カプセル型ひずみゲージ、カプセル型ひずみゲージの製造方法およびカプセル型ひずみゲージの取付方法
【課題】 ひずみ伝達率を低下させることなく小型化を実現すると共に、スポット溶接の巧拙に起因するゲージ率Ksのばらつき発生の抑制を可能とする。
【解決手段】 このカプセル型ひずみゲージは、センサ部31と、このセンサ部31に接続されたシースチューブ32、第1の接続部、MIケーブル、第2の接続部およびフレキシブルケーブルを有する。センサ部31は、先端部32aが封止されたシースチューブ32内に充填された絶縁物13によりシースチューブ32内に保持されたひずみ感応抵抗体部12aを有している。フランジ14は、細長い矩形状を呈した薄板でなり、長手方向に添う略中央に溶接によりシースチューブ32が固着されている。シースチューブ32の先端部32aは、フランジ14と共に被測定物上に直接溶接により固着可能な厚さの平坦状に形成されている。
【解決手段】 このカプセル型ひずみゲージは、センサ部31と、このセンサ部31に接続されたシースチューブ32、第1の接続部、MIケーブル、第2の接続部およびフレキシブルケーブルを有する。センサ部31は、先端部32aが封止されたシースチューブ32内に充填された絶縁物13によりシースチューブ32内に保持されたひずみ感応抵抗体部12aを有している。フランジ14は、細長い矩形状を呈した薄板でなり、長手方向に添う略中央に溶接によりシースチューブ32が固着されている。シースチューブ32の先端部32aは、フランジ14と共に被測定物上に直接溶接により固着可能な厚さの平坦状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のひずみ測定に用いられるひずみゲージ、ひずみゲージの製造方法およびひずみゲージを被測定物に取り付けるひずみゲージの取付方法に関し、詳しくは、カプセル型ひずみゲージ、その製造方法およびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ひずみを測定すべき被測定物には各種各様のものがあるが、それに対応してひずみゲージの種類も多種多様であり、またひずみゲージを被測定物に取り付ける取付方法にも様々なものがある。エンジンやタービン、原子炉、ロケットなどの構成部品を被測定物としてひずみを測定する場合、被測定物の表面温度が容易に200℃を越えることが多いため、いわゆる高温用ひずみゲージが用いられる。高温用ひずみゲージは、被測定物への取付方法により、従来から、接着型、溶接型、溶射型等に分類されている。このうち、溶接型高温用ひずみゲージは、高温環境に耐え得ることはもとより、比較的作業性が良い、取付のための費用が安いなどの利点がある。
図7は、本出願人が先に提案した従来のカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図、図8は、図7に示すセンサ部のさらに大きな拡大断面図、図9は、図7に示すセンサ部のさらに大きな拡大側面図である。このカプセル型ひずみゲージは、1ゲージ法の溶接型高温用であり、センサ部1と、第1の接続部2と、MIケーブル(mineral insulated metal sheathed cable)3と、第2の接続部4と、フレキシブルケーブル5とから構成されている。センサ部1は、図7〜図9に示すように、シースチューブ11と、ひずみ感応抵抗体部12aと、リード部12baと、リード部12bbと、絶縁物13と、フランジ14とから構成されている。
【0003】
シースチューブ11は、耐食性と耐熱性に優れたNCF600(JIS記号)等の耐熱性合金から構成され、一体に形成された大径部11aと小径部11bとからなり、大径部11aは、先端部11abが封じられている。小径部11bの基端部は、第1の接続部2に接続されている。ひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baおよび12bbは、耐熱性特殊合金からなる1本の線材の所定長さ部分を加工によりその径を小さくして抵抗値を高めた部分を倒U字状に折り曲げてひずみ感応抵抗体部12aとし、加工されずにその径がもとのままの両端部近傍をリード部12baおよび12bbとしている。ひずみ感応抵抗体部12aは、ひずみに感応してひずみ量変化を抵抗値変化に変換するものであり、リード部12baおよび12bbの各一部と共に、シースチューブ11の大径部11a内に固く充填された酸化マグネシウム(MgO)の粉体からなる耐熱性の絶縁物13によって大径部11a内に固く保持されている。内部にひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baの一部、リード部12bbの一部および絶縁物13がそれぞれ収容された大径部11aは、先端部11abから所定長さの部分までが、薄肉で細長い矩形状を呈したフランジ14の長手方向に沿う略中央に、溶接により固着されている。フランジ14は、耐食性と耐熱性に優れたNCF600(JIS記号)からなる。
【0004】
第1の接続部2では、例えば、上記NCF600からなる筒体2a内において、シースチューブ11の小径部11bの端部から突出するリード部12baおよび12bb(図8参照)の各一端と、MIケーブル3の一端部から突出する2本の金属線(この従来例の場合、熱電対を構成するアルメル線とクロメル線)の各一端とがそれぞれ接続されている。また、第2の接続部4では、筒体4a内において、MIケーブル3の他端部から突出する2本の金属線の各他端と、常温型のフレキシブルケーブル5の一端部から突出する2本の芯線(共に図示略)の各一端とが半田付けでそれぞれ接続されている。以上説明した構成を有するカプセル型ひずみゲージは、図10に示すように、フランジ14が被測定物21上にスポット溶接により固着されることにより、センサ部1が被測定物21に複数のスポット溶接部22により強固に固着される。そして、被測定物21のひずみは、フランジ14、シースチューブ11の大径部11aおよび絶縁物13を介してひずみ感応抵抗体部12aに伝達される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特許第3118621号公報([0027]〜[0039]、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、被測定物の小型化や構造微細化・複雑化の傾向、あるいは、被測定物の局所におけるひずみ測定の要望の高まりなど様々な要因から、ひずみゲージの小型化が望まれているため、上記カプセル型ひずみゲージにおいても小型化する必要がある。ところが、カプセル型ひずみゲージを小型化すると、ひずみ伝達率が極端に低く(60%程度)なってしまう。この結果、被測定物に固着されたひずみゲージの感度であるゲージ率Ksが低下すると共に、ゲージ率Ksが個々に大きくばらつく、という新たな問題が派生した。このひずみ伝達率低下を招く原因について本発明者らが鋭意解明した結果、以下に示すことが判明した。第1に、上記センサ部1の裏面は、被測定物21への取付時に、図11(a)および(b)に示すように、被測定物21の表面と接触しているが、被測定物21が変形すると、上記センサ部1の裏面のうち、スポット溶接で固着されていないシースチューブ11の先端部11ab付近直下のフランジ14の裏面部分は、図12(a)および(b)に誇張して示すように、被測定物21の表面から離れて浮き上がり、隙間23が生じてしまう。これは以下に示す理由によると考えられる。
【0007】
つまり、センサ部1を被測定物21上にスポット溶接により固着可能とするために、フランジ14が薄板状を呈しており、フランジ14の剛性はシースチューブ11の剛性に比べて小さく、もともとひずみ伝達率は最大でも90%程度であった。このようなカプセル型ひずみゲージを小型化した場合、ひずみ感応抵抗体部12aの小型化に伴って受感領域が狭小化すると共に、ひずみ感応抵抗体部12aは相対的に剛性が特に高いシースチューブ11の先端部11abにより接近して保持されることになり、フランジ14とシースチューブ11との剛性の違いの影響がさらに大きくなるからと推測される。また、カプセル型ひずみゲージを小型化した場合、フランジ14の長さが短くなってフランジ14を被測定物21上にスポット溶接により固着する面積もスポット溶接部22の個数も共に減少するため、スポット溶接の巧拙がゲージ率Ksに大きな影響を及ぼす。
そこで、本発明者らは、フランジ14とシースチューブ11との剛性の差を小さくするために、フランジ14を従来より厚くしてフランジ14の剛性を高めることを試みた。即ち、本発明者らは、以下に示すように、フランジ14の厚さを0.1mm、0.2mm、1mmと変更して、上記センサ部1の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化を測定する実験を行った。
【0008】
