説明

カプセル内視鏡システム

【課題】 カプセル内視鏡を使用する都度、使用中でない周波数(帯)を選んで、そのカプセル内視鏡に設定することができるカプセル内視鏡システムを、提供する。
【解決手段】
周波数設定端末3に格納されている周波数管理テーブル34には、予め使用を予定されている周波数毎に、その周波数が何れかのカプセル内視鏡に最新に設定された時刻が使用開始時刻として記録されている。CPU30は、使用を開始するカプセル内視鏡への周波数設定を要求された場合には、周波数管理テーブル34を検索して、使用開始時刻からの経過時間が所定の標準検査時間を越えている周波数を特定し、特定した周波数のうちの何れかが選択された場合には、その選択された周波数をカプセル内視鏡に設定するとともに、
その選択された周波数の使用開始時刻として、現在時刻を周波数管理テーブル34に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体腔内を撮像するカプセル内視鏡に、関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、患者の消化管を経口的に観察するためのシステムとして、電子内視鏡システムがある。この電子内視鏡システムは、被検体の撮像を行う撮像装置がその先端に組み込まれている可撓管状の挿入部を有する電子内視鏡と、この電子内視鏡から出力される画像信号のプロセシングを行うためのプロセッサ装置と、プロセッサ装置によってプロセシングを施された画像信号に基づく画像を表示するモニタとを、備えている。このような電子内視鏡システムを用いて実際に患者の消化管を観察する際には、電子内視鏡の挿入部を経口的に患者の体(消化管)内に導入しなくてはならないが、患者にとって、挿入部を構成する管が咽喉を通る感覚は耐えがたく、この可撓管状の挿入部を飲み込むことは多大なる苦痛を伴うものであった。
【0003】
そこで近年、患者が電子内視鏡の挿入部を飲み込む際の苦痛を無くすために、患者が嚥下することにより患者体内に取り込まれて体腔内を撮像する小さなカプセル型の撮像装置(カプセル内視鏡)と、患者の体外に配置されるプロセッサ装置及びモニタとからなるカプセル内視鏡システムが開発されている。
【0004】
このカプセル内視鏡システムにおけるプロセッサ装置は、このカプセル内視鏡を体外から遠隔操作するとともに、カプセル内視鏡から無線にて送信される画像信号の処理を行う。患者によって飲み込まれた(経口的に体腔内へ取り込まれた)カプセル内視鏡は、体腔内を撮像してその像を画像信号へと変換し、プロセッサ装置へと送信する。プロセッサ装置はこの画像信号に基づく画像をモニタに表示させる。このようなカプセル内視鏡システムによると、患者が小さなカプセル内視鏡を飲み込むだけで体腔内の撮像ができるので、患者の苦痛を伴わずに患者の体腔内(消化管の内壁)を観察することができる。(例えば、特許文献1参照)
このようなカプセル内視鏡は、通常の内視鏡とは異なり、患者の消化管内を容易に移動できるものではないので、複数のカプセル内視鏡を一定周期毎に患者に投与して、各カプセル内視鏡から送信されてくる画像信号を順次受信する必要がある。また、カプセル内視鏡による体腔内観察は、院内感染の危険が低いので、同じ処置室内又は隣接した処置室において複数の患者が同時にカプセル内視鏡を投与される場合もありえる。このように、複数のカプセル内視鏡が同時に使用される場合には、(時分割多重方式を採用するのでない限り)各カプセル内視鏡に対して操作信号受信用及び画像信号送信用として設定される周波数(帯)を、各カプセル内視鏡毎に相違させなければならない。
【0005】
そのための方式として、本出願人が先に出願した特願2003−302913号では、工場出荷時に、予め定められた数の周波数(帯)の中から一定比率で選択された周波数を個々のカプセル内視鏡に設定しておき、設定された周波数(帯)を示す色をカプセルに着色することを、提案している。
【特許文献1】特開2001−91860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方式による場合には、特定の周波数(帯)のみを連続して使用した場合には、在庫しているカプセル内視鏡の周波数に偏りが生じてしまうので、全周波数を使用する必要が生じたときには、上記特定の周波数(帯)が割り当てられたカプセル内視鏡の在庫が無くなっている事がありうる。その為、術者は、各周波数を割り当てられたカプセル内視鏡を、均等に使用していかなければならない。
