説明

カルニチン類を含有する固形製剤

【課題】本発明は、カルニチン類の潮解による製剤同士の付着、製剤の変色、及び味の変化が長期間において抑制された、新規なカルニチン類を含有する固形製剤を提供することを課題とする。
【解決手段】カルニチン類、硬化油、及びマンニトールを含有する固形製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルニチン類を含有し、経時的に安定な固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カルニチンは、消化管機能低下のみられる慢性胃炎に有効な消化機能賦活亢進剤として使用されている薬物であり、制酸剤や生薬等と共に配合されて、総合胃腸薬として一般に用いられている。また、カルニチンは、生体内において長鎖脂肪酸を細胞内のミトコンドリア内に運搬する役割を有しており、中性脂肪の代謝に必要な物質で、ダイエットのためのサプリメント等に利用されている。
【0003】
しかしながら、カルニチンやその塩、誘導体は潮解性を有することから、固形製剤を製造する場合においては、カルニチンやその塩、誘導体の染み出しによる経時的な製剤同士の付着や、製剤の変色、味の変化等の問題が生ずる。こうしたカルニチンやその塩、誘導体の潮解性に基づく問題を解決するため、様々な製剤化検討がこれまでになされてきている。
【0004】
例えば、塩化カルニチンを吸着性物質に吸着せしめてなる固形物(特許文献1参照)、L−カルニチン、油性成分、賦形剤、及び滑沢剤を含む圧縮成形体であって、成形体100重量部中に、L−カルニチン粉末60〜90重量%及び融点40℃以上の油性成分10〜40重量%から構成され表面に油性成分を被覆してなる平均粒径10〜1000μmのL−カルニチン粉末を11〜67重量部含むL−カルニチン圧縮成形体(特許文献2参照)、カルニチン含有固形物をシェラック膜でコーティングした後、酵母細胞壁膜で更にコーティングしてなることを特徴とするカルニチン含有製品(特許文献3参照)などが知られている。
しかしながらこれらの固形製剤の製造には、カルニチンの吸着性物質への吸着や被覆、コーティング等を要することによる工程の複雑化、製造ラインの専用化等の問題があり、実生産を行ううえで満足のいくものではなかった。
【特許文献1】特開平8−012569号公報
【特許文献2】特開2005−104972号公報
【特許文献3】特開2006−111550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カルニチン類の潮解による製剤同士の付着、製剤の変色、及び味の変化が長期間において抑制された、新規なカルニチン類を含有する固形製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行ったところ、カルニチン類を含有する固形製剤において、硬化油とマンニトールを組み合わせて配合することにより、長期間経過後においても製剤同士の付着、製剤の変色、及び味の変化が抑制されることを見出した。さらに、上記検討によって得られた固形製剤について、長期間経過後においても固形製剤の崩壊性の変化が抑制され、吸収性が良好であるという全く意外な効果も有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、カルニチン類、硬化油、及びマンニトールを含有する固形製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期間経過後においても製剤同士の付着、製剤の変色、及び味の変化が抑制されたカルニチン類を含有する固形製剤を得ることができる。さらに、本発明の固形製剤は、長期間経過後においても製剤の崩壊性の変化が抑制され、経時的に吸収性が安定であり、品質が優れる。また、本発明の固形製剤は、カルニチン類の吸着性物質への吸着や被覆、コーティング等の煩雑な工程を経ずに簡易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の固形製剤に含まれる「カルニチン類」とは、カルニチン、若しくはその塩、又はそれらのアシル化体をいい、潮解性を有する。
カルニチンは、次式の構造式で表される。
(CH33+CH2−CH(OH)−CH2COO- (式1)
【0010】
