説明

カラー表示デバイスおよび方法

【課題】カラー表示デバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】高効率で表示を実現できるように、カラーフィルタおよび偏光子に関連して生じる大きな損失を避けるべく、単色光源と、光スイッチと、異方性発光フォトルミネッセンス材料から成る画素アレイを備えるカラーディスプレイを構成するとしてもよい。光スイッチは、単色光源の波長に合わせて調整された液晶デバイスであってもよい。単色光源は、紫色スペクトル、近紫外スペクトルまたは青色スペクトルの光を発するOLED材料から形成され、偏光されているとしてもよい。画素アレイは、バックライトのスペクトルが画素のうちのいずれかの色と同一である場合、透過型画素を含むとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラー表示デバイスおよび方法に関する。特に本発明は、フォトルミネッセンス素子を備えるカラー表示デバイスおよび方法に関する。本願は米国特許出願第10/997,994号(出願日:2004年11月29日)に基づき優先権を主張する。当該出願に記載された内容はすべて参照により本願に組み込まれる。本願は、米国特許出願第10/997,970号(発明の名称:カラー表示デバイスおよび方法、出願日:2004年11月29日)に関連する。
【背景技術】
【0002】
カラー素子を備える表示デバイスの光利用効率は通常、さまざまな要因から、低くなっている。例えば、カラーフィルタを設けると、多くの場合に光の3分の2がカラーフィルタによって吸収されてしまうし、吸収型偏光子を設けると、大概は光の半分が偏光子によって吸収されてしまう。偏光子やカラーフィルタ以外のカラー表示デバイスの構成要素も光利用効率を下げる要因となり、結果として3%にまで下がってしまうこともある。光利用効率は電池の寿命、光源の寿命およびディスプレイの寿命や必要な電力、光学上の設計などに関わってくるので、光利用効率の改善が強く望まれてきた。その結果、光利用効率を上げるための改善努力が数多くなされている。例えば、蛍光材料を用いて、紫色スペクトルまたは近紫外スペクトルのバックライトによって励起されるカラー素子を形成することによって、光利用効率を改善する効果が得られた。しかし、このようにカラー表示デバイスが「改善」されて光利用効率が増加すると、性能に関係するほかの特性、例えばコントラスト比、視野角(視野のコントラスト比)、視野のカラー表示の安定性などが低下してしまう。例えば、上述の蛍光材料を用いて構成したカラー表示デバイスの場合には、カラーフィルタを用いたカラー表示デバイスのスイッチング素子とカラー材料の間の距離と比べて、蛍光材料とスイッチング素子の間の距離が大きくなってしまうので、上述したように性能が低減してしまう。このように距離が増加すると、バックライトの光が隣接する画素に漏れてしまい(「視差問題」とも呼ばれる)、表示画像の質が低下してしまう。当然のことながら、当業者にはこれ以外にも多くの「改善された」構成が公知である。だが、先行技術に係るデバイスは常に、光利用効率を改善するために何かを犠牲にしている。このため、ほかの性能特性を犠牲にすることなく光利用効率を改善できるカラー表示デバイスおよび方法が、関連技術分野において強く求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態は、単色光源と、画素素子アレイと、単色光源と画素素子アレイの間に設けられた光スイッチとを備えるカラーディスプレイを提供する。画素素子アレイの少なくとも一部分は異方性発光フォトルミネッセンス材料を含む。
【0004】
本発明の別の実施形態は、単色光を生成することと、単色光を変調して変調単色光を生成することと、変調単色光の少なくとも一部を、異方性発光フォトルミネッセンス材料で、複数の異なる波長を持つ光に選択的に変換することとを含むカラー画像を表示する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明は以下に挙げる図面を参照しつつ詳細に説明される。図面中に同一の参照番号がある場合は、同一の構成要素を指すものとする。
【0006】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラー表示デバイスの一例を示す図である。
【0007】
【図2】本発明の別の実施形態に係るカラー表示デバイスの一例を示す図である。
【0008】
【図3】本発明の別の実施形態に係る、複屈折性補償膜を備えるカラー表示デバイスの一例を示す図である。
【0009】
【図4】本発明の別の実施形態に係る、複屈折性補償膜を備えるカラー表示デバイスの一例を示す図である。
【0010】
【図5】本発明の別の実施形態に係るカラー表示デバイスの一例を示す図である。
【0011】
