説明

カメラモジュール

【課題】衝撃によってカメラモジュールの内部において塵埃が生じた場合でも、良好な画像を取得することができるカメラモジュールを提供すること。
【解決手段】ベース12は、カバー2側に位置するベース12の上面部分に凹状の塵埃保持部12cを有すると共に、ベース12の上面部分においてベース12の孔12aの周囲全周に渡り塵埃落下防止壁12bを有し、塵埃保持部12cの表面には落下した塵埃を吸着可能な塵埃吸着層12dが設けられており、カバー2とベース12との間の空間において発生した塵埃がベース12の上面部分に落下した際、当該塵埃がベース12の孔12aに落下することが塵埃落下防止壁12bにより阻止され、当該塵埃が塵埃保持部12cの表面に設けられている塵埃吸着層12dに吸着されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールに関し、さらに詳しくは、比較的小型のデジタルカメラやカメラ付携帯電話などのカメラ付き小型電子機器に用いることができるカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小型のデジタルカメラなどにおいて、オートフォーカスやズーム等を目的として、コイルに流れる電流により発生する磁界と、ヨーク及びマグネットにより構成された磁気回路の磁界との相互作用によって、光軸方向にレンズユニットを変位させることができるカメラモジュールが使用されている。
【0003】
このようなカメラモジュールには、レンズユニットを保持しているバレル、及びこのバレルを保持しているホルダを光軸方向に変位可能に支持するための板バネが使用されている。
【0004】
図3は、このようなカメラモジュールのレンズユニット(図示せず)を光軸方向に変位させるためのアクチュエータ機構100の分解斜視図である。なお、撮像素子(図示せず)はベース111の下方に配置されている。
【0005】
カバー101とベース111との間の空間には、レンズユニットを保持するバレル(図示せず)を保持しているホルダ108がレンズユニットの光軸方向へ変位可能に収容されている。
【0006】
ホルダ108のカバー101側(上方)及びベース111側(下方)の各円筒縁部には上部板バネ104の内環部104bと下部板バネ110の内環部110bがそれぞれ接着されており、上部板バネ104の外環部104aはベース111に固定されているヨーク105の上面に取り付けられており、下部板バネ110の外環部110aはベース111に接着されている。また、このホルダ108の上縁部には、符号102により示すストッパが部材が上部板バネ104の内環部104bの上面に接着されている。
【0007】
この上部板バネ104と下部板バネ110のそれぞれの外環部104a、110aと内環部104b、110bとの間に形成されている各3本の架橋部104c、110cが撓むことによりホルダ108がレンズユニットの光軸方向へ変位することができる。
【0008】
上記ヨーク105には複数のマグネット106が接着されており磁気回路を構成している。そしてこの磁気回路により形成された磁界にコイル107が配置されている。このコイル107はホルダ108の外周に設けられており、コイル107に電流を供給することによりホルダ108をレンズユニットの光軸方向へ変位させる駆動力を得る。なお、図6において、符号109により示す部材は下部板バネ110とヨーク105の底面との間に装着されるプレートである。また、コイル107へ電流を供給するためにリング状のフレキシブルプリント基板103が下部板バネ110の外環部110aの下方に設けられている。
【0009】
図4に示すようにベース111の中央には孔111aが形成されている。孔111aの周囲には縁部111bとベース上面部分111cが形成されており、ベース上面部分111cは縁部111bへ連続する平坦な形状を有している。
【0010】
上記アクチュエータ機構100において、カバー101、ストッパ102、ホルダ108、ベース111の各部材は、骨材としてのガラスフィラーを含有した合成樹脂製の成型部材である。
【0011】
上記のようなアクチュエータ機構100に類似するアクチュエータ機構が特許文献1に開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開2004-280031
