説明

カラーフィルタ、および半透過半反射型液晶表示装置

【課題】カラーフィルタ上の位相差層において位相差層の光学機能を有効に発揮可能なカラーフィルタを提供する。
【解決手段】半透過半反射型液晶表示装置に用いられ、透過部1と、反射部2とを有するカラーフィルタ10であって、透過部1には、所定色の着色層27が形成されており、反射部1には、所定色の着色層27を透過部の所定色の着色層27より薄く形成してなる層Kを備えてなる、もしくは、所定色の着色層27の厚みをゼロにして構成されてなる、もしくは、反射部2の一部分について所定色の着色層27の厚みをゼロにして構成されてなるカラーフィルタ10であり、反射部1、もしくは反射部1の一部分には、透過部2との厚み差を低減する厚み差低減層14を備え、少なくとも反射部2に対して直接もしくは間接に位相差層12が積層されてなるカラーフィルタ10により、位相差層12の光学機能を有効に発揮可能なカラーフィルタ10が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ、および半透過半反射型液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、小型化が進み、携帯電話やPDA等といった機器に幅広く用いられるようになっている。液晶表示装置については、昼夜や屋内外を問わず様々な時と場所で使用できるようなものが要請される。こうした要請に応えるべく、液晶表示装置については、省電力化に加えて、液晶画面の高輝度化や高コントラスト化などといった表示特性の向上が重要な課題となっている。
【0003】
液晶表示装置については、液晶表示装置外部の外光を取り込むとともにその外光の反射光を利用する反射表示機能(反射型の表示を行う機能)を有してなる液晶表示装置(反射型液晶表示装置)、液晶表示装置内部に内蔵されたバックライトを光源とする光を利用する透過表示機能(透過型の表示を行う機能)を有してなる液晶表示装置(透過型液晶表示装置)が提案されている。液晶表示装置のうち、反射型液晶表示装置は、透過型液晶表示装置に比べて省電力化を図ることができる。透過型液晶表示装置は、反射型液晶表示装置に比べて、屋内などの外光の弱い場所で高輝度・高コントラストな液晶画面を得やすい。
【0004】
そこで、反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置の利点を取り入れて省電力化と高輝度、高コントラスト化のいずれの要請にも応える液晶表示装置として、反射表示機能と透過表示機能の両方の機能を有する液晶表示装置(半透過半反射型液晶表示装置)が提案されている。
【0005】
半透過半反射液晶表示装置は、バックライトを光源として利用する画素部と、反射板を供えることにより外光を利用する画素部を備えることにより、透過型の表示と反射型の表示を両立するものである。
【0006】
半透過半反射型液晶表示装置において、着色層を有するカラーフィルタは、透過表示機能にて表示される液晶画面の領域に対応して定められる透過部と、反射表示機能にて表示される液晶画面の領域に対応して定められる反射部とを備えている。このとき、カラーフィルタには、多数の画素部が、所定の配置パターンにて定められており、1つの画素部ごとに、透過部と反射部の組み合わせが1セット形成される。透過部は、バックライトを光源とする光が進行する部分に対応し、反射部は、外光の反射光が進行する部分に対応している。
【0007】
半透過半反射型液晶表示装置は、晴天時の屋外などといった十分な光量の外光がある場所では、反射部のみ、あるいは、透過部と反射部の両者を利用して液晶画面が表示され、反射部での液晶画面の表示が困難になる夜間や暗所では、透過部を主に利用して液晶画面が表示される。
【0008】
しかしながら、半透過半反射型液晶表示装置によれば、反射部では進入してきた外光が通常2回カラーフィルタを通るのに対し、透過部ではバックライトの光が通常1回のみカラーフィルタを通過することになる。カラーフィルタの着色層において、反射部に対応する部分と透過部に対応する部分が、仮に、両方ともに色材などの材料および組成を同じくする物を使用して同じ膜厚で形成されると、反射部の輝度の低下、液晶画面のコントラストの低下が生じる。
【0009】
そこで、半透過半反射型液晶表示装置に関して、反射部に対応する部分の着色層の一部を取り払って構成したものが提供されている(特許文献1)。特許文献1の半透過半反射型液晶表示装置によれば、反射部の透過率が高くなり、反射表示の高輝度化、高コントラスト化が望める。また、半透過半反射型液晶表示装置において反射部から着色層が取り去ると、反射部ではモノクロの反射表示が行われることとなるため、反射部でカラー表示を実施できない液晶表示装置となるものの、より高輝度、高コントラストな液晶表示装置を得ることができるようになる。
【0010】
ところで、半透過半反射型液晶表示装置においては、従来、1/4波長板として働く位相差フィルムを液晶セルの外側に貼ることで、偏光板を通った直線偏光を円偏光として、透過部と反射部の表示を両立させていた。これに対し、近年、反射部に位相差層を設けたものが提案されている。これによれば、位相差層が反射部と透過部とのセルギャップを調整するとともに反射部においてのみ円偏光を利用した表示となり、透過部の表示特性を損なうことなく反射表示が可能となり、半透過半反射型液晶表示装置の表示特性を高めることが可能となる(特許文献2)。
【0011】
したがって、半透過半反射型液晶表示装置として、透過部の表示特性を損なうことなく反射部にて液晶画面を効果的に表示させるものであって、且つ、反射表示のコントラストを高く保つものを得ようとすれば、半透過半反射型液晶表示装置が、着色層のうち反射部に対応する部分または反射部に対応する部分の一部分を取り除いた構成を備えるとともに、特許文献2に記載されるように反射部に位相差層を設けることが有効となる。
【0012】
【特許文献1】特開2005−84644号公報
【特許文献2】特表2006−527408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記したように、半透過半反射型液晶表示装置が、着色層のうち反射部に対応する部分または反射部に対応する部分の一部分を取り除いた構成を備えたものである場合に、反射部に位相差層が設けられると、1つの反射部において、その反射部に設けられる位相差層の中央部(面内方向中心部)を通る光に生じる位相差と位相差層の端部(面内方向周縁部)を通る光に生じる位相差とが相違してしまっていた。そして、この位相差の相違が、液晶表示装置のコントラスト比の低下や色シフトを引き起こしていた。
【0014】
本発明者らは、位相差層の中央部を通る光に生じる位相差と位相差層の端部を通る光に生じる位相差とが相違する原因が、位相差層に直接に接して位相差層の下地をなす面に凹凸が生じていたために位相差層の厚みが中央部と端部で異なっていた点にあることを突き止め、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、カラーフィルタ上の位相差層において所望の位相差を付与する領域の割合を大きくすることができて位相差層の光学機能を有効に発揮可能なカラーフィルタを提供することを目的とする。また本発明の他の目的は、かかる光学機能に優れた位相差層を有するカラーフィルタを備える半透過半反射型液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、(1)透過表示機能と反射表示機能を有する半透過半反射型液晶表示装置に用いられ、透過表示機能にて表示される領域に対応して定められる透過部と、反射表示機能にて表示される領域に対応して定められる反射部とを有するカラーフィルタであって、前記透過部には、所定色の着色層が形成されており、前記反射部には、前記所定色の着色層を前記透過部の所定色の着色層より薄厚に形成してなる層Kを備えてなる、もしくは、前記所定色の着色層の厚みをゼロにして構成されてなる、もしくは、前記反射部の一部分が前記所定色の着色層の厚みをゼロにして構成されてなるカラーフィルタであり、前記反射部、もしくは前記反射部の一部分には、前記透過部との厚み差を低減する厚み差低減層を備えており、少なくとも反射部に対して直接もしくは間接に位相差層が積層されてなることを特徴とするカラーフィルタ、(2)前記厚み差低減層は、透明層、および/または、前記透過部の所定色の着色層よりも薄い色濃度で形成され且つ前記透過部の所定色の着色層と色相を同じくする層にて構成される、上記(1)に記載のカラーフィルタ、(3)前記着色層および/または前記厚み差低減層と、前記位相差層との間には、保護層が形成されている、上記(1)または(2)に記載のカラーフィルタ、(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする半透過半反射型液晶表示装置、を要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるカラーフィルタによれば、透過部については、所定色の着色層が形成され、反射部については、その所定色の着色層を前記透過部の所定色の着色層より薄く(薄厚に)形成してなる層Kを備えて構成され、もしくは、所定色の着色層の厚みをゼロにして構成され、もしくは、前記反射部の一部分において所定色の着色層の厚みをゼロにして構成されており、そして透過部と反射部との厚みの差を低減する層(厚み差低減層)として透明層などの所定の層が形成されている。すなわち、このカラーフィルタでは、基材上に形成した着色層における反射部に対応する部分の少なくとも一部分が、単位厚みあたりで比較して着色層よりも可視光を透過しやすい層(層M;厚み差低減層)にして構成されており、本発明のカラーフィルタは、基材上に層Mを挟むように位相差層を形成してなる構造を備える。よりくわしくは、このカラーフィルタでは、反射部に、層Kと層Mが積層された構造(構造a)、もしくは、層Kが存在せずに層Mのみを備えた構造(構造b)、もしくは、反射部の一部の構成を構造bと同じくしてなる構造(構造c)が形成される。そして、カラーフィルタは、構造aからcのいずれかの構造上に位相差層が積層されてなる構成を備える。この構造により、本発明によれば、基材と位相差層の間で着色層の厚みが変動しても、層Mの厚みを制御して、位相差層の下地をなす面の凹凸を減じることができる。したがって、反射部において、位相差層を積層しても位相差層の厚みの相違を抑えることができるとともに位相差層の中央部と端部で位相が異なる虞を低減できる。そして、層Mは着色層よりも光を透過しやすいので、反射部にて高輝度の液晶画面を得ることができるとともに高いコントラストの液晶画面を得ることができる。すなわち、このカラーフィルタを組み込んで半透過半反射型液晶表示装置を製造した場合には、得られる液晶表示装置は、透過部の表示特性を損なうことなく、反射部の位相差の相違に伴う液晶画面からの光モレの虞を低減でき、高輝度、高コントラストな液晶画面を得ることができるものとなる。
【0018】
また、本発明によれば、位相差層の下地となる面の凹凸差を減じることができるので、位相差層を積層する際に、その下地となる面の凹凸状態を厳密に考慮せずとも、平坦な面に位相差層を形成するときと同様に膜厚を管理することができ、カラーフィルタを製造する時に、位相差層の膜厚みを管理することが容易となる。
【0019】
また、本発明によれば、反射部に、厚み差低減層として、透過部の着色層と色相を同じくし、透過部の着色層よりも色濃度を薄くしてなる層を備えてもよいため、反射部に所定色の光を分光する機能を維持させつつ、透過部よりも反射部のほうが光の透過率を高い部分となすことができ、反射部にて表示された液晶画面が暗くなる虞を低減することができるようになる。