【0007】
また、各患者の体腔(消化管)内において、カプセル内視鏡が被検部を通過してしまった後は、そのカプセル内視鏡は無用なものとなるが、外部操作によってカプセル内視鏡の主電源を切る機能が備わっていれば格別、そうでなければ、そのカプセル内視鏡のバッテリーが切れるまでの間は、事実上、同じ周波数(帯)が割り当てられているカプセル内視鏡を使用することができない。もしも、その間に、同じ周波数(帯)が割り当てられているカプセル内視鏡を使用しようとするならば、最初に使用していたカプセル内視鏡から発信された画像信号が、後から使用する画像信号と混信してしまうからである。そのため、上記方式による場合には、各周波数(帯)毎に、カプセル内視鏡の使用開始時間を記録しておき、そのバッテリーが切れるまでの時間を、個別に管理しなければならない。
【0008】
そこで、本発明の課題は、カプセル内視鏡を使用する都度、予め定められた複数の周波数のうちから、その時点で使用中でない周波数を選んで、そのカプセル内視鏡の操作信号受信用又は画像信号送信用周波数として、そのカプセル内視鏡に設定することができるカプセル内視鏡システムを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために案出された本発明のカプセル内視鏡システムの第1の態様は、カプセル内視鏡が画像信号を送信するために用いる搬送波の周波数を設定するための態様であり、体腔内を撮像することによって得た画像信号を搬送波に乗せて無線送信するカプセル内視鏡と、このカプセル内視鏡が用いる前記搬送波の周波数を設定する周波数設定端末からなる。具体的には、その周波数設定端末は、予め使用を予定されている複数の周波数毎に、その周波数が何れかのカプセル内視鏡に最新に設定された時刻が記録される周波数管理手段と、この周波数管理手段に記録されている時刻からの経過時間が所定の標準時間内にない周波数を、使用可能なものとして特定する使用可能周波数特定手段と、この使用可能周波数特定手段によって特定された周波数のうちの何れかを選択する操作を受け付ける入力手段と、この入力手段によって受け付けられた操作によって選択された周波数の設定を、使用予定のカプセル内視鏡に指示する指示手段とを、備える。また、そのカプセル内視鏡は、撮像することによって画像信号を出力する撮像装置と、前記周波数設定端末の前記指示手段によって設定を指示された周波数の搬送波を発振する発振回路と、前記撮像装置から出力された画像信号によって前記発振回路から発振された搬送波を変調する変調回路と、この変調回路によって変調された信号を送出するアンテナとを、備える。
【0010】
また、本発明のカプセル内視鏡システムの第2の態様は、カプセル内視鏡内の回路に供給される制御信号を抽出する周波数を設定するための態様であり、外部から受信した制御信号に応じて動作を行うカプセル内視鏡と、このカプセル内視鏡が受信する制御信号の周波数を設定する周波数設定端末からなる。具体的には、その周波数設定端末は、予め使用を予定されている複数の周波数毎に、その周波数が何れかのカプセル内視鏡に最新に設定された時刻が記録される周波数管理手段と、この周波数管理手段に記録されている時刻からの経過時間が所定の標準時間内にない周波数を、使用可能なものとして特定する使用可能周波数特定手段と、この使用可能周波数特定手段によって特定された周波数のうちの何れかを選択する操作を受け付ける入力手段と、この入力手段によって受け付けられた操作によって選択された周波数の設定を、使用予定のカプセル内視鏡に指示する指示手段とを、備える。また、そのカプセル内視鏡は、外部からの信号を受信するアンテナと、前記周波数設定端末の前記指示手段によって設定を指示された周波数の信号を発振する発振回路と、前記アンテナが受信した信号のうち、前記発振回路が発振する周波数に対応した信号のみを抽出する同調回路と、この同調回路によって抽出された信号を復調する復調回路と、この復調回路によって復調された信号が所定の制御信号である場合に、この制御信号に応じて動作する回路とを、備える。
【0011】
