説明

カラーフィルタ用インクジェットインク組成物、カラーフィルタの製造方法、カラーフィルタおよび表示装置

【課題】優れた平坦性、耐熱性および耐薬品性を有する着色層を形成するカラ−フィルタ用インクジェットインク組成物を提供すること。
【解決手段】基板と該基板上に形成された着色層とを備えたカラ−フィルタにおいて、該着色層が、少なくとも有機顔料、分散剤、バインダー成分、及び溶剤からなり、分散剤の主成分として化学式(1)で表されるポリエステル系樹脂型分散剤を含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。上記インクの分散剤の主成分として、分散剤全体のうち90重量パーセント以上の割合で、該ポリエステル系樹脂型分散剤を含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラ−液晶表示装置等に用いられるカラ−フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ、薄型カラーテレビの発展に伴い、カラーLCDの需要が増加しており、特に、薄型カラーテレビの大型化が著しい。しかしながら、需要の増加に合わせて低価格化の進行も著しく、部材の中でもコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
このようなカラーフィルタにおいては、通常赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
【0004】
従来より行われているカラーフィルタの製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に、染色される透明の水溶性の高分子材料をフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染料水溶液に浸漬して透明なパターンを染色する。これを3回繰り返すことによりR、G、およびBのカラーフィルタ層を形成するものである。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBのカラーフィルタ層を形成する。
【0006】
さらに他の方法としては、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、およびBの3回印刷を行った後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0007】
しかしながら、いずれの方法も、R、G、及びBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。
【0008】
これらの問題点を解決したカラーフィルタの製造方法として、近年、インクジェット方式を利用したカラーフィルタの製造方法が検討されている。この方法では位置の制御はインクジェットのヘッドまたは印刷基板の方で行うことが出来るため、着色層を光パタ−ンニングする工程がなく、着色層を形成する材料が感光性を有する必要がない。従って、従来の方法に比べてより耐熱性、耐薬品性の高い材料を選択できる範囲が拡がる。
【0009】
より詳しく説明すると、インクジェット方式のカラ−フィルタ形成方法としては、予め基板上に透明な被染色層を一層設け、その上に染料を主成分とする赤、青、緑色のインクをインクジェット装置で噴射し、赤、青、緑の各画素に対応する被染色層の所定の位置を染色する方式が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6など)。この方式は、透明な被染色層を染料インクで染め付けるため、散乱の少ない透明度の高いカラ−フィルタが得られるが、その反面、被染色を形成した後に染料インクを用いて染め付けるため染料の熱による昇華および溶剤による溶出が起こりやすく、高い耐熱性、耐薬品性が得られにくい。
【0010】
それに対して、より高い耐熱性および耐薬品性を有する着色層を実現する方法として、透明な基板上の赤、青、緑色各画素の所定の位置に樹脂と有機顔料および/または染料の混合物を主成分とするインクをインクジェット装置で噴射して着色層を形成する方法が知られている(特許文献7、特許文献8、特許文献11など)。しかし、色仕様および/または液晶カラー表示装置の方式によっては、インクの組成が著しく制限され、上記方法で調製されるインクジェット用インクの耐熱性、耐薬品性は、未だ不十分であり、フォトリソグラフィー方式と同等の耐熱性、耐薬品性は実現していない。
【0011】
また、透明な基板上の赤、青、緑色各画素の所定の位置が、隔壁で仕切られている場合、隔壁の開口部にインクジェット装置で噴射して着色層を形成する際、ガラス基板に対し濡れ性の良いインクを用いる場合には、インクに対して濡れ性の悪い物質で予め境界となる凸部を印刷しておく方法や、ガラスに対して濡れ性の悪いインクを使う場合には、インクとの濡れ性の良い材料で予めパターンを形成しておき、インクが定着するのを助ける方法が開示されている。しかしながら、ガラス基板や境界となる凸部を親インク性や撥インク性に制御することは、画素間の混色やインクの濡れ性の制御には効果的であるが、画素部自体の形状が凸型や凹型になり、画素部の平坦性を得られないという問題があった。このような場合には、画素内での色濃度にバラツキが生じ、画像の表示品質が著しく劣るという問題が発生する。
