説明

カンプトテシン結合部分

本発明は、標的部分(抗体または抗体断片など)、リンカーおよび治療的部分としてのカンプトテシンを含有する種々の異常細胞を標的にするための向上した能力を有する治療的複合体に関し、さらに、該複合体を生成および使用するための工程に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のがん細胞、感染性病原体を標的にするため、および/または自己免疫疾患を治療するための向上した能力を有する治療的複合体に関し、複合体は、薬物のカンプトテシン基に属する標的(結合)部分および治療的部分を含有する。標的および治療的部分は、治療効果を増強させる細胞内で開裂可能な連結を介して連結される。
【0002】
本出願は、2006年3月23日に出願された米国特許出願第11/388,032号の優先権を主張するものであり、参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
科学者は、特異的に標的化された薬物療法の分野において、ヒト癌への毒性薬の特異的送達に対してモノクローナル抗体(monoclonal anitibody:MAb)を使用することを長年目的としている。腫瘍関連MAbおよび適切な毒性薬の複合体が開発されているが、癌療法において成功、不成功があり、他の疾患へは事実上適用されない。毒性薬は、粒子を放射する放射性核種、または細菌もしくは植物毒素もMAbに結合されているが、化学療法薬が最も一般的である。
【0004】
MAb−化学療法薬複合体を使用する利点は、(a)化学療法薬自体は、構造上明確であること、(b)化学療法薬は、大抵MAb抗原に結合する領域から遠く離れた特定部位において、非常に明確な結合化学を使用してMAbタンパク質に連結されること、(c)MAb−化学療法薬複合体は、MAbおよび細菌または植物毒素を含む化学的複合体よりもより再現性よく生成されることができ、それゆえ、商業的開発および規制許可に対して、より適切であること、および、(d)MAb−化学療法薬複合体は、放射性核種MAb複合体よりも全身的に、桁違いに低毒性であること、である。
【0005】
本発明は、細胞毒性化合物のカンプトテシン(camptothecin:CPT)基の複合体の調製に関連する特定のの問題を解決する。CPTおよびその誘導体は、強力な抗癌剤の種類である。イリノテカン(CPT−11とも称される)およびトポテカンは、承認された癌治療薬である(Iyer and Ratain,Cancer Chemother.Phamacol.42:S31−S43(1998))。CPTは、トポイソメラーゼI−DNA複合体を安定化させることにより、トポイソメラーゼI酵素を抑制する作用を有する(Liuら、in The Camptothecins:Unfolding Their Anticancer Potential,Liehr J.G.,Giovanella,B.C.and Verschraegen(eds),NY Acad Sci.,NY 922:1−10(2000))。
【0006】
CPTは、複合体の調製において一連の問題を呈する。1つの問題は、CPT誘導体の多くが水性緩衝液中で不溶性であるということである。次に、CPTは、巨大分子に結合させる構造的変化に対して特有の課題を呈する。例えば、CPT自体は、E環において第3級ヒドロキシル基のみを含有する。CPTの場合のヒドロキシル官能基は、その後のタンパク質結合に適したリンカーと結合されなければならず、、CPT−11の活性代謝物であるSN−38、ならびにトポテカンおよび10−ヒドロキシ−CPTなどの他のC−10−ヒドロキシル含有誘導体などの強力なCPT誘導体において、C−10位置でのフェノール性ヒドロキシルの存在は、必要なC−20−ヒドロキシル誘導体化を困難にさせる。第3に、生理的条件下におけるそれらの構造のE環のδ−ラクトン部分の不安定性は、これらの生成物の抗腫瘍作用を大いに低減させる。したがって、結合手順は、ラクトン開環を避けるために7以下のpHで実行できるように行われる。一般的に、活性エステルなどのアミン反応基を持つ2官能性のCPTの結合は、8以上のpHを必要とする。第4に、細胞内で開裂可能な部分は、CPTおよび抗体に連結するリンカー/スペーサーまたは他の結合部分内に組み込まれる。
【0007】
生理的条件下におけるδ−ラクトン開口の問題は、これまで解決の努力がなされている。一つのアプローチは、アミノ酸を有するC−20ヒドロキシル基をアシル化させ、アミノ酸のα−アミノ基をポリ−L−グルタミン酸に結合させることである(Singerら、in The Camptothecins:Unfolding Their Anticancer Potential,Liehr J.G.,Giovanella,B.C.and Verschraegen(編者),NY Acad Sci.,NY 922:136−150(2000))。このアプローチは、腫瘍部位内への高分子の受動拡散に依存する。また、このグリシン結合は、CPTの水溶性誘導体を生成する方法として(Vishnuvajjalaら、米国特許第4,943,579号)、およびCPTのPEG−誘導体化の調製において(Greenwaldら、J.Med.Chem.39:1938−1940(1996))も報告されている。後者の場合において、アプローチは、水溶性および長時間作用型CPTの開発に関連して考案されており、それにより、CPTの体内半減期は向上し、薬物は体内で循環しながらその複合体から徐々に遊離される。
【0008】
本発明は、上記4つの問題および合成の課題を考慮して、CPTの、特にSN−38などの10−ヒドロキシ誘導体の複合体を調製する方法を開示する。SN−38は、プロドラックの承認抗癌剤CPT−11の活性薬物型である。CPT−11の薬理作用およびSN−38へのその体内変換に関して、膨大な臨床データが利用可能である(IyerおよびRatain,supra;Mathijssenら、Clin Cancer Res.7:2182−2194(2002);Rivory,Ann NY Acad Sci 922:205−215,2000))。活性型SN−38は、CPT−11よりも2から3桁強力である。
【0009】
タンパク質−薬物複合体に関する初期研究は、タンパク質−化学療法薬複合体が有益な治療薬となるためには、標的細胞内へ取り入れられた後に、薬物がその最初の形態で理想的には放出される必要があることを示した。Trouetら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:626−629(1982))は、リソソーム性に開裂されて、そのままの薬物を遊離する、薬物と標的部分間の特異的ペプチドリンカーを使用する利点を示した。1980年代および1990年代初期の研究は、化学療法薬およびMAb間の化学的リンカーの性質にさらに重点を置いた。とりわけ、弱酸開裂可能なリンカーを使用して調製されたMAb−化学療法薬複合体が、腫瘍内部のpHは通常の生理学的pHよりも大抵低いという見解に基づいて開発された。この点において、開裂可能なユニットとしてヒドラゾンを取り込むことにより、およびチオエーテル基を介してDOXをMAbに付着させることにより、優れた結果が発見された(Willnerら、米国特許第5,708,146号、Trailら(Science 261:212−215(1993))。このアプローチは、適切なリンカーで調製されたMAb−ドキソルビシン(DOX)複合体が、前臨床研究においてヒト腫瘍異種移植片を有するマウスの治療に使用され得ることを示した。最初に承認されたMAb−薬物複合体であるゲムツズマブオゾガマイシン(Gemtuzumab Ozogamicin)は、抗CD33抗体、ヒト化P67.6、および強力なカリケアマイシン誘導体間で同様の酸に不安定なヒドラゾン結合を組み入れる。Sievers ら、J Clin Oncol.19:3244−3254(2001)、Hamann ら、Bioconjugate Chem.13:47−58(2002)。一部の例では、MAb−化学療法薬複合体は、化学療法薬およびMAb間の還元的に不安定なヒンダードジスルフィド結合を用いて生成された(Liuら、Proc Natl Acad Sci USA 93:8618−8623(1996))。さらに別の開裂可能なリンカーは、薬物およびジペプチド間に折り畳めるスペーサーをさらに組み込んだ、1つから4つのアミノ酸を含有する、Trouetらのリソソーム性に不安定なペプチドスペーサーと同様の、フェニルアラニン−リジンまたはバリン−シトルリンなどのカテプシンBに不安定なジペプチドスペーサーを含む(Dubowchikら、Bioconjugate Chem.13:855−869(2002)、Firestoneら、米国特許第6,214,345B1号、Doroninaら、Nat Biotechnol.21:778−784(2003))。また、後者のアプローチは、カンプトテシンの免疫複合体の調製においても利用された(Walkerら、Bioorg Med Chem Lett.12:217−219(2002))。研究されている別の開裂可能な部分は、抗体および化学療法薬間のリンカー内に組み込まれたエステル連結である。GillimardおよびSaragoviは、パクリタキセルのエステルが抗ラットp75 MAb、MC192、または抗ヒトTrkA MAb、5C3に結合された場合、複合体が標的特異的毒性を提示することを発見した。Gillimard and Saragovi、Cancer Res.61:694−699(2001)。
【0010】
部分−薬物複合体の結合設計における開裂可能なリンカーの組み込みは誇張できないが、一方で、リンカーの設計がどのように特異的CPT結合部分複合体の調製全体に影響を及ぼすかに関して重点を置くことも重要である。本発明は、2官能性の薬物−リンカー分子の調製に関連する問題を解決し、また、該薬物は、例えば、複合体の設計において、強力なSN−38類似体など、誘導体化に対する1つを超える反応基を含有することができる。抗癌剤CPT−11の臨床的に重要な活性薬物型であるが、CPT−11よりも100〜1000倍強力であるSN−38は、不溶性のために全身的に使用することできない。本発明は、CPTを使用における他の課題にも対応するような方法で標的部分にそれを抱合させ、一方で、疾患特異的抗体を使用してこの臨床的に重要な強力な薬物の治療的指標を同時に向上させることによって、この問題を解決する。
【0011】
本発明の複合体は、多くの場合において、非結合または「裸」抗体または抗体フラグメント(かかる非結合の標的分子は、特定の状況で使用されているが)よりも優れた有効性を有する。例えば、癌において、裸抗体は、リンパ腫(Campath(登録商標)およびRituxan(登録商標))、結腸直腸癌および他の癌(Erbitux(登録商標)およびAvastin(登録商標))、乳癌(Hereceptin(登録商標))、ならびに現在臨床開発中の数多くのもの(例えば、エプラツズマブ)の治療に関与してきている。これらの多くの場合において、臨床用途は、化学療法または放射線療法などの他の療法と、これらの裸または非結合抗体を組み合わせることを含んでいる。また、種々の抗体は、関節炎における腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)およびB細胞(Rituxan(登録商標))抗体などが自己免疫および他の免疫調節異常疾患の治療において使用され、また、全身性エリテマトーデスおよびシェーグレン症候群、ならびに若年性糖尿病および多発性硬化症におけるB細胞抗体Rituxan(登録商標)およびエプラツズマブなどが他のそのような疾患においても検討されている。また、裸抗体は、敗血症性ショック、アルツハイマー病、および感染症においても研究されている。抗感染性モノクローナル抗体の開発は、ReichertおよびDewitz(Nat Rev Drug Discovery 2006;5:191−195)により最近検討されており、その全体は参照することにより本願明細書に組み込まる。これは、探求されている裸抗体療法に対する優先病原体を要約し、結果として、2つの病原体のみ(RSウイルスおよびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の抗体が第III相臨床試験中であるか市販されており、他の25種が臨床研究に付され、20種が臨床研究中に中止された。したがって、より強力な抗病原性抗体および他の結合部分を開発する必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、カンプトテシン結合部分複合体を調製するための向上された方法および組成物を提供することによって、当技術分野において実現されていない必要性を解消する。開示される方法および組成物は、他の形態の治療法に対して不応性または低反応性である種々の疾患および状態の治療に使用され、選択的な標的のための適切な標的部分が発達可能である、または利用可能もしくは既知である疾患を含むことができる。好ましくは、この標的部分は、抗体、抗体フラグメント、2重特異性もしくは他の多価抗体、または他の抗体に基づいた分子もしくは化合物である。しかし、アプタマー、アビマーまたは標的ペプチドなどの当業者には既知である他の結合部分が使用されてもよい。かかる標的部分が存在する好適な疾患または状態は、例えば、癌、自己免疫疾患、および炎症性疾患を含む免疫調節異常状態、感染性の生物が原因となる疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)、および循環器疾患(フィブリン塊、粥状動脈硬化、心筋虚血および梗塞)である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
故に、開示される方法および組成物は、標的部分がカンプトテシン関連の細胞毒性薬を送達するために使用される、疾患および状態の治療に適用されてもよい。かかる疾患および状態は、癌または病原生物感染の免疫療法などにおいて、非結合または裸標的部分が使用される場合に十分に影響されない標的分子または標的細胞の存在によって特徴付けられてもよい。(疾患治療法において使用されるアイソトープ、薬物、および毒素との抗体の免疫複合体を生成する方法に関しては、例えば、それぞれ参照することによって全体が組み込まれる、米国特許第4,699,784号、第4,824,659号、第5,525,338号、第5,677,427号、第5,697,902号、第5,716,595号、第6,071,490号、第6,187,284号、第6,306,393号、第6,653,104号、第6,962,702号、および米国特許出願広報第20050191239号、第20050175582号、第20050136001号、第20040166115号、第20040043030号、第20040022725号、第20030068322号、第20030031669号、第20030026764号および第20020136690号を参照されたい。)
【0014】
特定の例示的な実施形態において、抗体または抗体フラグメントのカンプトテシン複合体は、細菌、ウイルス、真菌、および寄生虫などの病原体へこの治療薬を標的にするために使用されてもよい。好適な実施形態において、かかる薬物結合標的部分は、抗真菌、抗菌および抗ウイルス薬および/または免疫調節物質である裸抗体(例えば、インターフェロンおよび/またはサイトカイン)などの他の治療法と組み合わせて使用されることができる。感染性の生物の治療のための放射免疫療法の使用は、例えば、米国特許第4,925,648号、第5,332,567号、第5,439,665号、第5,601,825号、第5,609,846号、第5,612,016号、第6,120,768号、第6,319,500号、第6,458,933号、第6,548,275号、および米国特許出願広報第20020136690号ならびに第20030103982号に開示され、参照することによってそれら全体が本願明細書に組み込まれる。
【0015】
癌の治療を含む特定の実施形態において、カンプトテシン複合体は、手術、放射線、化学療法、裸抗体を用いる免疫療法、放射免疫療法、免疫調節物質等と組み合わせて使用されてもよい。同様の組み合わせは、心血管、自己免疫および神経変性疾患など、標的部分に影響を受けやすい他の疾患の治療において好ましい。例えば、カンプトテシン複合体は、TNF阻害剤と、B細胞抗体、および、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性硬化症、血管炎および1型糖尿病(若年性糖尿病)などの自己免疫疾患の治療に有効な他の薬剤と、を組み合わせることができる。それらの組み合わせ療法は、かかる組み合わせで、各治療薬を低量投与することを可能にし、従って、特定の重度の副作用を減少させ、必要な治療回数を潜在的に減少させる。
【0016】
一実施形態において、本発明は、
(a)標的部分と、
(b)カンプトテシン(CPT)またはその誘導体もしくは類似体である治療薬部分と、
(c)標的部分に結合する官能基を介して該標的部分に結合し、細胞内で開裂可能な部分を介して該CPT部分に結合するリンカーと、を含む複合体に関する。
【0017】
別の一実施形態において、本発明は、
(a)標的部分と、
(b)カンプトテシン(CPT)またはその誘導体もしくは類似体である治療薬部分と、
(c)標的部分に結合する官能基を介して該標的部分に結合し、細胞内で開裂可能な部分に付着するアミノ酸のC末端を介して該CPTまたはその誘導体に結合するリンカーと、を含む複合体に関する。
【0018】
さらなる一実施形態において、本発明は、複合体を調製する工程に関し、該リンカーは、CPT薬物に最初に結合され、それによってCPT薬物−リンカー複合体を生成し、該CPT薬物−リンカー複合体の調製は、C−IOヒドロキシル基の選択的な保護および脱保護を含み、C−10ヒドロキシル基を含有するCPTの誘導体において、本質的に未変化のC−20炭酸塩結合を維持し、該薬物−リンカー複合体は、任意に精製されず、該薬物−リンカー複合体は、その後、モノクローナル抗体またはフラグメントに結合される。
【0019】
本発明のさらに別の一実施形態は、本明細書に記載される複合体を用いて癌、悪性腫瘍、自己免疫疾患、感染症、または感染性病変を治療する方法である。
【0020】
特別の定めのない限り、「単数(「a」または「an」)」は「1つまたはそれ以上」を意味する。
【0021】
下記の記述において、多くの用語が使用され、以下の定義は本発明の理解を容易にするために提供される。本明細書において明確に定義されない用語は、平易なおよび/または一般的な意味に従って使用される。
【0022】
本明細書で使用される標的部分という用語は、標的分子、細胞、粒子、組織または集合体に特異的または選択的に結合する分子、複合体または集合体を言う。好適な実施形態において、標的部分は、抗体、抗体フラグメント、2重特異性抗体または他の抗体に基づいた分子もしくは化合物である。しかし、アプタマー、アビマー、受容体結合リガンド、核酸、ビオチン−アビジン結合対、結合ペプチドまたはタンパク質など、標的部分の他の例は、当技術分野においては既知であり、使用されてもよい。用語「標的部分」および「結合部分」は本明細書において同義に用いられる。
【0023】
本明細書に説明される抗体は、全長の(つまり、自然発生的なまたは通常の免疫グロブリン遺伝子フラグメント組み換え工程により形成された)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)または抗体フラグメントのような免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な(つまり特異的に結合する)一部分を言う。抗体または抗体フラグメントは、主張される要旨の範囲内において抱合、あるいは誘導体化されてもよい。
【0024】
抗体フラグメントは、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFv(単鎖Fv)などの抗体の一部分である。構造にかかわらず、有益な抗体フラグメントは、無処置の抗体により認識される同一の抗原と結合する。また、用語「抗体フラグメント」は、特異的抗原に結合し、複合体を形成することによって、抗体のように作用する合成または遺伝子操作されたタンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントは、重および軽鎖の可変ドメインから成る「Fv」フラグメントなどの可変ドメインから成る単離されたフラグメントと、軽および重可変ドメインがペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)により連結される組み換え単鎖ポリペプチド分子と、CDRなどの高可変ドメインを模倣するアミノ酸残基から成る最小認識単位とを含む。Fvフラグメントは、多価および/または多特異性結合形態を得るように異なる用法で構成されてもよい。前者の多価の場合は、それらは、特異的エピトープに対して1つを超える結合部位と反応し、一方、多特異性形態では、(抗原の、あるいは、さらにその特異的抗原および異なる抗原に対する)1つを超えるエピトープが結合される。本明細書で使用される抗体構成要素という用語は、抗体全体、融合タンパク質の両方、およびそれらのフラグメントを含む。
【0025】
裸抗体は、概して、治療薬に結合されない抗体全体である。これは、機構が細胞融解をもたらすことができるようにする補体結合およびADCC(抗体依存性細胞の細胞傷害性)などのエフェクターまたは免疫学的機能を、抗体分子のFc部分が提供するためである。しかし、Fc部分は、抗体の治療的機能には必要とされない場合があるが、むしろ、アポトーシス、血管新生抑制、抗転移作用、ヘテロタイプおよびホモタイプ接着の阻害などの抗接着活性、およびシグナル経路における干渉などの他の機構は、疾患進行に関与および阻害し得る。裸抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体およびそれらのフラグメントなど、マウス抗体および特定の組み換え抗体を含むポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方、ならびにそれらのフラグメントを含む。したがって、一部の場合において、また、「裸抗体」は、「裸」抗体フラグメントも言う。本発明において定義されるような「裸」は、「非結合」と同義であり、投与される治療薬に連結または結合されることを意味しない。
【0026】
自己免疫疾患は、その自身の組織に対する免疫応答を生成する体に起因する疾患である。例として、参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる、2002年3月1日に出願された米国仮出願第60/360,259号に開示されるような、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫性の血小板減などのクラスIII自己免疫疾患、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホシェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、関節リウマチ、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および線維化肺胞炎が挙げられる。
【0027】
キメラ抗体は、抗体分子の定常ドメインがヒト抗体のものに由来する一方で、好ましくはげっ歯類抗体である、1つの種に由来する抗体の領域(CDR)を決定する相補性を含む重および軽抗体鎖の両方の可変ドメインを含有する組み換えタンパク質である。獣医学的用途では、キメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌなどの他の種のものに由来してもよい。
【0028】
ヒト化抗体は、例えば、げっ歯類抗体などの1つの種からの抗体からのCDRが、げっ歯類抗体の重および軽可変鎖からヒト重および軽可変ドメイン内へ移動される、組み換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体のものに由来する。一部の例では、ヒト化抗体のフレームワーク領域の特異的残基、特にCDR配列に接触または近接しているのは、修飾されてもよく、例えば、本来のげっ歯類または他の抗体からの対応する残基で置換されてもよい。
【0029】
ヒト抗体は、例えば、抗原投与に応じて特異的ヒト抗体を生成するように「操作された」遺伝子導入マウスから取得される。この技術において、ヒト重および軽鎖遺伝子座の要素は、内在性重鎖および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含有する胚性幹細胞株に由来するマウスの菌株内へ導入される。遺伝子導入マウスは、ヒト抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することができ、マウスは、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを生成するために使用することできる。遺伝子導入マウスからヒト抗体を取得する方法は、Greenら、Nature Genet.7:13(1994),Lonberg et al.,Nature 368:856(1994),およびTaylorら、Int.Immun.6:579(1994)に記載されている。また、完全なヒト抗体は、遺伝子または染色体トランスフェクション方法およびファージディスプレイ技術によっても構成されることができ、それら全ては、当業者には既知である。例えば、未免疫ドナーからの免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体および体内のそのフラグメントを生成には、McCaffertyら、Nature 348:552−553(1990)を参照。この技術において、抗体可変ドメイン遺伝子は、線維状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれか一方内にインフレームでクローン化され、ファージ粒子の表面上に機能的抗体フラグメントとしてディスプレイされる。線維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能的特性に基づいた選択は、それらの特性を提示する抗体をコードする遺伝子の選択にも繋がる。このように、ファージは、B細胞の一部の特性を模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で行うことができ、それらの検討には、例えば、JohnsonおよびChiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564−571(1993)を参照。また、ヒト抗体もまた、体外で活性されB細胞によって産生することができる。参照することにより全体が本願明細書に組み込まれる、米国特許題5,567,610号および第5,229,275号を参照されたい。
【0030】
本明細書で使用される感染症は、細菌、リケッチア、マイコプラズマ、原虫、真菌、ウイルス、寄生虫、または他の微生物因子などの病原体による感染症を含む疾患である。例として、AIDSの原因となるヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)、結核のマイコバクテリア、ストレプトコッカスアガラクチア、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、在郷軍人病菌、化膿性連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌B、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、ウエストナイルウイルス、緑膿菌、らい菌、ウシ流産菌、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI、単純ヘルペスウイルスII、ヒト血清パルボ様ウイルス、RSウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタインバーウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、ブルセイトリパノソーマ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、ウシバベシア、アイメリアテネラ、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリアパルバ、胞状条虫、羊条虫、無鉤条虫、単包条虫、有線条虫属、マイコプラズマアルスリチジス、マイコプラズマハイオリニス、マイコプラズマオラーレ、マイコプラズマアルギニニ、アコレプラズマレイドロウイ、マイコプラズマサリバリウムおよび肺炎マイコプラズマが挙げられる。
【0031】
治療薬は、例えば抗体または抗体フラグメント、またはそのサブ−フラグメントなどの、結合部分と共に、別々に、同時にまたは連続して投与され、疾患の治療に有益な分子または原子である。治療薬の例は、抗体、抗体フラグメント、複合体、薬物、細胞毒性薬、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物質、キレート剤、ホウ素化合物、光活動性薬剤または色素、放射性同位元素または放射性核種、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、ペプチド、血管新生阻害剤、化学療法薬剤、チオカイン、ケミカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、結合タンパク質またはペプチド、複合体またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0032】
複合体は、治療薬に結合された抗体構成要素または他の標的部分である。適切な治療薬は上記に記載される。
【0033】
本明細書で使用される、抗体融合タンパク質という用語は、同一または異なる特異性を有する単鎖抗体または抗体フラグメントセグメントである、2つ以上の同一、または異なる自然抗体が連結される、組み換えで生成された抗原結合分子である。融合タンパク質は、少なくとも1つの特異的結合部位を含む。融合タンパク質の結合価は、抗原またはエピトープへの融合タンパク質の有する結合アームまたは部位の総数、つまり、1価、2価、3価または多価を示す。抗体融合タンパク質の多価性は、抗原への結合における多数の相互作用を利用することによって、抗原への、または異なる抗原への結合親和力を増強できることを意味する。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの異なる種類の抗原またはエピトープに結合できるか、つまり、単一特異性、2重特異性、3重特異性、多特異性を示す。これらの定義を使用すると、一つの自然抗体、例えば、IgGは、2つの結合アームを有するので2価であるが、1種類の抗原またはエピトープに結合するため単一特異性である。単一特異性の多価融合タンパク質は、同一の抗原またはエピトープに対して1つを超える結合部位を有する。たとえば、単一特異性の二重特異性抗体は、同一の抗原と反応する2つの結合部位を有する融合タンパク質である。融合タンパク質は、異なる抗体構成要素の多価もしくは多特異性の組み合わせ、または同一の抗体構成要素の複数のコピーを含んでもよい。融合タンパク質は、治療薬をさらに含んでもよい。
【0034】
免疫調節物質は、存在する場合、体の免疫系を変化、抑制または刺激させる治療薬である。一般的に、有益な免疫調節物質は、マクロファージ、B細胞、および/またはT細胞などの免疫応答カスケードを増殖または活性化させるために免疫細胞を刺激する。しかし、一部の例において、有益な免疫調節物質は、自己免疫疾患の治療療法などの場合、免疫細胞の増殖または活性化を抑制する場合がある。本明細書に記述される免疫調節物質の例は、特異的抗原に接触することで1つの細胞集団(例えば、薬物刺激されたT−リンパ球)によって放出され、細胞間の細胞内メディエーターとして機能する約5〜20kDの可溶性低分子タンパク質である、サイトカインである。当業者により理解されるように、サイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、インターロイキン、ならびに腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)およびインターフェロンなどの幾つかの関連シグナル分子を含む。ケモカインは、サイトカインのサブセットである。特定のインターロイキンおよびインターフェロンは、T細胞および他の免疫細胞増殖を刺激するサイトカインの例である。
【0035】
CPTは、カンプトテシンの略称であり、本出願においてCPTは、カンプトテシン自体またはカンプトテシンの類似体もしくは誘導体を表す。表示した番号付けおよび文字A〜Eで標識付けされた環を有するカンプトテシンおよびその類似体の一部の構造を、下記の式1に示す。
【0036】
【化1】

