説明

カラー表示用LEDパネル

【課題】消費電力が小さく、白色表示と白色以外の表示の輝度差が少なく且つ白色表示における色調むらが小さく、また光源としても使用できるカラー表示用LEDパネルを提供することにある。
【解決手段】赤色LED素子5による赤色(R)光を放出するドットDRと、緑色LED素子6による緑色(G)光を放出するドットDGと、青色LED素子7による青色(B)光を放出するドットDBと、青色LED素子7による青色(G)光の一部が蛍光体9を励起することによって波長変換された黄色光と、青色LED素子7による青色光との混合(加法混色)による白色(W)に近い色調の光を放出するドットDWによって画素Pを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー表示用LEDパネルに関するものであり、詳しくは、赤色LED素子による赤色光放出部、緑色LED素子による緑色光放出部、青色LED素子による青色光放出部、およびLED素子と蛍光体の組み合わせによる白色光(白色に近い色調の光を含む)放出部を備えたカラー表示用LEDパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子を発光源とするフルカラー表示用LEDパネルについては、図8に示す構成のものが提案されている。それは、それぞれ赤色(R)光を発光する赤色LED素子と、緑色(G)光を発光する緑色LED素子と、2つの画素間で共有する青色(B)光を発光する青色LED素子で構成された画素P1、P2からなる画素ペアP12を、縦横それぞれ所定の行列数からなるマトリックス状に配置してフルカラー表示用LEDパネルを形成したものである。
【0003】
そして、画素P1および画素P2からは、それぞれの画素P1、P2を構成する赤色LED素子、緑色LED素子、青色LED素子によるそれぞれ階調制御された赤色光、緑色光、青色光の各単色光およびそれら2つ以上の単色光を混合してなる混色光による種々の色調の光を得ることができ、それによってフルカラー表示が可能となる、というものである(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−127344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成のフルカラー表示用LEDパネルは、そのままマルチカラー表示用としても使用可能である。
【0005】
ここでいうマルチカラー表示とは、階調制御を伴わない赤色光、緑色光、青色光の各単色光およびそれら2つ以上の単色光を混合してなる混色光による7種類の色調の光によって表現される表示方法である。
【0006】
ところで、赤色光、緑色光、青色光の各単色光を混合して白色光を得るためには、それぞれの単色光のCIE色度図上の色度座標、および求める白色光のCIE色度図上の色度座標にもよるが、例えば、赤色光、緑色光、青色光のそれぞれの輝度比を概ね3:7:1とすると比較的良好なホワイトバランスが得られるともいわれている。
【0007】
但し、この輝度比率でマルチカラー表示を行なった場合、赤色LED素子、緑色LED素子、青色LEDで構成された画素から放出される単色光の青色光と混色光の白色光を比較すると、その輝度比は青色光[1]に対して白色光は赤色光、緑色光、青色光の各混合比を加えた[11]となり、白色光が青色光の約10倍以上の輝度となる。
【0008】
従って、表示パネル内に青色光を放出する画素と白色光を放出する画素が同時に存在した場合、青色光と白色光との間の輝度バランスが悪いために輝度むらが生じ、表示品位に劣る表示パネルとなってしまうという問題がある。当然、白色光と他の6種類の色調の光との間にもこのような問題は存在する。
【0009】
また、それぞれの画素における赤色LED素子、緑色LED素子、青色LED素子の駆動電流の総和は白色光の放出時が最も大きくなり、そのときの電流値は赤色LED素子、緑色LED素子、青色LED素子の各駆動電流を加算したものとなる。そのため、表示パネル内で白色表示領域が広がるにつれて消費電力が急激に増加するという問題点も有している。
【0010】
更に、各画素を構成する赤色LED素子、緑色LED素子、青色LED素子のそれぞれには順電流−電圧特性等の電気的特性および順電流−発光強度特性、周囲温度−相対輝度特性等の光学的特性についてばらつきが存在する。そのため、混合する光色数が多くなるにつれて各画素間の色調のばらつきが大きくなり、この色調ばらつきは赤色LED素子、緑色LED素子、青色LED素子による3種類の単色光の混合で白色光を形成したときに最大となる。つまり、白色表示を行なうと、白色表示画素間でホワイトバランスのばらつきが生じ、表示パネル内において色むらのある見栄えの悪い白色表示となってしまうという問題もある。