【図6】偏光光源によって発光する、フォトルミネッセンス膜から成るデバイスを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、カラー表示デバイス100の一例を示す図である。カラー表示デバイス100は、バックライトアセンブリ105、第1シート直線偏光子110、第1透明基板115、透明電極アレイ120、第1液晶配列層125、液晶層130、第2液晶配列層135、透明カウンタ電極140、第2基板145、異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150、第2シート直線偏光子160、透明被覆/パッシベーション層175、および選択的反射ミラー190を備える。異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150は、赤色発光素子151、緑色発光素子152および青色発光素子153を有するとしてもよい。もしくは、異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150は、これ以外の特定の色の発光素子を適切に組み合わせたものを有するとしてもよい。フォトルミネッセンスカラー素子は、純粋な異方性フォトルミネッセンス材料を含むとしてもよいし、フォトルミネッセンス材料と異方性を持つ非フォトルミネッセンス材料の混合物から成るとしてもよい。この混合物に含まれるフォトルミネッセンス材料は、異方性を有するとしてもよいし、または等方性を有するとしてもよい。また、フォトルミネッセンス材料は、等方性の構造または異方性の構造を有するとしてもよく(例えば、キラルもしくは直線状の配列)、フィードバックが強化された空洞共振器もしくはレーザ空洞共振器の内部に設けられるとしてもよい。フォトルミネッセンス材料は屈折率が変化するような内部構造を持つとしてもよい。
【0013】
異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150は、自己吸収率が低い材料から成るとしてもよいし、それ以外の適切な材料から成るとしてもよい。第1の例として挙げる材料は以下の化学式を持つ。
【数1】

第1の例である材料は、米国特許出願第10/187,381号および第10/187,396号でより詳細に説明されている。両特許出願に記載の内容はすべて参照により本願に組み込まれる。第2の例である材料(PV235)および第3の例である材料(PV237)は、下記に示すような化学式を持ち以下に示す方法で合成されるとしてもよい。
【数2】

【0014】
異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150は、発光素子間にブラックマトリクス154を有するとしてもよく、発光素子に直接影響を与えず通過する光はブラックマトリクス154によってほとんどもしくは完全に吸収される。別の例として、ブラックマトリクス154は、異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150の上方および/または下方に形成されるとしてもよい。
【0015】
第1透明基板115は、ガラス基板やプラスチック基板などで、適切な材料から形成されるとしてよい。第1透明基板115の下面には第1シート直線偏光子110が付着され、第1透明基板115の上面には透明電極アレイ120が形成される。第1液晶配列層125は第1透明基板115の上面および透明電極アレイ120の上に形成されてもよい。液晶層130は第1液晶配列層125および第2液晶配列層135によって配列される。透明カウンタ電極140は、すべての表示素子と重複する単一の共有電極であってもよい。第2シート直線偏光子160はクリーンアップ偏光子として機能し、迷光も吸収する。第2シート直線偏光子160は、(例えば、透過した光の偏光方向に基づいて画素がオンであるかオフであるかを決定する)アナライザとしては機能していないので、省略するとしてもよい。別の例として、シート偏光子は細線格子偏光子などの別の種類の偏光素子であってもよいし、偏光子を基板として利用するようにほかの構成要素と組み合わせてもよい。別の例として、第1シート直線偏光子110は、第1透明電極の上方に塗布される結晶薄膜偏光子であってもよい。
【0016】
異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153はそれぞれ、透明電極アレイ120の対応する電極素子と空間的に対応付けられている。図示されているカラー表示デバイス100は、第2透明電極アレイ140と異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150の間に選択的反射ミラー190が設けられている。選択的反射ミラー190は、対応する異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153が発する光を反射するが、バックライトアセンブリ105が発する光は透過させる多層誘電体ミラーであってもよい。このような構成とすることによって、異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153がバックライトアセンブリ105の方に向かって後方に発する光が視聴者に向かって反射される。別の例として、選択的反射ミラー190は、バックライトアセンブリ105からの光は透過させ、異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153からの光は反射する、ハロゲン化銀ホログラフィック光学素子やコレステリック液晶リフレクタなどの適切な素子であってもよい。
