説明

カルジオリピン分子および合成方法

本発明は、様々な鎖長を有し、不飽和を有するか、または有さない、種々の脂肪酸および/またはアルキル鎖を伴ったカルジオリピン、特に短鎖カルジオリピンの新規な合成経路を提供する。本方法は、1,2−O−sn−ジアシル/1,2−O−sn−ジアルキルグリセロールまたは2−<I>O</I>−保護されたグリセロールを、ホスホラミダイト試薬またはリン酸トリエステルと反応させて保護されたカルジオリピンを生成することを含み、当該保護されたカルジオリピンは脱保護されて短鎖カルジオリピンに調製される。反応スキームはカルジオリピンの新規な変異体を産生するために用いることができる。本方法によって調製されたカルジオリピンはリポソームに取り込まれうる。リポソームは疎水性または親水性薬剤などの活性剤も含んでいてもよい。かかるリポソームは疾患を治療するために、あるいは診断および/または分析アッセイに用いられうる。リポソームはさらに特定の細胞タイプまたは特異的な組織を標的とするためのリガンドを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、カルジオリピン類似体/変異体、並びにそれらを含有する組成物を調製するための新規な合成方法に関する。本発明はまた活性剤もしくは薬剤を含有するリポソーム製剤または複合体またはエマルジョン、並びにヒトおよび動物の疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
リポソーム製剤は、水溶液における疎水性薬剤の溶解性を高める能力を有する。それらは多くの場合、薬剤治療に関連した副作用を減らし、活性剤の新規な製剤を開発するための柔軟なツールを提供する。
【0003】
リポソームは通常、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、およびホスファチジルイノシトールなどの天然のリン脂質から調製される。ホスファチジルグリセロールおよびカルジオリピンなどの陰イオン性リン脂質を加え、コロイド安定化を提供する正味の負表面電荷を産生させてもよい。これらの成分は多くの場合天然源から精製されるが、時には化学的に合成されてもよい。
【0004】
リポソームの性質および表面電荷の密度は、安定性、動態、生体分布、標的細胞との相互作用、および標的細胞による取り込みに影響する。またリポソーム表面電荷はリポソームの凝集しやすさ(これはリポソームが標的細胞に作用するのを困難にし、また標的細胞による取り込みに影響を及ぼす)にも影響を与える。この点において、中性表面電荷を伴ったリポソームは最も凝集しやすいが、全身投与後の細網内皮系(RES)の細胞によってより排除されにくい。それに対し、負帯電したリポソームはより少ない凝集およびより高い安定性を示すが、インビボの細胞取り込みが非特異的である。よって、少量の負帯電した脂質が凝集依存的な取り込みメカニズムに対し中性リポソームを安定化しうることが提案されてきた(例えば、Drummond et al.,Pharm.Rev., 51, 691-743(1999)参照)。
【0005】
カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロールとしても知られている)は、心臓のミトコンドリアおよび骨格筋などを含む、高い代謝活性と関連する組織の細胞膜から一般的に精製され、複合陰イオン性リン脂質のクラスを構成する。したがって、カルジオリピンの負表面電荷は、上記したように、凝集依存的な取り込みに対しリポソームを安定化する。動物組織およびミトコンドリアにおいて、カルジオリピンはリノール酸(18:2)を90%まで含有する。酵母カルジオリピンはオレイン(18:1)およびパルミトレイン(16:1)脂肪酸をより多く有する点で異なっており、一方で細菌の脂質は14〜18炭素を伴った飽和モノエン脂肪酸を含有する。しかしながら、短鎖脂肪酸を有するカルジオリピンはこれまで知られていなかった。カルジオリピン脂肪酸鎖(すなわち、飽和または不飽和)の長さおよび性質のリポソーム凝集に対する潜在的な作用はまだ明らかにされていない。
【0006】
短脂肪酸鎖を含むカルジオリピン(「短鎖カルジオリピン」)を合成するための方法はいまだ記載されていない。一般的に、カルジオリピンを合成する公知の方法は、主に2つのグループに分けられる:(a)リン酸化剤を用いて、2−保護されたグリセロールの1級ヒドロキシル基を1,2−ジアシル−sn−グリセロールと結合させるもの、および(b)2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフォニルクロリド(TPS)またはピリジンの存在下で、2−保護されたグリセロールの両方の1級ヒドロキシル基をホスファチジン酸で縮合させるもの(例えば、Ramirez et al., Synthesis, 11, 769-770 (1976), Duralski et al., Tetrahedron Lett. 39, 1607-1610 (1998), Sanders and Schwarz, J. Am. Chem. Soc. 88, 3844-3847 (1966), Mishina et al., Bioorg. Khim. 11, 992-994 (1985), およびStepanov et al., Zh. Org., Khim. 20, 985-988 (1984)参照)。またカルジオリピンは、1,3−ジヨードプロパノールベンジルエーテルまたは1,3−ジヨードプロパノールt−ブチルエーテルを伴ったジアシルグリセロリン酸ベンジルエステルの銀塩間の反応を介して産生されてきた(例えば、De Haas et al., Biochim. Biophys. Acta, 116, 114-124 (1966)およびInoue et al., Chem. Pharm. Bull. 11, 1150-1156 (1963)参照)。該スキームは少量のカルジオリピンの調製には適していたが、これらは多くの工程を含み、中間体を注意深く精製することを要求し、非常に感光性が高い銀塩誘導体および不安定なヨード中間体を使用するため、大量のルーチン調製には向いていなかった。
【0007】
ホスフェートトリエステルおよびホスホラミダイトエステルはホスフェート結合を形成する核酸合成において広く用いられており、リン脂質合成においてはあまり用いられていない(例えば、Browne et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans, 1, 653-657 (2000)参照)。この点において、Browneら(前述)は、リン脂質類似体、特にホスホリルコリン類似体の、ホスホラミダイト方法論を用いた調製を記載している。ホスファチジルイノシトールPtdIns(4,5)PおよびPtdIns(3,4,5)P並びにそれらの誘導体が、N,N−ジイソプロピルホスホラミダイト(例えば、Watanabe et al., Tetrahedron LETT. 35, 123-124 (1994)参照)、ジフルオレニルホスホラミダイト(例えば、Watanabe et al., Tetrahedron LETT. 38, 7407-7410 (1997)参照)、およびジアシルグリセロールを(ベンジルオキシ)(N,N−ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィンと反応させることによって生成される試薬(例えば、Chen et al., J. Org. Chem., 61, 6305-6312 (1996)及びPrestwich et al., Acc. Chem. Res., 29, 503-513 (1996)参照)を含む、様々なホスホラミダイト試薬を用いて調製されてきた。加えて、PtdIns(4,5)PおよびPtdIns(3,4,5)Pのリン酸トリエステル類似体は、ホスホラミダイト試薬2−シアノ−エチル N,N,N,N−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(例えば、Gu et al., J. Org. Chem, 61, 8642-8647 (1996)参照)を使用して調製されてきた。さらに、Murakamiら, J. Org. Chem., 64, 648-651 (1999)は、メチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトをリン酸化試薬として使用する、2,5−ジベンジル−D−マンニトールからのホスファチジルグリセロール合成を記載している。しかしながら、カルジオリピン、特に様々な脂肪酸鎖長を有するカルジオリピン類のようなリン脂質の調製における、ホスフェートトリエステルおよびホスホラミダイトエステルの使用は十分には確立されていない。
【0008】
様々な脂肪酸鎖の長さを有する、大量の飽和および不飽和カルジオリピン類(特に「短鎖カルジオリピン」)を調製するために用いることができる新規な合成方法が必要とされている。かかる方法は、より幅広い種々のカルジオリピン類のアベイラビリティを上げ、現在使用可能なものよりもより確定した組成物を有する、活性剤を包含する新規なリポオソーム製剤の開発に利用される脂質を多様化する。
【0009】
本発明はかかる組成物および方法を提供する。本発明のこれらの利点およびその他の利点、そして付加的な発明の特性は、以下に提供される発明の詳細から明らかとなるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨
本発明は、様々な鎖長を有し、飽和または不飽和である、種々の脂肪酸および/またはアルキル鎖を有するカルジオリピンを調製するための新規な合成方法を提供する。本方法は、(a)光学的に純粋な1,2−O−ジアシル−sn−グリセロールまたは1,2−O−ジアルキル−sn−グリセロールを、1つ以上のホスホラミダイト試薬または1つ以上のリン酸トリエステルと反応させること、(b)(a)の生成物を2−保護されたグリセロールと結合させ、そこで保護されたカルジオリピンが生成されること、および(c)保護されたカルジオリピンを脱保護してカルジオリピンを調製することを含む。本発明はまた様々な脂肪酸鎖長を有するカルジオリピンを調製する方法であって、(a)2−O−保護されたグリセロールを1つ以上のホスホラミダイト試薬と反応させてリン酸化剤を生成し、(b)リン酸化剤を光学的に純粋な1,2−O−ジアシル−sn−グリセロールまたは1,2−O−ジアルキル−sn−グリセロールと反応させて保護されたカルジオリピンを生成し、および(c)保護されたカルジオリピンを脱保護してカルジオリピンを調製することを含む。
【0011】
本発明の方法によって調製されるカルジオリピンは、リポソームに取り込まれることができ、それらは、疎水性若しくは親水性薬剤のような活性剤、アンチセンスヌクレオチドあるいは診断薬を含むこともできる。かかるリポソームは疾患を治療するために、あるいは、診断および/または分析アッセイにおいて用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の詳細な説明
本発明は、一般式I、IIおよびIIIを有するカルジオリピン変異体および類似体、並びにかかる変異体および類似体を含有する組成物を合成する方法を記載する。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
式IIIにおいて、YおよびYは同一または異なって−O−C(O)−、−O−、−S−、−NH−C(O)−などである。式I、IIおよびIIIにおいて、RおよびRは同一または異なって、H、飽和および/または不飽和アルキル基であり、好ましくはC〜C34飽和および/または不飽和アルキル基である。式IIIにおいて、Rは(CHであり、n=0〜15である。式IIIにおいて、Rは、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ぺプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、多糖類など)、複素環化合物、ヌクレオシド、ポリヌクレオチドなどである。式IIIにおいて、Rはリンカーであり、かかるリンカーは必要性または用途によって分子に加えられても(あるいは加えられなくても)よい。しかしながら、加えられる場合、Rは、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルコキシ、ポリアルキルオキシ(約1〜500のアルキルオキシマーを含有する(および少なくとも約10アルキルオキシmer、少なくとも約50アルキルオキシmerまたは少なくとも約100アルキルオキシmer、少なくとも約200アルキルオキシmerまたは少なくとも約300アルキルオキシmerまたは少なくとも約400アルキルオキシmerを有していてもよい)PEG化された(pegylated)エーテル、置換されたポリアルキルオキシなど)、ペプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、グルコース、マンノース、ガラクトース、多糖類などの炭水化物を含んでいてもよい。式I、IIおよびIIIにおいて、Xは水素または非毒性陽イオンであり、好ましくは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムイオンなどである。
【0017】
用語「アルキル」は飽和もしくは不飽和直鎖および分岐鎖炭化水素部分を包含する。用語「置換されたアルキル」は、ヒドロキシ、(低級アルキル基の)アルコキシ、(低級アルキル基の)メルカプト、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アミド、イミノ、チオ、−C(O)H、アシル、オキシアシル、カルボキシルなどから選ばれる1つ以上の置換基をさらに持つアルキル基を含む。
【0018】
最も好ましい実施態様では、式IIIにおけるYおよびYは、−O−C(O)−または−O−である。Rは最も好ましくはCHである。また、式I、IIおよびIIIにおいて、RおよびRは同一であり、C〜C13飽和および/または不飽和アルキル基、より好ましくは4〜14炭素原子(たとえば6〜12炭素原子)のものである。Xはもっとも好ましくは水素またはアンモニウムイオンである。リンカー(R)がない場合、一般式のカルジオリピンが提供される(図1)。
【0019】
本発明は、式I、IIもしくはIIIのカルジオリピンまたはその類似体を調製する方法を提供し、かかる方法は、式VIIIのアルコールと、1つ以上のホスホラミド(phosphoramide)試薬および2−O−保護されたグリセロールまたは2−O−置換されたグリセロールVIとを、酸触媒の存在下で反応させることを含む。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
式VIにおけるYは、ヒドロキシル保護基(好ましくはアルキル基など)またはシリル保護基である。式VIIIにおいて、R、R、R、YおよびYは、式I、IIまたはIIIに関して前述したものであってもよい。本発明の方法によれば、酸触媒は反応を促進できるいかなる適した触媒であってもよい。かかる触媒の例としては、4,5−ジクロロイミダゾール、1H−テトラゾール、5−(4−ニトロフェニル)−1H−テトラゾール、5−(3,5−ジニトロフェニル)−1H−テトラゾール、N−メチルイミダゾリウムトリフレート、およびN−メチルイミダゾリウム過塩素酸塩、4,5−ジシアノイミダゾール、5−エチルチオ−1H−テトラゾール、および5−メチルチオ−1H−テトラゾールが挙げられる。好ましい触媒は、4,5−ジクロロイミダゾールまたは1H−テトラゾールである。本発明の方法によれば、結合ホスホラミダイトは式IVまたはVを有していてもよい:
【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
別の実施態様では、本発明は式I、IIもしくはIIIのカルジオリピンまたはその類似体を調製する方法を提供し、かかる方法は、2−O−保護されたグリセロールを1つ以上のリン酸トリエステルと、ピリジウムトリブロミドの存在下で反応させることを含む。好ましいリン酸トリエステルは、式VIIIのアルコールを一般式VIIのホスホラミダイトと反応させることにより生成されうる。
【0026】
【化8】

