説明

カルシトニンの経口投与

【課題】 ヒトにおいて食物消費に先行して経口デリバリー剤と組み合わせてカルシトニンを含む医薬組成物を経口投与する特定の方法、および上記投与方法を用いるカルシトニンの作用に応答する疾患の処置方法、および経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量が特定割合である経口カルシトニン医薬組成物を提供すること。
【解決手段】 ヒトにおいて食物消費に先行して経口デリバリー剤と組み合わせてカルシトニンを含む医薬組成物を経口投与する特定の方法、および上記投与方法を用いるカルシトニンの作用に応答する疾患の処置方法、および経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量が特定割合である経口カルシトニン医薬組成物を見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、カルシトニンの有効な経口医薬組成物、その投与およびヒトにおけるカルシトニンの作用に応答する疾患のそれによる処置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国特許第5773647号および同第5866536号、ならびに国際出願公開第00/59863号は、経口デリバリー剤として修飾アミノ酸を用いたカルシトニンの経口デリバリーについての医薬組成物を開示している。上記文献については、出典明示により援用する。開示された経口デリバリー剤には、N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸(5−CNAC)、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸(SNAD)およびN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸(SNAC)、これらの二ナトリウム塩および水和物または溶媒和物がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の要約
本発明は、特別の、すなわちヒトにおける食物消費に先行する、カルシトニンを1種またはそれ以上の経口デリバリー剤と組み合わせて含む医薬組成物の経口投与方法、および上記投与方法を用いたカルシトニンの作用に応答する疾患の処置方法、および特定の経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の比を有し、経口デリバリー剤の量が減らされている経口固体医薬組成物に関するものである。
【0004】
発明の詳細な記載
特に、本発明は、カルシトニンの作用に応答する疾患の処置であって、カルシトニンおよび経口デリバリー剤を含む医薬組成物のヒト宿主への経口投与を含み、上記経口投与が、カルシトニンの経口生物学的利用能を高めるために、食物の不存在下、有利には食物消費に短時間先行して、たとえば食事に短時間先行して行われる処置に関するものである。
【0005】
カルシトニンの作用に応答する疾患は、たとえばパジェット病、高カルシウム血症およびオステオポローシスである。
【0006】
本明細書で使用されている「約」の語は、挙げられた実際の数値、および挙げられた数または値の前後10%以内を包含する範囲の両方を意味する。
【0007】
本明細書で使用されている「カルシトニン」の語は、たとえばパジェット病、高カルシウム血症およびオステオポローシスの処置に使用される一種の薬理学的物質をいい、天然、合成または組換えヒト、サケ、ブタまたはウナギカルシトニンを包含する。
【0008】
好ましいのは、サケカルシトニン(sCT)である。カルシトニンは、市販されているかまたは公知方法により合成され得る。sCTの典型的なヒト用量は、注射により投与する場合、100IU(0.018mg)である。
【0009】
適切な経口ヒト用量は、たとえば対象の年齢、経口処方物および処置すべき状態の性質および重症度により変化する。sCTの経口ヒト用量は、経口デリバリー剤と組み合わせて投与される場合、典型的には約0.05〜5mg、好ましくは約0.1〜2.5mgの範囲である。
【0010】
経口用量はまた、デリバリー剤および関与した実際の処方物により変化する。
【0011】