【0012】
画素部の平坦性を得る方法としては、画素部に平坦化層を設け、画素部の平坦性を得る方法が開示されている(特許文献9)。ここでは、基板側から露光し、画素部の厚みに応じて平坦化層の硬化の度合いを調節し、平坦性を付与する方法が記載されている。またフィルム状の保護層を転写によって形成する方法が開示されている(特許文献12)。
【0013】
更に、画素部に平坦性を付与するインクとしては、着色顔料と体質顔料を有するインクが開示されている(特許文献10)。上記文献では、樹脂と顔料の重量比や着色顔料と体質顔料の重量比及びインク中の固形分についても言及されている。また、濃淡のインクを用いて画素部内の濃度調節を行いながら平坦性を付与する方法が開示されている(特許文献13)。
【0014】
特許文献9、特許文献12に開示されている方法では、画素部内の色濃度のバラツキに関しては何ら解消されていない。また、特許文献10に開示されているインクについては、色仕様および/または液晶カラー表示装置の方式によっては、インクの組成が著しく制限され、十分な平坦性を得ることは困難である。特許文献13に開示されている方法では、工程が煩雑になる上に十分な平坦性を得るのは困難である。
【特許文献1】特開昭59−75205号公報
【特許文献2】特開昭61−245106号公報
【特許文献3】特開昭63−294503号公報
【特許文献4】特開平01−217302号公報
【特許文献5】特開平02−173703号公報
【特許文献6】特開平02−173704号公報
【特許文献7】特開平05−224007号公報
【特許文献8】特開平08−171010号公報
【特許文献9】特開平08−304619号公報
【特許文献10】特開平09−132740号公報
【特許文献11】特開平10−104416号公報
【特許文献12】特開平10−197719号公報
【特許文献13】特開2004−177867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はかかる従来技術の諸欠点に鑑み創案されたもので、その目的とするところはインクジェット方式を用いてカラーフィルタを製造するに際し、極めて優れた平坦性、耐熱性および耐薬品性を有する着色層を形成するカラ−フィルタ用インクジェットインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0017】
[1] 基板と該基板上に形成された着色層とを備えたカラ−フィルタにおいて、該着色層が、少なくとも有機顔料、分散剤、熱硬化性のバインダー成分、及び溶剤からなり、分散剤の主成分として化学式(1)で表される構造単位を有するポリエステル系樹脂型分散剤を含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。
[2] 上記インクの分散剤の主成分として、分散剤全体のうち90重量パーセント以上の割合で、該ポリエステル系樹脂型分散剤を含有することを特徴とする前記の[1]記載のカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。
[3] 上記熱硬化性のバインダー成分としては、化学式(2)で表される構造単位を有するメチル化メラミン樹脂、及び化学式(3)で表される構造単位を有するビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を、片方あるいは両方を任意の割合で含有することを特徴とする前記の[1]又は[2]記載のカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。
【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

[4] 基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、インクジェット方式により前記の[1] 〜 [3]のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用インクジェットインクの液滴を付与して着色層を形成するカラーフィルタの製造方法。
[5] インクジェット方式により打滴されたカラーフィルタ用インクジェットインク中の有機溶剤を除去してインク残部とした後に、加熱硬化工程を有し、前記インク残部を重合硬化させて前記画素を形成することを特徴とする前記の[4] に記載のカラーフィルタの製造方法。
[6] 前記硬化工程は、前記カラーフィルタ用インクジェットインクの熱重合開始温度未満の温度で加熱を行った後に、前記熱重合開始温度以上の温度で加熱を行うことを特徴とする前記の[5] に記載のカラーフィルタの製造方法。
