説明

カラーフィルタ

【課題】本発明は、インクジェット法により着色層が形成されたカラーフィルタにおいて、色ムラや白抜け等のない高品質なカラーフィルタを提供することを主目的としている。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、基材と、前記基材上に複数本が所定の間隔をおいて等間隔に形成された線状遮光部および隣接する2本の前記線状遮光部間を所定の間隔をおいて連結する連結遮光部からなる遮光部と、各前記線状遮光部間に形成され、かつ前記連結遮光部を覆うように形成された着色層とを有するカラーフィルタであって、前記連結遮光部は、前記連結遮光部の側面と前記基材表面とがなす角が、前記線状遮光部の側面と前記基材表面とがなす角より小さくなるように形成されていることを特徴とするカラーフィルタを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に使用可能な、白抜け等のない、高品質なカラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、このカラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっており、特にコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
このようなカラーフィルタにおいては、通常赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
【0004】
従来より行われているカラーフィルタの製造方法としては、例えば染色法や顔料分散法等が挙げられる。しかしながら、いずれの方法も、R、G、およびBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。
【0005】
そこで、基材上に、光触媒と、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化する材料とを含有する光触媒含有層形成用塗工液を用いて光触媒含有層を形成し、パターン状に露光することにより、特性が変化したパターンを形成する方法等が本発明者等において検討されてきた(特許文献1)。この方法によれば、上記光触媒含有層の特性の差を利用して、容易に着色層を形成することが可能である。
【0006】
また、このような方法を応用して、透明な基材と、その基材上に形成された遮光部と、この遮光部を覆うように形成された光触媒含有層とを有するパターニング用基板に、基材側からエネルギーを照射し、遮光部が形成されていない領域のみの光触媒含有層の特性を変化させる方法についても、本発明者等により検討されている(特許文献2)。この方法によれば、フォトマスク等を用いることなく、特性が変化したパターンを形成することができる、という利点を有し、例えばストライプ型カラーフィルタに用いられるストライプ状の着色層やIPS型のカラーフィルタに用いられるジグザグ状の着色層を形成する際に利用する方法も検討されている。
【0007】
ここで、ストライプ状の着色層や、IPS型のカラーフィルタに用いられる着色層を有するカラーフィルタにおいては、例えば図6(a)に示すように、各着色層8と交差するように遮光部4が形成されることから、通常、着色層形成用塗工液を、着色層を形成するパターン状、すなわち着色層を形成する遮光部により区画された開口部だけでなくパターンと交差する遮光部上にも塗布し、着色層が形成される。しかしながら、上述した光触媒含有層を基材側から露光する方法を用いた場合には、遮光部により区画された開口部のみの光触媒含有層の特性が変化し、各パターンと交差する遮光部上の光触媒含有層の特性は変化しない。そのため、着色層形成用塗工液を塗布した場合、上記着色層と交差する遮光部上の光触媒含有層に着色層形成用塗工液が付着せず、例えば図6(b)に示すように、遮光部4により区画された開口部の端部に着色層形成用塗工液10がきれいに濡れ広がらず、着色層にムラや白抜けが発生してしまう場合等があった。
【0008】
また、カラーフィルタの製造方法の他の例として、基材上に着色層を形成する着色層形成用塗工液を留めるためのバンクを形成し、このバンクにフッ素化合物を導入ガスとしてプラズマ処理をし、バンクを撥液性としてインクジェット法により着色層を形成する方法も提案されている(特許文献3)。しかしながら、この場合においても、ストライプ状の着色層等と交差する撥液性のバンク上に着色層形成用塗工液が付着せず、上記と同様に、遮光部により区画された開口部の端部で着色層形成用塗工液がきれいに濡れ広がらず、着色層にムラや白抜けが発生する場合があった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−074928号公報
【特許文献2】特開2004−212900号公報
【特許文献3】特開2000−187111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、インクジェット法により着色層が形成されたカラーフィルタにおいて、色ムラや白抜け等のない高品質なカラーフィルタの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材と、上記基材上に複数本が所定の間隔をおいて等間隔に形成された線状遮光部および隣接する2本の上記線状遮光部間を所定の間隔をおいて連結する連結遮光部からなる遮光部と、各上記線状遮光部間に形成され、かつ上記連結遮光部を覆うように形成された着色層とを有するカラーフィルタであって、上記連結遮光部は、上記連結遮光部の側面と上記基材表面とがなす角が、上記線状遮光部の側面と上記基材表面とがなす角より小さくなるように形成されていることを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0012】
本発明によれば、連結遮光部の形状が、上記形状とされていることから、着色層を形成する際に塗布される着色層形成用塗工液が連結遮光部上に乗り上げやすく、線状遮光部と着色層形成用塗工液との重なりに比べて、連結遮光部と着色層形成用塗工液との重なり幅を大きなものとすることができる。したがって、連結遮光部を挟んで隣接する開口部間において、着色層形成用塗工液が塗布される領域どうしを近いものとすることができ、連結遮光部上でも着色層形成用塗工液が濡れ広がりやすいものとすることができる。したがって、連結遮光部近傍で白抜けや色ムラ等が生じることを少ないものとすることができ、高品質なカラーフィルタとすることができるのである。
【0013】
