説明

カメラおよびその撮影実行方法

【課題】ユーザーによる撮影指示の動作によりカメラ自体が動くのを抑制する。
【解決手段】ユーザーの頬の奥の筋電位を筋電位計測回路の測定電極92,94を用いて計測し、ユーザーの歯を噛む動作によって筋電位計測回路からの筋電位信号Eoの変化量が判定用閾値Erefを以上になったときに露光処理や画像処理などの撮影のための処理を実行する。これにより、ユーザーがシャッターボタンを指で押下することなく、顔の一部位の筋電位を変化させる動作によって撮影を実行することができる。この結果、撮影された被写体像のブレを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラおよびその撮影実行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカメラとしては、カメラ本体の上部に配置されたシャッタボタンがユーザーにより押下されたときに撮影を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、このカメラでは、シャッタボタンとこのシャッタボタン周囲に形成されたベゼル部とに電極を組み込み、電極への指の接触を静電容量の変化により検出するタッチ検出回路や筋電位の変化により検出する筋電位検出回路を用いて、ユーザーの指がシャッタボタンに接触したときに撮影状態にあると判定して、レンズ鏡筒を繰り出し、撮影条件の設定などの撮影準備処理を実行するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−304632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のカメラでは、ユーザーがカメラを手で持ちシャッタボタンを指で押下して被写体を撮影したときに、撮影された被写体像がブレる場合がある。こうした被写体像のブレは、フィルムや撮像素子の露光中に、シャッタボタンを押下する力によりカメラ自体が動くことが原因の1つであることが知られている。
【0005】
本発明のカメラおよびその撮影実行方法は、ユーザーによる撮影指示の動作によりカメラ自体が動くのを抑制することを主目的とする。
【0006】
本発明のカメラおよびその撮影実行方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカメラは、
人間の所定部位の筋電位を計測する筋電位計測部と、
前記計測された筋電位の変化に基づくタイミングで撮影を実行する撮影実行部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のカメラでは、人間の所定部位の筋電位を計測し、計測された筋電位の変化に基づくタイミングで撮影を実行する。これにより、ユーザーがシャッターボタンを指で押下することなく、所定部位の筋電位を変化させる動作によって撮影を実行することができる。この結果、ユーザーによる撮影指示の動作によりカメラ自体が動くのを抑制することができ、撮影された被写体像のブレを抑制することができる。この場合、前記撮影実行部は、前記計測された筋電位がユーザーの撮影指示の意思を確認可能な値として予め定められた閾値以上になったときに撮影を実行する、ものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明のカメラにおいて、撮影対象を見るための覗き口を有するファインダーを備え、前記筋電位計測部は、前記カメラにおける前記覗き口側の面に設けられた電極を含む、ものとすることもできる。こうすれば、ユーザーがファインダーの覗き口から撮影対象を見ながら顔の一部位を電極に接触させた状態で、その顔の一部位の筋電位を変化させる動作によって撮影を実行することができる。この場合、前記電極は、前記カメラにおける前記覗き口側の面で隆起した部分に設けられている、ものとすることもできる。こうすれば、顔の一部位を電極に接触しやすくすることができ、顔の一部位の筋電位をより適正に計測することができる。ここで、前記所定部位は、ユーザーが前記ファインダーの覗き口から撮影対象を見たときに前記カメラにおける前記覗き口側の面に当接する顔の一部位である、ものとすることもできる。
【0010】
本発明のカメラの撮影実行方法は、
撮影を実行するカメラの撮影実行方法であって、
(a)人間の所定部位の筋電位を計測するステップと、
(b)前記計測された筋電位の変化に基づくタイミングで撮影を実行するステップと、
を含むことを要旨とする。
【0011】