[7] 請求項4 〜 6 のいずれか1 項に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたカラーフィルタ。
[8] 前記の[7] に記載のカラーフィルタを備えた表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、カラーフィルタの生産性に優れ、膜質が強固であり、且つ画素部の平坦性が高く、表示品質に優れたカラーフィルタを製造可能なカラーフィルタ用インクジェットインク、このインクを用いたカラーフィルタの製造方法、この製造方法により得られたカラーフィルタ及びこのカラーフィルタを備えた表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のカラーフィルタ用インクジェットインク、カラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明における分散剤は、主成分として化学式(1)で表される構造単位を有するポリエステル系樹脂型分散剤を含有する。化学式(1)で表される構造単位は、カルボニル基、またはカルボキシル基、エステル結合を持ち、広範囲の樹脂および溶剤と相溶性が良く、無機顔料、有機顔料、カーボンブラックに対して優れた分散効果を有し、粘度低下、安定性向上等の改善に適している。上記ポリエステル系分散剤を使用すると、低粘度で流動性に優れたインクが得られ、ガラス面に形成された隔壁にインクの液滴を付与して加熱乾燥させる過程において、画素平坦化に効果的である。
【0024】
化学式(1)で表される構造単位において、RA、RBは相互に独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はビニル基を表し、CH結合を有する置換基は更に置換されていてよい。
【0025】
化学式(1)におけるアルキル基としては、特に炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。更に、前記アルキル基はハロゲン原子(例えば塩素、臭素又はフッ素)、水酸基、シアノ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基により置換されていてもよい。
【0026】
化学式(1)におけるシクロアルキル基としては、炭素数3〜7のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5〜6のシクロアルキル基がより好ましい。更に、前記シクロアルキル基は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素又はフッ素)、水酸基、シアノ基又はアミノ基で置換されていてもよい。
【0027】
化学式(1)におけるアリール基としては、特にフェニル基又はナフチル基が好ましい。更に、前記アリール基は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素又はフッ素) 、水酸基、シアノ基、ニトロ基又はアミノ基で置換されていてもよい。
【0028】
化学式(2)で表される構造単位はN末端として−NH2、−NH(ROH)、−N(ROH)2、−NH(ROR´)、−N(ROR´)2、(ここで、R、R´は鎖状または環状アルキル基)等アルコ−ルまたはエ−テルを付加したものが使用できる。この場合、加熱により末端のアルコ−ルまたはエ−テルが他のOH基との間で縮合反応を起こし架橋するため、画素パタ−ン描画後に熱架橋することで緻密に架橋された膜を得ることができる。化学式(2)に表される構造単位は1分子中に最大3個の架橋点を有するため、高度に架橋された膜は非常に高い耐熱性と耐薬品性を有する。
【0029】
化学式(3)で表される構造単位は重合度nが0〜25の範囲にあるものが使用できる。化学式(3)で表される構造単位を持つ該エポキシ樹脂を硬化させて得られる膜は弾力性に富み、熱収縮率が小さいという特徴を持つ。化学式(3)で表される構造単位は、末端のエポキシ基が、−NH2、−NH(ROH)との間で縮合反応を起こし架橋する。より緻密な架橋を得たい場合は、適切な硬化剤の存在下でさらにエポキシ樹脂を硬化させることもできる。
【0030】
化学式(2)で表される構造単位を含む化合物と、化学式(3)で表される構造単位を含む化合物とを同時にインク中に存在させることによって、化学式(2)で表される構造単位の−NH2、−NH(ROH)と化学式(3)で表される構造単位のエポキシ基との縮合反応によって得られた着色層は、高度に架橋されており、且つ熱収縮が小さいため、該着色層そのものの耐熱性だけでなく、該着色層上に塗布または蒸着し加熱することによって成膜されたオーバーコート層、偏光膜、ITO膜等との密着性が良い。
【0031】
化学式(2)で表される構造単位を持つ化合物を単独で用いた場合、化学式(2)で表