何れの場合においても、或るカプセル内視鏡がこれから使用される際には、使用可能周波数特定手段が、周波数管理手段によって管理されている複数の周波数の中から、何れかのカプセル内視鏡に設定されてからの経過時間が所定の標準時間内にないものが、特定される。この特定された周波数の中から、入力手段に受け付けられた操作によって何れかの周波数が選択された場合には、指示手段が、選択された周波数の設定を当該使用予定のカプセル内視鏡に指示する。カプセル内視鏡の発振回路は、指示された周波数の信号を発振するので、この信号を搬送波とした画像信号の変調や、この信号に基づいた同調がなされることになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカプセル内視鏡システムによれば、カプセル内視鏡を使用する都度、予め定められた複数の周波数のうちから、その時点で使用中でない周波数を選んで、そのカプセル内視鏡の操作信号受信用又は画像信号送信用周波数として、そのカプセル内視鏡に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
<カプセル内視鏡の構造>
本実施形態におけるカプセル内視鏡1は、患者(被検者)によって経口的に体腔内に導入されて体腔内を撮像するとともに、撮像した体腔内の画像信号を無線にて被検者の体外に設置されたプロセッサ装置に送信するものである。
【0014】
図1(a)は、本発明のカプセル内視鏡1の全体形状を示す側面図である。また、図1(b)は、図1(a)に示されたカプセル内視鏡1の内部構成を表すためにその中心軸に沿った縦断面を示す断面図である。なお、以下の説明を簡単にするために、図1の紙面上における左側を「前側」とし、図1の紙面上における右側を「後側」とする。
【0015】
図1に示されるように、このカプセル内視鏡1は、各回路部品を収納する筒状のフレーム20と、このフレーム20内に収納される撮像ユニット21と、バッテリーケース22と、このバッテリーケース22の後端面に配置された電源スイッチ24,送信モジュール23a及び受信モジュール23bと、これら各部をその内部に収納して保護するためのケーシング10とから、構成されている。
【0016】
ケーシング10は、後端部が半球状をなす円筒状の胴部10bと、胴部10bの前端に取り付けられ半球状に突出した形状の透明カバー10aとからなる。即ち、ケーシング10は、全体として所謂カプセル型の形状を有している。なお、透明カバー10aは、透明であるとともに酸に強い樹脂からなり、撮像ユニット21の対物光学系212から被写体までの距離を適度に保つ役割を有する。
【0017】
また、胴部10bは、光を遮蔽できるとともに酸に強い樹脂から成形されている。そして、この胴部10bの中心軸上には、電源スイッチ24が貫通するスイッチ孔240が穿たれている。
【0018】
フレーム20は、円筒形の回路板であり、その内部において撮像ユニット21及びバッテリーケース22を保持する。また、このフレーム20には、撮像ユニット21,送信モジュール23a,受信モジュール23b及びバッテリーケース22中のバッテリー220を電気的に繋ぐための回路パターン,及び、アンテナ201(図2参照)として機能する回路パターンが、形成されている。
【0019】
撮像ユニット21は、体腔内の像を撮像するユニットであり、発光ダイオード211,対物光学系212,鏡筒202,イメージセンサ213,画像処理回路214,及び撮像用基板215からなる。
【0020】
鏡筒202は、対物光学系212及び発光ダイオード211をフレーム20内に保持するための枠であり、フレーム20よりも僅かにその半径が小さい円柱形状を有している。この鏡筒202は、その前端面がフレーム20の前縁とほぼ面一となるように、フレーム20内に固定されている。この鏡筒202には、その中心軸に沿って対物レンズ用保持孔202aが貫通しており、この対物レンズ用保持孔202aを挟んで点対称な二箇所に夫々発光ダイオード211が埋め込まれている。また、鏡筒202上の対物レンズ用保持孔202aには、対物光学系212を構成する複数のレンズが、収容されている。
【0021】
各発光ダイオード211としては、白色光を発光する高輝度タイプが用いられている。各発光ダイオード211は、撮像用基板215を通じてバッテリーケース22中のバッテリー220から駆動電流を受けて発光し、カプセル内視鏡1が体腔内に導入された時には、体腔内を照明する。
