説明

カーテンウォールにおけるロッド連結構造

【課題】フレームレス工法に係るカーテンウォールのパネル支持装置が、上下方向に隣接するパネル支持装置同士を連結する吊りロッド及び/又は水平方向に隣接するパネル支持装置同士を連結するタイロッドにより相互に連結されたカーテンウォールにおいて、地震荷重を受けた際にも、前記ロッドに曲げを導入させることが無いロッド連結構造を提供する。
【解決手段】ロッド5,6の端部に、ロッド面側に面内方向に曲面20aを形成した抜止め部材20を設けるとともに、パネル支持装置2側にロッド挿通部16aの奥側に前記抜止め部材20の嵌込み空間16bを形成し、前記抜止め部材20を前記嵌込み空間16bを嵌合させるように前記ロッド5,6をパネル支持装置2に連結し、前記ロッド5,6とロッド挿通部16aとの遊間内で前記ロッド5,6を面内方向に揺動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の外壁部分において、板ガラスなどのパネルを直接的に支持するカーテンウォール構造に係り、詳しくはフレーム枠状のパネル支持部材を有さず、パネルの四隅等を直接支持するパネル支持装置により、外観的にパネルのみによって外壁面を構成するようにするとともに、該パネル支持装置は、上下方向に隣接するパネル支持装置同士を連結する吊りロッド及び/又は水平方向に隣接するパネル支持装置同士を連結するタイロッドにより相互に連結されたカーテンウォールにおける前記ロッドの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、カーテンウォール構造の多様化によって、フレーム枠状のパネル支持材を有さず、パネル(主として板ガラス)の4隅、または4隅及び側縁の一部を直接支持することによりパネルのみによって外壁面を構成するフレームレス工法が普及しつつある。フレームレス工法のパネル支持構造としては、従来より種々の構造が提案されている。
【0003】
近時では例えば、下記特許文献1には、図10に示されるように、各パネルP、P…の縦目地に対応する室内側に、パネルのコーナー交点部に配置されるパネル支持装置60,60…と、これら各パネル支持装置60,60…から室内側に向けて斜め上方及び斜め下方に延びる斜材64,64…と、前記斜材64,64の連結部に配置される室内側斜材連結金物61,61…と、前記パネル支持装置60,60…に挿通状態で配置され、各パネル支持装置60,60…を吊持する室外側ケーブル65と、前記各室内側斜材連結金物61,61…に挿通状態で配置されるとともに、各室内側斜材連結金物61,61…を吊持する室内側ケーブル66とからなるカーテンウォール支持装置がそれぞれ設けられ、各パネルP、P…が支持されたカーテンウォール構造が開示されている。なお、前記室外側ケーブル65及び室内側ケーブル66は、上下端がそれぞれケーブル定着装置67,68(下端側のみ図示)に固定されており、所定の緊張力が導入されるようになっているとともに、前記パネル支持装置60,60同士はタイロッドにより相互に連結されている(以下、先行例1という)。
【特許文献1】特開2006−283478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地震荷重などを受けた際に、パネルの相関変位に伴い、前記パネル支持装置60がロッキング(揺動)や相対的な位置ズレを起こすと、剛結されているタイロッドに曲げが導入され、タイロッドが変形したり、破損することが懸念されるなどの問題があった。
【0005】
そこで本発明の主たる課題は、建物外壁部分に上下左右方向に隣接配置されるパネルを、該パネルの隅部同士が突き合わされるコーナー交点部に配置されるパネル支持装置によって支持するとともに、前記パネル支持装置は、上下方向に隣接するパネル支持装置同士を連結する吊りロッド及び/又は水平方向に隣接するパネル支持装置同士を連結するタイロッドにより相互に連結されたカーテンウォールにおいて、地震荷重を受けた際にも、前記ロッドに曲げを導入させることが無いロッド連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、建物外壁部分に上下左右方向に隣接配置されるパネルを、該パネルの隅部同士が突き合わされるコーナー交点部に配置されるパネル支持装置によって支持するとともに、前記パネル支持装置は、上下方向に隣接するパネル支持装置同士を連結する吊りロッド及び/又は水平方向に隣接するパネル支持装置同士を連結するタイロッドにより相互に連結されたカーテンウォールにおいて、