【0020】
なお、本明細書において、色相とは、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)、シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)のような色の属性を示すものである。
【0021】
また、本明細書において、所定の層(層1)について「色濃度が薄い」とは、それと同じ色相の層(層2)との比較において、層1の可視光域の光の透過率が層2よりも高いことをいうものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1の実施形態について>
まず、本発明のカラーフィルタ10の実施例の1つの形態(第1の実施形態)について説明する。
【0023】
本発明のカラーフィルタ10は、透過表示機能と反射表示機能を有して液晶画面を表示可能な半透過液晶表示装置に用いられるものであり、図1に示すように、液晶画面のうち透過表示機能にて表示される領域に対応して定められる透過部1と、液晶画面のうち反射表示機能にて表示される領域に対応して定められる反射部2と有してなる。
【0024】
ところで、液晶画面は多数の画素から構成されており、個々の画素に対応して、カラーフィルタ10には画素部22が形成されている場合がある。半透過半反射型液晶表示装置では、画素部22は、透過部1と反射部2とで構成される。カラーフィルタが半透過半反射型液晶表示に組み込まれるものであって多数の画素部22を備えるものである場合には、液晶画像を表示させるために使用可能な部分(有効表示領域を指定する部分)に特定される個々の画素部22の所定の部分をカラーフィルタ10の基体の厚み方向に分割して取り出すことを想定した場合に、その取り出される所定の部分として、画素部22ごとに上記した透過部1と反射部2の組み合わせが指定される(図5、図6、図7、図8)。
【0025】
本発明のカラーフィルタ10は、基材11と着色層27を有して構成される基体3を備える積層部材4上に位相差層を積層して構成されており、透過部1、反射部2は、基体3の厚み方向にカラーフィルタ10を分割して指定される所定の部分としてそれぞれ構成される。なお、本明細書において、透過部1、反射部2を指定する際における「カラーフィルタ10を分割して指定される所定の部分」との表現は、カラーフィルタ10を分割して所定の部分を取り出すことを想定した場合におけるその所定の部分を、示すものである。
【0026】
本発明のカラーフィルタ10の透過部1は、基材11上に着色層27が積層してなる層構造を有して構成される。このとき、基体3における透過部1に対応する部分は、基材11上に着色層27が積層してなる。また、積層部材4における透過部1に対応する部分は、基体3でなる。
【0027】
本発明のカラーフィルタ10の反射部2は、基材11上に、厚み差低減層14と位相差層12を備えて構成される。このとき、基体3における反射部2に対応する部分は、基材11にて構成されており、すなわち、透過部1に形成される着色層27に共通する層構造(着色層27と同一の色相且つ色濃度の層構造)としての層Kが備えられておらず、その着色層27の厚みがゼロとなっている。また、図1に示すような第1の実施形態のカラーフィルタ10では、積層部材4における反射部2に対応する部分は、基体3上に、直接、厚み差低減層14を積層してなる。
【0028】
カラーフィルタ10において、反射部2は、積層部材4に対して直接もしくは間接に位相差層12を積層してなる。図1の例では、反射部2は、積層部材4の厚み差低減層14上に直接に位相差層12が積層されて構成されている。
【0029】
「基材について」
カラーフィルタ10において、透過部1に使用される基材11は、反射部2に使用される基材11と同一のものが用いられる。
【0030】
基材11を構成する材料は、光透過性を有するものであれば、特に限定されるものではない。また、基材11は、単層で構成されるものでも、複数種類の材料をものにて多層に構成されてもよい。例えば、基材11は、透明材料により形成されたものを適宜採用できる。基材11の光線透過率は、適宜選定可能である。
【0031】
なお、基材11は、光学的に等方性を有するように構成されていることが好ましい。基材11としては、ガラス基板などのガラス材の他、種々の材質からなる板状体を適宜選択できる。また、基材11は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどからなるプラスチック基板であってもよいし、またさらにポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロプレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトンなどのフィルムを用いることもできる。これらのなかでも、基材11は無アルカリガラスであることが好ましい。また、基材11は、その剛性について特に限定されず、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジットな部材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブルな部材を用いることができる。
【0032】
「着色層について」
基体3の着色層27は、該着色層27内に入射される光のうち所定の可視光線を透過させる機能を有する層である。このような着色層27は、次に示すような材料組成物を用いて形成することができる。具体的には、着色層27の材料組成物(着色層組成物)は、例えば、所定の色を呈する顔料と、樹脂組成物を配合してなる樹脂組成物などを挙げることができ、市販のカラーフィルタ用着色レジスト、例えば、ザ・インクテック社製のIT−G R246、IT−G G445、IT−G B506を適宜使用することができる。なお、着色層27の色相としては、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどから、複数色を用いることができる。
【0033】
着色層27は、基材11の上に着色層組成物を塗布して塗布膜を得て、その塗布膜を硬化させることによって得ることができる。
【0034】
なお、カラーフィルタ10において着色層27が色相を異にするものを複数種類備えている場合には、次のようにして着色層27を形成することができる。
【0035】
カラーフィルタ10について、図1に示すカラーフィルタ10に示す構造を多数備えて色相の異なる着色層27が存在するものとしては、具体的に図5,6に示すカラーフィルタ10をあげることができる。図5,6に示すカラーフィルタ10について着色層27は、次のように形成される。
【0036】
図5に示す着色層27では、画素部22の所定の領域を覆うように三色(3種類)の着色層27(27a,27b,27c)が、面順次に配列されている(図5、図6)。また、着色層27a,27b,27cのそれぞれは、矩形状の着色層を間欠的に配置してなる間欠的な帯状パターンをなして配置されており、さらに間欠的な帯状パターンをなす着色層27a,27b,27cを構成する個々の着色層は、矩形状に形成されている。着色層27a,27b,27cは光透過性を有しており、透過する可視光を分光してそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光となす。したがって図5に二点鎖線で示すように、RGBの三色の着色層(赤色(R)27a,緑色(G)27b,青色(B)27c)のそれぞれについて所定の領域を、それぞれ画素部と着色層27との交差範囲を定める領域(画素部指定領域)となす。そして、このカラーフィルタ10においては、三色の着色層(赤色(R)27a,緑色(G)27b,青色(B)27c)にて定められる三つの画素部指定領域があわさって、一つの絵素が形成される。
【0037】
このような着色層27a,27b,27cは、色相ごとに、各色相に対応する顔料と樹脂などを配合してなる着色材料を溶媒に分散させた着色層組成物を基材11に塗布して形成される塗膜を、例えばフォトリソグラフィー法で、例えば矩形状などといった所定形状にパターニングすることで形成することができる。そのほかにも、着色層27a,27b,27cは、着色層組成物を所定形状に基材11に塗布することによっても形成できる。
【0038】
なお、図5において、複数種類の着色層27を備える場合、着色層27の色相のパターンについても、RGB方式の三色の場合のほか、その補色系であるCMY方式とすることも可能であり、さらに二色の場合、または四色以上の場合なども採りうる。また着色層27のパターンの形状も、矩形状のパターン形成する場合のほか、三角形状などの微細パターンを基材11上に多数分散配置するパターンの場合など、目的に応じて種々のパターンを採りうる。
【0039】
「厚み差低減層について」
厚み差低減層14は、透明層6、もしくは、透過部1の着色層27と色相を同じくする層(A層;図2(A)において符号18)である。具体的には、厚み差低減層14は、同じ色相の着色層27よりも可視光の透過性が高い層であり、カラーフィルタ10において透過部1と反射部2との厚みの差を低減させる層である。
【0040】
なお、本発明のカラーフィルタ10として、厚み差低減層14が複数箇所に設けられる場合は、複数の厚み差低減層14は、透明層6もしくは透過部1の着色層27と色相を同じくする層(A層)のいずれかを用いられてよく、また、透明層6と、A層の両者を用いられてもよい。
【0041】
透明層6は、光線透過率が高い層であることが好ましく、具体的には、可視光(380から780nm)における透過率が80%以上であることが好ましい。
【0042】
また、カラーフィルタ10において、透過部1が着色層27として、複数種類の色相の着色層27を設けている場合には、色種ごとに画素部が存在することとなる。この場合、透過部1の着色層27と色相を同じくする層は、1つの画素部を構成する透過部1と反射部2との間で定めるものとする。
【0043】
たとえば、カラーフィルタ10において、透過部1に、着色層27として、3原色(R(赤)、G(緑)、B(青))の3つの色相のものが設けられている場合には、次のように、着色層27と色相を同じくする層が定められる。すなわち、カラーフィルタ10より、1つの画素部が選択され、選択された画素部における透過部1における着色層27がG(緑)の色相の層である場合に、それと同じ画素部における反射部2において、厚み差低減層14は、G(緑)の色相の層として指定されることで、厚み差低減層14が「着色層27と色相を同じくする層」とされこととなる。
【0044】
たとえば、厚み差低減層14は、着色層27と色相を同じくする層である場合には、厚み差低減層14の色濃度は、着色層27の厚みを約半分としたときの色濃度を着色層27と同膜厚で実現する色濃度程度であることが望ましい。
【0045】
厚み差低減層14は、適宜厚みにて設けられるが、反射部と透過部の厚み差(基体3における反射部の厚みと透過部の厚みの差)を低減できることが好ましく、反射部の着色層の厚みがゼロの場合では着色層27と同じ厚みであることがより好ましい。このような厚み差低減層14によれば、基材11に対して着色層27を積層するにあたり、透過部1に着色層27を設ける一方で反射部2にその着色層27と共通する層を設けないために生じる透過部1と反射部2との表面段差(表面凹凸差)を効果的に低減することができる。
【0046】