【0027】
式IV、VまたはVIIにおけるXは、リン酸保護基、好ましくはベンジル基または2−シアノエチルもしくはシリル基である。適した保護基のその他の例としては、エチル、シクロヘキシル、t−ブチルを含むアルキルホスフェート;2−シアノエチル、4−シアノ−2−ブテニル、2−(メチルジフェニルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリフェニルシリル)エチルを含む2−置換されたエチルホスフェート;2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリブロモメチル、2,2,2−トリフルオロエチルを含むハロエチルホスフェート;4−クロロベンジル、フルオレニル−9−メチル、ジフェニルメチルを含むベンジルホスフェートおよびアミダートが挙げられる。
【0028】
本発明の化合物の合成の一般的な反応順序を図2および3に例示する。本発明は、様々な脂肪酸鎖長を有するカルジオリピンIを調製するための方法を提供し、かかる方法は(a)光学的に純粋な1,2−O−ジアシル−sn−グリセロール2を、一般式IV(図2)またはV(図3)の1つ以上のホスホラミダイト試薬と反応させること、(b)塩化溶媒中(例えばジクロロメタン、クロロホルムなど)で(a)の生成物3を2−保護されたグリセロールVIと結合させ、次いでm−クロロペルオキシ安息香酸(m−CPBA)で酸化して保護されたカルジオリピン4を生成することを含む。その後、保護されたカルジオリピンを脱保護し、アンモニウム塩に変換してカルジオリピン1(アンモニウム塩)を生成する。
【0029】
光学的に純粋な1,2−O−ジアシル−sn−グリセロール2との反応には、いかなる適したホスホラミダイト試薬や方法を用いてもよい(例えば、Browneら、(前述)が記載したようなもの)。適したホスホラミダイト試薬の例としては、(ベンジルオキシ)(N,N−ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィン(例えば、Prestwich et al. J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 1822-1825参照)、ベンジルオキシビス(ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(例えば、Dreef et al. Tetrahedron Lett. 1988, 29, 6513-6516参照)、2−シアノエチル−N,N,N,N−テトライソプロピルホスホラミダイト(例えば、Browne et al. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1. 2000, 653-657参照)、(2−シアノエチル)(N,N−ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィン(例えば、Prestwich et al. J. Org. Chem. 1998, 63, 6511-6522参照)、ジフルオレニル ジイソプロピルホスホラミダイト(例えば、Watanabe et al. Tetrahedron Lett. 1997, 38, 7407-7410参照)、メチル−N,N,N,N−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(例えば、Murakami et al. J. Org. Chem. 1999, 64, 648-651参照)、ジメチルN,N−ジイソプロピルホスホラミダイト(例えば、Watanabe et al. Tetrahedron Lett. 1993, 34, 497-500参照)、ジベンジル ジイソプロピルホスホラミダイト(例えば、Watanabe et al. Tetrahedron Lett. 2000, 41, 8509-8512参照)、ジ−tert−ブチル−N,N−ジイソプロピルホスホラミダイト(例えば、Lindberg et al. J. Org. Chem. 2002, 67, 194-199参照)、2−(ジフェニルメチルシリル)エチル−N,N,N,N−テトライソプロピルホスホラミダイト(例えば、Chevallier et al. Org. Lett. 2000, 2, 1859-1861参照)、(N−トリフルオロアセチルアミノ)ブチルおよび(N−トリフルオロアセチルアミノ)ペンチル−N,N,N,N−テトライソプロピルホスホラミダイト(例えば、wilk et al. J. Org. Chem. 1997, 62, 6712-6713参照)が挙げられる。
【0030】
本発明のもう1つの実施態様を図4に表す。この方法では、光学的に純粋な1,2−O−ジアシル−sn−グリセロール2を、ホスホラミダイトVIIを用いてリン酸化し、亜リン酸トリエステル5を産生できる。この亜リン酸トリエステル5を、任意の適した2−O−保護されたグリセロールVI、例えば、ベンジルオキシ1,3−プロパンジオールまたは2−レブリノイル−1,3−プロパンジオールなどと、ピリジニウムペルブロミドおよびホスホニウム塩法(例えば、Watanabe et al.(前述)参照)を用いて結合させ、保護されたカルジオリピン4を得ることができる。この合成方法における好ましい結合試薬はジベンジルジイソプロピルホスホラミダイトである。
【0031】
図5で説明する別のストラテジーにおいて、本発明の方法は、(a)2−O−保護されたグリセロールVIを1つ以上のホスホラミダイト試薬IVまたはVと反応させて、リン酸化試薬6を生成すること、(b)リン酸化試薬6を光学的に純粋な1,2−O−ジアシル−sn−グリセロール2と反応させ、次いでm−CPBAで酸化して保護されたカルジオリピン4を生成すること、および(c)保護されたカルジオリピンを脱保護してカルジオリピンを調製することを含む。この本発明の方法で用いるのに適したホスホラミダイト試薬および2−O−保護されたグリセロールは上記の通りである。
【0032】
図6に表した本発明のもう一つの実施態様は、カルジオリピンのエーテル類似体(アシル基がアルキル鎖で置換されているもの)をもたらす。つまり、(a)1,2−O−ジアルキル−sn−グリセロール7をホスホラミダイトIVまたはVで処理してリン酸化試薬8を生成し、(b)リン酸化試薬を2−O−保護されたグリセロールVIと反応させ、次いで酸化して保護されたカルジオリピン9を生成し、および(c)保護されたカルジオリピンを脱保護してカルジオリピンのエーテル類似体10を生成する。
【0033】
本発明の別の実施態様を図7に表す。この方法では、光学的に純粋な1,2−O−ジアルキル−sn−グリセロール7を、ホスホラミダイトVIIを用いてリン酸化し、亜リン酸トリエステル11を産生することができ、亜リン酸トリエステル11を任意の適した2−O−保護されたグリセロールVI、例えば、ベンジルオキシ1,3−プロパンジオールまたは2−レブリノイル−1,3−プロパンジオールなどと、ピリジニウムペルブロミドおよびホスホニウム塩法(例えば、Watanabe et al.(前述)参照)を用いて結合させ、保護されたカルジオリピンエーテル類似体9を得ることができる。この合成方法における好ましい結合試薬はジベンジルジイソプロピルホスホラミダイトである。
【0034】
上述した本発明は、カルジオリピンを合成する的確で効率的な方法である。かかる経路は簡潔で高全収率で進行する。脱保護は保護基に合わせた方法によってなされうる。例えば、ベンジル基は触媒水素添加分解またはNaI,2−シアノエチル処理によって、またフルオレニルメチル基はトリエチルアミンなどの三級塩基処理によって除去され、シリル基はフッ化物イオンまたは酸性媒質によって、レブリノイル基はヒドラジン分解によって脱保護される。
【0035】
本明細書に記載する合成方法はいかなる適した様式に改良されてもよい。例えば、ホスホラミダイトおよびリン酸エステルは、4,5−ジクロロイミダゾール(例えばBrowne et al.参照)、5−(4−ニトロフェニル)−1H−テトラゾール、5−(3,5−ジニトロフェニル)−1H−テトラゾール、N−メチルイミダゾリウムトリフレート、およびN−メチルイミダゾリウム過塩素酸塩(例えばMoriguchi et al.参照)を含む様々な酸触媒を用いて調製されうる。同様に、tert−ブチルヒドロペルオキシドを代わりの酸化剤として用いてもよい。記載された方法をさらに当分野で公知のあらゆる適した様式に改良してもよい。
【0036】
本発明の方法は、様々な長さの飽和/不飽和脂肪酸/アルキル鎖を含むカルジオリピン類を調製するために用いられうる。リン脂質脂肪酸の一般構造は、炭化水素鎖およびカルボン酸基を含む。通常、脂肪酸炭化水素鎖の長さは約2〜約34炭素原子の範囲であるが、飽和であっても不飽和であってもよい。しかしながら、炭素鎖はより典型的には約12〜約24炭素原子の間である。ある実施態様では、炭化水素鎖が、例えば、少なくとも約5炭素原子または少なくとも約10炭素原子または少なくとも約15炭素原子を含んでいることが望ましい。一般的に、脂肪酸炭化水素の長さは約24炭素酸よりも短い(例えば、約24炭素原子よりも、または約20炭素原子よりも短い)。
【0037】
本発明はさらに、本発明の方法によって調製されたカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を提供する。最も好ましくは、本発明の方法で調製されたカルジオリピンは短脂肪酸鎖を含み(すなわち、「短鎖カルジオリピン」)、本発明は短鎖カルジオリピンを提供する。短脂肪酸鎖は約2〜約14の間の炭素原子を含み、また約4(または約6)〜約12炭素原子(例えば、約8〜約10の間の炭素原子)を有していてもよい。あるいは、本発明の方法で生成されるカルジオリピンは、長鎖脂肪酸鎖を含んでいてもよい(すなわち、「長鎖カルジオリピン」)。長脂肪酸鎖は約14〜約34の間の炭素原子(例えば、約14(もしくは約20)〜約24の間の炭素原子を含む。本発明の方法は短または長鎖カルジオリピン類の生産だけに制限されない。実際、中間の長さの脂肪酸/アルキル鎖を含有するカルジオリピンもまた本発明の方法によって調製できる。
【0038】
リン脂質脂肪酸は一般的に炭化水素鎖における二重および/または三重結合の数によって分類される(すなわち不飽和)。飽和脂肪酸は二重または三重結合を一つも含有しておらず、鎖におけるそれぞれの炭素は最大数の水素原子と結合している。脂肪酸の不飽和の程度は炭化水素鎖中に存在する二重または三重結合の数によるものである。この点において、単不飽和脂肪酸は二重結合を1つ含有しているのに対し、多価不飽和脂肪酸は二重結合を2つ以上含有している(例えば、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,改訂版, A. D. Smith (ed.), Oxford University Press (2000)、および Molecular Biology of the Cell, 3版, B. A. Alberts (ed.), Garland Publishing, New York (1994)参照)。本発明の方法によって調製されるカルジオリピンの脂肪酸鎖はまた、短くとも長くとも、飽和または不飽和でありうる。
【0039】
記載した方法を用いて種々の新規なカルジオリピン分子を調製できる。例えば、本方法は、短または長脂肪酸側鎖を含有する純粋な形態のカルジオリピン変異体を調製するために用いることができる。好ましい脂肪酸は、炭素鎖の長さ約C〜C34、より好ましくは約C〜約C24の間であり、とりわけ好ましい脂肪酸としては、テトラ酸(C4:0)、ペタン酸(C5:0)、ヘキサン酸(C6:0)、ヘプタン酸(C7:0)、オクタン酸(C8:0)、ノナン酸(C9:0)、デカン酸(C10:0)、ウンデカン酸(C11:0)、ドデカン酸(C12:0)、トリデカン酸(C13:0)、テトラデカン(ミリスチン)酸(C14:0)、ペンタデカン酸(C15:0)、ヘキサデカン(パルミチン、palmatic)酸(C16:0)、ヘプタデカン酸(C17:0)、オクタデカン(ステアリン)酸(C18:0)、ノナデカン酸(C19:0)、エイコサン(アラキジン)酸(C20:0)、ヘンエイコサン酸(C21:0)、ドコサン(ベヘン)酸(C22:0)、トリコサン酸(C23:0)、テトラコサン酸(C24:0)、10−ウンデセン酸(C11:1)、11−ドデセン酸(C12:1)、12−トリデセン酸(C13:1)、ミリストレイン酸(C14:1)、10−ペンタデセン酸(C15:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、エイコセン酸(C20:1)、エイコサジエン酸(eicosdienoic acid)(C20:2)、エイコサトリエン酸(eicosatrienoic acid)(C20:3)、アラキドン酸(シス−5,8,11,14−エイコサテトラエン酸)、およびシス−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸が挙げられる。エーテル類似体としては、アルキル鎖もまたC〜C34、好ましくは約C〜約C24の間の範囲である。その他の脂肪酸鎖もまた、Rおよび/またはR置換基として用いられうる。かかる例示としては、エタン酸(または酢酸)、プロパン酸(またはプロピオン酸)、ブタン酸(またはブチル酸)、ヘキサコサン酸(またはセロチン酸)、オクタコサン酸(またはモンタン酸)、トリアコンタン酸(またはメリシン酸)、ドトリアコンタン酸(またはラッセル酸)、テトラトリアコンタン酸(またはゲダ酸)、ペンタトリアコンタン酸(またはセロプラスチン酸)などの飽和脂肪酸;トランス−2−ブテン(またはクロトン)酸、シス−2−ブテン(またはイソクロトン)酸、2−ヘキセン(またはイソハイドロソルビン)酸、4−デカン(またはオブツシル)酸、9−デカン(またはカプロール(caproleic))酸、4−ドデセン(またはリンデル)酸、5−ドデセン(またはデンチセチン(denticetic))酸、9−ドデセン(またはラウロレイン)酸、4−テトラデセン(またはツズ)酸、5−テトラデセン(またはフィセテル(physeteric))酸、6−オクタデセン(またはペトロセレン(petroselenic))酸、トランス−9−オクタデセン(またはエライジン)酸、トランス−11−オクタデセン(またはバクシン(vaccinic))酸、9−エイコセン(またはガドレイン)酸、11−エイコセン(またはゴンドン)酸、11−ドコセン(またはセトレイン)酸、13−デコセン(またはエルカ)酸、15−テトラコセン(またはネルボン)酸、17−ヘキサコセン(またはキシメン(ximenic))酸、21−トリアコンテン(triacontenoic)(またはルメキュ(lumequeic))酸などのモノエテン不飽和脂肪酸;2,4−ペンタジエン(またはβ−ビニルアクリル)酸、2,4−ヘキサジエン(またはソルビン)酸、2,4−デカジエン(またはシチリンジン(stillingic))酸、2,4−ドデカジエン酸、9,12−ヘキサデカジエン酸、シス−9,シス−12−オクタデカジエン(またはα−リノール)酸、トランス−9,トランス−12−オクタデカジエン(またはリノレレイジン(linolelaidic))酸、トランス−10,トランス−12−オクタデカジエン酸、11,14−エイコサジエン酸、13,16−ドコサジエン酸、17,20−ヘキサコサジエン酸などのジエン不飽和脂肪酸;6,10,14−ヘキサデカトリエン(またはヒラゴン(hiragonic))酸、7,10,13−ヘキサデカトリエン酸、シス−6,シス−9−シス−12−オクタデカトリエン(またはγ−リノール)酸、トランス−8,トランス−10−トランス−12−オクタデカトリエン(またはβ−カレンド)酸、シス−8,トランス−10−シス−12−オクタデカトリエン酸、シス−9,シス−12−シス−15−オクタデカトリエン(またはα−リノレン)酸、トランス−9,トランス−12−トランス−15−オクタデカトリエン(またはα−リノレンレイジン(linolenelaidic))酸、シス−9,トランス−11−トランス−13−オクタデカトリエン(またはα−エレオステアリン)酸、トランス−9,トランス−11−トランス−13−オクタデカトリエン(またはβ−エレオステアリン)酸、シス−9,トランス−11−シス−13−オクタデカトリエン(またはプニカ)酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸などのトリエン不飽和脂肪酸;4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、6,9,12,15−ヘキサデカテトラエン酸、4,8,12,15−オクタデカテトラエン(またはモロクチン(moroctic))酸、6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸、9,11,13,15−オクタデカテトラエン(またはα−もしくはβ−パリナリン)酸、9,12,15,18−オクタデカテトラエン酸、4,8,12,16−エイコサテトラエン酸、6,10,14,18−エイコサテトラエン酸、4,7,10,13−ドカサテトラエン酸、7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸などのテトラエン不飽和脂肪酸;4,8,12,15,18−エイコサペンタエン(またはティムノドン(timnodonic))酸、4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸、4,8,12,15,19−ドコサペンタエン(またはイワシ)酸、7,10,13,16,19−ドコサペンタエン、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、4,8,12,15,18,21−テトラコサヘキサエン(またはニシン(nisinic))酸などのペンタ−およびヘキサ−エン不飽和脂肪酸;3−メチルブタン酸(またはイソ吉草酸)、8−メチルドデカン酸、10−メチルウンデカン(またはイソラウリン)酸、11−メチルドデカン(またはイソウンデシル)酸、12−メチルトリデカン(またはイソミリスチン)酸、13−メチルテトラデカン(またはイソペンタデシル)酸、14−メチルペンタデカン(またはイソパルミチン)酸、15−メチルヘキサデカン、10−メチルヘプタデカン酸、16−メチルヘプタデカン(またはイソステアリン)酸、18−メチルノナデカン(またはイソアラキジン)酸、20−メチルヘンエイコサン(またはイソベヘン)酸、22−メチルトリコサン(またはイソリグノセリン)酸、24−メチルペンタコサン(またはイソセロチン)酸、26−メチルヘプタコサン(またはイソモナトン(isomonatonic))酸、2,4,6−トリメチルオクタコサン(またはマイコセラン(mycoceranic)もしくはマイコセロシン(mycoserosic))酸、2−メチル−シス−2−ブテン(アンゲリカ)酸、2−メチル−トランス−2−ブテン(またはチグリン)酸、4−メチル−3−ペンテン(またはピロテレビン(pyroterebic))酸などの側鎖脂肪酸が挙げられる。
【0040】
本発明において用いられる用語「ヒドロキシル保護基」は、T. W. Greene and P. G. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis,第三版, John Wiley & Sons, New York (1999)によって開示された、一般的に用いられている保護基を言及するものである。かかる保護基としては、メチルエーテル、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、p−メトキシベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルエーテルを含む置換されたメチルエーテル;1−エトキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル、アリル、プロパルギルなどの置換されたエチルエーテル;p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、トリフェニルメチルを含むベンジルおよび置換されたベンジルエーテル;トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、ジフェニルメチルシリルを含むシリルエーテル;ホルメート、アセテート、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、ベンゾエート、レブリニレートおよびカルボネートを含むエステルが挙げられる。
【0041】
本発明において用いられる用語「ホスフェート保護基」は、T. W. Greene and P. G. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis,第三版, John Wiley & Sons, New York (1999)によって記載された、一般的に用いられている保護基を言及するものである。かかる保護基としては、メチル、エチル、シクロヘキシル、t−ブチルを含むアルキルホスフェート;2−シアノエチル、4−シアノ−2−ブテニル、2−(メチルジフェニルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリフェニルシリル)エチルを含む2−置換されたエチルホスフェート;2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチルを含むハロエチルホスフェート;4−クロロベンジル、フルオレニル−9−メチル、ジフェニルメチルを含むベンジルホスフェートおよびアミダートが挙げられる。
【0042】
本明細書に記載されたカルジオリピン分子および本発明の方法によって調製されたカルジオリピンは、リポソーム組成物などの脂質製剤において用いることができる。本発明のカルジオリピンを含む複合体、エマルジョン、およびその他の製剤も本発明の範疇である。本発明のそのような製剤は、あらゆる適切な方法によって調製することができる。本発明はリポソームまたはその他の脂質組成物を調製する方法を提供し、その方法は、本明細書に記載したようにしてカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を調製すること、およびかかるカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体をリポソームなどの脂質製剤に含めることを含む。本発明はまた、本発明のカルジオリピンおよび/またはカルジオリピン類似体を含むそのような脂質組成物を含む。
【0043】
本発明のカルジオリピンに加えて、リポソーム組成物、複合体、エマルジョンなどはその他の脂質を含んでいてもよい。よって、例えば、組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジアラキドノイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、水添大豆ホスファチジルコリン、およびそれらの混合物などの、1つ以上のホスファチジルコリンを含んでいてもよい。あるいは、もしくはさらに、組成物は、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール、およびそれらの混合物などの1つ以上のホスファチジルグリセロールを含んでいてもよい。あるいは、もしくはさらに組成物はコレステロール、コレステロールの誘導体、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コレステロールヘミスクシナート、コレステロール硫酸、およびそれらの混合物などの1つ以上のステロールを含んでいてもよい。好ましくは、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体に加えて、組成物はホスファチジルコリン、ステロールおよびトコフェロール(例えば、α−トコフェロール)を含む。
【0044】