【0017】
バックライトアセンブリ105が発する光は、所望の表示色へ効率よく変換されるように、発光スペクトルのピークが異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153の励起スペクトルのピークと一致するように、調整される。適切なバックライトアセンブリであればどのようなものを使用してもよい。バックライトアセンブリ105の一例を挙げると、蛍光管を有する。バックライトアセンブリ105の別の例を挙げると、近紫外光(例えば、320nmから390nm)有機発光デバイス(OLED)もしくは紫色光(例えば、390nmから455nm)OLEDがある。このようにOLEDを用いて構成されたバックライトアセンブリ105は、異方性を有し、略均一に配列された発光発色団を含む発光層を有するとしてもよい。このようなOLEDバックライトの位置合わせは、光利用効率をさらに上げるべく、発した光の偏光軸が第1シート偏光子110の透過軸に平行になるように、行われる。さらに、近紫外光OLEDバックライトもしくは紫色光OLEDバックライトのサイズおよび重量は、これに限定されるものではないが、蛍光管を利用したバックライトなどのほかの構成を持つバックライトに比べると、削減されている。このようにサイズや重量を小型化することは、ノートパソコンや携帯電話などの携帯可能な製品に利用する上で、非常に望ましい特徴である。
【0018】
バックライトアセンブリ105は、単色光源から発せられた光が第1シート直線偏光子110に入る前にその光をコリメートしてコリメート光とするための、光コリメートシートを有するとしてもよい。このコリメート光の発散角度は大幅に小さくなっている。バックライトアセンブリ105はさらに、単色光源から発せられた光をすべて、第1シート直線偏光子110に入る前に、所定の偏光状態で偏光され且つコリメートされた光へと変換するための、光リサイクル機構を有するとしてもよい。
【0019】
例えば、図5は、本発明の別の実施形態に係るカラー表示デバイス500の一例を示す。当該カラー表示デバイス500は、上述したような構成を持つバックライトアセンブリ105の一例を備える。このバックライトアセンブリ105は、反射ミラー510、単色光源512、光コリメートシート514、および非吸収型偏光子シート516を有する。単色光源512が発した光は、光コリメートシート514によって、コリメートされるか、もしくは発散角度が大幅に低減される。非吸収型偏光子シート516は、所定の偏光状態の光を透過し、直交偏光状態にある光を反射する。非吸収型偏光子シート516が下方に反射した光は、反射ミラー510によって上方に反射され、上述の所定の偏光状態となる。この所定の偏光状態にある光は、非吸収型偏光子シート516および光スイッチング素子を通過して異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153を励起するか、透明素子または散乱素子を通過する。非吸収型偏光子シート516は、例えば、多層構造を有する直線偏光子であってもよいし、またはコレステリック液晶ポリマーから成る円偏光子であってもよい。非吸収型円偏光子とする場合には、該偏光子とともに4分の1波長板を利用して、所定の偏光状態にある円偏光された光を所定の偏光状態にある直線偏光された光に変換するとしてもよい。4分の1波長板は、非吸収型円偏光子の上側に積層されるとしてもよい。光コリメートシート514は、プリズム構造、レンズ状レンズアレイ、マイクロレンズアレイまたはこれ以外の適切な構造であってもよい。反射ミラー510は、光源512に積層されてもよいし、または直接被覆するとしてもよい。光源512は、透明単色OLEDであってもよいし、または蛍光管、導波素子および光拡散素子を有するとしてもよい。
【0020】
液晶配列層125および135は、液晶層130が偏光子110からの偏光に対して何らかの影響を与えるように構成されるとしてもよい。単に偏光された光を液晶層を介して異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150へと透過させるとしてもよいし、または透過される光の偏光状態を変えるとしてもよい。また、透明電極アレイ120と透明カウンタ電極140の間に電位差を印加する手段(不図示)が、配設される。関連技術分野では、パッシブマトリックス構造やアクティブマトリックス構造、および所望の電位差を各表示素子に選択的に印加するアドレッシング方式が、よく知られている。ある表示素子の電極に十分な電位差が印加されると、その素子の液晶層130の状態が、電位差を印加した結果生じる電界との作用で、乱される。この結果、液晶層130と偏光子110を通過した偏光の間の相互作用が変化する。液晶層130からの光は異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150に入る。液晶層130を出た光の偏光状態は2つの直交する成分に分割することができる。まず、カラー素子の異方性エレクトロルミネッセンス材料の最大吸収の軸に平行な成分があり、もう一方は当該軸に直交する成分である。