説明

カメラ装置の撮像面調整方法、及び撮像面調整装置

【課題】短時間で設定ができ、かつ低コストで精度の高い撮像結果が得られるカメラ装置の撮像面調整方法、及び撮像面調整装置を提供する。
【解決手段】レンズ11aの光軸が測定軸線と平行になるように治具に固定するレンズ取付部材固定工程と、撮像素子14を装着した基板が取付けられた基板取付部材13をレンズ取付部材12に向かって付勢された状態で測定軸線と平行方向に移動可能に治具に装架する撮像素子装架工程と、撮像素子14の撮像面14aの変位を測定する変位測定工程と、レンズ取付部材12に対する基板取付部材13の相対傾きおよび相対位置を調整する3個の調整固定機構70を変位測定結果に応じて作動して、撮像面14aがレンズ11aから所定距離に位置しレンズの光軸に対して直角となるように基板取付部材13をレンズ取付部材12に調整して固定する調整固定工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラのようなカメラ装置に関し、被写体をレンズにより撮像素子に結像して撮像するカメラ装置の撮像面調整方法、及び撮像面調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被写体光をCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子に結像するデジタルカメラが普及している。このような撮像素子においては、被写体光を結像するレンズの光軸に対する撮像素子の撮像面の垂直度は大変重要であり、従来、撮像素子の周辺の部材を精度良く加工することによって要求垂直度に対応していた。
【0003】
しかし、撮像素子をより大型化する要求もあり、この結果レンズの光軸に対する撮像面の垂直度が不充分、即ち、撮像面が理想のピント面に対して傾いていると、画像の中央部で焦点が合っていても、中央部から距離の離れた周辺部では焦点距離が大きくずれてピンぼけになる虞がある。このような問題を解決するため、従来のように加工のみによって対応するにはコスト的、及び技術的に限度があり、撮像素子の傾きを簡単に調整できるように構成することが必要になってきた。
【0004】
この一例として、撮像素子の傾き調整装置が特許文献1、2に開示されている。特許文献1においては、撮像素子が組付けられた画像センサユニットが、レンズが取付けられるケーシングに螺合する調整ねじ機構である3つのスペーサボルト5を介して接続されている。そして、3つのスペーサボルト5をボルト軸周りに回転することによりスペーサボルト5がケーシングに対し上下に相対移動し、延いてはスペーサボルト5に接続される画像センサユニットの3つの対応位置がケーシングに対し上下動してケーシングに取付けられるレンズの光軸と撮像素子面とが垂直になるよう調整される。
【0005】
また特許文献2においては、固定板2が準備され、固定板2には突起20が突設され、撮像素子10が突起20を介して固定板2と固定されている。そして撮像素子10の撮像面に対する固定板2の面の角度を三次元測定器によって測定し、撮像素子と固定板との角度が平行になるように撮像素子または固定板を傾け、これによってレンズの光軸と撮像素子面とが垂直になるよう調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−94731号公報
【特許文献2】特開2008−278124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるものでは、撮像素子面の傾きを調整するための3カ所のねじ機構は示されているものの、調整すべき傾き量を導出するための撮像素子面の傾きの測定の方法は示されておらずコスト面、及び精度に不安がある。
【0008】
また特許文献2に開示されるものでは、固定板2の面の角度をシステムが複雑で、且つ高価な三次元測定器によって測定するため、コストが高くなるとともに、設定に時間がかかるという課題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、短時間で設定ができ、かつ低コストで精度の高い撮像結果が得られるカメラ装置の撮像面調整方法、及び撮像面調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係るカメラ装置の撮像面調整方法の発明の特徴は、カメラ装置のレンズが取付けられるレンズ取付部材を前記レンズの光軸が測定軸線と平行になるように治具に固定するレンズ取付部材固定工程と、前記カメラ装置の撮像素子を装着した基板が取付けられた基板取付部材を前記治具に固定された前記レンズ取付部材に向かって弾機的に付勢された状態で前記測定軸線と平行方向に移動可能に前記治具に装架する撮像素子装架工程と、前記撮像素子の撮像面の離間した少なくとも3箇所の測定位置の前記測定軸線方向変位を測定する変位測定工程と、前記レンズ取付部材に対する前記基板取付部材の相対傾きおよび前記測定軸線方向の相対位置を調整する少なくとも3個の調整固定機構を前記変位測定工程での測定結果に応じて作動して、前記撮像素子の撮像面が前記レンズから所定距離に位置し且つ前記レンズの光軸に対して直角となるように前記基板取付部材を前記レンズ取付部材に調整して固定する調整固定工程と、を備えたことである。
【0011】
上記課題を解決するため、請求項2に係る撮像面調整方法の発明の特徴は、請求項1において、前記少なくとも3個の調整固定機構の各位置および前記少なくとも3箇所の測定位置の前記測定軸線と直角な平面内における相対位置関係を既知値とし、前記変位測定工程での測定結果および前記相対位置関係に基づいて前記少なくとも3個の調整固定機構を調整することである。
【0012】