上記発明においては、上記連結遮光部の各端部から、上記連結遮光部の膜厚が上記連結遮光部の最大膜厚の50%となる部分までの薄膜領域の幅の合計が、連結遮光部線幅の1%〜50%の範囲内とされていることが好ましい。連結遮光部の形状を、上記のような形状とすることにより、上記着色層形成用塗工液が連結遮光部上に乗り上げやすく、着色層形成用塗工液と連結遮光部との重なりを大きなものとすることができ、より着色層形成用塗工液が塗布される領域どうしを近いものとすることができるからである。
【0014】
また、上記発明においては、上記基材および上記遮光部を覆うように、光触媒およびオルガノポリシロキサンを含有する光触媒含有層が形成されていてもよい。上記光触媒含有層は、光触媒およびオルガノポリシロキサンを含有していることから、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下したものとすることができる。したがって、上記光触媒含有層を用い、上記基材側からエネルギーを照射することにより、容易に上記開口部上を親液性領域、上記遮光部上を撥液性領域とすることができ、この濡れ性の差を利用して、容易に着色層が形成されたものとすることができるのである。
【0015】
また、上記発明においては、上記遮光部が、フッ素を含有しているものとしてもよい。上記遮光部上を撥液性とすることにより、開口部と遮光部上との濡れ性の差を利用して、容易に着色層が形成されたものとすることができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インクジェット法により白抜けや色ムラ等がなく着色層が形成されたものとすることができ、高品質なカラーフィルタとすることができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、高精細なパターンを有し、白抜け等のない高品質なカラーフィルタに関するものである。以下、本発明のカラーフィルタについて詳しく説明する。
【0018】
本発明のカラーフィルタは、基材と、上記基材上に複数本が所定の間隔をおいて等間隔に形成された線状遮光部および隣接する2本の上記線状遮光部間を所定の間隔をおいて連結する連結遮光部からなる遮光部と、各上記線状遮光部間に形成され、かつ上記連結遮光部を覆うように形成された着色層とを有するカラーフィルタであって、上記連結遮光部は、上記連結遮光部の側面と上記基材表面とがなす角が、上記線状遮光部の側面と上記基材表面とがなす角より小さくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のカラーフィルタは、例えば図1に示すように、基材(図示せず)と、その基材上に複数本が等間隔αをおいて形成された線状遮光部1および基材上に形成され隣接する2本の上記線状遮光部1を連結する連結遮光部2からなる遮光部と、隣接する2本の線状遮光部1間に形成され、かつ連結遮光部2を覆うようにインクジェット法により形成された着色層3とを有するものである。なお、通常、着色層3が形成されている領域の外側の領域には、額縁遮光部6が形成されることとなる。また、本発明においては上記連結遮光部が、例えば図2(a)に示すような線状遮光部1と基材7表面とがなす角aより、例えば図2(b)に示すように、連結遮光部2と基材7表面とがなす角bのほうが小さくなるように形成される。
【0020】
一般的なストライプ状の着色層を有するカラーフィルタにおいて、上記線状遮光部と連結遮光部とが、ほぼ同一の形状となるように形成される。しかしながらこの場合、インクジェット法によりストライプ状に着色層形成用塗工液が塗布された際、例えば図3(a)に示すように、遮光部4と着色層形成用塗工液10との重なり幅bが小さく、遮光部4を挟んで隣接する開口部5に塗布された着色層形成用塗工液10どうしの距離が遠いものとなる。したがって、例えば図7に示されるように、上記遮光部4の存在によって、開口部5において着色層形成用塗工液10が濡れ広がりづらく、開口部5の角の頂端部a付近に着色層形成用塗工液が塗布されにくいものとなり、形成された着色層に色ムラや白抜けが発生する等の問題があった。
【0021】
しかしながら、本発明においては、上記連結遮光部が、上述したような形状に形成されていることから、例えば図3(b)に示すように、隣接遮光部2上に着色層形成用塗工液10が乗り上げやすく、上記隣接遮光部2と着色層形成用塗工液10との重なり部分cを広いものとすることができるのである。したがって、連結遮光部上においても着色層形成用塗工液が濡れ広がりやすいものとすることができ、開口部の角付近においても、色ムラや白抜け等の少ないものとすることができるのである。
以下、本発明のカラーフィルタの角構成ごとに詳しく説明する。
【0022】
1.遮光部
まず、本発明に用いられる遮光部について説明する。本発明に用いられる遮光部は、上記基材上に複数本が所定の間隔をおいて等間隔に形成された線状遮光部および隣接する2本の上記線状遮光部間を所定の間隔をおいて連結する連結遮光部からなるものであり、上記連結遮光部は、上記連結遮光部の側面と上記基材表面とがなす角が、上記線状遮光部の側面と上記基材表面とがなす角より小さくなるように形成されているものである。以下、線状遮光部と連結遮光部とにわけて説明する。
【0023】
(線状遮光部)
まず、本発明に用いられる線状遮光部について説明する。本発明に用いられる線状遮光部は、基材上に複数本が所定の間隔をおいて等間隔に形成されているものであれば特に限定されるものではなく、例えば図1に示すように、線状遮光部1が所定の間隙αをおいて等間隔に直線状に複数本形成されたものであってもよく、また例えば図4に示すように、線状遮光部1が、所定の間隙αをおいて等間隔にジグザグ形状に複数本形成されたもの等であってもよい。また、この際、上記線状遮光部は幅方向に凹凸を有していてもよいものとする。また、複数本が等間隔に形成されているとは、各線状遮光部の中心線どうしが、等間隔となるように形成されていることをいう。
【0024】
このような線状遮光部の線幅としては、カラーフィルタの種類等により適宜選択されるものであるが、通常5μm〜100μm程度、中でも10μm〜50μm程度とされる。また、上記線状遮光部の最大膜厚としては、通常0.1μm〜10μmの範囲内、中でも0.2μm〜3μm程度とされる。
【0025】
また、線状遮光部の断面形状としては、一般的なカラーフィルタに用いられる遮光部の断面形状と同様のものとすることができ、例えば矩形状や、台形状等とすることができる。このような線状遮光部の形成方法としては、一般的なストライプ型カラーフィルタやIPS型カラーフィルタに用いられる遮光部と同様の材料を用いて同様の形成方法により形成されたものとすることができる。
【0026】
