説明

カメラモジュールおよび電子機器

【課題】画像を解析するような処理が複雑な回路を必要とせず、より単純な構成によって、高精細な画像とぼやけた画像とを選択的に撮影する。
【解決手段】カメラモジュール20は、撮像素子3と、撮影方向からの入射光40を撮像素子3へ集光させるレンズ5とを備える。また、カメラモジュール20は、レンズ5における光の入射する側に配置され、入射光40に対して垂直方向42に移動可能であり、入射光40を散乱させる可視光散乱フィルター8と入射光40を透過させる可視光透過フィルター9とを有するフィルター30をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な画像とぼやけた画像とを選択的に撮影できるカメラモジュール、およびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子機器(例えば、パソコンおよびテレビ等)に、カメラモジュールを搭載して利用することが盛んになっている。このカメラモジュールは、電子機器にあらかじめ内蔵されている場合もあれば、電子機器に外付けされる場合もある。いずれにせよ、電子機器に搭載されたカメラモジュールを用いることによって、当該電子機器において高精細な画像(静止画および動画)を撮影することができる。
【0003】
また、カメラモジュールが搭載された電子機器において、単に画像を撮影することに留まらず、撮影した画像をインターネットを通じて特定の相手に送ったりあるいは不特定多数の人に配信したりする行為も良く行われている。さらには、インターネットを通じて画像と同時に音声も伝送することによって、電子機器(特にテレビ)をいわゆるテレビ電話として活用する仕組みが提案されている。このような電子機器の用途は、今後さらに普及することが見込まれている。
【0004】
さらに、各種の電子機器に人体の接近を検知するセンサーを搭載して利用することも盛んになっている。この人体の接近を検知するセンサーは、人体の接近を検知し電子機器の内部機器へ電気信号を送る。そして、当該内部機器において、電気信号が解読され、当該内部機器から当該電子機器へ操作の指示を与えることにより電子機器が操作の指示に従って操作される。このような人体の接近を検知するセンサーの利用により人が特別な動作をすることなく、電子機器の操作ができるようになる。
【0005】
また、この人体の接近を検知するセンサーを利用することによって、電子機器の消費電力を抑制する(例えば、電子機器の付近に人がいないことを検出した場合に、電子機器の表示明度を下げるまたは電子機器の電源をオフにする等)こともできる。
【0006】
上記の高精細な画像を撮影する機能および人体の接近を検知する機能は電子機器に搭載する撮影および検知に関する機能である。よって、今後、上記2つの機能を搭載する電子機器の必要性が高まることが考えられる。
【0007】
そのような場合、高精細の画像を撮影できるカメラモジュールと人体検出のための専用センサーとを実装するのではなく、高精細な画像を撮影できるカメラモジュールを人体検出センサーとしても使用する実装形態が要求される可能性がある。
【0008】
しかしながら、高精細の画像を撮影できるカメラモジュールをその解像度のまま人体検出センサーとして使用する事は、一般ユーザから見ると、いつ撮影されているかわからない不安感、またその画像がインターネットへ流出しないかとの不安感を持つことが懸念される。
【0009】
このため、当該実装形態が受け入れられるためには、ユーザが意図して撮影する場合以外には、ユーザ個々の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度を得る手段が不可欠になってくる。
【0010】
すなわち、高精細の画像を、ユーザ個々の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度にする必要がある。
【0011】
画像の解像度を低減する技術としては、センサーに隣接する画素をビニングしマクロ画素を形成して画像の解像度を低減する技術、信号処理部において画像を圧縮する技術および信号処理部において画像にぼかし処理を施す技術等が一般的に利用されている。
【0012】
しかし、本発明に係るカメラモジュールの用途の場合、当該電子機器が、ウィルスに感染し、高精細な画像を撮影する機能および人体の接近を検知する機能の2つの機能が働かなくなる可能性がある。したがって、上述の手段は、本発明に係るカメラモジュールによって撮影された画像の解像度を低減させる手段としては、最適なではない。
【0013】
特許文献1には、画像データの生成および出力技術について、ネットワークに接続されたカメラモジュールに、高解像度の画像データと低解像度の画像データとを生成する手段、被写体の重要度を検出する手段および当該検出手段からの出力に応じて、前記高解像度の画像データおよび前記低解像度の画像データのいずれかを選択し前記ネットワークへ出力する技術が開示されている。
【0014】