【0022】
対物光学系212は、体腔内の像を結ぶための光学系であって、その光軸が透明カバー10aの中心軸と同軸となるように、鏡筒202の対物レンズ用保持孔202aによって固定されている。
【0023】
イメージセンサ213は、対物光学系212によってその撮像面上に結ばれた像を光電変換するCCD等の撮像素子であり、体腔内の像を電気信号に変換する。なお、このイメージセンサ213は、対物光学系212が体腔内の像を結ぶ位置にその撮像面が来るように、配置されている。なお対物光学系212及びイメージセンサ213が撮像装置に相当する。
【0024】
画像処理回路214は、イメージセンサ213にて変換された電気信号を取得して、この電気信号に対してノイズ除去等の処理,及びA/D変換処理を施して、画像信号として出力する。
【0025】
撮像用基板215は、イメージセンサ213と画像処理回路214とを実装することにより、これらの回路部品を電気的に接続するとともに固定配置するプリント基板である。撮像用基板215は、フレーム20よりも僅かにその径が小さく扁平な円柱形状を有し、鏡筒202の後端面に同軸に接着されている。従って、フレーム20の内部に撮像ユニット21が保持された状態では、フレーム20の内周面に撮像用基板215の外周面が接する。撮像用基板215における鏡筒202に接着された面の中央にはイメージセンサ213が、この面と対向する面の中央には画像処理回路214が、夫々実装されている。また、この撮像用基板215上の回路には、鏡筒202内を各発光ダイオード用固定穴202bまで貫いた2組のリード216が繋がれている。発光ダイオード211は、このリード216を通じて電気的に撮像用基板215と繋がれ、この撮像用基板215上の回路から駆動電流の供給を受ける。さらに、この撮像用基板215における画像処理回路214が実装されている面の裏側の後端面には、後述するバッテリー220の陽極と接触する回路部品である陽極接触部221が実装されている。
【0026】
バッテリーケース22は、フレーム20よりも僅かにその径が小さい有底円筒形状を有する絶縁体である。バッテリーケース22は、その内側の空間にバッテリー220(電力供給手段に相当)を収納し、その開口端を撮像用基板215に向けて、フレーム20の内部に挿入されている。この状態では、フレーム20の内周面にバッテリーケース22の外周面が接する。このバッテリーケース22内部の底面には、バッテリー220の陰極と接触するバネ状の陰極接触部222が実装されている。このバッテリーケース22の後端面には、送信モジュール23a,受信モジュール23b及び電源スイッチ24が、実装されている。なお、陰極接触部222は、バッテリーケース22及びフレーム20上の回路パターンを通じ撮像用基板215における画像処理回路214のグランド電極に導通している。
【0027】
電源スイッチ24は、バッテリーケース22の後端面から、その中心を通り後側に向かって垂直に突出形成された円柱状部材である。この電源スイッチ24の底面の半径はスイッチ孔240の半径よりも僅かに小さく、両者の間は、図示せぬシール部材によって液密に保たれている。電源スイッチ24自体は絶縁体である。電源スイッチ24は、電源がオフの状態では、胴部10bのスイッチ孔240から後側に突出した状態であり(図1において破線にて図示)、この突出した部分が前側に向けて押下された状態が、電源がオンの状態である(図1において実線にて図示)。電源がオフの状態では、バッテリー220の陽極は、撮像用基板215上に実装された陽極接触部221とは離れている。電源がオンの状態にされると、バッテリー220が、バッテリーケース22上に実装されたバネ状の陰極接触部222によって、撮像用基板215上に実装された陽極接触部221に向けて押し付けられるので、バッテリー220からカプセル内視鏡1の各回路部品に駆動電力が供給される。
【0028】
次に、送信モジュール23a及び受信モジュール23bの詳細な回路構成を、図2のブロックに示す。図2に示されるように、送信モジュール23aは、基準周波数発信器231と、この基準周波数発信器231の出力端に接続された位相検出器232と、この位相検出器232の出力端に接続された積分回路233と、この積分回路233の出力端に接続された電圧制御発振器234と、この電圧制御発振器234の出力端にその入力端が接続されるとともに上記位相検出器232の入力端にその出力端が接続されたn分周器236と、上記電圧制御発振器234の出力端に接続された無線送信回路239と、上記n分周器236の制御端に接続されたマイコン237と、このマイコンに接続された外部通信インターフェイス238とから、構成される。
