カンピロバクター線毛タンパク質、組成物及び方法
本開示は、カンピロバクター・ジェジュニ(及び他の種由来も)線毛タンパク質のコード配列及びアミノ酸配列を提供する。このタンパク質は、ヒト又は動物に投与された場合、カンピロバクター・ジェジュニに対する免疫応答の発現を誘発し、この生物によるコロニー形成及び/又は感染が減少するという結果を伴う。線毛タンパク質を含む組換えタンパク質又はバイオフィルム物質が、特に粘膜投与のための免疫原性組成物に製剤化される。したがって、本発明は、家禽、卵、食肉及び乳製品を含む食品、並びに間接的に、肥沃化又はかんがい用水のいずれか由来の農業廃棄物と接触する可能性のある植物性食品の、微生物的品質の向上のための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、本開示と不一致のない程度まで、参照により本明細書に援用される2006年7月10日に出願した米国特許仮出願第60/819,589号明細書の恩恵を主張するものである。
【0002】
[連邦支援を受けた研究又は開発に関する申告]
本発明は、米国農務省により与えられたUSDA/CSREES認可番号第2005−51110−02333号の下での米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
[付属の配列表、表、又はコンピュータプログラムを載せたコンパクトディスクの参照]
添付して同日付に提出した配列表は、参照により本明細書中に援用される。
【0004】
[発明の背景]
本発明の分野は、免疫原性組成物、方法、ワクチン、及び細菌毒性決定基をコードする遺伝子、特にカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)又はカンピロバクターの他の種の線毛タンパク質をコードする遺伝子並びにかかる線毛タンパク質を含む免疫原性組成物の分野である。
【0005】
C.ジェジュニはグラム陰性で、極性鞭毛を有するらせん状の杆体に湾曲しており、37℃〜42℃の範囲の微好気性環境において最もよく増殖する(4、7、12、23、26)。米国において、毎年およそ210万〜240万件のカンピロバクター症が起こっており、80億ドルの費用がかかっていると推定されている(16、17)。
【0006】
カンピロバクター症は、無症候性であるか、又は様々な症状を生じるかのいずれかの場合がある。発展途上国において、感染は無症候性である場合があるか、又は比較的軽度の下痢を生じる場合がある。先進国において、カンピロバクター感染は、血液又は粘膜あり又はなしの下痢、嘔吐、筋痙攣及び発熱によって特徴付けられる、自己限定性の胃腸感染症として存在する。症候性感染は、水様下痢、腹痛、発熱、並びに便試料中の血液及び白血球の存在の急性発症からなり、通常自己限定性であり、2〜11日間続くが、免疫無防備状態の個体においては、感染は3カ月より長く持続する場合がある(4、6、16)。感染の長期の副次的効果としては、反応性関節炎、ライター症候群、HLA B27陽性患者における眼炎、及びギランバレー症候群が挙げられる(15、18)。
【0007】
カンピロバクターは、多数の家畜及び鳥の腸の正常細菌叢と見なされている(1、2、5、8、31)。これらの鳥がカンピロバクターを流す能力は、水路又は水系の汚染を引き起こし、そのようにして、他の動物又はヒトについての汚染の源として作用する場合がある。カンピロバクター感染は、汚染された水、殺菌されていない乳又はチーズの摂取、家禽等の加熱が不十分な、又は生の食物を消費することを含む、経口経路によって生じる(5、8、31)。しかしながら、生乳及び加熱が不十分な家禽の消費は、カンピロバクター感染の主な源である。C.ジェジュニがバイオフィルムを形成することができる能力並びに家畜及びヒトへの接種の継続的な源になることはまた、他の研究の対象であった(8、31)。C.ジェジュニは、畜産施設及び動物加工工場の散水供給及び配管システムにおいてバイオフィルムを形成する能力を有し、そのようにして、感染及び汚染の源になる(8、31)。しかしながら、この可能性は、C.ジェジュニが非生物表面上でバイオフィルムを形成することができることを示す非常に限られた数の刊行物によって支持されている。
【0008】
医療費のために、当技術分野において、家禽及び/又はウシの、C.ジェジュニのコロニー形成を減少させるため並びにC.ジェジュニ感染の発生率を減少させるために有効なワクチンの必要性がある。
【0009】
[発明の概要]
本発明の目的は、カンピロバクター・ジェジュニ由来の線毛タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供することである。特に例示されているように、コードされる線毛タンパク質は、配列番号1に示されるようなコード配列を有する。コードされる線毛タンパク質は、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列を有する。特に例示されている配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するコード配列及びアミノ酸配列は、本発明の範囲内である。
【0010】
本発明のC.ジェジュニ線毛タンパク質の組換え生成のための天然に存在しない(「組換え」)核酸分子、及びこのタンパク質を組換えによって生成するための方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0011】
当業者は、例示されている線毛タンパク質のコード配列及びアミノ酸配列を用いて、配列番号2に示されるような同じアミノ酸配列、又はそれに対して70%、80%、85%、90%、95%(及び70〜100の間の全ての整数パーセンテージ)より同一性が大きく同等な生物活性を有するアミノ酸配列のタンパク質をコードする、さらなる例示されていないヌクレオチド配列を同定及び単離することができることを理解する。本発明の線毛タンパク質をコードする配列が発現されることが所望される場合、当業者は、コード配列が発現される宿主細胞によって調節配列が決定されるような選択で、転写及び翻訳制御調節配列をコード配列に動作可能に連結させる。C.ジェジュニ線毛タンパク質コード配列を保有する組換えDNA分子に関して、当業者は、宿主細胞中に導入することができ、宿主細胞中で複製することができる、ベクター(例えばプラスミドベクター又はウイルスベクター)を選択することができる。宿主細胞は、細菌、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)若しくは非毒性のサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、又は、或いは、酵母若しくは哺乳動物細胞であってもよい。
【0012】
別の実施形態において、例えばタンパク質融合又は欠失を含む、線毛タンパク質をコードする組換えポリヌクレオチド、並びに発現系が提供される。発現系は、適切な宿主細胞に形質転換された場合に本発明の線毛タンパク質又は機能的に同等なタンパク質を発現することができるポリヌクレオチドとして定義される。組換えポリヌクレオチドは、天然のC.ジェジュニ線毛タンパク質をコードするポリヌクレオチド又はその断片に、相当類似したヌクレオチド配列を有する。発現は、通常遺伝子と関連するプロモーターの制御下にあってもよく、又は、線毛タンパク質コード配列は、異種プロモーター(天然には線毛タンパク質コード配列と関連しないもの)の調節制御下で発現されてもよい。線毛タンパク質生成のための好ましい腸内細菌宿主株は、大腸菌の株である。
【0013】
本発明によって、当業者に十分理解されている標準的な条件を用いて、C.ジェジュニゲノムDNA、本発明の線毛タンパク質をコードするクローン化DNA(又は同族のmRNA)に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドがさらに提供される。これらの線毛タンパク質特異的配列はまた、線毛タンパク質コード核酸の増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における使用のためのプライマーの調製において使用することができる。ハイブリダイゼーション又はPCRのいずれかを、生物学的試料、食物試料、チーズ試料、水試料、便試料若しくは環境試料中のC.ジェジュニの検出又はC.ジェジュニによって引き起こされる疾患の診断における使用に適応させてもよい。
【0014】
ポリヌクレオチドとしては、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態、並びに混合ポリマー、センス及びアンチセンス鎖の両方が挙げられ、化学的若しくは生化学的に修飾されていてもよく、又は非天然若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでもよい。DNAが好ましい。線毛タンパク質の一次配列中の変化によって、防御免疫を誘発することができるエピトープ(複数可)が変化しない限り、1つ若しくは複数のヌクレオチドの欠失、挿入、置換を含むがこれらに限定されない、又は他のポリヌクレオチド配列への融合による、野生型C.ジェジュニ線毛タンパク質コード配列の変化のように、他の状態では天然に存在しない配列を含む組換えポリヌクレオチドもまた本発明によって提供される。
【0015】
本発明はまた、C.ジェジュニ線毛タンパク質又はその抗原部分を含む融合ポリペプチドを提供する。異種融合は、それらが由来するタンパク質の特性又は活性の組合せを示すよう構築してもよい。可能性のある融合パートナーとしては、限定されないが、免疫グロブリン、ユビキチン、細菌性β−ガラクトシダーゼ、trpE、プロテインA、β−ラクタマーゼ、αアミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及び酵母α接合因子(Godowskiら(1988年)Science、241:812〜816ページ)又は種々のタンパク質「タグ」配列(特に当技術分野で公知の鞭毛抗原、ポリ−ヒスチジン、ストレプトアビジン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ)が挙げられる。融合タンパク質は、典型的には組換え方法によって作製されるが、当技術分野で周知のように化学的に合成してもよい。
【0016】
限定されないが、天然に発現されたC.ジェジュニ線毛又は組換えC.ジェジュニ線毛タンパク質及び適した担体を含むワクチンを含む、組成物及び免疫原性調製物が本発明によって提供され、これらの組成物及び調製物は、有利に、少なくとも1つのアジュバントをさらに含んでもよい。発現された線毛タンパク質(例えば、バイオフィルム中)を有する、線毛を発現している弱毒化生カンピロバクター、又は線毛タンパク質を含む死滅細胞バイオフィルム物質を含む免疫原性組成物もまた、本発明によって包含される。かかる組成物は、例えばC.ジェジュニによる感染に起因する下痢性疾患に対してヒトを免疫化すること又は家禽若しくはウシにおけるC.ジェジュニの発生率を減少させて食品中及び環境中の汚染を減少させることにおいて、有用である。調製物は、免疫原性量の本発明の線毛タンパク質又はその免疫原性断片を含む。かかる免疫原性組成物は、有利に、1つ若しくは複数の他の血清型の線毛タンパク質若しくはその抗原決定基又はC.ジェジュニ由来の他の抗原性物質をさらに含んでもよい。「免疫原性量」によって、抗体の産生を誘発することができる、好ましくはC.ジェジュニによる免疫原性組成物中と同じ線毛タンパク質又は免疫学的に交差反応性の線毛タンパク質でのコロニー形成又は感染に対する防御免疫を与えることができる量が意味される。免疫原性組成物は、アジュバント、例えば、粘膜投与のために設計された組成物のために、コレラ毒素又はコレラ毒素サブユニットBをさらに含んでもよい。
【0017】
本明細書中に教示されているようなC.ジェジュニ線毛タンパク質を含む免疫原性組成物を家禽又はウシに投与することによって家禽中又は牛肉中又は乳牛中のC.ジェジュニの発生率を減少させるための方法もまた、本発明の範囲内である。投与の経路は、粘膜(特に経鼻又は経口)であってもよく、又は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内若しくは非経口であってもよい。同様に、好ましくは粘膜投与によって、かかる免疫原性組成物を、それを必要とするヒトに投与することによって、カンピロバクター感染及び疾患のヒト発生率を減少させることができる。
【0018】
本発明は、線毛タンパク質に特異的に結合する抗体、並びにC.ジェジュニを、特にバイオフィルム及び/若しくは食品中で検出するため、又はカンピロバクター感染を診断するための方法をさらに提供する。また、線毛タンパク質を、免疫応答をモニタリングするため又はそれに対する抗体を検出するための方法において使用して、例えば、カンピロバクターへの曝露を評価すること又は免疫応答の発生を追跡することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】C.ジェジュニバイオフィルム形成に対する増殖培地の効果を示す図である。MHB、ブルセラ及びボルトンブロスを、CV染色によって測定して、それらがC.ジェジュニM129バイオフィルム形成を促進できるかどうかについて評価した。3つの別々の場合で、3点1組で実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図1B】クリスタルバイオレット(CV)染色によって測定した、C.ジェジュニM129バイオフィルム形成に対する温度及びO2分圧の効果を示す図である。増殖条件は、C.ジェジュニM129の増殖に適しており、例えば37℃及び10%CO2等は、よりよいバイオフィルム形成を生じた。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図2A】図2Aはショ糖又はグルコースの効果を示す図であり、図2Bは、CV染色によって測定して、C.ジェジュニM129がバイオフィルムを形成することができるかどうかに対する、NaClの効果を示す図である。図2Aにおいて、白色の棒はショ糖を表し、灰色の棒はグルコースを表す。図2Bは、種々の濃度のNaClでのバイオフィルム形成の程度を示す。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図2B】図2Aはショ糖又はグルコースの効果を示す図であり、図2Bは、CV染色によって測定して、C.ジェジュニM129がバイオフィルムを形成することができるかどうかに対する、NaClの効果を示す図である。図2Aにおいて、白色の棒はショ糖を表し、灰色の棒はグルコースを表す。図2Bは、種々の濃度のNaClでのバイオフィルム形成の程度を示す。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図3】CV染色によって測定すると、C.ジェジュニM129が非生物表面上にバイオフィルムを形成することを示す図である。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図4】クロラムフェニコールがC.ジェジュニM129及びF38011のバイオフィルム形成を阻害することを示す図である。C.ジェジュニ株を、0.5μg/mlクロラムフェニコールで15分間処理してから、抗生物質の非存在下でバイオフィルム形成についてアッセイした。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図5A】C.ジェジュニM129鞭毛の存在がバイオフィルム形成に正の影響を及ぼすことを示す図である。図5A:CV染色の関数としてのバイオフィルム形成。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。図5B:脱色(decolorization)前のCV染色を示す、インキュベーション後24、48、及び72時間で示される代表的なウェル。
【図5B】C.ジェジュニM129鞭毛の存在がバイオフィルム形成に正の影響を及ぼすことを示す図である。図5A:CV染色の関数としてのバイオフィルム形成。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。図5B:脱色前のCV染色を示す、インキュベーション後24、48、及び72時間で示される代表的なウェル。
【図5C】C.ジェジュニM129クオラムセンシング能力がバイオフィルム形成に正の影響を及ぼすことを示す図である。図5C:CV染色によって測定されたバイオフィルム形成。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。図5D:脱色前のCV染色を示す、インキュベーション後24、48、及び72時間で示される代表的なウェル。
【図6】グラム陰性及びグラム陽性細菌由来の培養上清液が、C.ジェジュニM129バイオフィルムの形成に影響を及ぼす場合があることを示す図である。シュードモナス(Pseudomonas)種及びA.ピオゲネス(A.pyogenes)由来のCSFは、C.ジェジュニバイオフィルム形成を促進する。MHB、及びP.エルギノーサ(P.aeruginosa)9027、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)CV206、A.ピオゲネスBBR1又はC.パーフリンジェンス(C.perfringens)株13由来のCSFの1:1混合物中で、C.ジェジュニM129でバイオフィルムアッセイを行った。5%新生仔仔ウシ血清を補充したTSB(TSB5%)並びに0.5%酵母抽出物及び0.05%システインを補充したTSB(YSBYC)を、それぞれA.ピオゲネス及びC.パーフリンジェンスCSFの対照として使用した。3点1組で3回実験を行い、エラーバーは平均からの標準偏差を表す。
【図7】C.ジェジュニ分離株が非生物表面上でバイオフィルムを形成することを示す図である。C.ジェジュニ分離株によるバイオフィルム形成は毒性と相関しない。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
C.ジェジュニがバイオフィルムを形成することができるかどうかを研究する間に、これらの細菌が、極性鞭毛に加えて、非極性の線毛を生成することが発見された。線毛は、無鞭毛のflaAB二重変異体中、並びに野生型株中で生成された。
【0021】
環境因子及び培地成分がバイオフィルム形成に影響を及ぼす場合があるので、本発明者らは、種々の槽培地条件を、C.ジェジュニM129バイオフィルム形成に対するそれらの効果について試験した。MHB、ブルセラ及びボルトンブロスを、それらがバイオフィルム形成を促進することができるかどうかについて評価した。栄養分豊富な方のブルセラ及びボルトンブロスは最適なバイオフィルム形成を支持しなかったが、比較的低栄養のMHBにおいては有意なバイオフィルム形成が起こった(図1A)。
【0022】
インキュベーション温度及び酸素分圧もまた、バイオフィルム形成に影響を及ぼす場合がある(図1B)。種々の組合せの温度及び酸素付加でC.ジェジュニバイオフィルム形成をアッセイした。好気生活及び温度の影響は、バイオフィルム形成に大きな効果を有した。予想されたように、より有利さの低い増殖条件下で、バイオフィルム形成は減少した。
【0023】
バイオフィルム形成に影響を及ぼすことができるかどうかに関する、浸透圧調節物質であるグルコース、ショ糖及びNaClに対するC.ジェジュニの応答もまた、調べた。図2A及び2Bに示されるように、グルコース、ショ糖又はNaClの存在は、試験した全ての濃度で、有意に減少したバイオフィルム形成を生じた。したがって、環境条件、並びに培地成分は、C.ジェジュニがバイオフィルムを形成することができるかどうかに影響を及ぼす。
【0024】
非生物表面上でのバイオフィルム形成を研究した。C.ジェジュニM129細胞は、種々の量で、ガラス及び銅等の種々の親水性物質並びにポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS及びPVCを含むプラスチック等の疎水性物質上でバイオフィルムを形成した。C.ジェジュニM129がバイオフィルムを形成することができるかどうかをさらに研究するために、ABS、PVC、銅等の、散水システムにおいて一般に使用される物質、並びに対照物質であるポリスチレンを、それらのバイオフィルム形成の促進について定量的にアッセイした(図3)。物質の物理化学的特性がC.ジェジュニによる接着及びバイオフィルム形成に影響を及ぼす可能性があるようであった。C.ジェジュニ細胞は、種々の程度ではあったが、疎水性表面上でより容易に接着し、バイオフィルムを形成した。特に、C.ジェジュニは親水性物質である銅上でバイオフィルム形成の減少を示した。
【0025】
バイオフィルム形成にはタンパク質合成が必要である。遺伝子発現試験から、プランクトン様(浮遊している)対バイオフィルム増殖細胞による、合成されたタンパク質のプロフィールに違いがあることが示され、ある種のタンパク質の新規合成がバイオフィルム形成に必要であるかもしれないことが示唆される(9、10、19)。タンパク質合成阻害剤はバイオフィルム形成を顕著に減少させ、接着した細菌の、バイオフィルムからの遊離を引き起こす場合もある。したがって、いかなる特定の理論に拘束されることも望むことなく、本発明者らは、バイオフィルム中で増殖したC.ジェジュニが、特定の条件下でこの増殖期に必要なタンパク質を合成するという仮説を立てた。クロラムフェニコール(CM、0.5μg/ml)の存在下又は非存在下でC.ジェジュニ細胞をインキュベートした場合、CMで処理した細胞の間に、未処理の対照と比較して、バイオフィルム形成の違いが観察された(図4)。これらの結果から、C.ジェジュニ細胞が、適切なシグナル及び増殖条件に応答して、接着及びバイオフィルム形成に必要なタンパク質を合成することが示される。
【0026】
鞭毛は、表面に関連する力を克服することによって、バイオフィルム形成に関与し、接着の速度に影響を及ぼすことが示されている(12、14、21、22)。この研究において、C.ジェジュニ鞭毛欠損変異体(M129::flaAB)を、それがバイオフィルムを形成することができるかどうかについてアッセイした。M129::flaABは、24時間では野生型のものと比較してバイオフィルム形成のわずかな減少を示したが、48及び72時間の時点で、バイオフィルム形成は顕著に減少した(図5A〜5D)。本発明者らはまた、光学顕微鏡法を用いて、flaAB変異体及び野生型M129がポリスチレン表面に接着することができるかどうかを直接評価した(図5C〜D)。図5Bは、野生型M129についての、24、48及び72時間にわたる接着細胞の増大を示す。しかしながら、鞭毛ノックアウトにおいて、本発明者らは、野生型と比較して、48及び72時間で表面に接着している細胞がほとんどないことを観察した。このデータから、C.ジェジュニバイオフィルム形成における鞭毛の重要性が示される。
【0027】
luxS及びクオラムセンシングシグナルは、バイオフィルム形成に影響を及ぼす場合がある。クオラムセンシングがC.ジェジュニバイオフィルムに関与する可能性をアッセイするために、luxSクオラムセンシング遺伝子に変異を導入した結果、変異細胞において自己誘発物質2(AI2)が生成されなかった(11)。バイオフィルム発生の間、AI2は、48及び72時間の時点のように、C.ジェジュニバイオフィルム発生において重要な役割を果たし、luxS変異体については、野生型C.ジェジュニと比較して、バイオフィルム形成の減少があった(図5A〜5D参照)。
【0028】
バイオフィルム中で細胞がごく接近しているために、バイオフィルムは、クオラムセンシングが起こるのに理想的な環境である(3、32)。この研究の間、適切な培地中で増殖させた種々のグラム陰性及びグラム陽性細菌由来のCSFを、バイオフィルム発生に有利な条件から収集した。C.ジェジュニ分離株M129を、これらの培養上清液の存在下で増殖させ、いくつかはクオラムセンシングシグナル又は自己誘発物質を含むと考えられた。シュードモナス種及びアルカノバクテリウム・ピオゲネス(Arcanobacterium pyogenes)BBR1の存在下で、培養上清液がバイオフィルム発生の増大を引き起こすのが観察されたが、収集された他の培養上清液では、バイオフィルム発生の明白な変化がなかった(図6)。しかしながら、これらの培養上清液の正確な組成は研究において定義されていなかった。理論に拘束されることを望むことなく、環境中で一般に見られるシュードモナス種、並びに家畜及び野生動物に一般に生息しているアルカノバクテリウム・ピオゲネスは、C.ジェジュニが認識して接着及びバイオフィルム形成に必要な遺伝子(複数可)の転写を活性化する、一般的なシグナルを有すると考えられている。
【0029】
線毛は、バイオフィルム形成に関与するようである。走査型及び透過型電子顕微鏡法によってC.ジェジュニバイオフィルムを研究するよう設計された実験において、本発明者らは、種々のC.ジェジュニ分離株において表面と相互作用し、細胞間で相互作用する、周毛性の線毛の存在を観察した。示された糸状構造が線毛であって鞭毛でないかどうかを判定するために、鞭毛欠損変異体(M129::flaAB)を構築し、それが線毛を生成することができるかどうかについてアッセイした。鞭毛欠損変異体は、その野生型親のように、周毛性の線毛を生成した。
【0030】
クオラムセンシングシグナルは、バイオフィルム形成に影響を及ぼす。クオラムセンシングがC.ジェジュニバイオフィルムに関与する可能性をアッセイするために、クオラムセンシングシグナル分子AI2の生成を欠いたluxS変異体を構築した(33)。AI2は、48及び72時間の時点のように、C.ジェジュニバイオフィルム発生において重要な役割を果たし、野生型C.ジェジュニM129と比較して、luxS変異体についてはバイオフィルム形成の減少があった(図5B)。この観察を確かめるために、luxS変異体を、1:1でMHBと混合した野生型M129由来の培養上清液の存在下で増殖させた。M129は、クオラムセンシング分子を生成するのに有利な条件下で増殖させた。野生型M129CSFの存在下で、luxS変異体バイオフィルムの増大が観察された。luxS変異体は、野生型と比較して、増殖は欠損していなかった。
【0031】
単一の細菌種を含む環境性のバイオフィルムはほとんどなく、細胞が互いにごく接近しているバイオフィルムの構造は、種間シグナル伝達に適している(13、34)。この研究の間、培養上清液を、クオラムセンシング分子の発現に有利な条件下で増殖させた種々のグラム陰性及びグラム陽性細菌から調製した。C.ジェジュニ分離株M129を、C.ジェジュニの増殖を支持するのに必要な、MHBと1:1で混合したこれらのCSFの存在下で増殖させた。シュードモナス種及びアルカノバクテリウム・ピオゲネスBBR1 CSFの存在下で、バイオフィルム発生の増大が観察されたが、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)及びクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のCSFは、バイオフィルム発生に対して明白な効果を有さなかった。
【0032】
バイオフィルム形成における毒性遺伝子発現の役割を研究した。毒性遺伝子がC.ジェジュニバイオフィルムに関与する可能性をアッセイするために、3型分泌系タンパク質の生成並びにH.ピロリ(H.pylori)tlyAにおけるコロニー形成及び溶血作用に関連する遺伝子を欠いた、ciaB及びtlyA変異体を構築した。tlyAはC.ジェジュニにおける、特徴付けられていない遺伝子であり、したがって、バイオフィルム形成においてそれが果たす正確な役割は未知である。ciaBは、バイオフィルム形成に関与していないようであるが、tlyAはわずかな増大を示した。
【0033】
複数のC.ジェジュニ分離株がバイオフィルムを形成する。臨床分離株及び非病原性C.ジェジュニ分離株がバイオフィルムを形成することができるかどうかを判定した。バイオフィルム形成は、C.ジェジュニ分離株の病原性と相関しないようであった。分離株S2Bは、M129及び他のヒト臨床分離株と同様の程度までバイオフィルムを形成することができた。しかしながら、最近のヒト臨床分離株であるUMC3は、試験されたうちバイオフィルム形成が最も乏しかった。NCTC11168は、PSに接着しないと報告されている。NCTC11168は、実験室の継代の際に運動性を失うことが周知であり、異なる結果は、2つの分離株のかかる差異を反映している可能性がある。
【0034】
臨床分離株及び非病原性C.ジェジュニ分離株がバイオフィルムを形成することができるかどうかを判定した。バイオフィルム形成は、C.ジェジュニ分離株の病原性と相関しないようであった。非病原性分離株S2Bは、M129及び他の臨床分離株と同様の程度までバイオフィルムを形成することができた。しかしながら、UMC3株は、患者から分離されたものであり、試験されたうち最もバイオフィルム形成が乏しかった。
【0035】
免疫量の、鳥1匹あたり0.15mgの線毛タンパク質を7及び17日齢で皮下投与して、予備実験を行った。24日齢で、ニワトリに5×108個の細胞の野生型C.ジェジュニ(線毛タンパク質が由来するものと異種である)を負荷した。35日目に、ヒヨコを屠殺し、平均して、対照鳥は盲腸においていくらか高い平均数の生細胞を有したが、免疫化されたヒヨコは、より少ない数の細胞を有し、19匹中4匹のヒヨコは、生きているC.ジェジュニの少なくとも100倍の低下を有した。理論に拘束されることを望むことなく、本発明者らは、細菌の負荷量が、強い明白な防御を可能にするのに高すぎたと考えている。
