説明

カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素

ヒドロキシル化カロテノイドの生成に有用な、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263から単離された新しいCrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素が提供される。さらにノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)からの以前同定された仮説的タンパク質が、カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素活性を有することが分かった。どちらのヒドロキシラーゼ酵素遺伝子も以前報告された他のCrtZヒドロキシラーゼ酵素と比べて、低い相同性を示す。異種の宿主細胞中でのヒドロキシラーゼ酵素の発現は、ヒドロキシル化カロテノイドの生成を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書は、2004年8月16日に出願された米国特許仮出願第60/601947号明細書の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、分子生物学および微生物学分野に関する。より具体的には、本発明は、環状ヒドロキシル化カロテノイド化合物の微生物による生産に有用な酵素をコードする核酸分子に関する。
【背景技術】
【0003】
カロテノイドは、自然界全体に遍在性で、全ての光合成生物体によって、そして一部の従属栄養性生育細菌および真菌において合成される顔料である。カロテノイドは、花、野菜、昆虫、魚、および鳥に色を提供する。カロテノイドの色は黄色から赤に及び、褐色および紫のバリエーションがある。ビタミンAの前駆物質として、カロテノイドは、本発明者らの食餌の基礎的構成要素であり、それらはヒトの健康において追加的な重要な役割を果たす。動物は、カロテノイドを新規に(de novo)合成できないので、それらを食餌の手段によって得なくてはならない。したがって植物または細菌におけるカロテノイド生成および組成の操作は、新しいまたは改善されたカロテノイド源を提供できる。カロテノイドの工業的使用の例としては、医薬品、食品サプリメント、動物飼料添加剤、および化粧品の着色剤などが挙げられる。
【0004】
自然界で同定された600を越える異なるカロテノイドの存在にもかかわらず、工業的には、食物色素、動物飼料、医薬品、および化粧品のためにわずかなカロテノイドが使用されるのみである。これは生産の困難さが主因である。現在、工業目的で使用されるほとんどのカロテノイドは化学合成によって生産されるが、これらの化合物は化学的に製造することが非常に困難である(非特許文献1)。天然カロテノイドは、植物材料の抽出または微生物合成のいずれかによって得ることができる。しかし商業的なカロテノイド生産にはわずかな植物種のみが広く使用され、これらの植物におけるカロテノイド合成の生産性は比較的低い。その結果、これらの植物から生成されるカロテノイドは非常に高価である。
【0005】
カロテノイド生合成の生産能力を増大させる一方法は、組換えDNA技術を応用することである(非特許文献2でレビューされている)。したがって非カロテン産生性細菌および酵母菌中でカロテノイドを生成することにより、最も適切で効率的な産生生物体の質、量、および選択のコントロールを可能にすることが望ましい。後者は、消費者にとって商業的生産経済(ひいては入手可能性)のために、特に重要である。
【0006】
CrtZ−タイプのカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素は、β−カロテンまたはカンタキサンチンなどの環状カロテノイドのβ−イオノン環に水酸基を導入して、ヒドロキシル化カロテノイドを生成する酵素のクラスである。このようなカロテノイドの例としては、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、アドニルビン、アドニキサンチン、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4,4’−ジオン、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4−オン、カロキサンチン、エリスロキサンチン、ノストキサンチン、フレキシキサンチン、3−ヒドロキシ−γ−カロテン、3−ヒドロキシ−4−ケト−γ−カロテン、バクテリオルビキサンチン、バクテリオルビキサンチナール、およびルテインが挙げられる。
【0007】
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、多様な細菌、真菌、藻類、および植物種から報告されている。いくつかの種の例としては、パントエア・スティワート(Pantoea stewart)(特許文献1、特許文献2)、エルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora)(特許文献3、非特許文献3)、エルウィニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、および特許文献4)、アグロバクテリウム・オーランティアカム(Agrobacterium aurantiacum)(非特許文献7、特許文献5)、アルカリゲネス(Alcaligenes)種(特許文献5)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)種(特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および非特許文献8)、パラコッカス(Paracoccus)種(CN 1380415)、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)(特許文献10、非特許文献9)、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(非特許文献10、特許文献11)などの植物種が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素遺伝子の多くは、微生物の宿主細胞中で組換え的に発現されている。しかしアスタキサンチンおよびゼアキサンチンなどのヒドロキシル化カロテノイド生成のための商業的に適切な微生物を遺伝改変するのに有用な、さらに別の新しいcrtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子を同定する必要性がある。
【0008】
さらに、高度に相同的な遺伝子は組み入れるのが困難であり、遺伝的不安定性(すなわち望ましくない相同的な遺伝子組換え)をもたらす傾向があるので、複数のヒドロキシラーゼ酵素遺伝子の安定発現のために、比較的低から中程度の核酸配列同一性(すなわち<70%のヌクレオチド配列同一性)を有するCrtZヒドロキシラーゼ酵素を同定する特に重要な必要性がある。多岐にわたるヌクレオチド配列(相互に)を有するCrtZ遺伝子は、単一組換え宿主細胞内で、複数のヒドロキシラーゼ酵素を発現するのに最も適している。これはヒドロキシラーゼ酵素活性がカロテノイド生合成経路中の律速段階になる場合に、特に重要である。利用できる基質のプールに制限がないと仮定すれば、産生宿主中で同時に発現できるcrtZ遺伝子数を増やすことは、カロテノイド生成を増大させると予測される。これは所望の生成物(すなわちカロテノイド)の組換え生成を最適化する際に、特に重要である。
【0009】
【特許文献1】国際公開第03/016503号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/079395号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第393690 B1号明細書
【特許文献4】米国特許第5684238号明細書
【特許文献5】米国特許第5811273号明細書
【特許文献6】米国特許第6677134号明細書
【特許文献7】米国特許第6291204号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2002147371号明細書
【特許文献9】国際公開第2004029275号パンフレット
【特許文献10】国際公開第00/061764号パンフレット
【特許文献11】米国特許出願公開第2002102631号明細書
【非特許文献1】ネリス(Nelis)およびレーンヒール(Leenheer)、Appl.Bacteriol.70:181〜191頁(1991年)
【非特許文献2】ミサワ(Misawa)およびシマダ(Shimada)、J.Biotech.、59:169〜181頁(1998年)
【非特許文献3】ミサワ(Misawa)ら、J.Bacteriol.、172(12):6704〜6712頁(1990年)
【非特許文献4】ハンドル(Hundle)ら、Mol.Gen Genet.、245(4):406〜416頁(1994年)
【非特許文献5】ハンドル(Hundle)ら、FEBS Lett.、315(3):329〜334頁(1993年)
【非特許文献6】シュヌアー(Schnurr)ら、FEMS Microbiol.Lett.、78(2〜3):157〜161頁(1991年)
【非特許文献7】ミサワ(Misawa)ら、J Bacteriol.、177(22):6575〜6584頁(1995年)
【非特許文献8】パサモンテス(Pasamontes)ら、Gene、185(1):35〜41頁(1997年)
【非特許文献9】リンデン(Linden),H.、Biochimica et Biophysica Acta、1446(3):203〜212頁(1999年)
【非特許文献10】ティアン(Tian),L.およびデラ・ペンナ(Della Penna),D.、Plant Mol.Biol.、47(3):379〜388頁(2001年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって解決すべき問題は、カロテノイド(すなわちゼアキサンチンおよびアスタキサンチン)の遺伝子工学生産に有用な新しいcrtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263から単離された、組換え宿主細胞中でのカロテノイド生成に有用な新しいcrtZ遺伝子を提供することで、既述の問題を解決した。さらに未知の機能がある仮説的タンパク質をコードするとして以前同定されたノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)からの遺伝子は、カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードすることが発見された。本CrtZヒドロキシラーゼ酵素を使用して、ヒドロキシル化カロテノイドを生成する方法もまた提供される。
【0012】
したがって本発明は、
(a)配列番号17に記載のアミノ酸をコードする単離された核酸分子、
(b)配列番号17によって表されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする第1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子、
(c)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズする単離された核酸分子、および
(d)(a)、(b)、または(c)と相補的な単離された核酸分子
よりなる群から選択されるカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0013】
さらに本発明によって、本核酸分子によってコードされるポリペプチド、ならびに遺伝的キメラとそれを含んでなる形質転換された宿主が提供される。
【0014】
一実施態様では、本発明は、
(a)配列番号16で表される配列の一部に相当する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、そして
(b)ステップ(a)のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、クローニングベクター中に存在するインサートを増幅すること
を含んでなり、
増幅されたインサートがカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする、
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子の取得方法を提供する。
【0015】
別の実施態様では、本発明は、
(a)少なくとも1つのβ−イオノン環を有する環状カロテノイドを生成する宿主細胞を準備し、
(b)(a)の宿主細胞を本発明のカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子で形質転換し、そして
(c)(b)の形質転換宿主細胞を適切な条件下で生育させ、それによってヒドロキシル化カロテノイドを生成せしめること
を含んでなる、ヒドロキシル化カロテノイド化合物の製造方法を提供する。
【0016】
別の実施態様では、本発明は、
(a)カロテノイド生合成経路を含んでなり、少なくとも1つのβ−イオノン環を有する環状カロテノイドを生成する宿主細胞を準備し、
(b)(a)の宿主細胞を本発明のカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子で形質転換し、そして
(c)(b)の形質転換宿主細胞を条件下で生育させ、それによってヒドロキシル化カロテノイド生合成を制御すること
を含んでなる、生物体中での環状ヒドロキシル化カロテノイド生合成の制御方法を提供する。
【0017】
配列説明、および生物学的寄託
以下の配列は、37C.F.R.1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures − the Sequence Rules)」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)およびEPCおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で述べられる規則に従う。
【0018】
配列番号1は、16S rRNA遺伝子シーケンシングのために使用されるプライマー(「HK12」)のヌクレオチド配列である。
【0019】
配列番号2は、16S rRNA遺伝子シーケンシングのために使用されるプライマー(「JCR14」)のヌクレオチド配列である。
【0020】
配列番号3は、16S rRNA遺伝子シーケンシングのために使用されるプライマー(「JCR15」)のヌクレオチド配列である。
【0021】
配列番号4は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263 16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0022】
配列番号5は、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18 16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号6は、腸内細菌科DC260からのcrtEXYIBZカロテノイド合成遺伝子クラスターのヌクレオチド配列である(米国特許出願第10/808979号明細書)。
【0024】
配列番号7は、プライマーpWEB260Fのヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号8は、プライマーpWEB260Rのヌクレオチド配列である。
【0026】
配列番号9は、プライマーpWEB404Fのヌクレオチド配列である。
【0027】
配列番号10は、プライマーpWEB404Rのヌクレオチド配列である。
【0028】
配列番号11は、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)DC404からのcrtEidiYIBカロテノイド合成遺伝子クラスターのヌクレオチド配列である(米国特許出願第10/808807号明細書)。
【0029】
配列番号12は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263 crtWケトラーゼのヌクレオチド配列である(米国特許仮出願第60/531310号明細書)。
【0030】
配列番号13は、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18crtWケトラーゼのヌクレオチド配列である(米国特許仮出願第60/531310号明細書)。
【0031】
配列番号14は、プライマーpEZ263−Fのヌクレオチド配列である。
【0032】
配列番号15は、プライマーpEZ263−Rのヌクレオチド配列である。
【0033】
配列番号16は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263crtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素のヌクレオチド配列である。
【0034】
配列番号17は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263 CrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素の推定アミノ酸配列である。
【0035】
配列番号18は、アグロバクテリウム・オーランティアカム(Agrobacterium aurantiacum)CrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素のアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号19は、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)ZP_00094836.1)CrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素のヌクレオチド配列である。
【0037】
配列番号20は、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)ZP_00094836.1)CrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素のアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号21は、プライマーcrtZ−DC263_Fのヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号22は、プライマーcrtZ−DC263_Rのヌクレオチド配列である。
【0040】
配列番号23は、プライマー41ZSPH_Fのヌクレオチド配列である。
【0041】
配列番号24は、プライマーSPH_ZRのヌクレオチド配列である。
【0042】
配列番号25は、プライマーcrt−260_Fのヌクレオチド配列である。
【0043】
配列番号26は、プライマーcrt−260SOE_Rのヌクレオチド配列である。
【0044】
配列番号27は、プライマーcrt−260SOE_Fのヌクレオチド配列である。
【0045】
配列番号28は、プライマーcrt−260RI_Rのヌクレオチド配列である。
【0046】
配列番号29は、プライマーcrt−260RI_Fのヌクレオチド配列である。
【0047】
配列番号30は、プライマーcrt−260_Rのヌクレオチド配列である。
【0048】
配列番号31は、プライマーcrtW−263_Fのヌクレオチド配列である。
【0049】
配列番号32は、プライマーcrtW−263_Rのヌクレオチド配列である。
【0050】
配列番号33は、プライマーcrtW−263_F2のヌクレオチド配列である。
【0051】
配列番号34は、プライマーcrtW−263_R2のヌクレオチド配列である。
【0052】
配列番号35は、メチロモナス(Methylomonas)16aからのphps1プロモーターを増幅するのに使用される、第1のプライマーのヌクレオチド配列である。
【0053】
配列番号36は、メチロモナス(Methylomonas)16aからのphps1プロモーターを増幅するのに使用される、第2のプライマーのヌクレオチド配列である。
【0054】
配列番号37はプライマーcrtW_sphingo_Fのヌクレオチド配列である。
【0055】
配列番号38はプライマーcrtW_sphingo_Rのヌクレオチド配列である。
【0056】
以下の生物学的寄託は、「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約」の条項に従って行った。
【0057】
【表1】

【0058】
ここでの用法では、「ATCC」は、米国VA20110−2209マナッサスのユニバーシティ・ブールヴァード10801のATCCに所在する米国微生物系統保存機関国際寄託局を指す。「国際寄託名」は、ATCCに寄託された培養物の登録番号である。
【0059】
列挙した寄託株は、表示された国際受託機関に少なくとも30年間保存され、それを開示する特許の付与時に一般に公開される。寄託株の利用可能性は、政府の行動によって付与された特許権を失墜させて主題発明を実施する認可とはみなされない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
本crtZ遺伝子およびそれらの発現生成物、カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素は、ヒドロキシル化カロテノイド化合物を生成する能力を有する組換え生物体の創造のために有用である。ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263と命名された細菌株から、カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする新しい核酸分子が単離された。さらにノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)ZP_00094836.1)からの仮説的タンパク質が、本法を使用してヒドロキシル化カロテノイド生成するのに有用なカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素として同定された。
【0061】
本crtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、適切な基質(例えばβ−カロテンまたはカンタキサンチン)を生成するように操作されたトランスジェニック微生物の宿主中で発現された。異種の宿主中でのヒドロキシル化カロテノイド(例えばゼアキサンチンまたはアスタキサンチン)生成によって、遺伝子の機能的発現が測定された。
【0062】
本発明のカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、環状ヒドロキシル化カロテノイド化合物の生成または制御のために、多様なやり方で使用してもよい。本crtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、適切な基質を生成する能力を有する異種の宿主中でのカロテノイド生成のために使用できる。さらに本crtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、最適化されたヒドロキシル化カロテノイド生成のために、異種の宿主中の1個もしくはそれ以上の多岐にわたるカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子と同時に共発現してもよい。本crtZ遺伝子の同時の発現は、他の知られているCrtZヒドロキシラーゼ酵素に対するそれらの比較的低から中程度のヌクレオチド配列同一性のために、可能なはずである。比較的低/中程度のヌクレオチド配列同一性は、最適なカロテノイド生成のために、微生物産生宿主中における複数のCrtZヒドロキシラーゼ酵素の安定発現の可能性を増大させる。
【0063】
ここで述べる遺伝子および遺伝子配列は、ヒドロキシル化カロテノイドの生成を工業的に適切な微生物宿主細胞に直接組み込むことを可能にする。この側面によって、その中にこれらの遺伝子が組み込まれたあらゆる微生物の株は、より望ましい生成宿主になる。生成したカロテノイドは、動物飼料をはじめとする多様な用途で使用するために、生成宿主から単離できる。望ましい着色と健康上の利点を追加することが知られているカロテノイドの存在のために、任意に組換え微生物宿主細胞を動物飼料に直接に組み込むことができる(カロテノイド単離ステップなし)。魚(例えばサケおよびマス)およびエビの水産養殖は、カロテノイド着色がこれらの生物体の価値にとって決定的に重要であるので、本発明の特に有用な用途である(F.シャヒディ(Shahidi)およびJ.A.ブラウン(Brown)、Critical Reviews in Food Science、38(1):1〜67頁(1998年))。具体的には、カロテノイドのアスタキサンチンは現在、水産養殖業で使用されている。
【0064】
本開示中では、いくつかの用語および略語が使用される。次の定義が提供される。
【0065】
「読み取り枠」はORFと略記される。
【0066】
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと略記される。