カルジオリピンおよび(任意に加えうる)その他の脂質に加えて、組成物は、その他の成分の中で、安定化剤、吸収促進剤、抗酸化剤、リン脂質、生物分解性ポリマーおよび医薬的に活性な剤を含んでいてもよい。ある実施態様では、本発明の組成物、特にリポソーム組成物は、細胞レセプターを認識するリガンドといった特定の物質に結合する、炭水化物もしくはタンパク質またはその他のリガンドなどの標的剤を1つ以上含んでいるのが好ましい。かかる剤(炭水化物、あるいは、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチドホルモン、細胞レセプターに対する抗体などレセプターリガンド及びそれらの混合物からなるタンパク質群から選ばれる1つ以上のタンパク質)の含有によって、リポソームを所定の組織または細胞タイプへ向かわせることが容易になりえる。
【0045】
医薬的使用のため、組成物はまた1つ以上の活性剤を含んでいてもよい。1つの活性剤が含まれていてもよいし、活性剤の混合物(例えば2つ以上の活性剤)が組成物に含まれていてもよい。活性剤(または「薬剤」)は組成物中にどんな適した様式で存在してもよい。例えば、それらは組成物中のカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体と複合体を形成していてもよい。加えて、またはあるいは、組成物がリポソーム組成物である場合、1つ以上の活性剤がリポソーム内に取り込まれていてもよい。
【0046】
本発明に適した活性剤としては、例えば、末梢神経、アドレナリンレセプター、コリンレセプター、骨格筋、循環系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経効果器接合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、消化器および排出系、ヒスタミン系ならびに中枢神経系に作用する剤が挙げられる。適した剤は、例えば、タンパク質、酵素、ホルモン、ヌクレオチド(センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む(例えば米国特許6,126,965参照))、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチドおよびステロイドから選ばれてもよい。活性剤は、鎮痛薬、麻酔薬、抗不整脈剤、抗生物質、抗アレルギー剤、抗真菌剤、抗がん剤、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗炎症コルチコステロイド、アルツハイマーまたはパーキンソン病の治療剤、抗潰瘍剤、抗原虫剤、抗不安剤、甲状腺剤、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、食欲抑制剤(anoretic)、ビスフォスフォネート、強心剤、心血管作動剤、コルチコステロイド、利尿薬、ドーパミン剤、胃腸剤、止血薬、高コレステロール剤、抗高血圧剤(例えばジヒドロピリジン)、抗うつおよびcox-2阻害剤、免疫抑制剤、抗痛風剤、抗マラリア剤、ステロイド、テルピノイド、トリテルピン、レチノイド;抗潰瘍Hレセプターアンタゴニスト、低血糖剤、保湿剤、化粧料、抗偏頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗炎症剤(例えばリュウマチ、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、クローン病の治療剤);または、多発性硬化症、眼科用の剤、ワクチン(例えば、肺炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、コレラ毒Bサブユニット、インフルエンザウイルス、腸チフス、熱帯熱マラリア原虫、ジフテリア、破傷風、HSV、結核、HIV、SARSウイルス、ポルデテラ(pordetela)百日咳、はしか、おたふく風邪および風疹ワクチン(MMV)、バクテリア毒素、ワクチンウイルス、アデノウイルス、カナリア、ポリオウイルス、カルメット・ゲラン菌(BCG)、肺炎桿菌などに対する)、ヒスタミンレセプターアンタゴニスト、催眠薬、腎臓保護剤、脂質調節剤、筋肉弛緩薬、神経安定薬、向神経剤、オピオイドアゴニストおよびアンタゴニスト、副交感神経興奮剤、プロテアーゼ阻害剤、プロスタグランジン、鎮静剤、性ホルモン(例えば、エストロゲン、アンドロゲン)、興奮剤、交感神経興奮剤、血管拡張薬およびキサンチン、並びにこれらの類の合成類似体であってもよい。治療剤は、シクロスポリンおよびアムホテリシンBなどの腎毒性、またはアムホテリシンBおよびパクリタキセルなどの心臓毒性であってもよい。典型的な抗がん剤としては、メルファラン、クロルメチン、エクストラムスチンホスフェート(extramustinephosphate)、ウラムスチン(uramustine)、イホスファミド、マンノムスチン(mannomustine)、トリフォスファミド、ストレプトゾトシン、ミトブロニトール、ミトキサントロン(公開された国際特許出願WO02/32400号参照)、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、テガフール、イドキシド(idoxide)、タキサン(例えば、タキソール、パクリタキセルなど、公開された国際特許出願WO00/01366参照)、ダウノマイシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、アムホテリシン、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、BCNU、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビノレルビン(vinorelbine)(例えば公開された国際特許出願WO03/018018号パンフレット参照)など)、カンプトテシンおよびそれらの誘導体(例えばSN38(公開された国際特許出願WO02/058622号パンフレット参照)、イリノテカン(公開された国際特許出願WO03/030864号パンフレット参照)など)、アントラサイクリン、抗体、サイトキシン(cytoxine)、ドキソルビシン、エトポシド(etopside)、サイトカイン、リボザイム、インターフェロン、オリゴヌクレオチドおよび前述の機能的誘導体が挙げられる。本方法にて送達されうる薬剤のさらなる例としては、プロクロルペラジン エディスレート(prochlorperzine edisylate)、硫酸鉄、アミノカプロン酸、メカミラミン塩酸塩、プロカインアミド塩酸塩、アンフェタミン硫酸塩、メタアンフェタミン塩酸塩、ベンズアンフェタミン塩酸塩、イソプロテレノール硫酸塩、フェンメトラジン塩酸塩、ベタネコール塩化物、メタコリン塩化物、ピロカルピン塩酸塩、アトロピン硫酸塩、スコポラミン臭化物、イソプロパミドヨウ化物、トリジヘキセチル塩化物、フェンフォルミン塩酸塩、メチルフェニデート塩酸塩、テオフェリンコリネート(theophylline cholinate)、セファレキシン塩酸塩、ジフェニドール、メクリジン塩酸塩、プロクロルペラジンマレイン酸塩、フェノキシベンザミン、チエチルペルジンマレイン酸塩、アニシンドン(anisindone)、ジフェナジオンエリトリチルテトラナイトレート、ジゴキシン、イソフルロフェート、アセタゾラミド、メタゾラミド、ベンドロフルメチアジド、クロロプロマイド(chloropromaide)、トラザミド、クロルマジノン酢酸塩、フェナグリコドール、アロプリノール、アスピリンアルミニウム、メトトレキサート、アセチルスルフィソキサゾール、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチコステロン酢酸塩、コルチゾン酢酸塩、デキサメタゾン、およびベタメタゾン、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17−S−エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3−メチルエーテル、プレドニゾロン、17−α−ヒドロキシプロゲステロン酢酸塩、19−ノルプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチエデロン(norethiederone)、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレル、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダック、インドプロフェン、ニトログリセリン、イソソルビドジニトレート、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドーパ、クロルプロマジン、メチルドーパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、乳酸鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンズアミン、ジルチアゼム、ミルリノン、マンドール、クアンベンズ、ヒドロクロロチアジド、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェヌフェン(fenufen)、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナック、メファナミック、フルフェナミック、ジフイナール(difuinal)、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン、リシノプリル、エナラプリル、エナラプリラートカプトプリル、ラミプリル、ファモチジン、ニザチジン、スクラルフェート、エチンチジン、テトラトロール、ミノキシジル、クロルジアセポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびイミプラミンなどのそれらの誘導体が挙げられる。さらなる例はタンパク質およびペプチドであり、骨形成タンパク質、インスリン、コルヒチン、グルカゴン、甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone)、副甲状腺および脳下垂体ホルモン、消化ホルモン、カルシトニン、レニン、プロラクチン、コルチコトロフィン、甲状腺刺激ホルモン(thyrotropic hormone)、卵胞刺激ホルモン、絨毛性性腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、オキシトシン、バソプレッシン、GRF、ソマトスタチン、リプレシン、パンクレオチミン、黄体形成ホルモン、LHRH、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト、ロイプロリド、インターフェロン(例えば、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、α−、β−、またはγ−インターフェロン)、インターロイキン、ヒト成長ホルモンならびにメチオニン(methione)ヒト成長ホルモンおよびdes-フェニルアラニンヒト成長ホルモンなどの誘導体、ウシ成長ホルモンおよびブタ成長ホルモン、プロスタグランジンなどの生殖阻害剤、生殖促進剤、インスリン様成長因子などの成長因子、凝固因子、膵臓ホルモン放出因子、これらの化合物の類似体および誘導体、並びにこれらの化合物の医薬的に許容される塩、あるいはその類似体または誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。治療剤はリポソーム製剤中で有益に併用投与されうる薬または剤の混合物(例えば2つ以上の剤)であってもよい。
【0047】
一般的に、リポソームは正味の中性、負または正荷電を有していてもよい。例えば、正のリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、カルジオリピンおよびカルジオリピンの正味の負電荷を超えるのに十分なステアリルアミンを含有する溶液から形成されうる。負のリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、および/または本明細書に記載された方法で調製されるカルジオリピン変異体から形成されうる。
【0048】
本発明のリポソームは、個々の組成物およびそれらを製造する方法によって、多層ベシクルであっても、単層ベシクルであってもよい。リポソームは、約1ミクロン以下、または約500nm以下、約200nm以下、もしくは約100nm以下といった選ばれたサイズ範囲において、実施的に均一なサイズを有するように調製されてもよい。1つの有効なサイジング方法としては、リポソームの水性懸濁液を、一定の孔サイズを有する一連のポリカーボネート膜を介して押し出すことなどが挙げられ、この膜の孔サイズはその膜を介して押し出されることによって生産させる最も大きなサイズのリポソームにだいたい対応している。
【0049】
リポソーム(またはその他の脂質)組成物は、どんな所望の形態であってもよい。例えば、医薬的に用いる場合、組成物は患者に投与する準備ができたものであってもよい。あるいは、組成物は乾燥または凍結乾燥された形態であってもよい。組成物が乾燥または凍結乾燥されている場合、組成物は好ましくは凍結防止剤も含む。適した凍結防止剤としては、例えば、トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、グルコース、およびデキストランのような糖が挙げられ、性能の観点から最も好ましい糖はトレハロースおよびスクロースである。例えば、ストレプトマイシンおよびジヒドロストレプトマイシンといった、その他のより複雑な糖もまた用いることができる。
【0050】
あらゆる適した方法が、リポソームを形成するために用いられうる。例えば、ホスファチジルコリン、上記した方法で調製されるカルジオリピン、コレステロールおよびα−トコフェノールといった、脂質親和性リポソーム形成成分が、適切な溶媒または溶媒の組み合わせ中に、溶解あるいは分散され、乾燥されてもよい。適した溶媒としては、医薬的に許容されない残渣を残さずに蒸発されうるような、t−ブタノール、エタノール、メタノール、クロロホルム、またはアセトンなどの、あらゆる非極性あるいは微極性溶媒が挙げられる。乾燥は、凍結乾燥などのあらゆる適した手段によってなされうる。脱水は通常真空下でなされ、事前にリポソーム調製物を凍らせてもよいし、凍らせなくてもよい。親水性の成分は、水を含む極性溶媒に溶解されてもよい。
【0051】
乾燥脂質親和性成分を親水性混合物と混合するとリポソームが形成されうる。極性溶液の乾燥脂質フィルムとの混合は、混合物を強力にホモジナイズするいかなる手段によるものであってもよい。渦動、磁気攪拌、および/または超音波によって均質化をえることができる。
【0052】
リポソームに活性剤(または活性剤の混合物)が含まれている場合、本発明はリポソームに薬剤を保有させる方法を提供する。本方法によれば、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体は本明細書に記載されたようにして調製され、そしてカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体および1つの薬物または複数の薬物(例えば、活性剤、活性剤の混合物)はリポソーム内に含まれる。例えば、活性剤は適した溶媒に溶解または分散されてもよく、また混合の前にリポソーム混合物に加えられてもよい。通常、親水性活性剤は極性溶媒に直接加えられ、また疎水性活性剤はその他の成分を溶解させるために用いられる非極性溶媒に加えられるが、これらは必須条件ではない。活性剤は3つ目の溶媒または溶媒混合物に溶解され、混合物をホモゲナイズする前に極性溶媒の脂質フィルムとの混合物に加えられてもよい。
【0053】
リポソームは、スクロース、エピクロロヒドリン、スクロースの側鎖親水性ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、ポリエチレン酸化物、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、酢酸セルロース、アルギン酸ナトリウム、N,N−ジエチルアミノ酢酸塩、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン X−ラウリルエーテル(式中、Xは9〜20)、およびポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの、生物分解可能なポリマーでコートされていてもよい。
【0054】
抗酸化剤が、本発明の陽イオン性カルジオリピンを含むリポソーム組成物またはその他の脂質製剤に含まれていてもよい。適した抗酸化剤としては、アスコルビン酸、トコフェロール、およびデテロキサイム(deteroxime)メシレートなどの化合物が挙げられる。
【0055】
吸収促進剤がリポソーム組成物またはその他の脂質製剤に含まれていてもよい。適した吸収促進剤としては、Na−サリチラート−ケノデオキシコレート、Naデオキシコレート、ポリオキシエチレン 9−ラウリルエーテル、ケノデオキシコレート−デオキシコレートおよびポリオキシエチレン 9−ラウリルエーテル、モノオレイン、Naタウロ−24,25−ジヒドロフシデート、Naタウロデオキシコレート、Naグリコケノデオキシコレート、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸が挙げられる。ポリマー性吸収促進剤もまた含まれていてもよく、例としては、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレン10−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン16−ラウリルエーテル、およびアゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)である。
【0056】
本発明の脂質(例えばリポソーム)組成物は、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。例えば、医薬的に適した賦形剤としては、固形、半固形、もしくは液状の希釈剤、充填剤、および全ての種類の製剤補助剤が挙げられる。本発明はまた投薬量単位の医薬調製物を含む。つまり、調製物が、例えばバイアル、シリンジ、カプセル、ピル、座薬およびアンプルなどそれぞれの形態におけるものであり、その中で活性剤のリポソーム製剤の含有量が1つまたは複数の各投与量に対応したものである。かかる投薬量単位は、例えば、各投与量の1、2、3または4回分、あるいは各投与量の1/2、1/3または1/4を含有していてもよい。好ましくは、各投与量は、1回の投与量として与えられる、通常、1日の用量の全部、半分、3分の1もしくは4分の1に対応する量の活性剤を含有する。
【0057】
錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、顆粒、座薬、液剤、懸濁剤およびエマルジョン、ペースト剤、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、散剤およびスプレーが適切な医薬調製物でありうる。座薬は、リポソーム活性剤に加えて、適した水溶性または水不溶性賦形剤を含有していてもよい。適した賦形剤は、本発明のリポソーム活性剤が充分に安定して治療用に使用されるようなものであり、例えば、ポリエチレングリコール、特定の脂肪およびエステル、もしくはこれらの物質の混合物である。軟膏、ペースト剤、クリームおよびゲルもまた、その中でリポソーム活性剤が安定であるような適した賦形剤を含有できる。また、組成物は、注射に適した1つ以上の賦形剤(例えば、緩衝食塩水)を含めることによって、注射用(例えば、静脈、間質、腫瘍内)に製剤することもできる。
【0058】
活性剤またはその医薬調製物は、静脈内に、皮下に、局所的に、経口で、非経口で、腹膜内に、および/または直腸に、公知または開発された方法で、腫瘍または治療の必要な部位に直接注入することによって、投与されうる。カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体ベースの製剤は、例えば、クリーム、皮膚軟膏、乾燥肌柔軟剤、保湿剤などとして、局所に投与されてもよい。
【0059】
本発明は疾患を治療するための医薬を調製するための、組成物の使用を提供する。この場合、本発明はまたヒトまたは動物疾患を治療する方法を提供する本発明の方法によれば、本発明の組成物はその治療を必要とするヒトまたは動物患者に触れさせる(投与する)。組成物が1つ以上の活性剤を含む場合、本発明の方法は活性剤の患者への送達を促進する。
【0060】
本方法は1つ以上の活性剤を投与するために用いられうる。活性剤は界面活性剤の存在下で安定であると一般的に考えられている。親水性活性剤が適しており、リポソーム二重層が拡散バリアを作って体中に活性剤がランダムに拡散するのを防ぐように、リポソームの内側に含まれうる。疎水性活性剤は、毒性を減らすという利点を有するだけでなく、リポソームの脂質二重層によく溶解する傾向があるため、本発明の方法における使用に特に適していると考えられる。
【0061】
治療するのに適した疾患は、本明細書に記載されたように、活性剤の選択によってきまる。しかしながら、好ましい疾患は癌であり、その場合、組成物に取り込まれる活性剤の少なくとも1つは抗がん剤である。化学療法剤もまたそのような使用によく適している。化学療法剤を含有するリポソーム製剤は、化学療法剤を直接癌細胞へ送達するために、腫瘍組織に直接注射されてもよい。一部の例では、特に腫瘍の摘出後では、リポソーム製剤はその結果得られる空腔に直接埋め込んでもよく、あるいは残りの組織にコーティングとして適用してもよい。リポソーム製剤が手術後に投与される場合は、それらは血管系を通過する必要がないため、約1ミクロンより大きい直径を有するリポソームを使用することが可能である。
【0062】
ある実施態様では、たとえ組成物がカルジオリピン以外の活性医薬剤を含んでいない場合でも、本方法を患者の疾患、障害または症状を治療するために使用してもよい。本発明は、かかる疾患、障害または症状に効果を示す、または治療する薬物を調製するための、カルジオリピンの使用を提供する。本発明はさらに、治療上有効な量のカルジオリピンを患者に投与することによって、患者内のかかる疾患、障害または症状、並びにかかる疾患、障害または症状の作用を治療する方法を提供する。いかなる特定の理論にも縛られることなく、カルジオリピンは有利な抗酸化作用を提供し、それにより多くの疾患、障害または症状の作用が軽減されると信じられる。本方法によって治療することのできる状態の例としては、例えば、加齢に関連した疾患、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心臓疾患、虚血、および皮膚障害(例えば、にきび、乾癬、湿疹など)が挙げられる。本方法はまた、老化の作用を抑えるために使用されうる。この使用において、カルジオリピンは本明細書に記載したようなリポソームまたは非リポソーム製剤(例えば、エマルジョン、クリームなど)として調製でき、またカルジオリピンに加えて、1つ以上の医薬的に許容される担体を含むことができる。使用の際、組成物はあらゆる適した経路で投与されうる。例えば、組成物は皮膚、静脈、またはその他の所望の投与経路によって投与されうる。
【0063】
さらに本発明は、活性剤(または活性剤の混合物)を細胞へ送達する方法を対象とする。本方法は、活性剤と、上記で開示した方法によって合成されるカルジオリピン変異体/類似体とを含むリポソームを調製することによって行われる。次いでリポソームは1つの細胞または複数の細胞へ送達され、それらの細胞は所望によりインビトロまたはインビボでありうる。インビボ投与は本明細書に記載したように、あるいは当業者に公知のその他の方法でなされうる。インビトロ使用の場合、活性剤の送達は、組成物(例えばリポソーム)を、例えば細胞培養培地に加えることによっておこなうことができる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は本発明をさらに例示するものであるが、もちろん決して本発明の範疇を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0065】
実施例1.テトラミリストイルカルジオリピンの合成
1A.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0066】
【化9】

