説明

カム装置

【課題】各評価要素において一長一短のあるローラギヤカム機構とバレルカム機構に較べ中間的な評価が得られるとともに、収容許容空間に対して柔軟に対応し得るカム機構の実現。
【解決手段】タレット4にその回動軸(出力軸)5を軸とする円錐台部分6を設け、この円錐台部分6の傾斜面にカムフォロア3を立設し、入力カム1の入力軸2方向をタレット4の出力軸方向と直交させ且つ入力カム1のカム溝7或いはリブ9がカムフォロア3と嵌合するように配置する。こうすることにより、停留時圧力角、最大圧力角はローラギヤカムとバレルカムの中間となり、予圧をかけることも可能であり、前記傾斜の角度を変えることによりY方向とZ方向の寸法比を変えられ収容許容空間に合わせ易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インデックス機構として用いられるカム機構のうち立体カム機構の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なインデックス機構のうち立体カム機構としてはローラギヤカム機構とバレルカム機構等がある。
図2の(a)は従来のローラギヤカム機構の側面概略図である。入力カム1の入力軸2にはモータからの回転駆動力が直接或いは駆動機構を介して加えられる。この回転は一方向連続回転である。
入力カム1は入力軸方向に所定の厚さ寸法を有しており、その円周表面には円周に沿いつつ厚さ寸法の範囲内で軸方向に捩れを有するカム溝7等が設けられており、このカム溝7に、タレット4に設けられたカムフォロア3が嵌合している。カムフォロア3は図2の場合はストレートローラとなっているが、テーパローラやボールの場合もある。この嵌合状態で入力カム1が回転するとカム溝7の捩れに応じてカムフォロア3が動くのでタレット4も出力軸5を中心にしてセクター回動或いは一方向への間欠回動をすることになる。
【0003】
図2の(b)はバレルカム機構の側面概略図である。
バレルカム機構の場合には、出力軸5を中心に回動するタレット4の下面にカムフォロア3が設けられており、このカムフォロア3が、出力軸方向と軸方向が直交する入力カム1のカム溝7に嵌合するようになっている。
入力カム1は、(a)のローラギヤカム機構の場合と同様に、入力軸方向に所定の厚さ寸法を有しており、カム溝7等はその円周表面に沿いつつ軸方向に捩れるように設けられているので、入力カム1の回転によりカムフォロア3にカム溝7の側壁から力が加わり、タレット4が出力軸5を中心にセクター回動或いは一方向への間欠回動をすることになる。
【0004】
図3の(a)はローラギヤカム機構の一例の構造図である。これは、図2の(a)を上から又は下から見た場合に相当する平面図である。
図3の(b)はバレルカム機構の一例の構造図である。これは図2の(b)を左斜め上から見下ろした場合に相当する斜視図である。
このような構造により、入力カム1を一方向に連続回転させるとタレット4が出力軸5を中心としてセクター回動をしたり、一方向に間欠回動をすることになる(例えば非特許文献1、2参照)。
【非特許文献1】日本カム工業会編、「カム機構ハンドブック」、初版、日刊工業新聞社、2001年12月25日、176〜178頁
【非特許文献2】牧野洋著、「自動機械機構学」、初版、日刊工業新聞社、昭和51年6月1日、290〜304頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のローラギヤカム機構とバレルカム機構においては、いくつかの機構評価要素において優劣がある。
その評価要素として、まず、停留時圧力角と最大圧力角がある。
圧力角とは、カムの表面がカムフォロアの表面に接してカムフォロアに押圧力を加える際の押圧力の向き即ちカム表面とカムフォロアとの接点における共通法線の向きとカムフォロアの運動の向きとのなす角である。通常、記号ψで表している。従って、圧力角ψがゼロである場合と言うのは押圧力の向きとカムフォロアの運動の向きが一致していると言うことであるから、カムからの押圧力Fが最も有効に100%カムフォロアに作用することになる。
【0006】
圧力角ψが大きくなると、押圧力Fのうちカムフォロアの運動向きに作用する力fは、Fcosψとなって減少して行きψ=90度でカムフォロアの運動向きに対しては力がかからなくなる。
従って、カム機構においては圧力角が小であるほど望ましいということになる。
このような圧力角について、停留時圧力角というのは、入力カムの連続回転に対して、カムフォロアの付いたタレットが停止状態(これを停留時と言う)、回動状態(これを位置決め時と言う)を繰り返す場合、停止状態における圧力角である。最大圧力角というのは、タレットの回動状態において圧力角が、時々刻々変化して行く過程で最も大きい圧力角のことである。
【0007】
これらについてローラギヤカムとバレルカムを比較すると、停留時圧力角は、ローラギヤカムでは図4の(a)に示すように入力カム1からカムフォロア3に加える力Fの向きと、カムフォロア3の運動の向きMとは同じであるので0度であり、バレルカムでは図4の(b)に示すように、入力カム1からカムフォロア3に加えられる力Fの方向とカムフォロア3の運動方向Mとは異なっておりその間には0度ではない或る角度ψを有する。
