説明

カラー画像表示装置用のフェイスパネル、該フェイスパネルを用いたカラー画像表示装置用のパネル、および、該パネルが搭載されたカラー画像表示装置

【課題】本発明は、白色輝度を従来よりも低下させることなくコントラスト比を改善することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、透明な基板の上に異なった複数の色を発光する複数の蛍光体層が設けられ、透明な基板と蛍光体層との間に、発光の透過率を調整する透過率調整層を有するカラー画像を表示する画像表示装置用のフェイスパネルであって、透過率調整層が、可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能を有していることを特徴とするカラー画像表示装置用のフェイスパネルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像表示装置用のフェイスパネル、該フェイスパネルを用いたカラー画像表示装置用のパネル、および、該パネルが搭載されたカラー画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブラウン管と呼ばれる、陰極線管(Cathode Ray Tube:以下、CRTと略す)を用いた画像表示装置は、装置の重量、あるいは、CRTの大型化に対する技術的な問題等があり、画面の大型化に対する要求への、対応が困難な状態にある。このため、現在の画像表示装置は、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:以下、FPDと略す)とよばれる平面型のパネルを用いた画像表示装置が主流である。FPDを用いた画像表示装置として液晶ディスプレイ、及び、プラズマディスプレイ等が現在の主流である。
【0003】
しかしながら、液晶ディスプレイ、及び、プラズマディスプレイは、従来のブラウン管と呼ばれる、陰極線管(Cathode Ray Tube:以下、CRTと略す)を用いた画像表示装置の画質や応答速度に比べると劣っている部分があり、更なる改善が要求されている。
【0004】
FPDの画質や応答速度を改善するものとして、CRTと動作原理が同一な、フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display:以下、FEDと略す)がある。
【0005】
カラー画像表示装置の画像表示品質の重要な特性として、表示画像の明るさという特性がある。こ表示画像の明るさという特性は、一般に、輝度の高さとコントラスト比の高さで評価される。ここでコントラスト比とは、白(最大輝度)と黒(最小輝度)の輝度比である。黒の輝度は、画面からの外光の反射により影響されるため、以下、コントラスト比と称する場合は、外光が画面に入射される条件(明所)でのコントラスト比である。
【0006】
明所でのコントラスト比は、150ルックスの外部照明を画面に対し、45度の角度で照射した条件で測定されている。以下、コントラスト比といった場合の測定は上述の条件で測定されたものとする。
【0007】
画面に表示される画像の、観察者に対して視認される明るさやコントラスト比は、単に表示画像の輝度の高さに依存するだけではなく、その表示画面自体の表面の明るさにも依存する。つまり、画面の無表示時における反射光や蛍光体スクリーン自体の視認された明るさなどの総和と、蛍光体スクリーンで発光した表示画像の輝度との兼ね合いで、観察者に対して視認される表示画像の明るさやコントラスト比が定まる。
【0008】
そして、このような表示画像の明るさやコントラスト比を向上させることで、カラー画像表示装置の画像表示品質を向上させることができる。
【0009】
FEDのコントラスト比を改善する場合、動作原理が同一であるCRTの技術を用いることができると思われる。
【0010】
CRTのコントラスト比を改善するために、基板と蛍光体層との間に、該蛍光体の発光する光を選択的に透過する機能を有している、蛍光体と同じ色のカラーフィルターを用いる技術が、特許文献1、3に開示されている。また、プラズマディスプレイではあるがカラーフィルターの製造方法等が特許文献2に開示されている。更に、特許文献4には、CRTのコントラスト比を改善するために、基板の表面にフィルターを設ける技術が開示されている。
【0011】
特許文献1には、平均粒径が0.005μm〜0.07μmの顔料粒子からなる膜厚が15nm〜250nmのカラーフィルターが開示されている。
【0012】
また、特許文献2では、蛍光体と基板との間に設けたカラーフィルター以外に、基板の蛍光体が形成された側(基板の内面)と対向する側(基板の外面)に外面フィルター形成する技術が開示されている。
【0013】
特許文献2では、カラーフィルターの蛍光体層からの発光の内、最大発光スペクトル波長の±20nmの範囲の波長の光に対する透過率が、波長400ないし650nmの光で上記範囲以外の波長の光に対する透過率に比較して高く形成されている。