【0067】
ここでの用法では、「単離された核酸分子」は、場合により合成、非天然または修飾ヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを指す。DNAポリマーの形態の単離された核酸分子は、1個またはそれ以上のcDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの断片を含んでなってもよい。
【0068】
ここでの用法では、「pBHR−crt1」という用語は、β−カロテン生成プラスミドを指す。プラスミドはパントエア・スティワルティ(Pantoea stewartii)(ATCC 8199)からのcrtEXYIBカロテノイド遺伝子クラスターをpBHR1中にクローンして構築された(ドイツ国ゲッティンゲンのモビテック(MoBioTech(Goettingen,Germany)、および参照によってここに編入する米国特許出願第09/941947号明細書に相当する国際公開第02/18617号パンフレットを参照されたい)。得られるプラスミドは、クロラムフェニコール抵抗性遺伝子プロモーターの制御下で発現されるP.スティワルティ(stewartii)遺伝子クラスターを含有した。
【0069】
ここでの用法では、「pDCQ300」という用語は、β−カロテン産生プラスミドを指す。プラスミドは、パントエア・ステワルティ(Pantoea stewartii)(ATCC番号8199)からのカロテノイド遺伝子クラスターcrtEYIBをカリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad,CA))からのpTrcHis2−Topoベクター中にクローニングして構築された。
【0070】
ここでの用法では、「pDCQ301」という用語は、crtEYIB遺伝子クラスターを含有するpDCQ300の4.5kB EcoRI断片をモビテック(MoBiTec)からのベクターpBHR1のユニークなEcoRI部位にクローニングして構築されたβ−カロテン産生プラスミドを指す。pDCQ301では、crtEとcrtYの遺伝子間領域にユニークなMfeI部位が遺伝子操作された。
【0071】
ここでの用法では、「pDCQ329」という用語は、β−カロテン生成プラスミドを指す。プラスミドは、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)DC260からのcrtEXYIB遺伝子クラスターを広域宿主範囲ベクターpBHR1(米国特許出願第10/808979号明細書)中にクローンして構築された。
【0072】
ここでの用法では、「pDCQ330」という用語は、β−カロテン生成プラスミドを指す。プラスミドは、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)DC404からのcrtEidiYIBカロテノイド遺伝子クラスターを広域宿主範囲ベクターpBHR1中にクローンして構築された(米国特許出願第10/808807号明細書および米国特許仮出願第60/527083号明細書)。
【0073】
ここでの用法では、「pDCQ340」という用語は、腸内細菌科DC260からのcrtEYIB遺伝子クラスターを発現するプラスミドを指す。天然遺伝子クラスター中のcrtX遺伝子は削除された。遺伝子クラスターをベクターpBHR1中にクローンした。
【0074】
ここでの用法では、「pDCQ342」という用語は、crtWEYIB遺伝子クラスターを発現するプラスミドを指す。ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)からのcrtWコード配列を腸内細菌科DC260からのcrtEYIB遺伝子クラスター上流でpBHR1にクローンした。
【0075】
ここでの用法では、「pDCQ342TA」という用語は、インビトロジェン(Invitrogen)からのpTrcHis2−TOPOベクター中にクローンされた、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのcrtW遺伝子を発現するプラスミドを指す。
【0076】
ここでの用法では、「pDCQ344」という用語は、crtZWEYIB遺伝子クラスターを発現するプラスミドを指す。ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのcrtZコード配列をpDCQ342のcrtWEYIB遺伝子クラスター上流にクローンして、アスタキサンチン産生プラスミドを得た。
【0077】
ここでの用法では、「pDCQ352」という用語は、インビトロジェン(Invitrogen)からのpTrcHis2−TOPOベクター中にクローンされた、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのcrtZ遺伝子を発現するプラスミドを指す。
【0078】
ここでの用法では、「pDCQ363」という用語は、メチロモナス(Methylomonas)種16aから増幅され、pBHR1中にクローンされた、phps1プロモーターを含んでなるプラスミドを指す。
【0079】
ここでの用法では、「pDCQ364」という用語は、プラスミドpDCQ363中にクローンされた、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)からのcrtZ遺伝子のコード配列を含んでなるプラスミドを指す。
【0080】
ここでの用法では、「pDCQ365」という用語は、プラスミドpDCQ364中にクローンされた、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からのcrtW遺伝子のコード配列を含んでなるプラスミドを指す。スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からのcrtW遺伝子のコード配列、およびノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZ遺伝子のコード配列を1つの転写単位として、メチロモナス(Methylomonas)種16aからのphps1プロモーターのコントロール下に共発現させた。
【0081】
ここでの用法では、「pDCQ366」という用語は、pDCQ365からのcrtWZ転写単位を含んでなるプラスミドを指し、β−カロテン合成プラスミドpDCQ330中にクローンされて、アスタキサンチンを生成できるプラスミドが得られる。
【0082】
ここでの用法では、「pDCQ370TA」という用語は、インビトロジェン(Invitrogen)からのpTrcHis2−TOPOベクター中にクローンされた、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのcrtZ遺伝子を発現するプラスミドを指す。それはpDCQ352と同じく、crtZ遺伝子の側面にある異なる制限部位を組み込む。
【0083】
ここでの用法では、「pTrc−His2−crtZ(スフィンゴ(Sphingo))」という用語は、インビトロジェン(Invitrogen)からのpTrcHis2−TOPOベクター中にクローンされた、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZ遺伝子コード配列を発現するプラスミドを指す。
【0084】
ここでの用法では、化合物について言及される「イソプレノイド」または「テルペノイド」という用語は、カロテノイドおよびキサントフィルなどの炭素10個のテルペノイドおよびそれらの誘導体をはじめとする、イソプレノイド経路から誘導されるあらゆる分子である。
【0085】
ここでの用法では、「カロテノイド」という用語は、炭素5個のイソプレン単位から縮合したポリエン主鎖から構成される化合物を指す。「カロテノイド」は、非環状であることができ、または1個(単環状)または2個(二環状)の環状末端基で終結することができる。「カロテノイド」という用語は、カロテンおよびキサントフィルの双方を含んでもよい。「カロテン」とは、炭化水素カロテノイドを指す。ヒドロキシ−、メトキシ−、オキソ−、エポキシ−、カルボキシ−、またはアルデヒド官能基の形態で、あるいはグリコシド、グリコシドエステル、またはスルフェート内に1つ以上の酸素原子を含有するカロテン誘導体は、まとめて「キサントフィル」として知られている。本発明で特に適切なカロテノイドは単環状および二環状カロテノイドである。
【0086】
ここでの用法では、「カロテノイド生合成経路」という用語は、上流イソプレノイド経路、および/または下流カロテノイド生合成経路の構成要素を構成する遺伝子を指す。
【0087】
ここでの用法では、「上流イソプレノイド経路」、「イソプレノイド経路」、および「上流経路」という用語は区別なく使用され、ピルビン酸およびグリセルアルデヒド−3−リン酸からファルネシルピロリン酸(FPP)への転換に関与する酵素を指す。これらの酵素をコードする遺伝子としては、「dxs」遺伝子(1−デオキシキシルロース−5−リン酸シンターゼをコードする)、「dxr」遺伝子(1−デオキシキシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼをコードする)、「ispD」遺伝子(2C−メチル−D−エリスリトールシチジル転移酵素をコードする、ygbPとしても知られている)、「ispE」遺伝子(4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼをコードする、ychBとしても知られている)、「ispF」遺伝子(2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロ二リン酸シンターゼをコードする、ygbBとしても知られている)、「pyrG」遺伝子(CTPシンターゼをコードする)、ジメチルアリル二リン酸の形成に関与する「lytB」遺伝子、2−C−メチル−D−エリスリトール4−リン酸の合成に関与する「gcpE」遺伝子、「idi」遺伝子(IPPからジメチルアリルピロリン酸への分子内転換に関与する)、およびイソプレノイド経路中の「ispA」遺伝子(ゲラニル転移酵素またはファルネシル二リン酸シンターゼをコードする)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0088】
ここでの用法では、用語「下流カロテノイド生合成経路」および「下流経路」は区別なく使用され、FPPを一連のカロテノイドに転換する酵素を指す。これらとしては(合成がC30カロテノイド生合成にユニークな第1のステップを代表する)ジアポフィトエン、または(合成がC40カロテノイド生合成にユニークな第1のステップを代表する)フィトエンのいずれかの合成に関与する、遺伝子および遺伝子産物が挙げられる。様々なC30〜C40カロテノイド生成をもたらす全ての引き続く反応は、下流カロテノイド生合成経路に含まれる。これらの遺伝子および遺伝子産物には、crtM、crtN、crtN2、crtE、crtX、crtY、crtI、crtB、crtZ、crtW、crtO、crtA、crtC、crtD、crtF、およびcrtUをはじめとするが、これに限定されるものではない「crt」遺伝子の全てが含まれる。最後に「下流カロテノイド生合成酵素」という用語は、CrtM、CrtN、CrtN2、CrtE、CrtX、CrtY、CrtI、CrtB、CrtZ、CrtW、CrtO、CrtA、CrtC、CrtD、CrtF、およびCrtUをはじめとするが、これに限定されるものではない、下流経路中の酵素の全部または一部を指す包括的用語である。
【0089】
「C30ジアポカロテノイド」は、2個の中央メチル基が1,6−位の関係にあり、残りの非末端メチル基が1,5−位の関係にあるように、イソプレノイド単位の配置が分子の中央で逆転するような様式で結合する6個のイソプレノイド単位からなる。全てのC30カロテノイドは、(i)水素付加、(ii)脱水素化、(iii)環化、(iv)酸化、(v)エステル化/グリコシル化、またはこれらのプロセスのいずれかの組み合わせによって、接合二重結合の長い中央鎖を有する非環状C3042構造から形式的に誘導されてもよい。
【0090】
「テトラテルペン」または「C40カロテノイド」は、2個の中央メチル基が1,6−位の関係にあり、残りの非末端メチル基が1,5−位の関係にあるように、イソプレノイド単位の配置が分子の中央で逆転するような様式で結合した8個のイソプレノイド単位からなる。全てのC40カロテノイドは、非環状C4056構造から形式的に誘導されてもよい。C40カロテノイドの制限を意図しない例としては、フィトエン、リコペン、β−カロテン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、およびカンタキサンチンが挙げられる。
【0091】
ここでの用法では、「CrtE」という用語は、crtE遺伝子によってコードされ、トランス−トランス−ファルネシル二リン酸とイソペンテニル二リン酸をピロリン酸とゲラニルゲラニル二リン酸に転換する、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼを指す。
【0092】
ここでの用法では、「Idi」という用語は、idi遺伝子によってコードされるイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(E.C.5.3.3.2)を指す。
【0093】
ここでの用法では、「CrtY」という用語は、crtY遺伝子によってコードされ、リコペンをβ−カロテンに転換するリコペン環化酵素を指す。
【0094】
ここでの用法では、「CrtI」という用語は、crtI遺伝子によってコードされるフィトエン不飽和化酵素を指す。CrtIは4個の二重結合の導入により、フィトフルエン、ζ−カロテン、およびニューロスポレンの中間物を通じて、フィトエンをリコペンに転換する。
【0095】
ここでの用法では、「CrtB」という用語は、プレフィトエン二リン酸からフィトエンへの反応を触媒するcrtB遺伝子によってコードされるフィトエンシンターゼを指す。
【0096】
ここでの用法では、「CrtZ」という用語は、crtZ遺伝子によってコードされ、水酸化反応を触媒する、3、3’β−イオノンヒドロキシラーゼ酵素とも称されるカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素(例えばβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素)を指す。酸化反応は、3および/または3’位置にβ−イオノンタイプ環を有する環状カロテノイドに水酸基を付加する。この反応は、β−カロテンまたはカンタキサンチンなどの環状カロテノイドをヒドロキシル化カロテノイド、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンにそれぞれ転換する。プロセスの中間体は、典型的にβ−クリプトキサンチンおよびアドニルビンを含む。CrtZヒドロキシラーゼ酵素は典型的に基質可撓性を示し、入手できる基質次第で多様なヒドロキシル化カロテノイドの生成を可能にすることが知られている。
【0097】
ここでの用法では、「CrtW」という用語は、環状カロテノイドのβ−イオノンタイプ環上にケト基が導入される酸化反応を触媒するcrtW遺伝子によってコードされる、β−カロテンケトラーゼ酵素を指す。「カロテノイドケトラーゼ」または「ケトラーゼ」という用語は、環状カロテノイドのイオノンタイプ環の4および/または4’位置にケト基を付加できる酵素群を指す。
【0098】
ここでの用法では、「CrtX」という用語は、ゼアキサンチンをゼアキサンチン−β−ジグルコシドに転換し、crtX遺伝子によってコードされるゼアキサンチングルコシル転移酵素酵素を指す。
【0099】
ここでの用法では、「ヒドロキシル基」と言う用語は、1つの酸素および1つの水素原子よりなる1価のラジカルまたは基を指す(「−OH」)。
【0100】
ここでの用法では、「ケト基」または「ケトン基」という用語は区別なく使用されて、その中でカルボニル基が2つの炭素原子に結合する群を指す:RC=O(どちらがのRがHであってもよい)。
【0101】
ここでの用法では、「ケトカロテノイド」という用語は、環状カロテノイドのイオノン環上に少なくとも1つのケト基を有するカロテノイドを指す。ケトカロテノイドの例としては、カンタキサンチンおよびアスタキサンチンが挙げられる。
【0102】
ここでの用法では、「環状カロテノイド」という用語は、本CrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素によってヒドロキシル化できる少なくとも1つのβ−イオノン環またはβ−イオノン環誘導体を有するカロテノイドを指す。
【0103】
ここでの用法では、「カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素」、「β−カロテンヒドロキシラーゼ酵素」、「ヒドロキシラーゼ酵素」、および「CrtZヒドロキシラーゼ酵素」という用語は同義的に使用され、環状カロテノイドのβ−イオノン環への水酸基の添加を触媒するcrtZ遺伝子によってコードされる、カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素を指す。
【0104】
ここでの用法では、「ヒドロキシル化カロテノイド」という用語は、環状カロテノイドのイオノン環上に少なくとも1つの水酸基を有するカロテノイドを指す。ヒドロキシル化カロテノイドの例としては、ゼアキサンチンおよびアスタキサンチンが挙げられる。
【0105】
ここでの用法では、「実質的に類似した」とは、1個またはそれ以上のヌクレオチド塩基の変化が、1個またはそれ以上のアミノ酸の置換をもたらすが、DNA配列によってコードされるタンパク質の官能特性に影響しない核酸分子を指す。「実質的に類似した」とは、1個またはそれ以上のヌクレオチド塩基の変化が、アンチセンスまたはコサプレッション技術によって、遺伝子発現の変更を媒介する核酸分子の能力に影響しない核酸分子も指す。「実質的に類似した」とは、得られる転写物の官能特性に実質的に影響しない、1個またはそれ以上のヌクレオチド塩基の欠失または挿入などの本発明の核酸分子の修飾も指す。したがって本発明は、特定の例示的な配列以上のものを包含するものと理解される。
【0106】
例えば特定部位で化学的に等価のアミノ酸の生産をもたらすが、コードされるタンパク質の機能特性に影響しない遺伝子の変化が一般的であることは、技術分野でよく知られている。本発明の目的では、置換は以下の5つの群中の1つの交換として定義される。
1.小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)、
2.極性、負に帯電した残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln、
3.極性、正に帯電した残基:His、Arg、Lys、
4.大型脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)、および
5.大型芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0107】
したがって疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンのためのコドンは、別のより疎水性が低い残基(グリシンなど)または疎水性がより高い残基(バリン、ロイシン、またはイソロイシンなど)をコードするコドンによって置換されてもよい。同様に、1つの負に帯電した残基を別のものにする(グルタミン酸からアスパラギン酸など)、または1つの正に帯電した残基を別のものにする(アルギニンからリジンになど)置換をもたらす変化も機能的に等しい生成物を生じることが期待できる。
【0108】
多くの場合、タンパク分子のN−末端およびC−末端部分の変化をもたらすヌクレオチド変化もタンパク活性を変更させるとは考えられない。
【0109】
それぞれの提案される変更は、十分に技術分野のルーチン技術の範囲内であり、コードされる生成物の生物学的活性保持の判定も同様である。さらに当業者は、本発明によって包含される実質的に類似した配列が、ストリンジェントな条件(0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDS)下で、ここで例証する配列とハイブリダイズするそれらの能力によっても定義されることを認識する。本発明の好ましい実質的に類似した核酸分子は、そのDNA配列が、ここで報告する核酸分子のDNA配列と少なくとも80%同一の核酸断片である。より好ましい核酸分子は、ここで報告する核酸分子のDNA配列と少なくとも90%同一である。最も好ましいのは、ここで報告する核酸分子のDNA配列と少なくとも95%同一の核酸分子である。
【0110】
核酸分子は、適切な温度および溶液イオン強度条件下で、核酸分子の一本鎖形態が他の核酸分子とアニールできる場合、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸分子と「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件についてはよく知られており、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチュ(Fritsch),E.F.およびマニアティス(Maniatis),T.「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor(1989年)の特に第11章およびその表11.1で例証される(以下「マニアティス(Maniatis)」)。温度およびイオン強度条件が、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を定める。ストリンジェンシー条件は、遠縁の生物からの相同的配列などの中程度に類似の分子をスクリーニングするため、そして機能性酵素を複製する近縁の生物からの遺伝子などの高度に類似した分子をスクリーニングするために調節できる。ハイブリダイゼーション後の洗浄が、ストリンジェンシー条件を決定する。好ましい1組の条件は、室温において6×SSC、0.5%SDSで15分間に始まり、次に45℃において2×SSC、0.5%SDSで30分間を反復し、次に50℃において0.2×SSC、0.5%SDSを30分間を2回反復する一連の洗浄を使用する。より好ましい1組の条件はより高い温度を使用し、そこでは洗浄は、最後の0.2×SSC、0.5%SDS中での2回の30分間の洗浄の温度を60℃に増大させること以外は上述したのと同一である。さらに別の好ましい1組の条件では、高度にストリンジェントな条件は、65℃において0.1×SSC、0.1%SDS中での2回の最終洗浄を使用する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー次第で塩基間のミスマッチは可能であるが、ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的配列を含有することを要求する。核酸がハイブリダイズする適切なストリンジェンシーは、技術分野でよく知られた変数である核酸の長さおよび相補性の程度に左右される。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が高い程、これらの配列を有する核酸ハイブリッドのTm値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対安定性(より高いTmに相当する)は、次の順で低下する。RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さが100個のヌクレオチドを超えるハイブリッドでは、Tmを計算する式が導かれている(マニアティス(Maniatis))ら、前述9.50〜9.51参照)。より短かい核酸、すなわちオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションのためにはミスマッチの配置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(マニアティス(Maniatis))ら、前述11.7〜11.8参照)。一実施態様では、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは少なくともヌクレオチド約10個である。ハイブリダイズ可能な核酸の最小の長さは、好ましくは少なくともヌクレオチド約15個、より好ましくは少なくともヌクレオチド約20個、そして最も好ましくは長さが少なくともヌクレオチド約30個である。さらに当業者は、温度および洗浄液の塩濃度が、プローブの長さなどの要因次第で必要に応じて調節できることを認識する。
【0111】