この本発明のカメラの撮影実行方法では、ユーザーがシャッターボタンを指で押し込むことなく、所定部位の筋電位を変化させる動作によって撮影を実行することができる。この結果、ユーザーによる撮影指示の動作によりカメラ自体が動くのを抑制することができ、撮影された被写体像のブレを抑制することができる。なお、このカメラの撮影実行方法において、上述したカメラの種々の態様を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態であるデジタルカメラ10の構成の概略を示す構成図。
【図2】デジタルカメラ10の背面を示す背面図。
【図3】撮影処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】別のデジタルカメラ110の背面を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態であるデジタルカメラ10の構成の概略を示す構成図であり、図2はデジタルカメラ10の背面を示す背面図である。
【0014】
本実施形態のデジタルカメラ10は、被写体の像を光電変換して生成した画像信号に基づいて撮影画像用の信号を出力する電子撮像ユニット20と、電子撮像ユニット20から出力された信号を入力して所定の画像処理を施して画像データや画像ファイルを生成する画像処理装置60と、画像処理装置60から入力した画像データをEVF(Electronic View Finder)72の表示部73や液晶モニター78に表示させる表示制御装置70と、ユーザーによって操作される各種の操作ボタン群80と、ユーザーの顔の一部位の筋電位を計測する筋電位計測回路90と、画像処理装置60により生成された画像ファイルを保存可能なメモリーカード50と、デジタルカメラ10の各部に電力を供給するバッテリー55と、装置全体を制御するメインコントローラー30とを備える。
【0015】
電子撮像ユニット20は、デジタルカメラ10の本体に図示しないレンズマウントを介して交換可能に取り付けられる撮影レンズ21と、撮影レンズ21を介して入力した光を光電変換によって電気信号に変換するイメージセンサー22と、撮影レンズ21とイメージセンサー22との間に配置されたシャッター23と、イメージセンサー22を駆動するドライバー回路27aと、イメージセンサー22から出力された電気信号をデジタル信号に変換して出力するアナログフロントエンド(AFE)28とを備える。
【0016】
撮影レンズ21は、凸レンズと凹レンズとを組み合わせて構成された第1レンズ群21aと、イメージセンサー22に入射する光量を調節する絞り機構21bを図示しないモーターにより駆動可能な絞り調節部21cと、図示しない測距センサや撮影レンズ21からの情報に基づいて焦点合わせを行なうオートフォーカス機構29とを備える。オートフォーカス機構29は、光の入射方向に移動可能に支持された第2レンズ群29aと、移動不能に支持された第3レンズ群29bと、図示しないモーターの駆動により第2レンズ群29aを前後に移動可能な焦点調節部29cとを備える。絞り調節部21cや焦点調節部29cは、メインコントローラー30からの信号により駆動制御される。
【0017】
イメージセンサー22は、マトリックス状に配置され複数のフォトダイオード22aと、各フォトダイオード22aごとに形成されフォトダイオード22aから受け取った電荷を垂直方向に転送可能な垂直転送用CCD22bと、垂直方向の終端に配置され垂直転送用CCD22bから受け取った電荷を水平方向に転送可能な水平転送用CCD22cとを備える。フォトダイオード22aは、画素ごとに設けられた光電変換素子であり、露光されたときの光を電荷に変換して蓄積する。このフォトダイオード22aは、電子シャッター機能を有しており、この電子シャッター機能により電荷を図示しない基板へ逃がすことができるようになっている。また、フォトダイオード22aは、各々がレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)のいずれかの色の信号を出力するよう構成されている。垂直転送用CCD22b及び水平転送用CCD22cは、電荷転送素子であり、露光中は動作しないが露光する直前のタイミングや露光したあと電荷をフォトダイオード22aから受け取る前のタイミングでCCD22b,22cに貯まったノイズとなる不要な電荷を掃き出し、露光後の電荷をフォトダイオード22aから受け取り順次転送することにより画像信号を読み出すようになっている。これらのフォトダイオード22aや垂直転送用CCD22b,水平転送用CCD22cは、ドライバー回路27aによって駆動される。このドライバー回路27aには、タイミングジェネレーター(TG)27bによって、イメージセンサー22における垂直転送用CCD22bの駆動速度を決定する垂直ラインシフトパルスの出力タイミングや、水平転送用CCD22cの駆動速度を決定する水平ラインシフトパルスの出力タイミング、各種デバイスの動作の同期をとるための同期信号の出力タイミングなどが出力される。なお、ここではイメージセンサー22としてCCDイメージセンサを例示したが、CMOS型のイメージセンサを採用してもよい。