【0014】
外面フィルターは、カラーフィルターの光吸収性を補完するフィルターで、3色の蛍光体層の最大発光スペクトル波長の±20nmの範囲以外の所定波長帯域に最大吸収を有するものである。
【0015】
特許文献2では、0.5〜50重量部の無機顔料と、アクリル系樹脂、アクリル共重合樹脂、ポリカルボン酸類及び芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、アンモニウム塩又はアミン塩からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤と、水若しくは水と相溶性のある溶剤とを含む顔料分散液組成物が開示されている。更に、該顔料分散液組成物を用いたカラーフィルターの製造方法が開示されている。
【0016】
基板の可視光に対する透過率を50%程度にするとコントラスト比をあげることができるが、白表示と黒表示とが接する部分でハレーションが生じる。これを防止するために、特許文献4に、基板と、該基板の蛍光体が設けられた面と対向する側に設けられたフィルターとの透過率を、各々60〜80%とする技術が開示されている。
【特許文献1】特開昭64−7457号公報
【特許文献2】特開平09−27284号公報
【特許文献3】特開平07−179711号公報
【特許文献4】特開2000−164145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献4に開示された技術の場合、透過率が下がるために、白色の輝度が低下してしまい、コントラスト比を効率よく改善することができない。
【0018】
これに対し、特許文献1〜3に開示されている、蛍光体と基板との間にカラーフィルターを設ける技術でも、コントラスト比は改善されるが、白色の輝度が低下することを避けることができない。
【0019】
本発明は、白色輝度を従来よりも低下させることなくコントラスト比を改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、透明な基板の上に異なった複数の色を発光する複数の蛍光体層が設けられ、透明な基板と蛍光体層との間に、蛍光体層からの発光の透過率を調整する透過率調整層を有するカラー画像表示装置用のフェイスパネルであって、
透過率調整層が、蛍光体層の、少なくとも、発光効率が相対的に高い蛍光体層に対し設けられ、且つ、
可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能を有していることを特徴とするカラー画像表示装置用のフェイスパネルである。
【0021】
又、透明な基板の上に異なった複数の色を発光する複数の蛍光体層が設けられ、透明な基板と蛍光体層との間に、蛍光体層からの発光の透過率を調整する透過率調整層を有するカラー画像表示装置用のフェイスパネルであって、
透過率調整層の透過率が、
赤(R)色、青(B)色、緑(B)色蛍光体の発光の3刺激値を、R:(RX,RY,RZ)、G:(GX,GY,GZ)、B:(BX,BY,BZ)とし、
赤(R)色、青(B)色、緑(B)色蛍光体に対応する透過率調整層の透過率の3刺激値を、R:(Trx、Try、Trz)、G:(Tgx、Tgy、Tgz)、B:(Tbx、Tby、Tbz)とし、
白色の発光の色度座標を、(xw、yw)とし、
pX=RX×Trx+GX×Tgx+BX×Tbx
pY=RY×Try+GY×Tgy+BY×Tby
pZ=RZ×Trz+GZ×Tgz+BZ×Tbz
とした場合、
−0.01<pX/(pX+pY+pZ)−xw<0.01
−0.015<pY/(pX+pY+pZ)−yw<0.015
を満足し、
透過率調整層が、可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能のみを有することを特徴とするカラー画像表示装置用のフェイスパネルである。
【0022】
更に、上述のカラー画像表示装置用のフェイスパネルと、基板上に電子放出素子が形成されたリアパネルと、をフェイスパネルに形成された蛍光体と、リアパネルに形成された電子放出素子とが対向するように配置し、貼り合わせられたことを特徴とするカラー画像表示装置用のパネル、および、該カラー画像表示装置用のパネルが搭載されたカラー画像表示装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来よりも輝度を下げることなく、コントラスト比を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
発明者は、蛍光体層と可視光波長領域で透明な基板との間に、可視光波長領域でほぼ一定の透過率を有するフィルター機能を持った、透過率調整層を導入することによりコントラスト比を改善することが出来ることを見いだした。