【0037】
方法は、抗体(MAb)などの標的部分を有するCPTまたはCPT類似体もしくは誘導体(総称してCPT)の複合体を調製するため、以下の方法で考案された。開示される方法は、本発明の好適な実施形態を表す。(1)CPTの溶解度は、ポリエチレングリコール部分(PEG)をCPTと抗体の間に配置することで向上させる。(2)ペプチドスペーサーなどのリソソーム性に開裂可能なリンカーが、未変化CPTの細胞内放出のためにCPTと抗体の間に配置される。(3)リソソーム性に開裂可能なペプチドスペーサーは、折り畳めるリンカーを介して炭酸塩の形で、またはCPTのC−20位置でエステルを介してカルバミン酸塩の形でCPTに付着される。(4)抗体結合基は、チオールまたはチオール反応基のいずれか一方であるように設計される。(5)方法は、SN−38などのCPT類似体を含む薬物−リンカー前駆物質の調製においてC−20炭酸塩の存在下で、10−ヒドロキシル基を選択的に再生するために考案される。複合体が抗体または抗体フラグメントを含む下記の検討において、アプタマー、アビマーまたは標的ペプチドなどの別の種類の結合部分が代替されてもよい。
【0038】
方法 1
例示的な好適な実施形態は、カンプトテシン薬物誘導体および一般式2の抗体の複合体に関する。
MAb−[L]−AA−CPT

(2)