図13に実験結果の一例を示す。図13(a)の横軸における距離と図13(b)のセンサ部1の長さの縮尺は、一致(対応)している。図13(a)において、曲線aは、フランジ14の厚さを0.1mmとした場合の特性、曲線bは、フランジ14の厚さを0.2mmとした場合の特性、曲線cは、フランジ14の厚さを1mmとした場合の特性を示している。この図を参照すれば、フランジ14の厚さを従来の0.1mmからその2倍の0.2mmとした場合には、センサ部1の端部からの距離に対するひずみ伝達率は全体的に大きくなっていることが分かる。しかし、フランジ14の厚さを従来の0.1mmからその10倍の1mmとした場合には、センサ部1の端部からの距離に対するひずみ伝達率は逆に全体的に小さくなってしまう。このことから、フランジ14を従来より厚くしてフランジ14の剛性を高めてフランジ14とシースチューブ11との剛性の差を小さくしたとしても、必ずしもひずみ伝達率の向上にはつながらないことが判明した。その一因は、フランジ14の厚さを厚くしてその剛性を高めた場合、被測定物の剛性がセンサ部1を取り付けた部分だけ高まるため、被測定物の挙動が拘束され、被測定物のひずみ測定に支障を来したものと考えられる。
【0009】
さらに、フランジ14の厚さを厚くした場合、フランジ14を被測定物21上に固着する際のスポット溶接のパワーを大きくする必要があるが、溶接時の電流がフランジ14のスポット溶接部22以外の部分やシースチューブ11表面にも流れたり、スパークが発生したりすることにより、フランジ14やシースチューブ11、場合によってはシースチューブ11内のひずみ感応抵抗体部12aまで損傷を及ぼしてしまうおそれがあるという問題も発生する。したがって、フランジ14の厚さを厚くするにも限界がある。
そこで、本発明者らは、フランジの厚さを変えずにひずみ伝達率を向上させることを鋭意探求した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、ひずみ伝達率を低下させることなく小型化を実現すると共に、スポット溶接の巧拙に起因するゲージ率Ksのばらつき発生を抑制し得るカプセル型ひずみゲージ、カプセル型ひずみゲージの製造方法およびカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することを目的としている。
【0010】
本発明の請求項1の目的は、ひずみ伝達率の向上を実現でき、特に、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を図り得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙にも拘わらずゲージ率Ksのばらつきが極めて小さいカプセル型ひずみゲージを提供することにある。
本発明の請求項2の目的は、ひずみ伝達率の向上を実現でき、特に、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を図り得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙にも拘わらずゲージ率Ksのばらつきが極めて小さいカプセル型ひずみゲージの製造方法を提供することにある。
本発明の請求項3の目的は、特に、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を忠実にひずみ感応抵抗体部に伝達し得るカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することにある。
本発明の請求項4の目的は、特に、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を忠実にひずみ感応抵抗体部に伝達し得るカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージは、上述した目的を達成するために、
先端部が封じられ且つ平坦部が形成されたシースチューブ内に充填された絶縁物からなる粉体により前記シースチューブ内に保持されたひずみ感応抵抗体部を有するセンサ部と、
薄肉で細長い矩形状を呈し、長手方向の中心に沿って前記シースチューブが固着されたフランジとを有し、
前記シースチューブの前記平坦部は、前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さに形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージの製造方法は、上述した目的を達成するために、
シースチューブの先端部を溶接により封止する封止工程と、
前記シースチューブの前記先端部をプレスしてその厚みを前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さにまで平坦状に延伸するプレス工程と、
薄肉で細長い矩形状を呈するフランジの長手方向の中心に添って電子ビーム溶接により前記シースチューブを固着するシースチューブ溶接工程と、
前記シースチューブ内にひずみ感応抵抗体部を挿入し、前記ひずみ感応抵抗体部が前記シースチューブの内周面に接触しないように保持した状態で、前記シースチューブ内に絶縁物からなる粉体を充填するひずみ感応抵抗体部装填工程と
を有することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージの取付方法は、上述した目的を達成するために、
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項1に記載のカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴としている。
請求項4に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージの取付方法は、上述した目的を達成するために、
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項2に記載のカプセル型ひずみゲージの製造方法により製造されたカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの低下をもたらすことなく小型化を可能とすると共に、スポット溶接の巧拙に起因するゲージ率Ksのばらつきの発生を抑制可能とするカプセル型ひずみゲージ、カプセル型ひずみゲージの製造方法およびカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することができる。
すなわち、本発明の請求項1のカプセル型ひずみゲージによれば、先端部が封じられ且つ平坦部が形成されたシースチューブ内に充填された絶縁物からなる粉体により前記シースチューブ内に保持されたひずみ感応抵抗体部を有するセンサ部と、薄肉で細長い矩形状を呈し、長手方向の中心に沿って前記シースチューブが固着されたフランジとを有し、前記シースチューブの前記平坦部は、前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さに形成されていることにより、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの向上を実現し得、また、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を実現し得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙に拘わらず、ゲージ率Ksのばらつきを極めて小さく抑えることが可能となる。さらに、フランジの厚さを従来と同様に構成できるので、被測定物に固着させても被測定物の挙動を拘束することはなく、溶接電流による各構成要素の損傷を回避することができる。
【0015】
本発明の請求項2のカプセル型ひずみゲージの製造方法によれば、シースチューブの先端部を溶接により封止する封止工程と、前記シースチューブの前記先端部をプレスしてその厚みを前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さにまで平坦状に延伸するプレス工程と、薄肉で細長い矩形状を呈するフランジの長手方向の中心に添って電子ビーム溶接により前記シースチューブを固着するシースチューブ溶接工程と、前記シースチューブ内にひずみ感応抵抗体部を挿入し、前記ひずみ感応抵抗体部が前記シースチューブの内周面に接触しないように保持した状態で、前記シースチューブ内に絶縁物からなる粉体を充填するひずみ感応抵抗体部装填工程とを有することにより、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの向上を実現し得、また、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を実現し得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙に拘わらず、ゲージ率Ksのばらつきを極めて小さく抑えることが可能となる。さらに、フランジの厚さを従来と同様に構成できるので、被測定物に固着させても被測定物の挙動を拘束することはなく、溶接電流による各構成要素の損傷を回避することができる。
【0016】
本発明の請求項3のカプセル型ひずみゲージの取付方法によれば、前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項1に記載のカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることにより、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を効率良くひずみ感応抵抗体部に伝達することができる。