ここでの用法では、「かなりの部分」と言う熟語は、当業者による配列の手動評価によって、あるいはBLAST(「基礎的局在性整列化検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)」アルトシュル(Altschul)ら、J.Mol.Biol.、215:403〜410頁(1993年))などのアルゴリズムを使用したコンピュータ支援配列比較および同定によって、遺伝子またはポリペプチドの推定上の同定を得るのに十分なポリペプチドまたは遺伝子のヌクレオチド配列のアミノ酸配列を含んでなる、アミノ酸またはヌクレオチド配列について述べるために使用される。推定的にポリペプチドまたは核酸配列が、既知のタンパク質または遺伝子に相同的であると同定するためには、概して約10個以上の隣接するアミノ酸、または約30個以上のヌクレオチド配列が必要である。さらにヌクレオチド配列に関して、約20〜30個の隣接するヌクレオチドを含んでなる遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを配列依存遺伝子同定法(例えばサザンハイブリダイゼーション)および単離(例えば細菌コロニーまたはバクテリオファージ・プラークの原位置(in situ)ハイブリダイゼーション)において使用してもよい。さらにプライマーを含んでなる特定の核酸分子を得るために、塩基約12〜15個の短いオリゴヌクレオチドをPCRで増幅プライマーとして使用してもよい。したがってヌクレオチド配列の「かなりの部分」は、配列を含んでなる核酸分子を特異的に同定および/または単離できるようにする十分な配列を含んでなる。本願明細書は、1つまたはそれ以上の特定の微生物タンパク質をコードする部分的または完全アミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。当業者はここで報告される配列の恩恵を被り、当業者に知られている目的のために、今や開示された配列の全てまたはかなりの部分を使用できる。したがって本発明は、添付の配列表で報告される完全な配列、ならびに上で定義される配列のかなりの部分を含んでなる。
【0112】
「相補的」と言う用語は、互いにハイブリダイズできるヌクレオチド塩基間の関係について述べるために使用される。例えばDNAについて、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって本発明は添付の配列表で報告されるような完全な配列、ならびに実質的に類似した核酸配列に相補的である単離された核酸分子も含む。
【0113】
技術分野で既知の「パーセント同一性」と言う用語は、配列を比較して判定される2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の関係である。技術分野において「同一性」は、場合によってはこのような配列ストリング間の整合によって判定されるような、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」および「類似性」は、「計算分子生物学(Computational Molecular Biology)(レスク(Lesk),A.M.編)、Oxford University Press、NY(1988年)、「バイオコンピューティング:情報科学およびゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)」(スミス(Smith),D.W.編)、Academic Press、NY(1993年)、「配列データのコンピュータ分析(Computer Analysis of Sequence Data)、第一部」、(グリフィン(Griffin),A.M.、およびグリフィン(Griffin),H.G.編)、Humana Press、NJ(1994年)、「分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)」(フォン・ハインェ(von Heinje),G.編)、Academic Press(1987年)、「配列分析入門(Sequence Analysis Primer)」(グリブスコフ(Gribskov),M.およびデュヴルー(Devereux),J.編)、Stockton Press、NY(1991年)で述べられたものをはじめとするが、これに限定されるものではない既知の方法によって容易に計算できる。同一性を判定するために使用される好ましい方法は、試験される配列間に最良の整合を与えるようにデザインされる。同一性および類似性を判定する方法は、一般に入手できるコンピュータプログラムで体系化される。配列整合および同一性百分率の計算は、ウィスコンシンマディソンのDNASTAR(DNASTAR Inc.(Madison,WI))からのLASERGENEバイオインフォマティクス計算パッケージのメガライン(Megalign)プログラム、またはメリーランド州ベセズダのインフォマックス(Informax,Inc.(Bethesda,MD))からのベクターNTIv.7.0のアラインX(AlignX)プログラムを使用して実施してもよい。クラスタル(Clustal)整合法(ヒギンズ(Higgins)およびシャープ(Sharp)、CABIOS.5:151〜153頁(1989年))を使用して、デフォルトのパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)で、配列の複数の整合を実施できる。クラスタル(Clustal)法を使用した対整合のデフォルトのパラメータは、典型的にKTUPLE 1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、およびDIAGONALS SAVED=5である。
【0114】
適切な核酸分子(本発明の単離されたポリヌクレオチド)は、ここで報告されるアミノ酸配列と少なくとも約80%同一のポリペプチドをコードする。より好ましい核酸分子は、ここで報告されるアミノ酸配列と約90%同一のアミノ酸配列をコードする。さらにより好ましい核酸分子は、ここで報告されるアミノ酸配列と約95%同一のアミノ酸配列をコードする。本発明の適切な核酸分子は上の相同体を有するだけでなく、典型的に約161個のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
【0115】
ここでの用法では、「多岐にわたる遺伝子」、「多岐にわたるヒドロキシラーゼ酵素」、および「多岐にわたる配列」という用語は互換性に使用され、CrtZヒドロキシラーゼ酵素間の核酸分子配列同一性欠如を指す。2つ以上のcrtZ遺伝子間のヌクレオチド配列の比較は、配列同一性の相対程度に関する関連性の分類を可能にする。高度に相同的な(すなわち高いヌクレオチド配列同一性を有する)遺伝子の同時発現は、遺伝的不安定性をもたらす傾向がある。中程度または高度に多岐にわたる遺伝子の発現は、安定した共発現をもたらす可能性が高い。共発現に有用な好ましいcrtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、配列比較によって比較すると約75%未満の同一性があるものである。共発現のためにより好ましいcrtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、配列比較によって比較すると約65%未満の同一性があるものである。共発現のためにさらにより好ましいcrtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、配列比較によって比較すると約60%未満の同一性があるものである。共発現のために最も好ましいcrtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、配列比較によって比較すると約55%未満の同一性があるものである。
【0116】
ここでの用法では、「コドン縮重」とは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響しないヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝子コード中の性質を指す。したがって本発明は、配列番号17および20で示される本微生物のポリペプチドをコードするアミノ酸配列の全てまたはかなりの部分をコードするあらゆる核酸分子に関する。当業者は、任意のアミノ酸を特定化するためのヌクレオチドコドンの利用において、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」を十分承知している。したがって宿主細胞中における改善された発現のために遺伝子を合成する場合、コドン使用頻度が、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近くなるようように、遺伝子をデザインすることが望ましい。
【0117】
「合成遺伝子」は、当業者に知られた手順を使用して化学的に合成されるオリゴヌクレオチド構成単位から構築できる。これらの構成単位をライゲートしアニールして遺伝子セグメントを形成し、次にそれを酵素的にアセンブルして遺伝子全体を構成してもよい。DNA配列に関連して「化学的に合成された」とは、構成要素ヌクレオチドが生体外で(in vitro)アセンブルされたことを意味する。DNAの手動化学合成は確立した手順を使用して達成されてもよく、あるいはいくつかの市販の機器の1つを使用して自動化学合成を実施できる。したがって遺伝子をヌクレオチド配列の最適化に基づいて、最適な遺伝子発現のために調整し、宿主細胞のコドンバイアスを反映させることができる。当業者は、コドン利用が宿主によって好まれるコドンに偏っている場合の遺伝子発現成功の見込みの真価を認める。好まれるコドンの判定は、配列情報が利用できる宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づくことができる。
【0118】
「遺伝子」とは、特異的タンパクを発現する核酸分子を指す。ここでの用法では、それはコード配列に先行する制御配列(5’非コード配列)およびその後ろの制御配列(3’非コード配列)を含んでも含まなくてもよい。「天然遺伝子」とは、それ自体の制御配列を有して自然界に見いだされる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、自然界には一緒に見られない制御およびコード配列を含んでなる天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。したがってキメラ遺伝子は、異なる供給源から誘導される制御配列およびコード配列、あるいは同一供給源から誘導されるが、自然界に見られるのとは異なるやり方で配列された制御配列およびコード配列を含んでなってもよい。「内在性遺伝子」とは、生物のゲノム中の自然な部位にある天然遺伝子を指す。「外来性」遺伝子とは、常態では宿主生物に見られないが、遺伝子移入によって宿主生物中に導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでなることができる。「導入遺伝子」とは、形質転換手順によってゲノム中に導入された遺伝子である。
【0119】
「遺伝子コンストラクト」という用語は、生物体の遺伝子型を調節するために有用な一連の近接する核酸を指す。遺伝子コンストラクトの非限定的な例としては、核酸分子、および読み取り枠、遺伝子、プラスミドなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0120】
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。ここでの用法では、「適切な調節配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、配列内、または下流(3’非コード配列)に位置して、転写、RNAプロセシングまたは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位、およびステム−ループ構造を含んでもよい。
【0121】
「プロモーター」とは、コード配列または機能性RNAの発現を調節できるDNA配列を指す。概してコード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターはそっくりそのまま天然遺伝子から誘導されてもよく、あるいは自然界に見られる異なるプロモーターから誘導される異なる要素からなってもよく、あるいは合成DNAセグメントを含んでなってさえよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞タイプ中で、あるいは異なる発達段階において、あるいは異なる環境または生理学的条件に呼応して、遺伝子の発現を導いてもよいことが当業者には理解される。ほとんどの細胞タイプ中でほとんどの場合に遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構築プロモーター」と称される。ほとんどの場合、制御配列のはっきりした境界は完全に画定されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有してもよいこともさらに認識される。
【0122】
「3’非翻訳配列」は、コード配列の下流に位置するDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列(常態では真核細胞に限られる)およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響できる調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆物質の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加(常態では真核細胞に限られる)に影響することで特徴づけられる。
【0123】
「RNA転写物」とは、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から得られる生成物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは一次転写物と称され、あるいはそれは一次転写物の転写後プロセッシングから誘導されるRNA配列であるかもしれず、成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA(mRNA)」とはイントロンがなく、細胞によってタンパク質に翻訳されることができるRNAを指す。「cDNA」とは、mRNAに対して相補的であり、それから誘導される二重鎖DNAを指す。「センスRNA」とは、mRNAを含み、細胞によってタンパク質に翻訳されることができるRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」とは、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部に相補的であり、標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写物を指す(米国特許第50,170,065号明細書、国際公開第99/28508号パンフレット)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物のあらゆる部分、すなわち5’非コード配列、3’非コード配列、またはコード配列にあってもよい。「機能RNA」とは、翻訳されないがそれでもなお細胞過程に影響するアンチセンスRNA、リボザイムRNA、または他のRNAを指す。
【0124】
「作動可能に連結した」と言う用語は、1つの機能が他方の機能によって影響される、単一核酸分子上の核酸配列のつながりを指す。例えばプロモーターはコード配列の発現に影響できる場合、そのコード配列と作動可能に連結する(すなわちコード配列がプロモーターの転写調節の下にある)。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で制御配列に作動可能に連結できる。
【0125】
「発現」と言う用語は、ここでの用法では、本発明の核酸分子から誘導されるセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指してもよい。
【0126】
「形質転換」は、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす、宿主生物体ゲノム中への核酸分子の転移を指す。本発明では宿主細胞のゲノムは、染色体および染色体外(例えばプラスミド)遺伝子を含む。形質転換核酸分子を含有する宿主生物体は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換」生物体と称される。
【0127】
「接合」とは、1つの細菌細胞(すなわち「供与体」)から別の(すなわち「受容体」)細菌細胞への一方向性のDNA転位(例えば細菌プラスミドからの)が起きる、特定のタイプの形質転換を意味する。プロセスは直接的な細胞と細胞の接触を伴う。
【0128】
「炭素基質」という用語は、本発明の宿主生物体によって代謝されることができる炭素源、特に単糖類、二糖類、多糖類、および一炭素基質またはそれらの混合物よりなる群から選択される炭素源を指す。用語「C炭素基質」は、炭素−炭素結合を欠くあらゆる炭素含有分子を指す。制限を意図しない例は、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸、ホルマート、メチル化アミン(例えばモノ−、ジ−、およびトリ−メチルアミン)、メチル化チオール、および二酸化炭素である。特に好ましいのは、メタンおよび/またはメタノールを代謝できる生物体である。
【0129】
「C代謝個体」という用語は、その唯一のエネルギーおよび生物体量源として、単一炭素基質を使用する能力を有する微生物を指す。C代謝個体は、典型的にメチロトローフおよび/またはメタノトローフである。「C代謝細菌」という用語は、それらの唯一のエネルギーおよび生物体量源として単一炭素基質を使用する能力を有する細菌を指す。C代謝個体のサブセットであるC代謝細菌は、典型的にメチロトローフおよび/またはメタノトローフである。
【0130】
「メチロトローフ」という用語は、炭素−炭素結合を含有しない有機化合物を酸化できる生物体を意味する。メチロトローフがCHを酸化できる場合、メチロトローフはメタノトローフでもある。一態様では、微生物の宿主細胞は主要炭素源として、メタンおよび/またはメタノールで生育させたメチロトローフである。
【0131】
「メタノトローフ」または「メタノトローフ細菌」という用語は、その主要な炭素およびエネルギー源として、メタンを利用できる原核生物を意味する。メタンから二酸化炭素への完全な酸化は、好気性分解経路によって起きる。本発明で有用な典型的なメタノトローフの例としては、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、およびメチロサイナス(Methylosinus)属が挙げられる(が、これに限定されるものではない)。一態様では、メタノトローフは、メタンおよび/またはメタノールで生育させた高成長メタノトローフ細菌株である。別の態様では、メタノトローフはメチロモナス(Methylomonas)種16a(ATCC PTA−2402)およびその誘導体である。
【0132】
「高生育メタノトローフ細菌株」という用語は、メタンまたはメタノールを唯一の炭素およびエネルギー源として生育でき、機能的エムデンマイヤーホフ炭素流束経路を有して、高い生育速度と、代謝されるC基質のグラム当たりの高細胞量生成量とが得られる細菌を指す(米国特許第6,689,601号明細書)。ここで述べられる特定の「高生育メタノトローフ細菌株」は、「メチロモナス(Methylomonas)16a」、「16a」または「メチロモナス(Methylomonas)種16a」と称され、それらの用語は区別なく使用されて、本発明で使用されるメチロモナス(Methylomonas)株(メチロモナス(Methylomonas)種16a ATCC PTA−2402)を指す。
【0133】
ここでの用法では、「CrtN1」という用語は、crtN1遺伝子によってコードされ、メチロモナス(Methylomonas)種16aの天然カロテノイド生合成経路において活性である酵素を指す。この遺伝子は、crtN2およびaldを含んでなるオペロン内に位置する。
【0134】
ここでの用法では、「ALD」という用語は、ald遺伝子によってコードされ、メチロモナス(Methylomonas)種16aの天然カロテノイド生合成経路において活性である酵素を指す。この遺伝子は、crtN1およびcrtN2を含んでなるオペロン内に位置する。
【0135】
ここでの用法では、「CrtN2」という用語は、crtN2遺伝子によってコードされ、メチロモナス(Methylomonas)種16aの天然カロテノイド生合成経路において活性である酵素を指す。この遺伝子は、crtN1およびaldを含んでなるオペロン内に位置する。
【0136】
ここでの用法では、「CrtN3」という用語は、crtN3遺伝子によってコードされ、メチロモナス(Methylomonas)種16aの天然カロテノイド生合成に影響する酵素を指す。この遺伝子はcrt遺伝子クラスター内に位置せず、代わりにこの遺伝子はメチロモナス(Methylomonas)ゲノムの異なる位置に存在する。
【0137】
ここでの用法では、「MWM1200(Δcrtクラスタープロモーター+ΔcrtN3)」または「MWM1200」という用語は、その中でcrtクラスタープロモーターおよびcrtN3遺伝子が中断されているメチロモナス(Methylomonas)種16aの変異株を指す。天然C30カロテノイド生合成経路の中断は、C40カロテノイド生成を操作するための適切な背景(無着色)をもたらす。メチロモナス(Methylomonas)MWM1200株が以前作り出されており、適切なカロテノイド生成宿主である(参照によってここに編入する米国特許出願第10/997844号明細書)。「無着色」または「白色変異体」という用語は、その中で天然ピンク顔料(例えばC30カロテノイド)が生成されないメチロモナス(Methylomonas)種16a細菌を指す。したがって細菌細胞は、色がピンクとは対照的に白色であるように見える。
【0138】
「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」という用語は、多くは細胞の中心的代謝の一部でない遺伝子を保有して、通常環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外要素を指す。このような要素は、あらゆる供給源に由来する、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの直線または環状の自律的複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってもよく、その中でいくつかのヌクレオチド配列はユニークな構造に結合または組み込まれ、それは選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を適切な3’非翻訳の配列に沿って細胞中に導入できる。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含有し、外来遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を容易にする要素を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」は、外来遺伝子を含有し、外来遺伝子に加えて、異種宿主におけるその遺伝子の増強された発現を可能にする要素を有する特定のベクターを指す。
【0139】
ここでの用法では、「改変された生物学的活性」という用語は、微生物のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に付随する活性を指し、それはアッセイ法によって測定でき、そこでは活性は、天然微生物の配列に付随する活性を超えるまたはそれ未満のいずれかである。「増強した生物学的活性」とは、天然配列に付随するものを超える改変された活性を指す。「減少した生物学的活性」とは、天然配列に付随するもの未満の改変された活性である。
【0140】
「配列分析ソフトウェア」と言う用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析のために有用なあらゆるコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は市販のものでも、あるいは独立して開発されてもよい。典型的な配列分析ソフトウェアとしては、ウィスコンシン州マディソンのジェネティック・コンピュータ・グループ(GCG)(Genetics Computer Group(Madison,WI))からのGCGパッケージプログラム(ウィスコンシン・パッケージ(Wisconsin Package))バージョン9.0、BLASTP、BLASTN、BLASTX(アルシュール(Altschul)ら著、J.Mol.Biol.215:403〜410頁(1990年))、および米国ウィスコンシン州53715マディソン、サウスパーク通り1228のDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)からのDNASTAR、およびスミス−ウォーターマン・アルゴリズムを組み入れたFASTAプログラム(W.R.ピアースン(Pearson)著、Comput.Methods Genome Res.[国際シンポジウム議事録](1994年)、1992年会議、111〜20頁、編集者:スハイ,サンドル(Suhai,Sandor)、出版社:Plenum、New York,NY)、メリーランド州ベセズダのインフォマックス(Informax(Bethesda,MD))からのベクターNTI、そしてシーケンチャー(Sequencher)TMv.4.05が挙げられるが、これに限定されるものではない。本願明細書の文脈内では、配列分析ソフトウェアを分析のために使用する場合、分析結果は特に断りのない限り、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくものと理解される。ここでの用法では、「デフォルト値」とは、最初に初期化されたときにソフトウェアに元々ロードされた、製造業者によって設定されるあらゆる値またはパラメータの組を意味する。
【0141】
