カリックスアレーンを用いた、膜タンパク質の選択的抽出方法
【課題】 本発明は、膜タンパク質を選択的に抽出する方法に関する。
【解決手段】 本発明は、抽出されるべき前記膜タンパク質の水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンを用いる。本発明の方法においてカリックスアレーンの使用は、膜タンパク質の選択的可溶化を可能とする。また、酵素活性に本質的な膜タンパク質の3次元構造の保持する。
【解決手段】 本発明は、抽出されるべき前記膜タンパク質の水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンを用いる。本発明の方法においてカリックスアレーンの使用は、膜タンパク質の選択的可溶化を可能とする。また、酵素活性に本質的な膜タンパク質の3次元構造の保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのカリックスアレーンを用いた、膜タンパク質の選択的抽出方法に関する。
【0002】
以下明細書では、括弧[]内の参照番号は、本テキストの末尾にある参考文献リストに対応する。
【背景技術】
【0003】
膜タンパク質抽出は、溶液中でのそれらの研究、特に放射線結晶解析(radiocrystallography)によりそれらの構造的特長の研究、を行うにはまず必要なことである。これは、それらが膜中でとっている状態と同じ立体的状態を、溶液中で維持することを含むものである。
【0004】
一般的に、この段階はデタージェントや表面活性剤に影響される。デタージェントや表面活性剤は、これらのタンパク質を、膜から抽出する一方で、膜二重層を破壊するからである。これは、デタージェントや表面活性剤が、脂質の脂肪鎖と競争関係になるからである。脂質はそれによって膜二重層を構成する一方、それらの親水性成分によって溶液中で膜タンパク質を維持する。しかし、これらの表面活性剤は、脂質と同じ物理化学的性質を示さず、構造的同一性の基である膜ドメイン構造を不安定にする。
【0005】
これらは膜タンパク質の可溶化に最も効果的であるけれども、アニオン性洗剤又は表面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はデソキシコレートナトリウム、は一般的に脱構造する。さらに、脂質二重層の脱構造の相の効果は、洗剤又は表面活性剤の脂肪鎖の長さと、膜の由来により変化するパラメータと、及びその中に挿入されているタンパク質との関数である。
【0006】
さらに、種々のカリックスアレーンとタンパク質との相互作用に関する研究が知られている。しかし、それらは、特にそれらの脱構造を起こさないで膜タンパク質をそれらの膜環境から抽出することは可能でない。
【0007】
本発明の内容において、「表面活性剤」、「サーファクタント」及び「デタージェント」は、区別なく、それらの両性構造により特定の性質を持つ分子を意味する。分子が両性であると記載されるのは、極性の親水性基と、非極性の疎水性基とを同時に持つ場合を意味する。
本発明において、「選択的抽出」という用語は、膜タンパク質を抽出可能とする方法を意味し、お互いをそれぞれ選択的に、天然又は人口かどうかにかかわらずそれらのタンパク質が挿入されている膜環境から、脂質膜を可溶化させて抽出し、溶液中に出すことである。
【0008】
本発明の意味で、膜タンパク質の「可溶化」又は「溶液中に出す」ということは、次のような意味に理解されるべきである。膜タンパク質が膜環境言い換えると、本質的に脂質媒体から水性環境に移るという意味である。水性環境では、「可溶化」されたタンパク質は、縣濁状態、分散状態、又は水溶液中で自由ではない分子の形状で、存在しうる。そのようなタンパク質は、サーファクタント又はデタージェントと、結合していたりリンクしていたりすることもあり得る。
【0009】
現在では、ポリアニオン性デタージェントで、膜タンパク質を脱構造させずに選択的に抽出することができるものはほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術のこのような、欠点、限定、不利益、障害を軽減する、抽出方法に対して実際の要求を満たす方法を提供する。特に、デタージェント性を持つアニオン性分子の使用を可能とする方法であって、膜タンパク質を選択的に、それらを変性したり、通常の3次元の構造を脱構造させたりせず、それらの機能を完全に満たすようにできる方法を提供する。
【解決手段】
【0011】
本発明の目的は、これらの要求にまさに応じるものであり、次の方法を提供するものである。すなわち、膜タンパク質を選択的に抽出する方法であって、抽出されるべき前記膜タンパク質の水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーン
【0012】
【化1】
(I)
(式中、
nは、1,3,5又は6である整数を表し、
R1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分枝の(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル、例えば(C9-12)アルキル)、場合によりそれらの1以上の原子に、O,S,N及びP原子,直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル,例えば(C9-12)アルキル),場合により‐COOR基で置換(ここで、Rは、直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基,又は6から20の炭素原子のアリール基))からなる群から選択される基が置換され、及び
X1,X2,及びX3は、それぞれ独立に‐(CH2)m-COOR’基(ここで、mは、0から10の整数を表し,R’は、水素原子、又は直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基を表す)と接触させるか、
又は、それらの、1以上の薬学的に許容される塩と、接触させる段階からなる方法である。
【0013】
本発明の1つの特別な実施態様によると、膜タンパク質の選択的抽出の方法は、少なくとも式(I)のカリックスアレーン、又それらの、1以上の薬学的に許容される塩を用いて実施されることができる。式中、
nは1を表し、
R1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基を表し、及び
X1,X2及びX3は、それぞれ独立に、‐(CH2)m-COOR’基(ここで、mは、0から10の整数を,及び
-R’は水素原子を表す)を、表す。
【0014】
本発明の意味で、「アルキル」とは次のような意味に理解されるべきである。すなわち、直鎖、分枝又は環状の、飽和又は不飽和の、場合により、1から12の炭素含有ラジカルで置換されているものである。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデカニルラジカル、及びそれらの分枝異性体が挙げられる。アルキル基は、その1以上の原子に、O,S,N,Pからなる群から選ばれる原子が置換されていてよい。
【0015】
「アリール」なる用語は、一般的意味で、環状の芳香族置換基で、6から20の炭素を含む。本発明の内容において、アリール基は、モノ又はポリサイクリックであってもよく、及び場合により置換されていていてもよい。例えば、ベンジル及びフェニールが挙げられる。
【0016】
本発明の内容において、「薬学的に許容される塩」なる用語は、化合物に存在する置換基により、非毒性の酸、又は塩基と調製される塩を含む。本発明の化合物が、酸性機能を含む場合、対応する塩は、その化合物に、場合により不活性溶媒中で、有機又は無機の塩基を加えて中和形にすることで得られる。添加する塩基塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アミン(有機)、又はマグネシウムの塩が挙げられる。本発明の化合物が、塩基性機能を有する場合、対応する塩は、その化合物に、場合により不活性溶媒中で、有機又は無機の酸を加えることで得られる。無機酸添加の塩の例として、塩化水素、臭化水素、硝酸塩、炭酸塩、1水炭酸、リン酸塩、1水硫酸又はヨウ化水素が挙げられる。有機酸添加塩の例として、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソブチル酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、フマール酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、フタール酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩又はメタンスルホン酸塩が挙げられる。
【0017】
本発明の意味で、「膜タンパク質」とは、次の意味に理解される。すなわち、生物的膜に伴い、言い換えると、アンカーされ又はインテグラルされており、そして水溶性媒体中では、自由ではなく、不安定である。膜タンパク質の中で、例えば、原形質膜のタンパク質及び細胞内膜(例えば、ミトコンドリア、核及びリゾソーム膜のような)が、挙げられる。
【0018】
膜タンパク質は、しばしば、膜と相互作用し得る構造、及びそれらの構造がお互いに適合する様式によって分類される。膜タンパク質は、ポリトピックタンパク質でもモノトピックタンパク質でもあり得る、例えばポリトピックタンパク質である。
【0019】
「ポリトピックタンパク質」とは、膜を一回又はそれ以上貫通するタンパク質を意味する。
【0020】
「モノトピックタンパク質」とは、膜の一方の側だけと相互作用するタンパク質と理解される。
【0021】
膜タンパク質はまた、膜からの抽出の困難性により分類される。それらはインテグラルか又は、ペリフェラルかであり得る、例えばインテグラルである。
【0022】
「インテグラルタンパク質」とは、モノトピック膜タンパク質ポリトピックタンパク質であって、膜と強く相互作用、特に疎水的相互作用するものを意味する。これらのタンパク質はまた、「内在性(intrinsic)タンパク質」と呼ばれている。
【0023】
「ペリフェラルタンパク質」とは、モノトピックタンパク質であって、膜と弱く相互作用するタンパク質、言い換えると、静電的結合又は他の膜タンパク質に含まれているものを意味する。これらのタンパク質は、「外在性(extrinsic)タンパク質」と呼ばれている。
【0024】
本発明の意味で、「膜タンパク質の水溶性溶液」とは、1又はそれ以上の膜タンパク質を含む水溶液を意味する。これは、例えば、懸濁液、分散液があり得る。そこではタンパク質は非溶解形又は非拡散形であり得るし、又は例えば生物的膜部分と結合していることもあり得る。
【0025】
式(I)のカリックスアレーンは、アニオン性分子であって、デタージェントの性質を有する。これは、いくつかのカルボキシレート機能による親水性の一面と、アルキル基による疎水性の面を持っている。
【0026】
複数の負電荷であることは、一方において、タンパク質の親水性表面とこのデタージェント分子とのイオン的相互作用には有利であり、他方では、そのタンパク質の(疎水性)コアに、(脱構造的に)入り込むことを抑制する。
【0027】
より正確には、式(I)のカリックスアレーンの化学構造により、この分子は、コーン又は先を切り取ったコーンの幾何学的形状をしており、広がった領域では親水性的であり、一方尾部分は疎水性的である(図1)。式(I)のカリックスアレーンのこの特別の形状は、ミセル形成を可能とする。これにより、一方ではタンパク質が膜環境を水性媒体の方向に通過することを助け、一方タンパク質の3次元構造を保持し、それにより活性を保持することができる。
【0028】
それゆえ、本発明の方法において、式(I)のカリックスアレーンの使用は以下のことを可能とする。すなわち、膜タンパク質を選択的に可溶化することにより抽出することができ(言い換えると、膜環境から水性環境へ、膜タンパク質が通過することを可能とする)、一方で膜タンパク質の3次元構造を保持する。その3次元構造とは膜タンパク質の活性、例えば酵素活性には本質的なものである。それゆえ、天然又は合成脂質で再構成した後も、膜タンパク質はその活性を回復する。
【0029】
さらに、本発明の方法は、あるタンパク質を、他のタンパク質とは別に選択的に抽出することを可能とする。特にカリックスアレーンの疎水性尾部分の長さを変更することにより可能である。それゆえ本発明の方法は、膜タンパク質部分を抽出し、分離することが可能である(可溶化部分と非可溶化部分)。実際、存在する置換基により、特にR1, R2, R3 及び/又は
R4のアルキル基の長さにより、式(I)のカリックスアレーンは、膜及びタンパク質のタイプに適合させ、選択的にかつ効果的に抽出して可溶化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、本発明の方法は、異なった式(I)のカリックスアレーンと接触させる、2つの又はそれ以上の工程を含み、いくつかのタンパク質を他のタンパク質とは別に抽出し、単離することができる。
【0031】
さらに加えるに、それらの構造により、特に置換基X1,X2及び/又はX3の性質により、本発明のカリックスアレーンは、ミセルを形成可能であり、その存在は、pHに依存して変更可能である。この性質は特に、ミセルを形成してそれにより膜タンパク質を異なる組織程度で溶液中に維持することを促進するため、又は逆に抑制するために、有用である。実際、ミセルが存在しないことは、タンパク質―タンパク質接触の確立を促進し、溶液中での結晶形成を準備する。
【0032】
本発明の方法は、原核生物、真核生物、正常有機体、異常有機体から導かれる生物的膜部分に存在するいかなる膜タンパク質の抽出を可能とする。例えば、本発明の方法において、抽出されるべき膜タンパク質は、原核生物、真核生物、正常有機体、異常有機体から導かれる、原形質膜部分にあってもよい。例えば、本発明の方法は、あらゆるポリトピックタンパク質を抽出することができる。例えば、本発明の方法は、あらゆるインテグラル膜タンパク質を抽出することもできる。
【0033】
本発明の1つの実施態様によると、膜タンパク質は、輸送タンパク質を含む群から選択されることができる。本発明において、「輸送タンパク質」とは、以下のように理解される。すなわち、役割が、膜の両側で、種々の物質(イオン、ステロール、マクロ分子等)を輸送することである。例えば、ABC輸送タンパク質(英語ではATP-結合カセット、フランス語では、ATP-結合領域)、レセプタ、エクスチェンジャ、チャンネル等が、挙げられる。
【0034】
本発明の1つの実施態様によれば、輸送タンパク質は、P糖タンパク質 (Pgp/ABCB1)[1],
MRP1/ABCC1(複合医薬耐性タンパク質,ヒトポリトピック及びインテグラルABCトランスポータ)[2],BCRP/ABCG2 (乳癌耐性タンパク質,ヒトポリトピック及びインテグラルABCトランスポータ)[3],BmrA(菌複合医薬耐性ATP,原核生物性ポリトピック及びインテグラルABCトランスポータ)[4]が、挙げられる。
【0035】
好ましくは、膜タンパク質は、輸送タンパク質としては、糖タンパク質P(Pgp/ABCB1),MRP1/ABCC1,BCRP/ABCG2,及びすべてのそのクラスのタンパク質からなる群から選択される。さらに特に、輸送タンパク質は、BmrAを含む群から選ばれる、ABCトランスポータであり得る。
【0036】
抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程は、pH5.5から10、好ましくは6から9の範囲である。
【0037】
抽出方法は、温度範囲が、0から100℃、好ましくは4から25℃の範囲である。
【0038】
抽出方法は、式(I)のカリックスアレーンの濃度が、10-6 から 10-2 Mで使用可能である。本発明の抽出方法は、その表面活性の性質により、カリックスアレーンを溶液中で使用、又はカリックスアレーンをコロイド凝集体で使用することができる。
【0039】
本発明の意味で、コロイド凝集体とは、数から数百分子のカリックスアレーンが、溶媒に対する反発力に基づいて自己組織化したものであると理化される。この性質により、式(I)のカリックスアレーンは、例えば、水、水性溶液、等張媒体又は生物学的媒体中のような、適当な媒体中で凝集形成が可能である。
【0040】
この凝集体は、ミセル、リポソーム及び脂質ナノ粒子からなる群から選択されてよい。好ましくは、カリックスアレーンは、ミセルの形である。
