説明

カワラヨモギを含有する家畜の産乳量増加用組成物

本発明はカワラヨモギを有効成分として含有する家畜の産乳量増加用組成物に係り、さらに詳しくは、カワラヨモギを有効成分として含有する乳牛の産乳量増加用組成物及び飼料添加剤、並びにカワラヨモギを有効成分として含有する家畜乳の体細胞減少用組成物及び飼料添加剤に関する。本発明に係る組成物は、ヒトをはじめとする動物が生産する乳の生産量を増加させることができるだけではなく、生産される乳に含まれる体細胞の数を減少させて良質の乳を生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカワラヨモギを有効成分として含有する家畜の産乳量増加用組成物に関し、さらに詳しくは、カワラヨモギを有効成分として含有する乳牛の産乳量増加用組成物及び飼料添加剤、並びにカワラヨモギを有効成分として含有する家畜乳の体細胞減少用組成物及び飼料添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乳牛の産乳量増加方法に使用されている成長ホルモンは、細胞の成長だけではなく、タンパク質生成促進、脂肪分解促進、哺乳動物の乳分泌促進など様々な生理作用をするものであることが知られている。ヒト成長ホルモンは子供の成長促進を目的とする製品として開発されており、動物用成長ホルモンは乳牛の産乳量増大、豚の飼料効率改善、及び養殖魚類の成長促進を目的とする製品として開発されて使用されている。
【0003】
このように様々な生理作用を示す成長ホルモンの有用性が浮き彫りになるに伴い、最近、成長ホルモンの分泌を促進する物質又は組成物に関する研究が盛んになされており、人為的な化学物質から構成された成長ホルモン分泌促進剤よりも、生薬成分により乳牛の成長ホルモン分泌を促進させて産乳量を増大させることのできる生薬組成物に関する研究が望まれているのが現状である。
【0004】
カワラヨモギ(Artemisia capillaries; Thunberg)は漢方において薬材として使用されてきており、しばしば醫草とも呼ばれ、ヨモギは、韓国では、家艾、灸草、耆艾、狼尾蒿子、氷台、阿及艾、野蓮頭、艾、艾蓬、艾蒿、甜艾、草蓬、香艾、黄草など様々な名前として呼ばれている。
【0005】
ヨモギの全草(whole plant)には精油、タンニン、樹脂、苦味物質、アルテミシン、アスコルビン酸、カロチンなどの成分が含有されており、葉には精油、シネオール、ツヨン(thujone)、ボルネオール、パラフィン、アデニン、コリン、ビタミンA、B、Dなどが含有されている。ヨモギの根には多糖類であるアルテモース(artemos)、精油、デヒドロマトリカリン酸(dehydromatricaric acid)、ステロール、テトラデカトリエン、イヌリンと粘液などがある。
【0006】
ヨモギは苦味及び辛味を持っており、性質が温かく、散寒、安胎、温經、理気血、利膽、除湿、止血、止痛、止痒の効能があり、気血を調節し、寒湿を除去し、子宮を温め、止血し、胎を安定化させる効能があることから、腹部冷痛、下痢による筋肉痙攣、慢性下痢と慢性痢疾、吐血、鼻出血、膣出血、月経不順、崩漏、膣帯下、胎動不安、膿瘍、疥癬を治療するのに使用されている。
【0007】
そこで、本発明者らはカワラヨモギ粉末、抽出粉末又は発酵カワラヨモギを乳牛に投与する場合、産乳量が増加され、生産される原乳の体細胞含有量が減少して良質の原乳を生産することができるということを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の要約】
【0008】
本発明の目的は、カワラヨモギを有効成分として含有する家畜の産乳量増加用組成物、ヒトの母乳生成促進用組成物、及び家畜乳の体細胞減少用組成物を提供することにある。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、カワラヨモギを有効成分として含有する家畜の産乳量増加用組成物及び飼料添加剤を提供する。
【0010】
また、本発明は、カワラヨモギを有効成分として含有するヒトの母乳生成促進用組成物を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、カワラヨモギを有効成分として含有する家畜乳の体細胞減少用組成物及び飼料添加剤を提供する。
【0012】
