説明

カラー画像形成体およびその画像形成方法

【課題】固有情報がカラー画像として再現され、かつ外部熱エネルギーに対する耐久性とシンナー等溶剤で除去されない耐性がある、偽造防止性に優れたカラー画像形成体とその画像形成方法の提供にある。
【解決手段】レーザービームによる熱処理で表面にブラックKの層が発現するレーザー記録媒体10上に、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKのカラー画像30が形成されているカラー画像形成体1において、前記イエローY、マゼンタM及びシアンCの3色の分解画像はインクジェットプリンター52で形成され、ブラックKの画像は、文字情報51とともにレーザーエングレービング装置53で発現されているカラー画像形成体1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像形成体およびその画像形成方法に関するものであり、さらに詳細には、セキュリティ性の高いカードやパスポートなどにカラー再現性に優れ、かつ耐久性と溶剤などに対する耐性があり、改ざん等に対する偽造防止性の高い顔写真等固有情報としてのカラー画像が形成されているカラー画像形成体およびその画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばカードやパスポートなどに溶剤に対する耐性があり、かつ偽造防止性の高い顔写真等固有情報が形成されているものが知られ、その固有情報としての画像が黒色一色で形成されているものが主流であったが、近年ではその殆どがカラー画像により形成されていて、よりセキュリティ性の高いものとなっている。
【0003】
上記黒色一色で形成されているものとして、赤外線吸収剤と感熱発色層を組合せによる光記録媒体がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、上記黒色一色で形成される他の方法として、基材の表面に無色または淡色のロイコ染料と、このロイコ染料と熱時反応して発色させる顕色剤とを主成分とする感熱記録層を有する感熱記録媒体上にレーザーのヒートモードを利用して黒色に発色せしめる記録方式がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開昭49−85153号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報 しかし、上記感熱記録層を有する光または感熱記録媒体では、溶剤等に対する耐性はあるが、記録用以外の熱エネルギーによって必要以外の部分まで発色したりする耐久性に欠け、さらにカラーとして再現することが不可能であった。
【0006】
さらにまた、上記黒色一色で形成される他の方法として、レーザーのヒートモードを利用し、基材の表面をエングレービング(刻み込み)処理し内面の黒色層を発現せしめるエングレービング記録方式がある(例えば、データカード社のIDカードのカタログ参照。)。
【0007】
しかしながら、上記黒色一色で形成されるエングレービング(刻み込み)処理方式による記録媒体では、シンナーなどの溶剤に対する耐性と記録用以外の熱エネルギーに対する耐久性はあるが、固有情報(顔写真等)をより的確に再現するカラー画像の形成は不可能であった。
【0008】
一方、上記問題の固有情報(顔写真等)をカードやパスポートなどにカラー画像を施す方法として、インクジェット用インクをノズルから噴射して直接カラー画像を形成するインクジェット方式がある。
【0009】
さらにまた、固有情報(顔写真等)をカードやパスポートなどにカラー画像を施す他の方法として、感熱カラーリボンを介してサーマルヘッドによりカラー画像を熱転写する感熱転写方式がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
以下に、上記先行技術文献を示す。
【特許文献3】特開平2−153791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の、すなわちカラー画像を熱転写する感熱転写方式やインクを直接噴射してカラー画像を形成するインクジェット方式のいずれにおいても、溶解力のあるシンナーによりカラー画像を除去し、他のカラー画像に置き換えるなどで偽造(改ざん)されるという問題点があった。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、顔写真などの固有情報がカラー画像として再現され、かつ外部の熱エネルギーに対する耐久性とシンナー等溶解力のある溶剤で除去されない耐性がある、偽造(改ざん)防止性に優れたカラー画像形成体およびその画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、レーザービームによる処理で黒色層が発現する記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの画像の合成でなるカラー画像が形成されているカラー画像形成体において、前記イエロー、マゼンタおよびシアンの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像は感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式にて形成され、前記ブラックの画像はレーザービームで発現する黒色層で形成されていることを特徴とするカラー画像形成体としたものである。