本発明の請求項4のカプセル型ひずみゲージの取付方法によれば、前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項2に記載のカプセル型ひずみゲージの製造方法により製造されたカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることにより、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を効率良くひずみ感応抵抗体部に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態に基づき、図面を参照して本発明のカプセル型ひずみゲージを詳細に説明する。
図1は、本発明の一つの実施の形態に係るカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図、図2は、図1に示すセンサ部のさらに大きな拡大断面図、図3は、図1に示すセンサ部および第1の接続部の拡大斜視図、図4は、図1に示すセンサ部のさらに大きな拡大側面図、図5は、図1に示すセンサ部の被測定物への取付状態の外観構成を示すさらに大きな拡大平面図である。図1〜図5において、図7〜図10の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その詳細な説明を省略する。このカプセル型ひずみゲージは、1ゲージ法の溶接型高温用であり、狭義には、センサ部31を指称するが、広義には、センサ部31と、第1の接続部2と、MIケーブル3と、第2の接続部4と、フレキシブルケーブル5とを含んで構成されている。センサ部31は、図1〜図4に示すように、シースチューブ32と、ひずみ感応抵抗体部12aと、リード部12baと、リード部12bbと、絶縁物13と、フランジ14とから構成されている。
【0018】
シースチューブ32は、耐食性と耐熱性に優れたNCF600(JIS記号)等の特殊合金から構成され、先端部32aが封止されていると共に、基端部32bは、第1の接続部2に接続されている。図4に示すシースチューブ32の先端部32aは、図9に示すシースチューブ11の大径部11aの先端部11abの厚さ(約0.4mm)と比較して分かるように、その厚さが薄く(0.1mm〜0.2mm)形成されている。ひずみ感応抵抗体部12aは、リード部12baおよび12bbの各一部と共に、シースチューブ32内に固く充填された酸化マグネシウム(MgO)の粉体からなる耐熱性の絶縁物13によってシースチューブ32内に固く保持されている。シースチューブ32は、内部にひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baの一部、リード部12bbの一部および絶縁物13がそれぞれ収容された先端部32aから所定長さの部分までが、薄肉で細長い矩形状を呈したフランジ14の長手方向に沿う(添う)略中央に、溶接により一体的に固着されている。第1の接続部2では、筒体2a内において、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12baおよび12bb(図示略)の各一端と、MIケーブル3の一端部から突出する2本の金属線(例えば、熱電対を構成するアルメル線とクロメル線)の各一端とがそれぞれ接続されている。
【0019】
次に、以上説明した構成を有するカプセル型ひずみゲージのセンサ部の製造方法について説明する。
(1) 円筒状(あるいはパイプ状)を呈しているシースチューブ32の先端部を溶接により、完全に封止する。この工程を、「封止工程」と称する。
(2) シースチューブ32の先端部をプレスしてその厚さを0.1mm〜0.2mm程度まで平坦状に薄く延伸する。この工程を、「プレス工程」と称する。
【0020】
(3) シースチューブ32の裏面であって、シースチューブ32の先端部の薄く延び広がった平坦部分からシースチューブ32の長手方向の所定長さに至るまでの部分を、フランジ14の長手方向の中心に沿う(添う)ように位置付けた上で、フランジ14を電子ビーム溶接によりシースチューブ32の裏面に固着する。この工程を、「シースチューブ溶接工程」と称する。
(4) シースチューブ32内にひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baの一部、リード部12bbの一部を挿入し、ひずみ感応抵抗体部12aの先端部がシースチューブ32の先端部32aの近傍に位置し、且つ、上記ひずみ感応抵抗体部12a等がシースチューブ32内周面に接触しないように保持した状態で、シースチューブ32内に絶縁物13を、ひずみ伝達率が高まるように固く充填する。この工程を、「ひずみ感応抵抗体部装填工程」と称する。
【0021】
以上説明した構成を有するカプセル型ひずみゲージは、図5に示すように、先ず、フランジ14のシースチューブ32の両側面近傍が被測定物33上に適宜間隔おきにスポット溶接により固着されることにより、センサ部31が被測定物33に複数のスポット溶接部34により強固に固着される。さらに、この実施の形態では、図5と図10とを比較して分かるように、シースチューブ32の先端部32aの平坦部もフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に直接固着される。先端部32aにおけるスポット溶接部34aの数は、少なくとも1個、可能ならば、2個以上の複数とすることが望ましい。
図6は、図1のセンサ部31を構成するシースチューブ32の先端部32aをスポット溶接によりフランジ14と共に被測定物33に固着した場合とシースチューブ32の先端部32aをスポット溶接によりフランジ14と共に被測定物33に固着しなかった場合のセンサ部31の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化特性の一例を示す図である。図6(a)の横軸における距離と図6(b)のセンサ部31の長さの縮尺は、一致(対応)している。
【0022】
図6(a)において、曲線aは、図5に示すようにシースチューブ32の先端部32aもフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に固着した場合の特性、曲線bは、シースチューブ32の先端部32aをフランジ14と共に被測定物33に固着しなかった場合の特性を示している。この図を参照すれば、シースチューブ32の先端部32aをフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に固着した場合には、センサ部31の先端部からの距離に対するひずみ伝達率は全体的に大きくなっていることが分かる。これは、被測定物33への取付当初あるいは、被測定物が変形しない状態のときは、被測定物33の表面と接触していた上記センサ部31の裏面は、被測定物33が変形すること、換言すれば、ひずみが生じることにより、上記センサ部31の裏面のうち、特に、スポット溶接で固着されていないシースチューブ32直下のフランジ14の裏面は、被測定物33の表面から離れて浮き上がろうとするが、シースチューブ32の先端部32aおよび両側面近傍のフランジ14が、共に被測定物33にスポット溶接部34aおよび34により強固に固着されているので、被測定物33の挙動がフランジ14を介してシースチューブ32内のひずみ感応抵抗体部12aに効率良く伝達するようになったためと考えられる。
【0023】
このように、本発明の上述の実施の形態によれば、シースチューブ32の先端部32aの厚さをフランジ14の厚さとほぼ等しくし、且つ、シースチューブ32の先端部32aをフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に直接固着している(シースチューブ先端部のフランジ化)。したがって、カプセル型ひずみゲージを小型化しても、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの低下を軽減することができる。換言すれば、同じ大きさの従来のカプセル型ひずみゲージに比べ、ひずみ伝達率を大幅に増大させることができる。実験によれば、シースチューブ32の先端部32aをスポット溶接により被測定物33へ固着した場合は、ゲージ率Ksが約1.9であり、固着しなかった場合に比べて、10〜20%程度の上昇があった。また、カプセル型ひずみゲージを小型化した場合、フランジ14の長さが短くなってフランジ14を被測定物33上にスポット溶接により固着する面積も減少し、スポット点数が減り、スポット溶接もしにくくなるが、仮に、センサ部31を構成するシースチューブ32の両側面近傍のフランジ14へのスポット溶接がうまくいかず、スポット溶接部34が不均一に小数形成された場合であっても、シースチューブ32の先端部32aがフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に固着されていれば、シースチューブ32直下のフランジ14の裏面の被測定物33の表面からの浮き上がりを抑えることができるので、スポット溶接の巧拙に起因するゲージ率Ksのばらつきを、シースチューブ32の先端部32aを被測定物33へ固着しなかった場合に比べて、半分以下に抑えることができると共に、スポット溶接部34を均一に形成することにあまり神経を使わなくてすむので、作業効率も向上する。