カラー素子の吸収軸に対して平行になるように偏光されている、液晶層を励起する光は、異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153のルミネッセンス材料と十分に反応して、偏光されたフォトルミネッセンスを実現する。カラー素子の吸収軸と直交するように偏光された光とルミネッセンス材料の反応は、光を生成するのに十分ではない。第1シート偏光子110、異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153の吸収軸、および液晶層130の間の相対的な配向を適切に設定すると、1対の表示電極間に十分な電界を印加した場合に、液晶層130の状態が、異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153の発光を最大とする状態から、全く発光させない状態へと切り替わる。このため、電界がオン状態の表示素子と電界がオフ状態の表示素子の間の視覚コントラストが高くなることがある。もしくは、「オン」状態と「オフ」状態を逆にして、電界がオフ状態においてほとんど発光せず、電界がオン状態においてフォトルミネッセンス光を発するとしてもよい。第2シート偏光子160の機能は、発光源の偏光軸に直交する偏光軸を持つフォトルミネッセンス光を「掃除」して、表示コントラストを改善することと、周囲照度が高い環境下においても表示をより見やすくすることにある。第2シート偏光子160はまた、紫外光を吸収するために利用されるとしてもよい。もしくは、紫外光を吸収するべく別の素子を備えるとしてもよい。このような別の素子としては、反射防止材料で被覆されたPMMAプレートなどがある。
【0021】
このような構成の効果として、第1シート偏光子110で光が吸収されるためバックライトの光の約半分を失うが、光コリメート素子および光リサイクル素子を有するバックライトアセンブリ105または偏光OLEDバックライトを利用することによって、この損失を回避できるようになった。同様に、カラーフィルタは光を吸収するためバックライトの光の約3分の2を失うが、カラーフィルタの代わりに異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150を設けることによって、この損失を回避できる。これら構成要素の光利用効率の増加を組み合わせることによって、非常に視感度効率が高いディスプレイを実現できる。
【0022】
透明電極アレイ120および透明カウンタ電極140の形成材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ、同様の酸化物導電材料、導電ポリマー、ドーピング濃度の高い半導体材料などの材料であってよい。バックライトアセンブリ105が発する光が近紫外光もしくは紫色光の場合、バンドギャップの大きい透明導電体を用いて透明電極アレイ120および透明カウンタ電極140を形成するとしてもよい。そのような材料の例は、Wang,A.;Edleman,N.L.;Babcock,J.R.;Marks,T.J.;Lane,M.A.;Brazis,P.;Kannewurf,C.R.「In−Zn−Sn−OおよびIn−Ga−Sn−O透明導電性酸化物薄膜の有機金属化学気相成長法」、MRS Symposium Series、2000、607、345−352で説明されている。当該文献に記載の内容は参照により本願に組み込まれる。亜鉛−インジウム−スズの酸化物のバンドギャップは6.2電子ボルトである。なお、インジウムスズ酸化物のバンドギャップは4.7ボルトである。バンドギャップが大きい方が、吸収端がブルーシフトして紫色の波長および近紫外色の波長での透過度が高くなり、より良好な表示デバイスを実現できる。
【0023】
多くのフォトルミネッセンス材料の吸収率は、赤色および緑色の波長領域から紫色および近紫外領域に波長が移っていくにつれて大きくなる。使用材料によっては、可視スペクトルの比較的長い波長の領域において十分に透明であるにも関わらず、この領域の吸収率が非常に大きくなることもある。このような問題を解決するべく図2に示した変形例にかかるカラー表示デバイス200では、図1に示した実施形態に係る青色フォトルミネッセンスカラー素子153の異方性フォトルミネッセンス材料の代わりに、透明素子または散乱素子202を用いて、青色(例えば、波長が455nmから492nm)異方性発光OLEDバックライトアセンブリ105を用いるとしてもよい。図2の赤色および緑色のフォトルミネッセンスカラー素子151および152は、バックライトアセンブリ105が青色光を発するので、青色発光帯域と大きく重複するように設定された励起スペクトルを持つルミネッセンス材料を用いて構成する。当該変形例に係るカラー表示デバイス200の青色部分には透明膜202が設けられているので、第2偏光子160の配設は任意ではなく必須となる。光透過電極に対する光源の波長が約400nmから約460nmへと変わったことによって、光利用効率が大幅に上昇する。
【0024】
