カラーフィルタ積層用接着性組成物
【課題】カラーフィルタ中の染料の耐光性向上に役立つ接着性組成物ならびに該接着性組成物を用いた有機ELディスプレイの提供。
【解決手段】本発明による接着性組成物は、カラーフィルタと有機EL素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含むものである。また、本発明による有機ELディスプレイは該接着性組成物からなる接着層を介してカラーフィルタと有機EL素子とが積層一体化されたものである。
【解決手段】本発明による接着性組成物は、カラーフィルタと有機EL素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含むものである。また、本発明による有機ELディスプレイは該接着性組成物からなる接着層を介してカラーフィルタと有機EL素子とが積層一体化されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物ならびに該接着性組成物を用いて構成されたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代型のディスプレイとして、エレクトロルミネッセンス(以下EL)素子で構成されたELディスプレイが期待されている。EL素子には無機EL素子と有機EL素子とがあり、いずれのEL素子も自己発光性であるために視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れるとともに取り扱いが容易であるという利点がある。このため、グラフィックディスプレイの画素、およびテレビ画像表示装置の画素、または面光源等としての研究開発および実用化が進められている。
【0003】
有機EL素子は、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層とトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層、発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層、および正孔注入層と発光層と電子注入層、のいずれかの積層形態を2つの電極(発光面側の電極は透明電極である)間に介在させてなる構造体である。こうした有機EL素子は、発光層に注入された電子と正孔とが再結合するときに生じる発光を利用するものである。このため、有機EL素子は、発光層の厚さを薄くすることにより、例えば4.5Vという低電圧での駆動が可能で応答も速いといった利点、および輝度が注入電流に比例するために高輝度のEL素子を得ることができるといった利点等を有している。また、発光層とする蛍光性の有機固体の種類を変えることにより、青、緑、黄、赤の可視域すべての色で発光が得られている。有機EL素子は、このような利点、特に低電圧での駆動が可能であるという利点を有していることから、現在、実用化のための研究が進められている。そして、携帯電話の表示部分等、製作上での難易度が比較的低い小型のディスプレイでは、一部実用化がなされている。
【0004】
有機EL素子におけるカラー表示の方式としては、(1)青色、赤色、緑色等の各色の発光材料を成膜する3色塗り分け方式、(2)青色発光する発光層と、青→緑及び青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組合せて3色を発色させるCCM方式、(3)白色発光する発光層と、青色、赤色、緑色等のカラーフィルタとを組み合わせる方式等が挙げられる。このうち、発光効率の点からは、(1)の3色塗り分け方式が最も有力であり、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等に実用化されている。
【0005】
これら有機EL素子においては、電極が金属系材料からなること、発光体自身の色が白色であること等から、周囲が明るい環境での使用を想定した場合、外光反射により表示コントラストが著しく低下するといった問題があった。そのため、通常、A.有機EL素子の外光入射側に円偏光板を積層する、B.カラーフィルタを適用する、C.無彩色もしくは無彩色に近い色目で着色する(いわゆるティント処理を施す)、といった種々の対策がとられてきた。
【0006】
ここで、Aの円偏光板を積層する場合は、原理的に外光反射が完全に(外光の入射角度にもよるが)抑えられるものの、有機EL素子からの発光もその半分以上が円偏光板により吸収され、必ずしも効率が良いとは言えないものであった。一方、Bのカラーフィルタを適用した場合は、円偏光板を用いた場合と比較して外光反射の抑止効果が劣るものの、有機EL素子からの発光色の色目調整が可能となるといった優れた効果を発揮する。有機EL素子の発光自体による色純度向上には限界があることから、こうした色目調整機能は非常に有効と言える。特に3色塗りわけ方式とカラーフィルタとの組み合わせは、発光効率、色純度、および外光反射防止のバランスの点から最も優れており、実際に商品化もされている。
【0007】
ところで、有機EL素子の寿命は、電流値によって決定される発光輝度により変化する。すなわち、電流値を高めることにより高輝度が可能となるが、同時に素子の寿命が縮まることになる。従って、光が発光体から出射された後は、周辺部材による光吸収をなるべく低く抑えることが電流値を抑制し、ひいては長寿命化につながることとなる。特に青色の発光体は組み合わせる緑色および赤色の発光体と比較して寿命が短く、ディプレイとしての寿命を左右している。
【0008】
上記に鑑み、特に青色での発光を減衰しないようなパネル構成が、有機EL素子自体の長寿命化にとって重要となる。そのため、青色発光素子と組み合わせる、青色画素におけるカラーフィルタの透過率は、長寿命化の点からまだまだ向上させる必要がある。
【0009】
ここでカラーフィルタは大きく別けて、色材に染料を用いたタイプと、顔料を用いたタイプの2種類がある。現在では耐光性および耐熱性に優れる顔料分散型のカラーフィルタが一般的である。顔料自体は、元々は光透過性ではないため、光透過性を付与するために、分散剤の存在下で粒子系を100nm前後に微細化して用いられる。顔料分散型のカラーフィルタは、液晶ディスプレイのカラー化で広く使用されていることもあり、現在までに非常に多くの色調が開発されており、比較的に選択の自由度が確保できている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
前述の市販された3色塗りわけ方式の有機EL素子でも、前述のような工業生産的な観点から、この顔料分散型のカラーフィルタが適用されている。しかしながら、青色画素については、現在使用可能な顔料系で最も透過率に優れる顔料を適用しても、十分な透過率が確保できているとは言えないものである。
【0011】
一方、色材としての染料は、分子レベルでバインダーに溶解するため、顔料と比較してその透過率を高くすることが出来る。しかしながら、耐光性および耐熱性の点で顔料よりも信頼性が劣るといった問題がある。
【0012】
耐熱性に関しては、特に液晶ディスプレイ用途を考えると、配向膜としてのポリイミド膜を230℃以上の高温で焼成する必要があるため、一般的に200℃以上で分解が始まる染料は適用することができなかった。ここで有機ELディスプレイにおいては、当然ながら高温を必要とする配向膜プロセスが無いため、カラーフィルタに対する耐熱性の要求が最高でも150℃程度に緩和される。そのため、耐熱性の点から従来の液晶ディスプレイ向けカラーフィルタでは適用が難しかった染料系の着色材料が使用可能となる。
【0013】
一方、耐光性に関しては、有機ELディスプレイ用途においても依然として耐光性が劣るといった問題がある。そこで、染料の耐光性を向上させるために、染料を含むカラーパターン自体に金属錯体を添加することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法においては、色材としての染料を予め相当量含有している着色インキに金属錯体を添加することから、金属錯体の析出や、インキのゲル化など、好ましくない問題が発生することがある。
【0014】
有機ELディスプレイでは前述の通り、特に青色画素に関して、組み合わせるカラーフィルタの透過率を高く設定することが強く望まれているところ、従来の顔料分散型カラーフィルタでは透過率に限界があり、有機EL素子から発光される青色光を有効利用しているとは言い難かった。そこで染料系カラーフィルタの高い透過率特性を有効利用する試みがなされている。しかしながら、耐熱性に関しては液晶ディスプレイ用途レベルから緩和されたが、一方の耐光性に関しては、まだまだ満足できる性能が実現できていなかった。なお、カラーフィルタ用の耐光性試験としては、キセノンフェードメーターを用いた耐光性試験方法が一般的に用いられている。
【0015】
【特許文献1】特開2004−85592号公報
【特許文献2】特開平11−223720号公報
【発明の概要】
【0016】
本発明者らは、今般、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含む接着性組成物を用いることで、カラーフィルタに含まれる染料の退色を効果的に防止できることを知見した。
【0017】
したがって、本発明の目的は、カラーフィルタに含まれる染料の退色を効果的に防止できる接着性組成物ならびに該接着性組成物を用いたディスプレイ装置を提供することにある。
【0018】
すなわち、本発明による接着性組成物は、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含むものである。また、本発明によるディスプレイ装置は、該接着性組成物からなる接着層を介してカラーフィルタとディスプレイ素子とが積層一体化されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
接着性組成物
