説明

カルシウム塩スケール生成を阻害するための組成物

化学的パルプ処理施設の装置、容器および/または配管における金属表面および他の表面へのカルシウム塩スケールの生成、沈着、および付着を阻害する方法を開示する。前記方法は、スケール阻害に有効な量の組成物を、化学パルプ化法の蒸解釜内のアルカリ性水性混合物に加える段階を含む。前記組成物は、少なくとも1つのホスホネート成分(I)、および少なくとも1つのカルボキシル化フルクタン化合物からなる少なくとも1つの成分(II)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学パルプ化法の水性アルカリ系におけるスケール生成を阻害するための組成物および方法に関する。本明細書および特許請求の範囲において用いられる「スケール」、「カルシウムスケール」および「カルシウム塩スケール」なる用語は常に、カルシウムおよびマグネシウム塩スケール、主にそれらの炭酸および硫酸塩、ならびに本明細書に記載の方法において生成する不溶性塩からなる任意のおよびすべてのスケールを含むが、それらに限定されるわけではなく、「スケーリング」なる用語は、上で定義した「スケール」、主に「カルシウムスケール」および「カルシウム塩スケール」の生成に関する。本発明はさらに、化学パルプ化法装置におけるカルシウムおよびマグネシウム塩スケール沈着物の生成、沈着、および付着を阻害するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、パルプ蒸解釜(本明細書においてほとんど「蒸解釜」と呼ぶ)および化学パルプ化法の黒液回収エリアにおけるカルシウムおよびマグネシウム塩スケール沈着物の生成、沈着、および付着を阻害するための組成物および方法に関する。「パルプ蒸解釜」および「黒液」なる用語は以下により詳細に記載する。
【背景技術】
【0002】
紙は商業および家庭において世界中で広く用いられ、様々な用途がある。したがって、パルプ製造は十分な量の紙を生産するために世界中で工業的大規模で行われている。したがって、そのようなパルプ製造操作を、製造装置の中断時間が最小で、パルプ製造装置の効率が低下する期間が最小の、費用効果が高く、効率的な操作で実施することが強く望まれている。
【0003】
工業的パルプ製造における基本的段階は、植物繊維をチップに変換し、化学パルプ化法において蒸解釜を用いてチップをパルプに変換し、任意にパルプを漂白し、パルプを洗浄し、パルプを筆記用紙、新聞用紙および文書用紙などの紙製品において用いうる適当な紙に変えることである。
【0004】
典型的には、工業的パルプ製造操作においていくつかの化学パルプ化法が用いられる。周知の工業的アルカリ化学パルプ化法には、クラフト(または硫酸塩)法、ソーダ法および亜硫酸アルカリ法が含まれる。クラフト法は任意のパルプ製造方法の中で最も強い繊維を作り、一部にはその蒸解物質の効率的な回収法ゆえに、最も一般に用いられるパルプ製造方法である。本発明は任意の前述のアルカリ化学パルプ化法に適用性を有するが、クラフト法で特に有用であり、したがって、クラフト法を以下により詳細に記載する。
【0005】
最初に、適当な木を採集し、皮をはぎ、次いで適当なサイズのフレークまたはチップに削る。これらの木材チップを選別して、小さいチップおよび大きいチップを除去する。次いで、残った適当な木材チップを、チップおよび水性蒸解組成物を保持する容器またはタンクであって、バッチ操作または連続操作用に設計しうる蒸解釜に加える。
【0006】
例示として、バッチ型蒸解釜では、木材チップならびに「弱い黒液」すなわち前の蒸解からの廃液と、新鮮または化学回収プラントからのいずれかである「白液」すなわち一般には水酸化ナトリウムおよび硫化ナトリウムの溶液との混合物である蒸解組成物を蒸解釜にポンプで送り込む。蒸解処理で、木材繊維を結合するリグニンが白液に溶解して、パルプおよび黒液を生成する。
【0007】
蒸解釜を密封し、木材チップおよび蒸解組成物を高圧下で適当な蒸解温度まで加熱する。蒸解釜内の特定の温度および圧(「H-因子」)で割り当てられた蒸解時間の後、蒸解釜の内容物(パルプおよび黒液)を保持タンクに移す。保持タンク内のパルプを褐色原料洗浄機に移し、その一方で、液体(蒸解釜内で生じた黒液)を黒色回収エリア、すなわち黒液エバポレーターに送る。黒液を、例えば、多重効用蒸発器を用いて、高い固体含有率、通常は固体が60〜80%になるまで蒸発させる。固体含有率が高いほど、黒液をポンプで送るのが難しく、パルプ工場が抱えることになるスケールの問題が多くなる。最もやっかいなスケールの1つがカルシウムおよびマグネシウム塩スケール、主にそれらの炭酸塩スケールで、これは蒸解釜、黒液エバポレーターエリア、および褐色原料洗浄エリアを含む、パルプ工場の様々なエリアで生じる。
【0008】
ほとんどの商業的工場は黒液エバポレーターとして多重効用蒸発器(「MEE」)を用いている。これらのエバポレーターは一般に長さ4から8重効用の範囲である。一般に、望ましくないスケール生成は1つまたは2つの効用でのみ起こる。現在、ほとんどの工場はいかなるスケール阻害剤も用いず、むしろ黒液エバポレーター区画を閉じ、スケールを熱酸で洗い流すこと、すなわち酸洗浄によりスケールの問題に対処している。この熱酸煮沸は製紙工場の生産に有害な影響をおよぼし、用いる酸は工場の配管および装置に対して腐蝕性であるため懸念される。
【0009】
クラフト蒸解はアルカリ性が高く、通常pH10から14、特に12から14である。蒸解組成物は大量の硫化ナトリウムを含み、これは蒸解の脱リグニン率を高めるための促進剤として用いられる。これは木材チップ中のリグニンを放出するようはたらき、したがってセルロースがパルプとして利用可能となる。
【0010】
クラフト法における操作条件の組み合わせはスケールの生成および沈着に資し、スケールが生成し、沈着し、それが接触する金属表面および他の表面に付着する傾向を高める。そのようなクラフト法条件下で、クラフト法の水中に存在し、木材から浸出する、カルシウムおよびマグネシウムならびに少量の他のイオンは炭酸塩と反応して、かなり急速なスケール生成を起こし、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムスケールの沈着を伴いうる。そのようなスケールは蒸解釜、配管、熱交換器などに沈着することが多いが、これらはいずれもその上に炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムが沈着し、付着しうる表面を有する。そのような沈着は経時的に蓄積し、熱酸洗浄によりスケール沈着物を除去するために、パルプ製造ラインの下流で望ましくない早期の停止を引き起こしうる。
【0011】
EP-A 1 408 103(特許文献1)は、洗浄または漂白適用のための組成物であって、少なくとも1つのホスホネート成分および少なくとも1つのカルボキシル化フルクタン化合物からなる成分からなる組成物を開示している。
【0012】
US-A 5,777,090(特許文献2)は、工業的方法におけるスケール生成防止用製剤において用いられるホスホネート化合物の代替物としてのイヌリン化合物の使用を開示している。
【0013】
米国特許第7,172,677号(特許文献3)は、パルプ蒸解釜において見られる条件下でのカルシウムスケールの阻害は、化学パルプ化法の蒸解釜に加える特定の組成物を用いることによって達成しうることを開示している。前記組成物は、式(I)X2NCH2PO3M2を有する化合物、式(I)のホスホネートのアミンオキシド、および式(II)(Y)(R')(OH)C-PO3M2を有する化合物から選択される少なくとも1つのホスホネートまたはそれらの混合物を含む。Mは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムから独立に選択され、XはH、R、または-CH2PO3M2から独立に選択され、ここでRは2から6個の炭素原子を有するアルキル基または-NX2置換アルキル基であり、R'は1から17個の炭素原子を有し、任意に分枝し、任意に不飽和である、アルキル基であり、かつYは-PO3M2、HまたはR'から選択される。
【0014】
米国特許第7,300,542号(特許文献4)は、アルカリ化学パルプ化法において、該化学パルプ化法の黒液に少なくとも1つのホスホネートを加えることにより、カルシウム塩スケール生成を阻害する方法を開示している。ホスホネートは下記の式を有する化合物から選択される:
(I)M2O3P-CH2-N(R1)-(CH2)m-N(R2)-CH2PO3M2、(II)R3-C(OH)(PO3M2)2、(III)N-(CH2PO3M2)3、(IV)C(CH2CH2-COOM)(CH2-COOM)(COOM)(PO3M2)、(V)式(I)および(III)のホスホネートのアミンオキシド、またはそれらの混合物、ここでMは水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムから独立に選択され、R1およびR2は-CH2PO3M2または-(CH2)n-N-(CH2PO3M2)2から独立に選択され、mは2または3であり、nは2または3であり、かつR3は1から17個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつR3は任意に分枝し、かつ任意に不飽和である。
【0015】
いずれの米国特許も、クラフト蒸解釜およびクラフト黒液エバポレーターにおけるカルシウム塩に対する抗スケール剤としての有機ホスホネートの有効性を報告している。いずれの特許も、化学パルプ化法の極度のアルカリ条件下で、特定の有機ホスホネートおよびそれらの混合物はカルシウム塩スケールの生成を防止しうることを示している。結果はさらに、これらの生成物の最適な動作は、各生成物で異なる、用いる生成物の濃度のかなり低い限界範囲に入ることを示している。これらの生成物の多くは100ppm前後、他の生成物ではさらに低いレベルで一様な動作を示す。そのような生成物のより高い濃度を用いても、炭酸カルシウム阻害の改善にはつながらない。このような理由で、これらの先行技術の参考文献によって提唱される技術には改善の余地が残されている。
【0016】
したがって、特に商業的な化学的パルプ処理装置における金属表面へのスケールの生成、沈着、および付着を阻害するための、強化された方法および組成物が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】EP-A 1 408 103
【特許文献2】US-A 5,777,090
【特許文献3】米国特許第7,172,677号
【特許文献4】米国特許第7,300,542号