具体的には、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより、上記線状遮光部が形成されたものであってもよい。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0027】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層をパターン状に形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このような樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0028】
またさらに本発明においては、上述したような線状遮光部が熱転写法により形成されたものとすることもできる。線状遮光部を形成する熱転写法とは、通常、透明なフィルム基材の片面に光熱変換層と遮光部転写層を設けた熱転写シートを基材上に配置し、線状遮光部を形成する領域にエネルギーを照射することによって、遮光部転写層が基材上に転写されて線状遮光部が形成されることとなるものである。このような熱転写法により形成される線状遮光部の膜厚としては、通常0.5μm〜10.0μm、特に0.8μm〜5.0μm程度とすることができる。
【0029】
熱転写法により転写される線状遮光部は、通常、遮光材料と結着剤により構成されるものであり、遮光性材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等の無機粒子等を用いることができる。このような遮光性材料の粒子径としては、0.01μm〜1.0μm、中でも0.03μm〜0.3μmの範囲内であることが好ましい。
【0030】
また、結着剤としては、熱可塑性と熱硬化性とを有する樹脂組成とすることが好ましく、熱硬化性官能基を有し、かつ軟化点が50℃〜150℃の範囲内、中でも60℃〜120℃の範囲内である樹脂材料および硬化剤等により構成されることが好ましい。このような材料として具体的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物またはエポキシ樹脂とその潜在性硬化剤との組み合わせ等が挙げられる。またエポキシ樹脂の潜在性硬化剤としては、ある一定の温度まではエポキシ基との反応性を有さないが、加熱により活性化温度に達するとエポキシ基との反応性を有する分子構造に変化する硬化剤を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂との反応性を有する酸性または塩基性化合物の中性塩や錯体、ブロック化合物、高融点体、マイクロカプセル封入物が挙げられる。また、上記遮光部中に、上記の材料の他に、離型剤、接着補助剤、酸化防止剤、分散剤等を含有させることもできる。
【0031】
(連結遮光部)
次に、本発明に用いられる連結遮光部について説明する。本発明に用いられる連結遮光部は、隣接する2本の上記線状遮光部間を所定の間隔をおいて連結するものであって、連結遮光部の側面と、後述する基材表面とがなす角が、線状遮光部の側面と上記基材表面とがなす角より小さくなるように形成されるものである。上記連結遮光部と上記基材表面とがなす角とは、例えば図5に示すように、上記連結遮光部2の断面において、連結遮光部の端部eから、連結遮光部2の最大膜厚fに対して最表面の高さが、50%となる部分dとを結んだ直線、および基材7の表面がなす角度bをいうこととする。なお、上記連結遮光部の最大膜厚に対して最表面の高さが所定の高さとなる部分が複数ある場合には、上記境界部分から最も近い部分および上記境界部分を結んだ線と、上記基材表面とがなす角をいうこととする。
【0032】
また、線状遮光部側面と基材表面とがなす角とは、同様に、上記線状遮光部の断面において、線状遮光部と開口部との境界部分から、線状遮光部の最大膜厚に対して最表面の高さが、50%となる部分とを結んだ直線、および基材の表面がなす角度をいうこととする。なお、上記線状遮光部の最大膜厚に対して最表面の高さが所定の高さとなる部分が複数ある場合には、上記境界部分から最も近い部分と、上記境界部分とを結んだ線、および上記基材表面がなす角をいうこととする。上記連結遮光部および線状遮光部の基材とのなす角等の測定は、例えば連結遮光部または線状遮光部の中央部の断面形状を走査型電子顕微鏡(SEM)等で撮影したもの等から算出することができる。
【0033】
本発明においては、上記連結遮光部の側面と基材とがなす角が、上記線状遮光部の側面と基材とがなす角より1°以上小さいことが好ましく、中でも5°〜50°の範囲内で小さいことが好ましい。
【0034】
また、上記連結遮光部の側面と基材とがなす角として具体的には、2°〜89°の範囲内、特に4°〜70°の範囲内であることが好ましい。このような角度とすることにより、連結遮光部と、着色層を形成する着色層形成用塗工液との重なり幅を大きいものとすることができるからである。
【0035】
またこの際、連結遮光部は、上記連結遮光部の各端部から、上記連結遮光部の膜厚が上記連結遮光部の最大膜厚の50%となる部分までの薄膜領域の幅の合計が、連結遮光部線幅の1%〜50%の範囲内、中でも5%〜50%の範囲内、特に8%〜50%の範囲内であることが好ましい。なお、上記薄膜領域とは、例えば図5に示すように、上記連結遮光部2の断面において、連結遮光部の端部eから、連結遮光部2の最大膜厚fに対して最表面の高さが50%となる部分dまでの領域(g1およびg2)をいう。ここで、上記連結遮光部の断面を観察した際、最大膜厚に対して最表面の高さが上記の高さとなる部分が複数ある場合には、端部と、その端部から最も近く、かつ最表面の高さが上記の高さとなる部分との間の領域とする。また上記薄膜領域の幅の合計とは、それぞれの端部e側の連結遮光部の幅(g1およびg2)の合計をいうこととする。本発明においては、連結遮光部の形状を、上記のような形状とすることにより、着色層形成用塗工液が連結遮光部上に乗り上げやすく、着色層形成用塗工液と連結遮光部との重なりを大きなものとすることができ、より着色層形成用塗工液が塗布される領域どうしを近いものとすることができるからである。上記薄膜領域の幅は、例えば連結遮光部の中央部の断面形状を走査型電子顕微鏡(SEM)等で撮影したもの等から算出することができる。
【0036】
ここで、上記連結遮光部の幅としては、カラーフィルタの種類等により適宜選択されるものであるが、通常5μm〜100μm程度、中でも10μm〜50μm程度とされる。また、上記連結遮光部の最大膜厚としては、通常0.1μm〜10μmの範囲内、中でも0.2μm〜3μm程度とされる。
【0037】
また、上記連結遮光部の断面形状としては、上述したような形状に形成されているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば台形状であってもよく、また半円形状等であってもよいが、特に三角形状であることが好ましい。これにより、連結遮光部上に着色層形成用塗工液が塗布されやすくなり、より連結遮光部上においても着色層形成用塗工液が濡れ広がり安くなり、白抜け等のない、高品質なカラーフィルタとすることができるからである。