【0041】
ミセルという用語は、式(I)のカリックスアレーン分子の回転楕円体凝集体を意味し、使用される溶媒により自己組織化する。例えば水又は水溶性溶媒中では、親脂質末端は、ミセルの内側を向き、一方親水性末端は、ミセルと溶媒との界面を形成する。有機溶媒中では、例えば油中では、これとは逆の配置となる。
【0042】
リポソームという用語は、人工的に形成された小さなベシクルで、特に薄いリン脂質のシートからできており、水溶性空間部でお互いが離されているものを意味する。これらは、細胞膜の構造と非常に近い構造をとり得る。
【0043】
本発明の内容において、ナノ粒子という用語は、数百から数千分子の式(I)のカリックスアレーンの集まりで、少なくともひとつの次元がナノサイズ、例えば1から300nmであるものを意味する。
【0044】
本発明の方法において、抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶性懸濁液と、式(I)のカリックスアレーンとの接触の工程は、以下の共溶質であって、
i)薬学的に許容される塩を含む群から選ばれた有機及び無機塩、
ii)アミノ酸、ビタミン、脂質、ステロイド、炭水化物又は代謝産物からなる群から選択された、生物学的に活性な小分子、
iii)ペプチド、オリゴヌクレオチド又はオリゴサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なオリゴメリック分子、及び
iv)タンパク質、ポリヌクレオチド及びポリサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なポリメリック分子、
からなる群から選択された少なくとも1つの共溶質の存在下で実施されることが可能である。
【0045】
本発明1つの実施態様において、前記接触工程は、次の工程、
抽出されるべき膜タンパク質又はそれを含む前記膜部分が、緩衝液中で可溶化され、及び
式(I)のカリックスアレーンが、先に説明したような、温度、pH及び濃度で添加される、
が先に行われてもよい。
【0046】
本発明の1つの実施態様によれば、前記接触工程に次いで、
式(I)のカリックスアレーンと複合化した膜タンパク質を、複合化していない膜タンパク質とに分離する、遠心分離工程が続いて実施される。
【0047】
式(I)のカリックスアレーンと複合化した膜タンパク質と、複合化していない膜タンパク質は、遠心分離、例えば、1時間、4℃、100000xgで分離され得る。遠心分離条件は、タンパク質の性質に依存する。この技術分野の熟練者は、どのようにして最適化遠心分離条件、例えば[6]記載のような、を選択するかを理解するであろう。
【0048】
他の利点はまた、この技術分野の熟練者にとって、以下の例、説明のために供された添付図面による説明を参照することで、理解されるであろう。
【0049】
本発明によるカリックスアレーンの使用は、膜タンパク質の選択的可溶化を可能とするものであり、それらの酵素活性に本質的である3次元構造を維持するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の方法で使用される、カリックスアレーンのコーン状の幾何形状を示す。頂上にある極性基が黒く示され、疎水性脂肪族鎖は、図面及び下に示される。この特別な形状は、ミセル形成を可能とする。図1には、荷電された親水性領域に応じて領域A、カリックス[4]アレーンの本体部に応じた領域B、及び脂肪族基CnH2n+1の尾部分に応じた領域Cが示される。
【図2】図2は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1-12)分子の、サーファクタント(又は表面活性)の性質を示す。1-12の炭素数のアルキル鎖を含むカリックス[4]アレーン誘導体の、水の表面張力に及ぼす効果が、その濃度(M又はmol/L)の関数として、pH6.0(図示されていない)とpH8.0(図示されている)で、示されている。DDM(β-D-ドデシルマルト-ピラノシド)もまた、図に示される。それぞれの値は、3つの値の平均である。
【図3】図3は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(nは、炭素数1-12を表す。)分子の表面ポテンシャルを、アルキル鎖長さと、pHの関数として示す。1から12のメチレン基(図3、n、x軸)を持つアルキル鎖を含む分子の、水の表面張力に対する効果が、濃度10-2M,pH6.0(三角)及びpH8.0(四角)で示される。それぞれの値は、3つの値の平均である。
【図4】図4は、一連の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1-12)の臨界ミセル濃度(CMC)を、pH及びアルキル鎖の長さの関数として示す。1から12のメチレン基(図4、n,x軸)を持つアルキル鎖を含む分子の、CMCに対する効果が、濃度10-2M,pH6.0(黒丸)及びpH8.0(白丸)で示される。それぞれの値は、図2のデータから評価された、3つの値の平均である。
【図5】図5は、化合物p(COOH)3-Ar4-o(C7H15)の、アミノ酸による表面ポテンシャルの変更を示す。化合物p(COOH)3-Ar4-o(C7H15)は、濃度10-2Mで存在し、アミノ酸濃度は示されるように変更される。表面ポテンシャルは、pH8.0での値である。アミノ酸は、3文字表記で示されており、Glu=グルタミン酸,Trp=トリプトファン,Asn=アスパラギン,Gly=グリシン,Ala=アラニン,Ser=セリン,Phe=フェニルアラニン,Leu=ロイシン,Pro=プロリン,Lys=リジン,His=ヒスチジン,Arg=アルギニンである。それぞれの値は、3つの値の平均である。
【図6】図6は、細菌で発現され、及びその原形質膜への挿入されたBmrAの幾何学的図を示す。BmrAは、ホモ二量体タンパク質であり、それぞれのモノマーは、トランスメンブレン領域(TMD)を形成し、ヌクレオチド結合領域(NBD)にリンクしている[4,5]。
【図7】図7は、BmrAにおいて富化された膜の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子及びタンパク質の知られたデタージェントによる可溶性試験を示す。膜フラクションは、図11で示されるように調製され、図7で示されるようにp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1から12)分子でインキュベートされるか、又は知られたデタージェント(FC12,Fosコリン12:n-ドデシルホスホコリン,双生イオン性デタージェント、SDS:ナトリウムドデシルスルホネート,強アニオン性デタージェント、DDM:n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド,非荷電デタージェント),又は緩衝液(デタージェントなし)でインキュベートされる。100000xg、1時間、4℃で遠心分離して、可溶化タンパク質(S,上澄み)と、非可溶化タンパク質(P,ペレット又はプラグ)への分離の後、タンパク質部分はSDS PAGEで分析される。灰色点線及び黒色点線、及び黒実線は、可溶化されるべき分子の効能の尺度のためである。「No det」線は、「データジェントなし」の意味である。
【図8】図8は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子の、BrmAの可溶化に対する濃度の効果について示す。実験条件は、図7と、図に示されるように、ブチル、ヘプチル及びドデシル分子の濃度以外は同じである。g/L<->M対応は、表2に示される。「No det」線は、「データジェントなし」の意味である。
【図9】図9は、一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)の、BmrAのATPアーゼ活性への、可溶化の効果を示す。可溶性試験は、図8のように行われ、ATPアーゼ活性試験は図11に記載される。垂直点線は、それぞれのCMCを示す。黒菱形は、BmrAがp(COOH)3-Ar4-o(C7H15)で可溶化され、Lenoir et al.[6]により記載された処理によりデタージェントをバイオビーズ(Bio-Rad)で除去した後、脂質で再構成されたものの試験結果を示す。Y軸は、比活性を%で示す。100%活性とは、0.25マイクロmol Pi生成/mgタンパク質/分に対応する。
【図10】図10は、i)Sf9インセクト細胞(図のトップ)及びii)HEK293ヒト細胞(図の下)からのBCRPタンパク質の抽出を示す。これは、異なる株の膜タンパク質を抽出するために使用されるカリックスアレーンの可能性を示す。
【図11】図11は、β-D-ドデシルマルトピラノース(DDM),Fosコリン12 (FC12)及びカリックス[4]アレーン-O-ヘプチルオキシ(C4C7)を含む、異なるデタージェントで抽出した後、BmrAタンパク質の活性を示す。バナジン酸感受性比ATPアーゼ活性のパーセンテージ(%SA又は、%VO4sensitive SpecificATPase Activity)が、以下の異なる条件で評価される。-BmrAMb:天然膜中の、BmrAの活性-DDMsup./DDM:DDM抽出でのBmrAの活性-DDMsup./Lip.:DDM抽出及びそのリポソームでの再構成からのBmrAの活性-FC12sup./FC12: Fosコリン12抽出のBmrAの活性-FC12sup./Lip.: Fosコリン12抽出のBmrA をリポソームでの再構成からのmrAの活性-C4C7sup./FC12: カリックスアレーンC4C7 (言い換えるとカリックス[4]アレーン-O-ヘプチルオキシ)による抽出のBmrAの活性,-C4C7sup./Lip.: カリックスアレーンC4C7 (言い換えるとカリックス[4]アレーン-O-ヘプチルオキシ)による抽出のBmrAをリポソームでの再構成からのBmrAの活性
【図12】図12は、カリックスアレーンC4C3、後C4C7を用いて連続的に抽出し(図12A)、後ゲルろ過クロマトグラフィ(図12B-E)による精製の結果をまとめて示す。図12Aは、カリックスアレーンC4C3、後C4C7を用いて連続的抽出して、可溶化(S,上澄み)及び非可溶化(P,プラグ)部分の、SDS-PAGE(SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を示す。Mは移動フロントを表す。図12Cは、カリックスアレーンC4C7により抽出した後、ニッケル-アフィニティクロマトグラフィを、溶出液量Veのミリリッターでの関数として表す。図12Dは、カリックスアレーンC4C7により抽出した後、FC12の存在下で、ゲルろ過クロマトグラフィを、溶出液量Veのミリリッターでの関数として表す。図12Eは、部分a(「S200プールFC12」又はFosコリン12の存在下でゲルろ過クロマトグラフィに供されるBmrAの部分)の比ATPアーゼ活性(バナジン酸感受性)と、部分b(「200プールLip.」、BrmAの同じ部分であるが、ゲルろ過され、リポソーム存在下で再構成される)の比ATPアーゼ活性(バナジン酸感受性)とを示す。
【図13】図13は、異なるカリックス[4]アレーン(図14A)と、これらの分子がミセル又は超分子クラスタへの超分子組織化の例を示す。図13Aには、カリックス[4]アレーンが示されており、4つのフェノール(環、図では数字の「1」と定義される)がクラウンを形成し、一方の面でカルボキシレート基(サークル内の小ダッシュで、数字の「2」と定義される)を有し、及び他の面では、CnH2n+1脂肪族鎖(n=1,3,7,10及び12、小ロッドで, 数字「3」で定義される)を有する。図13Bでは、これらのカリックスアレーンにより形成されたミセル(領域「a」で表わされる)が、クラスタの内部に一緒になってグループ化された疎水性基(小ロッド)により、表面上に凝着維持された荷電機能(円形内の小ダッシュ)を露出する。
【実施例】
【0051】
一般的方法
溶媒及び試薬
ジクロロメタン(CH2Cl2)及びトルエンは、CaH2で乾燥して、窒素雰囲気下で蒸留する。テトラヒドロフラン(THF)は、ナトリウムとベンゾフェノンで乾燥後、窒素雰囲気下で蒸留する。ジエチルエーテルは、CaH2で乾燥し、窒素雰囲気下で蒸留し、4オングストロームモレキュラーシーブの存在下、0-4°Cで窒素雰囲気下で保存する。他の使用溶媒は、Carlo-Erba.から供給される。
核磁気共鳴(NMR)
1H及び13Cスペクトルは、Bruker AV500装置で測定される。1H NMRスペクトルの化学シフト(デルタ) は標準のテトラメチルシラン(TMS)のデルタ値を0.00ppmとする。13C NMRスペクトルのデルタ値は、溶媒の値から較正する。測定は、25°Cで、直径5mmの測定管で行う。スペクトルは、重水素化溶媒中で行い、Aldrich
又は SDSから供給される。
クロマトグラフィ
薄層クロマトグラム(TLC)はMerckの「TLC Silica gel 60F254」アルミニウムプレートで行う。化合物は、UV(紫外)ランプに晒すか又は/及び現像液であるリンモリブデン酸硫酸エタノールに漬けて加熱機で加熱する。クロマトグラフィカラムは、Merck silica gel (Silica gel 60(40-63マイクロm))で作成する。
質量スペクトル
ESI
mass: サンプルは、Perkin
Elmer Sciex API 300 spectrometerで測定し、「分析試薬」品質の溶媒を使用する。
表面張力測定
式(I)のカリックスアレーンの表面張力は、次のように評価する。キブロンマイクロデプレッション(Kibron micro-depression)装置と、ステンレススチールのシリンジと、Wilhelmy天秤を用いて、1mlの静置滴で評価する。得られる曲線は、ソフトウエアのSigmaplot v11で処理する。
例1: 25-ブチルオキシカリックス[4]アレーンの合成
カリックス[4]アレーンの無水DMF(943 ml)懸濁液(20g,0.47mol)を、CsF(8.49g,1.2当量)及びヨウ化ブタン(35.47ml,10当量)溶液に添加する。反応混合物を40°Cで96時間攪拌する。反応の進行は、TLC(薄層クロマトグラフィ)で追跡する。反応終了には、1M 塩化水素(250ml)を加えて反応を停止する。反応物をCH2Cl2(2
x200ml)で抽出する。有機層を合わせて、水で洗浄し(2x250 ml)、MgSO4で乾燥する。溶媒を留去して、残渣粗生成物をCH2Cl2/MeOH 混合物(1:1)で取り出す。溶液をろ過して未反応のカリックス[4]アレーンを除き、カラムクロマトグラフィ(CH2Cl2/ヘキサン1:1)で精製する。この方法で、白色固体を、収率68%で得られる。
M.Pt.=239°C;
1H NMR (CDCl3) δ 1.14 (t, 3H, 2JH-H = 7.1 Hz, Ar-OCH2CH2CH2CH3),
1.74 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2CH3),
2.18 (m, 2H, Ar-OCH2CH2CH2CH3),
3.48 (d, 4H, 2JH-H = 13.3 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.17 (t, 2H, 2JH-H = 7.0
Hz, Ar-OCH2 (CH2)2CH3), 4.30 (d,
2H, 2JH-H = 13.6 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.37 (d, 2H, 2JH-H = 12.9 Hz, Ar-CH2-Ar),
6.69-7.07 (m, 12H, Ar-H), 9.46 (s, 2H, Ar-OH), 9.77 (s, 1H, Ar-OH).
13C NMR (CDCl3) δ 14.2 (Ar-O(CH2)3CH3),
19.2 (Ar-O(CH2)2CH2CH3), 19.7
(Ar-OCH2CH2CH2CH3), 31.4 and 32.3
(Ar-CH2-Ar); 77.1 (Ar-OCH2(CH2)2CH3),
120.8; 121.8; 121.7; 126.1; 128.3; 128.7; 129.3 (Ar), 149.1 and 150.6 (ArC-OH),
151.5 (ArC-O(CH2)3CH3).
ES mass
spectrum (CHCl3) m/z: 481.2 [M+H]+, 503.3 [M+Na]+,
519.2 [M+K]+.