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、化学的パルプ処理施設の装置、容器および/または配管における金属表面および他の表面へのカルシウム塩スケールの生成、沈着、および付着を阻害する、化学的パルプ処理において用いるための組成物を提供することである。本発明のさらに別の目的は、化学的パルプ処理施設の装置、容器および/または配管における表面へのカルシウム塩スケールの生成、沈着、および付着を阻害するための方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、カルシウム塩スケール生成の阻害、特に炭酸カルシウム沈澱の阻害に関する効果改善につながる有機ホスホネート生成物を見いだすことである。
【0019】
これらおよび他の目的は、以下に非限定的でより詳細に記載する本発明によって達成される。
【0020】
これらの目的は、化学パルプ化法におけるカルシウム塩スケール生成を阻害する方法であって、化合物(i)、(ii)、(iii)および(iv)の1つから選択される少なくとも1つのホスホネート成分(I)、ならびにカルボキシル化フルクタン化合物からなる少なくとも1つの成分(II)からなる組成物の、スケール阻害に有効な量を、前記化学パルプ化法の蒸解釜内のアルカリ水性混合物または化学パルプ化法の黒液に加える段階を含む方法によって達成され、
ここで化合物(i)は、下記の一般式:
(X)a[N(W)(Y)2-a]z
を有する化合物から選択される、少なくとも1つのアミノアルキレンホスホン酸、またはその対応するアミノアルキレンホスホネート塩であり、
式中、Xは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOG、F、Br、Cl、I、OG、SO3H、SO3GおよびSG部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C200,000、好ましくはC1-C50,000、最も好ましくはC1-C2,000、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;ZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され;ここでVは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'またはSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり;ここでR'はC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでGは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'およびSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C200,000、好ましくはC1-C50,000、最も好ましくはC1-C2,000、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;ZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され;ここでYはZPO3M2、[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(K)]n-Vであり;かつxは1〜50,000の整数であり;zは0〜200,000の整数であり、ここでzはXにおける炭素原子の数以下であり、かつaは0または1であり;nは0から50,000の整数であり;a=0の場合はz=1であり;かつz=0およびa=1の場合はXは[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(Y)]n-Vであり;ZはC1-6アルキレン鎖であり;MはHならびにアルカリ、アルカリ土類およびアンモニウムイオンから、好ましくはナトリウム、カリウムおよびプロトン化アミンから選択され;WはH、XおよびZPO3M2から選択され;KはZPO3M2またはHであり、ここでz=0およびa=1の場合またはWがHもしくはXである場合はKはZPO3M2であり;ただしアミノアルキレンホスホン酸(およびその対応するアミノアルキレンホスホネート)は、少なくとも2つのホスホン酸(または対応するアミノアルキレンホスホネート)基を含み、
化合物(ii)は、下記の式:
D-[C(OH)(PO3M2)2]y
を有する、少なくとも1つの(非アミノ)アルキレンホスホン酸、または対応する(非アミノ)アルキレンホスホネートであり、
式中、Dは、(鎖および/または基が)SO3H、SO3J、COOJ、OJおよびSJ部分で置換されていてもよい、C1-12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖;または[V-O]x-Vから選択され、ここでVは、(ラジカルおよび/または基が)SO3H、SO3R'、COOR'、OR'またはSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C2-C50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでJは、(ラジカルおよび/または基が)SO3H、SO3R'、COOR'、OR'またはSR'で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択され、ここでR'はC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖であり、かつxは1〜50,000の整数であり;yは1〜50の整数であり、ここでyはDにおける炭素原子の数以下であり;かつMはHならびにアルカリ、アルカリ土類およびアンモニウムイオンから、好ましくはナトリウム、カリウムおよびプロトン化アミンから選択され、
化合物(iii)は、ホスホノ-アルカン-ポリカルボン酸、ならびにその対応する塩であって、アルカリ、アルカリ土類およびアンモニウムイオン、好ましくはナトリウム、カリウムおよびプロトン化アミンに基づく塩から選択される、少なくとも1つの(非アミノ)アルキレンホスホン酸、またはその対応するホスホネートであり、ここでアルカン部分はC3-20直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖であり、かつホスホン酸ラジカルとカルボン酸ラジカルとのモル比は2:3から1:7の範囲内であり、
化合物(iv)は、炭化水素鎖に関して末端または分枝の位置のいずれかに、ZPO3M2および/または-E-N(W)(Y)で置換されているアミノ基を含む、6から2,000,000個の炭素原子を有する直鎖または分枝炭化水素鎖から選択され、ここでアミノアルキレンホスホン酸置換基と炭化水素鎖における炭素原子の数とのモル比は2:1から1:40の範囲内であり、ここで利用可能なNH/NH2官能基の少なくとも30%は対応するアミノアルキレンホスホン酸および/または-E-N(W)(Y)で置換された基に変換されており、かつここでアルキレン部分はC1-6から選択され;ここでEは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOL、F、Br、Cl、I、OL、SO3H、SO3LおよびSL部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C2,000、好ましくはC1-C500、最も好ましくはC1-C200、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され、ここでVは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'またはSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでR'はC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり;Lは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'およびSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C2,000、好ましくはC1-C500、最も好ましくはC1-C200、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;ZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され;ここでYはZPO3M2、[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(K)]n-Vであり;かつxは1〜50,000の整数であり;nは0から50,000の整数であり;MはHならびにアルカリ、アルカリ土類およびアンモニウムイオンから、好ましくはナトリウム、カリウムおよびプロトン化アミンから選択され;WはH、EおよびZPO3M2から選択され;優先的にWはZPO3M2であり;KはZPO3M2またはHであり、ここでWがHまたはEである場合はKはZPO3M2であり;ただしアミノアルキレンホスホン酸(およびその対応するアミノアルキレンホスホネート)は、少なくとも2つのホスホン酸基(または対応するアミノアルキレンホスホネート基)を含み、
さらなる成分(II)はカルボキシル化フルクタン成分からなり、かつ(a)アルキル部分に1から4個の炭素原子を有する、カルボキシアルキルフルクタン、好ましくはカルボキシアルキルイヌリン、(b)対応するジカルボキシ類縁体に変換した単糖単位のモルパーセントで表した10から100%、好ましくは20から90%の酸化度(DO)を有する、ジカルボキシフルクタン、好ましくはジカルボキシイヌリン、(c)6-カルボキシフルクタン、好ましくは6-カルボキシイヌリン、および/または(d)0.2から3.0のカルボキシアルキル化度もしくはカルボキシアシル化度を有する、フルクタンポリカルボン酸、好ましくはイヌリンポリカルボン酸、あるいは(e)それらの混合物の群から選択される。
【0021】
本発明の目的はさらに、化合物(i)、(ii)、(iii)および(iv)の少なくとも1つから選択される前記ホスホネート成分(I)の少なくとも1つ、ならびに前記カルボキシル化フルクタン化合物(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の少なくとも1つのからなる前記カルボキシル化フルクタン成分(II)の少なくとも1つからなる組成物を用いて、選択したアルカリ化学パルプ化法における水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害する方法であって、下記の段階を含む方法によって達成される:
(a)該組成物の濃度、該ホスホネート成分の少なくとも1つおよびさらに該カルボキシル化フルクタン成分の少なくとも1つからなる、該組成物の成分の量、ならびに該組成物と、前記化学パルプ化法の化学パルプ化法蒸解釜内の水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物との混合の時間の関数としての処理温度というカルシウム塩スケール阻害特性を決定する段階、
(b)時間、温度および圧という処理操作条件、ならびにそれぞれ水性蒸解組成物または黒液組成物に基づき、該選択した化学パルプ化法によって必要とされるカルシウム塩スケール阻害能を特定する段階、
(c)該組成物を、該選択したアルカリ化学パルプ化法のそれぞれ水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物と混合する際の、該選択したアルカリ化学パルプ化法におけるカルシウム塩スケール生成を有効に阻害するために適切な、組成物の成分、組成物中の該成分の量、および組成物の使用濃度を、段階(a)および(b)に基づいて選択する段階、ならびに
(d)該アルカリ化学パルプ化法において、選択した組成物を、化学パルプ化法の、それぞれ蒸解段階で水性蒸解組成物と、または黒液回収段階で黒液組成物と混合する段階。
【0022】
本発明の目的はさらに、化合物(i)、(ii)、(iii)および(iv)の少なくとも1つから選択される前記ホスホネート成分(I)の少なくとも1つ、ならびに前記カルボキシル化フルクタン化合物(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の少なくとも1つのからなる前記カルボキシル化フルクタン成分(II)の少なくとも1つからなる組成物を用いての、選択したアルカリ化学パルプ化法における水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害する方法であって、下記の段階を含む方法によって達成される:
(a)時間、温度および圧という処理操作条件、ならびに水性蒸解組成物または黒液組成物それぞれに基づき、該選択した化学パルプ化法によって必要とされるカルシウム塩スケール阻害能を特定する段階、
(b)該組成物を、該選択したアルカリ化学パルプ化法の水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物それぞれと混合する際の、該選択したアルカリ化学パルプ化法におけるカルシウム塩スケール生成を有効に阻害するために適切な、組成物の成分、組成物中の該成分の量、および組成物の使用濃度を、段階(a)、ならびに選択した組成物の濃度およびその成分の量、ならびに該選択した組成物と、水性蒸解組成物または前記化学パルプ化法の蒸解釜から回収した黒液組成物それぞれとの混合の時間の関数としての処理温度というカルシウム塩スケール阻害特性に基づいて選択する段階、ならびに
(c)該選択したアルカリ化学パルプ化法において、化学パルプ化法の蒸解段階、または化学パルプ化法の黒液回収段階のそれぞれで、ホスホネート成分およびカルボキシル化フルクタン成分からなる選択した組成物を、それぞれ水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物と混合する段階。
【0023】
後者の2つの選択したアルカリ化学パルプ化法における水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害する方法であって、それぞれ前記段階(a)から(d)、および(a)から(c)を含む方法において、組成物の濃度、ならびに該組成物と、前記化学パルプ化法の化学パルプ化法蒸解釜内の水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物それぞれとの混合の時間の関数としての処理温度というカルシウム塩スケール阻害特性を、本明細書に記載のとおりに実験を行うことにより、またはより大きい規模の試験を行うことにより、決定することができる。それぞれの化学パルプ化法は、それぞれ処理する木材の種類、用いる具体的な操作条件、蒸解釜内の組成物、または黒液の組成物などに応じて変動するため、所望のスケール阻害を達成するために必要な本発明の具体的な組成物およびその必要とされる使用濃度は具体的なパルプ化法に依存することになる。時間、温度および圧という処理操作条件、ならびに水性蒸解組成物または黒液組成物それぞれに基づき、カルシウム塩阻害特性を選択した化学パルプ化法によって必要とされるカルシウムスケール阻害能と共に利用することにより、当業者であれば、選択した化学パルプ化法において、組成物を、それぞれ水性蒸解組成物または黒液組成物と混合する場合に、選択した化学パルプ化法においてカルシウム塩スケール生成を有効に阻害するための、適当な組成物およびその使用濃度を選択しうる。
【0024】
本発明の目的は、製紙用パルプの製造方法であって、植物繊維をチップに変換する段階、化学パルプ化法において、蒸解釜内のアルカリ性の水性系中でチップをパルプに変換する段階、化合物(i)、(ii)、(iii)および(iv)の少なくとも1つから選択される前記成分(I)の少なくとも1つ、ならびに前記カルボキシル化フルクタン化合物(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の少なくとも1つからなる前記成分(II)の少なくとも1つからなる組成物の、スケール阻害に有効な量を、水性系および/または蒸解釜から回収した黒液と混合する段階を含む方法によっても達成される。この方法は好ましくはクラフト法である。
【0025】
本発明の目的は、選択したアルカリ化学パルプ化法において水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害するための組成物であって、化合物(i)、(ii)、(iii)および(iv)の少なくとも1つから選択される前記ホスホネート成分(I)の少なくとも1つ、ならびに前記カルボキシル化フルクタン化合物(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の少なくとも1つからなる前記カルボキシル化フルクタン成分(II)の少なくとも1つからなる組成物によっても達成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
前述のとおり、本明細書において用いられる「カルシウムスケール生成」なる用語は常に、カルシウムおよびマグネシウム塩スケール、主にそれらの炭酸塩および硫酸塩、ならびに本明細書に記載の方法において生成する不溶性塩からなる任意のおよびすべてのスケールを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0028】
より詳細に記載する化合物(i)は、下記の一般式:
(X)a[N(W)(Y)2-a]z
を有する化合物から選択される、少なくとも1つのアミノアルキレンホスホン酸、またはその対応するアミノアルキレンホスホネート塩であり、
式中、XはC1-C200,000、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;ZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され;ここでZはC1-6アルキレン鎖であり;MはHならびにアルカリ、アルカリ土類およびアンモニウムイオンから、好ましくはナトリウム、カリウムおよびプロトン化アミンから選択され;VはC2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり;KはZPO3M2またはHであり、ここでz=0およびa=1の場合またはWがHもしくはXである場合はKはZPO3M2であり;nは0から50,000の整数であり、かつxは1〜50,000の整数であり;
WはH、XおよびZPO3M2から選択され;
YはZPO3M2、[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(K)]n-Vから選択され;
zは0〜200,000であり、ここでzはXにおける炭素原子の数以下であり、かつ
aは0または1であり;
a=0の場合はz=1であり;かつz=0およびa=1の場合はXは[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(Y)]n-Vであり;
ただしアミノアルキレンホスホン酸(およびその対応するアミノアルキレンホスホネート)は、少なくとも2つのホスホン酸(または対応するホスホネート)基を含む。
【0029】
ユニット[N(W)(Y)2-a]の数、すなわちzは、Xを形成するラジカル、鎖およびユニット中に存在するC原子の数以下である。他の好ましい態様において、zはXにおけるC原子の数の半分以下である。
【0030】
本発明において用いる化合物(i)の好ましい態様において、化合物(i)の一般式において言及するXは、C1-C50,000、最も好ましくはC1-C2,000直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択される。
【0031】
Xが直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択される場合は、該ラジカルは、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい。
【0032】
Xが直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択され、かつ該ラジカルが1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されている場合は、化合物(i)のそのような態様において、該ラジカルおよび/または基は-OH、-COOH、-COOG、-F、-Br、-Cl-、-I、-OG、-SO3H、-SO3G、および-SG部分で置換されていてもよい。Gは、C1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C200,000、好ましくはC1-C50,000、最も好ましくはC1-C2,000直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択される。Gが前記直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、かつ炭化水素ラジカルがC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されている、その態様は、該炭化水素ラジカルおよび/または該C1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基を-OH、-COOH、-COOR'、-F、-Br、-Cl-、-I、-OR'、-SO3H、-SO3R'、および-SR'部分で置換することにより修飾してもよく、ここでR'はC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルである。GはさらにZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択されてもよく、ここでZ、M、V、K、Y、nおよびxは上で定義した意味を有する。