特許文献1には、人体の接近を検知する機能の利用例として、人体が接近したことを検知するセンサーを備え、人体が接近したことを当該センサーが検出すると電源を入り切りすることを特徴とするテレビジョン受信機の技術が開示されている。
【0015】
また、一般的な技術の1つとして、電子機器に備えられるカメラモジュールにおいて、ユーザに撮像中であることを明示するために、LED等によって表示を行う技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実開平5‐4679号公報(1993年1月22日公開)
【特許文献2】特開2003‐298903号公報(2003年10月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した各従来技術は、それぞれ以下のような問題がある。
【0018】
あくまで、撮影中であることを明示するだけであり、撮影する画像の解像度を自動的に低減する手段は設けられていない。したがって、高精細な画像撮影機能と人体検出センサー機能とを両立させることはできない。
【0019】
特許文献1には、検知センサーの具体的な構成が開示されていない。したがって、この文献の技術はあくまで単なる人体検出センサーに過ぎず、高精細の画像を撮影できる構成をも備えているとは言えない。
【0020】
特許文献2の技術においては、画像を解析して被写体の重要度を検出する回路のような、処理が複雑な回路が必要になる。
【0021】
本発明は上記の課題を解決するために為されたものである。そして、その目的は、画像を解析して被写体の重要度を検出する回路のような処理が複雑な回路を必要とすることなく、同じ被写体に対して、高精細な画像と、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像とを1つの撮像素子で選択的に得ることができるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るカメラモジュールは、上記の課題を解決するために、
撮像素子と、撮影方向からの入射光を撮像素子へ集光させるレンズとを備えるカメラモジュールであって、
前記レンズにおける光の入射する側に配置され、前記入射光に対して垂直方向に移動可能であり、前記入射光を散乱させる可視光散乱部と前記入射光を透過させる可視光透過部とを有するフィルターを備えることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、フィルターは、レンズの前方に配置され、かつ、入射光に対して垂直方向に移動することができる。このフィルターは、入射光を散乱させる可視光散乱部と、入射光を透過させる可視光透過部とを備えている。したがって、フィルターがレンズの前方において移動することによって、可視光散乱部または可視光透過部のいずれかが、レンズを覆う位置に配置されることが可能になる。
【0024】
可視光散乱部がレンズを覆う位置にフィルターが配置された場合、レンズには散乱された光が入射される。したがって、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得ることができる。一方、可視光透過部がレンズを覆う位置にフィルターが配置された場合は、レンズにはほぼ劣化しない光が入射される。したがって、被写体の識別が可能になる高精細な画像を撮影できる。
【0025】
そのため、本発明のカメラモジュールでは、用途に応じて最適な解像度の画像を得ることができる。例えば、ユーザが意図して撮影する用途においては、可視光透過部をレンズを覆う位置に配置することにより、高精細な画像を撮影することができる。他方、ユーザが意図して撮影する以外の用途、つまり、人体の接近を検出するセンサーとして利用する用途においては、可視光散乱部をレンズを覆う位置に配置することにより、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得ることができる。
【0026】
以上のように、本発明では、可視光透過部および可視光散乱部を選択的に利用することにより、同じ被写体に対して、高精細な画像と、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像とを、1つの撮像素子で選択的に得ることができる。よって、画像を解析するような処理が複雑な回路を必要とせず、2種類のフィルターを選択的に使うという単純な構成によって、高精細な画像とぼやけた画像とを選択的に撮影することができる効果を奏する。
【0027】
本発明に係るカメラモジュールでは、さらに、
前記可視光散乱部は、光を散乱させるフィラーを含有していることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、可視光は散乱した状態で撮像素子へ到達し、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得ることができる。
【0029】
本発明に係るカメラモジュールでは、さらに、