【0008】
最大圧力角ではローラギヤカムの方がバレルカムよりも大きい。
その理由は、以下の通りである。
タレットの直径、入力カムの直径、カムフォロアの数、タレットの回動・停留等の回動態様およびセクタ回動角度等が同等のローラギヤカム機構とバレルカム機構では圧力角の変化範囲の幅は大体同じである。
一方、ローラギヤカム機構においては圧力角はカムフォロアの運動方向に対して一方側で変化するのに対して、バレルカム機構では図4の(c)に示すようにカムフォロア3をカム押圧面で同じ方向に押圧力Fで押して行ってもカムフォロア3の運動自体がタレットの回転による円周方向に沿っているため、一番下の段階ではカムフォロア3の運動の向きは力Fよりも右の方を向いているが、中間の段階では力Fの向きとなり、一番上の段階では力Fの左の方を向いている。
【0009】
このように、カムフォロア3の運動の向きは力Fの方向の右側方向と左側方向に振り分けられている。
従って、圧力角の変化範囲が同じであっても左右に振り分けられることにより圧力角の最大角度は、力Fの片側だけで変化する場合の圧力角の最大角度に較べて小さくなる。
以上の理由により、力Fの向きとカムフォロアの運動の向きが左右入れ替わらないローラギヤカム機構の方が、左右入れ替わるバレルカム機構の最大角より大きくなる。
【0010】
次の評価要素として予圧の掛け易さがある。
この予圧というのは、動作前に予め掛けるカムとカムフォロア間の接触部分における圧力である。
予圧を掛けておくと、カム、カムフォロアやタレットなどの関連する構成要素の部品の加工誤差やそれらの組み付け誤差で発生するところの、動作時におけるカム・カムフォロア間のガタを吸収し易くなり、装置として安定したものとなる。
【0011】
ローラギヤカムでは図3の(a)に示すように、入力カムと、2つのカムフォロアの接触面はハの字状接触しているので、タレットの出力軸と入力カムの入力軸の間隔を微調整することにより、カムフォロア3と入力カム1の傾斜面との接触圧力を調整することが容易である。
これに対して、バレルカムでは、図3の(b)に示すようにカムフォロア3はタレット4に対して垂直に設けられており従ってカムフォロア3のローラ面も垂直であり、このローラ面と接するリブ9の側面も垂直である。従って、タレット4の位置を垂直方向に変化させてみてもカムフォロア3とリブ9側面間に圧力をかけることはできない。ただ、カムフォロアをテーパローラとしたときは可能となる。
【0012】
次に、全体サイズについてであるが、図2の(a)と(b)の間で入力カムの直径、タレットの直径が同じとすれば、Z方向の寸法は(b)のバレルカム機構の方が大きくなり、Y方向の寸法は(a)のローラギヤカム機構の方が大きくなる。
【0013】
以上述べたように、従来のローラギヤカム機構とバレルカム機構との間では、停留時圧力角、最大圧力角、予圧をかけられるか否か、Z方向の寸法、Y方向の寸法と言う評価項目において一長一短がある。即ち、利点と欠点とが交互していると言う問題がある。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、各評価項目においてローラギヤカム機構とバレルカム機構の中間の評価を得られる立体カム式インデックス装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の各構成を有する。
本発明の第1の構成(基本構成)は、出力軸に取り付けられるタレットに設けられたカムフォロアが入力カムのカム溝又はカムリブに嵌合し入力カムの一方向連続回転に応じてタレットが回動するカム装置であって、前記タレットがその回動軸を軸とする円錐台部分を有し、前記カムフォロアが前記円錐台部分の傾斜面に設けられていることを特徴とするカム装置である。
【0016】
本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、カムフォロアがストレートローラであることを特徴とするカム装置である。
【0017】
本発明の第3の構成は、前記第1の構成において、カムフォロアがテーパローラであることを特徴とするカム装置である。
【0018】
本発明の第4の構成は、前記第1の構成において、カムフォロアがボールであることを特徴とするカム装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカム機構の構造は、前記課題解決手段で述べたように、タレットにその回動軸を軸とする円錐台部分を有し、この円錐台部分の傾斜面にカムフォロアが立設され、このカムフォロアに入力カムが嵌合して回転する構造となっているので、タレットの回転周面にカムフォロアが水平放射方向に立設されているローラギヤカム機構(図2の(a))と、タレットの下面に出力軸と同一方向でカムフォロアが立設されているバレルカム機構(図2の(b))の中間的な特性を有することになる。
【0020】
その結果、停留時圧力角はローラギヤカムのように0度にはならないが同程度規模のバレルカムよりは小さくなる。最大圧力角は、ローラギヤカムよりは小さくなるがバレルカムよりは大きくなる。