適切な経口デリバリー剤は、米国特許第5773647号および同第5866536号、ならびに国際出願公開第00/59863号に記載されているものであり、これらの内容について、出典明示により援用する。その具体例は、5−CNAC、SNADおよびSNAC、ならびにその二ナトリウム塩および水和物および溶媒和物、たとえばエタノール溶媒和物である。二ナトリウム塩、一水和物およびエタノール溶媒和物は、それらの製法も含め、国際出願公開第00/59863号に記載されている。
【0012】
経口デリバリー剤として好ましいのは、5−CNAC、特にその二ナトリウム塩または水和物または溶媒和物、たとえばエタノール溶媒和物である。
【0013】
典型的には、5−CNACのたとえば二ナトリウム塩の水和物またはエタノール溶媒和物は、経口デリバリー剤1分子につき約1分子の水またはエタノールを含み、すなわち一水和物または一エタノール溶媒和物である。
【0014】
特に好ましいのは、5−CNAC二ナトリウム塩、有利にはその一水和物形態である。
【0015】
本明細書で使用されている「5−CNAC」は、N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸を示す。特記しない場合、5−CNACに関して使用されている「二ナトリウム塩」の語は、あらゆる形態の二ナトリウム塩を包含する。
【0016】
5−CNACは、米国特許第5773647号に記載されており、それについては出典明示により援用するものとし、そこに記載された方法により製造され得る。そのナトリウム塩類およびアルコール溶媒和物および水和物は、それらの製造方法と一緒に、国際公開第00/59863号に記載されており、これについても出典明示により援用する。国際公開第00/59863号の実施例2および7は、それぞれ5−CNAC二ナトリウム塩一水和物および5−CNAC二ナトリウム塩一エタノール溶媒和物に関するものである。
【0017】
驚くべきことに、カルシトニンおよび経口デリバリー剤を含むカルシトニン処方物、好ましくは固体カルシトニン処方物を食事に短時間先行して経口投与すると、食事と共に投与した場合と比べ、カルシトニンの経口吸収および全身的生物学的利用能が大きく増加することが見出された。
【0018】
食事に先行して投与する場合の短時間とは、2時間以下、有利には約5分〜1時間、好ましくは5〜30分、最も好ましくは約5〜15分、および約2〜5分程度の僅かな期間または食事直前である。
【0019】
食事は、特に標準的食事、すなわち朝食、昼食または夕食を示す。
【0020】
カルシトニンの経口吸収および全身的生物学的利用の増加は、食事に先行する様々な時点および食事時における薬剤投与後に達したカルシトニンの血漿濃度を測定することにより決定される。典型的には、血漿濃度を、薬剤投与後に予め定められた期間をおいて測定することにより、最大血漿濃度(Cmax)および曲線下領域(AUC)により決定される総吸収量を測定する。
【0021】
本発明の実例として、経口吸収の約5倍増加(CmaxおよびAUC)は、1mgのsCTおよび5−CNACの二ナトリウム塩(200mgの5−CNACに相当する量で)を含む錠剤処方物を食事時ではなく、食事に先行すること5〜60分の範囲で投与する場合に、上記処方物をヒト対象に投与することにより達成される。
【0022】
したがって、本発明の特定局面は、カルシトニンおよび経口デリバリー剤を含む処方物からのヒトにおけるカルシトニンの経口吸収および全身的生物学的利用能を高め、最大にする方法であって、食物消費に短期間先行して、食事の約5分〜2時間前の範囲、そして好ましくは上記で示した要領で上記処方物を、それを必要としているヒト宿主に投与することによる方法である。
【0023】
生物学的利用能の増加について考慮すると、本発明の別の局面は、必要とするヒト宿主に経口投与されるカルシトニンおよび経口デリバリー剤を含む処方物におけるカルシトニンの量の低減化方法であって、食物消費に短期間先行して、好ましくは食事の約5分〜2時間前および好ましくはさらに本明細書で示した要領で上記処方物を投与することを含む方法を包含する。
【0024】
処方物におけるカルシトニンの量に対する経口デリバリー剤の量は、デリバリー剤の性質により異なり、一般的には約10〜約1000:1の範囲、好ましくは約10〜約500:1、最も好ましくは約10〜約250:1の範囲である。たとえば、sCTの量に対する5−CNAC二ナトリウム塩の量(5−CNAC遊離酸の相当量として表される)の重量比は、5−CNACの二ナトリウム塩を経口デリバリー剤として使用する場合、約10〜約250:1、好ましくは約25〜約100:1の範囲である。