【0036】
考察
重要なヒト腸内病原体としてのカンピロバクター種の認識は、この20年の間に起こっただけであり、現在のところこの生物の病因及び毒性因子について、ほとんど知られていない。最も知られていない因子の1つは、C.ジェジュニが非生物表面及び生体表面上でバイオフィルムを形成することができるかどうかである。C.ジェジュニバイオフィルムの開始の原因である環境因子の同定は、宿主外でのこの生物の生存能力を研究するために、最も重要である。この病原体によるバイオフィルム形成の阻害は、消費及び交際(companionship)のための種々の家畜のコロニー形成並びにヒト感染の源として機能する我々の水路の汚染を潜在的に予防することができよう。
【0037】
それらの天然の環境において、細菌はしばしば、栄養飢餓、浸透圧変化、温度変動及び多様な酸素分圧を含む環境ストレスを負荷される(10、13、14、19、20、25、26)。細菌は、固着の生活様式への遷移があるように、環境変化に応答してバイオフィルムを形成すると考えられている(14、19、22、24、28)。バイオフィルム形成に影響を及ぼす他の因子としては、基層特性、水力学、基層の条件付け及び槽培地の特徴が挙げられ(3、10、19、27)、これらは全て細菌の接着及びバイオフィルム形成の速度に関与している。いくつかのバイオフィルムモデルにおいて、イオン強度及び栄養分濃度の変化は、細菌が表面に接着及びバイオフィルムを形成する速度に影響を及ぼした(10、13、14)。環境因子及び培地の内容物がバイオフィルム形成に影響を及ぼす可能性があるので、本発明者らは、種々の槽培地条件を、それらのC.ジェジュニバイオフィルムに対する効果について試験した。得られた結果から、より栄養分豊富な培地は、最適なバイオフィルム形成を支持しないことが示され、水系に見られるもの等の栄養分に乏しい環境がC.ジェジュニバイオフィルムの発生に有利である可能性があるという結論が導かれた。本発明者らはまた、種々の濃度の、浸透圧調節物質であるグルコース、ショ糖及びNaClに対するC.ジェジュニバイオフィルム形成の応答を調べた。これらの浸透圧調節物質のそれぞれのレベルの増大は、バイオフィルム形成の顕著な減少を引き起こした。減少したバイオフィルム形成は、杆体形状又はらせん状の細胞から球菌様への形態変換の結果である可能性がある。球菌様形態は、浸透圧適応が必要な期間中に細胞膜への損傷及び細胞成分の分解が生じる場合がある、変性細胞形態を表す場合がある。
【0038】
インキュベーション温度及び酸素分圧もまた、バイオフィルム形成に影響を及ぼす場合がある。しかしながら、C.ジェジュニ生存及びバイオフィルムに対する好気生活の直接の影響に関して行われた研究はほとんどない。海洋及び他の水域環境において、溶存酸素濃度は、より低い水流速度、上昇した温度、有機物及び減少した乱れによって減少する場合がある(6)。C.ジェジュニの微好気性及び好熱性の性質に沿って、より低い酸素分圧及びより高い温度がバイオフィルムに有利であったが、高い周囲温度、好熱性温度及び/又は好気状態は、バイオフィルム形成を阻害した。
【0039】
表面の物理化学的特性は、C.ジェジュニ接着に影響を及ぼす場合がある。C.ジェジュニは、種々の程度で疎水性及び親水性表面に接着することができた。したがって、C.ジェジュニは、疎水性及び親水性表面と関連した斥力を克服する能力を有するようである。これらの斥力を克服するのを助けることができる因子のいくつかとしては、鞭毛の存在及びエキソ多糖類(EPS)の生成が挙げられる(10、12、14、24)。細菌表面の疎水性は、接着において重要な場合がある。細菌は負に帯電している傾向があるが、それらは表面と相互作用することができる鞭毛等の疎水性表面成分を含む(10、30)。研究から、タンパク質合成阻害剤での細菌の処理によってバイオフィルム形成を顕著に減少させることができ、接着した細菌の遊離を引き起こすことができることが示されている(3、10、21)。CMとのC.ジェジュニ細胞のプレインキュベーションによってバイオフィルム形成が阻害され、C.ジェジュニ細胞が適切なシグナル及び増殖条件に応答して接着及びバイオフィルム形成に必要なタンパク質を合成することが示唆された。
【0040】
多くの細菌種の鞭毛は、バイオフィルム形成及び表面への接着の速度において重要な役割を有する(10、21、22)。この研究において、C.ジェジュニ鞭毛欠損変異体(M129::flaAB)は、野生型株と比較してバイオフィルム形成が減少した。鞭毛ノックアウトは、24時間で野生型のものと比較してバイオフィルム形成のわずかな減少を示したが、48及び72時間の時点ではバイオフィルムは顕著に減少した。これらの発見から、C.ジェジュニ鞭毛は表面への接着よりもバイオフィルム発生に必要かもしれないことが示唆されるかもしれない。
【0041】
クオラムセンシング又は細胞間シグナル伝達は、バイオフィルムへの細胞接着及びバイオフィルムからの分離に関与する(10、11、29)。C.ジェジュニM129を、細菌培養上清液の存在下で増殖させ、いくつかはクオラムセンシングシグナル又は自己誘発物質を含むと考えられた。研究の間にバイオフィルム形成の増大が観察されたので、研究された液体のいくつかは、C.ジェジュニAI−2細胞によって認識される一般的なシグナルを含むと考えられる。C.ジェジュニバイオフィルムにおけるクオラムセンシングの役割をアッセイするために、luxS遺伝子に変異を構築したが、これはAI2の生成を可能にしない(11)。グラム陰性細菌におけるクオラムセンシングは、シグナル分子ホモセリンラクトン(HSL)に依存し、これは生物発光、バイオフィルム形成及び毒性因子を含むいくつかの形質の発現を制御する(11)。C.ジェジュニにおいて、シグナル分子AI2を生成するクオラムセンシングシステムが同定されている。このシステムは、グラム陽性及びグラム陰性細菌の両方で高度に保存されており、種間コミュニケーションのために使用されると考えられている(11)。luxS遺伝子は、AI−2生成のための生合成経路における最終的な酵素をコードする(11)。luxS変異体と野生型との間でバイオフィルム形成の減少が観察されたので、本発明者らの研究から、C.ジェジュニにおけるバイオフィルム発生はAI2を必要とすることが示される。C.ジェジュニバイオフィルム形成の間の遺伝子調節の正確な性質は理解されていないが、明らかに、AI−2による細胞間コミュニケーションは、これらの機能に必要な遺伝子の発現の誘導に関与している。
【0042】
顕微鏡法技術及び定量的染色アッセイを用いて、C.ジェジュニ分離株によるバイオフィルム形成を研究した。バイオフィルム形成は、分離株の病因と相関しないようであった。しかしながら、分離株のそれぞれは、ポリスチレン表面全体で均一な細胞の分布を形成した。接着細胞の密度に違いがあったが、顕微鏡法の間に細菌の微小コロニーはほとんど観察されなかった。C.ジェジュニ分離株が非生物表面上でバイオフィルムを形成する能力は、それが正常な宿主外で生存し、動物及びヒトにとってのコロニー形成及び/又は感染汚染の継続的な源として作用する能力を説明するのを助けるかもしれない。
【0043】
C.ジェジュニ細胞の環境的制限にもかかわらず、バイオフィルム中での生存は、農業及び食品加工工場における動物及び死体への病原体の伝染に重要な役割を果たし、そのようにしてヒトに影響を及ぼす可能性がある。分離株の間のバイオフィルム可変性は、ヒト感染について特に懸念されるある種の株に寄与する可能性がある。したがって、本発明者らの研究は、これらの施設での配水システムの影響及びバイオフィルムに見られるC.ジェジュニ分離株と動物にコロニー形成しヒトでの大流行を引き起こすものとの相関を判定することに拡張されるべきである。したがって、ヒト及び動物、特にC.ジェジュニによってコロニー形成され、食物、乳、水及び土壌汚染、ひいてはヒト感染の源として機能するものに投与するための、免疫原性組成物を提供することが重要である。
【0044】
本明細書中でアミノ酸について使用される略記は、当技術分野で標準的である。本明細書中で使用されるアミノ酸残基についての略記は以下の通りである。A、Ala、アラニン;V、Val、バリン;L、Leu、ロイシン;I、Ile、イソロイシン;P、Pro、プロリン;F、Phe、フェニルアラニン;W、Trp、トリプトファン;M、Met、メチオニン;G、Gly、グリシン;S、Ser、セリン;T、Thr、スレオニン;C、Cys、システイン;Y、Tyr、チロシン;N、Asn、アスパラギン;Q、Gln、グルタミン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;K、Lys、リシン;R、Arg、アルギニン;及びH、His、ヒスチジン。
【0045】
本明細書中で使用される場合、弱毒化は、細菌株の毒性が、ヒト又は特定の動物において疾患を引き起こす「野生型」臨床株と比較して減少していることを意味し、弱毒化株は、ヒト又は特定の動物において疾患を引き起こさない。弱毒化カンピロバクター株の非限定的な例は、機能的fur及び/又はkatA遺伝子産物を発現しないものである。
【0046】
変異に関して、遺伝子の機能的不活化は、遺伝子産物の活性がほとんど又は全くないことを意味する。例えば、遺伝子が酵素をコードする場合、コードされる産物は、野生型遺伝子由来の産物の10%未満、望ましくは5%未満若しくは1%未満の酵素活性を有するか、又は10%未満、5%未満若しくは1%未満の発現産物がある。すなわち、活性が有意に減少するように、コード配列を、挿入されたヌクレオチド若しくは配列で中断するか、部分的若しくは全体的に欠失することができ、又は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させる置換変異があってもよい。或いは、発現が遺伝子転写及び/又はmRNAの翻訳のレベルで減少又は予防されるように、転写及び/又は翻訳調節配列に挿入、欠失又は変化があってもよい。
【0047】
本内容において、カンピロバクターバイオフィルム物質は、本発明の線毛タンパク質、すなわち、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも90%の同一性を有する配列によって特徴付けられる線毛タンパク質を含む。バイオフィルム物質は、典型的には、細胞外多糖(複数可)、及び細胞も含む。有利に、カンピロバクターは、C.ジェジュニ又はC.コリ(C.coli)である。線毛タンパク質は、増殖の遅滞期及び定常期の間並びにバイオフィルム中で発現される。例えばミュラーヒントン培地中の、静的増殖条件は、バイオフィルム形成に有利である。バイオフィルムは容器、特に容器の底に接着する。これは、消費された培地の除去の後に除去することができる。カンピロバクターの株が弱毒化されていない場合、生細胞は、当技術分野で公知のように死滅させることができる。
【0048】
本発明のC.ジェジュニ線毛タンパク質を含む免疫原性組成物及び/又はワクチンは、当技術分野で公知の手段のいずれかによって製剤化される。それらは、典型的には、注射可能物質として、又は鼻腔内若しくは経口投与のため、又は例えば溶液若しくは懸濁液のいずれかとしての飲料水中で、経口経管栄養若しくは不断給餌のための製剤として、調製することができる。注射又は他の投与の前の液体中の、溶液、又は懸濁液に適した固体形態もまた、調製してもよい。調製物はまた、例えば、乳化させるか、又はリポソーム中に封入されたタンパク質(複数可)/ペプチド(複数可)であってもよい。
【0049】
最も可能性の高いヒト及び動物の感染の経路を考慮して、粘膜免疫が特に有利であり、免疫原性組成物は、有利に、無毒性コレラ毒素Bサブユニット等のアジュバントを含む(例えば、米国特許第5,462,734号明細書参照)。コレラ毒素Bサブユニットは、例えば、ミズーリ州セントルイスのSigma Chemical Companyから市販されている。他の適したアジュバントは入手可能であり、それに置換してもよい。エアロゾル免疫原性(又はワクチン)製剤のためのアジュバントは、上皮細胞に結合し、粘膜免疫を刺激することができることが好ましい。
【0050】
末端に、又はポリマーから粒子若しくはその核の長さに沿って結合している、直鎖状、分枝又は架橋シリコーンを含むオルガノメタロポリマーは、粘膜投与及び粘膜免疫の刺激に適したアジュバントの1つである。かかるポリシロキサンは、分子量が約400から約1,000,000ダルトンまで変化してもよく、好ましい長さの範囲は約700〜約60,000ダルトンである。適した官能化シリコーンとしては、(トリアルコキシシリル)アルキル末端ポリジアルキルシロキサン及びトリアルコキシシリル末端ポリジアルキルシロキサン、例えば、3(トリエチオキシシリル)プロピル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。参照によって本明細書中に援用される米国特許第5,571,531号明細書を参照のこと。ホスファゼン高分子電解質もまた、粘膜投与(鼻腔内、膣内、直腸、エアロゾル投与による呼吸器系)のための免疫原性組成物に組み込んでもよい(例えば、米国特許第5,562,909号明細書参照)。
【0051】
活性免疫原性成分は、しばしば、薬学的に許容され得、活性成分と適合性のある、賦形剤又は担体と混合される。適した賦形剤としては、限定されないが、水、生理食塩水、右旋性ブドウ糖、グリセロール、エタノール等、及びそれらの組合せが挙げられる。注射可能物質、エアロゾル又は経鼻製剤中の免疫原性ポリペプチドの濃度は、通常、0.2〜5mg/mlの範囲である。同様の投薬量を、他の粘膜表面に投与してもよい。かかるワクチンは、タンパク質を薬学的に許容され得る担体と混合することによって、容易に調製することができる。薬学的に許容され得る担体は、少なくとも有害な効果がワクチン接種されていない動物に見られる効果よりも悪い程度まででなく、ワクチン接種される動物の健康に有害な影響を及ぼさない化合物であると理解されている。薬学的に許容され得る担体は、例えば、滅菌水又は滅菌生理食塩水であってもよい。より複雑なものにおいて、担体は、例えばバッファーであってもよい。
【0052】
しかしながら、飲料水による経口ワクチン接種が構想される場合、水の漏出のために、恐らくより大量のタンパク質を与えなければならない。
【0053】
本発明によるワクチンは、アジュバントをさらに含んでもよい。免疫学的アジュバントは、一般に、宿主の免疫応答を非特異的に増強する物質を含む。多数の種々のアジュバントが当技術分野で公知である。アジュバントの例は、フロイント完全及び不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロック重合体並びにデキストラン硫酸、カルボポール及びピラン等のポリアミン、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)若しくは大腸菌等の細菌又は細菌由来物質、オリゴペプチド、乳化パラフィン−Emulsigen(商標)(ネブラスカ州ラルストンのMVP Labs)、水酸化アルミニウムを含むL80アジュバント(ニュージャージー州のReheis)、Quil A(Superphos)、又は当業者に公知の他のアジュバントである。Span、Tween、ヘキサデシルアミン、リソレクチン、メトキシヘキサデシルグリセロール及びサポニン等の界面活性物質もまた、非常に適している。さらに、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン等のペプチドがしばしば使用される。これらのアジュバントの次に、免疫刺激複合体(ISCOMS)、ミネラルオイル、例えばBayol又はMarkol、植物油又はその乳濁液及びDiluvac.Forteを、有利に使用することができる。ワクチンはまた、いわゆる「ビヒクル」を含んでもよい。ビヒクルは、ポリペプチドがそれに共有結合することなく接着する化合物である。しばしば使用されるビヒクル化合物は、例えば、アルミニウムの水酸化物、リン酸塩、硫酸塩若しくは酸化物、シリカ、カオリン又はベントナイトである。抗原が部分的にビヒクルに包埋されている、かかるビヒクルの特別な形態は、いわゆるISCOMである(EP109.942、EP1。ワクチンはまた、アジ化ナトリウム、チマーソル、ゲンタマイシン、ネオマイシン、及びポリミキシン等の保存薬を含んでもよい。80.564、EP242.380)。
【0054】
しばしば、免疫原性組成物は、例えば分解しやすいポリペプチドが分解されるのを保護するため、ワクチンの貯蔵寿命を増強するため、又は凍結乾燥効率を向上させるために、安定化剤をさらに含む。有用な安定化剤としては、限定されないが、SPGA、スキムミルク、ゼラチン、ウシ又は他の血清アルブミン、炭水化物、例えばソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、ショ糖、デキストラン若しくはグルコース、アルブミン若しくはカゼイン等のタンパク質又はそれらの分解産物、及びアルカリ金属リン酸塩等のバッファーが挙げられる。アルブミンが使用される場合、望ましくは、それを含む免疫原性組成物が投与される動物(又はヒト)と同じ種に由来する。凍結乾燥は、保存のための効率的な方法である。凍結乾燥された物質は、何年も安定して保存することができる。凍結乾燥された物質の保存温度は、物質に有害であることなく、0度より高いであろう。凍結乾燥は、全ての周知の標準的な凍結乾燥手順に従って行うことができる。
【0055】
線毛タンパク質、特に組換え発現された線毛タンパク質を含むワクチンは、好ましくは粘膜投与される。これは、ワクチンを飲料水又は食品と混合することによって、経口投与によって行うことができる。特に家禽については、眼内ワクチン接種及び鼻腔内ワクチン接種等のさらなる方法もまた、非常に適した粘膜ワクチン接種の方法である。
【0056】
また、所望される場合、ワクチンは、ワクチンの有効性を増強する湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又はアジュバント等の少量の補助物質を含んでもよい。有効であり得るアジュバントの例としては、限定されないが、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、ノル−MDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと呼ばれる)、並びに2%スクアレン/Tween80乳濁液中に細菌から抽出された3つの成分、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含むRIBIが挙げられる。アジュバントの有効性は、問題のアジュバントを含むワクチン中の免疫原の投与に起因する、免疫原に対する抗体(特にIgA、IgM又はIgG)の量を測定することによって判定することができる。当技術分野で公知のようなかかるさらなる製剤及び投与の様式もまた、使用してもよい。
【0057】
目的の線毛タンパク質抗原又は前記タンパク質由来の配列に由来するペプチドを、中性又は塩形態としてワクチンに製剤化する。薬学的に許容され得る塩としては、限定されないが、無機酸、例えば塩酸又はリン酸、及び有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸又はマレイン酸で形成された酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基で形成されている)が挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は鉄水酸化物、並びに有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノ−エタノール、ヒスチジン、及びプロカインに由来してもよい。
【0058】
免疫原性組成物又はワクチンは、当技術分野で公知のものに従って、投薬製剤に適合性のある様式で、並びに予防上及び/又は治療上有効な量及び様式で投与される。投与される量は、一般に1用量あたり約100〜1,000μgのタンパク質の範囲、より一般には1用量あたり約20〜1000μgのタンパク質の範囲であり、治療される被験体、抗体を合成する個体の(又は動物の)免疫系の能力、及び所望される防御の程度による。投与されるのに必要な活性成分の正確な量は、医師又は獣医の判断によってもよく、各個体に特有であってもよいが、かかる判定は、かかる実行者の技術の範囲内である。
【0059】
免疫原性組成物における組換え線毛タンパク質の使用の代替として、線毛が発現されているバイオフィルム増殖を容器表面から採取することによって静置培養(例えばミュラーヒントンブロスを培地として使用して)由来の死滅したC.ジェジュニ全細胞調製物を使用することができる。臨床分離株又は野生型株が使用される場合、望ましくは、バイオフィルムを処理して、その中の細菌細胞を死滅させる。生細胞を死滅させることは当技術分野で公知であり、適切な薬剤の非限定的な例としては、ホルマリン及びBEIが挙げられる。全細胞(バイオフィルム)免疫原性組成物の使用に対する別の手法は、バイオフィルム形成条件におけるような線毛形成を生じる条件下で増殖させた弱毒化C.ジェジュニ変異体の使用である。病原性株は、カタラーゼ遺伝子(katA、Dayら、2000年参照)若しくはfur遺伝子を機能的に不活化することによって弱毒化することができ、又は、これらの機能の一方若しくは両方を欠いた変異体を単離することができる。カンピロバクターの他の種を、本方法におけるC.ジェジュニの代わりに使用してもよい。
【0060】
ワクチンに製剤化する前に、調製物中の細菌細胞を不活化してもよい。細菌細胞は、当業者に公知の標準的な手順に従って、熱(例えば、60℃で2時間の処理)又は化学物質、典型的には市販のワクチン調製物に一般に使用されるものを用いて、不活化してもよい。本発明の細菌調製物を不活化するのに適した化学物質としては、β−プロピオラクトン(β−Prone、アイオワ州ラーチウッドのGrand Laboratories Inc.)又は0.1Mバイナリーエチレンイニン(BEI)が挙げられる。他の方法及び物質は当技術分野で周知である。培養物の不活化は、例えば、複数の試料を適した固体に播種し、最適な増殖条件下でプレートをインキュベートすることによって確認してもよい。
【0061】
ワクチン又は他の免疫原性組成物は、単回投与、例えば2〜8週間隔てた2回投与計画、若しくは複数回投与計画又は他のワクチンとの組合せで与えてもよい。複数回投与計画は、ワクチン接種の最初の過程が1〜10以上の別々の用量、それに続く、免疫応答を維持及び/又は強化するのに必要な、後の間隔、例えば2回目の投与に1〜4カ月で投与される他の用量、並びに必要な場合、数ヵ月後の後の投与(複数可)を含んでもよいものである。本発明に従って投与された抗原で免疫化されたヒト(又は他の動物)は、目的の抗原が由来する病原体による感染から防御される。
【0062】
本発明によるワクチンの調製のための方法は、複雑である必要はない。原則として、標準的な技術に従って、例えば動物において、本明細書中に記載されている線毛タンパク質に対する抗体を産生させ、続いて血液を収集し、抗血清を単離することで十分である。かかる抗体を産生させるのに適した動物は、例えば、ウサギ及びニワトリである。ニワトリが使用される場合、抗体は、代替として、全身免疫されたニワトリの卵黄から得てもよい。原則として、抗体は希釈する必要はない。それらはそのまま、又は必要な場合、濃縮した形態でも与えてもよい。或いは、抗体濃度が非常に高い場合、そのようにして得られた抗血清は、例えば、投与の前に希釈してもよい。
【0063】
この特異性の所望の抗体、モノクローナル抗体又は単鎖抗体を産生する細胞を得て、これらを発酵槽又は細胞培養装置中で増殖させることもまた、可能である。抗体は後で採取してもよく、必要な場合、薬学的に許容され得る担体と混合してもよい。かかる方法の利点は、抗体の調製に動物を使用する必要がないことである。
【0064】
本発明の免疫化態様の適用は、屠殺する前にブロイラーニワトリを処理することである。かかるブロイラーは、通常、6週齢で屠殺される。したがって、屠殺の1〜3週間前の、線毛タンパク質を含む免疫原性組成物又は線毛含有全細胞ワクチンでの動物の処理によって、カンピロバクター汚染のレベルの有意な減少が引き起こされる。
【0065】
本発明の線毛タンパク質に特異的な抗体は、例えばニワトリに粗抗血清を供給することによって、いくぶん粗い調製物として与えてもよい。代替的な投与の経路としては、限定されないが、血清を飲料水又はニワトリの食物と混合することが挙げられる。かかる目的のために、別法は、抗体を凍結乾燥し、そのようにしてそれらの長期安定性を増強し、その後それらを食物又は水と混合することである。また、抗体は、カプセル化してからニワトリの食物に添加してもよい。本発明のカンピロバクター線毛タンパク質に対する特異性を有する抗血清又は抗体調製物は、カンピロバクター感染症を患う患者(特にヒト患者)の治療において使用することができる。
【0066】
バイオフィルム若しくは便試料中のカンピロバクター、特にC.ジェジュニを検出するため、又はカンピロバクター、特にC.ジェジュニ感染の診断のために、本発明の線毛タンパク質に特異的な抗体を用いることができる。
【0067】
本発明の線毛タンパク質の別の使用は、このタンパク質に特異的な抗体の検出において、例えば、カンピロバクター、特にC.ジェジュニに対する動物若しくはヒトの曝露をモニタリングすること、又はC.ジェジュニ線毛タンパク質に対する免疫応答(体液性)の発生をモニタリングすることである。
【0068】
ヒト又は動物の免疫化のための別の戦略は、本発明の線毛タンパク質をコードするDNA分子を投与することであり、ここでコード配列は、それが導入されているヒト又は動物における発現を指示するのに適切な転写及び翻訳配列に、動作可能に連結されている。
【0069】
さらに別の戦略は、非毒性サルモネラ株を用いて、目的の線毛コード配列を発現させることである(線毛タンパク質を含まない以前の実験については、Pawelecら(1997年)FEMS Immunology and Medical Microbiology 19:137〜140ページ参照)。Pawelecらは、CjaA、CjaC、LPS、MOMP、鞭毛又は鞭毛サブユニット等の防御C.ジェジュニ抗原をコードするC.ジェジュニ遺伝子を発現するS.チフィムリウム株の構築によって、両方の腸管病原体に対するニワトリワクチンを得る有効な方法を提供することができるかもしれないと示唆した。米国特許出願公開第2001/0038844A1号明細書は、組換えサルモネラ変異体株における鞭毛抗原又は断片の発現を教示している。ニワトリにおいて粘膜免疫応答を誘発することができるサルモネラの多数の非毒性株が記載されている。例えば、S.チフィムリウムdelta−cya−delta−crp変異体は、Curtiss及びKellyによって開発され(Curtiss及びKelly、1987年、Infect.Immun.55.3035〜3044ページ)、Galenらによってさらに修飾された(Galenら、1990年、Gene 94:29〜35ページ)。phoP遺伝子に変異を有するサルモネラの別の変異体株の開発並びにサルモネラ・チフィムリウムに対するワクチンの成分としてのこれらの非毒性変異体生物の使用を開示している米国特許第5,424,065号明細書も参照のこと。S.チフィムリウムX3985Δ−cya−Δ−crpは、用量及び株依存的であると示される応答である、ニワトリにおけるサルモネラの毒性株での再負荷に対する有意な防御を誘発した(Hassan及びCurtiss、1990年、Res.Microbiol.141:839〜850ページ)。しかしながら、Curtissら、米国特許第5,424,065号明細書によって教示されているように、これらのサルモネラ変異体の成功利用は、宿主、細菌種、及び免疫化の経路による。サルモネラ変異体はまた、ストレプトコッカス(Streptococcus)変異体、S.ソブリナス(S.sobrinus)(Doggettら、1993年、Infect.Immun.61:1859〜1966ページ、Jagusztyn−Krynickaら、1993年、Infect.Immun.61:1004〜1015ページ、Redmanら、1995年、Infect.Immun.63:2004〜2011ページ、Redmanら、1996年、Vaccine 14:868〜878ページ)、S.エクイ(S.equi)、ボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)(Gentry−Weeksら、1992年、J.Bacteriol.174:7729〜7742ページ)、B.パータシス、マイコバクテリウム(Mycobacterium)(Curtissら、1990年、Res.Microbiol.141:797〜805ページ)、B型肝炎ウイルス(Schodelら、1994年、Infect.Immun.62:1669〜1676ページ)、大腸菌熱不安定性毒素−ウイルス融合タンパク質(Smerdouら、1996年、Virus Res.41:1〜9ページ)、及び破傷風毒素断片C(Karemら、1995年、Infect.Immun.63:4557〜4563ページ)由来の外来性抗原を発現するためのベクターとして使用されている。
【0070】