前記可視光散乱部の表面には、光を散乱させるシボ加工が施されていることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、可視光は散乱した状態で撮像素子へ到達し、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得ることができる。
【0031】
本発明に係るカメラモジュールでは、さらに、
前記可視光透過部は、前記フィルターに形成された開口部であることを特徴としている。
【0032】
上記の構成によれば、可視光がほぼ劣化なく撮像素子へ到達できるので、高精細な画像を得ることができる。
【0033】
本発明に係るカメラモジュールでは、上記の課題を解決するために、
前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に配置されていることを検出する検出手段をさらに備え、
前記可視光透過部が前記レンズを覆う位置から前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に前記フィルターが移動するときは、前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に配置されていることを前記検出手段が検出するまで、前記撮像素子による撮影は行わないことを特徴としている。
【0034】
上記の構成によれば、可視光散乱部がレンズを覆う位置に配置されていることを検出した場合に、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得ることができる。一方、可視光散乱部がレンズを覆う位置に配置されていることを検出できない場合、撮像素子は被写体を撮影しない。よって、ユーザが意図しない時に誤って高精細な画像を撮影することを防止できる。
【0035】
本発明に係るカメラモジュールは、上記の課題を解決するために、
前記可視光透過部が前記レンズを覆う位置から前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に、前記フィルターを制御信号に基づき自動的に移動させる手段をさらに備えており、
前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置から前記可視光透過部が前記レンズを覆う位置に、前記フィルターを制御信号に基づき自動的に移動させる手段を備えていないことを特徴としている。
【0036】
上記の構成によれば、フィルターは、可視光透過部がレンズを覆う位置から可視光散乱部がレンズを覆う位置には自動的に移動できる。一方、可視光散乱部がレンズを覆う位置から可視光透過部がレンズを覆う位置には自動的に移動できない。したがって、ユーザが意図しないときに可視光透過部がレンズを覆うことにはならない。その結果、ユーザが意図しない時に高精細な画像が撮影されることを防止できる。
【0037】
本発明に係る電子機器は、上記の課題を解決するために、上述したいずれかのカメラモジュールを備えていることを特徴としている。
【0038】
上記の構成によれば、画像を解析するような処理が複雑な回路を必要とせず、2種類のフィルターを選択的に使うという単純な構成によって、高精細な画像とぼやけた画像とを選択的に撮影できる電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のカメラモジュールは、画像を解析して被写体の重要度を検出する回路のような処理が複雑な回路を必要とすることなく、同じ被写体に対して、高精細な画像と、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像とを1つの撮像素子で選択的に得ることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態のカメラモジュールの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のフィルターの正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態のフィルターの固定機構を説明する断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のフィルターの移動例の断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のシステム構成図である。
【図6】本発明の第2実施形態のカメラモジュールの断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態のフィルターの正面図である。
【図8】本発明の第2実施形態のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態として外付け型のカメラモジュールを例として説明する。なお、本発明は以下の各実施形態に限定されるものではない。また、同一の機能および作用を示す部材には、同一の符号を付し、説明を省略する。
