説明

カメラ

【課題】シャッタチャージにともなう振動を低減することができるカメラを提供する。
【解決手段】制御部60が、遊星歯車ユニット30、回転規制部50等から構成される駆動力切り替え部を制御して、チャージモータ20の駆動力を、シャッタチャージ中には、キャリア33を回転可能にしてシャッタチャージユニット10に伝達し、シャッタチャージ後には、内歯車34を回転可能にしてフライホイール40に伝達し、シャッタチャージにともなう振動を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動低減機能を備えたカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラの動作にともなうブレ防止をする防振装置には、反射鏡の上下動作にともなう振動を防止するものがあった(例えば、特許文献1)。
しかし、この反射鏡の動作にともなう振動を防止しても、カメラのブレ防止は、不十分であり、連続して撮影する場合や、カメラを三脚に載せて撮影するような撮影シーンでは、カメラの動作にともなう振動が撮影に与える影響が大きく、画質を悪化させることがあった。
【特許文献1】特開昭61−32043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、シャッタチャージにともなう振動を低減することができるカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、回転することによりジャイロ効果を生ずるジャイロ部(40,240,340)と、シャッタ(11)をチャージするシャッタチャージ中及び/又はシャッタチャージ後に、前記ジャイロ部(40,240,340)を、回転駆動するジャイロモータ(20,270,370)と、を備えるカメラである。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカメラにおいて、前記ジャイロ部(40,240,340)は、前記ジャイロモータの駆動力が伝達され回転駆動される回転体(40,240,340)であること、を特徴とするカメラである。
請求項3の発明は、請求項2に記載のカメラにおいて、前記ジャイロモータ(270)は、撮影光学系の焦点距離を変更するフォーカス用モータ(270)を兼用し、前記ジャイロモータ(270)の駆動力を、フォーカス動作中に前記撮影光学系に伝達し、前記フォーカス動作中以外に前記回転体(240)に伝達するように切り替え可能なフォーカス駆動力切り替え部(271)を備えること、を特徴とするカメラである。
請求項4の発明は、請求項2に記載のカメラにおいて、前記ジャイロモータ(370)は、撮影光学系の焦点距離を変更するフォーカス用モータ(370)を兼用し、前記ジャイロモータ(370)に対して非接続の非接続レンズ(380)が装着可能であり、前記非接続レンズ(380)が装着された状態では、前記ジャイロモータ(370)の駆動力を、前記回転体(340)に伝達するフォーカス駆動力切り替え部(371)を備えること、を特徴とするカメラである。
請求項5の発明は、請求項2に記載のカメラにおいて、前記ジャイロモータ(20)は、前記シャッタ(11)をチャージするチャージモータ(20)を兼用し、前記ジャイロモータ(20)の駆動力を、前記シャッタチャージ中に前記シャッタ(11)に伝達し、前記シャッタチャージ後に前記回転体(40)に伝達するように切り替え可能なシャッタ駆動力切り替え部(30,50)を備えること、を特徴とするカメラである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シャッタチャージ中及び/又はシャッタチャージ後に、ジャイロ部を回転駆動することにより、シャッタチャージにともなう振動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面等を参照して、本発明を適用したカメラの実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のカメラ1に交換レンズ80を装着した状態の構成を模式的に示す斜視図である。
なお、内部構造を分かりやすく示すために、ケース2の外形は、図中2点鎖線で示す。また、以下の説明において、カメラ1の正位置撮影時を基準に上下、前後等を説明する。正位置撮影時とは、対物レンズの光軸Oを水平方向に向け、横長の画像を撮影するときの状態をいう。本実施形態では、図中、矢印X方向が左右方向、矢印Y方向が前後方向、矢印Z方向が鉛直方向である。
【0008】
カメラ1は、デジタル一眼レフカメラであり、ケース2の内部に、シャッタチャージユニット10と、チャージモータ20と、遊星歯車ユニット30と、フライホイール40と、回転規制部50と、制御部60とを備えている。図中、遊星歯車ユニット30等は、内部構成を示すために、分解した状態でケース2の外部に抜き出して示す。