予圧の調整はローラギヤカムでは可能であり、バレルカムでは予圧はかけられないが本発明のカム機構においてはローラギヤカムの場合よりは小さいが、隣り合うカムフォロアはハの字形に広がっており、入力カムのリブの側面もこれに応じて傾斜しているので、入力カムの入力軸の位置をタレットの傾斜面へ近付けたり遠ざけたりするように調整することにより予圧をかけることができる。
【0021】
また、全体の寸法については、入力カムが図2の(a)と(b)の中間位置即ちタレット4の左斜め下に来るので、Y方向の寸法はローラギヤカムよりも小さくなり、Z方向の寸法はバレルカムよりも小さくなる。Y方向、Z方向のどちらの寸法をより小さくするかは、タレットの円錐台の傾斜角度を選ぶことにより選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の特徴は、タレットに円錐台の傾斜面を設けその傾斜面にカムフォロアを立設し入力カムをローラギヤカムとバレルカムの中間の斜め位置に設け全体の寸法形状をコンパクトにした点にあることからすれば、入力カムの位置がタレットの回転中心位置からタレットの回転面に対して45度の方向に設けるようにするのが最良である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明のカム装置の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明カム装置を従来のローラギヤカム機構、バレルカム機構と比較した側面図である。(a)がローラギヤカム機構、(b)が本発明カム装置の実施例、(c)がバレルカム機構である。
本発明カム装置では、タレット4の下面側に円錐台部分6が設けられ、その傾斜面に垂直にカムフォロア3が所定数(例えば6個)だけ等間隔で立設されている(図では左右の2個のみ示し他は省略している)。
βは円錐台部分6の傾斜面の法線がタレット4の回転面とのなす角である。
このように、本発明カム装置は、カムフォロア3を立設する角度に関して、ローラギヤカム機構とバレルカム機構の中間的な構造となっている。
【0024】
即ち、β=0度の場合がローラギヤカム機構であり、β=90度の場合がバレルカム機構である。
このような中間的な構造であるので、評価要素においても発明の効果の欄で述べたように、ローラギヤカム機構とバレルカム機構との中間的特性となる。停留時圧力角は、ローラギヤカム機構のように0度ではないが、バレルカム機構よりも小さい。最大圧力角は、ローラギヤカム機構の方が大きく、バレルカム機構の方が小さいが、本発明カム装置では、その中間の大きさとなる。
【0025】
カムとカムフォロア間の予圧は、ローラギヤカム機構ではかけ易くバレルカム機構ではかけるのが難しいが、本発明カム装置ではローラギヤカム機構に準じてかけることができる。
外形寸法に関しても、Y方向ではローラギヤカム機構より小さくすることができるし、Z方向ではバレルカム機構より小さくすることができる。
従って、設置許容空間の形状寸法に応じて角度βを選択することにより、収容可能性が拡がることになる。
【0026】
以上の例ではカムフォロアはストレートローラとなっているが、カムフォロアはこれに限られるものではなく、テーパローラであってもまたボールであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明実施例の構造図と、比較のためのローラギヤカム機構およびバレルカム機構の構造を示した図である。
【図2】ローラギヤカム機構とバレルカム機構の基本構造概略図である。
【図3】ローラギヤカム機構とバレルカム機構の一例の外観構造図である。
【図4】ローラギヤカム機構およびバレルカム機構における圧力角の説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 入力カム
2 入力軸
3 カムフォロア
4 タレット
5 出力軸
6 円錐台部分
7 カム溝
8 タレット
9 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸に取り付けられるタレットに設けられたカムフォロアが入力カムのカム溝又はカムリブに嵌合し入力カムの一方向連続回転に応じてタレットが回動するカム装置であって、前記タレットがその回動軸を軸とする円錐台部分を有し、前記カムフォロアが前記円錐台部分の傾斜面に設けられていることを特徴とするカム装置。
【請求項2】
カムフォロアがストレートローラであることを特徴とする請求項1記載のカム装置。
【請求項3】
カムフォロアがテーパローラであることを特徴とする請求項1記載のカム装置。
【請求項4】
カムフォロアがボールであることを特徴とする請求項1記載のカム装置。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−45662(P2008−45662A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221764(P2006−221764)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(506279746)
【出願人】(506280030)テクファ・ジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】