する目的のために、添付の特許請求の範囲のみが参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1a】図1aは、各種CHA/AEI比率を有する連晶CHA/AEIゼオライト相に対するDIFFaXシミュレート回析パターンである。
【図1b】1bは、各種CHA/AEI比率を有する連晶CHA/AEIゼオライト相に対するDIFFaXシミュレート回析パターンである。
【図2】図2は、実施例1のか焼生成物のX線回析パターンである。
【図3】図3は、56%の15/85のAEI/CHA比を有するランダム連晶AEI/CHA相(a)及び75/25のAEI/CHA比を有する、44%のランダム連晶AEI/CHA相(b)の合計として得られたDIFFaXシミュレートトレースを用いた図2のX線回析パターンの一部の重ね合わせ図である。実施例1の重量平均AEI/CHA比は、41/59であると計算される。
【図4】図4は、実施例2の175℃で合成された生成物の高解析透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は実施例3の生成物の高解析透過型電子顕微鏡写真である。インセット(inset)は、高解析透過型電子顕微鏡写真のフーリエ変換である。
【図6】図6は比較例5の生産物の明視野透過型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は比較例6の天然カバサイトの明視野透過型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例8は、実施例7のか焼生成物のX線解析パターンである。
【図9】図9は、実施例7の生成物の高解析透過型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームワークのリンを実質的に含まず、積層欠陥又はCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブ及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの少なくとも1の連晶相を有するCHAフレームワークタイプのモレキュラーシーブを含む結晶物質であって、か焼された無水形態において以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは0乃至0.5である。)
を含む組成を有することを特徴とする結晶物質。
【請求項2】
前記nが、0.001乃至0.1、例えば0.0017乃至0.02であることを特徴とする請求項1に記載の結晶物質。
【請求項3】
か焼形態において、前記物質が重量比で1乃至100ppm、例えば重量比で5乃至50ppm、例えば重量比で10乃至20ppmのハロゲン化物を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結晶物質。
【請求項4】
前記ハロゲン化合物がフッ化物を含むことを特徴とする請求項3に記載の結晶物質。
【請求項5】
前記Yが、ケイ素、スズ、チタン、ゲルマニウム、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項6】
前記Xが、アルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム、ガリウム又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項7】
前記Yがケイ素であり、前記Xがアルミニウムであることを特徴とする請求項1乃至6に記載の結晶物質。
【請求項8】
少なくとも1つのCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブを含み、as−合成された形態(as−synthesized form)においてCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブの合成を誘導するための第一誘導試薬及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの合成を誘導するための第二配誘導試薬を分子内構造に含む結晶物質であって、前記第一及び前記第二誘導試薬が異なることを特徴とする結晶物質。
【請求項9】
前記第一誘導試薬が、少なくとも1のN−アルキル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナン、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンモニウム化合物、N,N,N−トリメチル−2−アダマンタンアンモニウム化合物、N,N,N−トリメチルシクロヘキシルアンモニウム化合物、N,N−ジメチル−3,3−ジメチルピペリジニウム化合物、N,N−メチルエチル−3,3−ジメチルピペリジニウム化合物、N,N−ジメチル−2−メチルピペリジニウム化合物、1,3,3,6,6−ペンタメチル−6−アゾニオ(azonio)−ビシクロ(3.2.1)オクタン化合物、及びN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを含むことを特徴とする請求項8の結晶物質。
【請求項10】
前記第一誘導試薬が多環系アミン又はアンモニウム化合物を含むことを特徴とする請求項8に記載の結晶物質。
【請求項11】
前記第一誘導試薬がN,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物を含む請求項8乃至10のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項12】
前記第二誘導試薬が単環系アミン又はアンモニウム化合物を含むことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項13】
前記第二誘導試薬が、N,N−ジメチル−2,6−ジメチルピペリジニウム化合物又はN,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム化合物を含むことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項14】
as−合成された(as−synthesized)物質中に保持される第一及び第二誘導試薬の総モル量に対するas−合成された(as−synthesized)物質中に保持される第二誘導試薬のモル量が0.1乃至0.3の間であることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項15】
CHAフレームワークタイプモレキュラーシーブを含み、以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは0乃至0.5である。)
を含む組成を有する結晶物質を合成する方法であって、
前記方法が、
(a)前記物質を形成する能力を有する、水の供給源、四価元素Yの酸化物の供給源、及び任意に三価元素Xの酸化物の供給源を含む、反応混合物を調製する工程、
(b)積層欠陥又は少なくとも1のCHAフレームワークタイプモレキュラーシーブ及びAEIフレームワークタイプモレキュラーシーブの連晶相を含む前記結晶物質の結晶を形成するのに十分な条件下において前記反応混合物を維持する工程、及び
(c)前記結晶物質を(b)から回収する工程を含む方法。
【請求項16】
前記反応混合物が、前記結晶物質の形成を誘導するための少なくとも1の有機誘導試薬(R)をも含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、CHAフレームワークタイプ物質の形成を誘導するための少なくとも1の有機誘導試薬、及びAEIフレームワークタイプ物質の形成を誘導するための少なくとも1の有機誘導試薬を含むことを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一誘導試薬が、N,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第二誘導試薬が、N,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム化合物を含むことを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応混合物中の第二有機誘導試薬に対する第一有機誘導試薬のモル比が、0.01乃至100の間であることを特徴とする請求項17乃至19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物がハロゲン化合物又はハロゲン化物含有化合物も含むことを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記反応混合物が、フッ化物又はフッ化物含有化合物も含むことを特徴とする請求項15乃至21のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項23】
前記(b)における条件が、50℃乃至300℃の温度を含むことを特徴とする請求項15乃至22のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応混合物が、種結晶も含むことを特徴とする請求項15乃至23のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項25】
前記種結晶が、液体媒体中のコロイド懸濁液として前記反応混合物に添加されることを特徴とする請求項15乃至24のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項26】
前記種結晶が、AEI、OFF、CHA、及び/又はLEVフレームワークタイプを有する結晶物質を含む請求項15乃至25のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項27】
前記反応混合物が、以下の組成
O/YO 0.1乃至20、
ハロゲン化物/YO 0乃至2、
R/YO 0.01乃至2、及び
/YO 0乃至0.5、
を有することを特徴とする請求項16乃至26のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項28】
請求項1乃至14のいずれか1請求項に記載の結晶物質又は請求項15乃至27のいずれか1請求項に記載の方法により生産された結晶物質を含む触媒に、オキシジェネレート変換条件下で、有機オキシジェネート化合物を接触させる工程を含むオレフィンの生産方法。
【請求項29】
前記有機オキシジネート化合物がメタノール、ジメチルエーテル、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−516152(P2007−516152A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547213(P2006−547213)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/042739
【国際公開番号】WO2005/063623
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】