シャッタチャージユニット10は、シャッタ幕11を走行、チャージするための歯車、チャージレバー(図示せず)等を備えた装置であり、シャーシ3に収容されている。
チャージモータ20は、遊星歯車ユニット30を介して、フライホイール40、シャッタチャージユニット10を駆動するための、例えば、ステップモータ等である。
【0009】
遊星歯車ユニット30は、チャージモータ20の回転によって駆動するギアユニットである。遊星歯車ユニット30は、太陽歯車31と、4つの遊星歯車32と、キャリア33と、内歯車34とを備えている。
太陽歯車31は、チャージモータ20の回転軸に設けられた外歯車である。
遊星歯車32は、太陽歯車31と内歯車34との間に配置されることにより、太陽歯車31の回転力を、内歯車34に伝達するための外歯車である。
キャリア33は、シャッタチャージユニット10を駆動するための円盤状の部材である。キャリア33は、遊星歯車32を回転支持するための軸33aが設けられ、遊星歯車32の公転に応じて、チャージモータ20の回転軸Z1と同軸の軸回りに回転する。キャリア33は、シャッタチャージユニット10に対して、歯車等によって、機械的に接続されている。
内歯車34は、フライホイール40を回転させるための歯車である。内歯車34は、チャージモータ20の駆動力が遊星歯車32を介して伝達されることにより、回転駆動する。内歯車34は、フライホイール40に対して、歯車等によって、機械的に接続されている。
【0010】
フライホイール40は、鉛直方向の軸Z2回りに回転可能にケース2に収容された回転体であり、チャージモータ20の駆動力が伝達され回転することによりジャイロ効果を生ずるジャイロ部である。フライホイール40は、質量が大きい金属等から形成された円盤41から構成されているので、より大きなジャイロ効果を得ることができる。後述するように、フライホイール40は、ジャイロ効果により、シャッタ幕31をチャージするシャッタチャージに起因する振動を低減することができる。
【0011】
回転規制部50は、内歯車34又はキャリア33が回転しないように規制して、キャリア33又は内歯車34を回転可能にすることにより、チャージモータ20の駆動力を、シャッタチャージユニット10、フライホイール40に切り替えて伝達するための装置である。遊星歯車ユニット30の特性から、回転規制部50が内歯車34を回転規制した場合、キャリア33が回転可能となり、チャージモータ20の駆動力がシャッタチャージユニット10に伝達される。一方、回転規制部50がキャリア33を回転規制した場合、内歯車34が回転可能となり、チャージモータ20の駆動力がフライホイール40に伝達される。回転規制部50は、例えば、キャリア33又は内歯車34に係合することにより、これらの回転を規制するソレノイド等を備えている。
【0012】
制御部60は、カメラ1を統括的に制御するための制御部であり、例えば、CPU(中央処理装置)等から構成される。制御部60は、チャージモータ20、回転規制部50のソレノイド等の電気部品に、電気ケーブル等を介して電気的に接続されている。
【0013】
次に、カメラ1の動作について説明する。
図2は、本実施形態のカメラ1の動作を示すタイミングチャートである。
最初に、レリーズボタン(図示せず)が操作されると、制御部60は、シャッタ幕11を走行させる。そして、撮像面への露光が終了すると、図2に示すように、チャージモータ20を駆動してシャッタチャージユニット10を駆動させる。この間、制御部60は、回転規制部50を制御して、内歯車34を回転規制し、キャリア33を回転可能とする。これにより、シャッタチャージ中(図中範囲A)、チャージモータ20の駆動力がシャッタチャージユニット10に伝達される。
【0014】
シャッタチャージ終了を検出するマイクロスイッチ(図示せず)等から信号が入力されると、制御部60は、回転規制部50を制御してキャリア33を回転規制し、内歯車34を回転可能とする。これにより、シャッタチャージ後に、チャージモータ20の駆動力がフライホイール40に伝達され、フライホイール40が回転し、防振動作が開始される(図中範囲B)。
【0015】
通常、カメラは、シャッタチャージ終了時に、シャッタ幕11を駆動するチャージレバー等が規制部材に当接するために振動が生じる。例えば、連続して撮影する場合や、三脚を用いるような撮影シーンでは、振動が低減する前に被写体像が撮像面に露光されてしまう場合があり、振動が画質に与える影響が大きかった。これに対し、本実施形態のカメラ1は、前述のように、シャッタチャージ後にフライホイール40を回転駆動し、フライホイール40のジャイロ効果により、この振動を低減することができる。
【0016】
以上説明したように、本実施形態のカメラ1は、チャージモータ20と、フライホイール40を駆動するためのモータとを兼用するので、部品増加、カメラ1の大型化を防止することができる。