【0067】
CHCl(125 mL)中の1,2−ジミリストイル−sn−グリセロール(10 g, 19.53 mmol)、ベンジルN,N−テトライソプロピルホスホラミダイト(9.87 g, 29.29 mmol)および1H−テトラゾール(65 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 29.29 mmol)溶液を、室温でアルゴン下3時間攪拌した。CHCl(20 mL)中の2−ベンジルオキシ1,3−プロパンジオール(1.18 g, 6.47 mmol)溶液、次いで1H−テトラゾール(37.7 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 16.85 mmol)を加え、3時間攪拌した。反応混合物を−40℃に冷却し、tert−ブチルヒドロペロキサイド(TBHP, 6.4 mL,デカン中5-6 M sol, 32.35 mmol)を加えた。−40℃で30分攪拌した後、反応混合物を室温にまで加温し、CHCl(250 mL)で希釈し、洗浄し(飽和Na2S03水溶液(2 x 50 mL),飽和NaHCO3水溶液(2 x 50 mL),食塩水(2 x 50 mL))、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(2:3 EtOAc:ヘキサン)、6.68 g(69%)の保護されたカルジオリピンを無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.48. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 80H), 1.52-1.66 (m, 8H), 2.22-2.29 (m, 8H), 3.70-3.78 (m, 1H), 4.01-4.16 (m, 10H), 4.22-4.28 (m, 2H), 4.60 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 5.01-5.05 (m, 4H), 5.15-5.18 (m, 2H), 7.28-7.36 (m, 15H).
【0068】
1B.1,3−ビス[(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩(テトラミリストイルカルジオリピン)
【0069】
【化10】

