説明

カレンダー成形用樹脂組成物、太陽電池封止膜フィルムおよび太陽電池モジュール

【課題】 太陽電池モジュールの封止膜フィルムに使用される加工性、透明性、柔軟性、耐久性および架橋効率に優れたカレンダー用樹脂組成物および封止材を提供する。
【解決手段】 エチレン−ブテン−1共重合体100重量部に架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤からなることを特徴とするカレンダー成形用樹脂組成物に関する。特に、エチレン−ブテン−1共重合体は密度が860〜900kg/m、メルトフローレイトが0.1〜6g/10min、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜2.2、融点および融解熱量と密度が特定の関係を満たし、160℃における溶融張力が2〜20mNである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンとブテン−1の共重合体を用いたカレンダー成形用樹脂組成物、太陽電池封止膜フィルムおよび太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池を用いた太陽光発電は無尽蔵でクリーンな使いやすいエネルギーシステムとして注目されている。太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに直接変換するもので、半導体の起電力効果を利用した電池である。太陽電池はシリコン系と非シリコン系に大別でき、シリコン系には単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコンおよび球状シリコンなどが挙げられ、非シリコン系には化合物半導体、色素増感型および有機薄膜などが挙げられる。シリコン系の太陽電池は変換効率が高く、信頼性も高く、太陽電池市場の90%以上を占めている。太陽電池の構成は、結晶シリコン系太陽電池の構成を例にとると硝子/封止材/シリコンセル/封止材/バックシートとなっており、封止材はセルやその周辺配線、バックシートなどの材料を固定するための接着保護シートの役割を果たしている。封止材には透明性、柔軟性、接着性が求められており、代表的な材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリシリコーン、ポリエチレンアクリル酸メチル、ポリビニルブチラールおよびエチレン・α−オレフィン共重合体などが使用されている。中でも物性バランスに優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体が封止材の90%以上を占める。エチレン−酢酸ビニル共重合体封止材の製造方法を例にとると、架橋剤を含浸したエチレン−酢酸ビニル共重合体をカレンダー成形または押出成形によってフィルム化し、貼り合わせるときに架橋を行なう。しかしながら、エチレン−酢酸ビニル共重合体は長期間にわたって使用すると加水分解によるセルの腐食やシートの着色による光線透過率の低下といった問題も抱えており、更なる改善が求められている。
【0003】
封止材としてα−オレフィン系共重合体が提案されているが、α−オレフィン共重合体は長鎖分岐を有していないため、溶融時の溶融張力が低く、カレンダー成形に適していなかった。また、接着性、透明性は充分ではなく、架橋助剤のブリードによるシートのベタツキ問題もあった。
【0004】
また、ポリオレフィンコポリマーを含む電子装置モジュールでは密度0.90g/cc未満のポリオレフィンコポリマーを用いた電子装置モジュールが提案されているが、融点が高いため、カレンダーでの加工性に劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−210906号公報
【特許文献2】特表2010−504647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、カレンダー加工性が良好でかつ得られたフィルムの架橋効率が良く、架橋後の光線透過率が良好な太陽電池封止膜フィルムの検討を行なった。その結果、下記のカレンダー成形用樹脂組成物が優れていることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)〜(e)の要件を満たすエチレンとブテン−1の共重合体100重量部に対して、架橋剤0.1〜5重量部、架橋助剤0.1〜2重量部およびシランカップリング剤0.1〜2重量部からなることを特徴とするカレンダー成形用樹脂組成物に関するものである。
(a)JIS K6922−1に準拠した密度が860〜900kg/m
(b)190℃、2.16kg荷重のメルトフローレイトが0.1〜6g/10min、
(c)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜2.2、
(d)DSCで測定した融点、融解熱量と密度の関係が下記の関係式(1)と(2)を満たす
7.5×10−6−6×EXP(0.018×密度)−3≦融点(℃)
≦7.5×10−6−6×EXP(0.018×密度)+1 (1)
3.3×10−6−21×EXP(0.0571×密度)−7≦融解熱量(mJ/mg)
≦3.3×10−6−21×EXP(0.0571×密度)+3 (2)