また、カメラ1は、制御部60が、遊星歯車ユニット30、回転規制部50等から構成される駆動力切り替え部を制御して、チャージモータ20の駆動力を、シャッタチャージ中には、シャッタチャージユニット10に伝達し、シャッタチャージ後には、フライホイール40に伝達する。このように、カメラ1は、チャージモータ20の駆動力を切り替えて伝達することにより、シャッタチャージによって生じた振動を、低減することができる。
【0017】
[第2実施形態]
次に、本発明を適用したカメラの第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図3は、本実施形態のカメラ201の構成を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、カメラ201は、オートフォーカス対応の交換レンズ280が装着されている。交換レンズ280は、例えば、対物レンズ281等を前後させることにより、撮影光学系の焦点距離を変更するためのレンズ駆動機構を備えている。なお、本実施形態のチャージモータ220は、シャッタチャージユニット210の駆動のみに用いられる。
【0018】
図3に示すように、カメラ201は、フライホイール240と、フォーカス用モータ270と、フォーカス駆動力切り替え部271とを備えている。
フライホイール240は、第1実施形態のフライホイール40と同様な部材であり、鉛直方向の軸回りに回転可能にケース2に収容され、フォーカス用モータ270によって回転駆動される。
フォーカス用モータ270は、撮影光学系の焦点距離を変更し、また、フライホイール240を回転するためのモータである。フォーカス用モータ270とフライホイール240とは、歯車等を介して機械的に接続されている。同様に、フォーカス用モータ270と交換レンズ280のレンズ駆動機構とは、機械的に接続されている。
【0019】
フォーカス駆動力切り替え部271は、フォーカス用モータ270の駆動力を、交換レンズ280のレンズ駆動機構又はフライホイール240に切り替えて伝達するための装置である。フォーカス用モータ270の駆動力は、フォーカス駆動力切り替え部271に伝達された後、遊星歯車ユニット(図示せず)等を備えたフォーカス駆動力切り替え部271により、レンズ駆動機構、フライホイール240に切り替えて伝達される。
【0020】
次に、カメラ201の動作について説明する。
図4は、本実施形態のカメラ201の動作を示すタイミングチャートである。
最初に、レリーズボタン(図示せず)が操作され、撮像面への露光が終了すると、図4に示すように、制御部260は、チャージモータ220を駆動してシャッタチャージユニット210を駆動させる。この間、制御部260は、フォーカス用モータ270を駆動し、また、フォーカス駆動力切り替え部271を制御することにより、フォーカス用モータ270の駆動力を、フライホイール240に切り替えて伝達する。これにより、カメラ201は、フォーカス用モータ270の駆動力を、レンズ駆動機構に伝達することなく、フライホイール240のみを回転駆動することができる。
次に、制御部260は、シャッタチャージが終了したと判断すると、フォーカス用モータ270の回転を停止する。
【0021】
通常、カメラは、シャッタチャージ中には、チャージモータの回転や、シャッタチャージユニットの歯車、チャージレバー等の駆動により振動を生じる。本実施形態のカメラ201は、前述のように、シャッタチャージ中にフライホイール240を回転駆動し、フライホイール240のジャイロ効果により、この振動を低減することができる。
【0022】
なお、制御部260は、例えば、レリーズボタンが操作された後のフォーカス動作中において(図中範囲C)、フォーカス駆動力切り替え部271を制御することにより、フォーカス用モータ270の駆動力を、レンズ駆動機構に切り替えて伝達し、撮影光学系の焦点距離を変更することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態のカメラ201は、フォーカス用モータ270と、フライホイール240を駆動するためのモータとを兼用し、シャッタチャージ中に、フォーカス用モータ270の駆動力をフライホイール240に伝達するように切り替え可能なフォーカス駆動力切り替え部271を備えている。これにより、シャッタチャージ中に、シャッタチャージにともなう振動を低減することができる。
【0024】
なお、カメラ201は、フライホイール240を、フォーカス動作中以外であれば、いつでも回転駆動して、シャッタチャージにともなう振動を低減することができる。例えば、カメラ201は、シャッタチャージ後に、フライホイール240を回転駆動すれば、第1実施形態と同様に、シャッタチャージ後の振動を低減することができる。
【0025】
[第3実施形態]
次に、本発明を適用したカメラの第3実施形態について説明する。
図5は、本実施形態のカメラ301の構成を模式的に示す斜視図である。
図5に示すように、カメラ301は、レンズ内モータ382を備えたオートフォーカス対応の交換レンズ380が装着されている。レンズ内モータ382は、レンズマウントに設けられた接続部を介して、制御部360に電気的に接続されており、制御部360によって制御される。