【0070】
テトラヒドロフラン(40 mL)中の1Aで得た保護されたカルジオリピン(2.5 g, 1.65 mmol)溶液を、50psiで10%Pd/C(900 mg)で10時間水素化した。セライト床で触媒をろ去し、4mLの30%アンモニア溶液で処理し、濃縮し、残渣をCHClに溶解し、0.25μフィルターでろ過し、アセトンで沈殿させてテトラミリストイル(C14:O)カルジオリピン(1.75 g, 83%)を白色固体として得た。
TLC (SiO2) CHCl3/MeOH/NH4OH (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.50. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (br s, 80H), 1.52-1.66 (m, 8H), 2.26-2.34 (m, 8H), 3.06 (bs, 1H), 3.82-3.98 (m, 9H), 4.12-4.18 (m, 2H), 4.35-4.42 (m, 2H), 5.14-5.24 (m, 2H), 7.41 (bs, 8H). ESI-MS (negative), m/z 1240.2 (M-2NH4++H+), 1011.9 (M-2NH4+- RCOO-), 619.9 (M-2NH4+)2-.
【0071】
実施例2.テトララウロイルカルジオリピンの合成
2A.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0072】
【化11】

【0073】
方法1:CHCl(25 mL)中の1,2−ジラウロイル−sn−グリセロール(2.2 g, 4.82 mmol)、ベンジルN,N−テトライソプロピルホスホラミダイト(1.95 g, 5.78 mmol)および1H−テトラゾール(12.84 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 5.78 mmol)溶液を室温でアルゴン下3時間攪拌した。CHCl(10 mL)中の2−ベンジルオキシ1,3−プロパンジオール(352 mg, 1.92 mmol)溶液、次いで1H−テトラゾール(12.84 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 5.78 mmol)を加え、3時間攪拌した。反応混合物を−40℃に冷却し、3−クロロペロキシペル安息香酸(m-CPBA, 2.77 g, 9.64 mmol)を部分的に加えた。−40℃で30分攪拌した後、反応混合物を室温にまで加温し、CHCl(150 mL)で希釈し、洗浄し(飽和Na2S03水溶液(2 x 50 mL),飽和NaHCO3水溶液(2 x 50 mL),食塩水(2 x 50 mL))、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(2:3 EtOAc:ヘキサン)、1.68 g (62%)の保護されたカルジオリピンを無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.44. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 64H), 1.52-1.66 (m, 8H), 2.22-2.29 (m, 8H), 3.70-3.78 (m, 1H), 4.01-4.16 (m, 10H), 4.22-4.28 (m, 2H), 4.60 (d, J= 7.8 Hz, 2H), 5.01-5.05 (m, 4H), 5.15-5.18 (m, 2H), 7.28-7.36 (m, 15H).
【0074】
方法2:40mLの無水CHCl中の1,2−ジラウロイル−sn−グリセロール(5.0 g, 10.96 mmol)およびテトラゾール(29.2 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 13.15 mmol)攪拌溶液に、ジベンジルジイソプロピルホスホラミダイト(4.54g, 13.15 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。内容物を100 mLの CHClで希釈し、次いで5%NaHCO水溶液(2 x 50mL)、食塩水(2 x 50 mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空で濃縮し、油状残渣(7.68 g)をデシケーター中で8時間乾燥し、そのまま次の反応に用いた。CHCl(40 mL)中の、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール(0.8 g, 4.38 mmol)、ピリジン(4.43 mL, 54.77 mmol)およびEt3N(7.63 mL, 54.77 mmol)溶液を−40℃に冷却して、同時にピリジニウムトリブロミド(5.25 g, 16.42 mmol)を加えた。混合物を同温で1時間攪拌し、2時間かけて徐々に室温にして、水(30 mL)で処理した。内容物をEtOAc(150 mL)で希釈して、有機相を順に5% NaHCO3水溶液(2 x 50 mL)、水(50 mL)および食塩水(50 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(CH2Cl2中8%アセトン)、3.8 g(62%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.44.
【0075】
2B.1,3−ビス[(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩(テトララウロイルカルジオリピン)
【0076】
【化12】

【0077】
テトラヒドロフラン(25 mL)中の2Aで得た保護されたカルジオリピン(1.5 g, 1.07 mmol)溶液を、50psiにて10%Pd/C(600 mg)で10時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、2mLの30%アンモニア溶液で処理し、濃縮し、残渣をCHC1に溶解し、0.25μフィルターでろ過し、アセトンで沈殿させてテトララウロイル(C12:O)カルジオリピン(1.0 g, 80%)を白色固体として得た。
TLC (Si02) CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.48. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (br s, 64H), 1.52-1.66 (m, 8H), 2.26-2.34 (m, 8H), 2.94 (bs, 1H), 3.82-3.98 (m, 9H), 4.12-4.18 (m, 2H), 4.35-4.42 (m, 2H), 5.14-5.24 (m, 2H), 7.41 (bs, 8H). 13C NMR δ (CDC13,125 MHz) 14.07, 22.67, 24.87, 24.93, 29.18, 29.22, 29.36, 29.37, 29.40, 29.57, 29.60, 29.66, 29.67, 29.69, 29.72, 31.91, 34.09, 34.28, 62.62, 63.57, 66.77, 69.47, 70.29, 173.25, 173.56. FTIR (ATR) 3207, 3035, 2956, 2918, 2850, 1737, 1467, 1378, 1206, 1092, 1067 cm-1. ESI-MS (negative), m/z 1150 (M- 2NH4++Na+), 1127.4 (M-2NH4+), 1128.4 (M-2NH4++H+), 928.4 (M-2NH4+-RCOO-), 563.7 (M-2NH4+)2-. Anal. Calculated for C57H116N2017P2: C, 58.84; H, 10.05; N, 2.41: P, 5.32.
Found: C, 57.75; H, 9.83; N, 2.34: P, 5.28.
【0078】
実施例3.テトララウロイルカルジオリピンの合成
この方法においては、テトララウロイルカルジオリピンが2−シアノエチルホスホラミダイトによって合成される。
【0079】
3A.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジシアノエチルエステル
【0080】
【化13】

【0081】
無水エーテル(20 mL)中の1,2−ジラウロイル−sn−グリセロール(1.74 g, 3.79 mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(545 mg, 4.22 mmol)の混合物へ、アルゴン雰囲気下2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホラミダイト(1 g, 4.22 mmol)を加えた。混合物を室温で1時間攪拌し、分離したジイソプロピルアミンヒドロクロリドをろ過し、ろ液を真空で濃縮した。残渣をそのままリン酸化に用いた。
【0082】
無水CHC1(30 mL)中の上記ホスホラミダイトおよび1H−テトラゾール(9.4 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 4.22 mmol)混合物に、CHC1(5 mL)中の2−ベンジルオキシ1,3−プロパンジオール(312 mg, 1.71 mmol)溶液を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌し、−40℃に冷却し、m−CPBA(1.36 g, 4.73 mmol)を部分的に加えた。−40℃で30分攪拌した後、反応混合物を室温にまで加温し、CHCl(200 mL)で希釈し、洗浄し(飽和Na2S03水溶液(2 x 50 mL),飽和NaHCO3水溶液(2 x 50 mL),食塩水(2 x 50 mL))、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(1:4 アセトン:CH2Cl2)、1.48 g(70%)の無色のシロップを得た。
TLC (Si02) EtOAc/CH2Cl2 (1:3) Rf〜0.48. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.39 (m, 64H), 1.53-1.66 (m, 8H), 2.26-2.36 (m, 8H), 2.64-2.75 (m, 4H), 3.83-3.88 (m, 1H), 4.06-4.36 (m, 16H), 4.67 (s, 2H), 5.19-5.28 (m, 2H), 7.28-7.38 (m, 5H).
【0083】
3B.1,3−ビス[(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]−2−ベンジルグリセロールジアンモニウム塩
【0084】
【化14】

【0085】
10mLのアセトニトリル中の、3Aで得た前駆体(1.48 g, 1.2 mmol)およびEtN(1.66 mL, 12 mmol)溶液を一晩攪拌し(TLCにより原料物質が残っていないことが示された)、蒸発乾燥した。残渣を、2mLのNHOHを添加してアンモニウム塩に変換し、Si02カラムで精製して(1% NH40H を含むCH2Cl2中15% MeOH)、ゆっくり固形化する無色のシロップを850 mg(60%)得た。
1H NMR δ (CDCl3,500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.39 (m, 64H), 1.53-1.63 (m, 8H), 2.22-2.34 (m, 8H), 3.66-3.76 (m, 1H), 3.82- 4.06 (m, 8H), 4.08-4.18 (m, 2H), 4.26-4.37 (m, 2H), 4.60 (s, 2H), 5.14-5.26 (m, 2H), 7.22-7.36 (m, 5H), 7.49 (bs, 8H).
【0086】
3C.1,3−ビス[(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩(テトララウロイルカルジオリピン)
【0087】
【化15】

【0088】
テトラヒドロフラン(25 mL)中の3Bで得た保護されたカルジオリピン(1.12 g, 0.89 mmol)溶液を50psiにて10%Pd/C(450 mg)で10時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、残渣をCHC1に溶解し、0.25μフィルターでろ過し、アセトンで沈殿させてテトララウロイル(C12:O)カルジオリピン(750 mg, 75%)を白色固体として得た。
TLC (SiO2) カラム CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.48.ここに記載した本方法で得られたテトララウロイルカルジオリピンは、すべての点において2Bのものと同一である。
【0089】
実施例4.テトラデカノイルカルジオリピンの合成
4A.1,2−ジデカノイル−3−ベンジル−sn−グリセロールの合成
【0090】
【化16】

【0091】
CHCl(30 mL)中の(R)−(+)−3−ベンジルオキシ−1,2−プロパンジオール(2.0 g, 10.97 mmol)およびEt3N(6.89 mL, 49.36 mmol)の氷冷した溶液に、デカノイルクロリド(5.1 mL, 24.69 mmol)を10分かけて滴下し、次いで4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP, 268 mg, 2.19 mmol)を滴下した。反応混合物を室温で12時間攪拌し、CH2Cl2(200 mL)で希釈し、順に水(100 mL)および食塩水(100 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(ヘキサン中3% EtOAc)、4.5 g(83%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (9:1) Rf〜0.54. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.87 (t, J = 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 24H), 1.52-1.66 (m, 4H), 2.22-2.34 (m, 4H), 3.58 (d, J = 4.2 Hz, 2H), 4.18 (dd, J = 6.4 and 11.9 Hz, 1H), 4.34 (dd, J = 6.4 and 11.9 Hz, 1H), 4.51 (d, J = 12.2 Hz, 1H), 4.57 (d, J= 12.2 Hz, 1H), 5.21-5.28 (m, 1H), 7.28-7.36 (m, 5H).
【0092】
4B.1,2−ジデカノイル−sn−グリセロール
【0093】
【化17】

【0094】
EtOH:EtOAc:AcOH (9:1:0.1)(40 mL)中の4Aで得た保護されたジデカノイルグリセロール(4.68 g, 9.55 mmol)溶液を、40psiにて10%Pd/C(600 mg, 10%)で3時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、濃縮した。得られたDDG(3.52g, 92%)を高真空で乾燥した。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.39. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.87 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 24H), 1.52-1.66 (m, 4H), 2.03 (t, J= 6.2 Hz, 1H, D20 exchangeable), 2.32 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.35 (t, J= 7.6 Hz, 2H) 3.73 (t, J= 6.0 Hz, 2H)), 4.22 (dd, J= 5.8 and 11.9 Hz, 1H), 4.33 (dd, J= 5.8 and 11.9 Hz, 1H), 5.08 (quintet, J= 5.1 Hz, 1H).
【0095】
4C.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0096】
【化18】

【0097】
CHCl(25 mL)中の、4Bで得た1,2−ジデカノイル−sn−グリセロール(3.52 g, 8.8 mmol)、ベンジルN,N−テトライソプロピルホスホラミダイト(3.26 g, 9.68 mmol)および1H−テトラゾール(21.51 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 9.68 mmol)溶液を、室温でアルゴン下3時間攪拌した。CHCl(10 mL)中の2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール(712 mg, 3.9 mmol)溶液、次いで1H−テトラゾール(21.51 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 9.68 mmol)を加え、3時間攪拌した。反応混合物を−40℃に冷却し、m−CPBA(5.06 g, 17.6 mmol)を部分的に加えた。−40℃で30分攪拌した後、反応混合物を室温にまで加温し、CHCl(200 mL)で希釈し、洗浄し(飽和Na2S03水溶液(2 x 50 mL),飽和NaHCO3水溶液(2 x 50 mL),食塩水(2 x 50 mL))、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(2:3 EtOAc:ヘキサン)、3.21 g(64%)の保護されたカルジオリピンを無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/ EtOAc (3:2) Rf〜0.44. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 48H), 1.52-1.66 (m, 8H), 2.22-2.29 (m, 8H), 3.70-3.78 (m, 1H), 4.01-4.16 (m, 10H), 4.22-4.28 (m, 2H), 4.60 (d, J= 7.8 Hz, 2H), 5.01-5.05 (m, 4H), 5.15-5.18 (m, 2H), 7.28-7.36 (m, 15H).
【0098】
4D.1,3−ビス[(1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩
【0099】
【化19】

【0100】
テトラヒドロフラン(25 mL)中の4Cで得た保護されたカルジオリピン(1.5 g, 1.16 mmol)溶液を、50psiで10%Pd/C(600 mg)で10時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、2mLの30%アンモニア溶液で処理し、濃縮した。残渣をCHClに溶解し、0.25μフィルターでろ過し、濃縮してテトラデカノイル(C10:O)カルジオリピン(1.0 g, 80%)を半固体として得た。
TLC (Si02) CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.42. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (br s, 48H), 1.52-1.66 (m, 8H), 2.26-2.34 (m, 8H), 3.62 (bs, 1H), 3.82-3.98 (m, 9H), 4.12-4.18 (m, 2H), 4.35-4.42 (m, 2H), 5.14-5.24 (m, 2H), 7.41 (bs, 8H). ESI-MS (negative), m/z 1038 (M-2NH4++Na+), 1015 (M-2NH4+), 843.7 (M-2NH4+- RCOO-), 507.5 (M-2NH4+)2-.
【0101】
実施例5.テトラオクタノイルカルジオリピンの合成
5A.1,2−ジオクタノイル−3−ベンジル−sn−グリセロール
【0102】
【化20】

【0103】
無水ピリジン(40 mL)中の(R)−(+)−3−ベンジルオキシ−1,2−プロパンジオール(4.0 g, 21.95 mmol)溶液に、オクタノイルクロリド(8.93 g, 54.87 mmol)を10分かけて滴下し、次いでDMAP(267 mg, 2.19 mmol)を滴下した。反応混合物を55℃で48時間攪拌し、EtOAc(300 mL)で希釈し、順に水(100 mL)、1N HCl(2 x 100 mL)および食塩水(100 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(ヘキサン中3% EtOAc)、7.3 g(75%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (9:1) Rf〜0.52. 1H NMR 8 (CDCl3, 500 MHz) 0.87 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 16H), 1.52-1.66 (m, 4H), 2.22-2.34 (m, 4H), 3.58 (d, J= 4.2 Hz, 2H), 4.18 (dd, J= 6.4 and 11.9 Hz, 1H), 4.34 (dd, J= 6.4 and 11.9 Hz, 1H), 4.51 (d, J= 12.2 Hz, 1H), 4.57 (d, J= 12.2 Hz, 1H), 5.21-5.28 (m, 1H), 7.28-7.36 (m, 5H).
【0104】
5B.1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロール
【0105】
【化21】

【0106】
EtOH:EtOAc:AcOH (9:1:0.1)(30 mL)中の、5Aで得た保護されたジオクタノイルグリセロール(6.8 g, 15.66 mmol)溶液を、40psiにて10%Pd/C(900 mg, 10%)で3時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、濃縮した。得られたDOG(5.0g, 93%)を高真空で乾燥した。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.31. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.87 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 16H), 1.52-1.66 (m, 4H), 2.03 (t, J= 6.2 Hz, 1H, D20 exchangeable), 2.32 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.35 (t, J = 7.6 Hz, 2H) 3.73 (t, J= 6.0 Hz, 2H)), 4.22 (dd, J= 5.8 and 11.9 Hz, 1H), 4.33 (dd, J= 5.8 and 11.9 Hz, 1H), 5.08 (quintet, J= 5.1 Hz, 1H).
【0107】
5C.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0108】
【化22】