明細書中で言及される種々のアミノ酸配列中で生じるアミノ酸は、当技術分野で通法により使用されるそれらの通常の3文字及び1文字略記を有する。A、Ala、アラニン;C、Cys、システイン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;F、Phe、フェニルアラニン;G、Gly、グリシン;H、His、ヒスチジン;I、Ile、イソロイシン;K、Lys、リシン;L、Leu、ロイシン;M、Met、メチオニン;N、Asn、アスパラギン;P、Pro、プロリン;Q、Gln、グルタミン;R、Arg、アルギニン;S、Ser、セリン;T、Thr、スレオニン;V、Val、バリン;W、Try、トリプトファン;Y、Tyr、チロシン。
【0071】
タンパク質は、それが組換えによって生成される宿主細胞から単離されたタンパク質である場合、単離されたタンパク質と考えられる。それは精製されてもよく、又は単に自然界ではそれと関連している他のタンパク質及び生物学的物質を含まなくてもよい。
【0072】
単離された核酸は、構造が任意の天然に存在する核酸のもの又は3つより多い別々の遺伝子にわたる天然に存在するゲノム核酸の任意の断片のものと同一でない核酸である。したがって、用語は、例えば、天然に存在するゲノムDNA分子の一部の配列を有するがそれが天然に存在する生物のゲノムにおいて分子のその部分が隣接するコード又は非コード配列の両方が隣接していないDNA、得られる分子が任意の天然に存在するベクター又はゲノムDNAと同一でないようにベクター又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた核酸、cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された断片、又は制限酵素断片等の別々の分子、並びにハイブリッド遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子にわたる。DNA分子、形質転換又はトランスフェクト細胞、及び細胞クローンの混合物中に存在する核酸は、例えばこれらがcDNA又はゲノムDNAライブラリー等のDNAライブラリー中で生じるように、この定義から特異的に排除される。
【0073】
本明細書中で使用される場合、特定の配列によって指示される発現は、関連する下流配列の転写である。関連する配列について適切で所望される場合、用語、発現はまた、転写されたRNAの翻訳(タンパク質合成)も包含する。
【0074】
本文脈において、プロモーターは、関連する(下流)配列の転写を引き起こすのに十分な配列を含むDNA領域である。プロモーターは調節してもよく、すなわち、関連する配列の転写を引き起こすよう構成的に作用していない。誘導性である場合、生物が中又は上で培養される培地中に誘導因子分子が存在する場合にのみ関連する配列が転写されるように発現の調節を媒介する、存在する配列がある。本文脈において、転写調節配列はプロモーター配列を含み、当技術分野で周知のように、環境シグナルに応答した、関連する配列の調節された発現のためのシス−活性配列をさらに含んでもよい。
【0075】
あるDNA部分又は配列は、それが第2のDNA部分又は配列の3’に位置する場合、第2のDNA部分又は配列の下流である。あるDNA部分又は配列は、第2のDNA部分又は配列の5’に位置する場合、そのDNA部分又は配列の上流である。
【0076】
あるDNA分子又は配列と別のものとは、2つが同じ天然の本源に由来しない場合に、異種である。配列は、天然の配列であってもよく、又は多重クローニング部位領域の場合のように、少なくとも一方の配列が人によって設計されてもよい。2つの配列は、2つの異なる種に由来してもよく、又は合成された部分のヌクレオチド配列がもう一方の配列と同じ生物に由来しなければ、一方の配列が化学合成によって生成されてもよい。
【0077】
単離された、又は実質的に純粋な核酸分子又はポリヌクレオチドは、天然の転写調節配列を天然に伴う他のポリヌクレオチド配列から実質的に分離されたポリヌクレオチドである。用語は、その天然に存在する環境から除去されているポリヌクレオチド配列を包含し、組換え又はクローン化DNA分離物、化学的に合成された類似体、及び異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。
【0078】
ポリヌクレオチドは、その天然の状態、又は、当業者に公知の方法によって操作された場合、転写及び/若しくは翻訳されてポリペプチド若しくはその断片を生成することができる場合、ポリペプチドをコードするといわれる。かかるポリヌクレオチドのアンチセンス鎖はまた、配列をコードするといわれる。
【0079】
ヌクレオチド配列は、別のヌクレオチド配列と機能的関係に配置される場合に、動作可能に連結されている。例えば、プロモーターは、プロモーターがその転写又は発現を生じさせる場合に、コード配列に動作可能に連結されている。一般に、動作可能に連結されている、は、連結されている配列が連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、連続であり、リーディングフレーム中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサー等のある種の遺伝因子は隔たっていても、すなわち連続していなくても、動作可能に連結されていてもよいことは周知である。
【0080】
用語、組換えポリヌクレオチドは、遺伝子操作技術又は化学合成によって単離されたポリヌクレオチドのセグメントの人工的操作によって達成される、2つの、他の状態では別々の配列のセグメントの組合せによって作製されたポリヌクレオチドをいう。その際、所望の機能のポリヌクレオチドセグメントを連結させて所望の機能の組合せを生じてもよい。
【0081】
ポリヌクレオチドプローブは、標識又はレポーター分子に付着した単離されたポリヌクレオチドを含み、他の配列、例えばカンピロバクター・ジェジュニの他の株に由来するものを同定及び単離するのに使用することができる。合成オリゴヌクレオチド又は他のポリヌクレオチドを含むプローブは、天然に存在する、又は組換え一本鎖若しくは二本鎖核酸に由来してもよく、又は化学合成してもよい。ポリヌクレオチドプローブは、当技術分野で公知の方法のいずれか、例えばランダムヘキサマー標識、ニックトランスレーション、又はクレノウフィルイン反応法によって標識してもよい。
【0082】
適した宿主細胞中の複製によって、大量のポリヌクレオチドを生成することができる。目的のタンパク質をコードする天然又は合成のDNA断片を、タンパク質発現が所望される、原核又は真核細胞、特に大腸菌での導入及び複製が可能な、組換えポリヌクレオチド構築物、典型的にはDNA構築物中に組み込む。通常、構築物は、大腸菌、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム又はシュードモナス等の単細胞宿主における複製に適しているが、宿主細胞のゲノム内の組込みあり又はなしで、多細胞真核宿主もまた適当である場合がある。真核宿主細胞としては、酵母、糸状菌、植物、昆虫、両生類及び鳥類が挙げられる。操作の容易さ、発現されたタンパク質を適切にグリコシル化することができるかどうか、タンパク質発現の程度及び制御、発現されるタンパク質の、細胞混入物からの精製の容易さ等の要因又は他の要因は、宿主細胞の選択に影響を及ぼす。
【0083】
ポリヌクレオチドはまた、化学合成によって、例えばBeaucage及びCaruthers(1981年)Tetra.Letts.22:1859〜1862ページによって記載されているホスホラミダイト法又はMatteuciら(1981年)J.Am.Chem.Soc.103:3185ページによるトリエステル法によって、生成してもよく、市販の自動化オリゴヌクレオチド合成機で行ってもよい。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖をアニーリングすること、又は適切なプライマー配列を有するDNAポリメラーゼを用いて相補鎖を付加することのいずれかによって、化学合成の一本鎖生成物から得てもよい。
【0084】
原核又は真核宿主への導入のために調製されたDNA構築物は、典型的には、所望のポリペプチドをコードする意図されるDNA断片を含む、宿主によって認識される複製系(すなわち、ベクター)を含み、好ましくは、ポリペプチドコードセグメントに動作可能に連結された転写及び翻訳開始調節配列も含む。発現系(発現ベクター)は、例えば、複製開始点又は自律複製配列(ARS)及び発現制御配列、プロモーター、エンハンサー、並びにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写終結配列、及びmRNA安定化配列等の必要なプロセシング情報部位を含んでもよい。シグナルペプチドもまた、適切な場合、同じ又は関連した種の分泌されたポリペプチドから含まれてもよく、これによってタンパク質が細胞膜中で交差する及び/若しくは留まる又は細胞から分泌されることが可能になる。
【0085】
適切なプロモーター及び他の必要なベクター配列は、宿主中で機能的であるように選択される。細胞系及び発現ベクターの実行可能な組合せの例は、Sambrookら(1989年)下記参照、Ausubelら(編)(1995年)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク、及びMetzgerら(1988年)Nature、334:31〜36ページに記載されている。細菌、酵母、菌類、哺乳動物、昆虫、植物又は他の細胞における発現のための多くの有用なベクターは当技術分野で周知であり、Stratagene、New England Biolabs、Promega Biotech、及び他のもの等の業者から得ることができる。また、構築物は、遺伝子の複数のコピーが生じるように、増幅可能な遺伝子(例えば、DHFR)に連結してもよい。適切なエンハンサー及び他の発現制御配列については、Enhancers and Eukaryotic Gene Expression、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク(1983年)も参照のこと。かかる発現ベクターは自律的に複製することができるが、それらは宿主細胞のゲノムに挿入されることによって、あまり好ましく複製しない場合がある。
【0086】
発現及びクローニングベクターは、有利に、選択可能なマーカー、すなわち、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする遺伝子を含む。かかるマーカー遺伝子は、宿主細胞に同時に導入された別のポリヌクレオチド配列上に保持されていてもよいが、これはほとんどの場合クローニングベクター上に含まれる。マーカー遺伝子が導入されている宿主細胞のみが、選択的な条件下で生存及び/又は増殖する。典型的な選択遺伝子は、抗生物質又は他の毒性物質、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート等に対する耐性を与える、栄養要求性欠損を補完する、又は複合培地から入手できない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。適切な選択可能なマーカーの選択は宿主細胞により、種々の宿主についての適切なマーカーは当技術分野で公知である。
【0087】
組換え宿主細胞は、本文脈において、本発明の単離されたDNA分子を含むよう遺伝子組換えされているものである。DNAは、特定の細胞の型に適切で、限定されないが形質転換、リポフェクション又はエレクトロポレーションを含む、当技術分野で公知の任意の手段によって導入することができる。
【0088】
本明細書中で使用される場合、コロニー形成は、宿主動物又はヒト内でのC.ジェジュニの確立をいう。ある種の動物、例えば家禽(ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ等)において、コロニー形成は、疾患を生じない。本明細書中で教示されているようなC.ジェジュニの線毛タンパク質を含む免疫原性組成物の投与によってコロニー形成が減少又は予防される場合、利点は、より少ない細菌が食品及び環境中に導入されることである。感染は、本文脈において、疾患症状が起こる結果を伴う、ヒト又は動物のコロニー形成をいう。
【0089】
DNA配列は遺伝コードの縮重及びコドン使用頻度によって変化してもよいことが、当業者によって認識される。目的の線毛タンパク質をコードする全ての(同義の)DNA配列が、本発明に含まれる。
【0090】
また、DNA配列がコードするペプチドのアミノ酸配列の活性を有意に変化させない対立遺伝子変異体がDNA配列中で生じてもよいことが、当業者によって認識されるであろう。全てのかかる同等なDNA配列が本発明の範囲内及び制御されたプロモーター領域の定義に含まれる。当業者は、例示された配列を用いて、示された配列と機能的に同等なさらなる例示されていないヌクレオチド配列を同定及び単離することができることを理解するであろう。
【0091】
本発明の線毛タンパク質のアミノ酸配列に、わずかな変更があってもよい。アミノ酸配列の変化は、1つ又は複数のアミノ酸の、機能的同等物による置換の結果であってもよい。機能的同等物による置換はしばしば見られる。Neurathら(The Proteins、Academic Press、ニューヨーク(1979年)、14ページ、図6)によって記載されている例は、すなわち、アミノ酸アラニンの、セリンによる置換、Ala/Ser、又はVal/Ile、Asp/Glu等である。上述の機能的同等物アミノ酸による置換を生じる変化に加えて、機能的同等物でない別のアミノ酸によってアミノ酸が置換されている変化が見られてもよい。この種類の変化は、その空間的折り畳みにわずかな変化を有するタンパク質を生じ得る点で機能的同等物での置換と異なるだけである。両方のタイプの変化がタンパク質中でしばしば見られ、それらは生物学的変化として公知である。線毛タンパク質のアミノ酸配列の変化はポリペプチドの免疫原性活性が保持される程度まで可能であること、すなわち変異体タンパク質に対して産生された抗体が特に例示された線毛タンパク質又はC.ジェジュニの他の分離株の線毛タンパク質と交差反応することが理解される。
【0092】
ハイブリダイゼーション手順は、本明細書中で教示されているような有用な対象の調節配列に対して十分な相同性を有するポリヌクレオチドを同定するために有用である。特定のハイブリダイゼーション技術は、本発明に必須ではない。ハイブリダイゼーション技術に改良がなされているため、それらは当業者によって容易に適用することができる。
【0093】
プローブ及び試料はハイブリダイゼーションバッファー溶液中で合わされ、アニーリングが起こるまで適切な温度で維持される。その後、膜は外来性物質なしに洗浄されて、典型的にはオートラジオグラフィー及び/又は液体シンチレーション測定によって検出及び定量される、試料及び結合しているプローブ分子が残る。当技術分野で周知のように、プローブ分子及び核酸試料が、2つの分子の間で強力な非共有結合を形成することによってハイブリダイズする場合、プローブ及び試料は本質的に同一であるか、又はアニーリング及び洗浄工程が高ストリンジェンシーの条件下で行われる場合、完全に相補的であると合理的に仮定することができる。プローブの検出可能な標識によって、ハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するための手段が提供される。
【0094】
プローブとしての、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの使用において、特定のプローブは、放射性及び非放射性標識を含む、当業者に公知の任意の適した標識で標識される。典型的な放射性標識としては、32P、35S等が挙げられる。非放射性標識としては、例えば、ビオチン若しくはチロキシン等のリガンド、並びにヒドロラーゼ若しくはペルオキシダーゼ等の酵素、又はルシフェリン等の化学発光物質、又はフルオレセインのような蛍光化合物及びその誘導体が挙げられる。或いは、プローブは、国際公開第93/16094号パンフレットに記載されているように、本質的に蛍光にしてもよい。
【0095】
ハイブリダイゼーションの種々の程度のストリンジェンシーを採用してもよい。条件がストリンジェントであるほど、二本鎖形成に必要な相補性は高くなる。ストリンジェンシーは、温度、プローブ濃度、プローブ長、イオン強度、時間等によって制御することができる。好ましくは、例えば参照によって本明細書中に援用されるKeller,G.H.、M.M.Manak(1987年)DNA Probes、Stockton Press、ニューヨーク州ニューヨーク、169〜170ページに記載されているように、当技術分野で公知の技術によって、ハイブリダイゼーションは、中〜高ストリンジェンシー条件下で行われる。
【0096】
本明細書中で使用される場合、ハイブリダイゼーションのための中〜高ストリンジェンシー条件は、本発明者らによって採用された条件と同じ又はほぼ同じ程度のハイブリダイゼーションの特異性を達成する条件である。高ストリンジェンシー条件の例は、68℃、5×SSC/5×デンハルト液/0.1%SDS中でハイブリダイズさせ、0.2×SSC/0.1%SDS中で、室温で洗浄することである。中ストリンジェンシーの条件の例は、68℃、5×SSC/5×デンハルト液/0.1%SDS中でハイブリダイズさせ、42℃、3×SSC中で洗浄することである。温度及び塩濃度のパラメーターは、プローブと標的核酸との間で所望のレベルの配列同一性を達成するよう変化させてもよい。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなる指導については、例えば、Sambrookら(1989年)下記参照又はAusubelら(1995年)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨークを参照のこと。
【0097】
特に、標準的な方法(Maniatisら)によって、32P標識遺伝子特異的プローブでのサザンブロットにおける固定化されたDNAのハイブリダイゼーションを行った。一般に、ハイブリダイゼーション及びその後の洗浄は、例示された配列に対して相同性を有する標的配列の検出を可能にする中〜高ストリンジェンシー条件下で行った。二本鎖DNA遺伝子プローブについては、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE 5×デンハルト液、0.1%SDS、0.1mg/ml変性DNA中で、DNAハイブリッドの融点(Tm)の20〜25℃下で一晩行ってもよい。融点は、以下の式によって記載されている(Beltzら(1983年)Methods of Enzymology、R.Wu、L.Grossman及びK Moldave(編)Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク、100:266〜285ページ):
Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41(+G+C)−0.61(%ホルムアミド)−600/二本鎖の塩基対の長さ
【0098】
洗浄は、典型的には以下のように行われる。1×SSPE、0.1%SDS中で15分間、室温で2回(低ストリンジェンシー洗浄)、及び0.2×SSPE、0.1%SDS中で15分間、TM−20℃で1回(中ストリンジェンシー洗浄)。
【0099】
オリゴヌクレオチドプローブについては、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE、5×デンハルト液、0.1%SDS、0.1mg/ml変性DNA中で、ハイブリッドの融点(Tm)の10〜20℃下で一晩行った。オリゴヌクレオチドプローブのTmは、以下の式によって判定した:TM(℃)=2(T/A塩基対の数+4(G/C塩基対の数)(Suggs,S.V.ら(1981年)ICB−UCLA Symp.Dev.Biol.Using Purified Genes、D.D.Brown(編)、Academic Press、ニューヨーク、23:683〜693ページ)。
【0100】
洗浄は、典型的には、以下のように行った。15分間1×SSPE、0.1%SDSで、室温で2回(低ストリンジェンシー洗浄)、及び1×SSPE、0.1%SDS中で15分間、ハイブリダイゼーション温度で1回(中ストリンジェンシー洗浄)。
【0101】
一般に、塩及び/又は温度を変化させてストリンジェンシーを変化させることができる。長さが70塩基を超えるくらいの、標識されたDNA断片で、以下の条件を使用することができる。低、1又は2×SSPE、室温;低、1又は2×SSPE、42℃;中、0.2×又は1×SSPE、65℃;及び高、0.1×SSPE、65℃。
【0102】
二本鎖形成及び安定性は、ハイブリッドの2つの鎖の間の実質的な相補性により、上述のように、ある程度のミスマッチは許容され得る。したがって、本発明のプローブ配列は、記載されている配列の変異(単一及び多重の両方)、欠失、挿入、及びそれらの組合せを含み、ここで前記変異、挿入及び欠失は、目的の標的ポリヌクレオチドとの安定したハイブリッドの形成を可能にする。変異、挿入、及び欠失は、多くの方法で所与のポリヌクレオチド配列において生じることができ、それらの方法は当業者に公知である。他の方法が将来知られるようになるかもしれない。
【0103】
このようにして、開示されたヌクレオチド配列の、変異、挿入、及び欠失の変異体は、当業者に周知の方法によって容易に調製することができる。これらの変異体は、変異体が元々の配列と相当な配列相同性を有する限りは、例示されたプライマー配列と同じ様式で使用することができる。本明細書中で使用される場合、相当な配列相同性は、変異体ポリヌクレオチドが、プローブが由来するポリヌクレオチドと同じ能力で機能することができるようにするのに十分な相同性をいう。好ましくは、この相同性は70%又は80%よりも高く、より好ましくは、この相同性は85%よりも高く、さらにより好ましくは、この相同性は90%よりも高く、最も好ましくは、この相同性は95%よりも高い。70〜100%の間の全ての整数もまた、本発明の範囲内である。変異体がその意図される能力で機能するのに必要な相同性又は同一性の程度は、配列の意図された使用による。機能が同等であるか又は配列の機能を改良するよう設計されているか或いは方法論的利点を提供する、変異、挿入、及び欠失の変異体を作製することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0104】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、核酸配列の、反復的で、酵素による、刺激された(primed)合成である。この手順は当業者によって周知であり、一般に使用されている(Mullis、米国特許第4,683,195号明細書、第4,683,202号明細書、及び第4,800,159号明細書、Saikiら(1985年)Science 230:1350〜1354ページ参照)。試薬、装置及び説明書は市販されている。好熱菌サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)から単離されたTaqポリメラーゼ等の熱安定性DNAポリメラーゼを使用することによって、増幅プロセスを完全に自動化することができる。使用することができる他の酵素は当業者に公知である。
【0105】
元々の全長配列の、得られた断片及び/又は変異体のいくらかが全長配列の所望の特徴を保持できるように、本発明のポリヌクレオチド配列を切断及び変異させることができることは、当技術分野で周知である。より大きな核酸分子から断片を生じるのに適している多種多様な制限酵素が周知である。また、Bal31エキソヌクレアーゼをDNAの時間制御された限定消化に簡便に使用することができることは周知である。例えば、参照によって本明細書中に援用されるManiatis(1982年)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、135〜139ページを参照のこと。Weiら(1983年、J.Biol.Chem.258:13006〜13512ページも参照のこと。Bal31エキソヌクレアーゼ(一般に「塩基を消す」手順と呼ばれる)の使用によって、当業者は、対象核酸のいずれか又は両方の末端からヌクレオチドを除去して、対象ヌクレオチド配列と機能的に同等な、広範な断片を生じることができる。当業者は、この様式で、元々の分子の全ての位置から、制御された様々な長さの、何百もの断片を生じることができる。当業者は、生じた断片を、それらの特徴について通法によって試験又はスクリーニングし、本明細書中に教示されているような断片の有用性を判定することができる。全長配列の変異配列、又はその断片を部位特異的変異誘発で容易に生成することができることもまた、周知である。例えば、ともに参照によって本明細書中に援用される、Larionov,O.A.及びNikiforov,V.G.(1982年)Genetika 18(3):349〜59ページ、Shortle,D、DiMaio,D.及びNathans,D.(1981年)Annu.Rev.Genet.15:265〜94ページを参照のこと。当業者は通法によって、欠失、挿入、又は置換型の変異を生じさせること、並びに全長野生型配列又はその断片の所望の特徴を含む変異体を生じるもの、すなわち、投与されるヒト若しくは動物においてそれに対するコロニー形成及び/若しくは感染を阻害する抗体が産生される本発明の線毛タンパク質若しくはその断片を発現するものを同定することができる。
【0106】
本明細書中で使用される場合、2つの核酸のパーセント配列同一性は、Karlin及びAltschul(1993年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873〜5877ページのように改変されたKarlin及びAltschul(1990年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264〜2268ページのアルゴリズムを用いて判定される。かかるアルゴリズムを、Altschulら(1990年)J.Mol.Biol.215:402〜410ページのNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込む。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、単語長=12で行って、所望のパーセント配列同一性を有するヌクレオチド配列を得る。比較目的のためのギャップトアラインメントを得るために、Altschulら(1997年)Nucl.Acids.Res.25:3389〜3402ページに記載されているように、Gapped BLASTを用いる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(NBLAST及びXBLAST)のデフォルトパラメーターを使用する。例えば、インターネット上のNational Center for Biotechnology Informationウェブサイトを参照のこと。
【0107】
C.ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する、モノクローナル又はポリクローナル抗体、単鎖抗体、ヒト若しくはヒト化単鎖抗体又はヒト若しくはヒト化抗体の抗原結合断片は、当技術分野で公知の方法によって作製することができる。例えば、Harlow及びLane(1988年)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Hagbor Laboratories、Goding(1986年)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、第2版、Academic Press、ニューヨークを参照のこと。
【0108】
クローニング、DNA単離、増幅及び精製のため、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を伴う酵素反応のための標準的な技術、並びに種々の分離技術は、当業者によって公知で一般に採用されているものである。多数の標準的な技術が、Sambrookら(1989年)Molecular Cloning、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州プレーンビュー、Maniatisら(1982年)Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州プレーンビュー、Wu(編)(1993年)Meth.Enzymol.218、第I部、Wu(編)(1979年)Meth.Enzymol.68、Wuら(編)(1983年)Meth.Enzymol.100及び101、Grossman及びMoldave(編)Meth.Enzymol.65、Miller(編)(1972年)Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、Old及びPrimrose(1981年)Principles of Gene Manipulation、University of California Press、バークレー、Schleif及びWensink(1982年)Practical Methods in Molecular Biology、Glover(編)(1985年)DNA Cloning第I巻及び第II巻、IRL Press、英国オックスフォード、Hames及びHiggins(編)(1985年)Nucleic Acid Hybridization、IRL Press、英国オックスフォード、並びにSetlow及びHollaender(1979年)Genetic Engineering:Principles and Methods、第1巻〜第4巻、Plenum Press、ニューヨークに記載されている。略語及び命名法は、採用されている場合、当該分野で標準的で本明細書中に引用されるもの等の専門雑誌中で一般に使用されていると見なされる。