【0014】
また、請求項2の発明では、前記レーザービームは、YAGもしくはダイオードレーザーであることを特徴とする請求項1記載のカラー画像形成体としたものである。
【0015】
また、請求項3の発明では、前記請求項1乃至2のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法であって、レーザービームによる処理で表面に黒色層が発現する記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの画像の合成でなるカラー画像を形成するカラー画像形成体の画像形成方法において、前記イエロー、マゼンタおよびシアンの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像を感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式で形成し、該3色もしくは4色の画像上に、前記ブラックの画像をレーザービームの照射で表面に黒色層を発現せしめてカラー画像を形成することを特徴とするカラー画像形成体の画像形成方法としたものである。
【0016】
また、請求項4の発明では、前記請求項1乃至2のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法であって、レーザービームの処理で表面に黒色層が発現する記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの画像の合成でなるカラー画像を形成するカラー画像形成体の画像形成方法において、前記ブラックの画像をレーザービームの照射で表面に黒色層を発現せしめて形成し、該ブラックの画像上に、前記イエロー、マゼンタおよびシアンの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像を感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式で形成せしめてカラー画像を形成することを特徴とするカラー画像形成体の画像形成方法としたものである。
【0017】
さらにまた、請求項5の発明では、前記レーザービームは、YAGもしくはダイオードレーザーであることを特徴とする請求項3乃至4のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0019】
即ち、上記請求項1に係る発明によれば、レーザービームの処理で黒色層が発現する記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの画像の合成でなるカラー画像が形成されているカラー画像形成体において、前記イエロー、マゼンタおよびシアンの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像は感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式にて形成され、前記ブラックの画像はレーザービームの処理で発現する黒色層で形成されているので、たとえ溶解力のあるシンナー等の溶剤でカラー画像を除去しようとしても、シンナー等の溶剤に耐性のある黒色層の発現でなるブラックの画像は除去されずに残り、よって固有情報としてのカラー画像の改ざんなどの偽造防止性に優れるカラー画像形成体とすることができる。
【0020】
また、上記請求項2に係る発明によれば、上記レーザービームは、YAGもしくはダイオードレーザーであるので、比較的小型の装置で大きな熱エネルギーを発する装置とすることができ、この装置によりカラー画像のブラックの情報のみを即座に取り込むオンデマンド型とすることができ、かつこの画像形成に使用するYAGもしくはダイオードレーザー以外の外部熱エネルギーでは上記記録媒体の黒色層が発現することがない耐久性に優れたカラー画像形成体とすることができる。
【0021】
また、上記請求項3に係る発明によれば、上記請求項1乃至2のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法において、レーザービームの処理で表面に黒色層が発現する記録媒体上に、前記イエロー、マゼンタおよびシアンの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像を感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式で形成することによつて、固有情報としてのカラー再現性に優れるカラー画像が記録媒体上にオンデマンド型として形成され、該3色もしくは4色の画像上に、前記ブラックの画像をレーザービームの照射で黒色層を発現せしめて溶剤耐性のあるブラックの画像とすることによって、たとえ溶解力のあるシンナー等溶剤でカラー画像を除去しようとしても、溶剤に耐性のあるブラックの画像のみが除去されずに残り、よって顔写真等固有情報としてのカラー画像の改ざんなどが不可能な偽造防止性に優れるカラー画像形成体の形成方法とすることができる。
【0022】