【0109】
50mLの無水CHCl中の5Bで得た1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロール(5.0 g, 14.53 mmol)およびテトラゾール(40.3 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 18.16 mmol)溶液に、ジベンジルジイソプロピルホスホラミダイト(6.26g, 18.16 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。内容物を200 mLのEtOAcで希釈し、次いで5%NaHCO水溶液(2 x 50 mL)、食塩水(2 x 50 mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空で濃縮し、油状残渣(7.0 g)をデシケーター中で8時間乾燥し、そのまま次の反応に用いた。
【0110】
CHCl(40 mL)中の、上記ホスファイト、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール(0.660 g, 3.63 mmol)、ピリジン(10.6 mL, 131.13 mmol)およびEt3N(8.0 mL, 65.65 mmol)溶液を−40℃に冷却して、同時にピリジニウムトリブロミド(6.3 g, 19.69 mmol)を加えた。混合物を同温で1時間攪拌し、2時間かけて徐々に室温にして、水(30 mL)で処理した。内容物をEtOAc(250 mL)で希釈して、有機相を順に5% NaHCO3水溶液(2 x 50 mL)、水(50 mL)および食塩水(50 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(CHCl中10%アセトン)、2.72 g(64%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.44. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.87 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 0.89 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 32H), 1.52-1.62 (m, 8H), 2.22-2.29 (m, 8H), 3.70-3.78 (m, 1H), 4.01-4.16 (m, 10H), 4.22-4.28 (m, 2H), 4.60 (d, J= 7.8 Hz, 2H), 5.01-5.05 (m, 4H), 5.15-5.18 (m, 2H), 7.28-7.36 (m, 15H).
【0111】
5D.1,3−ビス[(1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]−2−ベンジルグリセロールジアンモニウム塩
【0112】
【化23】

【0113】
2−ブタノン(15 mL)中の、5Cで得た保護されたカルジオリピン(2.5 g, 2.12 mmol)およびヨウ化ナトリウム(956 mg, 6.36 mmol)溶液を90℃で3時間還流した。揮発物を蒸発させ、残渣をSi02カラムで精製して(1%アンモニウムを含むCH2Cl2中20%エタノール)、1.52 g(75%)の生成物を無色の半固体として得た。
TLC (Si02) CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.53. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 32H), 1.56-1.64 (m, 8H), 2.22-2.34 (m, 8H), 3.66-3.76 (m, 1H), 3.82-4.06 (m, 8H), 4.08-4.18 (m, 2H), 4.26-4.37 (m, 2H), 4.60 (s, 2H), 5.14-5.26 (m, 2H), 7.22-7.36 (m, 5H), 7.49 (bs, 8H).
【0114】
5E.1,3−ビス[(1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩
【0115】
【化24】

【0116】
テトラヒドロフラン(25 mL)中の、5Dで得た保護されたカルジオリピン(1.5 g, 1.27 mmol)溶液を、50psiにて10%Pd/C(600 mg)で10時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、2mLの30%アンモニア溶液で処理し、濃縮した。残渣をCHC1に溶解し、0.25μフィルターでろ過し、濃縮してCカルジオリピン(950 mg, 80%)を半固体として得た。
TLC (SiO2) CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.43. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 32H), 1.56-1.64 (m, 8H), 2.22-2.34 (m, 8H), 3.82-3.98 (m, 9H), 4.12-4.18 (m, 2H), 4.35-4.42 (m, 2H), 5.14-5.24 (m, 2H), 7.41 (bs, 8H). ESI-MS (negative), m/z 925.7 (M-2NH4++Na+)-, 903.1 (M-2NH4+), 760.6 (M-2NH4+-RCOO-), 451.2 (M-2NH4+)2-.
【0117】
実施例6.テトラヘキサノイルカルジオリピン
6A.1,2−ジヘキサノイル−3−ベンジル−sn−グリセロール
【0118】
【化25】

【0119】
無水ピリジン(30 mL)中の(R)−(+)−3−ベンジルオキシ−1,2−プロパンジオール(2.6 g, 14.26 mmol)溶液に、ヘキサノイルクロリド(4.8 g, 35.67 mmol)を10分かけて滴下し、次いでDMAP(175 mg, 1.42 mmol)を滴下した。反応混合物を55℃で48時間攪拌し、EtOAc(200 mL)で希釈し、順に水(100 mL)、1N HCl(2 x 100 mL)および食塩水(100 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(ヘキサン中3% EtOAc)、4.1 g(76%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (9:1) Rf〜0.48. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.87 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 8H), 1.52-1.66 (m, 4H), 2.22-2.34 (m, 4H), 3.58 (d, J= 4.2 Hz, 2H), 4.18 (dd, J= 6.4 and 11.9 Hz, 1H), 4.34 (dd, J= 6.4 and 11.9 Hz, 1H), 4.51 (d, J= 12.2 Hz, 1H), 4.57 (d, J= 12.2 Hz, 1H), 5.21-5.28 (m, 1H), 7.28-7.36 (m, 5H).
【0120】
6B.1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロール
【0121】
【化26】

【0122】
EtOH:EtOAc:AcOH (9:1:0.1)(30 mL)中の、6Aで得た保護されたジヘキサノイルグリセロール(3.1 g, 8.2 mmol)溶液を、40psiにて10%Pd/C(600 mg, 10%)で3時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、濃縮した。得られたグリセロール(3.52g, 92%)を高真空で乾燥した。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.34. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.87 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 8H), 1.52-1.66 (m, 4H), 2.03 (t, J= 6.2 Hz, 1H, D20 exchangeable), 2.32 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.35 (t, J= 7.6 Hz, 2H) 3.73 (t, J= 6.0 Hz, 2H)), 4.22 (dd, J= 5.8 and 11.9 Hz, 1H), 4.33 (dd, J= 5.8 and 11.9 HZ, 1H), 5.08 (quintet, J= 5.1 Hz, 1H).
【0123】
6C.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0124】
【化27】

【0125】
40mLの無水CHCl中の、6Bで得た1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロール(3.5g, 13.19 mmol)およびテトラゾール(35.1 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 15.83 mmol)溶液に、ジベンジルジイソプロピルホスホラミダイト(5.46g, 15.83 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。内容物を200 mLのCHClで希釈し、次いで5%NaHCO水溶液(2 x 50 mL)、食塩水(2 x 50 mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空で濃縮し、油状残渣(7.0 g)をデシケーター中で8時間乾燥し、そのまま次の反応に用いた。
【0126】
CHCl(40 mL)中の、上記ホスファイト、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール(0.957 g, 5.25 mmol)、ピリジン(10.6 mL, 131.13 mmol)およびEt3N(8.0 mL, 65.65 mmol)溶液を−40℃に冷却して、同時にピリジニウムトリブロミド(6.3 g, 19.69 mmol)を加えた。混合物を同温で1時間攪拌し、2時間かけて徐々に室温にして、水(30 mL)で処理した。内容物をEtOAc(250 mL)で希釈して、有機相を順に5% NaHCO3水溶液(2 x 50 mL)、水(50 mL)および食塩水(50 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(CHCl中10%アセトン)、3.57 g(64%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.40. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.87 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 0.89 (t, J= 7.0 Hz, 6H), 1.22-1.34 (m, 16H), 1.52-1.62 (m, 8H), 2.22-2.29 (m, 8H), 3.70-3.78 (m, 1H), 4.01-4.16 (m, 10H), 4.22-4.28 (m, 2H), 4.60 (d, J= 7.8 Hz, 2H), 5.01-5.05 (m, 4H), 5.15-5.18 (m, 2H), 7.28-7.36 (m, 15H).
【0127】
6D.1,3−ビス[(1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩
【0128】
【化28】

【0129】
テトラヒドロフラン(25 mL)中の6Cで得た保護されたカルジオリピン(1.5 g, 1.41 mmol)溶液を、50psiにて10%Pd/C(600 mg)で10時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、2 mLの30%アンモニア溶液で処理し、濃縮した。残渣をCHC1に溶解し、0.25μフィルターでろ過し、濃縮しCカルジオリピン(940 mg, 81%)を半固体として得た。
TLC (SiO2) CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.36. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 16H), 1.56-1.64 (m, 8H), 2.22-2.34 (m, 8H), 3.82-3.98 (m, 9H), 4.12-4.18 (m, 2H), 4.35-4.42 (m, 2H), 5.14-5.24 (m, 2H), 7.41 (bs, 8H). ESI-MS (negative), m/z 813 (M-2NH4++Na+), 791 (M-2NH4++H+), 395 (M-2NH4+)2-.
【0130】
実施例7.テトラオレオイルカルジオリピン(不飽和)の合成
7A.シス−5−レブリノイル−2−フェニル−1,3−ジオキサン
【0131】
【化29】

【0132】
CHCl(80 mL)中のシス−1,3−O−ベンジリデングリセロール(5.0 g, 27.74 mmol)溶液に、0℃で、DCC(8.58 g, 41.61 mmol)、DMAP(3.38 g, 27.74)およびレブリン酸(4.0 g, 34.68 mmol)を順に加えた。混合物を室温で24時間攪拌した。分離した尿素をろ過し、ろ液を濃縮して、80%EtOAc/ヘキサンを溶出剤としてフラッシュクロマトグラフィーで精製して生成物を白色固体(5.86 g, 76%)として得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (1:1) Rf〜0.51. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 2.19 (s, 3H), 2.58-2.89 (m, 4H), 4.18 (dd, J= 12.0, 1.5 Hz, 2H), 4.25 (dd, J= 12.0, 1.5 Hz, 2H), 4.71 (dd, J= 1.5, 1.5 Hz, 1H), 5.55 (s, 1H), 7.24-7.53 (m, 5H).
【0133】
7B.2−レブリノイル−1,3−プロパンジオール
【0134】
【化30】

【0135】
EtOH:EtOAc(1:1)(100 mL)中の、7Aで得た保護されたグリセロール(5.8 g, 20.86 mmol)溶液を、50psiにて10%Pd/C(800 mg, 10%)で8時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、濃縮した。得られた2−レブリノイルグリセロールを6%MeOH/CH2Cl2を溶出剤としてフラッシュクロマトグラフィーで精製して生成物を白色固体(2.82 g, 70%)として得た。
TLC (Si02) MeOH/CH2Cl2 (1:9) Rf〜0.31. 1H NMR δ (CDC13, 300 MHz) 2.19 (s, 3H), 2.58 (dd, J= 6.0, 6.0 Hz, 2H), 2.80 (dd, J= 6.0, 6.0 Hz, 2H),3.09 (bs, 2H), 3.72-3.87 (m, 4H), 4.90 (q, J= 5.1 Hz).
【0136】
7C.2−レブリノイル−1,3−ビス[(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0137】
【化31】

【0138】
20mLの無水CHCl中の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロール(1.5 g, 2.41 mmol)およびテトラゾール(8 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 3.62 mmol)溶液に、ジベンジルジイソプロピルホスホラミダイト(1.25g, 3.62 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。内容物を100mLのCHClで希釈し、次いで5%NaHCO水溶液(2 x 50 mL)、食塩水(2 x 50 mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空で濃縮し、油状残渣(2.08 g)をデシケーター中で8時間乾燥し、そのまま次の反応に用いた。
【0139】
CHCl(20 mL)中の、上記ホスファイト、2−レブリノイル−1,3−プロパンジオール(0.185 g, 0.96 mmol)、ピリジン(2 mL, 24.1 mmol)およびEt3N(1.2 mL, 12.05 mmol)溶液を−40℃に冷却して、同時にピリジニウムトリブロミド(1.15 g, 3.61 mmol)を加えた。混合物を同温で1時間攪拌し、2時間かけて徐々に室温にして、水(10 mL)で処理した。内容物をEtOAc(100 mL)で希釈して、有機相を順に5% NaHCO3水溶液(2 x 50 mL)、水(50 mL)および食塩水(50 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(CHCl中5%アセトン)、1.09 g(66%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (1:2) Rf〜0.64. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 80H), 1.52-1.66 (m, 8H), 1.96-2.07 (m, 16H), 2.15 (s, 3H), 2.22-2.31 (m, 8H), 2.52-2.57 (m, 2H), 2.66-2.74 (m, 2H), 4.01-4.32 (m, 12H), 5.01-5.10 (m, 5H), 5.15-5.18 (m, 2H), 5.28-5.39 (m, 8H), 7.28-7.39 (m, 10H).
【0140】
7D.1,3−ビス[(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]−2−レブリノイルグリセロールジアンモニウム塩
【0141】
【化32】

【0142】
2−ブタノン(8 mL)中の、7Cで得た保護されたカルジオリピン(0.525 g, 0.324 mmol)およびヨウ化ナトリウム(145 mg, 0.972 mmol)溶液を90℃で3時間還流した。揮発物を蒸発させ、残渣をSi02カラムで精製して(1%アンモニウムを含むCHCl中10%メタノール)、240 mg(50%)の生成物を無色の半固体として得た。
TLC (Si02) CHC13/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.63. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.39 (m, 80H), 1.52-1.65 (m, 8H), 1.96-2.07 (m, 16H), 2.18 (s, 3H), 2.23-2.35 (m, 8H), 2.52-2.59 (m, 2H), 2.71-2.79 (m, 2H), 3.83-4.04 (m, 6H), 4.12-4.23 (m, 4H), 4.31-4.39 (m, 2H), 5.01-5.09 (m, 1H), 5.17-5.26 (m, 2H), 5.28-5.39 (m, 8H), 7.41-7.59 (bs, 8H). ESI-MS (negative), m/z 1576.5 (M-2NH4++Na+)-, 1554 (M-2NH4+), 1272.2 (M-2NH4+-RCOO-), 776 (M-2NH4+)2-.
【0143】
7E.1,3−ビス[(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩(テトラオレオイルカルジオリピンの合成)
【0144】
【化33】