【0109】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに理解することができる。これらの実施例は例示目的のために提供され、本明細書中で請求されているような発明の範囲を限定するよう意図されない。当業者の思い当たる、例示された項目のいかなる変化も、本発明の範囲内に含まれるよう意図される。
【0110】
本明細書中に引用される全ての参考文献は、本開示と不一致がない程度まで、参照によって本明細書中に援用される。引用される参考文献は、関連する技術における技術のレベルを反映する。
【実施例】
【0111】
実施例1 細菌株及び培地
全てのC.ジェジュニ分離株(表1)は、5%ウシ血液を補充したミュラーヒントンアガー(Difco)上で、37℃、10%CO2インキュベータ中で、維持した。
【0112】
実施例2 バイオフィルム形成アッセイ
バイオフィルム形成についてアッセイするC.ジェジュニ分離株を、ミュラーヒントンブロス(MHB)中、37℃及び10%CO2で、振とうしながら0.25のOD600まで一晩増殖させた。1mlのMHB、ブルセラA(Difco)又はボルトン(Difco)ブロスを含む24ウェルポリスチレンプレート(Corning)のウェルに、C.ジェジュニ分離株の一晩培養物をOD600=0.025(約2.5×107個の細菌)まで接種した。次いで、プレートを周囲空気10%CO2雰囲気中、25又は37℃で24、48又は72時間インキュベートした。インキュベーションの後、培地を除去し、ウェルを55℃で30分間乾燥させ、1mlの0.1%クリスタルバイオレット(CV)を室温で5分間添加した。非結合CVを除去し、ウェルをH2Oで2回洗浄した。ウェルを55℃で15分間乾燥させ、結合したCVを80%エタノール:20%アセトンで脱色した。この溶液の100μlの分割量をウェルから除去し、96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダー(Bio−tek)を用いてOD570を判定して、バイオフィルム形成を判定した。
【0113】
バイオフィルム形成に対する浸透圧調節物質の効果を判定するために、バイオフィルムアッセイの前にMHBに化合物を添加した。分析の前に、プレートを10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。
【0114】
実施例3 非生物表面上でのC.ジェジュニバイオフィルム形成
アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック(ABS)、ポリ塩化ビニルプラスチック(PVC)、ポリスチレン又は銅の、無菌の約1×4cmの切り取り試片を、切り取り試片が完全に沈むように、5mlのMHBとともに15mlのポリプロピレンチューブに入れた。チューブにC.ジェジュニをOD600=0.025まで接種し、10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。切り取り試片を無菌で除去し、2mlの0.1Mリン酸緩衝生理食塩水pH7.3(PBS)及び20個の無菌の4mmガラスビーズとともに無菌の15mlチューブに入れ、全速力で1分間チューブをボルテックスして細菌細胞を除去した。5%血液を補充したミュラーヒントンアガー上に希釈平板することによって生菌を数えた。
【0115】
実施例4 タンパク質合成の阻害
MHB中のC.ジェジュニの一晩培養物を0.5μg/mlのクロラムフェニコール(CM)で、室温で15分間処理してから、抗生物質の非存在下でバイオフィルム形成についてアッセイした。この濃度のCMではタンパク質合成は阻害されたが、C.ジェジュニ細胞の生存率は損なわれなかった。CM処理したC.ジェジュニのバイオフィルム形成を、上述のようにアッセイした。
【0116】
実施例5 バイオフィルム形成に対する培養上清液の効果
グラム陰性グラム陽性細菌培養上清液を、適切な培地中での24時間の増殖の後に収集した(表2)。5000gでの遠心分離によって細胞を除去し、上清培養液を0.22μmフィルターによってろ過した。上清又は接種されていない培地をMHBと1:1で混合した。C.ジェジュニをこれらの培地に接種し、上述のようにバイオフィルム形成をアッセイした。
【0117】
実施例6 C.ジェジュニflaAB及びluxS変異体の構築
鞭毛又はクオラムセンシング分子自己誘発物質2(AI2)をコードする遺伝子のC.ジェジュニ変異体を構築して、バイオフィルム形成におけるこれらの因子の役割を評価した。C.ジェジュニM129flaA及びflaB二重変異体を以下のように構築した。PCRを用いて、プライマー5’CTTTGGCTATCTCGAGACAGGCACTC 3’(配列番号3)及び5’AAGCTGCAAGCTTGGTGTTAATACGA 3’(配列番号4)でC.ジェジュニM129ゲノムDNA由来のflaAの5’末端を含む0.9kbの断片を増幅し、プライマー5’AAATCAGAGAATTCATTGGTTCGGTG 3’(配列番号5)及び5’TAACAACAGGATCCTCATAGGTCAGG 3’(配列番号6)でflaBの3’末端を含む0.9kbの断片を増幅した。得られた生成物を、それぞれXhoI HindIII及びEcoRI BamHIで消化した(プライマー配列中で制限酵素部位に下線を引く)。断片が耐性遺伝子を挟み、同じ方向に配向するように、pBC KSのHindIII及びEcoRI部位にクローニングされたカンピロバクター・コリaphA3カナマイシン耐性遺伝子を含むベクターpSJB21中に2つの断片を連続的にクローニングした。この対立遺伝子交換プラスミドをエレクトロポレーションによってC.ジェジュニ株M129に導入し、5%血液及び50μg/mlカナマイシンを補充したミュラーヒントンアガー上で推定上の変異体を選択した。対立遺伝子置換をPCR及びサザンブロットによって確認した。flaA及びflaBはC.ジェジュニ中で隣接しているので、得られたflaAB変異体は、両方の遺伝子を破壊して、flaAの5’末端及びflaBの3’末端のみを含んでいた。
【0118】
プライマー5’CTTCTTGTAACTCGAGTTGTCGTATC 3’(配列番号7)及び5’AATCAAATAAGCTTATATCATCACCC 3’(配列番号8)で増幅された、C.ジェジュニM129luxS遺伝子の5’末端、並びにプライマー5’GAACTTAAGAATTCCCAATGCGGAAC 3’(配列番号9)及び5’ATCTTTATGGGATCCTACGCCTTGAG 3’(配列番号10)で増幅された、luxSの3’末端に由来するPCR産物を、pSJB21にクローニングすることによって、同様にC.ジェジュニluxS変異体を構築した。次いで、得られたプラスミドを、上述のように対立遺伝子交換に用いた。
【0119】
実施例7 走査型及び透過型電子顕微鏡法
ミュラーヒントンブロス(MHB、Difco)中、37℃及び10%CO2で、振とうしながら0.25の600nmでの光学密度(OD600)まで、C.ジェジュニ分離株を一晩増殖させた。無菌のポリカーボネート膜及び3mlのMHBを含む35mmプレート(Corning)に、OD600=0.025(約2.5×107CFU)までC.ジェジュニ分離株の一晩培養物を接種した。プレートを10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。インキュベーションの後、C.ジェジュニバイオフィルムを含むポリカーボネート膜を無菌で除去し、固定のために、0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%ホルムアルデヒド1%グルタルアルデヒドに入れた。固定後の膜を、脱イオンH2O中の1%四酸化オスミウムを含む溶液に入れた。次いで、膜を、EtOH勾配1×80%5分間、2×95%5分間、2×100%5分間によって処理し、臨界点乾燥し、金でスパッタコートし、マウントし、走査型電子顕微鏡法によって観察した。バイオフィルムはまた、透過型電子顕微鏡法によっても観察した。培養物を上述のように増殖させた。24ウェルプレートを10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。インキュベーションの後、10μlのC.ジェジュニバイオフィルムを、Formvarコートされた400メッシュ銅格子上に1分間ピペッティングした。Whatmanろ紙を用いて液体を吸収し、2回すすいだ。すすいだ後、格子を、1%リンタングステン酸を用いてネガティブ染色した。種々の有益な倍率で画像を作成して、糸状構造の詳細を解明した。
【0120】
実施例8 線毛採取
NCTC株11168を、バイオフィルム形成条件下で72時間、225cm細胞培養フラスコ中で増殖させる。成熟したバイオフィルムを採取し、貯蔵し、遠心分離(30,000xg30分間)によって培地を除去する。ペレット化したバイオフィルムをエタノールアミン(0.4M、pH9.0)中に再懸濁し、機械的せん断によって細胞から線毛を除去する。次いで試料を遠心分離(2,500Xg、60分間)し、可溶化した線毛を含む上清を収集する。硫酸アンモニウムを45%飽和まで上清に添加し、溶液を4℃で一晩インキュベートして線毛を沈殿させる。遠心分離(30,000Xg、30分間)によって線毛を収集し、再蒸留H2O中に再懸濁させる。次いで、TEMを用いて粗試料を観察して、粗調製物中の繊維の存在を保証する。
【0121】
実施例9 バイオフィルム生成
1mlのミュラー−ヒントンブロスに.05のOD600までC.ジェジュニの一晩ブロス培養物を接種する。培養物は、バイオフィルム形成条件下(37℃、5%CO2)でインキュベートされたTPIGDPVL nである。24、48及び72時間の時点で、吸引によってブロスを除去し、無菌PBSでバイオフィルムを2回すすいで、非接着性細胞及び破片を除去する。次いで、得られたバイオフィルムをクリスタルバイオレットで染色し、405nm波長でプレートリーダーを用いて、生成されたバイオフィルムの量を測定する。
【0122】
実施例10 組換え線毛タンパク質発現及び生成
シグナル3Pソフトウエアを用いてcj1534c遺伝子の検索を行って、遺伝子中の任意のシグナル配列の存在を判定したが、同定されたものはなかった。理論に拘束されることを望むことなく、本発明者らは、本発明の線毛タンパク質遺伝子がIII型分泌タンパク質であると考えている。
【0123】
大腸菌において標準的な技術を用いて、遺伝子CJ1534cのコード領域全体を発現ベクターpTRC−HIS B(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)中にクローニングした。C.ジェジュニ線毛タンパク質遺伝子のPCR増幅のために、特異的プライマーを設計した。フォワードプライマー、cj1534F1、AAAAAAAGGAGGATCCCATGTCAGTTAC(配列番号11)及びリバースプライマー、cj1534R2、CATAAAGCCCGAATTCTTACATTTTG(配列番号12)。この戦略によって、コード配列の上流のBamH1部位及びコード配列の下流のEcoR1認識部位を導入した。制限切断部位は、PCR産物が発現プラスミドpTRC−HIS B中の適切なリーディングフレーム中にクローニングされるよう配置した。カスタムプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を配列決定して、正しい遺伝子が増幅されていることを保証した。次いで、BamH1及びEcoR1を用いて、PCR産物及び精製されたpTRC−HIS Bベクターを消化した。得られた消化を浄化及び脱塩し、次いで合わせてライゲートした。一旦ライゲートすると、cj1534cを含むベクターを脱塩し、大腸菌DH5α中にエレクトロポレーションした。プラスミドを含むコロニーを選択し、配列決定を行って、適切なプラスミド構築を保証した。
【0124】
次いで、得られたプラスミド構築物を配列決定して、遺伝子の適切な挿入を保証した。適切な構築物の確認の際に、1LのLBブロスに、.05のOD600まで、発現プラスミドを含む大腸菌を接種し、.8のODに達するまでインキュベート(37℃、150RPM)した。250nMの終濃度までIPTGを添加し、さらに3時間インキュベーションを継続した。次いで、遠心分離によって細胞を収集し、製造業者の使用説明書の通りにTALON(登録商標)アフィニティー精製(BD Biosciences−Clontech、カリフォルニア州パロアルト)を用いて、組換えタンパク質を収集した。次いで、タンパク質濃縮装置(Amincon Corporation、マサチューセッツ州ダンバース)を用いて、収集されたタンパク質を濃縮し、試料を配列決定して、適切なタンパク質生成を保証する。BCAアッセイを用いて全タンパク質生成を判定し、収集された試料全てを、無菌PBS又は再蒸留H2Oで1mg/mlの終濃度まで調節する。
【0125】
実施例11 ワクチンプロトコール
市販のブロイラーヒヨコを商業用の孵化場から購入する。到着の際に、クロシールスワブを行って、鳥がC.ジェジュニを含まないことを保証し、鳥を実験のために必要な群に分ける。食物及び水は随意に入手可能である。孵化の14日後に、ヒヨコに1回目のワクチンを施し、有害な副作用についてモニタリングする。最初のワクチン接種の10日後に、鳥にブースターワクチン接種を施し、再び副作用について観察する。ブースターワクチン接種の10日後に、ヒヨコにおよそ5×104CFUのC.ジェジュニを経口経管栄養によって負荷する。負荷の5日後に、陽性対照をスワブして、C.ジェジュニが流されていることを保証し、生細胞数を判定した。負荷の10日後に、鳥を人道的に屠殺し、盲腸を収集し、盲腸の内容物を除去し、段階希釈し、播種して、コロニー形成のレベルを数える。また、盲腸及び腸を全体的に調べて、非特異的病変形成が生じていないことを保証する。
【0126】
実施例12 リポソーム生成
市販のリポソーム調製物を購入し(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、製造業者の仕様書に従って使用する。リポソーム生成のために、5mg/mlの濃度で組換えタンパク質を使用する。リポソーム形成の完了の際に、体積を鳥1羽あたり1mlまで増大させ、経口経管栄養によって投与する。線毛タンパク質の用量は、約0.010〜約0.500mg、望ましくは約0.250mg/鳥である。
【0127】
実施例13 CTアジュバント
市販のコレラ毒素アジュバントを購入し(Sigma)、.033μg毒素/鳥の最終量まで、組換えタンパク質で希釈する。次いで、これを1mlの終体積まで希釈し、経口経管栄養によって投与する。
【0128】
実施例14 ニワトリのコロニー形成は、非線毛化株によるよりも線毛化C.ジェジュニによる方がより大きい。
C.ジェジュニ株NCTC11168の線毛タンパク質ノックアウト変異体を作製した。この変異体は、電子顕微鏡法によって判定すると、C.ジェジュニ細胞表面上での線毛の発現の欠乏を生じる。本発明の線毛タンパク質遺伝子は線毛タンパク質の発現に必要であり、これは18kDである。配列番号2及び表4中にアミノ酸配列を提供する。
【0129】
非線毛化変異体株を2週齢のヒヨコに導入し、並行した実験において、野生型NCTC11168を他の2週齢のヒヨコに導入した。非線毛化変異体株を施されたヒヨコにおいて、全体的減少(少なくとも1000倍)が観察された。野生型株が導入された全てのヒヨコはコロニー形成された(14/14)。非線毛化変異体を負荷されたヒヨコについては、5/14のみがコロニー形成された。このことから、Cj1534遺伝子(コード配列、配列番号1)の変異によって、変異体がヒヨコにコロニー形成する能力が減少することが示される。このタンパク質を含む免疫原性組成物は、C.ジェジュニによるヒト及び動物のコロニー形成及び/又は感染を減少させるのに有効である。農業用の動物の減少したコロニー形成は、食品の微生物的品質を向上させ、C.ジェジュニでの環境汚染を減少させるであろう。かかる免疫原性組成物が投与されたヒトは、C.ジェジュニによって引き起こされた疾患の、減少した発生率及び/又は重症度を有するであろう。
【0130】
実施例15 抗体判定のためのElisa
96ウェルマイクロタイタープレートを、適切な抗原(組換え又は天然のタンパク質のいずれか)で一晩コートする。非接着性の抗原をプレートから洗い流し、ワクチン接種された動物由来の一次抗体を1%ウシ胎仔血清(FBS)で段階希釈(2倍)し、マイクロタイタープレートに添加する。一晩インキュベートした後、非接着性の一次抗体をプレートから洗い流し、1%FBSで1:400に希釈した二次抗体を添加する。二次抗体は市販されており(KPL)、種々の動物種(ニワトリを含む)から産生された抗体を認識し、酵素と結合している。4時間のインキュベーションの後、プレートを洗い流し、発色基質を各ウェルに添加する。目的の抗体がウェル中で抗原コーティングに結合している場合、二次抗体に連結された酵素は基質を切断し、発色を生じ、これは存在する抗体のレベルに比例し、目的の結合している抗体の定量を可能にするか、又は、このシステムは定量アッセイにおいて機能することができる。
【0131】
組換え線毛タンパク質に応答して生じる抗血清は、組換え線毛タンパク質並びに天然のC.ジェジュニ線毛を認識した。組換え線毛タンパク質を皮下でワクチン接種されたヒヨコから調製された血清を分析すると、組換え及びバイオフィルム線毛タンパク質抗原の両方と反応することが見出された。組換え線毛タンパク質を含むリポソームをワクチン接種されたヒヨコ由来の便物質由来の抗体(IgA)は、組換え線毛と反応した(ワクチン接種されていないヒヨコの反応より3倍増大)。
【0132】
実施例16 差次的遺伝子発現
プレート上で発現されたC.ジェジュニ遺伝子のものに対してヒヨコモデル及び24時間のバイオフィルムにおいて異なった形で発現されるC.ジェジュニ遺伝子を同定し、上方制御された遺伝子について比較を行った。2羽の15日齢ブロイラーニワトリに107個のC.ジェジュニを経口接種によって感染させ、C.ジェジュニRNAの抽出のために、感染の10日後に盲腸内容物を収集した。ミュラーヒントンブロスに、C.ジェジュニを接種し、24時間のバイオフィルムからRNAを抽出した。in vivoで得られたRNA及びプレート増殖させた細胞から抽出されたRNAを、cDNA合成及び標識化に供した。Combimatrix DNAマイクロアレイスライドでハイブリダイゼーション実験を行った。データ抽出のためにCombimatrix Microarray Imagerを利用し、GeneSpringソフトウエアを用いて、識別的発現についてデータを分析した。
【0133】
各動物モデルについてのハイブリダイゼーションのために、2枚のスライドを用い、各スライドは1アレイあたり6,000個の独自のプローブ(2つ組)〜合計12,000個のプローブからなった。主なデータ又は対照データのいずれかを表す色素(Cy3、Cy5)をスライド間で切り替えた。中央値データ(対平均データ)を利用して、異常値に対する感度を最小限にした。データの正規化の後に、cj1534遺伝子に特異的な、スライド1枚あたり4つの独自のプローブ(合計8つのプローブについて)が、ヒヨコモデルにおいて平均7.0倍(2.1〜16.4の範囲)及び24時間のバイオフィルムにおいて平均1.8倍(1.3〜2.2の範囲)過剰発現した。このデータは、cj1534遺伝子がトリ宿主のコロニー形成に関与していることを支持する。
【0134】
実施例17 抗体判定のためのElisa
96ウェルマイクロタイタープレートを、適切な抗原(組換え又は天然のタンパク質のいずれか)で一晩コートする。非接着性の抗原をプレートから洗い流し、ワクチン接種された動物由来の一次抗体を1%ウシ胎仔血清(FBS)で段階希釈(2倍)し、マイクロタイタープレートに添加する。一晩インキュベートした後、非接着性の一次抗体をプレートから洗い流し、1%FBSで1:400に希釈した二次抗体を添加する。二次抗体は市販されており(KPL)、種々の動物種(ニワトリを含む)から産生された抗体を認識し、酵素と結合している。4時間のインキュベーションの後、プレートを洗い流し、発色基質を各ウェルに添加する。目的の抗体がウェル中で抗原コーティングに結合している場合、二次抗体に連結された酵素は基質を切断し、発色を生じ、これは存在する抗体のレベルに比例し、目的の結合している抗体の定量を可能にするか、又は、このシステムは定性的なアッセイにおいて機能することができる。
【0135】
組換え線毛タンパク質に応答して生じる抗血清は、組換え線毛タンパク質並びに天然のC.ジェジュニ線毛を認識した。組換え線毛タンパク質を皮下でワクチン接種されたヒヨコから調製された血清を分析すると、組換え及びバイオフィルム線毛タンパク質抗原の両方と反応することが見出された。高用量のC.ジェジュニ(約105個)を負荷された、ワクチン接種されたヒヨコは、対照ヒヨコよりも平均25%少ない、コロニー形成した細菌を有した。特に、ワクチン接種されたヒヨコのサブセットは、1〜4桁まで少ない、コロニー形成したC.ジェジュニを有したが、ワクチン接種されたヒヨコの何羽かは、対照のものと同様の数を有した。理論に拘束されることを望むことなく、負荷用量が、天然の感染の結果を適切に予測するのには高すぎたと考えられる。
【0136】
組換え線毛タンパク質を含むリポソームをワクチン接種されたヒヨコ由来の便物質由来の抗体(IgA)は、組換え線毛と反応した(ワクチン接種されていないヒヨコの反応より3倍増大)。
【0137】
本明細書中の記載はある特定の情報及び実施例を含むが、これらは本発明の範囲を限定するものとしてではなく、単に本発明の現在好ましい実施形態のいくつかの例示を提供するものとして解釈されるべきである。例えば、したがって、本発明の範囲は、示された実施例によってではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によって決定されるべきである。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
文献目録
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【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、本開示と不一致のない程度まで、参照により本明細書に援用される2006年7月10日に出願した米国特許仮出願第60/819,589号明細書の恩恵を主張するものである。
【0002】
[連邦支援を受けた研究又は開発に関する申告]
本発明は、米国農務省により与えられたUSDA/CSREES認可番号第2005−51110−02333号の下での米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
[付属の配列表、表、又はコンピュータプログラムを載せたコンパクトディスクの参照]
添付して同日付に提出した配列表は、参照により本明細書中に援用される。
【0004】
[発明の背景]
本発明の分野は、免疫原性組成物、方法、ワクチン、及び細菌毒性決定基をコードする遺伝子、特にカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)又はカンピロバクターの他の種の線毛タンパク質をコードする遺伝子並びにかかる線毛タンパク質を含む免疫原性組成物の分野である。
【0005】
C.ジェジュニはグラム陰性で、極性鞭毛を有するらせん状の杆体に湾曲しており、37℃〜42℃の範囲の微好気性環境において最もよく増殖する(4、7、12、23、26)。米国において、毎年およそ210万〜240万件のカンピロバクター症が起こっており、80億ドルの費用がかかっていると推定されている(16、17)。
【0006】
カンピロバクター症は、無症候性であるか、又は様々な症状を生じるかのいずれかの場合がある。発展途上国において、感染は無症候性である場合があるか、又は比較的軽度の下痢を生じる場合がある。先進国において、カンピロバクター感染は、血液又は粘膜あり又はなしの下痢、嘔吐、筋痙攣及び発熱によって特徴付けられる、自己限定性の胃腸感染症として存在する。症候性感染は、水様下痢、腹痛、発熱、並びに便試料中の血液及び白血球の存在の急性発症からなり、通常自己限定性であり、2〜11日間続くが、免疫無防備状態の個体においては、感染は3カ月より長く持続する場合がある(4、6、16)。感染の長期の副次的効果としては、反応性関節炎、ライター症候群、HLA B27陽性患者における眼炎、及びギランバレー症候群が挙げられる(15、18)。
【0007】
カンピロバクターは、多数の家畜及び鳥の腸の正常細菌叢と見なされている(1、2、5、8、31)。これらの鳥がカンピロバクターを流す能力は、水路又は水系の汚染を引き起こし、そのようにして、他の動物又はヒトについての汚染の源として作用する場合がある。カンピロバクター感染は、汚染された水、殺菌されていない乳又はチーズの摂取、家禽等の加熱が不十分な、又は生の食物を消費することを含む、経口経路によって生じる(5、8、31)。しかしながら、生乳及び加熱が不十分な家禽の消費は、カンピロバクター感染の主な源である。C.ジェジュニがバイオフィルムを形成することができる能力並びに家畜及びヒトへの接種の継続的な源になることはまた、他の研究の対象であった(8、31)。C.ジェジュニは、畜産施設及び動物加工工場の散水供給及び配管システムにおいてバイオフィルムを形成する能力を有し、そのようにして、感染及び汚染の源になる(8、31)。しかしながら、この可能性は、C.ジェジュニが非生物表面上でバイオフィルムを形成することができることを示す非常に限られた数の刊行物によって支持されている。
【0008】
医療費のために、当技術分野において、家禽及び/又はウシの、C.ジェジュニのコロニー形成を減少させるため並びにC.ジェジュニ感染の発生率を減少させるために有効なワクチンの必要性がある。
【0009】
[発明の概要]
本発明の目的は、カンピロバクター・ジェジュニ由来の線毛タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供することである。特に例示されているように、コードされる線毛タンパク質は、配列番号1に示されるようなコード配列を有する。コードされる線毛タンパク質は、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列を有する。特に例示されている配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するコード配列及びアミノ酸配列は、本発明の範囲内である。
【0010】
本発明のC.ジェジュニ線毛タンパク質の組換え生成のための天然に存在しない(「組換え」)核酸分子、及びこのタンパク質を組換えによって生成するための方法を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0011】
当業者は、例示されている線毛タンパク質のコード配列及びアミノ酸配列を用いて、配列番号2に示されるような同じアミノ酸配列、又はそれに対して70%、80%、85%、90%、95%(及び70〜100の間の全ての整数パーセンテージ)より同一性が大きく同等な生物活性を有するアミノ酸配列のタンパク質をコードする、さらなる例示されていないヌクレオチド配列を同定及び単離することができることを理解する。本発明の線毛タンパク質をコードする配列が発現されることが所望される場合、当業者は、コード配列が発現される宿主細胞によって調節配列が決定されるような選択で、転写及び翻訳制御調節配列をコード配列に動作可能に連結させる。C.ジェジュニ線毛タンパク質コード配列を保有する組換えDNA分子に関して、当業者は、宿主細胞中に導入することができ、宿主細胞中で複製することができる、ベクター(例えばプラスミドベクター又はウイルスベクター)を選択することができる。宿主細胞は、細菌、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)若しくは非毒性のサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、又は、或いは、酵母若しくは哺乳動物細胞であってもよい。
【0012】
別の実施形態において、例えばタンパク質融合又は欠失を含む、線毛タンパク質をコードする組換えポリヌクレオチド、並びに発現系が提供される。発現系は、適切な宿主細胞に形質転換された場合に本発明の線毛タンパク質又は機能的に同等なタンパク質を発現することができるポリヌクレオチドとして定義される。組換えポリヌクレオチドは、天然のC.ジェジュニ線毛タンパク質をコードするポリヌクレオチド又はその断片に、相当類似したヌクレオチド配列を有する。発現は、通常遺伝子と関連するプロモーターの制御下にあってもよく、又は、線毛タンパク質コード配列は、異種プロモーター(天然には線毛タンパク質コード配列と関連しないもの)の調節制御下で発現されてもよい。線毛タンパク質生成のための好ましい腸内細菌宿主株は、大腸菌の株である。
【0013】