される構造単位を含む化合物と化学式(3)で表される構造単位を含む化合物とを併用した場合に比べ、より高度に架橋され強固な着色層が得られるが、熱収縮が大きいのが欠点である。一方、化学式(3)で表される構造単位を持つ化合物を単独で用いた場合は、単独では架橋密度を向上させることが難しく、溶剤耐性が低下する。従って、化学式(2)で表される構造単位を含む化合物と、化学式(3)で表される構造単位を含む化合物との併用は、着色層の耐薬品性および耐熱性の向上に、非常に効果的である。
【0032】
上記ポリエステル系樹脂型分散剤中に分散する顔料または染料の種類は特に制限されず公知の顔料および染料が適宜使用できる。例えば有機、無機の顔料、酸性染料、直接染料、分散染料、反応性染料などが使用できる。ただし、耐熱性、耐光性、および耐溶剤性の優れたカラーフィルタを得るためには、これらの特性が高く堅牢な顔料および染料を用いることが好ましい。マトリクス中に分散させる顔料および染料の量に特に制限はないが、なるべく多量に分散させた方が着色層の膜厚を薄くすることができる。また、あまりにマトリクス樹脂成分が少なければ着色層の耐溶剤性および機械強度が低下する。これらの点を考え合わせ、全固形分に対する顔料および/または染料の割合は60〜15重量%の範囲が好ましい。また、化学式(2)記載の構造を有する化合物がアルコ−ル末端を有する場合には親水性の非常に高い分子になる。従って、マトリクス樹脂との親和性の点から考えると、分子内にOH基を有するなど比較的親水性の高い顔料、または酸性染料等水溶性の染料もしくは親水性の染料がより適している。しかし、顔料および染料自身が化学式(2)に記載の構造と親和性が良くなくても、界面活性剤を少量添加することでマトリクス樹脂中に微分散させることが出来る。添加する界面活性剤の量としてはなるべく少ない方が望ましく、分散される顔料の構造によって適正量を選択するのがよい。通常は全固形分に対して30〜1重量%の範囲で選択される。
【0033】
上記ポリエステル系樹脂型分散剤としては、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成されたポリエステル樹脂を含有するモノマー混合物から形成されたポリマーが一般に用いられる。重量平均分子量1000〜100000のものである。樹脂型顔料分散剤の重量平均分子量が1000未満では十分な立体障害が得られず、分散効果は低下し、重量平均分子量が100000より大きくても逆に凝集作用が生じる場合があり好ましくない。このようなポリエステル系樹脂型顔料分散剤としては、例えば、アジスパーPB711、アジスパーPB821(味の素株式会社製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明におけるポリエステル系分散剤を合成するための方法は、公知の方法を応用すればよい。例えば、(a)全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いてエステル交換反応触媒の存在下、133Pa(1Torr)以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法、(b)前記重縮合反応を、目標とする分子量に達する以前の段階で終了し、反応生成物を次工程でエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ビスオキサゾリン系化合物等から選ばれる鎖長延長剤と混合し、短時間反応させることにより高分子量化を図る方法、(c)前記重縮合反応を目標とする分子量以上の段階まで進めておき、モノマー成分を更に添加し、不活性雰囲気、常圧〜加圧系で解重合を行うことで目標とする分子量のポリエステル樹脂を得る方法等を用いることができる。
【0035】
顔料としては、例えば、赤色(Red)としてC.I.No.9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、254など、緑色(Green)としてはC.I.No.7、36、青色(Blue)としてはC.I.No.15、15:6、22、23、60、64が一般的に用いられる。さらにまた、黄色(Yellow)としてはC.I.No.12、20、24、83、86、109、110、117、125、150等が、バイオレット(Violet)としてはC.I.No.19、23、29、30、37、40、50等が一般的に用いられるが、
これらに限定されない。これらは1種のみでも又は複数種混ぜ合わせて使用してもよく、カラーフィルタの分光調整の為など、必要に応じて任意の顔料を2〜3点混ぜ合わせて調整する。各色の顔料は白色光を分解する役割を担うため、透明性、対候性、耐熱性に優れているものがよい。顔料の一次粒子径は0.3μm以下、更には、0.1μm以下が好ましく、可視光の波長に対して十分に小さくする。特に透明性に優れた顔料として有機顔料が好ましい。
【0036】
上記インク組成物に用いる溶剤は、特に限定されるものではなく、使用される顔料、バインダー、インクに要求される品質等に応じて選択することができる。使用する溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。上記溶剤は、二種類以上を混合して用いることもできる。