本発明による接着性組成物は、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含むものである。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、接着剤が、アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む接着剤であることが好ましい。別の好ましい態様によれば、接着剤が、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、および二液混合型からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む接着剤であることが好ましい。本発明においては、市販の接着剤を用いることもでき、例えば、一液型の紫外線硬化樹脂であるNT−01UVシリーズ(日東電工社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、粘着剤が、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む粘着剤であることが好ましく、透明性の点からアクリル樹脂系粘着剤がより好ましい。本発明においては、市販の粘着剤を用いることもでき、例えば、主剤と硬化剤の二液混合型であるSKダイン2094(綜研化学社製、アクリル樹脂系粘着剤)が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、抗酸化剤としては、一重項酸素クエンチャーである金属錯体が挙げられ、例えば、ジアルキルホスフェート、ジアルキルジチオカルバネート、およびベンゼンジチオールもしくはその類似ジチオールの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種、ならびにニッケル、銅、およびコバルトの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種等が挙げられる。さらに、抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、レチノール(ビタミンA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エリソルビン酸ナトリウム、ポリフェノール、およびフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。より好ましい態様では、抗酸化剤はジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)である。このような抗酸化剤によれば、一重項酸素クエンチャーとして働くことで、透明着色層に含まれる染料の退色を効果的に防止することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、接着性組成物において、接着剤および/または粘着剤の樹脂成分に対する抗酸化剤の質量比率は0.1〜7%であるのが好ましく、より好ましくは1〜5%である。このような含有量であれば、カラーフィルタ中の染料の退色をより効果的に防止することができる。該質量比率が0.1%未満では、十分な退色防止効果が得られない。また、該質量比率が7%を超えると、抗酸化剤自体に着色がある場合にはカラーフィルタの色純度を低下させる危険性があり、さらには接着性組成物から析出する危険性もある。
【0024】
本発明においては、染料を含有しない接着性組成物に抗酸化剤を添加することにより、より安定に、かつ多くの抗酸化剤を含有させることができる。色材としての染料を予め相当量含有している透明着色層用塗液(染料フォトレジスト)に抗酸化剤を添加すると、抗酸化剤の析出や、塗液のゲル化など、好ましくない問題が発生することがある。
【0025】
なお、本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、染料の退色防止メカニズムとしては、およそ以下のようなものではないかと考えられる。もっとも、以下に述べる説明はあくまで仮説であって、本発明が以下の説明によって限定されることがあってはならないことは言うまでもない。まず、退色のメカニズムとしては、空気中の酸素が試験光線のエネルギーにより活性化し、一重項酸素となって色度分子を攻撃することが一つの原因と考えられる。そのため、一重項酸素が染料に到達する前に不活性化することができれば、染料の退色を防止することができると考えられる。すなわち、染料を含むカラーフィルタの表面上に、抗酸化剤を含む接着層を形成させることで、一重項酸素を不活性化し、染料の退色を効果的に防止することができると考えられる。
【0026】
カラーフィルタ
本発明によるカラーフィルタは、本発明の接着性組成物からなる接着層を介して、ディスプレイ素子と積層されるカラーフィルタであって、基材と、前記基材上に形成された透明着色層とを含んでなり、前記透明着色層が色材として染料を含むものである。なお、基材は光出射側にあるため、光透過性の高い透明基材が用いられる。例えば、ガラス、石英、または各種の樹脂等の光透過性の高い材料からなる透明基材が挙げられる。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、透明着色層の青色着色層が、色材として、メチン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料、含金属アゾ系染料、トリアリールメタン系染料、およびフタロシアニン系染料からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。このような染料によれば、カラーフィルタの青色画素において高い色純度を確保しつつ高い透過率を実現することができる。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、透明着色層の赤色または緑色着色層は、色材として顔料および/または染料を含むことが好ましい。このような赤色または緑色着色層においては、染料を含むことでカラーフィルタのより高い透過性が得られ、顔料を含むことでより高い耐光性および耐熱性が得られる。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、基材の透明着色層と反対側の面に紫外線防止フィルムが形成されてなるカラーフィルタが好ましい。本発明においては、市販の紫外線防止フィルムを用いることもでき、例えば、KC4UX2M(コニカミノルタ社製 TACフィルム)、ルミクール1501(リンテック社製)、ノルボルネン系樹脂からなるアートン(登録商標 JSR製)、およびUVガード(登録商標 富士フィルム(株)製)等が挙げられる。このような紫外線防止フィルムによれば、表示面からの紫外線の入射を防止することができるので、カラーフィルタに含まれる染料の退色をより効果的に防止することができる。
【0030】
本発明のカラーフィルタは、透明基材上に、所定のパターンにてパターニング形成されたブラックストライプ層ならびにR(赤色)、G(緑色)、およびB(青色)等の各色のパターンからなる透明着色層が形成されてなるものが好ましい。ブラックストライプ層には、黒色顔料と樹脂とを含むフォトレジストおよび印刷用インキ、またはクロム等の金属を用いることができ、各色の色パターンには、各色に対応する顔料および染料等の色材と樹脂とを含むフォトレジストまたは印刷用インキを材料として用いることができる。
【0031】
ディスプレイ装置
本発明によるディスプレイ装置は、カラーフィルタと、ディスプレイ素子と、該カラーフィルタと該ディスプレイ素子の間に設けられた接着層とを含んでなるディスプレイ装置であって、該接着層が本発明の接着性組成物からなるものである。好ましい態様では、該カラーフィルタ中の透明着色層が色材として染料を含むものである。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、ディスプレイ装置は有機ELディスプレイまたは液晶ディスプレイである。例えば、有機ELディスプレイは、青色、赤色、および緑色の3色の発光素子を有し、ディスプレイ装置の青色表示が、青色発光素子と、本発明のカラーフィルタとの組み合わせによるものであることが好ましい。このような有機ELディスプレイによれば、青色画素に関して十分な性能を実現することができる。
【0033】
図1に示される有機ELディスプレイは、基材(1)上に青色透明着色層(2)、緑色透明着色層(3)、および赤色透明着色層(4)、ならびに各色間にブラックストライプ層(5)が所定のパターンで形成されてなるカラーフィルタ(6)と、青色発光体(7)、赤色発光体(8)、および緑色発光体(9)の3色の発光体を含む発光素子(10)とが、接着層(11)を介して積層されてなるものである。
【0034】
ディスプレイ装置の製造方法
本発明によるディスプレイ装置の製造方法は、特に限定されないが、以下に示される好ましい態様に従い行うことができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、まず、基材上に染料フォトレジストを塗布し、減圧乾燥後、プリベークして、溶剤を除去する。染料フォトレジストの塗布には、従来公知の方法を用いることでき、例えばスピンコート法、印刷法、インクジェット法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、ビードコート法、およびスリット&スピンコート法等が挙げられる。いずれの手法であっても、均一な塗膜を得るため、塗布液が一定の粘度になるように、溶剤によって希釈/粘度調整してもよい。続いて、紫外線をベタ露光して、染料フォトレジストを硬化させる。さらに、焼成することで透明着色層を基材上に形成させることができる。なお、プリベークは70〜120℃、1〜10分間の条件で行うことが好ましく、紫外線のベタ露光は254〜360nmの発光ピークを有する紫外線により30〜3000mJ/cm2の露光量で行うことが好ましい。また、上記の染料フォトレジストは、染料と、モノマーと、ポリマーと、溶剤と、所望により分散剤、界面活性剤、および光重合開始剤等の少なくとも一種とを含むことができる。
【0035】
上記の染料としては、例えば、メチン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料、含金属アゾ系染料、トリアリールメタン系染料、およびフタロシアニン系染料等が挙げられる。本発明においては、市販の染料を用いることもでき、例えば、Basonyl Blue636(BASF社製のトリアリールメタン系染料)、およびBasacid Blue750(BASF社製のフタロシアニン系染料)が好ましい。好ましい態様では、染料の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して5〜40質量%である。