【0024】
また、フランジ14の厚さを厚くしてその剛性を高めることなく、即ち、フランジ14に可撓性を持たせたまま、ひずみ伝達率の向上を図ることができるので、被測定物の挙動が拘束され難く、被測定物のひずみ測定に支障を来すおそれはない。また、フランジ14を被測定物33上に固着する際のスポット溶接のパワー(溶接電流)をあまり大きくする必要がないため、パワー上昇に起因する漏れ電流やスパークの発生を防止することができ、フランジ14やシースチューブ32、延いてはシースチューブ32内のひずみ感応抵抗体部12aを損傷するおそれが少なくなる。因みに、シースチューブ32の先端部32aの厚さ(0.1mm〜0.2mm)とフランジ14の厚さ(0.1mm)の合計が0.2mm〜0.3mm程度であれば、スポット溶接機のパワーは従来程度で良い。つまり、シースチューブ32の先端部32aの厚さは、フランジ14の厚さの1〜2倍程度とすれば良い。
また、本発明の上述の実施の形態によれば、シースチューブ32の先端部を加熱して溶かした状態で封止した後、シースチューブ32の先端部をプレスして薄く平坦状に延伸しているので、シースチューブ32の先端部の封止が確実に行え、プレスによる割れや変形などの損傷が生ぜず、良好な封止状態を得ることができる。
【0025】
以上、この実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施ができることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態では、本発明を、測温機能付きカプセル型ひずみゲージ、即ち、第1の接続部2において、熱電対を構成するアルメル線とクロメル線をリード部12baと12bbに接合する例を示したが、これに限定されるものではない。本発明は、測温機能が付いていないカプセル型ひずみゲージにも適用することができる。即ち、シースチューブ32を被測定物の温度の影響が受けない位置まで延長すると共に、シースチューブ32内のリード部12baおよび12bbも延長し、第1の接続部2の筒体2a内において、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12baおよび12bb(図示略)の各一端と、フレキシブルケーブル5の一端部から突出する2本の芯線(共に図示略)の各一端とを半田付けでそれぞれ接続するように構成しても良い。
【0026】
また、上述した実施の形態では、センサ部31を平面状を呈する被測定物33に固着する例を示したが、これに限定されず、曲面を有する被測定物に固着するように構成しても良い。また、上述した実施の形態では、本発明を、1本のシースチューブ32内に1本のひずみ感応抵抗体部12aが収容された1ゲージ法の高温用ひずみゲージに適用する例を示したが、これに限定されず、倒U字状に形成したアクティブゲージにスパイラル状に形成したダミーゲージを付加した2ゲージ法のひずみゲージに適用することができる。即ち、1本のシースチューブ内に2本以上のひずみ感応抵抗体部を収容するように構成しても良い。
また、上述した実施の形態では、本発明を、1ゲージ法2線式の高温用ひずみゲージに適用する例を示したが、これに限定されず、本発明は、1ゲージ法3線式の高温用ひずみゲージに適用しても良い。この場合、図1に示す第1の接続部2の筒体2a内において、例えば、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12ba(図示略)の一端と、MIケーブル3の一端部から突出する1本の金属線の一端とを接続すると共に、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12bb(図示略)の一端と、MIケーブル3の一端部から突出する2本の金属線の各一端とをそれぞれ接続する。
【0027】
また、第2の接続部4の筒体4a内において、MIケーブル3の他端部から突出する3本の金属線の各他端と、常温型のフレキシブルケーブル5の一端部から突出する3本の芯線(共に図示略)の各一端とを半田付けでそれぞれ接続する。
また、本発明は、カプセル型ひずみゲージの小型化を実現する過程で生じた問題を解決すべくなされているため、上述した実施の形態において、本発明を小型なカプセル型ひずみゲージに適用する例を示したが、これに限定されるものではない。即ち、一般的な大きさのカプセル型ひずみゲージにおいても、シースチューブの先端部の厚さをフランジの厚さとほぼ等しくし、且つ、シースチューブの先端部の平坦部をフランジと共に被測定物にスポット溶接により強固に直接固着することにより、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksを増大させることができる。
【0028】
また、上述した実施の形態では、フランジ14の厚さについては従来と同様であること(0.1mm)を前提として説明したが、これに限定されるものではない。上記した「発明が解決しようとする課題」で言及したように、本発明者らは、フランジ14とシースチューブ11との剛性の差を小さくするために、フランジ14を従来より厚くしてフランジ14の剛性を高めることを試みている。フランジ14の厚さを厚くするという発想は、従来なかったものである。シースチューブの先端部の厚さをフランジの厚さとほぼ等しくし、且つ、シースチューブの先端部を平坦状としてフランジと共に被測定物にスポット溶接部により強固に直接固着することと、フランジ14の厚さを厚くすることを組み合わせることにより、これらの相乗効果により、カプセル型ひずみゲージのひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksを大幅に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係るカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図である。
【図2】図1のセンサ部のさらに大きな拡大断面図である。
【図3】図1のセンサ部および第1の接続部の拡大斜視図である。
【図4】図1のセンサ部のさらに大きな拡大側面図である。
【図5】図1のセンサ部の被測定物への取付状態の外観構成を示すさらに大きな拡大平面図である。
【図6】この図の(a)、(b)は、図1のセンサ部を構成するシースチューブの先端部をスポット溶接により被測定物へ固着した場合と固着しなかった場合のセンサ部の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化特性の一例を示す図である。
【図7】従来のカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図である。
【図8】図7のセンサ部のさらに大きな拡大断面図である。
【図9】図7のセンサ部のさらに大きな拡大側面図である。
【図10】図7のセンサ部の被測定物への取付状態の外観構成を示す拡大平面図である。
【図11】この図の(a)および(b)は、図7のセンサ部の被測定物への当初の取付状態を示す拡大正面図および拡大側面図である。
【図12】この図の(a)は、(b)のA−A線矢視方向断面図、この図の(b)は、図7のセンサ部の挙動を示すさらに大きな拡大側面図である。
【図13】この図の(a)および(b)は、図7のセンサ部を構成するフランジの厚さを変更した場合のセンサ部の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
2 第1の接続部
2a,4a 筒体
3 MIケーブル
4 第2の接続部
5 フレキシブルケーブル
12a ひずみ感応抵抗体部
12ba,12bb リード部
13 絶縁物
14 フランジ
31 センサ部
32 シースチューブ
32a 先端部
32b 基端部
33 被測定物
34,34a スポット溶接部
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のひずみ測定に用いられるひずみゲージ、ひずみゲージの製造方法およびひずみゲージを被測定物に取り付けるひずみゲージの取付方法に関し、詳しくは、カプセル型ひずみゲージ、その製造方法およびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ひずみを測定すべき被測定物には各種各様のものがあるが、それに対応してひずみゲージの種類も多種多様であり、またひずみゲージを被測定物に取り付ける取付方法にも様々なものがある。エンジンやタービン、原子炉、ロケットなどの構成部品を被測定物としてひずみを測定する場合、被測定物の表面温度が容易に200℃を越えることが多いため、いわゆる高温用ひずみゲージが用いられる。高温用ひずみゲージは、被測定物への取付方法により、従来から、接着型、溶接型、溶射型等に分類されている。このうち、溶接型高温用ひずみゲージは、高温環境に耐え得ることはもとより、比較的作業性が良い、取付のための費用が安いなどの利点がある。
