説明

カーソル制御装置

【課題】 キーボードへのキー入力と、カーソルのポイント/クリックとを合理的に行える、ラップトップパーソナルコンピュータ用のカーソル制御装置を得ること。
【解決手段】 表示装置ハウジングが回動可能に結合されている主ハウジング上に、キーボードが表示画面に隣接させて配置され、そのキーボードからユーザー寄りの主ハウジング上に手のひら支え部分が位置され、そして、カーソル制御装置は、その手のひら支え部分に設けられるものであって、キーボードの操作状態中に、ユーザーの両手がカーソル制御装置に届くよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムの分野に係り、特に、キーボードと、カーソル制御装置と、手のひら支えとを統合したラップトップコンピュータに係り、特にカーソル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ラップトップコンピュータは、キーボードおよび表示装置を全て1つのパッケージに収めた設計である。キーボードはラップトップコンピュータの前縁部に隣接して取付けられており、表示装置は、通常、キーボードを収納しているハウジングに回転自在にヒンジ結合され、ラップトップコンピュータのハードウェアの大部分は同一のハウジングに収納されている。若干のラップトップコンピュータは組込みカーソル制御装置をさらに含む。この組込みカーソル制御装置は、キーボードとは別であるがラップトップコンピュータのハウジングの一部であり、通常はラップトップコンピュータの前縁部に隣接しているキーボードの左側又は右側に取付けられる(ただし、アイソポイントカーソル制御装置はキーボードのスペースバーの下方に取付けられる場合が多い)。ユーザーは、カーソル制御装置によって、コンピュータの表示画面におけるカーソル、すなわち、ポインタの位置を調整することができる。たとえば、ユーザーが表示装置に表示されたソフトウェアオプションを繰返し選択することを要求される場合又は図形フォーマットのデータをコンピュータシステムにデータを入力すること(たとえば、コンピュータの表示装置に画像を描く)を望むようなときには、カーソル制御装置を使用する頻度が高くなる場合が多い。
【0003】
従来のカーソル制御装置の一種は、米国特許第4,464,652号に示される「マウス」と一般に呼ばれるものである。そのようなマウスは、ケーブルによりコンピュータシステムに結合され且つキーボードに隣接して配置される小型の手持ち箱形装置である。マウスは、ボールを収容する半球形部分を含み、ボールは通常はデスクトップであるなめらかで平坦な面に接して半球形部分の中で自在に回転する。従って、マウスの操作には、(コンピュータのキーボードに隣接して)マウスがX方向,Y方向又はそれらを組合せた方向に移動できる平坦でなめらかな面が必要である。マウスがX−Y方向に動くにつれて、ボールは相応して回転する。そこで、ボールの回転を表示装置におけるカーソルのX−Y運動として解釈する。従って、面に対するマウスの動きは表示装置におけるカーソルの動きとしてそのまま現れるのである。ユーザーが押したときに、表示装置のカーソルの所望の位置を選択したことをコンピュータに報知するために、マウスにはスイッチが設けられている。マウスを(カーソルによって)表示画面の1つの画像を指すように移動させることと、その画像を選択するためにカーソルが画像を指している間にスイッチを押すこと(通常の可聴及び触覚フィードバックを伴なう)の組合せを「ポイント及びクリック」と呼ぶ。コンピュータを制御するためにポイント及びクリック方式を使用することは非常に有効であり且つ非常に「ユーザーに好都合である。」
【0004】
上述の種類のマウスは数多くのアプリケーションについて申し分ないのであるが、コンピュータシステムのキーボードからマウスが離れていることに起因する欠点があることがわかっている。これは特にラップトップコンピュータの場合に見られる。
【0005】
このような従来の欠点の1つは、マウスを使用するときにユーザーはキーボードにおけるその手動操作を止めて、手をキーボードからおろし、マウスをつかまなければならないということである。これは、時に、ユーザーの目を表示装置からそらしてマウスをつかむのを助けることをも要求する。次に、マウスをユーザーの手で押して、カーソルが表示装置の所望の箇所に到達するまで面に沿ってマウスを動かす。そこで、ユーザーはマウスから手を放し、キーボードの適正な手の位置を見つけてタイプ打ち操作を再開しなければならない。数多くのアプリケーション(例えば、文書処理)においては、マウスの操作によってユーザーの注意をキーボードからそらすために、便利さと効率をかなり失う結果になる。
【0006】
従来のもう1つの欠点は、マウスを使用するとき、マウスを移動させる面がシステムの不可欠の部分であるということである。時によってはポータブルコンピュータをユーザーのひざの上にのせる場合があり、マウスのためにそのような面を利用することができない。従って、コンピュータをひざにのせている間又はマウスを操作するための隣接面を利用できないような場合には、マウスを正しく使用することができない。
【0007】
その上、ユーザーはポータブルコンピュータを、たとえば、ユーザーのひざの上以外にはポータブルコンピュータをのせる台が見あたらないタクシーの車内などので使用することもあり、そのようなときにはユーザーの手のひら又は手首を支えておくために何も利用できるものがない。前縁部に近接して配置されている従来のポータブルコンピュータのキーボードも、ユーザーの手のひら又は手首を支える台にはならない。従来のポータブルコンピュータをある時間にわたりユーザーのひざの上で使用するときには、ユーザーは手のひら又は手首を何かにのせて支えておくことができず、また、筋肉の緊張をやわらげるために腕を伸ばして身体から離すこともできない。コンピュータをそのような環境で使用している期間中、ユーザーは腕や肩の筋肉に大きな疲労をおぼえる。
【0008】
従来のキーボード外のマウスに関連して上記のような欠点やその他の欠点があるため、キーボードの上に手を残したままでマウスの利点を利用でき且つキーボード外のマウスの場合に必要であった種類の平坦な作業面を要求しない、キーボードと手のひら支えおよびカーソル制御装置とを組合せた構成が必要されていたが、これまでその要求は満たされないままであった。
【0009】