【0036】
上記のモノマーとしては、例えば、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、上記のアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレートモノマー、および、これらのアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたエポキシアクリレートオリゴマー、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたウレタンメタクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたポリエステルメタクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたエポキシメタクリレートオリゴマー、アクリレート基を有するポリウレタンアクリレート、アクリレート基を有するポリエステルアクリレート、アクリレート基を有するエポキシアクリレート樹脂、メタクリレート基を有するポリウレタンメタクリレート、メタクリレート基を有するポリエステルメタクリレート、ならびにメタクリレート基を有するエポキシメタクリレート樹脂等が挙げられる。本発明においては、市販のモノマーを用いることもでき、例えば、SR399(サートマー(株)製)が好ましい。好ましい態様では、モノマーの含有量は、染料フォトレジストの全量に対して2.0〜10.0質量%である。
【0037】
上記のポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等、および、重合可能なモノマーであるメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの1種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体(例えば、東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、ならびにこれらの酸無水物等が挙げられる。好ましい態様では、ポリマーの含有量は染料フォトレジストの全量に対して2.0〜5.0質量%であり、ポリマーとしては、ベンジルメタクリレート、スチレン、アクリル酸、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる共重合体に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えたものが用いられる。なお、好ましくは、該共重合体の各成分のモル比は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=10〜20:30〜40:25〜35:10〜20であり、該共重合体100モルに対して2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートは10〜20モル加えられる。
【0038】
上記の溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、およびテトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、およびジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、および2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびg−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、およびオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、およびブチルセルソルブ等のアルコール類、ならびにフェノールおよびパラクロロフェノール等のフェノール類からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。好ましい態様では、溶剤の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して50〜90質量%である。また、単一種の溶媒を使用しただけでは、フォトレジスト組成物の溶解性が不充分である場合、あるいはフォトレジストを塗布する際における塗布の相手方となる素材(基材を構成する素材)が侵されるおそれがある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することによりこれらの不利益を回避することができる。
【0039】
上記の界面活性剤としては、例えば、フッソ系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、およびアニオン系界面活性剤等が挙げられる。好ましい態様では、界面活性剤の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して0.03〜3.0質量%である。
【0040】
上記の光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を用いることができる。ラジカル重合性開始剤は、紫外線等のエネルギーによりフリーラジカルを発生するものであり、例えば、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。本発明においては、市販の光重合開始剤を用いることもでき、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれも、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等のケトン系化合物、および2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物が好ましい。好ましい態様では、光重合開始剤の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して1.0〜5.0質量%である。
【0041】
次に、接着剤および/または粘着剤と抗酸化剤とを含む接着性組成物を調製し、調製した接着性組成物をカラーフィルタ上に塗布する。接着性組成物の塗布には、従来公知の方法を用いることもでき、例えば、バーコート法およびスリットコート法等が挙げられる。いずれの手法であっても、均一な塗膜を得るため、塗布液が一定の粘度になるように、溶剤によって希釈/粘度調整してもよい。例えば、接着性組成物に、主剤と硬化剤の二液混合型の接着剤および/または粘着剤を用いる場合には、樹脂成分に対して20〜50質量%の有機溶剤を添加することで、希釈/粘度調整を行うことができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、ヘキサン、メチルエチルケトン、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶剤等を挙げることができる。なお、下地となるカラーフィルタがこれらの溶剤により、染料の溶出などのダメージを受ける場合、一度ベースフィルム上に希釈した接着性組成物を塗工して均一な塗膜とし、減圧乾燥により溶剤を除去した後にカラーフィルタ表面に転写することにより、好ましくないダメージを回避することができる。また、パネル側に希釈した接着性組成物を塗工、溶剤を除去した後にカラーフィルタと貼合することでも、本目的を達成することができる。通常パネル側には保護層などが積層され、良好な耐溶剤特性を示すためである。
【0042】
続いて、接着性組成物が塗布されたカラーフィルタを減圧乾燥して、溶剤成分を除去した後に、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化することでディスプレイ装置が得られる。減圧乾燥は、67〜400Paで行われるのが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【0044】
以下の実施例および比較例においては、PETフィルム(有機EL素子の代用)とカラーフィルタとを積層一体化して、擬似パネル(有機ELディスプレイの代用)を製造した。続いて、製造した擬似パネルに対して耐光性試験を行った。
【0045】
実施例1
擬似パネルの製造
まず、以下の組成物を用いて青色パターン用染料フォトレジストを調製した。
【0046】
青色パターン用染料フォトレジスト
・青色染料(BASF社製のトリアリールメタン系染料、Basonyl Blue 636)…6.0重量部
・モノマー(サートマー(株)製、SR399)…4.0重量部
・ポリマー…5.0重量部
・光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア907)…1.4重量部
・光重合開始剤(2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)…0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部
なお、上記ポリマーは、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モルに対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0047】
上記で調製した染料フォトレジストを、基材であるガラス基板(コーニング社製、1737材)上にスピンコート法で塗布し、減圧乾燥後、80℃、5分間の条件でプリベークして溶剤を除去した。引き続き365nmの発光ピークを有する紫外線を、300mJ/cm2の露光量でベタ露光して塗膜を硬化させた。さらに180℃のクリーンオーブン中で30分間焼成することにより、ガラス基板上に1.8μmで透明着色層を形成させて、カラーフィルタを得た。
【0048】