図7は、本出願人が先に提案した従来のカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図、図8は、図7に示すセンサ部のさらに大きな拡大断面図、図9は、図7に示すセンサ部のさらに大きな拡大側面図である。このカプセル型ひずみゲージは、1ゲージ法の溶接型高温用であり、センサ部1と、第1の接続部2と、MIケーブル(mineral insulated metal sheathed cable)3と、第2の接続部4と、フレキシブルケーブル5とから構成されている。センサ部1は、図7〜図9に示すように、シースチューブ11と、ひずみ感応抵抗体部12aと、リード部12baと、リード部12bbと、絶縁物13と、フランジ14とから構成されている。
【0003】
シースチューブ11は、耐食性と耐熱性に優れたNCF600(JIS記号)等の耐熱性合金から構成され、一体に形成された大径部11aと小径部11bとからなり、大径部11aは、先端部11abが封じられている。小径部11bの基端部は、第1の接続部2に接続されている。ひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baおよび12bbは、耐熱性特殊合金からなる1本の線材の所定長さ部分を加工によりその径を小さくして抵抗値を高めた部分を倒U字状に折り曲げてひずみ感応抵抗体部12aとし、加工されずにその径がもとのままの両端部近傍をリード部12baおよび12bbとしている。ひずみ感応抵抗体部12aは、ひずみに感応してひずみ量変化を抵抗値変化に変換するものであり、リード部12baおよび12bbの各一部と共に、シースチューブ11の大径部11a内に固く充填された酸化マグネシウム(MgO)の粉体からなる耐熱性の絶縁物13によって大径部11a内に固く保持されている。内部にひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baの一部、リード部12bbの一部および絶縁物13がそれぞれ収容された大径部11aは、先端部11abから所定長さの部分までが、薄肉で細長い矩形状を呈したフランジ14の長手方向に沿う略中央に、溶接により固着されている。フランジ14は、耐食性と耐熱性に優れたNCF600(JIS記号)からなる。
【0004】
第1の接続部2では、例えば、上記NCF600からなる筒体2a内において、シースチューブ11の小径部11bの端部から突出するリード部12baおよび12bb(図8参照)の各一端と、MIケーブル3の一端部から突出する2本の金属線(この従来例の場合、熱電対を構成するアルメル線とクロメル線)の各一端とがそれぞれ接続されている。また、第2の接続部4では、筒体4a内において、MIケーブル3の他端部から突出する2本の金属線の各他端と、常温型のフレキシブルケーブル5の一端部から突出する2本の芯線(共に図示略)の各一端とが半田付けでそれぞれ接続されている。以上説明した構成を有するカプセル型ひずみゲージは、図10に示すように、フランジ14が被測定物21上にスポット溶接により固着されることにより、センサ部1が被測定物21に複数のスポット溶接部22により強固に固着される。そして、被測定物21のひずみは、フランジ14、シースチューブ11の大径部11aおよび絶縁物13を介してひずみ感応抵抗体部12aに伝達される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特許第3118621号公報([0027]〜[0039]、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、被測定物の小型化や構造微細化・複雑化の傾向、あるいは、被測定物の局所におけるひずみ測定の要望の高まりなど様々な要因から、ひずみゲージの小型化が望まれているため、上記カプセル型ひずみゲージにおいても小型化する必要がある。ところが、カプセル型ひずみゲージを小型化すると、ひずみ伝達率が極端に低く(60%程度)なってしまう。この結果、被測定物に固着されたひずみゲージの感度であるゲージ率Ksが低下すると共に、ゲージ率Ksが個々に大きくばらつく、という新たな問題が派生した。このひずみ伝達率低下を招く原因について本発明者らが鋭意解明した結果、以下に示すことが判明した。第1に、上記センサ部1の裏面は、被測定物21への取付時に、図11(a)および(b)に示すように、被測定物21の表面と接触しているが、被測定物21が変形すると、上記センサ部1の裏面のうち、スポット溶接で固着されていないシースチューブ11の先端部11ab付近直下のフランジ14の裏面部分は、図12(a)および(b)に誇張して示すように、被測定物21の表面から離れて浮き上がり、隙間23が生じてしまう。これは以下に示す理由によると考えられる。
【0007】
つまり、センサ部1を被測定物21上にスポット溶接により固着可能とするために、フランジ14が薄板状を呈しており、フランジ14の剛性はシースチューブ11の剛性に比べて小さく、もともとひずみ伝達率は最大でも90%程度であった。このようなカプセル型ひずみゲージを小型化した場合、ひずみ感応抵抗体部12aの小型化に伴って受感領域が狭小化すると共に、ひずみ感応抵抗体部12aは相対的に剛性が特に高いシースチューブ11の先端部11abにより接近して保持されることになり、フランジ14とシースチューブ11との剛性の違いの影響がさらに大きくなるからと推測される。また、カプセル型ひずみゲージを小型化した場合、フランジ14の長さが短くなってフランジ14を被測定物21上にスポット溶接により固着する面積もスポット溶接部22の個数も共に減少するため、スポット溶接の巧拙がゲージ率Ksに大きな影響を及ぼす。
そこで、本発明者らは、フランジ14とシースチューブ11との剛性の差を小さくするために、フランジ14を従来より厚くしてフランジ14の剛性を高めることを試みた。即ち、本発明者らは、以下に示すように、フランジ14の厚さを0.1mm、0.2mm、1mmと変更して、上記センサ部1の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化を測定する実験を行った。
【0008】
図13に実験結果の一例を示す。図13(a)の横軸における距離と図13(b)のセンサ部1の長さの縮尺は、一致(対応)している。図13(a)において、曲線aは、フランジ14の厚さを0.1mmとした場合の特性、曲線bは、フランジ14の厚さを0.2mmとした場合の特性、曲線cは、フランジ14の厚さを1mmとした場合の特性を示している。この図を参照すれば、フランジ14の厚さを従来の0.1mmからその2倍の0.2mmとした場合には、センサ部1の端部からの距離に対するひずみ伝達率は全体的に大きくなっていることが分かる。しかし、フランジ14の厚さを従来の0.1mmからその10倍の1mmとした場合には、センサ部1の端部からの距離に対するひずみ伝達率は逆に全体的に小さくなってしまう。このことから、フランジ14を従来より厚くしてフランジ14の剛性を高めてフランジ14とシースチューブ11との剛性の差を小さくしたとしても、必ずしもひずみ伝達率の向上にはつながらないことが判明した。その一因は、フランジ14の厚さを厚くしてその剛性を高めた場合、被測定物の剛性がセンサ部1を取り付けた部分だけ高まるため、被測定物の挙動が拘束され、被測定物のひずみ測定に支障を来したものと考えられる。
【0009】
さらに、フランジ14の厚さを厚くした場合、フランジ14を被測定物21上に固着する際のスポット溶接のパワーを大きくする必要があるが、溶接時の電流がフランジ14のスポット溶接部22以外の部分やシースチューブ11表面にも流れたり、スパークが発生したりすることにより、フランジ14やシースチューブ11、場合によってはシースチューブ11内のひずみ感応抵抗体部12aまで損傷を及ぼしてしまうおそれがあるという問題も発生する。したがって、フランジ14の厚さを厚くするにも限界がある。
そこで、本発明者らは、フランジの厚さを変えずにひずみ伝達率を向上させることを鋭意探求した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、ひずみ伝達率を低下させることなく小型化を実現すると共に、スポット溶接の巧拙に起因するゲージ率Ksのばらつき発生を抑制し得るカプセル型ひずみゲージ、カプセル型ひずみゲージの製造方法およびカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することを目的としている。
【0010】
本発明の請求項1の目的は、ひずみ伝達率の向上を実現でき、特に、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を図り得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙にも拘わらずゲージ率Ksのばらつきが極めて小さいカプセル型ひずみゲージを提供することにある。
本発明の請求項2の目的は、ひずみ伝達率の向上を実現でき、特に、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を図り得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙にも拘わらずゲージ率Ksのばらつきが極めて小さいカプセル型ひずみゲージの製造方法を提供することにある。