【0018】
シャッター23は、カメラ本体の垂直方向に走行するフォーカルプレーンシャッターとして構成されており、矩形状の複数のシャッター羽根をそれぞれ有する先幕23aと後幕23bとを備える。このシャッター23は、光の入射経路が先幕23aにより遮断され後幕23bにより開放される初期状態のときに先幕23aと後幕23bとをそれぞれ走行不能に係止する図示しない係止部材や、先幕23aと後幕23bとにそれぞれ付勢力を与える図示しないスプリング、先幕23aと後幕23bとが初期状態のときに係止解除されてから撮影指示がなされるまでの間に先幕23aと後幕23bとをそれぞれ電磁石の電磁力によって走行しないよう保持する図示しないストッパー、先幕23aおよび後幕23bの走行後に初期状態に戻るよう先幕23aと後幕23bとをそれぞれ駆動すると共に係止部材を駆動する図示しないモーターなども備える。このシャッター23では、イメージセンサー22の1点に注目したときに、その1点を先幕23aの後端が通過して露光され始めてから後幕23bの先端が通過して遮光されるまでの時間がシャッタスピードに相当する。なお、本実施形態のデジタルカメラ10は、イメージセンサー22の光の入射経路上にミラーのないミラーレス構造を採用している。このため、先幕23aと後幕23bとを共に開放すると、直ちにイメージセンサー22に光を照射可能な状態となる。
【0019】
画像処理装置60は、図示しないが、RGB画素の色補間処理やホワイトバランス処理、色再現処理、リサイズ処理、ガンマ補正処理、画像ファイル生成処理などのデジタルカメラにおける周知の画像処理を実行する各種の画像処理機能ブロックを備える。この画像処理装置60は、ユーザーからの指示に応じて定まるタイミングで電子撮像ユニット20から出力されるデジタル信号を入力し画像処理を実行して撮影画像を生成したり、生成した撮影画像を所定形式の画像に変換し撮影情報を付加して画像ファイルを生成したりする。また、画像処理装置60は、所定時間毎に電子撮像ユニット20から出力されるデジタル信号を順次入力してライブビュー表示用の画像を生成したりする。
【0020】
表示制御装置70は、画像処理装置60で生成された撮影画像を液晶モニター78に表示したり、画像処理装置60で生成されたライブビュー表示用の画像をEVF72の表示部74または液晶モニター78に順次表示するライブビュー表示を行なう。
【0021】
操作ボタン群80は、ユーザーの操作により押下されるとオートフォーカス機構29を作動させて焦点合わせを行なうと共に設定された撮影モード(例えば、マニュアル撮影モードを除くプログラムAEモードやシャッター速度優先AEモード、絞り優先AEモードなどの各種AEモード)に応じて自動露出を行なうメインボタン80aや、シャッタースピードや絞り値,露出値,動作モード(例えば、被写体を撮影するための前述した複数の撮影モードや撮影画像を再生する再生モード)などの撮影に関する各種設定値を設定するための複数の設定ボタン80b、電源のオンオフを指示する電源ボタン80cなどからなる。
【0022】
筋電位計測回路90は、人間の所定部位の筋電位を計測するものであり、ユーザーの顔の皮膚表面に貼り付く2つの測定電極92,94と、ユーザーの右手の皮膚表面に貼り付く1つの参照電極96と、2つの測定電極92,94の間に生じる筋電位(入力電位差)Eiを増幅した筋電位信号(出力電位差)Eoを出力する増幅回路98とを備える。増幅回路98は、複数のオペアンプや抵抗を有し、2つの測定電極92,94と参照電極96との間の2つの筋電位の差を増幅することによりノイズを打ち消して筋電位信号を出力する。
【0023】