【0037】
本発明のインク組成物は着色剤として顔料を用いるので、あらかじめ顔料を全使用量の一部の溶剤中で分散剤と混合して分散性を付与し、得られた顔料分散体(すなわち高濃度の顔料分散液)を他の配合成分と共に残部の溶剤中に投入して混合しインク組成物とすることが多い。顔料分散体を調製するためには、3-メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような顔料を分散させやすい溶剤を用いる必要がある。
【0038】
主溶剤は、以下に示すような溶剤の中から選んで用いることができる:エチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸、2-エチルヘキサン酸、無水酢酸のような脂肪族カルボン酸類又はその酸無水物;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3-メトキシプロピオン酸メチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;クロロ酢酸、ジクロロ酢酸のようなハロゲン化カルボン酸類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2-ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミンのようなアミノアルコール類;2-エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類;N-エチルモルホリン、フェニルモルホリンのようなモルホリン類;ペンチルアミン、トリペンチルアミン、アニリンのような脂肪族又は芳香族アミン類。
【0039】
主溶剤として使用できる溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。これらの溶剤は、顔料の分散性、分散安定性も比較的良好であり、3-メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような従来から顔料分散体の調製に用いられている溶剤と混合し或いは混合せずそのまま分散溶剤として用い、顔料分散体を調製することができる。
【0040】
化学式(2)および化学式(3)に記載の構造単位を含む化合物と顔料および/または染料を主成分としてインクを構成するためには液状の組成物を加えて粘度を調節することが好ましい。化学式(3)に記載の構造単位を含む化合物は、重合度が大きいものは室温25℃で固体であり、インク化すると粘度が高くなりやすい。ところが、インクジェット方式で着色層を形成する場合は、インクの液滴を安定に形成することができるためにはインクの粘度は低い方が好ましい。化学式(3)に記載の構造単位を含む化合物のうち、重合度が低いものを選択的に使用することによって反応系を変化させずにインクを低粘度化することができる。ただし、化学式(3)に記載の構造単位を含む化合物のうち、重合度が低いものがインク中の架橋成分の大半を占める場合は、架橋密度が十分に得られないことがあるので、化学式(2)に記載の構造単位を含む化合物および化学式(3)に記載の構造単位を含む化合物の重合度の高いもの、および重合度の低いものの混合比率を調整するとよい。
【0041】
このような低粘度のインクを構成するためには架橋成分としてポリマー成分は不向きであるが、化学式(2)に記載の構造単位を含む化合物は基本的にはモノマーであるか、あるいは重合度が非常に小さく、この点でも非常に好ましい。これらの架橋成分および顔料分散体を液体成分中に溶解あるいは分散してインクジェット装置を用いて好適に塗工するためには、全インク成分に対する液体成分の割合としては90〜60重量%の範囲が好ましい。
【0042】
本発明によるカラーフィルタ用インクジェットインク組成物は、例えば次のようにして作成できる。まず顔料を、ポリエステル系樹脂型分散剤を主成分とする分散剤およびアルコ−ルまたはエステルを主成分とする溶剤中に分散し、顔料ペーストを作製する。そこに、メラミン樹脂および/または、エポキシ樹脂を上記溶剤に予め溶解したものを添加し、さらに撹拌してインクジェット用インクを赤、青、緑色の3色分作成する。必要に応じて、レベリング剤も任意の段階で添加する。この場合、顔料の分散にはホモジナイザー、サンドグラインダー等の分散機を使用すると良い。
【0043】
上記カラーフィルタ用インクジェットインク組成物からなる着色層の耐熱性、耐光性および耐薬品性を評価するためには、例えば次のようにしてカラーフィルタ、またはカラーフィルタに準じた着色層を作製することができる。インクジェット方式により撥インク性の隔壁を設けたガラス基板上に、またはスピンコートによりガラス基板上に塗工し、基板を50〜150℃の範囲で1〜10分間加熱し、溶媒を乾燥した後180〜260℃の範囲で10〜60分加熱して樹脂を架橋する。上記の操作によりカラーフィルタ用インクジェットインク組成物の着色層が得られる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例1