また、厚み差低減層14は、位相差層12を形成した場合に位相差層12の表面凹凸差を0.45μm以内に抑えることができる程度の厚みにて設けられていることが好ましく、表面凹凸差を0.3μm以内に収めることができる程度の厚みにて設けられていることがより好ましく、表面凹凸差を0.15μm以内に収めることができる程度の厚みにて設けけられていることがさらに好ましい。
【0047】
また、カラーフィルタ10内に反射部2が多数存在する場合、厚み差低減層14の設置数は、適宜選択可能であり、反射部2のすべてに設けられても、反射部2の一部に設けられてもよい。
【0048】
厚み差低減層14の材料は特に限定されるものではないが、有機材料で形成されたものが好ましく用いられる。中でも、耐圧性、耐熱性に優れた紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられる。より詳しくは、次に示すような材料が用いられる。
【0049】
厚み差低減層14が透明層6である場合、その透明層6を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、屈折率異方性を有しない透明材料が好ましく用いられ、特に、有機材料で形成されたものが好ましく用いられ、その有機材料の中でも、耐圧性、耐熱性に優れる点で、紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられる。紫外線硬化性樹脂が用いられる場合、具体的には、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリスチリルメタクリレート、ポリエーテルメタアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート(特に、それぞれビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型の骨格を有するエポキシアクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシアクリレート)、ポリカーボネート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、メラミンアクリレート等の多官能オリゴマーであって官能基の数が1〜10のもの等が挙げられる。また、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等の単官能モノマー及び多官能モノマーも好ましいものとして挙げられる。
【0050】
厚み差低減層14が、透過部1の着色層27と色相を同じくする層(A層)である場合、A層を構成する材料としては、着色層27を構成するための材料と同じ材料を適宜用いることが可能である。
【0051】
「位相差層について」
次に、反射部2には、位相差層12が設けられているが、この位相差層12は、所定の位相差を持ち、カラーフィルタ10における透過部1と反射部2との間に所定の段差を持たせるように形成される。
【0052】
位相差層12は、液晶分子を所定の方向に配向させて所定の規則性を有する構造としてなる層であり、液晶分子が所定の方向に規則性を持って配向してなる構造を備えることにより、所望の光学機能を実現する。具体的には、例えば、位相差層を構成する液晶分子の配向は、カラーフィルタを組み込む液晶表示装置の構成に応じて求められる位相差層の光学機能に応じて、ホモジニアス配向(水平配向)、ホメオトロピック配向(垂直配向)、ツイスト配向、ハイブリッド配向、ベンド配向などから適宜選択される。なお、位相差層12が、ホモジニアス配向した液晶分子にて構成される場合、位相差層12は、いわゆる正のAプレートとしての光学機能を有する層をなし、また、位相差層12が、ホメオトロピック配向した液晶分子にて構成される場合では、正のCプレートとしての光学機能を有する層をなす。
【0053】
なお、位相差層12の厚さ方向に法線(H)を有する平面(S)を想定し、法線Hに平行してz軸、平面Sの面内方向に互いに直交するx軸とy軸とを想定して、x軸とy軸とz軸とで張られる3次元空間を想定した場合にあって、位相差層のx軸、y軸、z軸方向の屈折率を、それぞれNx、Ny、Nzとした場合に、位相差層が正のAプレートである場合とは、Nx>Ny=Nz、もしくはNy>Nx=Nzである場合を示し、位相差層が正のCプレートである場合とは、Nx=Ny<Nzである場合を示すものとする。
【0054】
位相差層12を構成する液晶としては、重合性液晶や高分子液晶等を適宜用いることができる。具体的に、位相差層12を構成する液晶としては、ネマチック規則性、スメクチック規則性を有する液晶相を形成し得る液晶材料であれば特に限定されるものではないが、ネマチック液晶を好適に使用できる。位相差層12を構成する液晶としてネマチック規則性を有する液晶を選択する場合、ネマチック規則性を有する液晶の中でも、液晶を構成する液晶分子中に2つ以上の重合性基を有するネマチック液晶を好適に使用できる。より具体的に、液晶としては、特表平11−513019号公報に開示されているような重合性液晶を使用できる。
【0055】
なお、位相差層12を構成する液晶には、重合性モノマー分子、重合性オリゴマー分子、重合性ポリマー分子等を単体で用いてなるものが採用されてもよく、またこれら二種以上を混合してなるものが採用されてもよい。
【0056】
位相差層12を構成する液晶をなす液晶分子は、その分子構造中に不飽和二重結合を重合性官能基として有するもの、すなわち重合性液晶分子が好ましく、分子構造の両末端に不飽和二重結合を有するもの(不飽和二重結合を2以上有するもの)がより好ましい。
【0057】
位相差層12を得るために用いられる重合性液晶分子としては、架橋重合性を有するネマチック液晶分子(架橋性ネマチック液晶分子)などをあげることができる。架橋性ネマチック液晶分子としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。また、このような架橋性液晶分子として、より具体的には、下記化1〜12で表される化合物のうちの1種または複数種を混合して用いることができる。
【0058】
【化1】

【0059】
(式(1)中、R及びRはそれぞれ水素又はメチル基を示し、Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、又はニトロ基を表し、a及びbは、それぞれ個別に2〜12の整数を表す。)
【0060】
【化2】

【0061】
【化3】

【0062】
【化4】

【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
【化7】

【0066】
【化8】

【0067】
【化9】

【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
【化12】


【0071】
位相差層12は、その位相差層12に入射する光に位相差を生じさせるものである。ここに位相差は、リタデーション量、すなわち、位相差層12の複屈折率(Δn)と膜厚(d)との積により決定される。位相差層12が形成されるためには、屈折率異方性を有する(Δnがゼロでない)ように形成される必要がある。ところで、屈折率異方性を示すΔnは、位相差層12を構成する液晶や位相差層12の下地をなす面の配向能により異なる値をとる。位相差層12は、液晶分子が配向する方向に対して平行な面を想定するとともに、その面内に、液晶分子が配向する方向(配向方向)に対して直角なX軸と配向方向に平行なY軸を仮定した場合に、位相差層を構成する液晶は、液晶分子のX軸方向の屈折率nxとY軸方向の屈折率nyとの差(Δn=|nX−nY|)が0.03〜0.20程度であることが好ましく、0.05〜0.15程度であることがより好ましい。
【0072】
Δnが0.03以下になると、位相差層12を所望のリタデーション量を確保したものとするために、位相差層12の膜厚を厚くする必要があり、位相差層12を構成する液晶の配向に乱れが生じる虞が大きくなる。一方、Δnが0.20を超えると、位相差層12が薄くなりすぎ、所定の厚みを有する位相差層12を得るために位相差層12をなす膜の厚みを制御することが困難になる。なお、複屈折率の測定は、位相差層12のリタデーション値と膜厚を測定することにより算出できる。
【0073】
リタデーション値は、RETS−1250VA(大塚電子社製)等の市販の光学材料検査装置を用いて測定できる。リタデーション値を測定される光(測定光)の波長は、可視領域(380〜780nm、測定装置の制約によっては400〜800nm)であることが好ましく、特に、比視感度の最も大きい550nm付近で測定することがより好ましい。
【0074】
位相差層12などいったカラーフィルタ10を構成する各層の膜厚は、触針式段差計等を用いて測定することができ、DEKTAK(Sloan社製)等の市販の測定機器を好適に使用できる。
【0075】
位相差層12は、位相差層12を構成する液晶を含む液晶組成物を溶媒に添加してなる液晶組成液を所定の層上に塗布して液晶塗布膜を成膜し、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を所定の方向に配向させ、液晶塗布膜中の液晶を重合させることにより得ることができる。図1に示す例では、液晶組成物を、少なくとも厚み差低減層14上に塗布して液晶塗布膜が成膜される。
【0076】
液晶塗布膜を成膜する際に用いられる液晶組成物は、上記したような液晶分子で構成される重合性液晶を含んでなる。
【0077】
位相差層12を形成するための液晶組成物においては、重合性液晶の他に、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を好適に使用できる。ラジカル重合性開始剤は、紫外線等のエネルギーによりフリーラジカルを発生するものであり、例えば、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げることができる。本発明においては、市販の光重合開始剤を使用することもでき、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれも、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等のケトン系化合物や、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物を好適に使用できる。
【0078】
なお、位相差層12を形成するための液晶組成物には、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
【0079】
光重合開始剤は、重合性液晶の液晶規則性を大きく損なわない範囲で添加することが好ましい。光重合開始剤の添加量としては、一般的には液晶分子に対して0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜12質量%、より好ましくは、0.5〜10質量%の範囲で塗工液に添加することができる。
【0080】
また、位相差層12を形成するための液晶組成物は、更に熱重合開始剤を含んでなることが好ましい。重合性液晶は、加熱によっても重合反応が進行するが、熱重合開始剤を含有することにより、等方相の状態にある重合性液晶を効率的に重合させて硬化することができる。
【0081】
熱重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を好適に使用できる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキシルニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレル酸、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、を挙げることができる。