光源を単色から複数の異なる色に変更することによって得られる利点の1つに、スイッチング素子の厚みを、複数の(例えば3つの)異なる光の波長ではなく1つの光の波長に合わせて調節すればよいことが挙げられる。この結果、設計を簡素化することができるとともに結果としてカラー表示性能も改善することができる。例えば、液晶スイッチング素子が使用された場合、液晶層は非透過状態または黒色状態での透過率を最大化するように調整されるか、または透過状態または白色状態での透過率を最大化するように調整される。例えば、ノーマリーホワイト型の、90度にねじれた、ねじれネマチック液晶ディスプテイ(LCD)が透過する光の割合は以下の式で表される。
【数3】

バックライトアセンブリ105が発する近紫外光、紫色光、または青色光の波長(λ)が定められ、その波長での液晶の複屈折性(Δn)が定まると、上記の式に基づいて、LCDの白色状態または電圧がかかっていない状態において輝度が最大になる、液晶層の厚みdを算出することができる。dに対するTの依存度を考えてみると、d=0でゼロから始まる周期変動関数となり、ゼロから増加して厚みがある値になったときに最大値を取り(この厚みの値を通常「第1最小値」と呼ばれる)、その後減少し、再度増加して第2極大値(「第2最小値」と呼ぶ)となり、その後も「d」の値が増加するにつれて上下に周期変動を続ける。従来のカラードットマトリックスねじれネマチックLCDでは、λの値が赤色、緑色、青色の各色において異なるため、第1最小値または第2最小値におけるdの最適値は、色毎に異なる。従来のディスプレイでは通常、dの値を緑色の波長に対する第1最小値または第2最小値に合わせている。しかしこのような構成にすると、ディスプレイの赤色画素および青色画素は最適化されず、視界の色彩安定性が低下するなど性能特性が劣化する。
【0025】
ねじれネマチックスイッチング素子の場合、バックライトアセンブリ105からの光は、第1偏光子110を出る時の偏光軸が、第1シート直線偏光子110側の液晶層130の表面において液晶分子の長軸に対して略平行となっている。ここで、液晶分子の長軸の方向は、異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150側の表面、およびほぼ液晶層130の平面に至るまで、液晶層130の厚み内を上方に向かって約90度回転している。液晶層130を通過する光の偏光軸は、液晶分子の長軸に沿って、約90度回転する。異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150の最大吸収軸は、表面から出ていく光の偏光軸に実質的にそろえられている。液晶層130を通過する光はどの画素に関しても単色なので、ある1つの波長の第1最小値または第2最小値に基づいて液晶層130の厚みを調整する。単色でない光を用いる場合には通常性能を犠牲にしなければならないが、上記の構成とすることによって、この問題を解決することができる。この結果、すべての表示色について「オン」の状態の輝度を改善するとともに、視界全体の色彩安定性を向上させることができる。同様の効果は、厚みが波長によって決まるような、ノーマリーブラック型のねじれネマチックスイッチング素子(例えば、最小透過率の極小値)やほかのタイプの液晶スイッチング素子に応用した場合にも得られる。
【0026】
液晶スイッチング素子の別の例を挙げると、ECB(Electrically Controlled Birefringence:電気制御複屈折)型スイッチング素子がある。このタイプのスイッチング素子においては、液晶層130の分子の長軸の方向がすべて実質的に、液晶層130の平面にあって、第1シート直線偏光子110の偏光軸に対して45度を形成している。異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150の最大吸収軸は、液晶層130内の液晶分子の長軸の方向に対して45度で、第1シート直線偏光子110に対して90度を形成している。本例に係るデバイスが備える液晶層130は、電気的に切り替え可能な半波長板として機能する。バックライトの波長をλとすると、このディスプレイの厚みは以下の式で表される。
【数4】

液晶層130の厚みは波長と正比例するため、従来のECB型ディスプレイの「白色」状態では色が濃く表示されてしまう可能性が高かった。しかし、上述したECB構造に基づいてフォトルミネッセンスカラー表示デバイスのスイッチング素子を構成し、液晶層の厚みdが、異方性発光OLEDバックライトが発する、青色光、紫色光、近紫外光、もしくはそれ以外の出力光に関する最適値に調整された場合、白色表示の際に色が表示されてしまうという問題が解決され、視界の色彩安定性が向上する。上記の方法は、液晶層が電気的に切り替え可能な板として機能するような液晶スイッチング素子であれば、どのようなタイプであっても応用が可能である。例えば、強誘電体液晶スイッチング素子にも利用できる。
【0027】
