説明

カラーフィルタ用着色剤組成物

【課題】耐変色性に優れるカラーフィルタ用着色剤組成物を提供する。
【解決手段】最大吸収波長λmaxが600〜700nmであるフタロシアニン化合物と、黄色系色素化合物と、5〜150mgKOH/gのアミン価を有する分散剤と、を含み、分散剤の含量がフタロシアニン化合物と黄色系色素化合物との合計100質量部に対して5〜30質量部である着色剤組成物であって、耐変色性ΔAbsが0.2〜1.3であるカラーフィルタ用着色剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色系色素化合物とフタロシアニン化合物と分散剤とを含むカラーフィルタ用着色剤組成物に関する。より詳しくは、本発明は、耐変色性に優れて、高輝度なカラーフィルタを製造できるカラーフィルタ用着色剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや撮像装置等に用いるカラーフィルタは、一般に、ガラス、プラスチック、撮像素子または薄膜トランジスター等の基板、該基板の上に微細な着色画素のパターン配列による赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色画素と、これらの画素間に設けられた遮光層であるブラックマトリックスとを形成することにより製造されている。さらに最近では赤(R)、緑(G)、青(B)の他に黄色(Y)を加えた四原色画素方式のカラーフィルタが実用化されている。これら画素及びブラックマトリックスは、感光性の着色組成物を基板上に塗布し、加熱乾燥(プリベーク)して塗膜を形成し、この塗膜に紫外線を照射して露光し、さらに現像し未露光部分をアルカリ洗浄して除去し、さらに後硬化(ポストベーク)して形成される。
【0003】
カラーフィルタの各画素で用いられる顔料や染料は、黄色(Y)画素だけは単独で用いられるケースがあるが、一般に、単独ではそれぞれカラーフィルタとしての分光透過率スペクトルを得るのは困難であり、2種以上用いて調色して、着色剤組成物として用いられることが多い。すなわち、明るく色再現範囲の広い表示品位の高い画像を得るために、バックライトの光線透過特性に合うよう選択され、また2種類以上の顔料または染料を一定の割合で調色されることが必要とされる。
【0004】
例えば、カラーフィルタの緑(G)の画素は、緑色系色素と黄色系色素の2種類以上を選び、調色した着色剤組成物が用いられている。上記黄色系色素として、ピリドンアゾ化合物が知られている(例えば、特許文献1、2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50−19828号公報
【特許文献2】特開昭50−129626号公報
【特許文献3】特開2006−124634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、着色剤組成物が調色して得られたものであっても、熱が加わると着色剤組成物の吸収スペクトルがシフトし、該着色剤組成物から作製された光硬化性組成物を緑色画素部に使用すると、得られるカラーフィルタの色目(色純度)や輝度が劣ってしまうという課題があることに発明者は着目し、特定の耐変色性が重要であることを見出した。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、色目や輝度の保持に優れるカラーフィルタ用着色剤組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、色目に優れた、高輝度なカラーフィルタ、特に液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、フタロシアニン化合物と黄色系色素化合物に、特定のアミン価を有する分散剤を添加することで、耐変色性が向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、5〜150mgKOH/gのアミン価を有する分散剤と、最大吸収波長λmaxが600〜700nmであるフタロシアニン化合物と、黄色系色素化合物と、を含むカラーフィルタ用着色剤組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、耐変色性に優れる。このため、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物を用いることにより、色目に優れた、高輝度なカラーフィルタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例で合成されたフタロシアニン誘導体1の吸収スペクトルである。
【図2】本発明の実施例で合成されたフタロシアニン誘導体2の吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、最大吸収波長λmaxが600〜700nmであるフタロシアニン化合物と、黄色系色素化合物と、5〜150mgKOH/gのアミン価を有する分散剤と、を含み、前記分散剤の含量が、前記フタロシアニン化合物と黄色系色素化合物との合計100質量部に対して5〜30質量部であるカラーフィルタ用着色剤組成物を提供する。
【0014】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、耐変色性に優れる。本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、熱が加わっても吸収スペクトルのシフトが小さく、耐変色性に優れているため、該着色剤組成物から作製された硬化性組成物を緑色画素部に使用する場合、色目(色純度)や輝度が優れたカラーフィルタが得られる。そのため、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、カラーフィルタとして有用である。また、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、特に液晶ディスプレイ用カラーフィルタに好適に使用される(以下、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物を、単に「着色剤組成物」とも称する場合がある。)。
【0015】
なお、本明細書において、「耐変色性に優れる」とは、着色剤組成物の吸収スペクトルにおいて、波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度に対する波長520nmの吸光度の比の加熱前後の変化で評価し、耐変色性の指標ΔAbsとして下記式(I)で表すこととする。具体的には、下記実施例に記載される方法に従って評価し、ΔAbsが0.2〜1.3であるときに「耐変色性に優れる」ことを表わす。
【0016】
【数1】

【0017】
式中、UおよびUは加熱前の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Uは波長520nmの吸光度およびUは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表し、EおよびEは加熱後の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Eは波長520nmの吸光度およびEは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表す。
【0018】
本願発明において、耐変色性とは、着色剤組成物を加熱しても、熱分解による吸収スペクトルのシフトを生じないため、着色剤組成物が変色しにくいことを意味する。
【0019】
例えば、カラーフィルタの緑(G)の画素は、不要光である赤色領域の630〜670nmの吸光度が高く、500〜550nmの緑波長領域における吸光度が低いものが要求される。本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、加熱後も500〜550nmの緑波長領域の吸光度が低く、630〜670nmの波長領域における吸光度が高く、耐変色性に優れる。そのため、色目(色純度)や輝度が優れた緑のカラーフィルタを得ることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の構成要件及び実施の形態等について以下に詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0021】
<カラーフィルタ用着色剤組成物の構成成分>
まず、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物の各構成成分を説明する。本発明に係るカラーフィルタ用着色剤組成物は、フタロシアニン化合物、黄色系色素化合物および分散剤を必須成分とし、さらに要すれば、上記成分以外の溶剤や分散補助剤など他の添加物等が配合されていてもよい。以下、各構成成分を説明する。
【0022】
1.フタロシアニン化合物
本発明のフタロシアニン化合物は、波長600〜700nmに最大吸収波長λmax有する。本発明のフタロシアニン化合物としては、下記化学式(V1)で表されるフタロシアニン顔料、下記に説明される化学式(V2)〜(V4)で表されるフタロシアニン染料を用いることができる。
【0023】
また、本発明において、吸収スペクトルの最大吸収波長λmaxは、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート(以下、「PGMEA」と略する場合もある。)で測定された値を意味する。
【0024】
(1−1)フタロシアニン顔料
(1−1−1)化学式(V1)で表されるフタロシアニン化合物
本発明で用いられうるフタロシアニン化合物としては、下記化学式(V1):
【0025】
【化1】