【0082】
熱重合開始剤は、重合性液晶の液晶規則性を大きく損なわない範囲で添加することが好ましい。熱重合開始剤の添加量としては、一般的には液晶分子に対し0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜12質量%、より好ましくは、0.5〜10質量%の範囲で塗工液に添加することができる。
【0083】
位相差層12を形成するための液晶組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を含有することにより、液晶塗布膜において気体に対して接触する面(気体界面)で、液晶の配向に乱れが生じる虞を抑制できる。具体的には、空気雰囲気下にて液晶塗布膜を形成する場合には、液晶塗布膜の空気界面での液晶の配向を制御することができる。
【0084】
界面活性剤としては、重合性液晶が液晶相をなすことを損なうものでなければ、特に限定されることはない。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0085】
界面活性剤の添加量としては、一般的には液晶に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲で、液晶組成物に添加することができる。
【0086】
位相差層12を得る際には、液晶組成物を溶媒に添加して液晶組成液を得るが、液晶組成液を構成する溶媒としては、液晶組成物を構成する各成分(重合性液晶および各成分)を溶解できるものであれば特に限定されるものではなく、有機溶媒を好適に使用できる。有機溶剤としては、酢酸3−メトキシブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等を1種類または2種類以上を混合してなるものを好適に使用できる。
【0087】
なお、位相差層12に求められる光学機能がいわゆる負のCプレートとしての機能であり、それに応じて重合性液晶に求められる配向がコレステリック配向である場合には、液晶組成物には、カイラル剤が含有されることが好ましい。液晶組成物がカイラル剤を含有することにより、位相差層はコレステリック配向した液晶を有する層として形成されることができる。
【0088】
カイラル剤としては、例えば1つもしくは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、またはクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物等が挙げられる。カイラル剤としては、少量でも液晶分子の配向に螺旋ピッチを誘発させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、より具体的には、例えばMerck社製S−811等の市販のものを用いることができる。
【0089】
このようにして、液晶組成液が調製されると、次いで、この液晶組成液を用いて、位相差層12が、積層部材4の所定の部分上に形成される。図1のカラーフィルタ10の例では、液晶組成液を用いて、位相差層12が、積層部材4の反射部2に対応する部分に形成される。
【0090】
位相差層12を所定の部分に形成する方法としては、液晶組成物を、従前より公知な印刷方法を用いて所定の部分に塗布することで、液晶塗布膜を成膜する成膜工程と、液晶塗布膜に含まれる重合性液晶を所定の方向に配向させる配向工程と、重合性液晶を重合反応させることで液晶塗布膜を硬化させて液晶塗布膜を位相差層となす重合工程とでなる方法(印刷法)を挙げることができる。
【0091】
また、位相差層12を所定の部分に形成する方法としては、液層組成物を、位相差層12を構成しようとする所定の部分を含む領域に塗布し(例えば、その所定の部分を含む全領域に一面に塗布し)、液晶塗布膜を成膜する成膜工程と、液晶塗布膜に含まれる重合性液晶を所定の方向に配向させる配向工程と、位相差層12を形成しようとする部分に対応した所定のパターンにてパターン形成されたフォトマスクを用いて液晶塗布膜に紫外線などの活性放射線を照射して、液晶塗布膜における活性放射線の被照射部分に含まれる重合性液晶を重合反応させる重合工程と、液晶塗布膜における活性放射線が照射されなかった部分の液晶組成液を除去する工程とでなる方法(フォトリソグラフィー法)を挙げることができる。
【0092】
上記印刷法、フォトリソグラフィー法において、成膜工程と配向工程の間には、適宜、液晶塗布膜に残存する溶媒を留去する工程(留去工程)が介在していてもよい。この留去工程は、例えば、積層部材4に液晶塗布膜を形成してなるものを低圧下に置くことで実施可能である。
【0093】
上記印刷法、フォトリソグラフィー法における配向工程は、液晶塗布膜を加熱して、液晶塗布膜の温度を、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が液晶相となる温度(液晶相温度)以上、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が等方相(液体相)となる温度未満にする方法で、具体的に実施可能である。このとき液晶塗布膜の加熱手段は、特に限定されず、液晶塗布膜を形成した基材11を加熱雰囲気下におく手段でもよいし、液晶塗布膜に赤外線を照射して加熱する手段でもよい。なお、重合性液晶分子を配向させる方法は、上記方法による他、液晶塗布膜に含まれる重合性液晶分子やこの液晶塗布膜の状態に応じ、液晶塗布膜を一旦等方相温度まで加熱し、その後に液晶塗布膜を冷却し、その冷却の過程で自発的に液晶分子に配向を誘起させる方法や、液晶塗布膜に対して所定方向の電場や磁場を負荷する方法によっても実現可能である。
【0094】
なお、位相差層12の形成にあたり、位相差層12の下地をなす層(下地層)は、液晶を所定の方向に配向させる能力(配向能)を、位相差層12との接触界面に備えることが好ましい。このように構成することで、位相差層12を構成する液晶が所定方向により配向しやすくなる。位相差層12の下地となる層に液晶分子を配向させる配向能を付与する処理としては、配向膜を形成し、この配向膜にラビングをする処理や、配向膜に偏光を照射する処理や、配向膜に斜め方向から露光する処理をあげることができる。
【0095】
なお、下地層は、配向膜(図示せず)の表面がラビングされてなる層を用いることができる。配向膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール等が通常使用される。また、市販の配向膜を使用してもよい。例えば、サンエバー(日産化学株式会社製)、QL及びLXシリーズ(日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社製)、ALシリーズ(JSR株式会社製)、リクソンアライナー(チッソ株式会社製)等の配向膜が用いられてもよい。
【0096】
また、ラビング処理は、レーヨン、綿、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート等の材料から選択されるラビング布を金属ロールに巻きつけ、これを配向膜に接した状態で回転させるか、ロールを固定したまま基材11を搬送することにより、配向膜の表面をラビング布で摩擦する方法が通常用いられる。
【0097】
さて、上記においては、本発明のカラーフィルタ10が、基材11と着色層27を有して構成される基体3における反射部2に対応する部分を、基材11にて構成する場合、すなわち、その反射部2に対応する部分において着色層27の厚みがゼロとなっている場合を例として、第1の実施形態のカラーフィルタ10を詳細に説明した。本発明は、この例に限定されず、第1の実施形態のカラーフィルタ10を構成する基体3における反射部2に対応する部分が次のように構成されてなるものが用いられてもよい(第2の実施形態)。
【0098】
<第2の実施形態について>
第2の実施形態におけるカラーフィルタ10は、透過部1と反射部2を備えてなり、図2(B)に示すように、透過部1は、第1の実施形態のカラーフィルタ10と同じ構成を備えてなり、反射部2は、基材11と、着色層28と厚み差低減層14と位相差層12とを備えて構成される。そして、第2の実施形態におけるカラーフィルタ10では、基体3における反射部2に対応する部分が、基材11上に着色層28を積層してなる層構造にて構成される。
【0099】
基体3における反射部2に対応する部分において、着色層28は、透過部2の着色層27と色相および色濃度を同じくする層であって、その厚みを着色層27よりも薄くしてなる層(層K)である。このような着色層28は、透過部1に形成される着色層27と同じ着色層組成物で構成される層が反射部2に備えられることで構成可能である。
【0100】
着色層28は、着色層27とは別途、着色層組成物を印刷する方法や、フォトリソグラフィー法などを適宜用いて、基材11上に設けられてもよい。
【0101】
また、着色層28は、着色層27の形成と同じ工程にて、一度に同時に形成してもよい。例えば、着色層27と着色層28は、着色層27の形成領域と着色層28の形成領域とで光透過率を異にするようにパターン形成したフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法などを適宜採用することで、着色層28の製造工程と着色層27の製造工程を一回の工程であわせて形成することができる。この場合、着色層28は着色層27と一体的に形成される。
【0102】
着色層28は、その形状を問わない。すなわち、着色層28と厚み差低減層14との接触界面の断面形状は特に限定されない。したがって、着色層28は、厚み差低減層14との接触界面を、所定の方向に傾斜する面、凹型の面、凸型の面などの所定形状にして構成されてもよい。ただし、このように着色層28と厚み差低減層14との接触界面が上記所定形状である場合には、着色層28の厚みは、着色層28の最も薄厚な部分の厚みを示すものとする。
【0103】
このカラーフィルタ10の反射部2では、着色層28上に、厚み差低減層14が積層されている。厚み差低減層14は、第1の実施形態のカラーフィルタ10において基材11上に厚み差低減層14を積層する方法として使用可能な方法を適宜用いられて、着色層28上に積層される。
【0104】
そして、このカラーフィルタ10の反射部2では、第1の実施形態のカラーフィルタ10と同様にして、厚み差低減層14上に位相差層12が積層される。
【0105】
こうして、カラーフィルタ10の透過部1と反射部2がともに形成でき、第2の実施形態のカラーフィルタ10を具体的に得ることができる。
【0106】
<第3の実施形態について>
上記第2の実施形態のカラーフィルタにおいて、反射部2が、基材11の上に着色層28を積層し、着色層28の上に厚み差低減層14を積層して積層部材4を形成し、その積層部材4上に位相差層12を形成している場合につき、本発明のカラーフィルタを詳細に説明した。本発明のカラーフィルタ10は、これに限定されず、基材11と着色層28の間に厚み差低減層14を介在させて構成されていてもよい(図2(C))(第3の実施形態)。
【0107】
第3の実施形態のカラーフィルタは、第2の実施形態のカラーフィルタのうち着色層28と厚み差低減層14の積層順序を入れ替えたほかは、第2の実施形態のカラーフィルタと同じ構成を備えてなる。
【0108】