ここで、操作ボタン群80や筋電位計測回路90の測定電極92,94,参照電極96などの配置について説明する。図2に示すように、カメラ本体の上面右側には、メインボタン80aと電源ボタン80cとが配置されており、カメラ背面の上部中央にはEVF72の覗き口74が背面側に突出するように設けられている。また、カメラ背面には、右側から左側へ順に、右手用のグリップ部12、複数の設定ボタン80bが縦列して配置されたボタン部14、筋電位計測回路90の測定電極92,94が縦列して配置された隆起部16、EVF72の覗き口74下方に配置された液晶モニター78、左手用のグリップ部18が配置されている。具体的には、メインボタン80aは、ユーザーが右手の人差し指で操作可能にカメラ本体の上面右側に配置されている。右手用のグリップ部12には、ユーザーが右手でこのグリップ部12をグリップしたときに右手の皮膚表面(親指付け根付近など)が当たる位置に、筋電位計測回路90の参照電極96が設けられている。隆起部16は、ボタン部14や液晶モニター78よりも例えば数cm(1cmや2cm,3cmなど)ほど隆起しており、その表面にそれぞれ参照電極96と同一面積で同一形状に形成された2つの測定電極92,94が配置されている。こうして配置された2つの測定電極92,94は、ユーザーがEVF72の覗き口74から右目で被写体(撮影対象)を見たときにカメラ背面でユーザーの顔の右頬(例えば、頬筋や大頬骨筋の皮膚表面)に当たる隆起部16上の位置に配置されることになる。したがって、ユーザーが右手で参照電極96を覆うようにグリップ部12をグリップすると共に右目でEVF72の覗き口74を覗いて被写体を撮影可能な状態になると、筋電位計測回路90は頬の奥の筋電位を増幅して筋電位信号Eoを出力することができる。
【0024】
メインコントローラー30は、CPU32を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、処理プログラムや各種テーブルを記憶するROM34と、データを一時的に記憶するRAM36と、データを書き換え可能で電源を切ってもデータを保持するフラッシュメモリー38と、図示しない入出力ポートとを備える。メインコントローラー30には、筋電位計測回路90からの筋電位信号Eoや操作ボタン群90からの各種の操作信号、撮影レンズ21の情報、メモリーカード50から読み出した画像ファイル、画像処理装置60からの各種画像などが入力される。また、メインコントローラー30からは、撮影レンズ21への駆動信号や、シャッター23への駆動信号、TG27bへの制御信号、メモリーカード50へ書き込む画像ファイル、画像処理装置60への画像処理指令、表示制御装置70への表示制御指令などが出力される。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態のデジタルカメラ10の動作、特にユーザーが右目でEVF72の覗き口74から被写体を覗いて撮影する際の動作について説明する。図3は、メインコントローラー30のCPU32により実行される撮影処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、動作モードとして撮影モードが設定されているときに所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0026】
撮影処理ルーチンが実行されると、メインコントローラー30のCPU32は、まず、筋電位計測回路90からの筋電位信号Eoなど処理に必要なデータを入力し(ステップS100)、入力した筋電位信号Eoが判定用閾値Eref以上であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS120)。ここで、判定用閾値Erefは、実施形態では、人間の右頬奥の例えば頬筋や大頬骨筋などの筋電位が噛む動作(実施形態では、奥歯を噛みしめる動作)により比較的大きく変化したことを判定可能な値として予め実験などにより定められたものを用いることができる。
【0027】
筋電位信号Eoが判定用閾値Eref未満のときにはステップS100の入力処理に戻り、筋電位信号Eoが判定用閾値Eref以上のときには、ユーザーが撮影指示を行なったと判断し、イメージセンサー22に貯まったノイズとなる不要な電荷を掃き出す撮影準備処理の後に、設定されたシャッタースピード(露光時間)に応じてシャッター23を走行させてイメージセンサー22を露光し(ステップS120)、この露光処理後にイメージセンサー22から画像信号を読み出す(ステップS130)。ここで、シャッタースピードは、マニュアル撮影モードでユーザーの操作により設定されたものや、シャッター速度優先AEモードでユーザーの操作により設定されたもの、メインボタン80aの押下により図示しないルーチンにより設定されたものなどを用いることができる。イメージセンサー22の露光処理や読み出し処理は、TG27bを制御してドライバー回路27aを駆動することにより行なわれる。