【0038】
上記形状を有する連結遮光部の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば一般的なストライプ状のカラーフィルタやIPS用カラーフィルタの遮光部に用いられる材料を用いて、フォトリソグラフィー法等により形成することができる。具体的には、フォトリソグラフィー法の露光に用いられるマスクを階調マスク等として露光量を調整し、上記形状とする方法が挙げられる。また、上記連結遮光部の形成に用いられる樹脂として低分子の材料を用いたり、樹脂中にモノマーを多量に添加すること等により、連結遮光部を形成する連結遮光部形成用組成物に熱可塑性を付与する方法等が挙げられる。この場合、連結遮光部を形成する領域に一般的な遮光部と同様の方法によって、矩形の連結遮光部を形成した後、その遮光部に熱をかけることにより、連結遮光部形成用組成物を軟化させて、上述したような形状とすることができるのである。
【0039】
また、例えば上記樹脂組成物中に含有される光開始剤として、表面硬化性の光開始剤を多量に用いる方法が挙げられる。この場合、例えばフォトリソグラフィー法等においてエッチングが行われる際、連結遮光部が形成される領域の表面は硬化されているが、連結遮光部の内側においては、光硬化が完全に効果されていないため、角度の高い逆テーパー状にエッチングされることとなる。したがってエッチング終了後、この逆テーパー状の連結遮光部に熱をかけることによって、テーパー状の部分が下がり、上述したような形状を有する連結遮光部を形成することができるのである。
【0040】
またさらに、上記連結遮光部を形成するための組成物を、連結遮光部を形成する形状の型に流し込み、硬化させた後、透明基板上にこの連結遮光部を貼り合わせる方法等を用いることもできる。
【0041】
(その他)
ここで、本発明においては、上記遮光部上が撥液性領域、上記遮光部により区画された開口部上が親液性領域とされることが好ましい。これにより、後述する着色層を例えばインクジェット法により、親液性および撥液性のパターンを利用して形成されたものとすることができ、隣接する異なる色の着色層が混色等することなく、高品質なカラーフィルタとすることができるのである。また一般的に、上記着色層形成用塗工液が濡れ広がりにくい連結遮光部付近においても、本発明によれば、連結遮光部が上記形状とされていることから、着色層形成用塗工液が濡れ広がりやすいものとすることができるのである。
【0042】
ここで、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、後述する着色層を形成する着色層形成用塗工液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0043】
なお、本発明においては、隣接する領域の液体との接触角より、液体との接触角が1゜以上低い場合には親液性領域、隣接する領域の液体との接触角より、液体との接触角が1゜以上高い場合には撥液性領域とすることとする。
【0044】
上記遮光部上、すなわち撥液性領域の液体との接触角として具体的には、40mN/mの液体との接触角が、10°以上、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましい。これは、撥液性領域において上記液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、着色層を形成する着色層形成用塗工液をインクジェット法により塗布し、硬化させて形成する場合等に、撥液性領域にも着色層形成用塗工液が付着する可能性があるからである。
【0045】
また、上記開口部、すなわち親液性領域においては、40mN/mの液体との接触角が9°未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下となるような層であることが好ましい。開口部、すなわち親液性領域における液体との接触角が高い場合は、上記着色層形成用塗工液を、親液性領域においてもはじいてしまう可能性があり、着色層形成用塗工液を塗布した際に、着色層形成用塗工液が十分に塗れ広がらない等、着色層を形成することが難しくなる可能性があるからである。
【0046】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0047】
上記遮光部上を撥液性領域とし、上記開口部上を親液性領域とする方法としては特に限定されるものではない。例えば遮光部自体を撥液性を有するものとし、後述する基材を親液性を有するものとする方法等としてもよく、また遮光部上に撥液性を有する層を形成して撥液性領域とし、上記基材上に親液性を有する層を形成して親液性領域とする方法等としてもよい。
【0048】
本発明においては特に、後述する基材および上記遮光部を覆うように、光触媒およびオルガノポリシロキサンを含有する光触媒含有層を形成する方法、または上記遮光部がフッ素を含有するものとする方法を用いることが好ましい。
【0049】
上記光触媒含有層を用いた場合には、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように変化層とすることができるため、エネルギー照射された領域を親液性領域、エネルギー照射されていない領域を撥液性領域とすることができる。したがって、基材および遮光部を覆うように上記光触媒含有層を形成し、基材側からエネルギーを照射することにより、容易に遮光部が形成されていない開口部のみを親液性領域とすることができ、エネルギーが照射されない、遮光部上を撥液性領域とすることができるからである。なお、このような方法に用いられる上記光触媒含有層については、後で詳しく説明するので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0050】
一方、上記遮光部がフッ素を含有するものとした場合にも、上記遮光部上を撥液性領域として用いることができるからである。ここで、上記遮光部におけるフッ素の存在は、X線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i-XL)による分析において、遮光部の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。また、この際上記フッ素の割合としては、10%以上とされることが好ましい。
【0051】
このように遮光部にフッ素を導入する方法としては、遮光部として樹脂製遮光部を用い、フッ素化合物を導入ガスとして用いたプラズマを照射する方法が用いられることが好ましい。これにより、容易に上記撥液性領域および親液性領域が形成されたものとすることができるからである。これは、上記プラズマ照射によれば、有機物にのみ上記フッ素化合物を導入することができる。したがって、後述する基材として無機物を用い、全面に上記プラズマを照射することにより、容易に上記遮光部にのみフッ素化合物を導入することができ、フッ素化合物が導入された遮光部上を撥液性領域、基材が露出した領域を親液性領域とすることができるのである。
