説明

カーテンの芯地

【課題】 カーテン生地の上縁部に沿って縫着されるカーテン芯地であって、目崩れして変形しないカーテン芯地の提供。
【解決手段】 カーテン芯地は縦糸1,1・・と横糸2,2・・を互いに織製し、隣り合う上記縦糸1,1・・間に小振り糸3,3・・をジグザグ状に絡み合わせることで各縦糸1,1・・を小振り糸3,3・・を介して拘束・位置決めしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーテンを吊設する為にカーテン生地の上縁部に沿って縫着して取付ける芯地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
布製のカーテンは窓の上端内側に取付けたレールに吊設され、該レールに沿って移動することが出来る。この場合、カーテン生地の上端には所定の間隔をおいて複数のスライダーが取付けられ、これら各スライダーはレールに遊嵌して移動することが出来る。上記スライダーにカギが連結し、該カギはカーテン生地の上縁部に係止している。
【0003】
このように、カーテン生地はスライダーを介してレールに吊設されるが、上縁部が垂れ下がることがないようにカーテン生地の上縁部には芯地が縫い合わされている。このカーテン芯地は図3に示すように300〜400デニール程度の比較的太い縦糸(イ)と横糸(ロ)が織製された帯状の芯地である。帯状の芯地はカーテン生地に比較して剛く、その為にレールに垂れ下がるカーテンは優雅な外観を呈すことが出来る。
【0004】
ところで、従来の芯地は縦糸(イ)と横糸(ロ)を織製した組織であると共に、これら糸は比較的太いモノフィラメントである為に、互いに噛み合っている交差部(ハ)が安定せず、スベリを生じる。すなわち、スベルことで目崩れを発生して芯地自体の形状が変形してしまう。このような芯地をカーテン生地に縫着して組み込んだ場合、カーテンが歪んでしまい、又カーテン生地が薄手のものであると、目崩れ状態が透けて見えることになり、カーテンの美観を損なうことになる。
【0005】
図4に示すように、縦糸(イ)、(イ)・・が傾いて組織目(ニ)、(ニ)・・が平行四辺形状に変形した目崩れ状態になると、この目崩れ部分において芯地の幅が減少するため、カーテンの丈が部分的に変わることになる。更に、目崩れによって芯地の補強機能が劣ることにもなる。そこで、目崩れを防止して芯地の形状を安定させる為に、樹脂被膜を施す場合もあるが、その分コストが高くなってしまう。
【0006】
特開平8−299161号に係る「カーテンの芯地基材」は、樹脂被膜を施すことなく芯地形状を安定させ、カーテンの長さ方向にしなやかさを有し且つ目崩れが生じないカーテンの芯地である。
【0007】
そこで、縦糸としてマルチフィラメントを用い且つ横糸として複合フィラメントを用いてテープ状に製織されている。この複合フィラメントは、鞘素材が低融点の樹脂成分で且つ芯素材がそれよりも融点の高い樹脂成分とされた芯鞘型複合フィラメントである。この芯地基材を熱処理して複合フィラメントの低融点の鞘素材のみを溶融させると、縦糸と横糸との交差点が該溶融物で融着固定されて、布目の崩れが防止される。
【特許文献1】特開平8−299161号に係る「カーテンの芯地基材」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにカーテン芯地の目崩れを防止する為に樹脂被膜を施したり、熱処理を行う方法が採用されているが、織製以外の余分な工程が必要となり、これは芯地の製造コストを高くすることになる。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、織組織の工夫によって形状が崩れないようにしたカーテン芯地を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカーテン芯地は所定の幅を有す帯状を成し、縦糸と横糸にて織製した組織を有している。ここで、上記縦糸及び横糸は所定太さのモノフィラメント糸であっても、又は細い複数本の繊維を束ねたマルチフィラメント糸であっても構わないが、これら縦糸及び横糸にて所定の間隔で縦横に組織目を形成している。
【0010】
このように縦糸と横糸にて織製しただけのカーテン芯地では従来通り目崩れによりその形状が崩れる為に、本発明では上記縦糸に小振り糸を絡ませた組織としている。小振り糸は隣り合う2本の縦糸間をジグザグ状に絡ませ、縦方向と横方向へ延びる縦糸と横糸を拘束している。ここで、小振り糸は縦糸及び横糸より細く、一般にマルチフィラメント糸が使用される。そして、必要に応じて熱処理し、小振り糸を溶融することで絡み合う縦糸に接点を融着させる。一方、縦糸ではなく隣り合う横糸間に小振り糸をジグザグ状に絡み合わせることも出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカーテン芯地は縦糸と横糸にて織製した帯状を成し、しかも所定の間隔で配列している縦糸は、隣り合う縦糸同士が小振り糸にてジグザグ状に連結されている。従って、これら各縦糸は小振り糸にて互いに拘束・位置決めされるために、芯地自体の形状が変形することはない。特に、織製した芯地を熱処理するならば、小振り糸と縦糸の接点は融着して固定され、芯地の形状はより安定する。
【実施例】
【0012】