【0033】
化合物(i)のさらなる態様において、Vは上で定義したC2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、該ラジカルは1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されており、ここで該C2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルおよび/または該C1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基は-OH、-COOH、-COOR'、-F、-Br、-Cl-、-I、-OR'、-SO3H、-SO3R'、および-SR'部分で置換されていてもよく、ここでR'はすでに上で定義したC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルである。
【0034】
より詳細に記載する、化合物(ii)の非アミノアルキレンホスホネートは、下記の一般式:
D-[C(OH)(PO3M2)2]y
を有する、アルキレンホスホン酸、または対応するアルキレンホスホネートであり、
式中、DはC1-100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖、または[V-O]x-Vから選択され、ここでVはC2-C50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、かつxは1〜50,000の整数であり;yは1〜50の整数であり、ここでyはDにおける炭素原子の数以下であり;かつMはHならびにアルカリ、アルカリ土類およびアンモニウムイオンから、好ましくはナトリウム、カリウムおよびプロトン化アミンから選択される。
【0035】
ユニット(PO3M2)2]の数、すなわちyは、Dを形成する鎖、基およびラジカル中に存在するC原子の数以下である。他の好ましい態様において、yはDにおけるC原子の数の半分以下である。
【0036】
任意に、DがC1-100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖から選択される場合は、鎖は1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよく、この鎖および/またはこの基は-COOJ、-OJ、-SO3H、-SO3J、および-SJ部分で置換されていてもよく、ここでJはC1-100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択される。
【0037】
DがC1-100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖から選択され、かつ鎖が1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されており、この鎖または基は-COOJ、-OJ、-SO3H、-SO3RJ、および-SJ部分で置換されており、ここでJはC1-100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択される場合は、Jのこれらのラジカルは1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよく、かつこれらのラジカルおよび/または基は-COOR'、-OR'、-SO3H、-SO3R'、および-SR'部分で置換されていてもよく、ここでR'はC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖である。
【0038】
または、前述のとおり、Dが[V-O]x-Vから選択され、ここでVがC2-C50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択される場合は、該ラジカルは1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい。
【0039】
Dが[V-O]x-Vから選択され、かつVがC2-C50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択され、かつ該ラジカルが1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されている場合は、該ラジカルおよび/または基は-COOR'、-OR'、-SO3H、-SO3R'、および-SR'部分で置換されていてもよく、ここでR'はC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖である。
【0040】
より詳細には、化合物(iv)の非アミノアルキレンホスホネートは、炭化水素鎖に関して末端または分枝の位置のいずれかで、ZPO3M2および/または-E-N(W)(Y)で置換されているアミノ基を含む、6から2,000,000個の炭素原子を有する直鎖または分枝炭化水素鎖から選択され、ここでアミノアルキレンホスホン酸置換基と炭化水素鎖における炭素原子の数とのモル比は2:1から1:40の範囲内であり、ここで利用可能なNH/NH2官能基の少なくとも30%は対応するアミノアルキレンホスホン酸および/または-E-N(W)(Y)で置換された基に変換されており、かつここでアルキレン部分はC1-6から選択され;ここでEは、
C1-C2,000、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル、
[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され、ここでVはC2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり;
ここでYはZPO3M2、[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(K)]n-Vであり;
ZはC1-6アルキレン鎖であり;
xは1〜50,000の整数であり;
nは0から50,000の整数であり;
MはHならびにアルカリ、アルカリ土類およびアンモニウムイオンから、好ましくはナトリウム、カリウムおよびプロトン化アミンから選択され;
WはH、EおよびZPO3M2から選択され;優先的にWはZPO3M2であり;
KはZPO3M2またはHであり、ここでWがHまたはEである場合はKはZPO3M2であり;
ただしアミノアルキレンホスホン酸、またはその対応するアミノアルキレンホスホネートは、それぞれ少なくとも2つのホスホン酸基、または対応するホスホネート基を含む。
【0041】
生成物(iv)の定義において言及する置換基-E-N(W)(Y)内のラジカルEは、好ましくはC1-C500、最も好ましくはC1-C200、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0042】
ラジカルEが直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択される場合は、該ラジカルは1つまたは複数のC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよく、該炭化水素ラジカルおよび/または該基は-OH、-COOH、-COOL、-F、-Br、-Cl、-I、-OL、-SO3H、-SO3Lおよび/または-SL部分で置換されていてもよく、ここでLはC1-C2,000、好ましくはC1-C500、最も好ましくはC1-C200直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル、ZPO3M2、[V-N(K)]n-K、[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され、ここでZ、M、V、K、Y、nおよびxは上で定義した意味を有する。Lが前記炭化水素ラジカルから選択される場合は、該ラジカルは1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよく、該ラジカルおよび/または基は-OH、-COOH、-COOR'、-F、-Br、-Cl、-I、-OR'、-SO3H、-SO3R'および/または-SR'部分で置換されていてもよく、ここでR'はC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖である。
【0043】
ラジカルEが、VがC2-C50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルである、[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択される場合は、該炭化水素ラジカルは1つまたは複数のC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい。該炭化水素ラジカルおよび/または基は-OH、-COOH、-COOR'、-F、-Br、-Cl、-I、-OR'、-SO3H、-SO3R'または-SR'部分で置換されていてもよく、ここでR'はC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルである。
【0044】
化合物(i)の好ましい態様において、WがZPO3M2である場合に、XまたはYはZPO3M2とは異なる。別の好ましい実施において、z=0およびa=1の場合はXは[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(Y)]n-Vであり、VはC2-C4直鎖または分枝炭化水素ラジカルである。さらに別の好ましい態様において、Xが[V-O]x-Vである場合は、WおよびKはZPO3M2である。他の好ましい実施において、zはXにおける炭素原子の数の半分以下である。別の好ましい態様において、XがCOOH、COOG、SO3H、SO3G、OG、SG、OH、F、Br、ClまたはI基で置換されているC1-C50アルキル鎖である場合は、WおよびYは[V-N(K)]x-Kまたは[V-N(Y)]n-Vである。