本発明によって、当業者に十分理解されている標準的な条件を用いて、C.ジェジュニゲノムDNA、本発明の線毛タンパク質をコードするクローン化DNA(又は同族のmRNA)に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドがさらに提供される。これらの線毛タンパク質特異的配列はまた、線毛タンパク質コード核酸の増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における使用のためのプライマーの調製において使用することができる。ハイブリダイゼーション又はPCRのいずれかを、生物学的試料、食物試料、チーズ試料、水試料、便試料若しくは環境試料中のC.ジェジュニの検出又はC.ジェジュニによって引き起こされる疾患の診断における使用に適応させてもよい。
【0014】
ポリヌクレオチドとしては、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成形態、並びに混合ポリマー、センス及びアンチセンス鎖の両方が挙げられ、化学的若しくは生化学的に修飾されていてもよく、又は非天然若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでもよい。DNAが好ましい。線毛タンパク質の一次配列中の変化によって、防御免疫を誘発することができるエピトープ(複数可)が変化しない限り、1つ若しくは複数のヌクレオチドの欠失、挿入、置換を含むがこれらに限定されない、又は他のポリヌクレオチド配列への融合による、野生型C.ジェジュニ線毛タンパク質コード配列の変化のように、他の状態では天然に存在しない配列を含む組換えポリヌクレオチドもまた本発明によって提供される。
【0015】
本発明はまた、C.ジェジュニ線毛タンパク質又はその抗原部分を含む融合ポリペプチドを提供する。異種融合は、それらが由来するタンパク質の特性又は活性の組合せを示すよう構築してもよい。可能性のある融合パートナーとしては、限定されないが、免疫グロブリン、ユビキチン、細菌性β−ガラクトシダーゼ、trpE、プロテインA、β−ラクタマーゼ、αアミラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ及び酵母α接合因子(Godowskiら(1988年)Science、241:812〜816ページ)又は種々のタンパク質「タグ」配列(特に当技術分野で公知の鞭毛抗原、ポリ−ヒスチジン、ストレプトアビジン、グルタチオンS−トランスフェラーゼ)が挙げられる。融合タンパク質は、典型的には組換え方法によって作製されるが、当技術分野で周知のように化学的に合成してもよい。
【0016】
限定されないが、天然に発現されたC.ジェジュニ線毛又は組換えC.ジェジュニ線毛タンパク質及び適した担体を含むワクチンを含む、組成物及び免疫原性調製物が本発明によって提供され、これらの組成物及び調製物は、有利に、少なくとも1つのアジュバントをさらに含んでもよい。発現された線毛タンパク質(例えば、バイオフィルム中)を有する、線毛を発現している弱毒化生カンピロバクター、又は線毛タンパク質を含む死滅細胞バイオフィルム物質を含む免疫原性組成物もまた、本発明によって包含される。かかる組成物は、例えばC.ジェジュニによる感染に起因する下痢性疾患に対してヒトを免疫化すること又は家禽若しくはウシにおけるC.ジェジュニの発生率を減少させて食品中及び環境中の汚染を減少させることにおいて、有用である。調製物は、免疫原性量の本発明の線毛タンパク質又はその免疫原性断片を含む。かかる免疫原性組成物は、有利に、1つ若しくは複数の他の血清型の線毛タンパク質若しくはその抗原決定基又はC.ジェジュニ由来の他の抗原性物質をさらに含んでもよい。「免疫原性量」によって、抗体の産生を誘発することができる、好ましくはC.ジェジュニによる免疫原性組成物中と同じ線毛タンパク質又は免疫学的に交差反応性の線毛タンパク質でのコロニー形成又は感染に対する防御免疫を与えることができる量が意味される。免疫原性組成物は、アジュバント、例えば、粘膜投与のために設計された組成物のために、コレラ毒素又はコレラ毒素サブユニットBをさらに含んでもよい。
【0017】
本明細書中に教示されているようなC.ジェジュニ線毛タンパク質を含む免疫原性組成物を家禽又はウシに投与することによって家禽中又は牛肉中又は乳牛中のC.ジェジュニの発生率を減少させるための方法もまた、本発明の範囲内である。投与の経路は、粘膜(特に経鼻又は経口)であってもよく、又は、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内若しくは非経口であってもよい。同様に、好ましくは粘膜投与によって、かかる免疫原性組成物を、それを必要とするヒトに投与することによって、カンピロバクター感染及び疾患のヒト発生率を減少させることができる。
【0018】
本発明は、線毛タンパク質に特異的に結合する抗体、並びにC.ジェジュニを、特にバイオフィルム及び/若しくは食品中で検出するため、又はカンピロバクター感染を診断するための方法をさらに提供する。また、線毛タンパク質を、免疫応答をモニタリングするため又はそれに対する抗体を検出するための方法において使用して、例えば、カンピロバクターへの曝露を評価すること又は免疫応答の発生を追跡することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】C.ジェジュニバイオフィルム形成に対する増殖培地の効果を示す図である。MHB、ブルセラ及びボルトンブロスを、CV染色によって測定して、それらがC.ジェジュニM129バイオフィルム形成を促進できるかどうかについて評価した。3つの別々の場合で、3点1組で実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図1B】クリスタルバイオレット(CV)染色によって測定した、C.ジェジュニM129バイオフィルム形成に対する温度及びO2分圧の効果を示す図である。増殖条件は、C.ジェジュニM129の増殖に適しており、例えば37℃及び10%CO2等は、よりよいバイオフィルム形成を生じた。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図2A】図2Aはショ糖又はグルコースの効果を示す図であり、図2Bは、CV染色によって測定して、C.ジェジュニM129がバイオフィルムを形成することができるかどうかに対する、NaClの効果を示す図である。図2Aにおいて、白色の棒はショ糖を表し、灰色の棒はグルコースを表す。図2Bは、種々の濃度のNaClでのバイオフィルム形成の程度を示す。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図2B】図2Aはショ糖又はグルコースの効果を示す図であり、図2Bは、CV染色によって測定して、C.ジェジュニM129がバイオフィルムを形成することができるかどうかに対する、NaClの効果を示す図である。図2Aにおいて、白色の棒はショ糖を表し、灰色の棒はグルコースを表す。図2Bは、種々の濃度のNaClでのバイオフィルム形成の程度を示す。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図3】CV染色によって測定すると、C.ジェジュニM129が非生物表面上にバイオフィルムを形成することを示す図である。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図4】クロラムフェニコールがC.ジェジュニM129及びF38011のバイオフィルム形成を阻害することを示す図である。C.ジェジュニ株を、0.5μg/mlクロラムフェニコールで15分間処理してから、抗生物質の非存在下でバイオフィルム形成についてアッセイした。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。
【図5A】C.ジェジュニM129鞭毛の存在がバイオフィルム形成に正の影響を及ぼすことを示す図である。図5A:CV染色の関数としてのバイオフィルム形成。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。図5B:脱色(decolorization)前のCV染色を示す、インキュベーション後24、48、及び72時間で示される代表的なウェル。
【図5B】C.ジェジュニM129鞭毛の存在がバイオフィルム形成に正の影響を及ぼすことを示す図である。図5A:CV染色の関数としてのバイオフィルム形成。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。図5B:脱色前のCV染色を示す、インキュベーション後24、48、及び72時間で示される代表的なウェル。
【図5C】C.ジェジュニM129クオラムセンシング能力がバイオフィルム形成に正の影響を及ぼすことを示す図である。図5C:CV染色によって測定されたバイオフィルム形成。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの1つの標準偏差を表す。図5D:脱色前のCV染色を示す、インキュベーション後24、48、及び72時間で示される代表的なウェル。
【図6】グラム陰性及びグラム陽性細菌由来の培養上清液が、C.ジェジュニM129バイオフィルムの形成に影響を及ぼす場合があることを示す図である。シュードモナス(Pseudomonas)種及びA.ピオゲネス(A.pyogenes)由来のCSFは、C.ジェジュニバイオフィルム形成を促進する。MHB、及びP.エルギノーサ(P.aeruginosa)9027、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)PF5、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)CV206、A.ピオゲネスBBR1又はC.パーフリンジェンス(C.perfringens)株13由来のCSFの1:1混合物中で、C.ジェジュニM129でバイオフィルムアッセイを行った。5%新生仔仔ウシ血清を補充したTSB(TSB5%)並びに0.5%酵母抽出物及び0.05%システインを補充したTSB(YSBYC)を、それぞれA.ピオゲネス及びC.パーフリンジェンスCSFの対照として使用した。3点1組で3回実験を行い、エラーバーは平均からの標準偏差を表す。
【図7】C.ジェジュニ分離株が非生物表面上でバイオフィルムを形成することを示す図である。C.ジェジュニ分離株によるバイオフィルム形成は毒性と相関しない。3点1組で3回実験を行った。エラーバーは平均からの標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
C.ジェジュニがバイオフィルムを形成することができるかどうかを研究する間に、これらの細菌が、極性鞭毛に加えて、非極性の線毛を生成することが発見された。線毛は、無鞭毛のflaAB二重変異体中、並びに野生型株中で生成された。
【0021】
環境因子及び培地成分がバイオフィルム形成に影響を及ぼす場合があるので、本発明者らは、種々の槽培地条件を、C.ジェジュニM129バイオフィルム形成に対するそれらの効果について試験した。MHB、ブルセラ及びボルトンブロスを、それらがバイオフィルム形成を促進することができるかどうかについて評価した。栄養分豊富な方のブルセラ及びボルトンブロスは最適なバイオフィルム形成を支持しなかったが、比較的低栄養のMHBにおいては有意なバイオフィルム形成が起こった(図1A)。
【0022】
インキュベーション温度及び酸素分圧もまた、バイオフィルム形成に影響を及ぼす場合がある(図1B)。種々の組合せの温度及び酸素付加でC.ジェジュニバイオフィルム形成をアッセイした。好気生活及び温度の影響は、バイオフィルム形成に大きな効果を有した。予想されたように、より有利さの低い増殖条件下で、バイオフィルム形成は減少した。
【0023】
バイオフィルム形成に影響を及ぼすことができるかどうかに関する、浸透圧調節物質であるグルコース、ショ糖及びNaClに対するC.ジェジュニの応答もまた、調べた。図2A及び2Bに示されるように、グルコース、ショ糖又はNaClの存在は、試験した全ての濃度で、有意に減少したバイオフィルム形成を生じた。したがって、環境条件、並びに培地成分は、C.ジェジュニがバイオフィルムを形成することができるかどうかに影響を及ぼす。
【0024】
非生物表面上でのバイオフィルム形成を研究した。C.ジェジュニM129細胞は、種々の量で、ガラス及び銅等の種々の親水性物質並びにポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS及びPVCを含むプラスチック等の疎水性物質上でバイオフィルムを形成した。C.ジェジュニM129がバイオフィルムを形成することができるかどうかをさらに研究するために、ABS、PVC、銅等の、散水システムにおいて一般に使用される物質、並びに対照物質であるポリスチレンを、それらのバイオフィルム形成の促進について定量的にアッセイした(図3)。物質の物理化学的特性がC.ジェジュニによる接着及びバイオフィルム形成に影響を及ぼす可能性があるようであった。C.ジェジュニ細胞は、種々の程度ではあったが、疎水性表面上でより容易に接着し、バイオフィルムを形成した。特に、C.ジェジュニは親水性物質である銅上でバイオフィルム形成の減少を示した。
【0025】
バイオフィルム形成にはタンパク質合成が必要である。遺伝子発現試験から、プランクトン様(浮遊している)対バイオフィルム増殖細胞による、合成されたタンパク質のプロフィールに違いがあることが示され、ある種のタンパク質の新規合成がバイオフィルム形成に必要であるかもしれないことが示唆される(9、10、19)。タンパク質合成阻害剤はバイオフィルム形成を顕著に減少させ、接着した細菌の、バイオフィルムからの遊離を引き起こす場合もある。したがって、いかなる特定の理論に拘束されることも望むことなく、本発明者らは、バイオフィルム中で増殖したC.ジェジュニが、特定の条件下でこの増殖期に必要なタンパク質を合成するという仮説を立てた。クロラムフェニコール(CM、0.5μg/ml)の存在下又は非存在下でC.ジェジュニ細胞をインキュベートした場合、CMで処理した細胞の間に、未処理の対照と比較して、バイオフィルム形成の違いが観察された(図4)。これらの結果から、C.ジェジュニ細胞が、適切なシグナル及び増殖条件に応答して、接着及びバイオフィルム形成に必要なタンパク質を合成することが示される。
【0026】
鞭毛は、表面に関連する力を克服することによって、バイオフィルム形成に関与し、接着の速度に影響を及ぼすことが示されている(12、14、21、22)。この研究において、C.ジェジュニ鞭毛欠損変異体(M129::flaAB)を、それがバイオフィルムを形成することができるかどうかについてアッセイした。M129::flaABは、24時間では野生型のものと比較してバイオフィルム形成のわずかな減少を示したが、48及び72時間の時点で、バイオフィルム形成は顕著に減少した(図5A〜5D)。本発明者らはまた、光学顕微鏡法を用いて、flaAB変異体及び野生型M129がポリスチレン表面に接着することができるかどうかを直接評価した(図5C〜D)。図5Bは、野生型M129についての、24、48及び72時間にわたる接着細胞の増大を示す。しかしながら、鞭毛ノックアウトにおいて、本発明者らは、野生型と比較して、48及び72時間で表面に接着している細胞がほとんどないことを観察した。このデータから、C.ジェジュニバイオフィルム形成における鞭毛の重要性が示される。
【0027】
luxS及びクオラムセンシングシグナルは、バイオフィルム形成に影響を及ぼす場合がある。クオラムセンシングがC.ジェジュニバイオフィルムに関与する可能性をアッセイするために、luxSクオラムセンシング遺伝子に変異を導入した結果、変異細胞において自己誘発物質2(AI2)が生成されなかった(11)。バイオフィルム発生の間、AI2は、48及び72時間の時点のように、C.ジェジュニバイオフィルム発生において重要な役割を果たし、luxS変異体については、野生型C.ジェジュニと比較して、バイオフィルム形成の減少があった(図5A〜5D参照)。
【0028】
バイオフィルム中で細胞がごく接近しているために、バイオフィルムは、クオラムセンシングが起こるのに理想的な環境である(3、32)。この研究の間、適切な培地中で増殖させた種々のグラム陰性及びグラム陽性細菌由来のCSFを、バイオフィルム発生に有利な条件から収集した。C.ジェジュニ分離株M129を、これらの培養上清液の存在下で増殖させ、いくつかはクオラムセンシングシグナル又は自己誘発物質を含むと考えられた。シュードモナス種及びアルカノバクテリウム・ピオゲネス(Arcanobacterium pyogenes)BBR1の存在下で、培養上清液がバイオフィルム発生の増大を引き起こすのが観察されたが、収集された他の培養上清液では、バイオフィルム発生の明白な変化がなかった(図6)。しかしながら、これらの培養上清液の正確な組成は研究において定義されていなかった。理論に拘束されることを望むことなく、環境中で一般に見られるシュードモナス種、並びに家畜及び野生動物に一般に生息しているアルカノバクテリウム・ピオゲネスは、C.ジェジュニが認識して接着及びバイオフィルム形成に必要な遺伝子(複数可)の転写を活性化する、一般的なシグナルを有すると考えられている。
【0029】
線毛は、バイオフィルム形成に関与するようである。走査型及び透過型電子顕微鏡法によってC.ジェジュニバイオフィルムを研究するよう設計された実験において、本発明者らは、種々のC.ジェジュニ分離株において表面と相互作用し、細胞間で相互作用する、周毛性の線毛の存在を観察した。示された糸状構造が線毛であって鞭毛でないかどうかを判定するために、鞭毛欠損変異体(M129::flaAB)を構築し、それが線毛を生成することができるかどうかについてアッセイした。鞭毛欠損変異体は、その野生型親のように、周毛性の線毛を生成した。
【0030】
クオラムセンシングシグナルは、バイオフィルム形成に影響を及ぼす。クオラムセンシングがC.ジェジュニバイオフィルムに関与する可能性をアッセイするために、クオラムセンシングシグナル分子AI2の生成を欠いたluxS変異体を構築した(33)。AI2は、48及び72時間の時点のように、C.ジェジュニバイオフィルム発生において重要な役割を果たし、野生型C.ジェジュニM129と比較して、luxS変異体についてはバイオフィルム形成の減少があった(図5B)。この観察を確かめるために、luxS変異体を、1:1でMHBと混合した野生型M129由来の培養上清液の存在下で増殖させた。M129は、クオラムセンシング分子を生成するのに有利な条件下で増殖させた。野生型M129CSFの存在下で、luxS変異体バイオフィルムの増大が観察された。luxS変異体は、野生型と比較して、増殖は欠損していなかった。
【0031】
単一の細菌種を含む環境性のバイオフィルムはほとんどなく、細胞が互いにごく接近しているバイオフィルムの構造は、種間シグナル伝達に適している(13、34)。この研究の間、培養上清液を、クオラムセンシング分子の発現に有利な条件下で増殖させた種々のグラム陰性及びグラム陽性細菌から調製した。C.ジェジュニ分離株M129を、C.ジェジュニの増殖を支持するのに必要な、MHBと1:1で混合したこれらのCSFの存在下で増殖させた。シュードモナス種及びアルカノバクテリウム・ピオゲネスBBR1 CSFの存在下で、バイオフィルム発生の増大が観察されたが、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)及びクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のCSFは、バイオフィルム発生に対して明白な効果を有さなかった。
【0032】
バイオフィルム形成における毒性遺伝子発現の役割を研究した。毒性遺伝子がC.ジェジュニバイオフィルムに関与する可能性をアッセイするために、3型分泌系タンパク質の生成並びにH.ピロリ(H.pylori)tlyAにおけるコロニー形成及び溶血作用に関連する遺伝子を欠いた、ciaB及びtlyA変異体を構築した。tlyAはC.ジェジュニにおける、特徴付けられていない遺伝子であり、したがって、バイオフィルム形成においてそれが果たす正確な役割は未知である。ciaBは、バイオフィルム形成に関与していないようであるが、tlyAはわずかな増大を示した。
【0033】
複数のC.ジェジュニ分離株がバイオフィルムを形成する。臨床分離株及び非病原性C.ジェジュニ分離株がバイオフィルムを形成することができるかどうかを判定した。バイオフィルム形成は、C.ジェジュニ分離株の病原性と相関しないようであった。分離株S2Bは、M129及び他のヒト臨床分離株と同様の程度までバイオフィルムを形成することができた。しかしながら、最近のヒト臨床分離株であるUMC3は、試験されたうちバイオフィルム形成が最も乏しかった。NCTC11168は、PSに接着しないと報告されている。NCTC11168は、実験室の継代の際に運動性を失うことが周知であり、異なる結果は、2つの分離株のかかる差異を反映している可能性がある。
【0034】
臨床分離株及び非病原性C.ジェジュニ分離株がバイオフィルムを形成することができるかどうかを判定した。バイオフィルム形成は、C.ジェジュニ分離株の病原性と相関しないようであった。非病原性分離株S2Bは、M129及び他の臨床分離株と同様の程度までバイオフィルムを形成することができた。しかしながら、UMC3株は、患者から分離されたものであり、試験されたうち最もバイオフィルム形成が乏しかった。
【0035】
免疫量の、鳥1匹あたり0.15mgの線毛タンパク質を7及び17日齢で皮下投与して、予備実験を行った。24日齢で、ニワトリに5×108個の細胞の野生型C.ジェジュニ(線毛タンパク質が由来するものと異種である)を負荷した。35日目に、ヒヨコを屠殺し、平均して、対照鳥は盲腸においていくらか高い平均数の生細胞を有したが、免疫化されたヒヨコは、より少ない数の細胞を有し、19匹中4匹のヒヨコは、生きているC.ジェジュニの少なくとも100倍の低下を有した。理論に拘束されることを望むことなく、本発明者らは、細菌の負荷量が、強い明白な防御を可能にするのに高すぎたと考えている。
【0036】
考察
重要なヒト腸内病原体としてのカンピロバクター種の認識は、この20年の間に起こっただけであり、現在のところこの生物の病因及び毒性因子について、ほとんど知られていない。最も知られていない因子の1つは、C.ジェジュニが非生物表面及び生体表面上でバイオフィルムを形成することができるかどうかである。C.ジェジュニバイオフィルムの開始の原因である環境因子の同定は、宿主外でのこの生物の生存能力を研究するために、最も重要である。この病原体によるバイオフィルム形成の阻害は、消費及び交際(companionship)のための種々の家畜のコロニー形成並びにヒト感染の源として機能する我々の水路の汚染を潜在的に予防することができよう。
【0037】
それらの天然の環境において、細菌はしばしば、栄養飢餓、浸透圧変化、温度変動及び多様な酸素分圧を含む環境ストレスを負荷される(10、13、14、19、20、25、26)。細菌は、固着の生活様式への遷移があるように、環境変化に応答してバイオフィルムを形成すると考えられている(14、19、22、24、28)。バイオフィルム形成に影響を及ぼす他の因子としては、基層特性、水力学、基層の条件付け及び槽培地の特徴が挙げられ(3、10、19、27)、これらは全て細菌の接着及びバイオフィルム形成の速度に関与している。いくつかのバイオフィルムモデルにおいて、イオン強度及び栄養分濃度の変化は、細菌が表面に接着及びバイオフィルムを形成する速度に影響を及ぼした(10、13、14)。環境因子及び培地の内容物がバイオフィルム形成に影響を及ぼす可能性があるので、本発明者らは、種々の槽培地条件を、それらのC.ジェジュニバイオフィルムに対する効果について試験した。得られた結果から、より栄養分豊富な培地は、最適なバイオフィルム形成を支持しないことが示され、水系に見られるもの等の栄養分に乏しい環境がC.ジェジュニバイオフィルムの発生に有利である可能性があるという結論が導かれた。本発明者らはまた、種々の濃度の、浸透圧調節物質であるグルコース、ショ糖及びNaClに対するC.ジェジュニバイオフィルム形成の応答を調べた。これらの浸透圧調節物質のそれぞれのレベルの増大は、バイオフィルム形成の顕著な減少を引き起こした。減少したバイオフィルム形成は、杆体形状又はらせん状の細胞から球菌様への形態変換の結果である可能性がある。球菌様形態は、浸透圧適応が必要な期間中に細胞膜への損傷及び細胞成分の分解が生じる場合がある、変性細胞形態を表す場合がある。
【0038】
インキュベーション温度及び酸素分圧もまた、バイオフィルム形成に影響を及ぼす場合がある。しかしながら、C.ジェジュニ生存及びバイオフィルムに対する好気生活の直接の影響に関して行われた研究はほとんどない。海洋及び他の水域環境において、溶存酸素濃度は、より低い水流速度、上昇した温度、有機物及び減少した乱れによって減少する場合がある(6)。C.ジェジュニの微好気性及び好熱性の性質に沿って、より低い酸素分圧及びより高い温度がバイオフィルムに有利であったが、高い周囲温度、好熱性温度及び/又は好気状態は、バイオフィルム形成を阻害した。
【0039】
表面の物理化学的特性は、C.ジェジュニ接着に影響を及ぼす場合がある。C.ジェジュニは、種々の程度で疎水性及び親水性表面に接着することができた。したがって、C.ジェジュニは、疎水性及び親水性表面と関連した斥力を克服する能力を有するようである。これらの斥力を克服するのを助けることができる因子のいくつかとしては、鞭毛の存在及びエキソ多糖類(EPS)の生成が挙げられる(10、12、14、24)。細菌表面の疎水性は、接着において重要な場合がある。細菌は負に帯電している傾向があるが、それらは表面と相互作用することができる鞭毛等の疎水性表面成分を含む(10、30)。研究から、タンパク質合成阻害剤での細菌の処理によってバイオフィルム形成を顕著に減少させることができ、接着した細菌の遊離を引き起こすことができることが示されている(3、10、21)。CMとのC.ジェジュニ細胞のプレインキュベーションによってバイオフィルム形成が阻害され、C.ジェジュニ細胞が適切なシグナル及び増殖条件に応答して接着及びバイオフィルム形成に必要なタンパク質を合成することが示唆された。
【0040】
多くの細菌種の鞭毛は、バイオフィルム形成及び表面への接着の速度において重要な役割を有する(10、21、22)。この研究において、C.ジェジュニ鞭毛欠損変異体(M129::flaAB)は、野生型株と比較してバイオフィルム形成が減少した。鞭毛ノックアウトは、24時間で野生型のものと比較してバイオフィルム形成のわずかな減少を示したが、48及び72時間の時点ではバイオフィルムは顕著に減少した。これらの発見から、C.ジェジュニ鞭毛は表面への接着よりもバイオフィルム発生に必要かもしれないことが示唆されるかもしれない。
【0041】
クオラムセンシング又は細胞間シグナル伝達は、バイオフィルムへの細胞接着及びバイオフィルムからの分離に関与する(10、11、29)。C.ジェジュニM129を、細菌培養上清液の存在下で増殖させ、いくつかはクオラムセンシングシグナル又は自己誘発物質を含むと考えられた。研究の間にバイオフィルム形成の増大が観察されたので、研究された液体のいくつかは、C.ジェジュニAI−2細胞によって認識される一般的なシグナルを含むと考えられる。C.ジェジュニバイオフィルムにおけるクオラムセンシングの役割をアッセイするために、luxS遺伝子に変異を構築したが、これはAI2の生成を可能にしない(11)。グラム陰性細菌におけるクオラムセンシングは、シグナル分子ホモセリンラクトン(HSL)に依存し、これは生物発光、バイオフィルム形成及び毒性因子を含むいくつかの形質の発現を制御する(11)。C.ジェジュニにおいて、シグナル分子AI2を生成するクオラムセンシングシステムが同定されている。このシステムは、グラム陽性及びグラム陰性細菌の両方で高度に保存されており、種間コミュニケーションのために使用されると考えられている(11)。luxS遺伝子は、AI−2生成のための生合成経路における最終的な酵素をコードする(11)。luxS変異体と野生型との間でバイオフィルム形成の減少が観察されたので、本発明者らの研究から、C.ジェジュニにおけるバイオフィルム発生はAI2を必要とすることが示される。C.ジェジュニバイオフィルム形成の間の遺伝子調節の正確な性質は理解されていないが、明らかに、AI−2による細胞間コミュニケーションは、これらの機能に必要な遺伝子の発現の誘導に関与している。
【0042】
顕微鏡法技術及び定量的染色アッセイを用いて、C.ジェジュニ分離株によるバイオフィルム形成を研究した。バイオフィルム形成は、分離株の病因と相関しないようであった。しかしながら、分離株のそれぞれは、ポリスチレン表面全体で均一な細胞の分布を形成した。接着細胞の密度に違いがあったが、顕微鏡法の間に細菌の微小コロニーはほとんど観察されなかった。C.ジェジュニ分離株が非生物表面上でバイオフィルムを形成する能力は、それが正常な宿主外で生存し、動物及びヒトにとってのコロニー形成及び/又は感染汚染の継続的な源として作用する能力を説明するのを助けるかもしれない。
【0043】