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のようにアクチュエータ機構100は、骨材としてのガラスフィラーを含有した合成樹脂製のカバー101、ストッパ102、ホルダ108、ベース111を有している。このため、このカメラモジュールを搭載している小型電子機器を誤って落下させた場合、当該落下衝撃によって、これら成型部材から剥離した合成樹脂やガラスフィラーから成る塵埃が発生することがある。この塵埃は、ベース111のベース上面部分111c上に落下し、次に縁部111bから孔111a内へ落下し、最後に撮像素子の撮像エリアに配設されている上部リッドガラス(図示せず)の表面に落下する場合がある。このように塵埃が上部リッドガラス表面に落下して付着すると、このカメラモジュールにより取得された画像にしみ状の黒点が生じるという問題がある。
【0014】
本発明は上記問題点に鑑み、衝撃によってカメラモジュールの内部において塵埃が生じた場合でも、良好な画像を取得することができるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るカメラモジュールは、カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニットと、前記レンズユニットを収容する円筒状のホルダと、前記ホルダの周囲に設けられている円筒状のコイルと、前記コイルに磁界を提供するヨーク及びマグネットと、前記ホルダを支持する板バネと、前記板バネを支持すると共に中央に孔が形成されているベースと、前記ベースの上方に配置されているカバーと、前記レンズユニットの下方に配置されている撮像素子とを有するカメラモジュールであり、前記ベースは、前記カバー側に位置する前記ベースの上面部分に凹状の塵埃保持部を有すると共に、前記ベースの上面部分において前記ベースの前記孔の周囲全周に渡り塵埃落下防止壁を有し、前記塵埃保持部分の表面には落下した塵埃を吸着可能な塵埃吸着層が設けられており、前記カバーと前記ベースとの間の空間において発生した塵埃が前記ベースの上面部分に落下した際、当該塵埃が前記ベースの前記孔に落下することが前記塵埃落下防止壁により阻止され、当該塵埃が前記塵埃保持部分の表面に設けられている前記塵埃吸着層に吸着されることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係るカメラモジュールは、前記塵埃保持部分の表面に設けられている前記塵埃吸着層がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂による薄膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明に係るカメラモジュールは、ベースが、カバー側に位置するベースの上面部分に凹状の塵埃保持部を有すると共に、ベースの上面部分においてベースの孔の周囲全周に渡り塵埃落下防止壁を有し、塵埃保持部分の表面には落下した塵埃を吸着可能な塵埃吸着層が設けられている。本発明に係るカメラモジュールを搭載している小型電子機器を誤って落下させた場合、当該落下衝撃によってカバーとベースとの間の空間において塵埃が発生した場合でも塵埃が撮像素子の撮像エリアに配設されている上部リッドガラスの表面に落下しない。これは発生した塵埃がベースの上面部分に落下した際、当該塵埃がベースの孔に落下することが塵埃落下防止壁により阻止され、また、当該塵埃が塵埃保持部分の表面に設けられている塵埃吸着層に吸着されるからである。従って、衝撃によってカメラモジュールの内部において塵埃が生じた場合でも、良好な画像を取得することができる。
【0018】
さらに、請求項2記載の発明に係るカメラモジュールは、塵埃吸着層がエポキシ樹脂又はアクリル樹脂による薄膜であり、塵埃保持部分の表面に落下した塵埃を吸着することができる。従って、塵埃保持部分の表面に落下した塵埃が確実に吸着されるため、当該塵埃の孔内への落下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態のカメラモジュールについて添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態のカメラモジュールは、カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニット(図示せず)と、レンズユニットを収容する円筒状のホルダ8と、ホルダ8の周囲に設けられている円筒状のコイル7と、コイル7に磁界を提供するヨーク5及びマグネット6と、ホルダ8を支持する板バネ104、110と、板バネ110を支持すると共に中央に孔12aが形成されているベース12と、ベース12の上方に配置されているカバー2と、レンズユニットの下方に配置されている撮像素子(図示せず)とを有するカメラモジュールであり、ベース12は、カバー2側に位置するベース12の上面部分に凹状の塵埃保持部12cを有すると共に、ベース12の上面部分においてベース12の孔12aの周囲全周に渡り塵埃落下防止壁12bを有し、塵埃保持部12cの表面には落下した塵埃を吸着可能な塵埃吸着層12dが設けられており、カバー2とベース12との間の空間において発生した塵埃がベース12の上面部分に落下した際、当該塵埃がベース12の孔12aに落下することが塵埃落下防止壁12bにより阻止され、当該塵埃が塵埃保持部12cの表面に設けられている塵埃吸着層12dに吸着されることを特徴とする。