【0025】
本発明の特定局面は、
a)5−CNAC、SNADまたはSNACの二ナトリウム塩、または上記二ナトリウム塩の水和物または溶媒和物である経口デリバリー剤、および
b)約0.1〜2.5mgのカルシトニン
を含み、遊離酸の相当量として表された経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の比が、重量にして約10〜約250:1の範囲である
経口医薬組成物に関するものである。
【0026】
好ましいのは、5−CNAC二ナトリウム塩またはその水和物および約0.1〜2.5mgのsCTを含み、経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の上記重量比が約10〜約200:1である、経口固体医薬組成物である。
【0027】
さらに好ましいのは、上記重量比が約25〜約100:1である経口固体医薬組成物である。
【0028】
本発明の特定局面は、
a)カルシトニンおよびN−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸またはN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸の二ナトリウム塩、または上記二ナトリウム塩の水和物または溶媒和物である経口デリバリー剤を含む経口医薬組成物、および
b)経口医薬組成物が食物消費に先行して摂取され得るものと規定した内容の書面である使用説明書
を含むキットに関するものである。
【0029】
好ましいのは、上記内容の書面である使用説明書の次に、約0.1〜2.5mgのカルシトニンを含み、遊離酸の相当量として表された経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の重量比が、約10〜約250:1の範囲であるキットである。さらに好ましいのは、5−CNAC二ナトリウム塩またはその水和物および約0.1〜2.5mgのsCTを含み、経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の上記重量比が、約10〜約200:1の範囲であるキットである。
【0030】
経口投与に使用される固体医薬組成物は、カプセル剤(ソフトゲルカプセル剤を含む)、錠剤、カプセル型錠剤または他の固体経口用量形態であり得、それらは全て当業界でよく知られた方法により製造され得る。
【0031】
好ましくは、固体医薬組成物はまた、クロスポビドンおよび/またはポビドン、有利にはクロスポビドンを含有する。
【0032】
クロスポビドンは、いかなるクロスポビドンでもあり得る。クロスポビドンは、1000000またはそれ以上の分子量を有する、1−エテニル−2−ピロリジノンとも呼ばれる、N−ビニル−2−ピロリドンの合成架橋ホモポリマーである。市販されているクロスポビドンには、ポリプラスドンXL、ポリプラスドンXL−10、ポリプラスドンINF−10(ISPから入手可能)、コリドンCL(BASFコーポレーションから入手可能)がある。好ましいクロスポビドンは、ポリプラスドンXLである。
【0033】
ポビドンは、一般的に2500〜3000000の分子量を有する線状1−ビニル−2−ピロリジノン基から成る合成ポリマーである。市販されているポビドンには、コリドンK−30、コリドンK−90F(BASFコーポレーションから入手可能)およびプラスドンK−30およびプラスドンK−29/32(ISPから入手可能)がある。
【0034】
クロスポビドンおよびポビドンは市販されている。別法として、それらは公知方法により合成され得る。
【0035】
クロスポビドン、ポビドンまたはその組合せは、一般的に医薬組成物全体の総重量に対し0.5〜50重量%、好ましくは医薬組成物の総重量に対し2〜25%、さらに好ましくは5〜20%の量で組成物中に存在する。
【0036】
本発明の特定局面は、5−CNAC二ナトリウム塩、カルシトニンおよびクロスポビドンを含み、遊離酸としての5−CNAC対sCTの重量比が約10〜約200:1の範囲である、ヒトへのsCTの経口投与用医薬組成物である。
【0037】