C.ジェジュニ細胞の環境的制限にもかかわらず、バイオフィルム中での生存は、農業及び食品加工工場における動物及び死体への病原体の伝染に重要な役割を果たし、そのようにしてヒトに影響を及ぼす可能性がある。分離株の間のバイオフィルム可変性は、ヒト感染について特に懸念されるある種の株に寄与する可能性がある。したがって、本発明者らの研究は、これらの施設での配水システムの影響及びバイオフィルムに見られるC.ジェジュニ分離株と動物にコロニー形成しヒトでの大流行を引き起こすものとの相関を判定することに拡張されるべきである。したがって、ヒト及び動物、特にC.ジェジュニによってコロニー形成され、食物、乳、水及び土壌汚染、ひいてはヒト感染の源として機能するものに投与するための、免疫原性組成物を提供することが重要である。
【0044】
本明細書中でアミノ酸について使用される略記は、当技術分野で標準的である。本明細書中で使用されるアミノ酸残基についての略記は以下の通りである。A、Ala、アラニン;V、Val、バリン;L、Leu、ロイシン;I、Ile、イソロイシン;P、Pro、プロリン;F、Phe、フェニルアラニン;W、Trp、トリプトファン;M、Met、メチオニン;G、Gly、グリシン;S、Ser、セリン;T、Thr、スレオニン;C、Cys、システイン;Y、Tyr、チロシン;N、Asn、アスパラギン;Q、Gln、グルタミン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;K、Lys、リシン;R、Arg、アルギニン;及びH、His、ヒスチジン。
【0045】
本明細書中で使用される場合、弱毒化は、細菌株の毒性が、ヒト又は特定の動物において疾患を引き起こす「野生型」臨床株と比較して減少していることを意味し、弱毒化株は、ヒト又は特定の動物において疾患を引き起こさない。弱毒化カンピロバクター株の非限定的な例は、機能的fur及び/又はkatA遺伝子産物を発現しないものである。
【0046】
変異に関して、遺伝子の機能的不活化は、遺伝子産物の活性がほとんど又は全くないことを意味する。例えば、遺伝子が酵素をコードする場合、コードされる産物は、野生型遺伝子由来の産物の10%未満、望ましくは5%未満若しくは1%未満の酵素活性を有するか、又は10%未満、5%未満若しくは1%未満の発現産物がある。すなわち、活性が有意に減少するように、コード配列を、挿入されたヌクレオチド若しくは配列で中断するか、部分的若しくは全体的に欠失することができ、又は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させる置換変異があってもよい。或いは、発現が遺伝子転写及び/又はmRNAの翻訳のレベルで減少又は予防されるように、転写及び/又は翻訳調節配列に挿入、欠失又は変化があってもよい。
【0047】
本内容において、カンピロバクターバイオフィルム物質は、本発明の線毛タンパク質、すなわち、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はそれに対して少なくとも90%の同一性を有する配列によって特徴付けられる線毛タンパク質を含む。バイオフィルム物質は、典型的には、細胞外多糖(複数可)、及び細胞も含む。有利に、カンピロバクターは、C.ジェジュニ又はC.コリ(C.coli)である。線毛タンパク質は、増殖の遅滞期及び定常期の間並びにバイオフィルム中で発現される。例えばミュラーヒントン培地中の、静的増殖条件は、バイオフィルム形成に有利である。バイオフィルムは容器、特に容器の底に接着する。これは、消費された培地の除去の後に除去することができる。カンピロバクターの株が弱毒化されていない場合、生細胞は、当技術分野で公知のように死滅させることができる。
【0048】
本発明のC.ジェジュニ線毛タンパク質を含む免疫原性組成物及び/又はワクチンは、当技術分野で公知の手段のいずれかによって製剤化される。それらは、典型的には、注射可能物質として、又は鼻腔内若しくは経口投与のため、又は例えば溶液若しくは懸濁液のいずれかとしての飲料水中で、経口経管栄養若しくは不断給餌のための製剤として、調製することができる。注射又は他の投与の前の液体中の、溶液、又は懸濁液に適した固体形態もまた、調製してもよい。調製物はまた、例えば、乳化させるか、又はリポソーム中に封入されたタンパク質(複数可)/ペプチド(複数可)であってもよい。
【0049】
最も可能性の高いヒト及び動物の感染の経路を考慮して、粘膜免疫が特に有利であり、免疫原性組成物は、有利に、無毒性コレラ毒素Bサブユニット等のアジュバントを含む(例えば、米国特許第5,462,734号明細書参照)。コレラ毒素Bサブユニットは、例えば、ミズーリ州セントルイスのSigma Chemical Companyから市販されている。他の適したアジュバントは入手可能であり、それに置換してもよい。エアロゾル免疫原性(又はワクチン)製剤のためのアジュバントは、上皮細胞に結合し、粘膜免疫を刺激することができることが好ましい。
【0050】
末端に、又はポリマーから粒子若しくはその核の長さに沿って結合している、直鎖状、分枝又は架橋シリコーンを含むオルガノメタロポリマーは、粘膜投与及び粘膜免疫の刺激に適したアジュバントの1つである。かかるポリシロキサンは、分子量が約400から約1,000,000ダルトンまで変化してもよく、好ましい長さの範囲は約700〜約60,000ダルトンである。適した官能化シリコーンとしては、(トリアルコキシシリル)アルキル末端ポリジアルキルシロキサン及びトリアルコキシシリル末端ポリジアルキルシロキサン、例えば、3(トリエチオキシシリル)プロピル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。参照によって本明細書中に援用される米国特許第5,571,531号明細書を参照のこと。ホスファゼン高分子電解質もまた、粘膜投与(鼻腔内、膣内、直腸、エアロゾル投与による呼吸器系)のための免疫原性組成物に組み込んでもよい(例えば、米国特許第5,562,909号明細書参照)。
【0051】
活性免疫原性成分は、しばしば、薬学的に許容され得、活性成分と適合性のある、賦形剤又は担体と混合される。適した賦形剤としては、限定されないが、水、生理食塩水、右旋性ブドウ糖、グリセロール、エタノール等、及びそれらの組合せが挙げられる。注射可能物質、エアロゾル又は経鼻製剤中の免疫原性ポリペプチドの濃度は、通常、0.2〜5mg/mlの範囲である。同様の投薬量を、他の粘膜表面に投与してもよい。かかるワクチンは、タンパク質を薬学的に許容され得る担体と混合することによって、容易に調製することができる。薬学的に許容され得る担体は、少なくとも有害な効果がワクチン接種されていない動物に見られる効果よりも悪い程度まででなく、ワクチン接種される動物の健康に有害な影響を及ぼさない化合物であると理解されている。薬学的に許容され得る担体は、例えば、滅菌水又は滅菌生理食塩水であってもよい。より複雑なものにおいて、担体は、例えばバッファーであってもよい。
【0052】
しかしながら、飲料水による経口ワクチン接種が構想される場合、水の漏出のために、恐らくより大量のタンパク質を与えなければならない。
【0053】
本発明によるワクチンは、アジュバントをさらに含んでもよい。免疫学的アジュバントは、一般に、宿主の免疫応答を非特異的に増強する物質を含む。多数の種々のアジュバントが当技術分野で公知である。アジュバントの例は、フロイント完全及び不完全アジュバント、ビタミンE、非イオン性ブロック重合体並びにデキストラン硫酸、カルボポール及びピラン等のポリアミン、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)若しくは大腸菌等の細菌又は細菌由来物質、オリゴペプチド、乳化パラフィン−Emulsigen(商標)(ネブラスカ州ラルストンのMVP Labs)、水酸化アルミニウムを含むL80アジュバント(ニュージャージー州のReheis)、Quil A(Superphos)、又は当業者に公知の他のアジュバントである。Span、Tween、ヘキサデシルアミン、リソレクチン、メトキシヘキサデシルグリセロール及びサポニン等の界面活性物質もまた、非常に適している。さらに、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシン、タフトシン等のペプチドがしばしば使用される。これらのアジュバントの次に、免疫刺激複合体(ISCOMS)、ミネラルオイル、例えばBayol又はMarkol、植物油又はその乳濁液及びDiluvac.Forteを、有利に使用することができる。ワクチンはまた、いわゆる「ビヒクル」を含んでもよい。ビヒクルは、ポリペプチドがそれに共有結合することなく接着する化合物である。しばしば使用されるビヒクル化合物は、例えば、アルミニウムの水酸化物、リン酸塩、硫酸塩若しくは酸化物、シリカ、カオリン又はベントナイトである。抗原が部分的にビヒクルに包埋されている、かかるビヒクルの特別な形態は、いわゆるISCOMである(EP109.942、EP1。ワクチンはまた、アジ化ナトリウム、チマーソル、ゲンタマイシン、ネオマイシン、及びポリミキシン等の保存薬を含んでもよい。80.564、EP242.380)。
【0054】
しばしば、免疫原性組成物は、例えば分解しやすいポリペプチドが分解されるのを保護するため、ワクチンの貯蔵寿命を増強するため、又は凍結乾燥効率を向上させるために、安定化剤をさらに含む。有用な安定化剤としては、限定されないが、SPGA、スキムミルク、ゼラチン、ウシ又は他の血清アルブミン、炭水化物、例えばソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、ショ糖、デキストラン若しくはグルコース、アルブミン若しくはカゼイン等のタンパク質又はそれらの分解産物、及びアルカリ金属リン酸塩等のバッファーが挙げられる。アルブミンが使用される場合、望ましくは、それを含む免疫原性組成物が投与される動物(又はヒト)と同じ種に由来する。凍結乾燥は、保存のための効率的な方法である。凍結乾燥された物質は、何年も安定して保存することができる。凍結乾燥された物質の保存温度は、物質に有害であることなく、0度より高いであろう。凍結乾燥は、全ての周知の標準的な凍結乾燥手順に従って行うことができる。
【0055】
線毛タンパク質、特に組換え発現された線毛タンパク質を含むワクチンは、好ましくは粘膜投与される。これは、ワクチンを飲料水又は食品と混合することによって、経口投与によって行うことができる。特に家禽については、眼内ワクチン接種及び鼻腔内ワクチン接種等のさらなる方法もまた、非常に適した粘膜ワクチン接種の方法である。
【0056】
また、所望される場合、ワクチンは、ワクチンの有効性を増強する湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又はアジュバント等の少量の補助物質を含んでもよい。有効であり得るアジュバントの例としては、限定されないが、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、ノル−MDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと呼ばれる)、並びに2%スクアレン/Tween80乳濁液中に細菌から抽出された3つの成分、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を含むRIBIが挙げられる。アジュバントの有効性は、問題のアジュバントを含むワクチン中の免疫原の投与に起因する、免疫原に対する抗体(特にIgA、IgM又はIgG)の量を測定することによって判定することができる。当技術分野で公知のようなかかるさらなる製剤及び投与の様式もまた、使用してもよい。
【0057】
目的の線毛タンパク質抗原又は前記タンパク質由来の配列に由来するペプチドを、中性又は塩形態としてワクチンに製剤化する。薬学的に許容され得る塩としては、限定されないが、無機酸、例えば塩酸又はリン酸、及び有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸又はマレイン酸で形成された酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基で形成されている)が挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は鉄水酸化物、並びに有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノ−エタノール、ヒスチジン、及びプロカインに由来してもよい。
【0058】
免疫原性組成物又はワクチンは、当技術分野で公知のものに従って、投薬製剤に適合性のある様式で、並びに予防上及び/又は治療上有効な量及び様式で投与される。投与される量は、一般に1用量あたり約100〜1,000μgのタンパク質の範囲、より一般には1用量あたり約20〜1000μgのタンパク質の範囲であり、治療される被験体、抗体を合成する個体の(又は動物の)免疫系の能力、及び所望される防御の程度による。投与されるのに必要な活性成分の正確な量は、医師又は獣医の判断によってもよく、各個体に特有であってもよいが、かかる判定は、かかる実行者の技術の範囲内である。
【0059】
免疫原性組成物における組換え線毛タンパク質の使用の代替として、線毛が発現されているバイオフィルム増殖を容器表面から採取することによって静置培養(例えばミュラーヒントンブロスを培地として使用して)由来の死滅したC.ジェジュニ全細胞調製物を使用することができる。臨床分離株又は野生型株が使用される場合、望ましくは、バイオフィルムを処理して、その中の細菌細胞を死滅させる。生細胞を死滅させることは当技術分野で公知であり、適切な薬剤の非限定的な例としては、ホルマリン及びBEIが挙げられる。全細胞(バイオフィルム)免疫原性組成物の使用に対する別の手法は、バイオフィルム形成条件におけるような線毛形成を生じる条件下で増殖させた弱毒化C.ジェジュニ変異体の使用である。病原性株は、カタラーゼ遺伝子(katA、Dayら、2000年参照)若しくはfur遺伝子を機能的に不活化することによって弱毒化することができ、又は、これらの機能の一方若しくは両方を欠いた変異体を単離することができる。カンピロバクターの他の種を、本方法におけるC.ジェジュニの代わりに使用してもよい。
【0060】
ワクチンに製剤化する前に、調製物中の細菌細胞を不活化してもよい。細菌細胞は、当業者に公知の標準的な手順に従って、熱(例えば、60℃で2時間の処理)又は化学物質、典型的には市販のワクチン調製物に一般に使用されるものを用いて、不活化してもよい。本発明の細菌調製物を不活化するのに適した化学物質としては、β−プロピオラクトン(β−Prone、アイオワ州ラーチウッドのGrand Laboratories Inc.)又は0.1Mバイナリーエチレンイニン(BEI)が挙げられる。他の方法及び物質は当技術分野で周知である。培養物の不活化は、例えば、複数の試料を適した固体に播種し、最適な増殖条件下でプレートをインキュベートすることによって確認してもよい。
【0061】
ワクチン又は他の免疫原性組成物は、単回投与、例えば2〜8週間隔てた2回投与計画、若しくは複数回投与計画又は他のワクチンとの組合せで与えてもよい。複数回投与計画は、ワクチン接種の最初の過程が1〜10以上の別々の用量、それに続く、免疫応答を維持及び/又は強化するのに必要な、後の間隔、例えば2回目の投与に1〜4カ月で投与される他の用量、並びに必要な場合、数ヵ月後の後の投与(複数可)を含んでもよいものである。本発明に従って投与された抗原で免疫化されたヒト(又は他の動物)は、目的の抗原が由来する病原体による感染から防御される。
【0062】
本発明によるワクチンの調製のための方法は、複雑である必要はない。原則として、標準的な技術に従って、例えば動物において、本明細書中に記載されている線毛タンパク質に対する抗体を産生させ、続いて血液を収集し、抗血清を単離することで十分である。かかる抗体を産生させるのに適した動物は、例えば、ウサギ及びニワトリである。ニワトリが使用される場合、抗体は、代替として、全身免疫されたニワトリの卵黄から得てもよい。原則として、抗体は希釈する必要はない。それらはそのまま、又は必要な場合、濃縮した形態でも与えてもよい。或いは、抗体濃度が非常に高い場合、そのようにして得られた抗血清は、例えば、投与の前に希釈してもよい。
【0063】
この特異性の所望の抗体、モノクローナル抗体又は単鎖抗体を産生する細胞を得て、これらを発酵槽又は細胞培養装置中で増殖させることもまた、可能である。抗体は後で採取してもよく、必要な場合、薬学的に許容され得る担体と混合してもよい。かかる方法の利点は、抗体の調製に動物を使用する必要がないことである。
【0064】
本発明の免疫化態様の適用は、屠殺する前にブロイラーニワトリを処理することである。かかるブロイラーは、通常、6週齢で屠殺される。したがって、屠殺の1〜3週間前の、線毛タンパク質を含む免疫原性組成物又は線毛含有全細胞ワクチンでの動物の処理によって、カンピロバクター汚染のレベルの有意な減少が引き起こされる。
【0065】
本発明の線毛タンパク質に特異的な抗体は、例えばニワトリに粗抗血清を供給することによって、いくぶん粗い調製物として与えてもよい。代替的な投与の経路としては、限定されないが、血清を飲料水又はニワトリの食物と混合することが挙げられる。かかる目的のために、別法は、抗体を凍結乾燥し、そのようにしてそれらの長期安定性を増強し、その後それらを食物又は水と混合することである。また、抗体は、カプセル化してからニワトリの食物に添加してもよい。本発明のカンピロバクター線毛タンパク質に対する特異性を有する抗血清又は抗体調製物は、カンピロバクター感染症を患う患者(特にヒト患者)の治療において使用することができる。
【0066】
バイオフィルム若しくは便試料中のカンピロバクター、特にC.ジェジュニを検出するため、又はカンピロバクター、特にC.ジェジュニ感染の診断のために、本発明の線毛タンパク質に特異的な抗体を用いることができる。
【0067】
本発明の線毛タンパク質の別の使用は、このタンパク質に特異的な抗体の検出において、例えば、カンピロバクター、特にC.ジェジュニに対する動物若しくはヒトの曝露をモニタリングすること、又はC.ジェジュニ線毛タンパク質に対する免疫応答(体液性)の発生をモニタリングすることである。
【0068】
ヒト又は動物の免疫化のための別の戦略は、本発明の線毛タンパク質をコードするDNA分子を投与することであり、ここでコード配列は、それが導入されているヒト又は動物における発現を指示するのに適切な転写及び翻訳配列に、動作可能に連結されている。
【0069】
さらに別の戦略は、非毒性サルモネラ株を用いて、目的の線毛コード配列を発現させることである(線毛タンパク質を含まない以前の実験については、Pawelecら(1997年)FEMS Immunology and Medical Microbiology 19:137〜140ページ参照)。Pawelecらは、CjaA、CjaC、LPS、MOMP、鞭毛又は鞭毛サブユニット等の防御C.ジェジュニ抗原をコードするC.ジェジュニ遺伝子を発現するS.チフィムリウム株の構築によって、両方の腸管病原体に対するニワトリワクチンを得る有効な方法を提供することができるかもしれないと示唆した。米国特許出願公開第2001/0038844A1号明細書は、組換えサルモネラ変異体株における鞭毛抗原又は断片の発現を教示している。ニワトリにおいて粘膜免疫応答を誘発することができるサルモネラの多数の非毒性株が記載されている。例えば、S.チフィムリウムdelta−cya−delta−crp変異体は、Curtiss及びKellyによって開発され(Curtiss及びKelly、1987年、Infect.Immun.55.3035〜3044ページ)、Galenらによってさらに修飾された(Galenら、1990年、Gene 94:29〜35ページ)。phoP遺伝子に変異を有するサルモネラの別の変異体株の開発並びにサルモネラ・チフィムリウムに対するワクチンの成分としてのこれらの非毒性変異体生物の使用を開示している米国特許第5,424,065号明細書も参照のこと。S.チフィムリウムX3985Δ−cya−Δ−crpは、用量及び株依存的であると示される応答である、ニワトリにおけるサルモネラの毒性株での再負荷に対する有意な防御を誘発した(Hassan及びCurtiss、1990年、Res.Microbiol.141:839〜850ページ)。しかしながら、Curtissら、米国特許第5,424,065号明細書によって教示されているように、これらのサルモネラ変異体の成功利用は、宿主、細菌種、及び免疫化の経路による。サルモネラ変異体はまた、ストレプトコッカス(Streptococcus)変異体、S.ソブリナス(S.sobrinus)(Doggettら、1993年、Infect.Immun.61:1859〜1966ページ、Jagusztyn−Krynickaら、1993年、Infect.Immun.61:1004〜1015ページ、Redmanら、1995年、Infect.Immun.63:2004〜2011ページ、Redmanら、1996年、Vaccine 14:868〜878ページ)、S.エクイ(S.equi)、ボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)(Gentry−Weeksら、1992年、J.Bacteriol.174:7729〜7742ページ)、B.パータシス、マイコバクテリウム(Mycobacterium)(Curtissら、1990年、Res.Microbiol.141:797〜805ページ)、B型肝炎ウイルス(Schodelら、1994年、Infect.Immun.62:1669〜1676ページ)、大腸菌熱不安定性毒素−ウイルス融合タンパク質(Smerdouら、1996年、Virus Res.41:1〜9ページ)、及び破傷風毒素断片C(Karemら、1995年、Infect.Immun.63:4557〜4563ページ)由来の外来性抗原を発現するためのベクターとして使用されている。
【0070】
明細書中で言及される種々のアミノ酸配列中で生じるアミノ酸は、当技術分野で通法により使用されるそれらの通常の3文字及び1文字略記を有する。A、Ala、アラニン;C、Cys、システイン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;F、Phe、フェニルアラニン;G、Gly、グリシン;H、His、ヒスチジン;I、Ile、イソロイシン;K、Lys、リシン;L、Leu、ロイシン;M、Met、メチオニン;N、Asn、アスパラギン;P、Pro、プロリン;Q、Gln、グルタミン;R、Arg、アルギニン;S、Ser、セリン;T、Thr、スレオニン;V、Val、バリン;W、Try、トリプトファン;Y、Tyr、チロシン。
【0071】
タンパク質は、それが組換えによって生成される宿主細胞から単離されたタンパク質である場合、単離されたタンパク質と考えられる。それは精製されてもよく、又は単に自然界ではそれと関連している他のタンパク質及び生物学的物質を含まなくてもよい。
【0072】
単離された核酸は、構造が任意の天然に存在する核酸のもの又は3つより多い別々の遺伝子にわたる天然に存在するゲノム核酸の任意の断片のものと同一でない核酸である。したがって、用語は、例えば、天然に存在するゲノムDNA分子の一部の配列を有するがそれが天然に存在する生物のゲノムにおいて分子のその部分が隣接するコード又は非コード配列の両方が隣接していないDNA、得られる分子が任意の天然に存在するベクター又はゲノムDNAと同一でないようにベクター又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた核酸、cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された断片、又は制限酵素断片等の別々の分子、並びにハイブリッド遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子にわたる。DNA分子、形質転換又はトランスフェクト細胞、及び細胞クローンの混合物中に存在する核酸は、例えばこれらがcDNA又はゲノムDNAライブラリー等のDNAライブラリー中で生じるように、この定義から特異的に排除される。
【0073】
本明細書中で使用される場合、特定の配列によって指示される発現は、関連する下流配列の転写である。関連する配列について適切で所望される場合、用語、発現はまた、転写されたRNAの翻訳(タンパク質合成)も包含する。
【0074】
本文脈において、プロモーターは、関連する(下流)配列の転写を引き起こすのに十分な配列を含むDNA領域である。プロモーターは調節してもよく、すなわち、関連する配列の転写を引き起こすよう構成的に作用していない。誘導性である場合、生物が中又は上で培養される培地中に誘導因子分子が存在する場合にのみ関連する配列が転写されるように発現の調節を媒介する、存在する配列がある。本文脈において、転写調節配列はプロモーター配列を含み、当技術分野で周知のように、環境シグナルに応答した、関連する配列の調節された発現のためのシス−活性配列をさらに含んでもよい。
【0075】
あるDNA部分又は配列は、それが第2のDNA部分又は配列の3’に位置する場合、第2のDNA部分又は配列の下流である。あるDNA部分又は配列は、第2のDNA部分又は配列の5’に位置する場合、そのDNA部分又は配列の上流である。
【0076】
あるDNA分子又は配列と別のものとは、2つが同じ天然の本源に由来しない場合に、異種である。配列は、天然の配列であってもよく、又は多重クローニング部位領域の場合のように、少なくとも一方の配列が人によって設計されてもよい。2つの配列は、2つの異なる種に由来してもよく、又は合成された部分のヌクレオチド配列がもう一方の配列と同じ生物に由来しなければ、一方の配列が化学合成によって生成されてもよい。
【0077】
単離された、又は実質的に純粋な核酸分子又はポリヌクレオチドは、天然の転写調節配列を天然に伴う他のポリヌクレオチド配列から実質的に分離されたポリヌクレオチドである。用語は、その天然に存在する環境から除去されているポリヌクレオチド配列を包含し、組換え又はクローン化DNA分離物、化学的に合成された類似体、及び異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。
【0078】
ポリヌクレオチドは、その天然の状態、又は、当業者に公知の方法によって操作された場合、転写及び/若しくは翻訳されてポリペプチド若しくはその断片を生成することができる場合、ポリペプチドをコードするといわれる。かかるポリヌクレオチドのアンチセンス鎖はまた、配列をコードするといわれる。
【0079】
ヌクレオチド配列は、別のヌクレオチド配列と機能的関係に配置される場合に、動作可能に連結されている。例えば、プロモーターは、プロモーターがその転写又は発現を生じさせる場合に、コード配列に動作可能に連結されている。一般に、動作可能に連結されている、は、連結されている配列が連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、連続であり、リーディングフレーム中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサー等のある種の遺伝因子は隔たっていても、すなわち連続していなくても、動作可能に連結されていてもよいことは周知である。
【0080】
用語、組換えポリヌクレオチドは、遺伝子操作技術又は化学合成によって単離されたポリヌクレオチドのセグメントの人工的操作によって達成される、2つの、他の状態では別々の配列のセグメントの組合せによって作製されたポリヌクレオチドをいう。その際、所望の機能のポリヌクレオチドセグメントを連結させて所望の機能の組合せを生じてもよい。
【0081】
ポリヌクレオチドプローブは、標識又はレポーター分子に付着した単離されたポリヌクレオチドを含み、他の配列、例えばカンピロバクター・ジェジュニの他の株に由来するものを同定及び単離するのに使用することができる。合成オリゴヌクレオチド又は他のポリヌクレオチドを含むプローブは、天然に存在する、又は組換え一本鎖若しくは二本鎖核酸に由来してもよく、又は化学合成してもよい。ポリヌクレオチドプローブは、当技術分野で公知の方法のいずれか、例えばランダムヘキサマー標識、ニックトランスレーション、又はクレノウフィルイン反応法によって標識してもよい。
【0082】
適した宿主細胞中の複製によって、大量のポリヌクレオチドを生成することができる。目的のタンパク質をコードする天然又は合成のDNA断片を、タンパク質発現が所望される、原核又は真核細胞、特に大腸菌での導入及び複製が可能な、組換えポリヌクレオチド構築物、典型的にはDNA構築物中に組み込む。通常、構築物は、大腸菌、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム又はシュードモナス等の単細胞宿主における複製に適しているが、宿主細胞のゲノム内の組込みあり又はなしで、多細胞真核宿主もまた適当である場合がある。真核宿主細胞としては、酵母、糸状菌、植物、昆虫、両生類及び鳥類が挙げられる。操作の容易さ、発現されたタンパク質を適切にグリコシル化することができるかどうか、タンパク質発現の程度及び制御、発現されるタンパク質の、細胞混入物からの精製の容易さ等の要因又は他の要因は、宿主細胞の選択に影響を及ぼす。
【0083】
ポリヌクレオチドはまた、化学合成によって、例えばBeaucage及びCaruthers(1981年)Tetra.Letts.22:1859〜1862ページによって記載されているホスホラミダイト法又はMatteuciら(1981年)J.Am.Chem.Soc.103:3185ページによるトリエステル法によって、生成してもよく、市販の自動化オリゴヌクレオチド合成機で行ってもよい。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖をアニーリングすること、又は適切なプライマー配列を有するDNAポリメラーゼを用いて相補鎖を付加することのいずれかによって、化学合成の一本鎖生成物から得てもよい。