ここで、MAbは、疾患標的抗体であり、CPTは、カンプトテシン(camptothecin:CPT)またはその類似体であり、Lは、X−Y−Z型のリンカー系であって、Xは抗体結合部分であり、Yはリソソーム性に開裂可能なポリペプチドであり、ZはCPT薬物に連結される4−アミノベンジルオキシ部分である。XおよびYは、直鎖または環状炭化水素である、またはポリエチレングリコール(polyethyleneglycol:PEG)などの水溶性化部分である介在スペーサーでアミド結合を介して連結されてもよい。AAは、CPTの20−ヒドロキシル間でエステルを形成し、その(AAの)N末端を介してリンカーLのZ構成要素にさらに付着されるアミノ酸またはポリペプチド部分である。
【0039】
方法1の好適な実施形態において、細胞内で開裂可能な部分は任意に、細胞内エステラーゼによって開裂可能である。好適な実施形態において、細胞内で開裂可能な部分は、グリシン、アラニンもしくはサルコシンなどのアミノ酸、またはグリシルグリシンなどのペプチドのカルボン酸と、CPTの20−ヒドロキシルとの間に形成されたエステル部分である。これらの場合において、該アミノ酸またはポリペプチドのN末端は、ブチルオキシカルボニルもしくは9−フルオレニルメチルオキシカルボニルまたはモノメトキシトリチル(monomethoxytrityl:MMT)誘導体として保護され、CPTの20−ヒドロキシルを有するエステル結合の形成後に脱保護される。図式1に示される一部の類似体などの場合、さらなる10−ヒドロキシル基を含有するCPT類似体のC−10−ヒドロキシル位置でのBOC保護基の存在下において、アミン保護基の選択的な除去は、MMTが、BOC基を開裂させないジクロロ酢酸などの弱酸処理によって除去可能であるため、エステル形成に関与するアミノ酸またはポリペプチドのアミノ基に対する保護基としてMMTを使用して実現される。
【0040】
方法1の好適な実施形態において、細胞内で開裂可能な部分は、カテプシンBなどの細胞内酵素により開裂可能なリンカーLのY構成要素の実施形態としてポリペプチドをさらに含む。後者の生成物は、p−アミノベンジルアルコール、つまり、PNPがp−ニトロフェニルであるPABOCOPNPの活性型を介して、CPT由来のエステルを、上記に示されるリンカーLのZに結合させることによって産生される。好適な実施形態において、リンカーは、該標的部分のチオール基に連結するチオール反応基を含む。チオール反応基は任意に、該標的部分のチオール基に連結する、マレイミドもしくはビニルスルホン、またはブロモアセトアミド、もしくはヨードアセトアミドである。好適な実施形態において、チオール反応基を有する該試薬は、例えば、サクシニミジル−4−(Nマレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシレート(SMCC)から、またはサクシニミジル−(ε−マレイミド)カプロン酸から産生され、チオール反応基はマレイミド基である。
【0041】
方法1の好適な実施形態において、複合体は、一般式のXおよびY間にポリエチレングリコール(polyethyleneglycol:PEG)スペーサーを含有し、PEGは、大きさが最大MW5000であることができ、好適な実施形態において、PEGは、(1〜12または1〜30)反復モノマー単位を有する定義されたPEGであり、より好適な実施形態において、PEGは、1〜12の反復モノマー単位を有する定義されたPEGである。PEGの導入は、市販のヘテロ2官能性を持たせたPEG誘導体を使用することを含んでもよい。本発明との関連で、ヘテロ2官能性のPEGは、例えば、マレイミド部分または保護チオール部分などの抗体または結合部分に結合する基ならびにサクシニミジルカルボキシレートなどの活性化エステルを含有する。NHSがサクシニミジルである、12反復モノマー単位を含有するヘテロ2官能性の定義されたPEGの一例を、式3において下記に示す。
【化2】

【0042】
サクシニミドとして表されたMAbへの結合を有する、マレイミド含有のSN−38−リンカー誘導体で調製された抗体の代表的なSN−38(CPT類似体含有の追加のヒドロキシル基)複合体を、下記に示す。ここで、SN−38に結合する20−O−AAエステルはサルコシネートである。
【化3】

【0043】
サクシニミドとして表されたMAbへの結合を有する、マレイミド−PEG含有のSN−38−リンカー誘導体で調製された方法1の抗体の代表的なCPT複合体を、下記に示す。ここで、SN−38に結合する20−O−AAエステルはグリシン酸塩である。
【化4】

【0044】
方法1において、X基がチオール反応性部分である場合、抗体上のチオールは、チオール基を導入する試薬を使用して、抗体のリシン基上で産生される。MAbのリシン基の修飾により抗体上にチオール基を導入する方法は、本技術分野において既知である(WongによるChemistry of protein conjugation and cross−linking,CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL(1991),pp20−22)。あるいは、ジチオスレイトール(dithiothreitol:DTT)などの還元剤を使用する抗体上の鎖間ジスルフィド結合の軽度還元(Willnerら、Bioconjugate Chem.4:521−527(1993))は、抗体上に7から10チオールを産生することができ、抗原結合領域から離れたMAbの鎖間領域において、上記に示した一般式の[L]−エステル−CPTとの反応次第、多数のCPT部分を組み込むことの利点を有する。このようにして、チオール反応基を有するCPTは、ジスルフィド還元によって産生されたシステイン上で部位特異的に、またはチオール基を含むように誘導体化されたMAbのリジン側鎖上で間接的に、MAbに結合されることができる。
【0045】
さらに、方法1の好適な実施形態において、リンカーは、該標的部分の1つ以上のリジン側鎖アミノ基に導入されたチオール反応性残基と反応するチオール基を含む。方法1において、例えば、XおよびY間の結合がチオプロピオニル部分である場合のように、X基がチオールの場合、抗体は、当技術分野において十分に説明される手順によってマレイミド、ビニルスルホン、ブロモアセトアミド、またはヨードアセトアミドなどのチオール反応基で事前誘導体化される。
【0046】
方法1の開裂可能なペプチドYは、フェニルアラニン−リジン、バリン−シトルリン(Dubowchik、上記参照)、アラニン−ロイシン、ロイシン−アラニン−ロイシン、およびアラニン−ロイシン−アラニン−ロイシン(Trouetら、上記参照)から成る群から選択されてもよい。
【0047】
本発明の好適な実施形態において、好適な化学療法部分は、CPT、10−ヒドロキシカンプトテシン、SN−38、トポテカン、ルルトテカン、9−アミノカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、およびそれらの誘導体から成る群から選択される。より好適な実施形態において、化学療法部分はSN−38である。好ましくは、本発明の好適な実施形態の複合体において、標的部分は、少なくとも1つの化学治療部分、好ましくは1から約12の化学治療部分、最も好ましくは約7から約12の化学治療部分に連結する。
【0048】
方法 2
別の例示的な実施形態は、カンプトテシン薬物誘導体および一般式6の抗体の複合体に関する。

MAb−[L]−CPT

(6)

ここで、MAbは、疾患標的抗体であり、CPTは、カンプトテシン(camptothecin:CPT)またはその類似体であり、Lは、X−Y−Z型のリンカー系であって、Xは抗体結合部分であり、Yはリソソーム性に開裂可能なポリペプチドであり、ZはCPT薬物に直接または間接的に連結される4−アミノベンジルオキシ部分であり、最後に、XおよびYは、XおよびYは、直鎖または環状炭化水素である、またはポリエチレングリコール(PEG)などの水溶性化部分である介在スペーサーでアミド結合を介して連結される。方法2の実施形態において、X−Y−Zから成るリンカーLは、CPTの20−O−カルボニル部分に直接または間接的に付着される。
【0049】
段落0038、0040、0041および0044〜0047の方法1に対して規定されたリンカーL(X−Y−Z)のすべての実施形態は、Zの付着モードが、CPTのC−20位置でヒドロキシルのクロロギ酸と直接的に反応して炭酸を形成する場合にPABOH部分を介すること、またはC−20位置でカルバミン酸のアミン末端と反応する場合にPABOHの活性型を介することを除けば、全体として方法2の実施形態に適用する。
【0050】
サクシニミドとして表されたMAbへの結合を有する、マレイミド含有のSN−38−リンカー誘導体で調製された方法2の抗体の代表的なCPT複合体を、下記に示す。
【化5】

【0051】
サクシニミドとして表されたMAbへの結合を有する、マレイミド−PEG含有のSN−38−リンカー誘導体で調製された方法2の抗体の代表的なCPT複合体を、下記に示す。
【化6】

【0052】
方法2の別の実施形態を構造式9で示す。段落0038、0040、0041および0044〜0047の方法1に対して規定されたリンカーL(X−Y−Z)のすべての実施形態は、全体としてこの方法2の実施形態に適用する。ここで、Zの活性型、すなわち、PNPがp−ニトロフェニルであるPABOCOPNPは、CPTの20−カルバミン酸誘導体に結合し、後者は、CPTの20−クロロギ酸およびN一置換、もしくはN,N’二置換、または非置換エチレンジアミンに由来する。サクシニミドとして表されたMAbへの結合を有する、マレイミド含有のSN−38−リンカー誘導体で調製された方法2の抗体の代表的なCPT複合体を下記に示す。ここで、N,N’−ジメチルエチレンジアミンは、LをSN−38の20−クロロギ酸に連結させるために使用される。理論で束縛されることを望まないが、細胞内処理後に産生された薬剤−20−カルバミン酸の末端アミノ基は、5員環へ環化し、遊離CPT(この場合SN−38)を放出させることができる。あるいは、下記の構造内のN,N’−ジメチルエチレンジアミンスペーサーは、CPT(またはSN−38などの類似体)−20−クロロギ酸と反応させたサルコシンヒドラジドで、およびLリンカー系に結合されたヒドラジド部分で、置換されることができる。また、この場合、抗体およびリンカーの細胞内異化反応後に放出されたヒドラジドは、遊離CPT(またはSN−38などの類似体)分子の随伴性の放出を伴い、6員環を得るように環化することもできる。本明細書に列挙されるエチレンジアミン型ならびにヒドラジド型は、本発明の範囲内にある。
【化7】

【0053】
さらに、方法2の好適な実施形態において、リンカーは、該標的部分のリジン側鎖でチオール反応性残基と反応するチオール基を含み、該チオール反応性部分は、マレイミド、ビニルスルホン、ブロモアセトアミド、およびヨードアセトアミドから成る群から選択される。
【0054】
サクシニミドとして表されたMAbへの結合を有する、チオール含有のSN−38−リンカー誘導体で調製された方法2の抗体の代表的なCPT複合体を、下記に示す。
【化8】

【0055】
方法 3
さらに別の例示的な実施形態は、カンプトテシン薬物誘導体および一般式11の抗体の複合体に関する。

MAb−[架橋剤]−AA−CPT

(11)

ここで、アミノ酸またはポリペプチド部分AAのC末端で形成されたCPTの20−O−AAエステルは、抗体結合基Xに直接的に結合され、それによって、スキーム1&2のリンカーLのY−Z構成要素を取り除く。方法1&2の、XおよびY間の結合に関連するスペーサーの様態とともに、Xのすべての実施形態、およびCPT定義は、方法3においてXおよびY間のスペーサーがXとエステルのアミン末端との間のスペーサーで置換されることを除いては、全体として本明細書において適用する。
【0056】
サクシニミドとして表されたMAbへの結合を有する、マレイミド−PEG含有のSN−38−リンカー誘導体で調製された方法3の抗体の代表的なCPT複合体を、下記に示す。
【化9】