【0045】
好ましい化合物(i)は、好ましくは式M2O3P-CH2-N(R1)-(CH2)m-N(R2)-CH2-PO3M2の、アルキレンポリアミノポリホスホン酸およびそれらの塩を含み、ここでR1およびR2は-CH2PO3M2または-(CH2)n-N-(CH2PO3M2)2から独立に選択され、ここでm=2から6、好ましくは2または3であり、かつnは2または3である。適当なアルキレンポリアミノポリホスホン酸およびそれらの塩は、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、および好ましくはそのアルカリ塩、特にナトリウム塩、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)および好ましくはそのアルカリ塩、特にカリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)および好ましくはそのアルカリ塩、特にナトリウム塩である。式(i)(X)a[N(W)(ZPO3M2)2-a]zの好ましい成分(I)は、アミノトリス(メチレンホスホン酸) N(CH2PO3H2)3(「ATMP」)、およびその塩、好ましくはアルカリ塩、特にナトリウム塩などの、特にX=C1-C8炭化水素ラジカル、W=XまたはZPO3M2およびZ=C1-C4アルキレン鎖の、アミノポリホスホン酸およびそれらの塩をさらに含む。
【0046】
化合物(i)および(iv)アミノアルキレンホスホン酸基およびその塩は、好ましくは下記の群から選択することができる:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);1,3-プロパンジアミン-N,N'-ビス(2-アミノエチル)ヘキサ(メチレンホスホン酸);L-リジン-N,N,N',N'-テトラ(メチレンホスホン酸);L-アラニン-N,N-ジ(メチレンホスホン酸);ポリ((プロピルまたはエチル)イミノビス(メチレンホスホン酸))置換ポリエチレンイミン;グリシンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));アラニンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));β-アラニンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));グルタミン酸N,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));4-アミノメチル1,8-オクタンジアミノヘキサ(メチレンホスホン酸);6-アミノヘキサン酸N,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));9-アミノノナン酸N,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));11-アミノウンデカン酸N,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));12-アミノドデカン酸N,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));ポリ(ビニルアミノビス(メチレンホスホン酸));およびポリ(ビニルアミノN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)))。
【0047】
別のアプローチにおいて、好ましい化合物(i)および(iv)アミノアルキレンホスホン酸基およびその塩は、下記の群から選択することができる:4-アミノブタン酸N,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));メチオニンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));L-リジンN,N,N',N'-テトラ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));アスパラギン酸N,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));フェニルアラニンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));トレオニンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));2-エタノールアミンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));6-ヘキサノールアミンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));4-ブタノールアミンN,N-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));ジ(2-エタノール)アミン(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));ジプロパノールアミン(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));2-(2-アミノエトキシ)エタノールビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));3-プロパノールアミンビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));トルエンジアミンテトラ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));1,6-ヘキサメチレンジアミンテトラ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));1,4-ブタンジアミンテトラ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));1,2-エチレンジアミンテトラ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));直鎖または分枝ポリエチレンイミンポリ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));メチルまたはエチルまたはプロピルまたはブチルまたはヘキシルまたはヘプチルまたはオクチルまたはノニルまたはデシルまたはドデシルアミンビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));アニリンビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));C12-22脂肪アミンビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));チオグリコール酸S-(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));システインS,N,N-トリ(エチルまたはプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸));メチル(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸))チオエーテル;エチルまたはプロピルまたはペンチルまたはヘキシルまたはオクチルまたはフェニルまたはナフチルまたはデシルまたはドデシル(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸))チオエーテル;プロパン酸3-オキシ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));ブタン酸4-オキシ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));ペンタン酸5-オキシ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));酢酸2-オキシ(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));酒石酸O,O'-ビス(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));ヒドロキシコハク酸O-(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸));酪酸α-オキシ-(プロピルまたはエチルイミノビス(メチレンホスホン酸))。
【0048】
式D-[C(OH)(PO3H2)2]yを有する化合物(ii)は、好ましくはアルキレンポリホスホン酸およびそれらの塩であり、これらは、一つの好ましい態様において、アルキル基がC2-10、より好ましくはC2-6から選択される式1-ヒドロキシアルキレン1,1-ジホスホン酸の種、一つの特定の実施において、1-ヒドロキシエチレン1,1-ジホスホン酸 (H2O3P)2-C(OH)-CH3、(「HEDP」)、好ましくはそのアルカリ塩、特にナトリウム塩で表すことができる。別の好ましい態様において、アルキレンホスホン酸である化合物(ii)におけるDは[V-O]x-Vであり、VはC2-10直鎖または分枝炭化水素ラジカルから選択され、かつxは1〜50である。
【0049】
化合物(iii)の好ましいホスホノ-アルカン-ポリカルボン酸およびその塩は、2-ホスホノブタン1,2,4-トリカルボン酸 HO2C-CH2-C(CO2H)(PO3H2)-(CH2)2-CO2H、およびその塩、好ましくはそのアルカリ塩、特にナトリウム塩である。
【0050】
第一の成分(i)アミノアルキレンホスホン酸およびその塩は、公知の亜リン酸を変換する方法−例えば、アミンおよびホルムアルデヒドの添加を介し、3塩化リンPCl3の加水分解から得ることによって製造することができ、ここでアミンは一般式(X)a[N(W)(H)2-a]zを有し、ここでX、NおよびWは前述の意味を有する。得られるアルキレンホスホン酸を続いて水酸化アルカリもしくはアルカリ土類またはアンモニアまたはアミンで処理し、したがって部分または全ホスホネート塩を得ることができる。この反応は一般に公知で、例えば、GB 1.142.294およびUS-A 3,288,846に記載されている。
【0051】