別法として、固体医薬組成物は、クロスカルメロースナトリウム(AC−DI−SOL(登録商標))および/またはコロイド状二酸化珪素(CAB−O−SIL(登録商標))を含み得る。
【0038】
また、カルシトニンおよび経口デリバリー剤は、たとえばsCTおよび5−CNACの二ナトリウム塩の共凍結乾燥混合物形態で使用され得る。
【0039】
さらに組成物は、限定されるわけではないが、pH調節剤、保存剤、調味料、味覚遮蔽剤、香料、湿潤剤、等張化剤、着色料、界面活性剤、可塑剤、滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、流動促進剤、圧縮助剤、可溶化剤、賦形剤、希釈剤、たとえば微晶性セルロース、たとえばFMCコーポレーションにより供給されるアビセルPH102、またはそれらの組合せを含む、常用量の添加物を含み得る。他の添加物には、リン酸緩衝塩類、クエン酸、グリコールおよび他の分散剤が含まれ得る。
【0040】
組成物は、典型的には1日1回、たとえば朝食前に経口投与され、治療有効量のカルシトニンを全身に送達する。
【0041】
本発明の固体医薬組成物は、慣用的方法により、たとえば一活性成分または複数活性成分、デリバリー剤および他の成分から成る混合物を混ぜ合わせ、そしてカプセルに充填するか、またはカプセルに充填する代わりに、錠剤を得るため圧縮成型することにより製造され得る。さらに、固体分散液を公知方法で形成させた後、さらなる加工処理により錠剤またはカプセル剤が形成され得る。
【0042】
典型的医薬処方物については、実施例に記載されている。実施例では、5−CNACは、N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸を示す。その二ナトリウム塩が実施例における一成分であるとき、二ナトリウム塩一水和物の相当量が実際には使用される。実施例で与えられている量は、無水二ナトリウム塩の量である。
【実施例】
【0043】
実施例1
予め40メッシュのスクリーンによる篩にかけておいた0.52gのsCT、予め35メッシュのスクリーンによる篩にかけておいた120gの5−CNAC二ナトリウム塩、および20gのポリプラスドンXL(クロスポビドン、NF)を、500mLの広口瓶中で合わせ、46RPMの速度で2分間タービュラ(Turbula)ミキサーを用いて混合する。予め35メッシュのスクリーンによる篩にかけておいた追加の125.4gの5−CNAC二ナトリウム塩、および32.5gのアビセルPH102を広口瓶に加え、8分間46RPMの速度で混合する。さらに32.5gのアビセルを広口瓶に加え、46RPMの速度で5分間混合する。4.0gのステアリン酸マグネシウムを、35メッシュのスクリーンを用いて、広口瓶中へ篩分けし、46RPMの速度で1分間混ぜ合わせる。マネスティB3B錠剤圧縮機を用いて最終混合物を錠剤に圧縮する。錠剤重量は、約400mgである。
【0044】
実施例2
5−CNACの二ナトリウム塩14gおよびCAB−O−SIL0.56gの混合物を、40メッシュスクリーンによる篩にかける。0.3gの5−CNAC二ナトリウム/CAB−O−SIL混合物、予め40メッシュスクリーンによる篩にかけておいた0.028gのsCT、および予め30メッシュスクリーンによる篩にかけておいた0.56gのAC−DI−SOLを、1クォートのV型ブレンダーシェルで合わせる。混合物を2分間混ぜ合わせる。約14.3gの5−CNAC二ナトリウム/CAB−O−SIL混合物を螺旋(幾何学)的にV型ブレンダーシェルへ加え、各添加(約0.8、1.7、3.2および8.6gを連続的に加える)後2分間混合する。予め40メッシュスクリーンによる篩にかけておいた、12.43gのアビセルPH102および0.42gのステアリン酸マグネシウムを、V型ブレンダーシェルに加え、5分間混合する。次いで、最終混合物を40メッシュスクリーンによる篩にかけ、たとえばマネスティB3B圧縮機を用いて、錠剤に圧縮する。錠剤重量は約400mgである。
【0045】
実施例3