したがって、第3の実施形態のカラーフィルタ10は、透過部1と反射部2を備えてなり、透過部1は、基材11に着色層27を備えて構成されており、反射部1は、基体3に厚み差低減層14を積層してその厚み差低減層上に着色層28を積層し、着色層28上に、位相差層12を積層して構成される。
【0109】
第3の実施形態のカラーフィルタ10は、次のように形成可能である。
【0110】
まず、基材11上において反射部2となすことを予定される部分上に、厚み差低減層14を形成する。厚み差低減層14は、第1の実施形態のカラーフィルタ10において基材11上に厚み差低減層14を積層する方法として使用可能な方法を適宜用いて、基材11上に積層される。
【0111】
つぎに、厚み差低減層14を設けた基材11に、着色層27,28を積層する。着色層27,28は、第2の実施形態のカラーフィルタ10と同じく、着色層組成物を印刷する方法や、フォトリソグラフィー法などを適宜用いて、それぞれ別々に、基材11上に設けられることができる。また、着色層27,28は、第2の実施形態のカラーフィルタ10と同じく、着色層27の形成領域と着色層28の形成領域とで光透過率を異にするようにパターン形成したフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法などで、一度に同時形成されてもよい。この場合、着色層28と着色層27は一体をなして形成される。
【0112】
そして、このカラーフィルタ10の反射部2では、着色層28上に位相差層12が積層される。このカラーフィルタ10における位相差層12は、第1の実施形態のカラーフィルタ10において厚み差低減層14上に位相差層12を積層する方法として使用可能な方法を適宜用いられて、着色層28上に積層される。
【0113】
こうして、カラーフィルタ10の透過部1と反射部2がともに形成され、第3の実施形態のカラーフィルタ10を得ることができる
【0114】
<第4の実施形態について>
第1から第3の実施形態におけるカラーフィルタでは、反射部2が、その面内方向に一様に着色層27の厚みをゼロとしている場合、あるいは、透過部2における着色層27よりも薄厚な層Kたる着色層28を備えている場合を例として説明したが、本発明のカラーフィルタ10は、反射部1が、その面内方向の一部分に透過部1の着色層27と同じ材料でなる色相および色濃度を同じくする層であって着色層27と同じ厚みの層を備えて構成されてよい(図2(D)(E))。このとき、反射部1の面内方向の一部分は、透過部1の着色層27と色相および色濃度を同じくする層が存在しないように構成される。
【0115】
このカラーフィルタ10は、透過部1と反射部2とを備えてなり、透過部1は、基材11に着色層27を備えて構成される。
【0116】
反射部2は、基材11に着色層29を備える。このとき、反射部2は、基材11の反射部1に対応する部分の一部分の上に、着色層29を備えている。この着色層29は、着色層27と同じ材料でなる層であって同じ厚みにて形成される層として構成される。
【0117】
着色層29は、着色層27と一体をなして形成されてもよいし(図2(D))、着色層27と着色層29の間に間隔をあけて配置されていてもよい(図2(E))。
【0118】
着色層29は、着色層27とは別途、着色層組成物を印刷する方法や、フォトリソグラフィー法などを適宜用いて、基材11上に設けられてもよい。
【0119】
また、着色層27と着色層29は、例えば、着色層27の形成領域と着色層29の形成領域とをあわせてパターン形成したフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法などを適宜採用することで、着色層29と着色層27を一度に同時に形成してもよい。この場合、着色層27は、反射部2について、反射部2の一部分について、着色層27の厚みをゼロにし、その他に部分について着色層27を形成した状態となっている。また、この場合、着色層27の一部が透過部1を越えて反射部2に入り込み、反射部2に入り込んだ部分が着色層29をなしている場合もある。また、着色層29が着色層27と一体をなして形成される場合には、着色層29の一部に孔があいた形状であってもよい。
【0120】
このカラーフィルタ10の反射部2では、着色層29の非形成部分上に、厚み差低減層14が積層されている。厚み差低減層14は、第1の実施形態のカラーフィルタ10において基材11上に厚み差低減層14を積層する方法として使用可能な方法を適宜用いられて、基材11上に積層される。
【0121】
そして、このカラーフィルタ10の反射部2では、第1の実施形態のカラーフィルタ10において厚み差低減層14上に位相差層12を積層する方法として使用可能な方法を適宜用いられて、厚み差低減層14と着色層29上に位相差層12が積層される。
【0122】
こうして、カラーフィルタ10の透過部1と反射部2がともに形成でき、第4の実施形態のカラーフィルタ10を具体的に得ることができる
【0123】
なお、本発明のカラーフィルタ10が複数の画素部を有する場合は、個々の画素部における基体3の反射部2に対応する部分上に、直接もしくは間接に位相差層12が積層され、それぞれの画素部において、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれか1種あるいは複数種類のカラーフィルタ10の構成と同じ構成が形成されていればよい。したがって、複数の画素から構成されるカラーフィルタは、上記した第1の実施形態から第4の実施形態のいずれか1種あるいは複数種類のカラーフィルタ10の構成と同じ構成を有するカラーフィルタのユニットを適宜組み合わせることで構成することができる。
【0124】
<第5の実施形態について>
本発明のカラーフィルタ10は、透過部1を、第1の実施形態のカラーフィルタにおける透過部の構造にて構成し、反射部を、一部分の反射部について、第1の実施形態のカラーフィルタにおける反射部の構造とし、それ以外の部分の反射部について、第2あるいは第3の実施形態のカラーフィルタにおける反射部の構造としてなるものであってもよい。
【0125】
第1から第5の実施形態のいずれかにおけるカラーフィルタ10には、次に示すように、保護層16や、ブラックマトリクス15、セルギャップ制御層19、等方層13、位相差層17などが備えられてもよい。
【0126】
「保護層について」
本発明のカラーフィルタ10について、位相差層12を厚み差低減層14に直接積層している構成を有するものを例として説明したが、カラーフィルタ10の構成はこれに限定されず、位相差層12と厚み差低減層14の間に保護層16が介在していてもよい(図3(A)(B)(C)(D)(E)(F))。
【0127】
保護層16は、積層部材4表面などを保護するものであり、透過部1や反射部2を通過する光に対する光線透過率の高い層である。また、この保護層16は、可視光における透過率が80%以上であることが好ましい。
【0128】
保護層16は、積層部材4の全面に設けられてもよいし、積層部材4に位相差層12を形成する前に設けられてもよいし(図3(A)(B)(C)(D)(E)(F))、積層部材4に位相差層12を形成した後に設けられてもよい(図4(D))。なお、図3、図4(D)では、積層部材4の面のうち透過部1に対応する部分と反射部2に対応する部分の両方の面上に保護層16が設けられているカラーフィルタ10の例が示されている。
【0129】
保護層16の材料は特に限定されるものではないが、有機材料で形成されたものが好ましく用いられる。中でも、耐圧性、耐熱性に優れた紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられる。保護層16を構成する材料は、上記した透明層6に用いられる材料として挙げたものより適宜選択して用いることができる。
【0130】
「セルギャップ制御層について」
また、本発明のカラーフィルタ10には、次に示すように、位相差層12上もしくは下に直接もしくは間接にさらにセルギャップ制御層19が設けられてもよい(図4(A)(B)(C)(E)(F)(G))。すなわち、セルギャップ制御層19は、位相差層12上に直接に積層されても(図4(A)(B)(C))、上記した保護層16を介して間接に積層されてもよい(図4(E))。また、セルギャップ制御層19は、位相差層12と厚み差低減層14との間(図4(F))に積層されて位相差層12の下に直接設けられてよく、また、位相差層12と保護層16との間(図4(G))に積層されて位相差層12の下に直接設けられてもよい。セルギャップ制御層19が位相差層12の下に形成される場合、位相差層12の形成工程をセルギャップ制御層19の形成工程よりも後に実施することができるので、セルギャップ制御層19の形成工程の際に用いる各種の化合物などの影響や加熱(焼成)の影響で、位相差層12の光学機能が低下する虞を低減できる。
【0131】
セルギャップ制御層19は、例えば、位相差層12を積層された積層部材4上に、厚み差低減層14を構成する材料として使用可能な材料より適宜選択してなる材料組成物を、一面に塗布して、フォトリソグラフィー法などによってパターン形成することにより、位相差層12上などの所定の位置に適宜作成することが可能である。
【0132】
ここで、位相差層12には、カラーフィルタ10を液晶表示装置に組み込む際に形成される液晶層の厚み(セルギャップ)を、反射部2に対応する部分についての液晶層の厚みを、透過部1に対応する部分についての液晶層の厚みの概半分にすることができること(セルギャップの厚みに関する要請)、且つ、反射部2を進行する光と、透過部1を進行する光との間で所定の位相のずれ(1/4波長、1/2波長など)を生じさせることができること(位相のずれに関する要請)、という2つの要請がある。位相差層12が、位相のずれに関する要請を満たしても、セルギャップの厚みに関する要請を満たさない場合、位相差層12上または下にセルギャップ制御層19を設けて、このセルギャップ制御層19と位相差層12とで、位相のずれに関する要請とセルギャップの厚みの要請を満たすような層構成が形成できる。
【0133】
「等方層について」
本発明のカラーフィルタ10は、透過部1の少なくとも一部には等方層13が積層されていてもよい(図4(B))。なお、等方層13は、位相差層12を構成する液晶組成物を用いてなる層であって、且つ、複屈折率異方性を示さない層である。
【0134】
この場合、本発明のカラーフィルタ10は、透過部1と反射部2を有してなり、且つ、反射部2を、第1から第4の実施形態のカラーフィルタのいずれかにおける反射部2の構造にセルギャップ制御層19を備えた層構造とし、透過部1を、基材11上に着色層27を積層するとともに、着色層27の少なくとも一部に等方層13を積層して構成してなる(図4(B))。
【0135】
また、等方層は、次のようにして形成することもできる。第1の実施形態を説明する際に記載した液晶組成液を調製し、その液晶組成物を基体3に一面に塗布して、液晶塗布膜を得て、その液晶塗布膜中の液晶分子を配向させた状態を形成させ、その状態を維持して反射部に対応する部分に活性放射線を照射し、反射部の位相差層を形成する。次に、液晶塗布膜の温度を、液晶分子が等方性を示す温度まで変化させ、液晶塗布膜のうち活性放射線を照射されなかった領域の状態を、その領域に含まれる液晶分子の配向をランダムにしてなる状態となす。このとき、液晶塗布膜において透過部に対応する部分に含まれる液晶分子は、等方性を示す。そして、その状態で透過部に対応する部分に活性放射線を照射し、透過部に含まれる液晶分子を重合反応させることで、等方層が形成される。なお、液晶塗布膜の温度を、液晶分子が等方性を示す温度まで変化させて、液晶塗布膜のうち活性放射線を照射されなかった領域に含まれる液晶分子の配向をランダムな状態となした際、その状態が、液晶分子同士の熱重合反応を進行させる温度の条件を満たす状態にあれば、そのまま液晶分子の熱重合反応を進行させることでも、透過部に等方層を形成することができる。