【0029】
これらのうち、位相検出器232,積分回路233,電圧制御発振器234及びn分周器236は、周知のPLL発振回路を構成している。即ち、位相検出器232は、基準周波数発振器231から発振されている特定周波数の信号(基準信号f)の位相と後述するn分周器236の出力信号f/nの位相とを比較し、両者が不一致であればその位相差に応じた電圧(差電圧)を出力する。この差電圧は、積分回路233によってその高周波成分及びノイズを除去された後に、電圧制御発振器234に入力する。電圧制御発振器234は、基準信号fに対して信号f/nが進んでいることを差電圧が示している場合には、その出力信号の発振周波数fを下げることによって信号f/nの位相を遅らせ、基準信号fに対して信号f/nが遅れていることを差電圧が示している場合には、その出力信号の発振周波数fを上げることによって信号f/nの位相を進めることによって、基準信号fに対して信号f/nを同期させる。n分周器は、電圧制御発振器234の出力周波数fをn分周することによって、上記信号f/nを出力する。その結果、電圧制御発振器234の出力周波数fは、常に、基準信号fのn倍を保つようになるので、nを適宜選択することによって、電圧制御発振器234の出力周波数fを複数(=nの取りうる個数)通りに変化させることができるのである。
【0030】
変調回路としての無線送信回路239は、この電圧制御発振器234の出力信号を搬送波として、画像処理回路214からの画像信号によってこれを変調し、増幅して、アンテナ201へ送出する。従って、n分周器236に設定されるnの値に応じて、アンテナ201から発信される電波の周波数帯が変わるのである。
【0031】
なお、上記マイコン237は、外部通信インターフェイス238を通じて受信した周波数設定端末3からの指示に従って、指示されたnの値を上記分周器236に設定する。この外部通信インターフェイス238は、赤外線通信,RF等の非接触型のインターフェイスである。また、周波数設定端末3においては、後において詳しく説明する。
【0032】
一方、受信モジュール23bは、基準周波数発振器241,PLL発振回路(位相検出器242,積分回路243,電圧制御発振器244,n分周器246),マイコン247,外部通信インターフェイス248,及び無線受信回路249から、構成されている。これらのうち、無線受信回路249以外の回路要素の機能及び相互の接続関係は、上述した送信モジュール23aのものと同じであるので、その説明を省略する。
【0033】
無線受信回路249は、アンテナ201によって受信した信号に電圧制御発振器244の出力信号を混合したのちに特定中間周波数の信号のみを取り出す同調回路と、取り出された信号を復調する復調回路とを有し、復調した信号を制御信号として撮像素子213や画像処理回路214に与える。従って、n分周器246に設定されるnの値に応じて、アンテナ201によって受信された電波のうち復調すべき信号の周波数帯が変わるのである。
【0034】
なお、各カプセル内視鏡1と通信(操作信号の送信及び画像信号の受信)を行うことによって、カプセル内視鏡1から受信した画像信号を処理してこのカプセル内視鏡1が撮像した画像をモニタ上に表示するプロセッサ装置2も、上記したカプセル内視鏡1のものと同じ送信モジュール23a及び受信モジュール23bを備えている。なお、プロセッサ装置2としては、一つの周波数帯を用いて一つのカプセル内視鏡と通信する単チャンネル式のものが標準であるが、送信モジュール23a及び受信モジュール23bを複数組備えれば、同時に複数の周波数帯を用いて複数のカプセル内視鏡と通信できる多チャンネル方式とすることもできる。
【0035】
次に、以上のように構成された個々のカプセル内視鏡1及びプロセッサ装置2の送信モジュール23a及び受信モジュール23bの夫々のマイコン237,247に対して、外部通信インターフェイス238,248を通じてn分周器236,246へのnの値の設定を指示するための周波数設定端末3について、説明する。
