説明

カリクレインインヒビターおよびその使用

【課題】患者の失血を防止または軽減するための方法を提供すること。
【解決手段】上記患者の失血を防止または軽減するための方法は、抗血栓溶解剤との組み合わせで天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドを該患者に投与する工程を包含する。一つの局面において、上記失血は、患者に施される外科処置に起因する術中失血である。一つの局面において、上記外科処置は、心胸郭手術である。一つの局面において、上記心胸郭手術は、人工心肺または冠状動脈バイパス移植である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、補体成分の触媒活性化および凝血/線維素溶解系に関連した侵襲的外科処置の分野におけるものである。より具体的には、本発明は、例えば、侵襲的外科処置を供される患者において、失血(例えば、術中失血)、および/または種々の虚血と関連した損傷を軽減し、または防止するために天然に存在しないカリクレインインヒビターを利用する方法、キットおよび組成物を提供する。例えば、本発明は、心肺バイパスを必要とする処置と関連した失血を軽減するために記載の方法、キットおよび組成物を提供する。好ましくは、本発明は、天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび、例えば、抗線維素溶解剤などの抗血栓溶解剤の組み合わせを利用する方法、キットおよび組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
医学における多くの進歩のおかげで、多数の高度に侵襲的な外科処置が毎日行われ、失血を引き起こすか、または患者を高度の失血の危険にさらしている。このような患者は、通常の血液供給および恒常性を回復および維持していることを注意深くモニターされ、そして、これらの患者は、輸血を必要とし得る。失血を伴う外科処置は、心肺バイパス(CPB)などの体外の循環法を伴う外科処置を含む。これらのような方法において、患者の心臓は、停止され、そして、その循環、酸素付加および血液量の維持は、体外循環および合成膜型人工肺を使用して、人工的に実行される。これらの技術は、心臓外科手術中一般に使用される。さらに、冠状動脈バイパス移植術(CABG)において必要とされる胸骨開裂または腰部置換処置などの骨に対する広汎な外傷を伴う外科手術もまた、接触活性化系(CAS)の活性化と関連があり、このCASは、血液および血管系における種々の破損の原因となり得ることは明らかである。
【0003】
アテローム硬化性冠状動脈疾患(CAD)は、1つ、または幾つかの冠状動脈の管腔の狭窄を引き起し;この狭窄は、心筋(すなわち、心臓の筋肉)への血流を制限し、そして、激痛、心不全および心筋梗塞を引き起こし得る。冠状動脈のアテローム硬化の最終段階においては、その冠状動脈の循環は、ほとんど完全に閉塞し、致死性が非常に高い生命にかかわる激痛、または心不全引き起こし得る。CABG処置には、この閉塞した血管を架橋し、そして、心臓への血液を回復することが要求され得;それらの処置は、生命を救う可能性がある。CABG処置は、最も侵襲性がある外科手術の1つであり、1つ以上の健康な静脈または動脈が移植され、その疾患のある血管の閉塞した部分の周囲に「バイパス」を提供する。
【0004】
アメリカ合衆国において1998年に実施されたCABG処置の数は、約500,000である。CABG処置は、小規模だが重要な術中の危険を有するが、CABG処置が、アテローム硬化性心臓血管疾患の致死および病的状態から即時の解放を患者に提供することにおいては、かなりの成功している。これらのとても励みになる結果にもかかわらず、再度のCABG処置は珍しく、これは、最終的に2回目および3回目の処置を経験する患者の数における明白な増加により示され;最初のCABG処置で見られる術中致死および病的状態は、CABG処置の再実施においては増加する。
【0005】
複雑ではないCADのための最小侵襲手術の技術における改善があった。しかしながら、心臓弁膜症および/または先天性心臓疾患、心臓移植および主要な大動脈処置のために実行されるほとんどすべてのCABG処置は、未だCPBにより補助された患者に実行される。CPBにおいては、大きなカニューレが、患者の大血管内に挿入され、膜型人工肺を使用して血液の機械的なポンピングおよび酸素付加を可能にする。血液は、肺を流れることなしに、患者に戻され、ここで、肺はこの処置中低灌流にされる。心臓は、心臓麻痺性溶液を使用して止められ、この患者は脳損傷を妨げる助けとなるように冷却され、そして、体外循環、すなわち、CPB循環により血液の末梢循環量が増加される。このCPB循環は、ドナー血液と「プライミングする」ことを必要とし、そして、生理食塩水混合液が、体外循環を充たすために使用される。CPBは、ほとんど半世紀の間に実施された種々の処置において広汎に使用され、結果は成功であった。人工の表面、血球、血液タンパク質、損傷を受けた血管内皮および、骨などの血管外組織の間の相互作用は、恒常性を邪魔し、頻繁にCASを活性化し、既に注記したように、血液および血管系に種々の破損を引き起こし得る。このような破損は、過度の術中出血を誘発し、次いで、即時の輸血を必要とする。CPBで体外循環を通って全血液を循環させる結果は、全身性炎症反応(SIR)もまた含み得、このSIRは、凝血および補体系の接触活性化により触発される。実際、表面上は機械的に成功するCPB外科処置と関連した致死および病的状態の多くは、凝血、線維素溶解または補体系を活性化する効果の結果である。このような活性化は、呼吸器系を損傷し得、これは、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、腎臓および内臓循環の障害、ならびに失血および輸血の必要を招く全身性の凝血異常の誘発を導く。術中失血の危険に加えて、SIRと関連したさらなる病状としては、神経性認知障害、脳卒中、腎不全、急性心筋梗塞および心臓組織の損傷が挙げられる。
【0006】
輸血もまた、感染の重大な危険を引き起こし、そして、CABGまたはCPBを必要とする他の類似処置の費用を引き上げる。いずれかの薬理学的介入がなければ、優れた外科技術をもってしても、代表的には血液の3単位から7単位が、あいにく消耗される。したがって、CPBおよびCABG処置に供される患者における術中出血およびSIRを軽減、または防止するということは、新しくかつ改善された処置を開発するための相当な動機付けになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(概要)
本開示は、少なくとも一部は、天然に存在しないカリクレインインヒビター、例えば、Kunitzドメインカリクレインインヒビターポリペプチドおよび抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤の組み合わせが、被験体に投与され、失血、例えば、術中失血、ならびに、虚血(術中失血と関連した虚血および脳虚血を含む)と関連した傷害、全身性炎症反応の発症および/または再灌流傷害、例えば、脳虚血または局部脳虚血と関連した再灌流傷害を排除し、または軽減し得るという発見に基づく。1つの実施形態において、上記処置は、以下:出血の軽減または解消、毛細血管での漏血および体液バランスにおける変化、のうちの1つ以上により、失血を軽減または解消し得る。この処置は、例えば、心胸郭外科手術(例えば、心肺バイパス)、整形外科手術(例えば、腰部もしくは膝部の置換、または骨折)、肝臓切除、腎臓切除などの侵襲的な外科処置に供される患者における場合であり得る。この侵襲的な外科処置は、体外循環または透析の使用を伴い得る。好ましくは、この処置は、組み合わされた投与のおかげで、より有効であることが望まれる。例えば、抗血栓溶解剤が、より有効である、例えば、相当する効果が、より少ない抗血栓溶解剤で見られるか、この抗血栓溶解剤による処置が、天然に存在しないカリクレインインヒビターなしに投与された場合に、見られたであろう程度以上の症状を軽減するか、そして/または抗血栓溶解剤と関連した望ましくない副作用が、抗血栓溶解剤が、天然に存在しないカリクレインインヒビターなしに投与された場合に見られたであろう程度よりも少なくしか見られないか、またはその類似した状態が、天然に存在しないカリクレインインヒビターを用いた場合に見られるか、等が挙げられる。
【0008】
したがって、本開示は、失血および/または虚血と関連した傷害を解消または軽減するために、天然に存在しないカリクレインインヒビター、例えば、血漿カリクレインインヒビターおよび抗血栓溶解剤を包含する、方法、組成物およびキットを特色とする。好ましくは、この抗血栓溶解剤は、抗線維素溶解剤、例えば、本明細書中で記載された抗線維素溶解剤である。抗線維素溶解剤は、以下:トラネキサム酸(CyklokapronTM)、イプシロンアミノカプロン酸(AmicarTM)、アプロチニン(TrasyolTM)、デスモプレッシン(DDAVP)および、ピルフェニドン(pirfenidone)、のうちの1つ以上であり得る。
【0009】
1つの局面において、本開示は、患者における失血を防止または軽減するための方法を特色とし、この方法は、抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤との組み合わせにおいて、カリクレイン、例えば、血漿カリクレインの天然に存在しないインヒビターを患者に投与する工程を包含する。代表的には、この患者は、ヒトの患者である。カリクレインのインヒビターおよび抗血栓溶解剤の組み合わせは、失血を防止または軽減するために有効な量で投与され得る(例えば、以下:出血、毛細血管漏血および体液バランスにおける変化、の1つ以上を防止または軽減する)。特定の実施形態において、この失血は、患者に実施された外科処置に起因する術中失血である。この外科処置は、例えば、心胸郭外科手術(例えば、心肺バイパスまたは冠状動脈バイパス移植術);整形外科手術(例えば、腰部もしくは膝部の置換、または骨折);肝臓切除;腎臓切除;体外循環または透析を利用する処置;および術中失血を引き起こし得るいずれかの他の処置であり得る。インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、上記処置の前、最中、または後に投与され得る。1つの実施形態において、上記方法は、その処置の前、最中、または後に輸血量または輸血の必要性を減少させる。
【0010】
別の局面において、本開示は、失血、例えば、患者に実施された外科処置に起因する術中失血を防止または軽減するためのキットを特色とする。このキットは、カリクレイン、例えば、血漿カリクレインの天然に存在しないインヒビターおよび抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤と組み合わせて、このインヒビターを投与するための指示書を含み得る。1つの実施形態において、それらの指示は、抗血栓溶解剤がない場合における、インヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路とは異なる、このインヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路を提供する。1つの実施形態においては、上記キットは、さらに抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤を含む。
【0011】
別の局面において、本開示は、患者における虚血と関連した傷害を防止または軽減するための方法を特色とし、この方法は、抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤との組み合わせで、カリクレイン、例えば、血漿カリクレインの天然に存在しないインヒビターを、患者に投与する工程を包含する。カリクレインのインヒビターおよび抗血栓溶解剤の組み合わせは、患者における虚血と関連した傷害を防止または軽減するために有効な量で投与され得る。特定の実施形態において、この虚血は、少なくとも部分的には、失血、例えば、患者に実施された外科処置に起因する術中失血に起因する。この外科処置は、例えば、心胸郭外科手術(例えば、心肺バイパスまたは冠状動脈バイパス移植術);整形外科手術(例えば、腰部もしくは膝部の置換、または骨折);肝臓切除;腎臓切除;体外循環または透析を利用する処置;および術中失血を引き起こし得るいずれかの他の処置であり得る。インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、上記処置の前、最中、または後に投与され得る。
【0012】
別の局面において、本開示は、患者における虚血に関連した傷害を防止または軽減するためのキットを特色とし、例えば、この虚血は、少なくとも部分的には、失血、例えば、患者に実施された外科処置に起因する術中失血に起因する。このキットは、カリクレイン、例えば、血漿インヒビターの天然に存在しないインヒビターおよび抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤と組み合わせて、このインヒビターを投与するための指示書を含み得る。1つの実施形態において、それらの指示書は、抗血栓溶解剤がない場合における、インヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路とは異なる、このインヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路を提供する。1つの実施形態においては、上記キットは、さらに抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤を含む。
【0013】
別の局面において、本開示は、全身性炎症反応、例えば、患者における外科処置と関連した反応または全身性炎症反応の発症を防止または軽減するために記載の方法を特色とする。この方法は、抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤との組み合わせで、カリクレイン、例えば、血漿カリクレインの天然に存在しないインヒビターを患者に投与する工程:を包含する。代表的には、この患者は、ヒトの患者である。そのインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、外科手術前、最中、または後に投与され得る。1つの実施形態において、この外科処置は、例えば、心胸郭外科手術(例えば、心肺バイパスまたは冠状動脈バイパス移植術);整形外科手術(例えば、腰部もしくは膝部の置換、または骨折);肝臓切除;腎臓切除;体外循環または透析を利用する処置;および術中失血を引き起こし得るいずれかの他の処置であり得る。
【0014】
別の局面において、本開示は、全身性炎症反応、例えば、患者における外科処置と関連した反応または全身性炎症反応の発症を防止または軽減するためのキットを特色とする。このキットは、カリクレイン、例えば、血漿カリクレインの天然に存在しないインヒビターおよび抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤と組み合わせて、このインヒビターを投与するための指示書を含み得る。1つの実施形態において、それらの指示書は、抗血栓溶解剤がない場合における、インヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路とは異なる、このインヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路を提供する。1つの実施形態においては、上記キットは、さらに抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤を含む。
【0015】
別の局面において、本開示は、脳または中枢神経系(CNS)傷害を処置するために記載の方法を特色とする。この方法は、患者における脳虚血(例えば、脳卒中)および/または再灌流傷害(例えば、脳虚血と関連した再灌流傷害)の副作用を防止または軽減するために使用され得、カリクレインの天然に存在しないインヒビターを患者に投与する工程を包含する。幾つかの実施形態において、この方法は、抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤を投与する工程をさらに包含する。1つの実施形態においては、上記脳虚血は、脳卒中、例えば、塞栓症と関連した脳卒中、血栓と関連した脳卒中および大出血と関連した脳卒中である。この方法は、上記インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤を、上記虚血前、最中または後に、例えば、再灌流時に、または虚血状態から1時間後と12時間後との間のある時点で、例えば、その状態から1時間後と5時間後との間に投与する工程を包含する。
【0016】
別の局面において、本開示は、脳または中枢神経系(CNS)損傷を処置する(例えば、脳の虚血)および/または再灌流傷害(例えば、脳の虚血と関連した再灌流傷害)の副作用を防止または軽減するためのキットを特色とする。1つの実施形態において、上記脳虚血は、脳卒中、例えば、塞栓症と関連した脳卒中、血栓と関連した脳卒中および大出血と関連した脳卒中である。上記キットは、カリクレイン、例えば、血漿インヒビターの天然に存在しないインヒビターおよび抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤と組み合わせて、このインヒビターを投与するための指示書を含み得る。1つの実施形態においては、それらの指示書は、抗血栓溶解剤がない場合における、インヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路とは異なるインヒビターの投与レジメン、投与スケジュールおよび/または投与経路を提供する。1つの実施形態においては、上記キットは、さらに抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤を含む。
【0017】
本開示はまた、カリクレイン、例えば、血漿インヒビターの天然に存在しないインヒビターおよび抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤を含む組成物も特色とする。この組成物は、さらに薬学的に受容可能なキャリア、安定剤および/または賦形剤を含み得る。
【0018】
いずれかの開示された方法、キットまたは組成物において使用される天然に存在しないカリクレインインヒビターは、以下に記載される特徴の1つ以上を有し得る。
【0019】
このカリクレインインヒビターは、50nM以下、すなわち、40nM、30nM、20nM、5nM、1nM、500pM、100pM、50pM、例えば、約44pMのカリクレイン(例えば、血漿カリクレイン)に対するKiを有し得る。このカリクレインインヒビターは、別のカリクレイン、例えば、ヒトの尿中カリクレイン、または別のタンパク質分解酵素(例えば、プラスミンもしくはトロンビン)の少なくとも100倍、200倍、500倍または1000倍の血漿カリクレインを優先的に阻害し得る。
【0020】
1つの実施形態において、カリクレインインヒビターは、脳血管関門を通過し得る薬剤である。
【0021】
1つの実施形態において、カリクレインインヒビターは、以下:
【0022】
【化4】