【0052】
このような方法に用いられる導入ガスのフッ素化合物としては、例えばフッ化炭素(CF)、窒化フッ素(NF)、フッ化硫黄(SF)等が挙げられる。また、上記プラズマの照射方法は、フッ素化合物を導入ガスとして用いてプラズマを照射し、上記遮光部上を撥液性とすることが可能であれば、特に限定されるものではなく、減圧下でプラズマ照射してもよく、また大気圧下でプラズマ照射してもよいが、本発明においては特に大気圧下でプラズマ照射が行われることが好ましい。これにより、減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面から好ましいものとすることができるからである。このような大気圧プラズマの照射条件としては、以下のようなものとすることができる。例えば、電源出力としては、一般的な大気圧プラズマの照射装置に用いられるものと同様とすることができる。また、この際、照射されるプラズマの電極と、上記遮光部との距離は、0.2mm〜20mm程度、中でも1mm〜5mm程度とされることが好ましい。またさらに、上記導入ガスとして用いられるフッ素化合物の流量は1L/min〜100L/min程度、中でも5L/min〜50L/min程度であることが好ましく、この際の基板搬送速度が0.1m/min〜10m/min程度、中でも0.5m/min〜5m/min程度が好ましい。
【0053】
2.着色層
次に、本発明のカラーフィルタに用いられる着色層について説明する。本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、隣接する2本の上記線状遮光部間に形成されるものであり、上記連結遮光部を覆うようにインクジェット法により形成されるものであれば、特に限定されるものではない。
【0054】
このような着色層は、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色で形成され、着色面積は任意に設定することができる。
【0055】
ここで、このような着色層の形成に用いられる着色層形成用塗工液等としては、着色層がインクジェット法により形成される、一般的なカラーフィルタの着色層に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0056】
3.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は上記遮光部および着色層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく従来よりカラーフィルタに用いられているもの等を用いることができる。具体的には石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等を挙げることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。本発明において、基材は通常透明なものを用いるが、反射性の基板や白色に着色した基板でも用いることは可能である。また、基材は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものを用いてもよい。また、例えば表面を親液性とするために、酸素ガスを導入ガスとして、上述したプラズマ等を照射する処理を行ったもの等であってよい。
【0057】
なお、上述したように、上記遮光部に上記フッ素化合物を導入ガスとしたプラズマ照射を行う場合には、上記基材として無機材料からなるものが用いられることが好ましい。有機材料からなるものが用いられた場合には、上記遮光部だけでなく基材にもフッ素化合物が導入されてしまい、開口部を親液性領域とすることが困難となるからである。
【0058】
4.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した基材、上記形状を有する遮光部、および着色層が形成されたものであれば、その層構成等は特に限定されるものではなく、例えば保護層やITO層等が形成されているもの等であってもよい。また、本発明のカラーフィルタの種類についても特に限定されるものではなく、例えばストライプ状の着色層を有するカラーフィルタであってもよく、またIPS型の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ等であってもよい。
【0059】
ここで、本発明においては、上述したように、上記基材および遮光部を覆うように光触媒およびオルガノポリシロキサンを含有する光触媒含有層が形成されていてもよい。上記光触媒含有層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下するように変化層とすることができるため、エネルギー照射された領域を親液性領域、エネルギー照射されていない領域を撥液性領域とすることができる。したがって、上記光触媒含有層を形成し、基材側からエネルギーを照射することにより、容易に遮光部が形成されていない開口部のみを親液性領域とすることができ、エネルギー照射されない、遮光部上を撥液性領域とすることができるからである。
【0060】
またこの場合、本発明においては、上記連結遮光部が上述したような形状に形成されていることから、連結遮光部の膜厚が薄い部分については、基材側からエネルギーを照射した場合であっても、上記光触媒含有層の濡れ性を変化させることが可能な場合がある。これにより、上記連結遮光部上に着色層を形成する着色層形成用塗工液がより乗り上げやすいものとすることができ、連結遮光部近傍で色ムラ等の少ない、高品質なカラーフィルタとすることができるのである。以下、このような光触媒含有層について説明する。
【0061】
(光触媒含有層)
本発明に用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒およびオルガノポリシロキサンを含有する層であり、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、液体との接触角が低下する光触媒含有層であれば、特に限定されるものではない。
以下、このような光触媒含有層を構成する、光触媒、オルガノポリシロキサン、およびその他の成分について説明する。
【0062】
a.光触媒
まず、本発明に用いられる光触媒について説明する。本発明に用いられる光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができる。また半導体以外としては、金属錯体や銀なども用いることができる。本発明においては、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