カーソル位置決め装置をキーボードに組入れるための方法は従来よりいくつか知られている。そのような従来の方法の1つは米国特許第4,736,191号に示されており、これは、カーソル位置決め装置として働くタッチパッドを有するキーボードを記載し、そのタッチパッドは、ユーザーがキーボードから手を放す必要なくユーザーの親指でタッチパッドを操作することができるようにキーボード(コンピュータとは別個である)のスペースバーのすぐ下に配置されている。ところが、これらの従来の方式は、本発明におけるようにキーボードと、カーソル制御装置(スイッチ共)と、手のひら支えとをラップトップコンピュータに統合した人間工学に基づく構成を開示していない。また、従来の方式の多くで、カーソル位置決め装置を操作するためにユーザーの目をそらし、手を動かすことは依然として必要である。これらの従来の方式は次のものに見られる。
【0010】
1.1986年8月19日発行の米国意匠特許第285,201号,名称「KEYBOARD INCLUDING TRACKBALL」;
2.1987年8月25日発行の米国意匠特許第291,574号,名称「KEYBOARD INCLUDING TRACKBALL」;
3.1987年10月13日発行の米国意匠特許第292,289号,名称「ELECTRONICCOMPUTER」;
4.1987年6月2日発行の米国特許第4,670,743号,名称「KEYBOARD CURSORCONTROLLER 」;
5.1987年12月8日発行の米国特許第4,712,101号,名称「CONTROL MECHANISM FOR ELECTRONIC APPARATUS」;
6.1988年4月5日発行の米国特許第4,736,191号,名称「TOUCH ACTIVATED CONTROL METHOD AND APPARATUS」;
7.1989年4月25日発行の米国特許第4,823,634号,名称「MULTIFUNCTIONTACTILE MANIPULATABLE CONTROL」;
8.1990年1月30日発行の米国特許第4,896,554号,名称「MULTIFUNCTIONTACTILE MANIPULATABLE CONTROL」;
9.1982年7月7日公告のドイツ特許出願第DE−3045133号,名称「CURSOR INPUT CONTROL FOR VDU」;
10.1984年5月30日公告の日本特許出願第59−94133号,名称「DOCUMENT AND FIGURE GENERATING DEVICE 」;及び
11.1985年3月のIBM Technical Disclosure Bulletin 第27巻第10B号の6299〜6305ページ「MOUSE/KEYBOARDCONCEPT INCORPORATING UNIQUE DEVICES FOR CONTROLLING CRT DISPLAY CURSOR」。
【0011】
本発明とは異なり、これらの従来の方式は、ユーザーが手をキーボードにのせたままにし且つ手のひらをラップトップコンピュータの手のひら支えで支えている一方で、ユーザーに「ポイント及びクリック」方式を実践させることができない(たとえば、米国特許第4,736,191号はカーソル位置決めタッチパッドを伴うスイッチを提供しない)。
【0012】
さらに、従来の技術では、ユーザーのいずれか一方の親指がトラックボールを動かし、また、ユーザーには、手をキーボードの上に乗せたまま、親指でキーボードに最も近接する位置にあるスイッチを押す(表示画面の画像をクリック/選択する)というオプションは与えられていない。また、従来のシステムは、次のような2つのスイッチを備えていない。すなわち、キーボードに最も近接する位置にあり、多くの場合に文書処理アプリケーションの最も適するスイッチと、トラックボールの下方に位置しており、多くの場合に、コンピュータシステムに図形を描くなどの一方の手を使用する微細なカーソル位置決め(たとえば、人指し指でトラックボールを操作する一方で、同じ手の親指でスイッチを操作する)に最も良く利用されるスイッチとの2つスイッチであって、ユーザーが目で見ずにスイッチの位置を確かめるのを助けるようにユーザーに触覚フィードバックを与えるために輪郭を浮立たせたボタンにより覆われている2つスイッチを備えていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
公知のシステムにおける限界を考慮すれば、本発明の1つの目的は、カーソル位置決め装置の操作のためにキーボードからユーザーの手を放す必要がなく、その間にユーザーに「ポイント及びクリック」方式を実践させることができるキーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置とを組合せたラップトップコンピュータに適するカーソル制御装置を提供することである。
【0014】
公知のシステムにおける限界を考慮すれば、本発明の別の目的は、ユーザーの手のひらの支え台を形成すると共に、ユーザーが手をキーボードにのせたままにした状態で、一方の親指でトラックボールを動かし、他方の親指でキーボードに最も近接する位置にあるスイッチを押せるというオプションをユーザーに与える、キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置とを組合せたラップトップコンピュータに適するカーソル制御装置を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、ユーザーのひざの上でキーボードを使用しながらユーザーの手/手のひらを支えることができるので、ユーザーはよりリラックスした状態で腕を伸ばして身体から離せるようになり、その結果、ユーザーの腕や肩の筋肉の疲労をやわらげるように、手のひら支えとして十分なスペースを有する人間工学に基づいて設計された精巧なラップトップコンピュータに適するカーソル制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
キーボードと、手のひら支えと、カーソル位置決め装置及び少なくとも1つのスイッチ手段を有するカーソル制御装置とを統合したラップトップパーソナルコンピュータを開示する。ラップトップパーソナルコンピュータは、移動自在のカーソルを表示する表示画面を含み、さらに、コンピュータにデータを入力するキーボードを含むが、そのキーボードは、通常、最下列キーを含む多数のキーを有する標準の英数字キーボードである。通常は平坦な面である手のひら支え領域はキーボードの最下列に隣接しており、キーボードでタイプ打ちするときにユーザーの手のひら及び/又は手首を支えるのに適する大きさである。通常はトラックボールであるカーソル位置決め装置は手のひら支え領域にある凹部に配置されている。ユーザーは、カーソル位置決め装置によって、表示画面に表示されている移動自在のカーソルを表示画面のいずれかの箇所へ移動させることができる。ラップトップコンピュータは、起動されたときに表示画面における移動自在のカーソルの位置に従って特定の機能を起動する少なくとも1つのスイッチ手段を具備する。カーソル位置決め装置と、少なくとも1つのスイッチ手段の組合せは、表示画面の1つの画像を(カーソルによって)指示し、カーソルが画像を指示している間にスイッチ手段を起動することによりコンピュータを制御する能力をユーザーに与えるポイント及びクリック機能を実現する。電気素子であるスイッチ手段は、通常、ユーザーをコンピュータの電気回路から電気的に分離する(つまり絶縁する)ボタン手段により(例えば、スイッチの電気的状態の変化によって)起動される。