【0025】
可視光波長領域でほぼ一定の透過率を有するフィルター機能、および、該機能を有するフィルターを、以下、ニュートラルフィルター機能、および、ニュートラルフィルターと称する。
【0026】
すなわち、透過率調整層の透過率を、黒色顔料を含有するニュートラルフィルターにより調整することで、透過率調整層を介して基板に透過される蛍光体の発光スペクトルの形状が変化することがない。黒色顔料の含有率を変えることで、膜厚を変えることなく透過率を調整することができる。更に、透過率調整層が、可視光を選択的に透過する、いわゆる、カラーフィルター機能を持っていても良い。
【0027】
尚、黒色顔料の含有率を変える以外に、膜厚を変える、あるいは、黒色顔料にアルミナあるいはシリカを分散させて同様の結果を得ることもできる。
【0028】
この結果、透過率調整層を用いない状態と、透過率調整層を設けたときの白色の色度座標が同じになるように、透過率調整層の透過率を調整することが可能となる。これにより、透過率調整層による外光の吸収によりコントラスト比を改善することができることを見いだしたものである。
【0029】
すなわち、本発明の第1の実施形態は、透明な基板の上に異なった複数の色を発光する複数の蛍光体層が設けられ、透明な基板と蛍光体層との間に、蛍光体層からの発光の透過率を調整する透過率調整層を有するカラー画像表示装置用のフェイスパネルであって、
透過率調整層が、蛍光体層の、少なくとも、発光効率が相対的に高い蛍光体層に対し設けられ、且つ、可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能を有していることを特徴とするカラー画像表示装置用のフェイスパネルである。
【0030】
可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能は、黒色顔料を透過率調整層に含有させることで得られる。透過率は、黒色顔料の含有量を変えることで調整することができる。
【0031】
黒色顔料としては、酸化マンガン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、あるいは、チタンブラックを用いることが好ましい。更に、透過率調整層に、透過率調整層の上に形成された蛍光体からの発光を選択的に透過させる顔料を含有させても良い。
【0032】
透過率調整層は、透過率調整層が形成される領域が、黒色顔料を含有するパターンが形成された領域と、パターンが形成されていない領域とからなっていても良い。この場合、黒色顔料を含有するパターンが形成されていない領域に透過率調整層の上に形成された蛍光体からの発光を選択的に透過するフィルター機能を有する層が形成されていても良い。
【0033】
本実施の形態によれば、発光効率の高い蛍光体からなる蛍光体層のフィルターとして黒色顔料からなるニュートラルフィルター機能を有する透過率調整層を設けることが好ましい。この結果、白色表示の輝度を維持し、且つ、黒色顔料が混入された層が設けられたことにより、外光の反射率が低下しコントラスト比を向上させることが可能となる。
【0034】
透明な基板は、可視光波長領域で透明であれば、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス材料からなるガラス基板を使用できる。ガラス材料は、可視光波長領域で透明であれば上述の材料に限られるもではない得。尚、ガラス以外の材料であっても、可視光波長領域で透明であり、製造の条件で基板にダメージが入らない材料であれば、樹脂等の他の材料からなる基板であっても良い。
【0035】
以下、本発明の第1の実施の形態を、図5の蛍光体層と透過率調整層の構成を示す模式的断面図を用いて説明する。
【0036】
図5(a)に示すように、可視光波長領域で透明な基板であるガラス基板上に、所定のパターンで赤、緑、青の蛍光体粒子が層状に設置され、各色蛍光体層とガラス基板との間にそれぞれの色に対応した透過率調整層が設置される。図5(a)では全ての蛍光体層に対応して透過率調整層を設けているが、発光効率の低い蛍光体に対しては設ける必要がない場合もある。
【0037】
蛍光体層を構成する材料としては、電子放出源から放出された電子により励起され所望の色を発光するものであれば良い。
【0038】
例えば、赤色発光蛍光体であれば、Y23:Eu、Y22S:Euなどが使用できる。緑色発光蛍光体であれば、ZnS:CuAuAl、ZnS:CuAl、SrGa24:Eu等が使用でき、青色発光蛍光体であれば、ZnS:AgAl、ZnS:AgClなどが使用できる。
【0039】
蛍光体層の膜厚は蛍光体粒子径や電子線の加速電圧等できまり、概ね粒径の2〜2.5倍が好ましい。
【0040】
各色の蛍光体層に対応する透過率調整層としては、顔料粒子分散型(図5(b))、スリットパターン型(図5(c))、あるいは、メッシュパターン型(図5(d))等がある。