【0026】
化学式(V1)中、
〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、この際、Z〜Z16のうち、8〜16個はフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、
Mは、中心金属であり、中心金属Mに結合するYは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のいずれかのハロゲン原子、酸素原子、水酸基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる一価原子団であり、
mは中心金属Mに結合するYの数を表し、0〜2の整数である;この際、中心金属Mが、Al、Sc、Ga、Y、Inなどの原子価が3価の金属の場合には、m=1であり、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる基の一つが中心金属に結合し、中心金属Mが、Si、Ti、V、Ge、Zr、Snなどの原子価が4価の金属の場合には、m=2であり、酸素の一つが中心金属に結合するか、またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸基及びスルホン酸基からなる群から選ばれる基の二つが中心金属に結合し、または中心金属Mが、Cu、Mg、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Sn、Pbなどの原子価が2価の金属の場合は、Yは存在しない、
で表される、ハロゲン化金属フタロシアニン顔料などが挙げられる。
【0027】
本発明において、最大吸収波長を600〜700nmに有するフタロシアニン化合物は、耐久性、耐候性を考慮すると、フタロシアニン骨格の中心金属は銅、亜鉛であることが特に好ましい。
【0028】
本発明で用いられうるフタロシアニン顔料は、市販されていてもよい。市販のフタロシアニン顔料は、600〜700nmに最大吸収波長λmaxを有するものであれば特に限定されないが、例えば、C.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Green 58などが挙げられる。これらのうち、高輝度という観点から、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Green 58が好ましい。
【0029】
(1−2)フタロシアニン染料
本発明で用いられうるフタロシアニン化合物としては、下記化学式(V2)〜(V4)で表されるフタロシアニン染料が挙げられる。
【0030】
(1−2−1)化学式(V2)で表されるフタロシアニン染料
本発明において、フタロシアニン化合物として、特願2010−043405号明細書に記載されている化学式(V2)で表されるフタロシアニン染料を用いることができる。
【0031】
【化2】

【0032】
化学式(V2)中、
Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わし;Z201〜Z204は、それぞれ独立して、下記式(v2−2)〜(v2−5):
【0033】
【化3】

【0034】
であり、
上記式(v2−2)〜(v2−5)中、pは、0〜4の整数であり;qは、0〜3の整数であり;rは、0〜2の整数であり;sは、0〜6の整数であり;R201〜R204は、それぞれ独立して、ニトロ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基(a)、置換基(b)、−S−(R209O)210、−S−L−A、および置換基(c)からなる群から選択される置換基(ア)またはハロゲン原子であり、この際、R209は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R210は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアシル基、または置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基であり、xは、1〜4の整数であり、Lは、置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基であり、Aは、それぞれ独立して、COOJ201、OJ201、CON(J201またはN(J201であり、この際、J201は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアシル基、置換基を有していてもよいアルコシキカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、または、−(R211O)212であり、R211は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R212は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアシル基、または置換基を有していてもよいアルキルカルバモイル基であり、yは、1〜4の整数であり、
前記置換基(a)は、下記式(v2−6)、(v2−6’)または(v2−6’’):
【0035】
【化4】

【0036】
上記式(v2−6)、(v2−6’)および(v2−6’’)中、R205は、炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、R206は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R207は、炭素数1〜8のアルキル基であり、tは、0または1であり、uは、0〜4の整数である、で表わされ、
前記置換基(b)は、下記式(v2−7):
【0037】
【化5】

【0038】
上記式(v2−7)中、Xは、酸素原子または硫黄原子であり、R208は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、COOY201、OY201、ハロゲン原子、アリール基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、この際、Y201は、炭素数1〜8のアルキル基であり、vは、1〜5の整数である、で表わされ、
前記置換基(c)は、下記式(v2−8):
【0039】
【化6】

【0040】
上記式(v2−8)中、R213は、それぞれ独立して、COOJ202、OJ202、CON(J202、N(J202またはハロゲン原子であり、この際、J202は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルコシキカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルコシキカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルコキシ基または−(R214O)215であり、wは、1〜5の整数であり、R214は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R215は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、zは、1〜4の整数である、で表わされ、
この際、R201〜R204として導入されるすべての基のうち、0.05個以上3個未満は、水素原子であり、3〜6個は、置換基(ア)であり、かつ、残部はハロゲン原子である。
【0041】
(1−2−2)化学式(V3)で表されるフタロシアニン染料
本発明において、フタロシアニン化合物として、WO2010/024203号パンフレットに記載されるフタロシアニン化合物、特願2009−192787号に記載されている化学式(V3)で表されるフタロシアニン染料を用いることができる。
【0042】
【化7】

【0043】
上記式(V3)中、Z301〜Z316は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、下記化学式(v3−2):
【0044】
【化8】

【0045】
上記式(v3−2)中、Xは酸素原子または硫黄原子であり、Aは、フェニル基、1〜5の置換基R301を有するフェニル基または1〜7の置換基R301を有するナフチル基であり、前記置換基R301は、それぞれ独立して、ニトロ基、COOR302、OR303(R303は炭素数1〜8のアルキル基)、ハロゲン原子、アリール基、シアノ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、この際、R302は、炭素数1〜8のアルキル基(この際、アルキル基は、炭素数1〜8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子もしくはアリール基で置換されていてもよい)、または下記化学式(v3−3)で示される基;
【0046】
【化9】

【0047】
上記式(v3−3)中、R304は炭素数1〜3のアルキレン基であり、R305は炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜4の整数である;である:
で示される基、または下記化学式(v3−2’):
【0048】
【化10】

【0049】
上記式(v3−2’)中、R306は炭素数1〜3のアルキレン基であり、R307は炭素数1〜8のアルキル基であり、lは0〜4の整数である;で示される基であり、
この際、Z301〜Z316のうち、4〜10個は化学式(v3−2)または化学式(v3−2’)で示される基であり、このうち、少なくとも1個は化学式(v3−2)で示される基であり、3〜11個は水素原子であり、少なくとも1個はハロゲン原子であり、
Mは無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。
【0050】
(1−2−3)化学式(V4)で表されるフタロシアニン染料
本発明において、フタロシアニン化合物として、PCT/JP2010/062461に記載されている化学式(V4)で表されるフタロシアニン染料を用いることができる。
【0051】
【化11】