本発明の固形製剤に含まれるカルニチン類として、より具体的には、例えばカルニチンそのもののほか、塩化カルニチンなどのアルカリ金属塩;カルニチンマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;カルニチン硝酸塩などのカルニチンの鉱酸塩;カルニチン酒石酸塩、カルニチンフマル酸塩などのカルニチンの有機酸塩;アセチルカルニチン、プロピオニルカルニチンなどの前記式中の水酸基がアシル化された誘導体等が挙げられる。このうち、塩化カルニチン、L−カルニチン、塩化アセチル−L−カルニチン、塩化レボカルニチン、レボカルニチンが好ましく、塩化カルニチンがより好ましい。
また、これらのカルニチン類は単独又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
なお、当該カルニチン類は、光学異性体のD体又はL体及びそれらの混合物の何れでもよいが、L体が好ましい。
当該カルニチン類は、市販のものを使用することができ、例えば塩化カルニチン(金剛化学製)等を使用できる。
本発明の固形製剤中に含まれるカルニチン類の割合は、特に限定されるものではないが、固形製剤全質量に対して1〜50質量%が好ましく、1.5〜45質量%が更に好ましく、2〜40質量%が特に好ましい。なお、固形製剤中のカルニチン類の含有量は、例えばHPLC法により測定できる。
【0011】
本発明の固形製剤に含まれる「硬化油」は、魚油又は他の動物性、植物性の脂肪油や脂肪酸に水素を添加して得た油脂(脂肪)である。
本発明の固形製剤に含まれる硬化油としては、例えば、ヒマシ油、ナタネ油、綿実油、ダイズ油、ヤシ油、パーム核油、パーム油等の植物性の油や、牛脂、鯨油、魚油などの動物性の油を原料として得られる硬化油が挙げられる。このうち植物性の油を原料として得られる硬化油が好ましく、そのうちヒマシ硬化油(ヒマシ油に水素を添加して得た油脂)が特に好ましい。
なお、これらの硬化油を単独又は2種以上組み合わせて使用しても良い。
硬化油としては、市販のものを使用することができ、例えばK−3ワックス(川研ファインケミカル製)、ラブリワックス(フロイント産業製)等を使用できる。
硬化油の融点は、特に限定されるものではないが、カルニチン類を含有する固形製剤の長期間経過後における製剤同士の付着、製剤の変色、味の変化、崩壊性の変化の抑制効果の観点から、室温(25℃)において固形状のものが好ましく、50℃以上のものがより好ましく、60〜90℃のものが更に好ましく、65〜90℃のものが特に好ましい。
本発明の固形製剤中に含まれる硬化油の割合は、特に限定されるものではないが、カルニチン類を含有する固形製剤の長期間経過後における製剤同士の付着、製剤の変色、味の変化、崩壊性の変化の抑制効果の観点から、固形製剤全質量に対して1〜60質量%が好ましく、5〜55質量%がより好ましく、20〜50質量%が特に好ましい。
なお、固形製剤中の硬化油の含有量は、例えばガスクロマトグラフ法により測定できる。
【0012】
本発明の固形製剤に含まれる「マンニトール」は、六価の糖アルコールの一種であり、例えばマンノースやショ糖等を還元して得ることができるものであり、光学異性体のD体又はL体及びそれらの混合物の何れでもよいが、D体が好ましい。
当該マンニトールは、全部又はその一部が一次粒子の状態で存在するのが好ましい。一次粒子の平均粒子径の範囲としては、特に限定されるものではないが、カルニチン類を含有する固形製剤の長期間経過後における製剤同士の付着、製剤の変色、味の変化、崩壊性の変化の抑制効果の観点から、10〜300μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。ここで、該平均粒子径は、50%粒子径を意味し、累積百分率グラフにおける50%のときの粒子径を表す。その測定方法としては、例えばレーザー回折式粒度分布測定法があげられ、具体例としてLS 13 320(ベックマン製)を用いる方法があげられる。また、一次粒子の比表面積の範囲としては、特に限定されるものではないが、0.5〜5m2/gが好ましく、1〜4m2/gがより好ましい。その測定方法としては、例えばBET方式を用いて測定することができる。
本発明の固形製剤に含まれるマンニトールは、市販のものを使用することができ、例えば日本薬局方D−マンニトール(花王製)、日本薬局方D−マンニトール(東和化成工業製)等が挙げられ、また噴霧乾燥法等により処理したマンニトールを使用することができる。