【0041】
顔料分散型の透過率調整層は、分散剤となる材料に粒径数nmの顔料微粒子が均一に分散されている。これに対し、スリットパターン型、あるいは、メッシュパターン型の場合、透過率調整層は、分散剤となる材料に粒径数nmの微粒子が均一に分散された、光吸収層からなる光吸収パターン部と開口部とから構成されている。
【0042】
顔料分散型の透過率調整層の場合、透過率は顔料の含有量で調整することができる。これに対し、スリットパターン型、あるいは、メッシュパターン型の場合、光吸収パターン部と開口部との面積比率から光線透過率を調整することができる。
【0043】
透過率調整層の光学特性としては、可視光波長領域において一定の透過率を持つニュートラルフィルター機能を有していることが好ましい。更に、蛍光体層の発光波長を選択的に透過する機能を持つカラーフィルター機能を有していても良い。
【0044】
透過率調整層に、ニュートラルフィルターを形成する場合、顔料粒子分散型では、可視光波長領域で一定の透過率を持つ樹脂中に分散される黒色顔料の含有量を変えることで透過率を調整することができる。
【0045】
スリットパターン型、あるいは、メッシュパターン型の場合、光吸収層は、顔料粒子分散型と同様に樹脂に黒色顔料を含有させた材料を用いることができる。しかしながら、透過率の調整を吸収層と開口部との面積で行うので、光吸収層は、光を透過しない層である方が好ましい。この状態は、樹脂中に分散させる黒色顔料の量を増やすことで容易に得ることができる。
【0046】
また、光吸収パターンと部と開口部との形状はスリット、メッシュ以外のパターンであっても良い。
【0047】
黒色顔料としては、酸化マンガン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、あるいは、チタンブラックを用いることができる。
【0048】
透過率調整層にカラーフィルター機能を持たせる場合、顔料粒子分散型では、カラーフィルター用の顔料粒子と、黒色顔料とを樹脂に分散させれば良い。パターン型の場合、光吸収部は、顔料分散型の場合と同様に分散剤に黒色顔料分散させた材料で光吸収パターン部が形成され、開口部にカラーフィルターが形成されていれば良い。また、基板上にカラーフィルター層が形成され、カラーフィルター上に光吸収パターン部が形成されていても良い。あるいは、基板上に光吸収パターン部を形成し、光吸収パターン部上にカラーフィルター層が形成されていても良い。
【0049】
カラーフィルターに用いる顔料としては、赤色カラーフィルターであれば、Fe23、MnO2等を、緑色カラーフィルターであれば、(Co,Ni,Zn)2TiO4等を、青色カラーフィルターであれば、Al23・CoO等をもちいることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0050】
第2の実施の形態として、発明者は、更に、フェイスプレートの透過率調整層の透過率を、
赤(R)色、青(B)色、緑(B)色蛍光体の発光の3刺激値を、R:(RX,RY,RZ)、G:(GX,GY,GZ)、B:(BX,BY,BZ)とし、
赤(R)色、青(B)色、緑(B)色蛍光体に対応する透過率調整層の透過率の3刺激値を、R:(Trx、Try、Trz)、G:(Tgx、Tgy、Tgz)、B:(Tbx、Tby、Tbz)とし、
白色の発光の色度座標を、(xw、yw)とし、
pX=RX×Trx+GX×Tgx+BX×Tbx
pY=RY×Try+GY×Tgy+BY×Tby
pZ=RZ×Trz+GZ×Tgz+BZ×Tbz
とした場合、
−0.01<pX/(pX+pY+pZ)−xw<0.01
−0.015<pY/(pX+pY+pZ)−yw<0.015
を満足するように透過率調整層の透過率を調整することでコントラスト比を更に改善できることを見いだした。
【0051】
ここで、透過率調整層は、可視光波長領域において一定の透過率を持つニュートラルフィルターであることが好ましい。
【0052】
pX/(pX+pY+pZ)−xwの値が、−0.01以下、あるいは、0.01以上の場合、規定の色度座標(xw、yw)の白色表示に調整する際、赤あるいは青発光を弱める必要がある。そのため、コントラスト比、すなわち、赤・緑・青の発光からなる白色の輝度と非点灯時(黒色)の輝度の比が各色の発光を弱めない場合に比べ10%以上低下する。
【0053】
pY/(pX+pY+pZ)−yw<0.015の値が−0.015以下、あるいは、0.015以上の場合もコントラスト比が大よそ10%程度以上低下する。
【0054】
このため、Trx、Try、Trz、Tgx、Tgy、Tgz、Tbx、Tby、Tbzの値が、−0.01<pX/(pX+pY+pZ)−xw<0.01、および、−0.015<pY/(pX+pY+pZ)−yw<0.015の範囲を同時に満たすことが必要となる。
【0055】