本発明の請求項3の目的は、特に、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を忠実にひずみ感応抵抗体部に伝達し得るカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することにある。
本発明の請求項4の目的は、特に、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を忠実にひずみ感応抵抗体部に伝達し得るカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージは、上述した目的を達成するために、
先端部が封じられ且つ平坦部が形成されたシースチューブ内に充填された絶縁物からなる粉体により前記シースチューブ内に保持されたひずみ感応抵抗体部を有するセンサ部と、
薄肉で細長い矩形状を呈し、長手方向の中心に沿って前記シースチューブが固着されたフランジとを有し、
前記シースチューブの前記平坦部は、前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さに形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージの製造方法は、上述した目的を達成するために、
シースチューブの先端部を溶接により封止する封止工程と、
前記シースチューブの前記先端部をプレスしてその厚みを前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さにまで平坦状に延伸するプレス工程と、
薄肉で細長い矩形状を呈するフランジの長手方向の中心に添って電子ビーム溶接により前記シースチューブを固着するシースチューブ溶接工程と、
前記シースチューブ内にひずみ感応抵抗体部を挿入し、前記ひずみ感応抵抗体部が前記シースチューブの内周面に接触しないように保持した状態で、前記シースチューブ内に絶縁物からなる粉体を充填するひずみ感応抵抗体部装填工程と
を有することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージの取付方法は、上述した目的を達成するために、
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項1に記載のカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴としている。
請求項4に記載した本発明に係るカプセル型ひずみゲージの取付方法は、上述した目的を達成するために、
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項2に記載のカプセル型ひずみゲージの製造方法により製造されたカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの低下をもたらすことなく小型化を可能とすると共に、スポット溶接の巧拙に起因するゲージ率Ksのばらつきの発生を抑制可能とするカプセル型ひずみゲージ、カプセル型ひずみゲージの製造方法およびカプセル型ひずみゲージの取付方法を提供することができる。
すなわち、本発明の請求項1のカプセル型ひずみゲージによれば、先端部が封じられ且つ平坦部が形成されたシースチューブ内に充填された絶縁物からなる粉体により前記シースチューブ内に保持されたひずみ感応抵抗体部を有するセンサ部と、薄肉で細長い矩形状を呈し、長手方向の中心に沿って前記シースチューブが固着されたフランジとを有し、前記シースチューブの前記平坦部は、前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さに形成されていることにより、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの向上を実現し得、また、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を実現し得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙に拘わらず、ゲージ率Ksのばらつきを極めて小さく抑えることが可能となる。さらに、フランジの厚さを従来と同様に構成できるので、被測定物に固着させても被測定物の挙動を拘束することはなく、溶接電流による各構成要素の損傷を回避することができる。
【0015】
本発明の請求項2のカプセル型ひずみゲージの製造方法によれば、シースチューブの先端部を溶接により封止する封止工程と、前記シースチューブの前記先端部をプレスしてその厚みを前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さにまで平坦状に延伸するプレス工程と、薄肉で細長い矩形状を呈するフランジの長手方向の中心に添って電子ビーム溶接により前記シースチューブを固着するシースチューブ溶接工程と、前記シースチューブ内にひずみ感応抵抗体部を挿入し、前記ひずみ感応抵抗体部が前記シースチューブの内周面に接触しないように保持した状態で、前記シースチューブ内に絶縁物からなる粉体を充填するひずみ感応抵抗体部装填工程とを有することにより、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの向上を実現し得、また、ひずみ伝達率の低下をもたらすことなく小型化を実現し得ると共に、被測定物に固着するための溶接の巧拙に拘わらず、ゲージ率Ksのばらつきを極めて小さく抑えることが可能となる。さらに、フランジの厚さを従来と同様に構成できるので、被測定物に固着させても被測定物の挙動を拘束することはなく、溶接電流による各構成要素の損傷を回避することができる。
【0016】
本発明の請求項3のカプセル型ひずみゲージの取付方法によれば、前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項1に記載のカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることにより、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を効率良くひずみ感応抵抗体部に伝達することができる。
本発明の請求項4のカプセル型ひずみゲージの取付方法によれば、前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項2に記載のカプセル型ひずみゲージの製造方法により製造されたカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることにより、カプセル型ひずみゲージを構成するシースチューブの先端部の被測定物の表面からの浮き上がりを抑制し、被測定物の挙動を効率良くひずみ感応抵抗体部に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態に基づき、図面を参照して本発明のカプセル型ひずみゲージを詳細に説明する。
図1は、本発明の一つの実施の形態に係るカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図、図2は、図1に示すセンサ部のさらに大きな拡大断面図、図3は、図1に示すセンサ部および第1の接続部の拡大斜視図、図4は、図1に示すセンサ部のさらに大きな拡大側面図、図5は、図1に示すセンサ部の被測定物への取付状態の外観構成を示すさらに大きな拡大平面図である。図1〜図5において、図7〜図10の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その詳細な説明を省略する。このカプセル型ひずみゲージは、1ゲージ法の溶接型高温用であり、狭義には、センサ部31を指称するが、広義には、センサ部31と、第1の接続部2と、MIケーブル3と、第2の接続部4と、フレキシブルケーブル5とを含んで構成されている。センサ部31は、図1〜図4に示すように、シースチューブ32と、ひずみ感応抵抗体部12aと、リード部12baと、リード部12bbと、絶縁物13と、フランジ14とから構成されている。
【0018】
シースチューブ32は、耐食性と耐熱性に優れたNCF600(JIS記号)等の特殊合金から構成され、先端部32aが封止されていると共に、基端部32bは、第1の接続部2に接続されている。図4に示すシースチューブ32の先端部32aは、図9に示すシースチューブ11の大径部11aの先端部11abの厚さ(約0.4mm)と比較して分かるように、その厚さが薄く(0.1mm〜0.2mm)形成されている。ひずみ感応抵抗体部12aは、リード部12baおよび12bbの各一部と共に、シースチューブ32内に固く充填された酸化マグネシウム(MgO)の粉体からなる耐熱性の絶縁物13によってシースチューブ32内に固く保持されている。シースチューブ32は、内部にひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baの一部、リード部12bbの一部および絶縁物13がそれぞれ収容された先端部32aから所定長さの部分までが、薄肉で細長い矩形状を呈したフランジ14の長手方向に沿う(添う)略中央に、溶接により一体的に固着されている。第1の接続部2では、筒体2a内において、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12baおよび12bb(図示略)の各一端と、MIケーブル3の一端部から突出する2本の金属線(例えば、熱電対を構成するアルメル線とクロメル線)の各一端とがそれぞれ接続されている。