(e)160℃の溶融張力が2〜20mNである。
また、共重合体の1000炭素あたりの短鎖分岐数が40〜100個が好ましく、金属残渣が300ppm以下、酸化防止剤を添加していないことが好ましい。
【0008】
上記カレンダー成形用樹脂組成物に使用する架橋剤の1分半減期温度が100〜180℃であり、かつ理論活性酸素量が6%以上であることが好ましい。また、架橋助剤はトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)から選ばれた少なくとも1種以上を用いることが好ましく、シランカップリング剤にはメトキシ基を特徴とするものを用いるのが好ましい。更に、紫外線吸収剤、光安定剤(HALS)から選ばれた少なくとも1種以上を0.01〜1重量部配合することが好ましい。
【0009】
本発明においてはまた、上記カレンダー樹脂組成物を用いて太陽電池封止膜フィルムが提供される。更に本発明においてはまた、太陽電池封止膜フィルムを用いた太陽電池モジュールが提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のエチレンとブテン−1の共重合体(以下 エチレン−ブテン−1共重合体)は、エチレンとブテン−1の組成分布が均一であるメタロセン等を主体とするカミンスキー型触媒系を使用して製造することができる。このようなカミンスキー型触媒としては、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属を主体とするメタロセン化合物(遷移金属化合物)と有機金属化合物あるいはメタロセン化合物と反応して安定アニオンとなるイオン化合物あるいは粘土鉱物との組み合わせからなる一般的に知られている重合触媒系を用いることができる。また、カミンスキー型触媒は、1種または2種以上混合して使用しても差し支えない。メタロセン化合物としては、例えばビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ビス(インデニル)チタニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド等を挙げることができ、有機金属化合物として、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソプロピルアルミニウム等を挙げることができ、遷移金属化合物と反応して安定アニオンとなるイオン化合物として、例えばリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等からなるものが挙げられ、粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等を挙げることができる。
【0010】
また、その際の重合方法としては特に制限はなく、一般的な重合方法である気相法、スラリー法、溶液法および高圧法などいずれでも差し支えない。また、1段または2段以上で多段重合されたものでも、2種類以上の重合体を機械的にブレンドすることによっても製造できる。必要に応じて、プロピレンやジエンモノマーを少量共重合させても良い。
【0011】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体の密度はJIS K6922−1に準拠して密度勾配管法で測定した値として、860〜900kg/mであり、好ましくは870〜890kg/mである。密度860kg/m未満は製造が困難であり、900kg/mを超えると剛性が高くセル割れが発生したり、透明性が低下して発電効率が悪化し、封止材として適さなくなる。
【0012】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体のメルトマスフローレイトは190℃、2.16kg荷重の値として、0.1〜6g/10minであり、好ましくは1〜5g/10minである。
メルトマスフローレイトが0.1g/10min未満ではカレンダー加工時の流動性が劣り、6g/10minを超えると溶融張力が不足して、カレンダー加工性が悪化する。
【0013】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は1.5〜2.2の範囲である。2.2を超えると透明性を損なう恐れがある。
【0014】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体の融点は、密度との関係式(1)を満足する。式(1)はエチレンとブテン−1の共重合体の密度と融点の関係を示した式である。温度範囲はDSCの精度のため、7.5×10−6−6×EXP(0.018×密度)から−3℃と+1℃の範囲とした。エチレンとヘキセン−1の共重合体やチーグラー触媒で重合したエチレンとブテン−1の共重合体は融点が高くなっている。融点が関係式(1)式を満足しない場合は、融点が高くなるのでカレンダー加工時に樹脂温度を高める必要があるため、溶融張力が不足して加工性が悪化したり、加工時に含浸した架橋剤が分解する恐れがある。
【0015】
ポリエチレンの融点は密度と相関があり、密度が低下すると融点も低下するが、共重合するコモノマーの影響も受ける。エチレン−ブテン−1共重合体は他のC6以上の共重合体よりも融点が低いため、溶融張力が低くともより低温で加工できるためカレンダー成形性は良好である。