なお、染料フォトレジストは、フォトマスクを介してパターン露光し、引き続いて0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像により、10μmオーダーでのパターニングが可能であった。これにより、カラーフィルタ用途として十分な解像性が確認できた。
【0049】
次に粘着剤として、主剤と硬化剤の二液混合型であるSKダイン2094(綜研化学社製、アクリル樹脂系粘着剤、樹脂成分25質量%含有)を用意した。続いて、SKダイン2094にジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)を添加して、接着性組成物を調製した。ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量は、SKダイン2094の樹脂成分に対して3.50質量%であった。引き続き各成分を均一に溶解し、かつ塗布を容易にするため、樹脂成分に対して30質量%の割合で希釈溶媒としてのメチルエチルケトンを加えた。調製した接着性組成物を、バーコーターを用いて、50μm厚のPETフィルム(東レ社製:ルミラー)に塗布し、減圧乾燥により200Paまで減圧して溶剤成分を除去した。次にこのPETフィルムをカラーフィルタに積層して接着し、実施例1の擬似パネルとした。
【0050】
実施例2
実施例2として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を0.2質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0051】
実施例3
実施例3として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を6.3質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0052】
比較例1
比較例1として、接着性組成物にジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)を加えなかった以外は実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0053】
比較例2
比較例2として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を0.01質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0054】
比較例3
比較例3として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を8.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0055】
それぞれの実施例および比較例において、紫外線防止フィルムとしてTACフィルム(コニカミノルタ社製 商品名:KC4UX2M)を試験光が照射される側のガラス面に積層したものと、積層していないものとをそれぞれ以下の評価に供した。なお、TACフィルムは耐光性試験時にのみ積層し、分光測定時には剥がして測定を行った。
【0056】
耐光性試験
次に上記の実施例1〜3および比較例1〜3で製造した擬似パネルの耐光性試験を行った。耐光性試験として、キセノンアークランプを用いたキセノンフェードメーター(東洋精機社製 商品名:サンテストXLS+)により、310Wの出力で78時間連続して色度の評価を行った。試験光の照射は、実際の使用を想定して、ガラス面より行った。色度は、ΔE*ab色差色で評価した。なお、色差は、数値が小さいほど耐光性が高いことを示す。また、耐光性試験前後の分光スペクトルを顕微分光測色機(オリンパス社製 型名:OSP−SP200)を用いて測定した。なお、光源には標準の光Cを用いた。
【0057】
色度評価の結果は表1に示されるとおりであり、本発明の組成を満たす接着性組成物を用いた擬似パネルでは、試験前後での色差の値が小さく、耐光性に優れることがわかる。なお、比較例3の擬似パネルにはジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の析出が確認され、分光スペクトルは測定不可能であった。また、擬似パネルの耐光性試験前後の分光スペクトルは図2〜図11に示されるとおりであり、本発明の組成を満たす接着性組成物を用いた擬似パネルでは、試験前後の分光スペクトルの変化が小さく、試験後であっても高い色純度および高透過率を維持していることがわかる。
【0058】
なお、実際のディスプレイ装置を用いた場合であっても、その効果については、何ら影響を受けるものではない。すなわち、対向基板がディスプレイ素子になった場合、面方向からの酸素の侵入は防止できると考えられるが、一方で端面部分からの酸素侵入の危険性が残る。透明着色層が端面で露出している構成はもとより、外気と接触する部分を端面から内側に設計し、端面部分を接着性組成物でカバーした構成としても、多くの接着性組成物は僅かながら酸素を透過してしまうため、この構成も完全とは言えないからである。したがって、擬似パネルで得られた効果と同様の効果が、実際のディスプレイ装置においても得られるものと考えられる。
【0059】
表1:耐光性試験前後での色度評価
色差
紫外線防止フィルム 有 無
実施例1 18.6 28.8
実施例2 21.4 37.3
実施例3 12.7 23.0
比較例1 46.5 74.9
比較例2 42.2 71.4
比較例3 − −
−:測定不可
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の接着性組成物からなる接着層を有する有機EL素子の典型的な断面図である。
【図2】実施例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図3】実施例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図4】実施例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図5】実施例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図6】実施例3の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図7】実施例3の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図8】比較例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図9】比較例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図10】比較例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図11】比較例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【符号の説明】
【0061】
1 基材
2 青色透明着色層
3 緑色透明着色層
4 赤色透明着色層
5 ブラックストライプ層
6 カラーフィルタ
7 青色発光体
8 緑色発光体
9 赤色発光体
10 発光素子
11 接着層
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物ならびに該接着性組成物を用いて構成されたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代型のディスプレイとして、エレクトロルミネッセンス(以下EL)素子で構成されたELディスプレイが期待されている。EL素子には無機EL素子と有機EL素子とがあり、いずれのEL素子も自己発光性であるために視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れるとともに取り扱いが容易であるという利点がある。このため、グラフィックディスプレイの画素、およびテレビ画像表示装置の画素、または面光源等としての研究開発および実用化が進められている。
【0003】
有機EL素子は、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層とトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層、発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層、および正孔注入層と発光層と電子注入層、のいずれかの積層形態を2つの電極(発光面側の電極は透明電極である)間に介在させてなる構造体である。こうした有機EL素子は、発光層に注入された電子と正孔とが再結合するときに生じる発光を利用するものである。このため、有機EL素子は、発光層の厚さを薄くすることにより、例えば4.5Vという低電圧での駆動が可能で応答も速いといった利点、および輝度が注入電流に比例するために高輝度のEL素子を得ることができるといった利点等を有している。また、発光層とする蛍光性の有機固体の種類を変えることにより、青、緑、黄、赤の可視域すべての色で発光が得られている。有機EL素子は、このような利点、特に低電圧での駆動が可能であるという利点を有していることから、現在、実用化のための研究が進められている。そして、携帯電話の表示部分等、製作上での難易度が比較的低い小型のディスプレイでは、一部実用化がなされている。
【0004】
有機EL素子におけるカラー表示の方式としては、(1)青色、赤色、緑色等の各色の発光材料を成膜する3色塗り分け方式、(2)青色発光する発光層と、青→緑及び青→赤にそれぞれ色変換する色変換層(CCM層)とを組合せて3色を発色させるCCM方式、(3)白色発光する発光層と、青色、赤色、緑色等のカラーフィルタとを組み合わせる方式等が挙げられる。このうち、発光効率の点からは、(1)の3色塗り分け方式が最も有力であり、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等に実用化されている。
【0005】
これら有機EL素子においては、電極が金属系材料からなること、発光体自身の色が白色であること等から、周囲が明るい環境での使用を想定した場合、外光反射により表示コントラストが著しく低下するといった問題があった。そのため、通常、A.有機EL素子の外光入射側に円偏光板を積層する、B.カラーフィルタを適用する、C.無彩色もしくは無彩色に近い色目で着色する(いわゆるティント処理を施す)、といった種々の対策がとられてきた。