【0019】
次に、以上説明した構成を有するカプセル型ひずみゲージのセンサ部の製造方法について説明する。
(1) 円筒状(あるいはパイプ状)を呈しているシースチューブ32の先端部を溶接により、完全に封止する。この工程を、「封止工程」と称する。
(2) シースチューブ32の先端部をプレスしてその厚さを0.1mm〜0.2mm程度まで平坦状に薄く延伸する。この工程を、「プレス工程」と称する。
【0020】
(3) シースチューブ32の裏面であって、シースチューブ32の先端部の薄く延び広がった平坦部分からシースチューブ32の長手方向の所定長さに至るまでの部分を、フランジ14の長手方向の中心に沿う(添う)ように位置付けた上で、フランジ14を電子ビーム溶接によりシースチューブ32の裏面に固着する。この工程を、「シースチューブ溶接工程」と称する。
(4) シースチューブ32内にひずみ感応抵抗体部12a、リード部12baの一部、リード部12bbの一部を挿入し、ひずみ感応抵抗体部12aの先端部がシースチューブ32の先端部32aの近傍に位置し、且つ、上記ひずみ感応抵抗体部12a等がシースチューブ32内周面に接触しないように保持した状態で、シースチューブ32内に絶縁物13を、ひずみ伝達率が高まるように固く充填する。この工程を、「ひずみ感応抵抗体部装填工程」と称する。
【0021】
以上説明した構成を有するカプセル型ひずみゲージは、図5に示すように、先ず、フランジ14のシースチューブ32の両側面近傍が被測定物33上に適宜間隔おきにスポット溶接により固着されることにより、センサ部31が被測定物33に複数のスポット溶接部34により強固に固着される。さらに、この実施の形態では、図5と図10とを比較して分かるように、シースチューブ32の先端部32aの平坦部もフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に直接固着される。先端部32aにおけるスポット溶接部34aの数は、少なくとも1個、可能ならば、2個以上の複数とすることが望ましい。
図6は、図1のセンサ部31を構成するシースチューブ32の先端部32aをスポット溶接によりフランジ14と共に被測定物33に固着した場合とシースチューブ32の先端部32aをスポット溶接によりフランジ14と共に被測定物33に固着しなかった場合のセンサ部31の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化特性の一例を示す図である。図6(a)の横軸における距離と図6(b)のセンサ部31の長さの縮尺は、一致(対応)している。
【0022】
図6(a)において、曲線aは、図5に示すようにシースチューブ32の先端部32aもフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に固着した場合の特性、曲線bは、シースチューブ32の先端部32aをフランジ14と共に被測定物33に固着しなかった場合の特性を示している。この図を参照すれば、シースチューブ32の先端部32aをフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に固着した場合には、センサ部31の先端部からの距離に対するひずみ伝達率は全体的に大きくなっていることが分かる。これは、被測定物33への取付当初あるいは、被測定物が変形しない状態のときは、被測定物33の表面と接触していた上記センサ部31の裏面は、被測定物33が変形すること、換言すれば、ひずみが生じることにより、上記センサ部31の裏面のうち、特に、スポット溶接で固着されていないシースチューブ32直下のフランジ14の裏面は、被測定物33の表面から離れて浮き上がろうとするが、シースチューブ32の先端部32aおよび両側面近傍のフランジ14が、共に被測定物33にスポット溶接部34aおよび34により強固に固着されているので、被測定物33の挙動がフランジ14を介してシースチューブ32内のひずみ感応抵抗体部12aに効率良く伝達するようになったためと考えられる。
【0023】
このように、本発明の上述の実施の形態によれば、シースチューブ32の先端部32aの厚さをフランジ14の厚さとほぼ等しくし、且つ、シースチューブ32の先端部32aをフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に直接固着している(シースチューブ先端部のフランジ化)。したがって、カプセル型ひずみゲージを小型化しても、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksの低下を軽減することができる。換言すれば、同じ大きさの従来のカプセル型ひずみゲージに比べ、ひずみ伝達率を大幅に増大させることができる。実験によれば、シースチューブ32の先端部32aをスポット溶接により被測定物33へ固着した場合は、ゲージ率Ksが約1.9であり、固着しなかった場合に比べて、10〜20%程度の上昇があった。また、カプセル型ひずみゲージを小型化した場合、フランジ14の長さが短くなってフランジ14を被測定物33上にスポット溶接により固着する面積も減少し、スポット点数が減り、スポット溶接もしにくくなるが、仮に、センサ部31を構成するシースチューブ32の両側面近傍のフランジ14へのスポット溶接がうまくいかず、スポット溶接部34が不均一に小数形成された場合であっても、シースチューブ32の先端部32aがフランジ14と共に被測定物33にスポット溶接部34aにより強固に固着されていれば、シースチューブ32直下のフランジ14の裏面の被測定物33の表面からの浮き上がりを抑えることができるので、スポット溶接の巧拙に起因するゲージ率Ksのばらつきを、シースチューブ32の先端部32aを被測定物33へ固着しなかった場合に比べて、半分以下に抑えることができると共に、スポット溶接部34を均一に形成することにあまり神経を使わなくてすむので、作業効率も向上する。
【0024】
また、フランジ14の厚さを厚くしてその剛性を高めることなく、即ち、フランジ14に可撓性を持たせたまま、ひずみ伝達率の向上を図ることができるので、被測定物の挙動が拘束され難く、被測定物のひずみ測定に支障を来すおそれはない。また、フランジ14を被測定物33上に固着する際のスポット溶接のパワー(溶接電流)をあまり大きくする必要がないため、パワー上昇に起因する漏れ電流やスパークの発生を防止することができ、フランジ14やシースチューブ32、延いてはシースチューブ32内のひずみ感応抵抗体部12aを損傷するおそれが少なくなる。因みに、シースチューブ32の先端部32aの厚さ(0.1mm〜0.2mm)とフランジ14の厚さ(0.1mm)の合計が0.2mm〜0.3mm程度であれば、スポット溶接機のパワーは従来程度で良い。つまり、シースチューブ32の先端部32aの厚さは、フランジ14の厚さの1〜2倍程度とすれば良い。
また、本発明の上述の実施の形態によれば、シースチューブ32の先端部を加熱して溶かした状態で封止した後、シースチューブ32の先端部をプレスして薄く平坦状に延伸しているので、シースチューブ32の先端部の封止が確実に行え、プレスによる割れや変形などの損傷が生ぜず、良好な封止状態を得ることができる。
【0025】
以上、この実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施ができることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態では、本発明を、測温機能付きカプセル型ひずみゲージ、即ち、第1の接続部2において、熱電対を構成するアルメル線とクロメル線をリード部12baと12bbに接合する例を示したが、これに限定されるものではない。本発明は、測温機能が付いていないカプセル型ひずみゲージにも適用することができる。即ち、シースチューブ32を被測定物の温度の影響が受けない位置まで延長すると共に、シースチューブ32内のリード部12baおよび12bbも延長し、第1の接続部2の筒体2a内において、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12baおよび12bb(図示略)の各一端と、フレキシブルケーブル5の一端部から突出する2本の芯線(共に図示略)の各一端とを半田付けでそれぞれ接続するように構成しても良い。
【0026】
また、上述した実施の形態では、センサ部31を平面状を呈する被測定物33に固着する例を示したが、これに限定されず、曲面を有する被測定物に固着するように構成しても良い。また、上述した実施の形態では、本発明を、1本のシースチューブ32内に1本のひずみ感応抵抗体部12aが収容された1ゲージ法の高温用ひずみゲージに適用する例を示したが、これに限定されず、倒U字状に形成したアクティブゲージにスパイラル状に形成したダミーゲージを付加した2ゲージ法のひずみゲージに適用することができる。即ち、1本のシースチューブ内に2本以上のひずみ感応抵抗体部を収容するように構成しても良い。