例2: 25-ドデシルオキシカリックス[4]アレーンの合成
カリックス[4]アレーンの無水DMF(943ml)懸濁液(20g, 0.47mol)を、CsF(8.49 g,1.2当量)及びヨウ化ドデカン(35.47ml,10当量)溶液に添加する。反応混合物を40°Cで96時間攪拌する。反応の進行は、TLCで追跡する。反応の終了には、1M塩化水素(250ml)を加えて反応を停止させる。反応物をCH2Cl2(2x200ml)で抽出する。有機層を合わせて、水で洗浄し(2x250ml)、MgSO4で乾燥する。溶媒を留去して、残渣粗生成物をCH2Cl2/MeOH混合物(1:1)で取り出す。溶液をろ過して未反応のカリックス[4]アレーンを除き、カラムクロマトグラフィ(CH2Cl2/ヘキサン1:1)で精製する。この方法で、白色固体を、収率48%で得られる。
M.Pt.=235°C;
1H NMR (CDCl3) δ 1.01 (t, 3H, 3JH-H= 7.0 Hz, Ar-O(CH2)11CH3),
1.42 (m, 4H, Ar-O(CH2)8CH2CH2CH3),
1.49 (m, 4H, Ar-O(CH2)7CH2CH2(CH2)2CH3),
1.53 (m, 4H, Ar-O(CH2)5CH2CH2(CH2)4CH3),
1.62 (m, 4H, Ar- O(CH2)3CH2CH2(CH2)6CH3),
1.80 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2(CH2)8CH3),
2.29 (m, 2H, Ar-OCH2CH2(CH2)9CH3),
3.57 (d, 4H, 2JH-H = 13.3 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.26 (t, 2H, 2JH-H = 6.8
Hz, Ar-OCH2(CH2)10CH3), 4.39 (d,
2H, 2JH-H= 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.48 (d, 2H, 2JH-H= 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar),
6.77-7.18 (m, 12H, Ar-H), 9.57 (s, 2H, Ar-OH), 9.88 (s, 1H, Ar-OH).
13C NMR (CDCl3) δ 14.3 (Ar-O(CH2)11CH3),
22.9 (Ar-O(CH2)10CH2CH3), 26.1 (Ar-
O(CH2)9CH2CH2CH3), 29.6
(Ar-O(CH2)8CH2(CH2)2CH3),
29.7 (Ar-O(CH2)7CH2(CH2)3CH3),
29.8 (Ar-O(CH2)7CH2(CH2)4CH3),
29.8 (Ar-O(CH2)5CH2(CH2)5CH3),
29.9 (Ar-O(CH2)4CH2(CH2)6CH3),
30.1 (Ar-O(CH2)3CH2(CH2)7CH3),
31.6 (Ar-O(CH2)2CH2(CH2)8CH3),
31.8 (Ar-OCH2CH2(CH2)8CH3),
32.1 and 32.2 (Ar-CH2-Ar), 77.7 (Ar-OCH2(CH2)10CH3)
121.1; 122.1; 122.4; 126.2; 128.4; 128.6; 128.9; 129.1; 129.5; 134.4 (Ar),
149.4 and 151.0 (ArC-OH), 151.6 (ArC-O(CH2)11CH3).
ES mass
spectrum (CHCl3) m/z: 593.2 [M+H]+, 615.2 [M+Na]+,
631.3 [M+K]+.
例3: 5,11,17 トリス-[(カルボキシラート)メチル]25-モノ-メトキシ26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5a
5gの、トリス-[(シアノ)メチル]モノメトキシオキシ26,27,28トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlのエタノール溶液をフラスコに入れる。そこに50mlの3MKOHを加える。反応混合物を加熱して72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し,12NHCl溶液で酸性とする。黄色生成物を、ろ過して回収し、後、50mlのメタノールと、4.5gの水酸化ナトリウムを含む50mlの水の中に入れて、72時間還流する。後溶液を冷却し、250mlの氷冷水で処理し、塩酸で酸性にし、ろ過する。水で洗浄して、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]-25-モノメチルオキシカリックス[4]アレーンを、白色から黄色の粉末として、収率72%で得られる。
M.Pt. =
221°C;
1H NMR (DMSO) δ 3.24 (s, 2H, Ar-CH2COOH), 3.31 (s, 4H,
Ar-CH2COOH), 3.39 (d, 2H, 2JH-H = Hz, Ar-CH2-Ar), 3.48
(d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.01 (s, 3H, Ar-OCH3),
4.18 (d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.25 (d, 2H, 2JH-H =
13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 6.89-7.16 (m, 9H, Ar-H), 8.79 (s, 2H, Ar-OH),
9.50 (s, 1H, Ar-OH), 12.07 (s, 3H, Ar-CH2-COOH),
13C NMR (DMSO) δ 21.1 (Ar-CH2-COOH), 29.1 and 30.9 (Ar-CH2-Ar),
66.1 (Ar-OCH3), 142.7; 143.1; 147.4; 148.4 (Ar), 150.3 and 153.5
(ArC-OH), 154.1 (ArC-OCH3), 168.4 and 169.3 (Ar-CH2-COOH).
ES mass
spectrum (DMSO) m/z: 613.1 [M+H]+, 635.1 [M+Na]+, 611.3
[M-H]-.
例4: 5,11,17-トリス-[(カルボキシラート)メチル]-25-モノ-ブチルオキシ26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5b
5gのトリス-[(シアノ)メチル]モノブチルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlエタノール溶液をフラスコにいれる。そこに50mlの3M水酸化カリウムを加える。反応混合物を72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し、12N塩酸水溶液で中和する。黄色生成物をろ過して回収し、それを50mlのメタノールと、4.5gの水酸化ナトリウムを含む水50mlに入れて、72時間還流する。溶液を冷却し、氷冷水250mlで処理し、塩酸で酸性にし,ろ過して回収し、水で洗浄して、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]25-モノブチルオキシカリックス[4]アレーンが、白色から黄色の粉末として、収率75%で得られる。
M.Pt. =
223℃;
1H NMR (DMSO) δ 1.07 (t, 3H, 2JH-H = 6.9 Hz, Ar-O(CH2)3CH3),
1.69 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2CH3),
2.01 (m, 2H, Ar-OCH2CH2CH2CH3),
3.17 (s, 2H, Ar-CH2COOH), 3.31 (s, 4H, Ar-CH2COOH), 3.38
(d, 2H, 2JH-H =13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.48 (d, 2H, 2H,
2JH-H = 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.57 (t, 2H, 2JH-H = Hz, Ar-OCH2(CH2)2CH3),
4.11 (d, 2H, 2JH-H = 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.20 (d, 2H, 2JH-H =
13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 6.82-7.12 (m, 9H, Ar-H), 8.87 (s, 2H, Ar-OH),
9.56 (s, 1H, Ar-OH),
13C NMR (DMSO) δ 13.8 (Ar-O(CH2)3CH3),
18.6 (Ar-O(CH2)2CH2CH3), 22.1
(Ar-CH2-COOH), 30.3 (Ar-OCH2CH2CH2CH3),
30.6 and 31.4 (Ar-CH2-Ar), 76.6 (Ar-OCH2(CH2)2CH3),
125.7; 127.6; 128.7, 130.1; 134.0 (Ar), 147.8 and 150.0 (ArC-OH), 151.9
(ArC-O(CH2)3CH3), 172.9 (Ar-CH2-COOH).
ES mass
spectrum (DMSO) m/z: 677.1 [M+Na]+, 653.3 [M-H]-.
例5: 5,11,17-トリス-[カルボキシラート)メチル]-25-モノ-ヘキシルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5c
5gの、トリス-[(シアノ)メチル]モノヘキシルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlエタノール溶液をフラスコに入れる。そこに50mlの3M水酸化カリウム溶液を加える。反応混合物を加熱して、72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し、12M塩酸水溶液で酸性にする。黄色生成物をろ過して回収し、それを50mlメタノールと4.5gの水酸化ナトリウムを含む水50mlに入れ、72時間還流する。溶液を冷却し、氷冷水250mlで処理し、塩酸で酸性にして、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]-25-モノ-ヘキシルオキシカリックス[4]アレーンが、黄色固体として収率69%で得られる。
M.Pt. =
222°C,
1H NMR (DMSO) δ 0.95 (t, 3H, 2JH-H = 7.1 Hz, Ar-O(CH2)5CH3),
1.42 (m, 4H, Ar-O(CH2)3CH2CH2CH3),
1.67 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2(CH2)2CH3),
2.02 (m, 2H, Ar-CH2CH2(CH2)3CH3),
3.16 (s, 2H, Ar-CH2-COOH), 3.31 (s, 4H, Ar-CH2-COOH),
3.38 (d, 2H, 2JH-H = 12.9 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.50 (d, 2H, 2JH-H = 12.9
Hz, Ar-CH2-Ar), 4.04 (t, 2H, 2JH-H = 7.2 Hz, Ar-OCH2(CH2)4CH3),
4.15 (d, 2H, 2JH-H = 12.9 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.20 (d, 2H, 2JH-H = 12.9
Hz, Ar-CH2-Ar), 6.85-7.18 (m, 9H, Ar-H), 8.89 (s, 2H, Ar-OH), 9.53
(s, 1H, Ar-OH), 13C NMR (DMSO) δ 14.0 (Ar-O(CH2)5CH3),
22.3 (Ar-CH2-COOH), 24.8 (Ar-O(CH2)4CH2CH3),
29.3 (Ar-O(CH2)3CH2CH2CH3),
29.7 (Ar-O(CH2)2CH2(CH2)2CH3),
30.3 (Ar-OCH2CH2(CH2)3CH3),
30.6 and 31.7 (Ar-CH2-Ar), 77.2 (Ar-OCH2(CH2)4CH3),
123.2; 124.2; 125.4; 126.9; 127.9; 129.6; 134.0 (Ar), 147.8 and 150.0 (ArC-OH),
151.9 (ArC-O(CH2)5CH3).
ES mass
spectrum m/z: 683.1 [M+H]+, 681.5 [M-H]-.
例6: 5,11,17-トリス-[(カルボキシラート)メチル]-25-モノ-ドデシル26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5d
5gの、トリス-[(シアノ)メチル]-モノドデシルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlエタノール溶液をフラスコに入れる。そこに50mlの3M水酸化カリウム溶液を加える。反応混合物を加熱して、72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し, 12M塩酸水溶液で酸性にする。黄色生成物をろ過して回収し、それを50mlメタノールと4.5gの水酸化ナトリウムを含む水50mlに入れ、72時間還流する。溶液を冷却し、氷冷水250 mlで処理し、塩酸で酸性にして、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]-25-モノ-ドデシルオキシカリックス[4]アレーンが、黄色固体として収率71%で得られる。
M.Pt. =
210°C,
1H NMR (DMSO) δ 0.81 (t, 3H, 2JH-H = 7.0 Hz, Ar-O(CH2)11CH3),
1.01 (m, 4H, Ar-O(CH2)9CH2CH2CH3),
1.03 (m, 4H, Ar-O(CH2)7CH2CH2(CH2)2CH3),
1.10 (m, 4H, Ar-O(CH2)5CH2CH2(CH2)4CH3),
1.25 (m, 2H, Ar-O(CH2)4CH2(CH2)5CH3),
1.44 (m, 2H, Ar-O(CH2)3CH2(CH2)6CH3),
1.67 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2(CH2)7CH3),
2.01 (m, 2H, Ar-OCH2CH2(CH2)8CH3),
3.18 (s, 2H, Ar-CH2-COOH), 3.30 (s, 4H, Ar-CH2-COOH),
3.35 (d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.47 (d, 2H, 2JH-H = 13.2
Hz, Ar-CH2-Ar), 4.01 (t, 2H, 2JH-H = 7.1 Hz, Ar-OCH2(CH2)10CH3),
4.13 (d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.17 (d, 2H, 2JH-H = 13.2
Hz, Ar-CH2-Ar), 6.83-7.12 (m, 9H, Ar-H), 8.91 (s, 2H, Ar-OH), 9.53
(s, 1H, Ar-OH),
13C NMR (DMSO) δ 13.8 (Ar-O(CH2)11CH3),
21.2 (Ar-CH2-COOH), 24.6 (Ar-O(CH2)10CH2CH3),
24.8 (Ar-O(CH2)9CH2CH2CH3),
28.7 (Ar-O(CH2)8CH2(CH2)2CH3),
28.8 (Ar-O(CH2)7CH2(CH2)3CH3),
29.1 (Ar-O(CH2)6CH2(CH2)4CH3),
29.4 (Ar-O(CH2)5CH2(CH2)5CH3),
29.6 (Ar-O(CH2)4CH2(CH2)6CH3),
29.8 (Ar-O(CH2)3CH2(CH2)7CH3),
29.9 (Ar-O(CH2)2CH2(CH2)8CH3),
30.2 (Ar-OCH2CH2(CH2)9CH3),
30.5 and 31.6 (Ar-CH2-Ar), 77.8 (Ar-OCH2(CH2)10CH3),
123.1; 124.3; 124.6; 127.2; 128.4; 129.7; 134.1 (Ar), 147.1 and 150.3 (ArC-OH),
151.4 (ArC-O(CH2)11CH3), 170.3 (Ar-CH2-COOH).
ES mass
spectrum m/z: 767.2 [M+H]+, 765.1 [M-H]-.