本発明の他の特徴及び具現例は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲から一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、或る観点において、カワラヨモギを有効成分として含有する家畜の産乳量増加用組成物及び飼料添加剤に関する。
【0014】
本発明において、前記カワラヨモギは、カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ抽出物及び発酵カワラヨモギからなる群から選ばれることが好ましい。
【0015】
本発明において、カワラヨモギ粉末は、カワラヨモギ(Artemisia capillaries;Thunberg)を適切な温度において乾燥して細切した後、20〜100メッシュのサイズに粉砕して使用することができ、カワラヨモギ抽出粉末としては、前記カワラヨモギ粉末をエタノールにより抽出した乾燥粉末を使用することができ、発酵カワラヨモギは、前記カワラヨモギ粉末を米糠と混合して発酵スターター及び乳酸菌を添加して発酵させた後に、水分を13%−15%まで乾燥させて発酵カワラヨモギ粉末を製造した後、薬剤学的に許容される担体などを添加して使用することができる。
【0016】
本発明のカワラヨモギ粉末は、例えば、ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)の適切な担体と18〜36:82〜67の重量比にて使用前に混合して使用することができ、カワラヨモギ抽出粉末は、例えば、ムラサキウマゴヤシの適切な担体と1.6〜7.2:9.4〜13.8の重量比にて混合して使用することができる。
【0017】
本発明の発酵カワラヨモギは、好ましい実施態様において、カワラヨモギ粉末18〜36重量%を82〜64重量%の米糠(小麦粉、トウモロコシの粉、ゼオライトなど)と混合した後、発酵スターター(酵母菌)と各種の乳酸菌などを適切な担体と混合して3〜7日間発酵及び乾燥することにより製造することができる。
【0018】
このため、本発明においては、カワラヨモギ抽出物、カワラヨモギ粉末及びカワラヨモギ発酵粉末は、トウモロコシ、大豆粕、小麦、牛脂、糖蜜、リン酸カルシウム、石灰石、塩、その他のミネラル及びビタミンプレミックスを含む通常の配合飼料に適量添加可能であり、飼料の総重量に対して0.005〜50重量%にて添加することが、目的とする家畜の産乳量増加効果を得るために好適である。
【0019】
本発明において、前記家畜は、牛、乳牛、ヒツジ、オオツノヒツジ、ヤギ、豚、馬、ラクダ、犬からなる群から選択されることが好ましく、さらに好ましくは、乳牛またはオオツノヒツジであることが好ましい。
【0020】
本発明は、他の観点において、カワラヨモギを有効成分として含有するヒトの母乳生成促進用組成物に関する。
【0021】
前記組成物は薬剤学的に剤形化されて投与されるか、又は、機能性食品の形態で摂取されてもよい。
【0022】
カワラヨモギを有効成分として含有する本発明の組成物は、家畜が生産する原乳に含有されている体細胞数を顕著に減少させて、良質の原乳を製造可能にする。
【0023】
このため、本発明は、さらに他の観点において、カワラヨモギを有効成分として含有する家畜乳の体細胞減少用組成物及び飼料添加剤に関する。
【0024】
本発明の組成物を用いて通常の方法により所定の剤形に製造することができる。剤形の調製において、活性成分であるカワラヨモギまたは発酵カワラヨモギを担体と一緒に混合又は希釈するか、あるいはカプセル状の担体内に封入することが好ましい。
【0025】
担体が希釈剤として使用される場合には、活性成分に対するビヒクル、賦形剤又は媒質として作用する固形、半固形又は液状の物質であってもよい。このため、剤形は、錠剤、丸剤、粉剤、サシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、エアロゾール、軟質または硬質ゼラチンカプセル剤、滅菌注射剤、滅菌粉剤の形態であってもよい。剤形は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。本発明による医薬組成物は、投与後に活性成分の迅速、持続又は遅延された放出を提供できるように当業界によく知られている方法を用いて剤形化可能である。
【0026】