本発明は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263から単離された、新たに発見されたCrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素を提供する(米国特許出願第11/015433号明細書)。さらに本願明細書で、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700728(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)ZP_00094836.1、配列番号20)からの仮説的タンパク質の機能は、カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素活性を有するとして特性決定された。どちらのカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素も本方法によって、ヒドロキシル化カロテノイドを生成することが示された。本配列は、環状カロテノイド化合物からのヒドロキシル化カロテノイド生成のために、組換え宿主の生体外(in vitro)および生体内(in vivo)で使用してもよい。
【0142】
ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263crtZのヌクレオチド塩基および推定アミノ酸配列と公共データベースとの比較からは、BLASTP検索のBLOSUM62マトリックスを使用して、最も類似した既知の配列が161個のアミノ酸長にわたり、ここで報告されるアミノ酸配列に対して約51%の同一性を有することが明らかにされた(表3)。表4で報告するペアワイズ比較値は、ベクター(Vecto)NTI中のアラインX(AlignX)を使用して得られた。したがって好ましいアミノ酸断片は、ここでの配列と少なくとも約80%同一であり、より好ましいアミノ酸配列はここで報告されるアミノ酸断片と少なくとも約90%同一であり、さらにより好ましいアミノ酸配列はここで報告されるアミノ酸断片と少なくとも約95%同一であり、および最も好ましいのはここで報告されるアミノ酸分子と少なくとも99%同一の核酸分子である。
【0143】
同様に、好ましいcrtZ遺伝子は活性タンパク質をコードする核酸配列を含んでなり、それはここで報告される本核酸配列と少なくとも80%同一である。より好ましいcrtZ核酸分子は、ここでの核酸配列と少なくとも90%同一である。さらにより好ましいcrtZ核酸分子は、ここでの核酸配列と少なくとも95%同一である。最も好ましいのは、ここで報告される核酸分子と少なくとも99%同一のcrtZ核酸分子である。
【0144】
相同体の単離
本発明の核酸分子を使用して、同一または他の微生物種から相同タンパク質をコードする遺伝子を単離してもよい。配列依存プロトコルを使用した相同遺伝子の単離は、技術分野でよく知られている。配列依存プロトコルの例としては、以下が挙げられるが、これに限定されるものではない。核酸ハイブリダイゼーション法、および様々な核酸増幅技術の使用によって例証されるようなDNAおよびRNA増幅法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ミュリス(Mullis)ら、米国特許第4,683,202号明細書;リガーゼ連鎖反応(LCR)、タボール(Tabor)S.ら、Proc.Acad.Sci.USA 82:1074(1985年);または鎖置換増幅(SDA)、ウォーカー(Walker)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89:392(1992年))。
【0145】
例えば、本発明のものと類似したタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、当業者によく知られている方法を使用して、本核酸分子の全部または一部をDNAハイブリダイゼーションプローブとして使用して、あらゆる所望の細菌からのライブラリーをスクリーニングして直接単離できる。本核酸配列に基づく特定のオリゴヌクレオチドプローブは、技術分野で既知の方法によってデザインして合成できる(マニアティス(Maniatis)前出)。さらに利用できる生体外(in vitro)転写システムを使用して、ランダムプライマーDNA標識、ニックトランスレーション、末端標識技術またはRNAプローブなどの当業者に知られている方法によって、配列全体を直接使用してDNAプローブを合成できる。さらに特定のプライマーをデザインして使用し、本配列の一部または全長を増幅できる。得られた増幅生成物を増幅反応中に直接標識し、または増幅反応後に標識して、プローブとして使用し、適切な厳密さ条件下で完全長DNA断片を単離できる。
【0146】
典型的にPCRタイプ増幅技術ではプライマーは異なる配列を有し、互いに相補的でない。所望の試験条件次第で、プライマーの配列は、標的核酸の効率的かつ忠実な複製を提供するようにデザインされるべきである。PCRプライマーデザインの方法は一般的であり、技術分野でよく知られている(「ヒト遺伝病:実際的アプローチ(Human Genetic Deseases:A Practical Approach)」K.E.デービス(Davis)編から、テイン(Thein)およびウォーレス(Wallace)著、「遺伝病における特異的ハイブリダイゼーションプローブとしてのオリゴヌクレオチドの使用(The use of oligonucleotide as specific hybridization probes in the Diagnosis of Genetic Disorders)」、(1986年)、33〜50頁、IRL Press、Herndon,Virginia;ホワイト(White),B.A.編、「分子生物学的方法(Methods in Molecular Biology)」第15巻、31〜39頁よりリュクリック(Rychlik)W.(1993年)「PCRプロトコル:現行の方法と応用:(PCR Protocols:Current Methods and Applications)」、Humania Press:Totowa,NJ)。
【0147】
概してポリメラーゼ連鎖反応プロトコルにおいて、本配列の2本の短いセグメントを使用して、DNAまたはRNAから相同的遺伝子をコードするより長い核酸分子を増幅してもよい。ポリメラーゼ連鎖反応は、1つのプライマーの配列が本核酸断片から誘導され、別のプライマーの配列が真核生物遺伝子のmRNA前駆物質の3’末端のポリアデニル酸のトラクトの存在を利用する、クローニングされた核酸分子のライブラリーにおいて実施してもよい。ポリアデニル化mRNAを欠く微生物遺伝子の場合、ランダムプライマーを使用してもよい。ランダムプライマーはまた、DNAからの増幅にも有用かもしれない。
【0148】
代案としては、第2のプライマー配列は、クローニングベクターから誘導される配列に基づいてもよい。例えば当業者は、RACEプロトコル(フローマン(Frohman)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8998(1988年))に従って、PCRを使用して、転写物の一点と3’または5’末端との間の領域のコピーを増幅し、cDNAを作り出すことができる。3’および5’方向に向けたプライマーは、本配列からデザインできる。市販される3’RACEまたは5’RACE系(BRL)を使用して、特定の3’または5’cDNA断片を単離できる(オハラ(Ohara)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:5673(1989年);ロー(Loh)ら、Science 243:217(1989年))。
【0149】
代案としては、相同体の同定のために、ハイブリダイゼーション試薬として本配列を用いてもよい。核酸ハイブリダイゼーション試験の基本的構成要素には、プローブ、関心のある遺伝子または遺伝子断片を含有することが疑われるサンプル、および特定のハイブリダイゼーション法が含まれる。本発明のプローブは典型的に、検出する核酸配列に相補的な一本鎖核酸配列である。プローブは、検出する核酸配列と「ハイブリダイズ可能」である。プローブの長さは、5個の塩基から数万個の塩基の間で変動してもよく、実施する特定の試験に左右される。典型的に、約15個の塩基から約30個の塩基のプローブ長が適切である。プローブ分子の一部のみが、検出する核酸配列に相補的である必要がある。さらにプローブと標的配列との間の相補性は完璧でなくてもよい。ハイブリダイゼーションは不完全に相補的な分子間でも生じ、その結果、ハイブリダイズした領域内の特定の塩基の一部は、適切な相補的塩基と対合形成しない。
【0150】
ハイブリダイゼーション法はよく定義されている。典型的には、プローブおよびサンプルは、核酸ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で混合されなくてはならない。これは適切な濃度および温度条件下において、無機または有機塩存在下で、プローブとサンプルを接触させることを伴う。プローブとサンプル核酸の間であらゆる可能なハイブリダイゼーションが起きるように、プローブおよびサンプル核酸は、十分長い時間接触しなくてはならない。混合物中のプローブまたは標的濃度が、ハイブリダイゼーションが生じるのに必要な時間を決定する。プローブまたは標的濃度が高いほど、必要なハイブリダイゼーションインキュベーション時間は短くなる。場合により、カオトロピック剤を添加してもよい。カオトロピック剤は、ヌクレアーゼ活性を阻害することによって核酸を安定化させる。さらにカオトロピック剤は、室温において短いオリゴヌクレオチドプローブのセンシティブでストリンジェントなハイブリダイゼーションを可能にする(ヴァン・ネス(Van Ness)およびチェン(Chen)Nucl.Acids Res.19:5143〜5151頁(1991年))。適切なカオトロピック剤としては、特に塩化グアニジニウム、グアニジニウムチオシアネート、ナトリウムチオシアネート、リチウムテトラクロロ酢酸、過塩素酸ナトリウム、ルビジウムテトラクロロ酢酸、ヨウ化カリウム、およびセシウムトリフルオロ酢酸が挙げられる。典型的にカオトロピック剤は、約3Mの最終濃度で存在する。所望するならば、ハイブリダイゼーション混合物にホルムアミドを典型的に30〜50%(v/v)で添加できる。
【0151】
様々なハイブリダイゼーション溶液を用いることができる。典型的にこれらは、約20〜60%、好ましくは30容積%の極性有機溶剤を含んでなる。一般的なハイブリダイゼーション溶液では、約30〜50%v/vのホルムアミド、約0.15〜1Mの塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、トリス−HCl、PIPESまたはHEPESなどの約0.05〜0.1Mの緩衝液(pH範囲約6〜9)、ドデシル硫酸ナトリウムなどの約0.05〜0.2%の界面活性剤、または0.5〜20mMのEDTA、ファーマシア(Pharmacia Inc.)からのFICOLL(約300〜500キロダルトン)、ポリビニルピロリドン(約250〜500kdal)、および血清アルブミンを用いる。また典型的なハイブリダイゼーション溶液には、約0.1〜5mg/mLの未標識キャリア核酸、仔ウシ胸腺またはサケ精子DNA、または酵母RNAなどの断片化核DNA、および場合により約0.5〜2%重量/容積のグリシンも含まれる。ポリエチレングリコールなどの多様な極性水溶性剤または膨潤剤をはじめとする容積排除剤、例えばポリアクリレートまたはポリメチルアクリレートなどのアニオン性ポリマー、および硫酸デキストランなどのアニオン性糖ポリマーなど他の添加剤を含めてもよい。
【0152】
核酸ハイブリダイゼーションは多様なアッセイ様式に適合できる。最も適切なものの1つは、サンドイッチアッセイ型式である。サンドイッチアッセイは、特に非変性条件下でのハイブリダイゼーションに適合できる。サンドイッチ−タイプアッセイの主要構成要素は固形担体である。固形担体はそれに吸着され、あるいはそれと共有結合的に結合する、未標識で配列の一部分と相補的な固定核酸プローブを有する。
【0153】
本ヌクレオチドおよび推定されるアミノ酸配列の利用可能性は、DNA発現ライブラリーの免疫学的スクリーニングを容易にする。本アミノ酸配列の一部を代表する合成ペプチドを合成してもよい。これらのペプチドを用いて、動物を免疫し、アミノ酸配列を含んでなるペプチドまたはタンパク質に対して特異性があるポリノクローナルまたはモノクローナル抗体を生成できる。次にこれらの抗体を使用して、DNA発現ライブラリーをスクリーニングし、関心のある完全長DNAクローンを単離する(ラーナー(Lerner),R.A.、Adv.Immunol.36:1(1984年)、Maniatis、前出)。
【0154】
組換え発現−微生物
本配列の遺伝子および遺伝子産物は、異種の宿主細胞中、特に微生物宿主の細胞中で生成されてもよい。組換え微生物宿主中での発現は、様々な経路中間体の発現のため、宿主中に既存の経路の調節のため、またはこれまで宿主を使用して可能でなかった新しい生成物の合成のために有用かもしれない。
【0155】
本遺伝子および核酸分子の発現のために好ましい異種宿主細胞は、真菌または細菌系統群中に広く見られ、広範な温度、pH価、および溶剤耐性で生育する微生物宿主である。例えばあらゆる細菌、酵母菌、および糸状菌が、本核酸分子の発現のための適切な宿主であることが考察された。転写、翻訳およびタンパク質生合成器官は、それぞれの細胞供給原料に関係なく同一であるので、細胞バイオマスを生成するのに使用される炭素供給材料に関係なく、機能性遺伝子が発現される。大規模微生物生育および機能遺伝子発現は、広範な単純または複合炭水化物、有機酸およびアルコール(すなわちメタノール)、光合成または化学的自己栄養宿主の場合は、メタンまたは二酸化炭素などの飽和炭化水素を利用してもよい。しかし機能遺伝子は、窒素、亜リン酸、イオウ、酸素、炭素、または小型無機イオンをはじめとするあらゆる微量栄養素の形態および量をはじめとする特定の生育条件によって、阻止または抑圧され制御されてもよい。さらに機能遺伝子の制御は、培養に添加される典型的に栄養素またはエネルギー源とは見なされない、特定の制御分子の存在または不在によって達成されてもよい。生育速度もまた、遺伝子発現における重要な制御因子であってもよい。宿主株の例としては、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)などの真菌または酵母種、またはサルモネラ(Salmonella)、バシラス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、エリスロバクター(Erythrobacter)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、サイトファガ(Cytophaga)、ロドバクター(Rhodobacter)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリア(Corynebacteria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、デイノコッカス(Deinococcus)、エシェリキア(Escherichia)、エルウィニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロサイナス(Methylosinus)、メチロマイクロビウム(Methylomicrobium)、メチロシスティス(Methylocystis)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、シネコシスティス(Synechocystis)、シネココッカス(Synechococcus)、アナベナ(Anabaena)、チオバシラス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、クレブシエラ(Klebsiella)、およびミクソコッカス(Myxococcus)などの細菌種が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい細菌宿主株としては、エシェリキア(Escherichia)、バシラス(Bacillus)、およびメチロモナス(Methylomonas)が挙げられる。最も好ましい細菌宿主株としては、メチロモナス(Methylomonas)種16aおよびその突然変異体誘導体(すなわちメチロモナス(Methylomonas)種16a ATCC PTA−2402に由来する突然変異体)が挙げられる。
【0156】
外来性タンパクの高レベル発現を導く制御配列を含有する微生物発現システムおよび発現ベクターは、当業者にはよく知られている。本カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素の発現のために、これらのいずれでも使用してキメラ遺伝子を構築できる。次に形質転換を通じてこれらのキメラ遺伝子を適切な微生物に導入し、酵素の高レベル発現を提供できる。
【0157】
したがって例えば適切なプロモーター制御下にある本細菌酵素をコードするキメラ遺伝子の導入が、増大または改変されたヒドロキシル化カロテノイド生成を実証することが期待される。本遺伝子を天然宿主細胞、ならびに異種の宿主の双方において発現することが有用であることが考察された。本crtZ遺伝子の天然宿主中への導入は、ヒドロキシル化カロテノイドの改変されたレベルの生成をもたらす。さらに本遺伝子はまた、既存のカロテノイド経路が操作されていてもよい非天然宿主細菌中に導入してもよい。
【0158】
本発明によって生成される具体的なヒドロキシル化カロテノイドとしては、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、アドニルビン、アドニキサンチン、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4,4’−ジオン、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4−オン、カロキサンチン、エリスロキサンチン、ノストキサンチン、フレキシキサンチン、3−ヒドロキシ−γ−カロテン、3−ヒドロキシ−4−ケト−γ−カロテン、バクテリオルビキサンチン、バクテリオルビキサンチナール、およびルテインが挙げられるが、これに限定されるものではない。特に関心が高いのは、アスタキサンチンおよびゼアキサンチンの生成であり、その合成を図1に示す。本CrtZ酵素のための具体的な基質は、少なくとも1つのβ−イオノンタイプ環を有する環状カロテノイドである。環状カロテノイドは、技術分野でよく知られており、市販される。好ましいCrtZヒドロキシラーゼ酵素基質としては、β−カロテン、カンタキサンチン、β−クリプトキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、エキネノン、アドニルビン、γ−カロテン、4−ケト−γ−カロテン、デオキシ−フレキシキサンチン、およびα−カロテンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0159】
適切な宿主細胞の形質転換のために有用なベクターまたはカセットは、技術分野でよく知られている。典型的にベクターまたはカセットは、関連性のある遺伝子の転写および翻訳を導く配列、選択可能マーカー、および自律的複製または染色体組み込みができるようにする配列を含有する。適切なベクターは、転写イニシエーション制御を含む遺伝子の5’領域、および転写終結を制御するDNA断片の3’領域を含んでなる。双方の制御領域が、形質転換宿主細胞に相同的な遺伝子から誘導されることが最も好ましいが、このような制御領域は、必ずしも産生宿主として選択された特定種に固有の遺伝子から誘導されなくてよいものと理解される。
【0160】
所望の宿主細胞において本ORFの発現を駆動させるのに有用なイニシエーション調節領域、またはプロモーターは多数有り、当業者にはよく知られている。実質的にこれらの遺伝子を駆動できる、以下をはじめとするが、これに限定されるものではないあらゆるプロモーターが、本発明において適切である。CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス(Saccharomyces)における発現に有用)、AOX1(ピチア(Pichia)における発現に有用)、およびlac、ara、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)における発現に有用)、ならびに例えばバシラス(Bacillus)における発現に有用なamy、apr、nprプロモーター、および様々なファージプロモーター、およびメチロモナス(Methylomonas)(参照によってここに編入する米国特許出願第10/689200号明細書)における発現に有用な、nrtA、glnB、moxF、glyoxII、htpG、およびhps遺伝子から単離されたプロモーター。さらにクロラムフェニコール抵抗性遺伝子プロモーター(Pcat)などのプロモーターもまた、メチロモナス(Methylomonas)中での発現において有用かもしれない。
【0161】
終結制御領域はまた、好ましい宿主に固有の様々な遺伝子から誘導されてもよい。場合により、終結部位は必要ないかもしれないが、含まれることが最も好ましい。
【0162】
本遺伝子の配列の知識は、このような経路を有するあらゆる生物体中で、特にメチロモナス(Methylomonas)種16aおよび大腸菌中でカロテノイド生合成経路を操作する上で有用である。遺伝的経路を操作する方法は一般的であり、技術分野でよく知られている。特定の経路中で選択された遺伝子は、種々の方法によって上方制御または下方制御されてもよい。さらに競合経路生物体は、遺伝子中断および類似した技術によって除外または昇華してもよい。
【0163】
ひとたび重要な遺伝的経路が同定および配列決定されると、特定の遺伝子を上方制御して経路の産出量を増大できる。例えばpBR322などの多コピー型プラスミド上で、標的遺伝子の追加的コピーを宿主細胞に導入してもよい。場合により、CrtZヒドロキシラーゼ酵素をコードする複数遺伝子が染色体性に発現されて、カロテノイド生成を増大させてもよい。しかし複数のcrtZ遺伝子の安定した染色体の発現は、概して使用する遺伝子のコード配列が、互いに低から中程度の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなることを必要とする。本カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、以前報告された全てのcrtZ遺伝子に対して、低から中程度のヌクレオチド配列同一性を示す。
【0164】
代案としては、非天然プロモーターの調節下におかれるように、標的遺伝子を変性してもよい。経路が、細胞サイクル中または発酵生産中の特定点で作動することが所望される場合、制御されたまたは誘導性プロモーターを使用して、標的遺伝子の天然プロモーターを置き換えてもよい。同様に場合によっては、天然または内在性プロモーターを変性させて、遺伝子発現を増大させてもよい。例えば内在性プロモーターは、生体内(in vivo)で突然変異、欠失、および/または置換によって変性できる(クミーク(Kmiec)に付与されたの米国特許第5,565,350号明細書、ザーリング(Zarling)らのPCT/US93/03868号明細書を参照されたい)。
【0165】
代案としては、標的経路、またはエネルギーまたは炭素の競合シンクとして役割を果たすかもしれない競合経路における特定の遺伝子の発現を低下させるまたは除外することが必要かもしれない。この目的で遺伝子を下方制御する方法が探求された。中断する遺伝子配列が知られている場合、遺伝子下方制御の最も効果的な方法の1つは、外来性DNAを構造的な遺伝子に挿入して転写を中断する、標的を定めた遺伝子中断である。これは中断する遺伝子の一部に対して高度な相同性を有する配列で両脇を挟まれた、挿入するDNA(遺伝子マーカーであることが多い)を含んでなる遺伝子カセットの製造によってもたらされる。カセットの宿主細胞への導入は、細胞の天然DNA複製機序を通じた構造的遺伝子への外来性DNAの挿入をもたらす(ハミルトン(Hamilton)ら、J.Bacteriol.171:4617〜4622頁(1989年);バルバス(Balbas)ら、Gene、136:211〜213頁(1993年);ゲルデナー(Gueldener)ら、Nucleic Acid Res.24:2519〜2524頁(1996年);およびスミス(Smith)ら、Methods Mol.Cell.Biol.5:270〜277頁(1996年))。
【0166】
アンチセンス技術は、標的遺伝子配列が知られている場合に遺伝子を下方制御する別の方法である。これを達成するために、所望の遺伝子からの核酸セグメントをクローニングして、RNAのアンチセンス鎖が転写されるようにプロモーターに作動可能に連結する。次にこのコンストラクトを宿主細胞に導入し、RNAのアンチセンス鎖を生成する。アンチセンスRNAは、関心のあるタンパク質をコードするmRNAの蓄積を防止することで、遺伝子発現を阻害する。当業者は特定の遺伝子の発現を低下させるために、特別な考察がアンチセンス技術の使用に関わることを理解する。例えば、アンチセンス遺伝子の適切な発現レベルは、当業者に知られている異なる調節因子を使用した、異なるキメラ遺伝子の使用を必要とするかもしれない。
【0167】