【0016】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体の融解熱量は、密度との関係式(2)を満足する。式(2)はエチレンとブテン−1の共重合体の密度と融解熱量の関係を示した式である。融解熱量の範囲はDSCの精度のため、3.3×10−6−21×EXP(0.0571×密度)から−7mJ/mgと+3mJ/mgの範囲とした。エチレンとヘキセン−1の共重合体やチーグラー触媒で重合したエチレンとブテン−1の共重合体は融解熱量が高くなっている。融解熱量が関係式(2)式を満足しない場合は、エチレン−ブテン−1共重合体の透明性が悪化する。
【0017】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体の160℃における溶融張力は2〜20mNである。溶融張力が2mN未満ではカレンダー加工が困難であり、20mNを越えると成形流れ方向の分子配向が高くなるので、封止材として使用したときに、シートの流れ方向の収縮挙動により太陽電池セルが割れる恐れがある。 本発明のエチレン−ブテン−1共重合体の1000炭素あたりの短鎖分岐数は40〜100個/1000炭素であり、好ましくは50〜80個/1000炭素である。ここで短鎖分岐とはC2〜C5の分岐を指す。短鎖分岐が結合している主鎖の炭素(3級炭素)が架橋点になるため、短鎖分岐数が40〜100個/1000炭素であれば架橋効率は良好であり、融点も低くなりすぎず、耐熱性は良好である。
【0018】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体の低分子量成分から高分子量成分にかけて、短鎖分岐の分布がほぼ均一になっていることが望ましい。短鎖分岐の分布がほぼ均一に分布した場合は、得られた封止材の透明性が良く、シート表面のべたつきも少ない。短鎖分岐の分布はTREFによって確認することができる。
【0019】
ブテン−1の代わりに炭素数が多いヘキセン−1、オクテン−1を用いたエチレンとの共重合体は、エチレン−ブテン−1共重合体と比較すると、同一密度でも短鎖分岐数が少なくなるので、架橋効率が劣り、透明性にも影響を及ぼす。
【0020】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体の金属残渣は300ppm以下が好ましく、更に好ましくは200ppm以下である。金属残渣が少ない方が、長期間使用しても着色が起こりにくい。
【0021】
本発明のエチレン−ブテン−1共重合体は、共重合体の製造における金属残渣が特に少ないため、共重合体の酸化劣化が著しく少なくなり、封止材に酸化防止剤は特に添加されていなくても良い。封止材に酸化防止剤を添加しない場合、架橋効率や透明性が向上したりする。
【0022】
これらの要件を満たすエチレン−ブテン−1共重合体としては、東ソー(株)が販売している超低密度ポリエチレン(商品名LUMITAC)の条件を満たしたものであれば差し支えない。
【0023】
本発明において使用される架橋剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、m−トルイルペルオキシド、2,4ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5ジメチル−2,5−ジ(−t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ3,5,5トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、t−ブチルペルオキシマレート、メチルエチルケトンペルオキシドt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。
本発明において使用される架橋剤としては、好ましくは、1分間の半減期を得るための分解温度(1分半減期温度)が100〜180℃である。分解温度が100℃〜180℃のものはカレンダー加工時に架橋が起こりにくく、ラミネート時の加工温度も高すぎず、生産性が良好である。
【0024】
架橋剤として使用される有機過酸化物は、分子内に連続した酸素原子構造「−O−O−」を有しており、加熱したときにこの部分が分解し、活性酸素を生ずる。この時、発生する活性酸素の原子量のその有機過酸化物の分子量に対する割合(%)を理論活性酸素量という。
【0025】
本発明に使用される架橋剤は、好ましくは、架橋剤の理論活性酸素量が6%以上の有機過酸化物である。本発明に使用される架橋剤の理論活性酸素量が6%以上の有機過酸化物は、架橋効率が良好なため、配合量が少なくなり、透明性を悪化させない。このような好ましい架橋剤として、例えば、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,5ジメチル−2,5−ジ(−t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート等が挙げることができる。
【0026】
本発明において使用される架橋剤の添加量はエチレン−ブテン−1共重合体100重量部に対して、架橋剤0.1〜5重量部であり、好ましくは0.3〜2重量部である。架橋剤が0.1重量部未満では架橋が不充分となり、耐熱性、接着性および透明性が不足する。架橋剤が5重量部を超えても透明性は向上せず、経済的に不利である。0.3〜2重量部であれば、コストと性能のバランスがよい。