また、上記請求項4に係る発明によれば、上記請求項1乃至2のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法において、レーザービームの処理で表面に黒色層が発現する記録媒体上に、前記レーザービームを照射して溶解力のあるシンナー等溶剤に溶解されない耐久性のある黒色層でブラックの画像を形成し、該ブラックの画像上に感熱リボン転写方式もしくはインキジェット方式によってイエロー、マゼンタおよびシアンの3色もしくはブラックを加えた4色のカラー画像を形成することによって、固有情報としての再現性に優れるカラー画像が記録媒体上にオンデマンド型として形成され、たとえ溶解力のあるシンナー等溶剤でカラー画像を除去しようとしても、溶剤などに耐性のある黒色層でなるブラックの画像のみが除去されずに残り、よって顔写真等固有情報としてのカラー画像の改ざんなどが不可能な偽造防止性に優れるカラー画像形成体の形成方法とすることができる。
【0023】
さらにまた、上記請求項5に係る発明によれば、上記レーザービームを、YAGもしくはダイオードレーザーとすることによって、比較的小型の装置で大きな熱エネルギーを発する装置とすることができ、この装置によりカラー画像のブラックの情報のみを即座に取り込むオンデマンド型の装置とすることができ、かつこの画像形成に使用する炭酸ガスレーザー以外の外部熱エネルギーでは上記記録媒体の黒色層が発現することがない耐久性に
優れたカラー画像形成体の画像形成方法とすることができる。
【0024】
従って本発明は、セキュリティ性の高いカードやパスポートなどにカラーの再現性に優れ、かつ溶剤等に耐性があり、外部エネルギーにも耐久性があり、偽造防止性に優れる顔写真等固有情報としてのカラー画像が形成されているカラー画像形成体およびその画像形成方法として、優れた実用上の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
本発明のカラー画像形成体は、例えば図1の側断面を表す概略図に示すように、白色塩化ビニル(PVC)等でなるコア層(11)上に黒色インキ層(12a)を下部に有するレーザー受像層(12)が積層され、このレーザー受像層(12)上に透明保護層(13)が積層されているレーザー記録媒体(10)を用いるもので、このレーザー記録媒体(10)は、最表面の透明保護層(13)上からのレーザービーム(20)の照射によって、レーザー受像層(12)がエングレービング加工(刻み込み)され、このレーザー受像層(12)を構成する黒色インキ層(12a)が発現されて黒色画像が形成されるようになっている。
【0027】
上記請求項1に係る発明は、図1に示すようなレーザービーム(20)の熱処理、すなわちエングレービング加工(刻み込み)で、レーザー受像層(12)を構成する黒色インキ層(12a)を発現するレーザー記録媒体(10)上に、例えば、図2の拡大模式図に示すように、原画であるカラー画像の色分解成分であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の色分解成分(画像)の合成でなるカラー画像(30)が形成されているカラー画像形成体(1)において、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の3色分解画像は、感熱リボン転写方式で形成され、ブラック(K)の色分解画像は、図1に示すレーザービーム(20)の照射でレーザー受像層(12)を構成する黒色インキ層(12a)が発現されてカラー画像(30)が形成されているカラー画像形成体(1)とするものである。
【0028】
上記イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の3色分解画像を、インクジェット方式で形成されたものとすることもでき、さらにこの3色分解画像にブラック(K)を加えた4色分解画像を、上記のように感熱リボン転写方式あるいはインクジェット方式で形成されたものとすることもできる。但しこの場合のブラック(K)の分解画像はレーザービームによる黒色インキ層(12a)の発現によるものと感熱リボン転写方式あるいはインクジェット方式によるものとダブルことになる。
【0029】
上記のようなカラー画像形成体(1)とすることによって、例えば溶解力のあるシンナーでカラー画像(30)を除去しようとすると、感熱リボン転写方式あるいはインクジェット方式で形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の3色分解画像あるいはこれにブラック(K)を加えた4色分解画像は、比較的簡単に除去されるが、レーザービームによる黒色インキ層(12a)の発現によるブラック(K)の分解画像はシンナーなどの溶剤に耐性があるので溶解されず残り、よってカラー画像(30)の改ざん行為(偽造)を防止できるカラー画像形成体(1)とすることができる。
【0030】
また、上記請求項2に係る発明では、図1に示すようなレーザービーム(20)は、熱エネルギーを発するYAGもしくはダイオードレーザーとするもので、このYAGもしくはダイオードレーザーとすることによって、比較的小型で大きな熱エネルギーを発する画像形成装置とすることができ、よって図2に示すようなイエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の3色分解画像もしくはブラック(K)を加えた4色分解画像を形成
する感熱リボン転写方式あるいはインクジェット方式のプリンターとの整合性が取り易くすることができる。
【0031】
さらに上記比較的小型のYAGもしくはダイオードレーザーとすることによって、4色分解画像のうちのブラック(K)の分解画像の情報のみを即座に取り込む所謂オンデマンド型の画像形成装置とすることができる。
【0032】