【0052】
上記式(V4)中、Z401〜Z416は、それぞれ独立して、塩素原子、下記式(v4−2)もしくは(v4−2’):
【0053】
【化12】

【0054】
上記式(v4−2)及び(v4−2’)中、R401は、炭素数1〜3のアルキレン基であり、R402は、炭素数1〜8のアルキル基であり、R404は、炭素数1〜8のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、mは、1〜4の整数であり、pは、0または1である、
で表される置換基(a)、または
下記式(v4−3−1):
【0055】
【化13】

【0056】
上記式(v4−3−1)中、Xは、酸素原子または硫黄原子であり、Arは、R403で置換されてもよいフェニル基またはナフチル基であり、この際、R403は、それぞれ独立して、シアノ基、ニトロ基、COOY401、OY401、ハロゲン原子、アリール基、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基であり、この際、Y401は、炭素数1〜8のアルキル基である、
で表される置換基(b−1)、
下記式(v4−3−2):
【0057】
【化14】

【0058】
上記式(v4−3−2)中、Xは、酸素原子または硫黄原子であり、R407は、炭素数1〜5のアルキレン基であり、R405は、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基である、
で表される置換基(b−2)、
下記式(v4−3−3):
【0059】
【化15】

【0060】
上記式(v4−3−3)中、Xは、酸素原子または硫黄原子であり、R407は、炭素数1〜5のアルキレン基であり、R406は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数1〜8のアルキル基である、
で表される置換基(b−3)、
7−ヒドロキシクマリン由来の基(b−4)、および
2,3−ジヒドロキシキノキサン由来の基(b−5)、
からなる群より選択される置換基(b)を表わし、
この際、Z401〜Z416のうち、2〜8個は置換基(a)または置換基(b)でありかつ残部は塩素原子であり、2〜8個の置換基(a)または置換基(b)のうち、少なくとも2個は、置換基(a)であり、
Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。
【0061】
本発明において、フタロシアニン化合物は、化学式(V1)〜(V4)で表される化合物を好ましく用いることができる。また、本発明において、フタロシアニン化合物は、単独で使用されても、2種以上の混合物の形態であってもよい。
【0062】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物において、耐候性が高いという観点から、化学式(V1)で表されるフタロシアニン顔料を含むことが好ましい。フタロシアニン顔料を含むとは、少なくとも1種のフタロシアニン顔料を用いることを意味する。フタロシアニン顔料を含んでいれば、輝度が高いという観点から、化学式(V2)〜(V4)で表されるフタロシアニン化合物をさらに含む形態がより好ましい。
【0063】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物において、フタロシアニン化合物は、配合量にも特に制限はないが、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物を100質量部として、フタロシアニン化合物を好ましくは0.01〜65質量部、より好ましくは1〜50質量部、さらに好ましくは2〜20質量部である。なお、フタロシアニン化合物が2種以上の混合物の場合、その合計量をフタロシアニン化合物の質量とする。
【0064】
2.黄色系色素化合物
本発明の黄色系色素化合物としては、アゾ系の黄色系色素化合物が好ましい。この際、アゾ基(−N=N−)の数は、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個であり、黄色系色素の構造中に存在していることが好ましい。また、本発明で用いられる黄色系色素化合物は、たとえば、下記化学式(B1)または(B2)で表されるピリドンアゾ系黄色系色素がさらに好ましく用いられうる。
【0065】
化学式(B1)または(B2):
【0066】
【化16】

【0067】
式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜21のアルケニル基、炭素数6〜21のアリール基、もしくは炭素数7〜21のアラルキル基を表す。
で表わされるピリドンアゾ系黄色系色素化合物を用いた場合、耐変色性の高い着色組成物が得られる。また、下記化学式(B1)および(B2)で表わされるピリドンアゾ系黄色系色素化合物は、450〜500nm付近のスペクトルの立ち上がりが鋭く、黄色としての色の純度が高いという観点で好ましい。
【0068】
本発明において、用いられうるピリドンアゾ系黄色系色素(B1)および(B2)について、下記に説明する。
【0069】
本発明において、下記化学式(B1):
【0070】
【化17】

【0071】
式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜21のアルケニル基、炭素数6〜21のアリール基、もしくは炭素数7〜21のアラルキル基を表す、
で表される、スルホアミド基を有するピリドンアゾ系黄色系色素が用いられうる。
【0072】
本発明において、下記化学式(B2):
【0073】
【化18】