非アミノアルキレンホスホネート成分(ii)および(iii)は、公知の方法で製造することができる。一例として、式D-[C(OH)(PO3M2)2]yの成分(ii)においてD=CH3である場合、該成分(ii)は、PCl3を酢酸および水の混合物に加え、続いて蒸気処理し、蒸留によって未反応の酢酸を回収することにより調製することができる。成分(iii)ホスホノ-アルカン-ポリカルボン酸の製造に関して、このクラスの化学物質の合成は、2-ホスホン酸ブタン1,2,4-トリカルボン酸(HOOC-CH2-C(PO3H2)(COOH)-CH2-CH2COOH)によって実施することができる。この化学物質は、マレイン酸ジメチルを亜リン酸ジメチルと反応させ、続いて付加生成物をナトリウムメトキシド存在下、アクリル酸メチルと反応させて合成することができ、4つのエステル基を対応する遊離酸基へと加水分解して停止する。
【0052】
化合物(iv)の例は、m、nおよびpが例えば1、2、3または4である式[H2O3P(CH2)]2N(CH2)mCH{(CH2)nN[(CH2)PO3H2]2}{(CH2)pN[(CH2)PO3H2]2}の化合物、例えばm=3、n=4、およびp=1である4-アミノメチル1,8-オクタンジアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)およびその対応する塩であり、これらはNH2-(CH2)3-CH(CH2)4-NH2)CH2-NH2から出発し、CH2O、H3PO3、およびHClと反応させて調製することができる。
【0053】
第一の成分(I)と第二の成分(II)との重量比は広範囲から選択可能であるが、一般には20:1から1:6、好ましくは10:1から1:4、より好ましくは8:1から1:3の範囲内である。
【0054】
成分(II)として用いるカルボキシル化フルクタンを生成するための出発原料として用いるフルクタンは、大多数のアンヒドロフルクトース単位を有するオリゴ糖および多糖であり、多分散鎖長分布を有しえ、かつ直鎖または分枝鎖のものでありうる。好ましくは、フルクタンは主に、インスリンと同様のベータ-1,2結合を含む。成分(II)を生成するための出発原料として用いるフルクタンは、植物原料または他の原料ならびに分別、酵素的合成または加水分解によって平均鎖長が改変、増大または低減されている生成物から直接得た生成物でありうる。
【0055】
平均鎖長が改変され、本発明の技術に従い成分(II)として用いるのに適したカルボキシル化フルクタンは、鎖長が酵素的に長くなったフルクタン、鎖が短縮されたフルクタンの加水分解生成物、および鎖長が改変された分別生成物から調製することができる。インスリンなどのフルクタンの分別は、例えば、低温結晶化(国際公開公報第96/01849号参照)、カラムクロマトグラフィ(国際公開公報第94/12541号参照)、膜ろ過(EP-A-0440074、EP-A-0627490参照)またはアルコールによる選択的沈澱を含む、公知の技術によって達成することができる。より短いフルクタンを得るための加水分解は、例えば、酵素的(エンドインスラーゼ(endo-insulase))、化学的(水および酸)または不均一触媒作用(酸性カラム)により実行することができる。還元、酸化、ヒドロキシアルキル化、および/または架橋フルクタンもまた、成分(II)として用いるカルボキシル化フルクタンを生成するための適当な出発原料でありうる。フルクタンは、少なくとも3から約1000の平均鎖長(重合度、DP)を有する。好ましくは、平均鎖長は3から60、特に5から30の単糖単位である。好ましいフルクタンは、イヌリン(ベータ-2,1-フルクタン)または改変イヌリンである。
【0056】
本発明の好ましい態様において、組成物のフルクタン成分(II)は、好ましくは1.5から2.8の範囲の置換度(DS)を有するカルボキシメチルイヌリンおよび/もしくはカルボキシエチルイヌリン、ならびに/または対応するジカルボキシ類縁体に変換した単糖単位のモルパーセントで表した20から90%の酸化度(DO)を有するジカルボキシイヌリンである。
【0057】
カルボキシメチルイヌリンは、国際公開公報第95/15984号に記載されるとおり、フルクタンとクロロ酢酸との反応によって調製することができる。カルボキシエチルイヌリンは、国際公開公報第96/34017号の方法に従って調製することができる。そのようにして調製したカルボキシアルキルイヌリンは、最大3.0までの置換度(DS)を有しうる。そのようなカルボキシアルキルイヌリンのDSは、一般には0.2から3.0、好ましくは1.0から2.8の範囲内である。特許請求される技術の範囲内で使用するのに好ましいカルボキシアルキルイヌリンは、1.5から2.8、最も好ましくは1.8から2.5の範囲のDSを有する。
【0058】
ジカルボキシイヌリンは、イヌリン原料の酸化によって得ることができる。アンヒドロフルクトース単位は、開環によりジカルボキシ(ヒドロキシエトキシ)エチレンオキシ単位に変換される。酸化は、国際公開公報第91/17189に記載されるとおり、次亜ハロゲン酸塩(hypohalite)により1段階で、または国際公開公報第95/12619号に記載されるとおり、過ヨウ素酸塩および亜塩素酸塩により2段階で進行しうる。好ましい酸化度(DO)は、20から90%の範囲内であり、DOは、対応するジカルボキシ類縁体に変換した単糖単位の(モル)パーセントである。
【0059】
6-カルボキシイヌリンは周知の材料である。これは、国際公開公報第95/07303号の方法に従い酸化によって得ることができる。
【0060】
フルクタンポリカルボン酸は、選択した出発原料の逐次の酸化およびカルボキシアルキル化によって調製することができる。この材料は、0.2から2.0のDOおよび0.2から3、好ましくは0.5から2.5のカルボキシアルキル/カルボキシアシル置換度を有する。
【0061】
カルシウム塩スケールを生成するための炭酸塩および硫酸塩から好ましくは選択される、十分な量の利用可能なカルシウムカチオンおよびアニオンを有する、化学パルプ化法における水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害するための方法に従い、少なくとも1つのホスホネート成分(I)および少なくとも1つのカルボキシル化フルクタン成分(II)からなる前述の組成物の、スケール阻害に有効な量を、カルシウム塩スケール生成を阻害するために一定の温度に維持した化学パルプ化法の蒸解釜内の水性系と、または黒液と混合し、ここで該ホスホネート成分(I)およびフルクタン成分(II)は上で定義したそれぞれの化合物から選択される。蒸解釜内の前記温度範囲は、一般には摂氏約110から約180度、好ましくは摂氏約150から約175度である。黒液エバポレーター内の典型的な温度範囲は、一般には効用に依存して摂氏約80から約180度の範囲内である。
【0062】
本発明の水性組成物を、当業者には公知の任意の通常の手段を用いて、蒸解釜または蒸解釜から回収した黒液に加えることができる。加えて、本発明の水性組成物を蒸解組成物に直接加えることもでき、または蒸解釜に充填する水性供給組成物の1つに、その水性供給組成物を充填する前に導入することもでき、または黒液回収段階の前、例えば、黒液エバポレーターの前に黒液に直接導入することもでき、または黒液回収段階の間、例えば、MEEの効用の間に黒液に加えることもできる。アルカリパルプ化法の蒸解釜のpHは少なくとも9である。クラフト法の場合、蒸解釜内のpHは好ましくは約10から約14、より好ましくは約12から約14である。アルカリ化学パルプ化法における黒液のpHは少なくとも9である。クラフト法の場合、黒液のpHは典型的には約10から約14、より典型的には約12から約14である。
【0063】
本発明の水性組成物を、当業者には公知の任意の通常の様式で、バッチ蒸解釜にまたは黒液に加えることができる。例えば、バッチ蒸解釜操作において、本発明の水性組成物の添加は、それぞれ蒸解釜の蒸解サイクルの開始時、もしくは黒液回収段階の開始時、またはそれぞれ蒸解釜の蒸解サイクル中、もしくは黒液エバポレーターサイクル中のバルク添加であってもよく、あるいはそれぞれ蒸解サイクルもしくは黒液エバポレーターサイクルの間を通じて複数回の充填で加えることもでき、または蒸解釜の蒸解サイクルの間、もしくは黒液を回収しながら連続的に加えることもできる。
【0064】
現在のところ、本発明の水性組成物は、蒸解釜の蒸解サイクル開始時もしくはその近くで蒸解釜に、または黒液蒸発サイクルの開始時もしくはその近くで黒液に、バルク充填として加えることが好ましい。連続蒸解釜操作の場合、本発明の水性組成物の添加は、典型的には、それぞれ蒸解釜または黒液における該組成物の有効な濃度を維持するために、それぞれ蒸解釜または黒液に連続的に加えることになる。黒液を黒液エバポレーター段階の前に保存容器に保持する場合、本発明の組成物は前述のとおりに加えることができる。
【0065】
用いる本発明のスケール阻害組成物の量は、カルシウム塩スケール、特に炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムスケールの生成、沈着、および付着が特定の化学パルプ化施設の蒸解釜、褐色原料洗浄器および/または黒液回収エリアで満足に阻害される時間、それぞれ蒸解釜または黒液エバポレーター内の組成物の、スケール阻害に有効な濃度を提供するのに十分な有効量である。蒸解釜に加えるための組成物中の成分および組成物自体の適当な濃度は、所望のスケール阻害を必要な時間達成するために、過度の実験を行うことなく、本明細書の開示に基づき、容易に選択することができる。
【0066】
本発明を、以下の実施例において詳細に記載するが、これらは本発明を限定または制限するものではない。特に記載がないかぎり、すべての量は重量で表す。
【実施例】
【0067】
実施例1
スケール阻害組成物は、第一の成分としてのエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)のナトリウム塩、および第二の成分としてのDSが2.5のカルボキシメチルイヌリンからなる。
【0068】