本発明の固形製剤中に含まれるマンニトールの割合は、特に限定されるものではないが、カルニチン類を含有する固形製剤の長期間経過後における製剤同士の付着、製剤の変色、味の変化、崩壊性の変化の抑制効果の観点から、固形製剤全質量に対して1〜50質量%が好ましく、1.5〜45質量%が更に好ましく、2〜40質量%が特に好ましい。
なお、固形製剤中のマンニトールの含有量は、例えばHPLC法により測定できる。
【0013】
本発明の固形製剤における、カルニチン類、硬化油、及びマンニトールの含有量は、カルニチン類を含有する固形製剤の長期間経過後における製剤同士の付着、崩壊性の変化等の抑制効果の観点から、固形製剤全質量に対し、カルニチン類1〜50質量%、硬化油1〜60質量%及びマンニトール1〜50質量%が好ましい。
【0014】
本発明の固形製剤における、カルニチン類と硬化油の含有量の相対質量比率は、特に制限されるものではないが、カルニチン類を含有する固形製剤の長期間経過後における製剤同士の付着、製剤の変色、味の変化、崩壊性の変化の抑制効果の観点からカルニチン類1質量部に対して硬化油0.4〜10質量部が好ましく、0.5〜9質量部がより好ましく、0.6〜8質量部が特に好ましい。
また、本発明の固形製剤における、カルニチン類とマンニトールの含有量の相対質量比率は、特に制限されるものではないが、カルニチン類を含有する固形製剤の長期間経過後における製剤同士の付着、製剤の変色、味の変化、崩壊性の変化の抑制効果の観点からカルニチン類1質量部に対してマンニトール0.4〜10質量部が好ましく、0.5〜9質量部がより好ましく、0.6〜8質量部が特に好ましい。
そして、カルニチン類、硬化油、及びマンニトールの含有質量比率が、カルニチン類1に対し、硬化油が0.4〜10且つマンニトールが0.4〜10であることが好ましい。
【0015】
本発明の固形製剤には、上記成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、以下の薬物や添加物を用いることができる。薬物としては、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、止瀉剤、鎮痛鎮痙剤、胃粘膜修復剤、ビタミン類、消泡剤等を例示でき、これらを複数種組み合わせても良い。
【0016】
制酸剤としては、例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム、アミノ酢酸、ロートエキス、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0017】
健胃剤としては、例えば、アニス実、アロエ、ウイキョウ、ウコン、ウヤク、延命草、オウゴン、オウバク、オウレン、加工大蒜、ガジュツ、カッコウ、カラムス根、乾薑、枳殻、キジツ、ケイヒ、ゲンチアナ、コウジン、コウボク、ゴシュユ、胡椒、コロンボ、コンズランゴ、サンショウ、山奈、シソシ、シュクシャ、ショウキョウ、ショウズク、青皮、石菖根、センタウリウム草、センブリ、ソウジュツ、ソヨウ、大茴香、ダイオウ、チクセツニンジン、チョウジ、チンピ、トウガラシ、トウヒ、動物胆(ユウタンを含む)、ニガキ、ニクズク、ニンジン、ハッカ(セイヨウハッカを含む)、篳撥(ヒハツ)、ビャクジュツ、ホップ、ホミカエキス、睡菜葉(スイサイヨウ)、モッコウ、ヤクチ、リュウタン、リョウキョウ、l−メントール、dl−メントール、塩酸ベタイン、グルタミン酸塩酸塩、塩化ベタネコール、乾燥酵母等が挙げられる。
【0018】
消化剤としては、例えば、でんぷん消化酵素、たん白消化酵素、脂肪消化酵素、繊維素消化酵素、ウルソデスオキシコール酸、オキシコーラン酸塩類、コール酸、胆汁末、胆汁エキス(末)、デヒドロコール酸、動物胆(ユウタンを含む)等が挙げられる。
【0019】
整腸剤としては、例えば、整腸生菌成分、赤芽柏、アセンヤク、ウバイ、ケツメイシ、ゲンノショウコ等が挙げられる。
【0020】
止瀉剤としては、例えば、アクリノール、塩化ベルベリン、グアヤコール、クレオソート、サリチル酸フェニル、炭酸グアヤコール、タンニン酸ベルベリン、次サリチル酸ビスマス、次硝酸ビスマス、次炭酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、タンニン酸、タンニン酸アルブミン、メチレンチモールタンニン、カオリン、ペクチン、薬用炭、乳酸カルシウム、アセンヤク、ウバイ、オウバク、オウレン、クジン、ゲンノショウコ、五倍子、サンザシ、センブリ、ヨウバイヒ等が挙げられる。
【0021】