本明細書は、このようなラップトップパーソナルコンピュータの使用方法も開示する。その使用方法によれば、カーソル操作を、ユーザの両手で行うか、片手で行うかを選択し、両手で行う場合には、親指以外の両手の指をホームキー上に置いたまま、一方の手の親指で上記カーソルを位置づけ、他方の手の親指を使ってカーソルで指定された画像を選択する。カーソル操作を片手で行う場合には、ユーザは片手をホームキーから離した状態で、その片手の第1の指でカーソルを位置づけ、その片手の第2の指を使ってカーソルで指定された画像を選択する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一実施例では、本発明のラップトップパーソナルコンピュータは、2つのスイッチ手段を含み、いずれか一方が起動されたときに表示画面における移動自在のカーソルの位置によって決まる少なくとも1つの特定の機能を実行するための少なくとも1つの信号を起動する。それら2つのスイッチ手段は、異なる機能を起動する別個のスイッチであっても良いし、あるいは、単一の機能を実行する1つの信号を供給するために並列に接続されても良い。本発明は、第1のスイッチ手段と第2のスイッチ手段をそれぞれ起動する第1のボタン手段と、第2のボタン手段とをさらに提供する。第1のボタンはキーボードの最下列の下方、カーソル位置決め装置の上方に配置されている。第2のスイッチ手段を起動する第2のボタンはカーソル位置決め装置の下方に配置されている。カーソル位置決め装置および第1及び第2のボタンは、通常、手のひら支えの幅に関して中心の位置にある線により規定される手のひら支えの中心線に沿ってほぼ整列している。通常、この線はキーボードの最下列に関して垂直であると共に、ラップトップコンピュータの前縁部に関して垂直である。
【0018】
ラップトップコンピュータは、主ハウジングと表示装置ハウジングとを含む。表示装置ハウジングは、閉じられている時、コンピュータのカバーとして働き、移動自在のカーソルを表示する表示画面を含む。表示装置ハウジングは、ヒンジにより主ハウジングに回転自在に結合されている。主ハウジングはCPU,メモリ,ハードディスクドライブ及び/又はフロッピー(登録商標)ディスクドライブ,入出力回路,電源並びにラップトップコンピュータに含まれている他の標準的な周知の電子回路などの従来通りの電子装置を収納している。
【0019】
本発明は、ユーザーが手をキーボードの上に置いたままにした状態で、いずれか一方の親指でトラックボールを動かし、他方の親指によって表示画面の画像を「クリック」/選択するためにキーボードに最も近い位置にある第1のボタンを押すというオプションをユーザーに与える。スイッチを起動するために使用される輪郭形状を浮立たせたボタンは、目で見ずにボタンの位置を知るためにユーザーに触覚フィードバックを与える。これにより、本発明は、ユーザーがその手をキーボードの上に置いたままにし且つ表示画面を見続けている状態で、表示画面の画像を指示し、画像を選択することができるようにする。2つの別個のボタンを設けてあるため、ユーザーはいくつかのアプリケーションについて一方のボタン(通常はキーボードにより近い上部のボタン)を使用し、カーソル制御に集中する操作を要求するアプリケーションについては他方のボタン(下部のボタン)を使用することが可能である。別の実施例においては、2つのボタンで1つのスイッチを起動しても良く、それらのボタンを機械的に結合しても良いが、あるいは、トラックボールを取囲む円形のボタンの場合のようにボタンを互いに一体に形成しても良い。
本発明の上記の特徴及び利点並びにその他の特徴及び利点は添付の図面及び以下に続く詳細な説明から明白になるであろう。
【実施例】
【0020】
図1を参照すると、本発明のキーボード、手のひら支え及びカーソル制御装置の組合せ8を含むポータブルパーソナルコンピュータ10の斜視図が示されている。コンピュータ10は多様なコンピュータの中のいずれかであれば良いが、現時点で好ましい実施例のコンピュータ10はポータブルコンピュータ、さらに特定すれば、1つのケースの中に配置されたその全ての素子と一体化された単一のユニットであり且つユーザーのひざの上にのせるのにちょうど良い大きさをもつラップトップコンピュータである。コンピュータ10は主ハウジング1を含む。好ましい実施例では、主ハウジング1は射出成形プラスチック材料から形成されている。主ハウジング1の内部には、CPU,メモリ,ハードディスクドライブ及び/又はフロッピーディスクドライブ,入出力回路及び電源などのコンピュータの動作に不可欠である周知のあらゆる電子回路が入っている。ラップトップコンピュータのためのそのような電子回路は良く知られている;ラップトップコンピュータの1例は、本発明の譲受人であるアメリカ合衆国カリフォルニア州所在のアップルコンピュータ社のマッキントッシュ・ポータブルである。
【0021】
主ハウジング1の上部には、キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置との組合せ8がある。この組合せ8は従来通りのキーボード11と、手のひら支え9と、カーソル制御装置12(カーソル位置決め装置(通常はトラックボール32)と、2つの輪郭を浮立たせた三日月形のボタン31及び33により起動される2つのスイッチとを含む)とを含む。ユーザーは、キーボード11とカーソル制御装置12によってコンピュータ10と通信する(たとえば、コンピュータにデータを入力する)ことができる。手のひら支え9は、キーボード11を使用するときにユーザーの手をのせておくための支え台を構成する。組合せ8については以下に図3〜図9を参照してさらに詳細に説明する。
【0022】
キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置との組合せ8の上方には、表示画面3を含む表示装置ハウジング2が配設されている。表示装置ハウジング2は従来通りのヒンジ手段7により主ハウジング1に結合されている。ヒンジ7によって表示装置ハウジング2は、閉じ位置(図2に示す)から表示装置ハウジング2を上へ開けて、キーボード11,手のひら支え9,トラックボール32並びにボタン31及び33を出すことができるように、主ハウジング1のカバーとして作用する。
【0023】
図1に示すようにヒンジ7は、主ハウジング1の幅にほぼ沿って延びている。別の実施例では、ヒンジ7は主ハウジング1の幅に完全に沿って延びるように形成することも可能である。また、好ましい実施例に伴って様々に異なる種類のヒンジを使用して良い。使用するヒンジ構成の特定の種類は本発明には重要ではない。
【0024】
表示装置ハウジング2は、表示画面3と、関連するビデオ回路(図示せず)とを収納した表示装置を含む。好ましい実施例では、表示画面3は液晶表示装置である。別の実施例においては、表示画面3はビデオモニター又は他の何らかの周知の表示装置であっても良い。表示画面3は表示装置ハウジング2の内壁の中心にはめ込まれている。図1には、カーソル位置決め装置32により位置決めされ移動させられる移動自在のカーソル50が示されている。
【0025】
表示画面3の上方には2つの同形の支持部材5A及び5Bが配置されている。2つの支持部材5A及び5Bの機能は、表示装置ハウジング2が閉じ位置にあるときに表示画面3がキーボード11及びカーソル制御装置12と接触するのを防ぐことである。
【0026】
表示装置ハウジング2を閉じると、ハウジング2は、組合せ8を覆い、コンピュータ10を持ち運んでいる間にキーボード11と、手のひら支え9と、カーソル制御装置12とを保護する。表示装置ハウジング2を閉じているとき、表示画面3も閉じられており、それにより、保護される。表示装置ハウジング2を引上げると、表示画面3がユーザーに見える。
【0027】
コンピュータ10が使用されておらず、図2に示すように閉じているとき、表示装置ハウジング2は、通常、ラッチアセンブリによって閉じ位置に保持されている。好ましい実施例のラッチアセンブリは、表示装置ハウジング2にあるフック要素4と、主ハウジング1の上面のボタン33の付近に設けられた溝穴15とを含む。表示装置ハウジング2が閉じているとき、フック要素4は対応する溝穴15と係合して、表示装置ハウジング2を所定の場所に保持する。カバー2を閉じ位置に係止するには、力を加えてフック要素4を溝穴15に係合させるように表示装置ハウジング2を押下げる。フック要素4を溝穴15から解放するときには、フック要素4を溝穴15から放して、表示装置ハウジング2を持上げることができるように、フック4を主ハウジング1の溝穴15との係合からすべり出させるために力を用いる。フックはばねにより溝穴15に係合した状態に保持される。表示装置ハウジング2を主ハウジング1に固着するために数多くの代替ラッチングアセンブリを使用して良いことは当業者には明白であろう。
【0028】
図1に示すような主ハウジング1の右側には、従来通りのフロッピーディスクドライブの一部である溝穴13が示されている。溝穴13によってフロッピーディスクをフロッピーディスクドライブに差込むことができる。主ハウジング1の背面近くには、従来のように表示画面3のコントラストと輝度(それぞれ)を変化させるために使用できる2つの従来通りのスライド制御要素101及び102がある。
【0029】
主ハウジング1の後方右側の壁に回転自在に装着された脚部14も図1に示されている。脚部14は、それを上へ回すことにより、主ハウジング1の底から先へ突出しないように引込み自在である。現時点で好ましい実施例においては、主ハウジング1の左側の壁にももう1つの同形の脚部が設けられている。それぞれの脚部は図1に示すように主ハウジング1の底に関して降ろした位置に設定されれば良く、これらの脚部に関しては従来の技術に多数の例が存在している。主ハウジング1が位置している平坦な面(図4Aに示すデスクトップ面52など)に対して立っているときの脚部14の機能は、ユーザーがキーボード又はカーソル制御装置を操作しているときに、主ハウジング1の上部が、デスクトップ面52に対して数度のわずかな傾きを与えられることである(図4A,図4B及び図9を参照)。多くの場合、キーボードに傾きを与えるのがユーザーには好ましい。
【0030】
図3は、キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置の組合せ8を、構成要素のそれぞれについて寸法を近似しながら示している。図3に示す通り、現時点で好ましい実施例の組合せ8の全長は約194mmであり、幅は約286mmである。キーボード11と手のひら支え9は主ハウジング1の上面のほぼ全ての部分を占め、上面の一部は、ヒンジ7と、表示装置ハウジング2とを支持している。図3に示すように、主ハウジング1の全幅(286mm)は、手のひら支え9の幅と同じである。別の実施例においては、キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置の相対サイズを(25%までの増減範囲内で)増減させることができる。
【0031】
キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置の相対サイズを25%ほど(あるいはそれ以上に)小さくしてしまうと、ユーザーがより小さくなるトラックボールを操作すること又はより小さくなるキーボードでタイプ打ちすることに困難を覚えるという意味で、ラップトップコンピュータはさらに使用しにくくなることが認められるであろう。その反面で、より小型のラップトップコンピュータは、その持ち運び及びその他の方法による搬送がより容易になるであろう。また、キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置の相対サイズを25%ほど(あるいはそれ以上に)大きくすると、ラップトップコンピュータはユーザーのひざの上で使用するのにより不都合になり、ひざの上以外で使用できないような状況(たとえば、航空機の座席)にコンピュータは適合しないようになってしまうことが認められるであろう。
【0032】
キーボード11は、主ハウジング1の上部の上端にコンピュータの前縁部から離して配置され、そのため、ヒンジ7に近接している。キーボード11は、キーボードの最下列に大きく、細長いスペースバーキーを含む従来通りの「QWERTY」キーボードであって良い。現時点で好ましい実施例では、キーボード11の寸法は約90mm×幅約272mmである。別の実施例においては、他の型のキーボードを採用することができる。使用するキーボードの特定のタイプ(例えば、「QWERTY」キーボード)は本発明には重要ではない。