また、上述した実施の形態では、本発明を、1ゲージ法2線式の高温用ひずみゲージに適用する例を示したが、これに限定されず、本発明は、1ゲージ法3線式の高温用ひずみゲージに適用しても良い。この場合、図1に示す第1の接続部2の筒体2a内において、例えば、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12ba(図示略)の一端と、MIケーブル3の一端部から突出する1本の金属線の一端とを接続すると共に、シースチューブ32の基端部32bから突出するリード部12bb(図示略)の一端と、MIケーブル3の一端部から突出する2本の金属線の各一端とをそれぞれ接続する。
【0027】
また、第2の接続部4の筒体4a内において、MIケーブル3の他端部から突出する3本の金属線の各他端と、常温型のフレキシブルケーブル5の一端部から突出する3本の芯線(共に図示略)の各一端とを半田付けでそれぞれ接続する。
また、本発明は、カプセル型ひずみゲージの小型化を実現する過程で生じた問題を解決すべくなされているため、上述した実施の形態において、本発明を小型なカプセル型ひずみゲージに適用する例を示したが、これに限定されるものではない。即ち、一般的な大きさのカプセル型ひずみゲージにおいても、シースチューブの先端部の厚さをフランジの厚さとほぼ等しくし、且つ、シースチューブの先端部の平坦部をフランジと共に被測定物にスポット溶接により強固に直接固着することにより、ひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksを増大させることができる。
【0028】
また、上述した実施の形態では、フランジ14の厚さについては従来と同様であること(0.1mm)を前提として説明したが、これに限定されるものではない。上記した「発明が解決しようとする課題」で言及したように、本発明者らは、フランジ14とシースチューブ11との剛性の差を小さくするために、フランジ14を従来より厚くしてフランジ14の剛性を高めることを試みている。フランジ14の厚さを厚くするという発想は、従来なかったものである。シースチューブの先端部の厚さをフランジの厚さとほぼ等しくし、且つ、シースチューブの先端部を平坦状としてフランジと共に被測定物にスポット溶接部により強固に直接固着することと、フランジ14の厚さを厚くすることを組み合わせることにより、これらの相乗効果により、カプセル型ひずみゲージのひずみ伝達率延いてはゲージ率Ksを大幅に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係るカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図である。
【図2】図1のセンサ部のさらに大きな拡大断面図である。
【図3】図1のセンサ部および第1の接続部の拡大斜視図である。
【図4】図1のセンサ部のさらに大きな拡大側面図である。
【図5】図1のセンサ部の被測定物への取付状態の外観構成を示すさらに大きな拡大平面図である。
【図6】この図の(a)、(b)は、図1のセンサ部を構成するシースチューブの先端部をスポット溶接により被測定物へ固着した場合と固着しなかった場合のセンサ部の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化特性の一例を示す図である。
【図7】従来のカプセル型ひずみゲージの外観構成を示す拡大平面図である。
【図8】図7のセンサ部のさらに大きな拡大断面図である。
【図9】図7のセンサ部のさらに大きな拡大側面図である。
【図10】図7のセンサ部の被測定物への取付状態の外観構成を示す拡大平面図である。
【図11】この図の(a)および(b)は、図7のセンサ部の被測定物への当初の取付状態を示す拡大正面図および拡大側面図である。
【図12】この図の(a)は、(b)のA−A線矢視方向断面図、この図の(b)は、図7のセンサ部の挙動を示すさらに大きな拡大側面図である。
【図13】この図の(a)および(b)は、図7のセンサ部を構成するフランジの厚さを変更した場合のセンサ部の端部からの距離に対するひずみ伝達率の変化特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
2 第1の接続部
2a,4a 筒体
3 MIケーブル
4 第2の接続部
5 フレキシブルケーブル
12a ひずみ感応抵抗体部
12ba,12bb リード部
13 絶縁物
14 フランジ
31 センサ部
32 シースチューブ
32a 先端部
32b 基端部
33 被測定物
34,34a スポット溶接部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が封じられ且つ平坦部が形成されたシースチューブ内に充填された絶縁物からなる粉体により前記シースチューブ内に保持されたひずみ感応抵抗体部を有するセンサ部と、
薄肉で細長い矩形状を呈し、長手方向の中心に沿って前記シースチューブが固着されたフランジとを有し、
前記シースチューブの前記平坦部は、前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さに形成されている
ことを特徴とするカプセル型ひずみゲージ。
【請求項2】
シースチューブの先端部を溶接により封止する封止工程と、
前記シースチューブの前記先端部をプレスしてその厚みを前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さにまで平坦状に延伸するプレス工程と、
薄肉で細長い矩形状を呈するフランジの長手方向の中心に添って電子ビーム溶接により前記シースチューブと固着するシースチューブ溶接工程と、
前記シースチューブ内にひずみ感応抵抗体部を挿入し、前記ひずみ感応抵抗体部が前記シースチューブの内周面に接触しないように保持した状態で、前記シースチューブ内に絶縁物からなる粉体を充填するひずみ感応抵抗体部装填工程と
を有することを特徴とするカプセル型ひずみゲージの製造方法。
【請求項3】
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項1に記載のカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴とするカプセル型ひずみゲージの取付方法。
【請求項4】
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項2に記載のカプセル型ひずみゲージの製造方法により製造されたカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴とするカプセル型ひずみゲージの取付方法。
【請求項1】
先端部が封じられ且つ平坦部が形成されたシースチューブ内に充填された絶縁物からなる粉体により前記シースチューブ内に保持されたひずみ感応抵抗体部を有するセンサ部と、
薄肉で細長い矩形状を呈し、長手方向の中心に沿って前記シースチューブが固着されたフランジとを有し、
前記シースチューブの前記平坦部は、前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さに形成されている
ことを特徴とするカプセル型ひずみゲージ。
【請求項2】
シースチューブの先端部を溶接により封止する封止工程と、
前記シースチューブの前記先端部をプレスしてその厚みを前記フランジと共に被測定物上に溶接により固着可能な厚さにまで平坦状に延伸するプレス工程と、
薄肉で細長い矩形状を呈するフランジの長手方向の中心に添って電子ビーム溶接により前記シースチューブと固着するシースチューブ溶接工程と、
前記シースチューブ内にひずみ感応抵抗体部を挿入し、前記ひずみ感応抵抗体部が前記シースチューブの内周面に接触しないように保持した状態で、前記シースチューブ内に絶縁物からなる粉体を充填するひずみ感応抵抗体部装填工程と
を有することを特徴とするカプセル型ひずみゲージの製造方法。
【請求項3】
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項1に記載のカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴とするカプセル型ひずみゲージの取付方法。
【請求項4】
前記シースチューブの両側面近傍の前記フランジを被測定物上に溶接により固着すると共に、前記シースチューブの前記先端部の平坦部を前記フランジと共に前記被測定物に溶接により直接固着することにより、請求項2に記載のカプセル型ひずみゲージの製造方法により製造されたカプセル型ひずみゲージを前記被測定物に取り付けることを特徴とするカプセル型ひずみゲージの取付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−78236(P2006−78236A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260345(P2004−260345)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【Fターム(参考)】
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