【0028】
こうしてイメージセンサー22を露光して画像信号を読み出すと、読み出した画像信号をAFE28によりデジタル信号に変換した後に画素補間処理やホワイトバランス処理、ガンマ補正処理などの周知の画像処理を画像処理装置60により実行させて撮影画像の画像ファイルを生成し(ステップS140)、生成した画像ファイルをメモリーカード50に保存させて(ステップS150)、撮影処理ルーチンを終了する。
【0029】
一般的なカメラでは、実施形態のデジタルカメラ10の上面右側に配置されたメインボタン80aの位置には、ユーザーが撮影指示の動作として押下するシャッターボタンが配置されている。このシャッターボタンが指の力で押下されて撮影が実行されると、この力によりカメラ自体が動き、撮影された被写体像がブレることがある。これに対し、実施形態のデジタルカメラ10では、ユーザーが奥歯を噛みしめる動作により顔の頬の奥の筋電位信号Eoを判定用閾値Eref以上に変化させ、こうした筋電位信号Eoの変化に基づくタイミングで撮影を実行する。したがって、前述の筋電位信号Eoと比較する判定用閾値Erefは、ユーザーの撮影指示の意思を確認可能な値として予め定められた閾値とすればよい。こうして筋電位信号Eoを用いることにより、ユーザーは、右手の指を撮影指示に用いる必要がないから、両手でのカメラの保持に集中することができる。そして、ユーザーによる撮影指示の動作によりカメラ自体が動くのを抑制することができ、撮影された被写体像のブレを抑制することができる。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の筋電位計測回路90が本発明の「筋電位計測部」に相当し、筋電位計測回路90からの筋電位信号Eoの変化に基づくタイミングで撮影のための各種処理を実行する図3の撮影処理ルーチンを実行するメインコントローラー30が「撮影実行部」に相当する。なお、本実施形態では、カメラの動作を説明することにより本発明のカメラの撮影実行方法の一例も明らかにしている。
【0031】
以上説明した実施形態のデジタルカメラ10によれば、ユーザーの頬の奥の筋電位を筋電位計測回路90により計測し、ユーザーの奥歯を噛みしめる動作によって筋電位計測回路90からの筋電位信号Eoが判定用閾値Eref以上に変化したタイミングで露光処理や画像処理などの撮影のための処理を実行するから、ユーザーがシャッターボタンを指で押下することなく、顔の一部位の筋電位を変化させる動作によって撮影を実行することができる。この結果、撮影された被写体像のブレを抑制することができる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
上述した実施形態では、噛む動作により頬の筋電位の変化に基づくタイミングで撮影を実行するものとしたが、例えば口の動作(開口動作など)により口周辺や顎の筋(口輪筋や顎二腹筋など)の筋電位の変化に基づくタイミングで撮影を実行するものとしてもよい。この場合、例えば、図4の別のデジタルカメラ110に示すように、カメラ背面で液晶モニター78下側の位置に設けられた隆起部116におけるユーザーの口周辺に対応する位置、即ちユーザーがEVF72の覗き口74から右目で被写体を見たときに口周辺に対応する位置に2つの測定電極192,194を取り付けるなどとすることができる。なお、カメラ全体の形状やEVF72などのファインダーのカメラ背面での位置などが異なれば、計測対象の筋電位を計測可能な位置に測定電極を配置すればよいし、場合によっては隆起していない部分に測定電極を配置してもよい。
【0034】
上述した実施形態では、ユーザーがEVF72の覗き口74から右目で被写体を見るものとして説明したが、ユーザーがEVF72の覗き口74から左目で被写体を見ることを考慮して、測定電極92,94が設けられた隆起部16の他に、2つの測定電極が設けられたもう1つの隆起部を液晶モニター78の左側(グリップ部18の右側)に設けるものとしてもよいし、2つの測定電極が設けられた隆起部を液晶モニター78の左右両側にぞれぞれ着脱可能な構成にするものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、筋電位計測回路90は2つの測定電極92,94と1つの参照電極96と増幅回路とを備えるものとしたが、参照電極96については備えないタイプの筋電位計測回路を用いるものとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、筋電位計測回路90からの筋電位信号Eoが判定用閾値Eref以上に変化したタイミングで撮影を実行するものとしたが、ユーザーの撮影指示の意思を確認できるような筋電位信号Eoの変化であれば、このような筋電位信号Eoのいかなる変化に基づくタイミングで撮影を実行するものとしてもよい。