予め40メッシュのスクリーンによる篩にかけておいた0.1224gのsCT、予め35メッシュのスクリーンによる篩にかけておいた30gの5−CNAC二ナトリウム塩、および4gのAC−DI−SOLを、500mLのパイレックス(Pyrex、登録商標)広口瓶中で合わせ、46RPMの速度で2分間タービュラ(Turbula)ミキサーを用いて混合する。予め35メッシュのスクリーンによる篩にかけておいた追加の31.35gの5−CNAC二ナトリウム塩、および15gのアビセルPH102を広口瓶に加え、8分間46RPMの速度で混合する。2gのCAB−O−SILおよび16.15gのアビセルを合わせ、18メッシュスクリーンによる篩にかける。CAB−O−SIL/アビセル混合物を、広口瓶に加え、46RPMの速度で5分間混合する。1.5gのステアリン酸マグネシウムを、35メッシュのスクリーンを用いて、広口瓶中へ篩分けし、46RPMの速度で2分間混ぜ合わせる。マネスティB3B錠剤圧縮機を用いて最終混合物を錠剤に圧縮する。錠剤重量は、約400mgである。
【0046】
実施例4
18kgの注射用水および0.16kgの水酸化ナトリウム、NFを容器に加え、溶解するまで混合する。0.800kgの5−CNACの遊離酸を容器に加え、最低でも10分間400〜600RPMで攪拌する。10N水酸化ナトリウムを用いて容器のpHを約8.5に調節する。10N水酸化ナトリウムの各添加後、容器を最低でも10分間攪拌する。40gの水酸化ナトリウム、NFを100mLの注射用水に加えることにより、10N水酸化ナトリウムを調製する。注射用水を加えることにより、混合溶液の最終重量を20.320kgに調節する(密度1.016)。容器を最低でも30分間400〜600RPMで攪拌する。蠕動ポンプ、シリコーン管およびデュラポア(DuraPore)0.45μmMPHLメンブランカプセルフィルターを用いて、混合溶液を別の容器へ濾過注入する。13.8gのリン酸一ナトリウム一水和物、USPを900gの注射用水に加え、1.0Nリン酸溶液を用いてpH4.0に調節することにより、リン酸緩衝液を調製する。0.96gのリン酸、NFを25mLの注射用水に加えることにより、リン酸溶液を調製する。注射用水を用いて、リン酸緩衝液の最終重量を1007g(密度1.007)に調節し、5分間攪拌する。
【0047】
1.6gのsCTを660gのリン酸緩衝液に加えることにより、緩衝sCT溶液を調製する。リン酸緩衝液を用いて溶液の最終重量を806.4gの最終重量(密度1.008)に調節し、250RPMまたはそれ未満の速度で最低でも5分間混合する。
【0048】
最低でも5分間250RPMまたはそれ未満の速度で一定混合しながら、0.800kgの緩衝sCT溶液を20kgの5−CNAC溶液に滴下する。約0.75LのsCT/5−CNAC溶液で、最終的な溶液の深さが0.8〜0.9cmとなるようにステンレス鋼凍結乾燥トレー(30.5×30.5cm)を満たす。約29トレーを21.75LのsCT/5−CNAC溶液で満たす。トレーをエドワーズ凍結乾燥機に置き、以下の手順にしたがって凍結乾燥する。
【0049】
1.トレーを載せ、リーズ(Reeze)乾燥機を密閉すると、1分当たり1℃の割合で棚は冷却される。
【0050】
2.一旦棚温度が−45℃に達すると、棚温度を最低でも120分間−45℃に維持する。
3.冷却器を−50℃またはそれ未満に冷却する。
【0051】
4.チャンバーを空にし、300ミクロンの真空度を維持すると、棚温度は1分当たり1℃の割合で−30℃に上昇する。
5.棚温度を180分間−30℃に維持する。
【0052】
6.チャンバー中の圧力を200ミクロンまで低下させ、200ミクロンの真空度を維持すると、棚温度は1分当たり1℃の割合で−20℃に上昇する。
【0053】
7.棚温度を200分間−20℃に維持する。
8.棚温度を1分当たり1℃の割合で−10℃に上昇させる。
【0054】
9.棚温度を360分間−10℃に維持する。
10.棚温度を1分当たり1℃の割合で0℃に上昇させる。
【0055】
11.棚温度を720分間0℃に維持する。
12.チャンバー中の圧力を100ミクロンまで低下させ、100ミクロンの真空度を維持すると、棚温度は1分当たり1℃の割合で+10℃に上昇する。
【0056】
13.棚温度を540分間+10℃に維持する。
14.棚温度を1分当たり1℃の割合で+25℃に上昇させる。
【0057】
15.棚温度を440分間+25℃に維持する。
16.真空状態を解除し、トレーを降ろす。
【0058】
共凍結乾燥sCT/5−CNACをトレーから取出し、ポリエチレン・ホイル袋中で冷凍貯蔵する。約400mgの共凍結乾燥材料を投与用にカプセル(Mサイズ)に満たす。
【0059】
実施例5
以下の錠剤処方物を実施例1と同様にして製造する。
【表1】