のアミノ酸配列などのKunitzドメインを含むポリペプチドを含む。
【0023】
上記Kunitzドメインのフレームワークは、ヒトのものであっても、6個、5個、4個または2個以下のアミノ酸だけヒトKunitzドメイン構造とは異なっていてもよい。例えば、このKunitzドメインのフレームワークは、ヒトのリポタンパク質と関連した凝血阻害(LACI)タンパク質(例えば、第1、第2または第3Kunitzドメイン)であるKunitzドメインのうちの1つのフレームワークであり得る。LACIはまた、「組織因子経路阻害剤」または「TFPI」としても公知である。代表的に、このポリペプチドは、少なくとも1個、2個、3個または4個のアミノ酸(例えば、結合ループにおける少なくとも1個、2個もしくは3個のアミノ酸および/またはフレームワーク領域における少なくとも2個、3個、4個もしくは6個のアミノ酸)だけBPTIおよび/またはLACIKunitzドメインのうちの1つ以上とは異なる。例えば、このポリペプチドは、天然に存在するKunitzドメイン(例えば、ヒトのKunitzドメイン)に由来する天然に存在しないKunitzドメインを含み得る。1つの実施形態において、Kunitzドメインを含むインヒビターは、BPTIおよび/またはLACIよりも少なくとも10倍、100倍または500倍以上良い親和性を有する血漿カリクレインと結合する。
【0024】
1つの実施形態において、カリクレインを阻害するポリペプチドは、二回目の使用において免疫抗原性を有する。
【0025】
1つの実施形態において、カリクレインを阻害するポリペプチドは、以下の特徴の1つ以上を有し得る:Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa56、Xaa57またはXaa58は、各々個別にアミノ酸であるか、または非存在であり;Xaa10は、以下:AspおよびGlu、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa11は、以下:Asp、Gly、Ser、Val、Asn、Ile、AlaおよびThr、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa13は、以下:Arg、His、Pro、Asn、Ser、Thr、Ala、Gly、LysおよびGln、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa15は、以下:Arg、Lys、Ala、Ser、Gly、Met、AsnおよびGln、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa16は、以下:Ala、Gly、Ser、AspおよびAsn、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa17は、以下:Ala、Asn、Ser、Ile、Gly、Val、GlnおよびThr、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa18は、以下:His、Leu、GlnおよびAla、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa19は、以下:Pro、Gln、LeuおよびIle、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa21は、以下:Trp、Phe、Tyr、HisおよびIle、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa22は、以下:TyrおよびPhe、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa23は、以下:TyrおよびPhe、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa31は、以下:Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Ala、Val、Leu、IleおよびThr、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa32は、以下:Glu、Gln、Asp、Asn、Pro、Thr、Leu、Ser、Ala、GlyおよびVal、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa34は、以下:Thr、Ile、Ser、Val、Ala、Asn、GlyおよびLeu、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa35は、以下:Tyr、TrpおよびPhe、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa39は、以下:Glu、Gly、Ala、SerおよびAsp、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa40は、以下:GlyおよびAla、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa43は、以下:AsnおよびGly、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;Xaa45は、以下:PheおよびTyr、から成る群から選ばれるアミノ酸であり;そして、この場合において上記ポリペプチドはカリクレインを阻害する。
【0026】
特定の実施形態において、配列番号1のアミノ酸配列を含むカリクレインインヒビターの個々のアミノ酸の位置は、以下:Xaa10は、Aspであり、Xaa11は、Aspであり、Xaa13は、Pro、Xaa15は、Arg、Xaa16は、Alaであり、Xaa17は、Alaであり、Xaa18は、Hisであり、Xaa19は、Proであり、Xaa21は、Trpであり、Xaa31は、Gluであり、Xaa32は、Gluであり、Xaa34は、Ileであり、Xaa35は、Tyrであり、Xaa39は、Gluである、中の1つ以上を有する。
【0027】
カリクレインを阻害するポリペプチドは、以下:
【0028】
【化5】

のアミノ酸配列、またはそれらのフラグメント、例えば、カリクレインを結合および阻害させるフラグメントを含み得る(もしくは、から成り得る)。例えば、このポリペプチドは、80個、70個、65個、60個、58個、55個または52個以下のアミノ酸を有し得る。
【0029】
カリクレインを阻害するポリペプチドは、米国特許第5、786、328号において記載されるポリペプチドを含み得る(もしくは、から成り得る)。この特許の内容は、参考として援用される。
【0030】
本明細書で記載された方法、キットおよび組成物は、天然に存在せず、本明細書中で記載されたアミノ酸配列のいずれかとアミノ末端ドメインおよび/またはカルボキシ末端ドメインにおける1個から6個のアミノ酸のさらなる隣接配列とを有するKunitzドメインポリペプチドを含むインヒビターを含み得る。このようなさらなるアミノ酸は、酵母、バクテリア、哺乳動物の細胞株、昆虫細胞および類似物において使用されるような、種々の組み換え発現ベクターシステムのいずれかにおいて、特定の天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチド、またはKunitzドメインポリペプチドを発現する人工産物であり得る。好ましくは、本明細書中で記載される天然に存在しないKunitzドメインのアミノ末端および/またはカルボキシ終端における、このようなさらなるアミノ酸は、このドメイン、またはこのドメインを含むポリペプチドの、カリクレインに対する親和性またはカリクレインを縮小しない。
【0031】
上記インヒビターポリペプチドは、酵母における組み換えタンパク質としてポリペプチドを生産する結果として、配列番号1のアミノ酸配列およびアミノ末端隣接配列を有する天然に存在しないKunitzドメインポリペプチドを含み得る。特に好ましい酵母組み換え発現系の例は、Saccharomyces Cerevisiaeのmatαプレプロペプチドリーダー配列をコードし、かつ酵母Pichia pastorisにおける組み換えコード配列を発現するヌクレオチド配列に、配列番号1の天然に存在しないKunitzドメインに対するヌクレオチドコード配列を融合させる工程を包含する。この結果として発現される融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列およびアミノ末端隣接ジペプチド、Glu−Alaを含む。酵母の発現系において生成される本発明の特に好ましい種類のインヒビターポリペプチドは、以下:
【0032】
【化6】

の配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0033】
1つの実施形態において、カリクレインを阻害するポリペプチドは、例えば、1つ以上の部分を含むように改変され、この1つ以上の部分は、例えば、ポリペプチドの半減期を延長する1つ以上の部分であって、このポリペプチドは、例えば、ポリマー部分または複数のポリマー部分であり、例えば、代理人事件番号10280−119001を有する、2004年8月30日に出願されたU.S.S.N.10/931,153で記載されるようなものである。例えば、このポリペプチドは、複数のポリエチレングリコール部分、例えば、1つは、N末端アミン上に、そして1つはポリペプチドの各リジン上に結合している。このポリエチレングリコール部分は、平均分子量において、10キロダルトン、8キロダルトン、7キロダルトンまたは6キロダルトン未満であり得る。他の実施形態においては、上記部分は、例えば、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)であり得る。他の例示的な改変は、標識を含み、この標識は、例えば、放射性標識またはMRIで検出可能な標識である。幾つかの実施形態においては、上記ポリペプチドは、カリクレインを阻害する改変および非改変ポリペプチドを含む混合物の一部である。例えば、この混合物は、カリクレインを阻害し、かつポリエチレングリコール部分のようなポリマー部分を含む1つ以上の改変ポリペプチド、およびカリクレインを阻害し、かつポリマー部分を含まない1つ以上の非改変ポリペプチドを含み得る。1つの実施形態においては、上記混合物におけるカリクレインを阻害するポリペプチドの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはすべてが、改変される。
【0034】
上記方法、上記組成物および上記キットにおいて有用であるカリクレインインヒビターポリペプチドは、このカリクレインインヒビターポリペプチドが、標準的なアッセイにおいて決定された場合に、カリクレインを結合および阻害するならば、本明細書において記載される天然に存在しないKunitzドメインポリペプチド、またはあらゆるこのようなKunitzドメインを含むより大きなポリペプチドのいずれかであり得る。
【0035】
いずれかの開示された方法、キットまたは組成物で使用される抗血栓溶解剤は、抗線維素溶解剤であり得る。抗線維素溶解剤の例としては、以下が挙げられる:トラネキサム酸(CyklokapronTM)、イプシロンアミノカプロン酸(AmicarTM)、アプロチニン(TrasyolTM)、デスモプレッシン(DDAVP)、ピルフェニドン(pirfenidone)およびそれらの組み合わせ。1つの実施形態において、上記抗血栓溶解剤は、イプシロンアミノカプロン酸(AmicarTM)、アプロチニン(TrasyolTM)およびそれらの組み合わせから選ばれた抗線維素溶解剤である。
【0036】
本明細書で記載される方法は、有効量の組み合わせ処置を投与する工程を包含し得る。このような量は、当業者が認め得る改良を生じさせ、少なくとも1つの症状を回復させ、または少なくとも1つの生理学的パラメータを、例えば、統計学的に有意な程度まで、調整(例えば、改善)するのに充分な量であり得る。
【0037】
本明細書で記載されるいずれかの方法またはキットにおいて使用される好ましい組成物は、さらに1つ以上の薬学的に受容可能な緩衝剤、キャリアおよび賦形剤を含み得、これらの緩衝剤、キャリアおよび賦形剤は、この組成物に望ましい特徴を提供し得、これらの特徴には、患者へのこの組成物の投与を向上させること、インヒビターおよび/または抗線維素溶解剤の循環半減期を向上させること、患者の血液化学とこの組成物の適合性を向上させること、この組成物の蓄積を向上させること、そして/または患者に対して投与した際のこの組成物の有効性を向上させることが挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
本明細書で記載される好ましい方法は、体外循環(例えば、心肺バイパス(CPB))または透析を必要とする外科処置などの外科処置に供される患者において、術中失血および/またはSIRを防止または軽減するために有用である。抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤との組み合わせにおいて、本明細書で記載されるカリクレインインヒビターポリペプチドを患者に投与する工程を包含する外科処置に供される患者における術中失血および/またはSIRを防止または軽減するための本発明の方法が特に好ましく、この場合に、上記外科処置は、心肺バイパス(CPB)を必要とし、かつこの外科処置は、冠状動脈バイパス移植術(CABG)処置である。
【0039】
本明細書で記載される方法は、上記外科処置の前、最中、および/または後に患者に実行され得る。特に接触活性化系の活性化およびSIRの発症による術中失血を防止するためのCABG処置の場合には、この外科処置の前および最中の上記方法の使用が、特に好ましい。
【0040】
別の実施形態において、本発明は、天然に存在しないKunitzドメインまたは本明細書で記載されるカリクレインインヒビターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を包含する核酸分子を提供する。このような核酸分子は、任意の種々の核酸分子であり得、例えば、組み換えファージゲノム、組み換え哺乳動物ウイルスベクター、組み換え昆虫ウイルスベクター、酵母小型染色体およびプラスミドが挙げられるが、それらに限られない。本発明の好ましいプラスミド分子としては、酵母発現プラスミド、バクテリア発現プラスミドおよび哺乳動物発現プラスミドが挙げられるが、それらに限られない。本発明において有用である核酸分子は、本明細書で記載される特定のヌクレオチド配列またはそれらの変性形態を含み得る。
【0041】
本発明の特に好ましい核酸分子としては、これまでに開示されないカリクレインインヒビターポリペプチドに融合されたmatαプレプロシグナルペプチドを含む融合タンパク質をコードする、図2で示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子、配列番号2のアミノ酸を有するカリクレインインヒビターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、および配列番号2のアミノ酸3から60のアミノ酸配列を有するカリクレインインヒビターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子が挙げられる。
【0042】
本発明の1つ以上の実施形態の詳説は、添付の図面および以下の明細書に示される。本発明の他の特徴、目的および利点は、それらの明細書および図面ならびに上記特許請求の範囲から明らかである。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
患者の失血を防止または軽減するための方法であって、抗血栓溶解剤との組み合わせで天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドを該患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
上記失血が、患者に施される外科処置に起因する術中失血である、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記外科処置が、心胸郭手術である、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記心胸郭手術が、人工心肺または冠状動脈バイパス移植である、項目3に記載の方法。
(項目5)
上記ポリペプチドが、以下:
【化1】


のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の方法であって、
ここで、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa56、Xaa57またはXaa58は、各々、個別にアミノ酸であるか、または存在しない;
Xaa10は、以下:AspおよびGlu、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa11は、以下:Asp、Gly、Ser、Val、Asn、Ile、AlaおよびThr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa13は、以下:Arg、His、Pro、Asn、Ser、Thr、Ala、Gly、LysおよびGln、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa15は、以下:Arg、Lys、Ala、Ser、Gly、Met、AsnおよびGln、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa16は、以下:Ala、Gly、Ser、AspおよびAsn、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa17は、以下:Ala、Asn、Ser、Ile、Gly、Val、GlnおよびThr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa18は、以下:His、Leu、GlnおよびAla、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa19は、以下:Pro、Gln、Leu、AsnおよびIle、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa21は、以下:Trp、Phe、Tyr、HisおよびIle、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa22は、以下:TyrおよびPhe、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa23は、以下:TyrおよびPhe、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa31は、以下:Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Ala、Val、Leu、IleおよびThr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa32は、以下:Glu、Gln、Asp、Asn、Pro、Thr、Leu、Ser、Ala、GlyおよびVal、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa34は、以下:Thr、Ile、Ser、Val、Ala、Asn、GlyおよびLeu、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa35は、以下:Tyr、TrpおよびPhe、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa39は、以下:Glu、Gly、Ala、Ser、およびAsp、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa40は、以下:GlyおよびAla、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa43は、以下:AsnおよびGly、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa45は、以下:PheおよびTyr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;ならびに、これらの場合に、上記ポリペプチドは、カリクレインを阻害する、方法。
(項目6)
Xaa10がAspである、項目5に記載の方法。
(項目7)
Xaa11がAspである、項目5に記載の方法。
(項目8)
Xaa13がProであり、Xaa15がArgであり、Xaa16がAlaであり、Xaa17がAlaであり、Xaa18がHisであり、かつXaa19がProである、項目5に記載の方法。
(項目9)
Xaa21がTrpである、項目5に記載の方法。
(項目10)
Xaa31がGluである、項目5に記載の方法。
(項目11)
Xaa32がGluである、項目5に記載の方法。
(項目12)
Xaa34がIleである、項目5に記載の方法。
(項目13)
Xaa35がTyrである、項目5に記載の方法。
(項目14)
Xaa39がGluである、項目5に記載の方法。
(項目15)
上記ポリペプチドが、以下:
【化2】