例7: サーファクタント性-1
図2は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子(n=1-12炭素数)のサーファクタント効果を示す。図からわかるように、水の表面張力を減少させる能力は、サーファクタントの一般的効果であり、脂肪族鎖の炭素数の増加に従って増加する。より短い鎖を持つカリックスアレーン分子は、水の表面張力を大きくは変えず、これらのデタージェント性には限界があることを意味する。一方、より長いアルキル鎖(n=3から12)を含む分子は、デタージェントのようにふるまう。
【0052】
予想できるように、サーファクタントのポテンシャルは、アルキル鎖の長さにつれて増加し、p(COOH)3-Ar4-o(C12H25)分子は、DDM(β-D-ドデシル マルト-ピラノシド)のそれと近似する性質を示す。ここでDDMは,非イオン性デタージェントで、タンパク質を可溶化するのに一般的に使われている。
【0053】
この例は、本発明のカリックスアレーン化合物の最初の性質を明らかにする、すなわち、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)カリックスアレーン(n=2-12)は,サーファクタントのような振る舞いをするということである。
【0054】
図3に示されるように、pHは、表面張力について分子のポテンシャルを変える。pH6及び8では、表面張力はアルキル鎖の長さに従い増加し、最初の表面張力の半分に対応するプラトーに到達する(n=12、pH8.0)。
【0055】
これらの効果は、本発明の性質を明らかにする。すなわち、pHを単純に変えることで、本発明のカリックスアレーンの存在下で媒体の表面張力を変更することができるということである。この効果は、本発明のカリックスアレーンのアルキル鎖の長さに依存して減少させることも増加させることも可能である。
例8: サーファクタント性-2
図4に示されるように、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)カリックスアレーン(n=1-12)は、極限ミセル濃度(CMC)が0.15から1.5mMの範囲を持つことが可能な、デタージェントのようにふるまう。極限ミセル濃度(CMC)とは、デタージェント分子がそれ以上濃度を高くすることができない濃度を意味する。というのはそれ以上ではミセル形成に関与するからである(図13)。8よりも少ないメチレン基を有するアルキル鎖を含む分子は、pHに依存しないmMオーダーのCMCを示す。逆に、8メチレン基よりも多く含むアルキル鎖の場合、結果としてCMCは、pHは6から8へ増加すると、0.15mMへと明確に減少する。
【0056】
この例は、一連の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1-12)カリックスアレーンの重要な性質を明らかにする。すなわち、pHへの感受性がアルキル鎖の長さに依存するということである。この性質は特に、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=9-12)カリックスアレーンで顕著である。酸性pHでも塩基性pHでも、ミセル形成を助けるためにもまた抑制するためにも使用することができる。この性質は、可溶化されたタンパク質の膜の濃縮工程で、その濃度を増加させることなくデタージェントの除去を一般的に可能とするということである。
例9: p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)とアミノ酸との相互作用
図5は、一連の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)のユニークな性質を示す。n=7は例外であるが、アミノ酸と複合体を形成し、媒体の表面張力を変更することを明らかにしている。グルタミン酸、又はそのアミノ誘導体であるアスパラギンとは、何の効果も示さない。中程度の効果が、グリシンで見られる。この効果は、疎水性(アラニン、フェニルアラニン、ロイシン)で増幅され、正に荷電したアミノ酸、ヒスチジン、リジン及びアルギニンでは、非常に強いものとなる。この例は、p(COOH)3-Ar4-o(C7H15)(及び他の)分子の非常に重要な性質を明らかにしている。すなわち、これらにより、サーファクタントポテンシャルが、正に荷電されたアミノ酸を添加することで容易に増加させることができるということである。この結果の複合体は、双生イオン性化合物に類似している。
例10: 凝集体のサイズ
表1は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子の凝集状態を示す。
【0057】
【表1】
表1から明らかなように、すべてのシステムで、ミセルタイプの凝集形成を観測した。
p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子の生物学的効果
一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)が、BmrAの可溶化の試験に供された。BmrAは、ABCトランスポータファミリの膜タンパク質であり、細胞から細胞の外へ生体異物の流出や漏出を保護する[Chami 2002 JMB 315 1075; Orelle 2003 JBC 278-47 47002]。
【0058】
図6に模式的に示されるように、BmrAは、ホモ二量体タンパク質であって、細菌の原形質膜に挿入されているものである。このタンパク質は、生体異物をATPの加水分解を介して除外するものであり、その酵素活性は、トランスポータの正しい折りたたみに依存し、脂質を要求する[7]。そのような活性は、可溶化の途中でのタンパク質の機能的完全性を検証するために使用される。
例11: 本発明のカリックスアレーンの生物学的膜可溶化能力
形質転換受容性細菌C41 BL21(DE3) E. coli (Escherichia
coli)を、プラスミド
pET15b-BMRAを用いて形質転換した。そのプラスミドは、BmrAをコードする遺伝子を持ち、誘導可能なプロモータの制御下に置かれ、かつアンピシリン耐性に関するタンパク質をコードする遺伝子を持つ。ポジティブクローンを、液媒体中で、37℃で、200rpmで、アンピシリン存在下で、半指数的成長相まで培養した。BmrA発現は、1mMのイソプロピルチオ-ベータ-ガラクトシドを添加して誘導し、25℃で4時間維持した。細菌を遠心分離で集め、フレンチプレスで破砕し、膜部分を一連の低速及び高速の遠心分離により単離した。タンパク質含量は、カロリメトリ[8]で評価し、液体窒素で凍結して保存する前に、20 mg/ml(20 mMTris-Cl pH8.0、200mlNaCl、300mM スクロース)に調製した。使用前に、膜部分を水で溶かし、氷で4℃に維持する。
【0059】
可溶性は、4℃(又は指示ある場合は、室温23℃)で実施する。膜部分を同じ緩衝液で希釈し、最終濃度2mgタンパク質/mlとなるようにした。そこにデタージェントと、試験される分子を、10mg/ml(1%)又は指示ある場合はそれより低くして添加し、2時間、4℃でインキュベートする。可溶化又は非可溶化タンパク質部分は、1時間、10℃で200000xg遠心分離工程で分離される。それぞれの遠心分離プラグは、最初の容積に懸濁され、上澄みと共に、Laemmliゲルポリアクリルアミドタイプ(SDS PAGE)電気泳動にかけられ[9]、[7]で例として記載されるように、それらのタンパク質量を分析する。このような条件で、BmrAは、約70,000ダルトンに移動する。
【0060】
ATPアーゼ活性は、37℃で5分間インキュベートした後、無機リン酸含有量(Pi)を評価して測定する。他のATPアーゼ活性により産生されるPiの分は、BmrAのATP活性を阻害する(例えば[10]で記載されるように)、1mMオルトバナジン酸の存在下で、同じ活性を測定することで差し引かれる。
【0061】
図7に示されるように,p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子のアルキル鎖の長さを関数として、BmrAは、上澄みに増加傾向で見出される。最も短い分子(n=1又は2)では可溶性はまったく見られず、デタージェント無しの場合(「no det」線)と同じ図を与える。可溶性は、n=3又は4で徐々に増加し、n=5及び6の場合に最も強くなり、DDMで得られる図と同じ図を与える。可溶性は、nが7以上では完全であるように見え、これはFC12又はSDSを用いた場合と同じである。
【0062】
この結果は、図8のデータで確認される。図8は、ヘプチル化合物の場合CMCの分子濃度、約1.5mM(1g/L=1.6mg/ml)以上で可溶性が生じることを示す。一方、ドデシル化合物の場合はこれは該当せず、0.15mM(0.1g/L)のCMCでは、可溶化は起こらない。これは、過度に低いデタージェント/タンパク質比のためであろう。
【0063】
表2は、試験した分子のMを、g/Lで示す。
【0064】
【表2】
例12: BmrAのATPアーゼ活性に対する、一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)による可溶化の効果
BmrAのATPアーゼ活性に対する、一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)による可溶化の効果を、図8で示す同じ条件で分析した。図9は、使用デタージェント(メチル、ブチル、ヘプチル、又はドデシル脂肪族鎖)及びコントロール用デタージェント(FC12及び C12E8,荷電しないデタージェント)の、BmrAの可溶化の前、間、及び後での、ATPアーゼ活性を示す。
一般的に観察されるように、ATP活性は、FC12 及び C12E8に見られるように、可溶化に従って減少する。
【0065】
顕著なことに、図8と図9を比べると次のことが示される。1mg/mlでのヘプチル分子は、BmrAをむしろ効果的に可溶化し、一方この濃度はCMCよりも少し低いが、不活性には導かないということである。これはドデシル化合物についても同じ濃度、CMCの1/10の1mg/mlで該当する。
【0066】
デタージェントを除いた後、脂質2重層でのBmrAの再構成の実験は、ATPアーゼ活性の完全回復を示し(図9の黒菱形)、本発明の分子が、BmrAの立体構造が機能状態に保存されていることを示す。
例13: 本発明の方法による、ヒト由来BCRPタンパク質の抽出
ヒト遺伝子から誘導されるBCRPタンパク質を、HEK293ヒト細胞又は対応する遺伝子で転換されたSf9インセクト細胞で発現させた。図10で示すように、このタンパク質は、ヘプチル又はより長い鎖を持つ式(I)のカリックスアレーンで同じように効果的に可溶化された。
【0067】
これらの実験は、トリアニオン性カリックス[4]アレーンを用いる本発明の方法が、特定の膜タンパク質の抽出に効果的であり、一連の類似のカリックスアレーンの選択によって、そのタンパク質を上澄みに集めるか、又はプラグに残すことができることを示す。この抽出は、さらに精製工程を続けることも可能である。
【0068】
例14: ABCトランスポータの酵素活性に対する、本発明のカリックスアレーンによる可溶化の効果
ABCトランスポータファミリのタンパク質は、可溶化に非常に敏感であり、この工程はしばしばタンパク質のATPアーゼ活性、少なくとも可逆性を損なう。その障害、NBDドメイン(ヌクレオチド結合領域)と、TMD(トランスメンブレン領域)とのカップリングの欠如から生じるものである。
BmrAタンパク質の活性に対する可溶性の効果は、種々のC4Cnカリックスアレーン、すなわちp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)で評価し、また、コントロールデタージェントとして、Fosコリン12(FC12)及びβ-D-ドデシルマルトピラノシド(DDM)を用いて評価した。後得られた抽出物(上澄み部分)を、膜環境を回復しタンパク質の活性を回復可能とするために、リポソーム存在下で脱塩した。図11に結果が示される。DDM又はFC12の存在下で可溶化された場合、BmrAタンパク質は、天然膜(「BmrAMb」)内で測定されるBmrA活性に比べて、それぞれそのATPアーゼ活性の95及び99%を失った(それぞれ、「DDM Sup. / DDM」 及び 「FC12 Sup./FC12」列)ことが示される。にもかかわらず、このATPアーゼ活性は、デタージェントを除去しリポソームで再構成した後は、回復する(図11,
「DDM Sup. /
Lip.」及び「FC12
Sup./Lip.」列)。
【0069】
C4C3及びC4C7カリックスアレーン誘導体が連続的に使用される場合(例15参照)、約50%のATPアーゼ活性が維持されている。これは、これらのカリックスアレーンデタージェントが、溶液中の膜タンパク質を、デタージェントDDM及びFC12よりもより強固な形で維持することを可能にすることを示している。実際、式(I)のカリックスアレーンの強固なコーン状構造は、強固なミセル形成を可能とする。これにより、タンパク質にとって、膜環境に相当する媒体が構成されることになり、これらタンパク質の3次元構造をよりよく保存し、従ってそれらの活性をよりよく保存することができる。
例15: ABCトランスポータファミリのタンパク質の、式(I)のカリックスアレーン抽出と及びその精製
C4C3その後C4C7カリックスアレーンを連続的に用いるBmrAタンパク質の分別抽出の利点は、続くクロマトグラフィによる精製の前に、上澄み部分(図12A)を濃縮することが可能となることである(図12B-E)。C4C7からの上澄み(図12A、サンプル「C4C7 S」)は、Niアフィニティクロマトグラフィに供され(図12B 及び12C)、BmrAタンパク質は、そのN末端にヘキサヒスチジンタグを持つ。タンパク質は樹脂と混合され、0.3MNaClの存在下でイミダゾールで溶出される。これにより、トリ陰イオンカリックスアレーンによるニッケル配位を抑制することができる。
【0070】
同じ上澄みがまた、トランスポータのオリゴメリ化状態を確認するために、Fosコリン12存在下でゲルろ過クロマトグラフィに供された(図12D)。BmrAは、12mlの容量で溶出され、これは見かけ分子量200,000Daに対応し、BmrAの2量体形 (2 x 65,000 Da)及びFC12のミセル(70,000 Da)に一致する。この工程の間、C4C7カリックスアレーンは、FC12と交換され、15と25mlの間で溶出された。これは、UV検出(OD 280nm、ミリ吸収単位 mAU)及び,SDS-PAGEによる(図12Dに挿入)。BmrA部分(図12Dでは星で表される)は、FC12の存在にもかかわらず活性回復される(図12Eの部分)。このことは、BmrAの機能的構造がC4C7での可溶化の後保存されているか、及び/又はC4C7の痕跡量がタンパク質に結合しているか、を示唆する。高められたATPアーゼ活性がリポソームにおいてBmrAの再構成の後回復された(図12Eの部分b)。これらの結果は、明らかに次のことを示す。膜タンパク質は、式(I)のカリックスアレーンの使用と、クロマトグラフィ工程との一組の使用により、それぞれの工程のタンパク質の機能的完全性を保持するということである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのカリックスアレーンを用いた、膜タンパク質の選択的抽出方法に関する。
【0002】
以下明細書では、括弧[]内の参照番号は、本テキストの末尾にある参考文献リストに対応する。
【背景技術】
【0003】
膜タンパク質抽出は、溶液中でのそれらの研究、特に放射線結晶解析(radiocrystallography)によりそれらの構造的特長の研究、を行うにはまず必要なことである。これは、それらが膜中でとっている状態と同じ立体的状態を、溶液中で維持することを含むものである。
【0004】
一般的に、この段階はデタージェントや表面活性剤に影響される。デタージェントや表面活性剤は、これらのタンパク質を、膜から抽出する一方で、膜二重層を破壊するからである。これは、デタージェントや表面活性剤が、脂質の脂肪鎖と競争関係になるからである。脂質はそれによって膜二重層を構成する一方、それらの親水性成分によって溶液中で膜タンパク質を維持する。しかし、これらの表面活性剤は、脂質と同じ物理化学的性質を示さず、構造的同一性の基である膜ドメイン構造を不安定にする。
【0005】
これらは膜タンパク質の可溶化に最も効果的であるけれども、アニオン性洗剤又は表面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はデソキシコレートナトリウム、は一般的に脱構造する。さらに、脂質二重層の脱構造の相の効果は、洗剤又は表面活性剤の脂肪鎖の長さと、膜の由来により変化するパラメータと、及びその中に挿入されているタンパク質との関数である。
【0006】
さらに、種々のカリックスアレーンとタンパク質との相互作用に関する研究が知られている。しかし、それらは、特にそれらの脱構造を起こさないで膜タンパク質をそれらの膜環境から抽出することは可能でない。