鎮痛鎮痙剤としては、例えば、塩酸オキシフェンサイクリミン、塩酸ジサイクロミン、塩酸メチキセン、臭化水素酸スコポラミン、臭化メチルアトロピン、臭化メチルアニソトロピン、臭化メチルスコポラミン、臭化メチル−l−ヒヨスチアミン、臭化メチルベナクチジウム、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン、ロートエキス、ロート根総アルカロイドクエン酸塩、塩酸パパベリン、アミノ安息香酸エチル、エンゴサク、カンゾウ、コウボク、シャクヤク等が挙げられる。
【0022】
胃粘膜修復剤としては、例えば、アズレンスルホン酸ナトリウム、アルジオキサ、グリチルリチン酸及びその塩類並びに甘草抽出物、L−グルタミン、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、塩酸ヒスチジン、ブタ胃壁ペプシン分解物、ブタ胃壁酸加水分解物、メチルメチオニンスルホニウムクロライド、赤芽柏、エンゴサク、カンゾウ等が挙げられる。
【0023】
ビタミン類としては、例えば、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ビタミンB1又はその誘導体もしくはその塩類、ビタミンB2又はその誘導体もしくはその塩類、ビタミンB6又はその誘導体もしくはその塩類、ビタミンC又はその誘導体もしくはその塩類等が挙げられる。
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0024】
添加物としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤等を例示できる。
賦形剤としては、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、蔗糖、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0025】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン等が挙げられる。
【0026】
崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、トウモロコシ澱粉、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0027】
着色剤としては、タール色素、三二酸化鉄等が挙げられる。
矯味剤としてはステビア、アスパルテーム、香料等が挙げられる。
【0028】
本発明の固形製剤の剤型としては例えば、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、散剤等が挙げられる。本発明においては、特に顆粒剤が好ましい。
【0029】
本発明の固形製剤は常法に従って製造することができる。例えば固形製剤が顆粒剤である場合、カルニチン類、硬化油、マンニトール及び各種薬物や顆粒剤の製造に通常用いられる各種添加物を用いて混合、練合、押出造粒,乾燥し、得られた顆粒を分級するといった簡易な工程により、本発明の固形製剤を製造することができる。また、固形製剤がカプセル剤である場合、カルニチン類、硬化油、マンニトール及び各種薬物や通常用いられる各種添加物を用いて日本薬局方製剤総則等記載の常法により顆粒化し、この顆粒を充填機を用いてカプセルに充填することで、本発明の固形製剤を製造することができる。
【0030】
本発明の固形製剤は、医薬品、医薬部外品、食品、健康補助食品等として利用できる。
当該カルニチン類の作用としては、胃液等分泌亢進作用、狭心症や心不全等の心臓病の症状改善作用、脂質代謝促進作用、肥満症改善作用、LDL−コレステロール低下作用、血糖値低下作用、血圧低下作用、持久運動能力上昇(最大酵素摂取量の増加)作用、疲労発現の遅延(乳酸蓄積の減少、グリコーゲンの節約)作用、疲労回復過程の改善(血流増加による筋肉への酸素供給量増大)作用、免疫賦活作用、精子濃度・精子数・運動精子・高運動性精子の向上作用、原発性遺伝性カルニチン欠乏症改善作用、認知症(痴呆症、ボケ)改善作用、脳老化防止作用、アセチルコリン合成促進作用、リポフスチン(老人斑)蓄積低下作用、神経障害(軽度脳虚血障害)改善作用等が挙げられる。