【0027】
本発明において使用される架橋助剤は、架橋反応を促進させ、エチレン−ブテン−1共重合体の架橋度を高めるのに有効である。架橋助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクロキシ化合物のような多不飽和化合物が挙げられる。更に具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)から選ばれた少なくとも1種以上を用いる。
【0028】
本発明において使用される架橋助剤の添加量はエチレン−ブテン−1共重合体100重量部に対し0.1〜5重量部であり、好ましくは0.3〜2重量部である。架橋剤が0.1重量部未満では架橋度が上がらず、5重量部を超えるとシートにベタツキが発生して好ましくない。0.3〜2重量部であれば、コストと性能のバランスがよい。
【0029】
本発明において使用されるシランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0030】
本発明において使用されるシランカップリング剤として、特にメトキシ基を有するシランカップリング剤を使用した場合は、光線透過率が向上し、太陽電池の変換効率が向上するため更に好ましくなる。このようなメトキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
本発明において使用されるシランカップリング剤の添加量は、エチレン−ブテン−1共重合体100重量部に対し0.1〜2重量部である。シランカップリング剤が0.1重量部未満ではガラスや太陽電池セルとの接着強度が上がらず、2重量部を超えるとシートにベタツキが発生して好ましくない。
【0032】
本発明において使用される紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系およびベンゾトリアゾール系等が挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0033】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]等が挙げられる。
【0034】
光安定剤(HALS)としては、特に限定されるものではないが、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロパーオキサイド及びオクタンの反応生成物70重量%とポリプロピレン30重量%からなるもの、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートの混合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}];コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物;N,N’,N”,N”’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン(分子量2,286)と上記コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物の混合物;ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物などが挙げられる。上述した紫外線吸収剤、光安定剤(HALS)は、単独または二種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明においては必要により酸化防止剤、滑剤を適量添加しても良い。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤および燐系酸化防止剤が使用される。フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール系、チオビスフェノール系、トリスフェノール系等の酸化防止剤が挙げられ、具体的には2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリメチルー2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等が挙げられ、燐系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンフォスフォナイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられ、これらは単独または混合物として用いられる。
【0036】
本方法で使用される滑剤の種類に制限はないが、脂肪酸、高級アルコール、炭化水素系ワックス、脂肪酸アミド、金属石鹸、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル等が好ましい。具体的にはラウリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等のアルコール、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックス、エチレンビスステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ブチル、ステアリルステアレート等が挙げられる。