透過率調整層の透過率、Trx、Try、Trz、Tgx、Tgy、Tgz、Tbx、Tby、Tbzが上記の条件を満足する範囲であれば、透過率調整層は、顔料分散型、あるいは、パターン型のいずれであっても良い。
【0056】
Trx、Try、Trz、Tgx、Tgy、Tgz、Tbx、Tby、Tbzが両式を同時満たす範囲にある透過率調整層を導入することにより、導入前に比べ、コントラスト比を50%以上向上することができる。また、従来から用いられてきているカラーフィルターを導入する方式に対してもコントラスト比を大よそ10%程度以上向上することができる。
【0057】
可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったニュートラルフィルター機能は、黒色顔料を透過率調整層に含有させることで得ることができ、黒色顔料として、酸化マンガン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、あるいは、チタンブラックを用いることが好ましい。
【0058】
透過率調整層は、透過率調整層が形成される領域が、黒色顔料を含有すパターンが形成された領域と、パターンが形成されていない領域とからなっていても良い。
【0059】
FEDの場合、色度座標(xw、yw)の規定の白色を表示する際に各発光色の総和から余分な発光を点灯時間の短縮などによって削減することで実現している。しかしながら、同時に各色発光輝度の総和量から前述の削減された発光分だけ輝度が低下してしまう。
【0060】
これに対して本発明の形態では、各色に導入した透過率調整層によってあらかじめ各色発光色の総和が規定の白色と上記の点灯時間を短縮した時と同じ白色輝度となるように設定されることから白色表示の際に点灯時間の短縮を行う必要がない。
【0061】
更に、同時に透過率調整層によって外光が吸収されることから外光反射率が低下しコントラスト比を向上させることができる。これらの効果から、白色輝度を維持しつつ外光反射率を改善することによりコントラスト比を更に改善することができる。
【0062】
本発明のフェイスプレートと、基板上に電子放出素子が設けられたリアパネルとをフェイスプレートの蛍光体が設けられた側と、リアプレートの電子放出素子が設けられた側と、を対向するように配置し貼り合わせることで画像表示装置用のパネルが得られる。
【0063】
更に、該パネルを搭載した画像表示装置を得ることができる。
【0064】
(実施例)
以下実施例を用いて更に詳細に説明する。
【0065】
(実施例1)
実施例1で本発明の第1の実施形態に係わる発明を図1のフェイスパネルの模式的断面図を用いて説明する。図1に示すフェイスパネルは、ガラス基板1上には、膜厚1μmのブラックマトリックス(光吸収層)2が形成され、ブラックマトリックス2に囲まれた領域内に、膜厚2μmの透過率調整層5が設けられている。
【0066】
更に、ブラックマトリックス2上には、膜厚13μmの抵抗材層3形成され、透過率調整層5には、赤色、緑色、及び、青色を発光する蛍光体層4が設けられている。蛍光体層4上には、メタルバック層7が形成されている。
【0067】
図2は、電子線発光タイプの画像表示装置に一般的に使用される、蛍光体を用いた際の発光輝度のスペクトルを示す図である。ここで、赤色の蛍光体は、Y23:Euを、緑色の蛍光体は、ZnS:CuAuAlを、青色の蛍光体は、ZnS:AgAlを用いている。
【0068】
図2の発光輝度のスペクトルから、カラーフィルターを介さない場合、白色バランスは一番低いGreenにあわせることとなり緑色を100%とすると赤色は46%、青色は、70%の発光となるように駆動条件を調整することでバランスが取れる。白色のバランスは、色度座標が(0.272、0.279)の白色とする場合である。
【0069】
透過率調整層がニュートラルフィルター機能しか持たない場合、赤色の蛍光体に対応する透過率調整層の透過率を46%、青色の蛍光体に対応する透過率調整層の透過率を70%に調整することで、駆動条件を調整しないでも、駆動条件を調整した際と同じ白色バランスを得ることができる。
【0070】
この場合、赤色及び青色の蛍光体層4とガラス基板1との間に顔料粒子分散型の透過率調整層設ければ良い。
【0071】
本実施例では、赤色・緑色・青色の蛍光体に対応するカラーフィルターを用いた例に、本発明の透過率調整層となるニュートラルフィルター機能を付加した場合の例である。
【0072】
カラーフィルターを介した場合も、赤色および青色の蛍光体の輝度が、緑色の蛍光体の輝度よりも高い。この場合、透過率調整層として、可視光線の全ての波長領域全体で透過率の下がるフィルターとなる黒色顔料を発光効率の高い赤色および青色の蛍光体に対応するカラーフィルター層5に混入する。
【0073】
カラーフィルターは、蛍光体の発光を選択的に透過する機能を有する層で、赤色のカラーフィルターは、赤色の顔料を、青色のカラーフィルターは、青色の顔料を含有している。
