説明

カーテンおよびその縫製方法

【課題】重量化することなく縫製等取り扱いも容易で、低廉に作製できる共に、保温性および断熱性が極めて高く、地球温暖化抑止に資することができるカーテンおよびその縫製方法を提供する。
【解決手段】本発明のカーテン1は、表地を構成する第一層2と、中地を構成する第二層3と、裏地を構成する第三層4とを有し、第一層2と第二層3との間、第二層3と第三層4との間は接着されることなく、第一空気層5または第二空気層6がそれぞれ設けられている。このため、各生地と各空気層に熱が蓄えられて保温性および断熱性に優れたカーテンが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性および断熱性の高いカーテンおよびその縫製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑止が国際的急務とされており、屋内における空調設備の使用抑制が推奨される一方で、保温性および断熱性に優れ冷暖房効果を高めることができる、いわゆるエコロジーカーテンが嘱望されている。
従来、カーテンの保温性および断熱性を向上させる方法としては、カーテン生地を厚くする方法、保温性および断熱性に優れた特殊なカーテン生地で形成する方法(例えば、登録実用新案第3016868号公報)などで対処されていた。
【0003】
しかし、前者の方法では、生地が肉厚になる分、カーテン生地が重量化、硬化等して縫製等取り扱いが困難となり、他方、後者の方法では、特殊な素材を使用するためカーテンが高価になる傾向があった。
【特許文献1】登録実用新案第3016868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本願発明者らは空気の保温性および断熱性に着眼して本発明を為したものであり、すなわち、本発明の課題は、重量化することなく縫製等取り扱いも容易で、低廉に作製できる共に、保温性および断熱性が高く、地球温暖化の抑止に資することができるカーテンおよびその縫製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するものは、表地を構成する第一層と、中地を構成する第二層と、裏地を構成する第三層とを有し、前記第一層と前記第二層との間、前記第二層と前記第三層との間は接着されることなく、第一空気層または第二空気層がそれぞれ設けられていることを特徴とするカーテンである。
【0006】
前記中地を構成する第二層は、裏面が起毛処理されていることが好ましい。前記中地を構成する第二層は、両面が起毛処理されていることが好ましい。前記第一層、前記第二層および前記第三層はポリエステルにて形成されていることが好ましい。
【0007】
また、上記課題を解決するものは、表地を構成する第一層と、中地を構成する第二層と、裏地を構成する第三層とを有し、前記第一層と前記第二層との間、前記第二層と前記第三層との間は接着されることなく、第一空気層または第二空気層がそれぞれ設けられているカーテンの縫製方法であって、前記第二層の丈が前記第三層より短く、かつ前記第三層の丈が前記第一層より短くなるように三者を配した状態で、前記第一層の上端辺部が前記第二層および前記第三層の上端辺を覆い、さらに前記第三層の裏面側に折り返されて縫製されていることを特徴とするカーテンの縫製方法である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、重量化することなく縫製等取り扱いも容易で低廉に作製できると共に、保温性および断熱性が高いカーテンとなる。
請求項2に記載の発明によれば、第二層において屋内側となる裏面が起毛処理されることにより、空気層がより確実に形成されると共に、より保温性および断熱性が高いカーテンとなる。
請求項3に記載の発明によれば、第二層において両面が起毛処理されることにより、空気層がより確実に形成されると共に、さらに保温性および断熱性が高いカーテンとなる。
請求項4に記載の発明によれば、第一層、第二層および第三層が同一素材で形成されることにより、三者の収縮率も略同一でカーテン形状が安定すると共にリサイクルがより容易となり、かつ低廉に作製できる。
請求項5に記載の発明によれば、三層構造のカーテンであっても効率的に作製できると共に、上端辺部がより薄くなりタックを容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のカーテンは、表地を構成する第一層と、中地を構成する第二層と、裏地を構成する第三層とを有し、第一層と第二層との間、第二層と第三層との間を接着することなく、第一空気層または第二空気層がそれぞれ設けられているため、各生地と各空気層に熱が蓄えられることで保温性および断熱性が高いカーテンを実現した。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明のカーテンの一実施例の一部縦断面図であり、1はカーテン、2は第一層、3は第二層、4は第三層、5は第一空気層、6は第二空気層である。
