説明

カメラを内蔵した車両用灯具

【課題】 カメラを内蔵した車両用灯具において、ランプとカメラが同時に動作したときに、ランプの光による影響を抑えて、質の高いカメラ映像を得る。
【解決手段】 サイドターンシグナルランプ1において、ハウジング3内部のホルダ5にランプ6とカメラ7を設置する。ランプ6は光源8からの光で車両側方を照明し、カメラ7が斜め後向きの受光レンズ9で車両側方と後方を撮影する。受光レンズ9を取り囲むように、透光カバー4に不透明樹脂からなる遮光リング12を設け、光源8からの直射光と透光カバー4からの間接光を遮り、カメラ7の映像をランプ6の光から保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺を撮影するカメラを内蔵した車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラを車両用灯具の灯室内に設置することで、カメラ専用のハウジングを不要にする技術が知られている。例えば、特許文献1には、灯具ハウジングと透光カバーとの間の灯室を上下に仕切り、下室にランプを設置し、上室にカメラを設置し、仕切壁によってカメラをランプの発熱から保護する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−88610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、カメラを内蔵した車両用灯具によると、ランプの光が直接または透光カバーを経由してカメラに入射しやすい。このため、従来の灯具において、夜間等にランプとカメラが同時に動作すると、ランプからの入射光によって映像の質が低下するという問題点があった。なお、特許文献1では、カメラをランプの熱から保護する技術が提案されているが、ランプの光から保護する技術については触れられていない。
【0005】
本発明の目的は、ランプとカメラが同時に動作したときでも、質の高い映像が得られる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような車両用灯具を提供する。
(1)車両周辺を照明するランプと、車両周辺を撮影するカメラと、カメラの映像をランプの光から保護する手段とを備えたことを特徴とする車両用灯具。
【0007】
(2)保護手段が、カメラの受光部をランプの光から遮蔽する遮光構造を含むことを特徴とする(1)に記載の車両用灯具。
【0008】
(3)保護手段が、カメラの受光部から遠ざかる方向へランプの光を導く導光部材を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の車両用灯具。
【0009】
(4)保護手段が、短い周期で点滅するランプの消灯時限にカメラを動作させる制御回路を含むことを特徴とする(1)〜(3)の何れか一つに記載の車両用灯具。
【0010】
(5)保護手段が、カメラの映像データからランプの着色光成分を除去する映像処理回路を含むことを特徴とする(1)〜(4)の何れか一つに記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用灯具は、遮光構造、導光部材、または電子制御によってカメラの映像をランプの光から保護するので、ランプとカメラが同時に動作したときでも、質の高い映像が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1を示す車両用灯具の水平断面図である。
【図2】実施例1の変更例を示す車両用灯具の部分断面図である。
【図3】本発明の実施例2を示す車両用灯具の水平断面図である。
【図4】本発明の実施例3を示す車両用灯具の正面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う車両用灯具の垂直断面図である。
【図6】本発明の実施例4を示す電子制御装置のブロック図である。
【図7】電子制御装置によるカメラとランプの制御を示すタイムチャートである。
【図8】電子制御装置によるカメラの映像処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を幾つかの実施例に基づいて説明する。図1、図2に示す実施例1と図3に示す実施例2では、本発明が自動車側部のSTSL(サイドターンシグナルランプ)に適用されている。図4、図5に示す実施例3では、本発明が自動車後部のHMSL(ハイマウントストップランプ)に適用されている。図6〜図8に示す実施例4では、本発明が各種車両用灯具の制御システムに適用されている。各実施例において、同一または類似する部材は図面に同一の符号で示されている。
【実施例1】
【0014】
図1に示すように、実施例1のSTSL1は、車体2の側面に取り付けられるハウジング3と、ハウジング3を覆う透光カバー4とを備えている。ハウジング3の内部にはホルダ5が取り付けられ、ホルダ5にランプ6とカメラ7が設置されている。ランプ6は、LEDや白熱灯からなる光源8を備え、光源8からの光で車両側方を照明する。カメラ7は、斜め後向きの受光レンズ9を備え、受光レンズ9で車両側方および後方を撮影し、その映像を運転席のモニタ47(図6参照)に表示させる。なお、ホルダ5にはランプ6とカメラ7の配線引出部10が突設されている。
【0015】
透光カバー4とカメラ7との間には、受光レンズ9をランプ6の光から遮蔽する遮光構造11が設けられている。図1に示す遮光構造11では、不透明樹脂からなる遮光リング12が受光レンズ9を取り囲むように透光カバー4に二色成形されている。遮光リング12は、光源8からの直射光と透光カバー4からの間接光を遮り、カメラ7の映像をランプ6の光から保護している。したがって、ランプ6とカメラ7が同時に動作したときでも、質の高い映像が得られ、モニタ47に車両側方および後方の画像を鮮明に表示することができる。
【0016】
図2の(a)〜(e)は遮光構造11の変更例を示す。(a)に示す遮光構造11では、透光カバー4と受光レンズ9との間に不透明な筒形の仕切13が介装されている。(b)に示す仕切13は、外側に開くテーパ状に形成されている。(c)に示す遮光構造11では、受光レンズ9が透光カバー4の表面から突出するように、カメラ7がホルダ5に保持されている。(d)に示す遮光構造11では、受光レンズ9を包囲するように透光カバー4に遮光ステップ14が形成されている。(e)に示す遮光構造11では、透光カバー4と受光レンズ9との間に広めの遮光スペース15が設けられている。