【0074】
式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜21のアルケニル基、炭素数6〜21のアリール基、もしくは炭素数7〜21のアラルキル基を表す、
で表される、カルボアミド基を有するピリドンアゾ系黄色系色素が用いられうる。
【0075】
上記式(B1)および(B2)中、R〜Rとしては、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜21のアルケニル基、炭素数6〜21のアリール基、もしくは炭素数7〜21のアラルキル基を表す。
【0076】
本発明において、式(B1)におけるスルホアミド基および式(B2)におけるカルボアミド基は、結合するベンゼン環において、−N=N−二重結合基(アゾ基)に対して、オルト位、パラ位またはメタ位のどの位置に結合してもよいが、溶媒溶解性の観点からパラ位が好ましく、波形が短波長化し色純度が向上する観点からはオルト位またはメタ位が好ましい。
【0077】
また、本発明において、式(B1)および式(B2)におけるRは、結合するベンゼン環において、−N=N−二重結合基(アゾ基)に対して、オルト位、パラ位またはメタ位のどの位置に結合してもよいが、溶媒溶解性の観点からオルト位またはパラ位が好ましく、オルト位がより好ましい。
【0078】
本発明において、R〜Rで表される炭素数1〜21のアルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。また、該アルキル基としては、炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。
【0079】
〜Rで表される炭素数1〜21のアルキル基としては、直鎖、分岐、または環状のアルキル基のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコサニル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、i−アミル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−アミル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基、分岐したノニル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、シス−ミルタニル基、イソピノカンフェニル基、ノルアダマンチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−(1−アダマンチル)エチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、キヌクリジニル基、シクロペンチルエチル基、ビシクロオクチル基等の直鎖、分岐または環状の炭化水素基が好適に挙げられる。
【0080】
本発明において、R〜Rで表される炭素数2〜21のアルケニル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。また、該アルケニル基としては、炭素数2〜15のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜10のアルケニル基が更に好ましい。
【0081】
〜Rで表される炭素数2〜21のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−プロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−エチル−1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2,6−ジメチル−5−ヘプテニル基、9−デセニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニルメチル基、シクロヘキセニル基、1−メチル−2−シクロヘキセニル基、1,4−ジヒドロ−2−メチルフェニル基、オクテニル基、シトロネリル基、オレイル基、ゲラニル基、ファーネシル基、2−(1−シクロヘキセニル)エチル基、等が好適に挙げられる。
【0082】
本発明において、R〜Rで表される炭素数6〜21のアリール基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。該アリール基としては、炭素数6〜15のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。
【0083】
炭素数6〜21のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、アンスラキノニル基、ピレニル基、等が好適に挙げられ、この中でも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、アントラセニル基が更に好ましく、更にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基が特に好ましい。
【0084】
本発明において、R〜Rで表される炭素数7〜21のアラルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。該アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、炭素数7〜10のアラルキル基が更に好ましい。
【0085】
〜Rで表される炭素数7〜21のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、1,2−ジフェニルエチル基、フェニル−シクロペンチルメチル基、α−メチルベンジル基、フェニルエチル基、α−メチル−フェニルエチル基、β−メチル−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、3,3−ジフェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、ナフチルメチル基、スチリル基、シンナミル基、フルオレニル基、1−ベンゾシクロブテニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基、インダニル基、ピペロニル基、ピレンメチル基、等が好適に挙げられる。
【0086】
〜Rで表される基が置換基を有する場合、該置換基としては、アシル基、アシルアミノ基、アシルアミノカルボニルアミノ基、アラルキルアミノカルボニルアミノ基、アリールアミノカルボニルアミノ基、メタクリロイルアミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキルオキシ基(−O−(CH−OH)、トリフルオロメチル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ヒドロキシ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ビニルオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニル基、−SOM基、−COOM基(Mは水素原子、金属原子または含窒素化合物からなるカチオンを表す。)が好ましい。
【0087】
これらの中でも、上記置換基としては、ヒドロキシアルキルオキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ヒドロキシ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、フェニル基が好ましく、ヒドロキシアルキルオキシ基、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、フェニル基がより好ましい。
【0088】
また、上記の置換基は同様の置換基でさらに複数回置換されていてもよい。
【0089】
化学式(B1)のスルファモイル化合物において、RおよびRの合計の炭素数が、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは8〜14の直鎖または分岐アルキル鎖であるものが、溶媒に対する溶解性が高いという点で好ましい。
【0090】
また、RまたはRにエーテル結合を含む場合も溶媒に対する溶解性が高いという点で好ましい。したがって、RまたはRにエーテル結合を含む場合は、直鎖または分岐のアルキル鎖がエーテル結合(−O−)を介して相互に結合していることが好ましい。この場合、アルキル鎖は「−X−O−X」と表現され、Xはアルキレン基、Xはアルキル基を表す。このとき、エーテル結合を介して結合しているアルキル鎖の炭素数(XとXの合計の炭素数)は、合計して3以上が好ましく、4以上がより好ましい。また、この場合、好ましくは炭素数21以下、より好ましくは炭素数16以下、さらに好ましくは炭素数14以下、特に好ましくは炭素数10以下である。
【0091】
また、アルキル鎖を長くすると耐変色性が向上することから、耐変色性の観点からも、RおよびRの合計の炭素数が好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは8〜14の直鎖または分岐アルキル鎖であるものが好ましい。
【0092】
さらに、化学式(B1)のスルファモイル化合物において、Rが好ましくは炭素数2以上、特に好ましくは炭素数4〜8の直鎖または分岐アルキル鎖であるものが、溶媒に対する溶解性が高いという点で好ましい。このアルキル鎖がエーテル結合(−O−)や水酸基(−OH)を含む場合であっても同様に好ましい。
【0093】
また、化学式(B1)のスルファモイル化合物において、Rが炭素数1以上、特に好ましくは炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル鎖であるものが、溶媒に対する溶解性が高いという点で好ましい。
【0094】
本発明において、黄色系色素化合物としては、下記式で表される化合物が好ましく用いられうる。なお、本発明の黄色系色素化合物がこれらに限定されないのは言うまでもない。
【0095】
【化19】