配列が知られている場合、標的を定めた遺伝子中断およびアンチセンス技術が遺伝子を下方制御する効果的手段を提供するが、配列ベースではない他のより特異性が低い方法が開発されている。例えば細胞をUV放射線暴露して、次に所望の表現型についてスクリーンしてもよい。変異体を作り出すために、化学薬品による変異誘発もまた効果的であり、一般に使用される物質としては、HNOおよびNHOHなどの非複製DNAに影響する化学物質、ならびにフレームシフト変異を引き起こすことで注目に値するアクリジン染料などの複製DNAに影響する薬剤が挙げられる。放射線または化学薬品を使用して変異体を作り出す特定の方法は、技術分野でよく文書化されている。例えばトーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)著「バイオテクノロジー:工業微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)第二版(1989年)Sinauer Associates,Inc.、Sunderland,MA(以下「ブロック(Brock)」)、またはデシュパンデ,ムカンド(Deshpande,Mukund)V.、Appl.Biochem.Biotechnol.、36:227(1992年)(以下「デシュパンデ(Deshpande)」)を参照されたい。
【0168】
別の非特異的遺伝子中断方法は、転移因子またはトランスポゾンの使用である。トランスポゾンはDNAに無作為に挿入される遺伝的因子であるが、後から配列に基づいて検索して挿入がどこで起きたのか判定できる。生体内(in vivo)および生体外(in vitro)転位法の双方が知られている。どちらの方法にもトランスポザーゼ酵素と組み合わされた転移因子の使用が関与する。転移因子またはトランスポゾンがトランスポザーゼ存在下で核酸分子に接触すると、転移因子が核酸分子中に無作為に挿入される。中断された遺伝子は転移因子配列に基づいて同定されてもよいので、技術はランダム変異誘発のため、そして遺伝子単離のために有用である。生体外(in vitro)転位のためのキットが市販される。(例えばニュージャージー州ブランチバーグのパーキン・エルマー・アプライド・バイオシステムズ(Perkin Elmer Applied Biosystems(Branchburg,NJ))から入手できる酵母菌Ty1因子に基づく、プライマー・アイランド転位キット、マサチューセッツ州のニュー・イングランド・バイオ・ラブズ(New England Biolabs(Beverly,MA))から入手できる細菌性トランスポゾンTn7に基づくゲノム・プライミング・システム、およびウィスコンシン州マディソンのエピセンター・テクノロジーズ(Epicentre Technologies(Madison,WI))から入手できる、Tn5細菌性転移因子に基づくEZ::TNトランスポゾン挿入システムを参照されたい)。
【0169】
微生物宿主としてのメチロトローフおよびメチロモナス(Methylomonas)種16a
組換え微生物源からいくつかのカロテノイドが生成されている(例えばリコペン生成のための大腸菌およびカンジダ・ユチリス(Candida utilis)(ファーマー(Farmer),W.R.およびリヤオ(Liao)L.C.、Biotechnol.Prog.17:57〜61頁(2001年);ワング(Wang),C.ら、Biotechnol.Prog.16:922〜926頁(2000年);ミサワ(Misawa),N.およびシマダ(Shimada),H.、J.Biotechnol.59:169〜181頁(1998年);シマダ(Shimada),H.ら、Appl.Environm.Microbiol.64:2676〜2680頁(1998年));βカロテン生成のための大腸菌、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)、およびパフィア・ロドジマ(Pfaffia rhodozyma)(アルブレヒト(Albrecht),M.ら、Biotechnol.Lett.21:791〜795頁(1999年);ミウラ(Miura),Y.ら、Appl.Environm.Microbiol.64:1226〜1229頁(1998年);米国特許第5,691,190号明細書);ゼアキサンチン生成のための大腸菌およびカンジダ・ユチリス(Candida utilis)(アルブレヒト(Albrecht),M.ら、前出;ミウラ(Miura),Y.ら、前出);アスタキサンチン生成のための大腸菌およびパフィア・ロドジマ(Pfaffia rhodozyma)(米国特許第5,466,599号明細書、米国特許第6,015,684号明細書、米国特許第5,182,208号明細書、米国特許第5,972,642号明細書;米国特許第5,656,472号明細書、米国特許第5,545,816号明細書、米国特許第5,530,189号明細書、米国特許第5,530,188号明細書、米国特許第5,429,939、および米国特許第6,124,113号明細書もまた参照されたい))が、異なるcrt遺伝子の様々な組み合わせを使用したこれらのカロテノイド生成法には、低い収率と比較的高価な供給材料への依存という欠点がある。したがって微生物宿主中でメタンまたはメタノールなどの安価な供給材料から、高収率のカロテノイドを製造する方法を同定することが望ましい。
【0170】
単一エネルギー源として一炭素基質を利用する、いくつかの微生物がある。このような微生物はここで「C代謝個体」と称される。これらの生物体は、単一エネルギーおよびバイオマス源として炭素−炭素結合が欠如している炭素基質を使用する能力によって特徴付けられる。これらの炭素基質としては、メタン、メタノール、ホルメート、ホルムアルデヒド、ギ酸、メチル化アミン(例えば、モノ−、ジ−、およびトリ−メチルアミン)、メチル化チオール、二酸化炭素、および他の様々なあらゆる炭素−炭素結合が欠如している還元炭素化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい基質としては、メタンおよび/またはメタノールが挙げられる。
【0171】
全てのC代謝微生物は、概してメチロトローフとして分類される。メチロトローフは、炭素−炭素結合を含有しない有機化合物を酸化できるあらゆる生物体として定義されてもよい。しかし通性メチロトローフ、絶対メチロトローフ、絶対メタノトローフは、全てメチロトローフの様々なサブセットである。具体的には次のようである。
・通性メチロトローフは、炭素−炭素結合を含有しない有機化合物を酸化する能力を有するが、エネルギーおよびバイオマスのために、糖および複合炭水化物などの他の炭素基質を使用してもよい。通性メチロトローフ細菌は多くの環境中に見られるが、最も一般には土壌、ごみ埋め立て、および廃棄物処理場から単離される。多くの通性メチロトローフは、プロテオバクテリア(Proteobacteria)のβおよびγ亜群のメンバーである(ハンソン(Hanson)ら、C1化合物上での微生物の生育(Microb.Growth C1 Compounds)[国際シンポジウム]第7回(1993年)、285〜302頁、マレルJ.コリン(Murrell J.Collin)およびドンP.ケリー(Don P.Kelly)編、Intercept、Andover、UK;マディガン(Madigan)ら、ブロックの微生物生物学(Brock Biology of Microorganisms)、第8版、Prentice Hall:Upper Saddle River,NJ(1997年))。
・絶対メチロトローフは、エネルギー生成が、炭素−炭素結合を含有しない有機化合物の使用に限定された生物体である。
・絶対メタノトローフは、メタンを酸化する特徴的能力を有する絶対メチロトローフである。
【0172】
さらに一炭素基質を利用する能力は細菌に限定されず、酵母菌および真菌にも及ぶ。いくつかの酵母菌属は、エネルギー源としてより複雑な材料に加えて一炭素基質を使用できる(すなわちメチロトローフ酵母菌)。
【0173】
数多くのこれらのメチロトローフ生物体が知られているが、これらの微生物のわずかなものだけが材料合成のための工業プロセスにおいて成功裏に利用されている。そして一炭素基質は対費用効果の高いエネルギー源であるが、これらの微生物の遺伝子操作における困難さ、ならびにそれらの遺伝的機構に関する情報不足が、主に天然生成物合成のためのそれらの使用を制限している。
【0174】
これらの困難さにもかかわらず、多くのメタノトローフはこれらの生物体が色素を合成できるようにする固有のイソプレノイド経路を含有し、様々な非内在性イソプレノイド化合物を生成するために、これらの微生物を遺伝子操作する構想の可能性を提供する。メタノトローフは一炭素基質(すなわちメタンおよび/またははメタノール)をエネルギー源として使用できるので、これらの生物体においてカロテノイドを安価に生成することが可能であろう。メタノトローフがβ−カロテン生成のために遺伝子操作される実施例の1つは、参照によってここに編入する米国特許出願第09/941947号明細書で述べられる。
【0175】
一炭素基質を唯一のエネルギー源として使用できる微生物における、カロテノイド化合物生合成に関与する遺伝子発現のための方法が提供される。宿主微生物は、カロテノイドのための代謝前駆物質として、ファルネシルピロリン酸(FPP)を合成する能力を有するあらゆるC代謝個体であってもよい。より具体的には、本発明で適切な通性メチロトローフ細菌としては、メチロフィラス(Methylophilus)、メチロバシラス(Methylobacillus)、メチロバクテリウム(Methylobacterium)、ヒフォミクロビウム(Hyphomicrobium)、キサントバクター(Xanthobacter)、バシラス(Bacillus)、パラコッカス(Paracoccus)、ノカルジア(Nocardia)、アルスロバクター(Arthrobacter)、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、およびシュードモナス(Pseudomonas)が挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明で有用な具体的なメチロトローフ酵母菌としては、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、ピチア(Pichia)、トルロプシス(Torulopsis)、およびロドトルラ(Rhodotorula)が挙げられるが、これに限定されるものではない。例示的なメタノトローフとしては、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロサイナス(Methylosinus)、メチロシクティス(Methylocyctis)、メチロマイクロビウム(Methylomicrobium)、およびメタノモナス(Methanomonas)属が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0176】
本発明で特に興味深いのは、エネルギー的に好ましい炭素流経路を有する高生育絶対メタノトローフである。例えばメタノトローフの特定の株はいくつかの経路特性を有し、それを炭素流束操作のために特に有用なものにする。この株はメチロモナス(Methylomonas)種16a(ATCC PTA2402)(米国特許第6,689,601号明細書)として知られている。この特定の株および他の近縁メチロトローフは、本発明の遺伝子産物発現のための好ましい微生物宿主である(すなわちC40カロテノイド生成に有用である)。
【0177】
メチロモナス(Methylomonas)種16aの最適化されたバージョンが作りされ、メチロモナス(Methylomonas)種16a MWM1200(参照によってここに編入する米国特許出願第10/997844号明細書)と命名された。内在性C30カロテノイド経路がノックアウトされ(Δcrtクラスタープロモーター+ΔcrtN3)、C40カロテノイド発現のための最適化されたプラットフォームが作り出された。内在性crtクラスター(crtN1−ald−crtN2クラスター)の発現に関与するプロモーターの欠失は、無着色株をもたらした(野生型株はC30カロテノイドの天然生成のために常態ではピンク色)。この最適化された宿主内のC40カロテノイド生合成遺伝子発現は、所望のC40カロテノイドの生成増大を可能にした。
【0178】
代謝細菌の形質転換
メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)AM1(トヤマ(Toyama),H.ら、FEMS Microbiol.Lett.166:1〜7頁(1998年))、メチロフィラス・メチロトロファス(Methylophilus methylotrophus)AS1(キム(Kim),C.S.およびT.K.ウッド(Wood)、Appl.Microbiol.Biotechnol.48:105〜108頁(1997年))、およびメチロバシラス(Methylobacillus)種12S株(ヨシダ(Yoshida),T.ら、Biotechnol.Lett.、23:787〜791頁(2001年))の形質転換のために、電気穿孔が成功裏に使用されている。1つの特定のC代謝利用生物体から別の生物体への具体的電気穿孔パラメーターの推定は、困難かもしれない。
【0179】
供与細胞と受容細胞の直接接触に依存する細菌接合は、C代謝細菌中への遺伝子の転位のために、より容易に受け入れられることが多い。簡単に述べると、この細菌接合プロセスは、「供与」細胞と「受容」細胞を互いに密接に接触させて一緒に混合することを伴う。接合は、新たに合成された供与DNAの受容細胞中への直接転位を伴う、「供与」細菌と「受容」細菌間の細胞質連絡の形成によって起きる。技術分野でよく知られているように、接合の受容体は、供与細菌からの水平転位を通じてDNAを受容できるあらゆる細胞として定義される。接合転位中の供与体は、接合プラスミド、接合トランスポゾン、または可動性プラスミドを含有する細菌である。供与体プラスミドの物理的転位は、下で述べられる2つの様式の1つによって起きることができる。
1.場合によっては、供与体と受容体のみが接合にとって必要とされる。これは転位されるプラスミドが接合性かつ可動性である自己伝播性のプラスミドの場合(すなわちtra遺伝子と、Mobタンパク質をコードする遺伝子の双方を保有する)に起きる。一般にプロセスは、1.)oriT中の特定部位で二本鎖プラスミドDNAにニックが入れられるステップと、2.)poreまたはpilus構造を通じて、一本鎖DNAが受容体に放出されるステップと、3.)DNAリラクセース酵素が二本鎖DNAをoriTで開裂して、放出された5’末端に結合する(中間体構造としてリラクソゾームを形成する)ステップと、4.)引き続いて、補助タンパク質の複合体がoriTでアセンブルして、DNA転位プロセスを容易にするステップを伴う。
2.代案としては、供与体プラスミドの受容体への転位のために「三親交雑」接合が必要とされる。このタイプの接合には、供与細胞、受容細胞、および「ヘルパー」プラスミドが関与する。供与細胞は、可動性プラスミドまたは接合トランスポゾンを保有する。可動性ベクターは、ニッケースをコードする遺伝子であるoriTを含有し、Mobタンパク質をコードする遺伝子を有する。しかしMobタンパク質は、単独ではゲノムの転位達成するのに十分でない。したがって可動性プラスミドは、ヘルパープラスミド(供与体内または「ヘルパー」細胞内に位置する)によって適切な接合システムが提供されない限り、それら自体の転位を促進できない。プラスミドは、poreまたはpilusの形成に関与する転位タンパク質(Tra)をコードするので、接合プラスミドは対合形成およびDNA転位のために必要とされる。
【0180】
代謝細菌が関与する成功裏の接合の例としては、ストリアー(Stolyar)ら(Mikrobiologiya 64(5):686〜691頁(1995年));モトヤマ(Motoyama),H.ら(Appl.Micro.Biotech.42(1):67〜72頁(1994年));ロイド(Lloyd),J.S.ら(Archives of Microbiology 171(6):364〜370頁(1999年));およびオドム(Odom),J.M.ら(それぞれ参照によってここに編入する米国特許出願第10/997308号明細書、米国特許出願第10/997844号明細書、および米国特許出願第09/941947号明細書)の研究が挙げられる。
【0181】
工業生産
本crtZ遺伝子を使用した環状ヒドロキシル化カロテノイド化合物の商業的生産が所望される場合、多様な培養方法を応用してもよい。例えば組換え微生物宿主から過剰発現する特定の遺伝子産物の大規模生産は、バッチおよび連続の培養方法の双方で生産してもよい。
【0182】
古典的なバッチ培養法は閉鎖システムであり、そこでは培地の組成が発酵の最初に設定され、培養プロセス中の人為的変化を受けない。したがって培養プロセス開始時に培地に所望の生物体または生物体群を接種し、生育または代謝活動を生じさせながらシステムには何も添加しない。しかし典型的には「バッチ」培養は、炭素源の添加に関するバッチであり、pHおよび酸素濃度などの因子の調節が試みられることが多い。バッチシステムでは、システムの代謝産物および生物質量組成は、培養が終結する時点まで常に変化する。バッチ培養内で細胞は、静的な遅滞期から高い対数増殖期へ、そして最後に成長率が減退または停止する静止期へ調節される。処置を施さない場合、静止期にある細胞はやがて死滅する。システムによっては対数期にある細胞が、最終生成物または中間体の生産の大部分を担うことが多い。他のシステムでは、静止または対数期後生成を得ることができる。
【0183】
標準バッチシステムのバリエーションが、流加バッチシステムである。流加バッチ培養プロセスも本発明において適切であり、培養の進行と共に基質が段階的に添加されること以外は、典型的なバッチシステムを含んでなる。流加バッチシステムは、異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害する傾向があって、培地中に限定量の基質を有することが望ましい場合に有用である。流加バッチシステム中の実際の基質濃度の測定は困難であるので、pH、溶存酸素、およびCOなどの排ガス分圧などの測定可能因子の変化に基づいて推定される。バッチおよび流加バッチ培養法は、技術分野で一般的であり周知であって、実例はブロック(Brock)(前出)、およびデシュパンデ(Deshpande)(前出)にある。
【0184】
カロテノイドの商業生産は、連続培養によって達成してもよい。連続の培養は開放システムであり、規定の培地をバイオリアクターに連続的に添加して、等量の慣熟培地を工程から同時に除去する。連続培養は、概して細胞を恒常的な高い液相密度に維持し、そこでは細胞が主に対数増殖期にある。代案としては連続培養を固定細胞で実施してもよく、そこでは炭素および栄養素が連続的に添加され、価値ある生成物、副産物または老廃物は細胞集団から連続的に除去される。細胞固定化は、天然および/または合成材料から構成される広範囲の固体担体を使用して実施してもよい。
【0185】
連続または半連続培養は、細胞生育または最終生成物濃度に影響する1つの因子またはあらゆるいくつかの因子の調節を可能にする。例えば一方法では、炭素源または窒素レベルなどの制限的栄養物質を固定された割合に維持し、他の全パラメーターの調節ができるようにする。別のシステムでは、培地濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、生育に影響するいくつかの因子を連続的に変化させることができる。連続システムは定常状態生育条件を維持することを目指すので、培地が抜き取られることによる細胞損失は、培養中の細胞生育率に対してバランスが取れていなくてはならない。連続的培養プロセスのために栄養素および成長因子を調節する方法、ならびに生成物形成速度を最大化する技術は工業微生物学の技術分野でよく知られており、多様な方法が前出のブロック(Brock)で詳述される。
【0186】
本発明における発酵培地は、適切な炭素基質を含有しなくてはならない。適切な基質としては、グルコースおよびフルクトースなどの単糖類と、ラクトースまたはスクロースなどの二糖類と、デンプンまたはセルロースまたはそれらの混合物などの多糖類と、乳清透過液、コーンスティープリーカー、甜菜モラセス、および大麦の麦芽などの再生可能な供給材料からの未精製混合物とが挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに炭素基質は、重要な生化学的中間体への代謝転換が実証されている、二酸化炭素、メタンまたはメタノールなどの一炭素基質であってもよい。一または二炭素基質に加えて、メチロトローフ生物体はまた、メチルアミン、グルコサミン、および代謝活性のための多様なアミノ酸などのいくつかの他の炭素含有化合物を利用することが知られている。例えば、メチロトローフ酵母菌は、メチルアミンからの炭素を利用してトレハロースまたはグリセロールを形成することが知られている(ベリオン(Bellion)ら、C1化合物上での微生物の生育(Microb.Growth C1 Compd.)[国際シンポジウム]第7回(1993年)、415〜32頁。編集者:マレル,J.コリン(Murrell,J.Collin)、ケリー,ドンP.(Kelly,Don P.)、出版社:Intercept:Andover,UK)。同様に様々なカンジダ(Candida)種が、アラニンまたはオレイン酸を代謝する(サルター(Sulter)ら、Arch.Microbiol.153:485〜489頁(1990年))。したがって本発明で用いられる炭素源は多種多様な炭素含有基質を包含してもよく、生物体の選択によってのみ制限されることが考察された。
【0187】
植物における組換え発現
植物および藻類もまた、カロテノイド化合物を製造することが知られている。本発明の核酸分子を使用して、微生物タンパク質を発現する能力を有するトランスジェニック植物を作り出してもよい。好ましい植物宿主は、本タンパク質の高生成レベルを支えるいずれかの品種であることができる。適切な緑色植物としては、ダイズ、アブラナ(Brassica napus、B.campestris)、コショウ、ヒマワリ(Helianthus annus)、ワタ(Gossypium hirsutum)、トウモロコシ、タバコ(Nicotiana tabacum)、アルファルファ(Medicago sativa)、小麦(Triticum種)、大麦(Hordeum vulgare)、オート麦(Avena sativa、L)、モロコシ(Sorghum bicolor)、イネ(Oryza sativa)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、アブラナ科野菜(ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、アメリカボウフウなど)、メロン、ニンジン、セロリ、パセリ、トマト、ジャガイモ、イチゴ、落花生、ブドウ、草種子(grass seed crops)、テンサイ、サトウキビ、マメ、エンドウ豆、ライ麦、亜麻、堅木、軟木、および飼料としての草が挙げられるが、これに限定されるものではない。商業的に重要な宿主としては、スピルリナ(Spirulina)、ヘモタコックス(Haemotacoccus)、およびデュナリエラ(Dunalliela)などの藻類の種が挙げられるが、これに限定されるものではない。カロテノイド化合物の生成は、最初に本発明のキメラ遺伝子を構築することによって達成されてもよく、その中でコード領域は、所望の発生段階で所望の組織中の遺伝子の発現を導くプロモーターに作動可能に連結される。便宜上、キメラ遺伝子は、同一遺伝子に由来するプロモーター配列および翻訳リーダー配列を含んでなってもよい。転写終止シグナルをコードする3’非コード配列もまた、提供されなくてはならない。本キメラ遺伝子はまた、遺伝子発現を容易にするために1個もしくはそれ以上のイントロンも含んでなる。
【0188】
コード領域の発現を誘導できるあらゆるプロモーターとあらゆるターミネーターのあらゆる組み合わせをキメラ遺伝子配列で使用してもよい。プロモーターおよびターミネーターのいくつかの適切な例としては、ノパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)、およびカリフラワーモザイクウィルス(CaMV)遺伝子からのものが挙げられる。使用してもよい効率的な植物プロモーターの一タイプは、高等植物プロモーターである。本発明の遺伝子配列と機能的に連結するこのようなプロモーターは、本遺伝子産物の発現を促進できなくてはならない。本発明で使用してもよい高等植物プロモーターとしては、例えばダイズからのリブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼの小型サブユニット(ss)のプロモーター(ベリー−ロウ(Berry−Lowe)ら、J.Molecular and App.Gen.、1:483〜498頁(1982年))、およびクロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーターが挙げられる。これらの2つのプロモーターは、植物細胞において光誘導されることが知られている(例えば「植物の遺伝子操作、農業における展望(Genetic Engineering of Plants,an Agricultural Perspective)」A.キャッシュモア(Cashmore)、Plenum:NY(1983年)、29〜38頁;コルッジ(Coruzzi),G.ら、The Journal of Biological Chemistry、258:1399(1983年);およびダンスミア(Dunsmuir),P.ら、Journal of Molecular and Applied Genetics、2:285(1983年)参照)。
【0189】