上記課題を解決するため、請求項3に係る撮像面調整装置の発明の特徴は、カメラ装置のレンズが取付けられるレンズ取付部材の基準面を前記レンズの光軸が測定軸線と平行になるように基準座面に当接させて前記レンズ取付部材を治具に着脱可能に固定するレンズ取付部材固定装置と、前記カメラ装置の撮像素子を装着した基板が取付けられた基板取付部材を前記治具に固定された前記レンズ取付部材に向かって弾機的に付勢された状態で前記測定軸線と平行方向に移動可能に前記治具に装架する撮像素子装架装置と、前記撮像素子の撮像面の離間した少なくとも3箇所の測定位置の前記測定軸線方向変位を測定する変位測定装置と、前記撮像素子の撮像面が前記レンズから所定距離に位置し且つ前記レンズの光軸に対して直角となるように前記レンズ取付部材に対する前記基板取付部材の相対傾きおよび前記測定軸線方向の相対位置を調整して固定するための少なくとも3個の調整固定機構と、を備えたことである。
【0013】
上記課題を解決するため、請求項4に係る撮像面調整装置の発明の特徴は、請求項3において、前記調整固定機構は、外周面に形成され前記レンズ取付部材と螺合する雄ねじ、後端に設けられ回転工具と係合する係合部、先端に設けられ前記基板取付部材と当接する当接部、および中心を貫通する軸穴が設けられた調整ボルトと、頭部が前記レンズ取付部材と当接し軸部が前記調整ボルトの軸穴を貫通して前記基板取付部材と螺合する固定ボルトと、を有することである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の撮像面調整方法の発明によれば、レンズ取付部材固定工程によってレンズ取付部材が、取付けられるレンズの光軸が測定軸線と平行になるように治具に固定される。次に撮像素子装架工程によって撮像素子が固定される基板取付部材が測定軸線と平行方向に移動可能に治具に装架される。そして変位測定工程によって撮像素子の撮像面の少なくとも3箇所の測定位置の測定軸線方向変位が測定され、測定された変位の結果に応じ調整固定工程の調整固定機構によって撮像素子の撮像面がレンズから所定距離に位置し且つレンズの光軸に対して直角となるように基板取付部材が調整される。これにより測定軸線と直交するよう調整された撮像素子の撮像面は、調整後にレンズが取付けられたときにはレンズの光軸とも良好に直交するため、撮像面の全面に亘ってピントを合わせることができる。
【0015】
また、レンズ取付部材にレンズを取付けない状態で測定位置である撮像面の変位を測定し撮像素子の撮像面の位置、及び傾きが測定でき、該測定データに基づいて位置、及び傾きの調整ができるので、レンズを取付けた状態で調整する場合と比較し調整のための工数の低減を図ることができる。
【0016】
請求項2の撮像面調整方法の発明によれば、少なくとも3個の調整固定機構の各位置および少なくとも3箇所の測定位置の測定軸線と直角な平面内における相対位置関係を既知値とし、該既知値と変位測定工程の測定結果とから3個の各調整固定機構のそれぞれ調整すべき寸法を算出し、該算出値に基づいて各調整固定機構を調整する。これにより各調整固定機構の目標調整値に素早く到達でき調整のための工数が低減できる。
【0017】
請求項3の撮像面調整装置の発明によれば、請求項1の方法を用いた撮像面調整装置であり、請求項1と同様の効果が得られる。
【0018】
請求項4の撮像面調整装置の発明によれば、調整固定機構は、外周面に雄ねじが形成されてカメラ装置内部のレンズ取付部材に螺合し、後端の係合部で回転工具と係合して軸周りに回転されるようになっている。また調整固定機構の軸中心には貫通孔が設けられ該貫通孔を貫通する固定ボルトによって調整固定機構の固定ができる。このようにコンパクトな調整固定機構によって撮像面の位置、及び傾きの調整をするのでカメラ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態に係るカメラ装置の上面図である。
【図2】レーザ変位測定装置、およびレーザ変位測定装置にセットされたカメラ装置、及び撮像面調整装置の側面図である。
【図3】第1の実施形態に係るカメラ装置、及び撮像面調整装置の上面図であり、図2のQ視図である。
【図4】図1の4−4断面図である。
【図5】図3の5−5断面図である。
【図6】図3の6−6断面図である。
【図7】レーザ変位計の構造図である。
【図8】第1の実施形態に係る工程のフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係るカメラ装置、及び撮像面調整装置の上面図である。
【図10】第2の実施形態に係る調整ボルトの変位Mと各測定位置での変位mとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる第1の実施形態のカメラ装置10、及び撮像面調整装置30について図1乃至図8に基づいて説明する。撮像面調整装置30はカメラ装置10を固定し、カメラ装置10が有するイメージセンサであるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサからなる撮像素子14の撮像面14aの位置、及びカメラレンズの光軸に対する直角度を調整するためのものである。なお、撮像素子14はCCDセンサでもよい。
【0021】
図1はカメラ装置10の概略上面図である。カメラ装置10は撮像面調整時に取外されるレンズ保持部材11(レンズ11a含む)を含んでいる。図2は、撮像面調整時においてレンズ保持部材11が取外された状態のカメラ装置10の撮像面調整装置30への取付状態側面図である。また、図3は、図2におけるQ視図である。なお、本実施形態の説明において、方向を示す特別な説明がない場合にはレンズ11aの光軸方向を上下方向とし、後述する撮像面調整装置30が有するレーザ変位計41側を上側とする。
【0022】
まずカメラ装置10について説明する。図4に示すように、カメラ装置10は上方に位置する被写体21からの光をレンズ保持部材11が有するレンズ11aによって撮像素子14の撮像面14a上に結像する。そして撮像素子14は撮像面14a上に結像された光の強弱に応じ発生される信号電荷によってデジタル信号に変換し被写体を撮像する。そして図示しない撮像素子14の後段には撮像素子14から出力される信号電荷をデジタル信号に変換し、さらに変換したデジタル信号を映像化する各回路を有している。