*使用材料は、200mgの5−CNAC遊離酸と同等の量である、228mgの無水5−CNAC二ナトリウム塩に相当する量の5−CNAC二ナトリウム塩一水和物である。
【0060】
実施例6
実施例1と同様にして、0.5または1mgのsCTおよび25、50、100、200および400mgの5−CNAC遊離酸に相当する量の5−CNAC二ナトリウム塩を含む錠剤を製造する。
【0061】
実施例7
食事に関して様々な時間間隔をおいた場合の5−CNAC二ナトリウム塩と組み合わせたsCTの錠剤処方物の投与効果を、ヒト対象において測定する。
【0062】
使用する錠剤処方物は、1mgのsCTおよび200mgの5−CNACに相当する量の5−CNAC二ナトリウム塩を含む、実施例5による処方物である。
【0063】
この試験は、7期ランダム化、オープンラベル均衡ラテン方格クロスオーバーデザインを採用する。18歳から65歳の間の健康な成人対象21人(男性7人、閉経前女性7人および閉経後女性7人)が含まれる。閉経前および閉経後女性については、身長(±5cm)および体重(±8%)をそろえている。
【0064】
この試験は、スクリーニング期間(投薬前−21〜−2日)、基準期間(投薬前24時間、または−1日)、および7日間一日一投与から成る処置期間により構成される。生物分析試験用に血液試料を抜き取ることができるように、対象にはスクリーニング評価を受ける前少なくとも8時間は絶食するように指示する。基準期間で、対象は、投薬の少なくとも12時間前に試験センターへ入場し、試験完了まで(試験薬剤の最終投薬の翌日、または試験8日目)そこに居を定めることになる。各処置間における投薬間隔は、約24時間である。処置割当てスケジュールにしたがって対象を無作為化し、絶食または食物摂取条件下で単一経口用量を与える。食物摂取条件下では、固定された投薬時間に対して食事時間を変えることにより、薬剤の薬物動態に対する食事および投薬間隔を変えた場合の効果を評価する。
【0065】
処置期間中、特定の処置条件が投薬前の食事を必要とする場合以外、対象には投薬前に一晩最低でも10時間絶食させる。7日間続けて午前9時から10時の間に投薬を行う。食事時間については、7日間の処置期間全体を通して一定の投薬間隔の前後で変えることにより、食物摂取に対する最適投薬時間を測定する。変動する食事および投薬間隔下における薬剤の薬物動態を評価するための対照標準条件としての役割を果たす、絶食条件下での試験薬剤の投与、および食物相互作用の程度を測定するための、食事に伴う試験薬剤投与が含まれる。
【0066】
対象が最初に投薬される順序は、試験期間全体を通じて一貫させるため、期間1で最初に投薬された対象は、常に全処置条件を通して最初に投薬される対象のままである。絶食が特定の処置条件である場合以外、対象には、投薬に対して日毎に異なる時点で標準化FDA(または均等内容の)高脂肪の朝食を与える。処置の指定が絶食することである対象は、投薬後少なくとも4時間絶食を続けた後、特定の時点で標準的食事が与えられ得る。薬物動態評価用サンプリングを、投薬後8時間まで予定された間隔で実施する。薬物動態サンプリング時間が食事の開始と一致する場合、サンプリングを先に行う。試験薬剤の最終投薬の翌日(8日目)、安全性評価が全て完了した後、対象は試験センターから放免される。
【0067】
薬物動態血液サンプリングを、以下の時点で毎日実施する(特記しない場合、サンプリング時間が食事の開始と一致するとき、サンプリングを先に行う):投薬前(各処置時に5mL血液、リチウム−ヘパリン管で血漿を採取する)、次いで投薬後5、10、15、30、45、60、90、120、180および240分(3mL血液、リチウム−ヘパリン管で血漿を得る)。処置条件B、C、DおよびEについては(下表参照)、食事開始の5分後追加の一試料(3mL)を得る。処置条件Eについて、10分試料はまた食後5分の試料を表す。処置Bについてのみ、追加の一試料を食事開始の15分後に採取する(すなわち、投薬後75分)。
【0068】
血液試料は全て、直接静脈穿刺または前腕静脈に挿入された内在形カニューレにより採取される。sCT試料は、リチウム−ヘパリン管で集められる。
【0069】
血液の各管を抜き取った直後、試料とゴム栓の長期間接触を回避しながら、それを数回静かに逆にすることにより、管内容物、たとえば抗凝固剤の混合を確実なものにする。遠心分離まで氷で囲んだ試験管立てに管を垂直に立てておく。15分以内に、試料を3℃〜5℃、約3000gで10分間遠心分離にかける。全試料を可能な限り迅速に(ただし、静脈穿刺時点から60分までに)凍らせる。分析まで管を−70℃またはそれ未満で冷凍状態に保つ。