【0057】
他の実施形態はさらに、該MAb−CPT複合体を生成する工程に関し、それにより方法1〜3のリンカーLは、CPT薬物の誘導体化された形態に最初に結合され、この工程に続いて、リンカー上およびCPT上に存在する場合もある一部の官能基上の保護基を除去し、それによりCPT薬物−リンカー複合体が得られる。その後、CPT薬物−リンカー複合体は、MAbまたはフラグメントに結合される。
【0058】
0048〜0054の実施形態との関連において、CPTが10−ヒドロキシル基をさらに有する、CPT薬物−リンカーを調製できる工程が意外にも発見された。この工程は、t−ブチルオキシカルボニル(butyloxycarbonyl:BOC)誘導体としての該10−ヒドロキシル基の保護、続いて、薬物−リンカー複合体の最後から2番目の中間体の調製を含むが、これに限定されない。通常、ブチルオキシカルボニル基の除去は、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid:TFA)などの強力な酸での処置を必要とする。これらの条件下において、除去すべき保護基を含有するCPT20−O−リンカー炭酸は開裂の影響を受けやすいため、非修飾CPTを生じさせる。事実、当技術分野において明確に述べられている、リンカー分子のリジン側鎖のために軽度に除去可能なメトキシトリチル(MMT)保護基を使用することの論理的根拠は、この可能性を的確に回避することであった(Walkerら、上記参照)。フェノール性ブチルオキシカルボニル保護基の選択的な除去は、最適には3から5分の短時間で反応を実行することによって可能であることが発見された。これらの条件下において、主な生成物は、10−ヒドロキシル位置のブチルオキシカルボニルが除去され、その一方、20位置の炭酸が未変化であったものであった。
【0059】
一実施形態において、標的部分は、モノクローナル抗体(monoclonal antibody:MAb)である。さらなる実施形態において、標的部分は、多価および/または多特異性MAbであってもよい。標的部分は、マウス、キメラ、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体であってもよく、該抗体は、無傷、フラグメント(Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’))、またはサブ−フラグメント(単鎖コンストラクト)形態である。
【0060】
好適な実施形態において、標的部分は、癌または悪性細胞上に発現する抗原または抗原のエピトープに反応するモノクローナル抗体である。好ましくは、癌細胞は、造血器腫瘍、癌腫、肉腫、黒色腫または神経膠腫からの細胞である。
【0061】
本発明による処置される好適な悪性腫瘍は、悪性固形腫瘍または造血器腫瘍である。
【0062】
好適な実施形態において、細胞内で開裂可能な部分は、MAb−薬物複合体によるその受容体への結合の際に細胞内部に取り入れられた後、特にエステラーゼおよびペプチダーゼによって開裂することができる。
【0063】
好ましくは、標的部分は抗体(完全なヒト、非ヒト、ヒト化またはキメラ抗体を含む)または抗体フラグメント(酵素的または組み換えで生成されたフラグメントを含む)および抗体または抗体フラグメントからの配列を組み込む結合タンパク質である。抗体、フラグメントおよび結合タンパク質は、上記に定義される、多価および多特異性または多価および単一特異性であってもよい。
【0064】
本発明の好適な実施形態において、高レベルで標的細胞上に発現し、大部分または唯一1つが異常細胞対正常組織上に発現するマーカーまたは腫瘍関連抗原に結合および認識するMAbなどの抗体、および早急に内部に取り入れる抗体が使用される。本発明の範囲内における有益な抗体は、上記の特性を有するMAb(および細胞および微生物内への異なるレベルの内部移行の特徴的特性を示す)を含み、限定されないが、癌において、限定されないが、以下のMAbの使用を意図している。LL1(抗CD74)、LL2およびRFB4(抗CD22)、RS7(抗上皮糖タンパク質−1(EGP−1))、PAM−4およびKC4(どちらも抗MUC1)、MN−14(抗癌胎児抗原(CD66eとしても知られるCEA)、Mu−9(抗結腸特異的抗原−p)、Immu31(抗αフェトプロテイン)、TAG−72(例えば、CC49)、Tn、J591(抗PSMA(前立腺特異的膜抗原))、G250(抗カルボニックアンヒドラーゼIX MAb)およびL243(抗HLA−DR)。これらの複合を使用して標的にされ得る他の有益な抗原は、HER−2/neu、BrE3、CD19、CD20(例えば、C2B8、hA20、1F5 MAb)CD21、CD23、CD37、CD45、CD74、CD80、αフェトプロテイン(AFP)、VEGF(例えば、Avastin(登録商標)、フィブロネクチンスプライス変異)、ED−B(例えば、L19)、EGF受容体またはErbB1(例えば、Erbitux(登録商標))、ErbB2、ErbB3、胎盤成長因子(placental growth factor:PlGF)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、PSMA、ガングリオシド、HCG、EGP−2(例えば、17−1A)、CD37、HLA−DR、CD30、Ia、A3、A33、Ep−CAM、KS−1、Le(y)、S100、PSA(前立腺特異的抗原)、テネイシン、葉酸受容体、トーマス−フリードライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、腫瘍血管新生抗原、Ga733、IL−2、IL−6、T101、MAGE、インスリン様成長因子(insulin−like growth factor:ILGF)、遊走阻止因子(migration inhibition factor:MIF)、L243が結合するHLA−DR抗原、CD66抗原つまりCD66a−d、またはそれらの組み合わせを含む。CD66抗原は、CD66a−eである同様の構造を有する5つの異なる糖タンパク質から成り、癌胎児抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)遺伝子ファミリーメンバーである、BCG、CGM6、NCA、CGM1およびCEAによってそれぞれコードされる。これらのCD66抗原は、顆粒球、消化管の正常上皮細胞および種々の組織の腫瘍細胞内に発現する。多くの上記抗原は、2002年11月15日に出願された表題「Use of Multi−specific、Non−covalent Complexes for Targeted Delivery of Therapeutics」の米国仮出願第60/426,379号に記載され、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0065】
本発明の別の好適な実施形態において、早急に内部に取り入れ、その後、細胞表面上で再発現され、処理され、呈され、細胞による循環複合体の継続的取り込みおよび癒着を可能にする抗体が使用される。最も好適な抗体/抗原対の一例は、抗CD74MAbであるLL1である(不変鎖、クラスII特異的シャペロン、Ii)。CD74抗原は、B細胞リンパ腫、特定のT細胞リンパ腫、黒色腫および特定の他の癌(Ong et al,Immunology 98:296−302(1999))、ならびに特定の自己免疫疾患に高度に発現する。
【0066】
好ましくは抗CD74抗体で治療される疾患は、非ホジキンリンパ腫、ホジキン、黒色腫、肺癌、骨髄性白血病、および多発性骨髄腫を含むがそれらに限定されない。標的細胞表面上での短時間のCD74抗原の継続的発現と、それに続く抗原の内部移行、および抗原の再発現は、運搬する任意の化学療法部分とともに内部に取り入れられるLL1抗体を標的にすることを可能にする。これにより、高度なおよび治療的LL1−化学療法薬複合体の濃度をかかる細胞内部に蓄積させることが可能である。内部に取り入れられたLL1−化学療法薬複合体は、リソソームおよびエンドソームを介して循環され、化学療法部分は、標的細胞内において活性型で放出される。
【0067】
別の側面において、本発明は、被験者を治療する方法に関し、本発明の好適な実施形態の治療的複合体の治療的に有効な量を被験者に投与するステップを含む。本発明の好適な実施形態の治療的複合体で治療され得る疾患は、B細胞悪性腫瘍(例えば、LL2MAbなどを使用する、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病、米国特許第6,183,744号を参照)、内胚葉由来の消化器系上皮の腺癌、乳癌および非小細胞肺癌などの癌、ならびに他の癌腫、肉腫、神経膠腫、骨髄性白血病等を含むがそれらに限定されない。特に、例えば、胃腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、精巣、脳またはリンパ管腫瘍などの悪性固形腫瘍もしくは造血器腫瘍、肉腫または黒色腫によって生成されるまたは関連する、例えば、腫瘍胎児抗原などの抗原に対する抗体が有利に使用される。かかる治療薬は、疾患状態および複合体の忍容性次第で、1回または繰り返し投与され、また、手術、外部放射、放射免疫療法、免疫療法、化学療法、アンチセンス療法、干渉RNA療法、遺伝子治療等の他の治療法と組み合わせて最適に使用されることもできる。各組み合わせは、腫瘍型、病期、患者の状態および以前の治療、ならびに管理医師により考慮される他の要因に適応される。
【0068】
本明細書で使用されるような、用語「被験者」は、ヒトを含む哺乳類を含むがそれに限定されない任意の動物(つまり、脊椎動物および無脊椎動物)を言う。また、被験者という用語は、げっ歯類(例えば、マウス、ラットおよびモルモット)も含む。用語は、特定の年齢または性に制限されることを意図するものではない。故に、用語は、性にかかわらず、成人および新生児被験者ならびに胎児を包含する。
【0069】
別の好適な実施形態において、本発明の好適な実施形態のMu−9MAbを含む治療的複合体は、2002年4月5日に出願されたGoldらの米国出願第10/116,116号(Cancer Res.50:6405(1990)、および本明細書において引用された文献)に開示されるように、結腸直腸癌ならびに膵癌および卵巣癌を治療するために使用することできる。さらに、本発明の好適な実施形態のPAM−4MAbを含む治療的複合体は、2002年6月14日に出願された米国仮出願第60/388,314号に開示されるように、膵癌を治療するために使用することできる。
【0070】
別の好適な実施形態において、好適な実施形態のRS−7MAbを含む治療的複合体は、2002年3月1日に出願されたSteinらの米国仮出願第60/360,229号(Cancer Res.50:1330(1990)およびAntibody Immunoconj.Radiopharm.4:703(1991))に開示されるように、肺、胃、膀胱、乳房、卵巣、子宮、および前立腺の癌腫などの癌腫を治療するために使用することできる。
【0071】
別の好適な実施形態において、好適な実施形態の抗AFP MAbを含む治療的複合体は、2002年8月1日に出願された米国仮出願第60/399,707号に開示されるように、ヒト化、キメラおよびヒト抗体形態を使用して、肝細胞癌、胚細胞性腫瘍および他のAFP産生腫瘍を治療するために使用することできる。
【0072】
別の好適な実施形態において、抗テネイシン抗体を含む治療的複合体は、造血性および固形腫瘍を治療するために使用することでき、Le(y)への抗体を含む複合体は、固形腫瘍を治療するために使用することできる。
【0073】
好適な実施形態において、ヒト疾患の治療において使用される抗体は、抗体のヒトまたはヒト化(CDR移植された)型であるが、抗体のマウスおよびキメラバ型を使用することできる。送達薬剤としての同一種IgG分子は、免疫応答を最小化するために好適であることが多い。これは、反復治療を検討する場合に特に重要である。ヒトにおいて、ヒトまたはヒト化IgG抗体は、患者から抗IgG免疫応答を産生しにくい。hLL1およびhLL2などの抗体は、標的細胞上で内部移行する抗原に結合後、早急に内部移行し、これは、運搬される化学療法薬が細胞内部に早急に取り入れられることも意味する。しかし、低い内部移行速度を有する抗体も、本発明内の選択的療法を実現するために使用することできる。
【0074】
別の好適な実施形態において、好適な実施形態の治療的複合体は、病原体に対する抗体が既知であるため、病原体に対して使用することできる。例えば、細菌、リケッチア、マイコプラズマ、原虫、真菌、およびウイルスなどの病原体に起因するウイルス、細菌、真菌および寄生虫感染を含む感染性病変によって産生されるまたは関連するマーカーを特異的に結合する抗体および抗体フラグメント、ならびにかかる微生物に関連する抗原および生成物は、とりわけ、Hansenらの米国特許第3,927,193号、およびGoldenbergの米国特許第4,331,647号、第4,348,376号、第4,361,544号、第4,468,457号、第4,444,744号、第4,818,709および第4,624,846号、および上記のReichertおよびDewitzにおいて開示されている。好適な実施形態において、米国特許第6,440,416号に開示されるように、病原体は、AIDSの原因となるHIVウイルス、結核菌、ストレプトコッカスアガラクチア、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、在郷軍人病菌、化膿性連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌B、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、緑膿菌、らい菌、ウシ流産菌,、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI、単純ヘルペスウイルスII、ヒト血清パルボ様ウイルス、RSウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタインバーウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、ウエストナイルウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、ブルセイトリパノソーマ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、ウシバベシア、アイメリアテネラ、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリアパルバ、胞状条虫、羊条虫、無鉤条虫、単包条虫、有線条虫属、マイコプラズマアルスリチジス、マイコプラズマハイオリニス、マイコプラズマオラーレ、マイコプラズマアルギニニ、アコレプラズマレイドロウイ、マイコプラズマサリバリウムおよび肺炎マイコプラズマから成る群から選択される。
【0075】
より好適な実施形態において、抗gp120および他のかかる抗HIV抗体を含む本発明の薬物複合体は、AIDS患者におけるHIVの治療法として使用することでき、結核菌への抗体の薬物複合体は、薬物屈折の結核の治療法に適している。抗gp120MAb(抗HIV MAb)およびシュードモナス外毒素などの毒素の融合タンパク質が抗ウイルス特性について検討されている(Van Oigenら、J Drug Target,5:75−91,1998))。AIDS患者におけるHIV感染を治療する試みは、不十分な効力または容認できない宿主毒性のために恐らく失敗した。本発明の薬物複合体は、そのようなタンパク質毒素の毒性副作用を有利に欠き、したがって、AIDS患者におけるHIV感染の治療に使用される。これらの薬物複合体は、単独または単独で与えられる場合にそのような患者において有効な他の抗菌もしくは治療薬との組み合わせで与えられることができる。
【0076】
別の好適な実施形態において、本発明の好適な実施形態の治療的複合体を使用して治療され得る疾患は、2002年3月1日に出願された米国仮出願第60/360,259号に開示されるように、急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病などの免疫性の血小板減などのクラスIII自己免疫疾患を含む、免疫調節異常疾患および関連自己免疫疾患、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホシェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、関節リウマチ、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および線維化肺胞炎、またならびに若年性糖尿病を含むがそれらに限定されない。これらの疾患において有益な一般的な抗体は、HLA−DR抗原、B細胞抗原(例えば、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、MUC1、Ia、HM1.24、およびHLA−DR)と反応するものを含むがそれらに限定されない。これらの自己免疫疾患の多くは、異常B細胞集団によって生成される自己抗体の影響を受けるため、特にB細胞抗体が、特定の状況下でHLA−DR抗体および/またはT細胞抗体(抗TAC抗体などの、抗原としてIL−2を標的にするものを含む)と組み合わされる場合に、本発明において使用される薬物で結合されるかかる抗体を含む、治療的複合体によるこれらB細胞の除去は、自己免疫疾患療法の好適な方法である。好適な実施形態において、また、抗B細胞、抗T細胞、もしくは抗マクロファージまたは自己免疫疾患を有する患者の治療に有益な他のかかる抗体は、該自己免疫疾患に関与する宿主応答を制御するためにより有効な治療法をもたらすように結合されることもでき、単独で、またはTNF阻害剤もしくはTNF抗体、非結合BもしくはT細胞抗体等の他の治療薬との組み合わせで与えられることができる。
【0077】
好適な実施形態において、本発明の治療的複合体を使用して治療され得る疾患は、フィブリン塊、粥状動脈硬化、心筋虚血および梗塞などの循環器疾患を含む。フィブリンへの抗体は既知であり、該血塊および肺塞栓を明らかにするための造影剤として臨床試験中であり、一方、MN−3、MN−15、NCA95、およびCD15抗体などの抗顆粒球抗体は、心筋梗塞および心筋虚血を標的にすることができ、また一方、抗マクロファージ、抗低比重リポタンパク質(low−density lipoprotein:LDL)、および抗CD74(例えば、hLL1)抗体は、動脈硬化巣を標的にするために使用することができる。
【0078】
さらに別の好適な実施形態において、本発明の治療的複合体を使用して治療され得る疾患は、アルツハイマー病と関連するアミロイドまたはβアミロイドなどの標的部分が使用されることができ、抗体を局在化するための標的として機能する、特異的病変によって特徴付けられた神経変性疾患を含む。
【0079】
本発明の好適な実施形態において、細胞および病原体内へのより効果的な取り込みは、多価、多特異性または多価、単一特異性抗体を使用して実現することができる。多価は、細胞上に発現した同一または異なる抗原またはエピトープに対する幾つかの結合アームの使用を意味し、一方、多特異性抗体は、標的細胞または病原体上に含有される少なくとも2つの異なる抗原またはエピトープを標的にするために多数の結合アームの使用を伴う。かかる2価および2重特異性抗体の例は、米国特許出願第60/399,707号(2002年8月1日出願)、第60/360,229号(2002年3月1日出願)、第60/388,314号(2002年6月14日出願)、および第10/116,116号(2002年4月5日出願)に記載され、これらのすべては、参照することにより本願明細書に組み込まれる。多数の抗原標的および同一の抗原標的の多数のエピトープをも発現させ、しかし、細胞または病原体上の単一抗原標的の不十分な発現または有効性のために、免疫療法のための抗体の標的および十分な結合を回避することのある癌および感染性の生物(病原体)の標的において、これらの多価または多特異性抗体は特に好ましい。多数の抗原またはエピトープを標的にすることで、該抗体は、標的に対するより高い結合および滞留時間を示し、故に、本発明において標的にされる薬剤を使用してより高い飽和を生じさせる。
【0080】
別の好適な実施形態において、本発明のカンプトテシン複合体との組み合わせで使用される治療薬は、212Bi、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94Tc、94mTc、99mTc、または111Inなどの1つ以上のアイソトープを含んでもよい。マンガン、鉄およびガドリニウムなどの非放射性金属は、本明細書に記述される安定に繋留された構造および担体とともに、または直接的な治療法として使用される場合、放射性映像またはMRIにとって有益である(例えば、β、αまたはオージェを放射する放射性核種が使用される場合、それらすべては本明細書において有益であると考えられる。NOTA、DOTA、およびTETAなどの大環状キレートは、種々の金属および放射性金属とともに有用であり、とりわけ、ガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種とともにそれぞれ有用である。かかる金属−キレート錯体は、環サイズを関心金属に合わせることで非常に安定に生成されることができる。錯化223Raのための大環状ポリエーテルなどの他の環型のキレートを使用してもよい。また、本発明のカンプトテシン複合体との組み合わせで使用される治療薬は、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロ毒素、タキサン、代謝拮抗薬、アルキル化剤、抗菌、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂薬、血管新生阻害剤およびプロアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タクソール、他のカンプトテシン、および抗癌剤のこれらのおよび他のクラスからの他のもの等の化学療法薬を含む。他の癌化学療法薬は、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、ホルモン等を含む。適切な化学療法薬剤は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、19th Ed.(Mack Publishing Co.1995)、およびGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS、7th Ed.(MacMillan Publishing Co.1985)ならびにこれら出版物の改訂版に記載されている。実験的薬剤などの他の適切な化学療法薬剤は、当業者には既知である。
【0081】
治療薬の別のクラスは、α粒子(212Pb、212Bi、213Bi、211At、223Ra、225Acなど)、β粒子(32P、33P、47Sc、67Cu、67Ga、89Sr、90Y、111Ag、125I、131I、142Pr、153Sm、161Tb、166Ho、166Dy、177Lu、186Re、188Re、189Reなど)またはオージェ電子(111In、125I、67Ga、191Os、193mPt、195mPt、195mHgなど)を放射する放射性核種から成る。あるいは、治療薬は、画像診断に有益な放射性同位元素を含んでもよい。適切な放射性同位元素は、エネルギー範囲60から4,000KeVのもの、またはより具体的には、18F、52FE、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、45Ti、111In、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、177Lu、32P、188Re等、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、造影目的のため、18F、68Ga、94mTc等の陽電子放射体を開示する表題「Labeling Targeting Agents with Gallium−68」の米国特許出願(Griffiths,G.L.and W.J.McBride,W.J,米国仮出願第60/342,104号)を参照されたい。これらは参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる)。検出は、例えば、単光子放出コンピュータ断層撮影(single photon emission computed tomography:PECT)、またはポジトロンCT(PET)によって達成され得る。また、応用範囲は、潜在性新生物腫瘍を特定するための術中診断向けであってもよい。また、造影治療薬は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)から成る群から選択される金属の錯体を含んでもよい、1つ以上の画像造影剤を含んでもよい。
【0082】
さらに他の実施形態において、治療薬は、β放射体(32P、33P、47Sc、67Cu、67Ga、89Sr、90Y、111Ag、125I、131I、142I、153Sm、161Tb、166Ho、166Dy、177Lu、186Re、188Re、189Reなど)、オージェ電子放射体(111In、125I、67Ga、191Os、193mPt、195mPt、195mHgなど)、α放射体(212Pb、212Bi、213Bi、211At、223Ra、225Acなど)、またはそれらの組み合わせを含む、新生物のまたは他の急速に分裂する細胞を死滅させるのに有益な1つ以上の放射性アイソトープを含んでもよい。
【0083】
また、カンプトテシン複合体とともに使用される治療薬は、標的部分に結合される毒素であってもよい。この関連で使用され得る毒素は、リシン、アブリン,リボヌクレアーゼ(RNase)、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ポークウィード抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリン毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナスエンドトキシンを含む。(例えば、Pastanら、Cell(1986),47:641,およびGoldenberg,CA−A Cancer Journal for Clinicians(1994),44:43を参照。本明細書における使用に適したさらなる毒素は、当業者には既知であり、米国第6,077,499号に開示されており、参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【0084】
種々の実施形態において、本明細書に開示される複合体は、複合、多特異性抗体の一部であってもよい。かかる抗体は、異なる特異性を有する2つ以上の異なる抗原結合部位を含有してもよい。多特異性複合物は、同一の抗原の異なるエピトープに結合してもよく、あるいは、異なる抗原に結合してもよい。一部のより好適な標的組み合わせは以下を含む。これは、好適な組み合わせ例の一覧であり、包括的なものであると意図されない。
【0085】
【表1】