方法:クラフト蒸解を、システムが加圧下にある間に試料を抜き取ることを可能にするために抽出口および冷却器を加えた、MK Systems(Danvers、Massachusetts)の6L蒸解釜で実施した。クラフト蒸解において用いた条件には、液と木材との比5:1、有効なアルカリ18.5%、硫化度25%および可変レベルのNa2CO3が含まれ、5g/Lが最も頻繁に試験された濃度であった。各クラフト蒸解の前に、蒸解釜に10体積%のH2SO4水溶液を10分間循環させて、既存の沈着物があれば除去した。この酸溶液を排出し、蒸解釜を脱イオン水で数回洗浄した。4リットルの白液(上に記載)を蒸解釜に加え、初期温度を記録した。次いで、800グラムのオーブン乾燥したマツ木材チップを蒸解釜のチップバスケットに入れ、液体に浸した。バスケットが適所につけば、ストップウォッチを始動させ、試料(約5ml)を蒸解釜から抜き取り、反応加熱の一連の手順を開始した。全量10mL未満の液体試料を水冷式冷却器を用いて15分ごとに抜き取った。各試料抽出前に冷却器を完全にパージした。抜き取った試料1mLを、4%HCl溶液5mlを含む15mLの遠沈管に定量的に移した。残りの試料の約3mLを10mLの使い捨てシリンジに入れ、シリンジフィルター(孔径0.45μmの膜)を通過させた。ろ液1mLを別の4%HCl溶液5mlを含む15mLの遠沈管に定量的に移した。試験管内の酸により黒液リグニンが沈澱した。次いで、試験管の遠心沈降により澄明な上清を得た。PerkinElmer(Shelton、Connecticut)100 A Analyst Atomic Absorption Spectrometerを用いてカルシウム濃度を定量した。
【0069】
時間に依存しての蒸解釜内に存在するカルシウム濃度に関連する結果を図1および2に示す。
【0070】
図1の曲線は、スケール阻害剤なし、唯一のスケール阻害剤としてのNa5EDTMPA(エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)のナトリウム塩を意味する)、ならびにNa5EDTMPAおよびCMI DS2.5(DSが2.5のカルボキシメチルイヌリンを意味する)の混合物で得られた結果を示す。
【0071】
図2の曲線は、スケール阻害剤なし、唯一のスケール阻害剤としてのNa4HEDP(1-ヒドロキシエチレンジホスホン酸の4ナトリウム塩を意味する)、ならびにNa4HEDPおよびCMI DS 2.5(DSが2.5のカルボキシメチルイヌリンを意味する)の混合物で得られた結果を示す。
【0072】
実施例2
スケール阻害組成物は、第一の成分としての1-ヒドロキシエチリデン(1,1-ジホスホン酸)のナトリウム塩、および第二の成分としてのDSが2.5のカルボキシメチルイヌリンからなる。
【0073】
方法:実施例1と同じ。結果を図3に示す。
実施例において記載する実験室での試験データおよび工場での試験結果によって明らかに示されるとおり、本発明の特定の有機ホスホネート成分およびカルボキシル化フルクタン成分からなる混合生成物では、フルクタン成分を含まない生成物に比べると、炭酸カルシウム阻害が少なくとも20%増大する。加えて、試験データから、有機ホスホネート成分をカルボキシル化フルクタン成分と組み合わせた場合に、50ppmと100ppmの使用レベルの間で同等の性能が認められる。この結果が示すものは、使用レベルの増大に伴って性能の低下が見られれば、カルボキシル化フルクタン成分の添加により、性能低下は起こりにくくなり、むしろ性能の増大が見られるということである。先行技術において提唱された有機ホスホネートは有機ホスホネート生成物のいくつかで性能の低下を示すため、この結果は重要である。使用レベルを50ppmから100ppmに上げると、本発明のスケール阻害組成物はより高い使用濃度が可能となり、結果として性能が改善されることになる。さらに、本発明の有機ホスホネートとカルボキシル化フルクタン成分を組み合わせて用いることで、有機ホスホネートのスケール防止性能を高めるだけでなく、カルボキシル化フルクタン成分の添加は重金属の除去や下流の洗浄および漂白工程の効率を改善する。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学パルプ化法におけるカルシウム塩スケール生成を阻害する方法であって、化合物(i)、(ii)、(iii)および(iv)の少なくとも1つから選択される少なくとも1つのホスホネート成分(I)、ならびに少なくとも1つのカルボキシル化フルクタン化合物からなる少なくとも1つの成分(II)からなる組成物の、スケール阻害に有効な量を、前記化学パルプ化法の蒸解釜内のアルカリ水性混合物および/または化学パルプ化法の黒液に加える段階を含む方法、
ここで化合物(i)は、下記の一般式:
(X)a[N(W)(Y)2-a]z
を有する化合物から選択される、少なくとも1つのアミノアルキレンホスホン酸、またはその対応するアミノアルキレンホスホネート塩であり、
式中、Xは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOG、F、Br、Cl、I、OG、SO3H、SO3GおよびSG部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C200,000、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;ZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され;ここでVは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'またはSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでR'はC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでGは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'およびSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C200,000、直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;ZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され;ここでYはZPO3M2、[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(K)]n-Vであり;かつxは1〜50,000の整数であり;zは0〜200,000の整数であり、ここでzはXにおける炭素原子の数以下であり、かつaは0または1であり;nは0から50,000の整数であり;a=0の場合はz=1であり;かつz=0およびa=1の場合はXは[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(Y)]n-Vであり;ZはC1-6アルキレン鎖であり;MはHならびにアルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、およびプロトン化アミンイオンから選択され;WはH、XおよびZPO3M2から選択され;KはZPO3M2またはHであり、ここでz=0およびa=1の場合またはWがHもしくはXである場合はKはZPO3M2であり;
ただしアミノアルキレンホスホン酸(およびその対応するアミノアルキレンホスホネート)は、少なくとも2つのホスホン酸(または対応するホスホネート)基を含み;
化合物(ii)は、下記の式:
D-[C(OH)(PO3M2)2]y
を有する、少なくとも1つのアルキレンホスホン酸、またはその対応するアルキレンホスホネートであり、
式中、Dは、(鎖および/または基が)SO3H、SO3J、COOJ、OJおよびSJ部分で置換されていてもよい、C1-12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖;または[V-O]x-Vから選択され、ここでVは、(ラジカルおよび/または基が)SO3H、SO3R'、COOR'、OR'またはSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C2-C50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでJは、(ラジカルおよび/または基が)SO3H、SO3R'、COOR'、OR'またはSR'で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C100直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルから選択され、ここでR'はC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖であり、かつxは1〜50,000の整数であり;yは1〜50の整数であり、ここでyはDにおける炭素原子の数以下であり;かつMはHならびにアルカリ、アルカリ土類、アンモニウムイオン、およびプロトン化アミンイオンから選択され、
化合物(iii)は、少なくとも1つのホスホノ-アルカン-ポリカルボン酸、ならびにアルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、およびプロトン化アミンイオンに基づく、その対応する塩から選択され、ここでアルカン部分はC3-20直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素鎖であり、かつホスホン酸ラジカルとカルボン酸ラジカルとのモル比は2:3から1:7の範囲内であり、
化合物(iv)は、炭化水素鎖に関して末端または分枝の位置のいずれかに、ZPO3M2および/または-E-N(W)(Y)で置換されているアミノ基を含む、6から2,000,000個の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖または分枝炭化水素鎖から選択され、ここでアミノアルキレンホスホン酸置換基と炭化水素鎖における炭素原子の数とのモル比は2:1から1:40の範囲内であり、ここで利用可能なNH/NH2官能基の少なくとも30%は対応するアミノアルキレンホスホン酸および/または-E-N(W)(Y)で置換された基に変換されており、かつここでアルキレン部分はC1-6から選択され;ここでEは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOL、F、Br、Cl、I、OL、SO3H、SO3LおよびSL部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C2,000直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され、ここでVは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'またはSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C2-50直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり、ここでR'はC1-12直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカルであり;Lは、(ラジカルおよび/または基が)OH、COOH、COOR'、F、Br、Cl、I、OR'、SO3H、SO3R'およびSR'部分で置換されていてもよい、1つまたは複数のC1-C12直鎖、分枝、環式または芳香族基で置換されていてもよい、C1-C2,000直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素ラジカル;ZPO3M2;[V-N(K)]n-K;[V-N(Y)]n-Vまたは[V-O]x-Vから選択され;ここでYはZPO3M2、[V-N(K)]n-Kまたは[V-N(K)]n-Vであり;かつxは1〜50,000の整数であり;nは0から50,000の整数であり;MはHならびにアルカリ、アルカリ土類、アンモニウムおよびプロトン化アミンイオンから選択され;WはH、EおよびZPO3M2から選択され;KはZPO3M2またはHであり、ここでWがHまたはEである場合はKはZPO3M2であり;ただしアミノアルキレンホスホン酸(およびその対応するアミノアルキレンホスホネート)は、少なくとも2つのホスホン酸アミノアルキレンホスホン基(または対応するアミノアルキレンホスホネート基)を含み、