【0023】
図1、図4に示すようにカメラ装置10は、レンズ11aを保持するレンズ保持部材11を有している。前述したようにレンズ保持部材11は撮像面14aの位置(直角度含む)の調整時にはカメラ装置10から取り外されており、調整後に、撮像のためにカメラ装置10に取付けられる部材である。また、カメラ装置10は、レンズ保持部材11が螺着されるレンズ取付部材12と、レンズ取付部材12と一体的に固定される基準プレート16と、撮像素子14が実装される基板15と、基板15が取付けられる基板取付部材13と、を有している。
【0024】
レンズ保持部材11は上端側に有した円環状の鍔部11bと、鍔部11bの下方に設けられ鍔部11bと同軸で形成される円筒部11cと、を有している。円筒部11cの外周面にはレンズ取付部材12の内周面と螺着する雄ねじ11dが螺設されている。そしてレンズ保持部材11をレンズ取付部材12に螺着させるため軸周りに回転させていくと、やがて鍔部11bの下面とレンズ取付部材12の上面に形成される基準面12aとが当接し、レンズ保持部材11がレンズ取付部材12に固定される。このときレンズ保持部材11の雄ねじ11dの回転軸線Lと鍔部11bの下面との直角度が精度よく得られるよう各部がそれぞれ良好に形成されている。
【0025】
円筒部11cの円筒内には、光軸が雄ねじ11dの回転軸線Lと略同軸となるようレンズ11aが設けられている。レンズ11aは外周が円形のレンズであり円形の外周部が円筒部11cの内周の所定の深さに固定されている。ここで所定の深さとは、被写体光がレンズ11aによって撮像面14a上にピントが合って良好に結像される位置である。
【0026】
図1、図3に示すように、レンズ取付部材12は上面視が略8角形状に形成されたフランジ12bと、フランジ12bの略中央部で上方に突設され内周部が上下方向に貫通する円筒部12cと、を有している(図4参照)。また円筒部12cの内周部には、レンズ保持部材11の雄ねじ11dが螺合するための雌ねじ12hが上下方向全長に亘って設けられている。
【0027】
円筒部12c上面には前述した基準面12aが設けられている。基準面12aと雌ねじ12hの軸線との間には直角度が精度よく確保されるように加工によってそれぞれが良好に形成されている。
【0028】
断面図4、図5に示すように、レンズ取付部材12のフランジ12bの下面には、基準プレート16の上面が当接し、所定の半径円周上に等配に4カ所設けられたボルト31によってレンズ取付部材12と基準プレート16とが一体的に固定されている(図1、図3参照)。なお、本実施形態においてはレンズ取付部材12と基準プレート16とは別体で設けたが、一体で形成してもよく、本実施形態においてはレンズ取付部材12と基準プレート16とは一体とみなしてもよい。
【0029】
また、フランジ12bには所定の半径円周上に等配に3カ所、上下方向に貫通する各貫通孔12eが設けられている。各貫通孔12eは、基準プレート16の下方で基準プレート16との間に所定の隙間を有して平行に配置される基板取付部材13と基準プレート16とを固定するための固定ボルト73の頭部73aの逃がし孔である。貫通孔12eの位置にそれぞれ対応する基準プレート16の各対向位置には、雌ねじ16gがそれぞれ貫通して螺設されている。雌ねじ16gのねじ径は貫通孔12eの内径より所定量だけ小さく形成されている。ここでいう所定量は、貫通孔12eの上面視において、貫通孔12e内の雌ねじ16gの外縁の平面部(基準プレート16上面)に所定の径の平ワッシャ74が載置できる量である。
【0030】
また、図1、図3においてフランジ12bの左右両端にはそれぞれ2カ所ずつ各貫通孔12fが設けられている。各貫通孔12fは、後に詳述する基板取付部材13を装架するためにフランジ12bの下面に取付けられる4つのL字部材64をそれぞれ螺着して固定する固定ボルト63の軸63bの挿通孔である。
【0031】
基準プレート16は、レンズ取付部材12と略同形状に形成されるが図1における左右方向が若干短かく形成されている。そして図1、図3に示す切断線4−4、5−5で切断した切断側面図4、図5に示すように、中心部には2段の段付き孔を有している。段付き孔は上方の方の径が大きく下方に向かって順次、小さくなっており、上方から段孔16a、段孔16b、及び段孔16c(貫通孔)が形成されている。段孔16aの径はレンズ取付部材12の円筒内周に形成された雌ねじ12hの内径よりも若干小さな径で形成されている。段孔16cは、段孔16cの下方に配置される撮像素子14の上面視矩形形状が段孔16c内に全て収まる大きさにて形成されている。これにより、上方のレーザ変位計41から照射されるレーザが段孔16cに妨げられることなく撮像素子14の撮像面14a上に到達し、且つ反射することによって撮像面14aの変位(距離)を測定できる。
【0032】
段孔16bは、段孔16aと段孔16cとの中間の径で形成され、段孔16bの下端と段孔16cの上端との間には基準プレート16の上下面と平行な受け面16dが形成されている。そして受け面16d上に段孔16bの径より若干小さな外径の透明なガラスプレート17が載置されている。ガラスプレート17の厚さは段孔16bの高さより若干厚くなっている。
【0033】
また段孔16aの下端と段孔16bの上端との間には基準プレート16の上下面と平行な受け面16eが形成されている。そして受け面16e上には段孔16bの径より若干小さな外径を有する円環状の弾性部材である例えば樹脂材やゴムによって形成されるクッション材18がガラスプレート17の上面外周部と受け面16eとに跨がって載置されている。
【0034】
また、クッション材18の上面にはクッション材18と略同形状に形成された円環状の押さえ部材であるリング19が載置されている。リング19も弾性を有し、クッション材18と同様に上下方向に押圧されたときに圧縮されて寸法を吸収することができる。