を含む、項目5に記載の方法であって、該ポリペプチドは、配列番号2の残基3から60である、方法。
(項目16)
上記ポリペプチドが、さらにMet残基に先行してGlu−Ala配列を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
上記抗血栓溶解剤が、抗線維素溶解剤である、項目1に記載の方法。
(項目18)
上記抗線維素溶解剤が、以下:
トラネキサム酸(CyklokapronTM)、イプシロンアミノカプロン酸(AmicarTM)、アプロチニン(TrasyolTM)、デスモプレッシン(DDAVP)、ピルフェニドンおよびそれらの組み合わせから成る群から選ばれる、項目17に記載の方法。
(項目19)
上記抗線維素溶解剤が、イプシロンアミノカプロン酸(AmicarTM)である、項目17に記載の方法。
(項目20)
上記抗線維素溶解剤が、アプロチニン(TrasyolTM)である、項目17に記載の方法。
(項目21)
患者における外科処置と関連する全身性炎症反応の発症を防止し、または軽減する方法であって、天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドおよび抗血栓溶解剤を患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目22)
患者における脳虚血を防止し、または軽減する方法であって、該方法は、以下:
抗血栓溶解剤との組み合わせにおいて、天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドを患者に投与する工程
を包含する、方法。
(項目23)
上記脳虚血が脳卒中である、項目22に記載の方法。
(項目24)
上記脳卒中が、塞栓症と関連した脳卒中、血栓と関連した脳卒中、血栓塞栓症性の脳卒中および大出血と関連した脳卒中から成る群から選ばれる、項目23に記載の方法。
(項目25)
患者における再灌流傷害を防止し、または軽減する方法であって、該方法は、抗血栓溶解剤との組み合わせにおいて、天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドを患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目26)
上記再灌流傷害が、脳虚血と関連した再灌流傷害である、項目25に記載の方法。
(項目27)
上記脳虚血が、脳卒中である、項目26に記載の方法。
(項目28)
上記脳卒中が、塞栓症と関連した脳卒中、血栓と関連した脳卒中、血栓塞栓症性の脳卒中および大出血と関連した脳卒中から成る群から選ばれる、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記ポリペプチドが、配列番号2の残基1から60から成る、項目7に記載の方法。
(項目30)
上記天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドが、配列番号2の残基3から60を含む、項目21、項目22、または項目25に記載の方法。
(項目31)
上記天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドが、配列番号2の残基1から60を含む、項目21、項目22、または項目25に記載の方法。
(項目32)
上記天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドが、配列番号2の残基3から60から成る、項目21、項目22、または項目25に記載の方法。
(項目33)
患者における再灌流傷害を防止し、または軽減する方法であって、該方法は、以下:
脳中枢神経系への再灌流傷害および/または障害に起因する神経認知欠損を防止し、または軽減するために有効な量の血漿カリクレインのインヒビターを含む組成物を該患者に投与する工程
を包含する、方法。
(項目34)
上記再灌流傷害が、脳虚血と関連した再灌流傷害である、項目33に記載の方法。
(項目35)
患者における脳虚血を防止し、または軽減する方法であって、該方法は、以下:
血漿カリクレインのインヒビターを含む組成物を該患者に投与する工程
を包含する、方法。
(項目36)
上記脳虚血が、脳卒中である、項目34または項目35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
上記脳卒中が、塞栓症と関連した脳卒中、血栓と関連した脳卒中、血栓塞栓症性の脳卒中および大出血と関連した脳卒中から成る群から選ばれる、項目36に記載の方法。
(項目38)
上記脳卒中が、血栓と関連した脳卒中であり、術中脳卒中である、項目37に記載の方法。
(項目39)
上記インヒビターが、ポリペプチドを含む、項目33から項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
上記ポリペプチドが、以下:
【化3】


のアミノ酸配列を含む、項目39に記載の方法であって、
ここで、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa56、Xaa57またはXaa58は、各々、個別にアミノ酸であるか、または存在しない;
Xaa10は、以下:AspおよびGlu、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa11は、以下:Asp、Gly、Ser、Val、Asn、Ile、AlaおよびThr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa13は、以下:Arg、His、Pro、Asn、Ser、Thr、Ala、Gly、LysおよびGln、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa15は、以下:Arg、Lys、Ala、Ser、Gly、Met、AsnおよびGln、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa16は、以下:Ala、Gly、Ser、AspおよびAsn、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa17は、以下:Ala、Asn、Ser、Ile、Gly、Val、GlnおよびThr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa18は、以下:His、Leu、GlnおよびAla、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa19は、以下:Pro、Gln、Leu、AsnおよびIle、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa21は、以下:Trp、Phe、Tyr、HisおよびIle、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa22は、以下:TyrおよびPhe、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa23は、以下:TyrおよびPhe、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa31は、以下:Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Ala、Val、Leu、IleおよびThr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa32は、以下:Glu、Gln、Asp、Asn、Pro、Thr、Leu、Ser、Ala、GlyおよびVal、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa34は、以下:Thr、Ile、Ser、Val、Ala、Asn、GlyおよびLeu、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa35は、以下:Tyr、TrpおよびPhe、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa39は、以下:Glu、Gly、Ala、Ser、およびAsp、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa40は、以下:GlyおよびAla、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa43は、以下:AsnおよびGly、から成る群から選ばれたアミノ酸である;
Xaa45は、以下:PheおよびTyr、から成る群から選ばれたアミノ酸である;ならびに、該ポリペプチドは、カリクレインを阻害する、方法。
(項目41)
上記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸3から60までを含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
上記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1から60までを含む、項目39に記載の方法。
(項目43)
上記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1から60までから成る、項目39に記載の方法。
(項目44)
上記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1から60までから成る、項目39に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、特に、CABG処置が、心肺バイパス(バイパス器具)などの体外循環を伴う場合に、冠状動脈バイパス(CABG)処置と関連したものなどの軟組織および骨組織での外傷を受ける患者において生じ得る、接触活性化系および全身性炎症反応(SIR)に含まれる多数の主要経路および関連事象についての単純化された図表である。矢印は、上記連続的な過程で、1つの成分、または1つの事象から、別の成分、または別の事象への活性化を示す。両方向の矢印は、両方向へ成分、または事象が活性化する効果を示す。折れた矢印は、別の成分、または別の事象の活性化に1つの成分、または1つの事象が加わる可能性があることを示す。略語は、以下:「tPA]は、プラスミノーゲン活性化因子であり;「C5a」は、補体系のタンパク質要素であり;「fXIIa」は、活性カリクレインを形成するプレカリクレインの活性化タンパク質であり;「外因性」は、外因的な凝血系であり;「内因性」は、内因的な凝血系である。
【図2】図2は、プラスミドpPIC−K503における例示的なカリクレインインヒビターポリペプチドについてのDNAの一部および対応する推定アミノ酸を示す。挿入されたDNAは、囲まれたアミノ酸配列を有するPEP−1ポリペプチドのアミノ末端にインフレームで融合されるSaccharomyces cerevisiae(下線部)のmatα Preproシグナルペプチドをコードする。囲まれた領域で示されるPEP−1ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2であり、そして、その対応するヌクレオチドコード配列は、配列番号3である。破線矢印は、配列決定テンプレートを生み出すために使用されたAOX領域における2つのPCRプライマー配列の位置および方向を示す。この図の全ヌクレオチド配列に対するDNA配列は、融合タンパク質に対する構造上のコード配列を含み、そして、配列番号27と指定される。その配列の二重下線部分は、診断プローブ配列を示す。BstB IおよびEcoR Iは、この配列における、それら各々のパリンドローム六量体制限エンドヌクレアーゼ部位の位置を示す。アスタリスクは、翻訳終止コドンを意味する。詳細はテキストを参照のこと。
【図3A】図3Aおよび図3Bは、例示的なアミノ酸配列の整列化、すなわち、これらの改変体が由来する天然LACI配列(配列番号32)および他の公知のKunitzドメイン(配列番号29〜配列番号31および配列番号33〜配列番号53)を示す。システイン残基が強調されている。
【図3B】図3Aおよび図3Bは、例示的なアミノ酸配列の整列化、すなわち、これらの改変体が由来する天然LACI配列(配列番号32)および他の公知のKunitzドメイン(配列番号29〜配列番号31および配列番号33〜配列番号53)を示す。システイン残基が強調されている。
【図4】図4は、5−0マイクロフィラメントを使用した大脳中央動脈閉塞(MCAO)による一過性の局部脳虚血に供され、かつ、種々の投与量(10g、30g、90g)の生理食塩水(コントロール)またはカリクレインインヒビターポリペプチド(DX−88)を投与されるC57B1/6マウスにおける虚血容積を示すグラフである。
【図5】図5は、6−0マイクロフィラメントを使用した大脳中央動脈閉塞(MCAO)による一過性の局部脳虚血に供され、かつ、虚血破損の前後に渡る種々の時間で、生理食塩水(コントロール)またはカリクレインインヒビターポリペプチド(DX−88)を投与されるC57B1/6マウスにおける虚血容積を示すグラフである。このカリクレインインヒビターポリペプチドは、虚血期間の始まりに(DX−88pre)、虚血期間の終わりに(DX−88post)、虚血期間の開始1時間後に(DX−881h post)、投与された。このカリクレインインヒビターポリペプチドは、30gで投与された。
【図6】図6は、6−0マイクロフィラメントを使用した大脳中央動脈閉塞(MCAO)による一過性の局部脳虚血に供され、かつ、虚血破損の前後に渡る種々の時間で、生理食塩水(コントロール)またはカリクレインインヒビターポリペプチド(DX−88)を投与されるC57B1/6マウスにおける一般的な神経学的欠損を示すグラフである。このカリクレインインヒビターポリペプチドは、虚血期間の始まりに(DX−88pre)、虚血期間の終わりに(DX−88post)、虚血期間の開始1時間後に(DX−881h post)、投与された。このカリクレインインヒビターポリペプチドは、30gで投与された。一般的な神経学的欠損は、マウスにおける毛、耳、眼、姿勢、自発的活動性およびてんかん性(eptileptic)の行動の評価に基づいて測定される。
【図7】図7は、6−0マイクロフィラメントを使用した大脳中央動脈閉塞(MCAO)による一過性の局部脳虚血に供され、かつ、虚血破損の前後に渡る種々の時間で、生理食塩水(コントロール)またはカリクレインインヒビターポリペプチド(DX−88)を投与されるC57B1/6マウスにおける局部的な神経学的欠損を示すグラフである。このカリクレインインヒビターポリペプチドは、虚血期間の始まりに(DX−88pre)、虚血期間の終わりに(DX−88post)、虚血期間の開始後1時間で(DX−881h post)、投与された。このカリクレインインヒビターポリペプチドは、30gで投与された。局部的な神経学的欠損は、マウスにおける体の相称、歩行、登坂能力、旋回行動、前足の相称、強制旋回およびヒゲの反応の評価に基づいて測定される。
【図8】図8は、投与後30分または60分で測定された種々の投与量(10gまたは30g)のカリクレインインヒビターポリペプチド(DX−88)で処置されないマウス(普通のCSF)か、または処置されたマウスのいずれかの脳脊髄液(CSF)で見出されたカリクレイン活性の水準を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(詳細な説明)
本発明は、抗血栓溶解剤、すなわち、抗線維素溶解剤と組み合わせて、特異性を有する血漿カリクレインと結合および阻害するカリクレインインヒビター(KI)ポリペプチドの群の使用が、例えば、外科処置を受けている患者における、失血、例えば、術中失血を防止または軽減する、改良された方法を提供する。その方法はまた、外科処置を受けている患者における種々の虚血と関連した傷害および/または全身性炎症反応(SIR)を防止または軽減し得る。この外科処置は、例えば、心胸郭外科手術(例えば、心肺バイパス(CPB)または冠状動脈バイパス移植術(CABG));整形外科手術(例えば、腰部もしくは膝部の置換、または骨折);肝臓切除;腎臓切除;体外循環または透析を利用する処置;および術中失血を引き起こし得るいずれかの他の処置を含み得る。本明細書中で使用される「失血」は、血液供給および/または恒常性を回復し、血液供給および/または恒常性を維持し、および/または輸血量または輸血の必要性を減じることをいう。例えば、本明細書中で記載される方法、キットおよび組成物は、出血、毛細血管漏血および/または体液バランスにおける変化を軽減または防止するために使用され得る。本明細書中で使用されるような、「組み合わせで」投与されるは、2つ(または、2つ以上)の異なる処置が、被験者が、失血の危険にさらされているか、または失血の最中である場合に、被験者に施されること、例えば、被験者が傷害に危険にさらされていると判断された後およびこの障害が防止され、治癒され、もしくは解消されたか、または処置が、他理由のために中断した以前に、それら2つ以上の処置が施されることを意味する。幾つかの実施形態において、1つの処置の実施は、二番目の実施が始まるときに、いまだ行われつつあり、結果として、投与の面で重複がある。この重複は、時々、「同時に(simutaneous)」または「同時実施(concurrent delivery)」として本明細書中で言及される。他の実施形態において、1つの処置の実施が、他の実施が始まる前に終了する。いずれかの場合の幾つかの実施形態において、その処置は、組み合わせ投与のために、より有効である。例えば、抗血栓溶解剤が、より有効である、例えば、相当する効果が、より少ない抗血栓溶解剤に伴って見られるか、もしこの抗血栓溶解剤が、カリクレインインヒビターなしに投与された場合に見られたであろうもの以上の程度まで症状を軽減するか、および/または抗血栓溶解剤と関連した望ましくない副作用が、もし抗血栓溶解剤が、カリクレインインヒビターなしに投与された場合より少ない程度しか見られ
ないか、またはその類似状態が、カリクレインインヒビターに伴って見られるか、等が挙げられる。幾つかの実施形態において、実施は、症状、または障害と関連した他のパラメータにおける軽減が、他方なしに一方で観察されたであろうものよりも大きいものである。この2つの処置の効果は、部分的に添加的か、完全に相加的か、または相加的よりも大きいものであり得る。この実施は、二番目の処置が施される場合に、施された最初の処置の効果が、いまだ検出し得るものであり得る。
【0045】
併用処置は、失血または血液流動と関連した障害を防止または処置するために使用され得る。例えば、カリクレインインヒビターおよび抗血栓溶解剤の組み合わせが、術中失血、カリクレインにより誘発された全身性炎症反応(SIR)(特に、例えば、外科処置および、特に心胸郭処置、例えば、冠状動脈バイパス(CABG)処置などの心肺バイパス(CPB)を受ける患者において、同様に他の障害を有する患者においても)、虚血、例えば、脳虚血と関連した脳虚血および/または再灌流傷害を処置または防止するために使用され得る。
【0046】
この併用処置の応用のさらなる例は、小児心臓外科手術、肺移植、総腰部置換、正位肝臓移植およびCABG中の術中脳卒中を軽減または防止するための膜型酸素付加(ECMO)ならびにこれらの処置の間における脳卒中(CVA)を含む。
【0047】
本明細書中で記載されるカリクレインインヒビターは、脳卒中、例えば、脳卒中と関連する塞栓、血栓および/または大出血および脳卒中と関連する再灌流傷害のためにもまた使用され得る。幾つかの実施形態において、カリクレインインヒビターは、抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤との組み合わせで投与される。
【0048】
心胸郭外科手術は、胸部、最も一般的には心臓および肺の外科手術である。心胸郭外科手術で処置される代表的な疾患は、冠状動脈疾患、肺、食道および胸壁の腫瘍および癌、心臓血管および心臓弁異常、胸部または心臓の先天性欠損を含む。心胸郭外科手術が、処置のために利用される場合、失血の危険(および、例えば、外科手術が誘発する虚血)ならびに全身性炎症反応の発症(SIR)を招く。外科手術が誘発するSIRは、臓器不全(全身性炎症反応症候群;SIRS)を引き起こし得る。
【0049】
(Kunitzドメイン)
幾つかのこのカリクレインの有用なインヒビターは、Kunitzドメインを含む。
【0050】
本明細書中で使用されるように、「Kunitzドメイン」は、少なくとも51個のアミノ酸を有し、かつ少なくとも2個、好ましくは3個のジスルフィドを含むポリペプチドドメインである。このドメインは、第1システインと第6システイン、第2システインと第4システイン、および第3システインと第5システインがジスルフィド結合を形成するように(例えば、58個のアミノ酸を有するKunitzドメインにおいては、システインは、以下に提供されるBPTI相同配列の数に従って、アミノ酸5、14、30、38、51および55に対応する位置に存在し得、そして、ジスルフィドが、5と55、14と38、および30と51の位置にあるシステイン間に形成され得る)、またはもし2つのジスルフィドがあれば、これらのジスルフィドが、その対応するシステインのサブセット間で形成され得るように、折りたたまれる。各システイン間の間隔は、以下:以下に提供されたBPTI配列の番号付けに従って、55に対して5、38に対して14および51に対して30、に対応する位置間の間隔の7個、5個、4個、3個、2個、1個または0個のアミノ酸内にあり得る。このBPTI配列は、いずれかの一般的なKunitzドメインにおける特定の位置をいう参照として使用され得る。目的のKunitzドメインとBPTIとの比較は、整列されたシステインの数が最大化される最適な整列を識別することにより実行され得る。
【0051】
BPTIのKunitzドメインの三次元構造(高解像度において)は、公知である。X線構造の1つは、「6PTI」としてブルックヘブンタンパク質データバンクに寄託されている。幾つかのBPTI相同物の三次元構造(Eigenbrotら、Protein Engineering、1990、3(7):591−598;Hynesら、Biocheminstry、1990、29:10018−10022)は、公知である。少なくとも81個のKunitzドメイン配列が、公知である。公知のヒト相同体は、LACIの3つのKunitzドメイン(Wunら、J.Biol.Chem.、1988、263(13):6001−6004;Girardら、Nature、1989、338:518−20;Novotnyら、J.Biol.Chem.、264(31):18832−18837)、インター−α−トリプシンインヒビターの2つのKunitzドメイン、APP−I(Kidoら、J.Biol.Chem.、1988、263(34):18104−18107)、コラーゲンからのKunitzドメイン、TFPI−2(Sprecherら、PNAS USA、1994、91:3353−3357)の3つのKunitzドメイン、肝細胞増殖因子活性体阻害剤第1型、肝細胞増殖因子活性体阻害剤第2型、米国特許第20040152633号で記載されるKunitzドメインを含む。LACIは、3つのKunitzドメインを含む39キロダルトンの分子量(表1におけるアミノ酸配列)を有するヒト血清ホスホグリコールタンパク質である。
【0052】
【表1】