有効成分としてのカワラヨモギ抽出物、カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ発酵粉末は、ヒトを含む動物に対して一日につき10〜1000mg/kg(体重)、好ましくは、70〜100mg/kg(体重)の量にて1日1回又は多数回に分けて、経口又は非経口的経路を通じて投与可能である。乳牛の場合、本発明の組成物を飼料に1〜50重量%の量で混合して投与したり、1頭当たりに5〜100g/日の投与量にて投与することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を、実施例を参照しながら詳述する。しかしながら、これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは、当業界において通常の知識を持った者にとって自明である。
【0028】
実施例1:カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ抽出粉末及び発酵カワラヨモギの製造
(1)カワラヨモギ粉末の製造
カワラヨモギ生草を乾燥機に入れて水分含量が約10%になるように乾燥し、これを1.5〜2cmに細切した後、これを粉砕機において1次及び2次的に粉砕して粒子径を20〜80メッシュに調整した。得られるカワラヨモギ粉末を、担体として使用されるムラサキウマゴヤシと18:82の重量比で混合してカワラヨモギ粉末を製造した。
【0029】
(2)カワラヨモギ抽出粉末の製造
カワラヨモギ生草を乾燥機に入れて水分含量が約10%になるように乾燥した後、1.5〜2cmに細切した。細切されたカワラヨモギを抽出機に入れ、エタノールにより抽出した。抽出液を乾燥した後に粉末化させ、前記カワラヨモギ抽出粉末を、担体として使用されるムラサキウマゴヤシと1.8:98.2の重量比で混合してカワラヨモギ抽出粉末を製造した。
【0030】
(3)発酵カワラヨモギの製造
前記(1)において製造されたカワラヨモギ粉末18重量%を、82重量%の米糠(小麦粉、トウモロコシ粉、ゼオライトなど)と混合した後、発酵スターター(酵母菌)及び各種の乳酸菌をカワラヨモギ粉末・米糠混合物:発酵スターター・乳酸菌=99.95:0.05の割合にて混合し、混合物を3〜7日間発酵及び乾燥することにより発酵カワラヨモギを製造した。
【0031】
実施例2:発酵カワラヨモギの投与による乳牛の産乳量における変化測定
1産〜6産のホルシュタイン種乳牛を実験対象として、分娩後45日から280日の乳牛を三つの群に分けた;投与カワラヨモギ群及び2つの対照群(各々の群は、10頭からなる)。投与群には発酵カワラヨモギ(18重量%の量を製剤中に含む)を1頭につき10gずつ搾乳時間に個体別に経口投与した。陽性対照群として徐放型遺伝子組換えソマトトロピン(BST、LG生命科学)500mgを坐骨直腸窩に左右へ交互に2週おきに皮下注射した。搾乳量に応じて濃厚飼料給与量を調節し、飼料は自由給餌させ、その他の飼養管理は試験牧場の慣行に従って行った。各群において試験開始時と終了時に産乳量を測定し、産乳量増加率を計算した。
【0032】
その結果、表1に示すように、発酵カワラヨモギ投与群の場合、8週間約17%の産乳量増加率を示して、ソマトトロピン投与群よりも産乳量が一層増加したことを確認することができた。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例3:投与されたカワラヨモギの種類による乳産乳量の変化測定
1産〜5産のホルシュタイン種乳牛を実験対象として、分娩後50日から280日の乳牛を、カワラヨモギ投与群の3群と対照群とに分けた(各々の群は、10頭からなる)。カワラヨモギ粉末(18重量%の量を製剤中に含む)、カワラヨモギ抽出粉末(3.6%重量%の量を製剤中に含む)及び発酵カワラヨモギ(18%重量%の量を製剤中に含む)をそれぞれの投与群に1頭当たり10g/日ずつ供給し、対照群は配合飼料の含有量に応じて供給量を調節し、飼料は自由給餌させ、その他の飼養管理は試験牧場慣行に従って行った。各群において試験開始時と終了時に産乳量を測定し、産乳量増加率を計算した。
【0035】
その結果、表2に示すように、対照群には大きな変化がないのに対し、発酵カワラヨモギ投与群の場合、16週間で4.5kg産乳量が増え、投与前に比べて13.2%増加し、カワラヨモギ粉末及び抽出粉末投与群の産乳量はそれぞれ3.3kg及び3.9kgが増加し、投与前に比べて、9.4%及び11.4%増加した。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例4:カワラヨモギ投与による原乳の体細胞数における変化測定