【0037】
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は、発明の効果を損なわない限り2種類以上のエチレン−ブテン−1共重合体を使用したり、他の樹脂を添加したりすることもできる。その様な他の樹脂として、例えば、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリブテン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0038】
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は、その他必要に応じて帯電防止剤、ブロッキング防止剤、中和剤、有機・無機顔料等、通常ポリオレフィンに使用される添加剤を添加しても構わない。樹脂中に上記の添加剤を混合する方法は特に制限されるものではないが、例えば、重合後のペレット造粒工程で直接添加する方法、また、予め高濃度に希釈したマスターバッチを作製し、これを成形時にドライブレンドする方法等が挙げられる。
【0039】
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は、下記の例に限定されるものではないが、カレンダー成形機にて0.1〜1mm程度の厚みのシートに加工して使用される。例えば、コ・ニーダー、バンバリーミキサー、加圧ニーダ、異方向連続式混練機、単軸押出機、二軸押出機、プラネタリーローラー型押出機、二本ロールなどの混練機で樹脂を溶融後、使用した共重合体の融点よりも高い温度、例えば、60〜120℃に設定した逆L4本のカレンダーを用い、シート化する。カレンダーのロール温度が樹脂の融点よりも低い温度の場合、カレンダーシート表面が荒れやすくなったり、シート内の残留歪が大きいので収縮率が高くなったり、ひどい場合はシートそのものが得られなくなる。逆に、カレンダーロールの設定温度があまり高すぎると、溶融しているシートが垂れ下がったり、ロールに樹脂が付着しやすくなったりして、カレンダー成形が困難になる。本発明においては、カレンダーロールの設定温度は、樹脂の融点から0〜75℃高くするほうが好ましい。更に好ましくは、樹脂の融点から10〜50℃高くすることである。特に好ましくは、樹脂の融点から10〜40℃高くすることである。この範囲であれば、溶融しているシートの垂れ下がりを最小限にでき、ロールへの付着が防止でき、カレンダーシートの収縮率を小さくすることができる。カレンダー加工において、封止材表面にエンボス(凹凸模様)をつけると、封止材同士の癒着防止や太陽電池ラミネート時において脱気しやすくなるので、更に好ましい。
【0040】
この様にして得られるカレンダー成形用樹脂組成物は、カレンダー成形により、合わせ硝子中間膜や太陽電池の封止材等に使用される。
【0041】
本発明における太陽電池の封止材を用いて太陽電池セルの周囲を固定することにより、太陽電池モジュールを作製することができる。更に封止材の外側に保護材を固定することにより、耐久性の良好な太陽電池モジュールにすることができる。外側に使用する保護材としては、例えば、硝子、樹脂フィルムおよび金属板などが挙げることができる。このような太陽電池モジュールとして、例えば、前面保護材/封止材/太陽電池セル/封止材/裏面保護材のような構成のもの、基板の上に形成された太陽電池セルの前面に封止材と保護材を貼り合わせたものなどを上げることができる。
【0042】
太陽光発電素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンおよび薄膜シリコンなどのシリコン系、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレンおよびカドミウム−テルルなどの化合物系、有機薄膜系などを用いることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は、加工性、透明性、柔軟性、耐久性、架橋効率等に優れ、太陽電池封止膜フィルムとして好適に利用される。本発明の太陽電池封止膜フィルムは、透明性、柔軟性、防湿性等に優れ、太陽電池モジュールとして好適に利用される。本発明の太陽電池モジュールは、耐久性に優れ、発電効率の低下が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】密度と融点の関係、及び密度と融点の関係式を示す。
【図2】密度と融解熱量の関係、及び密度と融解熱量の関係式を示す。
【実施例】
【0045】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
実施例および比較例における諸物性は、下記の方法により評価した。
【0047】
〜密度の測定〜
密度は、JIS K6922−1(1997)に準拠して密度勾配管法で測定した。
〜メルトマスフローレイトの測定〜
メルトマスフローレイトは、JIS K6922−1(1997)に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定した。
【0048】