次に本キメラ遺伝子を含んでなるプラスミドベクターを構築できる。プラスミドベクターの選択は、宿主植物を形質転換するのに使用される方法に左右される。当業者は、キメラ遺伝子を含有する宿主細胞を成功裏に形質転換し、選択して増殖するためにプラスミドベクター上に存在しなくてはならない遺伝的要素をよく知っている。当業者はまた、異なる独立した形質転換イベントが、異なるレベルおよびパターンの発現をもたらすことを認識する(ジョーンズ(Jones)ら、EMBO J.4:2411〜2418頁(1985年);デ・アルメイダ(De Almeida)ら、Mol.Gen.Genetics 218:78〜86頁(1989年))。したがって所望の発現レベルおよびパターンを示す系統を得るためには、複数イベントをスクリーニングしなくてはならない。このようなスクリーニングは、DNAブロットのサザン分析(サザン(Southern)、J.Mol.Biol.98:503(1975年))、mRNA発現のノーザン分析(クロツェック(Kroczek)、J.Chromatogr.Biomed.Appl.、618(1〜2):133〜145頁(1993年))、タンパク質発現のウエスタン分析、または表現型分析によって達成してもよい。
【0190】
用途によっては、本タンパク質を異なる細胞区画に方向付けることが有用であろう。したがってトランジット配列(キーグストラ(Keegstra),K.、Cell、56:247〜253頁(1989年))、シグナル配列または小胞体局在化をコードする配列(クリスピールス(Chrispeels),J.J.、Ann.Rev.Plant Phys.Plant Mol.Biol.42:21〜53頁(1991年))、または核局在化シグナル(ライケル(Raikhel),N.、Plant Phys.100:1627〜1632頁(1992年))などの適切な細胞内標的配列を添加することで、および/または既存の標的配列を除去することで、酵素をコードするコード配列を変更して上述のキメラ遺伝子をさらに補完してもよいことが想定された。引用した参考文献はこれらの各例を示すが、リストは網羅的でなく、有用なさらに多くの標的シグナルが将来発見されるかもしれない。
【0191】
タンパク質操作
本ヌクレオチドを使用して、向上されたまたは改変された活性を有する遺伝子産物を製造できるかもしれないことが考察された。誤りがちなPCR(メルニコフ(Melnikov)ら、Nucleic Acids Research、第27巻(4):1056〜1062頁(1999年))、部位特異的変異誘発(クームズ(Coombs)ら、Proteins、259〜311頁、アンジェレッティ,ルース・ホーグ(Angeletti,Ruth Hogue)編、出版社:Academic:San Diego、CA)(1998年)、および「遺伝子シャフリング」(参照によってここに編入する米国特許第5,605,793号明細書、米国特許第5,811,238号明細書、米国特許第5,830,721号明細書、米国特許第5,837,458号明細書、および米国特許出願第10/374366号明細書)をはじめとするが、これに限定されるものではない、天然遺伝子配列を変異させて活性が改変または向上された遺伝子産物を生成する様々な方法が知られている。
【0192】
遺伝子シャッフリング法は、その容易な実行、および高率な変異誘発と容易なスクリーニングのために特に魅力的である。遺伝子シャフリングのプロセスは、関心のある遺伝子と類似したまたは違っているDNA領域の追加的集団存在下における、関心のある遺伝子の特定サイズの断片への制限エンドヌクレアーゼ開裂を伴う。次に断片のプールを変性させ再アニールして、変異遺伝子を作り出す。次に変異した遺伝子を変更した活性についてスクリーニングする。
【0193】
本発明の本微生物の配列を変異させて、この方法によって変更されまたは増強される活性についてスクリーニングしてもよい。配列は二本鎖であるべきで、50bp〜10kb範囲の様々な長さであることができる。配列は技術分野でよく知られている制限エンドヌクレアーゼを使用して、約10bp〜1000bpの範囲の断片に無作為に消化されてもよい(マニアティス(Maniatis)、前出)。本微生物の配列に加えて、微生物の配列の全部または部分とハイブリダイズ可能な断片集団を添加してもよい。同様に本配列とハイブリダイズ可能でない断片集団を添加してもよい。典型的にこれらの追加的断片集団は、総核酸と比較して重量で約10〜20倍過剰に添加される。通常はこのプロセスに従えば、混合物中の異なる特定の核酸断片の数は約100〜約1000個になる。無作為核酸断片の混合集団は、変性されて一本鎖核酸断片を形成し、次に再アニールされる。他の一本鎖核酸断片との相同性領域を有する一本鎖核酸断片のみが再アニールする。無作為核酸断片は、加熱によって変性されてもよい。当業者は、二本鎖核酸を完全に変性するのに必要な条件を判定できる。好ましくは温度は80℃〜100℃である。核酸断片を冷却によって再アニールしてもよい。好ましくは温度は20℃〜75℃である。再生は、ポリエチレングリコール(「PEG」)または塩の添加によって加速できる。適切な塩濃度は、0mM〜200mMの範囲であってもよい。次にアニールされた核酸断片は、核酸ポリメラーゼおよびdNTP(すなわちdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)存在下でインキュベートされる。核酸ポリメラーゼは、クレノウ断片、Taqポリメラーゼまたは技術分野で知られているあらゆる他のDNAポリメラーゼであってもよい。アニールに先だって、アニールと同時に、またはアニール後に、ポリメラーゼを無作為核酸断片に添加してもよい。変性、再生、およびポリメラーゼ存在下でのインキュベーションのサイクルは、所望の回数反復される。好ましくはサイクルは2〜50回反復され、より好ましくは手順は10〜40回反復される。得られる核酸は約50bp〜約100kbの範囲のより大きな二本鎖ポリヌクレオチドであり、標準クローニングおよび発現プロトコルによって、発現および変更された活性についてスクリーニングしてもよい(マニアティス(Maniatis)、前出)。
【0194】
さらにハイブリッドタンパク質は、遺伝子シャフリング(エクソンシャフリング)法を使用した、機能性領域の融合によってアセンブルできる(ニクソン(Nixon)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A、94:1069〜1073頁(1997年))。本遺伝子の機能性領域は、他の遺伝子の機能性領域と組み合わせて、所望の触媒機能を有する新しい酵素作り出すことができる。PCRオーバーラップ伸長法を使用してハイブリッド酵素を構築し、当業者によく知られている技術を使用して様々な発現ベクター中にクローニングしてもよい。
【0195】
カロテノイド生成に関与する遺伝子
カロテノイドの生合成に関与する酵素経路は、ピルビン酸およびグリセルアルデヒド−3−リン酸からファルネシルピロリン酸(FPP)への転換を提供する上流イソプレノイド経路、およびフィトエンの合成と、全ての引き続いて生成されるカロテノイドを提供する下流カロテノイド生合成経路の2つの部分に都合よく分けることができる。上流経路は多くの非カロテノイド産生性微生物に遍在性であり、これらの場合、所望のカロテノイド生合成のための下流経路を含んでなる遺伝子を導入することだけが必要である。2つの経路間の主要な区分は、ファルネシルピロリン酸塩の合成に関わる。FPPが天然に存在する場合、下流カロテノイド経路の要素のみが必要である。しかしカロテノイド生成において下流経路カロテノイド遺伝子が効果的であるためには、宿主細胞が細胞内に適切なレベルのFPPを有することが必要なことが理解される。FPP合成が宿主細胞によって提供されない場合、FPPの生成に必要な遺伝子を導入することが必要である。これらの各経路について下で詳細に述べる。
【0196】
上流イソプレノイド経路
イソプレノイド生合成は、一般的なC5イソプレンサブユニットであるイソペンテニルピロリン酸塩(IPP)を生じる2つの経路のどちらかを通じて起きる。最初によく知られている酢酸/メバロン酸経路を通じてIPPを合成してもよい。しかし最近の研究は、メバロン酸依存経路が全ての生物体で作動しているわけではないことを実証している。IPP生合成のための代案のメバロン酸非依存経路が、細菌および緑藻類および高等植物で特性決定されている(ホルバック(Horbach)ら、FEMS Microbiol.Lett.111:135〜140頁(1993年);ローマー(Rohmer)ら、Biochem.295:517〜524頁(1993年);シュベンダー(Schwender)ら、Biochem.316:73〜80頁(1996年);およびアイゼンライヒ(Eisenreich)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:6431〜6436頁(1996年))。
【0197】
メバロン酸非依存イソプレノイド経路中の多くのステップが知られている。例えばIPPの生成をもたらす代案の経路の最初のステップは、コール(Cole)ら(Nature 393:537〜544頁(1998年))によって結核菌(Mycobacterium tuberculosis)において研究されている。経路の第1のステップは、D−1−デオキシキシルロース−5−リン酸として知られている五炭素化合物を生じる、2つの三炭素分子(ピルビン酸およびD−グリセルアルデヒド3−リン酸)の縮合を伴う。この反応はdxs遺伝子によってコードされるDXS酵素によって起きる。次にD−1−デオキシキシルロース−5−リン酸の異性化および還元から、2−C−メチル−D−エリスリトール−4−リン酸が生じる。異性化および還元プロセスに関与する酵素の1つは、遺伝子dxrによってコードされるD−1−デオキシキシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)(ispC)である。2−C−メチル−D−エリスリトール−4−リン酸を引き続いて、注釈なしの遺伝子ygbPでコードされる酵素によって、CTP−依存反応において4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールに転換する。しかし最近ygbP遺伝子は、isp遺伝子クラスターの一部としてispDと改名された(スイス・プロテイン登録番号Q46893)。
【0198】
次にychB遺伝子によってコードされる酵素によって、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールの第2位のヒドロキシ基をATP−依存反応においてリン酸化できる。YchBは4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールをリン酸化して、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトール2−リン酸が得られる。ychB遺伝子もまたisp遺伝子クラスターの一部としてispEと改名された(スイス・プロテイン登録番号P24209)。YgbBはCTP−依存様式で、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトール2−リン酸を2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロ二リン酸に転換する。この遺伝子は最近改名され、isp遺伝子クラスターに属する。具体的には、ygbB遺伝子の新名称はispF(スイス・プロテイン登録番号P36663)である。
【0199】
gcpE(ispG)およびlytB(ispH)(およびおそらくは他の)遺伝子によってコードされる酵素はイソペンテニルピロリン酸(IPP)およびジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)の形成をもたらす反応に関与すると考えられる。IPPは、idi遺伝子によってコードされるIPPイソメラーゼを通じてDMAPPに異性化してもよい。しかしこの酵素は生存には必須ではなく、2−C−メチル−D−エリスリトール4−リン酸(MEP)経路を使用するいくつかの細菌では不在でもよい。最近の証拠はMEP経路がIPPの前に分岐して、lytB遺伝子産物を通じてIPPとDMAPPを別個に生成することを示唆する。lytBノックアウト変異は、IPPおよびDMAPPの双方を補った培地中以外では、大腸菌に対して致死性である。
【0200】
FPPの合成は、IPPのジメチルアリルピロリン酸への異性化を通じて起きる。この反応に、ispAによって触媒される2つのプレニル転移酵素反応手順が続き、ゲラニルピロリン酸(GPP、炭素数10の分子)およびファルネシルピロリン酸(FPP、炭素数15の分子)の生成をもたらす。
【0201】
上流経路の要素をコードする遺伝子は、表1に示すように多様な植物、動物、および細菌源から知られている。
【0202】
【表2】

【0203】
【表3】

【0204】
【表4】

【0205】
下流カロテノイド生合成経路
上流イソプレノイド経路と下流カロテノイド経路の間の区分は、いくぶん主観的である。FPP合成はカロテン産生性および非カロテン産生性細菌の双方において一般的であるので、下流カロテノイド生合成経路中の第1のステップは、ファルネシルピロリン酸(FPP)をゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)に転換するプレニル転移酵素反応によって開始すると考えられる。GGPP合成酵素をコードする遺伝子crtEは、IPPをFPPに付加して炭素数20の分子であるGGPPを生成する、このプレニル転移酵素反応に関与する。2つのGGPP分子の縮合反応が起きて、下流カロテノイド生合成経路における第1の炭素数40の分子であるフィトエン(PPPP)が形成する。この酵素的反応は、フィトエンシンターゼをコードするcrtBによって触媒される。
【0206】
リコペンは、遺伝子crtI(フィトエンデサチュラーゼをコードする)によって触媒される8個の水素原子の除去によって、4回の逐次脱水素化反応を通じてフィトエンから生成する。この反応の中間体は、フィトフルエン、ζ−カロテン、およびニューロスポレンである。
【0207】
リコペン環化酵素(crtY)はリコペンをβ−カロテンに転換する。しかし追加的遺伝子を使用して、多様な他のカロテノイドを作り出してもよい。例えばβ−カロテンは、β−カロテンヒドロキシラーゼ酵素(crtZ遺伝子によってコードされる)の活性がもたらす水酸化反応を通じて、ゼアキサンチンに転換される。β−クリプトキサンチンはこの反応の中間体である。
【0208】
β−カロテンは、crtW、bktまたはcrtO遺伝子のどちらかによってコードされるβ−カロテンケトラーゼによって、カンタキサンチンに転換されることができる。エキネノンは典型的にこの反応の中間体である。次にカンタキサンチンは、crtZ遺伝子によってコードされるβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素によってアスタキサンチンに転換できる。アドンビルブリンはこの反応の中間体である。
【0209】
ゼアキサンチンは、ゼアキサンチン−β−ジグルコシドに転換できる。この反応はゼアキサンチングルコシル転移酵素(crtX)によって触媒される。
【0210】
下流カロテノイド生合成経路の要素をコードする遺伝子は、表2に示すように多様な植物、動物、および細菌源から知られている。
【0211】
【表5】

【0212】
【表6】

【0213】
【表7】

【0214】
【表8】

【0215】
好ましい非−crtZカロテノイド遺伝子源は、パントエア・ステワルティ(Pantoea stewartii)(ATCC 8199、国際公開第02/079395号パンフレット)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)DC404(参照によってここに編入する米国特許出願第10/808807号明細書)、腸内細菌科DC260(参照によってここに編入する米国特許出願第10/808979号明細書)、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263(参照によってここに編入する米国特許出願第11/015433号明細書)、およびスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18(参照によってここに編入する米国特許出願第11/015433号明細書)からのものである。本方法を使用したヒドロキシル化カロテノイドの生成のための好ましいcrtZ遺伝子源は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263(配列番号16)またはノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278(配列番号19)からのものである。
【0216】
宿主生物体中で十分なFPP源が利用できれば、本発明の方法を使用して、表2に示す遺伝子と、本発明の好ましいcrtZ遺伝子との様々な組み合わせを使用することで、多数の異なるカロテノイドおよびカロテノイド誘導体を作ることができる。例えば遺伝子クラスターcrtEXYIBは、β−カロテンの生成を可能にする。crtEXYIBへのcrtZの添加は、ゼアキサンチンの生成を可能にする。
【実施例】
【0217】
以下の実施例で本発明をさらに明らかにする。これらの実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しながら、例証のみのために提供されるものと理解される。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特質を把握でき、その範囲と精神を逸脱することなく、本発明の様々な変化と修正を行って、様々な利用法および条件に適合させることができる。
【0218】
一般方法
実施例で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は技術分野でよく知られており、マニアティス(Maniatis)(前出)およびT.J.シルハビー(Silhavy)、M.L.ベンナン(Bennan)およびL.W.エンクイスト(Enquist)「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor,NY(1984年);およびオースベル(Ausubel),F.M.ら「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版(1987年)で述べられている。
【0219】
細菌培養の維持および生育に適した材料および方法は、技術分野でよく知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術は、以下で述べられる。「一般微生物学方法マニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology」、フィリップ・ゲアハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マレー(R.G.E.Murray)、ラルフN.コスティロウ(Ralph N.Costilow)、ユージーンW.ネスター(Eugene W.Nester)、ウィリスA.ウッド(Willis A.Wood)、ノエルR.クリーグ(Noel R.Krieg)、およびG.ブリッグス・フィリップス(G.Briggs Phillips)編、米国微生物学会、Washington,D.C.(1994)またはブロック(Brock)(前出)およびデシュパンデ(Deshpande)(前出)。細菌細胞の生育および維持のために使用される全ての試薬、制限酵素および材料は、特に断りのない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))、メリーランド州スパークスのディフコ・ラボラトリーズ/BDダイアグノスティックス(DIFCO Laboratories/BD Diagnostics(Sparks,MD))、ウィスコンシン州マディソンのプロメガ(Promega(Madison,WI))、マサチューセッツ州ベヴァリーのニューイングランドバイオラブズ(New England Biolabs(Beverly,MA))、カリフォルニア州カールズバッドのギブコ/BRLライフテクノロジーズ(GIBCO/BRL Life Technologies(Carlsbad,CA))、またはミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Company(St.Louis,MO))から得た。
【0220】
配列編集および位置合わせは、シーケンチャー(Sequencher)プログラムを使用して実施した。nrデータベース内の配列の検索は、BLOSUM62マトリックスを使用してBLASTPで実施した。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列のペアワイズ配列比較は、ベクターNTI中のアラインX(AlignX)を使用して実施した。いずれにしてもこれらのまたはあらゆる他のプログラムでプログラムパラメーターが指示されない場合、デフォルト値を使用した。
【0221】
略語の意味は次のとおり。「h」は時間を意味し、「min」は分を意味し、「sec」は秒を意味し、「d」は日を意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ppm」は100万分の1部を意味する。
【0222】
実施例1
カロテノイド産生細菌株の単離および特性決定
本実施例は、2つの細菌株ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263およびスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18の単離、およびそれらの天然カロテノイドの予備分析について述べる
【0223】
株単離および分類
新しいカロテノイド生成細菌株を単離するために、環境サンプルのコレクションからから着色微生物を単離した。デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)の庭からのおよそ1gの表面土壌を10mLの水道水に再懸濁した。10μLの白金耳を満たす水をルリア・ブロス(Luria−Broth)(LB)プレート上に画線し、プレートを30℃でインキュベートした。多様なコロニーの外見がある着色細菌を拾い出し、均一に2回LBプレートに画線して、30℃でインキュベートした。これらのコロニーから、オレンジ〜ピンクのコロニーを形成したものをDC263株と命名した(米国特許出願第11/015433号明細書)。DC18株は、ペンシルベニア州の河川から単離した。水性サンプルの連続希釈(10−2、10−4、および10−6)をトリプトンおよび酵母で栄養強化した基礎培地の大型245×245mm 15%寒天プレート上に播種した。基礎培地構成要素(1リットルあたり)は次のようであった。NHCl 0.8g、KHPO 0.5g、MgCl・6H0 0.2g、CaCl・2H0 0.1g、NaNO 1.3g、およびNaSO 0.5g。原液1の構成要素(1リットルあたり)は次のようであった。ニトリロ三酢酸12.8g、FeCl・4HO 0.3g、CuCl・2HO 0.0254g、MnCl・4HO 0.1g、CoCl・6HO 0.312g、ZnCl 0.1g、HBO 0.01g、NaMoO・2HO 0.01g、およびNiCl・6HO 0.184g。1リットルの基礎培地あたり10ミリリットルの原液1を添加した。培地を濃度10g/Lのトリプトンおよび5g/Lの酵母抽出物で強化した。培地のpHを7に調節した。プレートを室温でインキュベートし、単一コロニーを同一プレートに2回画線した。オレンジコロニーを形成した1つの株を選択して、DC18株と命名した(米国特許出願第11/015433号明細書)。
【0224】
DC263およびDC18によって16S rRNA遺伝子配列決定を実施した。具体的には、プライマーHK12:5’−GAGTTTGATCCTGGCTCAG−3’(配列番号1)およびJCR14:5’−ACGGGCGGTGTGTAC−3’(配列番号2)を使用して、株の16S rRNA遺伝子をPCRによって増幅した。製造業者、カリフォルニア州バレンシアのキアゲン(Qiagen(Valencia,CA))の使用説明書に従ってキアクイック(QIAquick)PCR精製キットを使用し、増幅された16S rRNA遺伝子を精製して、カリフォルニア州フォスター・シティのアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(Foster City,CA)からの自動化ABIシーケンサー上で配列決定した。プライマーHK12、JCR14、およびJCR15:5’−GCCAGCAGCCGCGGTA−3’(配列番号3)で、シーケンス反応を開始した。アセンブリされたDC263の1268bp 16S rRNA遺伝子配列(配列番号4)およびDC18の1291 bp 16S rRNA遺伝子配列(配列番号5)をジェンバンク(GenBank)(登録商標)に対するBLASTN検索(アルトシュル(Altschul)ら、Nucleic Acids Res.、25:3389〜3402頁(1997年))のクエリー配列として使用した。DC263の16S rRNA遺伝子配列は、ブレバンジモナス(Brevundimonas)株のそれに対して相同性を示し、トップヒットはブレバンジモナスブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)と99%同一であった。したがってこの株をブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263と命名した。DC18の16S rRNA遺伝子配列は、スフィンゴモナス(Sphingomonas)株のそれと相同性を示し、トップヒットはスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)と98%同一であった。したがってこの株をブレバンジモナス・ベシクラリススフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18と命名した。