前記パネル支持装置とロッドとの連結構造は、前記ロッドの端部に、ロッド面側に面内方向に沿って曲面を形成した抜止め部材を設けるとともに、前記パネル支持装置側に、ロッド挿通部を形成するとともに、その奥側に前記抜止め部材の嵌込み空間を形成し、前記抜止め部材を前記嵌込み空間に嵌合させるように前記ロッドをパネル支持装置に連結し、前記ロッドとロッド挿通部との遊間内で前記ロッドを面内方向に揺動可能としたことを特徴とするカーテンウォールにおけるロッド連結構造が提供される。
【0007】
上記請求項1記載の本発明においては、ロッドとパネル支持装置との連結構造を従来のような螺合連結構造を採用するのではなく、ロッドの端部にロッド面側に面内方向に曲面を形成した抜止め部材を設けるとともに、パネル支持装置側にロッド挿通部の奥側に前記抜止め部材の嵌込み空間を形成し、前記抜止め部材を前記嵌込み空間に嵌合させるように前記ロッドをパネル支持装置に連結することにより、前記ロッドが面内方向に揺動可能となっているため、地震荷重を受けた際にも、前記ロッドに曲げを導入させることが無い。
【0008】
なお、この場合、前記ロッド挿通部とロッドとの間に面外方向の遊間を形成するようにすれば、仮にパネル支持装置同士が面外方向に位置ズレしたとしても、ロッドに曲げが導入されないようにすることができる。
【0009】
請求項2に係る本発明として、前記パネル支持装置側において、前記ロッド挿通部と嵌込み空間との境界部に前記抜止め部材の曲面と摺動する曲面状の座面を形成してある請求項1記載のカーテンウォールにおけるロッド連結構造が提供される。
【0010】
上記請求項2記載の発明は、ロッド挿通部と嵌込み空間との境界部に、抜止め部材の曲面と摺動する曲面状の座面を形成することにより、ロッドの揺動動作を円滑に行うことができる。
【0011】
請求項3に係る本発明として、前記嵌込み空間内において、該嵌込み空間の底面と抜止め部材との間に遊間を形成してある請求項1,2いずれかに記載のカーテンウォールにおけるロッド連結構造が提供される。
【0012】
上記請求項3記載の発明は、前記嵌込み空間内において、該嵌込み空間の底面と抜止め部材との間に遊間を形成することにより、ロッドが熱膨張によって伸長した場合にも、この熱伸びを吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上詳説のとおり本発明によれば、建物外壁部分に上下左右方向に隣接配置されるパネルを、該パネルの隅部同士が突き合わされるコーナー交点部に配置されるパネル支持装置によって支持するとともに、前記パネル支持装置は、上下方向に隣接するパネル支持装置同士を連結する吊りロッド及び/又は水平方向に隣接するパネル支持装置同士を連結するタイロッドにより相互に連結されたカーテンウォールにおいて、地震荷重を受けた際にも、前記ロッドに曲げを導入させることが無い構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔カーテンウォール構造〕
図1はカーテンウォールの姿図、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図、図4はパネル支持装置2部分の分解図、図5は要部拡大縦断図、図6はその横断面図である。
【0015】