【0086】
癌治療に好適なものなどのさらに他の組み合わせは、CD20+CD22抗体、CD74+CD20抗体、CEACAM5(CEA)+CEACAM6抗体、インスリン様成長因子(ILGF)+CEACAM5抗体、EGP−I(例えば、RS−7)+ILGF抗体、CEACAM5+上皮成長因子受容体抗体を含む。参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる米国特許第6,083,477号、第6,183,744号および第6,962,702号ならびに米国特許出願広報第20030124058号、第20030219433号、第20040001825号、第20040202666号、第20040219156号、第20040219203号、第20040235065号、第20050002945号、第20050014207号、第20050025709号、第20050079184号、第20050169926号、第20050175582号、第20050249738号、第20060014245号および第20060034759号に記載されているように、かかる抗体は、組み合わせで使用されるだけでなく、IgG、Fab、scFv等の種々の形態の融合タンパク質として組み合わされることができる。
【0087】
特定の実施形態において、本明細書に記述される結合部分は、1つ以上のアビマー配列を含んでもよい。アビマーは、種々の標的分子に対するそれらの親和性および特異性において抗体とある程同様である結合タンパク質のクラスである。それらは、体外エキソンシャッフリングおよびファージディスプレイによってヒト細胞外受容体ドメインから開発された\。(Silverman et al,2005,Nat.Biotechnol.23:1493−94;Silverman et al,2006,Nat.Biotechnol.24:220)。結果と生じるマルチドメインタンパク質は、単一エピトープ結合タンパク質と比べて向上された親和性(一部の例ではnM以下)および特異性を呈示し得る多数の非依存的結合ドメインを含んでもよい。(同文献)それぞれが参照することによりそれら全体が本願明細書に組み込まれる、2005年4月6日に出願された米国仮特許出願第60/668,603号および2005年12月16日に出願された第60/751196号に記述されているように、種々の実施形態において、例えば、アビマーは、主張される方法および組成物において使用されるADおよび/またはDDD配列に付着されてもよい。アビマーの構成および使用方法に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許出願広報第20040175756号、第20050048512号、第20050053973号、第20050089932号および第20050221384号に開示され、各々の実施例部分は、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0088】
抗体フラグメントの生成
モノクローナル抗体の生成方法は、当技術分野において既知であり、任意のかかる既知の方法は、主張される方法および組成物において使用される抗体を生成するために使用されてもよい。主張される方法および/または組成物の一部の実施形態は、抗体フラグメントに関してもよい。かかる抗体フラグメントは、従来の方法で抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって得られてもよい。例えば、抗体フラグメントは、F(ab’)という5Sフラグメントを得るために、ペプシンで抗体を酵素的開裂することによって生成されてもよい。このフラグメントは、3.5S Fab’1価のフラグメントを得るため、チオール還元剤および、随意に、ジスルフィド連結の開裂により生じるスルフヒドリル基に対する保護基を使用してさらに開裂されてもよい。あるいは、ペプシンを使用する酵素的開裂は、2つの1価のFabフラグメントおよびFcフラグメントを生成する。抗体フラグメントを生成するための例示的な方法は、米国特許第4,036,945号、米国特許第4,331,647号、Nisonoff et al,1960,Arch.Biochem.Biophys.,89:230;Porter,1959,Biochem.J.,73: 119;Edelman et al.,1967,METHODS IN ENZYMOLOGY,page 422 (Academic Press),およびColigan et al.(eds.), 1991,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,(John Wiley & Sons)に開示されている。
【0089】
フラグメントが、無処置の抗体により認識される抗原に結合する限り、1価の軽−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の遊離、フラグメントのさらなる開裂または他の酵素的、化学的もしくは遺伝子技術などの抗体を開裂させる他の方法が使用されてもよい。例えば、Fvフラグメントは、VおよびV鎖の対合を含む。この対合は、Inbar et al.,1972,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,69:2659に記述されるように非非共有結合性であることができる。あるいは、可変鎖は、分子内ジスルフィド結合によって連結されてもよく、またはグルタルアルデヒドなどの化学薬品によって架橋結合されてもよい。Sandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.,12:437を参照。
【0090】
好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによって連結されるVおよびV鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドリンカー配列によって連結される、VおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構成することによって調製される。構造遺伝子は、大腸菌などの宿主細胞にその後導入される発現ベクター内へ挿入される。組み換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドで単一ポリペプチド鎖を合成する。sFvを生成する方法は当技術分野において既知である。Whitlowら、1991, Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:97;Birdら、1988,Science,242:423;米国特許第4,946,778号;Packら、1993,Bio/Technology,11:1271,およびSandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.,12:437を参照。
【0091】
抗体フラグメントの別の形態は、単一相補性決定領域(complementarity−determining region:CDR)をコードしているペプチドである。CDRペプチド(“最小認識単位”)は、関心抗体のCDRをコードする遺伝子を構成することによって得ることができる。例えば、かかる遺伝子は、抗体を生成する細胞のRNAから可変ドメインを合成するために、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して調製されてもよい。Larrickら、1991,Methods: A Companion toMethodsin Enzymology 2:106;Ritter et al.(eds.),1995,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,pages 166−179(Cambridge University Press);Birchら、(編者),1995,MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS,pages 137−185(Wiley−Liss,Inc.)を参照。
【0092】
キメラおよびヒト化抗体
キメラ抗体は、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(complementarity−determining region:CDR)を含むマウス抗体の可変ドメインにより、ヒト抗体の可変ドメインが置換された組み換えタンパク質である。キメラ抗体は、被験者に投与された場合、免疫原性の減少および安定性の増加を呈示する。キメラ抗体を構成する方法は当技術分野において既知である(例えば、Leungら、1994,Hybridoma 13:469)。
【0093】
キメラモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重および軽可変鎖からヒト抗体の対応する可変ドメイン内へマウスCDRを移動させることによってヒト化できる。キメラモノクローナル抗体中のマウスフレームワーク領域(framework region:FR)も、ヒトFR配列で置換される。ヒト化モノクローナルの安定性および抗原特異性を維持するため、1つ以上のヒトFR残基は、マウス対応物残基により置換されてもよい。ヒト化モノクローナル抗体は、被験者の治療療法に使用されてもよい。また、標的に対するヒト化抗体の親和性も、CDR配列(WO0029584A1)の選択された修飾によって増加し得る。ヒト化モノクローナル抗体の生成技術は、当技術分野において既知である。(例えば、Jones et al,1986,Nature,321:522;Riechmann et al,Nature, 1988,332:323;Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534;Carter et al.,1992,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,89:4285;Sandhu,Crit.Rev.Biotech.,1992,12:437;Tempest et al.,1991,Biotechnology 9:266;Singer et al.,J. Immun.,1993,150:2844を参照。)
【0094】
他の実施形態は、非ヒト霊長類抗体に関してもよい。ヒヒにおいて治療的に有益な抗体をもたらす一般的な技術は、例えば、Goldenbergら、WO91/11465(1991),およびLosmanら、Int.J. Cancer 46:310(1990)に見いだされ得る。別の実施形態において、抗体はヒトモノクローナル抗体であってもよい。かかる抗体は、抗原的チャレンジに対応して特異的ヒト抗体を生成するように操作された遺伝子導入マウスから得られる。この技術において、ヒト重および軽鎖遺伝子座の要素は、内在性重鎖および軽鎖遺伝子座の標的化された破壊を含有する胚性幹細胞株に由来するマウスの菌株内に導入される。遺伝子導入マウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、マウスは、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを生成するために使用することができる。遺伝子導入マウスからヒト抗体を得る方法は、Greenら、Nature Genet. 7:13(1994),Lonbergら、Nature 368:856 (1994),およびTaylor ら、Int.Immun.6:579(1994)により記述される。
【0095】
ヒト抗体
組み合わせのアプローチまたはヒト免疫グロブリン遺伝子座で形質転換された方法遺伝子導入動物のいずれか一方を使用して、完全なヒト抗体を生成する方法は、当技術分野において既知である(例えば、Manciniら、2004, New Microbiol.27:315−28、Conrad and Scheller,2005,Comb.Chem.High Throughput Screen.8:117−26、Brekke and Loset,2003,Curr.Opin.Phamacol.3:544−50であり、それぞれ参照することにより本願明細書に組み込まれる)。かかる完全なヒト抗体は、キメラまたはヒト化抗体よりもさらに少ない副作用を呈示し、本質的に内在性ヒト抗体として体内で機能することが予想される。特定の実施形態において、主張される方法および手順は、かかる技術によって生成されたヒト抗体を活用してもよい。
【0096】
一代替案において、ファージディスプレイ技術は、ヒト抗体を産生するために使用されてもよい(例えば、Dantas−Barbosaら、2005,Genet.MoI.Res.4:126−40、参照することにより本願明細書に組み込まれる)。ヒト抗体は、正常ヒトまたは癌などの特定の疾患状態を呈示するヒトから産生されてもよい(Dantas−Barbosaら、2005)。疾患のある個人からヒト抗体を構成することの利点は、循環抗体レパートリーが疾患関連抗原に対する抗体に偏っている可能性があることである。
【0097】
本方法の限定されない例において、Dantas−Barbosaら(2005)は、骨肉腫患者からヒトFab抗体フラグメントのファージディスプレイライブラリーを構築した。該して、総RNAは循環血液リンパ球から得られた(同文献)。組み合わせFabは、μ、γおよびκ鎖抗体レパートリーからクローン化され、ファージディスプレイライブラリー内に挿入された(同文献)。RNAは、cDNAへ変換されて、重および軽鎖免疫グロブリン配列に対する特異的プライマーを使用し、Fab cDNA ライブラリーを生成するために使用された(Marksら、1991,J. MoI.Biol.222:581−97、参照することにより本願明細書に組み込まれる)。ライブラリー構築は、Andris− Widhopfら(2000, In:Phage Display Laboratory Manual, Barbas et al.(eds),1st edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY pp.9.1から9.22、参照することにより本願明細書に組み込まれる)に従って行われた。最終的なFabフラグメントは、制限エンドヌクレアーゼで消化され、バクテリオファージゲノム内に挿入され、ファージディスプレイライブラリーを生成した。かかるライブラリーは、一般的なファージディスプレイ方法によって選別されてもよい。当業者は、本技術がただ例示的なものであり、ファージディスプレイでヒト抗体または抗体フラグメントを生成および選別する、いかなる既知の方法も活用されてもよいことを理解されたい。
【0098】
別の代替案において、ヒト抗体を生成するために遺伝子操作された遺伝子導入動物は、上述のような一般的な免疫方法を使用して、本質的に任意の免疫原性標的に対する抗体を産生するために使用することができる。そのような系の限定されない例は、Abgenix(Fremont、CA)のXenoMouse(登録商標)(例えば、Greenら、1999,J.Immunol.Methods231:11−23、参照することにより本願明細書に組み込まれる)である。XenoMouse(登録商標)および同様の動物において、マウス抗体遺伝子は、不活性化および機能的ヒト抗体遺伝子により置換され、一方、マウス免疫系の残部は未変化のままである。
【0099】
XenoMouse(登録商標)は、アクセサリー遺伝子および調節配列に沿った大部分の可変ドメイン配列を含む、ヒトIgHおよびIgκ遺伝子座の一部を含有した生殖系列構成YAC(酵母人工染色体)で形質転換された。ヒト可変ドメインレパートリーは、既知の技術によりハイブリドーマに加工されるB細胞を生成する抗体を産生するために使用されてもよい。標的抗原で免疫されたXenoMouse(登録商標)は、上述の一般的な技術により収集および/または生成され得る、正常免疫応答によってヒト抗体を生成する。XenoMouse(登録商標)の種々の株菌が使用可能であり、それぞれは、異なるクラスの抗体を生成することができる。かかるヒト抗体は、化学的架橋または他の既知の方法により結合されてもよい。遺伝子導入で生成されたヒト抗体は、正常ヒト抗体の薬物動態学的特性を保持しながら治療可能性を示している(Greenら、1999)。当業者は、主張される組成物および方法は、XenoMouse(登録商標)系の使用に制限されないが、ヒト抗体を生成するために遺伝子操作された任意の遺伝子導入動物を活用してもよいことを理解されたい。
【0100】
アビマー
特定の実施形態において、本明細書に記述される前駆物質、モノマーおよび/または錯体は、1つ以上のアビマー配列を含んでもよい。アビマーは、種々の標的分子に対するそれらの親和性および特異性において、抗体とある程度同様である結合タンパク質のクラスである。それらは、体外エキソンシャッフリングおよびファージディスプレイによってヒト細胞外受容体ドメインから開発された。(Silverman ら、2005,Nat.Biotechnol.23:1493−94;Silvermanら、2006,Nat.Biotechnol.24:220)。結果と生じるマルチドメインタンパク質は、単一エピトープ結合タンパク質と比べて向上された親和性(一部の例ではnM以下)および特異性を呈示し得る多数の非依存的結合ドメインを含んでもよい。(同文献)種々の実施形態において、アビマーは、例えば、主張される方法および組成物において使用されるDDD配列に付着されてもよい。アビマーの構成および使用方法に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許出願広報第20040175756号、第20050048512号、第20050053973号、第20050089932号および第20050221384号に開示され、それぞれの実施例部分は、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0101】
ファージディスプレイ
主張される組成物および/または方法の特定の実施形態は、結合ペプチドおよび/または種々の標的分子、細胞または組織のペプチド模倣薬に関してもよい。結合ペプチドは、ファージディスプレイ技術を含むがそれに限定されない、当技術分野において既知の任意の方法により同定することができる。ファージディスプレイの種々の方法およびペプチドの多様な集団を生成するための技術は、当技術分野において既知である。例えば、米国特許第5,223,409号、第5,622,699号および第6,068,829号は、ファージライブラリーを調製する方法を開示し、それぞれは参照することにより本願明細書に組み込まれる。ファージディスプレイ技術は、小ペプチドがそれらの表面上に発現できるように、バクテリオファージを遺伝子操作することを含む(Smith and Scott,1985,Science 228:1315−1317;Smith and Scott,1993,Meth.Enzymo 1.21:228−257)。
【0102】
ファージディスプレイされたペプチドライブラリーの構築において、およびペプチドリガンドを単離させるためにライブラリーが使用される選別方法の発達において多大な進歩が過去10年間に見られている。例えば、ペプチドライブラリーの使用は、炎症反応に関与する抗体または細胞接着を媒介するインテグリンなど、多くのタンパク質内での相互作用部位および受容体−リガンド結合モチーフを特徴付けることを可能にしている。また、この方法は、ペプチド模倣薬または造影剤の発達をもたらす役目をし得る新規ペプチドリガンドを特定するためにも使用されている(Arap et al,1998a,Science 279:377−380)。ペプチドに加えて、単鎖抗体などのより大きなタンパク質ドメインも、ファージ粒子の表面上に表示され得る(Arapら、1998a)。
【0103】
所定の器官、組織、細胞型または標的分子に選択的な標的アミノ酸配列は、パニングにより単離されてもよい(Pasqualini and Ruoslahti,1996,Nature 380:364−366;Pasqualini,1999,The Quart.J.Nucl.Med.43:159−162)。つまり、推定標的ペプチドを含有するファージのライブラリーは、未変化の生物へまたは単離された器官、組織、細胞型または標的分子へ投与され、結合されたファージを含有する試料が採取される。標的に結合するファージは、標的器官、組織、細胞型または標的分子から溶離されてもよく、その後宿主細菌中でそれらを増殖させることによって増幅されてもよい。
【0104】
特定の実施形態において、ファージは、パニングのラウンド間に宿主細菌において伝播されてもよい。細菌は、ファージによって溶解されるのではなく、むしろ代わりに特定の挿入を表示するファージの多数のコピーを分泌することができる。所望される場合、増幅されたファージは、標的器官、組織、細胞型または標的分子に再び曝露されてもよく、パニングのさらなるラウンドのために採取されてもよい。パニングの複数ラウンドは、選択的または特異的なバインダーが得られるまで行われてもよい。ペプチドのアミノ酸配列は、ファージゲノム中の標的ペプチド挿入に対応してDNAの配列を決定することにより決定されてもよい。同定された標的ペプチドは、その後、一般的なタンパク質化学技術で合成ペプチドとして生成されてもよい(Arapら、1998a、Smithら、1985)。
【0105】
一部の実施形態において、減算手順は、背景ファージ結合をさらに減少させるために使用されてもよい。減算の目的は、関心領域以外の標的に結合するライブラリーからファージを除去することである。代替的実施形態において、ファージライブラリーは、対照細胞、組織または器官に対して事前に選別されてもよい。例えば、腫瘍に結合するペプチドは、対照正常株化細胞に対するライブラリーを事前選別後、同定されてもよい。減算後、ライブラリーは、関心の分子、細胞、組織または器官に対して選別されてもよい。例えば、参照することにより本願明細書に組み込まれる米国特許第5,840,841号、第5,705,610号、第5,670,312号および第5,492,807号に開示されるように、減算手順の他の方法は、既知であり、主張される方法の実施に際して使用されてもよい。
【0106】
アプタマー
特定の実施形態において、有益な標的部分はアプタマーであってもよい。アプタマーの結合特性を構成および決定する方法は、当技術分野において既知である。例えば、かかる技術は、米国特許第5,582,981号、第5,595,877号および第5,637,459号に記述され、それぞれ参照することにより本願明細書に組み込まれる。特定の関心標的に結合するアプタマーの調製および選別方法は、例えば、米国特許第5,475,096号および米国特許第5,270,163号において既知であり、それぞれ参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0107】
アプタマーは、合成、組み換えおよび精製方法を含む任意の既知の方法によって調製されてもよく、単独または同一の標的に特異的な他のリガンドとの組み合わせで使用されてもよい。概して、特異的な結合をもたらすには、最低限約3ヌクレオチド、好ましくは少なくとも5ヌクレオチドが必要である。10、20、30または40ヌクレオチドのアプタマーが好適であり得るが、10塩基より短い配列のアプタマーが可能である。
【0108】
アプタマーは、結合特異性を与える配列を含有する必要があるが、隣接領域で拡張されてもよく、その他誘導体化されてもよい。好適な実施形態において、アプタマーの結合配列は、プライマー結合配列により隣接されてもよく、PCRまたは他の増幅技術でアプタマーの増幅を促進させる。
【0109】
アプタマーは、単離、配列および/または増幅または従来のDNまたはRNA分子として合成されてもよい。あるいは、関心アプタマーは、修飾オリゴマーを含んでもよい。通常アプタマー内に存在するヒドロキシル基のいずれも、ホスホン酸基、リン酸基により置換されてもよく、一般的な保護基により保護されてもよく、または他のヌクレオチドへのさらなる連結を調製するために活性化されてもよく、または固体担体に結合されてもよい。1つ以上のリン酸ジエステル連結は、P(O)S、P(O)NR、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCNRにより置換されたP(O)Oなどの代替連結基により置換されてもよく、ここで、Rは、Hまたはアルキル(1〜20C)であり、R’は、アルキル(1〜20C)であり、さらに、この基は、OまたはSを介して隣接するヌクレオチドに付着されてもよい。オリゴマー内のすべての連結が同一である必要はない。
【0110】
結合手順
好適な結合手順は、中性または酸性pHで容易なチオール−マレイミド、チオール−ビニルスルホン、チオール−ブロモアセトアミド、またはチオール−ヨードアセトアミド反応に基づく。これは、活性エステルを使用する場合に必要とされるような結合に対するより高いpH条件の必要性を取り除く。
【0111】
本発明の好適な実施形態の複合体の投与の適切な経路は、制限されないが、経口、非経口、直腸、経粘膜、腸管投与、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、直接的脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む。投与の好適な経路は非経口である。あるいは、例えば、固形腫瘍内への直接的な化合物の注入を介して、全身的方法よりもむしろ局所的方法で化合物を投与してもよい。
【0112】
本発明の種々の実施形態は、その範囲を制限することなく、以下の実施例により例証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0113】
MCがマレイミドカプロイルであり、Pheがフェニルアラニンであり、Lysがリジンであり、MMTがモノメトキシトリチルであり、PABOHがp−アミノベンジルアルコールであり、PNPがp−ニトロフェニル部分である、中間体Phe−Lys(MMT)−PABOHならびに架橋剤Phe−Lys(MMT)−PABOH,MC−Phe−Lys(MMT)−PABOHおよびMC−Phe−Lys(MMT)−PABOCOO−PNPを公開されている方法を使用して合成した(Dubowchikら、上記参照)。アミノ酸のCPT−20−O−アシル誘導体を公開されている方法を適応して調製した(Vishnuvajjala、上記参照)。下記の実施例において、記載された略称を本明細書に適用する。さらに、実施例3のPEG12は、マレイミド−PEG12−NHSエステル(0041、式3を参照)であり、PEGは、ポリエチレングリコールである。実施例4におけるAAは、アミノ酸の略称である。
【実施例1】
【0114】
MC−Phe−Lys−PABOCO−20−O−CPT−10−O−BOCの調製およびBOC保護基の選択的な除去の検討
10−ヒドロキシ−CPT(0.2307g)を、下記の実施例2の与えられる条件下において、ジ−tert−ブチル二炭酸およびピリジンと反応させ、10−BOC−O−CPT誘導体を得た。後者(24.7mg)を無水ジクロロメタン中の4−ジメチルアミノピリジン(20.7mg)およびトリホスゲン(5.9mg)で処置し、そのように形成されたクロロギ酸を、短時間、通常5分間、等モル量のMC−Phe−Lys(MMT)−PABOHと反応させた。メタノール−ジクロロメタン勾配を使用したシリカゲル(230〜400メッシュ)上のクロマトグラフィーにより、いくらかの未反応出発物質との厳密な溶離混合物としての表題生成物の単離がもたらされた。質量スペクトルは、生成物の形成を明確に示した(m/e1376でのM+Na)。反応時間1−7/4分間の薄層クロマトグラフィーによる経時的解析と、最適化された条件で得られた生成物のペクトルデータ(m/e982での強MH)とによって示されるように、単に2から5分間のTFA媒介の開裂は必要なBOC除去生成物を与えた。30分間の延長TFA脱保護は、20−炭酸塩結合の開裂ももたらし、10−OH−CPTを形成した。故に、20−炭存在下、短時間TFA反応による10−BOCの選択的な開裂を達成した。
【実施例2】
【0115】
MC−Phe−Lys−PABOCO−20−O−SN−38(CL−SN−38)
の調製
SN−38(0.5114g、1.305ミリモル)を無水ピリジン(8mL)中のジ−tert−ブチル二炭酸(0.307g)と18時間外気温で反応させた。溶媒を蒸発させ、メタノール−ジクロロメタン勾配を使用して、シリカゲル(230−400メッシュ)上のフラッシュクロマトグラフィーで粗材料を精製し、0.55gの淡黄色固形生成物としてBOC−SN−38であるSN−38の10−t−ブチルオキシルカルボニル誘導体を得た。この材料(0.0358g)を無水ジクロロメタン(1.5mL)に溶解し、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP、26.6mg)およびトリホスゲン(0.0095mg)で7分間処置し、BOC−SN−38−20−クロロギ酸である産生されたクロロギ酸をMC−Phe−Lys(MMT)−PABOHと原位置で短時間、通常5分間反応させた。次いで、メタノール−ジクロロメタン勾配を使用して、反応混合物をシリカゲル(230−400メッシュ)上のフラッシュクロマトグラフィーで精製した。収率:42.4mg。この生成物の一部(21.9mg)を、数分間、通常5分未満、トリフルオロ酢酸(「TFA」、1mL)、ジクロロメタン(0.25mL)、およびアニソール(0.14mL)の混合物で処置し、生成物をジエチルエーテルで沈殿させることにより単離させた。随意に、TFA処置をそれぞれ5分未満の短時間でさらに2または3回繰り返した。逆相HPLCによる解析(C18カラム、勾配溶離で使用した溶液Aは、3mL/分で10分で溶液Bに変わり、その後5分間100%のBを維持した。Aは、pH4.43の0.3%含水酢酸アンモニウムであり、Bは、pH4.43の9:1CHCN/0.3%含水酢酸アンモニウムである)は、表題化合物のためにピーク10.796分(360nmでの吸光度)を示し、これは、通常76%〜83%で、残部の殆どはSN−38であった。さらなる精製は、残部がSN−38である、約90%の純度を有する生成物をもたらした。これらのレベルの純度を有する最終的な生成物を抗体への結合に使用する。エレクトロスプレー質量スペクトルは、表題化合物に対し、陰イオンモード(M−H)においてm/e1009で質量ピークを示し、陽イオンモードにおいてm/e1011で強いピークを示した。
【実施例3】
【0116】
マレイミド−PEG12−Phe−Lys−PABOCO−20−O−SN−38(PEG−CL−SN−38)の調製
市販のヘテロ2官能性の架橋剤、マレイミド−PEG12−NHSエステル(0040、式3を参照)を使用して、DMF中の中間体Phe−Lys(MMT)−PABOHおよびジイソプロピルエチルアミンを反応させることによって、マレイミド−PEG12部分を、実施例2のマレイミドカプロイルに置換し、架橋剤マレイミド−PEG12−Phe−Lys(MMT)−PABOHを産生した。ここで、PEG12は、12モノマー単位を含有する定義されたPEG基質であり、MAb結合条件下において薬物−リンカー中間体の溶解度を増強させるために使用した。架橋剤であるマレイミド−PEG12−Phe−Lys(MMT)−PABOHを、実施例2のBOC−SN−38 20−クロロギ酸と反応させた。実験条件および精製は、実施例2で詳述したものと類似した。生成物をTFA媒介の脱保護にさらし、表題生成物を得た。エレクトロスプレー質量スペクトルは、表題化合物に対し、陰イオンモードにおいてm/e1602(M+Cl)および1681(M+TFA)でピークを示し、陽イオンモードにおいてm/e1568(M+H)で強いピークを示した。
【実施例4】
【0117】
MC−Phe−Lys−PABOCO−AA−20−O−SN−38
(CL−AA−S−38)の調製
生成物の一般式を式13に示す。BOC−グリシン、MMT−グリシン、BOC−サルコシン、またはBOC−アラニンを使用し、実施例2のBOC−SN−38を20−ヒドロキシル位置でエステル化した。基本手順は、触媒量の4−ジメチルアミノピリジンが存在下で、BOC−SN−38を、約20%のモル過剰のそれぞれのアミンで保護されたアミノ酸(amine−protected amino acid:AA)および無水ジクロロメタン中のジシクロヘキシルカルボジイミドと外気温で一晩反応させることを含んだ。フラッシュクロマトグラフィーで精製したエステル化生成物をジクロロ酢酸(dichloro acetic acid:DCA)で処置し、単にMMT基を除去、またはTFAで処置し、エステルのアミン末端およびSN−38上のBOC基上の両方の保護基を除去した。次いで、TFAまたはDCA塩として存在するアミン末端を有する、および保護されたまたは遊離10−ヒドロキシルを有するC−20エステルを含有するSN−38誘導体を、10%モル過剰のMC−Phe−Lys(MMT)−PABOCOO−PNP(記述は、実施例の一般項目を参照)およびDMF中のDIEAと反応させた。フラッシュクロマトグラフィーでの精製は、それぞれの場合において最後から2番目の中間体を提供し、TFAと反応させて表題材料を得た。表題化合物:C−20でグリシン酸塩を有する(構造中R=R=H):質量スペクトル、m/e1065でのM−H、C−20でサルコシネートを有する(構造中R=メチル、R=H):質量スペクトル、m/e1081でのM+H(陽イオンモード)およびm/e1079でのM−H(陰イオンモード);C−20でアラネートを有する(構造中R=H、R=メチル):質量スペクトル、陽および陰イオンモードそれぞれにおいてm/e1662でのM+Na、m/e1638でのM−H。
【化10】