【0074】
この黒色顔料として蛍光体の発光に影響しない酸化マンガン顔料、カーボンブラック、黒色酸化鉄、あるいは、チタンブラック等を使用することができる。本実施例では、酸化マンガン顔料を選択した。
【0075】
図3は、従来使用しているカラーフィルター及び、赤色と青色のカラーフィルターに上述の黒色顔料を混入した際の赤色および青色のカラーフィルター、および、黒色顔料のみを含有する黒色フィルターの透過率の波長依存性を示す。
【0076】
図3に示されるように、黒色顔料のみを含有する黒色フィルターは、可視光波長領域(波長400nmから700nmの領域)でほぼ一定の透過率を持っている。図3では、黒色顔料として酸化マンガンを用いているが、カーボンブラック、黒色酸化鉄、あるいは、チタンブラックであっても同様の結果が得られた。
【0077】
尚、黒色フィルターの透過率もカラーフィルターと同様に黒色顔料の含有率によって変えることができる。
【0078】
図4は、赤色及び青色の蛍光体層4とガラス基板1との間に顔料粒子分散型の透過率調整層を設けた場合の、黒色顔料の混合比に対する白色の輝度及び色再現性の変化を示す図である。青色の顔料として(Al23・CoO)アルミン酸コバルトを、赤色の顔料として(Fe23)ベンガラ赤顔料を用いた例を示している。
【0079】
尚、青色の透過率調整層は、黒色顔料を含有しない、(Co,Ni,Zn)2TiO4からなるカラーフィルターをそのまま用いている。
【0080】
図4(a)から、青色の場合、黒色顔料の混合重量比が高くなるにつれ、全白色輝度、が下がり、更に、色再現領域が悪くなるので、1%の混合重量比にすることが適切である。一方、赤色の場合、図4(b)から、黒色顔料の混合重量比が10%までは、全白色輝度の低下、及び、色再現性の劣化が見られないので、最大で10%程度まで混合できることがわかる。
【0081】
本実施例では、黒色顔料の混合重量比は、青色に対しては、3%、赤色に対しては、13%とした。尚、緑色に対しては黒色顔料を含有しない、従来の緑色のカラーフィルターを使用した。
【0082】
この結果、黒色顔料を混入した透過率調整層となる赤色および青色のカラーフィルターを用いることにより白色輝度を劣化させることなく外光反射率が低下しコントラスト比を向上させることができる。
【0083】
本実施例のフェイスプレートを用いた画像表示装置の白色輝度を測ると、カラーフィルターのみを設けた従来の技術(比較例1に対応)に対し、白色輝度が101%、外光反射率が87%となり、コントラスト比で約20%の改善が認められた。
【0084】
尚、本実施例の白色値は、白色の色度座標が(0.272、0.279)になるようにしている。
【0085】
尚、本実施例では、顔料粒子分散型の透過率調整層を用いているが、後述するように、スリット型、あるいは、マトリックス型の透過率調整層であっても良い。
【0086】
更に、カラーフィルターを用いることなく、黒色顔料のみが分散された透過率調整層を用いることもできる。
【0087】
以下、本発明の第2の実施の形態について実施例2および3を用いて、更に詳細に説明する。
【0088】
(実施例2)
フェイスパネルの構成と製造方法は実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0089】
本実施例では、透過率調整層の透過率を調整する透過率調整材料(黒色顔料)として、表1に示す、カーボンブラックを使用した顔料分散型のニュートラルフィルターを用いた。各色の蛍光体は、表1に示す蛍光体を使用した。
【0090】
各蛍光体に対応する透過率調整層は、表2に示すように、赤色の透過率調整層は、70%の透過率、緑色の透過率調整層は、80%の透過率、青色の透過率調整層は、60%の透過率となるように黒色顔料の含有率を調整した。黒色顔料の含有率は、透過率調整層の膜厚とも関係するので詳細は省略する。尚、本実施例では、透過率調整層の膜厚は実施例1と同じ膜厚としている。
【0091】
該フェイスパネルを用いた画像表示装置を用いて白色輝度(白色の色度座標(0.272、0.279))、非点灯時の外光反射率、および、コントラスト比を測定した。測定した結果は、後述の、透過率調整層、および、カラーフィルター層を設けない、比較例2の測定結果に対する相対値で示している。
【0092】
本実施例では透過率調整層にニュートラルフィルターを使用しているので、pX、pY、pZは、赤色、緑色、および、青色の透過率調整の透過率と同じになり、この時の、pX/(pX+pY+pZ)、および、pY/(pX+pY+pZ)−ywは、表3に示すように、各々、0.000、−0.001となる。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
(実施例3)