〜Mw/Mnの測定〜
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー(株)製 HLC−8121GPC/HTを用い、カラムとしては東ソー(株)製 TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正されている。
【0049】
〜短鎖分岐数の測定〜
13C−NMR(日本電子製GSX−400)にて短鎖分岐数を測定した。
【0050】
溶媒:o−ジクロロベンゼン+ベンゼン−D6
観測周波数:100.4MHz
積算回数:10000〜20000回
温度:130℃
〜金属残渣の測定〜
試料50gを白金皿に量り取り、ガスバーナーで燃焼後、電気炉で灰化させ、灰分を算出した。白金皿に塩酸を入れ、酸溶解後、未溶解物をろ過し、ろ液を50mlに定容して測定溶液とした。未溶解物を灰化後、アルカリ溶融を行ない、溶液化したものを100mlに定容して測定溶液とした。これらの溶液のICP−AES測定を行い、金属濃度を求めた。
【0051】
〜融点、融解熱量の測定〜
示差走査型熱量計[セイコーインスツルメンツ(株)製、RDC220]を用いて測定した。試料5mgを230℃から−20℃まで毎分10℃で降温し、その後、−20℃から230℃まで毎分10℃で昇温し、融解挙動を測定した。
【0052】
〜溶融張力の測定〜
測定装置として、東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを用いて測定した。溶融張力は160℃で溶融したポリマーを10mm/minで押し出し、L/D=8/2.095mmのキャピラリーを通過したストランドを10m/minで引き取った時の張力を測定した。
【0053】
〜シートサンプルの作製〜
エチレン−ブテン−1共重合体、架橋剤、架橋助剤およびシランカップリング剤などの配合物をロールで5分間混練後、100℃で3分間プレスし、0.6mm厚のプレスシートを得た。
【0054】
プレス圧力:50kgf/cm
冷却条件:30℃に設定したプレス機で3分冷却
〜ロールリリース性の評価〜
カレンダーロールと同様な構造である8インチ二本ロールにて、融点から30℃高い温度でサンプルシートをまきつけ、1分間混練した。その後、巻きつけたシートを切り取ったときのロールからの剥がれ具合を評価した。
【0055】
○: ロールリリース性良好で、カレンダー加工に適する
×: 溶融シートの垂れ下がりやロールへの付着があり、カレンダー加工に適さず
〜架橋シートサンプルの作製〜
上記で得られた未架橋のシートを145℃×45min架橋し、0.6mm厚の架橋シートを作製した。
〜光線透過率の測定〜
上記で作製した架橋シート(0.6mm)を紫外可視分光光度計V−530(日本分光製)を用いて測定した。400〜900nmの光線透過率から平均光線透過率を算出した。
【0056】
走査範囲:200〜1000nm、走査速度:200nm/min、測定雰囲気:空気中
〜ゲル分率〜
上記で作製した架橋シート0.05gをキシレン50mlで120℃×12時間溶解後、200メッシュの金網でろ過洗浄する。その後、ろ過残分を真空乾燥機にて80℃×5時間真空乾燥し、質量測定を行い、試験前の質量に対して百分率で示した。
【0057】
〜ガラスとの接着強度〜
上記で得られた未架橋シートとフロートガラスFL3(セントラル硝子製)を合わせ硝子貼り合わせ機(テーピ熱学製)にて145℃×45minで貼り合わせた後、シートとガラスの剥離強度を測定した。
【0058】
剥離速度:300mm/min
表1に実施例と比較例で使用した共重合体の特性を示した。表2に実施例と比較例で使用した架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤を示した。
【0059】
密度と融点の関係、及び密度と融点の関係式を図1に、密度と融解熱量の関係、及び密度と融解熱量の関係式を図2に示した。
【0060】
(実施例1)
エチレン−ブテン−1共重合体であるLUMITAC 08L55A〔 東ソー製;A1〕に、表3に示す架橋剤と架橋助剤、シランカップリング剤をロールにて混練し、プレスして厚み0.6mmのシートサンプルを得た。この時、シートをロールから切り取るときのロールリリース性を評価した。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
シートサンプルのロールリリース性と外観は良好であり、封止膜としての性能も良好であった。
【0061】
(実施例2)
実施例1のエチレン−ブテン−1共重合体に代えて、同共重合体のタフマー A4070S〔三井化学製;A3〕に、表3に示す架橋剤と架橋助剤、シランカップリング剤を用いた他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0062】
ロールリリース性は多少ドローダウン気味であったが、カレンダー成形は可能な範囲であった。得られたシートの外観は良好であり、封止膜としての性能も良好であった。
【0063】
(実施例3)
実施例1のエチレン−ブテン−1共重合体に代えて、同共重合体のLUMITAC 09L54A〔東ソー製;A2〕を用いる他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0064】