【実施例2】
【0017】
図3に示すように、実施例2のSTSL21では、ハウジング3にホルダ5と導光部材22が設けられている。ホルダ5には、ランプ6が外向きに保持され、カメラ7が後向きに設置されている。導光部材22は、透明樹脂で前後に長い厚手の帯状に成形され、光源8の光を入射部23から入射し、カメラ7の受光レンズ9から遠ざかる方向へ導き、導光部材22の表面全体から車両側方へ照射するようになっている。したがって、実施例2の構成によっても、ランプ6の光に妨げられることなく、カメラ7で主に車両の後方を鮮明に撮影することができる。
【実施例3】
【0018】
図4、図5に示すように、実施例3のHMSL31では、ハウジング3が車体2の後部に取り付けられ(図6参照)、ランプ6がホルダ5に後向きに保持され、赤色の光源8と同数の赤色レンズ部32が透光カバー4に形成されている。カメラ7はホルダ5に下向きに設置され、カメラ7と対応する位置の透光カバー4に、実施例1と同様の遮光構造11と雨除け部33とが設けられている。雨除け部33は、受光レンズ9よりも高い位置に段差状に形成され、透光カバー4を流下する雨水34を受光レンズ9に達する前に滴下させる。したがって、実施例3によれば、カメラ7の映像をランプ6の光と雨水の両方から保護することができる。
【実施例4】
【0019】
図6〜図8に示す実施例4では、カメラ7の映像が灯具ECU(電子制御装置)41によって保護されている。図6に示すように、灯具ECU41は、ランプ6を制御するランプ制御回路42と、カメラ7を制御するカメラ制御回路43と、カメラ7の映像を処理する映像処理回路44と、記憶部45を備えたCPU46とから構成されている。そして、実施例1,2のSTSL1,21、実施例3のHMSL31に加え、HL(ヘッドランプ)48、RCL(リアコンビネーションランプ)49を含め、車体2の各部に設置された車両用灯具を対象とし、次のような制御を行う。
【0020】
ランプ制御回路42は、運転者の操作に応答してランプ6の点灯および消灯を制御するが、点灯期間中には、図7に示すように、ランプ6からの光が人の目に連続光として視認される程度のごく短い周期、例えば1/30secで光源8を点滅させる。一方、カメラ制御回路43は、ランプ6の消灯時限に車両周辺を撮像するように、カメラ7を半周期ずれた位相でランプ6と同期制御する。したがって、ランプ6とカメラ7を同時に動作させたときでも、ランプ6からの光を受光レンズ9に入射しにくくし、カメラ7で車両周辺を鮮明に撮影することができる。
【0021】
また、映像処理回路44は、カメラ7の映像データからランプ6の着色光成分を除去する処理を行う。着色光成分とは、主に、HMSL31やRCL49のストップランプが点灯したときに、赤色の光源8からの赤色光成分、または透光カバー4の赤色レンズ部32(図4参照)によって着色された赤色の光成分である。また、光源8を赤色LEDとして、透光カバー4が全面クリア(無色透明)であるか全面赤色に着色されている場合の光成分も含む。記憶部45には、赤色光成分がカメラ7に入射したときに映像データの補正を行うための基準値が予め記憶されている。例えば、外乱光のない環境下でカメラ7に赤色光を実験的に入射させ、このときの映像データから求めたRGB成分値が補正用基準値として記憶部45に格納されている。
【0022】
カメラ7の撮影中は、図8に示すように、映像処理回路44がカメラ7から映像データを取得し(S51)、ランプ6が点灯すると(S52)、補正処理を実施する(S53)。そして、補正用基準値を用いて映像データから赤色光成分を除去した後に、その映像データをモニタ47に出力する(S54)。ランプ6の消灯中は補正処理を行わず、カメラ7の映像をそのままモニタ47に表示し、カメラ7の停止を確認し(S55)、映像処理を終了する。したがって、ランプ6の光が赤色レンズ部32を経由してカメラ7に入射した場合でも、車両周辺の映像をモニタ47に実際と同じ色合いで表示することができる。
【0023】
なお、上記実施例1〜4で開示した特徴的な技術は、車両用灯具に個別に適用することも、適宜に組み合わせて適用することもできる。カメラ7は、STSL1,21やHMSL31に限定されず、HL48やRCL49に設置することもできる。その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成を適宜に変更して具体化することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 STSL(実施例1)
2 車体
3 ハウジング
4 透光カバー
6 ランプ
7 カメラ
9 受光レンズ
11 遮光構造
21 STSL(実施例2)
22 導光部材
31 HMSL(実施例3)
33 雨除け部
41 灯具ECU(実施例4)
42 ランプ制御回路
43 カメラ制御回路
44 映像処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺を照明するランプと、車両周辺を撮影するカメラと、カメラの映像をランプの光から保護する手段とを備えたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記手段が、カメラの受光部をランプの光から遮蔽する遮光構造を含む請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記手段が、カメラの受光部から遠ざかる方向へランプの光を導く導光部材を含む請求項1又は2記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記手段が、短い周期で点滅するランプの消灯時限にカメラを動作させる制御回路を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記手段が、カメラの映像データからランプの着色光成分を除去する映像処理回路を含む請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−162080(P2011−162080A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27649(P2010−27649)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】