【0011】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、消費電力が小さく、白色表示と白色以外の表示の輝度差が少なく且つ白色表示における色調むらが小さく、また光源としても使用できるLEDカラー表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、それぞれLED素子を発光源とする複数のドットが縦横それぞれ所定の間隔および所定の行列数でマトリックス状に配置されてなるカラー表示用LEDパネルであって、前記カラー表示用LEDパネルは、赤色LED素子からの赤色光を放出するドット、緑色LED素子からの緑色光を放出するドット、青色LED素子からの青色光を放出するドット、および蛍光体励起用LED素子と蛍光体との組み合わせで生成される白色光を放出するドットによって画素が構成され、前記画素が縦横それぞれ所定の間隔および所定の行列数でマトリックス状に配置されてなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記蛍光体励起用LED素子は青色LED素子であり、前記蛍光体は青色光により励起されて黄色光を放射する黄色蛍光体であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1において、前記蛍光体励起用LED素子は青色LED素子であり、前記蛍光体は青色光により励起されて緑色光および赤色光をそれぞれ放射する緑色蛍光体および赤色蛍光体を混合したものであることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項4に記載された発明は、請求項1項において、前記蛍光体励起用LED素子は紫外線LED素子であり、前記蛍光体は紫外線により励起されて青色光、緑色光および赤色光をそれぞれ放射する青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体を混合したものであることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記各ドットの前記発光源は、1個のLED素子または並列に接続された複数個のLED素子群からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカラー表示用LEDパネルは、赤色LED素子による赤色光を放出するドット、緑色LED素子による緑色光を放出するドット、青色LED素子による青色光を放出するドット、および蛍光体励起用LED素子と蛍光体との組み合わせで生成される白色光あるいは白色に近い色調の光を放出するドットによって画素を構成した。
【0018】
その結果、消費電力が小さく、白色表示と白色以外の表示の輝度差が少なく且つ白色表示における色調むらが小さく、また光源としても使用できるカラー表示用LEDパネルが実現できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のLEDカラー表示パネルに係わる実施形態を図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本実施形態のカラー表示用LEDパネルの画素構成を示す上面図である。カラー表示用LEDパネル1は、それぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、および白色(W)のいずれかの色調の光を放出する複数の光放出部(以下、ドットDと呼称する)が縦横それぞれ所定の間隔および所定の行列数からなるマトリックス状に配置されている。
【0021】
具体的には、赤色(R)光を放出するドットDR、緑色(G)光を放出するドットDG、青色(B)光を放出するドットDB、および白色(W)光を放出するドットDWがいずれも縦横1行1列置に配置され、互いに隣接する4個のドットDR、DG、DB、DWによって画素Pが構成されている。
【0022】
更に、画素Pが縦横それぞれ所定の行列数からなるマトリックス状に配置されてカラー表示用LEDパネル1の表示部2を形成している。
【0023】
図2は画素Pを構成する4種類のドットDR、DG、DB、DWの構造の一例を示す上面図であり、図3は図2のA−A断面図である。図2および図3より、セラミック材料からなる基材3の一方の面側に、断面形状が上底を基材側とする台形の凹部4が形成されている。そして、ドットDRの凹部4の底面には4個の赤色LED素子5が実装され、同様にドットDGの凹部4には4個の緑色LED素子6が、ドットDBの凹部4には4個の青色LED素子7がそれぞれ実装され、更に凹部4内に透光性樹脂8が充填されて各LED素子5、6、7を外部環境から保護すると共に、LED素子5、6、7の光取り出し効率の向上を図っている。