【0096】
上記式中、RおよびRは、−NRとして、下記式で表わされる。
【0097】
【化20】

【0098】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物において、黄色系色素化合物は、配合量にも特に制限はないが、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物を100質量部として、黄色系色素化合物を好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。
【0099】
また、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物において、フタロシアニン化合物と、黄色系色素化合物との配合量にも特に制限はないが、本発明のフタロシアニン化合物を100質量部とした際に、黄色系色素化合物は好ましくは0.01〜200質量部、より好ましくは10〜90質量部、さらに好ましくは15〜80質量部である。なお、フタロシアニン化合物が2種以上の混合物の場合、その合計量をフタロシアニン化合物の質量とする。
【0100】
また、以上の黄色系色素化合物は単独で用いてもよいし、あるいは2〜3種類を混合して用いても良い。2〜3種類の色素を用いると互いの色素の溶解性が向上し、結果としてカラーフィルタとしての色純度が向上したり、輝度が向上する場合がある。
【0101】
3.分散剤
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、分散剤を含む。本発明で用いられうる分散剤は、有効固形分換算で5〜150mgKOH/gのアミン価を有する。通常、染料はポリマー樹脂に溶解するので分散剤は必須ではないが、カラーフィルタ中では一般に高濃度(10−30wt%)でありその凝集、析出によりコントラストや輝度が低下してしまう場合がある。これを防止するために特定の分散剤を用いると効果がある。また、顔料を用いる場合、分散剤を含むことで、分散安定性が増加し、カラーフィルタ中での析出を防ぎ、コントラストや輝度の低下を抑制する。
【0102】
本発明において、アミン価を有する分散剤としては、1〜3級アミノ基を有することを意味する。「アミン価」とは、特に断りのない限り有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表される値である。なお、測定方法については後述する。また、「酸価」とは、特に断りのない限り有効固形分換算の酸価を表し、中和滴定することで算出する。
【0103】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物に用いられる分散剤は、窒素原子を含む官能基を有する重合体であり、そのアミン価が有効固形分換算で5〜150mgKOH/gである。分散剤のアミン価は、好ましくは5〜100mgKOH/gであり、より好ましくは5〜80mgKOH/gである。
【0104】
本発明においては、アミン価が実効的な顔料や染料への吸着基量を示すこととなり、アミン価が低すぎると、顔料や染料の表面への吸着力が不十分となり、十分な分散安定性を得ることができない。一方、アミン価が高すぎると、顔料や染料の凝集防止機能を充分発現する事が出来ず分散安定性が劣る。よって、上記範囲のアミン価を有することにより、着色剤組成物が最適な分散性を発現する。
【0105】
また、本発明の着色組成物に用いられる分散剤は、さらに酸価を有することが好ましい。分散剤の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、30〜200mgKOH/gであるのがより好ましく、50〜150mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0106】
本発明において、分散剤は、アミン価と酸価を有して、さらに塩構造であるのが好ましい。なお、塩構造とは、アンモニウム塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩、ポリアミノアミドと酸ポリマーの塩などの塩の形態を有する構造を意味する。本発明では、塩構造になっている親水性の部分が、顔料や染料への吸着基となり、分散性および安定性を増加させることができる。
【0107】
本発明において、上記したような分散剤を用いることで、耐変色性の高い着色剤組成物が得られるメカニズムは不明だが、以下のように推測される。なお、本発明は、下記によって限定されるものではない。分散剤に含まれる窒素原子が顔料や染料の表面に対して親和性をもち、窒素原子以外の部分が媒質に対する親和性を高めることにより、全体として分散性が向上し、着色剤組成物は均一性が増すことが推測される。よって、着色剤組成物を加熱した場合、局所的な加熱を避けることができ、熱安定性が向上しているのではないかと考えられる。本発明において、分散性という観点から、アミン価と酸価を有して、さらに塩構造である分散剤がもっとも好ましい。
【0108】
また、本発明に用いることができる分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。また、その分子量は、1000〜100,000の範囲であるのが好ましい。分散剤の分子量が小さすぎると分散安定性が低下し、大きすぎると現像性、解像性が低下する傾向にある。また、本発明において、特に断りのない限り、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を指す。
【0109】
本発明で用いられうる分散剤としては、BYKケミー社製のANTI−TERRA(登録商標)シリーズのANTI−TERRA(登録商標)−U、U100、204、205、DISPERBYK(登録商標)シリーズのDISPERBYK(登録商標)−106、108、109、112、116、140、142、145、161、162、163、166、167、168、180、182、183、185、184、2001、2020、2025、2050、2070、2150、BYK(登録商標)シリーズのBYK(登録商標)−9076、9077などが挙げられる。
【0110】
また、これらのうち、アミン価と酸価を有するという点から、ANTI−TERRA(登録商標)−U、U100、204、205、DISPERBYK(登録商標)−101、106、140、142、145、180、2001、2020、2025、2070、BYK(登録商標)−9076が好ましい。
【0111】
また、これらのうち、アミン価と酸価を有して、さらに塩構造であるという点から、ANTI−TERRA(登録商標)−U、U100、204、205、DISPERBYK(登録商標)−101、106、140、142、145、180、BYK(登録商標)−9076がさらに好ましい。これらの中でも、DISPERBYK(登録商標)−106が特に好ましい。
【0112】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物において、分散剤の含量は、上述したフタロシアニン化合物と黄色系色素化合物との合計100質量部に対して、5〜30質量部である。分散剤の含量は、好ましくは5.2〜20質量部であり、より好ましくは5.5〜15質量部である。分散剤が5〜30質量部含まれている場合、500〜550nmの緑波長領域の吸光度が低く、630〜670nmの波長領域における吸光度が高い着色剤組成物が得られる。
【0113】
本発明において、分散剤のアミン価(有効固形分換算)は、分散剤試料中の溶媒を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表し、次の方法により測定する。100mLのビーカーに分散剤試料の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHClO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
【0114】
アミン価[mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]を表す。)
4.その他の構成成分
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、さらに溶媒を含むことができる。すなわち、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、上述したフタロシアニン化合物と黄色系色素化合物と分散剤と溶剤とを含み、カラーフィルタ用として好適に使用できる。
【0115】
着色剤組成物における溶剤の配合量は、特に制限はないが、組成物100質量部に対して、20〜95質量部が好ましく、30〜85質量部がより好ましい。
【0116】
溶媒としては、フタロシアニン化合物と黄色系色素化合物と分散剤を分散・溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、n−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ベンズアルデヒド、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−i−アミルケトン、アセトフェノン、メチラール、フラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジメチルスルオキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。中でも、沸点と粘性の観点で好ましくはジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンなどが好ましい溶媒として挙げられる。
【0117】
また、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、必要に応じて、公知の分散助剤等の化合物を添加してもよい。これらの化合物は、顔料と分散剤との仲介をする化合物で、顔料表面と分散剤とに電気的、化学的に吸着し、分散安定性を向上させる機能を持つと考えられている。
【0118】
このような分散助剤としては例えば、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ポリスルホン酸型高分子活性剤等のアニオン性活性剤、ポリオキシエチレン、ポリオキシレンブロックポリマー等のノニオン系の活性剤があるが、好ましいものとして、アントラキノン系、フタロシアニン系、金属フタロシアニン系、キナクリドン系、アゾキレート系、アゾ系、イソインドリノン系、ピランスロン系、インダンスロン系、アンスラピリミジン系、ジブロモアンザンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系等の有機顔料を母体とし、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボンアミド基、スルホンアミド基等の置換基を導入した顔料誘導体が挙げられる。これらの中でもフタロシアニン系及び金属フタロシアニンスルホンアミド化合物は特に有効である。
【0119】
また、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、必要に応じて、公知の樹脂(感光性樹脂組成物)の化合物を添加してもよい。本発明に用いることのできる樹脂(感光性樹脂組成物)は、光の作用によって化学反応を起こし、その結果、溶媒に対する溶解度または親和性に変化を生じたり、液状より固体状に変化するものであればよい。例えば、アクリル系またはマレイミド系樹脂液をバインダー樹脂(ベースポリマー)とし、これに各種のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルからなる感光性モノマー(光重合性モノマー)、光重合開始剤を加えてなる光重合型の感光性樹脂組成物、あるいは光二量化するアクリル系樹脂液を用いてなる光二量化型の感光性樹脂組成物などが挙げられるが、中でも光重合型の感光性樹脂組成物が好ましい。
【0120】
前記アクリル系またはマレイミド系樹脂としては、それを構成するモノマー、オリゴマーのうち10質量%以上がアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびマレイミド基を有する化合物から選ばれた1種以上であり、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイミド基を有する化合物を好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは5〜35質量%、アクリル酸、メタクリル酸またはマレイミド基を有する化合物を好ましくは10〜90質量部、さらに好ましく30〜80質量部含むものである。
【0121】
アクリル系を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2一ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、マレイン酸、フマル酸、N−フェニルマレイミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートプレポリマー等が例示できる。
【0122】
マレイミド系樹脂を構成するモノマーとしては、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N―メチルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等の芳香族置換マレイミドのほか、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のアルキル置換マレイミドが例示できる。
【0123】
また、本発明の感光性樹脂組成物の成分となり得る感光性モノマーとしては、前記のアクリル系樹脂を構成するモノマーが挙げられるが、好ましくはトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0124】
光重合型の感光性樹脂組成物の組成成分となり得る光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェニルケトン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物およびアントラキノン系化合物などが挙げられる。より具体的には、イルガキュア369、イルガキュア907(両者とも日本チバガイギー(株)製)などのアセトフェノン系化合物などが挙げられる。
【0125】
光重合開始剤の添加量は、特に限定されるものではないが、アセトフェノン系化合物(IRGACURE(イルガキュア)369など)については、着色剤組成物中の不揮発分(溶媒を除いた成分)を100質量部とした際に、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部の割合で添加されることが望ましい。
【0126】
また、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物には、必要に応じて、熱重合防止剤等の任意成分を添加することができる。上記熱重合防止剤は、保存安定性改良の目的で添加されるものであり、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−(メルカプトベンゾイミダゾール)など用いることができる。また、必要に応じて、光劣化防止剤を添加してもよい。
【0127】
着色剤組成物における樹脂(感光性樹脂組成物)の配合量は、特に制限はないが、着色剤組成物100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。
【0128】
<カラーフィルタ用着色剤組成物の製造方法>
次に、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物の製造方法を説明する。本発明に係る着色剤組成物は、フタロシアニン化合物、黄色系色素化合物および分散剤を必須成分とし、さらに要すれば、上述した溶剤や分散補助剤など他の添加物等が配合されていてもよい。
【0129】
まず、着色剤組成物を作製する。着色剤組成物は、フタロシアニン化合物、黄色系色素化合物および分散剤を含むが、さらに、溶媒と、重合開始剤を含む樹脂(感光性樹脂組成物)等を含むと好ましい。この際、各成分は、上記定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物の製造方法は、特に制限されないが、上記成分を混合し、分散・溶解させることで得られる。
【0130】
背景技術の欄でも説明したが、液晶ディスプレイや撮像装置等に用いるカラーフィルタは一般に、ガラスなどの透明基板に、赤、緑、青の三原色画素と、これらの画素間に設けられた遮光層であるブラックマトリックスとを形成することにより製造されている。
【0131】
カラーフィルタの作製方法は、従来公知の知見を適宜参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。例えば、特開平10−160921号公報で開示されている方法が、カラーフィルタを作製する上で好ましいが、無論これらに限定されるわけではない。
【0132】
まず、ガラス基板上にブラックマトリックスを形成する。次に、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物と、溶媒と樹脂(感光性樹脂組成物)と、必要に応じて、他の黄色系色素、緑色系色素、または分散剤を含有してなる着色剤組成物をガラス基板上にスピンコート等により塗布し、乾燥する。次に、その後、必要に応じフォトマスクを介し露光する。その後、必要に応じ、アルカリ現像を行い、着色パターン(着色層)を得る。その後、必要に応じ、透明なオーバーコート層(保護膜)を形成して着色層の保護と表面の平坦化を行う。さらに、必要に応じ、透明導電膜を形成する。このようにして、カラーフィルタとすることができる。
【0133】
以上のようにして得られた着色剤組成物は、特に、特定の波長領域、500〜670nmにおいて加熱前後の吸収スペクトルの変化が小さく、耐変色性に優れている。すなわち、緑のカラーフィルタとしては、色目(色純度)を高くするために630〜670nmの緑波長領域の吸光度が高く、輝度を高くするために500〜550nmの波長領域における吸光度が低いものが要求される。本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、630〜670nmの波長領域に吸収を有し、500〜550nmの波長領域の吸収が小さい。また、加熱後においても、当該波長領域における吸収スペクトル変化が小さい。そのため、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物を、緑のカラーフィルタ用として用いた場合、カラーフィルタの作製の際に加熱されたとしても、吸収スペクトルの変化が小さく、緑のカラーフィルタとして色目および輝度の優れたものが得られる。
【0134】
本発明において、上述した500〜550nmの波長領域と、630〜670nmの波長領域の吸光度の変化を耐変色性の指標として、下記式(I):
【0135】
【数2】