【0006】
ここで、Aの円偏光板を積層する場合は、原理的に外光反射が完全に(外光の入射角度にもよるが)抑えられるものの、有機EL素子からの発光もその半分以上が円偏光板により吸収され、必ずしも効率が良いとは言えないものであった。一方、Bのカラーフィルタを適用した場合は、円偏光板を用いた場合と比較して外光反射の抑止効果が劣るものの、有機EL素子からの発光色の色目調整が可能となるといった優れた効果を発揮する。有機EL素子の発光自体による色純度向上には限界があることから、こうした色目調整機能は非常に有効と言える。特に3色塗りわけ方式とカラーフィルタとの組み合わせは、発光効率、色純度、および外光反射防止のバランスの点から最も優れており、実際に商品化もされている。
【0007】
ところで、有機EL素子の寿命は、電流値によって決定される発光輝度により変化する。すなわち、電流値を高めることにより高輝度が可能となるが、同時に素子の寿命が縮まることになる。従って、光が発光体から出射された後は、周辺部材による光吸収をなるべく低く抑えることが電流値を抑制し、ひいては長寿命化につながることとなる。特に青色の発光体は組み合わせる緑色および赤色の発光体と比較して寿命が短く、ディプレイとしての寿命を左右している。
【0008】
上記に鑑み、特に青色での発光を減衰しないようなパネル構成が、有機EL素子自体の長寿命化にとって重要となる。そのため、青色発光素子と組み合わせる、青色画素におけるカラーフィルタの透過率は、長寿命化の点からまだまだ向上させる必要がある。
【0009】
ここでカラーフィルタは大きく別けて、色材に染料を用いたタイプと、顔料を用いたタイプの2種類がある。現在では耐光性および耐熱性に優れる顔料分散型のカラーフィルタが一般的である。顔料自体は、元々は光透過性ではないため、光透過性を付与するために、分散剤の存在下で粒子系を100nm前後に微細化して用いられる。顔料分散型のカラーフィルタは、液晶ディスプレイのカラー化で広く使用されていることもあり、現在までに非常に多くの色調が開発されており、比較的に選択の自由度が確保できている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
前述の市販された3色塗りわけ方式の有機EL素子でも、前述のような工業生産的な観点から、この顔料分散型のカラーフィルタが適用されている。しかしながら、青色画素については、現在使用可能な顔料系で最も透過率に優れる顔料を適用しても、十分な透過率が確保できているとは言えないものである。
【0011】
一方、色材としての染料は、分子レベルでバインダーに溶解するため、顔料と比較してその透過率を高くすることが出来る。しかしながら、耐光性および耐熱性の点で顔料よりも信頼性が劣るといった問題がある。
【0012】
耐熱性に関しては、特に液晶ディスプレイ用途を考えると、配向膜としてのポリイミド膜を230℃以上の高温で焼成する必要があるため、一般的に200℃以上で分解が始まる染料は適用することができなかった。ここで有機ELディスプレイにおいては、当然ながら高温を必要とする配向膜プロセスが無いため、カラーフィルタに対する耐熱性の要求が最高でも150℃程度に緩和される。そのため、耐熱性の点から従来の液晶ディスプレイ向けカラーフィルタでは適用が難しかった染料系の着色材料が使用可能となる。
【0013】
一方、耐光性に関しては、有機ELディスプレイ用途においても依然として耐光性が劣るといった問題がある。そこで、染料の耐光性を向上させるために、染料を含むカラーパターン自体に金属錯体を添加することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法においては、色材としての染料を予め相当量含有している着色インキに金属錯体を添加することから、金属錯体の析出や、インキのゲル化など、好ましくない問題が発生することがある。
【0014】
有機ELディスプレイでは前述の通り、特に青色画素に関して、組み合わせるカラーフィルタの透過率を高く設定することが強く望まれているところ、従来の顔料分散型カラーフィルタでは透過率に限界があり、有機EL素子から発光される青色光を有効利用しているとは言い難かった。そこで染料系カラーフィルタの高い透過率特性を有効利用する試みがなされている。しかしながら、耐熱性に関しては液晶ディスプレイ用途レベルから緩和されたが、一方の耐光性に関しては、まだまだ満足できる性能が実現できていなかった。なお、カラーフィルタ用の耐光性試験としては、キセノンフェードメーターを用いた耐光性試験方法が一般的に用いられている。
【0015】
【特許文献1】特開2004−85592号公報
【特許文献2】特開平11−223720号公報
【発明の概要】
【0016】
本発明者らは、今般、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含む接着性組成物を用いることで、カラーフィルタに含まれる染料の退色を効果的に防止できることを知見した。
【0017】
したがって、本発明の目的は、カラーフィルタに含まれる染料の退色を効果的に防止できる接着性組成物ならびに該接着性組成物を用いたディスプレイ装置を提供することにある。
【0018】
すなわち、本発明による接着性組成物は、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含むものである。また、本発明によるディスプレイ装置は、該接着性組成物からなる接着層を介してカラーフィルタとディスプレイ素子とが積層一体化されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
接着性組成物
本発明による接着性組成物は、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、接着剤および/または粘着剤と、抗酸化剤とを含むものである。
【0020】
本発明の好ましい態様によれば、接着剤が、アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む接着剤であることが好ましい。別の好ましい態様によれば、接着剤が、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、および二液混合型からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む接着剤であることが好ましい。本発明においては、市販の接着剤を用いることもでき、例えば、一液型の紫外線硬化樹脂であるNT−01UVシリーズ(日東電工社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、粘着剤が、アクリル樹脂系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む粘着剤であることが好ましく、透明性の点からアクリル樹脂系粘着剤がより好ましい。本発明においては、市販の粘着剤を用いることもでき、例えば、主剤と硬化剤の二液混合型であるSKダイン2094(綜研化学社製、アクリル樹脂系粘着剤)が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい態様によれば、抗酸化剤としては、一重項酸素クエンチャーである金属錯体が挙げられ、例えば、ジアルキルホスフェート、ジアルキルジチオカルバネート、およびベンゼンジチオールもしくはその類似ジチオールの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種、ならびにニッケル、銅、およびコバルトの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種等が挙げられる。さらに、抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、レチノール(ビタミンA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エリソルビン酸ナトリウム、ポリフェノール、およびフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。より好ましい態様では、抗酸化剤はジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)である。このような抗酸化剤によれば、一重項酸素クエンチャーとして働くことで、透明着色層に含まれる染料の退色を効果的に防止することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、接着性組成物において、接着剤および/または粘着剤の樹脂成分に対する抗酸化剤の質量比率は0.1〜7%であるのが好ましく、より好ましくは1〜5%である。このような含有量であれば、カラーフィルタ中の染料の退色をより効果的に防止することができる。該質量比率が0.1%未満では、十分な退色防止効果が得られない。また、該質量比率が7%を超えると、抗酸化剤自体に着色がある場合にはカラーフィルタの色純度を低下させる危険性があり、さらには接着性組成物から析出する危険性もある。
【0024】
本発明においては、染料を含有しない接着性組成物に抗酸化剤を添加することにより、より安定に、かつ多くの抗酸化剤を含有させることができる。色材としての染料を予め相当量含有している透明着色層用塗液(染料フォトレジスト)に抗酸化剤を添加すると、抗酸化剤の析出や、塗液のゲル化など、好ましくない問題が発生することがある。
【0025】
なお、本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、染料の退色防止メカニズムとしては、およそ以下のようなものではないかと考えられる。もっとも、以下に述べる説明はあくまで仮説であって、本発明が以下の説明によって限定されることがあってはならないことは言うまでもない。まず、退色のメカニズムとしては、空気中の酸素が試験光線のエネルギーにより活性化し、一重項酸素となって色度分子を攻撃することが一つの原因と考えられる。そのため、一重項酸素が染料に到達する前に不活性化することができれば、染料の退色を防止することができると考えられる。すなわち、染料を含むカラーフィルタの表面上に、抗酸化剤を含む接着層を形成させることで、一重項酸素を不活性化し、染料の退色を効果的に防止することができると考えられる。