〔実施の形態1〕
本発明に係る第1の実施形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0042】
(カメラモジュール20の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るカメラモジュール20の断面図である。同図に示すように、カメラモジュール20は、筺体1、プリント基板2、レンズ5およびフィルター30を備えている。カメラモジュール20は、被写体の画像(静止画および動画)を撮影するためのモジュールであり、後述する電子機器に備えられて利用される。
【0043】
プリント基板2には、撮像素子3、映像処理回路10およびコネクタ11が実装されている。レンズホルダー4には、カメラ5および赤外線カットフィルター6が内蔵されている。レンズホルダー4は、撮影方向からの入射光の光軸と撮像素子3とを調節した状態で、プリント基板2に固定されている。レンズ5はレンズホルダー4の撮影方向に設置されている。また、赤外線カットフィルター6は、レンズ5と撮像素子3との間に設置されている。
【0044】
(撮像素子3)
カメラモジュールの撮影方向から来た光は、フィルター30、レンズ、5および赤外線カットフィルター6をそれぞれ通過し、最後に撮像素子3に到達する。すなわちレンズ5は、入射光を出射させて撮像素子3に集光させる。撮像素子3は、到達した光を画像(映像)に変える。撮像素子3は、当該画像を映像処理回路10へ送る。映像処理回路10は当該画像をカメラモジュール20に接続された電子機器へあらかじめ決められたフォーマットによって伝送するための信号処理をする。そして、映像処理回路10は当該画像を処理してコネクタ11から電子機器へ出力する。
【0045】
(フィルター30)
図1に示すように、フィルター30は、可視光散乱フィルター8(可視光散乱部)と可視光透過フィルター9(可視光透過部)とフィルター保持体7とを備えている。可視光散乱フィルター8は、透過する可視光を散乱させる効果を有する。可視光散乱フィルター8は、フィラーを含有しているか、または表面にシボ加工がなされている。可視光透過フィルター9は、可視光をほぼ劣化なく透過させる効果を有する。可視光散乱フィルター8および可視光透過フィルター9は、フィルター保持体7に固定され、フィルター30に組み込まれている。
(フィルター30の移動)
図1において、入射光40は、撮影方向からカメラモジュール20へ入射する光である。フィルター30は、筺体1(レンズ5)の光入射面側に取り付けられている。ここで、フィルター30は、入射光40に対して垂直方向42に移動可能なように取り付けられている。フィルター30は、可視光透過フィルター9がレンズ5を覆う位置、または、可視光散乱フィルター8がレンズ5を覆う位置に、それぞれ移動できる。
【0046】
図1は、可視光透過フィルター9がレンズ5を完全に覆う位置においてフィルター30が筺体1に固定される状態を示す。一方、図4は、可視光散乱フィルター8がレンズ5を完全に覆う位置においてフィルター30が筺体1に固定される状態を示す。カメラモジュール20には、フィルター30を固定する手段をさらに備えている。この固定手段は、フィルター30を入射光40に対して可視光透過フィルター9がレンズ5を完全に覆う位置に固定する。または、入射光40に対して可視光散乱フィルター8がレンズ5を完全に覆う位置に固定する。
【0047】
(フィルター30の固定)
フィルター30を筺体1に固定する手段について、図2および図3を参照して以下に説明する。図2は、フィルター30の正面図である。図3は、カメラモジュール20の断面図である。図2に示すように、フィルター保持体7の下部に突起12が設けられている。また、図3に示すように筺体1の内部に溝13が設けられている。この溝13の両端には、凹部14および凹部15が設けられている。突起12が凹部14または凹部15に勘合することにより、フィルター30が筺体1に固定される。突起12が凹部15に勘合している状態においては、可視光散乱フィルター8がレンズ5を完全に覆う。一方、突起12が凹部14に勘合している状態においては、可視光透過フィルター9がレンズ5を完全に覆う。
【0048】
(フィルター30による効果)
図1に示すように、可視光透過フィルター9がレンズ5を完全に覆う位置においてフィルター30が筺体1へ固定されている場合、撮影方向から入射した可視光は、ほぼ劣化なく撮像素子3へ到達する。よって、被写体を撮影すると高精細な画像を得ることができる。他方、図4に示すように、可視光散乱フィルター8がレンズ5を完全に覆う位置においてフィルター30が筺体1へ固定されている場合、撮影方向から入射した可視光は散乱した状態で撮像素子3へ到達する。よって、被写体を撮影するとぼやけた画像を得ることができる。
【0049】