【0136】
式中、UおよびUは加熱前の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Uは波長520nmの吸光度およびUは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表し、EおよびEは加熱後の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Eは波長520nmの吸光度およびEは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表す、
を用いて評価した。また、当該試験の詳細は下記実施例の通りである。
【0137】
本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、ΔAbsの値が0.2〜1.3であり、耐変色性に優れる。本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物において、ΔAbsの値は、好ましくは1.29以下である。また、本発明のΔAbsの値の下限は0.2、好ましくは0.5、さらに好ましくは0.7、特に好ましくは1.0である。
【実施例】
【0138】
以下、実施例および比較例を説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記化合物の名称において、Pcはフタロシアニン核を、PNはフタロニトリルを表す。また、下記化合物の名称において、「α−(置換基A),β−(置換基A)x−aPN(0<a<x)」あるいは「α−(置換基A),β−(置換基A)x−aPc(0<a<x)」と、記載されるのは、得られるフタロニトリル化合物あるいはフタロシアニン誘導体は、α位に平均a個およびβ位に平均x−a個の置換基Aが導入されていることを意味し、即ち、α位及びβ位に合計x個の置換基Aが導入されていることを意味する。
【0139】
<フタロシアニン染料の合成>
(中間体合成例1)
フタロニトリル化合物[α−{(4−COOCOCH)CO},α−{4−CNCO}b,β−{(4−COOCOCH)CO}0.9−a,β−{4−CNCO}0.1−bClPN](0≦a<0.9,0≦b<0.1)(中間体1)の合成
テトラクロロフタロニトリル(TCPN)16.0gとp−ヒドロキシ安息香酸メチルセルソルブ10.6g、アセトニトリル64.9gを40℃で30分間攪拌した後、炭酸カリウム9.12gを投入して2時間反応させた。反応後、フラスコに4−シアノフェノール0.73gを投入して、さらに6.5時間反応をさせた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液の溶媒を溜去した後、110℃で一晩真空乾燥し、25.2g(TCPNに対する収率100.6モル%)を得た。
【0140】
(中間体合成例2)
フタロニトリル化合物[α−{(4−COOCOCH)CO},β−{(4−COOCOCH)CO}1−aClPN](0≦a<1)(中間体2)の合成
TCPN31.9gとp−ヒドロキシ安息香酸メチルセルソルブ23.5g、アセトニトリル128gを40℃で30分間攪拌した後、フッ化カリウム20.9gを投入して8.5時間反応させた。冷却後、吸引ろ過して得た溶液の溶媒を溜去した後、110℃で一晩真空乾燥し、50.7g(TCPNに対する収率99.3モル%)を得た。
【0141】
(フタロシアニン誘導体1 合成例)
フタロシアニン誘導体[ZnPc−{α−(4−COOCOCH)CO},{α−(4−CN)CO},{β−(4−COOCOCH)CO}3.06−x,{β−(4−CN)CO}0.34−y,H2.4Cl10.2](0≦x<3.06,0≦y<0.34)の合成
中間体合成例1で得られた中間体1、10.47g、フタロニトリル0.57g、ベンゾニトリル4.04gを混合し、窒素流通下(10ml/min)、マグネチックスターラーを用いて内温160℃に安定するまで1時間攪拌した後、ヨウ化亜鉛2.58gを投入して10時間反応させた。冷却後、反応溶液を140℃×1hrの条件にて溶媒を溜去した後、得られた固形物に、メチルセルソルブ(7.3g)を加え、攪拌・溶解することで晶析溶液を調製した。次に、調製した晶析溶液をメタノール(109.1g)中に滴下し、30分攪拌した。その後、蒸留水(76.4g)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに30分攪拌して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール(54.6g)を加えて30分攪拌した後、蒸留水(38.2g)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに30分攪拌することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を60℃で一晩真空乾燥し、11.6g(中間体1およびフタロニトリルに対する収率100.6モル%)が得られた。
【0142】
(フタロシアニン誘導体2 合成例)
フタロシアニン誘導体[ZnPc−{α−(4−COOCOCH)CO},{β−(4−COOCOCH)CO}4−xCl12](0<x<4)の合成
中間体合成例2で得られた中間体2、6.80g、ベンゾニトリル2.27gを混合し、窒素流通下(10ml/min)、マグネチックスターラーを用いて内温160℃に安定するまで1時間攪拌した後、ヨウ化亜鉛1.40gを投入して8.5時間反応させた。冷却後、反応溶液を140℃×1hrの条件にて溶媒を溜去した後、得られた固形物に、メチルセルソルブ(6.0g)を加え、攪拌・溶解することで晶析溶液を調製した。次に、調製した晶析溶液をメタノール(68.1g)中に滴下し、30分攪拌した。その後、蒸留水(47.7g)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに30分攪拌して結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過した後、再びメタノール(34.0g)を加えて30分攪拌した後、蒸留水(23.8g)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに30分攪拌することで洗浄および精製を行った。吸引ろ過後、取り出した結晶を60℃で一晩真空乾燥し、6.59g(中間体2およびフタロニトリルに対する収率93.2モル%)が得られた。
【0143】
<フタロシアニン誘導体の吸収スペクトルの測定>
(フタロシアニン誘導体1)
フタロシアニン誘導体1 40.1mgを50mLのPGMEAに溶解し、1mLをホールピペットでとり、50mLのPGMEAに希釈した。この溶液の吸収スペクトルを分光光度計(日立製作所(株)社製:U−2910)にて測定した。フタロシアニン誘導体1の吸収スペクトルを図1に示す。
【0144】
(フタロシアニン誘導体2)
フタロシアニン誘導体2 40.4mgを50mLのPGMEAに溶解し、1mLをホールピペットでとり、50mLのPGMEAに希釈した。この溶液の吸収スペクトルを分光光度計(日立製作所(株)社製:U−2910)にて測定した。フタロシアニン誘導体2の吸収スペクトルを図2に示す。
【0145】
<黄色系色素化合物の合成>
(アゾ色素中間体(a)の合成)
【0146】
【化21】