図3は、図1に示したカラー表示デバイス100に類似した、複屈折性補償膜305を備えるカラー表示デバイス300の一例を示す図である。図4は、図2に示したカラー表示デバイス200に類似した、複屈折性補償膜305を備えるカラー表示デバイス400の一例を示す図である。複屈折性補償膜305は、透明カウンタ電極140と異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150の間に設けられ、関連産業分野で公知の複屈折性補償膜であればどのようなものを用いてもよい。別の例として、複屈折性補償膜305は、第1シート直線偏光子110と第1透明電極120の間に設けられるとしてもよい。複屈折性補償膜305は、異方性フォトルミネッセンスカラー素子151、152および153および、透明素子202を介して第2シート直線偏光子160へと入る光の、ディスプレイの法線に対する、角度の増加という形での偏光状態の変化を抑制するために利用される。このように偏光状態の角度変化を抑制することによって、高いコントラストで表示データを視聴可能な視野が増加する。複屈折性補償膜305は、複屈折性材料の層を1以上備えるとしてもよく、通常は透明カウンタ電極140と異方性フォトルミネッセンスカラー素子アレイ150の間、もしくは第1シート直線偏光子110と第1透明電極120の間に設けられるとしてもよい。
【0028】
図3および図4に示したカラー表示デバイス300および400が備える複屈折性補償膜305は、以下から選択された1以上の膜層から形成されるとしてもよい。候補として挙げられる膜層は、正または負の一軸性複屈折性を持ち、異常軸が膜層の平面に対する法線となる膜層、正または負の一軸性複屈折性を持ち、異常軸が膜層の平面に含まれる膜層、正または負の一軸性複屈折性を持ち、異常軸が、膜層の平面に対する法線となる角度と膜層の平面に含まれる角度の間の角度で配向される膜層、一軸性複屈折性を有する膜層で、当該膜層を上方に縦断する異常軸の方向が、法線に対して第1の角度から第2の角度で斜めとなるか(斜角は継続的または離散的に変化するとしてもよい)、または当該膜層を上方に縦断する異常軸の角度が、法線に対して方位角を形成するようにねじれているか(ねじれ角度は継続的または離散的に変化するとしてもよい)、または当該膜層を上方に縦断する異常軸の方向が斜めとなると同時にねじれている膜層、二軸性複屈折性を有し光学軸が任意の方向にある膜層、または上記以外の適切な複屈折性膜層または複屈折性層である。複屈折性補償膜は非常に薄い堆積層から構成されるとしてもよく、厚みは合計で1ミクロン未満から数ミクロンである。
【0029】
本明細書で説明する液晶スイッチング素子は、関連技術分野で公知の液晶デバイスのうちどの適切なタイプであってもよい。例えば液晶は、ねじれネマチック、超ねじれネマチック、強誘電体などの適切な液晶材料を用いてよい。液晶スイッチング素子の電極および駆動構造は、能動素子でも受動素子でもよいし、横電界(In−Plane−Switching)型としてもよいし、より一般的には縦横に切り替えられるとしてもよい。さらに別の例を挙げると、スイッチング素子は液晶スイッチング素子でなくてもよい。例えば、スイッチング素子はリチウムナイオベートスイッチング素子、デジタルミラー、半透過型素子、LCOS素子またはこれ以外の適切な光スイッチング素子であってもよい。
【0030】
図6は、偏光光源によって点灯するフォトルミネッセンス膜デバイスを示す図である。このデバイスは、異方性を有する光を発する重合性反応性メソゲンから成る膜601、第1波長選択リフレクタ602、第2波長選択リフレクタ603を備えるとしてもよい。第1波長選択リフレクタ602は、光源604とは反対側に前方に向けてフォトルミネッセンス膜が発するフォトルミネッセンス光を反射する一方、光源から発せられた光をフォトルミネッセンス膜601に対して透過させ、当該透過された光はフォトルミネッセンス膜601のフォトルミネッセンス発色団によって吸収される。また、第2波長選択リフレクタ603は当該フォトルミネッセンス発色団が吸収した光の波長を反射する一方、フォトルミネセンス発色団が発した光の波長を透過させる。
【0031】
このようなフォトルミネッセンス偏光発光デバイスは、1以上のフォトルミネッセンス反応性メソゲンの混合物から成る配向膜の重合によって生成された膜と、任意で1以上の波長選択リフレクタを備えるとしてもよい。波長選択リフレクタはフォトルミネッセンス反応性メソゲンの発色団によって吸収された波長の光を透過させるとしてもよいが、1以上のフォトルミネッセンス反応性メソゲンの発色団が発する波長の光を反射する。または、波長選択リフレクタは1以上のフォトルミネッセンス反応性メソゲンの発色団が発する波長の光を透過させるとしてもよいが、フォトルミネッセンス反応性メソゲンの発色団によって吸収された波長の光を反射する。このような波長選択リフレクタは、重合性フォトルミネッセンス反応性メソゲン膜の表面のうち、フォトルミネッセンス光が出てくる面の反対側の表面に隣接して設けられるとしてもよい。または、この波長選択リフレクタは、重合性フォトルミネッセンス反応性メソゲン膜の表面のうちフォトルミネッセンス光が出てくる側の表面に隣接して設けられるとしてもよい。
【0032】
1以上のフォトルミネッセンス反応性メソゲンは分子式「B−S−A−S−B」を持つとしてもよい。この式において、「B」は光重合をしやすい末端で、「S」はフレキシブルスペーサで、「A」はフォトルミネッセンス発色団である。末端「B」の光重合はフリーラジカルによって開始されるとしてもよい。発色団「A」の一般的な式は「−(Ar−Fl)−Ar−」で表されるとしてもよい。ここで、「Ar」は、直線状または略直線状に隣接するジラジカルと結合された、もしくは単結合の、芳香族ジラジカルまたは複素環式芳香族ジラジカルで、Flは、隣接するジラジカルと2および7位置で結合される9,9−ジアルキル置換フルオレンジラジカルで、ArジラジカルとFlジラジカルは、発色団のn個のサブユニットのそれぞれにおいて独自に選択されるとしてもよい。ここで1≦n≦10となるが、好ましくは、3≦n≦10である。末端「B」の例には、1,4−ペンタディエン−3−イルラジカル、アクリレートおよびメタクリレートがある。重合性材料はさらに、非ルミネッセンス反応性メソゲンを含むとしてもよい。