図1は本発明に係るカーテン芯地を示す実施例であり、その外観は一定幅の帯状を成している。そこで、同図の1は縦糸、2は横糸、3は小振り糸を夫々表している。上記縦糸1及び横糸2は伸縮しないモノフィラメント糸が使用され、材質は特に限定しない。例えばポリエステルなど材質とした縦糸1及び横糸2とすることが出来る。そして、糸の断面は一般的に円形とするが、楕円形や角形断面であっても構わない。
【0013】
一方の小振り糸3は縦糸1や横糸2に比較して細く、柔軟性の高い糸とし、例えば非常に細い複数の繊維を束ねたマルチフィラメント糸とする場合もある。すなわち、該小振り糸3は隣接する縦糸1,1間をジグザグ状に絡み、両縦糸1,1が移動しないように拘束するもので、間隔の狭い縦糸1,1間をジグザグを成して絡ませるには、該小振り糸3は細くて柔軟性の高い方が好ましい。
【0014】
図2は図1に示すカーテン芯地の部分拡大図である。同図では縦糸1a,1b,1c・・・と横糸2,2・・・が互いに交差して織組織を構成し、点線で示す小振り糸3a,3b,3c・・・は上記縦糸1a,1b,1c・・・と絡み合って織組織に組み込まれている。ここで、該小振り糸3a,3b,3c・・は分かり易くする為に、便宜上細い点線で示している。
【0015】
ところで、縦糸1a,1b,1c・・・と横糸2,2・・・とか交差して構成される織組織には小さな組織目4,4・・が縦方向及び横方向に形成され、小振り糸3a,3b,3c・・はこれら組織目4,4・・に掛け渡されている。小振り糸3aは両縦糸1aと縦糸1bの間にジグザグを成して絡み合っている。すなわち、縦糸1aに巻き付いて係止した後、縦糸1bに巻き付いて係止し、そして再び縦糸1aに巻き付いて係止する。この状態を繰り返してジグザグ状に組み込まれる。
【0016】
小振り糸3bは縦糸1bに巻き付いて係止した後、縦糸1cに巻き付いて係止し、そして再び縦糸1bに巻き付いて係止する。この状態を繰り返してジグザグ状に組み込まれる。同じく、小振り糸3cは縦糸1cに巻き付いて係止した後、縦糸1dに巻き付いて係止し、そして再び縦糸1cに巻き付いて係止する。この状態を繰り返してジグザグ状に組み込まれる。
【0017】
ここで、小振り糸3a,3b,3cは夫々独立した別の糸としてもよく、連続した1本の糸を使用することも可能である。このように、小振り糸3a,3b,3c・・・は隣り合う縦糸1a,1b,1c・・に絡み合ってジグザグ状に組み込まれる。従って、各縦糸1a,1b,1c・・・はこれら小振り糸3a,3b,3c・・・にて拘束され、その位置は固定される。
【0018】
従って、一定幅で帯状に延びる芯地はその組織目4,4・・が崩れて形状が変わることはなく、安定した芯地となる。そして、小振り糸3a,3b,3c・・・は細いために芯地の剛さが必要以上に高くなることはない。このように、小振り糸3a,3b,3c・・・を縦糸1a,1b,1c・・・にジグザグ状に絡ませることで、芯地の変形は防止されるが、該芯地2を熱処理するならば、小振り糸3a,3b,3cが溶融して縦糸1a,1b,1c・・・と交差部にて融着する。
【0019】
熱処理温度は必要最小限に抑え、該小振り糸3a,3b,3c・・・の全体が溶融しない程度に加熱される。縦糸1a,1b,1c・・・の交差部にて融着するならば、該縦糸1a,1b,1c・・・は完全に固定され、芯地の目崩れはなく、変形もしない。
【0020】
ところで、実施例では小振り糸3a,3b,3c・・・は縦糸1a,1b,1c・・・にジグザグを成して絡み合っているが、横糸2,2・・・に対してジグザグ状に絡み合わせることも可能である。この場合には、等間隔で配列している各横糸2,2・・・が小振り糸3,3・・・にて拘束され、移動しないように位置決めされる。このように構成した芯地をカーテン生地の上縁部に沿って縫着するならば、該カーテンが部分的に歪むことはなく、優雅な外観を呈することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るカーテン芯地を示す実施例。
【図2】図1の部分拡大図。
【図3】従来の織製したカーテン芯地の組織図。
【図4】芯地が組織目が崩れて変形した場合。
【符号の説明】
【0022】
1 縦糸
2 横糸
3 小振り糸
4 目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテン生地の上縁部に沿って縫着されるカーテン芯地において、該カーテン芯地は縦糸と横糸を互いに織製し、隣り合う上記縦糸間に小振り糸をジグザグ状に絡み合わせることで各縦糸を小振り糸を介して拘束・位置決めしたことを特徴とするカーテン芯地。
【請求項2】
カーテン生地の上縁部に沿って縫着されるカーテン芯地において、該カーテン芯地は縦糸と横糸を互いに織製し、隣り合う上記横糸間に小振り糸をジグザグ状に絡み合わせることで各横糸を小振り糸を介して拘束・位置決めしたことを特徴とするカーテン芯地。
【請求項3】
上記小振り糸をマルチフィラメント糸とした請求項1、又は請求項2記載のカーテン芯地。
【請求項4】
小振り糸を縦糸又は横糸にジグザグ状に絡み合わせた状態で、熱処理して縦糸又は横糸と小振り糸の接点を融着した請求項1、請求項2、又は請求項3記載のカーテン芯地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−124928(P2010−124928A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300707(P2008−300707)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(596017716)有限会社青山細巾織布 (2)
【Fターム(参考)】