【0084】
原核又は真核宿主への導入のために調製されたDNA構築物は、典型的には、所望のポリペプチドをコードする意図されるDNA断片を含む、宿主によって認識される複製系(すなわち、ベクター)を含み、好ましくは、ポリペプチドコードセグメントに動作可能に連結された転写及び翻訳開始調節配列も含む。発現系(発現ベクター)は、例えば、複製開始点又は自律複製配列(ARS)及び発現制御配列、プロモーター、エンハンサー、並びにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写終結配列、及びmRNA安定化配列等の必要なプロセシング情報部位を含んでもよい。シグナルペプチドもまた、適切な場合、同じ又は関連した種の分泌されたポリペプチドから含まれてもよく、これによってタンパク質が細胞膜中で交差する及び/若しくは留まる又は細胞から分泌されることが可能になる。
【0085】
適切なプロモーター及び他の必要なベクター配列は、宿主中で機能的であるように選択される。細胞系及び発現ベクターの実行可能な組合せの例は、Sambrookら(1989年)下記参照、Ausubelら(編)(1995年)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク、及びMetzgerら(1988年)Nature、334:31〜36ページに記載されている。細菌、酵母、菌類、哺乳動物、昆虫、植物又は他の細胞における発現のための多くの有用なベクターは当技術分野で周知であり、Stratagene、New England Biolabs、Promega Biotech、及び他のもの等の業者から得ることができる。また、構築物は、遺伝子の複数のコピーが生じるように、増幅可能な遺伝子(例えば、DHFR)に連結してもよい。適切なエンハンサー及び他の発現制御配列については、Enhancers and Eukaryotic Gene Expression、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク(1983年)も参照のこと。かかる発現ベクターは自律的に複製することができるが、それらは宿主細胞のゲノムに挿入されることによって、あまり好ましく複製しない場合がある。
【0086】
発現及びクローニングベクターは、有利に、選択可能なマーカー、すなわち、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする遺伝子を含む。かかるマーカー遺伝子は、宿主細胞に同時に導入された別のポリヌクレオチド配列上に保持されていてもよいが、これはほとんどの場合クローニングベクター上に含まれる。マーカー遺伝子が導入されている宿主細胞のみが、選択的な条件下で生存及び/又は増殖する。典型的な選択遺伝子は、抗生物質又は他の毒性物質、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート等に対する耐性を与える、栄養要求性欠損を補完する、又は複合培地から入手できない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。適切な選択可能なマーカーの選択は宿主細胞により、種々の宿主についての適切なマーカーは当技術分野で公知である。
【0087】
組換え宿主細胞は、本文脈において、本発明の単離されたDNA分子を含むよう遺伝子組換えされているものである。DNAは、特定の細胞の型に適切で、限定されないが形質転換、リポフェクション又はエレクトロポレーションを含む、当技術分野で公知の任意の手段によって導入することができる。
【0088】
本明細書中で使用される場合、コロニー形成は、宿主動物又はヒト内でのC.ジェジュニの確立をいう。ある種の動物、例えば家禽(ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ等)において、コロニー形成は、疾患を生じない。本明細書中で教示されているようなC.ジェジュニの線毛タンパク質を含む免疫原性組成物の投与によってコロニー形成が減少又は予防される場合、利点は、より少ない細菌が食品及び環境中に導入されることである。感染は、本文脈において、疾患症状が起こる結果を伴う、ヒト又は動物のコロニー形成をいう。
【0089】
DNA配列は遺伝コードの縮重及びコドン使用頻度によって変化してもよいことが、当業者によって認識される。目的の線毛タンパク質をコードする全ての(同義の)DNA配列が、本発明に含まれる。
【0090】
また、DNA配列がコードするペプチドのアミノ酸配列の活性を有意に変化させない対立遺伝子変異体がDNA配列中で生じてもよいことが、当業者によって認識されるであろう。全てのかかる同等なDNA配列が本発明の範囲内及び制御されたプロモーター領域の定義に含まれる。当業者は、例示された配列を用いて、示された配列と機能的に同等なさらなる例示されていないヌクレオチド配列を同定及び単離することができることを理解するであろう。
【0091】
本発明の線毛タンパク質のアミノ酸配列に、わずかな変更があってもよい。アミノ酸配列の変化は、1つ又は複数のアミノ酸の、機能的同等物による置換の結果であってもよい。機能的同等物による置換はしばしば見られる。Neurathら(The Proteins、Academic Press、ニューヨーク(1979年)、14ページ、図6)によって記載されている例は、すなわち、アミノ酸アラニンの、セリンによる置換、Ala/Ser、又はVal/Ile、Asp/Glu等である。上述の機能的同等物アミノ酸による置換を生じる変化に加えて、機能的同等物でない別のアミノ酸によってアミノ酸が置換されている変化が見られてもよい。この種類の変化は、その空間的折り畳みにわずかな変化を有するタンパク質を生じ得る点で機能的同等物での置換と異なるだけである。両方のタイプの変化がタンパク質中でしばしば見られ、それらは生物学的変化として公知である。線毛タンパク質のアミノ酸配列の変化はポリペプチドの免疫原性活性が保持される程度まで可能であること、すなわち変異体タンパク質に対して産生された抗体が特に例示された線毛タンパク質又はC.ジェジュニの他の分離株の線毛タンパク質と交差反応することが理解される。
【0092】
ハイブリダイゼーション手順は、本明細書中で教示されているような有用な対象の調節配列に対して十分な相同性を有するポリヌクレオチドを同定するために有用である。特定のハイブリダイゼーション技術は、本発明に必須ではない。ハイブリダイゼーション技術に改良がなされているため、それらは当業者によって容易に適用することができる。
【0093】
プローブ及び試料はハイブリダイゼーションバッファー溶液中で合わされ、アニーリングが起こるまで適切な温度で維持される。その後、膜は外来性物質なしに洗浄されて、典型的にはオートラジオグラフィー及び/又は液体シンチレーション測定によって検出及び定量される、試料及び結合しているプローブ分子が残る。当技術分野で周知のように、プローブ分子及び核酸試料が、2つの分子の間で強力な非共有結合を形成することによってハイブリダイズする場合、プローブ及び試料は本質的に同一であるか、又はアニーリング及び洗浄工程が高ストリンジェンシーの条件下で行われる場合、完全に相補的であると合理的に仮定することができる。プローブの検出可能な標識によって、ハイブリダイゼーションが起こったかどうかを判定するための手段が提供される。
【0094】
プローブとしての、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの使用において、特定のプローブは、放射性及び非放射性標識を含む、当業者に公知の任意の適した標識で標識される。典型的な放射性標識としては、32P、35S等が挙げられる。非放射性標識としては、例えば、ビオチン若しくはチロキシン等のリガンド、並びにヒドロラーゼ若しくはペルオキシダーゼ等の酵素、又はルシフェリン等の化学発光物質、又はフルオレセインのような蛍光化合物及びその誘導体が挙げられる。或いは、プローブは、国際公開第93/16094号パンフレットに記載されているように、本質的に蛍光にしてもよい。
【0095】
ハイブリダイゼーションの種々の程度のストリンジェンシーを採用してもよい。条件がストリンジェントであるほど、二本鎖形成に必要な相補性は高くなる。ストリンジェンシーは、温度、プローブ濃度、プローブ長、イオン強度、時間等によって制御することができる。好ましくは、例えば参照によって本明細書中に援用されるKeller,G.H.、M.M.Manak(1987年)DNA Probes、Stockton Press、ニューヨーク州ニューヨーク、169〜170ページに記載されているように、当技術分野で公知の技術によって、ハイブリダイゼーションは、中〜高ストリンジェンシー条件下で行われる。
【0096】
本明細書中で使用される場合、ハイブリダイゼーションのための中〜高ストリンジェンシー条件は、本発明者らによって採用された条件と同じ又はほぼ同じ程度のハイブリダイゼーションの特異性を達成する条件である。高ストリンジェンシー条件の例は、68℃、5×SSC/5×デンハルト液/0.1%SDS中でハイブリダイズさせ、0.2×SSC/0.1%SDS中で、室温で洗浄することである。中ストリンジェンシーの条件の例は、68℃、5×SSC/5×デンハルト液/0.1%SDS中でハイブリダイズさせ、42℃、3×SSC中で洗浄することである。温度及び塩濃度のパラメーターは、プローブと標的核酸との間で所望のレベルの配列同一性を達成するよう変化させてもよい。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなる指導については、例えば、Sambrookら(1989年)下記参照又はAusubelら(1995年)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨークを参照のこと。
【0097】
特に、標準的な方法(Maniatisら)によって、32P標識遺伝子特異的プローブでのサザンブロットにおける固定化されたDNAのハイブリダイゼーションを行った。一般に、ハイブリダイゼーション及びその後の洗浄は、例示された配列に対して相同性を有する標的配列の検出を可能にする中〜高ストリンジェンシー条件下で行った。二本鎖DNA遺伝子プローブについては、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE 5×デンハルト液、0.1%SDS、0.1mg/ml変性DNA中で、DNAハイブリッドの融点(Tm)の20〜25℃下で一晩行ってもよい。融点は、以下の式によって記載されている(Beltzら(1983年)Methods of Enzymology、R.Wu、L.Grossman及びK Moldave(編)Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク、100:266〜285ページ):
Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41(+G+C)−0.61(%ホルムアミド)−600/二本鎖の塩基対の長さ
【0098】
洗浄は、典型的には以下のように行われる。1×SSPE、0.1%SDS中で15分間、室温で2回(低ストリンジェンシー洗浄)、及び0.2×SSPE、0.1%SDS中で15分間、TM−20℃で1回(中ストリンジェンシー洗浄)。
【0099】
オリゴヌクレオチドプローブについては、ハイブリダイゼーションは、6×SSPE、5×デンハルト液、0.1%SDS、0.1mg/ml変性DNA中で、ハイブリッドの融点(Tm)の10〜20℃下で一晩行った。オリゴヌクレオチドプローブのTmは、以下の式によって判定した:TM(℃)=2(T/A塩基対の数+4(G/C塩基対の数)(Suggs,S.V.ら(1981年)ICB−UCLA Symp.Dev.Biol.Using Purified Genes、D.D.Brown(編)、Academic Press、ニューヨーク、23:683〜693ページ)。
【0100】
洗浄は、典型的には、以下のように行った。15分間1×SSPE、0.1%SDSで、室温で2回(低ストリンジェンシー洗浄)、及び1×SSPE、0.1%SDS中で15分間、ハイブリダイゼーション温度で1回(中ストリンジェンシー洗浄)。
【0101】
一般に、塩及び/又は温度を変化させてストリンジェンシーを変化させることができる。長さが70塩基を超えるくらいの、標識されたDNA断片で、以下の条件を使用することができる。低、1又は2×SSPE、室温;低、1又は2×SSPE、42℃;中、0.2×又は1×SSPE、65℃;及び高、0.1×SSPE、65℃。
【0102】
二本鎖形成及び安定性は、ハイブリッドの2つの鎖の間の実質的な相補性により、上述のように、ある程度のミスマッチは許容され得る。したがって、本発明のプローブ配列は、記載されている配列の変異(単一及び多重の両方)、欠失、挿入、及びそれらの組合せを含み、ここで前記変異、挿入及び欠失は、目的の標的ポリヌクレオチドとの安定したハイブリッドの形成を可能にする。変異、挿入、及び欠失は、多くの方法で所与のポリヌクレオチド配列において生じることができ、それらの方法は当業者に公知である。他の方法が将来知られるようになるかもしれない。
【0103】
このようにして、開示されたヌクレオチド配列の、変異、挿入、及び欠失の変異体は、当業者に周知の方法によって容易に調製することができる。これらの変異体は、変異体が元々の配列と相当な配列相同性を有する限りは、例示されたプライマー配列と同じ様式で使用することができる。本明細書中で使用される場合、相当な配列相同性は、変異体ポリヌクレオチドが、プローブが由来するポリヌクレオチドと同じ能力で機能することができるようにするのに十分な相同性をいう。好ましくは、この相同性は70%又は80%よりも高く、より好ましくは、この相同性は85%よりも高く、さらにより好ましくは、この相同性は90%よりも高く、最も好ましくは、この相同性は95%よりも高い。70〜100%の間の全ての整数もまた、本発明の範囲内である。変異体がその意図される能力で機能するのに必要な相同性又は同一性の程度は、配列の意図された使用による。機能が同等であるか又は配列の機能を改良するよう設計されているか或いは方法論的利点を提供する、変異、挿入、及び欠失の変異体を作製することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0104】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、核酸配列の、反復的で、酵素による、刺激された(primed)合成である。この手順は当業者によって周知であり、一般に使用されている(Mullis、米国特許第4,683,195号明細書、第4,683,202号明細書、及び第4,800,159号明細書、Saikiら(1985年)Science 230:1350〜1354ページ参照)。試薬、装置及び説明書は市販されている。好熱菌サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)から単離されたTaqポリメラーゼ等の熱安定性DNAポリメラーゼを使用することによって、増幅プロセスを完全に自動化することができる。使用することができる他の酵素は当業者に公知である。
【0105】
元々の全長配列の、得られた断片及び/又は変異体のいくらかが全長配列の所望の特徴を保持できるように、本発明のポリヌクレオチド配列を切断及び変異させることができることは、当技術分野で周知である。より大きな核酸分子から断片を生じるのに適している多種多様な制限酵素が周知である。また、Bal31エキソヌクレアーゼをDNAの時間制御された限定消化に簡便に使用することができることは周知である。例えば、参照によって本明細書中に援用されるManiatis(1982年)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、135〜139ページを参照のこと。Weiら(1983年、J.Biol.Chem.258:13006〜13512ページも参照のこと。Bal31エキソヌクレアーゼ(一般に「塩基を消す」手順と呼ばれる)の使用によって、当業者は、対象核酸のいずれか又は両方の末端からヌクレオチドを除去して、対象ヌクレオチド配列と機能的に同等な、広範な断片を生じることができる。当業者は、この様式で、元々の分子の全ての位置から、制御された様々な長さの、何百もの断片を生じることができる。当業者は、生じた断片を、それらの特徴について通法によって試験又はスクリーニングし、本明細書中に教示されているような断片の有用性を判定することができる。全長配列の変異配列、又はその断片を部位特異的変異誘発で容易に生成することができることもまた、周知である。例えば、ともに参照によって本明細書中に援用される、Larionov,O.A.及びNikiforov,V.G.(1982年)Genetika 18(3):349〜59ページ、Shortle,D、DiMaio,D.及びNathans,D.(1981年)Annu.Rev.Genet.15:265〜94ページを参照のこと。当業者は通法によって、欠失、挿入、又は置換型の変異を生じさせること、並びに全長野生型配列又はその断片の所望の特徴を含む変異体を生じるもの、すなわち、投与されるヒト若しくは動物においてそれに対するコロニー形成及び/若しくは感染を阻害する抗体が産生される本発明の線毛タンパク質若しくはその断片を発現するものを同定することができる。
【0106】
本明細書中で使用される場合、2つの核酸のパーセント配列同一性は、Karlin及びAltschul(1993年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873〜5877ページのように改変されたKarlin及びAltschul(1990年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264〜2268ページのアルゴリズムを用いて判定される。かかるアルゴリズムを、Altschulら(1990年)J.Mol.Biol.215:402〜410ページのNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込む。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、単語長=12で行って、所望のパーセント配列同一性を有するヌクレオチド配列を得る。比較目的のためのギャップトアラインメントを得るために、Altschulら(1997年)Nucl.Acids.Res.25:3389〜3402ページに記載されているように、Gapped BLASTを用いる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(NBLAST及びXBLAST)のデフォルトパラメーターを使用する。例えば、インターネット上のNational Center for Biotechnology Informationウェブサイトを参照のこと。
【0107】
C.ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する、モノクローナル又はポリクローナル抗体、単鎖抗体、ヒト若しくはヒト化単鎖抗体又はヒト若しくはヒト化抗体の抗原結合断片は、当技術分野で公知の方法によって作製することができる。例えば、Harlow及びLane(1988年)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Hagbor Laboratories、Goding(1986年)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、第2版、Academic Press、ニューヨークを参照のこと。
【0108】
クローニング、DNA単離、増幅及び精製のため、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を伴う酵素反応のための標準的な技術、並びに種々の分離技術は、当業者によって公知で一般に採用されているものである。多数の標準的な技術が、Sambrookら(1989年)Molecular Cloning、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州プレーンビュー、Maniatisら(1982年)Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州プレーンビュー、Wu(編)(1993年)Meth.Enzymol.218、第I部、Wu(編)(1979年)Meth.Enzymol.68、Wuら(編)(1983年)Meth.Enzymol.100及び101、Grossman及びMoldave(編)Meth.Enzymol.65、Miller(編)(1972年)Experiments in Molecular Genetics、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、Old及びPrimrose(1981年)Principles of Gene Manipulation、University of California Press、バークレー、Schleif及びWensink(1982年)Practical Methods in Molecular Biology、Glover(編)(1985年)DNA Cloning第I巻及び第II巻、IRL Press、英国オックスフォード、Hames及びHiggins(編)(1985年)Nucleic Acid Hybridization、IRL Press、英国オックスフォード、並びにSetlow及びHollaender(1979年)Genetic Engineering:Principles and Methods、第1巻〜第4巻、Plenum Press、ニューヨークに記載されている。略語及び命名法は、採用されている場合、当該分野で標準的で本明細書中に引用されるもの等の専門雑誌中で一般に使用されていると見なされる。
【0109】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに理解することができる。これらの実施例は例示目的のために提供され、本明細書中で請求されているような発明の範囲を限定するよう意図されない。当業者の思い当たる、例示された項目のいかなる変化も、本発明の範囲内に含まれるよう意図される。
【0110】
本明細書中に引用される全ての参考文献は、本開示と不一致がない程度まで、参照によって本明細書中に援用される。引用される参考文献は、関連する技術における技術のレベルを反映する。
【実施例】
【0111】
実施例1 細菌株及び培地
全てのC.ジェジュニ分離株(表1)は、5%ウシ血液を補充したミュラーヒントンアガー(Difco)上で、37℃、10%CO2インキュベータ中で、維持した。
【0112】
実施例2 バイオフィルム形成アッセイ
バイオフィルム形成についてアッセイするC.ジェジュニ分離株を、ミュラーヒントンブロス(MHB)中、37℃及び10%CO2で、振とうしながら0.25のOD600まで一晩増殖させた。1mlのMHB、ブルセラA(Difco)又はボルトン(Difco)ブロスを含む24ウェルポリスチレンプレート(Corning)のウェルに、C.ジェジュニ分離株の一晩培養物をOD600=0.025(約2.5×107個の細菌)まで接種した。次いで、プレートを周囲空気10%CO2雰囲気中、25又は37℃で24、48又は72時間インキュベートした。インキュベーションの後、培地を除去し、ウェルを55℃で30分間乾燥させ、1mlの0.1%クリスタルバイオレット(CV)を室温で5分間添加した。非結合CVを除去し、ウェルをH2Oで2回洗浄した。ウェルを55℃で15分間乾燥させ、結合したCVを80%エタノール:20%アセトンで脱色した。この溶液の100μlの分割量をウェルから除去し、96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダー(Bio−tek)を用いてOD570を判定して、バイオフィルム形成を判定した。
【0113】
バイオフィルム形成に対する浸透圧調節物質の効果を判定するために、バイオフィルムアッセイの前にMHBに化合物を添加した。分析の前に、プレートを10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。
【0114】
実施例3 非生物表面上でのC.ジェジュニバイオフィルム形成
アクリロニトリルブタジエンスチレンプラスチック(ABS)、ポリ塩化ビニルプラスチック(PVC)、ポリスチレン又は銅の、無菌の約1×4cmの切り取り試片を、切り取り試片が完全に沈むように、5mlのMHBとともに15mlのポリプロピレンチューブに入れた。チューブにC.ジェジュニをOD600=0.025まで接種し、10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。切り取り試片を無菌で除去し、2mlの0.1Mリン酸緩衝生理食塩水pH7.3(PBS)及び20個の無菌の4mmガラスビーズとともに無菌の15mlチューブに入れ、全速力で1分間チューブをボルテックスして細菌細胞を除去した。5%血液を補充したミュラーヒントンアガー上に希釈平板することによって生菌を数えた。
【0115】
実施例4 タンパク質合成の阻害
MHB中のC.ジェジュニの一晩培養物を0.5μg/mlのクロラムフェニコール(CM)で、室温で15分間処理してから、抗生物質の非存在下でバイオフィルム形成についてアッセイした。この濃度のCMではタンパク質合成は阻害されたが、C.ジェジュニ細胞の生存率は損なわれなかった。CM処理したC.ジェジュニのバイオフィルム形成を、上述のようにアッセイした。
【0116】
実施例5 バイオフィルム形成に対する培養上清液の効果
グラム陰性グラム陽性細菌培養上清液を、適切な培地中での24時間の増殖の後に収集した(表2)。5000gでの遠心分離によって細胞を除去し、上清培養液を0.22μmフィルターによってろ過した。上清又は接種されていない培地をMHBと1:1で混合した。C.ジェジュニをこれらの培地に接種し、上述のようにバイオフィルム形成をアッセイした。
【0117】
実施例6 C.ジェジュニflaAB及びluxS変異体の構築
鞭毛又はクオラムセンシング分子自己誘発物質2(AI2)をコードする遺伝子のC.ジェジュニ変異体を構築して、バイオフィルム形成におけるこれらの因子の役割を評価した。C.ジェジュニM129flaA及びflaB二重変異体を以下のように構築した。PCRを用いて、プライマー5’CTTTGGCTATCTCGAGACAGGCACTC 3’(配列番号3)及び5’AAGCTGCAAGCTTGGTGTTAATACGA 3’(配列番号4)でC.ジェジュニM129ゲノムDNA由来のflaAの5’末端を含む0.9kbの断片を増幅し、プライマー5’AAATCAGAGAATTCATTGGTTCGGTG 3’(配列番号5)及び5’TAACAACAGGATCCTCATAGGTCAGG 3’(配列番号6)でflaBの3’末端を含む0.9kbの断片を増幅した。得られた生成物を、それぞれXhoI HindIII及びEcoRI BamHIで消化した(プライマー配列中で制限酵素部位に下線を引く)。断片が耐性遺伝子を挟み、同じ方向に配向するように、pBC KSのHindIII及びEcoRI部位にクローニングされたカンピロバクター・コリaphA3カナマイシン耐性遺伝子を含むベクターpSJB21中に2つの断片を連続的にクローニングした。この対立遺伝子交換プラスミドをエレクトロポレーションによってC.ジェジュニ株M129に導入し、5%血液及び50μg/mlカナマイシンを補充したミュラーヒントンアガー上で推定上の変異体を選択した。対立遺伝子置換をPCR及びサザンブロットによって確認した。flaA及びflaBはC.ジェジュニ中で隣接しているので、得られたflaAB変異体は、両方の遺伝子を破壊して、flaAの5’末端及びflaBの3’末端のみを含んでいた。
【0118】
プライマー5’CTTCTTGTAACTCGAGTTGTCGTATC 3’(配列番号7)及び5’AATCAAATAAGCTTATATCATCACCC 3’(配列番号8)で増幅された、C.ジェジュニM129luxS遺伝子の5’末端、並びにプライマー5’GAACTTAAGAATTCCCAATGCGGAAC 3’(配列番号9)及び5’ATCTTTATGGGATCCTACGCCTTGAG 3’(配列番号10)で増幅された、luxSの3’末端に由来するPCR産物を、pSJB21にクローニングすることによって、同様にC.ジェジュニluxS変異体を構築した。次いで、得られたプラスミドを、上述のように対立遺伝子交換に用いた。
【0119】
実施例7 走査型及び透過型電子顕微鏡法