【0033】
現時点で好ましい実施例におけるキーキャップは標準のキーキャップよりわずかに小さい。さらに、現時点で好ましい実施例における英数字キーの場合のキーキャップのピッチ間隔は標準のピッチ間隔より狭い。隣接するキーキャップの垂直方向ピッチ間隔は18mmであり(たとえば、「QWERTY」キーボードの場合のキーキャップ「S」と「W」の中心の垂直方向間隔は18mmである),隣接するキーキャップの水平方向ピッチ間隔は18.6mmである(たとえば、「QWERTY」キーボードの場合の「Q」と「W」の中心の水平方向間隔は18.6mmである)。本発明の特定の実施例を実現するためにキーボードのサイズを変更すると、キーキャップの大きさや、キーキャップの間隔も変わることは明白であろう。キーボードが手のひら支え領域より上に持上がっていることは図4Bからわかる。現時点で好ましい実施例では、キーキャップの上部から手のひら支え9の面までの垂直方向距離は約9mmであるが、別の実施例においてはその距離は変わっても良い。たとえば、キーボードを主ハウジング1の上部にはめ込む場合には、キーキャップの上部は手のひら支えと同じ高さになっていても良い。
【0034】
キーボード11の下方には、主ハウジングの上部にあってコンピュータのユーザーに向かってキーボード11から延びている手のひら支え9がある。手のひら支え9の目的は、特にラップトップ環境において(すなわち、コンピュータがデスクトップではなく、ユーザーのひざの上にのっている場合)、キーボード又はカーソル制御装置を使用するときに、ラップトップコンピュータの一体の部分である面にユーザーの手及び/又は手首をつけてそこで支えることである。これにより、ユーザーはよりリラックスした状態で腕を伸ばして身体から離すことができるので、腕や肩の筋肉疲労は減少する。手のひら支え9により与えられるスペースは、ユーザーの手のひら又は手首を保持するのに十分な広さとされるべきである。この目的のために約65mmから90mmの長さ(ラップトップコンピュータの前縁部から隆起部53までの距離)の範囲の手のひら支えは十分なはずであると考えるが、体の小さなユーザー(たとえば、小児)専用のラップトップコンピュータの場合にはより小さな手のひら支えでも適切であろうと思われる。手のひら支え9を広くすれば、ユーザーの手及び/又は手のひらをより広く支えられることは言うまでもない。ところが、コンピュータ10の物理的な大きさを無用に増さないために、手のひら支え9を過剰に大きくすべきではない。現時点で好ましい実施例では、手のひら支え9は、長さ約84mm,幅286mmの平坦な方形の面である。別の実施例においては、手のひら支え9は主ハウジング1の底面に対してわずかな傾きをもつ面であっても良い。
【0035】
キーボード11をヒンジ7に隣接して配置すると、キーボード11はユーザーから離れて位置することにより、ユーザーが手又は手首をユーザーの身体から離して伸ばす(「ひじのための余地」を与える)ために手のひら支え9を利用できるようになる。また、図3に示す通り、ユーザーがキーボード11における指ののホームポジションから手を放す必要なく、カーソル制御装置12を操作できるように、カーソル制御装置12を人間工学に基づいて配置することができるのである。
【0036】
キーボード11と手のひら支え9との間には、キーボード11の最下列を手のひら支え9から分離する隆起部53がある。隆起部53は手のひら支え9より約4mm高くなっており、キーボードを目で見ずにキーボードの位置を知るのを助ける上でユーザーに触覚フィードバックを与える。また、隆起部はユーザーにユーザーの親指を休めるための場所を与える。好ましい実施例では、主ハウジング1の前縁部(すなわち、ユーザーに面する縁部)からキーボードのキーキャップの最下列までの距離は約95mmである。好ましい実施例の隆起部53は幅約272mm,長さ10mmである。キーキャップの上部が手のひら支え9と同じ高さにあるならば、隆起部は通常は存在しないであろう。
【0037】
カーソル制御装置12は、手のひら支え9の中心付近の手のひら支え領域に、キーボード11の下方、通常はキーボード11の最下列にあるスペースバーの下方に、取付けられている。カーソル制御装置12によって、ユーザーは、表示画面3の移動自在のカーソルの動きを従来通りの方式で調整し、カーソル位置決め装置によりカーソルを移動させると共に、以下に説明するようにボタン31及び33により起動されるスイッチによって選択を報知することにより所望の動作を選択することができる。カーソル位置決め装置は、タッチパッド又はトラックボールを含めて、カーソル位置決めをする周知の手段の中のいずれかの1つであれば良い。
【0038】
好ましい実施例におけるカーソル制御装置12は従来通りのトラックボール32と、上部ボタン31と、下部ボタン33とを含む。従来のトラックボールの1例は、アメリカ合衆国カリフォルニア州所在のアップルコンピュータ社のマッキントッシュ・ポータブルに見られる。図3に示すように、上部ボタン31はトラックボール32とキーボード11との間に位置し、下部ボタン33はトラックボール32の下方に位置している。図3に示す通り、上部ボタン31とトラックボール32は、手のひら支え9に、キーボード11のスペースバーにごく隣接して配置されている。トラックボール32は、手のひら支え9にある丸い凹部34の中に同心に回転自在に配設された丸いボールである。凹部34とトラックボール32は、共に、上部ボタン31により半分抱込まれている(図3,図4A及び図4Bを参照)。トラックボール32は、それに結合されて、トラックボール32の回転を表示画面3で規定されるX−Y位置を表す電気信号に変換する従来通りの変換器を含む。トラックボール32は、その変換器を含めて、1984年8月7日に発行され且つ本発明と同一の譲受人に譲渡されている米国特許第4,464,652号に開示されるような数多くの周知の従来の技法により、手のひら支え9に実現可能である。トラックボール32は使用し得るいくつかの従来のカーソル位置決め装置の1つであり、ラップトップで使用する特定のトラックボールの内部設計は本発明には重要ではない。
【0039】