【0225】
カロテノイド分析
ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263を100mLのLB中で生育させた。スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18を株単離について述べたのと同一の100mLの培地中で生育させた。双方の株を振盪して30℃で一晩生育させた。4000gで15分の遠心分離によって細胞をペレットにし、細胞ペレットを10mLのアセトンで抽出した。抽出物を窒素下で乾燥させ、1〜2mLのアセトンに再溶解した。抽出物をミシガン州アナーバーのパル・コーポレーション(Pall Corporation(Ann Arbor,MI))からのアクロディスク(Acrodisc)(登録商標)CR25mmシリンジフィルターで濾過した。次にそれをカリフォルニア州フォスター・シティのアジレント(Agilent(Foster City,CA))からのアジレント・シリーズ(Agilent Series)1100LC/MSD SIを使用して、HPLC分析用0.1mL 10%アセトン+90%アセトニトリル中で濃縮した。
【0226】
サンプル(20μL)をアジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies,Inc.)からの150mm×4.6mm ZORBAX C18(3.5μm粒子)カラムに装入した。カラム温度を40℃に維持した。流速は1mL/分であり、使用した通過溶剤プログラムは次のとおりであった。
0〜2分:95%緩衝液Aおよび5%緩衝液B、
2〜10分:95%緩衝液Aおよび5%緩衝液Bから60%緩衝液Aおよび40%緩衝液Bへの直線濃度勾配、
10〜12分:60%緩衝液Aおよび40%緩衝液Bから50%緩衝液Aおよび50%緩衝液Bへの直線濃度勾配、
12〜18分:50%緩衝液Aおよび50%緩衝液B、および
18〜20分:95%緩衝液Aおよび5%緩衝液B。
【0227】
緩衝液Aは95%アセトニトリルおよび5% dHOであり、緩衝液Bは100%テトラヒドロフランであった。
【0228】
図2はそれぞれDC263およびDC18中で生成したカロテノイドのHPLCのプロフィールを示す。LC−MS分析は、DC263中の主要カロテノイドの分子量が628、およびDC18中の主要カロテノイドの分子量が614と判定した。HPLC溶出時間、吸収スペクトル、および分子量に基づいて、DC263中の主要カロテノイドは、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4,4’−ジオンと予測された。DC18中の主要カロテノイドは、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4−オンと予測された。DC263およびDC18中の主要カロテノイドについて本発明者らが判定した特性は、これらのカロテノイドに関する文献で報告されたものと一致した(ヨコヤマ(Yokoyama)ら、Biosci.Biotech.Biochem.、60:200〜203頁(1996年);クライニッヒ(Kleinig)ら、Helvetica Chimica Acta、60:254〜258頁(1977年))。
【0229】
実施例2
β−カロテン合成プラスミドの構築
この応用では、2つのβ−カロテン合成プラスミドを使用した。小型インサートライブラリーのスクリーニングのために、プラスミドpDCQ329をリポータープラスミドとして使用して、ヒドロキシラーゼ酵素遺伝子をクローンした。それはカロテノイド産生株DC260(米国特許出願第10/808979号明細書)から単離されたcrtEXYIB遺伝子クラスターを含有した。腸内細菌科株DC260からのカロテノイド遺伝子クラスターの単離、およびプラスミドpDCQ329の構築は、参照によってここに編入する米国特許出願第10/808979号明細書で既述される。
【0230】
プラスミドpDCQ330を使用して、新しい遺伝子のカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素活性を確認した。それはP.アグロメランス(agglomerans)DC404から単離されたcrtEidiYIB遺伝子クラスターを含有した。パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)株DC404からのカロテノイド遺伝子クラスターの単離、およびプラスミドpDCQ330の構築については、参照によってここに編入する米国特許出願第10/808807号明細書で既述される。
【0231】
DC260およびDC404は、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)の環境から単離されたカロテノイド産生株であった。腸内細菌科株DC260は、住宅の西方に面した壁の煉瓦表面から単離された。パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)株DC404は、住宅の野菜畑の土壌から単離された。サンプルを洗浄し、10μLの白金耳を満たす再懸濁液をルリア・ブロス(Luria−Broth)(LB)プレート上に画線し、プレートを30℃でインキュベートした。様々なコロニー外見の着色細菌を拾って、LBプレート上に均一に2回画線し、30℃でインキュベートした。これらのコロニーからDC260およびDC404が単離され、それらは淡黄色で平滑半透明なコロニーを形成した。
【0232】
DC260およびDC404のためにコスミドライブラリーを構築し、ウィスコンシン州マディソンのエピセンター(Epicentre(Madison,WI))からのpWEBコスミドクローニングキットを使用して、製造業者の使用説明書に従ってβ−カロテン合成遺伝子クラスターをクローンした。シリンジニードルを通過させてゲノムDNAを剪断した。剪断DNAを末端修復し、40kB標準物質と比較して低融点アガロース上でサイズ選択した。大きさがおよそ40kBのDNA断片を精製し、ブラントエンドクローニング−レディpWEBコスミドベクター中にライゲートした。ウィスコンシン州マディソンのエピセンター・テクノロジーズ(Epicentre Technologies(Madison,WI))からの高性能マックスプラックス(MaxPlax)TMラムダ・パッケージング・エキストラクツ(Lambda Packaging Extracts)を使用して、ライブラリーをパッケージ化し、EPI100大腸菌(E.coli)細胞上に播種した。コスミドライブラリーのそれぞれから2つの黄色コロニーが同定され、ここでpWEB−260(crtEXYIBZ遺伝子クラスターを含有する、配列番号6)およびpWEB−404と称する。
【0233】
2つのコスミド上のカロテノイド遺伝子クラスターを配列決定して、ドイツ国ゲッティンゲンのモビテック(MoBiTec(Goettingen,Germany))からのpBHR1ベクター上にサブクローンした。プライマーpWEB260F:5’−GAATTCACCAACCATGGATAGCCATTATGAC−3’(配列番号7)およびpWEB260R:5’−GAATTCAACGAGGACGCTGCCACAGA−3’(配列番号8)を使用して、pWEB−260からのcrtEXYIB遺伝子を含有する断片を増幅した。プライマーpWEB404F:5’−GAATTCACTAGTCGAGACGCCGGGTACCAACCAT−3’(配列番号9)およびpWEB404R:5’−GAATTCTAGCGCGGGCGCTGCCAGA−3’(配列番号10)を使用して、pWEB−404からのcrtEidiYIB遺伝子(配列番号11)を含有する断片を増幅した。カリフォルニア州ラホーヤのストラタジーン(Stratagene(La Jolla,CA))からのPfuターボ(Turbo)ポリメラーゼを次の熱サイクル条件でPCRのために使用した。92℃(5分)と、94℃(1分)、60℃(1分)、72℃(9分)を25サイクル、そして72℃(10分)。カリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad,CA))からのpTrcHis2−TOPO(登録商標)中へのTOPO(登録商標)クローニングのために、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)からのTaqポリメラーゼを10分間72℃の反応中で使用して、追加的3’アデノシンヌクレオチドを断片に付加した。大腸菌(E.coli)TOP10細胞への形質転換に続いて、いくつかのコロニーの色が黄色になり、それらがカロテノイド化合物を生成していることが示唆された。次に遺伝子クラスターを広域宿主範囲ベクターpBHR1中にサブクローンしウィスコンシン州ミドルタウンのルシジェン(Lucigen(Middletown,WI))からの大腸菌(E.coli)10G細胞中に電気穿孔した。pDCQ329またはpDCQ330のいずれかの得られた各プラスミドを含有する形質転換体を50μg/mLカナマイシンを含有するLB培地上で選択した。これらを制限酵素消化で確認して、β−カロテンを生成することが示された。
【0234】
実施例3
ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263およびスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からのカロテノイドケトラーゼ遺伝子の単離
本実施例は、細菌株ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263およびスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からの小型インサートライブラリー構築、および各株からのケトラーゼ遺伝子のクローニングについて述べる(米国特許出願第11/015433号明細書参照)。
【0235】
ライブラリー構築およびスクリーニング
DC263およびDC18の細胞を実施例1で述べらるようにして生育させた。キアジェン(Qiagen)ゲノムDNA調製キットを使用して、細胞からゲノムDNAを調製した。ランダム剪断法によって、株DC263およびDC18の小型インサートライブラリーを調製した。ニュージャージー州フランクリン・レイクスのベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson(Franklin Lakes,NJ))からの291/2Gインシュリンシリンジを約300回通過させて、DC263およびDC18のゲノムDNAを剪断し、0.8%アガロース・ゲル上で分離した。4〜6kb画分をゲルから切除し、キアジェン(Qiagen)からのキアジェン・ミネリュート(Qiagen MinElute)TMゲル抽出キット使用して抽出した。ルシジェン(Lucigen)DNAターミネーター(登録商標)修復キットを使用して、抽出したDNAの末端を修復した。ルシジェン(Lucigen)からのpEZSeqTMブラント(Blunt)クローニングキットを使用して、修復DNAインサートをpEZseqTMベクターにライゲートした。β−カロテン産生プラスミドpDCQ329(米国特許出願第10/808979号明細書)を含有する新鮮に調製した大腸菌(E.coli)10Gのコンピテント細胞中に、ライゲーション混合物を電気穿孔した。形質転換体を100μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLカナマイシン添加LBプレート上に播種した。各ライブラリーについておよそ50,000〜100,000個の形質転換体が得られた。各ライブラリーの数万の黄色コロニーから、いくつかのオレンジ色のコロニーが同定された。これらの陽性クローンが、β−カロテンをケトカロテノイドに転換したケトラーゼ遺伝子をおそらく含有すると同定された。
【0236】
カロテノイドケトラーゼ遺伝子の単離
アンピシリン抵抗性およびカナマイシン感応性クローンを選択して、pEZベースのプラスミドをβ−カロテンリポータープラスミドから分離した。ウィスコンシン州マディソンのエピセンター(Epicentre(Madison,WI))からのEZ−TN<TET−1>キットおよび/またはプライマー歩行を使用して、ランダムトランスポゾン挿入によって、pEZベースのプラスミド上のインサートを配列決定した。ミシガン州アナーバーのジーン・コード社(Gene Codes Corp.(Ann Arbor,MI))からのシーケンチャー(Sequencher)TMプログラムによって、配列をアセンブルした。BLAST「nr」データベース(全ての非重複性ジェンバンク(GenBank)(登録商標)CDS翻訳、三次元構造ブルックヘブン(Brookhaven)タンパク質データバンクから誘導される配列、SWISS−PROTタンパク質配列データベース、EMBL、およびDDBJデータベースを含んでなる)中に含有される配列への類似性に対するBLAST(基礎的局在性整列化検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)、アルトシュル(Altschul)S.F.ら、J.Mol.Biol.、215:403〜410頁(1993年))検索を行って、CrtWケトラーゼをコードする遺伝子を同定した。ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263およびスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からのcrtW遺伝子のコード配列をそれぞれ配列番号12および配列番号13として列挙する。
【0237】
実施例4
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子の単離
本実施例は、2つの細菌株ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263およびノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278(旧名スフィンゴモナス・アロマチシボランス(Sphingomonas aromaticivorans)からのカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子単離について述べる。
【0238】
ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子の単離
DC263からのcrtW遺伝子(配列番号12)を含有するpEZベースのプラスミドを配列決定し、pEZベースのプラスミドの3kbインサート上にカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は同定されなかった。側方領域をより多く配列決定するために、先にDC263について述べたようにして、ウィスコンシン州マディソンのエピセンター(Epicentre(Madison,WI))からのpWEBコスミドクローニングキットを使用して、製造業者の使用説明書に従ってコスミドライブラリーを構築した。マイクロタイタープレート中で100μg/mLアンピシリンを含有する100μLのLBにおよそ600個のコスミドクローンが生育した。プレートを700rpmで振盪しながら、30℃で24時間インキュベートした。pEZベースのプラスミドのcrtW領域周囲にデザインされたプライマーpEZ263−F:5’−GTTCGAACTGGGGAAAACGGAC−3’(配列番号14)およびpEZ263−R:5’−CAAAGGCGTGAACCGAAATCCG−3’(配列番号15)を使用して、PCRによってコスミドライブラリーをスクリーンした。crtW領域に伸びるおよそ40kbのインサートを含有する陽性コスミドクローンF3−4を単離した。コスミドDNAを調製し、ウィスコンシン州マディソンのエピセンター(Epicentre(Madison,WI))からのEZ−TN<TET−1>キットおよび/またはプライマー歩行を使用して、ランダムトランスポゾン挿入によって配列決定した。ミシガン州アナーバーのジーン・コード社(Gene Codes Corp.(Ann Arbor,MI))からのシーケンチャー(Sequencher)TMプログラムv4.05によって、配列をアセンブルした。
【0239】
BLAST「nr」データベース(全ての非重複性ジェンバンク(GenBank)(登録商標)CDS翻訳、三次元構造ブルックヘブン(Brookhaven)タンパク質データバンクから誘導される配列、SWISS−PROTタンパク質配列データベース、EMBL、およびDDBJデータベースを含んでなる)中に含有される配列への類似性に対するBLAST(基礎的局在性整列化検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)、アルトシュル(Altschul)ら、J.Mol.Biol.、215:403〜410頁(1993年))検索を行って、crtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子コード配列(配列番号16)を同定した。国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)が提供するBLASTNアルゴリズムを使用して、「nr」データベースに含まれる一般公開されているDNA配列に対する類似性について配列を分析した。DNA配列を全ての読み枠で翻訳し、NCBIが提供するBLASTXアルゴリズム(ギッシュ(Gish),W.およびステーツ(States),D.J.、Nature Genetics、3:266〜272頁(1993年))を使用して、「nr」データベースに含まれる全ての一般公開されているタンパク質配列との類似性について比較した。BLAST分析は、β−カロテンヒドロキシラーゼ酵素に相同性があるORFを同定した。トップヒットはアルカリゲネス(Alcaligenes)種(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)登録番号Q44262)からのβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素に対するもので、51%アミノ酸同一性であった。表3は値を期待値で報告したBLASTXnrアルゴリズムに基づくデータを示す。
【0240】
スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18のcrtW含有コスミドもまた、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263について上で述べたようにして単離し、配列決定した。しかしDC18のcrtZヒドロキシラーゼ酵素遺伝子は、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18crtWを含有するコスミド中に見つからなかった。
【0241】
ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC 700278からのカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子の単離
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子をさらに同定するために、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278の部分的ゲノム配列データベースを検索した。アグロバクテリウム・オーランティアカム(Agrobacterium aurantiacum)(配列番号18)からのβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素(CrtZ)を使用して、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)のゲノムデータベースをBLASTした。アグロバクテリウム(Agrobacterium)CrtZと52%のアミノ酸同一性を示すノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)タンパク質整理番号ZP_00094836.1、配列番号19および20)からの仮説的タンパク質を同定した。この仮説的タンパク質をnrデータベースをBLASTするのに使用した。トップヒットはパントエア・アグロメランス病原型ミレティアエ(Pantoea agglomerans pv.Milletiae)からのCrtZに57%同一性であった。BLAST分析からの他の「ヒット」の大部分は、異なる生物体からのβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素に対してであった。ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)からの仮説的タンパク質をβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素活性についてアッセイした。
【0242】
ここで同定した2つのCrtZカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、ベクターNTI中の複数配列比較アルゴリズムを使用して、いくつかの既知のカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子とも比較した。表4はペアワイズ比較のためのヌクレオチド配列同一性、およびアミノ酸配列同一性の百分率を示す。2つの単離されたcrtZ遺伝子は、既知のcrtZ遺伝子と低から中程度の相同性のみを共有し、また互いに非常に異なる。
【0243】
【表9】

【0244】
【表10】

【0245】
実施例5
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素機能の確認
本実施例は、β−カロテンを生成する大腸菌(E.coli)株中の新しいカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素遺伝子の発現について述べる。β−カロテンからゼアキサンチンへの転換によって、各ヒドロキシラーゼ酵素遺伝子の機能が実証された。
【0246】
この研究で使用したβ−カロテン産生株は、プラスミドpDCQ330を含有する大腸菌(E.coli)株であった。2つの細菌株からの推定上のヒドロキシラーゼ酵素遺伝子をPCRで増幅した。プライマーcrtZ−DC263_F:5’−ACTAGTAAGGAGGAATAAACCATGTCCTGGCCGACGATGATC’(配列番号21)およびcrtZ−DC263_R:5’−TAGATCAGGCGCCGTTGCTGGATGA−3’(配列番号22)を使用して、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのcrtZを増幅した。プライマー41ZSPH_F:5’−ACTAGTTCTAGATAAGGAGGAATAAACCATGCAGACGCTTGCCGCG−3’(配列番号23)およびSPH_ZR:5’−GCTAGCCCTAGGTTAGCCGTCCACTGCCTC−3’(配列番号24)を使用して、ATCC 700278からのcrtZを増幅した。PCR生成物をインビトロジェン(Invitrogen)からのpTrcHis2−TOPO(登録商標)ベクター中にクローンし、インサートを順方向に含有するクローンについてスクリーンした。これらはDC263からのcrtZ遺伝子を発現するpDCQ370TA、およびノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZ遺伝子を発現するpTrcHis2−ZS(スフィンゴ(Sphingo))をもたらした。これらのコンストラクトをpDCQ330を含有するβ−カロテン蓄積大腸菌(E.coli)株に形質転換した。実施例1で述べるようにして、形質転換体中のカロテノイドをHPLCによって分析した(図3)。主ピークは5.96分に溶出し、吸収スペクトル(456nm、480nm)および569の分子量m/z、を有して、それはゼアキサンチン合成標準物質のそれらと同一であった。ゼアキサンチン標準物質はスイス国ルプシンゲンのカロテナチュア(CaroteNature(Lupsingen,Switzerland))から購入した。ゼアキサンチンの合成は2つの新しいcrtZ遺伝子のヒドロキシラーゼ酵素機能を明白に実証した。
【0247】
実施例6
アスタキサンチン産生プラスミドのクローニング
本実施例は、ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263またはノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZ遺伝子をcrtW遺伝子およびβ−カロテン合成遺伝子クラスターと共に発現させることによる、アスタキサンチン産生プラスミドの構築について述べる。
【0248】
ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのcrtZを含有するアスタキサンチン産生プラスミドのクローニング