例えば、振動を伴って変化する筋電位信号Eoの隣り合う極大値を比較してこの極大値の単位時間あたりの変化量が閾値以上になったときに撮影を実行するなどとしてもよい。こうすれば、ユーザーの顔の一部位が測定電極92,94に触れている状態を基準として筋電位信号Eoの変化から撮影指示のタイミングを判定することができる。
【0037】
上述した実施形態では、焦点合わせや自動露出を行なうメインボタン80aがカメラ本体の上部右側に配置されているものとしたが、この位置には、半押しされると焦点合わせや自動露出を行なうと共に全押しされると撮影を実行する(撮影指令信号としての全押し信号がメインコントローラー30に出力される)シャッターボタンを備えるものとしてもよい。こうすれば、筋電位計測回路90からの筋電位信号Eoの変化に基づくタイミングまたはシャッターボタンが全押しされるタイミングのいずれかで撮影を実行することができる。
【0038】
上述した実施形態では、イメージセンサー22を露光して撮影を実行するミラーレス構造のデジタルカメラ10に適用して説明したが、イメージセンサー22に代えていわゆる銀塩フィルムを用いるカメラや、光の入射経路にミラーが配置されているタイプのデジタルカメラを含むカメラに適用するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10,110 デジタルカメラ、12,18 グリップ部、14 ボタン部、16,116 隆起部、20 電子撮像ユニット、21 撮影レンズ、21a 第1レンズ群、21b 絞り機構、21c 絞り調節部、22 イメージセンサー、22a フォトダイオード、22b 垂直転送用CCD、22c 水平転送用CCD、23 シャッター、先幕23a、後幕23b、ドライバー回路、27b タイミングジェネレーター(TG)、29 オートフォーカス機構、29a 第2レンズ群、29b 第3レンズ群、29c 焦点調節部、30 メインコントローラー、32 CPU、34 ROM、36 RAM、38 フラッシュメモリー、50 メモリーカード、55 バッテリー、60 画像処理装置、70 表示制御装置、72 EVF、73 覗き口、74 表示部、78 液晶モニター、80 操作ボタン群、80a メインボタン、80b 設定ボタン、80c 電源ボタン、90 筋電位計測回路、92,94,192,194 測定電極、96 参照電極 98 増幅回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の所定部位の筋電位を計測する筋電位計測部と、
前記計測された筋電位の変化に基づくタイミングで撮影を実行する撮影実行部と、
を備えるカメラ。
【請求項2】
請求項1記載のカメラであって、
撮影対象を見るための覗き口を有するファインダーを備え、
前記筋電位計測部は、前記カメラにおける前記覗き口側の面に設けられた電極を含む、
カメラ。
【請求項3】
請求項2記載のカメラであって、
前記電極は、前記カメラにおける前記覗き口側の面で隆起した部分に設けられている、 カメラ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載されたカメラであって、
前記撮影実行部は、前記計測された筋電位がユーザーの撮影指示の意思を確認可能な値として予め定められた閾値以上になったときに撮影を実行する、
カメラ。
【請求項5】
撮影を実行するカメラの撮影実行方法であって、
(a)人間の所定部位の筋電位を計測するステップと、
(b)前記計測された筋電位の変化に基づくタイミングで撮影を実行するステップと、
を含むカメラの撮影実行方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−185429(P2012−185429A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49934(P2011−49934)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】