【0024】
これにより、ドットDRからは赤色LED素子5による赤色(R)光がそのまま放出され、同様にドットDGからは緑色LED素子6による緑色(G)光が、ドットDBからは青色LED素子7による青色(B)光がそれぞれ放出される。
【0025】
また、ドットDWの凹部4の底面には青色LED素子7が実装され、凹部4内には青色LED素子7からの光に励起されて青色の補色となる黄色の光に波長変換する蛍光体9を透光性樹脂に混入した蛍光体入り樹脂10が充填されている。そのため、ドットDWからは、青色LED素子7からの青色光の一部が蛍光体9を励起することによって波長変換された黄色光と、青色LED素子7からの青色光との混合(加法混色)による白色(W)に近い色調の光が放出される。
【0026】
なお、ドットDWにおいて、青色LED素子を実装した場合、青色光に励起されて緑色光および赤色光にそれぞれ波長変換する2種類の蛍光体を混入した蛍光体入り樹脂を充填することにより、青色LED素子からの青色光の一部が蛍光体を励起することによって波長変換された緑色光および赤色光と、青色LED素子からの青色光との混合(加法混色)によって白色(W)光を得ることもできる。
【0027】
また、ドットDWに紫外線LED素子を実装して白色(W)光を得る方法もある。それは、紫外線LED素子を実装した凹部内に、紫外線に励起されて赤色光、緑色光、青色光にそれぞれ波長変換する3種類の蛍光体を混入した蛍光体入り樹脂を充填することにより、紫外線LED素子からの紫外線が蛍光体を励起することによって波長変換された赤色光、緑色光、青色光の混合(加法混色)によって白色(W)光を得るものである。
【0028】
図4および図5は各画素におけるLED素子の回路図である。図4は画素Pを構成する各ドットDR、DG、DB、DWのそれぞれに1個の赤色LED素子5、1個の緑色LED素子6、1個の青色LED素子7、1個の青色LED素子7が設けられた場合の結線方法を示しており、各LED素子5、6、7、7の互いのアノード同士およびカソード同士は分離され、各LED素子5、6、7、7が独立して個別に駆動できるようになっている。
【0029】
また、図5は画素Pを構成する各ドットDR、DG、DB、DWのそれぞれに複数個の赤色LED素子5、複数個の緑色LED素子6、複数個の青色LED素子7、複数個の青色LED素子7が設けられた場合の結線方法を示しており、各ドットDR、DG、DB、DW内に設けられたLED素子同士は互いに並列に接続された赤色LED素子群11、緑色LED素子群12、青色LED素子群13、青色LED素子群13を形成し、各LED素子群11、12、13、13の互いのアノード同士およびカソード同士は分離され、各LED素子群11、12、13、13が独立して個別に駆動できるようになっている。
【0030】
本実施形態においては、各ドットDR、DG、DB、DWはそれぞれ4個のLED素子によって構成されているが、各ドットDR、DG、DB、DWに設けられるLED素子の数は4個に限定されるものではなく、各LED素子の電気的特性、光学特性、各ドットに求められる明るさ等によって決定される。よって、各ドットDR、DG、DB、DWに設けられるLED素子の数は必ずしも同数とはは限らず、また、1個と複数個の組み合わせも考えられる。
【0031】
なお、上記図1で示す各ドットDR、DG、DB、DWの配置は一例を示したもので、他に図6に示すようは配列も考えられる。それは、赤色(R)光が放出されるドットDR、緑色(G)光が放出されるドットDG、青色(B)光が放出されるドットDB、白色(W)光が放出されるドットDW、の4種類のドットで画素Pを構成する点では上記と同様であるが、少なくとも白色(W)光が放出されるドットDWを互いに隣接する位置に配置するものである。
【0032】
これにより、蛍光体入り樹脂を充填するときに隣接する4個のドットD(4W)に一括充填することが可能となり、製造工程上効率的である。
【0033】
なお、ドットDWの凹部4に充填する樹脂を透光性樹脂に蛍光体を混入した蛍光体入り樹脂としたが、図7にあるように、青色LED素子7を蛍光体9で覆い、その上に透光性樹脂8充填するような構造でもかまわない。
【0034】
以上説明したように、本発明のカラー表示用LEDパネルは、1つの画素を赤色(R)光が放出されるドットDR、緑色(G)光が放出されるドットDG、青色(B)光が放出されるドットDB、白色(W)光が放出されるドットDW、の4種類の色調の異なる光を放出するドットで構成した。
【0035】
そして更に、各ドットを構成するLED素子あるいはLED素子群を互いに異なる他の種類のLED素子あるいはLED素子群と分離した回路構成とし、各ドットから放出される光のON/OFF制御が独立してできるようにした。