実施例2では、顔料分散型の透過率調整層を用いたが、本実施例では、スリットパターン型の透過率調整層を用いた。スリットパターン型の透過率調整層の透過率は実施例2と同じになるように開口部とパターン部との幅を決めた。決められた開口部とパターン部との幅を、表5に示す。各蛍光体に対応する透過率調整層の透過率、光吸収材料、および、蛍光体材料は、表4に示すように、実施例2と同じにした。
【0097】
その後、該フェイスパネルを用いた画像表示装置を用いて白色輝度(白色の色度座標(0.272、0.279))、非点灯時の外光反射率、および、コントラスト比を測定した結果を表6に示す。表5に示される測定結果は、後述の、透過率調整層、および、カラーフィルター層を設けない、比較例2の測定結果に対する相対値で示している。
【0098】
本実施例でも透過率調整層にニュートラルフィルターを使用しているので、pX、pY、pZは、赤色、緑色、および、青色の透過率調整の透過率と同じになり、この時の、pX/(pX+pY+pZ)、および、pY/(pX+pY+pZ)−ywは、表6に示すように、各々、0.000、−0.001となる。
【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

【0102】
(比較例1)
比較例1では、透過率調整層に変えて、通常のカラーフィルターをガラス基板と蛍光体層の間に形成した。
【0103】
赤色、緑色、および、青色のカラーフィルターに分散されているカラーフィルター材料る、および、蛍光体は、表7に記載した材料を用いた。
【0104】
カラーフィルター層の透過率の3刺激値は、表8に示されている。尚、表8では、カラーフィルターを透過率調整層と表記している。
【0105】
該フェイスパネルを用いた画像表示装置を用いて白色輝度(白色の色度座標(0.272、0.279))、非点灯時の外光反射率、および、コントラスト比を測定した。測定した結果は、表8に示され、後述の、透過率調整層、および、カラーフィルター層を設けない、比較例2の測定結果に対する相対値で示している。この時の、pX、pY、pZ、pX/(pX+pY+pZ)、および、pY/(pX+pY+pZ)−ywの値は、表9に示されている。
【0106】
【表7】

【0107】
【表8】

【0108】
【表9】

【0109】
(比較例2)
比較例2は、比較例1と異なり、カラーフィルターが設けられていないフェイス基板である。
【0110】
比較例2で使用した蛍光体は表8に示されている。該フェイスパネルを用いた画像表示装置を用いて白色輝度(白色の色度座標(0.272、0.279))、非点灯時の外光反射率、および、コントラスト比を測定した。比較例2の白色輝度、外光反射率、および、コントラスト比を実施例および比較例1に対する規準とするので全て100%となっている。
【0111】
比較例2では、透過率調整層が設けられていないので、pX、pY、および、pZは、100%になり、この時の、pX、pY、pZ、pX/(pX+pY+pZ)、および、pY/(pX+pY+pZ)−ywの値が、表12に示されている。
【0112】
【表10】

【0113】
【表11】

【0114】
【表12】

【0115】
以上より、本発明では、従来よりも輝度を落とすことなくコントラスト比が改善でき、画質の改善が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】画像表示装置のフロントパネルの構造断面図である。
【図2】蛍光体各色のピーク輝度発光割合を示す図である。
【図3】カラーフィルターの透過率を示す図である。
【図4】顔料に対する黒色顔料混合比と全白輝度及び色再現域の関係を示す図である。
【図5】本発明の透過率調整層を説明する図面である。
【符号の説明】
【0117】
1 ガラス基板
2 光吸収層
3 抵抗材層
4 蛍光体層
5 カラーフィルター層
6 前面フィルター層
7 メタルバック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板の上に異なった複数の色を発光する複数の蛍光体層が設けられ、前記透明な基板と前記蛍光体層との間に、前記蛍光体層からの発光の透過率を調整する透過率調整層を有するカラー画像表示装置用のフェイスパネルであって、
前記透過率調整層が、前記蛍光体層の、少なくとも、発光効率が相対的に高い蛍光体層に対し設けられ、且つ、
可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能を有していることを特徴とするカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項2】
透明な基板の上に異なった複数の色を発光する複数の蛍光体層が設けられ、前記透明な基板と前記蛍光体層との間に、前記蛍光体層からの発光の透過率を調整する透過率調整層を有するカラー画像表示装置用のフェイスパネルであって、