【0011】
この実施例のカーテン1は、図1に示すように、表地を構成する第一層2と、中地を構成する第二層3と、裏地を構成する第三層4とを有し、第一層2と第二層3との間、第二層3と第三層4との間は接着されることなく、第一空気層5または第二空気層6がそれぞれ設けられている。以下、各構成について順次詳述する。
【0012】
この実施例のカーテン1は、表地を構成する第一層2、中地を構成する第二層3または裏地を構成する第三層4が略同一肉厚(約0.3mm)のポリエステル100%カーテン生地にて形成されている。そして、第一層2と第二層3との間、第二層3と第三層4との間は接着(面接合)されることなく分離しているため、第一層2と第二層3との間には第一空気層5が形成され、第二層3と第三層4との間には第二空気層5が形成されている。
【0013】
なお、図1では、第一空気層5または第二空気層6を、第一層2、第二層3または第三層4の肉厚と略同一に表現しているが、これは模式図であり、実際は、第一層2と第二層3、第二層3と第三層4とがそれぞれ接触している部分や、第一空気層5または第二空気層6が、第一層2、第二層3または第三層4の肉厚以上に、第一層2と第二層3との間、第二層3と第三層4との間が大きく離間している部分も存在する。
【0014】
また、この実施例のカーテン1は、後加工で防炎加工を施すこともでき、耐久性、消音性に優れ、丸洗いも可能で、かつ低廉なポリエステルにて形成されている。ただし、本発明のカーテンの形成材料はポリエステルに限定されるものではなく、ポリエステル以外のカーテン生地にて形成されているものも本発明の範疇に包含される。
【0015】
さらに、この実施例のカーテン1は、第一層2、第二層3および第三層4がすべてポリエステルにて形成されている。このように、三者が同一素材で形成されることにより、それぞれの収縮率も略同一となりカーテン形状が安定すると共にリサイクルも容易なものとなる。
【0016】
さらに、この実施例のカーテン1は、第一層2、第二層3、第三層4が略同一肉厚のカーテン生地にて形成されているが、これに限定されるものではなく、第一層、第二層または第三層が肉厚の異なるカーテン生地にて形成されているものも本発明の範疇に包含される。
【0017】
このように、本発明のカーテンは、各生地(第一層2、第二層3または第三層4)の他に、各空気層(第一空気層5または第二空気層6)、特にこれら空気層5,6に熱が蓄えられるため、保温性および断熱性が高いカーテンが構成される。また、肉厚な一枚のカーテン生地を使用するより軽量で取り扱い易いカーテンを構成できると共に、特殊な素材の高価なカーテン生地を使用する必要もなく、安価なカーテン生地で保温性および断熱性が高いカーテンが形成できる。
【0018】
つぎに、図2に示した本発明の他の実施例について説明する。
このカーテン10と前述したカーテン1との相違は、中地を構成する第二層3の裏面に起毛処理がされている点のみであり他は同様である。カーテン1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0019】
具体的には、第二層(中地)3の裏面に、図2に示すような起毛処理がされていると、起毛部位11の存在により、第二層(中地)3が肉厚となり、第二層(中地)3と第三層(裏地)4とが密着することもなく第二空気層6がより確実に形成されると共に、起毛部位11によっても保温性および断熱性が確保されるため、より保温性および断熱性が高いカーテンが形成される。
【0020】
なお、この実施例のカーテン1は、第二層(中地)3の裏面に起毛処理がされているが、これに限定されるものではなく、第二層(中地)3の表面に起毛処理がされているものも本発明の範疇に包含される。ただし、第二層(中地)3の片面のいずれかに起毛処理を施す場合は、屋内側となる第二層(中地)3の裏面の方が断熱性向上の観点からより好適である。
【0021】
さらに、図3に示した本発明のカーテンの他の実施例について説明する。
この実施例のカーテン20と前述したカーテン10との相違は、中地を構成する第二層3の両面に起毛処理がされている点のみであり他は同様である。カーテン10と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0022】
より具体的には、第二層(中地)3の両面(表面と裏面)に、図3に示すようにそれぞれ起毛処理がされていると、起毛部位11,21の存在により、第二層(中地)3がより肉厚となり、第一層(表地)2と第二層(中地)3、第二層(中地)3と第三層(裏地)4とがそれぞれ密着することもなく第一空気層5,第二空気層6がより確実に形成されると共に、起毛部位11,21によっても保温性および断熱性が確保されるため、さらに保温性および断熱性が高いカーテンが形成される。