1.着色組成物の作製
カラーフィルタ作製に用いる着色組成物は、赤色顔料として、C.I.Pigment Red 254(「イルガフォーレッドB−CF」:チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、緑色顔料として(「リオノールグリーン 6YK」:東洋インキ製造製)、青色顔料として、C.I.Pigment Blue 15;6(「ヘリオゲンブルー」:BASF社製)を用い、下記表1に示す処方でビーズミル分散により十分混連錬し、赤色顔料分散液(組成物1、組成物4、組成物7、組成物10)、緑色着色組成物(組成物2、組成物5、組成物8、組成物11)及び青色顔料分散液(組成物3、組成物6、組成物9、組成物12)を作製した。
【0045】
【表1】

このようにして得た顔料分散液に下記表2に示す処方で、熱硬化性樹脂及び有機溶剤を
加えて良く攪拌し、15種のカラーフィルタ用着色組成物を(インクA〜O)を作製した。
【0046】
【表2】

2.カラーフィルタ基板の作製
ガラス基板上に形成されたブラックマトリクスの開口部に、12pl、180dpiヘッドを搭載したインクジェット印刷装置により前記赤色(R)、緑色(G)、青色(B)各色の着色組成物を吐出し、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素パタ−ンを描画した。その後、130℃で3分乾燥させた後240℃で20分加熱して樹脂を架橋し、カラーフィルタ試料を得た。
3.カラーフィルタの平坦性評価
上記カラーフィルタ試料について、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)各色の着色層の耐熱性および耐薬品性を評価し、また、膜厚プロファイルを測定した。耐熱性については上記カラーフィルタを250℃で1時間加熱、対薬品性については酸、アルカリ、および有機溶剤に30分浸漬し、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)各色の着色層の膜厚の変化、色度の変化および表面状態の変化を観察し、画素内の着色層の段差は、吐出量を少しずつ変えて作製したカラーフィルタ試料の、色度の変動および膜厚の測定値から、所定の膜厚の時の段差を算出した。それぞれのインクの耐性および画素内段差は、下記の基準で評価した。それらの結果を下記表3に示す。
【0047】
【表3】

外観
○:良好 ひび割れ、表面荒れ等の異常なし
△:概ね良好 判定が難しいごく僅かなひび割れ、表面荒れ等の異常がある
×:不良 ひび割れ、表面荒れ等の異常がある
画素平坦性(単位:μm)
○:平坦性良好 段差 0 ≦ Δt < 0.3
△:平坦性概ね良好 段差 0.3 ≦ Δt < 0.5
×:平坦性不良 段差 0.5 ≦ Δt
上記表3から、以下のことが明らかである。即ち、化学式(1)で表されるポリエステル系樹脂型分散剤を用い、化学式(2)で表される構造単位を有するメラミン樹脂、及び化学式(3)で表される構造単位を有するビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を、メラミン:エポキシ比が50:50から25:75の割合で含有する赤(R)のインク組成物(インクA)、メラミン:エポキシ比が50:50から25:75の割合で含有する緑(G)のインク組成物(インクB)、メラミン:エポキシ比が75:25から50:50の割合で含有する青(B)のインク組成物(インクC)から作製されたカラーフィルタは、空気中において250℃で1時間加熱しても変色せず、このときの膜厚変化率も小さく、また、有機溶媒、酸、アルカリにも十分な耐性を有し、かつ、画素内段差が0.3μm未満と平坦性が良好であった。
【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

また、化学式(1)で表されるポリエステル系樹脂型分散剤およびアミン系樹脂型分散剤を90:10の割合で混合して用い、化学式(2)で表される構造単位を有するメラミン樹脂、及び化学式(3)で表される構造単位を有するビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を、メラミン:エポキシ比が50:50から25:75の割合で含有する赤(R)のインク組成物(インクJ)、緑(G)のインク組成物(インクK)、青(B)のインク組成物(インクL)から作製されたカラーフィルタは、空気中において250℃で1時間加
熱しても変色せず、このときの膜厚変化率も小さく、また、有機溶媒、酸、アルカリにも十分な耐性を有し、かつ、画素内段差が0.3μm未満と平坦性が良好であった。
比較例1