前記透過率調整層の透過率が、
赤(R)色、青(B)色、緑(B)色蛍光体の発光の3刺激値を、R:(RX,RY,RZ)、G:(GX,GY,GZ)、B:(BX,BY,BZ)とし、
赤(R)色、青(B)色、緑(B)色蛍光体に対応する透過率調整層の透過率の3刺激値を、R:(Trx、Try、Trz)、G:(Tgx、Tgy、Tgz)、B:(Tbx、Tby、Tbz)とし、
白色の発光の色度座標を、(xw、yw)とし、
pX=RX×Trx+GX×Tgx+BX×Tbx
pY=RY×Try+GY×Tgy+BY×Tby
pZ=RZ×Trz+GZ×Tgz+BZ×Tbz
とした場合、
−0.01<pX/(pX+pY+pZ)−xw<0.01
−0.015<pY/(pX+pY+pZ)−yw<0.015
を満足し、
前記透過率調整層が、可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能のみを有することを特徴とするカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項3】
前記可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能が、前記透過率調整層が黒色顔料を含有することで、得られことを特徴とする請求項1または2に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項4】
前記黒色顔料が、酸化マンガン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、あるいは、チタンブラックであることを特徴とする請求項3に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項5】
前記透過率調整層が、更に、顔料を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項6】
前記顔料が、前記透過率調整層の上に形成された前記蛍光体からの発光を選択的に透過させる顔料であることを特徴とする請求項5に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項7】
前記透過率調整層が形成される領域が、黒色顔料を含有すパターンが形成された領域と、前記パターンが形成されていない領域とからなることを特徴とする請求項1または2に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項8】
前記黒色顔料を含有するパターンが形成されていない領域に前記透過率調整層の上に形成された前記蛍光体からの発光を選択的に透過するフィルター機能を有する層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項9】
前記フィルター機能を有する層が、前記蛍光体からの発光を選択的に透過させる顔料を含むことを特徴とする請求項8に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項10】
前記透過率を可視光波長領域でほぼ一定の透過率を持ったフィルター機能が、黒色顔料を前記透過率調整層に含有させることで得られことを特徴とする請求項1または2に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項11】
前記黒色顔料が、酸化マンガン、カーボンブラック、黒色酸化鉄、あるいは、チタンブラックであることを特徴とする請求項10に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項12】
前記透過率調整層が、前記透過率調整層が形成される領域が、前記黒色顔料を含有すパターンが形成された領域と、前記パターンが形成されていない領域とからなることを特徴とする請求項11に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネル。
【請求項13】
請求項1または2に記載のカラー画像表示装置用のフェイスパネルと、基板上に電子放出素子が形成されたリアパネルと、を前記フェイスパネルに形成された蛍光体と、前記リアパネルに形成された電子放出素子とが対向するように配置し、貼り合わせられたことを特徴とするカラー画像表示装置用のパネル。
【請求項14】
請求項13に記載のカラー画像表示装置用のパネルが搭載されたカラー画像表示装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−55947(P2010−55947A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219860(P2008−219860)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】