【0033】
重合の対象となる材料は配向層によって配向されるとしてもよい。例えば、配向層はラビング処理を行ったポリマー、ラビング処理を行ったポリイミド、光配向層またはそれ以外の適切な配向層であってよい。
【0034】
フォトルミネッセンス材料の重合は、光重合であってもよい。この場合、フォトルミネッセンス材料は画素または領域に分割されるとしてもよい。そのような画素または領域はそれぞれ、2つ、3つもしくはそれ以上の複数の異なる波長帯を持つ光を発し、および/または2つもしくはそれ以上の複数の異なる直線偏光の配向を持つ光を発するとしてもよい。画素への分割は光パターニングによって行うとしてもよい。
【0035】
本明細書において開示した表示デバイスは、米国特許第6,594,062号で開示されているようなフォトルミネッセンス偏光子を形成するべく構成されてもよい。当該特許文献の内容はすべて参照により本願に組み込まれる。
【0036】
本発明の複数の実施形態および本発明の効果を詳細に説明したが、本願の請求項によって定義される本発明の教示内容、本発明の目的および範囲を超えることなく、本発明の開示内容の変更、置換、変形、修正、変化、入れ替え、変換を行ってもよいと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーディスプレイであって、
単色光源と、
画素素子アレイと、
前記単色光源と前記画素素子アレイの間に設けられた液晶光スイッチと
を備え
前記画素素子アレイの少なくとも一部分は異方性発光フォトルミネッセンス材料を含む
カラーディスプレイ。
【請求項2】
前記単色光源は紫色スペクトルまたは近紫外スペクトルの光を発する
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記単色光源は青色光を発する
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記単色光源は偏光された光を発する
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記単色光源は、異方性発光有機発光デバイスから成る光源である
請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記画素素子アレイは、異なる色の光を発する複数のフォトルミネッセンス材料を含む
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記異なる色の光を発する複数のフォトルミネッセンス材料は2色の異なる色の光を発する
請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記画素素子アレイは透過型素子または散乱型素子を含む
請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記2色の異なる色の光は赤色光と緑色光で、前記単色光源は青色光を発する
請求項7に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記異なる色の光を発する複数のフォトルミネッセンス材料は、3色の異なる色の光を発する
請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記3色の異なる色の光は、赤色光、緑色光および青色光である
請求項10に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記異方性発光フォトルミネッセンス材料は、所定の偏光を有する光が照射された場合に光を発し、
前記異方性発光フォトルミネッセンス材料は、前記所定の偏光に直交する偏光を有する光が照射された場合には、ほとんど光を発しない
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記液晶光スイッチは液晶層を有する
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項14】
前記液晶層の厚みは前記単色光源の波長に従って選択される
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項15】
前記厚みは最大透過率の極大値に対応する
請求項14に記載のディスプレイ。
【請求項16】
前記厚みは最小透過率の極小値に対応する
請求項14に記載のディスプレイ。
【請求項17】
前記光スイッチは、バンドギャップが大きい材料から成る透明な導体を含む
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項18】
前記光スイッチは複屈折性補償器を含む
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項19】