1産〜5産のホルシュタイン種乳牛を実験対象として、分娩後47日から279日の乳牛を無投与対照群、カワラヨモギ投与群の3群、及び陽性対照群に分けた(各々の群は、10頭からなる)。カワラヨモギ投与群の各々にはカワラヨモギ粉末(18重量%の量を製剤中に含む)、カワラヨモギ抽出粉末(3.6重量%の量を製剤中に含む)及び発酵カワラヨモギ(18重量%の量を製剤中に含む)をそれぞれ1頭当たり10g/日ずつ供給し、対照群は配合飼料の含有量に応じて供給量を調節し、飼料は自由給餌させ、その他の飼養管理は試験牧場の慣行に従って行った。各群において試験開始時と試験中間及び終了時に体細胞を測定した。体細胞(SCC:Somatic Cell Count)数は、体細胞分析機(Fossomatic 300、Denmark)を用いて分析した。
【0038】
その結果、表3に示すように、無投与対照群には大きな差がないのに対し、発酵カワラヨモギ投与群の場合、16週間で体細胞数が原乳1mL当たりに平均470,000個から190,000個に減少され、カワラヨモギ抽出粉末投与群は450,000個から240,000個に減少され、カワラヨモギ粉末投与群は480,000個から220,000個に減少された。
【0039】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0040】
以上詳述したように、本発明に係る組成物は、ヒトをはじめとする動物が生産する乳の生産量を増加させることができるだけではなく、生産される乳に含まれる体細胞の数を減少させて良質の乳を生産する上で有効である。
【0041】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カワラヨモギを有効成分として含有する、家畜の産乳量増加用飼料添加剤。
【請求項2】
前記カワラヨモギは、カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ抽出物及び発酵カワラヨモギからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の家畜の産乳量増加用飼料添加剤。
【請求項3】
カワラヨモギを有効成分として含有する、家畜の産乳量増加用組成物。
【請求項4】
前記カワラヨモギは、カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ抽出物及び発酵カワラヨモギからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の家畜の産乳量増加用組成物。
【請求項5】
カワラヨモギを有効成分として含有する、ヒトの母乳生成促進用組成物。
【請求項6】
前記カワラヨモギは、カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ抽出物及び発酵カワラヨモギからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載のヒトの母乳生成促進用組成物。
【請求項7】
カワラヨモギを有効成分として含有する、家畜乳の体細胞減少用組成物。
【請求項8】
前記カワラヨモギは、カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ抽出物及び発酵カワラヨモギからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の家畜乳の体細胞減少用組成物。
【請求項9】
カワラヨモギを有効成分として含有する、家畜乳の体細胞減少用飼料添加剤。
【請求項10】
前記カワラヨモギは、カワラヨモギ粉末、カワラヨモギ抽出物及び発酵カワラヨモギからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項9に記載の家畜乳の体細胞減少用飼料添加剤。

【公表番号】特表2010−537664(P2010−537664A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523928(P2010−523928)
【出願日】平成20年4月29日(2008.4.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002432
【国際公開番号】WO2009/054580
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508033465)アールエヌエル バイオ カンパニー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】