【0035】
このような状態で、上方からレンズ保持部材11がレンズ取付部材12に螺着されるとレンズ保持部材11の下面11eがリング19の上面を押圧しクッション18を介してガラスプレート17を固定する。このようにガラスプレート17があることにより撮像素子14上にゴミなどが落下する虞が無くなり、信頼性が向上する。なお、本実施形態においては、撮像素子14の上下方向における位置(傾きを含む)を調整する際にはレンズ保持部材11をレンズ取付部材12に取付けずに実施するものであり、これによって調整工数の低減が図られている。よって上記は調整後についての説明である。
【0036】
また、本実施形態においては撮像素子14の撮像面14aの各測定位置でのレンズ11aからの相対位置である変位(距離)が全て所定の範囲に入るよう調整することによって、撮像面14aの傾きを抑制している。このため、以降の説明において変位(距離)の調整をするといった場合には傾きの調整も同時に含むものとする。
【0037】
次に基板取付部材13について説明する。図1に示すように基板取付部材13の外径形状はレンズ取付部材12よりも一回り小さな8角形状で形成され、基板取付部材13の略中心部には貫通孔13aを有している。基板取付部材13は、レンズ取付部材12、及びレンズ取付部材12に固定される基準プレート16の下方に面が若干離間して平行に配置される。
【0038】
レンズ取付部材12に設けた貫通孔12e、及び基準プレート16に設けた雌ねじ16gの位置と下方向で対応する基板取付部材13の上面側位置には貫通孔12eと略同径で所定深さを有する各ザグリ部20が設けられている。各ザグリ部20の底面20aは、後述する調整ボルト71の回転時に調整ボルト71の底面である当接部71cと当接して滑らかに摺動するため、例えば面粗度を精度よく仕上げたり、フッソ樹脂等の表面処理を追加する等して摺動抵抗を低減させている。また各ザグリ部20の底面20aの中心部には雌ねじ13bが所定の深さで設けられている。なお雌ねじ13bは貫通していてもよい。
【0039】
基板取付部材13には撮像素子14が半田付けして装着された基板15が固定されている。基板15は撮像素子14側を上方に向け、基板取付部材13の下方から基板15の上面外縁部を基板取付部材13の下面に当接させ図示しないねじで固定している。撮像素子14は、基板取付部材13の貫通孔13aを通過し撮像面14aを上方に向けている。このように固定された撮像素子14は、撮像面14aの略全面がレンズ11aから所定の距離の許容範囲内にあり、その結果としてレンズ11aの光軸と良好な直角度が保持されていないと、全面でピントの合った撮像結果を得ることができない。このため後述の調整固定機構70によって撮像面14aを直接作動させて許容範囲内に入るよう調整する。なお、このとき撮像面14aと撮像面14aの上方に配置されるガラスプレート17との間には所定の隙間が確保されている。
【0040】
次に撮像面調整装置30について図2、図3、図5、図6に基づいて説明する。撮像面調整装置30は、変位測定装置5と、レンズ取付部材固定装置50と、撮像素子装架装置60と、3個の調整固定機構70と、を有している。
【0041】
変位測定装置5は、床面FL上に固定される基台6と、基台6の基準面となる上面6aの後端に立設される支持台7と、支持台7に支持され、支持台7に沿って上下方向に移動可能なヘッド部8と、ヘッド部8に支持されヘッド部8によってXY平面上を移動可能なレーザ変位計41とを有している。ヘッド部8およびレーザ変位計41の作動は図略の制御装置によって制御されている。またレーザ変位計41は、基台6の上面6aとレーザ変位計41の測定軸線とが良好に直交するよう図略の調整機構を有している。
【0042】
レーザ変位計41はカメラ装置10の撮像素子14の撮像面14aの離間した少なくとも3箇所(本実施形態においては4カ所)の各測定位置A、B、C、D(図1、図3参照)の測定軸線方向の変位(距離)を測定する。レーザ変位計41は図2、図5、図6に示すように撮像素子14の上方に配置され、レーザの照射方向、即ち測定軸線方向が下方で、且つ正確な変位量(距離)を測定するため、レンズ11aの光軸と平行になるよう配置されることが必要である。
【0043】
レーザ変位計41は一般的に利用されるものであり、三角測量の原理を用いて対象物(本実施形態においては、撮像素子14の撮像面14a)の変位を非接触で計測するのに用いられる。具体的には、図7に示すようにレーザ変位計41が有するレーザダイオード42から発せられたレーザ光は、投光レンズ43を通り、レンズ11aの光軸と平行に撮像面14aを照射する。照射後、撮像面14aで拡散反射したレーザ光の一部は、レーザ変位計41が有する受光レンズ44を通ってリニアイメージセンサ45により受光される。リニアイメージセンサ45は、複数の画素構成部が一列に配列されたCCD又はCMOSセンサであり、受光量に相当する電荷が画素構成部ごとに蓄積され、取り出される。そしてレーザ変位計41が同一水平面(XY平面)上を移動し、撮像面14aの各測定位置A、B、C、Dを測定していくと各測定位置A、B、C、Dの高さの違いによって撮像面14aから反射しリニアイメージセンサ45に達するレーザ光の光路がそれぞれ変化する。その結果、リニアイメージセンサ45の受光面における受光点が移動し、受光波形、すなわち受光量のピーク位置又は重心位置が変化する。そして、この受光波形のピーク位置又は重心位置から撮像面14aの各測定位置A、B、C、Dの変位(距離)が求まる。なお、このとき各測定位置A、B、C、Dの各相対位置は、レーザ変位計41によってまずレンズ取付部材12の基準面12aの距離が計測され、該基準面12aの位置を基準に求める。
【0044】
そして、このようにして得た各測定位置A、B、C、Dの変位(距離)の測定結果から事前に測定し既知である基準面12aからレンズ11aまでの距離を減算し、レンズ11aから各測定位置A、B、C、Dまでの距離を導出する。
【0045】