前記光スイッチは、グレースケール制御を行う
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項20】
前記単色光源と前記画素素子アレイの間に設けられた光リフレクタ
をさらに備え、
前記光リフレクタは前記単色光源からの光を透過し、前記異方性発光フォトルミネッセンス材料を含む前記画素素子アレイからの光を反射する
請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項21】
カラー画像を表示する方法であって、
単色光を生成することと、
液晶光スイッチによって前記単色光を変調して変調単色光を生成することと、
前記変調単色光の少なくとも一部を、異方性発光フォトルミネッセンス材料で、複数の異なる波長を持つ光に選択的に変換することと
を含む方法。
【請求項22】
前記単色光は紫色光または近紫外光である
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記単色光は青色光である
請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記単色光は偏光された光である
請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記偏光された光は、異方性発光有機発光デバイスである光源から発せられる
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記異方性発光フォトルミネッセンス材料は、異なる色の光を発する複数のフォトルミネッセンス材料を含む
請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記異なる色の光を発する複数のフォトルミネッセンス材料は2色の異なる色の光を発する
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記変調単色光の少なくとも一部を、異なる波長に変換することなく、選択的に透過すること
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記2色の異なる色の光は赤色光と緑色光で、前記単色光は青色光である
請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記異なる色の光を発する複数のフォトルミネッセンス材料は、3色の異なる色の光を発する
請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記3色の異なる色の光は、赤色光、緑色光および青色光である
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記異方性発光フォトルミネッセンス材料は、所定の偏光を有する前記変調単色光が照射された場合に光を発し、
前記異方性発光フォトルミネッセンス材料は、前記所定の偏光に直交する偏光を有する前記変調単色光が照射された場合には、ほとんど光を発しない
請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記単色光の変調は、少なくとも部分的に前記液晶光スイッチの液晶層によって行われる
請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記液晶層の厚みは前記単色光の波長に従って選択される
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記厚みは最大透過率の極大値に対応する
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記厚みは最小透過率の極小値に対応する
請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記液晶層はバンドギャップが大きい材料から成る透明な導体によって駆動される
請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記単色光の変調は複屈折性補償器による補償を含む
請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記単色光の変調によってグレースケール制御を行う
請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の異なる波長を持つ光をほぼすべて反射して、前記単色光を透過または散乱すること
をさらに含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−522224(P2008−522224A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543556(P2007−543556)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/042849
【国際公開番号】WO2006/058267
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】