従って、本発明の固形製剤は、これらの用途に使用できる。また、カルニチン類、硬化油、マンニトールに加えて前記の制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、止瀉剤、鎮痛鎮痙剤、胃粘膜修復剤、ビタミン類、消泡剤等を配合した場合には、例えば食べ過ぎ(過食)又は飲み過ぎ(過飲)による胃部不快感及びはきけ(むかつき、胃のむかつき、二日酔・悪酔いのむかつき、嘔気、悪心)等の症状に対する胃腸薬等として好適に使用しうる。これらの場合において、本発明の固形製剤の投与量は患者の年齢、性別、体重、症状等によって異なるが、通常経口投与の場合、成人において有効成分であるカルニチン類の投与量が1日あたり50〜1000mgとなるように、1日1回から複数回に分けて本発明の固形製剤を投与しうる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
〔実施例1〕
塩化カルニチン120g(金剛化学製:商品名 塩化カルニチン)、ヒマシ硬化油(融点約85℃)325g(川研ファインケミカル製:商品名 K−3ワックス200)、ヒドロキシプロピルセルロース48.5g、カルメロースカルシウム170g、D−マンニトール(平均粒子径約60μm、比表面積約3m2/g)270g(花王製:商品名 日本薬局方D−マンニトール)を万能混合攪拌機(ダルトン製:5DML型)に投入して混合、練合した。この練合物をφ8mmのダイを備えたドームグラン(不二パウダル製:DG−L11型)にて押出造粒し、流動層乾燥機(フロイント産業製:FLO−5型)に投入して乾燥後、整粒機(岡田精工製:ND−10型)を用いて整粒した。この整粒物を50メッシュ篩を用いて分級し顆粒剤を得た。
【0033】
〔比較例1〕
実施例1のD−マンニトールを配合しない代わりにトウモロコシデンプン270g(日澱化学製:商品名 トウモロコシデンプンST−C)を配合し、その他は実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
〔比較例2〕
実施例1のD−マンニトールを配合しない代わりに粉末還元麦芽糖水アメ270g(東和化成工業製:商品名 レシス)を配合し、その他は実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
〔比較例3〕
実施例1のD−マンニトールを配合しない代わりにキシリトール270g(東和化成工業製:商品名 キシリット)を配合し、その他は実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
〔比較例4〕
実施例1よりヒマシ硬化油を抜いて、その他は実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
〔比較例5〕
実施例1よりD−マンニトールを抜いて、その他は実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0034】
〔試験例1〕
実施例1、比較例1〜5で得た顆粒剤の製造直後(イニシャル)と60℃・1週間保存後(60℃・1W)の付着性、外観、味、及び崩壊度を評価した。尚、付着性については、顆粒剤同士の付着がないものを○、顆粒剤同士の付着が生じたものを×で表示した。外観は目視で評価を行い、顆粒剤の色ついて評価した。味の評価は、口腔内に30秒含んだときの味を評価し、酸味を感じないものを○、わずかに酸味を感じるものを△、強い酸味を感じるものを×で示した。崩壊度の測定は顆粒剤を第十五改正日本薬局方収載崩壊試験法(試験液:崩壊試験第1液)に準拠して実施し、崩壊時間を測定した。その結果を表1に示す。

【0035】
【表1】

【0036】
塩化カルニチンに、硬化油及びマンニトールを組み合わせて配合した本発明の固形製剤(実施例1)は、60℃・1週間保存後においても製剤同士が付着せず、製剤の変色、味の変化が抑制された。さらに、60℃・1週間保存後においても固形製剤の崩壊性に変化は無く、経時的に吸収性が安定であることが分かった。
一方、マンニトールの代わりにトウモロコシデンプンを配合した固形製剤(比較例1)、マンニトールの代わりに粉末還元麦芽糖水アメを配合した固形製剤(比較例2)、マンニトールの代わりにキシリトールを配合した固形製剤(比較例3)、実施例1からヒマシ硬化油を配合しない固形製剤(比較例4)、及び実施例1からマンニトールを配合しない固形製剤(比較例5)では、60℃・1週間保存後において、製剤同士の付着が生じた。
また、比較例2、及び比較例3の固形製剤では、60℃・1週間保存後において変色が認められた。比較例3の固形製剤では製造直後よりわずかに酸味が認められ、比較例4の固形製剤では、製造直後より強い酸味が認められた。比較例1、比較例2、及び比較例5の固形製剤では、60℃・1週間保存後において、味の変化が認められた。