なお、本実施形態においては、それぞれの間が離間した撮像面14aの各測定位置A、B、C、Dは、矩形の撮像面14aの4隅に設けた。しかし測定位置は各測定位置A、B、C、Dの4カ所でなくてもよい。例えば撮像面14aまでの距離、延いては撮像面14aの傾きを十分検出できるならば各測定位置A、B、C、Dとは別の位置でもよい。また3カ所でもよいし、5カ所以上でもよい。
【0046】
図6に示すように、レンズ取付部材固定装置50は、レンズ取付部材12の基準面12a上における外周縁側の面と下面に形成された基準座面52とで当接して位置決めを行なう治具基準部材51と、基台6の上面6a上に固定され治具基準部材51を支持するベース部材54と、それぞれ4カ所の固定ボルト63と、L字部材64とを有している。この構成において基台6の上面6aと基準座面52とは平行になるよう構成されている。
【0047】
治具基準部材51は、図3に示すように上面視が基板取付部材13よりさらに一回り小さな略8角形状を基部とし、該基部の左右両端から左右外方に向かって舌部がそれぞれ延在している。そしてレンズ保持部材11の鍔部11bの外径よりも少しだけ径の大きな内径を有する貫通孔51aを基部の略中心部に有している。治具基準部材51の下面における貫通孔51aの外縁には前述した基準座面52が円環状に形成されレンズ取付部材12の基準面12aが基準座面52に当接している。そしてこの状態においてレンズ取付部材12に設けられた3カ所の貫通孔12eにそれぞれ対向する治具基準部材51の各位置には各固定ボルト73が通過するためのボルト貫通孔51bがそれぞれ設けられている。さらに治具基準部材51の左右の舌部には、レンズ取付部材12のフランジ12bの左右に4カ所設けられた貫通孔12fにそれぞれ対向する固定ボルト63の軸部を挿通するための挿通孔51cがそれぞれ設けられている(図5、図6参照)。
【0048】
固定ボルト63は、頭部63aと、軸部63bと、軸部63bの端面から突出した雄ねじ部63cとを有している。そして固定ボルト63を先端の雄ねじ部63c側から、治具基準部材51に設けられた挿通孔51c、及びレンズ取付部材12のフランジ12bに設けられた貫通孔12fを通過させ、雄ねじ部63cをL字部材64の一方の延在部64dに形成した雌ねじ64aに螺着している。この状態で固定ボルト63をしめ込むことにより、治具基準部材51とフランジ12bとが固定ボルト63の頭部63aの下面とL字部材64の端面64cとの間に挟持されL字部材64が固定される。
【0049】
L字部材64は、L字状に屈曲された板状部材であり、上方に向いたL字の一方の延在部64dの端面64cが、レンズ取付部材12の下面で貫通孔12fを塞ぐとともに貫通孔12fの外周縁に当接している。延在部64dには端面64cから固定ボルト63と螺着するための雌ねじ64aが螺設されている。
【0050】
また基板バックアップ部材62の平面部62bと平行に、且つ外方に向かって延在するL字部材64の他方の延在部64eには、後述する付勢ボルト65の軸部65bを軸方向に移動可能に保持する付勢ボルト貫通孔64bを有している。
【0051】
図5、図6に示すように、撮像素子装架装置60は、それぞれ4カ所ずつの基板バックアップ部材62と、付勢ボルト65と、コイルスプリング66とを有している。
【0052】
各基板バックアップ部材62は、板状部材であり、図5、図6に示すように基板取付部材13の外縁近傍で先端が上方に屈曲して形成された屈曲部62cの先端で基板取付部材13の下面を支持し装架している。また屈曲部62cと反対側の基板バックアップ部材62の端部では雌ねじ62aが各基板バックアップ部材62を貫通して螺設されている。
【0053】
また付勢ボルト65は、鍔部65aと、軸部65bと、軸部65bの端面から突出した軸部65bの外径よりもねじ径の小さな雄ねじ部65cとを有している。これにより軸部65bの端面における雄ねじ部65cの周縁部には平面部が確保されている。そして鍔部65aの外径よりも小さなコイル径で形成されたコイルスプリング66の内径部に付勢ボルト65の軸部65bが挿通されている。該状態で軸部65bをL字部材64の付勢ボルト貫通孔64bに上方から挿入し、先端の雄ねじ部65cを基板バックアップ部材62に設けられた雌ねじ62aに螺着して固定する。これによりコイルスプリング66は、付勢ボルト65の鍔部65aの下面とL字部材64の上面との間に圧縮されて介在し、撮像素子14を装着した基板15が取付けられた基板取付部材13を上方であるレンズ取付部材12に向かって弾機的に付勢する。このように撮像素子装架装置60は、治具である治具基準部材51に、レンズ取付部材固定装置50である固定ボルト63、及びL字部材64を介し、コイルスプリング66と、付勢ボルト65と、基板バックアップ部材62とによって基板取付部材13を測定軸線と平行方向に移動可能に装架している。
【0054】
3カ所の調整固定機構70は、レンズ取付部材12に対する基板取付部材13の相対傾きおよび測定軸線方向の相対位置を、基板取付部材13の各部の上下方向の位置を移動することによって許容範囲内に調整する。
【0055】
本実施形態において調整固定機構70は、治具基準部材51、及びレンズ取付部材12に設けられた各貫通孔51b、12eの下方にそれぞれ3カ所設けられており、円筒形状を呈した調整ボルト71を有している(図3、4参照)。
【0056】
調整ボルト71の外周面には雄ねじ71dが形成され、レンズ取付部材12と一体的に固定される基準プレート16に設けられた雌ねじ16gと軸方向に移動可能に螺合している。調整ボルト71の円筒軸心には軸穴71aが貫通されている。軸穴71aは固定ボルト73の軸部73bが貫通できるよう軸部73bの軸径よりも若干大きな内径で形成されている。
【0057】