シートサンプルのロールリリース性と外観は良好であり、封止膜としての性能も良好であった。
【0065】
(実施例4)
実施例3のシランカップリング剤を代えて用いる他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0066】
シートサンプルのロールリリース性と外観は良好であり、封止膜としての性能も良好であった。
【0067】
(実施例5〜9)
実施例3の架橋剤、架橋助剤の種類と添加量を代えて用いる他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0068】
架橋剤や架橋助剤が多かった実施例5,6はロール滑性が高かった以外、シートサンプルのロールリリース性と外観は良好であり、封止膜としての性能も良好であった。
【0069】
(実施例10)
実施例3のシランカップリング剤をKBE403に代えて用いる他は同様にしてロール混練し、ロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0070】
使用したシランカップリング剤がエトキシ基であるための透明性が僅かに低かったこと以外、シートサンプルのロールリリース性と外観は良好であり、封止膜としての性能も十分であった。
【0071】
(実施例11)
実施例3の架橋剤をパークミルDに代えて用いる他は同様にしてロール混練し、ロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0072】
使用した架橋剤の理論活性酸素量が5.9%と低かったために、透明性とゲル分率が多少低かったこと以外、シートサンプルのロールリリース性と外観は良好であり、封止膜としての性能も十分であった。
【0073】
(実施例12)
実施例3に添加剤として酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤を更に加えた他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表3に示す。
架橋シートのゲル分率と透明性が僅かに低くなったが、封止材としての性能は十分あった。シートサンプルのロールリリース性と外観は良好だった。
【0074】
(比較例1)
実施例1のエチレン−ブテン−1共重合体に代えて、エチレン−ブテン−1からなる共重合体のLUMITAC 08L54A〔東ソー製;A4〕を用いる他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0075】
シートサンプルのロールリリース性や外観は良好であったが、密度が本発明の範囲よりも高かったために、封止材としては硬くて、透明性も低めで十分ではなかった。
【0076】
(比較例2)
実施例1のエチレン−ブテン−1共重合体に代えて、エチレン−ヘキセン−1からなる共重合体のニポロンZ 7P06A〔東ソー製;A5〕を用いた他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0077】
使用した共重合体の融点が高いためにロール温度が高くなり、溶融したシートの垂れ下がりが大きくなり、ロールリリース性は不十分であった。封止材としての透明性は劣るものであった。
【0078】
(比較例3)
実施例1のエチレン−ブテン−1共重合体に代えて、チーグラー系触媒で重合したエチレン−ヘキセン−1からなる共重合体のLUMITAC 12−1〔東ソー製;A6〕を用いた他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0079】
使用した共重合体の融点が115℃と高いため、ロール温度を100〜120℃にした場合はロール混練すら満足にできなかった。ロール温度をこれ以上にすると、溶融したシートの垂れ下がりが著しくなったために加工が困難となり、封止膜としての評価ができなかった。
【0080】
(比較例4)
実施例1のエチレン−ブテン−1共重合体に代えて、エチレン・プロピレン−ヘキセン−1からなる共重合体のカーネルKS340T〔日本ポリエチレン製;A7〕を用いた他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0081】
使用した共重合体の融点が高いためにロール温度が高くなり、溶融したシートの垂れ下がりが大きくなり、ロールリリース性は不十分であった。封止材としての透明性は劣るものであった。
【0082】
(比較例5)
実施例1のエチレン−ブテン−1共重合体に代えて、同共重合体のタフマーA4085S〔三井化学製;A8〕を用いた他は同様にして混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0083】
タフマーA4085Sは(1)式よりも融点が高いために、シートサンプルのドローダウンが大きく、ロールリリース性は十分でなかった。更に、融解熱量が(2)式よりも高いために、架橋シートの透明性は低く、封止材としては劣るものであった。
【0084】
(比較例6〜9)
実施例3の架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤を表4のように代えた他は同じようにして、混練とロールリリース性の評価を行い、厚み0.6mmのシートサンプルを得た。得られたシートサンプルを145℃で架橋プレスして厚み0.6mmの架橋シートを作製した。得られたシートサンプルについて各種の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0085】