最初に、crtX遺伝子を除去して、pDCQ329からβ−カロテン合成遺伝子クラスターcrtEYIBを構築した。引き続くクローニングを容易にするために、crtY遺伝子末端のEcoRI部位もまた除去した。プライマーcrt−260_F:5’−GAATTCACTAGTACCAACCATGGATAGCCATTATG−3’(配列番号25)およびcrt−260SOE_R:5’−ATCAGGTCGCCTCCGCCAGCACGACTTTCAGTTGAATATCGCTAGCTGTTG−3’(配列番号26)を使用して、crtE遺伝子を増幅した。プライマーcrt−260SOE_F:5’−CAACAGCTAGCGATATTCAACTGAAAGTCGTGCTGGCGGAGGCGACCTGAT−3’(配列番号27)およびcrt−260RI_R:5’−CATTTTTTCTTCCCTGGTTCGACAGAGTTCAACAGCGCGCGCAGCGCTT−3’(配列番号28)を使用して、crtY遺伝子を増幅した。EcoRI部位中のAATコドンを代替えのAACコドンで置き換えてEcoRI部位を除去した。プライマーcrt−260_Fおよびcrt−260RI_Rを使用して、SOEing PCRによってcrtEY遺伝子を共に結合した。プライマーcrt−260RI_F:5’−AAGCGCTGCGCGCGCTGTTGAACTCTGTCGAACCAGGGAAGAAAAAATG−3’(配列番号29)、およびcrt−260_R:5’−GAATTCAACGAGGACGCTGCCACAGA−3’(配列番号30)によってcrtIB断片を増幅した。プライマーcrt−260_Fおよびcrt−260_Rを使用して、別のSOEing PCRによってcrtEYIB遺伝子を共に結合した。crtEYIB遺伝子を含有する4.5kbのEcoRI断片をpBHR1のEcoRI部位にクローンしてpDCQ340を得た。pDCQ340を含有する大腸菌(E.coli)は、β−カロテンを生成することが示された。
【0249】
次にDC263からのcrtWおよびcrtZ遺伝子をpDCQ340上のcrtEYIBクラスターの上流にクローンした。プライマーcrtW−263_F:5’−ACTAGTAAGGAGGAATAAACCATGCGGCAAGCGAACAGGATG−3’(配列番号31)、およびcrtW−263_R:5’−TCTAGACTAGCTGAACAAACTCCACCAG−3’(配列番号32)を使用してDC263からのcrtWを増幅した。プライマーcrtZ−263_F2:5’−TCTAGAAAGGAGGAATAAACCATGTCCTGGCCGACGATGATC−3’(配列番号33)およびcrtZ−263_R2:5’−ACTAGTCAGGCGCCGTTGCTGGATGA−3’(配列番号34)を使用してDC263からのcrtZを増幅した。PCR生成物をpTrcHis2−TOPO(登録商標)ベクターにクローンして、それぞれpDCQ342TAおよびpDCQ352を得た。crtWを含有するpDCQ342TAからの0.8kbのSpeI−XbaI断片をpDCQ340のSpeI部位にクローンした。得られたpDCQ342はcrtEYIB遺伝子クラスター上流のcrtWを含有した。次にcrtZを含有するpDCQ352からの0.5kbのXbaI−SpeI断片をpDCQ342上のcrtW上流のSpeI部位にクローンした。これによってpBHR1ベクター上のクロラムフェニコール抵抗性遺伝子プロモーター(Pcat)から発現されたcrtZWEYIB遺伝子クラスターを含有する、アスタキサンチン産生プラスミドpDCQ344を得た。
【0250】
ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZを含有するアスタキサンチン産生プラスミドのクローニング
内在性メチロモナス(Methylomonas)プロモーターPhps1(参照によってここに編入する米国特許出願第10/689200号明細書)の下で、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)からのcrtZをスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からのcrtWと共に共発現した。上流プライマー5’−CCATGGGCTAGCTAAGGATTGGGGTGCGT−3’(配列番号35)および下流プライマー5’−CCATGGACTAGTGTGATGTGCTCCGAAAGT−3’(配列番号36)を使用して、メチロモナス(Methylomonas)16aゲノムDNAからPhps1プロモーターを増幅した。Phps1を含有する288bpのNcoI断片をpBHR1のNcoI部位にクローンしてpDCQ363を得た。ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZをpTrcHis2−ZS(スフィンゴ(Sphingo))からのSpeIおよびNheIで消化し、pDCQ363のSpeI部位にクローンしてpDCQ364を得た。プライマーcrtW_sphingo_F5’−ACTAGTAAGGAGGAATAAACCATGACCGTCG−3’(配列番号37)およびcrtW_sphingo_R5’−ATCTAGATTACCGGTCTTTGCTTAACGACCG−3’(配列番号38)を使用して、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からのcrtWを増幅した。crtWを含有するSpeI−XbaI断片をpDCQ364のSpeIおよびXbaI部位にクローンした。得られたコンストラクトpDCQ365中で、スフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18からのcrtW、およびノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZを内在性メチロモナス(Methylomonas)プロモーターPhps1下で、1つの転写単位として共発現した。次にこのcrtWZ転写単位を含有するNcoI断片をβ−カロテン合成プラスミドpDCQ330のNcoI部位にクローンして、アスタキサンチン産生プラスミドpDCQ366を得た。
【0251】
実施例7
大腸菌(E.coli)およびメチロモナス(Methylomonas)中でのアスタキサンチンの生成
本実施例は、以前報告された方法(参照によってここに編入する米国特許出願第10/997844号明細書)に基づいて、大腸菌(E.coli)およびメチロモナス(Methylomonas)種16a(ATCC PTA−2402)などの2つの無関係の微生物の宿主細胞中にアスタキサンチン産生プラスミドを形質転換して、アスタキサンチンを生成するのに使用されるプロセスについて述べる。
【0252】
簡単に述べると三親接合交配(米国特許出願第10/997844号明細書)によって、プラスミドをメチロモナス(Methylomonas)16a中に転移する。pRK2013(ATCC番号37159)を含有する大腸菌(E.coli)ヘルパー株、およびプラスミドpDCQ344またはpDCQ366を含有する大腸菌(E.coli)10GまたはDH10B供与体株をカナマイシン(50μg/mL)を含有するLB培地で一晩生育させ、LB中で3回洗浄し、元の培養容積のおよそ60倍の濃度に相当する容積のLBに再懸濁した。
【0253】
メチロモナス(Methylomonas)種16a MWM1200株は、crtN1aldcrtN2遺伝子クラスターの二重交差ノックアウトを含有して、それは天然C30カロテノイド(米国特許出願第10/997844号明細書)の合成を中断した。MWM1200株は、米国特許出願第09/941947号明細書で述べられる一般条件を使用して、受容株として生育された。簡単に述べると、少なくとも8:1の気体/液体比(すなわち総容積160mL中の20mLの硝酸塩液体「BTZ−3」培地)を使用して、30℃で絶え間なく振盪しながら、メチロモナス(Methylomonas)16a MWM1200株をイリノイ州ホイートンのホイートン・サイエンティフィック(Wheaton Scientific(Wheaton,IL))からの血清ストッパーホイートン・ボトル(Wheaton bottles)中で生育させた。
【0254】
メチロモナス(Methylomonas)16Aのための硝酸塩培地
ここで「合成培地」または「BTZ−3」培地とも称される硝酸塩液体培地は、下で示されるように(表5および6)溶液1と混合された様々な塩を含んでなり、明記される場合は、硝酸塩は15mM塩化アンモニウムで置き換えられる。溶液1は、微量元素の100倍濃縮原液のための組成を提供する。
【0255】
【表11】

【0256】
【表12】

【0257】
培養のための標準気相は、空気中に25%のメタンを含有する。メチロモナス(Methylomonas)種16a MWM1200受容株をこれらの条件下で48時間BTZ−3培地中で培養し、BTZ−3で3回洗浄し、元の培養容積のおよそ150倍の濃度に相当する容積のBTZ−3に再懸濁した。
【0258】
0.5%(w/v)の酵母抽出物を含有するBTZ−3寒天プレート表面で、供与細胞、ヘルパー細胞、および受容細胞のペーストをそれぞれ1:1:2の比率で合わせた。プレートを25%メタン中で30℃に16〜72時間維持して接合を生じさせ、その後細胞ペーストを収集してBTZ−3に再懸濁した。カナマイシン(50μg/mL)を含有するBTZ−3寒天に希釈溶液を播種して、25%メタン中で30℃で1週間までインキュベートした。橙赤色の接合完了体をカナマイシン(50μg/mL)と共にBTZ−3寒天上に画線した。
【0259】
カロテノイド組成物の分析のために、各ウェルにカナマイシン(50μg/mL)含有BTZ−3を1mL含有するキアジェン(Qiagen)からの24−ウェルブロック内でメチロモナス(Methylomonas)接合完了体を培養した。キアジェン(Qiagen)からのエアポア(Airpore)TMフィルムでブロックを覆い、唯一の炭素源として25%メタンを充填した日本国三菱ガス化学株式会社からのアナエロパック(AnaeroPack)TMシステム中でインキュベートした。アナエロパック(AnaeroPack)TMを30℃で2〜3日間250rpmで振盪した。アスタキサンチンプラスミドを含有する大腸菌(E.coli)細胞をカナマイシン(50μg/mL)を含有する25mlのLB中で、30℃で2〜3日間250rpmで振盪して生育させた。実施例1で述べるように細胞を遠心分離して収集し、ペレットを抽出してHPLCによってカロテノイド含量を分析した。
【0260】
pDCQ344を含有する大腸菌(E.coli)10Gまたはメチロモナス(Methylomonas)16a MWM1200からの抽出物のHPLC分析を図4に示す。アスタキサンチンは、pDCQ344を含有する大腸菌(E.coli)またはメチロモナス(Methylomonas)中で生成された総カロテノイドのおよそ80%を含んでなった。5.2〜5.3分で溶出したアスタキサンチンピークは480nmの最大吸収、および597の分子量m/zを有し、それはアスタキサンチンの合成標準物質のそれらと同一であった。5.8〜5.9分溶出したマイナーピークは、464nmの吸収最大および583の分子量m/zを有し、それはアドニキサンチンの合成標準物質のそれらと同一であった。合成アスタキサンチンおよびアドニキサンチン標準物質は、スイス国ルプシンゲンのカロテナチュア(CaroteNature(Lupsingen,Switzerland))から購入した。pDCQ366を含有する大腸菌(E.coli)DH10Bまたはメチロモナス(Methylomonas)16a MWM1200からの抽出物のHPLC分析を図5に示す。アスタキサンチンは、この試行で4.4〜4.6分に溶出する主カロテノイドとして、大腸菌(E.coli)およびメチロモナス(Methylomonas)の双方から生成した。いくつかのマイナーピークに加えて、11.2分に溶出するピークは、メチロモナス(Methylomonas)中の総カロテノイドの10%を含んでなった。このピークは448nm、474nm、504nmの最大吸収、および536の分子量m/zを有し、これはアスタキサンチン生合成中間体のリコペンのそれらと一致する。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】β−カロテンからケトラーゼおよびヒドロキシラーゼ酵素反応を経た、多様な可能な前駆物質からのアスタキサンチン生成の生合成経路を示す。
【図2】ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263およびスフィンゴモナス・メロニス(Sphingomonas melonis)DC18によって生成される天然カロテノイドのHPLC分析を示す。
【図3】ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263またはノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZ遺伝子を発現するゼアキサンチン産生大腸菌(E.coli)株によって生成されるカロテノイドのHPLC分析を示す。
【図4】ブレバンジモナス・ベシクラリス(Brevundimonas vesicularis)DC263からのcrtZ遺伝子を発現するアスタキサンチン産生大腸菌(E.coli)およびメチロモナス(Methylomonas)種16a株によって生成されるカロテノイドのHPLC分析を示す。
【図5】ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)ATCC番号700278からのcrtZ遺伝子を発現するアスタキサンチン産生大腸菌(E.coli)およびメチロモナス(Methylomonas)種16a株によって生成されるカロテノイドのHPLC分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号17に記載のアミノ酸をコードする単離された核酸分子、
(b)配列番号17によって表されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドと少なくとも95%の同一性を有するカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする第1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子、
(c)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズする単離された核酸分子、および
(d)(a)、(b)、または(c)と相補的な単離された核酸分子
よりなる群から選択されるカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号16によって表される請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
請求項1に記載の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド。
【請求項4】
適切な調節配列に作動可能に結合する請求項1または2に記載の単離された核酸分子を含んでなるキメラ遺伝子コンストラクト。
【請求項5】
請求項4に記載のキメラ遺伝子コンストラクトを含んでなる形質転換宿主細胞。
【請求項6】
宿主細胞が細菌、酵母、糸状菌類、藻類、および緑色植物よりなる群から選択される請求項5に記載の形質転換宿主細胞。
【請求項7】
宿主細胞がアスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、サルモネラ(Salmonella)、バシラス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、エリスロバクター(Erythrobacter)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、サイトファガ(Cytophaga)、ロドバクター(Rhodobacter)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリア(Corynebacteria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、デイノコッカス(Deinococcus)、エシェリキア(Escherichia)、エルウィニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロサイナス(Methylosinus)、メチロマイクロビウム(Methylomicrobium)、メチロシスティス(Methylocystis)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、シネコシスティス(Synechocystis)、シネココッカス(Synechococcus)、アナベナ(Anabaena)、チオバシラス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、クレブシエラ(Klebsiella)、およびミクソコッカス(Myxococcus)よりなる群から選択される請求項6に記載の形質転換宿主細胞。
【請求項8】
宿主細胞がダイズ、アブラナ、ヒマワリ、ワタ、トウモロコシ、タバコ、アルファルファ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、モロコシ、イネ、アラビドプシス(Arabidopsis)、アブラナ科野菜、メロン、ニンジン、セロリ、パセリ、トマト、ジャガイモ、イチゴ、落花生、ブドウ、草種子(grass seed crops)、甜菜、サトウキビ、豆、エンドウ豆、ライムギ、亜麻、広葉樹、針葉樹、および牧草よりなる群から選択される請求項6に記載の形質転換宿主細胞。
【請求項9】
(a)配列番号16で表される配列の一部に相当する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、そして
(b)ステップ(a)のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、クローニングベクター中に存在するインサートを増幅すること
を含んでなり、
増幅されたインサートがカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする、
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子の取得方法。
【請求項10】
(a)少なくとも1つのβ−イオノンタイプ環を有する環状カロテノイドを生成する宿主細胞を準備し、
(b)(a)の宿主細胞を
(i)請求項1または2に記載の核酸分子、および
(ii)配列番号20に記載のアミノ酸配列をコードする核酸分子
よりなる群から選択されるカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子で形質転換し、そして、
(c)(b)の形質転換宿主細胞を適切な条件下で生育させ、それによってヒドロキシル化カロテノイドを生成せしめること
を含んでなるヒドロキシル化カロテノイド化合物の製造方法。
【請求項11】
ヒドロキシル化カロテノイドがアスタキサンチン、ゼアキサンチン、β−クリプトキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、アドニルビン、アドニキサンチン、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4,4’−ジオン、テトラヒドロキシ−β,β’−カロテン−4−オン、カロキサンチン、エリスロキサンチン、ノストキサンチン、フレキシキサンチン、3−ヒドロキシ−γ−カロテン、3−ヒドロキシ−4−ケト−γ−カロテン、バクテリオルビキサンチン、バクテリオルビキサンチナール、およびルテインよりなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
環状カロテノイドがβ−カロテン、カンタキサンチン、β−クリプトキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、エキネノン、アドニルビン、γ−カロテン、4−ケト−γ−カロテン、デオキシ−フレキシキサンチン、およびα−カロテンよりなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
形質転換された宿主が細菌、酵母、糸状菌類、藻類、および緑色植物よりなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項14】
形質転換宿主細胞がアスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、またはサルモネラ(Salmonella)、バシラス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、エリスロバクター(Erythrobacter)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、サイトファガ(Cytophaga)、ロドバクター(Rhodobacter)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリア(Corynebacteria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、デイノコッカス(Deinococcus)、エシェリキア(Escherichia)、エルウィニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロサイナス(Methylosinus)、メチロマイクロビウム(Methylomicrobium)、メチロシスティス(Methylocystis)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、シネコシスティス(Synechocystis)、シネココッカス(Synechococcus)、アナベナ(Anabaena)、チオバシラス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、クレブシエラ(Klebsiella)、およびミクソコッカス(Myxococcus)よりなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
形質転換宿主細胞がダイズ、アブラナ、ヒマワリ、ワタ、トウモロコシ、タバコ、アルファルファ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、モロコシ、イネ、アラビドプシス(Arabidopsis)、アブラナ科野菜、メロン、ニンジン、セロリ、パセリ、トマト、ジャガイモ、イチゴ、落花生、ブドウ、草種子、甜菜、サトウキビ、豆、エンドウ豆、ライムギ、亜麻、広葉樹、針葉樹、および牧草よりなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項16】
形質転換宿主細胞がメチロトローフである請求項13に記載の方法。
【請求項17】
メチロトローフがメタノトローフである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
メタノトローフがメチロモナス(Methylomonas)16a(ATCC PTA 2402)である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)カロテノイド生合成経路を含んでなり、少なくとも1つのβ−イオノンタイプ環を有する環状カロテノイドを生成する宿主細胞を準備し、
(b)(a)の宿主細胞を
(i)請求項1または2に記載の核酸分子、および
(ii)配列番号20に記載のアミノ酸配列をコードする核酸分子
よりなる群から選択されるカロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子で形質転換し、そして
(c)(b)の形質転換宿主細胞を条件下で生育させ、それによってヒドロキシル化カロテノイド生合成を制御すること
を含んでなる生物体中での環状ヒドロキシル化カロテノイド生合成の制御方法。
【請求項20】
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子が上方制御される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子がマルチコピープラスミド上で過剰発現する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子が、誘導可能プロモーターまたは制御プロモーターに作動可能に結合する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子が下方制御される請求項19に記載の方法。
【請求項24】
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子がアンチセンス方向で発現される請求項19に記載の方法。
【請求項25】
カロテノイドヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸分子がコード領域への外来性DNAの挿入によって中断される請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−509706(P2008−509706A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527947(P2007−527947)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/029121
【国際公開番号】WO2006/023495
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】