【0007】
本発明の内容において、「表面活性剤」、「サーファクタント」及び「デタージェント」は、区別なく、それらの両性構造により特定の性質を持つ分子を意味する。分子が両性であると記載されるのは、極性の親水性基と、非極性の疎水性基とを同時に持つ場合を意味する。
本発明において、「選択的抽出」という用語は、膜タンパク質を抽出可能とする方法を意味し、お互いをそれぞれ選択的に、天然又は人口かどうかにかかわらずそれらのタンパク質が挿入されている膜環境から、脂質膜を可溶化させて抽出し、溶液中に出すことである。
【0008】
本発明の意味で、膜タンパク質の「可溶化」又は「溶液中に出す」ということは、次のような意味に理解されるべきである。膜タンパク質が膜環境言い換えると、本質的に脂質媒体から水性環境に移るという意味である。水性環境では、「可溶化」されたタンパク質は、縣濁状態、分散状態、又は水溶液中で自由ではない分子の形状で、存在しうる。そのようなタンパク質は、サーファクタント又はデタージェントと、結合していたりリンクしていたりすることもあり得る。
【0009】
現在では、ポリアニオン性デタージェントで、膜タンパク質を脱構造させずに選択的に抽出することができるものはほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術のこのような、欠点、限定、不利益、障害を軽減する、抽出方法に対して実際の要求を満たす方法を提供する。特に、デタージェント性を持つアニオン性分子の使用を可能とする方法であって、膜タンパク質を選択的に、それらを変性したり、通常の3次元の構造を脱構造させたりせず、それらの機能を完全に満たすようにできる方法を提供する。
【解決手段】
【0011】
本発明の目的は、これらの要求にまさに応じるものであり、次の方法を提供するものである。すなわち、膜タンパク質を選択的に抽出する方法であって、抽出されるべき前記膜タンパク質の水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーン
【0012】
【化1】
(I)
(式中、
nは、1,3,5又は6である整数を表し、
R1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分枝の(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル、例えば(C9-12)アルキル)、場合によりそれらの1以上の原子に、O,S,N及びP原子,直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル,例えば(C9-12)アルキル),場合により‐COOR基で置換(ここで、Rは、直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基,又は6から20の炭素原子のアリール基))からなる群から選択される基が置換され、及び
X1,X2,及びX3は、それぞれ独立に‐(CH2)m-COOR’基(ここで、mは、0から10の整数を表し,R’は、水素原子、又は直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基を表す)と接触させるか、
又は、それらの、1以上の薬学的に許容される塩と、接触させる段階からなる方法である。
【0013】
本発明の1つの特別な実施態様によると、膜タンパク質の選択的抽出の方法は、少なくとも式(I)のカリックスアレーン、又それらの、1以上の薬学的に許容される塩を用いて実施されることができる。式中、
nは1を表し、
R1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基を表し、及び
X1,X2及びX3は、それぞれ独立に、‐(CH2)m-COOR’基(ここで、mは、0から10の整数を,及び
-R’は水素原子を表す)を、表す。
【0014】
本発明の意味で、「アルキル」とは次のような意味に理解されるべきである。すなわち、直鎖、分枝又は環状の、飽和又は不飽和の、場合により、1から12の炭素含有ラジカルで置換されているものである。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデカニルラジカル、及びそれらの分枝異性体が挙げられる。アルキル基は、その1以上の原子に、O,S,N,Pからなる群から選ばれる原子が置換されていてよい。
【0015】
「アリール」なる用語は、一般的意味で、環状の芳香族置換基で、6から20の炭素を含む。本発明の内容において、アリール基は、モノ又はポリサイクリックであってもよく、及び場合により置換されていていてもよい。例えば、ベンジル及びフェニールが挙げられる。
【0016】
本発明の内容において、「薬学的に許容される塩」なる用語は、化合物に存在する置換基により、非毒性の酸、又は塩基と調製される塩を含む。本発明の化合物が、酸性機能を含む場合、対応する塩は、その化合物に、場合により不活性溶媒中で、有機又は無機の塩基を加えて中和形にすることで得られる。添加する塩基塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アミン(有機)、又はマグネシウムの塩が挙げられる。本発明の化合物が、塩基性機能を有する場合、対応する塩は、その化合物に、場合により不活性溶媒中で、有機又は無機の酸を加えることで得られる。無機酸添加の塩の例として、塩化水素、臭化水素、硝酸塩、炭酸塩、1水炭酸、リン酸塩、1水硫酸又はヨウ化水素が挙げられる。有機酸添加塩の例として、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソブチル酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、フマール酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、フタール酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩又はメタンスルホン酸塩が挙げられる。
【0017】
本発明の意味で、「膜タンパク質」とは、次の意味に理解される。すなわち、生物的膜に伴い、言い換えると、アンカーされ又はインテグラルされており、そして水溶性媒体中では、自由ではなく、不安定である。膜タンパク質の中で、例えば、原形質膜のタンパク質及び細胞内膜(例えば、ミトコンドリア、核及びリゾソーム膜のような)が、挙げられる。
【0018】
膜タンパク質は、しばしば、膜と相互作用し得る構造、及びそれらの構造がお互いに適合する様式によって分類される。膜タンパク質は、ポリトピックタンパク質でもモノトピックタンパク質でもあり得る、例えばポリトピックタンパク質である。
【0019】
「ポリトピックタンパク質」とは、膜を一回又はそれ以上貫通するタンパク質を意味する。
【0020】
「モノトピックタンパク質」とは、膜の一方の側だけと相互作用するタンパク質と理解される。
【0021】
膜タンパク質はまた、膜からの抽出の困難性により分類される。それらはインテグラルか又は、ペリフェラルかであり得る、例えばインテグラルである。
【0022】
「インテグラルタンパク質」とは、モノトピック膜タンパク質ポリトピックタンパク質であって、膜と強く相互作用、特に疎水的相互作用するものを意味する。これらのタンパク質はまた、「内在性(intrinsic)タンパク質」と呼ばれている。
【0023】
「ペリフェラルタンパク質」とは、モノトピックタンパク質であって、膜と弱く相互作用するタンパク質、言い換えると、静電的結合又は他の膜タンパク質に含まれているものを意味する。これらのタンパク質は、「外在性(extrinsic)タンパク質」と呼ばれている。
【0024】
本発明の意味で、「膜タンパク質の水溶性溶液」とは、1又はそれ以上の膜タンパク質を含む水溶液を意味する。これは、例えば、懸濁液、分散液があり得る。そこではタンパク質は非溶解形又は非拡散形であり得るし、又は例えば生物的膜部分と結合していることもあり得る。
【0025】
式(I)のカリックスアレーンは、アニオン性分子であって、デタージェントの性質を有する。これは、いくつかのカルボキシレート機能による親水性の一面と、アルキル基による疎水性の面を持っている。
【0026】
複数の負電荷であることは、一方において、タンパク質の親水性表面とこのデタージェント分子とのイオン的相互作用には有利であり、他方では、そのタンパク質の(疎水性)コアに、(脱構造的に)入り込むことを抑制する。
【0027】
より正確には、式(I)のカリックスアレーンの化学構造により、この分子は、コーン又は先を切り取ったコーンの幾何学的形状をしており、広がった領域では親水性的であり、一方尾部分は疎水性的である(図1)。式(I)のカリックスアレーンのこの特別の形状は、ミセル形成を可能とする。これにより、一方ではタンパク質が膜環境を水性媒体の方向に通過することを助け、一方タンパク質の3次元構造を保持し、それにより活性を保持することができる。
【0028】
それゆえ、本発明の方法において、式(I)のカリックスアレーンの使用は以下のことを可能とする。すなわち、膜タンパク質を選択的に可溶化することにより抽出することができ(言い換えると、膜環境から水性環境へ、膜タンパク質が通過することを可能とする)、一方で膜タンパク質の3次元構造を保持する。その3次元構造とは膜タンパク質の活性、例えば酵素活性には本質的なものである。それゆえ、天然又は合成脂質で再構成した後も、膜タンパク質はその活性を回復する。
【0029】
さらに、本発明の方法は、あるタンパク質を、他のタンパク質とは別に選択的に抽出することを可能とする。特にカリックスアレーンの疎水性尾部分の長さを変更することにより可能である。それゆえ本発明の方法は、膜タンパク質部分を抽出し、分離することが可能である(可溶化部分と非可溶化部分)。実際、存在する置換基により、特にR1, R2, R3 及び/又は
R4のアルキル基の長さにより、式(I)のカリックスアレーンは、膜及びタンパク質のタイプに適合させ、選択的にかつ効果的に抽出して可溶化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の1つの特定の実施態様によれば、本発明の方法は、異なった式(I)のカリックスアレーンと接触させる、2つの又はそれ以上の工程を含み、いくつかのタンパク質を他のタンパク質とは別に抽出し、単離することができる。
【0031】
さらに加えるに、それらの構造により、特に置換基X1,X2及び/又はX3の性質により、本発明のカリックスアレーンは、ミセルを形成可能であり、その存在は、pHに依存して変更可能である。この性質は特に、ミセルを形成してそれにより膜タンパク質を異なる組織程度で溶液中に維持することを促進するため、又は逆に抑制するために、有用である。実際、ミセルが存在しないことは、タンパク質―タンパク質接触の確立を促進し、溶液中での結晶形成を準備する。
【0032】
本発明の方法は、原核生物、真核生物、正常有機体、異常有機体から導かれる生物的膜部分に存在するいかなる膜タンパク質の抽出を可能とする。例えば、本発明の方法において、抽出されるべき膜タンパク質は、原核生物、真核生物、正常有機体、異常有機体から導かれる、原形質膜部分にあってもよい。例えば、本発明の方法は、あらゆるポリトピックタンパク質を抽出することができる。例えば、本発明の方法は、あらゆるインテグラル膜タンパク質を抽出することもできる。
【0033】
本発明の1つの実施態様によると、膜タンパク質は、輸送タンパク質を含む群から選択されることができる。本発明において、「輸送タンパク質」とは、以下のように理解される。すなわち、役割が、膜の両側で、種々の物質(イオン、ステロール、マクロ分子等)を輸送することである。例えば、ABC輸送タンパク質(英語ではATP-結合カセット、フランス語では、ATP-結合領域)、レセプタ、エクスチェンジャ、チャンネル等が、挙げられる。
【0034】
本発明の1つの実施態様によれば、輸送タンパク質は、P糖タンパク質 (Pgp/ABCB1)[1],
MRP1/ABCC1(複合医薬耐性タンパク質,ヒトポリトピック及びインテグラルABCトランスポータ)[2],BCRP/ABCG2 (乳癌耐性タンパク質,ヒトポリトピック及びインテグラルABCトランスポータ)[3],BmrA(菌複合医薬耐性ATP,原核生物性ポリトピック及びインテグラルABCトランスポータ)[4]が、挙げられる。
【0035】
好ましくは、膜タンパク質は、輸送タンパク質としては、糖タンパク質P(Pgp/ABCB1),MRP1/ABCC1,BCRP/ABCG2,及びすべてのそのクラスのタンパク質からなる群から選択される。さらに特に、輸送タンパク質は、BmrAを含む群から選ばれる、ABCトランスポータであり得る。
【0036】
抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程は、pH5.5から10、好ましくは6から9の範囲である。
【0037】
抽出方法は、温度範囲が、0から100℃、好ましくは4から25℃の範囲である。
【0038】
抽出方法は、式(I)のカリックスアレーンの濃度が、10-6 から 10-2 Mで使用可能である。本発明の抽出方法は、その表面活性の性質により、カリックスアレーンを溶液中で使用、又はカリックスアレーンをコロイド凝集体で使用することができる。
【0039】
本発明の意味で、コロイド凝集体とは、数から数百分子のカリックスアレーンが、溶媒に対する反発力に基づいて自己組織化したものであると理化される。この性質により、式(I)のカリックスアレーンは、例えば、水、水性溶液、等張媒体又は生物学的媒体中のような、適当な媒体中で凝集形成が可能である。
【0040】
この凝集体は、ミセル、リポソーム及び脂質ナノ粒子からなる群から選択されてよい。好ましくは、カリックスアレーンは、ミセルの形である。
【0041】
ミセルという用語は、式(I)のカリックスアレーン分子の回転楕円体凝集体を意味し、使用される溶媒により自己組織化する。例えば水又は水溶性溶媒中では、親脂質末端は、ミセルの内側を向き、一方親水性末端は、ミセルと溶媒との界面を形成する。有機溶媒中では、例えば油中では、これとは逆の配置となる。
【0042】
リポソームという用語は、人工的に形成された小さなベシクルで、特に薄いリン脂質のシートからできており、水溶性空間部でお互いが離されているものを意味する。これらは、細胞膜の構造と非常に近い構造をとり得る。
【0043】
本発明の内容において、ナノ粒子という用語は、数百から数千分子の式(I)のカリックスアレーンの集まりで、少なくともひとつの次元がナノサイズ、例えば1から300nmであるものを意味する。
【0044】
本発明の方法において、抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶性懸濁液と、式(I)のカリックスアレーンとの接触の工程は、以下の共溶質であって、
i)薬学的に許容される塩を含む群から選ばれた有機及び無機塩、
ii)アミノ酸、ビタミン、脂質、ステロイド、炭水化物又は代謝産物からなる群から選択された、生物学的に活性な小分子、
iii)ペプチド、オリゴヌクレオチド又はオリゴサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なオリゴメリック分子、及び
iv)タンパク質、ポリヌクレオチド及びポリサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なポリメリック分子、
からなる群から選択された少なくとも1つの共溶質の存在下で実施されることが可能である。
【0045】
本発明1つの実施態様において、前記接触工程は、次の工程、
抽出されるべき膜タンパク質又はそれを含む前記膜部分が、緩衝液中で可溶化され、及び
式(I)のカリックスアレーンが、先に説明したような、温度、pH及び濃度で添加される、
が先に行われてもよい。
【0046】
本発明の1つの実施態様によれば、前記接触工程に次いで、
式(I)のカリックスアレーンと複合化した膜タンパク質を、複合化していない膜タンパク質とに分離する、遠心分離工程が続いて実施される。
【0047】
式(I)のカリックスアレーンと複合化した膜タンパク質と、複合化していない膜タンパク質は、遠心分離、例えば、1時間、4℃、100000xgで分離され得る。遠心分離条件は、タンパク質の性質に依存する。この技術分野の熟練者は、どのようにして最適化遠心分離条件、例えば[6]記載のような、を選択するかを理解するであろう。
【0048】
他の利点はまた、この技術分野の熟練者にとって、以下の例、説明のために供された添付図面による説明を参照することで、理解されるであろう。
【0049】