上記Kunitzドメインは、LACI−K1(残基50から107)、LACI−K2(残基121から178)およびLACI−K3(残基213から270)として言及される。LACIのcDNA配列は、Wunら(J.Biol.Chem.、1988、263(13):6001−6004)で報告される。Girardら(Nature、1989、338:518−20)は、3つのKunitzドメインの各々のP1残基が変更された突然変異研究を報告する。LACI−K1は、F.VIIaが、組織因子へと複雑にされ、そしてLACI−K2が要素Xaを阻害する場合に、LACI−K1は、要素VIIaを阻害する。
【0053】
例示的なKunitzドメインを含むタンパク質は、以下:
【0054】
【化12−1】

【0055】
【化12−2】

を含み、括弧内はSWISS−PROT Accession Numbersである。
【0056】
種々の方法が、配列データベースからのKunitzドメインを識別するために使用され得る。例えば、Kunitzドメインの公知のアミノ酸配列、共通配列またはモチーフ(例えば、プロサイトモチーフ)、例えば、BLASTを使用して、GenBank配列データベース(National Center for Biotechnology Information、National Institute of Health、BethesdaMD)に対して;例えば、Pfamサーチングのための省略時パラメータを使用して、HMMsのPfam データベース(Hidden Markov Models)に対して;SMARTデータベースに対して;ProDomデータベースに対して、検索し得る。例えば、Pfam Release9のPfam Accession Number PF00014は、多数のKunitzドメインおよびKunitzドメインを識別するためにHMMを提供する。Pfam データベースの記載は、Sonhammerら、Proteins、1997、28(3):405−420で見出し得、そして、HMMsの詳説は、例えば、Gribskovら、Meth.Enzymol.、1990、183:146−159;Gribskovら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、1987、84:4355−4358;Kroghら、J.Mol.Biol.、1994、235:1501−1531;およびStultzら、Protein Sci.、1993、2:305−314で見出し得る。HMMsのSMARTデータベース(Simple Modular Architecture Research Tool、EMBL、Heidelberg、DE)は、Shultzら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、1998、95:5857およびShultzら、Nucl.Acids.Res.、2000、28:231に記載される。SMARTデータベースは、HMMer2検索プログラム(R.Durbinら、Biological sequence analysis:probabilistic models of proteins and nucleic acids.、Cambride University Press、1998)の隠れたMarkovモデルでプロファイルすることにより識別されたドメインを含む。このデータベースもまた、注釈付きでありかつモニターされる。ProDomタンパク質ドメインデータベースは、相同ドメイン(Corpetら、Nucl.Acids.Res.、1999、27:263−267)の自動編集から成る。ProDomの現在の型は、SWISS−PROT38とTREMBLのタンパク質データベースの反復的PSI−BLAST検索(Altschulら、Nucleic Acids Res.、1997、25:3389−3402;Gouzyら、Computers and Chemistry、1999、23:333−340)を使用して構築される。このデータベースは、各ドメインのために共通配列を自動的に生成する。プロサイトは、モチーフとしてKunitzドメインを一覧にし、そして、Kunitzドメインを含むタンパク質を識別する。例えば、Falquetら、Nucleic Acids Res.、2002、30:235−238を参照のこと。
【0057】
Kunitzドメインは、主に2つのループ領域(「結合ループ」)におけるアミノ酸を使用した標的プロテアーゼと相互反応する。第1ループ領域は、BPTIのアミノ酸13から20に対応する残基の周囲の間にある。第2ループ領域は、BPTIのアミノ酸31から39に対応する残基あたりの間にある。Kunitzドメインの例示的なライブラリは、第1ループ領域および/または第2ループ領域における1つ以上のアミノ酸の位置を多様化する。カリクレインと相互反応するKunitzドメインのための選別をする場合または改良された親和性改変体のための選択をする場合に、多様化するのに特に有用な位置は、以下:BPTIの配列に関する位置13、15、16、17、18、19、31、32、34および39、を含む。これらの位置の少なくとも幾つかは、上記標的プロテアーゼと緊密に接触することが予測される。このことは、他の位置、例えば、上記三次元構造における上記位置に隣接する位置を多様化するのにも有用である。
【0058】
Kunitzドメインの「フレームワーク領域」は、Kunitzドメインの一部であるが、特に第1結合ループ領域および第2結合ループ領域、すなわち、BPTIのアミノ酸13から20およびBPTIのアミノ酸31から39に対応する残基の周囲における残基を排除した残基として定義される。逆に、上記結合ループではない残基は、より広範囲のアミノ酸置換(例えば、保存的置換および/または非保存的置換)への耐性があり得る。
【0059】
1つの実施形態において、これらのKunitzドメインは、ヒトのリポタンパク質と関連した凝血阻害(LACI)タンパク質のKunitzドメインを含むループ構造の種々の形態である。LACIは、代表的なKunitzドメイン(Girard、T.ら、Nature、1989、338:518−520)である3つの内部の、明確なペプチドループを含む。本明細書中で記載されるLACIのKunitzドメイン1の改変体は、選別され、分離され、そして、強化された親和性および特異性(例えば、参考として本明細書中に援用される、米国特許第5、795、865号および米国特許第6、057、287号を参照のこと)をもって、カリクレインを結合させる。これらに記載の方法は、他のKunitzドメイン構造にもまた応用され得、カリクレイン、例えば、血漿カリクレインと相互反応する他のKunitzドメインを獲得する。カリクレイン機能の有用な修飾物質は、代表的には、カリクレイン結合分析およびカリクレイン阻害分析を使用して測定されるように、カリクレインに結合し、および/またはカリクレインを阻害する。
【0060】
カリクレインを阻害するKunitzドメインを含む例示的なポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸3から60により規定されたアミノ酸配列を有する。
【0061】
例示的なポリペプチドは、以下:
【0062】
【化7】

のアミノ酸配列を含む。
【0063】
「Xaa」は、幾つかの異なるアミノ酸のいずれかであり得るペプチド鎖における位置をいう。第1の実施例において、Xaaは、システインを除いたアミノ酸のいずれかであり得る。別の実施例において、以下:
【0064】
【化8】

の1つ以上が適用される。
【0065】
さらに、配列番号1の最初の4個および最後の3個のアミノ酸の各々が、
必要に応じて、存在し得るし、存在し得ない、そして、もしいずれかのアミノ酸が存在すれば、例えば、いずれかの非システインアミノ酸であり得る。
【0066】
1つの実施形態において、このポリペプチドは、以下:
【0067】
【化9】

の1つ以上の特性を有する配列を有する。
【0068】
例示的なポリペプチドは、以下:
【0069】
【化10】

のアミノ酸を含み得る。
【0070】
本明細書中で記載されるポリペプチドのタンパク質を使用することも可能である。例えば、ポリペプチドは、特定のカリクレインエピトープに対する結合ドメインを含み得る。このKunitzドメインの結合ループは、環化され、そして、分離に使用され、または別のドメイン、例えば、別のKunitzドメイン構造に接合され得る。本明細書中で記載されるアミノ酸配列のN末端から、1個、2個、3個、または4個のアミノ酸および/または本明細書中で記載されるアミノ酸配列のC末端から、1個、2個、3個、4個または5個のアミノ酸を分離することもまた可能である。
【0071】
配列番号1に包含される配列の例は、以下(示されない場合には、Xaaは、いずれかのアミノ酸、すなわち、非システインアミノ酸、または配列番号1に対して可能であるアミノ酸の同じセットからのいずれかのアミノ酸をいう):
【0072】
【化11−1】