さらにまた、比較的大きな熱エネルギーを発するYAGもしくはダイオードレーザーとすることによって、このブラック(K)の分解画像の形成に使用するYAGもしくはダイオードレーザー以外の外部熱エネルギーでは黒色インキ層(12a)が発現することがなく、特に、図1に示すようなレーザー記録媒体(10)に3色もしくは4色の分解画像を転写する感熱リボン転写方式に使用するサーマルヘッドでは発色しないという耐久性にも優れたカラー画像形成体(1)とすることができる。
【0033】
また、上記請求項3に係る発明では、例えば図3(a)のブロック図に示すように、カラー画像形成体の画像形成方法であって、まず固有情報としての顔写真のカラー原画情報(50)を色分解して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の分解画像情報とする。
【0034】
上記イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の分解画像情報をインクジェットプリンター(52)に送り込み、ブラック(K)の分解画像情報をレーザーエングレービング装置(53)に送り込む。
【0035】
一方氏名、生年月日、カード番号等文字情報データ(51)をブラック(K)の分解画像情報とともにレーザーエングレービング装置(53)に送り込む。
【0036】
上記3色の分解画像情報が送り込まれたインクジェットプリンター(52)より、図3(a)および図3(b)の側断面図に示すようにこのイエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の3色分解画像情報をレーザー記録媒体(10)上に吐出したインクジェットインクで3色のカラー画像を形成する。
【0037】
次いで上記で得られた3色の画像上からレーザーエングレービング装置(53)のレーザービーム(20)を照射してブラック(K)の分解画像情報と文字情報データ(51)を黒色に発色させカラー画像(30)と文字情報(31)を形成するカラー画像形成体(1)の画像形成方法である。
【0038】
さらにまた、上記請求項3に係る発明では、例えば図4(a)のブロック図に示すように、固有情報としての顔写真カラー原画情報(50)が色分解されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の分解画像情報ともインクジェットプリンター(52)に送り込み、さらにブラック(K)の分解画像情報をレーザーエングレービング装置(53)に送り込むようにすることもでき、得られたカラー画像形成体は、図4(b)の側断面図に示すように、インクジェットプリンターで得られたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のカラー画像に加え、レーザーエングレービング装置(53)のレーザービーム(20)の照射で得られたブラック(K)の分解画像が加えられ、僅かに黒色成分が多いカラー画像となるが特に問題とはならず、逆にコントラストのある画像とすることもできる。
【0039】
上記インクジェットプリンター(52)に代え、例えば図6の斜視図に示すように、支持体(15a)の長さ方向(P)に転写可能なイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)(場合によってはブラック(K)も含む)の各領域が交互に形成された感熱転写リ
ボン(15)を、例えば図5に示すように、レーザー記録媒体(10)であるカードに近接させながらサーマルヘッド(23)により選択的に転写させることにより、カラー画像を形成する感熱転写プリンター(5)とすることができる。
【0040】
上記感熱転写プリンター(5)についてさらに詳しく説明すると、図5(b)に示すように、カード形状レーザー記録媒体(10)をスライドステージ駆動手段(500)により順、逆方向に移動可能スライドステージ(24)に保持固定する。そのスライドステージ(24)上部には、転写用のサーマルヘッド(23)が設けられている。続いて図3(a)に示すカラー原画(50)と文字情報(51)を一旦(カラー画像)データ処理装置(700)において、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色の画像に分解・抽出し、各色の画像データと感熱転写リボン(15)の各色の領域を同期させながら、転写用のサーマルヘッド(23)により選択的に転写する。これを、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色について(すなわち4回)行うことにより1つのカラー画像を形成するものである。
【0041】
また、上記請求項4に係る発明では、図3(a)および図3(b)に示すように、レーザーエングレービング装置(53)のレーザービーム(20)をレーザー記録媒体(10)上に照射してブラック(K)の分解画像情報とブラック(K)の文字情報(51)を黒色に発色させる。
【0042】
続いて上記で得られたブラック(K)の分解画像情報とブラック(K)の文字情報(51)上に3色の分解画像情報が送り込まれたインクジェットプリンター(52)により、図3(a)および図3(b)の側断面図に示すようにこのイエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の3色分解画像情報をレーザー記録媒体(10)上に吐出したインクジェットインクで3色のカラー画像を形成し、カラー画像(30)とするカラー画像形成体(1)の画像形成方法である。すなわち上記請求項3の画像形成方法とは、インクジェットプリンター(52)による3色の分解画像の形成とレーザーエングレービング装置(53)のレーザービーム(20)を照射によるブラック(K)の分解画像情報と文字情報(51)を黒色に発色させる順序を逆にした方法である。