以上のように、カメラモジュール20は、2種類のフィルター(可視光透過フィルター9および可視光散乱フィルター8)を選択的に利用する。このような構成により、同じ被写体に対して、高精細な画像と、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像とを、1つの撮像素子3で選択的に得ることができる。例えば、ユーザが意図して撮影する用途においては、可視光透過フィルター9をレンズ5を覆う位置に配置することにより、高精細な画像を撮影することができる。他方、ユーザが意図して撮影する以外の用途、つまり、人体の接近を検出するセンサーとして利用する用途においては、可視光散乱フィルター8をレンズ5を覆う位置に配置することにより、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得ることができる。
【0050】
また、上記2種類のフィルターを選択的に利用することにより、映像処理回路10は、フィルターの違いによって処理内容を変えなくてよい。そのため、映像処理回路10が単純化される。すなわちカメラモジュール20は、同じ被写体に対して、高精細な画像と、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像とを、1つの撮像素子3で選択的に得ることができる。よって、画像を解析するような処理が複雑な回路を必要とせず、2種類のフィルターを選択的に使うという単純な構成によって、高精細な画像とぼやけた画像とを選択的に撮影することができる。
【0051】
(システムの構成)
図5は、本発明のカメラモジュールの第1実施形態の構成を説明するためのシステム構成図である。ただし、電子機器の構成に関しては、本発明のカメラモジュールに係る構成のみを説明する。同図に示すように、カメラモジュール20は、電子機器50に対して外付けの状態で接続されている。電子機器50は、コネクタ51、信号処理回路52、表示用回路53、および表示装置54により構成されている。
【0052】
信号処理回路52は、コネクタ51とコネクタ11とを介して、映像処理回路10と接続されている。映像処理回路10が信号処理した映像は、信号処理回路52に送られる。これにより電子機器50は、カメラモジュール20によって撮影された映像を取得することができる。
【0053】
電子機器50は、カメラモジュール20によって撮影された被写体の画像を、インターネット等の通信網を通じて外部に送信する機能を有している。ここで、上述したように、カメラモジュール20はユーザが意図しない場合には高精細な画像を撮像しないようにすることができるので、自身の識別が可能な画像が外部に流出するという不安を、ユーザに与えずに済む。
【0054】
なお、カメラモジュールに接続される電子機器は、必ずしも、画像をインターネットを通じて外部に送信する機能を有している必要は無い。例えば、外部出力端子または外部メモリを通じて、画像を電子機器の外部に出力できるような電子機器であってもよい。
【0055】
電子機器50の具体例として、パソコンおよびテレビ等があるが、これらには限定されない。
【0056】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について、図6〜図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
(カメラモジュール20aの構成)
図6は本発明に係るカメラモジュール20aの断面図である。第1実施例との機構および機能上の差異を中心に説明する。同図に示すように、カメラモジュール20aは、筺体1、プリント基板2、レンズ5およびフィルター30に加え、センサー16(検出手段)と、センサー17(検出手段)と、解除部材18とをさらに備えている。凹部14の近傍にセンサー16が、凹部15の近傍にはセンサー17が、それぞれ設けられている。センサー16は、突起12が凹部14に勘合したことを示す信号を映像処理回路10へ送る。センサー17は、突起12が凹部15に勘合したことを示す信号を映像処理回路10へ送る。また、凹部14の内部には解除部材18が配されている。解除部材18は、突起12と凹部14の勘合を解除する部材である。解除部材18は、映像処理回路10からの解除信号(制御信号)に対応して、突起12が凹部14勘合している状態を解除することができる。
【0057】
(フィルター30a)
図7は、発明の第2実施形態に係るフィルターの正面図である。同図に示すように、フィルター30aは、可視光散乱フィルター8と可視光透過フィルター9とフィルター保持体7とに加え、押圧部材19をさらに備えている。押圧部材19は、筺体1の内壁を押圧し、フィルター30を移動させる部材である。押圧部材19はフィルター30aの側面に設けられている。フィルター30aの可視光散乱フィルター8の組み込まれている側面に、押圧部材19を設けることにより、筺体1の内壁を押圧することができる。突起12が凹部14に勘合している状態においては、押圧部材19の押圧力は強く働く。映像処理回路10からの解除信号により解除部材18が突起12と凹部14との勘合を解除した状態においては、押圧部材19の押圧力は突起12が凹部15に勘合する状態になるまで持続するように設定されている。