【0023】
つぎに、本発明のカーテンの縫製方法を、図4ないし図6に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例のカーテン1の縫製方法は、表地を構成する第一層2と、中地を構成する第二層3と、裏地を構成する第三層3とを有し、第一層2と第二層3との間、第二層3と第三層4との間は接着されることなく、第一空気層5または第二空気層6がそれぞれ設けられているカーテン1の縫製方法であって、第二層3の丈が第三層4より短く、かつ第三層4の丈が第一層2より短くなるように三者を配した状態で、第一層2の上端辺部2aが、第二層3および第三層4の上端辺3a,4aを覆い、さらに第三層3の裏面4b側に折り返されて縫製されていることを特徴とするカーテンの縫製方法である。
【0024】
より具体的には、このカーテン1の縫製方法は、第二層3の丈が第三層4より短く、かつ第三層4の丈が第一層2より短くなるように、第一層2、第二層3および第三層4をそれぞれ作製する工程と、第二層3と第三層4とを縫い付ける工程と、第一層2の上端辺部2aが、第二層3および第三層4の上端辺3a,4aを覆い、さらに第三層3の裏面4b側に折り返されて第一層2を縫い付ける工程と、第一層2、第二層3および第三層4の両脇を縫い付ける工程と、カーテン1の上部にタックを形成する工程とを経て縫製される。以下、カーテン1の縫製方法の各工程について順次詳述するが、カーテン1の構成については上述した通りであり説明を省略する。
【0025】
第二層3の丈が第三層4より短く、かつ第三層4の丈が第一層2より短くなるように、第一層2、第二層3および第三層4をそれぞれ作製する工程では、図4に示すように、第一層2を三層の中で上下とも最も丈を長く形成すると共に、下端辺を上方に折り返えして下端辺部2bを縫製(裾縫い)する(1)。第二層3は、三層の中で最も短く丈を形成し下端辺をオーバーロック(巻き縫い)して仕上げる(2)。第三層4は、下端辺を上方に折り返えして下端辺部4cを縫製(裾縫い)する(3)。
【0026】
第二層3と第三層4とを縫い付ける工程では、図5に示すように、第二層3と第三層4とをそれらの上端辺を一致させて上端辺付近と両脇をそれぞれ縫い付ける(4),(5),(6)。
【0027】
第一層2の上端辺部2aが、第二層3および第三層4の上端辺3a,4aを覆い、さらに第三層3の裏面4b側に折り返されて第一層2を縫い付ける工程は、図6に示すように行う。具体的には、まず、第二層3および第三層4の上端辺3a,4a付近に、カーテン1の幅方向に延在する帯状芯地7の上端辺を縫い付ける(7)。つぎに、第一層2の上端辺部2aを、第三層3の裏面4b側に折り返えし、第一層2の下端辺付近を帯状芯地7の下端辺に縫い付ける(8)。
【0028】
第一層2、第二層3および第三層4の両脇を縫い付ける工程では、図6に示すように、第一層2、第二層3および第三層4の両脇をそれぞれステッチ縫いする(9),(10)。
【0029】
さらに、カーテン1の上部にタックを形成する工程では、カーテン1の上端辺部付近に複数のタックを形成して縫製する。
このように、カーテン1は上記の工程を経て効率的に作製することができるが、本発明のカーテンの縫製方法によれば、さらに以下の利点がある。まず、図6に示すように、第二層3の丈が三層の中で最も短く形成されているため、カーテン1の表面側または裏面側のいづれの側にも第二層3が現れない。また、第二層3の下端辺は第一層2または第三層4のいずれにも縫い付けられておらず、自由端となっているため、各層に伸縮が生じた場合でも、この部位が逃がしとして機能してカーテン形状を安定させることができる。さらに、第一層2と第三層4の下端辺部2b,4cは、内側(第二層3側)に向かって折り返されて肉厚となっているため、第一空気層5,第二空気層6がより確実に形成される。さらに、第一層2の上端辺部2aは、第二層3および第三層4の上端辺3a,4aを覆い、さらに第三層3の裏面4b側に折り返されて縫い付けられているため、本来、カーテンの上端辺部は三層を折り返して6枚で形成されるところ、4枚で形成できタックをより容易に形成することができる。
【0030】
(保温性試験)
実施例として、ポリエステル100%の生地を三枚準備し、一枚の生地の裏面を起毛処理して第二層(中地)とし各層の間を接着せず分離させた状態で三層構造としたカーテンを5枚作製した。他方、比較例として実施例で使用した表地(第一層)のみからなるカーテン(通常品)を5枚作製した。
【0031】