これに対し、分散樹脂として、アミン系樹脂型分散剤を用い、化学式(2)で表される構造単位を有するメラミン樹脂、及び化学式(2)で表される構造単位を有するビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を、メラミン:エポキシ比が50:50から25:75の割合で含有する赤(R)のインク組成物(インクD)、メラミン:エポキシ比が50:50から25:75の割合で含有する緑(G)のインク組成物(インクE)、メラミン:エポキシ比が75:25から50:50の割合で含有する青(B)のインク組成物(インクF)から作製されたカラーフィルタは、空気中において250℃で1時間加熱しても変色せず、このときの膜厚変化率も小さく、また、有機溶媒、酸、アルカリにも十分な耐性を有していたが、画素内段差が0.5μm以上と平坦性が不良であった。
比較例2
一方、化学式(1)で表されるポリエステル系樹脂型分散剤を用い、メラミンのみを架橋成分として添加したRのインク組成物(インクG)、Gのインク組成物(インクH)、Bのインク組成物(インクI)から作製されたカラーフィルタは、架橋密度が高いため、有機溶剤、酸、アルカリ耐性は良好であるが、空気中において250℃で1時間加熱すると膜厚が著しく減少した。平坦性に関しては、画素内段差はわずか0.1μm前後であり、良好であった。
比較例3
一方、化学式(1)で表されるポリエステル系樹脂型分散剤およびアミン系樹脂型分散剤を80:20の割合で混合してを用い、化学式(2)で表される構造単位を有するメラミン樹脂、及び化学式(3)で表される構造単位を有するビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を、メラミン:エポキシ比が50:50から25:75の割合で含有する赤(R)のインク組成物(インクM)、Gのインク組成物(インクN)、Bのインク組成物(インクO)から作製されたカラーフィルタは、空気中において250℃で1時間加熱しても変色せず、このときの膜厚変化率も小さく、また、有機溶媒、酸、アルカリにも十分な耐性を有していた。平坦性に関しては、画素内段差がR、G、B全てのインク組成物において0.3μm以上であり、平坦性は悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機顔料、分散剤、熱硬化性のバインダー成分、及び溶剤からなり、分散剤の主成分として式(1)で表される構造単位を有するポリエステル系樹脂型分散剤を含有することを特徴とするカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。
【請求項2】
分散剤の主成分として、分散剤全体のうち90重量パーセント以上の割合で、該ポリエステル系樹脂型分散剤を含有することを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。
【請求項3】
熱硬化性のバインダー成分としては、式(2)で表される構造単位を有するメチル化メラミン樹脂、及び式(3)で表される構造単位を有するビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を、片方あるいは両方を任意の割合で含有することを特徴とする請求項1または2記載のカラーフィルタ用インクジェットインク組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項4】
基板上に形成された隔壁により区画された凹部に、インクジェット方式により請求項1 〜 3のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用インクジェットインクの液滴を付与して着色層を形成するカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
インクジェット方式により打滴されたカラーフィルタ用インクジェットインク中の有機溶剤を除去してインク残部とした後に、加熱硬化工程を有し、前記インク残部を重合硬化させて前記画素を形成することを特徴とする請求項4 に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記硬化工程は、前記カラーフィルタ用インクジェットインクの熱重合開始温度未満の温度で加熱を行った後に、前記熱重合開始温度以上の温度で加熱を行うことを特徴とする請求項5 に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
請求項4 〜 6 のいずれか1 項に記載のカラーフィルタの製造方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項8】
請求項7 に記載のカラーフィルタを備えた表示装置。

【公開番号】特開2010−139538(P2010−139538A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313016(P2008−313016)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】