現時点で好ましい実施例ではトラックボール32の直径は約30mmであるが、トラックボールの直径は少なくとも約15mmから30mmを越える範囲でかなり異なっていて良い。トラックボールが大きい(たとえば、直径45mm)と、通常はより広い手のひら支えが必要であり、トラックボールが手のひら支えのより広い面積を占めるのが普通である。図4A及び図4Bからわかるように、トラックボール32は手のひら支え9の表面から上に一部出ているボールである。トラックボール32は凹部34の中で「浮動」(トラックボールを支える周知の方式)しており、凹部34の中であらゆる方向に回転できる。ユーザーはその親指又はその他の指を使用してトラックボール32を凹部34の中で回し、それに相応してカーソルを表示画面3の所望の位置へ移動させることができる。図3,図4A及び図4Bからもわかるように、トラックボール32をキーボード11の最下列により近接させるために、トラックボール32は上部ボタン31の中に半分入り込んだ形で配設される。図3に示すように、上部ボタン31をキーボード11により近接させるために、上部ボタン31は隆起部53の切欠き部分の中へ突出している。現時点で好ましい実施例では、図3に示すようなキーボード11の下縁部からトラックボール32の中心までの距離は約31mmであり、凹部34の外縁部の直径は約40mmである。
【0040】
上部ボタン31は機能起動ボタンである。上部ボタン31は従来通りのスイッチ手段56に機械的に結合して、スイッチを起動する(たとえば、その電気的状態を変化させる)。スイッチはユーザーから分離され且つ絶縁されるべき電気素子であることがわかるであろう。ボタンはスイッチを分離し、人間工学的に見て利点を示す。ボタンはスイッチ手段を起動し且つユーザーをスイッチから電気的に絶縁する何らかの機械的手段であれば良く、たとえば、従来通りの膜スイッチを覆う単なる膜のような単純なものであっても良く、その場合、ユーザーがその膜を押すことになる。上部ボタン31を力を加えて押すと、スイッチの電気的状態(たとえば閉成又は開成)が変化し、それにより、ユーザーにより指令が選択されたこと又は適切なX−Y位置が選択されたことをコンピュータ10に報知する。スイッチは数多くの従来の方法(たとえば、ばね付き単極スイッチ又は薄形の触覚膜スイッチ)で実現でき、米国特許第4,464,652号はスイッチ手段の1例と、カーソルを位置決めし且つ単一のスイッチを起動することにより選択(たとえば、コンピュータに指令を与える)を実行する例とを示す。このスイッチとそれに関連するボタンはキーボードのキーに追加されたものであり、また、スイッチは、たとえば、米国特許第4,464,652号に記載されている方式によりコンピュータにより認識される追加入力をコンピュータに供給することが理解されるであろう。好ましい実施例では、スイッチは保持手段(たとえば、ばね)により一方の電気的状態(たとえば、開成)に保持されており、スイッチを起動するためにユーザーがボタンを押したときに限って他方の電気的状態(たとえば、閉成)に置かれる。
【0041】
上部ボタン31は、中央部に半円形の切り欠きがあるほぼ三日月形のバーである。その切り欠きの直径は約40mmである。上部ボタン31の半円形の切り欠きは、トラックボール32を収容している凹部34に結合している。図3から分かるように、上部ボタン31の半円形の切欠きによりトラックボール32が上部ボタン31に半分入り込んでおり、それにより、キーボード11の下縁部からトラックボール32の中心までの距離は最短に保たれる。図3に示す通り、キーボード11に最も近接しているボタン31の縁部(ボタン31の背面側縁部)は凸形の縁部であり、トラックボール32に最も近接しているボタン31の縁部(ボタン31の前縁部)は半円形の切欠きから形成される凹形の縁部である。
【0042】
図5,図6A及び図6Bは、上部ボタン31の輪郭を浮立たせた形状をさらに詳細に示す。これらの図でわかるように、上部ボタン31の上面は前縁部と後縁部の双方に向かって弓形を描いて下方へ湾曲している。半円形の切欠きの周囲の上面は切欠きに向かって弓形を描いて下方へ湾曲している。上部ボタン31の輪郭を浮立たせた面は図5に最も良く示されている。この輪郭を浮立たせた面の目的は、人の親指の湾曲に合わせることである。これにより、ユーザーは表示画面3からの目をそらさずに親指で上部ボタン31を容易い識別し、その位置を確かめることができる。図3からわかるように、現時点で好ましい実施例における上部ボタン31の幅は約76mmであり、ボタンの(キーボードに最も近い)後縁部の上部からボタン33に最も近接する縁部までの距離は約26mmである。
【0043】
現時点で好ましい実施例では、上部ボタン31は一体の押下げボタンである。別の実施例においては、上部ボタン31はキーボードに向かって押される押込みボタンである。さらに別の実施例では、上部ボタン31は2つ以上の部品により形成され、それぞれが上部ボタンと関連するスイッチを起動するか、後述するように、上部ボタン31は下部ボタン33に機械的に結合されていても良く、又は(構造上、ボタン31及び33が1つの部品となるように)上部ボタン31は下部ボタン33と共に一体に形成されていても良い。
【0044】
このように上部ボタン31とトラックボール32とを手のひら支え9の、キーボード11のスペースバーのすぐ手前に配置することは、本発明の有益さを高める。これにより、ユーザーはキーボード11のホームポジションに手をのせた状態で親指によって上部ボタン31とトラックボール32を操作することができるのである。これは、人間の手が親指とその他の指により自然に三角形を形成するという事実から来る。従って、ユーザーは手の親指以外の指をキーボード11にのせたままにしておける一方で、親指を上部ボタン31とトラックボール32に届かせることが可能であり、好都合である。
【0045】
また、操作中、タイプ打ち操作を実行するためにキーを打つときには、通常、ユーザーの手をキーボード11のホームポジションにおいておくということも確かである。この位置では、両手の2本の親指を除く全ての指は1つのキーによって占有されており、2本の親指は必要に応じてスペースバーキーを打つときを除いて空いている。キーボード11におけるユーザーの手のホームポジションは、そのキーボードが「QWERTY」型である場合には、「ASDFJKL」のキーである。
【0046】
典型的なタイプ打ち操作においては、2本の親指を除く全ての指はそれぞれのキーにそっと触れており、手のひらは手のひら支え9にのっている。ホームポジションにあるキーを打つべき場合、それに対応する指がそのキーを押すだけである。ホームポジションにないキーを打つことを要求するキーボード操作の場合には、対応する指をそのキーまで伸ばして、キーを打つ。キーを打った後、指はそのホームポジションに退き、次のタイプ打ちに備える。
【0047】