さらに、比較例1、及び比較例5の固形製剤では、60℃・1週間保存後において崩壊時間の遅延が認められた。以上のとおり、比較例1〜5のいずれの固形製剤も、経時的に不安定なものであった。
【0037】
以上より、本発明の固形製剤は、長期間経過後においても、カルニチン類の潮解性に基づく問題、即ち製剤同士の付着、製剤の変色、及び味の変化が抑制された固形製剤であることが分かる。さらに、本発明の固形製剤は、長期間経過後においても、製剤の崩壊性の変化が抑制されるという有利な効果を有しており、経時的に吸収性が安定であることが分かる。
【0038】
〔製造例1〕
塩化カルニチン480g(金剛化学社製:商品名 塩化カルニチン)、メチルメチオニンスルホニウムクロライド60g、ヒマシ硬化油1300g(川研ファインケミカル社製:商品名 K−3ワックス200)、ヒドロキシプロピルセルロース100g、カルメロースカルシウム370g、D−マンニトール1100g(花王製:商品名 日本薬局方D−マンニトール)を高速攪拌造粒機(バーチカルグラニュレーター,パウレック社製)を用いて混合、練合し、この練合物をφ0.8mmのスクリーンを備えた押出造粒機(ペレッター,ダルトン社製)を用いて造粒した。この造粒物を流動層乾燥機(フローコーター,プロイント産業社製)で乾燥し、乾燥物を14メッシュスクリーンを備えた整粒機(スピードミル,岡田精工社製)で整粒し、さらに篩を用いて分級し、本発明の固形製剤である分級顆粒Aを調製した。
次に、サンショウ軟エキス50g、ニンジン乾燥エキス43.2g、ショウキョウ末360g、陳皮乾燥エキス80g、ウィキョウ末200g、チョウジ末200g、カンゾウエキス末140g、ウコン末200g、ポリビニルピロリドン120g、カルメロース200g、キシリトール2286.8gを高速攪拌造粒機(バーチカルグラニュレーター,パウレック社製)を用いて混合、練合し、この練合物をφ0.8mmのスクリーンを備えた押出造粒機(ペレッター,ダルトン社製)を用いて造粒した。この造粒物を流動層乾燥機(フローコーター,プロイント産業社製)で乾燥し、乾燥物を14メッシュスクリーンを備えた整粒機(スピードミル,岡田精工社製)で整粒し、さらに篩を用いて分級し、分級顆粒Bを調製した。
分級顆粒A、分級顆粒B及び別途調製した20%L−メントール末を97:97:1の割合で混合機を用いて混合し、顆粒Cを調製した。この顆粒Cを顆粒分包機を用いて1包あたり1300mg充填し、顆粒剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の固形製剤は、医薬品、医薬部外品、健康補助食品、食品等として、医薬品産業、食品産業等において好適に利用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルニチン類、硬化油、及びマンニトールを含有する固形製剤。
【請求項2】
カルニチン類、硬化油、及びマンニトールの含有質量比率が、カルニチン類1に対し、硬化油が0.4〜10、マンニトールが0.4〜10である請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
固形製剤全質量に対し、カルニチン類を1〜50質量%、硬化油を1〜60質量%、マンニトールを1〜50質量%含有する、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
カルニチン類が、塩化カルニチン、L−カルニチン、塩化アセチル−L−カルニチン、塩化レボカルニチン、及びレボカルニチンから選ばれるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項5】
固形製剤が、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、又は散剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形製剤。

【公開番号】特開2008−208043(P2008−208043A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44203(P2007−44203)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】