【0036】
この周波数設定端末3は、各カプセル内視鏡1とプロセッサ2との通信に用いられる電波が届く領域(例えば、一つの手術室)内において一つのみ設置される。この周波数設定端末は、図2に示すように、CPU30と、このCPU30に夫々接続されたタッチパネル31,一対の外部通信インターフェイス32,33及び周波数管理データベース34とから、構成されている。
【0037】
このCPU30は、図示せぬディスク装置又はロムから読み込んだプログラムを実行することにより、各種処理を実行する中央処理装置である。
【0038】
タッチパネル31は、CPU30によって生成された画面が表示されるとともにオペレータがCPU30に対する命令が入力される入出力装置(表示手段及び入力手段に相当)である。図3は、このタッチパネルにおける画面表示例である。
【0039】
外部通信インターフェイス32,33は、夫々、送信モジュール23a及び受信モジュール23bの外部通信インターフェイス238,248との間で非接触の通信を行うインターフェイスである。
【0040】
周波数管理データベース23には、図4に示すように、各nの値に対応した周波数(即ち、n分周器236,246に各nの値を設定した場合にアンテナ201から発信される電波又はアンテナ201によって受信されて同調される電波の周波数)毎にレコードが用意されており、各レコードには、夫々、そのレコードの識別番号であるレコード番号,その周波数の値,その周波数の使用開始時刻(即ち、その周波数が何れかのカプセル内視鏡に最新に設定された時刻),その周波数を最新に使用した(即ち、その周波数に対応したnの値が各n分周器236,246に設定された)カプセル内視鏡の識別情報が、記録される(周波数管理手段に相当)。
【0041】
次に、各カプセル内視鏡1(及び、プロセッサ装置2)に周波数を設定するために周波数設定端末3のCPU30が実行する処理を、図5のフローチャートに基づいて説明する。この処理に入って最初のS01では、CPU30は、レコード番号を指定するための変数fを“1”に初期設定する。
【0042】
次のS02では、CPU30は、f番目のレコードに記録された周波数の値を、選択可能なボタンアイテムとして、タッチパネル31に表示する。
【0043】
次のS03では、CPU30は、f番目のレコードに記録されている使用開始時刻を読み出し、その使用開始時刻から所定の標準検査時間を経過した後の時刻が、現在時刻よりも前であるか否かをチェックする。そして、前者が後者よりも前であるか使用開始時刻が記録されていなければ、CPU30は、S05において、「使用可」の文字列を、S02にて表示したボタンアイテムの隣に表示する(使用可能周波数特定手段及び表示手段に相当)。一方、前者が後者よりも後であれば、CPU30は、S04において、「使用中」の文字列,及び前者と後者との時間差である「残り時間」を、S02にて表示したボタンアイテムの隣に表示する。何れの場合も、CPU30は、処理をS06へ進め、変数fを一つインクリメントする。
【0044】
次のS07では、CPU30は、変数fが最大値(即ち、レコード総数)を超えたか否かをチェックする。そして、変数fが最大値以下であれば、処理をS02に戻し、次のレコードについての処理を行う。以上のS02〜S07のループ処理を繰り返した結果として変数fが最大値を越えたときには、CPU30は、S08において、「使用可」の文字列がタッチパネル31上に一つでも表示されているか否かをチェックする。そして、「使用可」の文字列が一つも表示されていない場合には、CPU30は、S09において、「使用可能な周波数がありません」とのメッセージを、タッチパネル31上に表示する。
【0045】
これに対して、「使用可」の文字列が一つでも表示されていれば、タッチパネル上に表示される画面は、図3に示すようになる。そこで、CPU30は、次のS10において、何れかの周波数を選択するための操作がなされるのを待つ。即ち、タッチパネル31における何れかのボタンアイテムに相当する箇所が押圧されるのを待つ。そして、周波数を選択するための操作がなされた場合には、CPU30は、次のS11において、S10にて選択された周波数が「使用可」であるか否かを、押圧された箇所に表示されているボタンアイテムの隣に「使用可」の文字列が表示されているか否かに基づいて、チェックする。そして、「使用可」でなければ、CPU30は、処理をS10に戻し、周波数を選択するための操作が再度行われるのを待つ。