【0147】
スルファニル酸37.0部を水150部、および濃塩酸32.0部と共に十分撹拌した後、4N亜硝酸ナトリウム25.0部を用いて5〜10℃でジアゾ化し、次いで1−エチル−1,2−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−3−ピリジンカルボニトリル42.0部に水370部を加え、さらに2N水酸化ナトリウムでpH8に調製した溶液をカップリング成分中に10℃以下の温度に保持して添加した。水酸化ナトリウムでpH5.0に調製してカップリング反応を完結させ、反応終了後塩化ナトリウム100部を用いて塩析させ、析出した生成物を濾別し、乾燥させてアゾ色素中間体(a)を60.4部(スルファニル酸に対して78モル%)得た。
【0148】
(スルホン酸塩化物(b)の合成)
【0149】
【化22】

【0150】
アゾ色素中間体(a)35.0部をジメチルホルムアミド15.6部、およびアセトニトリル215.5部の混合溶媒中、氷冷下撹拌して懸濁させている中に、塩化チオニルを滴下した。しばらくしたら40℃に昇温し、さらに4時間撹拌した。その後、懸濁液を525部の水へ撹拌しながら注ぎ込み、さらに10分間撹拌した。生じた沈殿物を濾取し、60℃で数時間真空乾燥することによりスルホン酸塩化物(b)を29.2部(アゾ色素中間体に対して80モル%)得た。
【0151】
(黄色系色素化合物(1)の合成)
【0152】
【化23】

【0153】
スルホン酸塩化物(b)29.2部をクロロホルム中に氷冷下懸濁し、2−エチルヘキシルアミン14.9部、およびトリエチルアミン38.9部の混合溶液をゆっくり滴下した。室温まで昇温し、10分間撹拌した後、反応溶液を濃縮した。濃縮液をアセトン150部に溶解した後、1M塩酸600部に注ぎ込み、生じた沈殿物を濾取した。この沈殿物をメタノール400部に加熱還流下溶解し、ゆっくり室温まで冷却した。生じた沈殿物を濾取した後、60℃で数時間真空乾燥することにより黄色系色素化合物(1)を28.4部(スルホン酸塩化物に対して78モル%)得た。
【0154】
<カラーフィルタ評価>
(実施例1)
(1)染料レジスト溶液(着色剤組成物)の調製
下記の組成で混合して溶解し、染料レジスト溶液(着色剤組成物)を調製した。
【0155】
【化24】