【0026】
カラーフィルタ
本発明によるカラーフィルタは、本発明の接着性組成物からなる接着層を介して、ディスプレイ素子と積層されるカラーフィルタであって、基材と、前記基材上に形成された透明着色層とを含んでなり、前記透明着色層が色材として染料を含むものである。なお、基材は光出射側にあるため、光透過性の高い透明基材が用いられる。例えば、ガラス、石英、または各種の樹脂等の光透過性の高い材料からなる透明基材が挙げられる。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、透明着色層の青色着色層が、色材として、メチン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料、含金属アゾ系染料、トリアリールメタン系染料、およびフタロシアニン系染料からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。このような染料によれば、カラーフィルタの青色画素において高い色純度を確保しつつ高い透過率を実現することができる。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、透明着色層の赤色または緑色着色層は、色材として顔料および/または染料を含むことが好ましい。このような赤色または緑色着色層においては、染料を含むことでカラーフィルタのより高い透過性が得られ、顔料を含むことでより高い耐光性および耐熱性が得られる。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、基材の透明着色層と反対側の面に紫外線防止フィルムが形成されてなるカラーフィルタが好ましい。本発明においては、市販の紫外線防止フィルムを用いることもでき、例えば、KC4UX2M(コニカミノルタ社製 TACフィルム)、ルミクール1501(リンテック社製)、ノルボルネン系樹脂からなるアートン(登録商標 JSR製)、およびUVガード(登録商標 富士フィルム(株)製)等が挙げられる。このような紫外線防止フィルムによれば、表示面からの紫外線の入射を防止することができるので、カラーフィルタに含まれる染料の退色をより効果的に防止することができる。
【0030】
本発明のカラーフィルタは、透明基材上に、所定のパターンにてパターニング形成されたブラックストライプ層ならびにR(赤色)、G(緑色)、およびB(青色)等の各色のパターンからなる透明着色層が形成されてなるものが好ましい。ブラックストライプ層には、黒色顔料と樹脂とを含むフォトレジストおよび印刷用インキ、またはクロム等の金属を用いることができ、各色の色パターンには、各色に対応する顔料および染料等の色材と樹脂とを含むフォトレジストまたは印刷用インキを材料として用いることができる。
【0031】
ディスプレイ装置
本発明によるディスプレイ装置は、カラーフィルタと、ディスプレイ素子と、該カラーフィルタと該ディスプレイ素子の間に設けられた接着層とを含んでなるディスプレイ装置であって、該接着層が本発明の接着性組成物からなるものである。好ましい態様では、該カラーフィルタ中の透明着色層が色材として染料を含むものである。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、ディスプレイ装置は有機ELディスプレイまたは液晶ディスプレイである。例えば、有機ELディスプレイは、青色、赤色、および緑色の3色の発光素子を有し、ディスプレイ装置の青色表示が、青色発光素子と、本発明のカラーフィルタとの組み合わせによるものであることが好ましい。このような有機ELディスプレイによれば、青色画素に関して十分な性能を実現することができる。
【0033】
図1に示される有機ELディスプレイは、基材(1)上に青色透明着色層(2)、緑色透明着色層(3)、および赤色透明着色層(4)、ならびに各色間にブラックストライプ層(5)が所定のパターンで形成されてなるカラーフィルタ(6)と、青色発光体(7)、赤色発光体(8)、および緑色発光体(9)の3色の発光体を含む発光素子(10)とが、接着層(11)を介して積層されてなるものである。
【0034】
ディスプレイ装置の製造方法
本発明によるディスプレイ装置の製造方法は、特に限定されないが、以下に示される好ましい態様に従い行うことができる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、まず、基材上に染料フォトレジストを塗布し、減圧乾燥後、プリベークして、溶剤を除去する。染料フォトレジストの塗布には、従来公知の方法を用いることでき、例えばスピンコート法、印刷法、インクジェット法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、ビードコート法、およびスリット&スピンコート法等が挙げられる。いずれの手法であっても、均一な塗膜を得るため、塗布液が一定の粘度になるように、溶剤によって希釈/粘度調整してもよい。続いて、紫外線をベタ露光して、染料フォトレジストを硬化させる。さらに、焼成することで透明着色層を基材上に形成させることができる。なお、プリベークは70〜120℃、1〜10分間の条件で行うことが好ましく、紫外線のベタ露光は254〜360nmの発光ピークを有する紫外線により30〜3000mJ/cm2の露光量で行うことが好ましい。また、上記の染料フォトレジストは、染料と、モノマーと、ポリマーと、溶剤と、所望により分散剤、界面活性剤、および光重合開始剤等の少なくとも一種とを含むことができる。
【0035】
上記の染料としては、例えば、メチン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料、含金属アゾ系染料、トリアリールメタン系染料、およびフタロシアニン系染料等が挙げられる。本発明においては、市販の染料を用いることもでき、例えば、Basonyl Blue636(BASF社製のトリアリールメタン系染料)、およびBasacid Blue750(BASF社製のフタロシアニン系染料)が好ましい。好ましい態様では、染料の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して5〜40質量%である。
【0036】
上記のモノマーとしては、例えば、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、上記のアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレートモノマー、および、これらのアクリレート基をメタクリレート基に置換したもの、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにアクリレート基を結合させたエポキシアクリレートオリゴマー、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたウレタンメタクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたポリエステルメタクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにメタクリレート基を結合させたエポキシメタクリレートオリゴマー、アクリレート基を有するポリウレタンアクリレート、アクリレート基を有するポリエステルアクリレート、アクリレート基を有するエポキシアクリレート樹脂、メタクリレート基を有するポリウレタンメタクリレート、メタクリレート基を有するポリエステルメタクリレート、ならびにメタクリレート基を有するエポキシメタクリレート樹脂等が挙げられる。本発明においては、市販のモノマーを用いることもでき、例えば、SR399(サートマー(株)製)が好ましい。好ましい態様では、モノマーの含有量は、染料フォトレジストの全量に対して2.0〜10.0質量%である。
【0037】
上記のポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレンビニル共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等、および、重合可能なモノマーであるメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec-ブチルアクリレート、sec-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの1種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体(例えば、東亜合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、ならびにこれらの酸無水物等が挙げられる。好ましい態様では、ポリマーの含有量は染料フォトレジストの全量に対して2.0〜5.0質量%であり、ポリマーとしては、ベンジルメタクリレート、スチレン、アクリル酸、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる共重合体に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを加えたものが用いられる。なお、好ましくは、該共重合体の各成分のモル比は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=10〜20:30〜40:25〜35:10〜20であり、該共重合体100モルに対して2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートは10〜20モル加えられる。
【0038】