【実施例5】
【0118】
HS−(CH−CO−Phe−Lys−PABOCO−20−O−SN−38
(CLS−SN−38)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(diisopropylethyamine:DIEA)の2.5等価物を含有する無水ジクロロメタン中のMMTクロライドのモル等価物と後者を反応させることによって、ステップ2においてチオプロピオン酸からサクシニミジルS−メトキシトリチルチオプロピオン酸を調製したが、MMTとはモノメトキシトリチルの略称である。薄層クロマトグラフィーで監視された、反応の終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水および飽和塩化ナトリウムで洗浄した。フラッシュクロマトグラフィーで精製された生成物を、等モル量のN−ヒドロキシサクシニミドおよびDMF中のジシクロヘキシルカルボジイミドを有するそのサクシニミジル エステルに変換した。沈殿したDCC−ウレアをろ過し、濾液を、等モル量の反応物およびDIEAを使用してDMF中の中間体Phe−Lys(MMT)−PABOH(実施例の一般項目を参照)との反応に使用した。必要な生成物をフラッシュクロマトグラフィーで単離した。生成物MMT−S−(CH−CO−Phe−Lys(MMT)−PABOHを、84.7%の収率で得た。そのエレクトロスプレー質量スペクトルは、その構造に対して予測されたように、陽イオンモードにおいて、m/e1032でのM+Hおよびm/e1054での強いM+Na、ならびに陰イオンモードにおいて、m/e1030でのM−Hピークを示した。この材料をBOC−SN−38−(20)−クロロギ酸と反応させ、生成物を実施例2に記述したものと同様の方法で精製し、生成物MMT−S−(CH−CO−Phe−Lys−PABOCO−(20)−SN−38−(l0)−BOCを得た。その質量スペクトルは構造と一致した(m/e1572でのM+Na、m/e1548でのM−H、m/e1663でのM+TFA)。最後に、実施例2に記述したようなTFAとの短時間処置は、副生成物として約5%のSN−38を有するHPLCによって>87%の純度の表題生成物を提供した。その質量スペクトルは、陽および陰イオンモードそれぞれにおいて、m/e906でのM+Hおよびm/e904でのM−Hを示した。
【実施例6】
【0119】
軽度に還元された抗体に対するマレイミド含有のSN−38中間体の結合:MAb
の鎖間領域への付着
抗CD22ヒト化MAb、hLL2、抗CD74ヒト化MAb、hLL1、抗EGP−1ヒト化MAb、hRS7、および抗IGFR1キメラMAb、cR1をこれらの研究に使用した。5.4mM EDTAを含有するpH7.4の40mM PBS中のジチオスレイトール(DTT)(50から70倍モル過剰で使用) で、各抗体を45分間37℃(浴槽)で還元した。還元された生成物を、遠心分離したサイズ排除カラムで精製し、75mM酢酸ナトリウム−1mM EDTAで緩衝液交換を行った。チオール含有量をエルマンのアッセイで決定し、6.5から8.5SH/IgGの範囲であった。還元したMAbを実施例2の12.5から22.5倍モル過剰のCL−SN−38または実施例3のPEG−CL−SN−38、あるいは、実施例4のCL−AA−SN−38と、5〜10%v/vのDMFを共溶媒として使用して反応させ、外気温で20分間インキュベートした。複合体を遠心分離したSEC、疎水性カラムの通過、および最後に限外ろ過ダイアフィルトレーションで精製した。生成物を、SN−38に対して366nmの吸収度で分析し、基準値と相関させ、一方、タンパク質濃度は、この波長でSN−38吸光度の溢流に対して採取された280nmの吸光度から推定した。この方法により、SN−38/MAb置換率を決定した。精製した複合体を、ガラス製薬瓶内に凍結乾燥製剤として保管し、真空下でふたをして、−20℃のフリーザー内に保管した。SN−38モル置換率(molar substitution ratio:MSR)をこれらの一部の複合体に対して取得し、これは表2に示すように、結合モードを考慮して一般的に5〜8の範囲である。
【実施例7】
【0120】
マレイミド付加の抗体に対するCLS−SN−38の結合:MAb
のリジン側鎖への付着
抗CD22ヒト化MAb、hLL2および抗EGP−1ヒト化MAb、hRS7を、これらの研究において検討した。pH7.4のPBS中の7から10倍モル過剰のスルホ−SMCCによって、40分間4℃で、各抗体を誘導体化した。遠心分離したSECおよび5mg/mLに希釈したpH6.5の75mM 酢酸ナトリウム−1mM EDTAによる緩衝液交換で、各例における複合体を精製し、酢酸でpHをpH5に調節した。次いで、マレイミド付加の抗体を、約10%v/vで共溶媒として使用したDMFで、実施例5のCLS−SN−38の僅かなモル過剰(抗体上の各マレイミド基に対して約1.15等価)と反応させた。外気温で15分後、複合体を精製し、SN−38モル置換を実施例6の複合体に関して記述したように決定した。薬物がMAbのリジンアミノ基に付着されるこれらの複合体の一部に対して得られたSN−38置換を表2(イタリック体のもの全体)に示す。代替調剤は一般的に実施例6の複合体のものよりも少ない。
【0121】
【表2】