【0136】
「透過部の位相差層について」
上記各実施形態におけるカラーフィルタ10は、上記透過部1に位相差層17が積層されない場合を例として説明したが、本発明のカラーフィルタ10は、透過部1上に位相差層17が積層されていてもよい(図4(C))。この位相差層17は、反射部2に設けられる位相差層12とは、光軸を異にするものである。
【0137】
この場合、本発明のカラーフィルタ10は、透過部1と反射部2を有してなり、且つ、反射部2を、第1から第6の実施形態のカラーフィルタのいずれかにおける反射部2の構造にて構成し、透過部1を、基材11上に着色層27を積層するとともに、着色層27上に位相差層17を積層して構成してなる。
【0138】
このようなカラーフィルタ10は、第1から第6の実施形態におけるカラーフィルタ10のいずれかを製造する工程において、位相差層17の下地をなす層として次のような処理を施した配向膜を用いて形成できる。すなわち、配向膜には、透過部1に対応する部分と反射部2に対応する部分とでマスクを用いたラビングやマスクを用いた偏光露光にて光軸を異ならせる処理が施される。そして、そのような処理を施した配向膜に、例えば第1の実施形態を説明する際に記載した液晶組成液を基体3に一面に塗布して、液晶塗布膜を得て、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を配向させたのち、液晶分子同士を重合させる。これにより、この液晶塗布膜は、透過部1に対応する部分と反射部2に対応する部分の配向膜の状態に応じて所定の光軸を有する位相差層17と位相差層12をなす。
【0139】
このようなカラーフィルタ10では、反射部のみに位相差層を形成するための現像工程が不要となり、簡易に位相差層を形成できる。
【0140】
カラーフィルタ10が多数の画素部を集合させて構成される場合、カラーフィルタ10には、画素部を区画化するためのブラックマトリクス(BM)が設けられることが一般的である。本発明のカラーフィルタ10は、次に示すようにブラックマトリクスを設けたものでもよい。
【0141】
「ブラックマトリクスについて」
カラーフィルタ10が、第1の実施形態のカラーフィルタ10である場合において、基材11上に着色層27や厚み差低減層14を積層する前に、基材11上にブラックマトリクスを積層して形成される場合を一例として、本発明のカラーフィルタ10を説明する(図7、8)。図7、図8は、カラーフィルタ10の実施例の一つを説明するための断面を示すそれぞれ概略平面図、概略断面図である。
【0142】
このカラーフィルタ10においては、基材11の一方の表面に遮光性のブラックマトリクス15が縦横に格子状(格子縞状)に塗工形成され、これによりブラックマトリクス15の非形成領域が開口部20として格子点状に多数形成される。このとき、平面視上、開口部20が画素部の範囲を指定する領域(有効表示領域)に相当し、ブラックマトリクス15の形成領域は、各画素部に輪郭を付する遮光部9を指定する領域に相当する。なお、遮光部9は、ブラックマトリクス15を含む部分として指定される。
【0143】
ブラックマトリクス15を配置した基材11の上には、開口部20の所定の領域を覆うように三色の着色層27a,27b,27cが、面順次に配列されている(図7、図8)。また、着色層27a,27b,27cのそれぞれは、矩形状の着色層を間欠的に配置してなる間欠的な帯状パターンをなして配置されており、さらに間欠的な帯状パターンをなす着色層27a,27b,27cを構成する個々の着色層は、矩形状に形成されている。着色層27a,27b,27cは、上記図4、5に示すカラーフィルタ10の例と同様に、光透過性を有しており、透過する可視光を分光してそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光となす。このカラーフィルタ10では、着色層27a,27b,27cによってそれぞれ被覆されてそれぞれの色相に応じた画素部の範囲が指定され、そして着色層27a,27b,27cそれぞれの異なる色相の画素部の範囲があわさって、一つの絵素21を指定する範囲が特定される。
【0144】
着色層27a,27b,27cは、上記図1、図4,5に示すカラーフィルタ10の例と同様に、色相ごとに、フォトリソグラフィー法などの方法を適宜用いて形成できる。
【0145】
このブラックマトリクス15は、遮光部9としての機能として、塗工される着色層27a,27b,27cを透過する光の混色を防止する機能とカラーフィルタ10が液晶表示装置に組み込まれる際に、基板に通常配置され液晶を駆動させるために用いられるTFTなどといった駆動回路などを、透過光から隠蔽する機能を併せもつ。
【0146】
このカラーフィルタ10においては、ブラックマトリクス15の配置形状は矩形格子状である場合に限定されず、ストライプ状や三角格子状などに形成してもよい。
【0147】
ブラックマトリクス15は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を基材11面にパターニングすることにより、形成することができる。また、ブラックマトリクス15は、黒色顔料を含む樹脂等の有機材料を所定形状に印刷するもしくはフォトリソグラフィー法により形成することも可能である。
【0148】
このカラーフィルタ10において、透過部1は、基材11上に着色層27を積層してなる部分として構成される。
【0149】
カラーフィルタ10の反射部2は、基材11上に厚み差低減層と位相差層を積層してなる部分として構成される。なお、このカラーフィルタ10において、厚み差低減層と位相差層は、第1の実施形態のカラーフィルタの厚み差低減層と位相差層の形成方法として使用可能な方法を適宜用いて作成することができる。厚み差低減層と位相差層は、画素部ごとに形成することができるほか、厚み差低減層を形成しようとするパターンに応じてパターン形成されたフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法と、位相差層を形成しようとするパターンに応じてパターン形成されたフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法にて形成することもできる。たとえば、図8のカラーフィルタの例では、面順次に配置される着色層27a,27b,27cの並ぶ方向(図8の紙面左右方向)を長手方向とする帯状に、厚み差低減層14と位相差層12が配置されている。そこで、この配置パターンに対応したパターン形成されたフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法を用いることで、容易に厚み差低減層14や位相差層12を形成することが可能である。
【0150】
カラーフィルタ10の遮光部9は、基材11上に所定パターンのブラックマトリクスを積層してなる構成を備えれば、特に限定されない。
【0151】
なお、本発明は、第1の実施形態のカラーフィルタ10に対して、ブラックマトリクスを形成する場合に限定されず、カラーフィルタ10は、第2から第5の実施形態のカラーフィルタ10である場合に、ブラックマトリクスを積層して形成されるものであってもよく、これらのカラーフィルタ10についても、基材11上に着色層27や厚み差低減層14を積層する前に、基材11上にブラックマトリクスが積層されることで、具体的に実現可能である。
【0152】
本発明のカラーフィルタ10は半透過半反射型液晶表示装置に組み込まれて使用されることができる。
【0153】
<半透過型液晶表示装置>
本発明によるカラーフィルタを液晶表示装置に組み込んだ例として、保護層16とブラックマトリクス15を備えた第1の実施形態のカラーフィルタ10を半透過半反射型の液晶表示装置30に組み込んだ例を図9に模式的に示す。
【0154】
図9に示す半透過半反射型液晶表示装置30は、対面する一対の基板31(第1の基板32、第2の基板33)の間に液晶(駆動液晶)34を封入して液晶層35を形成してなる液晶セル36を備えるとともに、その液晶セル36の厚み方向外側に直線偏光板39を配置し、さらに液晶セル36の厚み方向外側のうち第2の基板33の外側の位置にバックライト(図示せず)を配置してなる。バックライトは、これを光源とする光が液晶セル36の第2の基板に向かうように配置されている。
【0155】
第1の基板は、基材11上に遮光性のブラックマトリクス(BM)15によって有効表示領域の外縁が形成され、平面視上、BMの外縁で囲まれる領域として微細にパターニングされた多数の画素部を指定する領域が区画形成されている。画素部は、BMの外縁に沿って第1の基板の厚み方向に半透過半反射型液晶表示装置30を分割して画素部を指定する領域を含む部分を取り出すことを想定した場合に、その取り出される部分として指定できる。また、第1の基板32には、遮光部9が、第1の基板32の面内方向に個々の画素部を取り巻くように形成されている。さらに、第1の基板32は、透過部1と反射部2とを有する。透過部1と反射部2は、第1の基板32の厚み方向に画素部を分割したことを想定した場合に特定される部分として形成される。なお、BM15は、基材11のインセル側(液晶層35に対面する面側)表面の全面に遮光性材料を塗工した上でフォトリソグラフィー法により所望形状に形成することができる。
【0156】
第1の基板は、基板11のBM15を備える面上、透過部1に対応する部分に着色層27を積層しており、反射部2に対応する部分には、厚み差低減層14を積層している。このとき、基板11と着色層27と厚み差低減層14とで積層部材4が構成されている。
【0157】
第1の基板32は、積層部材4上に、保護層16を積層して反射部2と透過部1の両部および遮光部9の領域を被覆し、さらに、反射部2には、保護層16上に、位相差層12が積層される。この第1の基板32の例では、位相差層12は、積層部材4に対して間接に積層される。
【0158】
位相差層12は、液晶層35の厚み(セルギャップ)のうち第1の基板32の反射部2に対向する部分の厚みが、液晶層35の厚み(セルギャップ)のうち第1の基板32の透過部1に対向する部分の厚みの概半分になる厚みになるように設計される。さらに、位相差層12は、例えば1/4波長に相当する位相のずれを生じるように設計される。
【0159】
例えば、液晶セル36内に封止された液晶層35は、液晶層35に電圧が印加された時に、反射部では位相差が1/4波長となり、透過部では位相差が1/2波長、液晶層35に電圧が印加されない時には、反射部、透過部共に位相差がゼロとなるように、液晶層35を構成する液晶34をなす液晶分子の屈折率異方性Δnおよびセルギャップ(D)および配向が設計されている。また、液晶層35のセルギャップDを保つために、硬化性樹脂などの材料にて所定の位置に多数の柱42が、第1の基板32と第2の基板33の間に介在して形成されていることが好ましい。
【0160】
第2の基板33は、第1の基板32の遮光部9と反射部2と透過部1に対応して対向する部分を、それぞれ第2の基板33における遮光部と反射部と透過部となしている。
【0161】
第2の基板33における反射部には、光透過性を有する基材11上に、第1の基板32から第2の基板33に向かう方向に液晶層35内を進行する光を反射させる反射板38が設けられている。
【0162】