図1に示されるように、本カーテンウォール構造1は、ビル等の外壁面において、上下左右方向に隣接配置される板ガラス等のパネルP、P…がフレーム枠状のパネル支持部材を用いることなく、各パネルP、P…が、各隅部が突き合わされるコーナー交点部に配置されたパネル支持装置2,2…によって支持されることにより、実質的にパネルP、P…のみによって外壁を構成するようにしたものであって、前記パネル支持装置2は、方立3に対してストラット4により連結され、図4に示されるように、上下方向に隣接するパネル支持装置2,2…同士が吊りロッド5,5により相互に連結されるとともに、水平方向に隣接するパネル支持装置2,2…同士も互いにタイロッド6,6により相互に連結されているものである。また、本カーテンウォール構造は、方立3部位にもパネルP、P…が配置されたダブルスキン構造のカーテンウォールとなっている。
【0016】
以下、具体的に前記カーテンウォール構造1について詳述すると、
詳細には、図4〜図6に示されるように、本カーテンウォール構造1においては、各パネルP、P…の縦目地に対応する室内側には、方立3が縦方向に沿って配設され、各パネルP、P…のコーナー交点部に対応する位置において、前記方立3の室外側に対して、ストラット4の一端側(室内側)が連結され、前記ストラット4の他端側(室外側)にパネル支持装置2が連結されている。また、上下方向に隣接するパネル支持装置2,2…同士が吊りロッド5,5により相互に連結されるとともに、水平方向に隣接するパネル支持装置2,2…同士も互いにタイロッド6,6により相互に連結されている
前記方立3は、バックマリオン方式とされ、矩形中空部3aの室外側面に部材長手方向に沿って縦リブ3bが形成されるとともに、前記縦リブ3bの室外側に押縁3cが形成され、更にこの押縁3cの室外側にストラット4を連結するための連結リブ3dが形成されている。そして、前記矩形中空部3aの室外側面と、縦リブ3bと、押縁3cとで形成されるパネル嵌合溝Mによって後側パネルP、Pが支持されるようになっている。
【0017】
前記ストラット4を方立3に連結するための固定金具10は、室内側に前記連結リブ3dが挿入される縦溝10aが形成されるとともに、室外側に軸連結部10bが形成された部材であり、前記連結リブ3dを挿入した状態で側面からボルト11を貫通させナットにより締結するようにしている。前記ストラット4の端部には、ストラット端面に形成されたネジ孔に対する螺合部12aを有するとともに、前記軸連結部10bに対して水平軸回りに回転自在に軸支されるピン結合部12bを有する連結金具12が設けられ、前記螺合部12aの螺入量の調整によりストラット長さが調整可能となっている。
【0018】
前記パネル支持装置2は、室外側のパネル支持部13と、室内側のロッド連結部14とが結合部15によって一体的に接続された部材である。前記パネル支持部13は、図4に示されるように、パネル背面側支持板13aと、パネル前面側支持板13bとからなり、前記パネル背面側支持板13aの前面にはパネル載置台13cが設けられ、上段両側に配置されるパネルP、Pの下端部を載置させるとともに、下段両側に配置されるパネルP、Pの上端部を前記パネル載置台13cの下側に位置決めした状態で、前記パネル前面側支持板13bをパネル背面側支持板13aの室外側にあてがい、ボルト16により前記パネル前面側支持板13bを固定し、各パネルP、P…の各コーナー部を挟持するようになっている。なお、パネルPと前記パネル背面側支持板13a、パネル前面側支持板13bとの間、及び前記パネル載置台の上面にはゴムパッキンが介在されている。また、各パネル間の目地にはシールが充填される。
【0019】
前記ロッド連結部14は、詳細には図7に示されるように、所定の厚みを有する略円板形状の連結本体部16の背面側にストラット連結軸17を有する部材であり、前記連結本体部16の前面側には被覆板21を一体的に備えるとともに、後側には、前記ストラット連結軸17が挿通される通孔を有する後面カバー材18が着脱可能に設けられている。
【0020】
前記連結本体部16には、上部、下部及び左右両側部のそれぞれに、ロッド挿通部16aと、その奥側に連通して設けられた後述の抜止め部材20の嵌込み空間16bとからなるロッド連結部が設けられている。なお、前記ロッド挿通部16a及び嵌込み空間16bは、連結本体部16の厚み方向全幅に亘って設けられている。
【0021】