【実施例8】
【0122】
リンパ腫における抗体−SN−38複合体の体外細胞傷害性
Raji B−リンパ腫細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)から得た。SN−38複合体をジスルフィド還元の抗CD74MAb、hLL1、または、陰性対照MAb抗EGP−1 MAb、hRS7(対照として使用)から調製し、以下の組成を有した。hLL1(またはhRS7)−[サクシニミドカプロイル(SCと略す)]−CL−SN−38およびhLL1(またはhRS7)−[サクシニミド−PEG12(S−PEG12と略す)J−CL−SN−38、ここで、CLは、p−アミノベンジル由来のPABを有するPhe−Lys−PABOCO部分である。凍結乾燥された複合体を生理食塩水で5mg/mLに再構成した。他の対照は未修飾hLL1およびSN−38(DMSO溶液)を含んだ。細胞を収集し、96ウェルプレート(25,000細胞/ウェル)内に蒔いた。20μLの連続的に希釈した複合体溶液または対照 を、SN−38と等価の最終濃度0−7μMの最終濃度になるまで各ウェルに加え、37℃でインキュベートした。培地を4時間または48時間で廃棄し、培地を洗浄し、その後新鮮な培地を追加した。インキュベーションの合計時間は48時間であった。MTS色素還元アッセイを使用して用量反応曲線を決定し、PrismPad(登録商標)Software(Advanced Graphics Software、Encinitas、CA)を使用して効果的なEC50濃度を決定した。下記の表3は、hLL1複合体による特異的細胞傷害性を示す。
【0123】
【表3】

【0124】
異なる実験において、SN−38−20−グリシン酸塩またはSN−38−20−サルコシネートに由来する2官能性のSN−38のhLL1およびhRS7複合体を、上記のようなRaji細胞を使用して体外で評価した。使用した特異的基質は、hLL1−[SC−Phe−Lys−PABOCO−Gly−SN−38]および[SC−Phe−Lys−PABOCO−Sar−SN−38]であり、非特異的基質は、hRS7−[SC−Phe−Lys−PABOCO−Gly−SN−38]およびhRS7−[SC−Phe−Lys−PABOCO−Sar−SN−38]であった。略称SC、PABは上述のとおりであり、Phe、Lys、GIy、およびSarはアミノ酸である。表4は、これらのhLL1複合体による特異的細胞傷害性を示す。
【0125】
【表4】