比較例6は、シランカップリング剤が本発明の範囲よりも少なかったために、接着性が十分でなかった。比較例7は、架橋助剤が多いために、シート表面がべたついてシート外観が良くなかった。封止材としての透明性と接着性も十分でなかった。比較例8は、架橋剤が多いために、ロール滑性が高くて混練が十分できなく、更に加工中に架橋が始まったため外観が良くなかった。また、シートの透明性や接着強さも十分でなかった。比較例9は、シランカップリング剤が多かったためにシート表面がべた付いて、シート外観が十分でなく、透明性も劣るものであった。
(実施例13)
実施例3と同じ組成にて、カレンダー成形機にてカレンダーシートを作製し封止材を得た。このとき、カレンダーロールの設定温度を80℃、シート厚み0.4mmとし、表面に細かいエンボス(凹凸)を付けた。成形に際して問題となるような樹脂の発熱もなく、カレンダーロールからのリリース性は良好であった。その他成形上特に問題になることは無かった。
【0086】
得られた封止材を用いて、ガラス/封止材/多結晶シリコン太陽電池セル/封止材/ガラスの構成にて太陽電池モジュールを作製した。モジュール作製には、太陽電池用真空ラミネーターで温度150℃、ラミネート時間15分で作製した。モジュール作製において、太陽電池セルの損傷もなく、更にカレンダーシートの収縮も少なく、問題なく作製できた。作製した太陽電池モジュールの封止材の透明性も良好であった。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のカレンダー成形用樹脂組成物は融点が低いことから加工性および透明性に優れることから、太陽電池封止膜フィルムおよび太陽電池モジュールに広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)の要件を満たすエチレンとブテン−1の共重合体100重量部に呈して、架橋剤0.1〜5重量部、架橋助剤0.1〜5重量部、シランカップリング剤0.1〜2重量部を含むことを特徴とするカレンダー成形用樹脂組成物。
(a)JIS K6922−1に準拠した密度が860〜900kg/m
(b)190℃、2.16kg荷重のメルトフローレイトが0.1〜6g/10min、
(c)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜2.2、
(d)DSCで測定した融点、融解熱量と密度の関係が下記の関係式(1)と(2)を満たす
7.5×10−6−6×EXP(0.018×密度)−3≦融点(℃)
≦7.5×10−6−6×EXP(0.018×密度)+1 (1)
3.3×10−6−21×EXP(0.0571×密度)−7≦融解熱量(mJ/mg)
≦3.3×10−6−21×EXP(0.0571×密度)+3 (2)
(e)160℃の溶融張力が2〜20mNである。
【請求項2】
エチレンとブテン−1の共重合体の1000炭素あたりの短鎖分岐数が40〜100個/1000炭素であることを特徴とする請求項1記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項3】
エチレンとブテン−1の共重合体の金属残渣が300ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項4】
エチレンとブテン−1の共重合体に酸化防止剤が添加されていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項5】
架橋剤の1分半減期温度が100〜180℃であり、かつ理論活性酸素量が6%以上の有機過酸化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項6】
架橋助剤がトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項7】
シランカップリング剤がメトキシ基を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、紫外線吸収剤及び光安定剤(HALS)から選ばれた少なくとも1種以上を0.01〜1重量部含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のカレンダー成形用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のカレンダー成形用樹脂組成物からなる太陽電池封止膜フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の太陽電池封止膜フィルムを含む太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−35937(P2013−35937A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172841(P2011−172841)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】