【0156】
【表1】

【0157】
(2)塗膜板の作製
あらかじめアセトンで表面を拭ったガラス基板に対して、前記(1)で得られた染料レジスト溶液(着色剤組成物)を乾燥後の膜厚が約2μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、80℃で30分間プリベークした。その後、UV照射して樹脂を硬化させた後、220℃で20分間ポストベークした。
【0158】
(3)フィルターの評価
上記で得られた着色フィルターの色度座標値、耐変色性、耐光性およびコントラスト比を評価した。その結果を下記表14に示す。なお、下記表に示した色度座標値、耐変色性、耐光性およびコントラスト比は以下のようにして測定した。
【0159】
(色素座標値)
日立分光光度計U−2910を用いて吸収波形を測定し、さらにこの波形に定数倍することで色度座標値のy=0.600となるように、色度(x、y)を求めた。照明にはC光源を用いたとして計算した。
【0160】
(耐変色性)
80℃でプリベークして得られたコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度計(日立製作所(株)社製:U−2910)にて測定し、これを加熱前スペクトルとした。次に、このコーティングガラス板を光架橋し220℃にて20分間ポストベークした後、吸収スペクトルを分光光度計にて測定し、これを加熱後スペクトルとした。このように測定した加熱前、加熱後の各スペクトルにおいて380〜780nmまでの吸光度を積分し、加熱前と加熱後でその吸光度の差を測定した。また、着色剤組成物の吸収スペクトルにおいて、波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度に対する波長520nmの吸光度の比の加熱前後の変化を求めた。すなわち、下記式(I)で表される耐変色性の指標ΔAbsを以下の式で計算し、耐変色性を評価した。
【0161】
【数3】

【0162】
式中、UおよびUは加熱前の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Uは波長520nmの吸光度およびUは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表し、EおよびEは加熱後の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Eは波長520nmの吸光度およびEは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表す。
【0163】
(コントラスト比)
ポストベーク後のコーティングガラスを2枚の偏向板で挟み、2枚の偏向板の偏向軸が平行のときと直交の時の透過光量の比(コントラスト比)を測定した。その測定結果により次の3段階の評価を行った。
【0164】
◎:コントラスト比が12000倍を超える場合
○:コントラスト比が10000〜12000倍の場合
×:コントラスト比が10000未満である場合
(実施例2)
下記に示す配合内容により、ビーズミルを使用して2時間撹拌混合し、緑色分散液(着色剤組成物)を得た。塗膜板の作成以降は実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0165】
【表2】

【0166】
(実施例3)
下記に示す配合内容により、ビーズミルを使用して2時間撹拌混合し、緑色分散液(着色剤組成物)を得た。塗膜板の作成以降は実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0167】
【表3】

【0168】
(実施例4)
実施例1の染料レジスト溶液のフタロシアニン誘導体1の代わりに、フタロシアニン誘導体2を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0169】
【表4】

【0170】
(実施例5)
実施例1の染料レジスト溶液の黄色系色素化合物(1)の代わりに、黄色系色素化合物(2)を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0171】
【化25】

【0172】
【表5】

【0173】
(実施例6)
実施例1の染料レジスト溶液の黄色系色素化合物(1)の代わりに、黄色系色素化合物(3)を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0174】
【化26】

【0175】
【表6】

【0176】
(実施例7)
実施例1の染料レジスト溶液の黄色系色素化合物(1)の代わりに、黄色系色素化合物(4)を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0177】
【化27】

【0178】
【表7】

【0179】
(実施例8)
実施例1の染料レジスト溶液の黄色系色素化合物(1)の代わりに、黄色系色素化合物(5)を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0180】
【化28】

【0181】
【表8】

【0182】
(実施例9)
実施例1の染料レジスト溶液のフタロシアニン誘導体1の代わりに、フタロシアニン誘導体2を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0183】
【表9】

【0184】
(比較例1)
実施例1の染料レジスト溶液の湿潤分散剤(溶剤型用)Disperbyk−106(BYK社製)を除き、黄色系色素化合物(1)の代わりに、黄色系色素化合物(2)を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0185】
【表10】

【0186】
(比較例2)
実施例1の染料レジスト溶液の黄色系色素化合物(1)の代わりに、黄色系色素化合物(6)を用い、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0187】
【化29】

【0188】
【表11】

【0189】
(比較例3)
実施例1の染料レジスト溶液の黄色系色素化合物(1)の代わりに、下記構造を有する黄色系色素化合物(7)(Colour Index: Solvent Yellow 179;Disperse Yellow 201)を用いて、配合比を下記のように変更した以外は全て実施例1と同様にして操作し、その結果を表14に示す。
【0190】
【化30】

【0191】
【表12】

【0192】
(比較例4)
下記に示す配合内容により、ビーズミルを使用して2時間撹拌混合し、緑色分散液を得た。
【0193】
【表13】

【0194】
【表14】

【0195】
以上のように、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は、耐変色性の指標ΔAbsの値が1.3以下であり、波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度に対する波長520nmの吸光度の比の加熱前後の変化が小さいことがわかる。よって、本発明のカラーフィルタ用着色剤組成物は加熱後においても、色目および輝度に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大吸収波長λmaxが600〜700nmであるフタロシアニン化合物と、黄色系色素化合物と、5〜150mgKOH/gのアミン価を有する分散剤と、を含み、
前記分散剤の含量が、前記フタロシアニン化合物と黄色系色素化合物との合計100質量部に対して5〜30質量部である着色剤組成物であって、
下記式(I):
【数1】

式中、UおよびUは加熱前の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Uは波長520nmの吸光度およびUは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表し、EおよびEは加熱後の吸収スペクトルの吸光度を表わし、この際、Eは波長520nmの吸光度およびEは波長630〜670nmにおける最大吸収波長の吸光度を表す、
で定義される耐変色性ΔAbsが0.2〜1.3であるカラーフィルタ用着色剤組成物。
【請求項2】
前記黄色系色素化合物が、下記化学式(B1)または(B2):
【化1】


式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜21のアルキル基、炭素数2〜21のアルケニル基、炭素数6〜21のアリール基、もしくは炭素数7〜21のアラルキル基を表す、
で表されるピリドンアゾ系黄色系色素である請求項1記載のカラーフィルタ用着色剤組成物。
【請求項3】
前記分散剤が、30〜200mgKOH/gの酸価を有する請求項1または2に記載のカラーフィルタ用着色剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色剤組成物を含むカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−42896(P2012−42896A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186646(P2010−186646)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】