図7に示すように、精密迅速熱物性測定装置(カトーテック製サーモラボ2型)50を用いて、ヒーター51を13.7Pa(自重と分銅200g)の圧力で実施例または比較例(E)に押し当てた。そして、ヒーター51(高温側)の温度を約30℃、ウォータージャケット52(低温側)の温度を約20℃に設定して、ヒーター51の消費電力を測定した。
【0032】
(保温性試験の結果)
【表1】

【0033】
上記表1に示すように、実施例の平均消費電力は、0.706であり、比較例の平均消費電力は、3.012Wであった。
消費電力が低い程、ヒーター51(高温側)からウォータージャケット52(低温側)への熱の移動量が少なく保温性が高いことを意味するが、実施例の消費電力は比較例の1/4以下であり、実施例の保温性の高さが確認された。なお、この試験方法においては、実施例はヒーター51とウォータージャケット52との間で肉厚方向に圧縮されるため、第一空気層5および第二空気層6が充分に機能しない状態で測定されたものと考えられる。従って、第一空気層5および第二空気層6が確保された状態では消費電力がさらに削減されるものと推測される。
【0034】
(断熱性試験)
実施例および比較例として、保温性試験と同様の実施例および比較例を用いた。
【0035】
図8に示すように、実施例または比較例(E)の背後5mmの位置に黒画用紙60を配して保持させた。実施例または比較例の前方500mmの位置に赤外線ランプ(ナショナル製写真用スポット:PSP100V:500W)61を配して約10分間、光を照射し、黒画用紙60の表面温度をサーモカメラ62にて計測した。なお、室内温度は17℃±1℃であった。
【0036】
(断熱性試験の結果)
時間(S)と温度(℃)との関係(温度推移)を、図9の折線グラフで表したところ、実施例1はAのように、立ち上がりなだらかに上昇し22〜23℃付近で推移し、比較例1はBのように、立ち上がり急上昇して26〜27℃付近で推移した。
この試験では、実施例または比較例が赤外線を吸収または反射すれば、その背後に配された黒画用紙60の温度上昇はなだらかなものとなり温度も低くなるが、比較例より、実施例の方が黒画用紙60の温度上昇はなだらかで、どの時間帯でも約4℃温度も低いことから、断熱性(熱遮蔽性)が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のカーテンの一実施例の一部縦断面図である。
【図2】本発明のカーテンの他の実施例の一部縦断面図である。
【図3】本発明のカーテンの他の実施例の一部縦断面図である。
【図4】本発明のカーテンの縫製方法の一工程を説明するための側面側概略図である。
【図5】本発明のカーテンの縫製方法の一工程を説明するための正面側概略図である。
【図6】本発明のカーテンの縫製方法の一工程を説明するための斜視概略図である。
【図7】本発明のカーテンの保温性試験の試験方法を説明するための説明図である。
【図8】本発明のカーテンの断熱性試験の試験方法を説明するための説明図である。
【図9】本発明のカーテンの断熱性試験の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1 カーテン
2 第一層
3 第二層
4 第三層
5 第一空気層
6 第二空気層
7 帯状芯地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地を構成する第一層と、中地を構成する第二層と、裏地を構成する第三層とを有し、前記第一層と前記第二層との間、前記第二層と前記第三層との間は接着されることなく、第一空気層または第二空気層がそれぞれ設けられていることを特徴とするカーテン。
【請求項2】
前記中地を構成する第二層は、裏面が起毛処理されている請求項1に記載のカーテン。
【請求項3】
前記中地を構成する第二層は、両面が起毛処理されている請求項1に記載のカーテン。
【請求項4】
前記第一層、前記第二層および前記第三層はポリエステルにて形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載のカーテン。
【請求項5】
表地を構成する第一層と、中地を構成する第二層と、裏地を構成する第三層とを有し、前記第一層と前記第二層との間、前記第二層と前記第三層との間は接着されることなく、第一空気層または第二空気層がそれぞれ設けられているカーテンの縫製方法であって、前記第二層の丈が前記第三層より短く、かつ前記第三層の丈が前記第一層より短くなるように三者を配した状態で、前記第一層の上端辺部が前記第二層および前記第三層の上端辺を覆い、さらに前記第三層の裏面側に折り返されて縫製されていることを特徴とするカーテンの縫製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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