【0043】
以下に本発明のカラー画像形成体およびその画像形成方法に使用する装置および材料等について説明する。
【0044】
まず本発明のカラー画像形成体に使用するレーザー記録媒体(10)について、そのコア層(11)としては、紙類でも構わないが、カード類を想定するとポリカーボネート(PC)が推奨素材であり、この他ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET類中で非晶質(非結晶性)の熱可塑性のあるポリエステル(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂などが好適な素材として挙げられる。また、この上に積層されるレーザー受像層(12)としては、下部に赤外線吸収素材である黒色インキ層(12a)が形成されている白色系のバインダーで構成されている。さらに最表面にレーザー受像層(12)を保護する透明保護層(13)としては、厚み12μ程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく、接着剤を介して積層されている。
【0045】
また、上記レーザー受像層(12)を刻設するレーザービームとしては、YAGもしくはダイオードレーザーとしたもので、例えばそのYAGレーザーとしては、10μm以下の小発光点で出力100mW程度のレーザービームを発するものが好適である。
【0046】
また、インキジェットプリンター(52)に使用するインクは、有色顔料10%程度を1リットルの水とエマルジョン樹脂でなる溶媒に分散させたものが挙げられ、その有機顔料としては、水と親和性のよいものが好ましく、具体的には、ブラック(K)用として、
例えばファーネスブラック、アセチレンブラック等カーボンブラックやアニリンブラック等有機顔料が挙げられ、他の各色用として、例えばピグメントイエロー、ジアゾイエロー(以上イエロー(Y)用)、ブリリアントカーミン6B、キクナクリドンマゼンタ(以上マゼンタ(M)用)、フタロシアニンブルーG、E(以上シアン(C)用)等およびこれら混合が挙げられ、これら顔料の粒径は、インクジェット方式に使用されるため、ノズルの詰まり防止を考慮すると、また着色性やインキの経時的な分散安定性を考慮すると小さい方が好ましく、平均粒径が10nm〜200nm、最大粒径が500nm以下のものが好ましく用いられる。
【0047】
また、上記インクジェット用インキを構成するエマルジョン樹脂としては、例えばポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール等数多くの樹脂が挙げられ、上記有色顔料の基材に対する決着材の役割も果たすものである。
【0048】
なお、インクジェット方式によるカラー画像形成には、多孔質の体質顔料が分散しているインキ受理層を設けた方が画像の定着(接着)性やシャープ性の点で好ましく、そのインキ受像層を構成する多孔質の体質顔料としては、例えば、アルミナ白、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウムなどの白色顔料が挙げられ、これら体質顔料10〜20重量%、好ましくは10重量%程度の少量を、例えばオフセット用メジウム(ロジン変性フェノール樹脂、大豆油、亜麻仁油、鉱物油等ビヒクルにドライヤーや酸化抑制剤等の添加剤でなる)に分散させたオフセットインキとして印刷し、厚さ1〜2μm程度のインキ受理層とすることができる。上記オフセット用メジウムに代え、グラビア用メジウム、あるいはスクリーン印刷用、ロールコート用等とし、それぞれの方式で印刷または塗工することもできる。
【0049】
また、感熱転写プリンター(5)に使用する感熱転写リボン(15)を構成する支持体(15a)としては、加熱転写における加熱処理に対して耐熱性のある合成樹脂フィルムを使用することが望ましく、その厚さは、2〜100μm、好ましくは9〜50μm程度のフィルムが使用され、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、不飽和ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのフィルムが好ましく使用される。
【0050】
また、上記感熱転写リボン(15)を構成する転写可能なイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各転写膜でなる各領域を形成する顔料インキの組成としては、主にインキバインダー用樹脂と各有色顔料および揮発性有機溶剤からなるものが使用され、微量の染料や体質顔料、助材等が含まれている。
【0051】