カーソルの移動が必要であるときには、カーソル制御装置12を使用すれば良い。この時点で、ユーザーの手はキーボード11のホームポジションに残ったままである。2本の親指をトラックボール32と、上部ボタン31に向かってそれぞれ下に伸ばす。一方の親指はトラックボール32にあってカーソルの動きを調整し、他方の親指は上部ボタン31にあって、そのカーソルの動きを確認するか又はそうでなければ指令を選択する信号の発生を(スイッチ手段56の起動によって)制御する。2本の親指のうちどちらでトラックボール32を操作するかはユーザーの好みによる。右ききの人がトラックボール32と上部ボタン31を操作する場合、おそらくは右手の親指をトラックボール32に置き、左手の親指を上部ボタン31に置くことになるであろう。ところが、左ききの人は、一般に、左手の親指を使用してトラックボールを操作し、右手の親指を使用して上部ボタン31を調整する。
【0048】
ユーザーが右手の親指をトラックボール32に置くと仮定すれば、左手の親指は上部ボタン31にのせられることになる。カーソル操作中、右手の親指はトラックボール32をカーソルを表示画面3の所望の位置まで移動させる方向に回転させる。カーソルが所望の位置に到達すると、左手の親指はそこで(スイッチ手段56を起動するために)上部ボタン31を打って、カーソルの所望の位置を確認し、それにより、カーソルを文書(たとえば、ワード処理文書)の中の特定の場所に置くか、又は(米国特許第4,464,652号に記載されている方法のように)表示画面3でカーソルの下方に表示された画像が表す指令の選択を実行する。人間の親指がその他の指と共に自然に三角形を形成し且つ上部ボタン31とトラックボール32はキーボード11のスペースバーのすぐ下方に配置されているとすれば、ユーザーの手がキーボード11にのったままの状態でもって、2本の親指により、トラックボール32と上部ボタン31との操作が可能であり、「ポイント及びクリック」操作を実行することが可能である。
【0049】
トラックボール32と上部ボタン31の操作中、ユーザーの手をホームポジションにのせたままにしておけるので、手で上部ボタン31とトラックボール32の位置を確かめるのを助けると共に、上部ボタン31及びトラックボール32の操作から手をキーボード11のホームポジションに戻すのを助けるために、表示画面3から目をそらす必要はない。
【0050】
下部ボタン33をカーソル制御装置12の一部として設けても良い。このボタンはカーソル制御装置12により多くの機能をもたせると共に、カーソル制御装置12を操作するためのより多くのオプションをユーザーに与えるであろう。下部ボタン33は上部ボタン31と同一の信号を発生することができるか、又は異なる信号を発生できる。現時点で好ましい実施例では、下部ボタン33は、スイッチ手段55及び56が並列に結合しているために2つのボタンが共に同一の信号を発生するという意味で、上部ボタン31と同一の機能を実行する。或いは、これらのスイッチを並列には結合しないことにより、スイッチ555及び56を起動することによって発生する信号が異なるものとなるように、下部ボタン33を上部ボタン31とは異なる機能起動ボタンにしても良い。
【0051】
下部ボタン33は従来通りのスイッチ手段55に結合して、指令の選択又はカーソル移動の確認を指令する信号をコンピュータに対して発生するスイッチを起動する(たとえば、スイッチの電気的状態を変化させる)。下部ボタン33を力で押すと、スイッチ55の電気的状態(たとえば、開成又は閉成)が変化し、それにより、指令が選択されたこと又は適切なX−Y位置が選択されたことをコンピュータ10に報知する。スイッチ55は数多くの従来の方法(たとえば、ばね付き単極スイッチ又は薄形の触覚膜スイッチ)により実現でき、米国特許第4,464,652号はスイッチ手段の1例を示している。
【0052】
図3に示すように、手のひら支え9のトラックボール32から下方へ約45mmの距離に一体の下部ボタン33が配置されている。ボタン33はほぼ三日月形であり、人間の手は親指とその他の指の形態で三角形の2辺を形成するという自然の能力を有しているため、三日月形であることにより、ユーザーはボタンに手を届かせやすくなる。すなわち、ボタンの左右の縁部はボタンの中心よりトラックボールに近接するように曲がっているので、人指し指(トラックボールを操作するとき)と、親指(ボタン33の左又は右の縁部を押すとき)は三角形を形成できる。図3に示すように、トラックボール32に最も近接しているボタン33の縁部は凹形の縁部であり、ラップトップコンピュータ10の前面に最も近接しているボタン33の縁部は凸形の縁部である。現時点で好ましい実施例では、トラックボール32の中心から下部ボタン33の中心までの距離は約45mmである。
【0053】
図7,図8A及び図8Bは、下部ボタン33の輪郭形状をさらに詳細に示す。図7では、下部ボタン33の上面は下部ボタン33の凹形の縁部と凸形の縁部に向かって下方へ弓形に湾曲している。下部ボタン33の輪郭を浮立たせた表面は人の親指の自然の湾曲に合っており、ユーザーが目で見ずにボタンの位置を知るのを助けるために触覚フィードバックを与える。図3から分かるように、下部ボタン33の幅は約59mm,奥行きは22mmである。図8Bは、図8Aの線8B−8Bに沿った下部ボタン33の断面図を示す。
【0054】
現時点で好ましい実施例では、下部ボタン33は一体の押下げボタンである。別の実施例においては、下部ボタン33は2つ以上の部品により形成されている。他の実施例では、ボタン33はボタン31に機械的に結合していても良いし、あるいは、(構造上、ボタン31及び33が一体になるように)ボタン31と共に一体に形成されても良い。
【0055】
現時点で好ましい実施例では、下部ボタン33はカーソル制御装置12の「片手」操作を容易にするために設けられている。「片手」のカーソル制御操作においては、ユーザーは片手、すなわち、ユーザーの習慣に従って右手又は左手のみを使用してカーソル制御装置12を操作し、その手は定列位置には保持されない。ユーザーが広範囲にわたってキーボードを使用しているのではなく、絶えずカーソル操作にかかわっていて(カーソル集中操作)、画面3で図形を描いているときのようにユーザーがトラックボール操作と、ボタン操作との間を繰返し移行しなければならない場合には、この方式を採用して良い。また、ユーザーが片手のみをカーソル制御操作に使用し、他方の手は何か別のことを行うために空けておきたい場合にも、この方式を採用して良いであろう。「片手」カーソル制御操作では、ユーザーは片手の親指を下部ボタン33にのせ、同じ手の人指し指をトラックボール32にのせる。ユーザーはトラックボール32を操作するために2本以上の指をトラックボール32で同時に使用することもでき、その間、同じ手の親指で下部ボタン33を操作する。ユーザーによっては、別の「片手」技法のほうが便利であるとわかるであろう。たとえば、片方の手の親指を使用してトラックボールを調節し、同じ手の人指し指を使用して上部ボタン31を押すことを好むユーザーもあるだろう。あるいは、片方の手の人指し指でトラックボールを調節し、同じ手の中指を上部ボタンにのせることを好むユーザーもあるだろう。