【0058】
(システムの構成)
図8は本発明のカメラモジュールの第2実施形態の構成を説明するためのシステム構成図である。ただし、電子機器の構成に関しては、本発明のカメラモジュールに係る構成のみを説明する。同図に示すように、カメラモジュール20aは、電子機器50に対して外付けの状態で接続されている。本実施形態では、信号処理回路52は、カメラモジュール20aを制御するための各種の信号を、カメラモジュール20aに対して送信する。この信号は、コネクタ51とコネクタ11とを介して映像処理回路10が受信する。受信した信号を、映像処理回路10が解除部材18へ出力する構成となっている。
【0059】
(電子機器50)
電子機器50は、ユーザの指示に応じてアプリケーションを起動することができる。本実施形態では、当該アプリケーションを実行することにより、ユーザの識別が可能な高精細な画像を撮影することができる。また、当該アプリケーションを実行することにより、撮影した画像をインターネットを介して特定または不特定の相手に伝送することができる。
【0060】
ユーザは、電子機器50に対して、上記アプリケーションの起動を指示する。これにより信号処理回路52は、指定されたアプリケーションを起動する。そして、信号処理回路52は、フィルターの移動に関するコメントを表示するように、表示用回路53に指示する。この指示を受けて、表示用回路53は、「高精細な画像を撮影できる位置にフィルター30aを移動する」旨のコメントを表示装置54に表示する。
【0061】
ユーザは、手動によりフィルター30aを可視光透過フィルター9がレンズ5を覆う位置へ移動させる。その際、手動によりフィルター30aの突起12を凹部14に勘合させる。センサー16は、突起12が凹部14に勘合したことを検出した場合、その旨を示す信号を映像処理回路10へ送信する。映像処理回路10は上記信号を信号処理回路52に送る。表示用回路53は、信号処理回路52が上記信号を受信するまで、表示装置54に上記コメントを表示し続ける。信号処理回路52は、上記信号を受信した後に、撮影を開始しアプリケーションの動作を継続する。
【0062】
(人体検出モード)
上述したアプリケーションの実行が終了すると、カメラモジュール20aは、自動的に人体検出モードで動作する。その手順を以下に説明する。まずユーザが、電子機器50に対してアプリケーションの終了を指示する。これにより、信号処理回路52は、アプリケーションを終了させる。アプリケーションが終了した時点において、信号処理回路52は、映像処理回路10に対して、突起12を凹部14から解除するための信号(制御)を送信する。映像処理回路10は、当該解除信号を解除部材18へ出力する。解除部材18は、突起12と凹部14との勘合を解除する。そして、押圧部材19が筺体1の内壁を押圧することにより、フィルター30aが移動する。すなわち、フィルター30aは、可視光散乱フィルター8がレンズ5を覆う位置に自動的に移動し、突起12が凹部15に勘合する。
【0063】
センサー17は、突起12が凹部15へ勘合したことを検出した場合、その旨を示す信号を映像処理回路10へ送信する。映像処理回路10は上記信号を信号処理回路52へ送る。信号処理回路52は、上記信号を、映像処理回路10から受信した後、人体検出モードに入る。これによりカメラモジュール20aは、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得る。
【0064】
信号処理回路52は、上記信号を映像処理回路10から受信できない場合、フィルターの移動に関するコメントを表示するように、表示用回路53へ指示する。この指示を受けて、表示用回路53は、「フィルター30aの位置を確認する」旨のコメントを表示装置54に表示する。信号処理回路52が上記信号を受信するまで、表示用回路53は表示装置54に上記コメントを表示し続ける。
【0065】
ここで、信号処理回路52は、上記信号を映像処理回路10から受信できない場合、人体検出モードには入らない。すなわち、センサー17が突起12が凹部15へ勘合したことを検出しない間、撮像素子3は被写体を撮影しない。よって、ユーザが意図しない時に誤って高精細な画像を撮影することを防止できる。
【0066】
(フィルター30aの手動による移動)
ユーザが意図して高精細な画像を撮影しない場合、つまり、センサーとして当該カメラモジュールが動作する場合は、突起12が凹部15に勘合した状態である。凹部15は、凹部14と異なり、内部に解除部材を有していない。また、当該状態において、映像処理回路10および信号処理回路52は、相互に信号を送受信することはない。すなわち、カメラモジュール20aは、当該状態を解除し突起12が凹部14に勘合する位置へ自動的に移動させる手段は有していない。よって、突起12を凹部15から解除し、凹部14に勘合させる状態にするためには、ユーザが手動によりフィルター30aを移動させることが必要である。換言すると、ユーザが意図しないときに可視光透過フィルター9がレンズ5を覆うことにはならない。その結果、ユーザが意図しない時に高精細な画像が撮影されることを防止できる。