第2の基板33における透過部は、バックライトを光源とする光を透過させるとともに第2の基板から第1の基板に向かう方向に液晶層内を進行可能に構成される。
【0163】
第2の基板における遮光部は、インセル側に、TFT等の画素スイッチング素子、データ線、走査線等を形成している。
【0164】
液晶セル36の外側には、直線偏光板(第1の直線偏光板37、第2の直線偏光板40)39が設けられており、第1の基板32の外側に設けられる第1の直線偏光板37、第2の基板の外側に設けられる第2の直線偏光板40は、その透過軸を互いに直交して配置され、これら2枚の直線偏光板37,40は、クロスニコル状態を構成している。
【0165】
なお、この半透過半反射型液晶表示装置30には、必要に応じて、第1の基板32と第1の偏光板37との間に位相差フィルム41を適宜配置してよい。なお、位相差フィルム41には、もし使うなら正のAプレートとしての機能や正のCプレートとしての機能や負のCプレートを有する位相差フィルムなどの単体が用いられ、もしくは、これらの位相差フィルムを適宜組み合わせたものが用いられる。
【0166】
上記では、半透過半反射液晶表示装置30が、VA(VERTICAL ALIGNMENT)方式とする場合を例としたが、この例に限定されない。
【実施例】
【0167】
(ガラス基材の前処理)
基材として低膨張率無アルカリガラス板(コーニング社製1737ガラス 100mm×100mm、厚み0.7mm)を準備して洗浄処理を施した。
【0168】
(ブラックマトリクス形成用の樹脂材料および着色層組成物の調製)
ブラックマトリクス及び着色層を構成する材料には顔料分散型フォトレジストが用いられた。着色層を構成する材料たる顔料分散型フォトレジストについては、赤色(R)着色画素を構成する着色材料が採用された。
【0169】
顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合したものである。その組成を下記に示す。尚、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた。
【0170】
各フォトレジストの組成を以下に示す。
【0171】
(BM用フォトレジスト)
・黒顔料・・・・・14.0重量部
(大日精化工業(株)製TMブラック♯9550)
・分散剤・・・・・1.2重量部
(ビックケミー(株)製Disperbyk111)
・ポリマー・・・・・2.8重量部
(昭和高分子(株)製VR60)
・モノマー・・・・・3.5重量部
(サートマー(株)製SR399)
・添加剤・・・・・0.7重量部
(綜研化学(株)製L−20)
・開始剤・・・・・1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤・・・・・0.3重量部
(4,4´−ジエチルアミノベンゾフェノン)
・開始剤・・・・・0.1重量部
(2,4−ジエチルチオキサントン)
・溶剤・・・・・75.8重量部
(エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0172】
(赤色(R)着色画素用フォトレジスト)
・赤顔料・・・・・4.8重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・1.2重量部
(C.I.PY139(BASF社製パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0173】
尚、本明細書において記載のポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0174】
(位相差層形成用の液晶組成液の調製)
位相差用の液晶組成液を下記の組成で調製した。
・重合性液晶(上記(化12)の化合物) 23.75重量部
・光重合開始剤(イルガキュア907) 1.25重量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル) 75 重量部
【0175】
(実施例1)
<着色層と厚み差低減層の形成>
洗浄したガラス基材上面に、先に調製したBM用フォトレジストをスピンコート法で1.2μmの厚さに塗布し、減圧乾燥により溶剤を減じ、80℃、3分間の条件でプリベークし、縦横線状の格子形状パターンに形成されたマスクを用いて露光(100mJ/cm)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を50秒行った後、230℃、30分間ポストベークし、BM基板を作製した。
【0176】
次に、赤色(R)の顔料分散型フォトレジストを上記BM基板上にスピンコート法で塗布し、減圧乾燥により溶剤を減じ、80℃、3分間の条件でプリベークし、面内方向の所定位置に矩形状の光透過部を所定方向に間欠的に格子状に並べて形成される着色パターン用フォトマスクを用いて、アライメント露光(100mJ/cm)した。引き続き0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を50秒行った後、230℃、30分間ポストベークし、BMパターンに対して所定の位置に膜厚2.2μmの赤色(R)着色画素パターンを形成し、赤色の着色層を短冊状に並べて形成した。短冊状に並ぶ個々の着色層(短冊)についてみると、1つの短冊の寸法は、(長さ×幅)にして(約5cm×約200μm)である。このとき、着色の短冊は多数のBMにて区画された部分にまたがっており、BMにて区画された1つの領域内の3分の2を占めるように1つの赤色の着色層が配置された。
【0177】
次に、樹脂組成物(JSR株式会社製のオプトマーNN805)を用いて、上記赤色(R)着色画素パターンの形成方法と同様の方法及び条件で、膜厚2.2μmの厚み差低減層を短冊状に形成した。厚み差低減層の1つの短冊の寸法は、(長さ×幅)にして(約5cm×約100μm)である。また、このとき、BMにて区画された1つの領域内に、1つの厚み差低減層が配置された。そして、これにより、BMにて区画された1つの領域は、平面視上、赤色の着色層と厚み差低減層にて被覆された。
【0178】
これにより、基板上に、平面視上、BMにて区画化された領域内に赤色の着色層と厚み差低減層が形成された。
【0179】
<保護層の作製>
次に、着色部と厚み差低減層の上に、オプトマーNN805をスピンコート法で塗布し、80℃、3分間の条件でプリベークし、フォトマスクを用いず、露光(100mJ/cm2)した。引き続き0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を50秒行った後、230℃、30分間ポストベークすることで、保護層(厚み2.2μm)を形成した。
【0180】
<位相差層の作製>
次に、上記保護層上に、配向膜形成用の組成物(JSR株式会社製、AL1254)を、スピンコーターを用いて塗布して塗布膜を形成するとともに、塗布膜の膜厚を0.1μm以下となし、230℃のオーブン内で30分焼成した。次いで、ラビング装置を用いて、配向膜に配向処理を施した。
【0181】
その後、配向処理を施された配向膜上に、先に調整した位相差層形成用の液晶組成液をスピンコート法(スピンコーティングの条件;200rpmで3秒間、その後引き続いて1000rpmで2秒間)で塗布して液晶塗布膜を得て、80℃、3分間の条件でプリベークし、所定の厚み差低減層を形成する際に用いられたフォトマスクのパターンと同様のパターンを形成したフォトマスクを用いて、この液晶塗布膜をアライメント露光(200mJ/cm)した。引き続きメチルエチルケトン(MEK)を用いたバット現像を5秒行った後、230℃、30分間ポストベークすることで、上記厚み差形成層上に位相差層の画素パターンを形成した。この「位相差層の作製」を行うための工程において用いられた各条件は、平坦な素ガラス板上に配向膜を製膜してさらに位相差層を積層した場合に1/2波長板としての位相差層を形成できるような条件である。また、この条件は、平坦な下地面上に位相差層が形成される場合の条件にあたる。
【0182】
こうして、位相差層が作製されることで、カラーフィルタが得られた。このカラーフィルタでは、透過部はガラス基板に赤色の着色層を積層した構造に、さらに保護層を積層してなり、反射部はガラス基板に厚み差低減層を積層し、保護層を積層して、さらに位相差層を積層してなる。
【0183】
得られたカラーフィルタは、次のように評価された。
【0184】
(厚み差)
まず、位相差層を積層する前のカラーフィルタで、ガラス基板からの厚みがわかるよう段差プロファイルを測定した。次に、位相差層を形成した後に、ガラス基板からの厚みがわかるよう段差プロファイルを測定した。測定した段差プロファイルから、位相差層の厚みを、反射部の中心と外縁部分2ヶ所の計3箇所で算出した。測定には、触針式段差計DEKTAK(Sloan社製)を用いた。
【0185】
測定された厚みに基づき、カラーフィルタにおける位相差層の厚み差の良否判定が、次のような評価基準にて実施された。反射部の中心の厚みと外縁部分2箇所の厚みの平均値との差が、0.15μm以下にある場合には、「厚みが均一化されていてきわめて良好である」(A)と判定し、0.15μm超えて0.3μm以下の範囲にある場合には「良好」(B)と判定し、0.3μmを超えて0.45μm以下の範囲にある場合には「普通」(C)と判定し、0.45μmを超える場合には「不良」(D)と判定した。結果を表1に示す。
【0186】
(偏光顕微鏡観察)
位相差層の状態は、クロスニコルにした一対の直線偏光板にてカラーフィルタを挟持した状態で偏光顕微鏡(オリンパス(株)製:BX50)にて次のような観察を行うことで評価した。なお、偏光顕微鏡は、色温度転換フィルタと減光フィルタとを備えている。
【0187】
観察は、次の(i)、(ii)の順に行われた。(i)まず上記フィルタをすべて開いて光量を最大とした状態で、カラーフィルタをその法線まわりに回転させて、位相差層領域から透過する光がもっとも少なくなる角度位置を消光位、すなわち暗表示位置と定めた。つぎに、(ii)消光位から法線まわりに45度だけカラーフィルタを回転した角度位置を明表示位置と定め、上記フィルタを閉じて光量を抑えた上で顕微鏡写真を撮影した。
【0188】
顕微鏡写真を図10に示す。なお、本図および、後述の図11、12中、符号2は、反射部を示す。
【0189】
(実施例2)
厚み差低減層の形成に用いる樹脂組成物として、下記に示す組成にてなるフォトレジストたる組成物Aを用いたほかは、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作成した。得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、厚み差を評価した。結果を表1に示す。
【0190】
(組成物A)
・赤顔料・・・・・2.4重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・0.6重量部
(C.I.PY139(BASF社製パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製ソルスパース24000)
・モノマー・・・・5.5重量部
(サートマー(株)製SR399)
・ポリマー1・・・6.5重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0191】
(実施例3)
実施例1と同様に透過部の着色層を形成した後、次のような工程を実施した。反射部に、厚み差低減層を構成する際に用いた樹脂組成物を用いて、厚み差低減層(厚み1.1μm)を形成し、さらに透過部の着色層に用いた顔料レジストを用いて、反射部の厚み差低減層上に、着色層(厚み1.1μm)を形成した。