また、調整ボルト71の図4、図5において上方である後端の円筒軸線上には、回転工具である6角レンチが係合する係合部としての内6角孔71bが後端面から所定深さで設けられている。図4、図5において下方である調整ボルト71の先端には当接部71cが形成されている。当接部71cは基板取付部材13の上面に形成されたザグリ部20の底面20aと当接している。そして、調整ボルト71を回転させ、該回転によって撮像面14aの位置を上下に移動させ調整が完了したのちに前述の固定ボルト73によって調整機構を固定する。
【0058】
固定ボルト73は頭部73aと、軸部73bと、軸部73bの端面から突出した雄ねじ部73cとを有している。そして固定ボルト73の頭部73aの下面がレンズ取付部材12と一体的に固定される基準プレート16の上面と平ワッシャ74を介して当接し、軸部73bが調整ボルト71の軸穴71aを貫通して基板取付部材13に設けられた雌ねじ13bと螺合している。
【0059】
次に本発明に係る撮像面調整装置30の調整方法、及び作用について図8の工程のフローチャートに基づいて説明する。本発明においては、前述した通りカメラ装置10にレンズ保持部材11(レンズ11a含む)を取付けない状態で、カメラ装置10を撮像面調整装置30に取付ける。
【0060】
まずレンズ取付部材固定工程であるステップS10では、治具である治具基準部材51にカメラ装置10を構成するレンズ取付部材12をレンズ取付部材固定装置50の固定ボルト63、及びL字部材64によって固定する。なお、実際の取付けにおいては、このときレンズ取付部材12の下面には、基準プレート16がボルト31によって固定されている。また撮像素子14を装着した基板15が固定された基板取付部材13が、基準プレート16との間に調整ボルト71を有した状態で固定ボルト73によって仮止め固定されている。そして、治具基準部材51が有する基準座面52にレンズ取付部材12が有する基準面12aが当接している。これにより、治具基準部材51がベース部材54を介して固定される基台6の上面6aと、基準面12aと、が平行状態となる。延いては上面6aと直交して調整されるレーザ変位計41の測定軸線と、基準面12aとが直交する。さらに基準面12aと直交する、調整後に取付けられるレンズ11aの光軸とレーザ変位計41の測定軸線とが平行状態となる。
【0061】
次に、撮像素子装架工程であるステップS11では、撮像素子装架装置60を構成するコイルスプリング66と、付勢ボルト65と、基板バックアップ部材62とによって、基板取付部材13が、装架される。ただし実際の組み付けにおいてはステップS10でレンズ取付部材固定装置50によってレンズ取付部材12を固定する際に、撮像素子装架装置60を構成するコイルスプリング66と、付勢ボルト65と、基板バックアップ部材62とを同時に組み付けてもよい。そして固定ボルト73による仮止めが取り外される。これにより、下端がL字部材64の他方の延在部64e上に載置されたコイルスプリング66は付勢ボルト65の頭部を上方に付勢する。そして付勢された付勢ボルト65は連結する基板バックアップ部材62を上方に付勢することによって基板取付部材13を軸線方向と平行に移動可能に、且つ弾機的に上方に付勢する。
【0062】
次に、変位測定工程であるステップS12では、撮像素子14の上方のレーザ変位計41を図略の制御装置の指令によって同一水平面内で移動させ、撮像面14aの4隅のいずれかの測定位置A、B、C、Dまでの距離を測定する。なお、前述したように、このときレーザ変位計41は、レンズ取付部材12の基準面12aまでの距離を事前に測定し、記憶している。これより測定位置A、B、C、Dまでの距離からレンズ取付部材12の基準面12aまでの距離を減算し、基準面12aから各測定位置A、B、C、Dまでの距離を算出する。さらに事前に有している基準面12aからレンズ11aまでの距離を減算することによってレンズ11aから測定位置A、B、C、Dまでの距離を導出する。
【0063】
調整固定工程であるステップS13では、ステップS12で測定し、図略の表示機に表示されているいずれかの測定位置A、B、C、Dまでの距離を目視で確認しながら調整したいいずれかの測定位置A、B、C、Dの最も近くにあるいずれかの調整ボルト71を回転させ、表示機の数値が許容範囲内に収まるよう調整する。
【0064】
具体的な調整ボルト71の調整方法は以下の通りである。まず治具基準部材51、及び治具基準部材51の下方に配置されたレンズ取付部材12にそれぞれ設けられた貫通孔51b、12eの上方から六角レンチを挿入する。そして調整ボルト71の後端に設けられた内六角の係合部の内六角孔71bに六角レンチを係合させて調整ボルト71を軸周りに回転させる。調整ボルト71を軸周りに回転させると基準プレート16に設けられた雌ねじ16gに螺合する調整ボルト71は雌ねじ16gのピッチに応じて上下方向に移動する。このときレンズ取付部材12は治具基準部材51によって固定されているので、レンズ取付部材12に固定される基準プレート16は移動しない。これにより回転される調整ボルト71が基準プレート16の雌ねじ16g内で上下方向に移動する。そして先端の当接部71cも上下方向に移動し、上方に付勢されながら当接部71cに当接されている基板取付部材13が、調整ボルト71とともに上下方向に移動し、撮像素子14の上下方向の位置(傾き)が調整される。
【0065】
そして、ステップS14では、各測定位置A、B、C、D全ての測定が終了したか確認し、終了していればステップS15に移動する。終了していなければステップS12に戻り、次のいずれかの測定位置A、B、C、Dの測定を行なう。
【0066】
ステップS15では固定ボルト73を基板取付部材13の雌螺子13bに螺着することによって調整状態を固定し、調整を完了する。そして、その後、撮像素子装架装置60の固定ボルト63を緩めてL字部材64との螺着を解除し、レンズ保持部材11を有さない状態のカメラ装置10を撮像面調整装置30から脱離させる。
【0067】