【0056】
カーソル制御装置12を、トラックボールとその上下に2つのボタンとを設ける構成にしたことにより、ユーザーが様々に異なる親指とその他の指の組合せを使用する上で最大限の融通性が与えられる。
コンピュータ10に同じ信号を供給するためにスイッチ手段55及び56が並列に結合している実施例又は単一のスイッチ手段しか使用しない実施例においては、いくつかの別のスイッチ手段を採用しても良い。一実施例では、ボタン31及び33は単一のスイッチを起動するために互いに機械的に結合されていても良い。たとえば、ボタン31及び33はボタンのキャップの下面から延びる支柱を有していても良く、それらの支柱がプレートを押圧すると、そのプレートがスイッチを押すことになる。あるいは、スイッチを起動する同一のレバーにボタン31及び33を接続しても良い。別の実施例においては、ボタン31および33が構造の上で一体の部品である場合のように、ボタン31及び33を互いに一体に形成しても良い。
【0057】
この場合、図1に示すように主ハウジング1に収納されているならば、ボタン31及び33は、手のひら支えから露出しているボタンキャップは2つに分かれているが、ハウジング1の上部の下方ではボタンは互いに接合しているという点で、2つの別個のボタンであるように見えるであろう。図10にはさらに別の実施例を示すが、そこでは、円形の単一の一体形ボタン60が凹部34とトラックボール32を取囲んでおり、手のひら支え領域9のキーボード11の最下列のすぐ下方に配置されている。この実施例においては、ボタン60は先に説明したようにスイッチ手段を起動する。ユーザーは手をホームポジションに保ちながら(キーボードに最も近接する)ボタン60の上部を打っても良いし、あるいは、片方の手の1本の指を使用してトラックボール32を調整しながら、その手の親指を使用してボタン10の底部を打つことにより、カーソル制御装置12の「片手」操作を利用しても良い。
【0058】
以上の本発明をその特定の実施例に関連して説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載されている本発明の精神から逸脱せずに本発明に対して様々な変形や変更を実施できることは明白であろう。従って、明細書及び図面は限定的な意味ではなく、例として考慮されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置の組合せを示す、開けた位置にあるラップトップコンピュータの斜視図である。
【図2】閉じ位置にあるラップトップコンピュータの斜視図である。
【図3】図3は、キーボードと、手のひら支えと、カーソル制御装置の配列を示す平面図である。
【図4】図4Aは図3の4A−4A線に沿ったキーボード/カーソル制御装置構成の断面図であり、図4Bは図3の線4B−4Bに沿ったキーボード/カーソル制御装置構成の断面図である。
【図5】カーソル制御装置の上部ボタンの形状を示す斜視図である。
【図6】図6Aは図5に示す上部ボタンの平面図であり、図6Bは図6Aの線6B−6Bに沿った上部ボタンの断面図でる。
【図7】図7は、カーソル制御装置の下部ボタンの形状を示す斜視図である。
【図8】図8Aは図7に示す下部ボタンの平面図であり、図8Bは図8Aの8−8線に沿った下部ボタンの断面図である。
【図9】閉じ位置にあるラップトップコンピュータの側面図である。
【図10】トラックボールを取囲む別のボタン手段の平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1・・主ハウジング、 2・・表示装置ハウジング
3・・表示画面 7・・ヒンジ
9・・手のひら支え 11・・キーボード
12・・カーソル制御装置 31・・ボタン
32・・トラックボール 33・・ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面を有する表示装置ハウジングと主ハウジングとを備え、前記主ハウジング上にキーボードおよび手のひら支え部分を有しているラップトップパーソナルコンピュータにおいて、前記手のひら支え部分に配設されて使用をされるカーソル制御装置であって、
前記表示画面上でカーソルの移動をさせるカーソル位置決め装置を含み、
前記表示画面上に表示されている対象物を、それにカーソルを位置させた状態で選択するためのスイッチ手段、並びに、そのスイッチ手段の起動用であって前記手のひら支え部分に位置した少なくとも1つのボタンを含み、
前記少なくとも1つのボタンは、ホームポジションキー上に親指以外の指を置いたユーザの右手および左手の親指の何れからも操作可能な位置にあり、且つ、輪郭形状が浮き立たされていて、目で見ずにボタン位置を知るためにユーザに触覚フィードバックを与えるよう構成されている、
ことを特徴とする、カーソル制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のカーソル制御装置であって、前記スイッチ手段の起動用に2つのボタンを含み、それらの2つのボタンの少なくとも一方は輪郭形状が浮き立たされている、ことを特徴とする、カーソル制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のカーソル制御装置であって、前記スイッチ手段には、2つのボタンの何れによっても起動され得る1つのスイッチが含まれている、ことを特徴とするカーソル制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−184004(P2007−184004A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98487(P2007−98487)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【分割の表示】特願2005−332692(P2005−332692)の分割
【原出願日】平成3年12月16日(1991.12.16)
【出願人】(591049538)アプル・コンピュータ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】