【0073】
【化11−2】

【0074】
【化11−3】

【0075】
【化11−4】

により示される。
【0076】
配列のさらなる実施例は、少なくとも1つのアミノ酸、しかし、本明細書中で記載されるアミノ酸配列、すなわち、上に提供されたアミノ酸配列を基準にして7個、6個、5個、4個、3個または2個未満のアミノ酸の相違により、異なる配列を含む。1つの実施形態において、3個、2個または1個以下の相違が、上記結合ループの1つにある。例えば、第1結合ループは、本明細書中で記載されるアミノ酸配列、上に提供されたアミノ酸配列を基準にして相違がない。別の実施例においては、第1結合ループ域も、第2結合ループも、本明細書中で記載されるアミノ酸配列、すなわち、上に提供されたアミノ酸配列と異ならない。
【0077】
図3Aおよび図3Bは、上記配列、上記配列の改変体が由来した天然LACI配列(配列番号32)および他の公知のKunitzドメイン(配列番号29から配列番号31および配列番号33から配列番号53)のアミノ酸配列の整列を提供する。なお、カリクレインを阻害する他のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸3から60の58あたりのアミノ酸配列、または配列番号2の60のアミノ酸配列を有するPEP−1ペプチドを含む。本明細書中で使用される「PEP−1]」およb「DX−88」という用語は、配列番号2の60のアミノ酸配列をいう。配列番号2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3(例えば、図2のヌクレオチド309から488を参照のこと)で提供される。公知の遺伝子符号に基づいて、配列番号3のヌクレオチド配列の縮重形態は、このヌクレオチド配列によりコードされた各アミノ酸に対する1つ以上の公知の縮重遺伝暗号を単純に置換することにより入手され得る。配列番号3のヌクレオチド7から180およびそれらの縮重形態は、配列番号2の60のアミノ酸3から60の58のアミノ酸配列、関連した配列、またはそれらの機能的なフラグメントを含む天然に存在しないKunitzドメインをコードする。
【0078】
1つの実施形態において、上記ポリペプチドは、アプロチニン以外のものであり、例えば、少なくとも1個、2個、3個、5個、10個、または15個のアミノ酸がアプロチニンと異なる。
【0079】
本明細書中で記載されるポリペプチドは、いずれかの標準的なポリペプチド合成手順および装置を使用して、人工的に造られ得る。例えば、ポリペプチドの段階的な合成は、最初(すなわち、カルボキシ末端)のアミノ酸からのアミノ(N)末端保護基の除去およびこのポリペプチドの配列における次のアミノ酸のカルボキシ末端への接合により実行され得る。このアミノ酸もまた、適切に保護され得る。入ってくるアミノ酸のカルボキシル基は、活性化され、カルボジイミド、対称性酸無水物、またはヒドロキシベンゾトリアゾールエステルもしくはペンタフルオロフェニルエステルなどの「活性エステル」基の形成などの反応性基の形成により結合されたアミノ酸のN末端と相互反応し得る。好ましい固相ペプチド合成法は、α−アミノ保護基として、tert−ブチルオキシカルボニルを利用するBOC法およびアミノ酸残基のα−アミノを保護するために9−フルオレニルメチルオキシカルボニルを利用するFMOC法を含む。いずれの方法も、当業者に周知である(W.H.Freeman Co.、San Francisco、1989;Merrifield、J.、Am.Chem.Soc.、1963、85:2149−2154;Bodanszky、M.およびBodanszky、A.、The Practice
of Peptide Synthesis、Springer−Verlag、New York、1984)。望まれるならば、さらなるアミノ末端アミノ酸および/またはあるカルボキシル末端アミノ酸が、アミノ酸配列へと設計され、そして、ペプチド合成中に添加され得る。
【0080】
ポリペプチドはまた、組み換え技術を使用して生成され得る。組み換え法は、多くの細胞および対応する発現ベクター(細菌発現ベクター、酵母発現ベクター、バキュロウイルス発現ベクター、哺乳動物ウイルス発現ベクターなどが挙げられるが、それらに限られない)のいずれかを利用し得る。本明細書中で記載されるポリペプチドは、トランスジェニック動物により、例えば、トランスジェニック動物の乳腺において、生成され得る。幾つかの場合において、カリクレイン(例えば、Kunitzドメインを含むポリペプチド)を阻害するポリペプチドに対するコード配列を、発現ベクターにおける別のコード配列に融合し、宿主細胞において即座に発現される融合ポリペプチドを形成することは必要であるか、または有利であり得る。このさらなる配列の一部、またはすべては、例えば、プロテアーゼ消化により除去され得る。
【0081】
カリクレイン(例えば、Kunitzドメインを含むポリペプチド)を阻害するポリペプチドを生成するための代表的な組み換え発現系は、酵母発現ベクターであり、この酵母発現ベクターは、インヒビターペプチドに対するアミノ酸配列をコードする核酸配列が、Saccharomyces cerevisiaeのMATαプレプロリーダーペプチド配列をコードするヌクレオチド配列と同じ読み枠内で結合されることを可能にし、結果として、この酵母は、調整可能な酵母促進因子の制御下にある。結果として生じる組み換え酵母発現プラスミドは、標準的な方法により、適切な和合性のある酵母宿主の細胞へと変換され得、これらの酵母細胞は、組み換え酵母発現ベクターから組み換えタンパク質を発現させ得る。この組み換え発現ベクターで変換された宿主酵母細胞はまた、融合タンパク質を処理し、活性インヒビターポリペプチドを提供し得ることが望ましい。組み換えポリペプチドを生成するための他の例示的な酵母宿主は、Pichia pastorisである。
【0082】
既に注記したように、カリクレインを阻害するポリペプチドは、本明細書中で記載されるKunitzドメインポリペプチドを含み得る。幾つかのポリペプチドは、もしさらなるアミノ酸が、本明細書中で記載される方法および組成物における使用を妨害するために、カリクレイン結合親和性またはカリクレインインヒビター活性をさほど減じないのであれば、アミノ末端および/またはカルボキシ末端において、好ましくは長さが1個から6個のアミノ酸から成る、さらなる隣接配列を含み得る。これらのさらなるアミノ酸は、計画的に、特定の宿主細胞において、ポリペプチドを発現させ得、または、例えば、別の分子にリンカーを提供し、もしくはこのポリペプチドの精製を促進する親和性成分を提供するためのさらなる機能を添加するために提供され得る。これらのさらなるアミノ酸は、Kunitzドメインのジスフィルド結合に干渉し得るシステインを含まない。
【0083】
代表的なKunitzドメインポリペプチドは、配列番号2の残基3から60のアミノ酸配列を含む。酵母融合タンパク質発現系(例えば、統合発現プラスミドpHIL−D2)において発現かつ処理される場合に、このKunitzドメインポリペプチドは、さらなるアミノ酸末端Glu−Alaジペプチドを、Saccharomyces cerevisiaeのMATαプレプロリーダーペプチド配列と融合しないように保持する。酵母宿主細胞から分泌される場合に、ほとんどのリーダーポリペプチドは、上記融合タンパク質から調整され、配列番号2(図2の囲まれた領域を参照のこと)のアミノ酸配列を有する機能的ポリペプチド(本明細書中で「PEP−1」として言及される)を生み出す。
【0084】
1つの実施形態において、カリクレインのインヒビター、例えば、ポリペプチドインヒビターは、アプロチニン(現在失血を軽減するためにCABG処置での使用が認められる)の1000倍以上のオーダーであるカリクレインに対する結合親和物を有する。他の分子標的(下の表1を参照のこと)を排除する程度までに高いカリクレインに対する特異性と組み合わされたこれらのカリクレインインヒビターの驚くべき高度な結合親和性を、特に有用なインヒビターのために提供する。しかしながら、より低い親和性または特異性を有するインヒビターもまた、それらの用途を有する。
【0085】
例えば、配列番号1を含む代表的なKunitzドメインは、幾つかの一定の位置、例えば、BPTI命番方式における位置5、14、30、33、38、45、51および55に対応する位置を含み、かつシステインである。これらの位置の間隔形成は、例えば、3つのジスフィルド結合が形成される、Kunitzドメインの折りたたみ部分の範囲内で許容し得る程度まで多様であり得る。例えば、位置6、7、8、9、20、24、25、26、27、28、29、41、42、44、46、47、48、49、50、52、53および54などの他の位置、またはこれらの位置に対応する位置は、いずれかのアミノ酸(非遺伝的にコードされて生じるアミノ酸)であり得る。特に好ましい実施形態において、1つ以上のアミノ酸が、天然配列(例えば、配列番号32、図3を参照のこと)に対応する。別の実施形態においては、少なくとも1つの可変的な位置は、この天然配列とは異なる。さらに別の好ましい実施形態においては、上記アミノ酸は、各々、保存的アミノ酸置換、または非保存的アミノ酸置換により、個別に、または集合的に置換され得る。
【0086】
保存的アミノ酸置換は、アミノ酸を類似した化学的性質の別のアミノ酸と置換し、そして、タンパク質機能に影響を有し得ない。非保存的アミノ酸置換は、アミノ酸を非類似の化学構造の別のアミノ酸と置換する。保存されたアミノ酸置換の実施例は、例えば、Asn−>Gln、Arg−>LysおよびSer−>Thrを含む。好ましい実施形態においては、これらのアミノ酸の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および/または21は、配列番号2の対応する位置に対応させるように、いずれかの組み合わせにおいて、独立に、または集合的に選ばれ得る。
【0087】
他の位置、例えば、位置10、11、13、15、16、17、18、19、21、22、23、31、32、34、35、39、40、43および45、またはこれらの位置に対応する位置は、アミノ酸の選ばれたセットのいずれかであり得る。例えば、配列番号1は、可能な配列の1セットを定義する。このセットの各構成要素は、例えば、位置5、14、30、51および55におけるシステインおよび、位置10、11、13、15、16、17、18、19、21、22、23、31、32、34、35、39、40、43および45、またはこれらの位置に対応する位置におけるアミノ酸の特定のセットのいずれか1つを含む。好ましい実施形態においては、これらのアミノ酸の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18および/または19は、配列番号2の対応する位置に対応させるように、いずれかの組み合わせにおいて、独立に、または集合的に選ばれ得る。このポリペプチドは、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%配列番号2と同一であることが好ましい。
【0088】
本明細書中で使用されるように、「実質的に同一の」(または、「実質的に相同の」)という用語は、第1アミノ酸および第2アミノ酸、またはヌクレオチド配列が類似した活性を有するときの、この第1アミノ酸、またはこのヌクレオチド配列と同一の、または等価的な十分な数のアミノ酸残基、またはヌクレオチドを含む第1アミノ酸配列、またはヌクレオチド配列に言及して本明細書中では使用される。抗体の場合において、第2抗体は、その同じ特異性を有し、そして、その同じ特異性の中で、少なくとも50%は親和性を有する。
【0089】
2つの配列の間の「相同性」の計算は、以下のように実施され得る。これらの配列は、最適な比較の目的のために整列される(例えば、ギャップは、最適な整列のために第1アミノ酸配列および第2アミノ酸配列の1つもしくは両方、または核酸配列において導入され得、そして、非相同な配列は、比較の目的のために無視され得る)。好ましい実施形態において、比較の目的のための基準配列の長さは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%およびさらにより好ましくは少なくとも基準配列の長さの70%、80%、90%、100%である。対応するアミノ酸の位置、または対応するヌクレオチドの位置におけるアミノ酸残基、またはヌクレオチドが、次いで、比較される。第1配列における位置が、第2配列における対応する位置と同じアミノ酸残基、または同じヌクレオチドにより、占められている場合には、次いで、それらの分子は、その位置において同一である(本明細書中で使用されるようなアミノ酸、または核酸の「同一性」は、アミノ酸、または核酸の「相同性」に相当する。)。これらの2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、これら配列により共有される同一位置の数の機能である。
【0090】
2つの配列間の配列比較および相同性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して成し遂げられ得る。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の相同性パーセントは、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.、1970、48:444−453のアルゴリズムを使用して測定され、このアルゴリズムは、Blossum62マトリックス、またはPAM250マトリックスならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップの重み付けおよび1、2、3、4、5、または6の長さの重み付けを使用したGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み入れられた。さらに別の好ましい実施形態においては、2つのヌクレオチド配列間の相同性パーセントは、NWSgapdna.CMPマトリックスならびに40、50、60、70、または80のギャップの重み付けおよび1、2、3、4、5、または6の長さの重み付けを使用したGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して測定される。パラメータの特に好ましいセット(および分子が相同性の制限の範囲内にあるかどうかを決定するためにいずれのパラメータが適用されるべきか、当業者に確信がない場合に使用されるべきパラメータ)は、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティおよび5のフレームシフトギャップペナルティを有するBlossum 62スコアリングマトリックスである。
【0091】
有用なポリペプチドはまた、本明細書中で記載されるポリペプチドをコードする核酸とハイブリダイズする核酸によりコードされ得る。これらの核酸は、中程度のストリンジェンシー条件、高度のストリンジェンシー条件、またはより高度のストリンジェンシー条件下で、ハイブリダイズし得る。本明細書中で記載されるように、「低度のストリンジェンシー条件、中程度のストリンジェンシー条件、高度のストリンジェンシー条件、またはより高度のストリンジェンシー条件下で、ハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび液洗のための条件を記載する。ハイブリダイゼーション反応を実施するための案内は、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、N.Y.、1989、6.3.1.−6.3.6.(参考として援用される)に見出し得る。水溶性および非水溶性に記載の方法が、その参考文献に記載され、そして、いずれかが使用され得る。本明細書中で言及される特定のハイブリダイゼーションの条件は、以下:(1)約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)における低度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、続いての少なくとも50度(これらの液洗の温度は、低度のストリンジェンシー条件のために55℃まで上昇され得る)の0.2×SSC、0.1%SDSにおける2回の液洗;(2)45℃の6×SSCにおける中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、続いての60度の0.2×SSC、0.1%SDSにおける1回以上の液洗;(3)45℃の6×SSCにおける高度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件、続いての少なくとも65度の0.2×SSC、0.1%SDSにおける1回以上の液洗;および(4)より高度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、65℃の7%SDS、0.5Mリン酸ナトリウムであり、続いての少なくとも65度の0.2×SSC、0.1%SDSにおける1回以上の液洗、である。
【0092】
(改変)