【0020】
最初に図1を参照しつつ本実施形態のカメラモジュールのアクチュエータ機構1について説明する。なお、撮像素子はベース12の下方に配置されている。
【0021】
カバー2とベース12との間の空間には、レンズユニットを保持するバレル(図示せず)を保持しているホルダ8がレンズユニットの光軸方向へ変位可能に収容されている。
【0022】
ホルダ8は骨材としてのガラスフィラーを含有した合成樹脂製の円筒状部材であり、その周囲にコイル7が設けられている。ホルダ8の上下の各円筒縁部には上部板バネ4の内環部4bと下部板バネ10の内環部10bがそれぞれ接着されており、上部板バネ4の外環部4aはベース12に固定されているヨーク5の上面に取り付けられており、下部板バネ10の外環部10aはベース12に接着されている。また、このホルダ8の上縁部には、符号3により示すストッパが部材が上部板バネ4の内環部4bの上面に接着されている。このストッパ3は骨材としてのガラスフィラーを含有した合成樹脂製のリング状の部材であり、ホルダ8の過度の変位の際にカバー2の裏面と接触することにより、ホルダ8の上方への変位範囲を規制する。
【0023】
上部板バネ4及び下部板バネ10はベリリウム銅製の金属板を打抜き加工したものであり、それぞれリング状の外環部4a、10aと、この外環部4a、10aと同軸に配置されているリング状の内環部4b、10bを有している。内環部4b、10bは3本の架橋部4c、10cにより外環部4a、10aに支持されている。この架橋部4c、10cは円弧状の形状を有し、外環部4a、10aの内周縁と内環部4b、10bの外周縁に沿うように延在している。そして、各3本の架橋部4c、10cが撓むことによりホルダ8がレンズユニットの光軸方向へ変位することができる。
【0024】
上記ヨーク5には複数のマグネット6が接着されており磁気回路を構成している。そしてこの磁気回路により形成された磁界にコイル7が配置されている。このコイル7はホルダ8の外周に巻回されており、コイル7に電流を供給することによりホルダ8をレンズユニットの光軸方向へ変位させる駆動力を得る。なお、符号9により示す部材は下部板バネ10とヨーク5の底面との間に装着されるプレートであり、また、符号11により示す部材は、コイル7へ電流を供給するためのフレキシブルプリント基板である。
【0025】
ベース12は、骨材としてのガラスフィラーを含有した合成樹脂製の成型部材である。図1及び図2に示すように、ベース12の中央には孔12aが形成されている。この孔12aは、ホルダ8の内部に支持されているレンズユニットからの出射光をベース12の下方に配設されている撮像素子に導入するためのものである。この孔12aの下方には撮像素子の撮像エリアに配設されている上部リッドガラス(図示せず)が位置している。
【0026】
カバー2側に位置するベース12の上面部分には、凹状の塵埃保持部12cが形成されている。この塵埃保持部12cの表面には塵埃吸着層12d設けられている。この塵埃吸着層12dは、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂等の定着性及び軟性を有する合成樹脂を塗布することにより形成された合成樹脂の薄膜であり、ベース12の上面部分に落下した塵埃を吸着することができる。なお、この塵埃吸着層12dは、本実施形態において、ベース12の上面部分全体に設けられている。
【0027】
さらに、ベース12の上面部分においてベース12の孔12aの周囲全周に渡り塵埃落下防止壁12bが形成されている。塵埃落下防止壁12bは、図1及び図2に示すように、カバー側に向かって突出した壁面であり、上記凹状の塵埃保持部12cの一部分を構成している。即ち、この塵埃落下防止壁12bは、塵埃保持部12cの凹部を構成する垂直壁面の一部であり、塵埃保持部12dに落下した塵埃がベース12の孔12aに落下することを阻止している。
【0028】