【0145】
ピリジン:酢酸(3 mL, 4:1)中の、7Dで得たlev-保護されたカルジオリピン(140 mg, 0.088 mmol)溶液にヒドラジン(hydazine)(14 mg, 0.44 mmol)を加え、30分攪拌した。揮発物をロータベイパー(rotavapor)中で除去し、残渣をSi02で精製して(1%アンモニアを含むCHCl中10%メタノール)、80 mg(61 %)の生成物を無色の半固体として得た。
TLC (Si02) (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.55. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.39 (m, 80H), 1.52-1.65 (m, 8H), 1.82 (bs, 1H), 1.96-2.07 (m, 16H), 2.23-2.35 (m, 8H), 3.83-3.94 (m, 7H), 4.12-4.23 (m, 4H), 4.33-4.39 (m, 2H), 5.17-5.23 (m, 2H), 5.28-5.39 (m, 8H), 7.41-7.59 (bs, 8H). ESI-MS (negative), m/z 1478 (M-2NH4++Na+)-, 1456 (M-2NH4+), 1174.2 (M-2NH4+-RCOO-), 727.5 (M-2NH4+)2-.
【0146】
カルジオリピンエーテル類似体
実施例8.テトララウリルカルジオリピンの合成
8A.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジラウリル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0147】
【化34】

【0148】
40mLの無水CHCl中の1,2−ジラウリル−sn−グリセロール(3.0 g, 7.00 mmol)およびテトラゾール(19.5 mL、アセトニトリル中0.45 M sol, 8.76 mmol)溶液に、ジベンジルジイソプロピルホスホラミダイト(3.02g, 8.76 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。内容物を100 mLのCHClで希釈し、次いで5%NaHCO水溶液(2 x 50 mL)、食塩水(2 x 50 mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空で濃縮し、油状残渣(4.5 g)をデシケーター中で8時間乾燥し、そのまま次の反応に用いた。
【0149】
CHCl(40 mL)中の、上記ホスファイト、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール(0.48 g, 2.67 mmol)、ピリジン(5.43 mL, 66.8 mmol)およびEt3N(4.63 mL, 33.4 mmol)溶液を−40℃に冷却して、同時にピリジニウムトリブロミド(3.25 g, 10.02 mmol)を加えた。混合物を同温で1時間攪拌し、2時間かけて徐々に室温にして、水(30 mL)で処理した。内容物をEtOAc(150 mL)で希釈して、有機相を順に5% NaHCO3水溶液(2 x 50 mL)、水(50 mL)および食塩水(50 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。残渣をSi02カラムで精製して(ヘキサン中30%酢酸エチル)、2.34 g(67%)の生成物を無色のシロップとして得た。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0. 47. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.88 (t, J= 6.6 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 72H), 1.47-1.56 (m, 8H), 3.35-3.58 (m, 14H), 3.72-3.78 (m, 1H), 3.95-4.18 (m, 8H), 4.59-4.61 (m, 2H), 5.02-5.07 (m, 4H), 7.26-7.34 (m, 15H).
【0150】
8B.1,3−ビス[(1,2−ジラウリル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩(テトララウリルカルジオリピン)
【0151】
【化35】

【0152】
テトラヒドロフラン(20 mL)中の、8Aで得た保護されたカルジオリピン(650 mg, 0.48 mmol)溶液を、50psiで10%Pd/C(200 mg)で6時間水素化した。触媒をセライト床でろ去し、2mLの30%アンモニア溶液で処理し、濃縮し、残渣をCHClに溶解し、0.25μフィルターでろ過し、アセトンで沈殿させてC12カルジオリピン(400 mg, 75%)を白色半固体として得た。
TLC (Si02) CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.39. 1H NMR δ (CDCl3, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 72H), 1.52-1.66 (m, 8H), 3.39-3.48 (m, 9H), 3.51-3.61 (m, 6H), 3.80-3.96 (m, 8H), 7.31-7.59 (bs, 8H). ESI-MS (negative), m/z 1094.1 (M-2NH4++Na+), 1072.0 (M-2NH4++H+), 535.5 (M-2NH4+)2-.
【0153】
実施例9.テトラヘキシルカルジオリピンの合成
9A.2−ベンジル−1,3−ビス[(1,2−ジヘキシル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジベンジルエステル
【0154】
【化36】

【0155】
標題化合物を実施例8Aで記載した方法によって調製した。
TLC (Si02) ヘキサン/EtOAc (3:2) Rf〜0.39. 1H NMR δ (CDCl3, 300 MHz) 0.88 (t, J= 6.6 Hz, 12H), 1.22-1.37 (m, 24H), 1.47-1.58 (m, 8H), 3.34-3.58 (m, 14H), 3.72-3.78 (m, 1H), 3.94-4.18 (m, 8H), 4.59-4.61 (m, 2H), 5.02-5.08 (m, 4H), 7.26-7.34 (m, 15H).
【0156】
9B.1,3−ビス[(1,2−ジヘキシル−sn−グリセロ−3)−ホスフォリル]グリセロールジアンモニウム塩(テトラへキシルカルジオリピン)
【0157】
【化37】

【0158】
標題化合物を実施例8Bで記載した方法によって調製した。
TLC (Si02) CHCl3/MeOH/NH40H (6.5:2.5:0.5) Rf〜0.31. 1H NMR δ (CDC13, 500 MHz) 0.88 (t, J= 7.0 Hz, 12H), 1.22-1.34 (m, 24H), 1.50-1.61 (m, 8H), 1.88 (bs, 1H), 3.39-3.48 (m, 9H), 3.51-3.61 (m, 6H), 3.80-3.96 (m, 8H), 7.31-7.69 (bs, 8H).
【0159】
実施例10.
本実施例は、本発明によるカルジオリピン含有リポソーム組成物の調製を例示する。小さな単層ベシクルを、本明細書に記載した方法によって生成した19.1μモルのカルジオリピン、96.2μモルのホスファチジルコリンおよび64.6μモルのコレステロールを混合することによって形成する。完全に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いて、50mL丸底フラスコ中で混合物を蒸発乾燥する。得られた乾燥脂質フィルムを10mL無菌の発熱物質を含まない水に再懸濁する。30分膨潤させた後、得られた懸濁液を固定温度浴中、25℃で15分超音波処理する。次いでリポソーム調製物をトレハロースとともに凍結乾燥する。
【0160】
本明細書中で引用された刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照により、一つ一つ具体的に援用されることが示され、本明細書にその参考文献の全体が記述されているのと同程度まで、参照によって本明細書中に援用されるものとする。
【0161】
本明細書に他に記述がないか又は文脈に明らかに矛盾していない限り、本発明を表す文脈における用語「a」、「an」、「the」および類似表現の使用は(特に請求の範囲中の文脈において)、単数および複数の両方を包含していると解釈されるものとする。他に注釈がなければ、用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」は制限のない用語(つまり、「含むがそれに制限されない」という意味)として解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の言及は、本明細書に他に記述がない限り、範囲内に含まれるそれぞれ個々の値を個別に言及する簡略な方法として働くことを単に意図されたもので、それぞれ個々の値は個別に本明細書中に記述されたものの如く本明細書中に包含される。本明細書中他に記述がないか、又は文脈に明らかに矛盾していない限り、本明細書中に記載した全ての方法はどんな適当な順序でも行われうる。本明細書中に出されたいずれのそして全ての実施例、又は例示的な言葉(例えば「〜のような(such as)」)の使用は、単に発明をより明らかにするよう意図したものであり、他に主張がない限り、本発明の範囲に制限をもたらすようなものではない。明細書中のどの言葉も、未請求の要素を本発明の実施に必須であると示唆していると解釈されるべきではない。
【0162】
本発明の好ましい実施態様を本明細書に記載し、それには本発明者らが知る本発明を実施するための最良の態様が含まれている。それらの好ましい実施態様の改変は、前述の説明を読むことによって当業者に明らかになるだろう。本発明者らは当業者がそのような改変を適切に使用することを予期し、さらに本発明がここに具体的に記載した以外の方法で実施されることを意図している。したがって本発明は、適用法で許可されている通り、ここに添付する特許請求の範囲において言及した主題の全ての変更や等価物を含む。さらには、本明細書中に他に記述がないか、又は文脈に明らかに矛盾していない限り、それらの全ての可能な改変において、上述の要素のいかなる組み合わせも、本発明によって包含されている。
【0163】
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【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1はカルジオリピンの一般構造を表す。
【図2】図2はカルジオリピンを合成する1つのスキームを表す。
【図3】図3はカルジオリピンを合成する別のスキームを表す。
【図4】図4はカルジオリピンを合成する別のスキームを表す。
【図5】図5はカルジオリピンを合成する別のスキームを表す。
【図6】図6はカルジオリピンエーテル類似体を合成する別のスキームを表す。
【図7】図7はカルジオリピンエーテル類似体を合成する別のスキームを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、IIまたはIIIを有するカルジオリピン類似体:
【化1】

【化2】

【化3】

を調製するための方法であって、式VIII:
【化4】

のアルコールを、1つ以上のホスホラミド(phosphoramide)試薬および2−O−保護されたグリセロールまたは2−O−置換されたグリセロールと、酸触媒の存在下で反応させることを含む方法(式I、II、IIIまたはVIII中、
およびYは同一または異なって−O−C(O)−、−O−、−S−もしくは−NH−C(O)−であり;
およびRは同一または異なって、H、C〜C34飽和または不飽和アルキル基であり;
は(CHおよびn=0〜15であり;
は、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ぺプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、複素環化合物、ヌクレオシド、またはポリヌクレオチドであり;
は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルキルオキシ、ポリアルキルオキシ、ペプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物を含むリンカーであり;
Xは水素、非毒性陽イオンである)。
【請求項2】
酸触媒が、4,5−ジクロロイミダゾール、1H−テトラゾール、5−(4−ニトロフェニル)−1H−テトラゾール、5−(3,5−ジニトロフェニル)−1H−テトラゾール、N−メチルイミダゾリウムトリフレート、およびN−メチルイミダゾリウム過塩素酸塩、4,5−ジシアノイミダゾール、5−エチルチオ−1H−テトラゾール、および5−メチルチオ−1H−テトラゾールからなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結合ホスホラミダイトの少なくとも1つが式IV:
【化5】

である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
結合ホスホラミダイトの少なくとも1つが式V:
【化6】

である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
式I、IIもしくはIIIのカルジオリピンまたはその類似体を調製する方法であって、2−O−保護されたグリセロールを1つ以上のリン酸トリエステルと、ピリジニウムトリブロミドの存在下で反応させることを含む方法。
【請求項6】
1つ以上のリン酸トリエステルが、式VIIIのアルコールを一般式VII:
【化7】

のホスホラミダイトと反応させることによって生成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式IV、VまたはVIIにおけるXが、エチル、シクロヘキシル、t−ブチルを含むアルキルホスフェート;2−シアノエチル、4−シアノ−2−ブテニル、2−(メチルジフェニルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリフェニルシリル)エチルを含む2−置換されたエチルホスフェート;2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリブロモメチル、2,2,2−トリフルオロエチルを含むハロエチルホスフェート;4−クロロベンジル、フルオレニル−9−メチル、ジフェニルメチルを含むベンジルホスフェートおよびアミダートを含むホスフェート保護基である、請求項3、4または6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
および/またはRの少なくとも1つが、4〜14の炭素を有する飽和または不飽和アルキル基である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
カルジオリピンが、2〜14の炭素を有する短鎖脂肪酸を含む、請求項1〜8に記載の方法。
【請求項10】
カルジオリピンが、4〜12の炭素を有する脂肪酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
カルジオリピンが、14〜34の炭素を有する長鎖脂肪酸を含む、請求項1〜8に記載の方法。
【請求項12】
カルジオリピンが、14〜24の炭素を有する脂肪酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カルジオリピンが飽和および/または不飽和である、請求項1〜12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって調製される、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体。
【請求項15】
リポソームを調製する方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜13に記載の方法によって調製すること、およびカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項16】
リポソームに薬剤を保有させる方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜13に記載の方法によって調製すること、ならびにカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体および薬剤をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項17】
リポソームに薬剤を保有させる方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜13に記載の方法によって調製すること、ならびにカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体および薬剤混合物をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項18】
混合物が2つ以上の薬剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載の方法で調製されるリポソーム組成物。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれかに記載の方法によって調製されるカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を含む脂質組成物。
【請求項21】
リポソームである、請求項20の組成物。
【請求項22】
単層ベシクル、多層ベシクルまたはそれらの混合物を含む、請求項19または21に記載の組成物。
【請求項23】
リポソームが約1ミクロン以下の直径を有する、請求項19または21に記載のリポソーム組成物。
【請求項24】
リポソームが約500nm以下の直径を有する、請求項19または21に記載のリポソーム組成物。
【請求項25】
リポソームが約200nm以下の直径を有する、請求項19または21に記載のリポソーム組成物。
【請求項26】
リポソームが約100nm以下の直径を有する、請求項19または21に記載のリポソーム組成物。
【請求項27】
リポソーム以外のものである、請求項20に記載の組成物。
【請求項28】
さらにホスファチジルコリン、ステロールおよびトコフェノールを含む、請求項19〜27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジアラキドノイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、水添大豆ホスファチジルコリン、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるホスファチジルコリンをさらに含む、請求項19〜28のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるホスファチジルグリセロールをさらに含む、請求項19〜29のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
コレステロール、コレステロールの誘導体、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コレステロールヘミスクシナート、コレステロール硫酸、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるステロールをさらに含む、請求項19〜30のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
1つ以上の標的剤を含む、請求項19〜31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
標的剤がタンパク質である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
タンパク質が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチドホルモン、レセプターリガンド、およびそれらの混合物からなるタンパク質である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
凍結された形態におけるものである、請求項19〜34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
さらに凍結防止剤を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
さらにリガンドを含む、請求項19〜36のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
リガンドが抗体または細胞レセプターのためのリガンドである、請求項37に記載のリポソーム組成物。
【請求項39】
さらに医薬的に許容される賦形剤を含む、請求項19〜38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
さらに活性剤を含む、請求項18〜39のいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
さらに活性剤の混合物を含む、請求項19〜40のいずれかに記載の組成物。
【請求項42】
混合物が2つ以上の活性剤を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
活性剤の少なくとも1つがカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体と複合体を形成する、請求項19〜42のいずれかに記載の組成物。
【請求項44】
活性剤の少なくとも1つがリポソーム内に取り込まれている、請求項19〜43のいずれかに記載の組成物。
【請求項45】
疾患の治療のための薬物を調製するための、請求項40〜44のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項46】
疾患が癌である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
活性剤または活性剤の混合物を細胞へ送達する方法であって、請求項40〜44のいずれかに記載の組成物を調製すること、および組成物を細胞に触れさせることを含む方法。
【請求項48】
細胞がインビトロのものである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
細胞がインビボのものである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
ヒトまたは動物疾患を治療するための方法であって、請求項40〜44のいずれかに記載の組成物を調製すること、および組成物を治療の必要のあるヒトまたは動物に触れさせて、活性剤をヒトまたは動物患者に送達することを含む方法。
【請求項51】
疾患が癌であり、活性剤の少なくとも1つが抗がん剤である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
老化に効く薬物を調製するためのカルジオリピンの使用。
【請求項53】
哺乳類の疾患に効く薬物を調製するためのカルジオリピンの使用。
【請求項54】
疾患が、加齢に関連した疾患、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心臓障害、虚血、および皮膚障害からなる群より選ばれる、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
カルジオリピンがリポソーム組成物の形態である、請求項52〜54のいずれかに記載の使用。
【請求項56】
カルジオリピンがリポソーム組成物以外の形態である、請求項52〜55のいずれかに記載の使用。
【請求項57】
患者における老化の影響を治療する方法であって、患者に治療上有効な量のカルジオリピンを投与し、患者において老化の作用を抑えることを含む方法。
【請求項58】
哺乳類の疾患を治療する方法であって、治療の必要な患者に該疾患を治療するのに十分なある量のカルジオリピンを投与することを含む方法。
【請求項59】
疾患が、加齢に関連した疾患、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心臓疾患、虚血、および皮膚障害からなる群より選ばれる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
組成物がカルジオリピンに加えて、1つ以上の医薬的に許容される担体を含む、請求項57〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
組成物が皮膚に投与される、請求項57〜60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
組成物が静脈内に投与される、請求項57〜61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
組成物がリポソーム組成物以外のものである、請求項57〜62のいずれかに記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、IIまたはIIIを有するカルジオリピン類似体:
【化1】