種々の方法で、Kunitzドメインを阻害するポリペプチドを改変することが可能である。例えば、これらのポリペプチドは、1つ以上のポリエチレングリコール成分に添付され、例えば、少なくとも2倍、4倍、5倍、8倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍に、その化合物を安定させ、または保持を延長させ得る。
【0093】
カリクレインを阻害するポリペプチドは、ポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシド、またはポリエチレンオキシドなどの実質的に非抗原性のポリマーと関連(例えば、接合)し得る。適切なポリマーは、実質的に重量により変化する。約200から約35000までの平均分子数量(または、約1000から約15000まで、および約2000から約12500まで)を有するポリマーが、使用され得る。複数のポリマー成分が、1つのポリペプチド、例えば、約2000ダルトンから7000ダルトンまでの平均分子量を有する、例えば、少なくとも2個、3個、または4個のそのような部分に結合され得る。
【0094】
例えば、上記ポリペプチドは、水溶性のポリマー、例えば、親水性ポリビニルポリマー、例えば、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンに接合され得る。これらのポリマーの非限定的なリストは、もしブロックコポリマーの水溶性が維持されるならば、ポリエチレングリコール(PEG)もしくはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、またはそれらのコポリマーおよびそれらのブロックコポリマーを含む。さらなる有用なポリマーは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリオキシアルキレンおよびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレン(Pluronics)のブロックコポリマー;ポリメタアクリラート;カ
ルボマー;サッカライドモノマー、D−マノース、D−ガラクトースおよびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(例えば、ポリマンヌロン酸、またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミンD−グルコースならびにホモポリサッカライドおよび、ラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸性粘液多糖類のポリサッカライドサブユニット、例えば、ヒアルロン酸を含むノイラミン酸を含む枝分かれポリサッカライド、または非枝分かれポリサッカライド;ポリソルビトールトポリマンニトールなどの糖アルコールのポリマー;ヘパリン、またはヘパロン(heparon)を含む。
【0095】
他の化合物はまた、同じポリマー、例えば、細胞阻害性、標識、または別の標的因子もしくは無関係な因子に結合され得る。単活性化されたアルコキシ末端ポリアルキレンオキシド(PAO)、例えば、モノメトキシ末端ポリエチレングリコール(mPEG);C1−4 アルキル末端ポリマー;およびビス活性化されたポリエチレンオキシド(グリコール)は、架橋のために使用され得る。米国特許番号第5、951、974号を参照のこと。
【0096】
(カリクレインインヒビター−抗体)
カリクレインインヒビターの1つのクラスは、抗体を含む。代表的な抗体は、特に、カリクレインに結合し、このカリクレインは、例えば、血漿カリクレインである。抗体は、幾つかの態様でカリクレインを阻害し得る。例えば、その活性位置の1つ以上の残基に接触し、立体的にこの活性位置へのアクセスを妨害もしくは遮断し、カリクレインの熟成を妨害し、または触媒活性のために必要とされる配座を不安定化させる。これらの抗体は、再灌流傷害、例えば、患者における脳虚血に関連した再灌流傷害を軽減、または防止するために使用され得る。
【0097】
本明細書中に使用されるように、「抗体」という用語は、免疫グロブリンの可変ドメイン、または免疫グロブリンの可変ドメイン配列を含むタンパク質をいう。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書中ではVHとして省略される)および軽(L)鎖可変領域(本明細書中ではVLとして省略される)を含み得る。別の実施例において、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域および2つの軽(L)鎖可変領域を含み得る。「抗体」という用語は、完全な抗体とともに、抗体の抗原結合フラグメント(例えば、単鎖抗体、ファブフラグメント、F(ab’)、Fdフラグメント、FvフラグメントおよびdAbフラグメント)を含む。
【0098】
VH領域およびVL領域は、さらに「相補性決定領域(「CDR」)」と名付けられる超可変性の領域に再分割され、「フレームワーク領域(FR)」と名付けられる、より保存される領域が点在され得る。フレームワーク領域およびCDRの程度は、正確に定義された(Kabat、E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publications、1991、No.91−3242およびChothia、C.ら、J.MOl.Biol.、1987、196:901−917を参照のこと)。Kabatの定義は、本明細書中に使用される。各VHおよびVLは、代表的に以下:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、のオーダーにおけるアミノ末端からカルボキシ末端の範囲にある3つのCDRおよび4つのFRから成る。
【0099】
「免疫グロブリンドメイン」は、免疫グロブリン分子の可変、または不変ドメインからのドメインをいう。免疫グロブリンドメインは、代表的には約7個のβ鎖から形成される2個のβシートおよび保存されたジスルフィド結合(例えば、A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay、Ann.Rev.Immunol.、1988、6:381−405)を含む。
【0100】
本明細書中に使用されるように、「免疫グロブリンの可変ドメイン配列」は、免疫グロブリンの可変ドメインの構造を形成し得るアミノ酸配列をいう。例えば、この配列は、天然発生可変ドメインのアミノ酸配列のすべて、または一部を含み得る。例えば、この配列は、1つ、もしくは2つ以上のN末端アミノ酸、もしくはC末端アミノ酸、すなわち、内側アミノ酸を省略し得、1つ以上の挿入、またはさらなる末端アミノ酸を含み得、または他の変質を含み得る。1つの実施形態において、免疫グロブリンの可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、別の免疫グロブリンの可変ドメイン配列と関連させられ、標的結合構造(または、「抗原結合部位」)、例えば、好ましくは活性化されたインテグリン構造、または、例えば、非活性化構造を基準にして、活性化されたインテグリン構造の擬態と相互反応する構造を形成し得る。
【0101】
この抗体のVH、またはVL鎖は、さらに重鎖、または軽鎖不変構造のすべて、または一部を含むことのより、各々、重免疫グロブリン鎖、または軽免疫グロブリン鎖を形成し得る。1つの実施形態において、この抗体は、2つの重免疫グロブリン鎖および2つの軽免疫グロブリン鎖テトラマーであり、この場合に、重免疫グロブリン鎖および軽免疫グロブリン鎖は、例えば、ジスフィルド結合により相互結合される。この重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。この軽鎖定常領域は、CLドメインを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互反応する結合ドメインを含む。これらの抗原の定常領域は、代表的には免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織、または宿主ファクターと抗原とを結合する媒体となる。「抗体」という用語は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM型(それらのサブタイプとともに)無傷の免疫グロブリンを含む。この免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型、またはラムダ型であり得る。1つの実施形態においては、この抗体は、グリコシル化される。抗体は、抗体依存細胞阻害性および/または補体媒介細胞阻害性に対して機能的で有り得るか、または機能的であり得ない。
【0102】
抗体の1つ以上の領域は、ヒト型であり得るか、または実質的にヒト型であり得る。例えば、1つ以上のCDRは、ヒト型、例えば、HC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2およびLC CDR3であり得る。軽鎖CDRの各々は、ヒト型であり得る。HC CDR3は、ヒト型であり得る。1つ以上のフレームワーク領域は、ヒト型、例えば、HC,またはLCのFR1、FR2、FR3およびFR4であり得る。1つの実施形態においては、すべてのフレームワーク領域は、例えば、体細胞、例えば、免疫グロブリン、または非造血細胞を生成する造血細胞に由来する、ヒト型である。1つの実施形態においては、そのヒト配列は、例えば、生殖細胞株核酸によりコードされた生殖細胞株配列である。その定常領域の1つ以上の領域は、ヒト型であり得るか、または実質的にヒト型であり得る。別の実施形態においては、少なくとも70、75,80、85、90、92、95、または98%の、またはすべての抗体は、ヒト型であり得るか、または実質的にヒト型であり得る。「実質的にヒト型」の免疫グロブリン可変領域は、この免疫グロブリン可変領域が、通常のヒトにおいて免疫反応を引き出さない十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含む、免疫グロブリン可変領域である。「実質的にヒト型」の抗体は、この抗体が、通常のヒトにおいて免疫反応を引き出さない十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含む、抗体である。
【0103】
抗体のすべて、または一部は、免疫グロブリン遺伝子、またはそれらの切片である。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子は、多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子とともに、カッパ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー不変領域遺伝子を含む。完全な長さの免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kd、または214個のアミノ酸)は、NH2末端(約110個のアミノ酸)およびCOOH末端におけるカッパ、またはラムダ不変領域遺伝子によりコードされる。完全な長さの免疫グロブリン「重鎖」(約50Kd、または446個のアミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116個のアミノ酸)および他の上記不変領域遺伝子、例えば、ガンマ(約330個のアミノ酸をコードする)により、同様にコードされる。
【0104】
カリクレインと結合し、かつカリクレインを阻害する抗体を識別する1つの例示的な方法は、非ヒト動物にカリクレイン、またはそのフラグメントで免疫性を与える工程を包含する。小さなペプチドさえ、免疫原として使用される。1つの実施形態においては、触媒活性を減じたか、または有しない突然変異カリクレインが、免疫原として使用される。脾臓細胞は、免疫化された動物から分離され、そして、標準的な方法を使用してハイブリドーマ細胞を生成するために使用され得る。1つの実施形態においては、非ヒト動物は、1つ以上のヒトグロブリン遺伝子を含む。
【0105】
カリクレインと結合し、かつカリクレインを阻害する抗体を識別する別の例示的な方法は、以下:タンパク質のライブラリを提供し、そして、カリクレイン、またはそのフラグメントと結合する1つ以上のタンパク質をこのライブラリから選ぶ工程を包含する。この選択は、幾つかに記載の方法で実施され得る。例えば、このライブラリは、ディスプレイライブラリ、またはタンパク質配列の様式で実施され得る。選択に先行して、このライブラリは、事前選別され(例えば、減少され)、非標的分子、例えば、カリクレイン以外のプロテアーゼ、例えば、インヒビター(例えば、アプロチニン)により阻害されて、その活性部位が接近され得ないカリクレインと相互反応する構成要素を除去し得る。
【0106】
抗体ライブラリ、例えば、抗体ディスプレイライブラリは、幾つかのプロセス(例えば、De Haardら、J.BIOL.Chem.、1999、274:18218−30;Hoogenboomら、Immunotechnology、1998、4:1−20;およびHoogenboomら、Immunol Today、2000、21:371−8を参照のこと)で組み立てられ得る。さらに、各プロセスの要素は、他のプロセスの要素と組み合わされ得る。これらのプロセスが、使用され、改変体が、単一の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHもしくはVL)、または多数の免疫グロブリンドメイン(例えば、VHおよびVL)へと添加され得る。この改変体は、例えば、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのいずれか、または両方の領域に言及した、1つ以上のCDR1、CDR2、CDR3、FR1、FR2、FR3およびFR4の領域において、免疫グロブリン可変ドメインへ添加され得る。1つの実施形態においては、改変体は、所定の可変ドメインの3つのCDRすべてに添加される。別の実施形態において、この改変体は、例えば、重鎖可変ドメインのCDR1およびCDR2へ添加される。抗体の組み換え発現に対する例示的なシステム(例えば、完全な長さの抗体、またはその抗原結合部位)において、上記抗体重鎖および上記抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターは、リン酸カルシウムを媒介した形質移入により、dhfr−CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)へ添加される。この組み換え発現ベクター内において、それら抗体重鎖遺伝子および抗体軽鎖遺伝子は、転写促進因子/助触媒調節要素(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスおよび、CMV転写促進因子/AdMLP助触媒調節要素、またはSV40転写促進因子/AdMLP助触媒調節要素)などの類似体)に、各々、操作的に結合される。この組み換え発現ベクターもまた、DHFR遺伝子を運搬し、このDHFR遺伝子は、メトトレキサートを使用したベクターを形質移入されたCHO細胞の選択を可能にする。この選ばれた形質変換体宿主細胞は、培養され、上記抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にし、そして、無傷の抗体が、培養培地から回収される。標準的な分子生物学技術が、使用され、上記組み換え発現ベクターを準備し、それらの宿主細胞を形質移入し、形質変換体に対して選び、それらの宿主細胞を培養し、そして、その培養培地から抗体を回収する。例えば、幾つかの抗体は、タンパク質A、またはタンパク質Gをもって、親和クロマトグラフィーにより分離され得る。抗体もまた、トランスジェニック動物により生成され得る。
【0107】
(カリクレインインヒビター−低分子)
カリクレイン、例えば、血漿カリクレイン、のインヒビターもまた、3000、2000、1000ダルトンより小さい化合物であり得る。例えば、この化合物は、タンパク様化合物、または5個以下のペプチド結合を含む化合物である。これらの分子は、例えば、再灌流傷害(例えば、患者における脳虚血と関連した再灌流傷害)を軽減、または防止するために、使用され得る。
【0108】
上記インヒビターは、例えば、WO04062657において記載される化合物、例えば、アシル化4−アミジノ−、または4−グアニジノベンジルアミノであり得る。この化合物は、一般的な処方(I)P4−P3−P2−P1(I)を有し得、この場合に、P4は、モノ、またはポリ置換、または非置換ベンジルスルフォニル基であり、P3は、D構造を有する、モノ、またはポリ置換、または非置換、天然、または天然に存在しないアルファアミノ酸、またはアルファイミノ酸、P2は、L構造を有する、モノ、またはポリ置換、または非置換、天然、または天然に存在しないアルファアミノ酸、またはアルファイミノ酸およびP1は、モノ、またはポリ置換、または非置換、4−アミジノ−、または4−グアニジノベンジルアミノ基である。
【0109】
別の例は、以下:
【0110】
【化13】