そして、レンズ保持部材11の鍔部11bの下面をレンズ取付部材12の基準面12aに当接させてレンズ保持部材11をレンズ取付部材12に螺着する。このときレンズ11aの光軸とレンズ保持部材11の軸線とは精度よく同軸が維持されている。また、レンズ保持部材11の軸線、つまりレンズ11aの光軸と、レンズ取付部材12の基準面12aとの間の直角度も加工によって確保されている。さらに、撮像面調整装置30によって、レンズ取付部材12の基準面12aとレーザ変位計41のレーザの測定軸線とは精度よく直角度が確保された状態で撮像面14aのレンズ11aからの距離が調整されている。これにより撮像面14aは、レンズ11aの光軸に対しても精度よく直角度が確保されていることになり、よって撮像面全面にピントのあった撮像結果を得ることができる。
【0068】
上述の説明から明らかなように、第1の実施形態においては、レンズ取付部材固定工程によってレンズ取付部材12が、取付けられるレンズの光軸が測定軸線と平行になるように治具である治具基準部材51に固定される。次に撮像素子装架工程によって撮像素子14が固定される基板取付部材13が測定軸線と平行方向に移動可能に治具基準部材51に装架される。そして変位測定工程によって撮像素子の撮像面14の4箇所の測定位置の測定軸線方向変位が測定され、測定された変位(距離)の結果に応じ調整固定工程の調整固定機構70によって撮像素子14の撮像面14aがレンズ11aから所定距離に位置し且つレンズの光軸に対して直角となるように基板取付部材13が調整される。これにより測定軸線と直交するよう調整された撮像素子14の撮像面14aは、調整後にレンズ11aが取付けられたときにはレンズ11aの光軸とも良好に直交するため、撮像面の全面に亘ってピントを合わせることができる。
【0069】
そして、レンズ取付部材12にレンズ11aを取付けない状態で測定位置である撮像面14の変位(距離)を測定することによって撮像素子14の撮像面14aの位置(傾き)が測定でき、該測定データに基づいて位置(傾き)の調整ができる。これによりレンズ11aを取付けた状態で調整する場合と比較し、実際にチャートによって撮像し、撮像結果を見ながら再度調整する必要がないため調整工数の低減を図ることができる。
【0070】
さらに、撮像素子14の撮像面14aの位置(傾き)の確保は調整によって行なうので、撮像面14aの位置(傾き)に影響を与える各部品の加工精度のばらつきを大きくなる方向に許容でき部品コストを低減することができる。
【0071】
また本実施形態においては、調整固定機構70の調整ボルト71は、外周面に雄ねじ71dが形成されてカメラ装置10内部のレンズ取付部材12に螺合し、後端の係合部である内六角孔71bで回転工具(レンチ)と係合して軸周りに回転されるようになっている。また調整固定機構70の軸中心には貫通孔71aが設けられ該貫通孔71aを貫通する固定ボルト73によって調整固定機構70の固定を行なう。このようにコンパクトな調整固定機構70によって撮像面71aの位置(傾き)の調整をするのでカメラ装置10の小型化を図ることができる。
【0072】
次に第2の実施形態について説明する。第1の実施形態においては、レーザ変位計41の測定結果に対し作業者が作業者の感覚に基づいて調整を行なった。しかし第2の実施形態においては、レーザ変位計41の測定結果に対し所定の演算を行い、調整ボルト71をどれだけ回転すれば、撮像面14aが目標の位置に到達できるかを算出し、該算出量に基づいて調整を行なうものである。よって第1の実施形態に対しては、調整固定工程における調整ボルト71の調整量を算出する部分のみが追加となっており、他の部分は同様であるため、変更点のみ説明し、同様部分の説明は省略する。また、図面について説明するとき同じ部品には同じ符号を付して説明する。
【0073】
第2の実施形態に係る調整ボルト71によって調整すべき調整量の演算方法について説明する。図9に示すように第2の実施形態においては、測定位置を3カ所とし各測定位置E、F、Gとした。各測定位置E、F、Gは、各調整ボルト71から、隣り合う各調整ボルト71同士を結ぶ接線に対してそれぞれ引いた垂線上の所定の位置に設けたものである。このように各測定位置E、F、Gを設けることにより、各調整ボルト71を調整時に上下させたとき図10に示すように各調整ボルト71の変位線分Mと、各調整ボルト71に対応する各測定位置E、F、Gの変位線分mとは、隣り合う各調整ボルト71同士を結ぶ接線に対して各調整ボルト71から引いた垂線との交点である支点Pをそれぞれの頂点とした相似の3角形を形成する。そしてこのとき、本発明においては、3個の調整ボルト71の各調整位置、及び各測定位置E、F、Gの測定軸線と直角な平面内における相対位置関係、即ち、支点Pと調整ボルト71の各調整位置との距離N、及び支点Pと各測定位置E、F、Gとの距離nを既知値として事前に確認して把握しておく。
【0074】
このように距離Nと、距離nと、調整すべき各測定位置E、F、Gの変位量mが既知値としてわかっているので、相似の3角形から求められる式、M=mN/nから、調整ボルト71の調整値Mが算出できる。そして、算出した調整値Mを調整ボルト71のねじピッチpで割ることにより調整値Mを得るための調整ボルト71の必要回転量が算出できる。これにより作業者は、調整ボルト71の目標回転量を知ることができ、各測定位置E、F、Gにおける調整変位量mの迅速な調整が行なえるので調整工数の低減を図ることができる。
【0075】
なお、第2の実施形態の作用については、図8に示す第1の実施形態のフローチャートにおいて、ステップS12の変位測定工程と、ステップS13の調整固定工程との間に調整ボルト71の調整値Mの算出ステップを追加すればよい。これによってさらに調整工数の低減が図れる。
【0076】
また、第2の実施形態においては、いずれか1カ所の調整ボルト71を回転させると、該調整ボルト71の最も近傍のいずれかの測定位置E、F、Gは大きく調整されるが、同時に他の測定位置も意に反して若干変位する。しかし、調整するポイントを許容範囲の中央値近傍にすることで、若干の変位を許容でき効率的に調整を行なうことができる。
【0077】