本発明によるカリックスアレーンの使用は、膜タンパク質の選択的可溶化を可能とするものであり、それらの酵素活性に本質的である3次元構造を維持するものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の方法で使用される、カリックスアレーンのコーン状の幾何形状を示す。頂上にある極性基が黒く示され、疎水性脂肪族鎖は、図面及び下に示される。この特別な形状は、ミセル形成を可能とする。図1には、荷電された親水性領域に応じて領域A、カリックス[4]アレーンの本体部に応じた領域B、及び脂肪族基CnH2n+1の尾部分に応じた領域Cが示される。
【図2】図2は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1-12)分子の、サーファクタント(又は表面活性)の性質を示す。1-12の炭素数のアルキル鎖を含むカリックス[4]アレーン誘導体の、水の表面張力に及ぼす効果が、その濃度(M又はmol/L)の関数として、pH6.0(図示されていない)とpH8.0(図示されている)で、示されている。DDM(β-D-ドデシルマルト-ピラノシド)もまた、図に示される。それぞれの値は、3つの値の平均である。
【図3】図3は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(nは、炭素数1-12を表す。)分子の表面ポテンシャルを、アルキル鎖長さと、pHの関数として示す。1から12のメチレン基(図3、n、x軸)を持つアルキル鎖を含む分子の、水の表面張力に対する効果が、濃度10-2M,pH6.0(三角)及びpH8.0(四角)で示される。それぞれの値は、3つの値の平均である。
【図4】図4は、一連の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1-12)の臨界ミセル濃度(CMC)を、pH及びアルキル鎖の長さの関数として示す。1から12のメチレン基(図4、n,x軸)を持つアルキル鎖を含む分子の、CMCに対する効果が、濃度10-2M,pH6.0(黒丸)及びpH8.0(白丸)で示される。それぞれの値は、図2のデータから評価された、3つの値の平均である。
【図5】図5は、化合物p(COOH)3-Ar4-o(C7H15)の、アミノ酸による表面ポテンシャルの変更を示す。化合物p(COOH)3-Ar4-o(C7H15)は、濃度10-2Mで存在し、アミノ酸濃度は示されるように変更される。表面ポテンシャルは、pH8.0での値である。アミノ酸は、3文字表記で示されており、Glu=グルタミン酸,Trp=トリプトファン,Asn=アスパラギン,Gly=グリシン,Ala=アラニン,Ser=セリン,Phe=フェニルアラニン,Leu=ロイシン,Pro=プロリン,Lys=リジン,His=ヒスチジン,Arg=アルギニンである。それぞれの値は、3つの値の平均である。
【図6】図6は、細菌で発現され、及びその原形質膜への挿入されたBmrAの幾何学的図を示す。BmrAは、ホモ二量体タンパク質であり、それぞれのモノマーは、トランスメンブレン領域(TMD)を形成し、ヌクレオチド結合領域(NBD)にリンクしている[4,5]。
【図7】図7は、BmrAにおいて富化された膜の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子及びタンパク質の知られたデタージェントによる可溶性試験を示す。膜フラクションは、図11で示されるように調製され、図7で示されるようにp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1から12)分子でインキュベートされるか、又は知られたデタージェント(FC12,Fosコリン12:n-ドデシルホスホコリン,双生イオン性デタージェント、SDS:ナトリウムドデシルスルホネート,強アニオン性デタージェント、DDM:n-ドデシル-β-D-マルトピラノシド,非荷電デタージェント),又は緩衝液(デタージェントなし)でインキュベートされる。100000xg、1時間、4℃で遠心分離して、可溶化タンパク質(S,上澄み)と、非可溶化タンパク質(P,ペレット又はプラグ)への分離の後、タンパク質部分はSDS PAGEで分析される。灰色点線及び黒色点線、及び黒実線は、可溶化されるべき分子の効能の尺度のためである。「No det」線は、「データジェントなし」の意味である。
【図8】図8は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子の、BrmAの可溶化に対する濃度の効果について示す。実験条件は、図7と、図に示されるように、ブチル、ヘプチル及びドデシル分子の濃度以外は同じである。g/L<->M対応は、表2に示される。「No det」線は、「データジェントなし」の意味である。
【図9】図9は、一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)の、BmrAのATPアーゼ活性への、可溶化の効果を示す。可溶性試験は、図8のように行われ、ATPアーゼ活性試験は図11に記載される。垂直点線は、それぞれのCMCを示す。黒菱形は、BmrAがp(COOH)3-Ar4-o(C7H15)で可溶化され、Lenoir et al.[6]により記載された処理によりデタージェントをバイオビーズ(Bio-Rad)で除去した後、脂質で再構成されたものの試験結果を示す。Y軸は、比活性を%で示す。100%活性とは、0.25マイクロmol Pi生成/mgタンパク質/分に対応する。
【図10】図10は、i)Sf9インセクト細胞(図のトップ)及びii)HEK293ヒト細胞(図の下)からのBCRPタンパク質の抽出を示す。これは、異なる株の膜タンパク質を抽出するために使用されるカリックスアレーンの可能性を示す。
【図11】図11は、β-D-ドデシルマルトピラノース(DDM),Fosコリン12 (FC12)及びカリックス[4]アレーン-O-ヘプチルオキシ(C4C7)を含む、異なるデタージェントで抽出した後、BmrAタンパク質の活性を示す。バナジン酸感受性比ATPアーゼ活性のパーセンテージ(%SA又は、%VO4sensitive SpecificATPase Activity)が、以下の異なる条件で評価される。-BmrAMb:天然膜中の、BmrAの活性-DDMsup./DDM:DDM抽出でのBmrAの活性-DDMsup./Lip.:DDM抽出及びそのリポソームでの再構成からのBmrAの活性-FC12sup./FC12: Fosコリン12抽出のBmrAの活性-FC12sup./Lip.: Fosコリン12抽出のBmrA をリポソームでの再構成からのmrAの活性-C4C7sup./FC12: カリックスアレーンC4C7 (言い換えるとカリックス[4]アレーン-O-ヘプチルオキシ)による抽出のBmrAの活性,-C4C7sup./Lip.: カリックスアレーンC4C7 (言い換えるとカリックス[4]アレーン-O-ヘプチルオキシ)による抽出のBmrAをリポソームでの再構成からのBmrAの活性
【図12】図12は、カリックスアレーンC4C3、後C4C7を用いて連続的に抽出し(図12A)、後ゲルろ過クロマトグラフィ(図12B-E)による精製の結果をまとめて示す。図12Aは、カリックスアレーンC4C3、後C4C7を用いて連続的抽出して、可溶化(S,上澄み)及び非可溶化(P,プラグ)部分の、SDS-PAGE(SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を示す。Mは移動フロントを表す。図12Cは、カリックスアレーンC4C7により抽出した後、ニッケル-アフィニティクロマトグラフィを、溶出液量Veのミリリッターでの関数として表す。図12Dは、カリックスアレーンC4C7により抽出した後、FC12の存在下で、ゲルろ過クロマトグラフィを、溶出液量Veのミリリッターでの関数として表す。図12Eは、部分a(「S200プールFC12」又はFosコリン12の存在下でゲルろ過クロマトグラフィに供されるBmrAの部分)の比ATPアーゼ活性(バナジン酸感受性)と、部分b(「200プールLip.」、BrmAの同じ部分であるが、ゲルろ過され、リポソーム存在下で再構成される)の比ATPアーゼ活性(バナジン酸感受性)とを示す。
【図13】図13は、異なるカリックス[4]アレーン(図14A)と、これらの分子がミセル又は超分子クラスタへの超分子組織化の例を示す。図13Aには、カリックス[4]アレーンが示されており、4つのフェノール(環、図では数字の「1」と定義される)がクラウンを形成し、一方の面でカルボキシレート基(サークル内の小ダッシュで、数字の「2」と定義される)を有し、及び他の面では、CnH2n+1脂肪族鎖(n=1,3,7,10及び12、小ロッドで, 数字「3」で定義される)を有する。図13Bでは、これらのカリックスアレーンにより形成されたミセル(領域「a」で表わされる)が、クラスタの内部に一緒になってグループ化された疎水性基(小ロッド)により、表面上に凝着維持された荷電機能(円形内の小ダッシュ)を露出する。
【実施例】
【0051】
一般的方法
溶媒及び試薬
ジクロロメタン(CH2Cl2)及びトルエンは、CaH2で乾燥して、窒素雰囲気下で蒸留する。テトラヒドロフラン(THF)は、ナトリウムとベンゾフェノンで乾燥後、窒素雰囲気下で蒸留する。ジエチルエーテルは、CaH2で乾燥し、窒素雰囲気下で蒸留し、4オングストロームモレキュラーシーブの存在下、0-4°Cで窒素雰囲気下で保存する。他の使用溶媒は、Carlo-Erba.から供給される。
核磁気共鳴(NMR)
1H及び13Cスペクトルは、Bruker AV500装置で測定される。1H NMRスペクトルの化学シフト(デルタ) は標準のテトラメチルシラン(TMS)のデルタ値を0.00ppmとする。13C NMRスペクトルのデルタ値は、溶媒の値から較正する。測定は、25°Cで、直径5mmの測定管で行う。スペクトルは、重水素化溶媒中で行い、Aldrich
又は SDSから供給される。
クロマトグラフィ
薄層クロマトグラム(TLC)はMerckの「TLC Silica gel 60F254」アルミニウムプレートで行う。化合物は、UV(紫外)ランプに晒すか又は/及び現像液であるリンモリブデン酸硫酸エタノールに漬けて加熱機で加熱する。クロマトグラフィカラムは、Merck silica gel (Silica gel 60(40-63マイクロm))で作成する。
質量スペクトル
ESI
mass: サンプルは、Perkin
Elmer Sciex API 300 spectrometerで測定し、「分析試薬」品質の溶媒を使用する。
表面張力測定
式(I)のカリックスアレーンの表面張力は、次のように評価する。キブロンマイクロデプレッション(Kibron micro-depression)装置と、ステンレススチールのシリンジと、Wilhelmy天秤を用いて、1mlの静置滴で評価する。得られる曲線は、ソフトウエアのSigmaplot v11で処理する。
例1: 25-ブチルオキシカリックス[4]アレーンの合成
カリックス[4]アレーンの無水DMF(943 ml)懸濁液(20g,0.47mol)を、CsF(8.49g,1.2当量)及びヨウ化ブタン(35.47ml,10当量)溶液に添加する。反応混合物を40°Cで96時間攪拌する。反応の進行は、TLC(薄層クロマトグラフィ)で追跡する。反応終了には、1M 塩化水素(250ml)を加えて反応を停止する。反応物をCH2Cl2(2
x200ml)で抽出する。有機層を合わせて、水で洗浄し(2x250 ml)、MgSO4で乾燥する。溶媒を留去して、残渣粗生成物をCH2Cl2/MeOH 混合物(1:1)で取り出す。溶液をろ過して未反応のカリックス[4]アレーンを除き、カラムクロマトグラフィ(CH2Cl2/ヘキサン1:1)で精製する。この方法で、白色固体を、収率68%で得られる。
M.Pt.=239°C;
1H NMR (CDCl3) δ 1.14 (t, 3H, 2JH-H = 7.1 Hz, Ar-OCH2CH2CH2CH3),
1.74 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2CH3),
2.18 (m, 2H, Ar-OCH2CH2CH2CH3),
3.48 (d, 4H, 2JH-H = 13.3 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.17 (t, 2H, 2JH-H = 7.0
Hz, Ar-OCH2 (CH2)2CH3), 4.30 (d,
2H, 2JH-H = 13.6 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.37 (d, 2H, 2JH-H = 12.9 Hz, Ar-CH2-Ar),
6.69-7.07 (m, 12H, Ar-H), 9.46 (s, 2H, Ar-OH), 9.77 (s, 1H, Ar-OH).
13C NMR (CDCl3) δ 14.2 (Ar-O(CH2)3CH3),
19.2 (Ar-O(CH2)2CH2CH3), 19.7
(Ar-OCH2CH2CH2CH3), 31.4 and 32.3
(Ar-CH2-Ar); 77.1 (Ar-OCH2(CH2)2CH3),
120.8; 121.8; 121.7; 126.1; 128.3; 128.7; 129.3 (Ar), 149.1 and 150.6 (ArC-OH),
151.5 (ArC-O(CH2)3CH3).
ES mass
spectrum (CHCl3) m/z: 481.2 [M+H]+, 503.3 [M+Na]+,
519.2 [M+K]+.
例2: 25-ドデシルオキシカリックス[4]アレーンの合成
カリックス[4]アレーンの無水DMF(943ml)懸濁液(20g, 0.47mol)を、CsF(8.49 g,1.2当量)及びヨウ化ドデカン(35.47ml,10当量)溶液に添加する。反応混合物を40°Cで96時間攪拌する。反応の進行は、TLCで追跡する。反応の終了には、1M塩化水素(250ml)を加えて反応を停止させる。反応物をCH2Cl2(2x200ml)で抽出する。有機層を合わせて、水で洗浄し(2x250ml)、MgSO4で乾燥する。溶媒を留去して、残渣粗生成物をCH2Cl2/MeOH混合物(1:1)で取り出す。溶液をろ過して未反応のカリックス[4]アレーンを除き、カラムクロマトグラフィ(CH2Cl2/ヘキサン1:1)で精製する。この方法で、白色固体を、収率48%で得られる。
M.Pt.=235°C;
1H NMR (CDCl3) δ 1.01 (t, 3H, 3JH-H= 7.0 Hz, Ar-O(CH2)11CH3),
1.42 (m, 4H, Ar-O(CH2)8CH2CH2CH3),
1.49 (m, 4H, Ar-O(CH2)7CH2CH2(CH2)2CH3),
1.53 (m, 4H, Ar-O(CH2)5CH2CH2(CH2)4CH3),
1.62 (m, 4H, Ar- O(CH2)3CH2CH2(CH2)6CH3),
1.80 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2(CH2)8CH3),
2.29 (m, 2H, Ar-OCH2CH2(CH2)9CH3),
3.57 (d, 4H, 2JH-H = 13.3 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.26 (t, 2H, 2JH-H = 6.8
Hz, Ar-OCH2(CH2)10CH3), 4.39 (d,
2H, 2JH-H= 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.48 (d, 2H, 2JH-H= 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar),
6.77-7.18 (m, 12H, Ar-H), 9.57 (s, 2H, Ar-OH), 9.88 (s, 1H, Ar-OH).
13C NMR (CDCl3) δ 14.3 (Ar-O(CH2)11CH3),
22.9 (Ar-O(CH2)10CH2CH3), 26.1 (Ar-
O(CH2)9CH2CH2CH3), 29.6
(Ar-O(CH2)8CH2(CH2)2CH3),
29.7 (Ar-O(CH2)7CH2(CH2)3CH3),
29.8 (Ar-O(CH2)7CH2(CH2)4CH3),
29.8 (Ar-O(CH2)5CH2(CH2)5CH3),
29.9 (Ar-O(CH2)4CH2(CH2)6CH3),
30.1 (Ar-O(CH2)3CH2(CH2)7CH3),
31.6 (Ar-O(CH2)2CH2(CH2)8CH3),
31.8 (Ar-OCH2CH2(CH2)8CH3),
32.1 and 32.2 (Ar-CH2-Ar), 77.7 (Ar-OCH2(CH2)10CH3)
121.1; 122.1; 122.4; 126.2; 128.4; 128.6; 128.9; 129.1; 129.5; 134.4 (Ar),
149.4 and 151.0 (ArC-OH), 151.6 (ArC-O(CH2)11CH3).
ES mass
spectrum (CHCl3) m/z: 593.2 [M+H]+, 615.2 [M+Na]+,
631.3 [M+K]+.