の構造式により表される化合物であり、
R1は、置換、または非置換アリール基、またはアルキル基であり;R2は、置換、または非置換アリール基、またはシクロアルキル基であり;Arは、置換、または非置換アリール基であり;Xは、−CH2−、−O−、−S−、または−CO−であり;mは、ゼロから2までの整数であり;nは、Xが、−O−、−S−である場合には、0から2までの整数、かつXが、−CH2−、−CO−である場合には、1から2までの整数である。例示的な化合物は、米国特許出願公開第2004/044075号で記載される。
【0111】
(抗血栓溶解剤)
抗血栓溶解剤は、血栓の溶解を軽減、または防止し、血栓を安定させ、凝血を増加および/または血栓を維持、安定、または増加させることにより大出血などの異常な失血量を防止する薬剤である。この抗血栓溶解剤は、抗線維素溶解剤であることが好ましい。抗線維素溶解剤は、線維素の溶解、または分解を防止、または軽減する薬剤である。抗線維素溶解剤の実施例は、トラネキサム酸(CyklokapronTM)、イプシロンアミノカプロン酸(AmicarTM)、アプロチニン(TrasyolTM)、デスモプレッシン(DDAVP)、ピルフェニドン(pirfenidone)およびそれらの組み合わせを含む薬剤である。薬剤の抗線維素溶解活性は、Carsonら、Anal.Biochem.、1988、168:428−435において記載される精製された血餅溶解分析およびBennett、W.F.ら、1991、上記により記載されるその修正された形態(これらのすべての内容は、参考として本明細書に援用される)などの当業者に公知のいずれかの生体外血餅溶解活性により測定され得る。
【0112】
(方法および組成物)
本明細書で記載されるカリクレインインヒビターおよび抗血栓溶解剤は、失血(例えば、術中失血)を防止または軽減するための方法;虚血と関連した傷害(例えば、虚血と関連した再灌流傷害)を防止または軽減するための方法;および/または(特に外科手術と関連した)患者における全身性炎症反応(SIR);において使用され得る。この外科手術は、例えば、心胸郭外科手術(例えば、心肺バイパスまたは冠状動脈バイパス移植術);整形外科手術(例えば、腰部もしくは膝部の置換、または骨折);肝臓外科手術;腎臓外科手術;体外循環または透析を利用する処置;および手術中の失血を引き起こし得る他の任意の処置であり得る。上記の方法は、抗血栓溶解剤(例えば、抗線維素溶解剤)との組み合わせで、カリクレインの天然に存在しないインヒビター(例えば、血漿カリクレイン)を投与する工程を包含する。
【0113】
1つの実施形態において、処置法は、カリクレインのインヒビターとしての、Kunitzドメインを含む天然に存在しないポリペプチドの投与を含む。上記の方法の1つの実施形態は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドを使用し、この配列番号1のアミノ酸配列は、広範囲なセリンプロテアーゼ(例えば、アプロチニン)の約30倍以上高いカリクレイン親和性を有する。このアプロチニンは、ウシの肺から分離され、CABG処置(TRASYLOLTM、Bayer Corporation Pharmaceutical Division、West Haven、Conn.)における使用に対して現在承認されている。
【0114】
いくつかの外科処置のいずれか(特に、体外循環を伴う処置(例えば、心胸郭外科手術(例えば、CPBなど))、および/または胸骨開裂もしくは腰部置換などの骨損傷)に供された患者は、術中失血および炎症に関する危険がある。患者の血液と、骨の切断表面またはCPB装置の表面との接触は、接触活性化系(CAS)を含む、1つまたはいくつかの望ましくないカスケード反応を活性化するのに十分であり、このCASは、緊急輸血を必要とする広汎な術中失血および全身性炎症反応(SIR)を誘発し得、これらの術中失血およびSIRは、次いで、組織および器官に対して恒久的な損傷を引き起こし得る。いかなる特定の機構にも理論にも限定されることは望まないが、CABG処置におけるような心胸郭外科手術(例えば、CPB)と関連して起きる失血は、恐らく広汎な毛細血管漏血に起因し、この漏血は、緊急輸血により置換されなければならないかなりの失血を引き起こし得る。
【0115】
本明細書中で記載される併用処置は、外科処置に供され、特に、その外科処置が体外循環を必要とする(例えば、CPBなどの、例えば、心胸郭外科手術)、患者における術中失血ならびに種々の虚血およびSIRを防止または軽減するために使用され得る。この併用処置併用処置は、CPBまたは他の心臓外科手術を必要とするCABG処置に供された患者における術中失血および/またはSIRを防止もしくは軽減するために、特に有用であり得る。
【0116】
本明細書中で記載される処置は、脳虚血(脳卒中など)および/または脳虚血(例えば、脳卒中)と関連した再灌流傷害を防止または軽減するために使用され得、例えば、カリクレインインヒビターが、脳虚血および/または虚血と関連した再灌流傷害を防止または軽減するために、単独でか、または抗血栓溶解剤との組み合わせでかのいずれかで投与され得る。
【0117】
医学的な使用のための例示的な組成物は、本明細書中で記載されるカリクレインインヒビター、本明細書中で記載される抗血栓溶解剤、または本明細書中で記載されるカリクレインインヒビターおよび本明細書中で記載される抗血栓溶解剤の両方を含む。このような組成物は、1種以上の薬学的に受容可能な緩衝剤、キャリアおよび賦形剤をさらに含み得、これらの緩衝剤、キャリアおよび賦形剤は、その組成物に望ましい特徴を提供し得る。これらの特徴としては、患者へのその組成物の投与を向上させること、上記インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤の循環半減期を向上させること、患者の血液化学と上記インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤との適合性を向上させること、その組成物の蓄積を向上させること、および/または患者に対する投与の際の上記インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤の効力を向上させること、が挙げられるが、それらに限定されない。本明細書中で記載されるカリクレリンインヒビターおよび/または抗線維素溶解剤に加えて、組成物は、1種以上の他の薬学的に活性な化合物をさらに含み得、この化合物は、患者(例えば、侵襲的な外科処置の患者、または脳虚血および/または脳虚血と関連した再灌流傷害に対する危険がある患者、脳虚血および/または脳虚血と関連した再灌流傷害を有している患者、または脳虚血および/または脳虚血と関連した再灌流傷害を以前に有していた患者)に対して、さらなる予防的利益または治療的利益を提供する。例えば、上記組成物は、本明細書中に記載される別の化合物を含み得る。
【0118】
(術中失血および減じられた心臓血流)
医学における多くの進歩に起因して、失血を引き起こす多数の高度に侵襲的な外科処置、または患者を高度の失血の危険に曝す多数の高度に侵襲的な外科処置が、毎日実行される。これらの患者は、一般的には、正常な血液供給および恒常性を回復および維持するために注意深く監視され、そして、これらの患者たちは、輸血を必要とし得る。失血を伴う外科処置としては、体外循環を伴う処置(心胸郭外科手術、例えば、CPBなど)が挙げられる。このような方法において、患者の心臓は停止され、その循環、酸素付加および血液量の維持が、体外回路および膜型人工肺を使用して、人工的に実行される。これらの技術は、一般に心臓手術中に使用される。さらに、骨への広汎な外傷を伴う外科手術(例えば、CABGで必要とされる胸骨開裂、または腰部置換処置など)損傷もまた、CASの活性化と関連することが明らかであり、このCASは、血液および血管系における種々の損傷を引き起こし得る。
【0119】
アテローム動脈硬化症性冠状動脈疾患(CAD)は、冠状動脈のうちの1つまたはいくつかの管腔の狭窄を引き起こす;この狭窄は、心筋(すなわち、心臓の筋肉)への血流を制限し、そして、アンギナ、心不全および心筋梗塞を引き起こし得る。アテローム性動脈硬化症性冠状動脈疾患の末期において、その冠状動脈の循環は、ほとんど完全に閉塞され得、このことは、非常に高度の致死性を伴う生命を脅かすアンギナまたは心不全を引き起こす。CABG処置は、その閉塞した血管に架橋して心臓への血液を回復するために、必要とされ得る;これらの処置は、生命を救うことが可能である。CABG処置は、1つ以上の健康な静脈または動脈を移植して、上記の疾患のある血管の閉塞部分の周囲に「バイパス」を提供する、最も侵襲的な外科手術の1つである。CABG処置は、小規模だが重大な術中の危険を有するが、これらのCABG処置は、患者にアテローム性動脈硬化症性心血管疾患の致死性および病的状態からの即時の解放を患者に提供することにおいて、非常に成功している。これらの非常に有望な結果にもかかわらず、結局2度目の処置および3度目の処置さえも経験する患者の数における増加に示されるように、反復CABG処置が頻繁に必要であり;最初のCABG処置で見られた術中での致死性および病的状態は、これらの再行処置において増加される。
【0120】
無併発性CADに対する最小限に侵襲的な外科技術における改良があった。しかしながら、心臓弁疾患および/または先天性心臓病、心臓移植および主要な大動脈処置に対して実施されるほとんどすべてのCABG処置は、いまだに、CPBにより補助された患者に対して実行される。CPBにおいて、大型のカニューレが、患者の大血管に挿入され、膜型人工肺を使用した血液の機械的なポンピングおよび酸素付加を可能とする。この血液は、肺を通って流れることなく患者に戻され、肺は、この処置の間、低灌流にされる。心臓は、心臓麻痺性の溶液を使用して停止され、患者は、脳損傷を防止するのを補助するために冷却され、そして、末梢循環量が、体外回路(すなわち、CPB回路(これは、ドナーの血液と生理食塩水との混合物をもって「プライミングする」ことを必要とし、その体外回路を充たすために使用される)により増加される。CPBは、約半世紀間に実施された種々の処置において、成功する結果を伴って広汎に使用されてきた。人工の表面、血球、血液タンパク質、損傷した血管内皮および血管外組織(例えば、骨)の間での相互反応は、恒常性を乱し、そして、CASを頻繁に活性化する。これは、既に注記したように、血液および血管系において種々の損傷を引き起こし得る。このような損傷は、過度の術中出血を誘発し、このことは、次いで、緊急輸血を必要とする。CPBにおける体外回路を通して全血を循環することの結果はまた、全身性炎症反応(SIR)を含み得、このSIRは、凝血系および補体系の接触活性化によって開始される。実際、表面上は機械的に成功するCPB外科処置と関連した致死性および病的状態の多くは、凝固系、線維素溶解系、または補体系を活性化するという効果の結果である。このような活性化は、肺系に損傷を与え得、このことは、成人呼吸促進症候群(ARDS)、腎臓および臓器循環の障害、ならびに失血および輸血の必要性をもたらす全身凝血異常の誘発をもたらす。術中失血の危険に加えて、SIRと関連したさらなる病理学的状態としては、神経性認知障害、脳卒中、腎不全、急性心筋梗塞および心臓組織損傷が挙げられる。
【0121】
輸血もまた、感染症のかなりの危険を提示し、そして、CABGの費用、またはCPBを必要とする他の類似した処置の費用を増加させる。何らかの薬理学的介入がなければ、たとえ優れた外科技術をもってしても、代表的には、3単位から7単位の血液が、患者において使い果たされなければならない。したがって、CPB処置またはCABG処置に供される患者における術中出血およびSIRを軽減または防止するために、新規かつ改良された薬理学的に有効な化合物および処置プロトコルを開発するための、かなりの動機付けが存在する。種々の抗血栓溶解剤(例えば、抗線維素溶解剤)と組み合わせての本明細書中で記載されるインヒビターの使用は、これらの種々の処置を改良し得、そして、生じ得る望ましくない症状の軽減および/または回復を誘導し得る。
【0122】
(脳虚血および再灌流傷害)
本明細書中で記載される方法は、脳虚血ならびに脳虚血と関連した再灌流傷害を軽減もしくは防止するために有用である。「脳虚血発作」または「脳虚血」は、脳への血液の供給が遮断される虚血状態である。脳への血液供給における中断は、内因性遮断もしくは血管自体の閉塞、離れた部分に原因がある閉塞、脳血流低下を生じる灌流圧の低下もしくは血液粘度の増加、またはクモ膜下腔もしくは大脳内組織における血管破裂もしくは血管漏血が挙げられるがそれらに限定されない、種々の原因に起因し得る。脳虚血は、一過性障害または恒久的な障害のいずれかを引き起こし得、そして、脳虚血を経験した患者における神経学的損傷の深刻さは、その虚血事象の強度および期間に依存する。一過性虚血発作(TIA)は、脳への血流が短期的に中断されて、一時的な神経性障害を引き起こすものである。TIAの症状としては、顔面もしくは四肢の虚弱麻痺、明確に会話する能力および/または会話理解能力の喪失、視覚喪失または暗い視界、およびめまいが挙げられる。脳卒中とも呼ばれる恒久的な脳虚血発作は、塞栓症、血栓、または脳出血(例えば、大出血)に起因する脳への血流の比較的長い中断により引き起こされる。「血栓閉塞症性脳卒中」、または「血栓閉塞症」という用語は、血栓症または閉塞のうちのいずれかにより引き起こされる脳卒中を指すために本明細書中では使用される。脳卒中は、代表的には、改善され得るが完全には解決されることはない神経性障害を生じる、ニューロンの喪失を引き起こす。上記の併用処置を含む本明細書中で記載される処置は、塞栓症関連性脳卒中、血栓関連性脳卒中、血栓閉塞症関連性脳卒中および出血関連性脳卒中を含む脳卒中を防止または軽減することにおいて有用である。脳卒中は、種々の原因により引き起こされ得る。1つの部類は、血栓形成または塞栓形成と関連し得る術中脳卒中を含む。
【0123】
脳卒中患者において、全虚血および/または組織壊死により特徴付けられる神経性障害のコアがある。この領域は、通常は、側副循環を受ける虚血性ペナンブラと呼ばれる、虚血組織により取り囲まれている。このペナンブラにおける虚血は、必ずしも不可逆的な損傷を引き起こすわけではない。いくつかの場合においては、ペナンブラへの血流の回復(再灌流)は、この領域における全虚血および壊死を防止し得る。しかしながら、再灌流は、上記コアを囲んでいる組織への傷害とも関連している。ひとたび血流が戻ると、好中球などの血球が、その損傷組織を攻撃し、これによって、さらなる炎症および/または損傷を引き起こし得る。再灌流傷害は、罹患した組織への好中球の流入および引き続いての好中球の活性化とも関連する。好中球は、直接的に組織の損傷を誘発する溶解酵素、および局部的な炎症反応を増幅する炎症誘発媒介物質(サイトカインなど)を放出し得る。虚血損傷部位への好中球の流入はまた、毛細血管を塞いで血管収縮を引き起こし得る。カリクレインは、好中球の走化性、好中球活性化および再灌流傷害において、役割を果たすことが発見されている。従って、本明細書中で記載されるカリクレインインヒビターは、例えば、1)好中球浸潤;2)好中球活性化;3)サイトカイン放出;4)エラスターゼ放出;および5)血管拡張;のうちの1つ以上を軽減または防止することにより、再灌流傷害を防止または軽減するために使用され得る。例えば、カリクレインインヒビターは、ブラジキニンおよび第XII因子を阻害するために使用され得る。上記のカリクレインインヒビターは、1種以上の抗血栓溶解剤(例えば、本明細書中で記載される1種以上の抗血栓溶解剤)との組み合わせで使用され得る。
【0124】
(投与)
カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、薬学的に受容可能な組成物において、失血を引き起こす事象もしくは失血と関連する事象(例えば、外科処置)、または虚血(例えば、脳虚血発作)を引き起こすかもしくはこれらと関連する事象の前、最中および/または後に、または本明細書中で記載される別の障害もしくは別の事象に関して、患者に投与され得る。この患者は、一般にはヒトであるが、非ヒト哺乳動物でもあり得る。ヒト患者は、成人(例えば、19歳から25歳の間、26歳から40歳の間、41歳から55歳の間、56歳から75歳の間および76歳ならびにそれ以上の年齢の患者)ならびに小児患者(例えば、0歳から2歳、3歳から6歳、7歳から12歳および13歳から18歳の患者)を含む。
【0125】
「薬学的に受容可能な」組成物という用語は、本明細書中で記載されるカリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤とともに、患者に投与され得る非毒性キャリアまたは賦形剤をいう。このキャリアまたはこの賦形剤は、上記組成物の生物学的活性または薬理学的活性と適合し得るように選ばれる。本明細書中で記載されるインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、患者に対する上記インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤の阻害量の送達のための任意の適切な手段(例えば、静脈内注射および吸入などの全身投与を含むが、それらに限られない)により、局所投与または全身投与され得る。非経口的投与が、特に好ましい。
【0126】
非経口的投与のために、上記カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、静脈内に、筋肉に、腹腔内に、または皮下に、注射され得る。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張性水性緩衝剤中の溶液である。他の薬学的に受容可能なキャリアとしては、滅菌水、生理食塩水溶液、および緩衝化生理食塩水(リン酸塩または酢酸塩などの緩衝剤が挙げられる)、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、パラフィンなどが挙げられるが、それらに限られない。必要な場合には、上記組成物はまた、その活性化合物と有害に反応しない限り、溶解剤、および注射部位における痛みを緩和するための局部麻酔(リドカインなど)、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、塩、潤滑剤などを含み得る。同様に、上記組成物は、従来の賦形剤(例えば、その活性化合物と有害に反応しない、非経口適用、経腸適用、または鼻腔内適用のために適切である、薬学的に受容可能な有機キャリア物質または無機キャリア物質)を含み得る。一般に、それらの成分は、活性単位で活性因子の量を示す気密密閉された容器(例えば、アンプルまたはサッシュなど)において、単位投与形態(例えば、凍結乾燥粉末または無水濃縮液)で、別個にかまたは共に混合された状態かのいずれかで、供給される。上記組成物が、注入により投与される場合には、滅菌した薬剤等級の「注射用水」または生理食塩水を含む、注入ビンに分配され得る。上記組成物が、注射により投与される場合には、注射用水または生理食塩水のアンプルが提供され、その結果、投与に先行して、それらの成分は混合され得るようになる。
【0127】
1つの実施形態において、上記カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、何らかの受け入れられた処置に従って、静脈内注射として、患者に投与される。例えば、本明細書中で記載される天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび抗血栓溶解剤(例えば、抗線維素溶解剤)は、アプロチニンを投与するための受け入れられた手順において現在使用されるものと同様の時期に、必要とされるカリクレインインヒビター単位(KIU)数または濃度を患者に提供するのに必要な量において、CABG処置を供される患者に投与され得る。別の実施形態においては、上記の天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび抗血栓溶解剤(例えば、抗線維素溶解剤)の各々は、必要とされるカリクレインインヒビター単位(KIU)数または濃度を患者に提供するのに必要な量において、投与される。
【0128】
本明細書中で記載されるカリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤はまた、出血異常が、SIRの下流効果の結果として起き得る場合に、手術直後の期間において患者に投与され得る。例えば、CPBに伴う処置において、本明細書中で記載されるインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、初期負荷量(例えば、麻酔の導入に先行する便利な時間(例えば、10分間)にわたって有効な量)として、患者に投与され得る。次いで、麻酔の導入時に、上記インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤の2番目の投与量が、CPBプライミング液(「ポンププライム量」)へと注射され得る。次いで、その患者は、外科処置の間、そして必要が示される場合にはその手順の後に、継続的かつ制御された静脈内注入投与量にて投与され得る。
【0129】
他の実施形態において、カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、虚血事象の後(例えば、脳卒中後、例えば、脳卒中の5分間後、10分間後、15分間後、30分間後、45分間後、1時間後、2時間後、3時間後、5時間後、10時間後、15時間後、20時間後、またはそれ以上後)に投与され得る。好ましくは、上記インヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、脳卒中後の12時間から60時間以内(例えば、24時間から48時間以内)に投与される。いくつかの実施形態においては、カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、虚血事象後(例えば、脳卒中後)であるがその損傷組織の再灌流の前に、投与される。他の実施形態においては、カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、再灌流中、または再灌流が始まった後に、投与される。さらに別の実施形態においては、カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、再灌流が起きた後に投与される。この文脈における「有効な」量とは、それがなければ処置がない場合に脳虚血および/または再灌流傷害を経験する被験体において生じたであろう脳虚血および/または脳虚血と関連した再灌流傷害と関連した1つ以上の症状を、軽減するのに十分な量である。いくつかの生理学的パラメータ(例えば、梗塞の規模、局部的な脳血流、頭蓋内圧、先行性健忘症、逆行性健忘症、痴呆、認知機能および/または情緒、ならびに脳水腫が挙げられる)が、脳卒中および脳卒中と関連した再灌流傷害を、処置前の患者のパラメータ、未処置脳卒中患者、または他の治療薬剤では処置されたが上記インヒビター(例えば、Kunitzドメインポリペプチドもしくは本明細書中で記載される他の化合物)との組み合わせでは処置されていない脳卒中患者と比較して、あるいはその逆の場合に、評価するために使用され得る。
【0130】
上記カリクレインインヒビター、上記抗血栓溶解剤、またはこれらの両方の投与量を決定するために評価され得るパラメータは、DX−88(天然に存在しないカリクレインインヒビター)およびアプロチニン(抗線維素溶解剤)に関して、以下に記載される。例えば、KIUおよび結合特異性に関する情報を決定することにより、上記カリクレインインヒビターおよび上記抗血栓溶解剤の各々の適切な投与量は、その望ましい治療的効果または予防的効果に関して決定され得る。
【0131】
DX−88またはDX−88関連インヒビターが使用される実施に関して、DX−88の親和性定数(Ki)は、カリクレイン阻害に関して、アプロチニンよりも少なくとも約1000倍よりも大きい。したがって、DX−88または類似する親和性のインヒビターの投与量は、例えば、モル/モルベースでアプロチニンの少なくとも約5分の1、約10分の1、約15分の1、約20分の1、約30分の1、約50分の1、約100分の1、約500分の1、または約1000分の1未満であり得る。この投与量はまた、ある事象(例えば、CPB)の間に活性化されるカリクレインの量、インビボでのDX−88−カリクレイン相互作用の特異性、SIRSを惹起するカリクレインの濃度、および薬理学的分布の関数として、調整され得る。1つの局面において、抗線維素溶解剤(アプロチニンなど)との組み合わせで投与されるDX−88または類似した親和性のインヒビターの投与量は、その組み合わせに関するKIUが、DX−88だけまたはアプロチニンだけが投与された場合と同じになるように、調整され得る。他の実施形態において、DX−88(または類似した親和性のインヒビター)および上記抗線維素溶解剤(例えば、アプロチニン)の各々は、他の薬剤の非存在下で与えられるのと同じであるかまたは類似する投与量で、投与される。同様の調整は、他の抗血栓溶解剤(例えば、本明細書で記載される抗線維素溶解剤)に関してなされ得る。
【0132】
血漿中に循環するカリクレインの総量は、約500nMから約600nMであると報告されている(Silverberg,M.ら、「The Contact and Its Disorders」Blood:Principles and Practice of Hematology、Handin,R.ら編、JB Lippincott Co.、Philadelphia、1995)。すべてのプレカリクレインが活性化された場合、約520ナノモル/LのDX−88が、化学量論的な様式でカリクレインを阻害するために使用され得る。5Lの血漿を有する個体は、2.6マイクロモルのDX−88の投与量(すなわち、7,054ダルトンというDX−88の分子量に基づいて約18mgの投与量)を必要とする。これは、DX−88のKが0.044nMであることに従って、計算された。例えば、1nMの血漿カリクレイン(PK)濃度を有すること有することが望まれる場合に、式K=0.044nM=[DX88]×[PK]/[DX88−PK]=[DX88]×1nm/499nMは、遊離DX−88濃度が、22.0nMであることを示す。従って、必要とされるDX−88の総量は、499+22nM(すなわち521nM)である。この投与量は、プレカリクレインのうちのすべてが活性化されるわけではない場合、またはカリクレインの一部が内因性インヒビター(例えば、C1エステラーゼインヒビター(C1NH))により脱活性化される場合、比例的に減じられ得る。従って、特定の実施形態においては、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約60mg、約80mg、約120mg、約250mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約1000mgのDX−88が、例えば、24時間の期間にわたって被験体に投与され得る。他の実施形態においては、約5mg未満、約10mg未満、約15mg未満、約20mg未満、約30mg未満、約40mg未満、約60mg未満、約80mg未満、約120mg未満、約250mg未満、約500mg未満、約600mg未満、約700mg未満、約800mg未満、約1000mg未満のDX−88が、例えば、24時間の期間にわたって投与され得、その結果、DX−88と抗血栓溶解剤との組み合わせは、DX−88だけが投与された場合と同様(または、それよりもよい)効果を、その障害の1つ以上の症状に対して有するようになる。
【0133】
活性カリクレインの濃度は、術語の体液および失血の増加に寄与するために一定レベルよりも上に上昇しなければならないかもしれないので、多くの場合には、すべての活性カリクレインを不活性化する必要はない。DX−88は、カリクレインに対するそのより高い有親和性に基づいて、アプロチニンと比較してかなり低い投与量で有効であると予測される。上記と同じ計算を使用すると、すべてのカリクレインが活性化された場合、約15,469ナノモル/Lのアプロチニンが、化学量論的な様式でカリクレインを阻害するために使用され得る。それゆえ、5Lの血漿を有する個体は、77.5マイクロモルのアプロチニン(すなわち、約542mgのアプロチニン)の投与量を必要とする。
【0134】
DX−88はまた、インビトロにおいてアプロチニンと比較して高い親和性をカリクレイン阻害に関して有する。それゆえ、アプロチニンにより阻害されるカリクレイン以外のプロテアーゼは、そのインヒビターの有効濃度を低め得、それにより、治療効果のために必要とされるアプロチニンの量を増加させ、かつ望まれない副作用を誘発する。
【0135】
現在、CABG処置を受けている患者にアプロチニンを投与するために米国で承認された2つのレジメン(TRASYLOLTMに対する製品標識および挿入物、Bayer Corporation Pharmaceutical Division、West Haven、Conn.、を参照のこと。この内容は、本明細書中に援用される)が存在する。
【0136】
カリクレインのポリペプチドインヒビターを投与することに関するいくつかの考慮事項は、代表的なDX−88ポリペプチドに関して例として示され得る。
【0137】
以下の表1は、カリクレインに対するDX−88ポリペプチドの親和性(Ki,app)と11個の他の公知の血漿プロテアーゼとの比較を提供する。
【0138】
【表2】