【0046】
これに対して、選択された周波数が「使用可」である場合には、CPU30は、次のS12において、カプセル内視鏡1(及びプロセッサ装置2)の送信モジュール23a及び受信モジュール23bのマイコン237,247に対して、選択された周波数(押圧された箇所にボタンアイテムとして表示されている周波数)に対応したnの値を各n分周器236,246に設定させる指示を、外部インターフェイス32,33を通じて送信する(指示手段に相当)。
【0047】
次のS13では、CPU30は、選択された周波数(押圧された箇所にボタンアイテムとして表示されている周波数)に対応したレコードに、「使用開始時刻」として現在時刻を、「使用カプセル」として、S12にて周波数設定を行ったカプセル内視鏡1の識別情報を、記録する。このS13を完了すると、CPU30は、周波数設定のための一連の処理を終了する。
【0048】
以上のように構成された本実施形態のカプセル内視鏡システムを用いて内視鏡検査を行う場合には、オペレータは、周波数設定端末3及び現在使用中でないプロセッサ装置2に主電源を投入するとともに、未使用のカプセル内視鏡1をケースから取り出して、その電源スイッチ24を押し込む。そして、プロセッサ装置2及び当該未使用のカプセル内視鏡1を、周波数設定端末3から外部通信インターフェイスを通じて通信可能な範囲に置いて、図5の処理をスタートさせる。
【0049】
すると、予め使用を予定されている複数の周波数(即ち、周波数管理データベース34に登録されている周波数)毎に、それが現在「使用中(即ち、その周波数が何れかのカプセル内視鏡1に最後に設定されてからの経過時間が所定の標準検査時間内であること)」であるか「使用可(即ち、その周波数が未だ何れのカプセル内視鏡にも設定されたことがないか、若しくは、その周波数が何れかのカプセル内視鏡1に最後に設定されてからの経過時間が所定の標準検査時間を越えたこと)」であるかの区別、「使用中」であるならば「使用可」になるまでの残り時間が、周波数設定端末3のタッチパネル31に表示される(S01〜S07)。
【0050】
そこで、オペレータが、「使用可」と表示されている何れかの周波数のボタンアイテムを押圧すれば、その周波数近傍の周波数帯の電波をアンテナ201から送信し、また、アンテナ201から受信して復調するためのnの値を各n分周器236,246に設定させるための指示が、外部インターフェイス32,33を通じて、当該未使用のカプセル内視鏡1及びプロセッサ装置2の送信モジュール23a及び受信モジュール23bの各マイコン237,247へ送信される(S10〜S12)。
【0051】
それにより、当該未使用のカプセル内視鏡1及びプロセッサ装置2の送信モジュール23a及び受信モジュール23bの各n分周器236,246にnの値が設定されるので、以後、これらカプセル内視鏡1及びプロセッサ2の間では、当該周波数帯の電波を通じて通信を行うことができるようになる。
【0052】
他方、周波数管理データベース34における当該周波数を記録したレコードには、現在時刻が「使用開始時刻」として記録されるので(S13)、以後所定の標準検査時間が経過するまでの間は、オペレータが他のカプセル内視鏡1に対して周波数設定をしようとしても、当該周波数については、周波数設定端末3のタッチパネル31上に「使用中」と表示され、設定することが不可能となる。よって、あるカプセル内視鏡1に設定された周波数が、そのカプセル内視鏡1を使用している間に、他のカプセル内視鏡1に重複して設定されてしまう不都合を防止することができるのである。
【0053】
また、本実施形態によれば、全ての未使用のカプセル内視鏡1は、予め周波数が設定されていないという点において共通している。従って、オペレータが、検査の都度同じ周波数を設定していたとしても、カプセル内視鏡1の在庫に偏り生じることがあり得ない。よって、カプセル内視鏡1の在庫管理が楽であるとともに、何時でも、複数個のカプセル内視鏡を同時に使用することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態であるカプセル内視鏡の全体形状を示す側面図及び縦断面図
【図2】本発明の実施形態であるカプセル内視鏡システムの概略ブロック図