【0036】
そのため、画素内において、白色以外の表示は、ドットDRから放出される赤色光、ドットDGから放出される緑色光、ドットDBから放出される青色光の各単色光およびそれら2つ以上の単色光を混合してなる混色光(加法混色)による表示を行ない、白色表示は、ドットDWから放出される白色光のみによって行なうことができる。
【0037】
その結果、階調制御を伴わないマルチカラー表示において、白色光の輝度を他の6種類の色調の光の輝度に近づけることが可能となり、白色表示と他の色調の表示の間の輝度バランスが改善され、輝度むらが低減されて表示品位に優れた表示パネルが実現する。
【0038】
白色表示は、3種類のLED素子による赤色光、緑色光、青色光の混色によるものではなく、1種類のLED素子と蛍光体との組み合わせにより形成されるものであり、表示パネル内で白色表示領域が広がったとしても消費電力が増加するものではない。よって、省エネタイプの表示パネルとすることができる。
【0039】
また、白色表示を1種類のLED素子と蛍光体との組み合わせにより形成するものであることから、白色表示において、LED素子の電気的特性および光学的特性のばらつきによる白色表示画素間でのホワイトバランスに対する影響は少なく、よって、表示パネル内において色むらの少ない見栄えの良い白色表示が実現できる。
【0040】
更に、蛍光体を励起するLED素子に供給する電流を定格近くまで増加させて表示パネル全面を白色表示とするとにより高輝度の白色面光源にもなり、カラー表示用LEDパネルはマルチカラー表示と白色面光源の両方の用途に対応することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態の部分上面図である。
【図2】同じく、本発明の実施形態の部分上面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係わるLEDの回路図である。
【図5】本発明の実施形態に係わるLEDの回路図である。
【図6】本発明の実施形態の部分上面図である。
【図7】本発明の実施形態の部分断面図である。
【図8】従来例のフルカラーLED表示装置の上面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 カラー表示用LEDパネル
2 表示部
3 基材
4 凹部
5 赤色LED素子
6 緑色LED素子
7 青色LED素子
8 透光性樹脂
9 蛍光体
10 蛍光体入り樹脂
11 赤色LED素子群
12 緑色LED素子群
13 青色LED素子群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれLED素子を発光源とする複数のドットが縦横それぞれ所定の間隔および所定の行列数でマトリックス状に配置されてなるカラー表示用LEDパネルであって、前記カラー表示用LEDパネルは、赤色LED素子からの赤色光を放出するドット、緑色LED素子からの緑色光を放出するドット、青色LED素子からの青色光を放出するドット、および蛍光体励起用LED素子と蛍光体との組み合わせで生成される白色光を放出するドットによって画素が構成され、前記画素が縦横それぞれ所定の間隔および所定の行列数でマトリックス状に配置されてなることを特徴とするカラー表示用LEDパネル。
【請求項2】
前記蛍光体励起用LED素子は青色LED素子であり、前記蛍光体は青色光により励起されて黄色光を放射する黄色蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載のカラー表示用LEDパネル。
【請求項3】
前記蛍光体励起用LED素子は青色LED素子であり、前記蛍光体は青色光により励起されて緑色光および赤色光をそれぞれ放射する緑色蛍光体および赤色蛍光体を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載のカラー表示用LEDパネル。
【請求項4】
前記蛍光体励起用LED素子は紫外線LED素子であり、前記蛍光体は紫外線により励起されて青色光、緑色光および赤色光をそれぞれ放射する青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載のカラー表示用LEDパネル。
【請求項5】
前記各ドットの前記発光源は、1個のLED素子または並列に接続された複数個のLED素子群からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカラー表示用LEDパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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