【0067】
なお、本発明は以下の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
(カメラモジュールを内蔵した電子機器)
カメラモジュール20は、電子機器に外付けで接続される場合に限らず、電子機器に内蔵することもできる。カメラモジュール20を電子機器に内蔵した場合も、電子機器に外付けで接続した場合と同様な仕組みである。ユーザが意図して撮影する場合、可視光透過フィルター9がレンズ5を覆う位置にフィルター30を筺体1へ固定することにより、高精細の画像を得ることができる。また、ユーザが意図して撮影する場合以外のセンサーとして使用する場合、可視光散乱フィルター8がレンズ5を覆う位置にフィルター30を筺体1へ固定することにより、被写体の識別が不完全になり、かつ人体検出には必要となる解像度の画像を得ることができる。
【0069】
(開口部)
フィルター30には、必ずしも、可視光透過フィルター9が設けられている必要は無い。その代わりに、フィルター30には開口部が形成されていてもよい。可視光は開口部をそのまま透過するので、フィルター30は、開口部が形成されている場合も、可視光透過フィルター9が設けられている場合と同様の機能を発揮できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のカメラモジュールは、高精細な画像を撮影する用途および人体検出センサーとしての用途の両方が可能なカメラモジュールとして、幅広く利用できる。また、当該カメラモジュールを備えた電子機器は、パソコンおよびテレビ等の各種の電子機器として幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 筺体
2 プリント基板
3 撮像素子
4 レンズホルダー
5 レンズ
8 可視光散乱フィルター(可視光散乱部)
9 可視光透過フィルター(可視光透過部)
10 映像処理回路
12 突起
13 溝
14 凹部
15 凹部
16 センサー
17 センサー
18 解除部材
19 押圧部材
20 カメラモジュール
20a カメラモジュール
30 フィルター
30a フィルター
50 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、撮影方向からの入射光を撮像素子へ集光させるレンズとを備えるカメラモジュールであって、
前記レンズにおける光の入射する側に配置され、前記入射光に対して垂直方向に移動可能であり、前記入射光を散乱させる可視光散乱部と前記入射光を透過させる可視光透過部とを有するフィルターを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記可視光散乱部は、光を散乱させるフィラーを含有していることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記可視光散乱部の表面には、光を散乱させるシボ加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記可視光透過部は、前記フィルターに形成された開口部であることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に配置されていることを検出する検出手段をさらに備え、
前記可視光透過部が前記レンズを覆う位置から前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に前記フィルターが移動するときは、前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に配置されていることを前記検出手段が検出するまで、前記撮像素子による撮影は行わないことを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記可視光透過部が前記レンズを覆う位置から前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置に、前記フィルターを制御信号に基づき自動的に移動させる手段をさらに備えており、
前記可視光散乱部が前記レンズを覆う位置から前記可視光透過部が前記レンズを覆う位置に、前記フィルターを制御信号に基づき自動的に移動させる手段を備えていないことを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のカメラモジュールを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−145830(P2012−145830A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5122(P2011−5122)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】