ミュラーヒントンブロス(MHB、Difco)中、37℃及び10%CO2で、振とうしながら0.25の600nmでの光学密度(OD600)まで、C.ジェジュニ分離株を一晩増殖させた。無菌のポリカーボネート膜及び3mlのMHBを含む35mmプレート(Corning)に、OD600=0.025(約2.5×107CFU)までC.ジェジュニ分離株の一晩培養物を接種した。プレートを10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。インキュベーションの後、C.ジェジュニバイオフィルムを含むポリカーボネート膜を無菌で除去し、固定のために、0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%ホルムアルデヒド1%グルタルアルデヒドに入れた。固定後の膜を、脱イオンH2O中の1%四酸化オスミウムを含む溶液に入れた。次いで、膜を、EtOH勾配1×80%5分間、2×95%5分間、2×100%5分間によって処理し、臨界点乾燥し、金でスパッタコートし、マウントし、走査型電子顕微鏡法によって観察した。バイオフィルムはまた、透過型電子顕微鏡法によっても観察した。培養物を上述のように増殖させた。24ウェルプレートを10%CO2雰囲気中37℃で24時間インキュベートした。インキュベーションの後、10μlのC.ジェジュニバイオフィルムを、Formvarコートされた400メッシュ銅格子上に1分間ピペッティングした。Whatmanろ紙を用いて液体を吸収し、2回すすいだ。すすいだ後、格子を、1%リンタングステン酸を用いてネガティブ染色した。種々の有益な倍率で画像を作成して、糸状構造の詳細を解明した。
【0120】
実施例8 線毛採取
NCTC株11168を、バイオフィルム形成条件下で72時間、225cm細胞培養フラスコ中で増殖させる。成熟したバイオフィルムを採取し、貯蔵し、遠心分離(30,000xg30分間)によって培地を除去する。ペレット化したバイオフィルムをエタノールアミン(0.4M、pH9.0)中に再懸濁し、機械的せん断によって細胞から線毛を除去する。次いで試料を遠心分離(2,500Xg、60分間)し、可溶化した線毛を含む上清を収集する。硫酸アンモニウムを45%飽和まで上清に添加し、溶液を4℃で一晩インキュベートして線毛を沈殿させる。遠心分離(30,000Xg、30分間)によって線毛を収集し、再蒸留H2O中に再懸濁させる。次いで、TEMを用いて粗試料を観察して、粗調製物中の繊維の存在を保証する。
【0121】
実施例9 バイオフィルム生成
1mlのミュラー−ヒントンブロスに.05のOD600までC.ジェジュニの一晩ブロス培養物を接種する。培養物は、バイオフィルム形成条件下(37℃、5%CO2)でインキュベートされたTPIGDPVL nである。24、48及び72時間の時点で、吸引によってブロスを除去し、無菌PBSでバイオフィルムを2回すすいで、非接着性細胞及び破片を除去する。次いで、得られたバイオフィルムをクリスタルバイオレットで染色し、405nm波長でプレートリーダーを用いて、生成されたバイオフィルムの量を測定する。
【0122】
実施例10 組換え線毛タンパク質発現及び生成
シグナル3Pソフトウエアを用いてcj1534c遺伝子の検索を行って、遺伝子中の任意のシグナル配列の存在を判定したが、同定されたものはなかった。理論に拘束されることを望むことなく、本発明者らは、本発明の線毛タンパク質遺伝子がIII型分泌タンパク質であると考えている。
【0123】
大腸菌において標準的な技術を用いて、遺伝子CJ1534cのコード領域全体を発現ベクターpTRC−HIS B(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)中にクローニングした。C.ジェジュニ線毛タンパク質遺伝子のPCR増幅のために、特異的プライマーを設計した。フォワードプライマー、cj1534F1、AAAAAAAGGAGGATCCCATGTCAGTTAC(配列番号11)及びリバースプライマー、cj1534R2、CATAAAGCCCGAATTCTTACATTTTG(配列番号12)。この戦略によって、コード配列の上流のBamH1部位及びコード配列の下流のEcoR1認識部位を導入した。制限切断部位は、PCR産物が発現プラスミドpTRC−HIS B中の適切なリーディングフレーム中にクローニングされるよう配置した。カスタムプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を配列決定して、正しい遺伝子が増幅されていることを保証した。次いで、BamH1及びEcoR1を用いて、PCR産物及び精製されたpTRC−HIS Bベクターを消化した。得られた消化を浄化及び脱塩し、次いで合わせてライゲートした。一旦ライゲートすると、cj1534cを含むベクターを脱塩し、大腸菌DH5α中にエレクトロポレーションした。プラスミドを含むコロニーを選択し、配列決定を行って、適切なプラスミド構築を保証した。
【0124】
次いで、得られたプラスミド構築物を配列決定して、遺伝子の適切な挿入を保証した。適切な構築物の確認の際に、1LのLBブロスに、.05のOD600まで、発現プラスミドを含む大腸菌を接種し、.8のODに達するまでインキュベート(37℃、150RPM)した。250nMの終濃度までIPTGを添加し、さらに3時間インキュベーションを継続した。次いで、遠心分離によって細胞を収集し、製造業者の使用説明書の通りにTALON(登録商標)アフィニティー精製(BD Biosciences−Clontech、カリフォルニア州パロアルト)を用いて、組換えタンパク質を収集した。次いで、タンパク質濃縮装置(Amincon Corporation、マサチューセッツ州ダンバース)を用いて、収集されたタンパク質を濃縮し、試料を配列決定して、適切なタンパク質生成を保証する。BCAアッセイを用いて全タンパク質生成を判定し、収集された試料全てを、無菌PBS又は再蒸留H2Oで1mg/mlの終濃度まで調節する。
【0125】
実施例11 ワクチンプロトコール
市販のブロイラーヒヨコを商業用の孵化場から購入する。到着の際に、クロシールスワブを行って、鳥がC.ジェジュニを含まないことを保証し、鳥を実験のために必要な群に分ける。食物及び水は随意に入手可能である。孵化の14日後に、ヒヨコに1回目のワクチンを施し、有害な副作用についてモニタリングする。最初のワクチン接種の10日後に、鳥にブースターワクチン接種を施し、再び副作用について観察する。ブースターワクチン接種の10日後に、ヒヨコにおよそ5×104CFUのC.ジェジュニを経口経管栄養によって負荷する。負荷の5日後に、陽性対照をスワブして、C.ジェジュニが流されていることを保証し、生細胞数を判定した。負荷の10日後に、鳥を人道的に屠殺し、盲腸を収集し、盲腸の内容物を除去し、段階希釈し、播種して、コロニー形成のレベルを数える。また、盲腸及び腸を全体的に調べて、非特異的病変形成が生じていないことを保証する。
【0126】
実施例12 リポソーム生成
市販のリポソーム調製物を購入し(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、製造業者の仕様書に従って使用する。リポソーム生成のために、5mg/mlの濃度で組換えタンパク質を使用する。リポソーム形成の完了の際に、体積を鳥1羽あたり1mlまで増大させ、経口経管栄養によって投与する。線毛タンパク質の用量は、約0.010〜約0.500mg、望ましくは約0.250mg/鳥である。
【0127】
実施例13 CTアジュバント
市販のコレラ毒素アジュバントを購入し(Sigma)、.033μg毒素/鳥の最終量まで、組換えタンパク質で希釈する。次いで、これを1mlの終体積まで希釈し、経口経管栄養によって投与する。
【0128】
実施例14 ニワトリのコロニー形成は、非線毛化株によるよりも線毛化C.ジェジュニによる方がより大きい。
C.ジェジュニ株NCTC11168の線毛タンパク質ノックアウト変異体を作製した。この変異体は、電子顕微鏡法によって判定すると、C.ジェジュニ細胞表面上での線毛の発現の欠乏を生じる。本発明の線毛タンパク質遺伝子は線毛タンパク質の発現に必要であり、これは18kDである。配列番号2及び表4中にアミノ酸配列を提供する。
【0129】
非線毛化変異体株を2週齢のヒヨコに導入し、並行した実験において、野生型NCTC11168を他の2週齢のヒヨコに導入した。非線毛化変異体株を施されたヒヨコにおいて、全体的減少(少なくとも1000倍)が観察された。野生型株が導入された全てのヒヨコはコロニー形成された(14/14)。非線毛化変異体を負荷されたヒヨコについては、5/14のみがコロニー形成された。このことから、Cj1534遺伝子(コード配列、配列番号1)の変異によって、変異体がヒヨコにコロニー形成する能力が減少することが示される。このタンパク質を含む免疫原性組成物は、C.ジェジュニによるヒト及び動物のコロニー形成及び/又は感染を減少させるのに有効である。農業用の動物の減少したコロニー形成は、食品の微生物的品質を向上させ、C.ジェジュニでの環境汚染を減少させるであろう。かかる免疫原性組成物が投与されたヒトは、C.ジェジュニによって引き起こされた疾患の、減少した発生率及び/又は重症度を有するであろう。
【0130】
実施例15 抗体判定のためのElisa
96ウェルマイクロタイタープレートを、適切な抗原(組換え又は天然のタンパク質のいずれか)で一晩コートする。非接着性の抗原をプレートから洗い流し、ワクチン接種された動物由来の一次抗体を1%ウシ胎仔血清(FBS)で段階希釈(2倍)し、マイクロタイタープレートに添加する。一晩インキュベートした後、非接着性の一次抗体をプレートから洗い流し、1%FBSで1:400に希釈した二次抗体を添加する。二次抗体は市販されており(KPL)、種々の動物種(ニワトリを含む)から産生された抗体を認識し、酵素と結合している。4時間のインキュベーションの後、プレートを洗い流し、発色基質を各ウェルに添加する。目的の抗体がウェル中で抗原コーティングに結合している場合、二次抗体に連結された酵素は基質を切断し、発色を生じ、これは存在する抗体のレベルに比例し、目的の結合している抗体の定量を可能にするか、又は、このシステムは定量アッセイにおいて機能することができる。
【0131】
組換え線毛タンパク質に応答して生じる抗血清は、組換え線毛タンパク質並びに天然のC.ジェジュニ線毛を認識した。組換え線毛タンパク質を皮下でワクチン接種されたヒヨコから調製された血清を分析すると、組換え及びバイオフィルム線毛タンパク質抗原の両方と反応することが見出された。組換え線毛タンパク質を含むリポソームをワクチン接種されたヒヨコ由来の便物質由来の抗体(IgA)は、組換え線毛と反応した(ワクチン接種されていないヒヨコの反応より3倍増大)。
【0132】
実施例16 差次的遺伝子発現
プレート上で発現されたC.ジェジュニ遺伝子のものに対してヒヨコモデル及び24時間のバイオフィルムにおいて異なった形で発現されるC.ジェジュニ遺伝子を同定し、上方制御された遺伝子について比較を行った。2羽の15日齢ブロイラーニワトリに107個のC.ジェジュニを経口接種によって感染させ、C.ジェジュニRNAの抽出のために、感染の10日後に盲腸内容物を収集した。ミュラーヒントンブロスに、C.ジェジュニを接種し、24時間のバイオフィルムからRNAを抽出した。in vivoで得られたRNA及びプレート増殖させた細胞から抽出されたRNAを、cDNA合成及び標識化に供した。Combimatrix DNAマイクロアレイスライドでハイブリダイゼーション実験を行った。データ抽出のためにCombimatrix Microarray Imagerを利用し、GeneSpringソフトウエアを用いて、識別的発現についてデータを分析した。
【0133】
各動物モデルについてのハイブリダイゼーションのために、2枚のスライドを用い、各スライドは1アレイあたり6,000個の独自のプローブ(2つ組)〜合計12,000個のプローブからなった。主なデータ又は対照データのいずれかを表す色素(Cy3、Cy5)をスライド間で切り替えた。中央値データ(対平均データ)を利用して、異常値に対する感度を最小限にした。データの正規化の後に、cj1534遺伝子に特異的な、スライド1枚あたり4つの独自のプローブ(合計8つのプローブについて)が、ヒヨコモデルにおいて平均7.0倍(2.1〜16.4の範囲)及び24時間のバイオフィルムにおいて平均1.8倍(1.3〜2.2の範囲)過剰発現した。このデータは、cj1534遺伝子がトリ宿主のコロニー形成に関与していることを支持する。
【0134】
実施例17 抗体判定のためのElisa
96ウェルマイクロタイタープレートを、適切な抗原(組換え又は天然のタンパク質のいずれか)で一晩コートする。非接着性の抗原をプレートから洗い流し、ワクチン接種された動物由来の一次抗体を1%ウシ胎仔血清(FBS)で段階希釈(2倍)し、マイクロタイタープレートに添加する。一晩インキュベートした後、非接着性の一次抗体をプレートから洗い流し、1%FBSで1:400に希釈した二次抗体を添加する。二次抗体は市販されており(KPL)、種々の動物種(ニワトリを含む)から産生された抗体を認識し、酵素と結合している。4時間のインキュベーションの後、プレートを洗い流し、発色基質を各ウェルに添加する。目的の抗体がウェル中で抗原コーティングに結合している場合、二次抗体に連結された酵素は基質を切断し、発色を生じ、これは存在する抗体のレベルに比例し、目的の結合している抗体の定量を可能にするか、又は、このシステムは定性的なアッセイにおいて機能することができる。
【0135】
組換え線毛タンパク質に応答して生じる抗血清は、組換え線毛タンパク質並びに天然のC.ジェジュニ線毛を認識した。組換え線毛タンパク質を皮下でワクチン接種されたヒヨコから調製された血清を分析すると、組換え及びバイオフィルム線毛タンパク質抗原の両方と反応することが見出された。高用量のC.ジェジュニ(約105個)を負荷された、ワクチン接種されたヒヨコは、対照ヒヨコよりも平均25%少ない、コロニー形成した細菌を有した。特に、ワクチン接種されたヒヨコのサブセットは、1〜4桁まで少ない、コロニー形成したC.ジェジュニを有したが、ワクチン接種されたヒヨコの何羽かは、対照のものと同様の数を有した。理論に拘束されることを望むことなく、負荷用量が、天然の感染の結果を適切に予測するのには高すぎたと考えられる。
【0136】
組換え線毛タンパク質を含むリポソームをワクチン接種されたヒヨコ由来の便物質由来の抗体(IgA)は、組換え線毛と反応した(ワクチン接種されていないヒヨコの反応より3倍増大)。
【0137】
本明細書中の記載はある特定の情報及び実施例を含むが、これらは本発明の範囲を限定するものとしてではなく、単に本発明の現在好ましい実施形態のいくつかの例示を提供するものとして解釈されるべきである。例えば、したがって、本発明の範囲は、示された実施例によってではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物によって決定されるべきである。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
文献目録
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質をコードする配列を含む、天然に存在しない組換え核酸分子。
【請求項2】
前記線毛タンパク質が配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
線毛タンパク質をコードする前記配列が配列番号1に示される、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
ベクター配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1に記載の天然に存在しない核酸分子が導入されている、組換え細胞。
【請求項6】
細菌細胞である、請求項5に記載の組換え細胞。
【請求項7】
腸内細菌細胞である、請求項6に記載の細菌細胞。
【請求項8】
非病原性サルモネラ細胞である、請求項7に記載の腸内細菌細胞。
【請求項9】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター線毛タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む、免疫原性組成物。
【請求項10】
前記カンピロバクター線毛タンパク質が配列番号2に示されるアミノ酸配列によって特徴付けられる、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記カンピロバクター線毛タンパク質が、組換えによって生成されたカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
カンピロバクターバイオフィルム物質を含む、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記カンピロバクターバイオフィルム物質が死滅細胞カンピロバクターバイオフィルム物質である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記カンピロバクターバイオフィルム物質が弱毒化カンピロバクターバイオフィルム物質である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記弱毒化カンピロバクターバイオフィルム物質がkatA欠損カンピロバクターバイオフィルム物質又はfur欠損カンピロバクターバイオフィルム物質である、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項9〜15のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記免疫学的アジュバントがコレラ毒素サブユニットBを含む、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質を発現することができるDNAワクチン分子を含む免疫原性組成物。
【請求項19】
前記ワクチンDNA分子が配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を発現することができる、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する抗体。
【請求項21】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する治療有効量の抗体を、該抗体を必要とするヒト又は動物に投与するステップを含む、カンピロバクター感染を治療するための方法。
【請求項22】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質を含む免疫原性組成物を、該組成物を必要とするヒト又は動物に投与するステップを含む、カンピロバクター・ジェジュニでのヒト又は動物の感染及び/又はコロニー形成を減少させるための方法。
【請求項23】
前記カンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組成物がヒト又は動物の粘膜表面に投与される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
組成物がヒト又は動物に経口投与される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項21〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
[請求項26]請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子が導入されている組換え細胞を、線毛タンパク質が生成される条件下で培養するステップを含む、配列番号2のアミノ酸配列からなる線毛タンパク質を組換えによって生成するための方法。
【請求項28】
[請求項27]線毛タンパク質を収集するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
[請求項28](a)カンピロバクター線毛タンパク質を含む可能性のある試料を提供するステップと、
(b)カンピロバクター線毛タンパク質と抗体との結合を可能にする条件下で、試料を請求項20に記載の抗体と接触させるステップと、
(c)線毛タンパク質への抗体の結合を検出するステップと
を含む、配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター線毛タンパク質の存在を検出するための方法。
【請求項30】
[請求項29]前記試料が非生物学的試料である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
[請求項30]前記試料が生物学的試料である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
[請求項31]前記試料が、盲腸、便、排出腔、家禽、豚肉又は乳試料である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
[請求項32](a)配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する抗体を含む可能性のある試料を提供するステップと、
(b)抗体への線毛タンパク質の結合を可能にする条件下で、試料を線毛タンパク質と接触させるステップと、
(c)抗体への線毛タンパク質の結合を検出するステップと
を含む、配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する抗体を検出する方法。
【請求項34】
[請求項33]前記試料がヒト又は動物由来の生物学的試料である、請求項32に記載の方法。
【請求項1】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質をコードする配列を含む、天然に存在しない組換え核酸分子。
【請求項2】
前記線毛タンパク質が配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
線毛タンパク質をコードする前記配列が配列番号1に示される、請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
ベクター配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1に記載の天然に存在しない核酸分子が導入されている、組換え細胞。
【請求項6】
細菌細胞である、請求項5に記載の組換え細胞。
【請求項7】
腸内細菌細胞である、請求項6に記載の細菌細胞。
【請求項8】
非病原性サルモネラ細胞である、請求項7に記載の腸内細菌細胞。
【請求項9】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター線毛タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む、免疫原性組成物。
【請求項10】
前記カンピロバクター線毛タンパク質が配列番号2に示されるアミノ酸配列によって特徴付けられる、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記カンピロバクター線毛タンパク質が、組換えによって生成されたカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
カンピロバクターバイオフィルム物質を含む、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記カンピロバクターバイオフィルム物質が死滅細胞カンピロバクターバイオフィルム物質である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記カンピロバクターバイオフィルム物質が弱毒化カンピロバクターバイオフィルム物質である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記弱毒化カンピロバクターバイオフィルム物質がkatA欠損カンピロバクターバイオフィルム物質又はfur欠損カンピロバクターバイオフィルム物質である、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項9〜15のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記免疫学的アジュバントがコレラ毒素サブユニットBを含む、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質を発現することができるDNAワクチン分子を含む免疫原性組成物。
【請求項19】
前記ワクチンDNA分子が配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を発現することができる、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する抗体。
【請求項21】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する治療有効量の抗体を、該抗体を必要とするヒト又は動物に投与するステップを含む、カンピロバクター感染を治療するための方法。
【請求項22】
配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質を含む免疫原性組成物を、該組成物を必要とするヒト又は動物に投与するステップを含む、カンピロバクター・ジェジュニでのヒト又は動物の感染及び/又はコロニー形成を減少させるための方法。
【請求項23】
前記カンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組成物がヒト又は動物の粘膜表面に投与される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
組成物がヒト又は動物に経口投与される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が免疫学的アジュバントをさらに含む、請求項21〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
[請求項26]請求項1〜4のいずれかに記載の核酸分子が導入されている組換え細胞を、線毛タンパク質が生成される条件下で培養するステップを含む、配列番号2のアミノ酸配列からなる線毛タンパク質を組換えによって生成するための方法。
【請求項28】
[請求項27]線毛タンパク質を収集するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
[請求項28](a)カンピロバクター線毛タンパク質を含む可能性のある試料を提供するステップと、
(b)カンピロバクター線毛タンパク質と抗体との結合を可能にする条件下で、試料を請求項20に記載の抗体と接触させるステップと、
(c)線毛タンパク質への抗体の結合を検出するステップと
を含む、配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター線毛タンパク質の存在を検出するための方法。
【請求項30】
[請求項29]前記試料が非生物学的試料である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
[請求項30]前記試料が生物学的試料である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
[請求項31]前記試料が、盲腸、便、排出腔、家禽、豚肉又は乳試料である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
[請求項32](a)配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する抗体を含む可能性のある試料を提供するステップと、
(b)抗体への線毛タンパク質の結合を可能にする条件下で、試料を線毛タンパク質と接触させるステップと、
(c)抗体への線毛タンパク質の結合を検出するステップと
を含む、配列番号2に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列によって特徴付けられるカンピロバクター・ジェジュニ線毛タンパク質に特異的に結合する抗体を検出する方法。
【請求項34】
[請求項33]前記試料がヒト又は動物由来の生物学的試料である、請求項32に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2009−542257(P2009−542257A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519425(P2009−519425)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/061470
【国際公開番号】WO2008/008092
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509011802)ジ アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/061470
【国際公開番号】WO2008/008092
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509011802)ジ アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティ オブ アリゾナ (1)
【Fターム(参考)】
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