このような光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したラジカルが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このラジカルや活性酸素種が光触媒含有層内のオルガノポリシロキサンに作用を及ぼし、その表面の液体との接触角を低下させるものであると考えられる。
【0064】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0065】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0066】
また光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0067】
本発明に用いられる光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0068】
b.オルガノポリシロキサン
次に、本発明に用いられるオルガノポリシロキサンについて説明する。本発明に用いられるオルガノポリシロキサンは、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、光触媒含有層表面の液体との接触角を低下させることが可能なものであれば、特に限定されるものではなく、特に主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましい。具体的には、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0069】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基、クロロアルキル基、イソシアネート基、もしくはエポキシ基、またはこれらを含む有機基であり、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでXで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。また、Yで示される有機基全体の炭素数は1〜20の範囲内、中でも5〜10の範囲内であることが好ましい。
【0070】
これにより、上記光触媒含有層を形成した際に、オルガノポリシロキサンを構成するYにより表面を撥液性とすることができ、またエネルギー照射に伴う光触媒の作用により、そのYが分解等されることによって、親液性とすることが可能となるからである。
【0071】
また、特に上記オルガノポリシロキサンを構成するYがフルオロアルキル基であるオルガノポリシロキサンを用いた場合には、エネルギー照射前の光触媒含有層を、特に撥液性の高いものとすることができることから、高い撥液性が要求される場合等には、これらのフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンとしては、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、例えば特開2001−074928に記載されているようなものを用いることができる。
【0072】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0073】
【化1】

【0074】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0075】
上記オルガノポリシロキサンは、光触媒含有層中に、5重量%〜90重量%、中でも30重量%〜60重量%程度含有されることが好ましい。
【0076】
c.その他の物質
また、本発明に用いられる光触媒含有層中には、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。またさらに、バインダとして、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有する、有機置換基を有しない、もしくは有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、具体的にはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合したものを含有させてもよい。
【0077】
またさらに、上記オルガノポリシロキサンの濡れ性を変化させる機能を補助するため等に、エネルギー照射に伴い、分解される分解物質を含有させてもよい。このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の液体との接触角を低下させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0078】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0079】
d.フッ素の含有
また、本発明においては、光触媒含有層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていることが好ましい。これにより、エネルギーを照射することにより、後述するように容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0080】
したがって、このような光触媒含有層を用いた場合は、エネルギーを照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、インクジェット法により、着色層形成用塗工液を塗布した場合に、高精細な着色層を形成することが可能となるからである。
【0081】
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下である。
【0082】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親液性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有層に、例えば着色層形成用塗工液を付着させることにより、フッ素含有量が低下した親液性領域である開口部に正確に着色層を形成することが可能となり、精度の良いカラーフィルタを得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0083】
このような光触媒含有層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0084】