【0070】
遠心分離直後、少なくとも1.5mLの血漿を、ドライアイス上に置いたポリプロピレンねじぶた管に移す(2.5mLの血漿を移し取るとき、各処置日における投薬前を除く)。
【0071】
化学発光に基くイムノアッセイ法を用いて、sCT濃度を測定する。LOQは2.5pg/mLである。
【0072】
各処置群から得られた結果を各時点で平均化し、プロットする。最大平均血漿sCT濃度(Cmax)およびAUCを測定したものを、表1に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
結果は、食事と共に投与(F群)すると、sCT血漿レベルはごく僅かしか得られないことを示す。最大血漿レベルは、sCT/5−CNAC錠剤処方物が食事の15または30分前に投与されたCおよびD群で得られる。
【0075】
実施例8
1mgのsCTおよび遊離酸として25、50、100、200または400mgの5−CNACに相当する様々な量の5CNAC二ナトリウム塩が投与されたヒト対象におけるsCTの経口生物学的利用能を測定する。
【0076】
対象は以下の通り毎日投薬される:
【表3】


*対応する量の5−CNAC二ナトリウム塩一水和物を、錠剤処方物における成分として使用する。
【0077】
錠剤を実施例1および6にしたがって製造する。錠剤処方物は、以下の通りである:
【表4】


*使用材料は、25、50、100および200mgの5−CNAC遊離酸とそれぞれ同等である量である、無水5−CNAC二ナトリウム塩の示された量に相当する量の5−CNAC二ナトリウム塩一水和物である。
【0078】
この試験は、2相7期ランダム化オープン−ラベルクロスオーバーデザインを採用する。年齢が18歳から50歳の間の健康な成人対象合計15人が参加する。
【0079】
この試験は、スクリーニング期間(投薬前−2〜−21日)、基準期間(投薬前24時間、または−1日)、および7日間一日一投与から成る処置期間により構成される。生物分析試験用に血液試料を抜き取ることができるように、対象にはスクリーニング評価を受ける前少なくとも8時間は絶食するように指示する。基準期間で、対象は、投薬の少なくとも12時間前に試験センターへ入場し、試験が完了する、試験薬剤の最終投薬の翌日(8日目)までそこに居を定めることになる。各処置間における投薬間隔は、約24時間である。
【0080】
各処置期間中、対象には投薬前に一晩最低でも10時間および投薬後5時間絶食させる。7日間続けて午前8時から9時の間に投薬を行う。対象が最初に投薬される順序は、試験期間全体を通じて一貫させるため、期間1で最初に投薬された対象は、常に全処置条件を通して最初に投薬される対象のままである。置換対象は、同じ相当数が割当てられ、同じ順序で投薬される。
【0081】
血液サンプリングおよびsCT濃度測定は、実施例7と同様にして実施される。
【0082】
各処置群から得られた結果を各時点で平均化し、プロットする。最大平均血漿sCT濃度(Cmax)およびAUCを測定したものを、表2に示す。
【0083】
表2.sCT生物学的利用能に対する5−CNAC割合の効果
【表5】


*5−CNAC遊離酸対sCTの重量割合;対応する量の5−CNAC二ナトリウム塩一水和物を錠剤処方物において実際には使用する。
【0084】
データは、5−CNAC対sCTの割合が25〜400:1の範囲であるsCTおよび5−CNAC二ナトリウム塩を含む錠剤処方物が、比較に値するsCT血漿レベルをもたらすことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシトニンを1種またはそれ以上の経口デリバリー剤と組み合わせて含む医薬組成物を食物の消費前にヒト宿主に経口投与することを含む投与方法。
【請求項2】
経口投与が、食事の約5〜30分前の範囲で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記医薬組成物が、
a)N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸またはN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸の二ナトリウム塩、または上記二ナトリウム塩の水和物または溶媒和物である経口デリバリー剤、および