例3: 5,11,17 トリス-[(カルボキシラート)メチル]25-モノ-メトキシ26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5a
5gの、トリス-[(シアノ)メチル]モノメトキシオキシ26,27,28トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlのエタノール溶液をフラスコに入れる。そこに50mlの3MKOHを加える。反応混合物を加熱して72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し,12NHCl溶液で酸性とする。黄色生成物を、ろ過して回収し、後、50mlのメタノールと、4.5gの水酸化ナトリウムを含む50mlの水の中に入れて、72時間還流する。後溶液を冷却し、250mlの氷冷水で処理し、塩酸で酸性にし、ろ過する。水で洗浄して、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]-25-モノメチルオキシカリックス[4]アレーンを、白色から黄色の粉末として、収率72%で得られる。
M.Pt. =
221°C;
1H NMR (DMSO) δ 3.24 (s, 2H, Ar-CH2COOH), 3.31 (s, 4H,
Ar-CH2COOH), 3.39 (d, 2H, 2JH-H = Hz, Ar-CH2-Ar), 3.48
(d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.01 (s, 3H, Ar-OCH3),
4.18 (d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.25 (d, 2H, 2JH-H =
13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 6.89-7.16 (m, 9H, Ar-H), 8.79 (s, 2H, Ar-OH),
9.50 (s, 1H, Ar-OH), 12.07 (s, 3H, Ar-CH2-COOH),
13C NMR (DMSO) δ 21.1 (Ar-CH2-COOH), 29.1 and 30.9 (Ar-CH2-Ar),
66.1 (Ar-OCH3), 142.7; 143.1; 147.4; 148.4 (Ar), 150.3 and 153.5
(ArC-OH), 154.1 (ArC-OCH3), 168.4 and 169.3 (Ar-CH2-COOH).
ES mass
spectrum (DMSO) m/z: 613.1 [M+H]+, 635.1 [M+Na]+, 611.3
[M-H]-.
例4: 5,11,17-トリス-[(カルボキシラート)メチル]-25-モノ-ブチルオキシ26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5b
5gのトリス-[(シアノ)メチル]モノブチルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlエタノール溶液をフラスコにいれる。そこに50mlの3M水酸化カリウムを加える。反応混合物を72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し、12N塩酸水溶液で中和する。黄色生成物をろ過して回収し、それを50mlのメタノールと、4.5gの水酸化ナトリウムを含む水50mlに入れて、72時間還流する。溶液を冷却し、氷冷水250mlで処理し、塩酸で酸性にし,ろ過して回収し、水で洗浄して、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]25-モノブチルオキシカリックス[4]アレーンが、白色から黄色の粉末として、収率75%で得られる。
M.Pt. =
223℃;
1H NMR (DMSO) δ 1.07 (t, 3H, 2JH-H = 6.9 Hz, Ar-O(CH2)3CH3),
1.69 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2CH3),
2.01 (m, 2H, Ar-OCH2CH2CH2CH3),
3.17 (s, 2H, Ar-CH2COOH), 3.31 (s, 4H, Ar-CH2COOH), 3.38
(d, 2H, 2JH-H =13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.48 (d, 2H, 2H,
2JH-H = 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.57 (t, 2H, 2JH-H = Hz, Ar-OCH2(CH2)2CH3),
4.11 (d, 2H, 2JH-H = 13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.20 (d, 2H, 2JH-H =
13.1 Hz, Ar-CH2-Ar), 6.82-7.12 (m, 9H, Ar-H), 8.87 (s, 2H, Ar-OH),
9.56 (s, 1H, Ar-OH),
13C NMR (DMSO) δ 13.8 (Ar-O(CH2)3CH3),
18.6 (Ar-O(CH2)2CH2CH3), 22.1
(Ar-CH2-COOH), 30.3 (Ar-OCH2CH2CH2CH3),
30.6 and 31.4 (Ar-CH2-Ar), 76.6 (Ar-OCH2(CH2)2CH3),
125.7; 127.6; 128.7, 130.1; 134.0 (Ar), 147.8 and 150.0 (ArC-OH), 151.9
(ArC-O(CH2)3CH3), 172.9 (Ar-CH2-COOH).
ES mass
spectrum (DMSO) m/z: 677.1 [M+Na]+, 653.3 [M-H]-.
例5: 5,11,17-トリス-[カルボキシラート)メチル]-25-モノ-ヘキシルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5c
5gの、トリス-[(シアノ)メチル]モノヘキシルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlエタノール溶液をフラスコに入れる。そこに50mlの3M水酸化カリウム溶液を加える。反応混合物を加熱して、72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し、12M塩酸水溶液で酸性にする。黄色生成物をろ過して回収し、それを50mlメタノールと4.5gの水酸化ナトリウムを含む水50mlに入れ、72時間還流する。溶液を冷却し、氷冷水250mlで処理し、塩酸で酸性にして、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]-25-モノ-ヘキシルオキシカリックス[4]アレーンが、黄色固体として収率69%で得られる。
M.Pt. =
222°C,
1H NMR (DMSO) δ 0.95 (t, 3H, 2JH-H = 7.1 Hz, Ar-O(CH2)5CH3),
1.42 (m, 4H, Ar-O(CH2)3CH2CH2CH3),
1.67 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2(CH2)2CH3),
2.02 (m, 2H, Ar-CH2CH2(CH2)3CH3),
3.16 (s, 2H, Ar-CH2-COOH), 3.31 (s, 4H, Ar-CH2-COOH),
3.38 (d, 2H, 2JH-H = 12.9 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.50 (d, 2H, 2JH-H = 12.9
Hz, Ar-CH2-Ar), 4.04 (t, 2H, 2JH-H = 7.2 Hz, Ar-OCH2(CH2)4CH3),
4.15 (d, 2H, 2JH-H = 12.9 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.20 (d, 2H, 2JH-H = 12.9
Hz, Ar-CH2-Ar), 6.85-7.18 (m, 9H, Ar-H), 8.89 (s, 2H, Ar-OH), 9.53
(s, 1H, Ar-OH), 13C NMR (DMSO) δ 14.0 (Ar-O(CH2)5CH3),
22.3 (Ar-CH2-COOH), 24.8 (Ar-O(CH2)4CH2CH3),
29.3 (Ar-O(CH2)3CH2CH2CH3),
29.7 (Ar-O(CH2)2CH2(CH2)2CH3),
30.3 (Ar-OCH2CH2(CH2)3CH3),
30.6 and 31.7 (Ar-CH2-Ar), 77.2 (Ar-OCH2(CH2)4CH3),
123.2; 124.2; 125.4; 126.9; 127.9; 129.6; 134.0 (Ar), 147.8 and 150.0 (ArC-OH),
151.9 (ArC-O(CH2)5CH3).
ES mass
spectrum m/z: 683.1 [M+H]+, 681.5 [M-H]-.
例6: 5,11,17-トリス-[(カルボキシラート)メチル]-25-モノ-ドデシル26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーン‐化合物5d
5gの、トリス-[(シアノ)メチル]-モノドデシルオキシ-26,27,28-トリス-ヒドロキシカリックス[4]アレーンの50mlエタノール溶液をフラスコに入れる。そこに50mlの3M水酸化カリウム溶液を加える。反応混合物を加熱して、72時間還流する。溶液を冷却し、500mlの氷冷水で処理し, 12M塩酸水溶液で酸性にする。黄色生成物をろ過して回収し、それを50mlメタノールと4.5gの水酸化ナトリウムを含む水50mlに入れ、72時間還流する。溶液を冷却し、氷冷水250 mlで処理し、塩酸で酸性にして、5,11,17-トリス-[(カルボキシ)メチル]-25-モノ-ドデシルオキシカリックス[4]アレーンが、黄色固体として収率71%で得られる。
M.Pt. =
210°C,
1H NMR (DMSO) δ 0.81 (t, 3H, 2JH-H = 7.0 Hz, Ar-O(CH2)11CH3),
1.01 (m, 4H, Ar-O(CH2)9CH2CH2CH3),
1.03 (m, 4H, Ar-O(CH2)7CH2CH2(CH2)2CH3),
1.10 (m, 4H, Ar-O(CH2)5CH2CH2(CH2)4CH3),
1.25 (m, 2H, Ar-O(CH2)4CH2(CH2)5CH3),
1.44 (m, 2H, Ar-O(CH2)3CH2(CH2)6CH3),
1.67 (m, 2H, Ar-O(CH2)2CH2(CH2)7CH3),
2.01 (m, 2H, Ar-OCH2CH2(CH2)8CH3),
3.18 (s, 2H, Ar-CH2-COOH), 3.30 (s, 4H, Ar-CH2-COOH),
3.35 (d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 3.47 (d, 2H, 2JH-H = 13.2
Hz, Ar-CH2-Ar), 4.01 (t, 2H, 2JH-H = 7.1 Hz, Ar-OCH2(CH2)10CH3),
4.13 (d, 2H, 2JH-H = 13.2 Hz, Ar-CH2-Ar), 4.17 (d, 2H, 2JH-H = 13.2
Hz, Ar-CH2-Ar), 6.83-7.12 (m, 9H, Ar-H), 8.91 (s, 2H, Ar-OH), 9.53
(s, 1H, Ar-OH),
13C NMR (DMSO) δ 13.8 (Ar-O(CH2)11CH3),
21.2 (Ar-CH2-COOH), 24.6 (Ar-O(CH2)10CH2CH3),
24.8 (Ar-O(CH2)9CH2CH2CH3),
28.7 (Ar-O(CH2)8CH2(CH2)2CH3),
28.8 (Ar-O(CH2)7CH2(CH2)3CH3),
29.1 (Ar-O(CH2)6CH2(CH2)4CH3),
29.4 (Ar-O(CH2)5CH2(CH2)5CH3),
29.6 (Ar-O(CH2)4CH2(CH2)6CH3),
29.8 (Ar-O(CH2)3CH2(CH2)7CH3),
29.9 (Ar-O(CH2)2CH2(CH2)8CH3),
30.2 (Ar-OCH2CH2(CH2)9CH3),
30.5 and 31.6 (Ar-CH2-Ar), 77.8 (Ar-OCH2(CH2)10CH3),
123.1; 124.3; 124.6; 127.2; 128.4; 129.7; 134.1 (Ar), 147.1 and 150.3 (ArC-OH),
151.4 (ArC-O(CH2)11CH3), 170.3 (Ar-CH2-COOH).
ES mass
spectrum m/z: 767.2 [M+H]+, 765.1 [M-H]-.
例7: サーファクタント性-1
図2は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子(n=1-12炭素数)のサーファクタント効果を示す。図からわかるように、水の表面張力を減少させる能力は、サーファクタントの一般的効果であり、脂肪族鎖の炭素数の増加に従って増加する。より短い鎖を持つカリックスアレーン分子は、水の表面張力を大きくは変えず、これらのデタージェント性には限界があることを意味する。一方、より長いアルキル鎖(n=3から12)を含む分子は、デタージェントのようにふるまう。
【0052】
予想できるように、サーファクタントのポテンシャルは、アルキル鎖の長さにつれて増加し、p(COOH)3-Ar4-o(C12H25)分子は、DDM(β-D-ドデシル マルト-ピラノシド)のそれと近似する性質を示す。ここでDDMは,非イオン性デタージェントで、タンパク質を可溶化するのに一般的に使われている。
【0053】
この例は、本発明のカリックスアレーン化合物の最初の性質を明らかにする、すなわち、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)カリックスアレーン(n=2-12)は,サーファクタントのような振る舞いをするということである。
【0054】
図3に示されるように、pHは、表面張力について分子のポテンシャルを変える。pH6及び8では、表面張力はアルキル鎖の長さに従い増加し、最初の表面張力の半分に対応するプラトーに到達する(n=12、pH8.0)。
【0055】
これらの効果は、本発明の性質を明らかにする。すなわち、pHを単純に変えることで、本発明のカリックスアレーンの存在下で媒体の表面張力を変更することができるということである。この効果は、本発明のカリックスアレーンのアルキル鎖の長さに依存して減少させることも増加させることも可能である。
例8: サーファクタント性-2
図4に示されるように、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)カリックスアレーン(n=1-12)は、極限ミセル濃度(CMC)が0.15から1.5mMの範囲を持つことが可能な、デタージェントのようにふるまう。極限ミセル濃度(CMC)とは、デタージェント分子がそれ以上濃度を高くすることができない濃度を意味する。というのはそれ以上ではミセル形成に関与するからである(図13)。8よりも少ないメチレン基を有するアルキル鎖を含む分子は、pHに依存しないmMオーダーのCMCを示す。逆に、8メチレン基よりも多く含むアルキル鎖の場合、結果としてCMCは、pHは6から8へ増加すると、0.15mMへと明確に減少する。
【0056】
この例は、一連の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=1-12)カリックスアレーンの重要な性質を明らかにする。すなわち、pHへの感受性がアルキル鎖の長さに依存するということである。この性質は特に、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)(n=9-12)カリックスアレーンで顕著である。酸性pHでも塩基性pHでも、ミセル形成を助けるためにもまた抑制するためにも使用することができる。この性質は、可溶化されたタンパク質の膜の濃縮工程で、その濃度を増加させることなくデタージェントの除去を一般的に可能とするということである。
例9: p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)とアミノ酸との相互作用
図5は、一連の、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)のユニークな性質を示す。n=7は例外であるが、アミノ酸と複合体を形成し、媒体の表面張力を変更することを明らかにしている。グルタミン酸、又はそのアミノ誘導体であるアスパラギンとは、何の効果も示さない。中程度の効果が、グリシンで見られる。この効果は、疎水性(アラニン、フェニルアラニン、ロイシン)で増幅され、正に荷電したアミノ酸、ヒスチジン、リジン及びアルギニンでは、非常に強いものとなる。この例は、p(COOH)3-Ar4-o(C7H15)(及び他の)分子の非常に重要な性質を明らかにしている。すなわち、これらにより、サーファクタントポテンシャルが、正に荷電されたアミノ酸を添加することで容易に増加させることができるということである。この結果の複合体は、双生イオン性化合物に類似している。
例10: 凝集体のサイズ
表1は、p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子の凝集状態を示す。
【0057】
【表1】
表1から明らかなように、すべてのシステムで、ミセルタイプの凝集形成を観測した。
p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子の生物学的効果
一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)が、BmrAの可溶化の試験に供された。BmrAは、ABCトランスポータファミリの膜タンパク質であり、細胞から細胞の外へ生体異物の流出や漏出を保護する[Chami 2002 JMB 315 1075; Orelle 2003 JBC 278-47 47002]。
【0058】
図6に模式的に示されるように、BmrAは、ホモ二量体タンパク質であって、細菌の原形質膜に挿入されているものである。このタンパク質は、生体異物をATPの加水分解を介して除外するものであり、その酵素活性は、トランスポータの正しい折りたたみに依存し、脂質を要求する[7]。そのような活性は、可溶化の途中でのタンパク質の機能的完全性を検証するために使用される。
例11: 本発明のカリックスアレーンの生物学的膜可溶化能力
形質転換受容性細菌C41 BL21(DE3) E. coli (Escherichia
coli)を、プラスミド
pET15b-BMRAを用いて形質転換した。そのプラスミドは、BmrAをコードする遺伝子を持ち、誘導可能なプロモータの制御下に置かれ、かつアンピシリン耐性に関するタンパク質をコードする遺伝子を持つ。ポジティブクローンを、液媒体中で、37℃で、200rpmで、アンピシリン存在下で、半指数的成長相まで培養した。BmrA発現は、1mMのイソプロピルチオ-ベータ-ガラクトシドを添加して誘導し、25℃で4時間維持した。細菌を遠心分離で集め、フレンチプレスで破砕し、膜部分を一連の低速及び高速の遠心分離により単離した。タンパク質含量は、カロリメトリ[8]で評価し、液体窒素で凍結して保存する前に、20 mg/ml(20 mMTris-Cl pH8.0、200mlNaCl、300mM スクロース)に調製した。使用前に、膜部分を水で溶かし、氷で4℃に維持する。
【0059】