また、本発明においては、光触媒として上述したように二酸化チタンが好適に用いられるが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、好ましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有層表面に含まれていることが好ましい。
【0085】
フッ素(F)が光触媒含有層にこの程度含まれることにより、光触媒含有層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーを照射してフッ素含有量を減少させた開口部における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られるカラーフィルタの精度を向上させることができるからである。
【0086】
さらに、このようなカラーフィルタにおいては、エネルギーをパターン照射して形成される親液領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
【0087】
光触媒含有層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、カラーフィルタを形成するためには十分な親液性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である遮光部上の撥液性との濡れ性の差異により、カラーフィルタを精度良く形成することが可能となり、利用価値の高いカラーフィルタを得ることができる。
【0088】
e.光触媒含有層の形成方法
上述したような光触媒含有層の形成方法としては、上記光触媒とオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を上記遮光部が形成された基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより、光触媒含有層を形成することができる。なお、上記いずれのコート法を用いた場合であっても、コーティング後の乾燥は、風乾によるものではなく、自然乾燥を行った後、残りの溶媒を赤外線等のヒート乾燥で形成することが好ましい。これにより、感度の安定性や感度自体を向上させることができる、という利点を有するからである。
【0089】
f.開口部を親液性領域とする方法
次に、上記光触媒含有層にエネルギーを照射して、上記開口部を親液性領域とする方法について説明する。上述したように上記光触媒含有層は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって液体との接触角が低下する。したがって、上記光触媒含有層が形成された側と反対側の基材側からエネルギーを照射することにより、開口部のみにエネルギーを照射して光触媒含有層の液体との接触角を低下させることができ、上記遮光部が形成されている領域においては、光触媒含有層の液体との接触角が変化しないものとすることができるのである。
【0090】
ここで、上記光触媒含有層に照射されるエネルギーとしては、上記光触媒含有層の液体との接触角を低下させることが可能なエネルギーを照射する方法であれば、その方法は特に限定されるものではない。本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層表面の液体との接触角を低下させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0091】
通常このようなエネルギー照射に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは150nm〜380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように光触媒含有層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0092】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。また、上述したような光源を用い、エネルギーを照射する方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてエネルギーを照射する方法を用いることも可能である。
【0093】
なお、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、光触媒含有層中の光触媒の作用により光触媒含有層表面の液体との接触角を低下させるのに必要な照射量とする。
【0094】
この際、光触媒含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、より感度を上昇させることが可能となり、効率的に光触媒含有層表面の液体との接触角を低下させることができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0095】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0096】
以下、本発明について、実施例を通じてさらに詳述する。
(実施例1)
<遮光部の作製>
無アルカリガラスにネガ型ブラックレジスト(DN83、東京応化工業製)を1μmの厚さにスピンコートし、90℃で3分間プリベークした。このブラックレジスト上に、透明マスク基板上に縦横に互いに間隔をおいてマトリックス配列で配列された多数の矩形の遮光パターン(短辺=150μm、長辺=300μm)を備え、かつ上記長辺に隣接する線状遮光部用パターン(開口幅20μm)と、上記短辺に隣接し、上記線状遮光部用パターンを連結する連結遮光部用パターン(開口幅20μm)とを有する階調フォトマスクを、露光ギャップが75μmとなるように配置した。なお、上記連結遮光部用パターンは、両端から線幅中心にかけてi線(波長365mmの光)の透過率が100%から50%に変化するような開口パターンとした。
上記階調フォトマスク側から、光源としてi線(波長365mmの光)を主に発する高圧水銀ランプを用いて、露光量50mJ/cmで露光を行った。その後アルカリ現像液(KOH0.05wt%水溶液)に40秒間浸漬後リンスした。次いで200℃で30分間ポストベークすることにより、基材上に連結遮光部および連結遮光部からなる遮光部が形成された。
【0097】
<遮光部の形状評価>
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、前記連結遮光部および前記線状遮光部の断面形状を評価した結果、前記連結遮光部の側面と前記基材表面とがなす角は30°であり、前記線状遮光部の側面と前記基材表面とがなす角は50°であった。また、このとき前記連結遮光部の最大膜厚(1μm)の50%以下となる薄膜領域の幅は1.73μmであり、連結遮光部線幅(20μm)の8.66%であった。
【0098】
<光触媒含有層の形成>