以下、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態のカメラモジュールは、ベース12が、カバー2側に位置するベース12の上面部分に凹状の塵埃保持部12cを有すると共に、ベース12の上面部分においてベース12の孔12aの周囲全周に渡り塵埃落下防止壁12bを有し、塵埃保持部12cの表面には落下した塵埃を吸着可能な塵埃吸着層12dが設けられている。本実施形態のカメラモジュールを搭載している小型電子機器を誤って落下させた場合、当該落下衝撃によってカバー2とベース12との間の空間において塵埃が発生した場合でも塵埃が撮像素子の撮像エリアに配設されている上部リッドガラスの表面に落下しない。これは発生した塵埃がベース12の上面部分に落下した際、当該塵埃がベース12の孔12aに落下することが塵埃落下防止壁12bにより阻止され、また、当該塵埃が塵埃保持部12cの表面に設けられている塵埃吸着層12dに吸着されるからである。従って、衝撃によってカメラモジュールの内部において塵埃が生じた場合でも、良好な画像を取得することができる。
【0029】
さらに、本実施形態のカメラモジュールは、塵埃吸着層12dがエポキシ樹脂又はアクリル樹脂による薄膜であり、塵埃保持部12cの表面に落下した塵埃を吸着することができる。従って、塵埃保持部12cの表面に落下した塵埃が確実に吸着されるため、当該塵埃の孔12a内への落下を防止することができる。
【0030】
なお、上記実施形態における塵埃保持部や塵埃落下防止壁の形状や延在範囲は一例であり、ベース等の形状に応じて他の形状等に変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る実施形態のカメラモジュールのアクチュエータ機構1の分解斜視図である。
【図2】図1に示すカメラモジュールのベース12の拡大斜視図である。
【図3】従来のカメラモジュールのアクチュエータ機構100の分解斜視図である。
【図4】図3に示すカメラモジュールのベース111の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1、100 アクチュエータ機構
2、101 カバー
3、102 ストッパ
4、104 上部板バネ
4a、10a、104a、110a 外環部
4b、10b、104b、110b 内環部
4c、10c、104c、110c 架橋部
5、105 ヨーク
6、106 マグネット
7、107 コイル
8、108 ホルダ
9、109 プレート
10、110 下部板バネ
11、103 フレキシブルプリント基板
12、111 ベース
12a、111a 孔
12b 塵埃落下防止壁
12c 塵埃保持部
12d 塵埃吸着層
111b 縁部
111c ベース上面部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールの光学系を構成するレンズユニットと、
前記レンズユニットを収容する円筒状のホルダと、
前記ホルダの周囲に設けられている円筒状のコイルと、
前記コイルに磁界を提供するヨーク及びマグネットと、
前記ホルダを支持する板バネと、
前記板バネを支持すると共に中央に孔が形成されているベースと、
前記ベースの上方に配置されているカバーと、
前記レンズユニットの下方に配置されている撮像素子とを有するカメラモジュールにおいて、
前記ベースは、前記カバー側に位置する前記ベースの上面部分に凹状の塵埃保持部を有すると共に、前記ベースの上面部分において前記ベースの前記孔の周囲全周に渡り塵埃落下防止壁を有し、
前記塵埃保持部分の表面には落下した塵埃を吸着可能な塵埃吸着層が設けられており、
前記カバーと前記ベースとの間の空間において発生した塵埃が前記ベースの上面部分に落下した際、当該塵埃が前記ベースの前記孔に落下することが前記塵埃落下防止壁により阻止され、当該塵埃が前記塵埃保持部分の表面に設けられている前記塵埃吸着層に吸着されることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記塵埃保持部分の表面に設けられている前記塵埃吸着層はエポキシ樹脂又はアクリル樹脂による薄膜であることを特徴とする請求項1記載のカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−111962(P2008−111962A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294303(P2006−294303)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】