【図3】周波数設定端末のタッチパネルに表示される画面例を示す図
【図4】周波数管理データベースのデータ構造を示す図
【図5】周波数設定端末のCPUが実行する処理の内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0055】
1 カプセル内視鏡
2 プロセッサ装置
3 周波数設定端末
23a 送信モジュール
23b 受信モジュール
30 CPU
31 タッチパネル
34 周波数管理データベース
201 アンテナ
236 n分周器
237 マイコン
239 無線送信回路
246 n分周器
247 マイコン
249 無線受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内を撮像することによって得た画像信号を搬送波に乗せて無線送信するカプセル内視鏡と、このカプセル内視鏡が用いる前記搬送波の周波数を設定する周波数設定端末からなるカプセル内視鏡システムであって、
前記周波数設定端末は、
予め使用を予定されている複数の周波数毎に、その周波数が何れかのカプセル内視鏡に最新に設定された時刻が記録される周波数管理手段と、
この周波数管理手段に記録されている時刻からの経過時間が所定の標準時間内にない周波数を、使用可能なものとして特定する使用可能周波数特定手段と、
この使用可能周波数特定手段によって特定された周波数のうちの何れかを選択する操作を受け付ける入力手段と、
この入力手段によって受け付けられた操作によって選択された周波数の設定を、使用予定のカプセル内視鏡に指示する指示手段と
を備え、
前記カプセル内視鏡は、
撮像することによって画像信号を出力する撮像装置と、
前記周波数設定端末の前記指示手段によって設定を指示された周波数の搬送波を発振する発振回路と、
前記撮像装置から出力された画像信号によって前記発振回路から発振された搬送波を変調する変調回路と、
この変調回路によって変調された信号を送出するアンテナと
を備えたことを特徴とするカプセル内視鏡システム。
【請求項2】
外部から受信した制御信号に応じて動作を行うカプセル内視鏡と、このカプセル内視鏡が受信する制御信号の周波数を設定する周波数設定端末からなるカプセル内視鏡システムであって、
前記周波数設定端末は、
予め使用を予定されている複数の周波数毎に、その周波数が何れかのカプセル内視鏡に最新に設定された時刻が記録される周波数管理手段と、
この周波数管理手段に記録されている時刻からの経過時間が所定の標準時間内にない周波数を、使用可能なものとして特定する使用可能周波数特定手段と、
この使用可能周波数特定手段によって特定された周波数のうちの何れかを選択する操作を受け付ける入力手段と、
この入力手段によって受け付けられた操作によって選択された周波数の設定を、使用予定のカプセル内視鏡に指示する指示手段と
を備え、
前記カプセル内視鏡は、
外部からの信号を受信するアンテナと、
前記周波数設定端末の前記指示手段によって設定を指示された周波数の信号を発振する発振回路と、
前記アンテナが受信した信号のうち、前記発振回路が発振する周波数に対応した信号のみを抽出する同調回路と、
この同調回路によって抽出された信号を復調する復調回路と、
この復調回路によって復調された信号が所定の制御信号である場合に、この制御信号に応じて動作する回路と
を備えたことを特徴とするカプセル内視鏡システム。
【請求項3】
前記使用可能周波数特定手段によって特定された周波数を使用可能なものとして表示する表示手段を
更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項4】
前記表示手段は、前記使用周波数特定手段によって特定されなかった周波数については、前記経過時間と前記標準時間との差を残り時間として表示する
ことを特徴とする請求項3記載のカプセル内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−280828(P2006−280828A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108217(P2005−108217)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】