上記の溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、およびテトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、およびジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、および2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびg−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、およびオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、およびブチルセルソルブ等のアルコール類、ならびにフェノールおよびパラクロロフェノール等のフェノール類からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。好ましい態様では、溶剤の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して50〜90質量%である。また、単一種の溶媒を使用しただけでは、フォトレジスト組成物の溶解性が不充分である場合、あるいはフォトレジストを塗布する際における塗布の相手方となる素材(基材を構成する素材)が侵されるおそれがある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することによりこれらの不利益を回避することができる。
【0039】
上記の界面活性剤としては、例えば、フッソ系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、およびアニオン系界面活性剤等が挙げられる。好ましい態様では、界面活性剤の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して0.03〜3.0質量%である。
【0040】
上記の光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を用いることができる。ラジカル重合性開始剤は、紫外線等のエネルギーによりフリーラジカルを発生するものであり、例えば、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、および1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。本発明においては、市販の光重合開始剤を用いることもでき、例えば、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア907(いずれも、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)等のケトン系化合物、および2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のビイミダゾール系化合物が好ましい。好ましい態様では、光重合開始剤の含有量は、染料フォトレジストの全量に対して1.0〜5.0質量%である。
【0041】
次に、接着剤および/または粘着剤と抗酸化剤とを含む接着性組成物を調製し、調製した接着性組成物をカラーフィルタ上に塗布する。接着性組成物の塗布には、従来公知の方法を用いることもでき、例えば、バーコート法およびスリットコート法等が挙げられる。いずれの手法であっても、均一な塗膜を得るため、塗布液が一定の粘度になるように、溶剤によって希釈/粘度調整してもよい。例えば、接着性組成物に、主剤と硬化剤の二液混合型の接着剤および/または粘着剤を用いる場合には、樹脂成分に対して20〜50質量%の有機溶剤を添加することで、希釈/粘度調整を行うことができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、ヘキサン、メチルエチルケトン、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶剤等を挙げることができる。なお、下地となるカラーフィルタがこれらの溶剤により、染料の溶出などのダメージを受ける場合、一度ベースフィルム上に希釈した接着性組成物を塗工して均一な塗膜とし、減圧乾燥により溶剤を除去した後にカラーフィルタ表面に転写することにより、好ましくないダメージを回避することができる。また、パネル側に希釈した接着性組成物を塗工、溶剤を除去した後にカラーフィルタと貼合することでも、本目的を達成することができる。通常パネル側には保護層などが積層され、良好な耐溶剤特性を示すためである。
【0042】
続いて、接着性組成物が塗布されたカラーフィルタを減圧乾燥して、溶剤成分を除去した後に、カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化することでディスプレイ装置が得られる。減圧乾燥は、67〜400Paで行われるのが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【0044】
以下の実施例および比較例においては、PETフィルム(有機EL素子の代用)とカラーフィルタとを積層一体化して、擬似パネル(有機ELディスプレイの代用)を製造した。続いて、製造した擬似パネルに対して耐光性試験を行った。
【0045】
実施例1
擬似パネルの製造
まず、以下の組成物を用いて青色パターン用染料フォトレジストを調製した。
【0046】
青色パターン用染料フォトレジスト
・青色染料(BASF社製のトリアリールメタン系染料、Basonyl Blue 636)…6.0重量部
・モノマー(サートマー(株)製、SR399)…4.0重量部
・ポリマー…5.0重量部
・光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア907)…1.4重量部
・光重合開始剤(2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)…0.6重量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)…80.0重量部
なお、上記ポリマーは、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モルに対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
【0047】
上記で調製した染料フォトレジストを、基材であるガラス基板(コーニング社製、1737材)上にスピンコート法で塗布し、減圧乾燥後、80℃、5分間の条件でプリベークして溶剤を除去した。引き続き365nmの発光ピークを有する紫外線を、300mJ/cm2の露光量でベタ露光して塗膜を硬化させた。さらに180℃のクリーンオーブン中で30分間焼成することにより、ガラス基板上に1.8μmで透明着色層を形成させて、カラーフィルタを得た。
【0048】
なお、染料フォトレジストは、フォトマスクを介してパターン露光し、引き続いて0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像により、10μmオーダーでのパターニングが可能であった。これにより、カラーフィルタ用途として十分な解像性が確認できた。
【0049】
次に粘着剤として、主剤と硬化剤の二液混合型であるSKダイン2094(綜研化学社製、アクリル樹脂系粘着剤、樹脂成分25質量%含有)を用意した。続いて、SKダイン2094にジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)を添加して、接着性組成物を調製した。ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量は、SKダイン2094の樹脂成分に対して3.50質量%であった。引き続き各成分を均一に溶解し、かつ塗布を容易にするため、樹脂成分に対して30質量%の割合で希釈溶媒としてのメチルエチルケトンを加えた。調製した接着性組成物を、バーコーターを用いて、50μm厚のPETフィルム(東レ社製:ルミラー)に塗布し、減圧乾燥により200Paまで減圧して溶剤成分を除去した。次にこのPETフィルムをカラーフィルタに積層して接着し、実施例1の擬似パネルとした。
【0050】
実施例2
実施例2として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を0.2質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0051】
実施例3
実施例3として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を6.3質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0052】
比較例1
比較例1として、接着性組成物にジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)を加えなかった以外は実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0053】
比較例2
比較例2として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を0.01質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0054】
比較例3
比較例3として、実施例1におけるジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の添加量を8.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして擬似パネルを作成した。
【0055】
それぞれの実施例および比較例において、紫外線防止フィルムとしてTACフィルム(コニカミノルタ社製 商品名:KC4UX2M)を試験光が照射される側のガラス面に積層したものと、積層していないものとをそれぞれ以下の評価に供した。なお、TACフィルムは耐光性試験時にのみ積層し、分光測定時には剥がして測定を行った。
【0056】
耐光性試験