さらなる成分(II)は、カルボキシル化フルクタン成分からなり、かつ(a)アルキル部分に1から4個の炭素原子を有するカルボキシアルキルフルクタン、(b)対応するジカルボキシ類縁体に変換した単糖単位のモルパーセントで表した10から100%の酸化度(DO)を有する、ジカルボキシフルクタン、(c)6-カルボキシフルクタン、および/または(d)0.2から3.0のカルボキシアルキル化度もしくはカルボキシアシル化度を有するフルクタンポリカルボン酸、あるいは(e)それらの混合物の群から選択される。
【請求項2】
ホスホネート成分(I)が、アルキレンポリアミノポリホスホン酸およびそれらの塩、ポリホスホン酸およびそれらの塩、ならびにアルキレンポリホスホン酸およびそれらの塩から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ホスホネート成分(I)が、M2O3P-CH2-N(R1)-(CH2)m-N(R2)-CH2-PO3M2およびその塩から選択され、ここでR1およびR2は-CH2PO3M2および-(CH2)n-N-(CH2PO3M2)2から独立に選択され、ここでm=2から6であり、かつnは2または3である、請求項1または2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
ホスホネート成分(I)が、X=C1-C8炭化水素ラジカル、W=XまたはZPO3M2、およびZ=C1-C4アルキレン鎖の式(X)a[N(W)(ZPO3M2)2-a]zを有する化合物(i)から選択されるアミノポリホスホン酸およびそれらの塩から選択される、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
WがZPO3M2である場合は化合物(i)のXまたはYはZPO3M2とは異なり、かつXが[V-O]xである場合はWおよびKはZPO3M2である、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
z=0およびa=1の場合に、化合物(i)のXが[V-N(K)]x-Kまたは[V-N(Y)]n-Vであり、ここでVがC2-4直鎖または分枝炭化水素ラジカルである、請求項1から5のいずれか一項記載の方法。8。
【請求項7】
Xが、COOH、COOG、SO3H、SO3G、OG、SG、OH、F、Cl、BrまたはI基で置換されているC1-50アルキル鎖である場合に、化合物(i)のWおよびYが[V-N(K)]x-Kまたは[V-N(Y)]n-Vから選択される、請求項1から6のいずれか一項記載の方法。9。
【請求項8】
ホスホネート成分(I)がエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)およびその塩、ヘキサメチレン-ジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)およびその塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびその塩、アミノトリス(メチレンホスホン酸)およびその塩、1-ヒドロキシエチレン(1,1-ジホスホン酸)およびその塩、ならびに2-ホスホノ1,2,4-ブタントリカルボン酸およびその塩から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
化合物(ii)が1-ヒドロキシアルキレン1,1-ジホスホン酸およびその塩から選択され、ここでアルキレン基が、C2-C10、直鎖もしくは分枝炭化水素ラジカルから選択されるか、またはVがC2-10でありかつxが1〜50である[V-O]x-Vから選択される、請求項1記載の方法。6。
【請求項10】
カルボキシル化フルクタン成分(II)が、アルキル部分に1から4個の炭素原子を有するカルボキシアルキルイヌリン、対応するジカルボキシ類縁体に変換した単糖単位のモルパーセントで表した10から100%の酸化度を有するジカルボキシイヌリン、6-カルボキシイヌリン、および0.2から3.0のカルボキシアルキル化度またはカルボキシアシル化度を有するイヌリンポリカルボン酸、およびそれらの混合物から選択される、請求項1から9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記化学パルプ化法の蒸解釜内のアルカリ水性混合物または化学パルプ化法の黒液に加える組成物中の第一の成分(I)と第二の成分(II)との重量比が20:1から1:6の範囲内である、請求項1から10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記ホスホネート成分(I)の少なくとも1つおよび前記カルボキシル化フルクタン成分(II)の少なくとも1つを含む請求項1から11のいずれか一項記載の組成物を加えることにより、選択したアルカリ化学パルプ化法における水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害する方法であって、下記の段階を含む方法:
(a)該組成物の濃度、該ホスホネート成分の少なくとも1つおよびさらに該カルボキシル化フルクタン成分の少なくとも1つからなる、該組成物の成分の量、ならびに該組成物と、化学パルプ化法の蒸解釜内の水性蒸解組成物または該化学パルプ化法の蒸解釜から回収した黒液組成物との混合の時間の関数としての処理温度というカルシウム塩スケール阻害特性を決定する段階、
(b)時間、温度および圧という処理操作条件、ならびに水性蒸解組成物または黒液組成物それぞれに基づき、該選択した化学パルプ化法によって必要とされるカルシウム塩スケール阻害能を特定する段階、
(c)該組成物を、該選択したアルカリ化学パルプ化法の、それぞれ水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物と混合する際の、該選択したアルカリ化学パルプ化法におけるカルシウム塩スケール生成を有効に阻害するために適切な、組成物の成分、組成物中の該成分の量、および組成物の使用濃度を、段階(a)および(b)に基づいて選択する段階、ならびに
(d)該アルカリ化学パルプ化法において、請求項1から11のいずれか一項記載の選択した組成物を、それぞれ化学パルプ化法の蒸解段階で水性蒸解組成物と、または黒液回収段階で黒液組成物と混合する段階。
【請求項13】
前記ホスホネート成分(I)の少なくとも1つおよび前記カルボキシル化フルクタン成分(II)の少なくとも1つを含む請求項1から11のいずれか一項記載の組成物を加えることにより、選択したアルカリ化学パルプ化法における水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害する方法であって、下記の段階を含む方法:
(a)時間、温度および圧という処理操作条件、ならびに水性蒸解組成物または黒液組成物それぞれに基づき、該選択した化学パルプ化法によって必要とされるカルシウム塩スケール阻害能を特定する段階、
(b)該組成物を、該選択したアルカリ化学パルプ化法の、それぞれ水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物と混合する際の、該選択したアルカリ化学パルプ化法におけるカルシウム塩スケール生成を有効に阻害するために適切な、組成物の成分、組成物中の該成分の量、および組成物の使用濃度を、段階(a)、ならびに選択した組成物の濃度およびその成分の量、ならびに該選択した組成物と、それぞれ水性蒸解組成物または前記化学パルプ化法の蒸解釜から回収した黒液組成物との混合の時間の関数としての処理温度というカルシウム塩スケール阻害特性に基づいて選択する段階、ならびに
(c)該選択したアルカリ化学パルプ化法において、それぞれ化学パルプ化法の蒸解段階または化学パルプ化法の黒液回収段階で、請求項1から11のいずれか一項記載のホスホネート成分およびカルボキシル化フルクタン成分からなる選択した組成物を、それぞれ水性蒸解組成物または蒸解釜から回収した黒液組成物と混合する段階。
【請求項14】
製紙用パルプの製造方法であって、植物繊維をチップに変換する段階、化学パルプ化法において、蒸解釜内のアルカリ性の水性系中でチップをパルプに変換する段階、請求項1から11のいずれか一項記載の組成物の、スケール阻害に有効な量を、水性系および/または蒸解釜から回収した黒液と混合する段階を含む方法。
【請求項15】
アルカリ化学パルプ化法において水性系中のカルシウム塩スケール生成を阻害するための組成物であって、請求項1から11のいずれか一項記載の、化合物(i)、(ii)、(iii)および(iv)の1つから選択される少なくとも1つの成分(I)、ならびに前記カルボキシル化フルクタン化合物(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の1つからなる少なくとも1つの成分(II)からなる組成物。

【公表番号】特表2012−524172(P2012−524172A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500224(P2012−500224)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053412
【国際公開番号】WO2010/106077
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511226890)デクエスト アーゲー (2)
【Fターム(参考)】