b)約0.1〜2.5mgのカルシトニン
を含み、遊離酸の相当量として表された経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の比が、重量にして約10〜約250:1の範囲である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
カルシトニンの作用に応答する疾患を処置するための医薬の製造における医薬組成物の使用であって、上記組成物が1種またはそれ以上の経口デリバリー剤と組み合わせてカルシトニンを含むものである、食物消費の前にヒト宿主に経口投与される上記組成物の使用。
【請求項5】
経口投与が食事の約5〜30分前の範囲で行なわれる、請求項4記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
医薬組成物が、
a)N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸またはN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸の二ナトリウム塩、または上記二ナトリウム塩の水和物または溶媒和物である経口デリバリー剤、および
b)約0.1〜2.5mgのカルシトニン
を含み、遊離酸の相当量として表された経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の比が、重量にして約10〜約250:1の範囲である、請求項4または5記載の医薬組成物の使用。
【請求項7】
a)N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸またはN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸の二ナトリウム塩、または上記二ナトリウム塩の水和物または溶媒和物である経口デリバリー剤、および
b)約0.1〜2.5mgのカルシトニン
を含み、遊離酸の相当量として表された経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の比が、重量にして約10〜約250:1の範囲である、
経口医薬組成物。
【請求項8】
N−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸二ナトリウム塩またはその水和物および約0.1〜2.5mgのサケカルシトニンを含み、請求項7に記載されている、経口デリバリー剤の量対カルシトニンの量の比が重量にして約10〜約200:1の範囲である、請求項7記載の経口固体医薬組成物。
【請求項9】
重量比が約25〜約100:1である、請求項7記載の経口固体医薬組成物。
【請求項10】
またクロスポビドンおよびポビドンのいずれか一方または両方を含む、請求項7、8または9記載の経口固体医薬組成物。
【請求項11】
a)カルシトニンおよびN−(5−クロロサリチロイル)−8−アミノカプリル酸、N−(10−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)デカン酸またはN−(8−[2−ヒドロキシベンゾイル]アミノ)カプリル酸の二ナトリウム塩、または上記二ナトリウム塩の水和物または溶媒和物である経口デリバリー剤を含む経口医薬組成物、および
b)経口医薬組成物が食物消費に先行して摂取され得るものと規定した内容の書面である使用説明書
を含むキット。
【請求項12】
カルシトニンがサケカルシトニンであって、約0.1〜2.5mgのサケカルシトニンであり、遊離酸の相当量として表された経口デリバリー剤の量対サケカルシトニンの量の比が、重量にして約10〜約250:1の範囲である、請求項11記載のキット。

【公開番号】特開2011−26348(P2011−26348A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249363(P2010−249363)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2004−525407(P2004−525407)の分割
【原出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】