上記転写膜を形成する顔料インキの顔料は、上記インクジェット用インクと同様のものが使用される。またこの顔料インキのバインダー樹脂としては、モノマー共重合タイプのアクリル樹脂(熱硬化性アクリル樹脂)、熱可塑性アクリル樹脂(ポリメチルメタアクリレートなど)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、不飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなどの合成樹脂、ポリメタクリル酸エステル、尿素・ホルマリン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂などが挙げられ、また、有機系の顔料や染料を併用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のカラー画像形成体を構成する記録媒体の一実施の形態を側断面で表した説明図である。
【図2】本発明のカラー画像形成体の一実施の形態を平面で表した模式図である。
【図3】本発明のカラー画像形成体の画像形成方法の一実施の形態を説明するもので、(a)は、そのブロック図であり、(b)は、得られたカラー画像形成体の断面図である。
【図4】本発明のカラー画像形成体の画像形成方法の他の一実施の形態を説明するもので、(a)は、そのブロック図であり、(b)は、得られたカラー画像形成体の断面図である。
【図5】本発明のカラー画像形成体の画像形成方法の一事例を示すもので、感熱転写プリンターの説明図である。
【図6】図5に示す感熱転写プリンターに使用する感熱転写リボンの斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1‥‥カラー画像形成体
5‥‥感熱転写プリンター
10‥‥レーザー記録媒体
11‥‥コア層
12‥‥レーザー受像層
12a‥‥黒色インキ層
15‥‥感熱転写リボン
15a‥‥支持体
20‥‥レーザービーム
21‥‥巻き取りロール
22‥‥巻き出しロール
23‥‥サーマルヘッド
24‥‥スライドステージ
30‥‥カラー画像
31‥‥文字情報
50‥‥カラー原画情報
51‥‥文字情報データ
52‥‥インクジェットプリンター
53‥‥レーザーエングレービング装置
400‥‥ロール駆動手段
500‥‥スライドステージ駆動手段
700‥‥データ処理装置
Y‥‥イエローの分解画像、領域
M‥‥マゼンタの分解画像、領域
C‥‥シアンの分解画像、領域
K‥‥フラックの分解画像、領域
P‥‥支持体の長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザービームの処理で黒色層が発現する記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、ブルーおよびブラックの画像の合成でなるカラー画像が形成されているカラー画像形成体において、前記イエロー、マゼンタおよびブルーの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像は感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式にて形成され、前記ブラックの画像はレーザービームの処理で発現する黒色層で形成されていることを特徴とするカラー画像形成体。
【請求項2】
前記レーザービームは、YAGもしくはダイオードレーザーであることを特徴とする請求項1記載のカラー画像形成体。
【請求項3】
前記請求項1乃至2のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法であって、レーザービームの処理で黒色層が発現する記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、ブルーおよびブラックの画像の合成でなるカラー画像を形成するカラー画像形成体の画像形成方法において、前記イエロー、マゼンタおよびブルーの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像を感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式で形成し、該3色もしくは4色の画像上に、前記ブラックの画像をレーザービームの照射で表面に黒色層を発現せしめてカラー画像を形成することを特徴とするカラー画像形体の画像形成方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至2のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法であって、レーザービームの処理で黒色層が発現する記録媒体上に、イエロー、マゼンタ、ブルーおよびブラックの画像の合成でなるカラー画像を形成するカラー画像形成体の画像形成方法において、前記ブラックの画像をレーザービームの照射で表面に黒色層を発現せしめて形成し、該ブラックの画像上に、前記イエロー、マゼンタおよびブルーの3色もしくはそれにブラックを加えた4色の画像を感熱リボン転写方式もしくはインクジェット方式で形成せしめてカラー画像を形成することを特徴とするカラー画像形成体の画像形成方法。
【請求項5】
前記レーザービームは、YAGもしくはダイオードレーザーレーザーであることを特徴とする請求項3乃至4のいずれか1項記載のカラー画像形成体の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−123174(P2006−123174A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310479(P2004−310479)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】