可溶性は、4℃(又は指示ある場合は、室温23℃)で実施する。膜部分を同じ緩衝液で希釈し、最終濃度2mgタンパク質/mlとなるようにした。そこにデタージェントと、試験される分子を、10mg/ml(1%)又は指示ある場合はそれより低くして添加し、2時間、4℃でインキュベートする。可溶化又は非可溶化タンパク質部分は、1時間、10℃で200000xg遠心分離工程で分離される。それぞれの遠心分離プラグは、最初の容積に懸濁され、上澄みと共に、Laemmliゲルポリアクリルアミドタイプ(SDS PAGE)電気泳動にかけられ[9]、[7]で例として記載されるように、それらのタンパク質量を分析する。このような条件で、BmrAは、約70,000ダルトンに移動する。
【0060】
ATPアーゼ活性は、37℃で5分間インキュベートした後、無機リン酸含有量(Pi)を評価して測定する。他のATPアーゼ活性により産生されるPiの分は、BmrAのATP活性を阻害する(例えば[10]で記載されるように)、1mMオルトバナジン酸の存在下で、同じ活性を測定することで差し引かれる。
【0061】
図7に示されるように,p(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)分子のアルキル鎖の長さを関数として、BmrAは、上澄みに増加傾向で見出される。最も短い分子(n=1又は2)では可溶性はまったく見られず、デタージェント無しの場合(「no det」線)と同じ図を与える。可溶性は、n=3又は4で徐々に増加し、n=5及び6の場合に最も強くなり、DDMで得られる図と同じ図を与える。可溶性は、nが7以上では完全であるように見え、これはFC12又はSDSを用いた場合と同じである。
【0062】
この結果は、図8のデータで確認される。図8は、ヘプチル化合物の場合CMCの分子濃度、約1.5mM(1g/L=1.6mg/ml)以上で可溶性が生じることを示す。一方、ドデシル化合物の場合はこれは該当せず、0.15mM(0.1g/L)のCMCでは、可溶化は起こらない。これは、過度に低いデタージェント/タンパク質比のためであろう。
【0063】
表2は、試験した分子のMを、g/Lで示す。
【0064】
【表2】
例12: BmrAのATPアーゼ活性に対する、一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)による可溶化の効果
BmrAのATPアーゼ活性に対する、一連のp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)による可溶化の効果を、図8で示す同じ条件で分析した。図9は、使用デタージェント(メチル、ブチル、ヘプチル、又はドデシル脂肪族鎖)及びコントロール用デタージェント(FC12及び C12E8,荷電しないデタージェント)の、BmrAの可溶化の前、間、及び後での、ATPアーゼ活性を示す。
一般的に観察されるように、ATP活性は、FC12 及び C12E8に見られるように、可溶化に従って減少する。
【0065】
顕著なことに、図8と図9を比べると次のことが示される。1mg/mlでのヘプチル分子は、BmrAをむしろ効果的に可溶化し、一方この濃度はCMCよりも少し低いが、不活性には導かないということである。これはドデシル化合物についても同じ濃度、CMCの1/10の1mg/mlで該当する。
【0066】
デタージェントを除いた後、脂質2重層でのBmrAの再構成の実験は、ATPアーゼ活性の完全回復を示し(図9の黒菱形)、本発明の分子が、BmrAの立体構造が機能状態に保存されていることを示す。
例13: 本発明の方法による、ヒト由来BCRPタンパク質の抽出
ヒト遺伝子から誘導されるBCRPタンパク質を、HEK293ヒト細胞又は対応する遺伝子で転換されたSf9インセクト細胞で発現させた。図10で示すように、このタンパク質は、ヘプチル又はより長い鎖を持つ式(I)のカリックスアレーンで同じように効果的に可溶化された。
【0067】
これらの実験は、トリアニオン性カリックス[4]アレーンを用いる本発明の方法が、特定の膜タンパク質の抽出に効果的であり、一連の類似のカリックスアレーンの選択によって、そのタンパク質を上澄みに集めるか、又はプラグに残すことができることを示す。この抽出は、さらに精製工程を続けることも可能である。
【0068】
例14: ABCトランスポータの酵素活性に対する、本発明のカリックスアレーンによる可溶化の効果
ABCトランスポータファミリのタンパク質は、可溶化に非常に敏感であり、この工程はしばしばタンパク質のATPアーゼ活性、少なくとも可逆性を損なう。その障害、NBDドメイン(ヌクレオチド結合領域)と、TMD(トランスメンブレン領域)とのカップリングの欠如から生じるものである。
BmrAタンパク質の活性に対する可溶性の効果は、種々のC4Cnカリックスアレーン、すなわちp(COOH)3-Ar4-o(CnH2n+1)で評価し、また、コントロールデタージェントとして、Fosコリン12(FC12)及びβ-D-ドデシルマルトピラノシド(DDM)を用いて評価した。後得られた抽出物(上澄み部分)を、膜環境を回復しタンパク質の活性を回復可能とするために、リポソーム存在下で脱塩した。図11に結果が示される。DDM又はFC12の存在下で可溶化された場合、BmrAタンパク質は、天然膜(「BmrAMb」)内で測定されるBmrA活性に比べて、それぞれそのATPアーゼ活性の95及び99%を失った(それぞれ、「DDM Sup. / DDM」 及び 「FC12 Sup./FC12」列)ことが示される。にもかかわらず、このATPアーゼ活性は、デタージェントを除去しリポソームで再構成した後は、回復する(図11,
「DDM Sup. /
Lip.」及び「FC12
Sup./Lip.」列)。
【0069】
C4C3及びC4C7カリックスアレーン誘導体が連続的に使用される場合(例15参照)、約50%のATPアーゼ活性が維持されている。これは、これらのカリックスアレーンデタージェントが、溶液中の膜タンパク質を、デタージェントDDM及びFC12よりもより強固な形で維持することを可能にすることを示している。実際、式(I)のカリックスアレーンの強固なコーン状構造は、強固なミセル形成を可能とする。これにより、タンパク質にとって、膜環境に相当する媒体が構成されることになり、これらタンパク質の3次元構造をよりよく保存し、従ってそれらの活性をよりよく保存することができる。
例15: ABCトランスポータファミリのタンパク質の、式(I)のカリックスアレーン抽出と及びその精製
C4C3その後C4C7カリックスアレーンを連続的に用いるBmrAタンパク質の分別抽出の利点は、続くクロマトグラフィによる精製の前に、上澄み部分(図12A)を濃縮することが可能となることである(図12B-E)。C4C7からの上澄み(図12A、サンプル「C4C7 S」)は、Niアフィニティクロマトグラフィに供され(図12B 及び12C)、BmrAタンパク質は、そのN末端にヘキサヒスチジンタグを持つ。タンパク質は樹脂と混合され、0.3MNaClの存在下でイミダゾールで溶出される。これにより、トリ陰イオンカリックスアレーンによるニッケル配位を抑制することができる。
【0070】
同じ上澄みがまた、トランスポータのオリゴメリ化状態を確認するために、Fosコリン12存在下でゲルろ過クロマトグラフィに供された(図12D)。BmrAは、12mlの容量で溶出され、これは見かけ分子量200,000Daに対応し、BmrAの2量体形 (2 x 65,000 Da)及びFC12のミセル(70,000 Da)に一致する。この工程の間、C4C7カリックスアレーンは、FC12と交換され、15と25mlの間で溶出された。これは、UV検出(OD 280nm、ミリ吸収単位 mAU)及び,SDS-PAGEによる(図12Dに挿入)。BmrA部分(図12Dでは星で表される)は、FC12の存在にもかかわらず活性回復される(図12Eの部分)。このことは、BmrAの機能的構造がC4C7での可溶化の後保存されているか、及び/又はC4C7の痕跡量がタンパク質に結合しているか、を示唆する。高められたATPアーゼ活性がリポソームにおいてBmrAの再構成の後回復された(図12Eの部分b)。これらの結果は、明らかに次のことを示す。膜タンパク質は、式(I)のカリックスアレーンの使用と、クロマトグラフィ工程との一組の使用により、それぞれの工程のタンパク質の機能的完全性を保持するということである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜タンパク質を選択的に抽出する方法であって、
抽出されるべき前記膜タンパク質の水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーン
【化2】
(I)
(式中、nは、1,3,5又は6である整数を表し、
R1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分枝の(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル、例えば(C9-12)アルキル)、場合によりそれらの1以上の原子に、O,S,N及びP原子,直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル,例えば(C9-12)アルキル),場合により‐COOR基で置換(ここで、Rは、直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基,又は6から20の炭素原子のアリール基))からなる群から選択される基が置換され、及び
X1,X2,及びX3は、それぞれ独立に‐(CH2)m-COOR’基(ここで、mは、0から10の整数を表し,R’は、水素原子、又は直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基を表す)
と接触させるか、
又は、それらの1以上の薬学的に許容される塩と接触させる段階を含む方法。
【請求項2】
前記式(I)のカリックスアレーンが、
nは1であり、
R1,R2,R3,R4は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基であり及び
X1,X2及びX3は、それぞれ独立に、‐(CH2)m-COOR’基(ここで、
-mは、0から10の整数を表す)であり及び
-R’は水素原子を表す、
式(I)のカリックスアレーン又は、それらの1以上の薬学的に許容される塩を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出されるべき膜タンパク質が、原核生物、真核生物、正常有機体、異常有機体から導かれる生物的膜部分に存在する、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記膜タンパク質が、輸送タンパク質を含む群から選択されるタンパク質である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記輸送タンパク質が、P 糖タンパク質
(Pgp/ABCB1),MRP1/ABCC1,BCRP/ABCG2、及びBmrAを含む群から選択されるABCトランスポータである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと抽出されるべき膜タンパク質を有する前記水溶液との接触工程が、pH5.5から10で実施される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、温度0から100℃で実施する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、カリックスアレーンの濃度が10-6から10-2 Mで実施する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、カリックスアレーンを溶液又はコロイドで実施する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コロイド凝集体が、ミセル、リポソーム、脂質ナノ粒子を含む群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、
i)薬学的に許容される塩を含む群から選ばれた有機及び無機塩、
ii)アミノ酸、ビタミン、脂質、ステロイド、炭水化物又は代謝産物からなる群から選択された、生物学的に活性な小分子、
iii)ペプチド、オリゴヌクレオチド又はオリゴサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なオリゴメリック分子、及び
iv)タンパク質、ポリヌクレオチド及びポリサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なポリメリック分子、
を含む群から選択された少なくとも1つの共溶質の存在下で実施される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記接触工程が、
前記抽出されるべき膜タンパク質又はそれを含む膜部分を、緩衝液中で可溶化し、及び
式(I)のカリックスアレーンを請求項6から11に記載した条件で加える工程で先行される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式(I)のカリックスアレーンと前記タンパク質との複合体と、非複合体とが、遠心分離で分離される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
膜タンパク質を選択的に抽出する方法であって、
抽出されるべき前記膜タンパク質の水溶液を、少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーン
【化2】
(I)
(式中、nは、1,3,5又は6である整数を表し、
R1,R2,R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、直鎖又は分枝の(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル、例えば(C9-12)アルキル)、場合によりそれらの1以上の原子に、O,S,N及びP原子,直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基(例えば、(C3-12)アルキル,例えば(C9-12)アルキル),場合により‐COOR基で置換(ここで、Rは、直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基,又は6から20の炭素原子のアリール基))からなる群から選択される基が置換され、及び
X1,X2,及びX3は、それぞれ独立に‐(CH2)m-COOR’基(ここで、mは、0から10の整数を表し,R’は、水素原子、又は直鎖又は分枝(C1-4)アルキル基を表す)
と接触させるか、
又は、それらの1以上の薬学的に許容される塩と接触させる段階を含む方法。
【請求項2】
前記式(I)のカリックスアレーンが、
nは1であり、
R1,R2,R3,R4は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖又は分枝(C1-12)アルキル基であり及び
X1,X2及びX3は、それぞれ独立に、‐(CH2)m-COOR’基(ここで、
-mは、0から10の整数を表す)であり及び
-R’は水素原子を表す、
式(I)のカリックスアレーン又は、それらの1以上の薬学的に許容される塩を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出されるべき膜タンパク質が、原核生物、真核生物、正常有機体、異常有機体から導かれる生物的膜部分に存在する、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記膜タンパク質が、輸送タンパク質を含む群から選択されるタンパク質である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記輸送タンパク質が、P 糖タンパク質
(Pgp/ABCB1),MRP1/ABCC1,BCRP/ABCG2、及びBmrAを含む群から選択されるABCトランスポータである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと抽出されるべき膜タンパク質を有する前記水溶液との接触工程が、pH5.5から10で実施される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、温度0から100℃で実施する、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、カリックスアレーンの濃度が10-6から10-2 Mで実施する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、カリックスアレーンを溶液又はコロイドで実施する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コロイド凝集体が、ミセル、リポソーム、脂質ナノ粒子を含む群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出されるべき膜タンパク質を含む水溶液と少なくとも1つの式(I)のカリックスアレーンと接触させる工程が、
i)薬学的に許容される塩を含む群から選ばれた有機及び無機塩、
ii)アミノ酸、ビタミン、脂質、ステロイド、炭水化物又は代謝産物からなる群から選択された、生物学的に活性な小分子、
iii)ペプチド、オリゴヌクレオチド又はオリゴサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なオリゴメリック分子、及び
iv)タンパク質、ポリヌクレオチド及びポリサッカライドからなる群から選択された、生物学的に活性なポリメリック分子、
を含む群から選択された少なくとも1つの共溶質の存在下で実施される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記接触工程が、
前記抽出されるべき膜タンパク質又はそれを含む膜部分を、緩衝液中で可溶化し、及び
式(I)のカリックスアレーンを請求項6から11に記載した条件で加える工程で先行される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式(I)のカリックスアレーンと前記タンパク質との複合体と、非複合体とが、遠心分離で分離される、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A−12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13A】
【図13B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A−12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13A】
【図13B】
【公表番号】特表2011−521931(P2011−521931A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511054(P2011−511054)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000626
【国際公開番号】WO2009/144419
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510309020)セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス) (9)
【出願人】(510313027)ユニヴェルシテ クラウド ベルナール デ リヨン 1 (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000626
【国際公開番号】WO2009/144419
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510309020)セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス) (9)
【出願人】(510313027)ユニヴェルシテ クラウド ベルナール デ リヨン 1 (1)
【Fターム(参考)】
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