上述の説明から明らかなように第2の実施形態においては、3個の調整固定機構70の各位置および3箇所の測定位置E、F、Gの測定軸線と直角な平面内における相対位置関係を既知値とし、該既知値と変位測定工程の測定結果とから3個の各調整固定機構のそれぞれ調整すべき寸法を算出し、該算出値に基づいて各調整固定機構を調整する。これにより各調整固定機構の目標調整値に迅速に到達でき調整のための工数が低減できる。
【0078】
なお、本実施形態において調整固定機構70は3個としたがこれに限らず、4個を越えた数でもよい。また、変位測定位置40を構成するレーザ変位計41は、4個としたが3個でもよいし、5個を越えてもよい。
【0079】
また、本実施形態においては、変位を測定する手段としてレーザ変位計を利用したが、これに限らず接触式リニアセンサや、非接触式であっても渦電流を利用した方式の変位計等どのような変位計を適用してもよい。
【0080】
また、本実施形態においてはレーザ変位計41の水平面内の移動は図略の制御装置によって行なった。しかしこれに限らず、各測定位置A、B、C、D、E、F、Gに対応した位置にレーザ変位計41の取付け位置をそれぞれ設けておき、測定時に手作業によってレーザ変位計41を各取付け位置に固定するようにしてもよい。また、各取付け位置にレーザ変位計41を複数同時に取付けておいてもよい。このとき各取付け位置を支持する部材は、治具基準部材51から延在さてもよいし、変位測定装置に設けてもよい。そして治具基準部材51から延在させたときには治具基準部材51の基準座面52と各取付け位置にレーザ変位計41を取付けた際に基準座面52とレーザ変位計41の測定軸線とが直交するように加工で合わせ込むようにすればよい。また変位測定装置に設けた場合には、変位測定装置の基準面である基台6の上面6aとレーザ変位計41の測定軸線とが直交するように調整して合わせ込めばよい。これらによっても相応の効果が得られる。
【符号の説明】
【0081】
10・・・カメラ装置、11・・・レンズ保持部材、12・・・レンズ取付部材、12a・・・基準面、13・・・基板取付部材、14・・・撮像素子、14a・・・撮像面、15・・・基板、16・・・基準プレート、17・・・ガラスプレート、18・・・クッション材、19・・・リング、20・・・ザグリ部、30・・・撮像面調整装置、40・・・変位測定装置、41・・・レーザ変位計、50・・・レンズ取付部材固定装置、51・・・治具基準部材、52・・・基準座面、54・・・ベース部材、60・・・撮像素子装架装置、62・・・基板バックアップ部材、63・・・固定ボルト、64・・・L字部材、65・・・付勢ボルト、66・・・コイルスプリング、70・・・調整固定機構、71・・・調整ボルト、73・・・固定ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ装置のレンズが取付けられるレンズ取付部材を前記レンズの光軸が測定軸線と平行になるように治具に固定するレンズ取付部材固定工程と、
前記カメラ装置の撮像素子を装着した基板が取付けられた基板取付部材を前記治具に固定された前記レンズ取付部材に向かって弾機的に付勢された状態で前記測定軸線と平行方向に移動可能に前記治具に装架する撮像素子装架工程と、
前記撮像素子の撮像面の離間した少なくとも3箇所の測定位置の前記測定軸線方向変位を測定する変位測定工程と、
前記レンズ取付部材に対する前記基板取付部材の相対傾きおよび前記測定軸線方向の相対位置を調整する少なくとも3個の調整固定機構を前記変位測定工程での測定結果に応じて作動して、前記撮像素子の撮像面が前記レンズから所定距離に位置し且つ前記レンズの光軸に対して直角となるように前記基板取付部材を前記レンズ取付部材に調整して固定する調整固定工程と、
を備えたことを特徴とするカメラ装置の撮像面調整方法。
【請求項2】
請求項1において、前記少なくとも3個の調整固定機構の各位置および前記少なくとも3箇所の測定位置の前記測定軸線と直角な平面内における相対位置関係を既知値とし、前記変位測定工程での測定結果および前記相対位置関係に基づいて前記少なくとも3個の調整固定機構を調整することを特徴とするカメラ装置の撮像面調整方法。
【請求項3】
カメラ装置のレンズが取付けられるレンズ取付部材の基準面を前記レンズの光軸が測定軸線と平行になるように基準座面に当接させて前記レンズ取付部材を治具に着脱可能に固定するレンズ取付部材固定装置と、
前記カメラ装置の撮像素子を装着した基板が取付けられた基板取付部材を前記治具に固定された前記レンズ取付部材に向かって弾機的に付勢された状態で前記測定軸線と平行方向に移動可能に前記治具に装架する撮像素子装架装置と、
前記撮像素子の撮像面の離間した少なくとも3箇所の測定位置の前記測定軸線方向変位を測定する変位測定装置と、
前記撮像素子の撮像面が前記レンズから所定距離に位置し且つ前記レンズの光軸に対して直角となるように前記レンズ取付部材に対する前記基板取付部材の相対傾きおよび前記測定軸線方向の相対位置を調整して固定するための少なくとも3個の調整固定機構と、
を備えたことを特徴とするカメラ装置の撮像面調整装置。
【請求項4】
請求項3において、前記調整固定機構は、外周面に形成され前記レンズ取付部材と螺合する雄ねじ、後端に設けられ回転工具と係合する係合部、先端に設けられ前記基板取付部材と当接する当接部、および中心を貫通する軸穴が設けられた調整ボルトと、頭部が前記レンズ取付部材と当接し軸部が前記調整ボルトの軸穴を貫通して前記基板取付部材と螺合する固定ボルトと、を有することを特徴とするカメラ装置の撮像面調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−49621(P2012−49621A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187260(P2010−187260)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】