【実施例9】
【0126】
hLL1−SN−38誘導体による重症複合免疫不全(Severe Combined Immunodeficient:SCID)マウスにおけるRaji全身性リンパ腫の体内療法
評価した複合体は、抗CD74MAb、hLL1に由来し、hLL1−[サクシニミドカプロイル(SCと略す)]−CL−SN−38およびhLL1−[サクシニミド−PEG12(S−PEG12と略す)]−CL−SN−38の構造を有し、CLは、Phe−Lys−PABOCO部分であって、 PABはp−アミノベンジルに由来し、PheおよびLyはそれぞれ、アミノ酸フェニルアラニンおよびリジンである。8週齢のメスSCIDマウスに2.5x10Raji細胞を静脈内注射によって接種した。翌日、500μgの検査薬または未修飾hLL1抗体を5つのマウスの群に静脈内注射した。後肢麻痺および/または20%を超える体重減少が兆候である疾患進行について、動物を毎日観察した。未修飾抗体で処理したものの56日の生存期間中央値と比べて、どちらかの複合体で処理したマウスは125日の生存期間中央値を超えて生存している。さらに、hLL1−[SC−CL]−SN−38(「hLL1−CL−SN−38」)は、抗体単独の対照よりも有意に良好だった(P<0.0064)。これらのデータは、治療的効果がこれらの複合体で得られたことを示した。
【実施例10】
【0127】
抗CD22hLL2−SN−38薬物複合体による重症複合免疫不全(Severe Combined Immunodeficient:SCID)マウスにおける
Daudi全身性リンパ腫の体内療法
8週齢メスSCIDマウスに1.5x10Daudi細胞を静脈内注射により接種した。翌日、100、200、または500μgのhLL2−SN−38を注射し、その後、3週間の間週2回および第4週目に1回注射した。対照は、未処置マウスおよび未修飾hLL2の等用量を受け取るものから成った。1群当り8匹の動物を使用した。疾患進行の兆候である動物の後肢麻痺および/または20%を超える体重減少について毎日観察した。500μg用量、200μg用量、および100μg用量群の生存期間中央値、および括弧内に示される各相当する裸hLL2用量群生存期間中央値は、それぞれ98日(49.5日)、92.5日(54.5日)、74.5日(42日)であった。未処置の動物は、27日目に死んだ。最も高い用量グループでは、8匹のマウス中7匹が生存し、生存期間中央値は98日目にまだ到達していなかった。これらのデータは、抗CD22hLL2−SN−38複合体の治療効果を示した。
【実施例11】
【0128】
抗gpl20MAbのSN−38複合体を用いた処置によるHIV感染の排除
P4/D10などのHIV外被タンパク質gpl20、抗gp120抗体に標的化されたMAbを、実施例5に記述した条件を使用して還元し、還元したMAbを実施例1に対して記述したような20倍モル過剰の薬物−リンカーCL−SN−38と反応させる。抗体当り約8薬物分子の置換を有する抗gp120−SN−38複合体を得る。非感染Jurkat T細胞および完全にHIB感染したJurkat T細胞の種々の混合物を使用し(99.8:2から95:5の比率で)、複合体、非特異的hRS7−CL−SN38複合体対照、裸抗体、およびHIV陰性血清の100から0.00001μg/mLまでの連続希釈法で処置し、該複合体での体外HIV抑制検査を行う。そのように処置した細胞を、RPMI1640培地内で7日間37℃でインキュベートし、次いで、関連するELISAテストによってHIV抑制を検査する。この実験は、特異的薬物複合体によるHIVの細胞間伝播の強い特異的な抑制を示す。特異的および非特異的SN−38複合体とともに同種HIV感染の細胞を用いて、マウスに投与することで体内有効性をテストする。このため、免疫抱合体投与と同時に、HIV−1/MuLV偽型ウイルスに感染した一次マウスの脾細胞をマウスの群に腹腔内移動させる。腹膜細胞を10日後に収集する。対照マウスにおいて感染性HIVの存在が示される一方、100μg未満の抗gp120−SN−38複合体で処置したマウスにおいて感染性HIVは検出されない。対照複合体処置したマウスに保護は見られない。
【0129】
上述の説明により、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に把握することができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、必要以上の実験なしに種々の用途および条件に適用させるため、発明の種々の変更および改良を行うことができる。本明細書に記載されるすべての特許、特許出願および公報は、参照することによりそれら全体が本願明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンプトテシン薬物、および式TM−[L]−CPTの標的部分(targeting moiety:TM)の複合体であって、TMは、疾患標的部分であり、CPTは、カンプトテシンまたはその類似体であり、Lは、X−Y−Z型のリンカー系であって、Xは疾患標的部分結合部分であり、Yはリソソーム性に開裂可能なポリペプチドであり、ZはCPT薬物に連結される4−アミノベンジルオキシ部分である、複合体。
【請求項2】
前記疾患標的部分は、モノクローナル抗体(MAb)である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記抗体は、キメラ抗体である、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記抗体は、ヒト化抗体である、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
前記抗体は、ヒト抗体である、請求項2に記載の複合体。
【請求項6】
前記標的部分は、2重特異性または多特異性抗体である、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記標的部分は、3価の2重特異性抗体複合体である、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記CPTは、CPT、10−ヒドロキシカンプトテシン、SN−38、トポテカン、ルルトテカン、9−アミノカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、およびその誘導体から成る群から選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
前記CPTはSN−38である、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記開裂可能なポリペプチドは、フェニルアラニン−リジン、バリン−シトルリン、アラニン−ロイシン、ロイシン−アラニン−ロイシン、およびアラニン−ロイシン−アラニン−ロイシンから成る群から選択される、請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
Zは、CPTの20−ヒドロキシ基とアミノ酸またはポリペプチドとのエステル結合のアミン末端に連結される、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
前記エステル結合は、グリシン、アラニン、およびサルコシンを含む群から選択されるアミノ酸に由来する、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記リンカー系Lは、ポリエチレングリコール(PEG)により置換され、抗体複合基において終結する、請求項11に記載の複合体。
【請求項14】
Zは、前記CPTの20−ヒドロキシ基へ炭酸塩結合を介して連結する、請求項1に記載の複合体。
【請求項15】
前記抗体連結基Xは、チオール反応性であり、マレイミド、ビニルスルホン、ブロモアセトアミド、およびヨードアセトアミドから成る群から選択される、請求項2に記載の複合体。
【請求項16】
前記抗体連結基Xは、前記抗体上のチオール反応性残基と反応するチオール基であり、前記チオール反応性残基は、マレイミド、ビニルスルホン、ブロモアセトアミド、およびヨードアセトアミドから成る群から選択される、請求項2に記載の複合体。
【請求項17】
前記リンカーは、Xの構成要素として水溶性化ポリエチレングリコール(PEG)をさらに備え、XおよびY間の結合を構成する、請求項1に記載の複合体。
【請求項18】
前記PEGは、大きさが最大5KDであり、好ましくは1〜30モノマー単位を有する定義されたPEGを含有し、より好ましくは1〜12モノマー単位を有する定義されたPEGを含有する、請求項13に記載の複合体。
【請求項19】
前記PEGは、大きさが最大5KDであり、好ましくは1〜30モノマー単位を有する定義されたPEGを含有し、より好ましくは1〜12モノマー単位を有する定義されたPEGを含有する、請求項17に記載の複合体。
【請求項20】
請求項1に記載の複合体を生成する工程であって、前記リンカーは、前記CPT薬物に最初に結合され、それによってCTP薬物−リンカー複合体を生成し、その後、前記CTP薬物−リンカー複合体は疾患標的部分に結合される、工程。
【請求項21】
CTP薬物−リンカー調製は、10−ヒドロキシル基を含有するCPT類似体の10−ヒドロキシル保護基の選択的脱保護を含み、 CPTの20−ヒドロキシル基を介する前記リンカーへのCPTの結合を本質的に影響されない状態に維持する、請求項20に記載の工程。
【請求項22】
前記10−ヒドロキシル保護基は、tert−ブチルオキシカルボニルである、請求項21に記載の工程。
【請求項23】
前記CPTはSN−38である、請求項21に記載の工程。
【請求項24】
前記CTP薬物−リンカーは、モノクローナル抗体またはフラグメントへの結合前に精製されない、請求項21に記載の工程。
【請求項25】
前記疾患標的部分は、モノクローナル抗体である、請求項20に記載の工程。
【請求項26】
前記抗体は、1から12CPT部分の間に付着される、請求項2に記載の複合体。
【請求項27】
前記MAbは、マウス、キメラ、霊長類化、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体であり、前記抗体は、無傷、フラグメント(Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’))、またはサブ−フラグメント(単鎖コンストラクト)の形態である、請求項2に記載の複合体。
【請求項28】
前記MAbは、キメラ抗体である、請求項27に記載の複合体。
【請求項29】
前記MAbは、ヒト化抗体である、請求項27に記載の複合体。
【請求項30】
前記MAbは、ヒト抗体である、請求項27に記載の複合体。
【請求項31】
前記MAbは、多特異性であり、標的細胞または病原体上に含有される少なくとも2つの異なる抗原またはエピトープを標的とする多数の結合アームを有し、1つ以上の特異的標的アームは、CPTに結合される、請求項2に記載の複合体。
【請求項32】
前記多特異性MAbは、LLl、LL2、hA20、1F5、L243、RS7、PAM−4、MN−14、MN−15、Mu−9、L19、G250、J591、CC49およびImmu31から成る群から選択される1つ以上の抗体を含む2重特異性および/または2価抗体構成である、請求項31に記載の複合体。
【請求項33】
前記CPTはSN−38である、請求項31に記載の複合体。
【請求項34】
前記MAbは、癌または悪性細胞、感染性の生物、自己免疫疾患、循環器疾患、または神経系疾患と関連する抗原または抗原のエピトープと反応する、請求項2に記載の複合体。
【請求項35】
前記癌細胞は、造血器腫瘍、癌腫、肉腫、黒色腫または神経膠腫からの細胞である、請求項34に記載の複合体。
【請求項36】
前記MAbは、B細胞系列抗原、T細胞抗原、骨髄細胞系列抗原またはHLA−DR抗原に結合する、請求項34に記載の複合体。
【請求項37】
癌抗原またはエピトープに対して標的化された前記MAbは、CD20抗原に対するA20である、請求項34に記載の複合体。
【請求項38】
前記MAbは、内在化抗体である、請求項34に記載の複合体。
【請求項39】
前記MAbは、CD22抗原に対するLL2である、請求項38に記載の複合体。
【請求項40】
前記MAbは、EGP−1抗原に対するRS7である、請求項38に記載の複合体。
【請求項41】
前記MAbは、CD74抗原に対するLLlである、請求項38に記載の複合体。
【請求項42】
前記感染性の生物は、細菌、ウイルス、真菌、微生物または寄生虫である、請求項34に記載の複合体。
【請求項43】
前記感染性の生物は、AIDSの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、結核菌、ストレプトコッカスアガラクチア、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、在郷軍人病菌、化膿性連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌菌種、インフルエンザ菌B、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘータ、ウエストナイルウイルス、緑膿菌、らい菌、ウシ流産菌、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI、単純ヘルペスウイルスII、ヒト血清パルボ様ウイルス、RSウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタインバーウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、ブルセイトリパノソーマ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、ウシバベシア、アイメリアテネラ、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリアパルバ、胞状条虫、羊条虫、無鉤条虫、単包条虫、有線条虫属、マイコプラズマ アルスリチジス、マイコプラズマ ハイオリニス、マイコプラズマ オラーレ、マイコプラズマ アルギニニ、アコレプラズマ レイドロウイ、マイコプラズマ サリバリウム、および肺炎マイコプラズマから成る群から選択される、請求項34に記載の複合体。
【請求項44】
前記自己免疫疾患は、免疫性の血小板減、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、関節リウマチ、多腺性症候群、類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホシェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎線維化肺胞炎、および若年性糖尿病から成る群から選択される、請求項34に記載の複合体。
【請求項45】
前記循環器疾患は、心筋梗塞、虚血性心疾患、動脈硬化巣、フィブリン塊、塞栓、またはそれらの組み合わせを含む、請求項34に記載の複合体。
【請求項46】
前記抗体は、神経系疾患と関連する抗原を特異的に結合し、前記抗原は、アミロイドまたはβアミロイドを含む、請求項34に記載の複合体。
【請求項47】
前記MAbは、CD74、CD22、上皮糖タンパク質−1、癌胎児抗原(CEAまたはCD66e)、結腸特異的原−p、αフェトプロテイン、CC49、前立腺特異的膜抗原、カルボニックアンヒドラーゼIX、HER−2/neu、上皮成長因子受容体(ErbBl)、ErbB2、ErbB3、ILGF、BrE3、CD19、CD20、CD21、CD23、CD33、CD45、CD74、CD80、VEGF、ED−Bフィブロネクチン、PlGF、他の腫瘍血管新生抗原、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、ガングリオシド、HCG、EGP−2、CD37、HLA−DR、CD30、Ia、A3、A33、Ep−CAM、KS−I、Le(y)、SlOO、PSA、テネイシン、葉酸受容体、トーマス−フリードライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、Ga733、IL−2、IL−6、TlOl、MAGE、遊走阻止因子(migration inhibition factor:MIF)、L243により結合される抗原、PAM4により結合される抗原、CD66a(BGP)、CD66b(CGM6)、66CDc(NCA)、66CDd(CGMl)、TACおよびそれらの組み合わせから成る群から選択される抗原に結合する、請求項2に記載の複合体。
【請求項48】
前記MAbは、LLl、LL2、RFB4、hA20、1F5、L243、RS7、PAM−4、MN−14、MN−15、Mu−9、AFP−31、L19、G250、J591、CC49、L243、PAM4およびImmu31から成る群から選択される、請求項2に記載の複合体。
【請求項49】
前記複合体は、非経口投与に適した形態である、請求項2に記載の複合体。
【請求項50】
前記モノクローナル抗体は、複合多特異性抗体の一部である、請求項2に記載の複合体。
【請求項51】
前記複合抗体は、CD74、CD22、上皮糖タンパク質−1、癌胎児抗原(CEAまたはCD66e)、結腸特異的抗原−p、αフェトプロテイン、CC49、前立腺特異的膜抗原、カルボニックアンヒドラーゼIX、HER−2/neu、BrE3、CD19、CD20、CD21、CD23、CD33、CD45、CD74、CD80、VEGF、EGF受容体(ErbBl)、ErbB2、ErbB3、PlGF、VEGF、ED−Bフィブロネクチン、MUCl、MUC2、MUC3、MUC4、ILGF、ガングリオシド、HCG、EGP−2、CD37、HLA−DR、CD30、Ia、A3、A33、Ep−CAM、KS−I、Le(y)、SlOO、PSA、テネイシン、葉酸受容体、トーマス−フリードライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、腫瘍血管新生抗原、MIF、Ga733、IL−2、IL−6、T101、MAGE、L243により結合される抗原、PAM4により結合される抗原、CD66a(BGP)、CD66b(CGM6)、66CDc(NCA)、66CDd(CGMl)およびTACから成る群から選択される2つ以上の抗原に結合する、請求項50に記載の複合体。
【請求項52】
前記複合抗体は、CD20およびCD22に結合する、請求項50に記載の複合体。
【請求項53】
前記複合抗体は、EGP−1のための少なくとも1つの結合部位を含有する、請求項50に記載の複合体。
【請求項54】
前記複合抗体は、CD74のための少なくとも1つの結合部位を含有する、請求項50に記載の複合体。
【請求項55】
前記標的部分は、融合タンパク質である、請求項1に記載の複合体。
【請求項56】
前記融合タンパク質は、抗体または抗体フラグメントを含む、請求項55に記載の複合体。
【請求項57】
第2の融合タンパク質、抗体または抗体フラグメントをさらに含む、請求項56に記載の複合体。
【請求項58】
第3の融合タンパク質、抗体または抗体フラグメントをさらに含む、請求項57に記載の複合体。
【請求項59】
前記第2の融合タンパク質、抗体または抗体フラグメントはまた、1つ以上のCPT部分に連結される、請求項57に記載の複合体。
【請求項60】
前記第3の融合タンパク質、抗体または抗体フラグメントはまた、1つ以上のCPT部分に連結される、請求項58に記載の複合体。
【請求項61】
前記融合タンパク質は、マウス、キメラ、霊長類化、ヒト化、またはヒトモノクローナル抗体を含み、前記抗体は、無傷、フラグメント(Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’))、またはサブ−フラグメント(単鎖コンストラクト)の形態である、請求項56に記載の複合体。
【請求項62】
前記2つの融合タンパク質は、同一のエピトープ、同一の抗原上の異なるエピトープ、または異なる抗原に結合する、請求項57に記載の複合体。
【請求項63】
請求項1に記載の複合体を被験者に投与するステップを含む、疾患を治療する方法。
【請求項64】
前記複合体は、非結合抗体、放射性標識抗体、薬物結合抗体、毒素結合抗体、遺伝子治療、化学療法、治療用ペプチド、オリゴヌクレオチド、限局性放射線治療、手術および干渉RNA療法から成る群から選択される1つ以上の他の治療法と組み合わせて投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記疾患は、癌、病原生物感染、自己免疫疾患、循環器疾患、または神経系疾患である、請求項63に記載の方法。

【公表番号】特表2009−531325(P2009−531325A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501636(P2009−501636)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/063735
【国際公開番号】WO2007/112193
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(508250648)イムノメディックス,インク. (2)
【Fターム(参考)】