【化2】

【化3】

を調製するための方法であって、式VIII:
【化4】

のアルコールを、1つ以上のホスホラミダイト試薬および2−O−保護されたグリセロールまたは2−O−置換されたグリセロールと、酸触媒の存在下で反応させることを含む方法(式I、II、IIIまたはVIII中、
およびYは同一または異なって−O−C(O)−、−O−、−S−もしくは−NH−C(O)−であり;
およびRは同一または異なって、H、C〜C34飽和または不飽和アルキル基であり;
は(CHおよびn=0〜15であり;
は、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ぺプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、複素環化合物、ヌクレオシド、またはポリヌクレオチドであり;
は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルキルオキシ、ポリアルキルオキシ、ペプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物を含むリンカーであり;
Xは水素、非毒性陽イオンである)。
【請求項2】
酸触媒が、4,5−ジクロロイミダゾール、1H−テトラゾール、5−(4−ニトロフェニル)−1H−テトラゾール、5−(3,5−ジニトロフェニル)−1H−テトラゾール、N−メチルイミダゾリウムトリフレート、およびN−メチルイミダゾリウム過塩素酸塩、4,5−ジシアノイミダゾール、5−エチルチオ−1H−テトラゾール、および5−メチルチオ−1H−テトラゾールからなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結合ホスホラミダイトの少なくとも1つが式IV:
【化5】

である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
結合ホスホラミダイトの少なくとも1つが式V:
【化6】

である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
式I、IIもしくはIIIのカルジオリピンまたはその類似体を調製する方法であって、2−O−保護されたグリセロールを1つ以上のリン酸トリエステルと、ピリジニウムトリブロミドの存在下で反応させることを含む方法。
【請求項6】
1つ以上のリン酸トリエステルが、式VIIIのアルコールを一般式VII:
【化7】

のホスホラミダイトと反応させることによって生成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式IV、VまたはVIIにおけるXが、エチル、シクロヘキシル、t−ブチルを含むアルキルホスフェート;2−シアノエチル、4−シアノ−2−ブテニル、2−(メチルジフェニルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリフェニルシリル)エチルを含む2−置換されたエチルホスフェート;2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリブロモメチル、2,2,2−トリフルオロエチルを含むハロエチルホスフェート;4−クロロベンジル、フルオレニル−9−メチル、ジフェニルメチルを含むベンジルホスフェートおよびアミダートを含むホスフェート保護基である、請求項3、4または6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
および/またはRの少なくとも1つが、4〜14の炭素を有する飽和または不飽和アルキル基である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
カルジオリピンが、2〜14の炭素を有する短鎖脂肪酸を含む、請求項1〜8に記載の方法。
【請求項10】
カルジオリピンが、4〜12の炭素を有する脂肪酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
カルジオリピンが、14〜34の炭素を有する長鎖脂肪酸を含む、請求項1〜8に記載の方法。
【請求項12】
カルジオリピンが、14〜24の炭素を有する脂肪酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カルジオリピンが飽和および/または不飽和である、請求項1〜12に記載の方法。
【請求項14】
リポソームを調製する方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜13に記載の方法によって調製すること、およびカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項15】
リポソームに薬剤を保有させる方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜13に記載の方法によって調製すること、ならびにカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体および薬剤をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項16】
リポソームに薬剤を保有させる方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜13に記載の方法によって調製すること、ならびにカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体および薬剤混合物をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項17】
混合物が2つ以上の薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜1のいずれかに記載の方法で調製されるリポソーム組成物。
【請求項19】
単層ベシクル、多層ベシクルまたはそれらの混合物を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
リポソームが約1ミクロン以下の直径を有する、請求項1または19に記載のリポソーム組成物。
【請求項21】
リポソームが約500nm以下の直径を有する、請求項1または19に記載のリポソーム組成物。
【請求項22】
リポソームが約200nm以下の直径を有する、請求項1または19に記載のリポソーム組成物。
【請求項23】
リポソームが約100nm以下の直径を有する、請求項1または19に記載のリポソーム組成物。
【請求項24】
さらにホスファチジルコリン、ステロールおよびトコフェノールを含む、請求項1〜2のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジアラキドノイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、水添大豆ホスファチジルコリン、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるホスファチジルコリンをさらに含む、請求項1〜2のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるホスファチジルグリセロールをさらに含む、請求項1〜2のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
コレステロール、コレステロールの誘導体、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コレステロールヘミスクシナート、コレステロール硫酸、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるステロールをさらに含む、請求項126のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
さらに1つ以上の標的剤を含む、請求項127のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
標的剤がタンパク質である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
タンパク質が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチドホルモン、レセプターリガンド、およびそれらの混合物からなるタンパク質である、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
凍結された形態におけるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
さらに凍結防止剤を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項33】
さらにリガンドを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
リガンドが抗体または細胞レセプターのためのリガンドである、請求項3に記載のリポソーム組成物。
【請求項35】
さらに医薬的に許容される賦形剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
さらに活性剤を含む、請求項18〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
さらに活性剤の混合物を含む、請求項136のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
混合物が2つ以上の活性剤を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
活性剤の少なくとも1つがカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体と複合体を形成する、請求項138のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
活性剤の少なくとも1つがリポソーム内に取り込まれている、請求項139のいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
疾患の治療のための薬物を調製するための、請求項36〜4のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項42】
疾患が癌である、請求項4に記載の使用。
【請求項43】
活性剤または活性剤の混合物を細胞へ送達する方法であって、請求項1417のいずれかに記載の組成物を調製すること、および組成物を細胞に触れさせることを含む方法。
【請求項44】
細胞がインビトロのものである、請求項4に記載の方法。
【請求項45】
細胞がインビボのものである、請求項4に記載の方法。
【請求項46】
ヒトまたは動物疾患を治療するための方法であって、請求項1417のいずれかに記載の組成物を調製すること、および組成物を治療の必要のあるヒトまたは動物に触れさせて、活性剤をヒトまたは動物患者に送達することを含む方法。
【請求項47】
疾患が癌であり、活性剤の少なくとも1つが抗がん剤である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
老化に効く薬物を調製するためのカルジオリピンの使用。
【請求項49】
哺乳類の疾患に効く薬物を調製するためのカルジオリピンの使用。
【請求項50】
疾患が、加齢に関連した疾患、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心臓疾患、虚血、および皮膚障害からなる群より選ばれる、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
カルジオリピンがリポソーム組成物の形態である、請求項48〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項52】
カルジオリピンがリポソーム組成物以外の形態である、請求項48〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項53】
患者における老化の作用を治療する方法であって、患者に治療上有効な量のカルジオリピンを投与し、患者において老化の作用を抑えることを含む方法。
【請求項54】
哺乳類の疾患を治療する方法であって、治療の必要な患者に該疾患を治療するのに十分なある量のカルジオリピンを投与することを含む方法。
【請求項55】
疾患が、加齢に関連した疾患、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心臓疾患、虚血、および皮膚障害からなる群より選ばれる、請求項5に記載の方法。
【請求項56】
組成物がカルジオリピンに加えて、1つ以上の医薬的に許容される担体を含む、請求項5〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
組成物が皮膚に投与される、請求項556のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
組成物が静脈内に投与される、請求項556のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
組成物がリポソーム組成物以外のものである、請求項558のいずれかに記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、IIまたはIIIを有するカルジオリピン類似体:
【化1】

【化2】

【化3】

を調製するための方法であって、式VIII:
【化4】

のアルコールを、1つ以上のホスホラミダイト試薬および2−O−保護されたグリセロールまたは2−O−置換されたグリセロールと、酸触媒の存在下で反応させることを含む方法(式I、II、IIIまたはVIII中、
およびYは同一または異なって−O−C(O)−、−O−、−S−もしくは−NH−C(O)−であり;
およびRは同一または異なって、H、C〜C34飽和または不飽和アルキル基であり;
は(CHおよびn=0〜15であり;
は、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、ぺプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、複素環化合物、ヌクレオシド、またはポリヌクレオチドであり;
は、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルキルオキシ、ポリアルキルオキシ、ペプチド、ジペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物を含むリンカーであり;
Xは水素、非毒性陽イオンである)。
【請求項2】
酸触媒が、4,5−ジクロロイミダゾール、1H−テトラゾール、5−(4−ニトロフェニル)−1H−テトラゾール、5−(3,5−ジニトロフェニル)−1H−テトラゾール、N−メチルイミダゾリウムトリフレート、およびN−メチルイミダゾリウム過塩素酸塩、4,5−ジシアノイミダゾール、5−エチルチオ−1H−テトラゾール、および5−メチルチオ−1H−テトラゾールからなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スホラミダイト試薬の少なくとも1つが式IV:
【化5】

である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スホラミダイト試薬の少なくとも1つが式V:
【化6】

である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
式I、IIもしくはIIIのカルジオリピンまたはその類似体を調製する方法であって、2−O−保護されたグリセロールを1つ以上のリン酸トリエステルと、ピリジニウムトリブロミドの存在下で反応させることを含む方法。
【請求項6】
1つ以上のリン酸トリエステルが、式VIIIのアルコールを一般式VII:
【化7】

のホスホラミダイトと反応させることによって生成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式IV、VまたはVIIにおけるXが、エチル、シクロヘキシル、t−ブチルを含むアルキルホスフェート;2−シアノエチル、4−シアノ−2−ブテニル、2−(メチルジフェニルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリフェニルシリル)エチルを含む2−置換されたエチルホスフェート;2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリブロモメチル、2,2,2−トリフルオロエチルを含むハロエチルホスフェート;4−クロロベンジル、フルオレニル−9−メチル、ジフェニルメチルを含むベンジルホスフェートおよびアミダートを含むホスフェート保護基である、請求項3、4または6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
カルジオリピンまたはその類似体が、2〜14の炭素を有する短鎖脂肪酸を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
カルジオリピンまたはその類似体が、4〜12の炭素を有する脂肪酸を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
カルジオリピンまたはその類似体が、14〜34の炭素を有する長鎖脂肪酸を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
カルジオリピンまたはその類似体が、14〜24の炭素を有する長鎖脂肪酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
カルジオリピンまたはその類似体が飽和および/または不飽和である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
リポソームを調製する方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって調製すること、およびカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項14】
リポソームに薬剤を保有させる方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって調製すること、ならびにカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体および薬剤をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項15】
リポソームに薬剤を保有させる方法であって、カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって調製すること、ならびにカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体および薬剤混合物をリポソーム中に含めることを含む方法。
【請求項16】
混合物が2つ以上の薬剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項〜1のいずれかに記載の方法で調製される組成物。
【請求項18】
さらにホスファチジルコリン、ステロールおよびトコフェノールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジアラキドノイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、水添大豆ホスファチジルコリン、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるホスファチジルコリンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるホスファチジルグリセロールをさらに含む、請求項17または19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
コレステロール、コレステロールの誘導体、コプロスタノール、コレスタノール、コレスタン、コレステロールヘミスクシナート、コレステロール硫酸、およびそれらの混合物からなる群より選ばれるステロールをさらに含む、請求項17、19または20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
さらに1つ以上の標的剤を含む、請求項121のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
さらに凍結防止剤を含む、請求項17〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
さらにリガンドを含む、請求項123のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
リガンドが抗体または細胞レセプターのためのリガンドである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
凍結された形態におけるものである、請求項125のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
さらに医薬的に許容される賦形剤を含む、請求項126のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
さらに1つ以上の活性剤を含む、請求項127のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
活性剤の少なくとも1つがカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体と複合体を形成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
活性剤の少なくとも1つがリポソーム内に取り込まれている、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
活性剤または活性剤の混合物を細胞へ送達する方法であって、請求項16のいずれかに記載の方法で組成物を調製すること、および組成物を細胞に触れさせることを含む方法。
【請求項32】
細胞がインビトロのものである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項17−30のいずれかに記載のカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を含む、老化に効く治療剤。
【請求項34】
請求項17−30のいずれかに記載のカルジオリピンまたはカルジオリピン類似体を含む、哺乳類の疾患に効く治療剤。
【請求項35】
疾患が、加齢に関連した疾患、癌、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、心臓疾患、虚血、および皮膚障害からなる群より選ばれる、請求項34に記載の治療剤
【請求項36】
カルジオリピンまたはカルジオリピン類似体がリポソーム組成物の形態である、請求項3335のいずれかに記載の治療剤

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−510733(P2006−510733A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501873(P2005−501873)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/027806
【国際公開番号】WO2004/039817
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(503140078)ネオファーム、インコーポレイティッド (6)
【Fターム(参考)】