イソプロピルアルコール30gとフルオロアルキルシランが主成分であるMF−160E(トーケムプロダクツ(株)製)0.4gとトリメトキシメチルシラン(東芝シリコーン(株)製、TSL8113)3gと、光触媒である酸化チタン水分散体であるST−K01(石原産業(株)製)20gとを混合し、100℃で20分間撹拌した。これをイソプロピルアルコールにより3倍に希釈し光触媒含有層用組成物とした。
上記光触媒含有層形成用組成物を上記遮光部が形成された基材上にスピンコーターにより塗布し、室温乾燥を5分行った後、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、透明な光触媒含有層(厚み0.2μm)を形成した。得られた光触媒含有層を表面粗さ測定装置(DEKTAK STYLUS PROFILERS)を用いて表面粗さを測定した結果、15nm〜60nmの凹凸を有する層であった。
【0099】
<露光による親液性領域の形成の確認>
この光触媒含有層に、マスクを介して水銀灯(波長365nm)により70mW/cmの照度で50秒間パターン露光を行った。非露光部及び露光部との液体との接触角を測定したところ、非露光部においては、表面張力30mN/mの液体(純正化学株式会社製、エチレングリコールモノエチルエーテル)との接触角が、30度であった。また露光部では、表面張力50mN/mの液体(純正化学株式会社製、ぬれ指数標準液No.50)との接触角が、7度であった。なお、上記液体との接触角は、接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)した値である。このように、上記光触媒含有層は、露光部が非露光部と比較して親液性領域となり、露光部と非露光部との濡れ性の相違によるパターン形成が可能なことが確認された。また、露光部および非露光部の表面を飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)で分析した結果、非露光部の表面のみに多量のフッ素成分が存在することが確認された。
【0100】
<着色層の形成>
次に、上述した遮光部上に形成された光触媒含有層に、開口線幅150μm、遮光部20μmのライン&スペースを有するフォトマスクを、遮光部が線状遮光部上となるように配置し、上記と同条件で露光を行い、着色層を形成する領域を親液性(着色層用露光部)とした。次に、RGB用各インクジェット装置を用いて、顔料5重量部、溶剤30重量部、アクリル酸/ベンシルアクリレート共重合体70重量部、2官能エポキシ含有モノマー5重量部を含むRGB各色の熱硬化型ポリエポキシアクリレートインク(粘度18cp)を、親液性とした着色層用露光部に付着させ、150℃、30分加熱処理を行い硬化させた。ここで、赤色、緑色、および青色の各着色層形成用塗工液について、溶剤としてはポリエチレングリコールモノメチルエチルアセテート、顔料としては、赤色インクについてはC. I. Pigment Red 177、緑色インクについてはC. I. Pigment Green 36、青色インクについてはC. I. Pigment Blue 15+ C. I. Pigment Violet 23をそれぞれ用いた。これにより、線幅150μm、遮光部20μmのRGBストライプカラーフィルターが得られた。また、得られたRGBストライプカラーフィルターを光学顕微鏡で観察した結果、連結遮光部近傍においてもムラや白抜けが無いことを確認できた。
【0101】
(実施例2)
実施例1と同様に、基材上に連結遮光部および連結遮光部からなる遮光部を形成した。続いて、下記条件にて上記遮光部が形成された基材を大気圧プラズマで処理し、遮光部のみに、フッ素化合物を導入した。フッ素化合物が導入された遮光部表面は、表面張力30mN/mの液体との接触角が27度(撥液性領域)であり、基材が露出している領域は、表面張力50mN/mの液体との接触角が7度以下(親液性領域)であった。
〈プラズマ照射条件〉
・導入ガス : CF …10(l/min.)
・電極と基板の間隔 : 2mm
・電源出力 : 200V−5A
・搬送速度 :0.25mm/min.
その後、実施例1と同様に、3色(RGB)の着色層を形成し、ストライプカラーフィルターを得た。得られたRGBストライプカラーフィルターを光学顕微鏡で観察した結果、連結遮光部近傍においてもムラや白抜けが無いことを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す平面図である。
【図2】本発明のカラーフィルタに用いられる連結遮光部の形状を説明するための説明図である。
【図3】本発明のカラーフィルタに用いられる連結遮光部の形状を説明するための説明図である。
【図4】本発明のカラーフィルタの一例を示す平面図である。
【図5】本発明のカラーフィルタに用いられる連結遮光部の形状を説明するための説明図である。
【図6】従来のカラーフィルタを説明するための説明図である。
【図7】従来のカラーフィルタを説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1 …線状遮光部
2 …連結遮光部
3 …着色層
4 …遮光部
5 …開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に複数本が所定の間隔をおいて等間隔に形成された線状遮光部および隣接する2本の前記線状遮光部間を所定の間隔をおいて連結する連結遮光部からなる遮光部と、各前記線状遮光部間に形成され、かつ前記連結遮光部を覆うように形成された着色層とを有するカラーフィルタであって、
前記連結遮光部は、前記連結遮光部の側面と前記基材表面とがなす角が、前記線状遮光部の側面と前記基材表面とがなす角より小さくなるように形成されていることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記連結遮光部の各端部から、前記連結遮光部の膜厚が前記連結遮光部の最大膜厚の50%となる部分までの薄膜領域の幅の合計が、連結遮光部線幅の1%〜50%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記基材および前記遮光部を覆うように、光触媒およびオルガノポリシロキサンを含有する光触媒含有層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
前記遮光部が、フッ素を含有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−20517(P2008−20517A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190139(P2006−190139)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】