【0026】
通常、フォーカス用モータは、レンズ内モータを備えた交換レンズのレンズ駆動機構に対して機械的に非接続であり、使用されることはない。本実施形態のカメラ301は、このフォーカス用モータ370を用いて、フライホイール340を回転駆動することにより、シャッタチャージにともなう振動を低減することができる。
なお、制御部360は、交換レンズ380がレンズ内モータ382を備えたものであることを、交換レンズ380の種類を判別するために、レンズマウントに設けられたフォーカス駆動力切り替え部371(例えば、マイクロスイッチ等)の出力に基づいて判断する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のカメラ301は、フォーカス用モータ370に対して非接続の交換レンズ380が装着された場合、使用されていなかったフォーカス用モータ370を有効利用して、シャッタチャージにともなう振動を低減することができる。
【0028】
なお、フライホイール340の回転駆動は、レンズ内モータ382を備えた交換レンズ380を装着された場合に限らず、例えば、撮影光学系の焦点距離の変更を、撮影者が手動で行うマニュアルフォーカスレンズが装着されたときに行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用したカメラの第1実施形態に交換レンズを装着した状態の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のカメラの動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明を適用したカメラの第2実施形態の構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】第2実施形態のカメラの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明を適用したカメラの第3実施形態の構成を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1,201,301:カメラ、2:ケース、10,210:シャッタチャージユニット、20,220:チャージモータ、30:遊星歯車ユニット、31:太陽歯車、32:遊星歯車、33:キャリア、34:内歯車、40,240,340:フライホイール、50:回転規制部、60,260,360:制御部、80,280,380:交換レンズ、270,370:フォーカス用モータ、271:フォーカス駆動力切り替え部、382:レンズ内モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することによりジャイロ効果を生ずるジャイロ部と、
シャッタをチャージするシャッタチャージ中及び/又はシャッタチャージ後に、前記ジャイロ部を、回転駆動するジャイロモータと、
を備えるカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記ジャイロ部は、前記ジャイロモータの駆動力が伝達され回転駆動される回転体であること、
を特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラにおいて、
前記ジャイロモータは、撮影光学系の焦点距離を変更するフォーカス用モータを兼用し、
前記ジャイロモータの駆動力を、フォーカス動作中に前記撮影光学系に伝達し、前記フォーカス動作中以外に前記回転体に伝達するように切り替え可能なフォーカス駆動力切り替え部を備えること、
を特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項2に記載のカメラにおいて、
前記ジャイロモータは、撮影光学系の焦点距離を変更するフォーカス用モータを兼用し、
前記ジャイロモータに対して非接続の非接続レンズが装着可能であり、
前記非接続レンズが装着された状態では、前記ジャイロモータの駆動力を、前記回転体に伝達するフォーカス駆動力切り替え部を備えること、
を特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項2に記載のカメラにおいて、
前記ジャイロモータは、前記シャッタをチャージするチャージモータを兼用し、
前記ジャイロモータの駆動力を、前記シャッタチャージ中に前記シャッタに伝達し、前記シャッタチャージ後に前記回転体に伝達するように切り替え可能なシャッタ駆動力切り替え部を備えること、
を特徴とするカメラ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−58545(P2008−58545A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234650(P2006−234650)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】