【0192】
しかる後、実施例1と同様にして、透過部の着色層と、反射部の厚み差低減層とを被覆するように保護層を形成し、さらに保護層上に位相差層を作成して、カラーフィルタを得た。
【0193】
得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、厚み差を評価した。結果を表1に示す。
【0194】
(実施例4)
実施例3で、反射部に形成した厚み差低減層と着色層の形成工程の順序を逆にして、カラーフィルタを得た。
【0195】
得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、厚み差を評価した。結果を表1に示す。
【0196】
(実施例5から8)
実施例5から8は、保護層を形成しなかったほかは、それぞれ実施例5については実施例1と同様に、実施例6については実施例2と同様に、実施例7については実施例3と同様に、実施例8については実施例4と同様にして、それぞれカラーフィルタを得て、それぞれのカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、厚み差を評価した。結果を表1に示す。
【0197】
(比較例1)
厚み差低減層を形成しないこと以外は、実施例1と同様の方法により、カラーフィルタを作製した。得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、厚み差を評価した。結果を表1に示す。また、得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして偏光顕微鏡観察を行った。偏光顕微鏡写真を図11に示す。
【0198】
(比較例2)
厚み差低減層を形成しないこと、及び、実施例1で形成された保護層を2層重ねて積層すること以外は、実施例1と同様の方法により、カラーフィルタを作製した。得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、厚み差を評価した。結果を表1に示す。また、得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして偏光顕微鏡観察を行った。偏光顕微鏡写真を図12に示す。
【0199】
(比較例3)
厚み差低減層を形成する工程を、透過部の着色層と同一のレジストを用いて透過部の着色層と同じ厚みの着色層を反射部に形成する工程とした他は、実施例1と同様の方法により、カラーフィルタを作製した。得られたカラーフィルタを用いて、実施例1と同様にして、厚み差を評価した。結果を表1に示す。比較例3のカラーフィルタの場合、反射部の着色層は、透過部の着色層と同様に(色相、色濃度、厚みを同じくして)構成されてなるものであるため、光がカラーフィルタを2回通る反射表示においては、透過表示よりも著しく輝度が低くなる。
【0200】
なお、特に、実施例1については、図10の偏光顕微鏡写真からわかるように、反射部の位相差層の中央部と端部で、比較例1,2に比べて色や光量の変化が少ない画素パターンが形成できていることが確認できた。また、このとき狙いの1/2波長板として形成できたため、ほぼ光源の色で光が透過している(白色光)。
【0201】
比較例1、比較例2のカラーフィルタについて、図11や図12の偏光顕微鏡写真からからもわかるように、図10に示す実施例1のカラーフィルタの場合とは異なる色が位相差層の中央部に生じていることが確認され(これは波長分散に起因するものと思われる)、位相差層が1/2波長板より厚く形成されていることが確認された。したがって、比較例1,2のようなカラーフィルタでは、平坦な下地面に位相差層を形成する場合の塗布条件とは異なり、位相差層の下地面の凹凸を考慮した塗布条件にて位相差層を作製しなければ、光に所望の位相差を生じさせるような位相差層を得ることができない。
【0202】
また、比較例1,2のようなカラーフィルタでは、保護層が1層であっても2層であっても、位相差層の下地をなす面の凹凸が大きく、図11や図12の偏光顕微鏡写真からわかるように、位相差層の中央部と端部で、色や光量の変化がある画素パターンが形成されていることが確認された。位相差層の中央部と端部で色や光量の変化が確認されるほどに位相差層の下地をなす面に凹凸が存在する場合、位相差層を形成する液晶組成物の塗布条件として、位相差層の中央部において光に所望の位相差を生じさせるような条件を選択すれば、端部において、所望の位相差が得られなくなり、また、塗布条件として、端部において光に所望の位相差を生じさせるような条件を選択すれば、中央部において、所望の位相差が得られなくなる。
【0203】
これに対し、実施例1のカラーフィルタは、厚み差低減層にて位相差層の下地の表面凹凸を効果的に低減しており、位相差層の品質が高いものであることが確認された。
【0204】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明における第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
【図2】(A)本発明における第1の実施形態のカラーフィルタの他例を示す断面模式図である。(B)本発明における第2の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(C)本発明における第3の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(D)本発明における第4の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(E)本発明における第4の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
【図3】(A)本発明において、保護層を形成した第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(B)本発明において、保護層を形成した第1の実施形態のカラーフィルタの他例を示す断面模式図である。(C)本発明において、保護層を形成した第2の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(D)本発明において、保護層を形成した第3の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(E)本発明において、保護層を形成した第4の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(F)本発明において、保護層を形成した第4の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
【図4】(A)本発明において、セルギャップ制御層を形成した第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(B)本発明において、等方層とセルギャップ制御層を形成した第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(C)本発明において、セルギャップ制御層を形成するとともに光軸を異にする2種類の位相差層を形成した第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(D)本発明において、反射部に位相差層を形成した後に反射部と透過部に保護層を積層した第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(E)本発明において、反射部に位相差層を形成した後に反射部と透過部に保護層を積層しさらに反射部にセルギャップ制御層を積層した第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。(F)本発明において、セルギャップ制御層を形成した第1の実施形態のカラーフィルタの他例を示す断面模式図である。(G)本発明において、反射部と透過部に保護層を積層した後に反射部にセルギャップ制御層を積層し、さらに反射部に位相差層を形成した第1の実施形態のカラーフィルタの一例を示す断面模式図である。
【図5】本発明のカラーフィルタにおいて画素部を多数形成している場合の一例を示す概略平面図である。
【図6】図5のI−I断面の概略を示す概略断面図である。
【図7】本発明において、ブラックマトリクスを形成したカラーフィルタであって画素部を多数形成しているものの一例を示す概略平面図である。
【図8】図7のII−II断面の概略を示す概略断面図である。
【図9】本発明によるカラーフィルタを備えた半透過半反射型液晶表示装置の一例を示す分解斜視模式図である。
【図10】実施例1における偏光顕微鏡観察にて撮られた反射部の偏光顕微鏡写真である。
【図11】比較例1における偏光顕微鏡観察にて撮られた反射部の偏光顕微鏡写真である。
【図12】比較例2における偏光顕微鏡観察にて撮られた反射部の偏光顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0206】
1 透過部
2 反射部
3 基体
4 積層部材
6 透明層
9 遮光部
10 カラーフィルタ
11 基材
12 位相差層
13 等方層
14 厚み差低減層
15 ブラックマトリクス
16 保護層
17 位相差層
18 A層
27 着色層
28 着色層
29 着色層
30 半透過半反射型液晶表示装置
31 一対の基板
32 第1の基板
33 第2の基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過表示機能と反射表示機能を有する半透過半反射型液晶表示装置に用いられ、透過表示機能にて表示される領域に対応して定められる透過部と、反射表示機能にて表示される領域に対応して定められる反射部とを有するカラーフィルタであって、
前記透過部は、所定色の着色層を備えており、
前記反射部は、前記所定色の着色層を前記透過部の所定色の着色層の厚みよりも薄厚に形成してなる層Kを備えてなる、もしくは、前記所定色の着色層の厚みをゼロにして構成されてなる、もしくは、反射部の一部分を前記所定色の着色層の厚みをゼロにして構成されてなるカラーフィルタであり、
前記反射部、もしくは前記反射部の一部分には、前記透過部との厚み差を低減する厚み差低減層を備えており、
少なくとも反射部に対して直接もしくは間接に位相差層が積層されてなることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記厚み差低減層は、透明層、および/または、前記透過部の所定色の着色層よりも薄い色濃度で形成され且つ前記透過部の所定色の着色層と色相を同じくする層にて構成される、請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記着色層および/または前記厚み差低減層と、前記位相差層との間には、保護層が形成されている、請求項1または2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする半透過半反射型液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−175499(P2009−175499A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14694(P2008−14694)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】