一方、図8に示されるように、上段側吊りロッド5の下端及び下段側吊りロッド5の上端にはそれぞれ、ロッド側の面に面内方向(パネル面に沿う方向)に沿って曲面20aを形成した抜止め部材20を設けるとともに、タイロッド6,6の端部にも同様に、ロッド側の面に面内方向に沿って曲面20aを形成した抜止め部材20を設けている。本例では、前記抜止め部材20はロッド5,6に対して螺合連結により設けられている。また、吊りロッド5の上部には、カップラー接続具19を介することにより長さ調整が可能となっている。
【0022】
図9に示されるように、前記抜止め部材20が前記連結本体部16の嵌込み空間16bに嵌合された状態では、ロッド5,6とロッド挿通部16aとの遊間δ、δが形成され、この遊間2δ内で前記ロッド5,6が面内方向に揺動可能となっている。
【0023】
図示されるように、前記ロッド挿通部16aと嵌込み空間16bとの境界部に前記抜止め部材20の曲面20aと摺動する曲面状の座面16cを形成し、前記ロッド5,6の揺動動作が円滑に行われるようにしてある。
【0024】
更に、前記嵌込み空間16b内において、前記抜止め部材20と、嵌込み空間の底面との間には若干の遊間kを形成するようにしている。その結果、熱膨張によってタイロッド6、6が伸長した場合には、前記抜止め部材20が嵌込み空間16b内で若干スライド可能となっていることにより、伸びを吸収し座屈を防止するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】カーテンウォールの室外側からの姿図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】パネル支持装置2部分の分解図である。
【図5】パネル支持装置2部分の要部拡大縦断面図である。
【図6】パネル支持装置2部分の要部拡大横断面図である。
【図7】ロッド連結部14の分解斜視図である。
【図8】ロッド5,6の端部に設けられた抜止め部材20を示す斜視図である。
【図9】ロッド5,6と連結本体部16との連結状体を示す正面図である。
【図10】従来のフレームレス工法によるパネル支持構造を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…カーテンウォール、2…パネル支持装置、3…方立、4…ストラット、5…吊りロッド、6…タイロッド、10…固定金具、12…連結金具、13…パネル支持部、14…ロッド連結部、15…結合部、16…連結本体部、16a…ロッド挿通部、16b…嵌込み空間、16c…曲面状座面、17…ストラット連結軸、21…被覆板、18…後面カバー材、20…抜止め部材、20a…曲面、P…パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物外壁部分に上下左右方向に隣接配置されるパネルを、該パネルの隅部同士が突き合わされるコーナー交点部に配置されるパネル支持装置によって支持するとともに、前記パネル支持装置は、上下方向に隣接するパネル支持装置同士を連結する吊りロッド及び/又は水平方向に隣接するパネル支持装置同士を連結するタイロッドにより相互に連結されたカーテンウォールにおいて、
前記パネル支持装置とロッドとの連結構造は、前記ロッドの端部に、ロッド面側に面内方向に沿って曲面を形成した抜止め部材を設けるとともに、前記パネル支持装置側に、ロッド挿通部を形成するとともに、その奥側に前記抜止め部材の嵌込み空間を形成し、前記抜止め部材を前記嵌込み空間に嵌合させるように前記ロッドをパネル支持装置に連結し、前記ロッドとロッド挿通部との遊間内で前記ロッドを面内方向に揺動可能としたことを特徴とするカーテンウォールにおけるロッド連結構造。
【請求項2】
前記パネル支持装置側において、前記ロッド挿通部と嵌込み空間との境界部に前記抜止め部材の曲面と摺動する曲面状の座面を形成してある請求項1記載のカーテンウォールにおけるロッド連結構造。
【請求項3】
前記嵌込み空間内において、該嵌込み空間の底面と抜止め部材との間に遊間を形成してある請求項1,2いずれかに記載のカーテンウォールにおけるロッド連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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