次に上記の実施例1〜3および比較例1〜3で製造した擬似パネルの耐光性試験を行った。耐光性試験として、キセノンアークランプを用いたキセノンフェードメーター(東洋精機社製 商品名:サンテストXLS+)により、310Wの出力で78時間連続して色度の評価を行った。試験光の照射は、実際の使用を想定して、ガラス面より行った。色度は、ΔE*ab色差色で評価した。なお、色差は、数値が小さいほど耐光性が高いことを示す。また、耐光性試験前後の分光スペクトルを顕微分光測色機(オリンパス社製 型名:OSP−SP200)を用いて測定した。なお、光源には標準の光Cを用いた。
【0057】
色度評価の結果は表1に示されるとおりであり、本発明の組成を満たす接着性組成物を用いた擬似パネルでは、試験前後での色差の値が小さく、耐光性に優れることがわかる。なお、比較例3の擬似パネルにはジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)の析出が確認され、分光スペクトルは測定不可能であった。また、擬似パネルの耐光性試験前後の分光スペクトルは図2〜図11に示されるとおりであり、本発明の組成を満たす接着性組成物を用いた擬似パネルでは、試験前後の分光スペクトルの変化が小さく、試験後であっても高い色純度および高透過率を維持していることがわかる。
【0058】
なお、実際のディスプレイ装置を用いた場合であっても、その効果については、何ら影響を受けるものではない。すなわち、対向基板がディスプレイ素子になった場合、面方向からの酸素の侵入は防止できると考えられるが、一方で端面部分からの酸素侵入の危険性が残る。透明着色層が端面で露出している構成はもとより、外気と接触する部分を端面から内側に設計し、端面部分を接着性組成物でカバーした構成としても、多くの接着性組成物は僅かながら酸素を透過してしまうため、この構成も完全とは言えないからである。したがって、擬似パネルで得られた効果と同様の効果が、実際のディスプレイ装置においても得られるものと考えられる。
【0059】
表1:耐光性試験前後での色度評価
色差
紫外線防止フィルム 有 無
実施例1 18.6 28.8
実施例2 21.4 37.3
実施例3 12.7 23.0
比較例1 46.5 74.9
比較例2 42.2 71.4
比較例3 − −
−:測定不可
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の接着性組成物からなる接着層を有する有機EL素子の典型的な断面図である。
【図2】実施例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図3】実施例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図4】実施例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図5】実施例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図6】実施例3の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図7】実施例3の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図8】比較例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図9】比較例1の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図10】比較例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムあり)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【図11】比較例2の擬似パネル(紫外線防止フィルムなし)の耐光性試験前後の分光スペクトルである。
【符号の説明】
【0061】
1 基材
2 青色透明着色層
3 緑色透明着色層
4 赤色透明着色層
5 ブラックストライプ層
6 カラーフィルタ
7 青色発光体
8 緑色発光体
9 赤色発光体
10 発光素子
11 接着層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、
接着剤および/または粘着剤と、
抗酸化剤と
を含むことを特徴とする、接着性組成物。
【請求項2】
前記抗酸化剤が一重項酸素クエンチャーである、請求項1に記載に記載の接着性組成物。
【請求項3】
前記一重項酸素クエンチャーが金属錯体である、請求項2に記載の接着性組成物。
【請求項4】
前記金属錯体が、ジアルキルホスフェート、ジアルキルジチオカルバネート、およびベンゼンジチオールもしくはその類似ジチオールの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3に記載の接着性組成物。
【請求項5】
前記金属錯体が、ニッケル、銅、およびコバルトの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3または4に記載の接着性組成物。
【請求項6】
前記接着剤および/または粘着剤の樹脂成分に対する前記抗酸化剤の質量比率が0.1〜7%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着性組成物からなる接着層を介して、ディスプレイ素子と積層されるカラーフィルタであって、
基材と、
前記基材上に形成された透明着色層と
を含んでなり、前記透明着色層が色材として染料を含むことを特徴とする、カラーフィルタ。
【請求項8】
前記透明着色層の青色着色層が、色材として、メチン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料、含金属アゾ系染料、トリアリールメタン系染料、およびフタロシアニン系染料からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項7に記載のカラーフィルタ。
【請求項9】
前記透明着色層の赤色または緑色着色層が、色材として顔料および/または染料を含む、請求項7または8に記載のカラーフィルタ。
【請求項10】
前記基材の、前記透明着色層と反対側の面に紫外線防止フィルムが積層されてなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載のカラーフィルタ。
【請求項11】
カラーフィルタと、
ディスプレイ素子と、
前記カラーフィルタと前記ディスプレイ素子の間に設けられた接着層と
を含んでなるディスプレイ装置であって、
前記接着層が請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着性組成物からなることを特徴とする、ディスプレイ装置。
【請求項12】
前記カラーフィルタ中の透明着色層が色材として染料を含む、請求項11に記載のディスプレイ装置。
【請求項13】
有機ELディスプレイまたは液晶ディスプレイである、請求項11または12に記載のディスプレイ装置。
【請求項1】
カラーフィルタとディスプレイ素子とを積層一体化する際に用いられる接着性組成物であって、
接着剤および/または粘着剤と、
抗酸化剤と
を含むことを特徴とする、接着性組成物。
【請求項2】
前記抗酸化剤が一重項酸素クエンチャーである、請求項1に記載に記載の接着性組成物。
【請求項3】
前記一重項酸素クエンチャーが金属錯体である、請求項2に記載の接着性組成物。
【請求項4】
前記金属錯体が、ジアルキルホスフェート、ジアルキルジチオカルバネート、およびベンゼンジチオールもしくはその類似ジチオールの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3に記載の接着性組成物。
【請求項5】
前記金属錯体が、ニッケル、銅、およびコバルトの金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3または4に記載の接着性組成物。
【請求項6】
前記接着剤および/または粘着剤の樹脂成分に対する前記抗酸化剤の質量比率が0.1〜7%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着性組成物からなる接着層を介して、ディスプレイ素子と積層されるカラーフィルタであって、
基材と、
前記基材上に形成された透明着色層と
を含んでなり、前記透明着色層が色材として染料を含むことを特徴とする、カラーフィルタ。
【請求項8】
前記透明着色層の青色着色層が、色材として、メチン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料、含金属アゾ系染料、トリアリールメタン系染料、およびフタロシアニン系染料からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項7に記載のカラーフィルタ。
【請求項9】
前記透明着色層の赤色または緑色着色層が、色材として顔料および/または染料を含む、請求項7または8に記載のカラーフィルタ。
【請求項10】
前記基材の、前記透明着色層と反対側の面に紫外線防止フィルムが積層されてなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載のカラーフィルタ。
【請求項11】
カラーフィルタと、
ディスプレイ素子と、
前記カラーフィルタと前記ディスプレイ素子の間に設けられた接着層と
を含んでなるディスプレイ装置であって、
前記接着層が請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着性組成物からなることを特徴とする、ディスプレイ装置。
【請求項12】
前記カラーフィルタ中の透明着色層が色材として染料を含む、請求項11に記載のディスプレイ装置。
【請求項13】
有機ELディスプレイまたは液晶ディスプレイである、請求項11または12に記載のディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−251560(P2009−251560A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103237(P2008−103237)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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