明らかに、DX−88ポリペプチドは、ヒト血漿カリクレインに対して高度に特異的である。さらに、カリクレインに対するDX−88の親和性(K,app)は、カリクレインに対するアプロチニンの親和性よりも700倍高く:カリクレインに対するDX−88のK,appは、約44pM(表1)であり、ここで、カリクレインに対するアプロチニンのK,appは、30,000pMである。このように、DX−88の用量は、1モル当たりの基準として、アプロチニンに対して使用される用量よりも低くあり得る。この情報を使用して、DX−88およびアプロチニンの各々の用量が決定され得る。
【0139】
いくつかの他の要因を考慮すると、実際に必要とされるDX−88の用量のより正確な見積が提供され得る。このような要因としては、特定の患者におけるCPB中に活性化されるカリクレインの量、SIRを誘発するために必要とされるカリクレインの濃度、患者におけるDX−88の生物学的利用能および薬理学的な分布、ならびにC1エステラーゼインヒビターの内因性血漿カリクレインインヒビターに対する効果が挙げられる。それにもかかわらず、アプロチニンの使用について現在認可されている用量においてカリクレインを阻害するKunitzドメインを含むペプチドを使用することが、依然として、特異性が低く、親和性がより低い、ウシアプロチニンの現在の使用を上回る、有意な改良を提供することが期待される。したがって、より低い用量、例えば、認可されたアプロチニン用量の少なくとも半分、または10分の1が、アプロチニンよりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、50倍、または100倍よくカリクレインを阻害するカリクレインインヒビターのために使用され得る。
【0140】
考慮すべき別の要因は、患者におけるSIRを誘発するために必要とされるカリクレインの臨界濃度である。活性カリクレインの濃度が、例えば、1nMより低く維持されなければならない場合、カリクレインに対するその高い親和性に起因して、DX−88は、SIRを阻害するために必要とされるタンパク質の量において、アプロチニンを上回る有意な利点を提供する。
【0141】
いくつかの実施形態において、上記カリクレインインヒビターポリペプチドは、約1〜500mg/m、好ましくは約1〜250mg/m、約1〜100mg/mの用量で投与される。例えば、カリクレインインヒビターポリペプチド、例えば、本明細書中に記載されるカリクレインインヒビターポリペプチドは、脳虚血の危険があるか、もしくは、脳虚血に苦しんでいるか、または脳虚血の発病に苦しんだ被験体に、約1〜100mg/mの用量で投与され得る。他の実施形態においては、カリクレインインヒビターポリペプチドの用量は、上に記載された用量未満であり得る。例えば、カリクレインインヒビターポリペプチドおよび抗血栓溶解剤の組み合わせが、カリクレインインヒビターポリペプチドがより高い用量で与えられた場合と全く同じ効果、または同様の効果を与えるように、カリクレインインヒビターの用量は、減らされ得る。
【0142】
他の抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤に対する推奨される投薬レジメンは、公知である。いくつかの実施形態において、組み合わせの処置は、例えば、その推奨される用量で与えられた抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤と同じ(または、それ以上の)治療効果を有するように、その抗血栓溶解剤、例えば、抗線維素溶解剤の推奨される用量は、調整され得る。イプシロンアミノカプロン酸(AmicarTM)に対する現在の投薬レジメンは、以下のとおりである:成人患者においては、イプシロンアミノカプロン酸は、最初の1時間に4g〜5gで投与され、以後、1〜1.25g/時間で、1日に3回〜4回で投与される。トラネキサム酸(CyklokapronTM)に対する現在の投薬レジメンは、7日間〜10日間、6時間〜8時間ごとに10mg/kgである。
【0143】
上記カリクレインインヒビターは、抗血栓溶解剤の投与前、投与と同時に、または投与後に、投与され得る。
【0144】
本明細書中に記載される方法は、さらに上記カリクレインインヒビターおよび上記抗血栓溶解剤以外の別の薬剤の投与を包含し得る。例えば、抗凝血剤、または抗血小板剤もまた患者に投与され得る。
【0145】
抗凝血剤は、血液成分の凝固を防止し、従って、血塊の形成を防止する。抗凝血剤としては、ヘパリン、ワルファリン、クーマディン、ジクマロール、フェンプロクーモン、アセノクマロール、ビスクマ酢酸エチル(ethyl biscoumacetate)、ヒルジン、ビバラルチン(bivalarutin)および他の直接的な血栓阻害剤ならびにインダンジオン誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0146】
抗血小板剤は、血小板の凝集を阻害し、そして、一時的な虚血発作、または脳卒中を経験した患者における血栓閉塞性の脳卒中を防止するために、しばしば使用される。抗血小板剤としては、アスピリン、チクロピジン(ticlopodine)およびクロピドグレル(clopidogrel)などのチエノピリジン誘導体、ジピリダモールおよびスルフィンピラゾン、ならびにRGD模倣物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0147】
上記カリクレインインヒビターポリペプチドは、天然に存在しないものであり、そして、例えば、既に注記されたように、人工的に、または組み換えで生成され得るゆえに、ウシの肺から単離されるアプロチニンの場合のように、天然の動物源に由来するタンパク質の単離中に生じ得る、伝染性疾患の汚染の可能性を回避する。種々の病理学的因子のヒト患者に対する汚染および感染の可能性の回避は、ポリペプチドを含む処置または薬学的組成物の、行政および大衆による受け入れにとってますます重要である。ウイルスが媒介する疾患、バクテリアが媒介する疾患、および、特に、感染性の狂牛病にさらされる危険の可能性を排除することは、ウシ組織から単離されたタンパク質の安全性のために特別に関心のある問題である。
【0148】
ヒトLACIタンパク質のKunitzドメイン1の改変体として、患者に上記カリクレインインヒビターポリペプチドを投与することからは、アプロチニンに対してよりも少ない副作用が予想され、このアプロチニンは、特に2度目のCABG処置などの反復投与において、患者にアナフィラキシー反応およびアナフィラキシー様反応を引き起こすと記録されるウシタンパク質である。さらに、本明細書中に記載されるカリクレインインヒビターポリペプチドのカリクレインに対する高度に特異的な結合は、アプロチニンに伴って観察される血栓傾向を制限、または排除し得、そして/またはCABG処置後の移植の開存性に伴って観察される問題を減少させ得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、カリクレインインヒビターポリペプチドは、アプロチニンとの組み合わせで投与され、そして、アプロチニンと関連した1つ以上の副作用が、軽減、または排除される。天然に存在しないカリクレインインヒビターとの組み合わせ処置により軽減、または防止され得るアプロチニンの1つ以上の副作用としては、以下:過敏反応および擬似アレルギー反応;かゆみ;発疹;発汗;じんましん;皮疹;蒼白、またはチアノーゼ;呼吸困難;嘔気;血圧低下;頻拍、または徐脈;気道閉塞;重症低血圧およびアナフィラキシーショック;腎臓機能障害;腎不全;移植閉鎖の危険の増加;心筋梗塞の危険の増加が挙げられるが、それらに限定されない。
【0150】
他の実施形態において、上記カリクレインインヒビターポリペプチドは、1つ以上のイプシロンアミノカプロン酸および/またはトラネキサム酸との組み合わせで投与され、そして、例えば、イプシロンアミノカプロン酸および/またはトラネキサム酸の投与と関連した1つ以上の副作用が、軽減、または排除される。天然に存在しないカリクレインインヒビターとの組み合わせ処置によって軽減、または防止され得るイプシロンアミノカプロン酸および/またはトラネキサム酸の1つ以上の副作用としては、血塊;頭痛;失調;胸痛、鼡径部痛、または脚痛、特に、ふくらはぎの痛み;息切れ(shortness of breath);不明瞭言語;視野変化;腕、または脚の脱力、または麻痺;耳鳴り;皮疹;緩徐または不規則な心拍;胃痙攣;顔、足、または下肢のむくみ;異常な倦怠感;体重増加;患者の尿量減少;下痢;嘔気、または嘔吐;発作;および幻覚が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
(デバイスおよびキット)
カリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤(例えば、抗線維素溶解剤)を含む薬学的組成物は、医療デバイスを用いて投与され得る。このデバイスは、例えば、医療施設および他の医療装置から離れた現場で、訓練を受けていない被験体、または救急職員によって、緊急事態に使用され得るように、携行性、室温での保存および使用の容易さなどの特徴を有するように設計され得る。このデバイスは、例えば、天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤を含む薬学的調製物を貯蔵するための1つ以上のハウジングを含み得、そして、上記薬剤の1単位以上の用量を送達するように構成され得る。
【0152】
例えば、上記薬学的組成物は、正確な注入速度で医薬を送達するための医薬注入ポンプを開示する、米国特許第4,447,233号、および、継続的な薬物送達のための可変流量の移植可能な注入装置を開示する、米国特許第4,447,224号に開示されるデバイスを用いて投与され得る。多くの他のデバイス、内植物、送達システムおよびモジュールもまた公知である。
【0153】
天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、キットにおいて提供され得る。1つの実施形態において、このキットは、(a)天然に存在しないカリクレインインヒビターを含む組成物を含む容器、および、必要に応じて、(b)情報資料を備える。この情報資料は、本明細書中に記載される方法および/または治療の便益のための薬剤の使用に関する説明書、指示書、販売上の資料、または他の資料であり得る。1つの実施形態においては、上記キットは、抗血栓溶解剤も含む。例えば、このキットは、上記天然に存在しないカリクレインインヒビターを含む組成物を含む第1の容器、および上記抗血栓溶解剤を含む第2の容器を備える。
【0154】
上記キットの情報資料は、その形態において制限されない。1つの実施形態において、この情報資料は、上記化合物の製造、この化合物の分子量についての情報、濃度、有効期限日、バッチまたは製造場所の情報などを含み得る。1つの実施形態においては、この情報資料は、例えば、失血、虚血(例えば、術中失血、脳虚血、再灌流傷害(例えば、脳虚血、または局所脳虚血と関係する再灌流傷害)と関連する虚血)と関連する傷害、および/または、例えば、侵襲的な外科処置、特に心肺バイパスを必要とする処置に供される患者における全身性炎症反応の発症の状態にあるか、またはそれらの危険に冒されている被験者を処置するための、適切な用量、投薬形態、または投与の様式(例えば、本明細書中に記載される用量、投薬形態、または投与の様式)における、天然に存在しないカリクレインインヒビターを投与する方法に関する。1つの実施形態においては、上記指示書は、抗血栓溶解剤なしでのカリクレインインヒビターのための投薬レジメン、投薬スケジュールおよび/または投与経路(例えば、本明細書中に記載される投薬レジメン)とは異なる、カリクレインインヒビターのための投薬レジメン、投薬スケジュールおよび/または投与経路を提供する。この情報は、種々の様式で提供され得、印刷されたテキスト、コンピュータ読み取り可能な資料、映像記録もしくは音声記録、または実質的な資料へのリンクもしくはアドレスを提供する情報を含み得る。
【0155】
上記天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤に加えて、上記キットにおける組成物は、溶剤もしくは緩衝剤、安定剤、または防腐剤などの他の成分を含み得る。この天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤は、例えば、液体、乾燥形態もしくは凍結乾燥された形態、好ましくは、実質的に純粋な、および/または無菌の、あらゆる形態において、提供され得る。これらの薬剤が、溶液で提供される場合には、この溶液は、好ましくは、水溶液である。これらの薬剤が、乾燥形態で提供される場合には、再構成は、一般に、適当な溶剤の添加によってなされる。この溶剤、例えば、滅菌水または緩衝剤は、必要に応じて、キットにおいて提供され得る。
【0156】
上記キットは、上記薬剤を含む組成物のための1つ以上の容器を備え得る。いくつかの実施形態において、このキットは、その組成物および情報資料のための別個の容器、仕切り、または区画を備える。例えば、この組成物は、ボトル、バイアル、またはシリンジ内に収容され得、そして、情報資料は、プラスチック袋、またはプラスチック小包に収容され得る。他の実施形態においては、このキットの別個の成分は、1つの分割されない容器に中に収容される。例えば、上記組成物は、ラベルの形態で上記情報資料を添付したボトル、バイアル、シリンジ内に収容され得る。いくつかの実施形態においては、このキットは、複数の(例えば、1パックの)個別の容器を含み、この容器の各々は、上記薬剤の1単位以上の投薬形態(例えば、本明細書中に記載される投薬形態)を含む。これらの容器は、組み合わせた単位の投薬量、例えば、上記天然に存在しないカリクレインインヒビターおよび/または抗血栓溶解剤の両方を、例えば、望ましい比率で、含む単位を含み得る。例えば、上記キットは、例えば、各々が、単一の組み合わせ単位の用量を含む、複数のシリンジ、アンプル、箔の小包、ブリスター包装、または医療デバイスを備える。このキットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿気、または蒸発における変化に非浸透性である)および/または遮光性であり得る。
【0157】
上記キットは、必要に応じて、組成物の投与に適切なデバイス、例えば、シリンジ、または他の適切な送達デバイスを備える。このデバイスは、上記薬剤の一方、または両方を事前に充填して提供されても、空であるが、充填に適した状態であってもよい。
【実施例】
【0158】
(実施例1)
種々の用量のカリクレインインヒビターポリペプチドの、脳の局所貧血/再灌流傷害に対する神経保護効果
脳における組織カリクレインの存在および脳細胞におけるブラジキニンB2受容体の識別は、キニン系が、神経系病理学において果たす役割を示す。ブラジキニンB2受容体アンタゴニストの虚血性の脳損傷の低減における有効性を示す最近のデータは、さらに、この仮説を支持する。
【0159】
この実施例において、カリクレインインヒビターポリペプチド(DX−88)は、一時的な局部的脳虚血の後に、神経の欠損および脳傷害の低減に有効である。
【0160】
DX−88が、血液脳関門を通過し得るかどうかを決定するためのインビトロ解析を実施した。非虚血のマウスを、生理食塩水またはDX−88(10μg/マウスもしくは30μg/マウス)で静脈内処置し、そして、投与の30分後または60分後に血漿を採取した。DX−88処置の30分後に、血漿カリクレイン阻害活性は、30μgおよび10μgで処置されたマウスにおいてそれぞれ、2倍および4倍高かった。この差異は、注入の60分後に採取した血漿では見られなかった。30μgのDX−88で処置したマウスからの脳脊髄液(CSF)において、顕著な阻害活性が見られ、DX−88投与の30分後または60分後に採取したCSFの間には差異はなかった。
【0161】
虚血を、大脳中央動脈(MCAO)の閉塞によって誘導した。虚血期間(30分)の終わりに、フィラメントを除去し、そして、再灌流させた。マウスに、虚血期間の始めに、異なる用量のDX−88を静脈内投与した。虚血から24時間後に、神経の欠損および梗塞のサイズを評価した。生理食塩水で処置したマウスが安定したスコアを示した一方で、30mgのDX−88を投与したマウスは、全身性欠損スコア(生理食塩水およびDX−88で処置されたマウスの平均は、各々、13および10.5である)、および局部的欠損スコア(生理食塩水およびDX−88で処置したマウスの平均は、各々、26および15.5である)が有意に減少した。これらのマウスにおいては、虚血容積もまた、生理食塩水で処置したマウス(63.12±7.69mm)と比較して、有意に減少した(各々、22.86±5.82mm、23.04±4.34mm)。この研究は、以下を示す:i)その活性形態において、DX−88は、インタクトな血液脳関門を迅速に通過し、従って、脳組織に到達し得る;ii)DX−88は、脳虚血および再灌流傷害の有害な結果に対し、有意な神経保護効果を有する。
【0162】
(実施例2)
脳虚血中および再灌流傷害中の異なる時点において投与されたカリクレインインヒビターポリペプチドの神経保護効果
虚血を、6−0モノフィラメントを使用したMCAOによる大脳中央動脈の閉塞により誘導した。30分の虚血期間の終わりに、フィラメントを除去し、そして、再灌流させた。虚血期間の始め、または虚血期間の終わり(再灌流中)に、マウスに、DX−88を静脈内投与した。
【0163】
最初に、DX−88が、血管脳関門を通過し得るかどうかを分析し、そして、30μg/マウスの静脈内投与による処置の30分後に、顕著な阻害活性がCSFに存在することを発見した。同じ用量のDX−88を、虚血期間の始めに与えた。虚血の24時間後に、神経の欠損および梗塞のサイズを評価した。生理食塩水で処置したマウスが安定したスコアを示した一方で、DX−88を投与したマウスは、全身性欠損スコア(37.5%差)および局部的欠損スコア(50.0%差)が有意に減少した。これらのマウスにおいては、虚血容積もまた、50.9%と有意に減少した。再灌流時に投与した場合、DX−88は、全身性欠損スコア(38%差)および局部的欠損スコア(50.1%差)の改善、ならびに、58%減少した虚血容積において、同様に有効であった。
【0164】
本研究は、以下を示す:i)この特異的カリクレインインヒビターは、迅速にインタクトな血管脳関門を通過し得、従って、恐らくはその活性形態において脳組織に到達し得る;ii)このカリクレインインヒビターは、脳虚血および再灌流傷害の有害な結果に対し、有意な神経保護効果を有する。
【0165】
本発明の多数の実施形態が記載された。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の失血を防止または軽減するための方法であって、抗血栓溶解剤との組み合わせで天然に存在しないカリクレインインヒビターポリペプチドを該患者に投与する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−213738(P2011−213738A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−164650(P2011−164650)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【分割の表示】特願2007−533689(P2007−533689)の分割
【原出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506065987)ダイアックス コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】